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裁判所

民事控訴の利益とは―全部勝訴判決でも控訴できる場合と上訴の適法性(AI作成)

目次第1 控訴の利益の基本1 第一審主文と申立てを比較する2 理由中の判断だけを争うことはできない3 相殺判断に既判力が生じる場合第2 最高裁令和5年3月24日判決1 事案の特殊性2 一般化には注意が必要である第3 控訴の利益を確認する手順1 申立てと主文を対照する2 不利益の法的性質を特定する第4 不適法控訴のリスク1 期間内でも利益がなければ却下される2 相手方の附帯控訴第5 根拠資料及び関連記事
第1 控訴の利益の基本
1 第一審主文と申立てを比較する

控訴の利益は,原則として第一審で求めた裁判と実際の主文を比較して判断する。請求が全部認容された原告は,理由に不満があっても通常は控訴できない。

2 理由中の判断だけを争うことはできない

判決理由に不利な認定があっても,主文で全部勝訴していれば,その理由だけの変更を求める控訴は原則として許されない。既判力その他の効果が問題となる場合は,別途検討する。

3 相殺判断に既判力が生じる場合

民事訴訟法114条1項により,判決理由中の判断には原則として既判力が生じない。しかし,同条2項は,相殺のため主張した請求の成立又は不成立の判断について,相殺をもって対抗した額の範囲で既判力を認める。

そのため,支払額が同じでも,相殺判断の既判力が生じるかが変われば,判決の法的効果は同じではない。
例えば,本訴債権200万円を認めた上で被告の相殺を容れて請求を全部棄却した場合,被告は支払を免れる一方,自働債権について対抗額の範囲で不利な既判力を受ける。このため,相殺によって全部勝訴した被告にも例外的に控訴の利益が認められると解される。
逆に,本訴債権の不存在を理由とする第一審の請求棄却を,原告の控訴に対して,本訴債権は存在するが相殺で消滅したとして請求棄却に改める場合は,相殺判断の既判力を伴うため,単に控訴を棄却するのではなく,原判決を取り消して改めて請求棄却判決をするという整理になる。

最高裁昭和61年9月4日判決の公式全文は,相殺による請求棄却に対して原告だけが控訴し,被告が控訴も附帯控訴もしなかった場合,本訴債権の不存在を理由とする請求棄却に改めると原告が得た自働債権不存在の既判力を失わせるため,不利益変更禁止により第一審判決を維持すべきとした。
被告が自働債権を守りたいときは,原告の控訴に応答するだけで足りると考えず,自らの控訴又は附帯控訴の要否を確認する。

控訴の利益,控訴審の審判範囲,判決主文及び既判力の範囲は別々に確認する。相殺の既判力については,相殺の抗弁に関するメモ書き―既判力・再訴・相殺の抗弁相互の関係も参照されたい。

第2 最高裁令和5年3月24日判決
1 事案の特殊性

最高裁令和5年3月24日判決は,事件を審理した裁判官が判決書の原本に基づかずに判決を言い渡したという重大な手続問題がある事案で,全部勝訴した原告の控訴の利益を認めた。

2 一般化には注意が必要である

この判決は,全部勝訴者が理由に不満を持つだけで控訴できるとしたものではない。判決としての適法性に関わる特殊な事情を踏まえて理解する必要がある。

第3 控訴の利益を確認する手順
1 申立てと主文を対照する

第一審の最終的な請求の趣旨,訴えの変更,請求の放棄・認諾及び主文を対照する。予備的請求がある場合は,主位的請求との関係も確認する。

2 不利益の法的性質を特定する

経済的不満ではなく,主文又は判決の法的効力による不利益を特定する。控訴以外の手段で解決すべき問題かも検討する。

第4 不適法控訴のリスク
1 期間内でも利益がなければ却下される

控訴期間内の申立てであっても,控訴の利益を欠けば不適法となる。控訴状では,どの主文部分についてどのような変更を求めるかを明示する。

2 相手方の附帯控訴

自分の控訴により,相手方が附帯控訴をして第一審判決より有利な変更を求める可能性がある。控訴の利益と訴訟戦略は分けて検討する。

相殺通知を送る前の確認事項は,相手方の相殺にどう反論するか―弁済の再抗弁,訴訟外の相殺通知と債権を失うリスク(AI作成)で説明している。
一部請求の残額を請求又は相殺に使う場合は,一部請求で負けた後に残額を請求・相殺できるか―既判力と信義則,係属中と確定後の違い(AI作成)で,係属中と敗訴確定後,法廷意見と補足意見を分けて整理している。

第5 根拠資料及び関連記事

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最高裁判例に下級審裁判官は反する判断をできるか―判例の拘束力と下級審判決の位置付け(AI作成)

目次第1 最高裁判例の実務上の位置付け1 同種事件の法解釈を統一する機能2 すべての判示が同じ重みではない第2 法的な拘束力が明文で生じる場面1 差戻し・移送後の拘束力2 刑事事件第3 最高裁判例と異なる判断1 理論上の可能性と実務上の例外性2 検討すべき事情第4 下級審判決を引用する方法1 法源としてではなく説得資料として扱う2 事案比較を行う第5 根拠資料及び注意
第1 最高裁判例の実務上の位置付け
1 同種事件の法解釈を統一する機能

最高裁判例は,同種事件における法解釈の統一に大きな役割を持つ。下級審は通常,最高裁が示した法解釈を踏まえて判断する。

2 すべての判示が同じ重みではない

結論に必要な判示か,傍論か,大法廷か小法廷か,その後に同趣旨の判例が反復されたかを区別する。事案の差異を無視して一文だけを一般化してはならない。

第2 法的な拘束力が明文で生じる場面
1 差戻し・移送後の拘束力

民事訴訟法325条3項等により,差戻し又は移送を受けた裁判所は,その事件について上級審が示した判断に拘束される。これは一般的な先例性とは別の,個別事件における拘束力である。

2 刑事事件

刑事訴訟法413条等にも破棄差戻し後の拘束に関する規律がある。どの判断が拘束力を持つかは,破棄理由と不可分な判断の範囲を個別に検討する。

第3 最高裁判例と異なる判断
1 理論上の可能性と実務上の例外性

社会状況又は法制度の変化により判例変更が問題となることはある。しかし,下級審が単に最高裁判例に納得できないというだけで異なる判断をするのは相当でない。

2 検討すべき事情

判例の時期,大法廷・小法廷の別,少数意見,その後の立法,関連判例との整合性及び学説・下級審裁判例の展開を検討する。

第4 下級審判決を引用する方法
1 法源としてではなく説得資料として扱う

下級審判決は,事案と理由付けが近いときに重要な説得資料となるが,同順位の裁判所を一般に拘束するものではない。

2 事案比較を行う

裁判所名,裁判年月日,事件番号,掲載誌又は公開URLを示し,事実関係・争点・規範・当てはめのどこが自分の事件と共通するかを書く。

第5 根拠資料及び注意

裁判所法(e-Gov法令検索),民事訴訟法(e-Gov法令検索)及び刑事訴訟法(e-Gov法令検索)を確認した。
本記事は「最高裁判例に反する判断が常に許される」ことを意味しない。個別事件の拘束力と一般的な先例性を区別する必要がある。

民事控訴審の審理の流れ―原審口頭弁論の結果陳述,一回結審及び和解(AI作成)

目次

第1 控訴提起から第一回期日まで1 控訴状と記録送付2 控訴理由書と答弁書第2 第一審口頭弁論の結果陳述1 控訴審へ第一審の訴訟資料を引き継ぐ2 陳述範囲を曖昧にしない第3 一回結審と続行1 第一回期日で終結することがある2 続行が必要な場合第4 和解1 控訴審でも和解は可能である2 仮執行・担保・関連紛争も確認する第5 根拠資料及び関連記事

民事控訴審は,第一審の判決に対する不服を,控訴された範囲で審理する手続である。地裁の第一審判決に対する控訴は高裁へ,簡裁の通常民事訴訟の判決に対する控訴は地裁へ進む(民事訴訟法281条,裁判所法16条・24条)。高裁で審理する場合も,控訴状の提出先は第一審裁判所である。

高裁の役割と三審制全体は,高等裁判所とは―役割・地裁や最高裁との違い・全国8高裁と支部の一覧を参照されたい。本記事は,控訴提起後の書面準備,第一回期日,弁論終結及び和解の流れを説明する。少額訴訟や決定に対する抗告は,通常の民事判決に対する控訴とは手続が異なる。

大まかな流れは,①第一審裁判所への控訴状提出,②控訴裁判所への記録送付,③控訴理由書・答弁書等の準備,④第一回口頭弁論期日と第一審口頭弁論の結果陳述,⑤審理の続行又は弁論終結・判決,である。和解の協議が行われることもある。全事件が同じ回数の期日・同じ期間で進むわけではない。

第1 控訴提起から第一回期日まで
1 控訴状と記録送付

控訴状は第一審裁判所に提出する(民事訴訟法286条)。適法な控訴として整理された後,記録が控訴裁判所へ送られる。記録送付後の事件番号,担当部・係,書面の提出先・提出方法は,控訴裁判所からの通知等で確認する。電子事件ではmintsによる提出・送達等の現行運用を確認する。

2 控訴理由書と答弁書

控訴人は定められた期間内に控訴理由書を提出し,被控訴人はこれに対する答弁を準備する。新証拠,訴えの変更又は附帯控訴がある場合は,第一回期日前に手続を明確にする。

第一回期日前には,①第一審判決のどの判断を争うか,②第一審の主張・証拠と新たに提出するものの対応関係,③相手方の書面への反論,④期日までの提出指示と提出状況,を整理する。新証拠を出す場合には,何を立証する資料か,第一審で提出しなかった事情や審理の必要性も具体的に説明できるようにする。

第2 第一審口頭弁論の結果陳述
1 控訴審へ第一審の訴訟資料を引き継ぐ

民事訴訟法296条2項により,当事者は第一審の口頭弁論の結果を陳述する。これは第一審で提出した主張・証拠を控訴審の判断資料として引き継ぐための手続である。

2 陳述範囲を曖昧にしない

最高裁昭和41年11月10日判決は,「第一審判決事実摘示のとおり」との陳述では,判決の事実摘示に記載されていない主張が控訴審で陳述されたことにならないとした。判決に現れていない重要主張は,控訴審書面で明示するのが安全である。

第3 一回結審と続行
1 第一回期日で終結することがある

控訴審は提出書面と原審記録を事前に検討し,第一回期日で弁論を終結することがある。重要な主張・証拠を「期日後に出す」前提で準備してはならない。

2 続行が必要な場合

新たな争点,証拠調べ,訴えの変更又は和解協議が必要なときは続行され得る。続行を求める場合は,必要な審理事項と予定期間を具体的に示す。

第4 和解
1 控訴審でも和解は可能である

控訴審では第一審判決を踏まえて法的・経済的リスクが具体化しているため,和解が試みられることがある。

2 仮執行・担保・関連紛争も確認する

和解条項では,支払方法,遅延時の取扱い,仮執行による既払金,強制執行の停止・取下げ,訴訟費用及び関連事件を漏れなく確認する。

第5 根拠資料及び関連記事

裁判所「民事事件Q&A」も参照した。法令及び公式の控訴先の案内は令和8年10月11日に確認した。事件ごとの提出指示・期日の通知と,現行の手続案内を併せて確認されたい。

民事訴訟法281条・286条・296条以下(e-Gov法令検索)を確認した。
手続の現行化は,大阪高裁民事部主任決議集を令和8年の民事訴訟で使う方法及びmintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法を参照されたい。

民事控訴審の不利益変更禁止―不服申立ての範囲と附帯控訴の注意点(AI作成)

目次第1 不利益変更禁止の基本1 変更は不服申立ての限度に限られる2 主文上の不利益を基準に考える第2 控訴人だけが控訴した場合1 控訴人をより不利にできない2 請求の一部控訴3 過失相殺率が有利でも最終額が増えれば違反すること第3 被控訴人が変更を求める方法1 附帯控訴2 訴えの変更との関係第4 相殺の抗弁と不利益変更禁止1 相殺判断には特別の既判力がある2 最高裁昭和61年9月4日判決第5 提出前の確認1 対照表を作る2 例外的問題第6 根拠資料及び関連記事
第1 不利益変更禁止の基本
1 変更は不服申立ての限度に限られる

民事訴訟法304条は,第一審判決の取消し及び変更を不服申立ての限度に限る。控訴審は,当事者が争っていない部分まで自由に変更するものではない。

2 主文上の不利益を基準に考える

一般に,判決理由の評価ではなく,主文で認められた権利義務と控訴の範囲を基準にする。理由中の判断に不満があるだけでは,通常は独立した控訴の利益がない。

もっとも,相殺の抗弁については,民事訴訟法114条2項により,理由中の判断にも例外的に既判力が生ずる。このため,同じ請求棄却の主文でも,請求債権を否定した棄却と,相殺で消滅したとする棄却とでは,判決の法的効果が異なり得る。

第2 控訴人だけが控訴した場合
1 控訴人をより不利にできない

相手方が控訴又は附帯控訴をしていない場合,控訴人の不服申立てを契機として第一審判決より控訴人に不利な主文又は法的効果へ変更することはできない。

2 請求の一部控訴

一部だけ控訴した場合,控訴審の審判対象も原則としてその範囲に限られる。控訴状の「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す」といった表現と,具体的な請求額・対象を整合させる。

3 過失相殺率が有利でも最終額が増えれば違反すること

伊藤正晴・上村考由「最高裁民事破棄判決等の実情―平成25年度―」(判例時報2224号・2225号)によれば,最高裁平成25年2月15日第二小法廷判決(平成23年(受)第302号)は,不法行為に基づく損害賠償請求で被告だけが控訴した事案を扱った。控訴審は,過失割合を被告に有利に変更した一方,過失相殺前の損害額を第一審より大きく認定したため,結論として被告の支払額を第一審より増加させた。最高裁は,このような変更は民事訴訟法304条の不利益変更禁止に反するとしたと整理されている。

したがって,不利益変更の有無は,過失割合その他の個別要素だけで判定してはならない。第一審主文,不服申立ての範囲,控訴審が認定した損害項目・基礎額・過失割合・既払額及び最終認容額を一つの計算表にし,控訴した当事者の最終的な負担が増えていないかを確認する必要がある。

資料上の注意:上記判決の事件番号,判決日,法廷,結論及び事案の概要は同年度論文で確認した。今回の調査では裁判所ウェブサイトの判決全文及び判例秘書の全文を確認できていないため,準備書面等で判旨を直接引用するときは原典を追加確認する必要がある。

第3 被控訴人が変更を求める方法
1 附帯控訴

被控訴人が第一審判決より自己に有利な主文又は法的効果を求めるには,附帯控訴が必要である。単に控訴棄却を求める答弁だけでは,自己の敗訴部分の変更を求めたことにならない。

2 訴えの変更との関係

被控訴人が請求又は訴訟物を追加・変更する場合も,附帯控訴の要否を検討する。名称ではなく,実質として第一審判決より有利な裁判を求めるかで判断する。

第4 相殺の抗弁と不利益変更禁止
1 相殺判断には特別の既判力がある

民事訴訟法114条2項は,相殺のため主張した請求の成立又は不成立の判断について,相殺をもって対抗した額に限り既判力が生ずると定める。したがって,請求債権が存在しないとして請求を棄却する判決と,請求債権は存在するが相殺によって消滅したとして請求を棄却する判決は,主文が同じでも,将来に残る既判力の範囲が異なる。

控訴審では,第一審の主文だけでなく,①請求債権の存否,②相殺に供された反対債権の存否,③民事訴訟法114条2項の既判力及び④誰が控訴・附帯控訴をしたかを一つの表にして確認する必要がある。

2 最高裁昭和61年9月4日判決

最高裁昭和61年9月4日第一小法廷判決は,第一審が請求債権の成立を認めた上で相殺により消滅したとして請求を棄却し,原告だけが控訴した事案について,控訴審が請求債権自体の成立を否定すると,原告に不利益となるとして許されないとした。

第一審判決には,相殺に供された被告の反対債権が相殺額の限度で不存在となるという原告に有利な既判力が含まれる。原告だけの控訴によってその利益を失わせることは,不利益変更禁止に反するからである。控訴審が請求債権の成立を否定すべきだと考えても,結論として控訴を棄却し,第一審判決を維持する。

逆に,第一審が請求債権の不存在だけを理由に請求を棄却したのに,控訴審が請求債権の成立と相殺を認める場合には,相殺判断の既判力が新たに生ずる。主文が請求棄却のままでも法的効果が変わるため,原判決を取り消した上で請求を棄却するという処理を検討する。

第5 提出前の確認

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仮執行後に第一審判決が変更された場合の原状回復―民事訴訟法260条2項の申立て(AI作成)

目次第1 260条2項の目的1 仮執行後の清算を同じ判決で行う2 職権ではなく申立てが必要である第2 対象となる給付と損害1 返還の対象2 損害賠償の対象第3 申立ての作り方1 申立ての趣旨2 申立ての原因3 証拠第4 他の請求との区別1 本案請求との関係2 別訴との関係第5 根拠資料及び関連記事
第1 260条2項の目的
1 仮執行後の清算を同じ判決で行う

第一審の仮執行宣言に基づき被告が給付し,又は執行を受けた後に本案判決が変更されると,給付の法律上の基礎が失われる。民事訴訟法260条2項は,被告の申立てにより,返還及び一定の損害賠償を変更判決の中で命じる制度である。

2 職権ではなく申立てが必要である

控訴審が第一審判決を変更する見込みがあっても,申立てがなければ同項の裁判はされない。控訴答弁又は準備書面の中に埋めず,申立ての趣旨と原因を明確にするのが安全である。

第2 対象となる給付と損害
1 返還の対象

仮執行宣言に基づいて給付した金銭又は物が中心である。任意の支払であっても,仮執行宣言を背景としてされたか,別個の確定的弁済かを事実関係に即して検討する。

2 損害賠償の対象

仮執行により,又は仮執行を免れるために被告が受けた損害が対象となる。執行費用,資金調達費用その他の項目ごとに因果関係と金額を立証する必要がある。

第3 申立ての作り方
1 申立ての趣旨

返還を求める給付の内容,金額,利息又は遅延損害金の起算点を特定する。複数回の支払又は一部執行がある場合は一覧表を付ける。

2 申立ての原因

①仮執行宣言付判決,②給付又は執行の日時・内容,③控訴審で求める本案判決の変更,④返還額,⑤損害の発生及び因果関係を順に記載する。

3 証拠

振込記録,領収書,執行調書,供託書,金融機関との契約書及び費用明細など,支出と仮執行との結び付きを示す資料を提出する。

第4 他の請求との区別
1 本案請求との関係

260条2項の申立ては,本案判決の変更を前提とする付随的な裁判である。本案でどの範囲の変更を求めるかと,原状回復を求める範囲を対応させる。

2 別訴との関係

同項の申立てをしなかった場合又は控訴審で判断されなかった場合の別訴の可否は,既判力及び請求の法的構成を含めて個別に検討する必要がある。

第5 根拠資料及び関連記事

民事訴訟法260条(e-Gov法令検索)を確認した。
仮執行後の実務例として,残業代請求訴訟の仮執行による仮払いも参照されたい。

民事控訴審における反訴―相手方の同意,異議,移送・却下及び手数料(AI作成)

目次第1 控訴審の反訴に追加される要件1 原則として相手方の同意が必要である2 異議なく本案弁論をすると同意とみなされる第2 同意を要しない場合1 第一審の審判を受ける利益を失わせない場合2 人事訴訟の特則第3 相手方が同意しない場合1 移送説と却下説がある2 書面で明確にする事項第4 手数料1 第一審が本訴を判断した場合2 第一審が本訴を判断していない場合第5 根拠資料及び関連記事
第1 控訴審の反訴に追加される要件
1 原則として相手方の同意が必要である

控訴審でも反訴は提起できるが,第一審の反訴要件に加え,相手方の同意を要する(民事訴訟法300条1項)。これは反訴について第一審の審判を受ける利益を保護するためである。

2 異議なく本案弁論をすると同意とみなされる

相手方が異議を述べず反訴の本案について弁論したときは,同意したものとみなされる(同条2項)。反訴を受けた側は,本案に入る前に同意の有無と異議を明確にする必要がある。

第2 同意を要しない場合
1 第一審の審判を受ける利益を失わせない場合

最高裁昭和38年2月21日判決は,相手方から第一審の審判を受ける利益を実質上奪うおそれがない場合には,同意を要しないとした。
反訴と本訴の争点・証拠の重なりや,第一審での審理状況を具体的に示す必要がある。

2 人事訴訟の特則

人事訴訟の控訴審における反訴については,人事訴訟法18条の特則があり,相手方の同意を要しない。一般民事訴訟と混同してはならない。

第3 相手方が同意しない場合
1 移送説と却下説がある

過去の下級審裁判例には,管轄権を有する第一審裁判所へ移送した例と,不適法として却下した例がある。反訴状送達前の段階から,担当裁判官と進行を確認することが重要である。

2 書面で明確にする事項

反訴状には,請求の趣旨・原因だけでなく,控訴審で反訴を許すべき理由,相手方の同意の有無,同意不要と主張する根拠及び本訴との関連性を記載する。

第4 手数料
1 第一審が本訴を判断した場合

原則として控訴提起手数料を基準に算定し,本訴と目的を同じくする反訴では一定の控除が問題となる。

2 第一審が本訴を判断していない場合

訴え提起手数料を基準とする取扱いが問題となる。訴額と本訴との目的同一性を示し,提出前に裁判所へ確認するのが安全である。

第5 根拠資料及び関連記事

民事訴訟法(e-Gov法令検索),人事訴訟法(e-Gov法令検索)及び民事訴訟費用等に関する法律(e-Gov法令検索)を確認した。
電子提出の一般的な扱いは,mintsで反訴・訴えの変更をする方法を参照されたい。

民事控訴審で請求を追加・変更する方法―訴えの変更,附帯控訴及び送達(AI作成)

目次第1 控訴審でも請求の追加・変更は問題となる1 請求の趣旨と訴訟物を区別する2 独立した表題を付ける第2 控訴人と被控訴人で手続が異なる1 控訴人による変更2 被控訴人による変更と附帯控訴第3 許否を左右する事情1 著しい訴訟遅延2 第一審が本案判断をしていない場合3 新訴に対する裁判第4 手数料と提出前確認1 手数料2 チェック項目第5 根拠資料及び関連記事
第1 控訴審でも請求の追加・変更は問題となる
1 請求の趣旨と訴訟物を区別する

請求額又は請求内容を変える場合だけでなく,請求の趣旨が同じでも新たな請求原因を加えて訴訟物が変わる場合は,訴えの変更として扱う必要がある。
控訴理由書又は準備書面の中に変更部分を埋め込むと,裁判所と相手方が送達及び手数料を判断しにくい。

2 独立した表題を付ける

控訴人が変更する場合は「訴え変更申立書」又は「控訴理由書兼訴え変更申立書」など,変更が一見して分かる表題と独立項目を設けるのが実務上安全である。

第2 控訴人と被控訴人で手続が異なる
1 控訴人による変更

控訴人の請求追加・変更は,民事訴訟法143条が控訴審に準用されることを前提に,同一性,審理遅延及び二審制の利益への影響が検討される。変更書面は相手方への送達が必要となる。

2 被控訴人による変更と附帯控訴

被控訴人が第一審判決より自己に有利な裁判を求める場合は,附帯控訴を要する。請求の趣旨を変えない場合でも,訴訟物を追加又は変更して自己に有利な変更を求めるときは,附帯控訴の要否を検討する。

第3 許否を左右する事情
1 著しい訴訟遅延

相手方の陳述した事実に基づく変更であっても,著しく訴訟手続を遅滞させる場合は許されない(最高裁昭和42年10月12日判決)。

2 第一審が本案判断をしていない場合

訴え却下判決に対する控訴審で追加的新訴を持ち込むと,第一審の審判を受ける利益との関係が問題となる。知財高裁平成31年2月19日判決及び同年3月4日判決は,それぞれの事案で追加的変更を許さなかった。

3 新訴に対する裁判

控訴審で訴えの変更により新訴が係属した場合,控訴裁判所は新訴について事実上第一審として裁判すべきであり,単なる控訴棄却では処理できない(最高裁昭和31年12月20日判決)。

第4 手数料と提出前確認
1 手数料

第一審が変更前の請求を判断したか否かにより,控訴手数料基準と訴え提起手数料基準のどちらを用いるかが変わり得る。実額は変更前後の訴額を示して裁判所書記官に確認するのが安全である。

2 チェック項目

①変更前後の請求の趣旨,②請求原因,③附帯控訴の要否,④相手方への送達,⑤手数料,⑥審理遅延,⑦第一審の審判を受ける利益を確認する。

第5 根拠資料及び関連記事

民事訴訟法(e-Gov法令検索)及び民事訴訟費用等に関する法律(e-Gov法令検索)を確認した。
電子提出を含む現行実務については,mintsで反訴・訴えの変更をする方法も参照されたい。

民事控訴審の控訴理由書の書き方―原判決の誤り,証拠評価及び主張の組み立て(AI作成)

目次第1 控訴理由書で最初に示す事項1 結論を変える判断点を特定する2 不服の範囲を主文と対応させる第2 事実認定の誤りの書き方1 証拠と認定事実を一対一で対応させる2 新証拠の役割を説明する第3 法令適用の誤りと文章構成1 規範・要件・事実・結論を分ける2 推奨する並び順第4 提出前チェック1 形式面2 内容面第5 根拠資料及び関連記事
第1 控訴理由書で最初に示す事項
1 結論を変える判断点を特定する

民事控訴審は続審であるが,控訴理由書では第一審の主張を単に再掲するのでは足りない。原判決の主文を支える主要な判断を分解し,どの判断が変われば結論が変わるのかを先に示す必要がある。
原判決の認定事実,証拠評価,法令解釈及び当てはめを区別し,各項目について原判決の該当頁を特定すると,裁判体が争点を追いやすい。

2 不服の範囲を主文と対応させる

控訴の趣旨,控訴状及び控訴理由書の結論は一致させる。請求の一部だけを争う場合は,第一審判決のどの部分について変更を求めるかを明示する。
被控訴人が自己に不利益な変更を求める場合は,単なる答弁ではなく附帯控訴が必要となることがある。

第2 事実認定の誤りの書き方
1 証拠と認定事実を一対一で対応させる

「証拠の評価が不当である」とだけ書くのではなく,①原判決が認定した事実,②根拠とした証拠,③見落とした反対証拠,④経験則又は論理則上の問題,⑤正しく認定すべき事実,⑥結論への影響を順に記載する。
供述証拠については,変遷,客観証拠との整合性,利害関係及び知覚・記憶の条件を具体的に示す。

2 新証拠の役割を説明する

新証拠を提出する場合は,証拠の内容だけでなく,どの争点のどの認定を動かすのか,第一審で提出できなかった事情及び立証趣旨を説明する。
控訴審の期日が短期間で終結する場合もあるため,提出予定の証拠は理由書と同時又はできる限り早期に整理する。

第3 法令適用の誤りと文章構成
1 規範・要件・事実・結論を分ける

法令適用の誤りは,適用条文,解釈上の規範,要件事実,原判決の認定及び正しい当てはめを分けて書く。判例を引用する場合は,結論だけでなく事案との共通点と相違点を示す。

2 推奨する並び順

実務上は,①控訴の趣旨,②結論を左右する要点,③原判決の判断構造,④争点ごとの誤り,⑤新証拠,⑥求める結論の順で構成すると読みやすい。
提出期限の考え方は,控訴理由書・上告理由書の提出期限を参照されたい。

第4 提出前チェック
1 形式面

①事件番号,当事者及び提出先が正しいか,②控訴の趣旨と理由が対応しているか,③引用した原判決の頁が正しいか,④証拠番号と立証趣旨が一致するか,⑤訴えの変更又は附帯控訴を含んでいないかを確認する。

2 内容面

各控訴理由について,「その誤りがなければ主文が変わる」ことまで説明できているかを確認する。周辺的な誤記の指摘だけでは,原判決変更の理由にならない。

第5 根拠資料及び関連記事

民事訴訟法(e-Gov法令検索)及び民事訴訟規則(e-Gov法令検索)を確認した。
民事控訴審全体の案内は,控訴審の手続と主要論点を参照されたい。
本記事は一般的な整理であり,個別事件では控訴の範囲,記録及び提出先裁判所の運用を確認する必要がある。

(続きを読む...)民事控訴審の控訴理由書の書き方―原判決の誤り,証拠評価及び主張の組み立て(AI作成)

大阪高裁民事部主任決議集を令和8年の民事訴訟で使う方法―mints後も残る実務と旧紙運用(AI作成)

目次第1 結論及び資料の位置付け1 結論2 対象資料第2 令和8年5月21日前後で取扱いを分ける必要1 新事件2 旧事件3 民事執行等第3 旧紙運用を現在の実務へ読み替える方法1 提出方法,手数料及び郵便費用2 送達及び通知3 副本及び記録送付4 閲覧制限,秘密保持及び記録保存第4 電子化後も有用な主任決議集の学び1 書面の表題より内容を見ること2 当事者及び参加人ごとに期限を管理すること3 上訴理由書を自己完結させること4 記録の所在と緊急性を引き継ぐこと5 証明書等は目的から逆算すること第5 法律事務所の確認チェックリスト1 事件及び適用法令2 提出及び送達3 記録及び証拠第6 一次資料による裏付けの状況1 確認できた事項2 資料に記載されているが,現在の運用とは限らない事項3 本記事の推論4 未確認事項第7 関連記事及び出典1 関連記事2 出典
第1 結論及び資料の位置付け
1 結論

大阪高裁民事部の主任決議集からは,書類の題名ではなく内容に応じて処理すること,当事者及び参加人ごとに送達・提出期限を管理すること,記録の所在を確かめて緊急処理を引き継ぐことなど,電子化後も有用な実務上の視点を学ぶことができる。

他方,同決議集には,紙の事件記録,郵便切手,ファクシミリ,書類の編てつ及び紙の副本を前提とする記載が多い。令和8年5月21日に施行された改正民事訴訟法及び改正民事訴訟規則の下では,これらを現在の取扱いとしてそのまま用いることはできない。

したがって,同決議集は,現在の法令又は大阪高裁の現行運用を証明する資料ではなく,令和3年3月15日時点の内部事務資料として読み,現行法令及び裁判所の公式案内と照合して利用すべきである。

2 対象資料

本記事の対象は,大阪高裁民事部の主任決議集(令和3年3月15日改訂)である。

このPDFは,大阪高裁民事部における主任書記官の決議又は申合せを集約したものと読める。しかし,裁判所ウェブサイトで公開された法令・通達又は裁判例ではなく,大阪高裁の現行版原本との同一性も確認できていない。

そのため,個別事件で裁判所の取扱いを予測する資料としては有用であるものの,法的根拠を示す場合は,民事訴訟法,民事訴訟規則,裁判所の公式案内及び必要に応じて判例を別途確認する必要がある。

第2 令和8年5月21日前後で取扱いを分ける必要
1 新事件

裁判所の「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」によれば,令和8年5月21日に改正民事訴訟法及び改正民事訴訟規則が施行された。

改正後の新事件では,弁護士等の訴訟代理人は原則としてオンラインで申立てその他の提出をし,手数料及び裁判所が定める費用も電子納付する。裁判所のシステムを利用した送達,電子訴訟記録の閲覧及び事件管理が制度の中心となる。

したがって,新事件について,主任決議集の郵便切手,紙の正本・副本,ファクシミリ提出,紙記録の編てつ順序等の記載を現在の通常運用として引用するのは適切でない。

2 旧事件

令和8年5月21日より前に提起された事件には経過措置がある。旧事件の上訴であっても,手続の各場面について新旧いずれの規定が適用されるかを,施行日だけで一律に判断することはできない。

とりわけ,上告,上告受理申立て,抗告並びに費用の予納については,改正後の民事訴訟規則及び附則に個別の経過措置がある。そのため,事件の第一審提起日,現在の審級及び対象手続を組み合わせて確認する必要がある。

3 民事執行等

裁判所の公式案内によれば,民事訴訟のデジタル化が全面施行された後も,民事執行,民事保全,倒産及び家事事件等のデジタル化は別の施行日程に従う。

主任決議集の内容を検討するときは,「民事訴訟がデジタル化されたから,全ての関連手続が同じ取扱いになった」と考えず,対象となる手続類型を先に確定する必要がある。

第3 旧紙運用を現在の実務へ読み替える方法
1 提出方法,手数料及び郵便費用

主任決議集では,窓口又は郵送による提出,収入印紙,郵便切手及びファクシミリを前提とする記載が多い。

現在は,まず事件が新事件か旧事件か,提出者がオンライン提出義務者か,対象書面がシステム提出の対象かを確認する。その上で,手数料及び費用の電子納付の要否,紙提出が許される例外並びに旧事件の取扱いを確認する。

上訴の具体的な提出先,提出時期及びmints上の操作は,mintsで控訴・上告・上告受理申立てをする方法で整理している。

2 送達及び通知

主任決議集の郵便送達及びファクシミリ送信に関する記載は,現在のシステム送達へ機械的に置き換えることはできない。

現行の民事訴訟規則189条は,上告提起通知書について,原則として裁判所の使用に係る電子計算機から送達すべき電子書類を当事者のファイルへ記録する方法を定める。もっとも,システム送達の通知メールは送達そのものではなく,送達の効力発生時点は法令に従って別に判定する必要がある。

期限管理では,メール受信日時だけでなく,事件管理画面の送達記録及び対象書類を確認する。詳しくは,mintsのシステム送達と期限管理で説明している。

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大阪高裁民事部「執務上の留意事項(集約版)」から学ぶ民事訴訟の事故防止(AI作成)

目次第1 資料の位置付けと限界第2 事件・当事者・代理権第3 提出・申出・採否・取調べ第4 期日後の調書・目録第5 送達・期限第6 判決・和解調書を債務名義として点検する第7 秘匿情報・個人番号第8 家事事件の別事件資料第9 紙手続からmintsへの読み替え第10 弁護士向けチェックリスト第11 根拠・資料レベル第12 関連記事

大阪高等裁判所民事部の「執務上の留意事項(集約版)」には,事件表示,送達,証拠目録,調書,判決書及び家事事件の記録などについて,裁判所内部で経験された事務上の事故と確認事項がまとめられています。本記事は,その記載を弁護士側の事故防止策へ読み替えます。ただし,同文書は法令,最高裁判所規則又は裁判例ではなく,掲載PDFの取得経路・真正も本記事作成時点では独立に確認していません。したがって,文書の記載,法的根拠及び本記事の実務提案を区別します。2026年9月16日現在の内容です。

第1 資料の位置付けと限界

対象資料は,平成30年度から令和4年度までの「執務上の留意事項」を集約した,令和6年3月の大阪高等裁判所民事部の文書と表示されています。各項目は,裁判所の内部事務における留意点を示したものであり,当事者又は代理人の手続上の権利義務を直接定めるものではありません。

本記事では,情報の性質を次のように分けます。

法令で確認できる事項―民事訴訟法,民事訴訟規則等に根拠があるもの。
資料の記載―対象資料が過去の事故又は留意事項として述べるもの。
本記事の実務提案―資料の記載から弁護士側の確認工程を導いたもの。
未確認事項―個別の裁判例,現在の全国統一運用又は掲載PDFの来歴について一次資料の確認が終わっていないもの。

第2 事件・当事者・代理権

訴状,答弁書,委任状,登記事項証明書及び裁判所から届いた書面を横断して,次の事項を照合します。

裁判所,部係,事件番号及び事件名
当事者の氏名・名称,住所,本店所在地及び法人番号
代表者の資格,役職及び変更の有無
代理人の委任範囲,復代理及び特別授権の要否
送達場所及び送達受取人

同姓同名,法人の商号変更,合併,代表者変更又は関連事件がある場合には,「名称が似ている」ことを照合の根拠にせず,事件番号と登記事項等の客観的識別子を用います。

第3 提出・申出・採否・取調べ

証拠ファイル又は写しを提出したことと,期日で証拠申出がされ,裁判所が採否を判断し,実際に証拠調べが行われたことは別です。代理人側の管理表には,少なくとも次の欄を分けて設けるのが安全です。

提出日,提出先及び提出方法
相手方への直送又は閲覧可能性

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上告・上告受理申立ての提出前チェックリスト―代理権・送達・理由書・記録・秘匿(AI作成)

目次第1 本記事の目的及び資料の位置付け第2 最初に確認する当事者・代表者及び代理権1 当事者の同一性と上訴の主体2 法人等の代表者3 代理権及び特別授権第3 送達と期限を確定する1 上訴期間と理由書提出期間を分ける2 送達日と送達先を記録する第4 理由書で区別すべき三つの場面1 期限内に法定理由が存在しない場合2 法定理由はあるが記載方式が不備の場合3 理由の当否及び受理の重要性を判断する場合第5 理由書を自足的にする1 上告と上告受理申立てを区別する2 他の書面又は他人の理由へ丸投げしない第6 不服の範囲と記録の完全性1 主文と不服申立ての範囲2 裁判体,期日及び調書3 引用判例の同一性と射程第7 閲覧制限・秘匿及びマスキング第8 代理人用の提出前チェックリスト第9 関連記事第10 出典
第1 本記事の目的及び資料の位置付け

本記事は,最高裁判所へ送付された上告事件及び上告受理申立て事件の記録について指摘された事項を,代理人側の提出前チェックに置き換えて整理するものである。
中心資料は,上告審から見た書記官事務の留意事項(令和6年分)である。

本記事が扱うのは,上訴権者・代理権,送達日・期限,理由書の方式,記録編成及び秘匿処理を点検する「上訴手続の提出前監査」である。原判決の適用法,判断枠組み,主要事実,証拠評価,理由及び主文の誤りを探す「原判決の実体監査」は,最高裁民事破棄判決から作る原判決監査チェックリストで扱う。

同資料は,当事者・代表者・代理権,送達,理由書,記録編成,閲覧制限及び秘匿等について,実際に生じやすい不備を広く挙げている。
もっとも,同資料には作成部署,決裁主体及び配布範囲を示す表紙又は発出文書が収録されていないため,裁判所の公式通達又は一般的な法解釈そのものとして扱うことはできない。

そこで,法令及び裁判例に関する結論は,現行の民事訴訟法,裁判所が公表する民事訴訟規則及び確認できた裁判例で裏付ける。
同資料だけで確認した事項は,「同資料は」と主語を明示して紹介する。

第2 最初に確認する当事者・代表者及び代理権
1 当事者の同一性と上訴の主体

上訴状を作成する前に,原判決の当事者欄,主文,訴訟承継,参加,脱退及び選定当事者に関する記録を突き合わせる必要がある。
名称が似ている者,途中で地位を承継した者又は複数の選定者がいる事件では,原審の表示を機械的に転記するだけでは足りない。

選定当事者については,選定書,選定者全員,自己選定の有無,選定の取消し及び資格喪失の有無を確認する。
必要的共同訴訟である可能性があるときは,上訴しなかった共同訴訟人を含めて通知及び記録送付の対象に漏れがないかを検討する。

2 法人等の代表者

法人,医療法人,社会福祉法人,事業協同組合及び地方公共団体等については,名称や通常の代表者だけから訴訟上の代表者を決めない。
請求の相手方及び内容によって代表権者が変わることがあるため,根拠法令,登記,定款又は規約を確認する。

特に,会社と取締役又は退任取締役との間の訴えでは,監査役設置会社か,監査役の監査範囲を会計に限定する定款の定めがあるか等によって検討が分かれる。
上訴段階では,第一審開始時だけでなく,上訴時点の代表資格も確認する必要がある。

3 代理権及び特別授権

委任状が提出されていることだけでなく,当該訴訟代理権が上訴提起,取下げ又は和解等の対象行為まで及ぶかを確認する。
訴訟代理権の消滅又は終了の通知が相手方に到達しているかによって,その効力及び送達先の判断が変わり得る。

上告提起通知書等が本人と代理人のいずれに送達されるべきかは,代理権の存否と一体で確認する。
当事者表示,代理権証明及び送達先を別々のチェック項目にせず,一つの連鎖として点検することが重要である。

第3 送達と期限を確定する
1 上訴期間と理由書提出期間を分ける

判決書の送達を受けた日から2週間の上告期間と,上告提起通知書の送達を受けた日から50日の上告理由書提出期間は,起算点も期間の性質も異なる。
上告期間は不変期間である一方,理由書提出期間は不変期間ではない。

現行の民事訴訟規則194条は,電子上告提起通知書の送達を受けた日から50日を上告理由書の提出期間と定めている。

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東京高裁の民事控訴-原判決の取消・変更率,和解率及び審理期間(令和7年度)(AI作成)

目次第1 この記事の対象と資料の読み方1 対象となる資料2 統計を「控訴成功率」と読まないこと第2 民事控訴事件の終局内訳1 令和6年の通年値2 令和7年1月から9月まで第3 第一審判決の取消し・変更率1 令和6年及び令和7年の数値2 個別事件の見通しに使う場合の限界3 全国の民事控訴審との比較第4 民事控訴事件の審理期間1 令和6年に終局した事件2 令和6年末の未済事件第5 家事抗告事件と多数冊事件1 家事抗告事件の増加2 多数冊事件の基準変更第6 弁護士実務への示唆1 依頼者への説明2 受任時及び控訴理由作成時の確認事項第7 出典及び関連記事1 一次資料2 関連記事
第1 この記事の対象と資料の読み方
1 対象となる資料

1 この記事は,東京高裁民事部が作成した「令和7年度民事事件概況説明資料」(令和7年12月19日付け。以下「本資料」といいます。)のうち,民事控訴事件の終局区分,第一審判決の取消し・変更,審理期間,家事抗告事件及び多数冊事件に関する部分を整理したものです。
2 本資料の令和7年の数値は,原則として同年9月30日までの実績又はその時点の事件を対象としています。令和6年の通年値と令和7年1月から9月までの値を比較するときは,対象期間が異なることに注意する必要があります。
3 以下で「資料記載」とした部分は本資料の記載又は表から直接確認できる事項,「計算値」とした部分は本資料の数値から私が計算した事項です。

2 統計を「控訴成功率」と読まないこと

1 本資料の「取消・変更率」は,当審判決のうち,第一審判決が取り消され,又は変更されたものの割合です。控訴審で終局した全事件を分母にした割合ではありません。
2 また,取消し・変更には,請求の全部が認められた場合だけでなく,一部変更その他の類型が含まれ得ます。そのため,この率を,控訴人が全面的に勝った割合又は個別事件の見通しと読み替えることはできません。
3 和解,取下げその他によって終局した事件も相当数あるため,判決だけを見ても控訴審全体の解決像は分かりません。

第2 民事控訴事件の終局内訳
1 令和6年の通年値

1 本資料16頁の第11表の1によれば,令和6年に東京高裁で終局した民事控訴事件は5995件でした。
2 内訳は,判決3826件(63.8%),和解1566件(26.1%),取下げその他603件(10.1%)です。判決以外による終局が合計36.2%を占めています。
3 したがって,控訴審の説明では,判決結果だけでなく,和解による解決可能性及び取下げ等による終局も別に検討する必要があります。

2 令和7年1月から9月まで

1 本資料16頁によれば,令和7年1月から9月までに終局した民事控訴事件は4468件でした。
2 内訳は,判決2754件(61.6%),和解1239件(27.7%),取下げその他475件(10.6%)です。各割合の合計が100%にならないのは,表示上の端数処理によります。
3 これは9か月分の途中集計であり,令和7年の通年値ではありません。

第3 第一審判決の取消し・変更率
1 令和6年及び令和7年の数値

1 本資料13頁の第9表の1及び14頁の第9表の2によれば,令和6年は,当審判決3826件のうち755件で第一審判決が取り消され,又は変更され,その割合は19.7%でした。
2 令和7年1月から9月までは,当審判決2754件のうち537件で第一審判決が取り消され,又は変更され,その割合は19.5%でした。
3 いずれも分母は「当審判決」であり,和解,取下げその他を含む全既済事件ではありません。

2 個別事件の見通しに使う場合の限界

1 取消し・変更率は,事件類型,争点,証拠関係,控訴理由の内容及び原判決の認定判断によって大きく意味が変わります。
2 したがって,19.5%又は19.7%という全体値だけから,特定事件の控訴結果を予測することはできません。
3 実務上は,原判決のどの認定又は法的評価を問題とするのか,新たな主張又は証拠を提出できるのか,変更を求める範囲をどのように特定するのかを,記録に即して検討する必要があります。
4 本記事は統計資料の読み方を整理するものであり,民事控訴の法的要件又は個別判例の射程を論じるものではありません。そのため,本記事の統計値について判例秘書は使用していません。

3 全国の民事控訴審との比較

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民事訴訟の証拠収集法制見直し―早期開示・文書提出命令・秘密保護の現在地(AI作成)

目次第1 法制審議会への諮問後の現在地第2 見直しが検討された背景第3 提訴前の証拠収集手続1 現行法の入口2 被告の特定・送達先情報第4 提訴後の当事者間情報取得1 三つの案2 交通事故等で想定される利用場面第5 文書提出命令の見直し1 現行法の構造2 自己利用文書等の見直し3 文書を特定する手続4 法律相談通信と訴訟準備資料の扱い第6 専門家その他の第三者の知見第7 秘密保持命令と第三者の秘密保護1 検討案の内容2 現行実務での対応第8 弁護士実務で今から準備できること第9 一次資料と裁判例の確認状態第10 出典
第1 法制審議会への諮問後の現在地

公益社団法人商事法務研究会の「証拠収集手続の拡充等を中心とした民事訴訟法制の見直しのための研究会」は,令和8年2月に報告書を取りまとめ,同年4月28日に誤植訂正版を公表した。
同報告書は,民事訴訟における情報・証拠収集を,①準備としての収集,②立証としての収集,③専門家等の知見の収集,④秘密の保護という段階に分けて検討している。

令和7年度実務協議会(冬季)資料も,同研究会で文書等の早期開示制度や文書提出命令の見直し等が検討されていることを紹介している(PDF実頁14頁)。
もっとも,研究会報告書は立法上の検討資料であり,同報告書の案がそのまま成立法又は施行済み制度になったわけではない。

その後,令和8年9月14日に開催された法制審議会第206回会議において,法務大臣から発せられた「民事訴訟制度の見直しに関する諮問第131号」を,新設の「民事訴訟法(証拠収集等関係)部会」に付託して審議することとされた。
同会議の配布資料は,主な検討事項として,訴えの提起前における証拠等の収集手続,訴状の送達前における被告に関する情報の収集手続,訴え提起後における当事者間での情報の収集手続,文書提出命令,専門的知見の収集手続及び秘密の保護を挙げている。
現在の段階は,研究会報告書を踏まえて法制審議会の部会で審議が始まる段階であり,部会での審議,要綱案,答申,法案の提出,成立,公布及び施行は区別して追う必要がある。

したがって,以下では,現行民事訴訟法に基づく制度と研究会の検討案を分けて説明する。
「早期開示を請求すれば相手方に提出義務がある」などと,検討案を現在の権利として主張することはできない。

第2 見直しが検討された背景

報告書は,平成8年改正による文書提出義務の一般義務化と当事者照会の新設,平成13年・15年の改正後も,真実解明のための手段を充実させる必要性が指摘されてきたと説明する。
また,情報・証拠収集制度の強化,既存制度の実効性及び秘密保護を一体として検討する必要性を挙げる(報告書PDF実頁2頁~3頁)。

証拠収集を広げれば,当事者が事案を早期に把握し,争点を絞りやすくなる。
一方,広すぎる開示義務は,探索的な要求,営業秘密・私生活上の秘密の流出,第三者の負担及び審理の遅延を生じさせ得る。
このため,開示の必要性,対象の特定,負担,除外事由及び秘密保護を組み合わせて制度設計することが課題となる。

第3 提訴前の証拠収集手続

1 現行法の入口

現行民事訴訟法132条の2以下は,訴え提起前の照会及び証拠収集の処分を定めている。
報告書は,これらの手続が実務上あまり利用されていないという認識を示し,提訴予告通知,申立期間,必要性及び当事者自身による収集困難性等の要件や効果を見直すかを引き続き検討するとした(報告書PDF実頁3頁~5頁)。

報告書は,提訴予告通知を不要とする案について制度趣旨や他制度との均衡に問題があり,具体的方向を見いだすまでに至らなかったことも明記している。
したがって,「提訴前手続が廃止される」「通知なしで相手方に開示を強制できるようになる」と確定的に説明することはできない。

2 被告の特定・送達先情報

報告書は,訴状送達前に,裁判所が官公署等へ被告の氏名・住所等を調査嘱託する新制度や,執行官が送達場所を調査する制度を提案している(報告書PDF実頁5頁~19頁)。
インターネット取引や詐欺被害で相手方の氏名・住所を把握しにくい事案を背景とする。

これも検討案である。
現時点の受任事件では,把握している相手方情報,弁護士会照会,住民票等の職務上請求,既存の調査嘱託,送達方法等を現行法に基づいて検討し,将来制度の利用を前提に提訴期限や保全を遅らせてはならない。

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簡易裁判所の民事訴訟―地方裁判所との違いと交通事故事件の争点整理(AI作成)

目次第1 簡易裁判所で扱う民事事件1 簡易裁判所と地方裁判所の比較2 簡裁の審理に関する司法行政資料と統計第2 通常訴訟,少額訴訟及び民事調停を選び分ける第3 簡易裁判所の通常訴訟にある特則1 口頭による訴え等2 司法委員の関与第4 交通事故事件の争点整理1 四つの欄を先に作る2 事故態様は時系列と図面を一致させる3 過失と損害を混ぜない第5 地裁の書式を参考にする場合の注意第6 資料の適用範囲第7 出典
第1 簡易裁判所で扱う民事事件

手続を選ぶ前に,事件の具体例と解決方法を確認する場合は民事事件の具体例・解決方法と相談の準備を参照されたい。簡裁の通常訴訟も,訴状・答弁書,争点・証拠の整理,必要な証拠調べ,和解・判決という基本的な流れを踏まえて準備する。全体像は民事裁判の流れで説明するが,本記事で述べる簡裁の特則は別に確認する必要がある。

簡易裁判所は,訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)について第一審の裁判権を有する(裁判所法33条1項1号)。
もっとも,簡易裁判所で利用できる手続には通常訴訟,少額訴訟,民事調停及び支払督促があり,目的と進め方が異なる。裁判所全体の役割は,裁判所とは―5種類の役割・三審制・管轄と利用方法を参照されたい。

1 簡易裁判所と地方裁判所の比較
比較事項簡易裁判所地方裁判所通常の民事第一審原則として訴額140万円以下の請求。行政事件訴訟を除く。簡裁等の管轄に属するもの以外の民事事件。訴額140万円超の通常の金銭請求など。不動産に関する訴訟訴額140万円以下の請求は簡裁の裁判権の対象となる。訴額140万円以下でも地裁にも第一審の裁判権がある。手続の特徴口頭による訴えの提起等の特則がある。少額訴訟は60万円以下の金銭支払請求を対象とする別の手続。地裁の通常訴訟へ簡裁の特則や少額訴訟をそのまま適用しない。通常訴訟の控訴先地裁。さらに高裁への上告等は法律の要件による。高裁。最高裁への上告・上告受理申立ては法律の要件による。

第一審の裁判所は請求額だけで機械的に決まるものではない。不動産に関する訴訟の地裁の裁判権(裁判所法24条1号),地裁の自庁処理(民事訴訟法16条2項)及び移送等も確認する必要がある。地裁の自庁処理では,簡裁の管轄に属する訴訟を地裁で審理・裁判する場合を説明している。

上の控訴先は通常訴訟の判決についての説明である。少額訴訟の終局判決には控訴できず,同じ簡裁への異議申立てが用意される。異議後の判決にも控訴できない(民事訴訟法377条・378条・380条)。管轄と不服申立ては,利用する手続を特定してから判断する。

地裁の取扱事件,簡裁・家裁との違い及び管轄の調べ方をまとめて確認する場合は,地方裁判所とは―扱う事件・他の裁判所との違い・管轄の調べ方を参照されたい。

2 簡裁の審理に関する司法行政資料と統計

令和8年2月の令和7年度実務協議会(冬季)資料は,本人訴訟の難化と,弁護士保険の普及を背景とした交通損害賠償訴訟等の弁護士関与事件の増加を簡裁の課題として挙げる。
その上で,地裁の審理・判決に慣れた弁護士にも,簡裁の簡易迅速な役割と手続上の特則を理解してもらう必要があるとしている(PDF実頁6頁)。

法務省が法曹養成制度改革連絡協議会第26回(令和8年3月3日)に提出した司法統計の資料によれば,令和6年の簡裁の民事第一審訴訟の既済事件417,083件のうち,当事者の双方に弁護士が付いていない事件は343,612件(82.4%)であった。
この数には司法書士が代理した事件も含まれる。
地裁との比較や推移は,民事訴訟で弁護士が付く割合と本人訴訟の割合―地裁・簡裁・人事訴訟・遺産分割・婚姻関係事件の推移(平成元年~令和6年)で扱っている。

この資料は司法行政上の課題認識を示すものであり,個別事件の証明度,過失割合又は損害額を定めるものではない。
簡易迅速という目的から,必要な主要事実や証拠を省略してよいという結論も導かれない。

第2 通常訴訟,少額訴訟及び民事調停を選び分ける

手続主な対象・特徴選択時に確認する事項通常訴訟判決による権利判断を求める。簡裁には簡易な手続の特則がある事実・法律上の争点,証拠調べ,控訴の可能性少額訴訟60万円以下の金銭請求について原則1回の審理で解決を図る最初の期日までの全主張・証拠,即時に調べられる証拠,通常手続への移行可能性民事調停非公開の話合いにより,実情に即した合意を目指す金額以外の条件,履行可能性,関係維持,合意できない場合の次の手続支払督促書類審査から金銭等の支払を求める相手方の異議見込み,送達先,訴訟移行時の対応

少額訴訟は,60万円以下の金銭請求について原則1回の審理で紛争解決を図る制度である。
最初の期日までに全ての言い分と証拠を提出し,証拠はその場ですぐに調べられるものに限られるため,単に金額が少ないという理由だけで選ぶべきではない。

交通事故事件で事故態様,因果関係,休業損害,後遺障害等に多くの争いがあり,追加の証拠調べを要する場合には,通常訴訟又は他の手続が適することがある。
少額訴訟の判決に異議が申し立てられた場合は同じ簡易裁判所で通常手続による審理が行われ,その異議後の判決に対する控訴は認められていない。

第3 簡易裁判所の通常訴訟にある特則

1 口頭による訴え等

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民事訴訟の争点整理―主要事実・証拠・判決の道筋を期日前に整理する方法(AI作成)

目次第1 争点整理は判決に必要な判断対象を明らかにする作業である第2 主要事実,間接事実及び証拠を分ける1 請求原因・抗弁等から主要事実を取り出す2 認否と理由を事実ごとに対応させる3 証拠から事実までの推認過程を書く第3 期日前に確認する事項1 時系列表・主張対比表・陳述書対比表を使い分ける2 主張対比表には出典と次の作業を残す3 記入例と更新の仕方第4 検討結果を準備書面と期日の説明へ反映する1 一つの節で一つの判断対象を扱う2 期日で確認する事項を絞る3 期日間の投稿と書面の提出期限4 争点整理後の新主張・証拠を処理する5 進行への希望,求釈明及び異議を区別して記録する
6 法定審理期間訴訟手続の提出期間と判断事項の確認第5 証拠説明書及び新様式判決との関係第6 判決受領後の六段階監査第7 法的根拠と資料の限界第8 出典
第1 争点整理は判決に必要な判断対象を明らかにする作業である

争点整理は,民事事件の解決に必要な事実のうち,どこが争われ,どの証拠で確認するのかを明確にする段階である。訴状・答弁書から和解・判決までの手続上の位置付けは民事裁判の流れで確認できる。本記事では,各期日前に主要事実,認否及び証拠をどのように対応させるかを詳しく扱う。

争点整理では,当事者の主張を短くすること自体ではなく,裁判所が判決をするために判断しなければならない事実と法律問題を明らかにする。
令和8年2月5日・6日の令和7年度実務協議会(冬季)資料「民事・行政事件の現状と課題」は,審理の序盤に主要事実レベルの争点と今後の主張立証の見通しを口頭で協議し,中盤には判決の結論・理由の道筋を意識して判断対象を共有するという審理運営を示している(PDF実頁5頁)。

同資料は裁判所内部の実務協議会資料の公開写しであり,法令又は判決ではない。
本記事は,この問題意識を代理人の準備へ応用した確認方法を説明するものであり,裁判所が指定する証拠説明書その他の書式とは区別している。

第2 主要事実,間接事実及び証拠を分ける

1 請求原因・抗弁等から主要事実を取り出す

主要事実とは,請求原因,抗弁,再抗弁等の法律効果の発生に直接必要となる具体的事実である。
まず,請求,抗弁等の法的構成を選び,その要件ごとに主要事実を一文で記載する。

契約書があるという事実や供述が信用できるという評価は,それだけでは請求原因ではない。
法的要件,主要事実,主要事実を推認させる間接事実及び証拠を別欄に置くと,書面の不足を発見しやすくなる。

2 認否と理由を事実ごとに対応させる

相手方の主張については,認める,否認する,不知のいずれかだけで終わらせず,否認する主要事実には可能な範囲で理由を対応させる。
複数の事実をまとめて「争う」とだけ記載すると,どの事実が証拠調べの対象になるのかが見えにくい。

認否を整理すると,当事者間で一致している事実,証拠が必要な事実及び法律評価だけが争われている部分を区別できる。
期日では,この区別を前提に,次に何を主張・立証すれば判断可能になるかを確認する。

3 証拠から事実までの推認過程を書く

証拠欄には証拠番号だけでなく,引用する頁,段落,日付,メール件名又は画像上の位置まで記載する。
次に,その記載又は映像から,どの事実を,どのような経験則で推認するのかを書く。

同じ証拠でも,契約締結そのものを直接示す場合と,当事者の行動から契約締結を間接的に推認させる場合とがある。
証拠が直接示す内容と,そこから導く評価を分ければ,推論の飛躍や反証の必要性を点検できる。

第3 期日前に確認する事項

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資産額と「実際に払える額」は違う-和解・財産分与・代償分割の支払能力チェック(AI作成)

第1 資産額と支払能力は同じではない1 この記事が扱う場面2 六つの確認軸第2 資産別に「実際に使える額」を確認する1 預貯金2 上場株式・投資信託その他の金融資産3 不動産4 保険、退職金、事業及び法人関係財産第3 収入と一括払いの原資を分ける1 高収入でも一括払いできるとは限らない2 分割払いは各月の資金繰りを確認する第4 手続ごとの確認事項1 民事訴訟上の和解2 離婚に伴う財産分与3 遺産分割における代償分割第5 支払能力を裏付ける資料1 支払う側が準備する資料2 受け取る側が確認する事項第6 合意・条項で不履行に備える1 担保と保証2 免除・清算・保全処分の時期3 不履行時の効果第7 開示は目的・相手・時期・範囲を設計する第8 支払能力の最終チェックリスト第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判所・法務省の資料3 裁判例
第1 資産額と支払能力は同じではない
1 この記事が扱う場面

訴訟上の和解、離婚に伴う財産分与及び遺産分割における代償分割では、「相手には資産があるから支払える」「年収が高いから一括払いできる」と考えてしまうことがある。
しかし、保有資産の名目額と、合意した期限までに現実に支払へ充てられる額は一致しない。

本記事は、令和8年9月15日現在の法令及び公的資料を基準に、支払能力を、①名目額、②時価、③換価可能性、④所有・処分権限、⑤負担控除後の正味額、⑥支払期限までの資金化という六つの観点から確認する方法を整理する。
個別事件の相当な支払額又は分与額を示すものではない。

2 六つの確認軸

第1は、資料に記載された名目額である。
預貯金残高、証券口座の評価額、固定資産評価額、保険の解約返戻金見込額などは、同じ「金額」でも基準日と意味が異なる。

第2は、現在の時価である。
不動産の固定資産評価額や取得価格は、現在の売却価格と同じではない。
上場株式等も日々価格が変動する。

第3は、必要な時期までに換価できるかである。
資産価値があっても、売却、解約、融資又は名義変更に時間がかかれば、直近の支払期限には使えない。

第4は、誰が所有し、誰が処分を決められるかである。
法人の預金は代表者個人の預金ではなく、共有財産は一人の判断だけで処分できないことがある。

第5は、担保債務、税金、売却費用その他の負担を控除した正味額である。
総資産が大きくても、これらを控除すると支払原資が小さくなることがある。

第6は、支払う意思と手続を具体化できるかである。
支払口座、換価手続、融資申込み、社内決裁等が決まっていなければ、「支払える」という説明だけで期限どおりの履行を見込むことはできない。

第2 資産別に「実際に使える額」を確認する
1 預貯金

預貯金は流動性が高いが、残高証明書又は通帳の一時点の残高だけでは足りないことがある。
既に支払が予定されている税金、給与、買掛金、生活費、借入返済等を確認し、口座名義、基準日、差押え又は担保の有無も確認する。

事業用口座と生活用口座が混在している場合は、残高全額を自由に使える個人資産として扱わず、入出金の性質を分ける必要がある。

2 上場株式・投資信託その他の金融資産

金融資産については、評価額だけでなく、取得価額、含み損益、売却手数料、税金、受渡日、担保設定及び出金制限を確認する。
NISA口座であることは非課税投資枠の取扱いに関係するが、売却後の資金をいつ出金できるかは金融機関の手続にも左右される。

証券口座の残高増加を検討するときは、値上がり益だけでなく、入金、移管、配当再投資及び為替変動を分ける必要がある。

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名古屋地裁の令状事務処理の手引(七訂版)-令状の点検項目,記載例及び現行法への読み替え(AI作成)

目次第1 手引の概要と本記事の範囲1 作成主体と版の沿革2 本記事の基準日と頁の示し方第2 令状事務の流れと書記官による点検1 受付から交付までの流れ2 書記官による点検の範囲3 撤回,却下及び令状の更新第3 令状の種類ごとの主な記載と取扱い1 通常逮捕状と逮捕状に代わるもの2 緊急逮捕状3 捜索差押許可状,捜索許可状,差押許可状及び検証許可状4 身体検査令状,鑑定処分許可状及び身体からの採取5 電磁的記録に関する令状6 行政手続の令状,引致状及び保護許可状第4 現行法への読み替え1 読み替えが必要な主な箇所2 公訴時効の一覧表の注意点3 今後の改正予定第5 黒塗り箇所と旧版との比較1 黒塗り又は空白となっている主な箇所2 四訂版からの主な変更点第6 関連資料と関連記事1 同じ手引の旧版と抜粋2 他の裁判所の令状事務資料3 関連記事第7 出典
第1 手引の概要と本記事の範囲
1 作成主体と版の沿革
(1) 手引の構成

「令状事務処理の手引」は,名古屋地方裁判所刑事書記官室及び名古屋簡易裁判所刑事書記官室が,当直員を含む令状事務の担当職員のために作成した執務資料である。
名古屋地裁の令状事務処理の手引(七訂版,令和6年2月補訂)はPDFで全125頁であり,総論,令状の種類ごとの各論,当直用チェック票,記載例及び資料(公訴時効,令状の有効期間一覧表,少年触法事件の参考書式)から成る。

(2) 各版の改訂内容

各版のはしがきによれば,改訂の経過は次のとおりである。
① 平成20年3月に,名古屋簡裁刑事書記官室が改訂版を作成した。
② 平成27年3月の三訂版で,平成23年の刑事訴訟法改正による新たな令状(平成24年6月22日施行)を盛り込んだ。
③ 平成28年9月の四訂版で,名古屋の高裁・地裁・家裁の当直令状事務の見直しを反映し,平成30年4月及び同年9月に補訂した。
④ 令和3年12月の五訂版で,特別法違反の令状等に罪名に係る条文を記載しない取扱い(同年3月1日から)等を反映した。
⑤ 令和5年7月の六訂版で,通常逮捕状,緊急逮捕状及び引致状を除く令状について,請求時に請求書謄本の添付を求めない取扱い(同月3日から)を反映した。
⑥ 令和6年2月の七訂版で,同月15日施行の刑事訴訟法改正に伴い,被害者等の個人特定事項を秘匿するための「逮捕状に代わるもの」の手続を追加した。

(3) 資料としての位置付け

手引は裁判所の内部の執務資料であり,法令の解釈を公式に示す資料ではない。
三訂版のはしがきも,踏み込んだ法解釈や理論的な部分については,裁判所職員総合研修所の研修教材である『令状事務(再訂補訂版)』等の専門書を参照するよう求めている。
記載されている取扱いは,令和6年2月時点の名古屋地裁・名古屋簡裁のものであり,他の裁判所の取扱いが同じであるとは限らない。

2 本記事の基準日と頁の示し方

本記事は,令和8年9月14日現在の法令に基づき,手引の内容を紹介した上で,その後の法改正により読み替えが必要な箇所を示すものである。
手引の頁は本文下部に印字された頁で示し,PDFの頁を併記する。
本文の印字頁は,PDFの頁から9を引いた数に当たる。

掲載されているPDFには,黒塗り又は空白となっている箇所がある。
主な箇所は,第5で整理する。

第2 令状事務の流れと書記官による点検
1 受付から交付までの流れ
(1) 事前準備と立件

警察署等から令状請求の事前連絡を受けたときは,請求官署名,令状の種類,通数,緊急性の有無及び到着予定時刻を聞き,緊急逮捕の場合は被疑罪名,逮捕時刻及び引致時刻も聞いた上で,定型用紙を準備しておくとよいとされている(手引4頁,PDF13頁)。
令状請求書には受付日付印を押し,受付時刻を24時間表示で記入して立件する(手引6頁~7頁,PDF15頁~16頁)。
当直で立件する一般令状事件の符号は,地裁の裁判官が担当する場合は「令む」,簡裁の裁判官が担当する場合は「令る」とされている(手引7頁,PDF16頁)。

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司法研修所弁護教官及び弁護教官室所付の謝金,及び日弁連の経済的支援

1(1) 「弁護教官等の謝金について」を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和2年度,令和3年度,令和4年度,令和5年度,
令和6年度,
令和7年度,
(平成時代)
平成29年度,平成30年度,平成31年度
* 「令和4年度の弁護教官等の謝金について(令和4年4月1日付の司法研修所の文書)」といったファイル名です。
(2) 司法研修所弁護教官謝金の支給調書も参照してください。

2 日弁連は,司法研修所の弁護教官に対して月額6万円,司法研修所弁護教官室所付に対して月額4万円を支払っています(司法研修所弁護教官及び弁護教官室所付に対する経済的支援に関する規則(平成28年1月22日規則第173号))。

3 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)644頁には,「弁護教官謝金」として以下の記載があります。
<要求要旨>
(ア) 司法修習のうち,中央(司法研修所)における修習は,導入修習及び集合修習をそれぞれクラスに分けて実施する。各クラスに民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護の5科目の教官を1人ずつ配置する。民事弁護及び刑事弁護を担当する弁護教官は,最高裁判所から司法研修所教官の事務を委嘱された弁護士であり,いずれも本業である弁護士の業務にも従事しているが,単に司法研修所において講義,起案講評等を行うのみならず,司法修習生に起案させた訴状,準備書面,弁論要旨等の法律文書の添削,講義・講評の事前の打合せ(合議),修習記録として使用する事件記録等の収集・編集,テキスト等の教材の作成等にも従事し,また,クラスの裁判教官・検察教官とともに,司法修習生の全人格的な指導に当たり,さらに,教官会議や各種委員会に出席して,司法研修所の運営にも関与している。このように,弁護教官の事務は,その内容も専門職の養成指導という高度の知的作業を含む多岐にわたるもので,これによる拘束時間も必然的に長時間に及ぶものであって,弁護教官は,本来の弁護士業務を相当程度犠牲にして弁護教官事務に従事しているのが実情である。
   なお,このような弁護教官の負担を軽減するため,教官を補助して下調べ的な事務を行う弁護所付を配置しているが,弁護所付も最高裁判所から教官の事務の補助を委嘱された弁護士であり,弁護教官と同様,本来の弁護士業務を相当程度犠牲にしている。
(イ) 令和4年度には,司法研修所において,2年次生1,523人及び1年次生1,492人に対する修習を行うことになる。
   そこで,同年度における弁護教官の講義・講評・起案添削等に対する謝金として,必要な予算措置を要求する。

R070623 最高裁の不開示通知書(司法研修所教官室内で共有されているマニュアル)を添付しています。 pic.twitter.com/LseTRc9KHp

— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) June 26, 2025

令和7年度実務協議会(冬季)

目次

1 令和8年2月5日及び6日に開催された実務協議会の資料
2 「家庭裁判所の現状と課題」から分かること
3 資料を利用する際の基準日と法的性格
4 関連記事その他

1 令和8年2月5日及び6日に開催された実務協議会の資料

① 日程表
② 出席者名簿
③ 民事・行政事件の現状と課題
④ 刑事裁判官の支援
⑤ 家庭裁判所の現状と課題
⑥ 裁判所職員総合研修所(総研)の概要
* 令和7年度実務協議会(冬季)に関する文書として一本化した資料も掲載している。

2 「家庭裁判所の現状と課題」から分かること

① 令和6年の家事事件及び人事訴訟事件の新受件数は合計121万7392件であり、内訳は家事審判事件104万2229件、家事調停事件12万8472件等である。
② 夫婦関係調整調停の令和6年平均審理期間は6.8か月、平均期日間隔は1.9か月であり、平成20年の4.3か月、1.4か月から長期化している。
③ 令和6年に終局した人事訴訟事件の平均審理期間は14.8か月である。離婚事件では、財産分与の申立てがある事件が19.2か月、ない事件が12.9か月である。
④ 同資料は、家族法改正への対応、家事調停の合理的な運営、家庭裁判所調査官の専門性、成年後見事件の適正処理、デジタル化等を家庭裁判所の課題として挙げている。
⑤ これらの数値は既済事件等の全国集計であり、個別事件の処理期間又は結果を予測する基準ではない。

3 資料を利用する際の基準日と法的性格

① 「家庭裁判所の現状と課題」は最高裁判所事務総局家庭局作成の司法行政資料であり、裁判所自身の統計及び課題認識を知る一次的資料である。ただし、法令又は判例ではない。
② 資料作成後、令和6年法律第33号による家族法改正は令和8年4月1日に施行された。資料中の「施行に向けた準備」との記述は、令和8年9月現在、そのまま現状を示すものではない。
③ 令和8年法律第45号及び第46号による成年後見制度の見直しは令和8年6月24日に公布されたが、成年後見関係の主要部分は令和8年9月現在未施行である。現行の後見・保佐・補助制度と将来制度を区別する必要がある。
④ 本記事は特定の判例命題を根拠としていないため、判例秘書による判例本文の確認は行っていない。

4 関連記事その他

① 実務協議会は、新たに地方裁判所長、家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長を命ぜられた者を対象に、年2回開催される研修である(裁判官研修実施計画参照)。

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裁判所の定員が減ると,現場の人も減るのか―定員・現在員・欠員・振替・再任用の読み方(AI作成)

目次第1 定員の減少と現場の人数は分けて確認する1 令和9年度概算要求で分かること2 資料の時点と確認範囲第2 六つの数字を区別する1 法定員,予算定員及び配置定員2 級別定数,現在員及び勤務に充てられる人員第3 20人,101人及び71人の関係1 下級裁判所192人減と裁判所全体121人減は両立する2 71人の具体的な内訳3 101人の職種別内訳は別に確認する第4 欠員があれば定員削減の影響はないのか1 判事補の842人,660人及び182人2 直ちに20人の退職を意味しないことと,影響がないことは異なる第5 再任用短時間勤務職員の別表を落とさない1 121人減とは別に示された73人増2 頭数の差と常勤換算を混同しない第6 現場への影響を調べる資料の組合せ1 同じ対象と時点をそろえる2 同時に起きたことだけで原因を決めない第7 今後さらに確認すべき事項1 101人の配分と71人の実施内容2 要求,成立後の措置及び実施後の実態第8 出典・参考資料1 一次資料2 関連するブログ記事
第1 定員の減少と現場の人数は分けて確認する
1 令和9年度概算要求で分かること

裁判所の「定員が減る」という情報だけでは,翌年度に窓口,法廷又は調査業務を担当する職員が何人減るかは分からない。
定員は制度上又は予算上の人数の枠であり,実際に在職する現在員や,勤務時間・休業・応援体制を考慮した業務を担える人数とは区別する必要がある。
他方,現時点で欠員があるからといって,定員の削減が採用や将来の配置に影響しないとも断定できない。

令和9年度一般会計歳出概算要求書等の資料上73頁(PDF77頁)の予算定員表では,裁判所全体が121人減,下級裁判所が192人減,最高裁判所が71人増となっている。
この71人は,下級裁判所から最高裁判所への予算定員の振替である。資料に示された理由は,営繕組織の見直し,共済組合の組織統合・給与等事務の集約及び執務機構整備であり,裁判の現場から71人が実際に転勤することまで示した数字ではない。

2 資料の時点と確認範囲

本記事は,令和8年9月14日時点で確認した法令,最高裁判所の概算要求書及び国会会議録に基づき,数字の読み方を説明するものである。
令和9年度の数字は概算要求段階のものであり,成立予算,改正後の法定員,実施後の配置又は実際の現在員を示すものではない。

予算要求の内容は,最高裁判所作成の原資料で確認する。国会答弁は,答弁された人数や最高裁判所の説明を確認する一次資料であるが,答弁だけで個々の裁判所の勤務実態まで確認できるわけではない。
本記事の数値及び因果関係の説明に判例秘書掲載判例は用いていない。判例秘書の検索・収録本文照合も行っておらず,関係判例が存在しないとの判断を示すものではない。

第2 六つの数字を区別する
1 法定員,予算定員及び配置定員

裁判所職員定員法1条は,下級裁判所の裁判官の員数を,高等裁判所長官,判事,判事補及び簡易裁判所判事に分けて定めている。
同法2条は裁判官以外の裁判所職員の員数を定めるが,執行官,非常勤職員,2か月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を対象から除いている。法定員を,雇用形態等を問わない全職員の総人数と読むことはできない。

数字主に確認できることその数字だけでは分からないこと法定員法律が定める員数と対象範囲各庁の実際の配置,欠員及び勤務状況予算定員予算資料に計上された年度別・組織別の人数の枠実際の在職者数,個人の異動及び稼働時間配置定員通達等による各庁への人数の配分基準日現在の在職者,担当部・係及び応援の実績

法定員は全国の区分に関する数字であり,各庁の人数を確認するには配置定員資料が必要となる。予算定員表についても,対象年度,年度末か年度当初か,裁判官を含むか,再任用職員を含むかを表題と注記で確認する。
裁判官の配置定員と基礎定員・付加定員の具体例は,下級裁判所の裁判官の配置定員(令和7年4月)―平成28年との比較と現在員との違い(AIリライト)で扱っている。

2 級別定数,現在員及び勤務に充てられる人員
数字主に確認できること読み違えやすい点級別定数組織,俸給表,職名及び職務の級ごとの枠実際の在職者数や昇格率とは異なる。職名が複数の官職をまとめる場合もある現在員ある基準日に在職する人数休業・休暇,短時間勤務,兼務等の取扱いは資料ごとに確認が必要である勤務に充てられる人員・時間現在員に勤務時間,休業,応援及び担当業務を対応させた業務遂行能力頭数だけでは計算できず,集計方法を明示する必要がある

級別定数の推移は,裁判官以外の裁判所職員の級別定数に関する最高裁判所事務総局の本音の説明(AI作成)で扱っている。
例えば,ある級の定数が減っていても,その級に在職する職員が同じ人数だけ退職したとはいえない。昇格の難しさを論じる場合も,定数だけでなく候補者数,発令数及び選考条件が必要である。

第3 20人,101人及び71人の関係
1 下級裁判所192人減と裁判所全体121人減は両立する

令和9年度概算要求書の資料上73頁の予算定員表を,令和8年度末と令和9年度末の要求で比較すると,次のようになる。
「判事補20人減」は「下級裁判所全体で20人減」という意味ではない。

組織令和8年度末の予算定員令和9年度末の要求定員増減最高裁判所1183人1254人+71人下級裁判所2万4183人2万3991人-192人裁判所全体2万5366人2万5245人-121人

下級裁判所の192人減は,定員合理化101人,判事補減員20人及び最高裁判所への振替71人の合計である。

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令和9年度概算要求-裁判所職員101人の定員合理化と家裁調査官の増員の有無(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象,基準日及び資料の範囲2 結論第2 令和9年度概算要求の定員1 予算定員表では裁判所全体で121人減の要求である2 101人は俸給表及び級別にしか示されていない3 再任用短時間勤務職員は別表で73人増となっている第3 予算額は要求と要望を分けて読む必要がある1 概算要求本体は前年度予算を下回る2 家裁関係経費とデジタル関係経費は増額要求である第4 令和9年度概算要求書で家裁調査官の増員を確認できない背景として考えられる事情1 直前2年間に合計15人を増員している2 既存人員の事務分担を見直している3 改正家族法施行後の事件動向を見極める段階であった第5 事件統計から増員不要とは断定できない1 家事事件は件数だけでも増加要因がある2 少年事件は長期減少と直近増加の双方を見る必要がある3 203支部のうち調査官配置支部は113支部である第6 公表資料から導ける説明とその限界1 最も説明力のある三つの事情2 定員合理化の官職別理由はなお分からない第7 今後の検証に必要な資料1 令和9年度の最終定員を確認する資料2 家裁調査官の必要人数を検証する資料第8 出典・参考資料1 公文書・国会会議録2 統計・データ
第1 この記事の対象と結論
1 対象,基準日及び資料の範囲

この記事は,最高裁判所が公表した令和9年度概算要求について,裁判所職員101人の定員合理化と公表資料上における家庭裁判所調査官の増員の有無を,令和8年度までの定員措置,国会答弁及び事件統計と照合するものである。
調査の基準日は令和8年9月14日であり,令和9年度予算は概算要求の段階にあるため,政府予算案,成立予算又は令和9年度末の確定定員を扱うものではない。

本記事は生成AIを用いて公表資料を照合し,確認できた事実と資料からの推測を区別して整理したものである。
裁判所書記官の減員人数並びに家庭裁判所調査官の職種別定員の増減及びその理由を直接説明する最高裁判所の公表文書は確認できなかったため,公表資料で確認できる範囲を超えて理由を断定しない。

2 結論

令和9年度概算要求書の資料上73頁の予算定員表から直接確認できるのは,①同表の新規増員は0人,②下級裁判所の定員合理化は101人,③判事補の減員は20人,④下級裁判所から最高裁判所への振替は71人,⑤同表の裁判所全体の差引きは121人減という内容である。
同75頁には再任用短時間勤務職員の73人増が別に示されているため,これらをすべての任用形態における採用者数又は実働人員の増減と読むことはできない。
101人について示されているのは俸給表及び級別の内訳であり,裁判所書記官,家庭裁判所調査官又は裁判所事務官という官職別の内訳ではない。

令和8年度概算要求書には「速記官から家裁調査官へ振替 10人」と明記されている一方,令和9年度概算要求書には同様の職種間振替の記載がない。したがって,公表された令和9年度概算要求書からは家裁調査官の増員を確認できない。
もっとも,この記載の違いだけで,最高裁判所が家裁調査官の追加増員を「見送った」とする政策判断又はその理由まで確定することはできない。

第2 令和9年度概算要求の定員
1 予算定員表では裁判所全体で121人減の要求である

令和9年度一般会計歳出概算要求書等の資料上73頁(PDF77頁)によれば,令和8年度末の予算定員2万5366人に対し,新規増員0人,定員合理化101人減,判事補20人減及び組織間振替を反映した令和9年度末の要求定員は2万5245人である。
最高裁判所は71人増の1254人となる一方,下級裁判所は定員合理化,判事補減員及び最高裁判所への振替によって192人減の2万3991人となる。

71人の振替は,営繕組織の見直し,裁判所共済組合の組織統合及び給与等事務の集約並びに共済組合の執務機構整備に伴うものである。
これは裁判所全体の予算定員を増減させる措置ではなく,組織間で定員枠を移す措置である。
実際に71人が転勤するか,執務場所が変わるか,裁判を担当する部門から移るかは,予算定員表だけでは確認できない。

同頁の71人の内訳は,次のとおりである。
資料に記載された振替の事由と,実施後の人事異動・勤務実態を区別する必要がある。

振替の事由人数内訳上の留意点営繕組織の見直し1人営繕関係の組織見直しに伴うもの共済組合の組織統合及び給与等事務の集約68人専門職6級1人,同5級1人,係長4級6人,主任3級60人共済組合の執務機構整備2人下級裁判所側は課長6級2人,最高裁判所側は専門職6級2人

下級裁判所の192人減は101人+20人+71人であり,最高裁判所の71人増と相殺すると裁判所全体では121人減となる。
「判事補20人減」を下級裁判所全体の減少数と読んだり,裁判所全体の121人減に71人をさらに加えたりしてはならない。

2 101人は俸給表及び級別にしか示されていない

同概算要求書の資料上42頁(PDF46頁)は,101人の内訳を,行政職俸給表(一)4級5人,同2級30人,同1級48人及び行政職俸給表(二)2級18人と記載している。
しかし,同頁には官職名が書かれていないため,行政職俸給表(一)2級の30人をそのまま裁判所書記官30人と読み替えることはできない。

したがって,令和9年度概算要求が「裁判所書記官を何人減らす要求」であるかは,公開された概算要求書だけでは確認できない。

(続きを読む...)令和9年度概算要求-裁判所職員101人の定員合理化と家裁調査官の増員の有無(AI作成)

社会調査・アンケートを法律実務で使うときの読み方―分母・抽出法・複数回答・比較可能性と因果関係(AI作成)

第1 結論とこの記事の対象第2 数字を見る前に確認する六つの事項第3 第17回出生動向基本調査の具体例1 「ネット20.2%」の分母と範囲2 結婚意思に関する数字3 理想・予定・完結を混同しない4 費用と就業継続の数字第4 異なる調査の数字を単純比較しない第5 法律実務での使い方第6 因果関係・属性差・複数回答の注意第7 一次資料への戻り方第8 関連記事第9 出典・参考資料

第1 結論とこの記事の対象

社会調査又はアンケートの数字を法律相談,主張書面又はブログ記事で使うときは,数字の大きさより先に,①誰を対象としたか,②誰が回答したか,③質問文は何か,④分母は何人か,⑤単一回答か複数回答か,⑥比較する調査と条件がそろっているかを確認する必要がある。
回答者全体の割合は,個別当事者の意思,信用性,稼働能力,過失又は因果関係を直接証明するものではない。

この記事は,令和8年9月13日現在の公表資料を基準とし,国立社会保障・人口問題研究所の第17回出生動向基本調査及びこども家庭庁の「若者10万人の総合調査(ウェブアンケート・途中経過)」を具体例として,法律実務での読み方を整理するものである。
報道は論点を知る入口にはなるが,数値及び定義は調査主体が公表した報告書本文で確認する。
令和8年10月3日の加筆では,第17回出生動向基本調査の就業継続の定義と分母を再確認し,国際比較で質問の意味を揃える際の注意を補った。
令和8年10月17日の加筆では,こども家庭庁の調査の正式な名称,結婚意欲の分母及び結婚のハードルに関する設問の意味を原資料で確認し直した。

第2 数字を見る前に確認する六つの事項

第一に,資料が最終報告か中間報告かを確認する。
中間報告では,後の精査,集計方法の変更又は追加分析によって説明が補われることがある。

第二に,質問文と回答選択肢を確認する。
「結婚する意思があるか」,「いずれ結婚するつもりか」,「現時点で結婚したいか」は似ていても同じ質問ではない。

第三に,割合の分母を確認する。
全回答者,未婚者,最近5年間に結婚した夫婦,理想の子ども数を実現できないと答えた夫婦又は妊娠判明時に就業していた妻では,示している母集団が全く異なる。

第四に,対象者の抽出方法を確認する。
無作為に抽出した地区又は世帯を対象とする調査と,民間調査会社に登録したモニターへのインターネット調査では,回答者が集まる仕組みが異なる。

第五に,回答率,無回答,標本誤差,ウェイト付け及び属性構成を確認する。
総務省統計局は,標本調査には標本誤差があり,非回答,調査範囲,測定及び集計等に由来する非標本誤差もあり得ると説明している。
回答者数が多いという一事だけで,母集団を偏りなく代表するとまではいえない。

第六に,過去又は別機関の数字と比較可能かを確認する。
対象年齢,調査時点,抽出枠,質問文,回答形式又は分母のいずれかが違えば,差が社会の変化なのか調査設計の差なのかを切り分けにくい。

第3 第17回出生動向基本調査の具体例
1 「ネット20.2%」の分母と範囲

第17回出生動向基本調査の概要は,過去5年間に結婚した夫婦が知り合ったきっかけについて,「ネット(SNS・ウェブサイト・アプリ等)」が20.2%であったと報告している。
これはマッチングアプリだけの割合ではなく,SNS及びウェブサイト等を含む集計区分であり,当該集計の標本数は570組である。

同じ表には婚姻年次が令和2年から令和6年までの夫婦について18.6%という別の集計もある。
「過去5年間」と「令和2年から令和6年」を取り違えず,本文で採用した分母と集計範囲を示す必要がある。

この20.2%は,オンラインでの出会いが珍しい例外ではないことを示す背景資料にはなる。
しかし,特定の夫婦の婚姻意思,交際実態又は相手方の本人性を証明する数字ではない。

2 結婚意思に関する数字

同調査では,18歳から34歳までの未婚者のうち,「いずれ結婚するつもり」と答えた割合が男性75.1%,女性77.8%であり,「一生結婚するつもりはない」と答えた割合が男性24.0%,女性21.5%であった。
これは調査時点における対象集団の回答分布であり,将来の婚姻を確定的に予測するものではない。

報告書自身も,「一生結婚するつもりはない」と答えた者について,今後考えが変わる可能性を尋ねている。
したがって,調査回答を個人の固定的な意思又は契約上の約束と同視してはならない。

3 理想・予定・完結を混同しない

第17回調査は,夫婦の理想子ども数を2.18人,予定子ども数を1.95人,結婚持続期間15年から19年の夫婦の完結出生児数を1.86人と報告している。
理想は希望,予定は現在の見通し,完結出生児数は婚姻期間で区切った別の集団の実績であり,同じ意味の三つの測定値ではない。

理想と予定の差をそのまま「希望したのに実現できなかった人数」と扱い,完結出生児数との差を特定要因の効果とみなすことはできない。
各指標の対象,時点及び質問の意味を確認した上で,その範囲だけを述べる必要がある。

4 費用と就業継続の数字

予定子ども数が理想子ども数を下回る夫婦に理由を尋ねた設問では,「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が52.9%であった。
これは特定の条件に該当する夫婦への複数回答の結果であり,全夫婦の52.9%が費用だけを原因として子どもを持たなかったことを意味しない。

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SNS・マッチングアプリで知り合った相手との紛争と証拠保全―メッセージ・プロフィール・決済履歴を消す前に(AI作成)

第1 結論とこの記事の対象第2 消える前に保存する資料1 アカウントとプロフィール2 メッセージの前後関係3 送金・決済と現実の行動第3 削除・ブロック・機種変更より先にすること1 LINEで先に保存するもの2 Tinderで先に保存するもの3 事業者の保有と開示を同一視しない第4 スクリーンショットの証拠評価1 証拠として出せるかと信用できるかは別である2 表示・書出し・受信ファイルを区別する3 ハッシュ値が証明する範囲4 改変可能性と具体的な改変を区別する5 アカウントと投稿者の同一性第5 交際中の金銭移動を法的に分類する1 貸金か贈与か2 投資詐欺と不当利得3 独身表示と貞操権侵害4 被害事実の公開は別の紛争を生み得る第6 適法な取得と安全の確保第7 弁護士相談に持参する資料第8 裁判所へ提出するときの整理第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令・裁判所資料2 サービス提供者の公式資料3 判例・文献の確認範囲

第1 結論とこの記事の対象

SNS,マッチングアプリ又はメッセージアプリを介した交際で,貸金,贈与,立替金,投資勧誘,不貞又は婚姻意思をめぐる紛争が生じた場合,最初にすることは,相手を論破することではなく,自分が適法に閲覧できる資料を消える前の状態で保存することである。
プロフィールの一画面又は問題発言だけではなく,アカウントの特定資料,やり取りの前後関係,送金・決済履歴及び現実の行動を同じ時系列に置く必要がある。

この記事は,令和8年9月14日現在の法令及び公表資料を基準として,民事紛争に備える最小限の証拠保全を扱う。
サービスの保存・書出し機能は変更され得るため,実行時には各サービスの最新の公式ヘルプを確認する必要がある。

後記第10のとおり,裁判所ウェブサイトの有界検索に加え,判例秘書の認証済み環境で判決本文を確認した。
スクリーンショットの真正,アカウントと投稿者の同一性,マッチングアプリを介した貸金・贈与,不当利得,投資詐欺及び貞操権侵害について参考となる下級審裁判例があるため,本記事では各裁判例の具体的事情と射程を区別して紹介する。

第2 消える前に保存する資料
1 アカウントとプロフィール

まず,①サービス名,②表示名,③ユーザーID,④プロフィールURL,⑤登録電話番号又はメールアドレスのうち自分に表示されるもの,⑥プロフィール全文,⑦写真,⑧認証済み表示その他のバッジ,⑨表示した日時を保存する。
表示名と写真だけでは,同名の別人,名称変更又はなりすましとの区別が難しいためである。

プロフィールは,一部分だけを切り取らず,サービス名,画面遷移又はURLが分かる画面から問題部分まで連続して撮影する。
長い画面は複数枚に分け,重複部分を残して順序が分かるようにする。

2 メッセージの前後関係

メッセージは,問題となる一文だけでなく,①当事者名又はアカウント,②日付と時刻,③直前と直後の発言,④引用・返信関係,⑤編集又は削除の表示,⑥既読表示の有無が分かる範囲を保存する。
「返す」「あげる」「預かる」といった短い表現の意味は,その前後にある目的,期限,条件及び相手の応答によって変わり得る。

可能であれば,画面のスクリーンショットに加え,サービスの公式機能によるテキスト又はデータの書出しも行う。
ただし,書出しデータにプロフィール写真,削除表示,返信関係又は添付ファイルが含まれないことがあるため,書出しだけで十分とは限らない。

写真,動画,音声又は文書を受信した場合は,アプリ上の表示画面と,取得できる受信ファイルを分けて保存する。
ファイル名を整理するために上書き保存又は再圧縮を繰り返す前に,最初に取得したファイルを読み取り専用の保全用複製として残すのが安全である。

3 送金・決済と現実の行動

金銭紛争では,メッセージだけでなく,①銀行振込明細,②クレジットカード又は決済アプリの利用明細,③商品・航空券・宿泊等の注文番号と領収書,④暗号資産を用いた場合の取引所記録及びトランザクション情報,⑤返済又は返金の履歴を保存する。
カード番号,認証コード及び秘密鍵等,立証に不要な秘密情報は他人へ送付してはならない。

対面で会った事実又は婚姻・交際の実態が問題となる場合は,交通,宿泊,カレンダー,写真の撮影日時,家族・知人との交流及び関係者との連絡を時系列に対応させる。
一つの資料だけで結論を出すのではなく,独立した資料が同じ出来事を指すかを確認する。

第3 削除・ブロック・機種変更より先にすること
1 LINEで先に保存するもの

LINEの標準バックアップは,同じOS間の引継ぎに用いる機能であり,保存対象はテキストメッセージだけである。
LYPプレミアムのプレミアムバックアップは,写真,動画,ファイル及びボイスメッセージを含むリアルタイム保存と異なるOS間の引継ぎに対応するが,会員資格を解約すると保存データが削除されると案内されている。

PINコード又はQRコードを用いる引継ぎで復元できるのは,現行の公式ヘルプ上,直近14日間のトーク履歴である。
また,トーク履歴のテキスト書出しは復元用バックアップではなく,PC版では画面に表示されているトーク履歴だけが保存対象となるため,スクリーンショット,テキスト書出し,画像・動画等の受信ファイル及びバックアップを相互に代用できるものと考えてはならない。

送信取消しと削除は異なり,削除は原則として自分の端末側だけに影響するが,公式ヘルプは,いずれの操作後も元に戻せないと案内している。
LINEアカウントを削除すると全データが削除されて復元できず,アプリのアンインストールだけでもバックアップしていない端末内のトーク履歴を失う可能性があるため,これらの操作より先に必要資料を保存する必要がある。

2 Tinderで先に保存するもの

Tinderでは,個々のメッセージだけを削除することはできず,マッチを解除すると双方のマッチリストから相手と会話が消え,元に戻すことはできない。
マッチが突然消えた画面は,相手がマッチを解除した場合とアカウントを削除した場合のいずれでも生じ得るため,その画面だけから原因を断定してはならない。

個人データのダウンロード機能は,そのアカウントで利用した範囲のメールアドレス,電話番号,プロフィール写真,メッセージ及び設定等を対象とし,申請後に送られるダウンロードリンクは24時間で無効となる。
アカウント削除後はダウンロードできないため,プロフィール及び会話の画面保存と公式データの申請を先に行うべきである。

ID認証又は写真認証のバッジは,対象機能の範囲で身分証明書,プロフィール写真及び実在人物の対応を示す一事情にはなるが,公式ヘルプも身分証明書の真正又は利用者の安全を完全に保証するものではないと注意している。
バッジだけで法律上の氏名,独身であること,説明内容の真実性又は取引の安全性まで立証できるものではない。

3 事業者の保有と開示を同一視しない

令和8年3月31日適用のTinderプライバシーポリシーは,アカウント閉鎖後の安全保持期間とデータの種類に応じた個別の保持期間に加え,法的に有効な保全要請又は手続に対応するため保持期間を延長する場合に言及している。
もっとも,事業者内にデータが保持されていることと,一般利用者又は民事事件の当事者が実際に開示を受けられることは別問題である。

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最高裁判所調査官在職中の配置転換-民事・行政間の実例(AI作成)

目次第1 対象と結論1 検討の対象2 確認できた三つの実例第2 「配置転換」の意味1 裁判所調査官の法的根拠2 民事・刑事・行政の区分3 本記事で用いる「配置転換」第3 民事・行政間の配置変更の実例1 清水知恵子裁判官-行政から民事へ2 池原桃子裁判官-民事から行政へ3 福井章代裁判官-行政上席から民事上席へ第4 資料から分かることと分からないこと1 配置表が示す事実2 配置表だけでは分からない事項3 三例は網羅的な件数ではないこと第5 関連記事1 制度と職務2 年度別の配置表第6 出典・参考資料1 法令2 最高裁判所の事務取扱要領3 最高裁判所各調査官室の配置表4 当ブログの経歴記事
第1 対象と結論
1 検討の対象

本記事は,最高裁判所の裁判所調査官として在職したまま,民事調査官室と行政調査官室との間で担当が変わった実例を扱うものである。
平成27年9月10日,平成28年4月1日,平成29年4月1日,令和2年4月1日及び令和3年4月8日の各配置表並びに当ブログの裁判官経歴記事を,令和8年9月13日に確認した。
最高裁判所調査官への任命及び退任,民事・行政以外の調査官室内の変更並びに上席補佐への指名だけが変わった例は,本記事の対象外である。

2 確認できた三つの実例

確認できたのは,清水知恵子裁判官の行政調査官から民事調査官室上席補佐への変更,池原桃子裁判官の民事調査官から行政調査官への変更及び福井章代裁判官の行政上席調査官から民事上席調査官への変更である。
清水知恵子裁判官及び池原桃子裁判官については,変更の前後に作成された配置表が担当分野の変更を直接示している。
福井章代裁判官については,令和2年4月1日と令和3年4月8日の配置表から前後の担当分野を確認でき,変更日である令和2年6月24日は当ブログの経歴記事で確認できる。

第2 「配置転換」の意味
1 裁判所調査官の法的根拠

裁判所法57条は,最高裁判所,高等裁判所及び地方裁判所に裁判所調査官を置き,裁判官の命を受けて事件の審理及び裁判に関して必要な調査その他の法律で定める事務を担当すると定めている。
本記事でいう最高裁判所調査官は,この裁判所調査官として最高裁判所の事件の調査を担当する者である。

2 民事・刑事・行政の区分

最高裁判所調査官事務取扱要領1項及び2項によれば,調査官及び上席調査官の事務は首席調査官が指定し,担当する事務に応じて民事調査官,刑事調査官又は行政調査官と呼ばれる。
民事調査官は行政事件等を除く民事事件,刑事調査官は刑事事件,行政調査官は行政事件,労働事件,行政処分の違法を理由とする国家賠償請求事件及び裁判官分限事件等の調査に係る事務を担当する。

3 本記事で用いる「配置転換」

本記事の「配置転換」は,最高裁判所調査官という身分を離れずに,配置表上の調査官室又は担当分野が変わることを整理するための表現である。
確認した配置表の表題は「配置の変更」,事務取扱要領の文言は事務の「指定」であり,「配置転換」がこれらの資料上の正式名称であると確認できたわけではない。
したがって,本記事では,人事発令による官職の異動と区別し,担当替え又は調査官室の配置変更という意味で用いる。

第3 民事・行政間の配置変更の実例
1 清水知恵子裁判官-行政から民事へ

平成27年9月10日実施の配置表は,清水知恵子裁判官を行政調査官室に配置している。
これに対し,平成28年4月1日実施の配置表は,同裁判官を民事第三調査官室の上席補佐に配置している。

経歴記事によれば,同裁判官は平成24年4月1日から平成28年3月31日まで最高裁行政調査官,平成28年4月1日から平成29年3月31日まで最高裁民事調査官室上席補佐であった。
したがって,平成28年4月1日に,最高裁判所調査官として在職を続けながら行政分野から民事分野へ担当が変わったことを確認できる。

2 池原桃子裁判官-民事から行政へ

平成28年4月1日実施の配置表は,池原桃子裁判官を民事第二調査官室に配置している。
これに対し,平成29年4月1日実施の配置表は,同裁判官を行政調査官室に配置している。

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訴訟行為の追完(民事訴訟法97条)―控訴期間を過ぎた場合の救済,送達日の誤認,通知メールの見落とし及び事務所内の事務処理(AI作成)

目次第1 本記事の対象1 扱う問い2 結論の要旨第2 不変期間と追完の規定1 不変期間とは何か2 民事訴訟法97条の文言3 追完の仕方第3 最高裁判所の判例に見る追完の成否1 公示送達で訴訟を知らなかった場合2 送達受取人の受領記録の誤りで送達日を取り違えた場合3 訴訟代理人や法律事務所の事務員の過失4 郵便の遅れ第4 システム送達と追完1 システム送達の効力が生じる時2 閲覧等ができない期間の不算入3 通知メールの見落としと追完第5 事務所内の事務処理と自動化の誤り1 判例から読み取れること2 知的財産高等裁判所平成31年3月18日判決(特許法の「正当な理由」)3 事務所で決めておくこと第6 追完の期間も過ぎた場合第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例
第1 本記事の対象
1 扱う問い

本記事は,控訴期間のような不変期間を過ぎてしまった場合の救済である訴訟行為の追完(民事訴訟法97条)を扱う。
追完が認められるのはどのような場合か,送達された日を取り違えた場合やシステム送達の通知メールを見落とした場合はどうなるか,法律事務所内の受付処理や自動化した仕組みの誤りは救済されるかを,条文と最高裁判所の判例に即して整理する。
法令の内容は,令和8年9月13日時点で確認したものである。

2 結論の要旨

追完ができるのは,当事者の責めに帰することができない事由によって不変期間を守れなかった場合に限られ,その事由が消滅した後1週間以内にしなければならない。
最高裁判所は,公示送達のために訴訟が起きたこと自体を知らなかった場合や,所属弁護士会が送達受取人として送達日を実際と違う日で記録していたために訴訟代理人が送達日を取り違えた場合について,責めに帰することができない事由に当たることを認める方向の判断をしている。
他方で,訴訟を起こされたことを知りながら判決の有無を調べなかった場合や,訴訟代理人の過失,同じ法律事務所に常勤する弁護士や書生・事務員による受領・取次ぎの誤りによって期間を守れなかった場合には,追完を認めていない。
したがって,法律事務所が自ら設計し運用する受付処理や自動化の仕組みの誤りは,追完では救われない前提で運用を組むのが安全だと考えられる。

第2 不変期間と追完の規定
1 不変期間とは何か

裁判所は,法定の期間又は裁判所が定めた期間を伸長し又は短縮することができるが,不変期間については伸縮できない(民事訴訟法96条1項)。
不変期間については,遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができるにとどまる(同条2項)。
代表的な不変期間は,控訴期間(判決書等の送達を受けた日から2週間,同法285条),上告期間(同法313条による準用),即時抗告期間(裁判の告知を受けた日から1週間,同法332条)及び再審期間(再審の事由を知った日から30日,同法342条1項)である。

2 民事訴訟法97条の文言
(1) 現行の条文

民事訴訟法97条1項は,「当事者が裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後一週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。ただし、外国に在る当事者については、この期間は、二月とする。」と定める。
同条2項は,「前項の期間については、前条第一項本文の規定は、適用しない。」と定めており,追完のための1週間も裁判所が伸縮することはできない。

(2) 令和8年5月21日の改正で加わった例示

e-Gov法令検索の時点指定で比べると,令和8年5月20日時点の97条1項には「裁判所の使用に係る電子計算機の故障」という文言がなく,令和8年5月21日時点の条文から加わっている。
これは民事裁判手続のIT化に伴う改正であり,同じ言い回しは,訴訟代理人のオンライン提出義務を解除する同法132条の11第3項にも使われている。
もっとも,この文言は例示であり,裁判所側のシステム故障以外の事由でも,当事者の責めに帰することができないものであれば追完の対象になる。

3 追完の仕方

追完は,期間内にすべきであった訴訟行為そのもの(控訴であれば控訴の提起)をすることで行う。
後記第3の2の最高裁判所昭和46年4月20日判決は,原審が「訴訟行為追完の申立もない」として控訴を却下したのに対し,追完事由があることが原判決の認定事実からうかがえる以上,追完事由を主張するかどうかについて釈明を求めるべきであったとして,原判決を破棄している。
実務上は,期間経過後に提出する控訴状等に,責めに帰することができない事由の内容と,その事由が消滅した日(通常は判決を知った日)を具体的に記載し,裏付け資料を添えておくことが考えられる。

第3 最高裁判所の判例に見る追完の成否

以下の判例の多くは,平成8年の民事訴訟法全面改正前の159条(現行97条に当たる規定)の下のものである。

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医療記録の文書送付嘱託―申立ての対象指定、カルテ・画像の回収確認、患者同意と提出拒否(AI作成)

目次第1 医療記録の文書送付嘱託で最初に決めること1 何を証明するための記録かを先に決める2 送付嘱託・調査嘱託・提出命令を区別する第2 申立ての対象を具体的に指定する1 患者・医療機関・診療範囲・種類・期間を組み合わせる2 診療録等と画像を分け,他院作成資料の扱いも明らかにする3 対象期間と全診療科の必要性を説明する4 対象文書の表示を作る際の整理例第3 患者同意と医師の黙秘義務1 個人情報保護法上の第三者提供の例外2 同意の内容と提出を拒む理由を確認する3 名古屋高裁平成25年5月27日決定の射程第4 送付に応じてもらえない場合1 未回答・不保有・一部送付・提出拒否を分ける2 提出命令を検討する際の整理第5 カルテ・画像の回収確認1 送付されたことと必要な資料が揃ったことを分ける2 CD-Rを受け取った後の確認3 費用を三つに分ける4 返還対象を区別する第6 令和8年改正とmintsによる証拠提出1 新旧法と紙・電磁的記録を区別する2 所定形式に変換できないデータと証拠説明書第7 取得後の秘密保護と実務上の確認順序第8 出典
第1 医療記録の文書送付嘱託で最初に決めること

医療記録の文書送付嘱託では,必要な記録を裁判所に取り寄せる対象指定と,届いた資料の不足確認を一続きで考える必要がある。
本記事では,民事訴訟における医療記録の収集について,カルテ・看護記録・画像の指定,患者同意,送付に応じてもらえない場合及び証拠提出までを説明する。
法令・裁判所資料の確認基準日は令和8年9月10日であり,対象の指定例と回収管理表は実務上の提案である。

1 何を証明するための記録かを先に決める

収集の出発点は,傷病名,症状の推移,治療内容,事故との因果関係,既往症との区別など,争点となる具体的な事実である。
まず手元の診断書,診療記録,通院一覧等から不足を整理し,どの医療機関の,いつの,どの種類の記録を追加すればその不足を埋められるかを検討する。
病院にある全資料の取得自体を目的にすると,無関係な病歴まで対象とする問題と,必要な画像等が抽出されない問題の双方が生じ得る。

患者側で既に必要な資料を持っている場合は,取得済み資料の利用や,本人による追加開示の手続を先に検討することが考えられる。
私立病院等の個人情報取扱事業者に対する本人開示については,個人情報保護法33条が保有個人データの開示請求を定め,同法39条はその請求に係る訴えを予定している。

もっとも,民事訴訟法226条ただし書が送付嘱託の対象から除くのは,当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合である。
個人情報保護法33条の対象は保有個人データであり,開示方法の変更や一部不開示があり得るため,病院が本人開示に応じるというだけで同ただし書が当然に適用されるとは考えにくい。

電磁的記録について,民事訴訟法231条の3第1項は,同ただし書の「正本又は謄本の交付」を,情報の内容の全部を証明した書面の交付又は電磁的記録の提供と読み替えている。
本人開示で得られるものが,対象記録の全内容を証明したものか,閲覧又は一部をマスキングした複製にとどまるかを確認する必要がある。
この関係を直接判断した公刊裁判例は確認できず,以上は条文構造に基づく整理である。

なお,国立大学法人や地方独立行政法人等が開設する病院では,個人情報保護法の公的部門の規律が適用される場合がある。
開設主体を確認し,適用条文と交付方法を個別に確認する必要がある。

2 送付嘱託・調査嘱託・提出命令を区別する

民事訴訟法226条は,文書の所持者に送付を嘱託することを申し立てる方法を定めている。
同条ただし書は,当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合を除いている。
既存の診療録等を取り寄せる場面では,まず対象文書とその所持者を特定することになる。

これに対し,同法186条の調査嘱託は,裁判所が官公署その他の団体等に必要な調査を嘱託する制度である。
既存資料の送付を求めたいのか,記録中の不明点について回答を得たいのかを整理して申出の内容を決めるべきであり,送付嘱託の名目で新しい医学意見書の作成まで当然に求められるものとは扱わない。

文書提出命令は,同法220条の提出義務等を前提に,同法223条により裁判所が提出を命ずる手続である。
第三者が文書提出命令に従わない場合の20万円以下の過料は同法225条に規定されているが,この制裁を,送付嘱託に応じなかったというだけの段階へそのまま当てはめることはできない。

第2 申立ての対象を具体的に指定する
1 患者・医療機関・診療範囲・種類・期間を組み合わせる

対象文書の表示は,病院が患者と記録を特定でき,裁判所と相手方が必要性を検討できる内容にする。
次の表は,申立て前に情報を整理するための例であり,全国共通の必須様式を示すものではない。

確認する項目
記載・確認の内容
避けたい不明確さ

患者
氏名・ふりがな・生年月日,必要に応じ住所・患者番号
「本件原告」だけで病院に特定を委ねること

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最高裁判所裁判官会議議事録の不開示範囲-令和8年度(最情)答申第14号(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 答申の結論3 答申の制度上の位置付け第2 裁判所の情報公開制度との関係1 行政機関情報公開法の直接適用ではないこと2 本件がたどった手続第3 不開示が維持された情報とその根拠1 全40文書の署名及び印影2 栄典事務に関する事項3 裁判官に関する人事関係事項4 裁判官の昇給に関する事項5 特定事件に関する事項6 簡易裁判所判事候補者選考に関する事項7 簡易裁判所判事任命名簿の現職欄8 採用,再採用及び候補者の指名に関する事項9 司法修習生考試に関する事項10 司法修習生採用候補者の総数第4 実務上の含意1 公表慣行の有無は職名ごとに検討されること2 人数だけでも不開示となり得ること3 苦情申出の審査対象は原判断の当否であること第5 本答申から確認できないこと第6 関連記事第7 出典・参考資料1 答申2 制度・法令

最高裁判所の裁判官会議の議事録は,開示の申出があっても全部が開示されるわけではない。
令和8年度(最情)答申第14号は,令和5年度の議事録40文書について,情報の種類ごとに不開示の当否を検討している。

第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会の令和8年度(最情)答申第14号(令和8年7月13日答申)を対象とし,その判断の枠組みを整理するものである。
答申の原文と,本記事が引用する各リンク先は,令和8年9月9日を基準に確認した。

2 答申の結論

同答申の件名は「特定年度の最高裁判所の裁判官会議の議事録の一部不開示の判断に関する件」である。
令和5年度の最高裁判所裁判官会議議事録について,最高裁判所事務総長が別紙記載の40文書を対象文書として特定し,その一部を不開示とした判断を,委員会は妥当とした。

同答申は,議事録の全体を不開示としたものではない。
不開示部分を情報の種類ごとに区分し,行政機関情報公開法5条1号,2号イ,6号柱書き又は同号ニに規定する不開示情報に相当するかを,それぞれ検討している。

3 答申の制度上の位置付け

本答申は,最高裁判所の判決又は決定ではなく,最高裁判所に置かれた情報公開・個人情報保護審査委員会の答申である。
苦情が申し出られた場合に最高裁判所が同委員会に諮問し,その答申を尊重して対応する仕組みであるから,裁判例と同じ意味で先例として引用することはできない。

諮問日は令和7年12月4日(令和7年度(最情)諮問第43号),答申日は令和8年7月13日である。
原判断は令和7年7月22日付けでされ,委員会は令和8年3月23日に対象文書を見分した上,同年4月17日,5月22日及び6月19日に審議している。

第2 裁判所の情報公開制度との関係
1 行政機関情報公開法の直接適用ではないこと

裁判所は行政機関情報公開法の対象機関ではなく,司法行政文書の開示は,最高裁判所が定めた裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱に基づいて行われる。
そのため答申も,不開示部分が行政機関情報公開法5条各号の不開示情報に「相当する」かという形で判断しており,同法を直接適用したものではない。

2 本件がたどった手続

本件の開示の申出は取扱要綱記第2に定めるものである。
原判断に対する苦情の申出は同記第11の1に,委員会への諮問は同記第11の3に基づく(司法行政文書開示手続参照)。

第3 不開示が維持された情報とその根拠
1 全40文書の署名及び印影

別紙記載1から40までの各文書について,最高裁判所長官及び秘書課長の署名及び印影が,法5条1号に規定する個人識別情報に相当するとされた。
同じく裁判官会議議事録の署名及び印影を法5条1号に該当するとした先例として,平成30年度(最情)答申第32号(平成30年9月21日答申)がある。

平成30年度第32号の第6・1は,対象議事録の署名・印影の固有の形状に文書の真正を示す認証的機能があり,公にすると偽造・悪用等の支障が生じるおそれがあるという説明を,不合理とはいえないと判断した。これに対し,令和8年度第14号の第6・1は,対象40文書の署名・印影が個人識別情報に相当し,ただし書に該当する事情は認められないと述べており,認証的機能や偽造の理由を詳述していない。両答申の理由付けは区別して読む必要がある。

これは裁判所職員の氏名や署名を一律に不開示とする判断ではない。行政機関との比較も,制度と対象文書の機能を確認した上で行う必要がある。具体的な比較は,情報公開で公務員の氏名の不開示を争う方法で整理している。

(続きを読む...)最高裁判所裁判官会議議事録の不開示範囲-令和8年度(最情)答申第14号(AI作成)

民事訴訟の和解案・和解条項案の作り方-確認・給付・清算・執行のチェックリスト(AI作成)

第1 和解案と和解条項案は分けて作る1 和解案は「何を交換して事件を終わらせるか」を決めるもの2 和解条項案は「合意を実現できる文言」にするもの3 依頼者の承認と代理権を最後に確認する4 条項を作る前に支払原資を確認する第2 条項は七つの層に分けて点検する1 当事者及び対象を特定する2 確認条項又は形成条項を置く3 給付条項は主語,相手方,目的物及び給付文言を明確にする4 期限,方法,費用及び履行順序を決める5 不履行時の効果を独立して書く6 請求放棄,清算及び費用を分ける7 関連する手続及び資料の処理を残さない第3 金銭支払条項の作り方1 一括払いの基本形2 分割払いは合計額と各回を照合する3 和解成立前までの利息及び遅延損害金を忘れない第4 非金銭給付条項の作り方1 明渡し,収去及び撤去2 登記手続3 不作為,秘密保持及び廃棄第5 清算条項は最も慎重に作る1 「誰と誰の間」を明記する2 「何に関する債権債務か」を定義する3 履行と清算の効力発生時期をそろえる第6 裁判所を介した成立方法を選ぶ1 ウェブ会議等を利用する和解2 和解条項案の書面による受諾3 裁判所が定める和解条項第7 最終チェックリスト1 合意内容2 給付及び不履行3 紛争の終了範囲4 事件終了後の実行第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 裁判所公表実務資料4 書籍
第1 和解案と和解条項案は分けて作る

本記事は,民事訴訟の係属中に解決条件を検討し,裁判所へ提出する和解条項案を作成する場面を扱う。
調査の基準日は令和8年9月15日であり,同日に施行されている民事訴訟法,民法及び民事執行法並びに同日までに確認できた裁判所公表資料を基礎とする。

訴訟を提起する前又は訴訟外で紛争を解決するための和解契約書・合意書の設計,履行確保及び債務名義化(公正証書,訴え提起前の和解,民事調停)は,裁判外の和解契約書・合意書の作り方-和解条項と債務名義化で扱う。

1 和解案は「何を交換して事件を終わらせるか」を決めるもの

和解は,当事者が互いに譲歩して争いをやめることを約することによって効力を生ずる(民法695条)。
裁判所は訴訟のどの段階でも和解を試みることができる(民事訴訟法89条)。

和解案は,金額だけを示す書面ではない。
誰が,誰に対し,何を,いつまでに行うか,その代わりに何を免除し,どこまで紛争を終了させるかという解決条件の組合せである。
最初に,①対象となる請求及び反対請求,②支払額その他の給付,③履行時期及び方法,④同時履行又は先履行の関係,⑤不履行時の処理,⑥放棄又は清算の範囲,⑦別訴,保全,担保及び供託等の処理を一枚の条件表に整理するとよい。

2 和解条項案は「合意を実現できる文言」にするもの

訴訟上の和解が電子調書に記録されると,その記載は確定判決と同一の効力を有する(民事訴訟法267条)。
しかし,抽象的な約束が書かれていれば,どのような内容でもそのまま強制執行できるわけではない。

和解条項案では,合意内容を,①確認条項又は形成条項,②給付条項,③期限・条件等の付款,④違反時の条項,⑤請求放棄・清算・費用,⑥関連手続の処理という順序で,特定可能な文言へ変換する。
司法研修所民事弁護教官室の「民事弁護実務の基礎~はじめての和解条項~」は,まず和解対象の権利関係を定め,給付請求権の存在を明らかにする確認条項又は形成条項を置いた後に,給付条項を置くという論理的順序を示している(6頁~7頁)。

3 依頼者の承認と代理権を最後に確認する

訴訟代理人が和解をするには特別の委任が必要である(民事訴訟法55条2項2号)。
実務上は,委任状に和解の特別授権があることだけでなく,金額,支払時期,非金銭条項,清算範囲及び不履行時の効果について,依頼者が最終案を理解して承認したことを確認する。
法人その他の団体では必要な内部決裁の有無を確認し,訴訟当事者でない保証人,共同債務者その他の者にも義務又は利益を及ぼすのであれば,その者を合意の当事者又は利害関係人として参加させる必要があるかを検討する。

依頼者の承認を確認するときは,「金額は承認済みだが,清算範囲は確認中」のように,条件ごとの状態を区別して記録するとよい。
次の表は,交渉中の条件と最終条項案を対応させるための内部確認例である。

条件の区分対応する条項と確認事項承認済み条項番号,承認した金額・期限・非金銭条件,案の版,確認日時・記録の所在未承認清算範囲,分割条件,秘密保持等のうち未確認の事項,追加説明と確認期限変更された条件裁判所又は相手方からの修正内容,旧案との相違,依頼者の再確認の要否最終照合依頼者が承認した条件と,成立させる条項案・別紙・計算表の一致

書記官から調整の連絡があったことと,依頼者が条件を承認したことや和解が成立したことは区別する。
平成12年の指針の解説が説明する和解条件の聴取・条項案の点検(紙面13頁・20~22頁,PDF18頁・25~27頁)を参考にしつつ,成立方法は現行法と個別の手続に即して確認する。

4 条項を作る前に支払原資を確認する

金銭条項では,請求額又は合意額を決める前に,義務者が期限までに何を原資として支払うのかを確認する。
資産の名目額だけでなく,①現在の時価,②換価可能性,③所有・処分権限,④担保債務・税金・売却費用控除後の正味額,⑤資金化に要する期間,⑥支払期限との関係を分けて点検する。

債務者側は,残高証明,証券資料,不動産査定,ローン残高,融資審査資料及び月次収支など,支払計画を裏付ける資料を準備する。
債権者側は,表示された資産額だけでなく,名義,基準日,担保,直近の異動及び任意履行がなかった場合の執行対象を確認する。

資産別の確認方法,財産分与及び代償分割との違いは,資産額と「実際に払える額」は違うを参照されたい。

第2 条項は七つの層に分けて点検する
1 当事者及び対象を特定する

最初の層は,誰と誰の間の,どの権利関係を解決するかの特定である。
事件番号及び訴訟物だけで足りるか,契約日,事故日,物件目録,対象製品,対象行為又は債権発生原因まで書く必要があるかを検討する。
当事者が複数いる場合は,全員の関係を一括して書かず,原告と各被告,被告相互,当事者と利害関係人のどの関係を処理するのかを分ける。

2 確認条項又は形成条項を置く

既に存在する権利義務を明らかにする場合は「支払義務があることを認める」等の確認条項を用いる。
和解によって契約を終了させ,所有権を移転し,債務を免除するなど法律関係を変動させる場合は,その変動を端的に示す形成条項を用いる。

賃貸借契約を和解時に終了させるなら「合意解約したことを確認する」ではなく,原則として「合意解約する」と現在形で書く。
終了日は,賃料と賃料相当損害金の境界にもなるため明示することが多い(前記司法研修所教材18頁~21頁)。

3 給付条項は主語,相手方,目的物及び給付文言を明確にする

金銭なら金額,物なら物件,行為なら行為内容を特定し,義務者と権利者を明示する。
給付文言は「支払う」「明け渡す」「登記手続をする」のように端的に書く。
前記司法研修所教材は,金銭給付について「支払う」と明記し,「支払うこととする」「支払うものとする」「支払わなければならない」という表現は,給付意思が不明確となって強制執行できない可能性があるとしている(7頁~8頁)。

4 期限,方法,費用及び履行順序を決める

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裁判所の「不存在」答申の読み方―未作成・非保有・一部開示の区別(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と調査の基準日2 最初に確認すべき結論3 答申の制度上の位置付け第2 「不存在」に含まれる四つの経過1 対象文書を作成又は取得していない場合2 探索しても申出時に保有していない場合3 作成後に廃棄され,申出時には保有していない場合4 一部の文書を特定し,残部だけ保有していない場合第3 原答申を読む順序1 申出文書の範囲を確定する2 原判断の説明と委員会の判断を分ける3 探索の対象,方法及び時点を確認する4 件名索引は入口として使う第4 代表例の対照表1 同じ修習日誌でも保有主体で経過が違う2 存否応答拒否は「不存在」の認定ではない第5 文書作成義務との関係1 現行の管理通達2 個別答申との対応第6 関連する資料第7 出典・参考資料1 現行制度・管理資料2 情報公開答申

最高裁判所の情報公開答申で用いられる「不存在」は,申出対象の文書が一度も作成されなかったことだけを意味する表示ではない。
原答申を読むと,未作成・未取得,申出時の非保有,作成後の廃棄,一部の文書を特定した上での残部非保有という異なる経過が含まれている。

第1 この記事の対象と結論
1 対象と調査の基準日

本記事は,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が公表した,裁判所の司法行政文書の開示に関する答申の読み方を説明するものである。
第2以下の従来例と制度の整理は令和8年9月9日を基準とし,令和8年10月15日に修習日誌に関する令和元年度・令和5年度の答申を補足した。

同じ文書名でも,保有主体,対象期間及び非保有の理由が異なることがある。
文書の内容を開示しないこと,文書を保有していないこと及び存否を答えないことは分けて読む必要がある。

2 最初に確認すべき結論

答申の件名に「不存在」又は「不存在等」とあっても,その表示だけから,対象情報が一度も文書化されなかったとは判断できない。
申出文書の定義,原判断の理由,探索の対象と方法,作成後の廃棄の有無,別の文書を特定又は開示しているかを原答申本文で確認する必要がある。

3 答申の制度上の位置付け

最高裁判所の司法行政文書開示手続は,行政機関情報公開法ではなく,最高裁判所の取扱要綱に基づく制度である。
開示申出を受けた裁判所は文書を探索し,全部開示,全部不開示又は一部不開示の判断を通知する。

最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会は,平成27年7月1日に設置された外部有識者3人による諮問機関である。
不開示等の判断に対する苦情が申し出られた場合,最高裁判所は同委員会に諮問し,答申を尊重して苦情申出への判断を行うため,答申は判決又は決定とは異なる。

第2 「不存在」に含まれる四つの経過
1 対象文書を作成又は取得していない場合

第1は,申出で特定された種類の文書を作成又は取得していないと説明された場合である。
平成27年度(最情)答申第7号は,視察基本日程案の作成に用いる事務処理要領等について,視察ごとに個別に検討しており,そのような文書を作成又は取得していないとした原判断を妥当とした。

2 探索しても申出時に保有していない場合

第2は,申出を受けて関係するファイルや部署を探索したものの,対象文書が見当たらず,申出時に保有していないと判断された場合である。
平成29年度(最情)答申第47号では,昭和46年4月の司法修習生罷免に係る裁判官会議議事録について,関係ファイルと部署の探索に加え,委員会も昭和44年から昭和48年までのファイルを見分したが,該当議事録は確認されなかった。

この類型で答申が直接示すのは,確認された探索の範囲で申出時の保有が認められないということである。
それだけで,過去の全時点における文書の不存在まで証明されたことにはならない。

3 作成後に廃棄され,申出時には保有していない場合

第3は,関係する文書が過去に作成されたことはうかがえるが,申出時までに廃棄されていた場合である。
平成30年度(最情)答申第40号は,記録謄写業務に公募制を採用した経緯が分かる文書について,平成22年より前の通達改正記録は廃棄され,保有する記録等を探索しても対象文書が見当たらなかったとの説明を踏まえた。

この場合の「不存在」は,当初から文書が作成されなかったことではなく,開示申出の時点で対象文書を保有していないことを示す。

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民事訴訟の鑑定事項書の作り方-鑑定人が答えやすく裁判所が評価できる質問設計(AI作成)

目次

第1 鑑定事項書の位置付け1 当事者が案を出し、裁判所が鑑定事項を定めること2 鑑定申出書、私的鑑定書及び専門委員との違い第2 鑑定事項書を作る前の三つの整理1 専門的判断がなければ決められない事実を特定すること2 前提事実を三つに分けること3 必要な専門分野と人数を先に確かめること第3 鑑定事項書の基本構成1 事件表示、鑑定の目的及び資料2 前提事実と資料の対応を示すこと3 鑑定事項を階層化すること第4 答えやすく検証可能な質問文の作り方1 対象、時点及び判断基準を明記すること2 観察、原因、評価及び代替仮説を分けること3 法的結論を丸ごと委ねないこと4 方法、根拠資料、不確実性及び回答限界を求めること第5 鑑定事項書の汎用書式例1 冒頭部分のひな形2 鑑定事項のひな形3 質問文の書換え例第6 鑑定人候補者との協議と資料の渡し方1 鑑定事項を確定する前に実行可能性を確認すること2 記録全体ではなく、質問に対応する資料地図を渡すこと第7 鑑定書提出後の補充と質問1 補充意見を求める場合2 口頭で質問する場合第8 裁判例から分かる鑑定事項と鑑定書の関係1 甲府地方裁判所平成17年9月16日判決の鑑定事項2 裁判所が鑑定結果を採用しなかった理由第9 提出前のチェックリスト1 質問と資料の点検2 提出を急がず協議すべき場合第10 関連記事第11 出典・参考資料1 法令及び最高裁判所規則2 裁判例3 裁判所の答申、報告書及び運用資料

第1 鑑定事項書の位置付け

1 当事者が案を出し、裁判所が鑑定事項を定めること

鑑定事項書は、民事訴訟で鑑定人に何を判断してもらうかについて、当事者が具体的な案を示す書面である。
民事訴訟規則129条1項は、鑑定の申出をするときは、やむを得ない事由がある場合を除き、同時に鑑定を求める事項を記載した書面を提出しなければならないと定めている。
もっとも、最終的に鑑定事項を定めるのは裁判所であり、同条4項は、裁判所が相手方の意見を考慮して鑑定事項を定め、その内容を鑑定人に送付するとしている。

民事訴訟法213条によれば、鑑定人を指定するのも裁判所である。
したがって、鑑定事項書は、当事者が選んだ専門家に一方的な結論を求める依頼書ではなく、裁判所と相手方の検討を経て中立な鑑定人に渡される質問案として作る必要がある。

2 鑑定申出書、私的鑑定書及び専門委員との違い

鑑定の申出では、鑑定の必要性や立証趣旨を説明する部分と、鑑定人への質問を具体化する部分を分けると理解しやすい。
鑑定事項書が主として後者を担うのに対し、鑑定書は、確定した鑑定事項に対して鑑定人が意見と根拠を示す書面である。

当事者が依頼した専門家の意見書である私的鑑定書と、裁判所が指定した鑑定人による鑑定も区別される。
この区別については、文書鑑定(AIリライト)で説明している。

専門委員は、専門的知見に基づく説明によって手続を補助する者であるが、その説明自体は証拠資料ではない。
これに対し、鑑定人は裁判所が定めた鑑定事項について意見を述べ、その意見は証拠資料となると知的財産高等裁判所の専門委員制度と鑑定人制度の説明に明記されている。
専門委員制度については、裁判所の専門委員制度-専門的知見による手続補助と鑑定との違い(AI作成)も参照されたい。

第2 鑑定事項書を作る前の三つの整理

1 専門的判断がなければ決められない事実を特定すること

最初に、要件事実や争点をそのまま鑑定事項へ移すのではなく、裁判所の法的判断と専門家の専門的判断との境界を引く必要がある。

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裁判所の令和6年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象,基準日及び資料の対象期間2 結論3 この記事が扱わない範囲第2 4つの数字を並べる1 総額2 項別に見ると像が変わる3 決算による検算第3 補正予算で積んだ金は,その年度には使われていない1 「裁判手続等のデジタル化等」169億円2 目レベルで見た繰越3 繰越の可否を分けるのは繰越明許費の指定である4 3つの金額を混同しない第4 満額で計上されたことと,使われたことは別である1 (項)裁判費の目別執行率2 満額の目は令和7年度から崩れる3 低執行は「どの目」を決めるが「いつ」を決めていない第5 流用の理由は決算報告書に書かれている第6 歳入は予算の1.85倍である第7 定員1 総数と事務官の増員2 定員法の説明と予算の説明第8 同じ表を自分で作る手順第9 未確認事項第10 出典・参考資料1 法令2 予算書,決算書及び概算要求書3 国会会議録4 関連記事
第1 この記事の対象と結論
1 対象,基準日及び資料の対象期間

本記事は,裁判所所管の令和6年度予算について,概算要求額,当初予算額,補正後予算額及び決算額という4つの数字を同じ表に並べ,金額がどこで動いたかを確認するものである。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,資料の対象期間は令和2年度から令和8年度までである。
中心に置くのは令和6年度であり,前後の年度は比較のために用いる。
金額は,特記しない限り千円単位である。
本記事の数値は,裁判所ウェブサイトに掲載された公式PDFと,財務省「予算書・決算書データベース」のCSVから取得したものであり,条文はe-Gov法令検索の本文によっている。
記事の作成にはAIを用いている。

2 結論

令和6年度の概算要求等額は340,893,828千円であり,当初予算額は330,979,009千円である。
要求等額に対する当初予算額の割合は97.09%となる。
しかし,この2つだけを比べて「約3%削られた」と書くと,二重に不正確になる。

第1に,その年度の予算は当初予算では終わらない。
令和6年度は補正予算第1号で23,470,369千円が追加され,補正後予算額は354,449,378千円になった。
これに前年度からの繰越13,238,876千円が加わり,予算現額は367,688,254千円である。

第2に,実際に支出された額は332,296,053千円である。
概算要求等額と比べれば97.48%,補正後予算と比べれば93.75%,予算現額と比べれば90.37%になる。
分母をどこに置くかで数字の印象は逆転する。

そして,本記事が最も強調したいのは次の点である。
要求どおり満額で計上された経費が,そのまま使われているとは限らない。
(項)裁判費のうち保証金は,令和6年度も1円も支出されていない。

3 この記事が扱わない範囲

裁判所の予算がどのような手続で決まるか,財政法19条の附記(二重予算)が令和2年度から令和8年度まで0件であること,及び8月末という送付期限の根拠については,裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことで扱っている。
本記事は,その手続を前提として,令和6年度の金額が実際にどう動いたかだけを追う。

したがって,要求額と予算額の差についても,本記事では「内閣が減額した」とは書かない。
財政法19条の附記が0件である以上,公表資料から減額の事実を確認することはできず,他方で最高裁判所が納得していたことも確認できないからである。
本記事では,この差を単に「差」と呼ぶ。

第2 4つの数字を並べる
1 総額

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裁判所の令和4年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象,調査の基準日及び資料の対象期間
2 四つの数字は別のものである
3 結論

第2 四系列の全体像

1 総額の比較
2 決算は三つに分かれる
3 二つの等式で拾い落としを検算する

第3 概算要求から当初予算へ

1 項別の充足率
2 主要経費別の充足率
3 落ちたのは三件だけである

第4 当初予算から補正予算へ

1 補正は二本あり,裁判所所管は第二号だけである
2 補正第二号の中身
3 補正で付いた金は年度内に使われていない

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裁判所の令和5年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象,基準日及び資料の対象期間2 四つの系列3 この記事で新たに示すこと第2 決算はどの欄でできているか1 金額の欄2 執行率92.89%第3 (項)別の執行率1 執行率は項によって割れる2 裁判所予備経費は全額が不用である第4 補正予算で積んだ35億円は,その年度に1円も使われていない1 令和5年度の補正は第1号だけである2 繰越の区分で確定する3 繰越明許費が年度をまたいで連鎖している4 退職手当が32億円繰り越された理由第5 (目)別に見ると実務に近い数字が出る1 翌年度繰越がある目は六つだけである2 不用額の大きい目3 刑事補償金は,4年続けて大きく余った後に一転している4 委員手当は,予算額が動かないまま不用率だけが振れる5 (目)別の不用理由は公表されていない第6 この記事の数値をどこから取ったか第7 未確認事項第8 出典・参考資料1 法令2 裁判所が公表する予算・決算資料3 財務省が公表する予算書・決算書4 関連記事
第1 この記事の対象と結論
1 対象,基準日及び資料の対象期間

この記事は,裁判所所管の一般会計について,令和5年度の①概算要求,②当初予算,③補正予算及び④決算の四つを並べ,どこで金額が動き,最終的にいくらが使われずに終わったのかを整理するものである。
対象期間は令和5年度(令和5年4月1日から令和6年3月31日まで)であり,経年の比較に必要な範囲で令和2年度から令和6年度までの決算を用いる。
調査の基準日は令和8年9月6日であり,数値は同日から翌7日までに取得した。
本記事は,公表資料をAIで機械的に集計し,その結果を整理したものである。

金額は原則として千円単位で示し,決算の欄については財務省の原表に合わせて円単位で示す。
(項)別及び(目)別の数値は,裁判所ウェブサイトの「決算の概要」には掲載されていないため,財務省の歳出決算報告書によった。

裁判所の予算がどのような手続で決まるのか,内閣が最高裁判所の要求を減額したときにどうなるのか(二重予算),そして令和2年度から令和8年度まで財政法19条の附記が0件であることについては,別の記事で詳しく扱っている。
本記事は手続論には立ち入らず,令和5年度に実際に動いた金額を追うことに絞る。
手続の全体像は裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことを参照されたい。

2 四つの系列

令和5年度の裁判所所管の金額は,次のとおり動いた。

系列金額(千円)概算要求等額に対する割合① 概算要求等額329,816,061-② 当初予算額322,216,78097.70%③ 補正後の改予算額326,876,43799.11%④ 決算(支出済歳出額)309,396,12293.81%

①の概算要求等額は,要求本体321,123,794千円に「重要政策推進枠」の要望額8,692,267千円を加えたものである。
要望額は要求本体の枠外に置かれるものであるから,両者を区別せずに一つの「要求額」として扱うと,充足率が実際より低く見える。

②と①の差は7,599,281千円である。
もっとも,この差を「内閣が最高裁判所の要求を削った」と書くことはできない。
理由は前記の別記事で述べたとおりであり,本記事では差があるという事実の記述にとどめる。

3 この記事で新たに示すこと

要求と当初予算だけを並べると,令和5年度は要求の97.70%が付いた年ということになる。
しかし決算まで見ると,実際の支出は要求の93.81%にとどまる。
そして,使える予算333,066,464千円のうち,13,238,876千円が翌年度に繰り越され,10,431,466千円が使われずに終わっている。

とりわけ,補正予算で(項)裁判費に積まれた3,555,186千円は,その年度に1円も執行されていない。
この金額は,決算に記載された財政法14条の3第1項の繰越明許費の額と1円単位で一致する。

第2 決算はどの欄でできているか
1 金額の欄

決算の金額の欄は,次の九つである。

区分金額(円)歳出予算額(=補正後の改予算額)326,876,437,000前年度繰越額6,190,027,235予備費使用額0流用等増△減額0予算決定後移替増△減額0歳出予算現額333,066,464,235支出済歳出額309,396,122,470翌年度繰越額13,238,876,033不用額10,431,465,732

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裁判所の令和8年度予算-概算要求,暫定予算,当初予算及び補正予算の突合(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象,調査の基準日及び資料の範囲2 結論第2 四つの数字1 令和8年度に作られた予算書2 四つの数字3 「要求額」という欄は三か所にあり,意味が違う第3 概算要求と当初予算の突合1 項別の突合2 差が集中している項(1) 差の約9割は(項)裁判費にある(2) (項)下級裁判所は要求を上回っている(3) (項)裁判所施設費は要望を含めるかで20ポイント動く(4) (項)裁判所予備経費は裁判所法83条2項による3 要望枠の扱い第4 暫定予算1 期間は11日間である2 目別の配分は日割りではない第5 補正予算1 裁判所所管は計上されていない2 補正の中身3 補正に載らない年は珍しくない第6 「削られた」と書けない理由1 前年度補正が要求の中身を先に措置している(1) (目)裁判庁費でみた場合(2) 政策区分でみた場合2 二つの読み方(1) 一体で措置したという読み方(2) 当初予算の額を抑えたという読み方(3) どちらとも決められない3 財政法19条の「減額」第7 確認できていないこと第8 関連する記事1 同じ型で各年度を扱った記事2 資料の読み方を扱った記事出典1 法令2 予算書及び予算参考書類3 最高裁判所が公表した資料4 国会会議録

第1 この記事の対象と結論

1 対象,調査の基準日及び資料の範囲

本記事は,令和8年度の一般会計のうち裁判所所管について,概算要求,暫定予算,当初予算及び補正予算の四つを同じ土俵で並べ,どこに差が生じているかを確認するものである。
調査の基準日は令和8年9月7日であり,同日に財務省の予算書・決算書データベース及び裁判所ウェブサイトで確認できた資料に基づく。
金額は,特に断らない限り千円単位である。

決算は対象外である。
財政法39条は歳入歳出決算を翌年度の11月30日までに会計検査院へ送付すべきものとし,同40条1項は会計検査院の検査を経た決算を翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする。
この常例によれば令和8年度の決算が国会に提出されるのは令和10年の常会であるが,同項は「常例とする」と定めるにとどまり,提出時期を条文から確定することはできない。
いずれにせよ令和8年度は基準日の時点で年度の途中であり,執行額を確認できない。

なお本記事は,生成AIを用いて公表資料を突合し,その結果を整理したものである。

2 結論

令和8年度の裁判所所管について,公表資料から次の四点が確認できる。
①概算要求は要求359,169,102千円であり,「重要政策の推進」のための要望5,839,315千円を加えた要求・要望額は365,008,417千円である。
②当初予算は349,473,805千円であり,要求に対して97.3%,要求・要望額に対して95.7%,令和7年度当初予算に対して104.3%である。
③令和8年度には暫定予算があり,その期間は令和8年4月1日から4月11日までの11日間である。
裁判所所管は21,727,136千円である。
④令和8年度補正予算(第1号)に,裁判所所管は計上されていない。

もっとも,②の差を「概算要求が削られた」と評価することはできない。
令和7年度補正予算(第1号)が,令和8年度の概算要求に含まれていた事項を先に措置しているからである。
(目)裁判庁費についていえば,令和7年度補正の追加12,508,863千円と令和8年度当初予算26,200,292千円を合わせると38,709,155千円になり,令和8年度の要求39,402,151千円の98.2%に達する。

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裁判所の令和2年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象,基準日及び資料2 結論-4つの数字と,分母によって変わる割合3 この記事が扱わない範囲第2 4つの数字を並べる1 総額2 項別に見る3 検算第3 最終予算が当初予算を下回った年1 補正は3回あるが,裁判所所管は2回2 補正第3号は差引で減額である3 海外派遣の停止が数字に出ている4 9兆円の予備費が使われた年に,裁判所には配分がない第4 満額で計上されても,使われるとは限らない1 裁判費の13目で要求と予算が違うのは1目だけである2 執行率は0.0%から99.99%まで割れる3 この形は令和7年度から崩れる第5 要求の組み方-本体を絞って要望枠で取りに行く1 要求本体は前年度予算を下回っている2 要望枠の3事業3 要望枠が乗ったことが見える箇所第6 デジタル化の予算は当初予算ではなく補正で付いた第7 検察審査会は止まっていた1 要求と予算が一致したまま4分の1が不用になった2 目別の執行率3 「法定の回数を割った」とは書けない第8 事故繰越-司法修習の遅れ1 繰越の法的根拠別の内訳2 事故繰越は6目すべてが司法修習関係である第9 不用額の理由は国が決算に書いている1 決算に記載された4項の理由2 検察審査費の理由は歳出決算報告書にある第10 手続の時系列1 令和2年度の各段階の日付2 決算が国会で議決されるまでに2年6か月かかっている3 「概算要求」の公表日と送付期限は別の日である4 令和3年度予算書の「前年度予算額」欄の正体第11 実務に使える数字1 日当の積算単価は上限額に比例しない2 無罪事件の費用補償の内訳3 指定弁護士の手当には幅がある4 補正予算まで見ないと年度の姿が分からない第12 定員-裁判官は振替で,職員は17人の減である第13 未確認事項第14 出典・参考資料1 法令2 最高裁判所規則3 概算要求書及び各目明細書4 予算書,決算及び統計5 官報及び閣議了解6 国会会議録7 議案情報8 関連記事第1 この記事の対象と結論1 対象,基準日及び資料

対象は日本の一般会計のうち裁判所所管であり,対象年度は令和2年度である。
比較のため令和元年度及び令和6年度から令和8年度までを補助的に用いる。
金額は,特記しない限り千円単位である。
「決算」は支出済歳出額を指す。

本記事の調査の基準日は令和8年9月6日であり,法令の適用時点も同日である。
条文はいずれも同日にe-Gov法令検索で確認した本文による。
令和2年度の予算及び決算は確定した過去の記録であるから,本記事の金額は同日以降に変動しない。

本記事の金額は,裁判所ウェブサイトの令和2年度予算の頁に掲載された概算要求書及び各目明細書,裁判所の決算の頁に掲載された決算の概要,財務省の予算書・決算書データベースの令和2年度予算書・決算書関連情報が公表する予算書,決算及び科目別内訳のCSV並びにインターネット版官報を直接取得して算出したものである。

2 結論-4つの数字と,分母によって変わる割合

令和2年度の裁判所所管について,概算要求から決算までを並べると次のようになる。
概算要求等額は329,283,576千円,当初予算は326,624,181千円,補正後の最終予算は326,294,809千円,決算(支出済歳出額)は312,451,170千円である。

「要求のどれだけが認められたか」という問いには,一つの答えがない。
当初予算を概算要求等額で割ると99.19%になる。
決算を概算要求等額で割ると94.89%,最終予算で割ると95.76%,前年度からの繰越を含む予算現額で割ると94.12%になる。
どの分母を選ぶかで印象が変わるため,割合を示すときは分母を先に決めておく必要がある。

前年度との比較で見ると,別の顔が出る。
概算要求等額は前年度予算より3,709,268千円多いのに対し,当初予算の増は1,049,873千円にとどまる。
増額要求のうち認められたのは28.3%である。

3 この記事が扱わない範囲

裁判所の予算が内閣に送付される手続,財政法19条の附記,二重予算の仕組み,8月末という期限の根拠及び附記が0件であることの読み方は,別の記事で詳しく扱っている。
本記事はそれらを繰り返さず,令和2年度の金額そのものを追う。
手続の側については裁判所の予算は誰が決めているのかを参照されたい。

なお,本記事でも「削られた」「査定された」という表現は用いない。
内閣が最高裁判所の歳出見積を減額したのであれば歳入歳出予算にその詳細が附記されるところ,令和2年度の当初予算書及び補正予算書にその附記は1件もないからである。
もっとも,補正予算(第1号)には裁判所所管の計上そのものがない。
裁判所が一行も現れない予算書に裁判所の附記が無いことは,減額が無かったことを示さない。
附記の有無を語れるのは,裁判所所管の計上がある当初予算書と補正予算(第2号)及び(第3号)である。
本記事は,要求額と予算額の差を差として記述するにとどめる。

第2 4つの数字を並べる1 総額系列金額(千円)概算要求等額329,283,576当初予算326,624,181最終予算(補正第3号後)326,294,809(予算現額)331,960,372決算(支出済歳出額)312,451,170

概算要求等額の内訳は,概算要求本体321,099,826千円に「新しい日本のための優先課題推進枠」の要望8,183,750千円を加えたものである。
前年度からの繰越額は5,665,563千円,翌年度への繰越額は10,944,695千円,不用額は8,564,506千円である。

分母を変えると,割合は次のように動く。

比較割合当初予算÷概算要求等額99.19%決算÷概算要求等額94.89%決算÷最終予算95.76%決算÷予算現額94.12%2 項別に見る項要求本体当初予算最終予算決算決算÷最終最高裁判所80,347,70780,917,36278,977,11375,069,73795.05%下級裁判所206,932,648208,654,957207,217,212204,135,51898.51%検察審査費302,934302,934302,934228,88775.56%裁判費20,241,12919,716,45421,133,38018,022,41185.28%裁判所施設費13,267,40817,024,47418,656,17014,994,61580.37%裁判所予備経費8,0008,0008,00000.00%合計321,099,826326,624,181326,294,809312,451,17095.76%

要求の列を「要求本体」としているのは,要望枠を項別に配分できないからである。
要望一覧は「暮らしの安全・安心」「防災・減災」「裁判手続等のIT化の推進」という事業単位で記載されており,項への割付けは記載されていない。
このうち裁判所施設費については,要求本体13,267,408千円に要望「防災・減災」4,462,683千円を加えると17,730,091千円となり,概算要求の概要の「裁判所施設の整備」17,730百万円と一致するから,対応を確認できる。
他の2事業については同様の確認ができていない。

要求本体を下回った項は,裁判費だけである。
検察審査費と裁判所予備経費は,要求額と当初予算額が1円も違わない。

項別の決算額を合計すると312,451,168千円となり,表示値312,451,170千円と2千円ずれる。
決算の「計数は単位未満を切り捨てた」という注記によるものである。

3 検算

財務省の決算の科目別内訳から裁判所所管の79行を合算すると,次の2つの恒等式がいずれも1円の差なく成立する。

歳出予算額326,294,809,000円に前年度繰越額5,665,563,000円を加え,予備費使用額,流用等増減額及び予算決定後移替増減額がいずれも0円であるから,歳出予算現額は331,960,372,000円となる。

歳出予算現額を構成する9つの欄と,この2本の恒等式そのものは,決算はどの欄でできているかで扱っている。
本記事は,令和2年度の裁判所所管について値が閉じることの確認にとどめる。

流用等増減額の0円は,(目)の段階の4組8件が相殺された結果である。

減った目増えた目金額(円)決算報告書に記載された理由(項)最高裁判所(目)国家公務員共済組合負担金(目)公務災害補償費22,813,000障害補償年金等に不足を生じたため(項)最高裁判所(目)職員旅費(目)赴任旅費40,652,000赴任旅費の支給額が増加したため(項)下級裁判所(目)職員基本給(目)児童手当4,950,000支給対象児童が増加したため(項)裁判費(目)委員等旅費(目)特別送達料3,452,000召喚状等の送達件数が増加したため

4組とも同じ項の中で閉じており,増減の合計は0円である。
令和2年度の裁判所所管には項の間の移用がない。

上の表の理由は,歳出決算報告書の備考欄から引いた。
理由がどの冊に載るかは,決算に書かれている「理由」の探し方で扱っている。

支出済歳出額312,451,170,774円に翌年度繰越額10,944,695,125円と不用額8,564,506,101円を加えると,同じく331,960,372,000円となる。

歳出予算額326,294,809,000円は,補正予算(第3号)各目明細書の改予算額と一致する。
支出済歳出額312,451,170,774円は,裁判所ウェブサイトが公表する令和2年度決算の312,451,170千円(千円未満切捨て)と一致する。

第3 最終予算が当初予算を下回った年1 補正は3回あるが,裁判所所管は2回

令和2年度の一般会計には補正予算が第1号から第3号まである。
もっとも,裁判所所管に計上があるのは第2号と第3号だけである。

補正予算(第1号)の予算書281頁には,「裁判所」「最高裁判所」「下級裁判所」「衆議院」「参議院」「会計検査院」のいずれの語も現れない。
同じ予算書で「法務省」は25頁に現れるから,抽出の漏れではない。
同号の歳出の科目別内訳は884行あるが,そのうち裁判所所管の行は0行であり,内閣及び13の府省庁だけで構成されている。

補正予算(第2号)各目明細書の「令和2年度成立予算額」欄は326,624,181千円で,当初予算額と一致する。
この欄はそれ以前の補正を反映した額であるから,第2号より前に裁判所所管の補正がなかったことは,この一致からも確認できる。

2 補正第3号は差引で減額である補正国会増減(千円)補正後(千円)第2号第201回+1,259,066327,883,247第3号第204回△1,588,438326,294,809

第3号は,追加2,118,249千円に対し修正減少3,706,687千円で,差引1,588,438千円の減である。
その結果,最終予算326,294,809千円は当初予算326,624,181千円を329,372千円下回った。
補正で予算が増えるのではなく減った年である。

減額の中心は人件費の不用減である。
最高裁判所では退職手当771,447千円,国家公務員共済組合負担金1,014,522千円が減額されている。
下級裁判所では職員基本給493,583千円,職員諸手当968,536千円が減額されている。

3 海外派遣の停止が数字に出ている

最高裁判所の外国留学旅費は26,880千円の減であり,当初予算62,197千円の43.2%にあたる。
国際裁判官連合分担金は109千円の減であり,当初予算391千円の27.9%にあたる。
下級裁判所の委員手当も26,696千円が減額されている。

4 9兆円の予備費が使われた年に,裁判所には配分がない

令和2年度は,新型コロナウイルス感染症対策予備費の予算額が9,650,000,000,000円,その使用額が9,142,049,687,000円であった年である。
通常の予備費の使用額283,867,094,000円と合わせると9,425,916,781,000円であり,一般会計の歳出決算総額147,597,358,991,702円の6.4%に当たる。

この予備費から裁判所所管への配分は無い。
決算の予備費使用の一覧((9)頁から(11)頁まで)に,裁判所所管の項目は無い。
裁判所所管の予備費使用額の欄も0円である。

欄が0円であることだけでは足りない。
決算は移替額について「移替額には、新型コロナウイルス感染症対策予備費の使用額1,628,854,246,000円及び流用増した額171,473,000円が含まれる」と注記しており((6)頁),予備費が移替として現れる経路があるからである。
裁判所所管の予算決定後移替増減額も0円であるから,この経路からの配分も無い。

補正で1,259,066千円が付き,別の補正で1,588,438千円が引かれた年に,予備費からの上積みは無かったことになる。

第4 満額で計上されても,使われるとは限らない1 裁判費の13目で要求と予算が違うのは1目だけである目要求額(千円)当初予算(千円)充足率決算執行率諸謝金2,152,8442,152,844100.0%88.5%裁判旅費272,942277,277101.6%46.5%執行官旅費43,63643,636100.0%74.2%委員等旅費1,499,3661,499,366100.0%73.4%証人等旅費202,356202,356100.0%70.7%裁判庁費14,381,19513,852,18596.3%86.8%特別送達料575,945575,945100.0%99.99%身柄拘束者食糧費424424100.0%10.3%少年補導委託費173,679173,679100.0%32.4%賠償償還及払戻金277,694277,694100.0%86.7%保証金10,00010,000100.0%0.0%刑事補償金641,027641,027100.0%56.7%少年補償金10,02110,021100.0%35.3%

目細のレベルまで一致している。
諸謝金の国選弁護人等報酬59,947千円,委員等旅費の国選弁護人等2,648千円及び証人等旅費の証人59,719千円は,いずれも要求額と当初予算額が同じである。

2 執行率は0.0%から99.99%まで割れる

はじめに,この表の決算執行率は支出済歳出額を歳出予算現額で割ったものであることを断っておく。
13目のうち翌年度繰越があるのは裁判庁費だけで,1,332,855千円を令和3年度へ繰り越している。
繰越は使わなかった額ではないから,裁判庁費の執行率86.8%を,繰越が0円の目の執行率と同じ意味で読むことはできない。

使われなかった額の割合(不用額÷歳出予算現額)で並べ直すと,順序が変わる。

目決算執行率翌年度繰越不用率特別送達料100.0%00.0%裁判庁費86.8%1,332,855千円4.6%諸謝金88.5%011.5%賠償償還及払戻金86.7%013.3%

執行率では諸謝金が裁判庁費を上回るが,使われなかった額の割合では裁判庁費のほうが小さい。
以下で挙げる目は,いずれも翌年度繰越が0円であるから,執行率がそのまま使われなかった程度を表す。

身柄拘束者食糧費の執行率は10.3%である。
予算424千円に対し,支出済は44千円である。
身柄同行が激減したことが表れている。

裁判旅費の執行率は46.5%である。
裁判官及び裁判所書記官が法廷外で行う検証,出張尋問等の旅費である。

破産法23条の国庫仮支弁である保証金は,支出済が0円である。
予算10,000千円が全額不用になっている。
平成30年度の支出実績も0円であり,令和2年度は新規事項として10,000千円を要求して満額認められた費目である。
制度が事実上使われていないことを,決算という一次資料で確認できる。

例外は特別送達料で,不用額は44,642円にとどまる。
執行率は99.99%である。
期日は止まっても,送達は止まらなかったことになる。
この目には流用で3,452千円が積み増されており,それでも使い切っている。

したがって,「満額で計上された」ことと「予算どおり使われた」ことは切り分けて読む必要がある。
年度をまたいで実態を比べるのであれば,要求額でも予算額でもなく決算額を並べるのが実態に近い。

3 この形は令和7年度から崩れる

令和8年度では,保証金が50.0%,裁判庁費が66.5%,執行官旅費が71.5%,裁判旅費が73.5%に減額されており,要求額と予算額が一致しない目が複数ある。
なお,満額の目の数を年度間で並べるときは,分母に(目)裁判庁費を含めるかどうかで数が動く。
令和2年度の(項)裁判費は13目で構成されている。
令和2年度で成り立っていた形を,そのまま現在の話として用いることはできない。

第5 要求の組み方-本体を絞って要望枠で取りに行く1 要求本体は前年度予算を下回っている

令和2年度の概算要求本体321,099,826千円は,前年度予算325,574,308千円を4,474,482千円下回っている。
前年度より低い額を要求していることになる。
そのうえで,増分を「新しい日本のための優先課題推進枠」の要望8,183,750千円で取りに行く組み方になっている。

2 要望枠の3事業事業要望額(千円)暮らしの安全・安心3,537,085防災・減災4,462,683裁判手続等のIT化の推進183,982合計8,183,750

裁判手続等のIT化の推進は,要望枠の2.2%にすぎない。
令和2年度の時点では,デジタル化は金額の上では小さな事業であった。

3 要望枠が乗ったことが見える箇所事項令和元年度予算要求本体当初予算予算÷要求本体最高裁判所・裁判運営の充実に必要な経費1,145,433197,1001,094,045555.07%下級裁判所・裁判運営の充実に必要な経費8,385,4447,234,6568,280,777114.46%裁判所施設費17,480,34613,267,40817,024,474128.32%

最高裁判所の「裁判運営の充実に必要な経費」は,要求本体197,100千円に対し当初予算1,094,045千円である。
前年度予算1,145,433千円とほぼ同じ水準に戻っている。
最高裁判所の概算要求書(説明資料)でこの事項に属する項目の多くに「要望」の札が付いていたことと対応する。

したがって,説明資料の「要望」の札が付いた項目について,要求額が小さいことを理由に重視されていないと読むのは適切でない。
本体に載せられないものを要望枠へ回した結果であり,予算では前年度並みに戻っている。

項別に対応を確認できる裁判所施設費で計算すると,当初予算と要求本体の差は3,757,066千円であり,要望「防災・減災」4,462,683千円の84.2%にあたる。

第6 デジタル化の予算は当初予算ではなく補正で付いた

補正予算(第2号)の内容は,次の2項目だけである。

項・目当初(千円)追加(千円)補正後(千円)下級裁判所・法廷等器具整備費577,708+152,600730,308裁判費・裁判庁費13,852,185+1,106,46614,958,651

裁判庁費の追加1,106,466千円の内訳は,消耗品費85,344千円,通信運搬費273,353千円及び雑役務費747,769千円である。
このうち繰越明許費として「司法情報システム緊急整備費」592,392千円が立っている。

当初予算の要望枠に載っていた「裁判手続等のIT化の推進」は183,982千円であった。
補正で付いた592,392千円は,その3.2倍である。
令和2年度のデジタル化の予算は,当初予算ではなく補正予算で一気に付いたことになる。
その後の経過は令和8年度概算要求に基づく,裁判手続のデジタル化-要求額,令和8年度予算及び令和9年度概算要求にある。

もっとも,補正で積んだ額がその年度に使われたかどうかは,令和2年度については分離できない。
裁判所ウェブサイトの決算のページには「補正予算の執行状況の公表について」という区分があるが,令和8年9月7日の時点で掲載されているのは令和7年度分(令和7年度決算時点)及び令和6年度分(令和6年度決算時点及び令和7年度決算時点)の3件だけである。
令和2年度については,当初分と補正分を分けた執行状況の公表資料が同ページにない。

分かるのは次のことまでである。
裁判費は補正で1,416,926千円を積んだが,決算18,022,411千円は当初予算19,716,454千円すら下回っている。
裁判費の翌年度繰越1,332,855千円は全額が裁判庁費であるが,前年度繰越245,578千円も混ざるため,補正の追加額との1円単位の対応は取れない。

補正で積んだ分が翌年度へ回るという読み方を一般化することもできない。
同じ補正第2号で152,600千円を積んだ下級裁判所の法廷等器具整備費は,決算では翌年度繰越が0円で,不用額が128,859千円である。
分かれ目は繰越明許費の指定があるかどうかであり,令和2年度補正第2号の同じ目には繰越明許費の記載がない。

第7 検察審査会は止まっていた1 要求と予算が一致したまま4分の1が不用になった

項の検察審査費は,要求額,当初予算額及び最終予算額のいずれも302,934千円で,1円も動いていない。
それにもかかわらず,決算は228,887千円で,24.4%が不用になっている。
繰越は0円であるから,差の全額が不用である。

2 目別の執行率目予算額(円)支出済(円)執行率検察審査員旅費241,725,000182,544,59775.52%庁費55,782,00044,214,23179.26%委員手当(審査補助員手当)4,329,0001,826,30042.19%職員旅費(審査業務旅費)527,0005100.10%諸謝金248,000247,50099.80%委員等旅費(審査補助員旅費)181,00045,69725.25%証人等旅費142,0008,4905.98%

職員旅費の執行率は0.10%である。
予算527,000円に対し,支出済は510円である。
この旅費は実地見分及び所在尋問への検察審査会事務官の立会いのためのものであるから,令和2年度はこれらがほとんど行われなかったことになる。

証人等旅費の執行率は5.98%である。
検察審査会議での証人尋問もほとんどなかったことになる。

審査補助員手当の執行率は42.19%である。
審査補助員は,検察審査会が,審査を行うに当たり法律に関する専門的な知見を補う必要があると認めるときに,弁護士の中から事件ごとに委嘱することができるものである(検察審査会法39条の2第1項)。
委嘱するかどうかは検察審査会の判断によるから,手当の執行が予算の4割強にとどまったことは,委嘱件数が見込みを下回ったことを示す。

3 「法定の回数を割った」とは書けない

検察審査員旅費は,概算要求書(説明資料)によれば,会議1回当たりの必要額122,145円に令和2年度の会議回数見込み1,979回を乗じて積算されている。
支出済182,544,597円を積算単価122,145円で割ると,約1,494回となる。
見込み1,979回に対して約1,494回である。
もっとも,実際の1回当たりの費用が積算単価どおりであったとは限らないから,1,494回は換算値であって実測の開催回数ではない。

そのうえで,「法定の回数を割った」と書くことはできない。
検察審査会法21条1項は,毎年3月,6月,9月及び12月にそれぞれ検察審査会議を開かなければならないと定めており,年4回である。
同法15条1項は,各群の検察審査員及び補充員のいずれかの任期が開始したときに,その都度速やかに検察審査会議を開いて検察審査会長を互選しなければならないと定めるところ,同法14条により第1群は2月1日,第2群は5月1日,第3群は8月1日,第4群は11月1日と3か月ずつずれて任期が開始するから,これも年4回である。

両者を合わせて年8回になるという合成であって,法律に「年8回」という数字が書かれているわけではない。
概算要求書(説明資料)が,15条1項及び21条1項を根拠として年8回としているものである。

検察審査会は全国で165ある。
165庁に8回を乗じた1,320回が法定の下限であり,換算値の約1,494回はこれを上回っている。
言えるのは「見込み回数1,979回に届かなかった」までである。

もっとも,開催回数が予定を下回ったこと自体は,換算値によらずに確認できる。
歳出決算報告書は,検察審査費の不用額の理由として「不用額を生じたのは、検察審査会議の開催回数が予定を下回ったこと等により、検察審査員旅費を要することが少なかったこと等のため」と記載している。
本記事の換算値は,下回った程度を測るための数字であって,下回ったという事実そのものは決算に書かれている。
なお,同法21条2項の随時招集及び41条の2の再審査があるから,8回を超える開催もあり得る。

第8 事故繰越-司法修習の遅れ1 繰越の法的根拠別の内訳種別項金額(円)財政法14条の3(繰越明許費)裁判費1,332,855,312同上裁判所施設費8,145,063,813財政法42条ただし書(事故繰越)最高裁判所1,466,776,000合計10,944,695,125

下級裁判所及び検察審査費の繰越は0円である。

2 事故繰越は6目すべてが司法修習関係である目繰越額(円)修習給付金1,110,165,000修習資金貸与金299,920,000諸謝金(講師等謝金)25,916,000司法修習生研修委託費19,654,000職員旅費(研修等旅費)6,672,000研修費4,449,000合計1,466,776,000

財政法42条ただし書は,「歳出予算の経費の金額のうち、年度内に支出負担行為をなし避け難い事故のため年度内に支出を終らなかつたもの」について翌年度への繰越しを認めている。
令和2年度の裁判所で事故繰越になったのは司法修習だけであり,司法修習の開始が遅れたことが財政法上の「避け難い事故」として処理されたことが読める。
あらかじめ繰越しを予定する繰越明許費とは性質が異なる。

修習給付金は,予算額3,314,835千円に対し,支出済2,071,492千円,翌年度繰越1,110,165千円,不用133,178千円である。
執行率は62.5%である。
この目の内容は司法修習生研修委託費と同じ項に属する。

第9 不用額の理由は国が決算に書いている1 決算に記載された4項の理由

財務省の一般会計歳入歳出決算には,主要な不用額について理由が記載されている。
裁判所所管の4項について,記載は次のとおりである。

項不用額(円)記載された理由最高裁判所2,451,599,312定年退職者数及び応募認定退職者数が予定を下回ったこと等により、退職手当を要することが少なかったこと等のため下級裁判所3,142,083,322調停事件の処理件数及び家庭裁判所委員会の出席者数が予定を下回ったこと等により、委員手当を要することが少なかったこと等のため裁判費2,023,690,873契約価格が予定を下回ったこと、業務内容の見直しによる業務計画の変更をしたこと等により、裁判庁費を要することが少なかったこと等のため裁判所施設費865,085,919契約価格が予定を下回ったので、施設整備費を要することが少なかったこと等のため

下級裁判所の理由には,「調停事件の処理件数……が予定を下回った」と記載されている。
令和2年度に調停事件の処理件数が落ちたことを,決算という一次資料で示すことができる。

他方で,裁判費の理由には事件数の減少が記載されていない。
記載されているのは「契約価格が予定を下回った」ことと「業務内容の見直しによる業務計画の変更」であり,物件費である裁判庁費に関する説明である。
目別の執行率から期日の停止を読み取ることは本記事の整理であって,決算に記載された項レベルの理由とは別のものである。
両者は矛盾しないが,区別して読む必要がある。

2 検察審査費の理由は歳出決算報告書にある

上の表は歳入歳出決算のものであり,検察審査費の不用額74,046,675円は載っていない。
歳入歳出決算が理由を示す範囲を「1項5億円以上のもの」と自ら定めているためである。

しかし,理由が公表されていないわけではない。
歳出決算報告書の備考欄には検察審査費にも理由が付いており,その文言は検察審査会について述べた箇所で引用した。

裁判所所管で理由の記載が無いのは,裁判所予備経費8,000,000円だけである。

二つの冊で収録の範囲が違うことは,決算に書かれている「理由」の探し方で扱っている。

第10 手続の時系列1 令和2年度の各段階の日付段階日付概算要求基準の閣議了解令和元年7月31日各省各庁の概算要求額の公表令和元年9月5日政府案の閣議決定令和元年12月20日国会提出・審議開始令和2年1月20日当初予算の成立令和2年3月27日補正予算(第1号)案の閣議決定令和2年4月7日概算の変更の閣議決定令和2年4月20日補正予算(第1号)の成立令和2年4月30日補正予算(第2号)案の閣議決定令和2年5月27日補正予算(第2号)の成立令和2年6月12日補正予算(第3号)案の閣議決定令和2年12月15日補正予算(第3号)の国会提出令和3年1月18日補正予算(第3号)の成立令和3年1月28日決算の国会提出(第207回国会)令和3年12月6日参議院本会議の是認令和4年6月15日衆議院本会議の議決令和6年6月18日

補正予算(第1号)だけ,「補正予算案の閣議決定」と「概算の変更の閣議決定」が別の日になっている。
他の補正にはこの2段がない。
もっとも,同号には裁判所所管の計上がないから,令和2年度の裁判所について実害のある論点ではない。

なお,この表の日付は政府案の閣議決定日であって,最高裁判所長官が内閣に見積書類を送付した日ではない。
その送付は公表されない。

2 決算が国会で議決されるまでに2年6か月かかっている

令和2年度の決算は,令和3年12月6日に国会へ提出された。
提出先は第207回国会(臨時会)で,同国会は同日に召集され,同月21日に閉会している。
つまり決算は,会期16日の臨時会の初日に提出された。

その後の経過は,両院で分かれる。

院委員会委員会の議決本会議結果参議院決算委員会令和4年6月13日令和4年6月15日是認衆議院決算行政監視委員会令和6年6月17日令和6年6月18日議決

参議院は,提出から約6か月後の令和4年6月15日に是認している。
これに対し衆議院は,第207回国会から第212回国会まで継続審査を重ね,第213回国会の令和6年6月18日に議決した。

提出から衆議院の議決まで2年6か月である。
当初予算が年度の開始前に成立していることと対比すると,同じ年度の数字でも,入口と出口で国会の扱う速さがまったく違う。

本記事が用いた決算の数字は,令和3年12月6日に提出された決算そのものの値である。
その後の審議で数字が変わるものではない。

3 「概算要求」の公表日と送付期限は別の日である

上の表の「各省各庁の概算要求額の公表」令和元年9月5日は,財務省が各省各庁の要求額を取りまとめて公表した日である。
これは,予算決算及び会計令8条が定める送付期限である令和元年8月31日とは別の日である。
同じ「概算要求」という語で別の日を指すため,時系列に並べるときは分ける必要がある。

令和2年度予算については,この送付期限を動かす特例政令はない。
令和元年5月から9月までの官報337号の目次を「送付期限」「見積書類」「見積に関する書類」「概算要求」の4語で走査して0件であり,同じ方法を令和2年7月に当てると令和2年政令第230号を検出する。
なお,令和3年度予算についてはこの政令によって期限が動いており,その経緯は裁判所の予算は誰が決めているのかで扱っている。

4 令和3年度予算書の「前年度予算額」欄の正体

令和3年度予算書の裁判所所管の「前年度予算額」欄は327,883,247千円であり,令和2年度の当初予算額とも最終予算額とも一致しない。
これは補正予算(第2号)後の額である。

令和3年度予算が国会に提出された令和3年1月18日の時点で,令和2年度予算として成立していたのは第2号後の額であった。
補正予算(第3号)は同じ日に提出されたばかりで,成立は10日後の令和3年1月28日である。
前年度予算額欄に当てるべき値は,当初予算額でも最終予算額でもなく,提出の時点で成立していた額であると読める。
もっとも,これは令和2年度から令和3年度への1組についての観測であるから,他の年度でも同じ規則で説明できるかは確認していない。

第11 実務に使える数字1 日当の積算単価は上限額に比例しない区分規則の上限額積算単価比率証人・参考人・少年8,050円以内4,025円50.0%鑑定人・通訳人・国選弁護人・国選代理人7,650円以内4,110円53.7%司法委員・参与員10,350円以内5,730円55.4%鑑定委員6,060円以内6,060円100%

上限額は証人8,050円が鑑定人7,650円より高いのに,積算単価は証人4,025円が鑑定人4,110円より低く,大小が逆転している。
鑑定委員に至っては上限額そのものを積んでいる。
「上限額のおおむね半額」という一般則は立たない。

当事者の日当は,民事訴訟費用等に関する規則2条2項により1日3,950円の定額である。
証人の日当が「以内」の上限であるのとは,性質が異なる。
単価表の詳細は司法研修所の概算要求書単価表にもある。

2 無罪事件の費用補償の内訳

刑事補償金641,027千円の内訳は,拘禁補償507,779千円と費用補償133,248千円である。
費用補償(刑事訴訟法188条の2)133,248千円は8項目に分かれており,被告人の鉄道賃2,543千円,日当4,633千円,宿泊料61千円,私選弁護人の鉄道賃2,099千円,日当5,346千円,宿泊料25千円,報酬106,684千円及び謄写料11,857千円である。

費用補償の8割は私選弁護人の報酬である。
平成30年度の実績は,私選弁護人報酬75,294千円,謄写料8,400千円である。

3 指定弁護士の手当には幅がある

刑事訴訟法268条5項は,同条1項の指定を受けた弁護士に政令で定める額の手当を給すると定める。
これを受けた昭和24年政令第372号は,その指定により公訴を維持すべき事件の審級ごとに50万円以上315万円以下(上訴審及びその後の審級については19万円以上315万円以下)の範囲内で,裁判所が相当と認める額とする。

概算要求書(説明資料)の積算単価は1名当たり1,713,872円である。
上限315万円まで出る余地があることは,指定弁護士の職務を検討する場面で意味を持つ。

4 補正予算まで見ないと年度の姿が分からない段階金額(千円)対要求要求20,241,129100.0%当初予算19,716,45497.41%補正第2号後20,822,920102.87%補正第3号後21,133,380104.41%決算18,022,41189.04%

項の裁判費を通しで見ると,当初予算だけを見れば要求の97.41%に減っているが,補正まで見れば要求を4.41%上回っている。
そして決算では要求の89.04%にとどまる。
どの段階を見るかで,結論が3通りに分かれる。

第12 定員-裁判官は振替で,職員は17人の減である

令和2年度の裁判所職員定員法の一部を改正する法律は,第201回国会で成立した。
その内容は,同法律案の趣旨説明及び質疑から確認できる。

区分改正前改正後増減判事2,1252,155+30判事補927897△30裁判官の合計3,0523,0520

裁判官については,判事補の定員から判事の定員へ30人を振り替えたものであり,裁判官の総数は変わっていない。
法務大臣は,第201回国会衆議院法務委員会第5号(令和2年3月18日)で,判事補の定員から判事の定員に30人の振替を行うことにより執務体制の強化を図るものであると説明している。

裁判官以外の職員は,次のとおりである。

区分増減(人)裁判所書記官+8裁判所事務官+34技能労務職員等△59差引△17

8人と34人の増に対し59人の減であるから,差引17人の減である。
最高裁判所事務総局総務局長は,第201回国会衆議院法務委員会第6号(令和2年3月31日)で,59人の減員の中に裁判所速記官の定員2人分が含まれると述べている。

この17人は,裁判所職員定員法2条の員数の差としても確認できる。
同条の員数は改正前が21,835人,改正後が21,818人である。
ただし,同条の員数は「執行官、非常勤職員、二箇月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を除く」ものであるから,裁判所で働く人の総数ではない。
本記事が扱う執行官旅費や委員等旅費は,この員数の外にいる人に係る経費である。

年度の途中で員数が変わっている点に注意を要する。
令和2年度の改正法(令和2年法律第20号)は令和2年4月24日に公布され,同日に施行された。
したがって令和2年4月1日から同月23日までの員数は改正前の21,835人であり,「令和2年度の員数は21,818人である」というときの値は年度当初のものではない。

現在員は,同委員会で示された令和2年1月16日の時点で,判事が定員2,125人に対し2,073人,判事補が定員927人に対し772人である。
判事補には155人の欠員がある。

金額の側では,最高裁判所の項が要求本体78,712,096千円に対し当初予算78,977,113千円であり,下級裁判所の項が要求本体206,979,930千円に対し当初予算207,217,212千円である。
定員が差引で減っている年に,人件費を含む両項の予算額は要求本体を上回っている。
定員と予算額は連動しないから,どちらか一方から他方を推すことはできない。

第13 未確認事項

補正で積んだ額のうち令和2年度中に実際に支出された額は確認できていない。
裁判所ウェブサイトの決算のページの「補正予算の執行状況の公表について」に掲載されているのは令和6年度分以降であり,令和2年度については当初分と補正分を分けた公表資料が同ページにない。

「司法情報システム緊急整備費」592,392千円の執行状況も確認できていない。
繰越明許費として計上されているため,令和2年度中に全額が支出されたとは限らない。

項の検察審査費の実際の会議開催回数は確認できていない。
本記事の約1,494回は,支出済額を積算単価で割った換算値である。

補正予算(第1号)における「概算の変更の閣議決定」(令和2年4月20日)について,財政法18条2項の意見聴取が行われたかどうかは確認できていない。
同項は「前項の決定」すなわち概算の閣議決定について意見聴取を義務付けているが,変更の閣議決定が同条1項の決定そのものであるかは条文からは決まらない。

要望枠のうち「暮らしの安全・安心」及び「裁判手続等のIT化の推進」については,項別の配分を確認できていない。

概算要求の段階で何人の増員を要求していたかは確認できていない。
本記事の定員は,成立した改正法とその審議で示された数だけであり,要求と成立を対比したものではない。

第14 出典・参考資料1 法令

財政法(昭和22年法律第34号)14条の3,18条,19条,42条
予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)8条
検察審査会法(昭和23年法律第147号)14条,15条,21条,39条の2,41条の2
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)188条の2,268条
破産法(平成16年法律第75号)23条
裁判所職員定員法(昭和26年法律第53号)1条,2条
検察官の職務を行う弁護士に給すべき手当の額を定める政令(昭和24年政令第372号)1条
令和2年政令第230号(令和三年度予算に係る歳入歳出等の見積書類の送付期限の特例を定める政令。官報令和2年7月28日号外第155号19頁)

以上はいずれも令和8年9月6日にe-Gov法令検索で確認した本文による。

2 最高裁判所規則

民事訴訟費用等に関する規則(昭和46年最高裁判所規則第5号)2条,6条,7条,8条

最高裁判所規則はe-Gov法令検索に収録されていないため,裁判所ウェブサイトの規則集により確認した。

3 概算要求書及び各目明細書

最高裁判所「令和2年度一般会計歳出概算要求書」(129頁。紙面の標題は「令和2年度歳出概算要求書」)
最高裁判所「令和2年度概算要求の概要」
最高裁判所「新しい日本のための優先課題推進枠 要望一覧」
最高裁判所「令和2年度概算要求書(説明資料Ⅰ・Ⅱ)」(461頁及び449頁。裁判所ウェブサイト未掲載)
最高裁判所「令和2年度予算の概要」
最高裁判所「令和2年度一般会計歳出予算各目明細書」(18頁。紙面の標題は「令和2年度裁判所所管一般会計歳出予算各目明細書 第201回国会(常会)提出」)
最高裁判所「令和2年度一般会計歳出予算補正(第2号)各目明細書」
最高裁判所「令和2年度一般会計歳出予算補正(第3号)各目明細書」

以上の名称は,裁判所ウェブサイトの「令和2年度予算」の頁のリンク文言による。
紙面の標題が異なるものは括弧内に併記した。

4 予算書,決算及び統計

財務省「令和2年度 一般会計歳入決算明細書及び歳出決算報告書(科目別内訳)」(CSV)
財務省「令和2年度 一般会計歳入決算明細書及び歳出決算報告書」(862頁。裁判所所管の不用理由は78頁から82頁まで)
財務省「令和2年度 一般会計歳入歳出決算」(106頁)
財務省「令和2年度 一般会計当初予算」(1,117頁)
財務省「令和2年度 一般会計補正予算(第1号)」(281頁),同「(第2号)」(216頁),同「(第3号)」(693頁)
裁判所「令和2年度裁判所決算」
裁判所「裁判所データブック2020」別表「証人等日当等」

5 官報及び閣議了解

インターネット版官報(令和元年5月から9月まで及び令和2年7月)
「令和2年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(令和元年7月31日閣議了解)

6 国会会議録

第201回国会衆議院法務委員会第5号(令和2年3月18日)及び同第6号(令和2年3月31日)並びに同参議院法務委員会第6号(令和2年4月14日)及び同第7号(令和2年4月16日)
いずれも裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の審議であり,国会会議録検索システムにより確認した。

7 議案情報

参議院議案情報「令和二年度一般会計補正予算(第3号)」(第204回国会(常会)提出番号1。提出日令和3年1月18日,参議院議決令和3年1月28日)
参議院議案情報「令和二年度一般会計歳入歳出決算、令和二年度特別会計歳入歳出決算、令和二年度国税収納金整理資金受払計算書、令和二年度政府関係機関決算書」(第207回国会提出番号1。提出日令和3年12月6日。参議院の是認及び衆議院の議決は,第208回国会及び第213回国会の同じ議案の頁による)
衆議院「国会会期一覧」(第204回及び第207回の召集日及び会期終了日)

8 関連記事

同じ型で各年度を扱った記事は次のとおりである。
突き合わせた系列は年度によって異なり,令和7年度及び令和8年度は決算を含まず,令和8年度は暫定予算を含む。

裁判所の令和3年度予算
裁判所の令和4年度予算
裁判所の令和5年度予算
裁判所の令和6年度予算
裁判所の令和7年度予算
裁判所の令和8年度予算

予算・決算の数値をどこから取るか
裁判所の予算は誰が決めているのか
決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式
決算に書かれている「理由」の探し方
最高裁判所の概算要求書(説明資料)
令和8年度概算要求に基づく,裁判手続のデジタル化-要求額,令和8年度予算及び令和9年度概算要求
司法修習生研修委託費
司法研修所の概算要求書単価表

裁判所の令和7年度予算-概算要求,当初予算及び補正予算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象,調査の基準日及び資料の対象期間2 結論第2 四つの数字は互いに別物である1 概算要求2 当初予算3 補正予算4 決算5 どこで入手できるか第3 令和7年度の四つの数字1 総額2 要望を分母に入れるかどうか3 歳出予算現額の推計4 令和7年度決算が未公表であること第4 (項)別に見ると,落ちているのは裁判費だけである1 概算要求と当初予算2 人件費の項が要求を上回る理由3 補正後の姿4 補正予算を読むときの二つの注意(1) 差引額だけを見ない(2) 修正減少は実績に合わせた落とし込みであることが多い第5 裁判手続等のデジタル化関連経費1 要求の半分しか付いていない2 補正予算で戻る第6 補正予算は,計上した年度には使われていない1 執行状況2 繰越先の年度まで追える例3 年度の実力の測り方4 令和6年度決算の執行率第7 「削られた」と書けるかどうか第8 予納郵券の廃止が,予算の(目)に現れている1 (目)の新設と改称2 民事訴訟費用等に関する法律の改正との対応3 実務上の意味第9 歳入-相続人不存在で国庫に帰属する金銭1 歳入の補正は歳出の補正より大きい2 (目)雑収とは何か3 実務上の意味第10 定員第11 未確認事項第12 出典・参考資料1 法令2 裁判所の予算・決算資料3 統計・データ第13 関連記事1 同じ型で各年度を扱った記事2 資料の読み方を扱った記事
第1 この記事の対象と結論
1 対象,調査の基準日及び資料の対象期間

この記事は,令和7年度の裁判所所管の一般会計について,概算要求,当初予算,補正予算及び決算という四つの数字を並べ,どこで金額が動いたのかを追ったものである。
調査の基準日は令和8年9月7日であり,金額の取得日は同月6日である。
資料の対象期間は,比較のために令和3年度から令和8年度までを含む。
本文の金額は,特記しない限り千円単位であり,決算の数値だけは円単位である。

裁判所の予算がどのような手続で決まるのか,財政法19条の二重予算の制度がどうなっているのかについては,別の記事である裁判所の予算は誰が決めているのか-二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことで扱っている。
この記事は,手続そのものではなく,四つの数字の突合せに絞る。

2 結論

令和7年度の概算要求額は,要望を含めて3479億3262万4000円であった。
これに対する当初予算額は3351億9243万9000円であり,要求・要望計に対する割合は96.3%である。
ところが,同年度の補正予算(第1号)で261億9977万2000円が追加され,補正後の改予算額は3613億9221万1000円となった。
要求・要望計に対する割合は103.9%になり,逆転する。

総額だけを見ると「ほぼ要求どおり」に見えるが,内訳は均一ではない。
(項)裁判費だけが要求377億2937万8000円に対して当初予算263億6090万1000円(69.9%)と大きく落ち,最高裁判所,下級裁判所及び裁判所施設費はいずれも当初予算が要求を上回っている。
落ちているのは人件費ではなく,裁判手続のデジタル化を含む事件処理の実費である。

もっとも,その裁判費も補正予算で386億9494万円まで戻り,要求比102.6%になる。
当初予算で落ち,補正予算で戻るという往復が起きている。

そして,その補正予算は,計上した年度にはほとんど使われていない。
令和6年度補正予算の「裁判手続等のデジタル化等」169億円は,令和6年度中の支出済額が1億円で,167億円が令和7年度へ繰り越され,令和7年度に164億円が支出された。
令和7年度補正予算の210億円も,令和7年度中の支出済額は6億円で,200億円が令和8年度へ繰り越されている。
したがって,ある年度に裁判所が実際に使える金は,当初予算そのものではなく,当初予算に前年度補正からの繰越額を足した額である。

第2 四つの数字は互いに別物である
1 概算要求

正確には,財政法17条1項の見積書類である。
同項は,衆議院議長,参議院議長,最高裁判所長官及び会計検査院長が,毎会計年度,その所掌に係る「歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類」を作製し,これを内閣における予算の統合調整に供するため内閣に送付しなければならないと定めている。
「概算要求」は法令上の用語ではなく,この見積書類の通称にすぎない。

なお,内閣総理大臣及び各省大臣の見積書類は,同条2項により財務大臣へ送付される。
1項の四者だけが内閣へ送付する点が,各省庁との違いである。

(続きを読む...)裁判所の令和7年度予算-概算要求,当初予算及び補正予算の突合(AI作成)

裁判所の令和3年度予算-概算要求,当初予算,補正予算及び決算の突合(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象,調査の基準日及び資料の対象期間2 4系列の総額3 この記事で新たに示すこと第2 令和3年度は概算要求の作り方が違う年である1 要求額は「基本的に対前年度同額」とされた2 送付期限も政令で9月30日に変更された3 令和3年度予算の時系列第3 概算要求と当初予算-(項)裁判費を目まで突き合わせる1 総額の差は4,786,906千円である2 13の目のうち11の目が1円まで一致する3 差が出た2つの目4 【要望】42億9575万2000円の行方第4 当初予算が政府案どおり成立したことの確かめ方第5 補正予算(第1号)で動いた額1 差引は33,904千円の減である2 追加6目と修正減少11目3 補正予算のCSVには符号の罠がある4 補正で積んだ額は令和3年度には使われていない第6 決算-現額,支出済,繰越及び不用1 歳出予算現額は当初予算額と一致しない2 (項)裁判費の目別執行率3 保証金は5年連続で執行実績がない4 令和3年度の不用額の理由第7 定員-要求段階の据置きと予算定員の変動は別である第8 未確認事項第9 出典・参考資料1 法令2 官報3 予算書,決算書及び概算要求書4 閣議資料5 国会会議録6 関連記事
第1 この記事の対象と結論
1 対象,調査の基準日及び資料の対象期間

裁判所の予算については,概算要求額と成立した予算額の差が語られることが多いが,その差がどの費目でどれだけ生じ,補正予算でどう動き,最終的にいくら使われたのかを,一つの年度について通しで並べた資料は見当たらない。
本記事は,裁判所所管の令和3年度予算について,概算要求,当初予算,補正予算及び決算の4系列を,(項)裁判費については目のレベルまで突き合わせたものである。
資料の読取り,計数及び突合はいずれもAIを用いて行い,金額はすべて公表資料の実数をそのまま用いた。

本記事の調査の基準日は令和8年9月6日であり,法令の適用時点も同日である。
資料の対象期間は,令和2年7月の概算要求の方針から令和3年度決算までであり,執行率の比較のために令和2年度から令和6年度までの決算を用いた。
令和7年度の決算は基準日の時点で公表されていない。

制度そのもの,すなわち裁判所の予算だけが通る手続と,財政法19条の附記(二重予算)が令和2年度から令和8年度まで0件であることの意味については,裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことで扱っている。
同記事の計数には令和3年度分も含まれており,令和3年度についても附記は0件である。
本記事は,そこで示した枠組みを前提として,令和3年度という一つの年度の実額を追う。

2 4系列の総額

単位は千円である。

系列金額①概算要求等額(要求本体325,859,066+要望4,295,752)330,154,818②当初予算額(成立。国会修正なし)325,367,912③改令和3年度予算額(補正第1号後。以下「改予算額」という。)325,334,008④歳出予算現額336,278,703⑤支出済歳出額319,675,693

②と①の差は4,786,906千円である。
③と②の差は33,904千円の減である。
④は③に前年度からの繰越額10,944,695,125円を加えた336,278,703,125円であり,1円まで一致する。
⑤は319,675,693,505円であり,④に対する執行率は95.06%である。
残りは翌年度繰越額8,117,773,222円と不用額8,485,236,398円であり,⑤との合計は④に1円まで戻る。

3 この記事で新たに示すこと

①(項)裁判費の13の目のうち11の目で,概算要求額と当初予算額が1円まで一致していること。
②その一致が査定の緩さを示すものではなく,令和3年度に固有の要求ルールの結果であること。
③補正予算で追加された額が,令和3年度中には支出されず,翌年度繰越額と1円まで一致すること。
④要求額と予算額が一致した目の多くが,決算では半分前後しか執行されていないこと。
⑤要求段階で定員が据え置かれたことと,予算定員が据え置かれたことは別であること。

第2 令和3年度は概算要求の作り方が違う年である
1 要求額は「基本的に対前年度同額」とされた

令和3年度の概算要求の方針は,「令和3年度予算の概算要求の具体的な方針について」(令和2年7月21日閣議 財務大臣発言要旨)という形で示されている。
その第2項は,要求期限を延ばすことに続けて,「概算要求の段階で予算額を決めることはせず、その仕組みや手続きをできる限り簡素なものとします」とする。

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決算に書かれている「理由」の探し方-一般会計歳入歳出決算と決算参照で収録範囲が違う(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 二つの冊に同じ理由が載り,収録範囲だけが違う2 調査の基準日,対象期間及び適用時点3 この記事が扱わない範囲第2 冊は二つあり,作成者が違う1 一般会計歳入歳出決算2 一般会計決算参照3 裁判所所管の歳出決算報告書を作るのは最高裁判所長官である4 二つの冊の対照第3 不用額の理由-歳入歳出決算は5億円,決算参照は約1,000万円1 歳入歳出決算は掲載の基準を本文に書いている2 決算参照に掲載の基準の記載はない3 件数では2.7倍だが,金額では1.2ポイントしか違わない4 裁判所所管で実際に何が起きたか第4 法律が唯一「理由を書け」と命じたものは,歳入歳出決算にない1 財政法第33条第4項2 実際に決算参照にしかない3 裁判所所管の流用の理由第5 繰越しの事由は,どちらの冊にもない1 法令は繰越計算書に事由の記載を求めている2 しかし決算には綴られていない3 条文の構造どおりである4 予備費は第三の冊にある5 もっとも,予算の段階には事由の欄がある第6 歳入の増減理由も粒度が違う第7 収録範囲の差を定めた規範は辿れない1 法律は理由の記載をほとんど求めていない2 歳入歳出決算は自分で範囲を宣言している3 辿れないのは決算参照の側である4 言えるのはここまでである第8 実務的な探し方1 決算参照を「理由」で全文検索してはならない2 決算参照で使う検索語3 資料の取得経路(1) 年度別アーカイブ(2) 直接のリンク(3) 語句検索(4) CSV4 決算が公表される時期5 会計検査院の資料は,年度別の決算検査報告ではない第9 実務上の意味と,本記事で確認できなかったこと1 実務上の意味2 本記事で確認できなかったこと出典法令決算書(財務省予算書・決算書データベース)会計検査院関連記事
第1 この記事の対象と結論
1 二つの冊に同じ理由が載り,収録範囲だけが違う

国の決算で「なぜその予算が使われなかったのか」という理由の文章を読める資料は,財務省の予算書・決算書データベースに二つある。
一つは決算の本体である「一般会計歳入歳出決算」であり,もう一つはその添付書類を綴った「一般会計決算参照」である。
この二つは,同じ不用額の理由を載せながら,収録する範囲が大きく違う。

令和6年度でいえば,歳入歳出決算に載っている不用額の理由は232件であり,決算参照に載っているそれは634件である。
歳入歳出決算には「このうち、1項5億円以上のものについて」という限定が本文に書かれている。
決算参照には,そのような限定の記載がない。

さらに,財政法が唯一「理由を記載しなければならない」と命じている移用及び流用の理由は,歳入歳出決算には1件も載っておらず,決算参照にしかない。
したがって,歳入歳出決算だけを見て「国は理由を説明していない」と判断してはならない。
他方で,繰越しの事由は,法令上は書面の作成が義務づけられているのに,どちらの冊にも載っていない。

2 調査の基準日,対象期間及び適用時点

この記事は,令和8年9月7日を調査の基準日として作成した。
資料の対象期間は,令和2年度から令和6年度までの一般会計の決算である。
令和7年度の決算は,本記事の作成時点で公表されていない。

法令は,同日現在のe-Gov法令検索で確認した現行の財政法及び予算決算及び会計令による。
本記事は,決算書の原本PDFを機械で読み取り,決算CSVと突き合わせて作成したものであり,作成には人工知能を用いている。

3 この記事が扱わない範囲

対象は一般会計に限る。
特別会計及び政府関係機関の決算は,同じ体系の冊が別に用意されているが,本記事では確認していない。

裁判所の予算がどのように編成されるかについては,裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったことで扱っている。
本記事は,その先の段階である決算の読み方を対象とする。

本記事が扱うのは,二つの冊に理由がどう載るかである。
決算の欄そのものがどう組まれているかは決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式で,概算要求書から決算検査報告までの数値の取得先の使い分けは予算・決算の数値をどこから取るか-概算要求書,予算書,各目明細書,決算書及び決算検査報告の使い分けで,それぞれ扱っている。

第2 冊は二つあり,作成者が違う
1 一般会計歳入歳出決算

財政法第38条第1項は,「財務大臣は、歳入決算明細書及び歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の決算を作成しなければならない」と定めている。
これが決算の本体であり,作成者は財務大臣である。

令和6年度版は117頁で,構成は,歳入歳出決算の総額,歳入歳出決算説明及び歳入歳出決算及び各事項の計算の三部である。

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決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式

第1 結論第2 前提第3 9つの欄1 欄の一覧2 条文が定めているのは7つだけである3 残る2つはどこから来るか(1) ⑥歳出予算現額(2) ⑤予算決定後移替増△減額第4 2本の恒等式1 恒等式①(入口側)2 恒等式②(出口側)3 全行で成立することの実測第5 3本目の等式――年度をまたぐ連鎖第6 動く3つの欄は,それぞれ違う階層でゼロになる1 ④流用等増△減額――所管の中でゼロ2 ⑤予算決定後移替増△減額――一般会計全体でゼロ3 ③予備費使用額――一般会計全体でゼロ第7 ⑤欄がゼロでも移替が無かったとは言えない第8 裁判所所管の9欄1 数値2 執行率3 ⑨不用額の理由が読める範囲4 ⑧翌年度繰越額の内訳――明許繰越と事故繰越第9 令和7年度の決算がまだ無いこと第10 実務上の使い方第11 未確認事項第12 出典1 法令(e-Gov法令検索・令和8年9月7日確認)2 予算書・決算書(財務省 予算書・決算書データベース)3 関連記事
第1 結論

国の歳出の決算は,9つの欄でできている。

①歳出予算額,②前年度繰越額,③予備費使用額,④流用等増△減額,⑤予算決定後移替増△減額,⑥歳出予算現額,⑦支出済歳出額,⑧翌年度繰越額及び⑨不用額である。

この9欄は,2本の恒等式で結ばれている。

恒等式①(入口側) ①+②+③+④+⑤=⑥

恒等式②(出口側) ⑥=⑦+⑧+⑨

⑥歳出予算現額は,この2本の式の結節点である。

上から積み上げた結果であると同時に,下へ配分される元になっている。

本記事では,令和2年度から令和6年度までの一般会計歳出決算報告書(科目別内訳)の全行を計算し,この2本の式が1円の狂いもなく成立することを確かめた。

破れた行は,5年度分合計約3万5000行のうち0行である。

もっとも,この9欄のうち,財政法が明文で列挙しているのは7つだけである。

⑤予算決定後移替増△減額と⑥歳出予算現額は,財政法38条2項の列挙に無い。

「移替」という語は,財政法にも予算決算及び会計令にも一度も出てこない。

その根拠は,毎年度の予算総則にある。

そして,9つの欄がどの科目についても揃って立つのは,実は決算参照のCSV版及びExcel版だけである。

印刷された決算書は,冊によって,また頁によって,欄の数が違う。

第2 前提

1 調査基準日は,令和8年9月7日である。

2 対象法域は日本,対象は国の一般会計の歳出決算である。

3 主な資料は,財務省の予算書・決算書データベース(bb.mof.go.jp)で公開されている令和2年度から令和6年度までの「一般会計歳入歳出決算」(PDF),「一般会計決算参照」(PDF)及び「歳入決算明細書及び歳出決算報告書(科目別内訳)」(CSV)である。

数値の集計は,5年度分のCSV(合計34,843行)を全行計算した。

4 条文は,e-Gov法令検索で調査基準日現在の本文を確認した。

5 地方公共団体の決算(地方自治法)及び特別会計の決算は対象外である。

6 裁判所の予算がどのように決まるかという手続の側面は,別稿「裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったこと」で扱った。

本記事は,その後段,すなわち成立した予算が決算としてどう表示されるかを扱う。

第3 9つの欄
1 欄の一覧

歳出決算報告書(科目別内訳)のCSVは,所管・組織・項名・目名などの区分欄に続けて,次の9つの金額欄を持つ。

①歳出予算額

(続きを読む...)決算はどの欄でできているか――9つの欄と2本の恒等式

予算・決算の数値をどこから取るか-概算要求書,予算書,各目明細書,決算書及び決算検査報告の使い分け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象,調査の基準日及び資料の範囲2 結論第2 予算の数値がどこにあるか1 要求段階(1) 根拠となる規定(2) どこで読めるか(3) 枠の名称は毎年変わる2 成立段階(1) 予算書の構成(2) 提出版と成立版が別にある(3) 「要求額」という欄名は成立予算額を指すことがある3 各目明細書は予算書に入っていない(1) 根拠となる規定(2) データベースには収録されていない(3) 予算定員は予算書の側に載る4 補正予算第3 決算の数値がどこにあるか1 財務省の決算書及びCSV(1) 科目別内訳のCSVが検算には最も扱いやすい(2) CSVでは取れない層は決算参照のPDFにある(3) 移替は,欄が0でも起きていることがある2 裁判所ウェブサイトの「裁判所決算の概要」3 決算検査報告4 省庁別財務書類5 最新年度の執行額は「補正予算の執行状況」で読める第4 同じ数値が三つの粒度で公表されている第5 決算の欄は七・八・九で数が違う第6 繰越の三区分と,三つの繰越の金額1 明許繰越,事故繰越及び逓次繰越2 三つの金額は別の資料にある(1) 事項の指定-予算書の丙号繰越明許費(2) 金額-各目明細書の「うち繰越明許費」(3) 実際に繰り越した額-決算(4) 三つは一対一で対応しない第7 「前年度予算額」は当初予算額と補正後の額に分かれる1 同じ欄名で中身が違う2 三つの資料は閉じる第8 いつ公表されるか1 根拠となる規定2 実際の提出日3 資料ごとの公表時期第9 実際の取り方1 予算及び決算の本体2 語句検索3 各省各庁の資料4 決算検査報告5 注意点6 年度ごとに突き合わせた例第10 確認できていないこと第11 出典・参考資料1 法令2 予算書及び決算書3 最高裁判所が公表した資料4 会計検査院

第1 この記事の対象と結論

1 対象,調査の基準日及び資料の範囲

本記事は,国の一般会計の予算及び決算の数値を,二次資料や報道によらずに一次資料から取るための手順を整理するものである。

対象は,概算要求書,予算書,各目明細書,補正予算書,歳入歳出決算,決算参照,決算検査報告,省庁別財務書類及び補正予算の執行状況の九種類である。

調査の基準日は令和8年9月7日であり,同日に財務省の予算書・決算書データベース,裁判所ウェブサイト,会計検査院検査報告データベース及びe-Gov法令検索で確認できた資料に基づく。

具体例には裁判所所管を用いる。
裁判所所管は歳出が令和6年度決算で78行と小さく,同じ数値を複数の資料で追いやすいためである。
もっとも,資料の構造が全所管に共通するとは限らない。
決算参照の科目別内訳のように,同じ一冊の中で所管によって欄の数が違うものがある(第5)。
以下では,一つの所管で見たことを冊全体の性質として一般化しないよう,観測した範囲を都度示す。

特別会計,政府関係機関及び地方公共団体の予算・決算は対象外である。

予算の額が誰の判断で決まるのかという問題は,裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったこと(AIリライト)で扱った。
本記事は,額そのものではなく,額が載っている資料の側を扱う。

2 結論

① 同じ「支出済歳出額」が,円単位,千円単位及び百万円単位の三つの粒度で別々の資料に載っている。
円単位まで必要なら財務省の決算CSVを取るほかない。

② 決算の欄の数は,法令が七つ,歳入歳出決算の項別表が八つ,決算参照の科目別内訳が所管によって八つ又は九つ,決算CSVが九つで一致しない。
恒等式を組む前に,どの資料の欄を使っているかを確定させる必要がある。

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民事訴訟規則はe-Gov法令検索に載っていない-最高裁判所規則の条文を確認する方法(AI作成)

目次

第1 e-Gov法令検索に最高裁判所規則は収録されていない

1 実際に検索して確かめた結果
2 収録されていない理由

第2 裁判所ウェブサイトの規則集で確認する
第3 その他の確認経路

1 官報
2 商用データベースの現行法令アーカイブ

第4 実務上の注意
第5 関連記事
出典・参考資料

第1 e-Gov法令検索に最高裁判所規則は収録されていない
1 実際に検索して確かめた結果
民事訴訟規則の条文を確認しようとしてe-Gov法令検索を開き,見つからずに戸惑うことがある。
これは検索語の選び方の問題ではなく,e-Gov法令検索が最高裁判所規則を収録していないことによる。

2026年9月6日,e-Gov法令検索が提供する法令一覧のAPIにより,①全法令8995件,②政令・勅令2377件,③府省令・規則4514件の各一覧を取得し,法令名が「民事訴訟規則」又は「刑事訴訟規則」であるものを機械的に検索したところ,いずれの一覧にも存在しなかった。
民事訴訟法及び刑事訴訟法はe-Gov法令検索で読めるため,規則も同じように読めるはずだと考えて探し続けることになりやすいが,探し方の問題ではない。

2026年9月12日にも全法令の一覧を取得して検索したが,「民事訴訟規則」,「刑事訴訟規則」及び「民事訴訟費用等に関する規則」はいずれも見当たらなかった。
同じ一覧で「民事訴訟法」は見つかったから,検索の方法に問題があったわけではない。

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裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったこと(AIリライト)

第1 この記事が扱う範囲と結論1 対象,基準日及び資料の対象期間2 令和8年度の概算要求額と予算額3 公表資料から書けること4 公表資料からは書けないこと5 両側とも書けない理由第2 裁判所の予算だけが通る手続1 裁判所法83条2 財政法17条から21条まで3 予算決算及び会計令が定める期限と経路4 8月末という期限を定めているのは政令である5 内閣は政令でこの期限を動かせる(1) 令和3年度予算で実際に動かした例(2) 令和8年度予算については同種の政令を確認できない6 8月31日が休日に当たる年――行政機関の休日に関する法律7 裁判所の休日に関する法律及び民法142条も及ばない第3 二重予算――附記に至る道筋1 減額は閣議決定の通知の段階で明示される2 附記は最高裁判所が動いて初めて作られる3 附記に至る4段階4 唯一の実例――昭和27年度予算の営繕費第4 令和2年度から令和8年度まで,附記は0件1 どこを数えたか2 当初予算7本の結果3 補正予算も数える必要がある4 裁判所所管を計上していない3冊は判定に用いない5 対照の置き方6 数え直した結果7 この0をどう読むか(1) どの読み方をしても言えること(2) 読み方が分かれる理由――附記の引き金が条文によって違う(3) 第1の読み――附記は明細書が出たときに限られる(4) 第2の読み――19条の義務は減額があれば発生する(5) どちらとも決まらないが,実務上の見え方は変わらない8 この0から読めないこと第5 差はどこで生まれているのか――国会答弁1 時期は答弁で特定できる2 財務省の説明3 「三十九人」という数字の出どころ4 最高裁判所の説明5 同じ委員会にある正反対の評価6 令和6年度の同じ構図7 両論を併記する理由第6 予算書の金額欄の読み方1 「要求額」欄は概算要求額ではない2 「前年度予算額」欄は前年度の当初予算額ではない3 「要求額」という見出しは三か所にある第7 条文と予算資料の対応1 所管と見積書類の送付2 閣議決定,減額の通知及び附記3 予算書の体裁,提出及び補正4 配賦,移用・流用及び決算5 決算に現れる財政法33条6 決算に現れる裁判所法83条2項の予備金第8 「減額」と「差」の使い分け第9 出典・参考資料1 法令2 予算書・決算書及び概算要求書3 国会会議録4 閣議了解5 関連記事
第1 この記事が扱う範囲と結論
1 対象,基準日及び資料の対象期間

裁判所の概算要求額と,成立した予算額には差がある。
この差を「最高裁判所の要求が削られた」と書きたくなるが,裁判所の予算には各省庁とは異なる手続が用意されており,その手続を前提にすると,誰がどの段階でその差を作ったのかは公表資料からは分からない。
本記事は,裁判所法,財政法及び予算決算及び会計令の条文を確認した上で,令和2年度から令和8年度までの一般会計予算書を実際に数えた結果を整理するものである。

本記事の調査の基準日は令和8年9月6日であり,法令の適用時点も同日である。
条文はいずれも同日にe-Gov法令検索で確認した本文による。
予算書の計数の対象期間は令和2年度から令和8年度までの一般会計予算(当初及び補正)であり,決算については令和6年度分を用いた。
国会答弁は,令和4年4月14日及び令和6年4月4日の各参議院法務委員会の会議録による。

2 令和8年度の概算要求額と予算額

裁判所所管の令和8年度歳出概算要求書の総表によれば,概算要求額は359,169,102千円であり,前年度予算額335,192,439千円に対して23,976,663千円の増である。
これに「重要政策推進枠」としての要望額を加えた金額は,財務省が令和7年9月3日に公表した令和8年度一般会計概算要求・要望額の表では,裁判所所管につき概算要求額3,592億円・要望額58億円・計3,650億円と示されている。
他方,成立した令和8年度予算額は349,473,805千円である。
概算要求額との差は9,695,297千円であり,要望額を含めた要求・要望額との差は約155億円である。

「概算要求額」と「要求・要望額」は別の数字であるから,差を論じるときはどちらを指しているのかを先に決めておく必要がある。
以下では,条文上の手続を追う場面では概算要求額を,最高裁判所が公表する概算要求の概要の記載に即して述べる場面では要求・要望額を用いる。

なお,令和9年度概算要求の概要は本記事の基準日の時点で既に公表されており,要求・要望額は3,776億円(377,633百万円),令和8年度予算額349,474百万円に対して28,160百万円(8.1%)の増である。
この要求・要望額には,要望5,696百万円及び「強く豊かな日本」投資枠23,188百万円が含まれている。
令和9年度予算は基準日の時点で成立していないから,後述する附記の有無を数えることはできない。

3 公表資料から書けること

令和8年度の概算要求額359,169,102千円に対し,成立した予算額は349,473,805千円であり,その差は9,695,297千円である。

財政法19条の附記は,令和2年度から令和8年度までの一般会計予算書に1件もない。
裁判所所管が計上されている当初7本・補正7本の計14本・12,733頁を数えた結果である(補正のうち3本は裁判所所管を計上していないので判定に用いない)。
すなわち,この7年度に,附記を伴う事態,つまり二重予算は生じていない。
もっとも,これは制度が一度も使われたことがないという意味ではなく,昭和27年度予算の営繕費については実際に附記に至っている(第3の4)。

ただし,附記が0件であることが「最高裁判所長官が予定経費増額要求明細書を出さなかった」ことを意味するのか,「内閣が減額しなかった」ことを意味するのかは,条文の文言だけでは決まらない(第4の7)。

4 公表資料からは書けないこと

「内閣が削減した」「最高裁判所の要求が削られた」とは書けない。
誰がどの段階で差を作ったのかは,公表資料からは分からないからである。

(続きを読む...)裁判所の予算は誰が決めているのか――二重予算制度と,令和2年度から令和8年度まで附記が0件だったこと(AIリライト)

判事補任官の最年少記録-任命資格・任官年齢・公開資料の限界(AI作成)

目次

第1 結論と記録の範囲第2 判事補の任命資格と任命1 司法修習の終了と任命資格2 任命手続第3 公開資料で確認できた年少任官者第4 公開資料の限界第5 司法試験合格年齢との違い第6 関連記事出典第1 結論と記録の範囲

令和8年9月2日現在,公開された新任判事補の資格審査資料及び裁判官経歴資料で確認できる範囲では,奥田紗永裁判官(76期)が22歳9か月で判事補に任官した例が最年少である。
ただし,最高裁判所が歴代の最年少記録を一覧にして公表しているわけではないため,本記事の「最年少」は,現時点で確認できた公開資料の範囲を意味する。

第2 判事補の任命資格と任命1 司法修習の終了と任命資格

裁判所法43条により,司法修習生の修習を終えた者は判事補の任命資格を有する。
司法修習を終えて任命資格を得たことと,実際に判事補へ任命されたこととは区別する必要がある。

2 任命手続

下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命する。
最高裁判所の公表する裁判官の任命手続の概略では,判事補採用願,健康診断,面接,司法修習生考試の合格,裁判官会議等の流れが示されている。

第3 公開資料で確認できた年少任官者

① 奥田紗永裁判官(76期)は,平成13年3月30日生まれで,令和6年1月16日に判事補へ任官したため,任官時は22歳9か月であった。
② 小林郁也裁判官(75期)は,平成12年3月15日生まれで,令和5年1月16日に判事補へ任官したため,任官時は22歳10か月であった。
③ 樋口瑠惟裁判官(69期)は,平成6年3月3日生まれで,平成29年1月16日に判事補へ任官したため,任官時は22歳10か月であった。

年齢は,公表された生年月日と判事補任官日の差から月単位で計算したものである。
同じ「22歳10か月」でも日数まで比較すれば順序が変わり得るため,月単位の表示だけで厳密な同順位を意味するものではない。

第4 公開資料の限界

新任判事補の資格審査資料は,各期の任官者全員について同じ形式で継続的に公表されているとは限らない。
また,裁判官の経歴記事に掲載された生年月日及び任官日は公開資料を基礎としているが,非公表者を含む歴代全員との比較を証明するものではない。

したがって,今後,より若い任官者又は過去の未確認資料が判明した場合,本記事の順位は更新され得る。
「史上最年少」と断定する場合には,その時点の確認対象と資料範囲を併記する必要がある。

第5 司法試験合格年齢との違い

司法試験に若くして合格しても,司法修習を開始し,司法修習生考試に合格し,さらに判事補として任命されるまでには別々の要件と時点がある。
司法試験合格時の年齢だけから判事補任官時の年齢又は任官の有無を推測することはできない。

第6 関連記事

司法試験合格者と判事補任官者の年少記録をまとめた従来記事として,法科大学院在学中の司法試験合格者,及び司法試験合格者・判事補任官の最年少記録等(AIリライト)がある。
任命手続については,新任判事補の任命に関する閣議決定を参照されたい。
個別の経歴は,奥田紗永裁判官(76期),小林郁也裁判官(75期)及び樋口瑠惟裁判官(69期)の記事を参照されたい。

出典

① e-Gov法令検索「裁判所法」40条及び43条。
② 最高裁判所「裁判官の任命手続の概略」。
③ 山中弁護士ブログ「法科大学院在学中の司法試験合格者,及び司法試験合格者・判事補任官の最年少記録等(AIリライト)」及び同記事記載の新任判事補資格審査資料。

反訳書の作り方―記載事項,全部反訳と抜粋反訳,AI文字起こしの照合(AI作成)

目次

第1 反訳書は常時必須ではないが,先に出す方が合理的な場合が多い第2 反訳書に記載する事項第3 全部反訳と抜粋反訳1 抜粋反訳が許される場合2 抜粋では足りなくなる場合第4 AIによる文字起こしを用いる場合1 外部処理に先立つ確認2 逐語の反訳と要約を区別する第5 元データの保全と変換の記録第6 mintsのどの区分へ提出するか1 独立の書証として出す場合2 内容説明書面としてだけ出す場合第7 提出前の確認第8 関連記事出典・参考資料
反訳書は,録音又は録画の内容を文字にした書面である。
民事訴訟規則149条は,録音又は録画の証拠調べについて,裁判所又は相手方の求めがあるときに,録音又は録画された内容を説明する書面を提出すべきものとしている。

したがって,音声又は動画を出す全事件で,同時に全文反訳書を提出することを全国一律に義務付けた条文はない。
もっとも,裁判所ごとの案内又は事件担当部の指示により反訳書を求められることがある。

本記事では,反訳書に何を書くか,全部反訳と抜粋反訳をどう使い分けるか,AIによる文字起こしをどう扱うか,そして提出時にどの区分へアップロードするかを説明する。
第1 反訳書は常時必須ではないが,先に出す方が合理的な場合が多い
民事訴訟規則149条の規定は,同規則149条の4により,電磁的記録に記録された録音・録画情報の証拠調べにも準用される。

大津地方裁判所民事部の公開案内は,会話を録音した電子データ等を書証として提出する場合に反訳書を提出するよう求めている。
争点部分を迅速に把握できるようにするため,重要な会話については,求めを待たずにタイムコード付き反訳書を提出するのが通常は合理的である。
第2 反訳書に記載する事項
反訳書には,少なくとも次の事項を記載するのが分かりやすい。

①対応する音声・動画の証拠番号及びファイル名
②録音・録画の全長
③反訳対象の開始時刻及び終了時刻
④各発言のタイムコード
⑤話者名又は話者記号
⑥聴取不能・不明瞭・同時発話・物音等の表示
⑦全部反訳か抜粋反訳かの別
⑧反訳者及び反訳日

聞き取れない箇所を推測で補わず,「[聴取不能]」又は「[不明瞭]」と表示する。
話者の特定に確信がない場合も断定せず,話者記号を用いるなどして不確実性を示す必要がある。

反訳書そのものの記載事項とは別に,証拠説明書の記載事項にも規則上の定めがある。
民事訴訟規則148条は,写真又は録音テープ等の証拠調べの申出をするときは,その証拠説明書において,撮影,録音,録画等の対象並びにその日時及び場所をも明らかにしなければならないと定めている。

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無断録音の証拠能力―民事訴訟における採否の枠組みと東京高裁判決(AI作成)

目次

第1 「常に有効」でも「常に無効」でもない
第2 同じ判決の中で結論が分かれた例

1 排除された録音
2 排除されなかった録音
3 読み取れること

第3 mintsが受け付けたことは採否の判断ではない
第4 提出を検討するときの確認事項
第5 関連記事
出典・参考資料

民事訴訟では,無断録音であるという一事だけで,録音及び反訳書が常に証拠から排除されるわけではない。

他方,録音の目的・態様,侵害される秘密又は人格的利益,録音者が会話の当事者か,録音範囲が包括的・探索的か,証拠としての重要性等により,訴訟上の信義則に反するとして排除されることがある。

本記事では,無断録音の採否を判断する際の視点と,一つの判決の中で録音の対象と態様によって結論が分かれた例を説明する。

録音の取得方法に法的問題がないか,裁判で証拠として採用されるか,採用された録音が何をどの程度証明するかは,別の問題である。
最高裁平成12年7月12日決定(平成11年(あ)第96号)は,詐欺被害を疑った会話当事者が後日の証拠とするために録音した事案で,無同意でも違法ではなく,証拠能力を争う主張に理由はないとした(裁判所公開原文)。
この判断を,第三者による探索的な録音や社内調査全般の秘密録音まで一律に許可するものとして扱わない。
録音告知と個人情報の管理,録音拒否時の代替調査,調査協力義務及び労働者の録音禁止については,秘密録音の適法性と証拠利用・拒否時対応を参照されたい。
第1 「常に有効」でも「常に無効」でもない
無断録音の証拠能力は,録音であることだけで決まらない。
考慮される主な要素は,次のとおりである。

①録音の目的

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控訴理由書・上告理由書の提出期限―50日の性質と原裁判所の審査範囲(AI作成)

目次

第1 三つの理由書の比較
第2 控訴理由書
第3 上告理由書及び上告受理申立て理由書
第4 50日は不変期間ではない
第5 原裁判所ができる審査の範囲

1 期限内に法定理由がない場合
2 記載方式違反で補正対象となる場合
3 原裁判所が判断できない場合
4 三つの場面の読み分け
5 理由書を自足的にする

第6 期限管理の手順
第7 関連記事
出典・参考資料

控訴理由書と上告理由書は,いずれも「50日」という期間で語られることが多い。
しかし,起算点も提出先も異なり,「50日」がどの期間なのかも同じではない。

控訴理由書は控訴を提起した日から起算して控訴裁判所へ,上告理由書は上告提起通知書の送達を受けた日から起算して原裁判所へ提出する。
いずれの50日も不変期間ではない。

本記事では,控訴理由書,上告理由書及び上告受理申立て理由書について,起算点,提出先,期間の性質,並びに原裁判所ができる審査の範囲を説明する。
第1 三つの理由書の比較

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支払督促の督促異議と仮執行宣言―期間,効果及び通常訴訟への移行(AI作成)

目次

第1 発付から確定までの流れ
第2 裁判所書記官の審査と却下処分
第3 仮執行宣言前の督促異議

1 申立先と期間
2 通常訴訟への移行

第4 仮執行宣言の申立て

1 2週間経過後から30日以内
2 手続費用と支払状況

第5 仮執行宣言後の督促異議と効力
第6 当事者別の確認事項

1 債権者
2 債務者

第7 関連記事
出典・参考資料

支払督促は,裁判所書記官が債務者を審尋せずに発する。
そのため,債務者が争う手段として督促異議が,債権者が執行力を得る手段として仮執行宣言が,それぞれ用意されている。

督促異議は,仮執行宣言の前と後で期限の意味が異なる。最初の支払督促には送達から2週間以内に対応する必要があるが,仮執行宣言が付されるまでは異議が可能である。仮執行宣言後は,その送達から2週間の不変期間が問題となる。

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訴額の算定に関する最高裁判例―付加金,複数請求の同一利益及び不足手数料の追完(AI作成)

目次

第1 訴額算定の条文上の枠組み

訴額の具体的な算定方法と個別例

第2 付加金請求を訴額へ算入しなかった決定

第3 複数請求を同一利益と認めなかった決定

第4 不足手数料の追完を認めた旧制度下の決定

第5 実務上の帰結

第6 関連記事

出典・参考資料

申立手数料は訴額に応じて決まる。
しかし,請求書に記載した金額の合計がそのまま訴額になるとは限らない。

請求の法的性質によって訴額へ算入されない部分があり,複数請求を同一の利益とみるかどうかでも結論が変わる。
その判断を誤ると,手数料の過納又は不足が生じる。

本記事では,訴額の算定の条文上の枠組み,裁量算定と基準時,訴額通知に基づく土地・住民訴訟の例に加え,付加金,複数請求及び手数料の追完に関する最高裁判例を説明する。
第1 訴額算定の条文上の枠組み

手数料の額の算出の基礎となる訴訟の目的の価額は,民事訴訟費用等に関する法律4条1項により,民事訴訟法8条1項及び9条の規定によって算定する。

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訴訟手数料の還付―取下げ・過納の場合の金額,申立期限及び異議(AI作成)

目次

第1 還付には二つの場面がある
第2 過納による還付
第3 取下げ等による還付

1 「最初にすべき口頭弁論期日の終了前」であること
2 還付額は常に半額ではない
3 一部取下げの場合

第4 申立期間と異議期間

1 差押債権者による還付申立て

第5 還付処分と支払請求を分けて処理する

1 二段階の手続である
2 還付請求書の記載事項
3 mints上の提出方法

第6 手数料再使用証明との違い
第7 確認の手順

1 返金についてよくある疑問

第8 関連記事

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振り込め詐欺救済法の「被害者からの権利行使の届出」―法定分配を止めて口座名義人訴訟・預金差押えに進む手続(AI作成)

目次第1 この記事が扱う問題1 「権利行使の届出」とは何か2 最初に確認すべき結論第2 権利行使の届出が法定分配を止める仕組み1 預金等債権の消滅手続と公告2 被害者も届出をすることができる3 届出があると口座全体の消滅手続が終了する第3 法定分配と個別回収のどちらを選ぶか1 両経路の違い2 個別回収を検討しやすい場合3 他の被害者への影響第4 公告期間内に行う権利行使の届出1 公告と対象口座を特定する2 金融機関と提出方法を事前協議する3 期限内到達と受領記録を残す第5 口座名義人への訴訟と預金仮差押え1 請求原因を事案ごとに選ぶ2 被告の特定と送達を先に見通す3 判決前の預金仮差押え第6 債務名義取得後の預金差押え1 銀行を第三債務者として申し立てる2 取立てまでの手続3 凍結口座でも競合差押えは起こり得る第7 銀行を被告とする債権者代位訴訟1 制度上考えられる構成2 常に必要な訴訟ではない第8 受任時の判断手順と撤退基準1 低負担の調査を先に行う2 進める条件3 法定分配を維持し,又は受任しない条件第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例・国会答弁3 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料4 関連記事
第1 この記事が扱う問題

詐欺送金に気付いたばかりで,まだ金融機関への連絡等をしていない場合は,詐欺で送金してしまった直後の対応―組戻し・口座凍結・被害回復分配金・銀行補償の違い(AI作成)を先に参照されたい。
本記事の「権利行使の届出」は,単なる被害申告や分配金の支払申請と同じものではなく,初動として全被害者に一律に勧める手続ではない。
銀行の補償規定による請求は,インターネットバンキングの不正払戻しの記事に分けて整理している。

1 「権利行使の届出」とは何か

振り込め詐欺救済法は,犯罪利用預金口座等の預金等債権を消滅させ,残った資金から被害者に被害回復分配金を支払う制度である。
もっとも,同法は,口座名義人だけでなく,口座名義人に対する債権を有する被害者が金融機関に「権利行使の届出」をする経路も設けている。

本記事は,この届出によって法定分配の手続を終わらせ,口座名義人に対する訴訟,預金債権の仮差押え又は差押えによる個別回収へ進む場合を扱う。
法令及び公的資料は令和8年8月29日現在のものを確認した。

2 最初に確認すべき結論

権利行使の届出は,被害金の支払申請でも,預金債権の差押えでもない。
期間内に適法な届出がされると,対象口座について預金等債権の消滅手続が終了し,同法に基づく被害回復分配金は支払われなくなるが,届出をした被害者が口座残高を取得するわけではない。

したがって,届出を選ぶ前に,①口座名義人に対する請求権を立証できるか,②口座名義人を特定して訴状を送達できるか,③預金残高が訴訟費用や保全担保を上回るか,④競合する差押えがあるか,⑤届出後直ちに訴訟・保全へ進めるかを確認する必要がある。
この準備がないまま届出をすると,自分だけでなく他の被害者についても法定分配を止めながら,自分も回収できない結果になり得る。

第2 権利行使の届出が法定分配を止める仕組み
1 預金等債権の消滅手続と公告

金融機関は,犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めた場合,警察等から提供された情報,口座名義人の所在,取引状況その他の事情を考慮し,預金保険機構に預金等債権の消滅手続開始を求めるかを判断する。
払戻請求訴訟,強制執行,仮差押え又は仮処分の手続が既に行われている場合には,金融機関は消滅手続開始を求めることができない(振り込め詐欺救済法4条2項1号)。

消滅手続開始の公告には,口座名義人その他の預金等債権に係る債権者が,金融機関へ届出をし,払戻請求訴訟を提起し,又は強制執行等を行うべき期間及び方法が記載される。
その期間は,公告日の翌日から起算して60日以上である(同法5条1項5号・6号,同条2項)。

2 被害者も届出をすることができる

金融庁は,振込利用犯罪行為の被害者が口座名義人に対する債権を有する場合,その被害者も金融機関へ権利行使の届出等をすることができるとの見解を示している。
単に当該口座へ振り込んだというだけでなく,口座名義人に対して損害賠償請求権,不当利得返還請求権その他の債権を有することが前提となる。

直接の振込先口座だけでなく,その口座から資金が移転した先の口座も,資金が実質的に同じであると認められる場合には,法律上の「犯罪利用預金口座等」に含まれ得る(同法2条4項)。
もっとも,後続口座の名義人に対する被害者の請求権まで当然に成立するわけではなく,資金移転の経路,口座名義人の関与及び利得を個別に立証する必要がある。

3 届出があると口座全体の消滅手続が終了する

金融機関は,公告期間内に権利行使の届出,払戻請求訴訟,強制執行等があったことを預金保険機構へ通知し,預金保険機構は消滅手続が終了した旨を公告する(同法6条)。
この場合,口座名義人の預金等債権は同法7条によって消滅せず,同法に基づく支払手続へ進まない。

金融庁のパブリックコメント回答は,預金債権の一部について強制執行等が行われた場合でも,預金債権全体について消滅手続を開始できないとの解釈を示している。
また,被害者による権利行使の届出も支払申請として扱うのではなく,司法手続を選ぶ被害者のために消滅手続の終了事由とされたと説明している。

(続きを読む...)振り込め詐欺救済法の「被害者からの権利行使の届出」―法定分配を止めて口座名義人訴訟・預金差押えに進む手続(AI作成)