目次
第1 この記事の対象と基準日1 この記事で扱う事項2 最初に区別すべき三つの場面第2 職業紹介の定義及び許可・届出1 職業紹介の定義2 有料職業紹介及び無料職業紹介3 職業紹介に関する最高裁判例第3 募集情報等提供及び求人情報の表示1 募集情報等提供事業2 求人情報の的確な表示3 令和6年4月から追加された明示事項4 令和7年4月からの金銭等の提供及び利用料金の表示5 インターネット上の募集広告に表示する事項第4 社員紹介制度1 社員紹介と職業紹介事業の区別2 紹介した社員に対する報奨3 中間搾取の禁止との関係第5 公正な採用選考1 適性及び能力に基づく選考2 性別,年齢及び障害に関する規制3 履歴書様式及び採用時の質問第6 応募者の個人情報1 職業安定法上の取扱い2 要配慮個人情報及び第三者提供3 身元調査,SNS及びAIを利用した選考第7 出典1 法令及び省令2 裁判例3 法令に基づく指針4 所管行政機関の解説及び資料5 文献及び関連記事
第1 この記事の対象と基準日
1 この記事で扱う事項
この記事では,採用活動のうち,職業紹介と募集情報等提供の区別,求人情報の表示,社員紹介制度,公正な採用選考及び応募者の個人情報の取扱いを説明する。
法令及び行政資料は令和8年9月2日現在の内容に基づく。
募集後の面接,健康情報,内定,試用期間及び本採用拒否については,「中途採用における使用者側の留意点――募集・選考・内定・試用期間の実務(AI作成)」で詳しく説明している。
2 最初に区別すべき三つの場面
採用に関するサービスは,①求人者と求職者との雇用関係の成立をあっせんする職業紹介,②求人情報又は求職者情報を提供する募集情報等提供,③使用者が自ら労働者を募集する直接募集に大別できる。
名称が求人サイト,スカウト又は社員紹介であるかではなく,誰が,どの情報を,どのように選別,加工又は伝達し,雇用関係の成立にどこまで関与するかを確認する必要がある。
第2 職業紹介の定義及び許可・届出
1 職業紹介の定義
職業安定法4条1項は,職業紹介を,求人及び求職の申込みを受け,求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることと定義している。
単に求人情報を掲載するだけの場合と異なり,事業者が求人者又は求職者を選別し,両者の意思疎通を中継し,又は採用条件の調整に関与する場合は,職業紹介に該当する可能性がある。
厚生労働省の「職業紹介事業と募集情報等提供事業の区分」は,提供する情報を事業者の判断で選別すること,求人者又は求職者に応じて情報を加工すること及び意思疎通の内容を加工することなどを区分上の考慮要素として示している。
検索条件に従った機械的な絞込み又は利用者の閲覧履歴に基づく表示が直ちに職業紹介となるわけではないが,サービスの実態を個別に確認する必要がある。
2 有料職業紹介及び無料職業紹介
有料職業紹介事業を行うには,職業安定法30条に基づく厚生労働大臣の許可が必要である。
無料職業紹介事業についても同法33条の許可が原則であるが,学校等は33条の2,特別の法律により設立された法人等は33条の3,地方公共団体は29条に,届出等の特則が設けられている。33条の4は,公共職業安定所が学校等による職業紹介を援助する旨の規定である。
したがって,無償であれば常に許可又は届出が不要になるわけではない。
サービスの反復継続性,利用料その他の対価,事業者の関与方法及び適用される主体別の特則を確認する必要がある。
有料職業紹介の許可や届出手数料表があることと,特定の求人者に手数料の支払義務があることは別である。手数料に関する規制(職業安定法32条の3)及び明示義務(32条の13)を踏まえ,個別契約の料率,算定基礎,対象となる採用及び支払条件を確認する。手数料表の上限が,そのまま合意した料率になるわけではない。
派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合の紹介手数料及びその他の費用については,派遣社員の直接雇用-雇用禁止条項,紹介手数料及び紹介予定派遣(AI作成)で説明している。
有料職業紹介における紹介手数料,直接採用・中抜き時の違約金,令和7年4月以後の明示義務及び条項例については,人材紹介の紹介手数料・違約金-直接採用条項の有効性と条項例(AI作成)で説明している。
3 職業紹介に関する最高裁判例
最高裁昭和29年3月11日判決(昭和27年(あ)第3626号,刑集8巻3号240頁)は,職業安定法上の雇用関係について,必ずしも民法上の雇用契約に限られないとの趣旨を示した。
職業紹介に該当するかを契約の名目だけで判断できないことを示す判例である。
最高裁平成6年4月22日判決(平成3年(オ)第1943号,民集48巻3号944頁)は,求人企業から依頼を受けて対象者を探索し,転職を勧誘して雇用関係の成立をあっせんするいわゆるスカウト行為が職業紹介に含まれ得ることを前提として,手数料に関する契約の効力を判断した。
同判決が参照した当時の定義規定は旧5条1項であり,現行法では4条1項に置かれている。
第3 募集情報等提供及び求人情報の表示
1 募集情報等提供事業
募集情報等提供とは,求人情報又は求職者情報を労働者になろうとする者又は求人者等に提供する事業であり,令和4年10月施行の改正職業安定法により規律が整備された。
求職者に関する情報を収集して募集情報等を提供する特定募集情報等提供事業者は,職業安定法43条の2に基づく届出を要する。
特定募集情報等提供事業者には,労働者になろうとする者への金銭等の提供に関する規制,事業概況報告,事業情報の公開,苦情処理及び個人情報の適正な管理等が課される。
制度の全体像及び届出様式は,厚生労働省の「募集情報等提供事業」で確認できる。
2 求人情報の的確な表示
職業安定法5条の4は,求人者,職業紹介事業者及び募集情報等提供事業者等に対し,求人等に関する情報について虚偽又は誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めている。
また,正確かつ最新の内容に保つための措置を講じなければならない。
求人を終了したのに掲載を続けること,実際の業務と著しく異なる名称を用いること,又は固定残業代を基本給と区別せずに表示することは,応募者に誤解を生じさせる原因となる。
求人情報の掲載後も,募集の終了,労働条件の変更及び求人者からの訂正依頼を反映する運用が必要である。
3 令和6年4月から追加された明示事項
令和6年4月1日から,求人時に明示すべき労働条件として,①従事すべき業務の変更の範囲,②就業場所の変更の範囲及び③有期労働契約を更新する場合の基準が追加された。
更新上限がある場合は,通算契約期間又は更新回数の上限も明示する必要がある。
厚生労働省の「令和6年4月より,募集時等に明示すべき事項が追加されます」には,求人票の記載例が掲載されている。
求人広告,職業紹介事業者への求人申込み及び自社ウェブサイトの募集要項を同じ基準で点検するのが実務上有用である。
4 令和7年4月からの金銭等の提供及び利用料金の表示
(続きを読む...)職業安定法と採用活動-職業紹介,求人情報,社員紹介及び公正採用選考(AIリライト)