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遺言の作成・執行

遺言による金銭信託の受益権を放棄した場合―代替取得者・遺産分割協議・課税関係(AI作成)

目次第1 問題の所在と結論第2 銀行の遺言信託と遺言による信託第3 信託が効力を生ずる時期第4 受益権放棄と遺言の代替条項第5 相続人全員の協議で変更する場合第6 相続税・贈与税の検討順序第7 設例による整理第8 実務上の確認資料第9 関連記事と出典
第1 問題の所在と結論

遺言に「一定の金銭を信託し,甲を受益者とする」と書かれているとき,甲が受益権を放棄することと,信託銀行に遺言執行を依頼しないことは別の行為である。遺言が「甲が受益権を放棄した場合は信託を設定せず,その金銭を乙らに分ける」と定めていれば,代替条項の文言,信託の効力が生じた時期,受託者への通知と引受け,乙らの取得原因を順に確認する必要がある。受益権の放棄だけで,常に遺産全体が未分割に戻るとはいえない。

税務上も「遺言を執行しなかったから贈与税はない」「全員で協議したから常に相続税だけである」とは決められない。遺言の代替条項による被相続人からの取得なのか,成立後の信託に関する権利の無償移転なのか,信託終了による残余財産取得なのか,別の取得原因なのかを,民事上の経過とともに検討する。本記事は一般的な整理であり,代替条項を伴う遺言による信託の受益権全部放棄について,同一事実関係の税務判断を示した裁決・判決を確認したものではない。

第2 銀行の遺言信託と遺言による信託

銀行の商品名である「遺言信託」は,遺言書の保管・遺言執行等のサービスをいうことがある。他方,信託法3条2号の遺言による信託は,遺言により受託者に財産を管理・処分させ,受益者に受益権を与える制度である。一つの遺言に両方が登場することもあるため,銀行が「遺言執行者」なのか「受託者」なのかを条項ごとに特定する。遺言執行契約を解約しても,それだけで信託の設定条項や代替取得者の指定が消えるわけではない。

第3 信託が効力を生ずる時期

信託法4条2項は,遺言による信託は遺言の効力の発生によって効力を生ずると定める。受託者への送金を信託の成立時点と当然に捉えてはならない。受託者となるべき者が引き受けない場合は信託法5条の手続と遺言の代替条項を確認する。受託者の不引受けと受益者の放棄は当事者も法的効果も異なる。

信託法4条4項は,信託行為に停止条件又は始期が付されている場合,その成就又は到来によって信託が効力を生ずると定める。したがって,遺言の効力発生時に当然に信託が効力を生ずるという原則と,条項に基づく例外を区別する。受託者への送金前であるという事実だけでは,信託が未発効であることの根拠にならない。

第4 受益権放棄と遺言の代替条項

信託法99条1項は,受益者が信託行為の当事者である場合を除き,受託者に対する意思表示によって受益権を放棄できるとし,同条2項は放棄した者が初めから受益権を有しなかったものとみなす。したがって,放棄の相手方,時期,書面の到達を記録する必要がある。もっとも,この民事上の遡及効から,あらゆる税務関係が自動的に相続開始時に遡って決まると即断できない。

遺言に「受益者が放棄した場合は信託を設定しない」とあるときは,その文言が信託設定の条件・失効事由をどう定めるか,既に効力を生じた信託の扱いをどう整理するかが問題となる。さらに,代替条項が指定する取得者と割合を確認する。代替条項により他の相続人が金銭を取得するなら,単に「信託をやめる」案でも,遺産全体の取得割合が変わり得る。

遺言本文に「受益権を放棄した場合は信託を設定せず,金銭を指定した者に取得させる」とある一方,遺言に組み込まれた別紙信託条項に「受益権放棄により信託が終了し,残余財産を指定した者に分配する」とある場合,両条項の整合性を検討しなければならない。前者は遺言者からの直接の代替取得を,後者は効力を生じた信託の終了と残余財産の取得を示す読み方があり,同じ取得者・割合であっても取得原因は同じとは限らない。本文と別紙の一体性,適用順序,信託の効力発生条件,放棄の意思表示の到達及び執行状況を確認する。このような併存条項に対する判断を,文言の一部又は送金の有無だけで確定しない。

第5 相続人全員の協議で変更する場合

遺言と異なる最初の相続人全員の協議を行う場合,預貯金,証券,不動産を財産別に特定し,信託に充てる予定の金銭と受益権の扱いも明記する。遺言執行者への指図だけで,既に生じた受益権や受託者との法律関係を変更したことにはならない。必要な受益者・受託者の意思表示や信託行為の変更・終了の可否を別途検討する。

国税庁No.4176は「特定の相続人に全部の遺産を与える」遺言と異なる全員協議の例であり,金銭信託の代替条項と受益権放棄が組み合わさる事例を直接判断していない。金融資産だけ遺言どおり執行して残りを協議する場合には,財産ごとの取得時点・取得原因・金銭の移動を追える資料を残す。

第6 相続税・贈与税の検討順序

相続税法9条の2第1項は,受益者等が適正な対価を負担せずに信託に関する権利を取得した場合,信託の効力が生じた時に,委託者から贈与又は遺贈により取得したものとみなす。受益者が後に放棄し,別の人が対価なしで利益を受けるなら,同条2項・3項・4項のどの場面に当たるかを調べる。国税庁の相続税法基本通達9の2-4は,一部の権利の放棄・消滅後に他の受益者等が取得したものとみなされる場合を説明する。国税庁の解説は全部放棄にも同様の課税関係が生じ得ると述べる一方,信託の終了事由にもなり得るとする。

遺言の代替条項によって遺言者から直接金銭を取得する場合は,その相続又は遺贈について相続税を検討する。一方,受益者等の存する信託が終了し,他の者が適正な対価を負担せずに残余財産を受けるべき又は帰属すべき者となる場合には,相続税法9条の2第4項により,終了直前の受益者等からの贈与とみなされることが問題となる。終了直前の受益者等であった取得者が,従前の信託に関する権利に相当する残余財産を取得する部分は除かれる。従前の受益者等の死亡に基因する終了の場合は,みなし遺贈となる。遺言者の死亡後に受益者が放棄したというだけで,その終了が受益者等の死亡に基因するものになるわけではない。

相続税法基本通達9の2-5は,同項の対象を,信託行為で指定された残余財産受益者等に限定していない。受益権を他の相続人へ譲渡する契約がなくても,信託終了と残余財産取得によるみなし贈与の問題は残る。信託法99条2項の民事上の遡及効と,税法上の取得時点・移転元の判定を同一視しない。ただし,遺言本文の不設定条項と別紙の終了条項が併存する場合に,どちらの取得原因として取り扱うべきかを直接判断した同一事実関係の裁決・判決は,本記事で確認できていない。上記の一般規定だけから個別事案の贈与税を確定しない。

第7 設例による整理

遺言者が金銭の一部を信託してAを受益者とし,「Aが受益権を放棄するときは信託を設定せず,その金銭をA・B・Cに所定割合で取得させる」と定めたとする。まずAが放棄しなければ,原則としてAの受益権と受託者の地位を確認する。Aが放棄する場合は,放棄の意思表示と到達,代替条項の発動,金銭の帰属を確認する。B・Cが金銭を取得するなら,Aが放棄したこととB・Cが無償で利益を得たことの税法上の関係も検討する。A・B・Cがその後に遺産全体の別の配分を協議する場合は,先の取得と後の協議を時系列で記録する。

例えば,本文が放棄時の金銭の直接取得を定め,別紙が放棄による信託終了と同じ割合の残余財産分配を定める設例では,まず双方の条項を対照して取得原因を確定する。直接の相続・遺贈と整理できる場合は相続税の検討となり,既に効力を生じた信託の終了と整理される場合は相続税法9条の2第4項を検討する。金銭額に分配割合を掛けただけで,各取得者の贈与税の課税価格が直ちに確定するわけではない。信託終了直前の受益者等,従前の権利に相当する部分の除外,財産評価及び取得時点を確認する。

第8 実務上の確認資料

確認する資料は,①遺言全文と変更遺言,②信託設定条項・放棄時の代替条項,遺言本文と別紙信託条項の対応表,停止条件・始期及び終了条項,③遺言執行者と受託者の就職・引受け・辞退資料,④受益権放棄書と受託者への到達記録,⑤信託口座と一般の遺産口座の移動記録,⑥全員協議書案,⑦相続税評価資料と申告書の取得者別内訳である。協議前の段階では,放棄や送金を先行させることで選択肢が変わらないかを確かめる。

第9 関連記事と出典

関連記事:清算型遺言の清算金から信託を設定する場合,遺言を一部執行し残りを遺産分割協議で変更する場合,遺言と異なる遺産分割協議はできるか。

法令:信託法3条,4条,5条,99条,163条,164条,182条。相続税法9条の2。
国税庁:相続税法基本通達9の2関係,同通達9の2関係の解説,信託終了時の課税に関する通達解説,タックスアンサーNo.4176。

特定財産承継遺言と異なる最初の相続人全員の協議――登記原因と課税関係(AI作成)

目次第1 検討の対象と結論1 「最初の協議」であることの意味2 本記事の資料上の限界第2 まず確認すべき判決・裁決1 最高裁平成3年4月19日判決――遺言による取得の時点2 さいたま地裁平成14年2月7日判決――最初の全員協議の民事上の効力3 最高裁平成22年12月16日判決――中間の権利移転を省略する登記の限界4 国税不服審判所の裁決――後のやり直しを「最初の協議」と混同しない第3 事例別にみた協議の位置付け1 特定財産承継遺言があり、執行・登記前に最初の全員協議をする場合2 全遺産を一人に取得させる遺言を、最初の分割で変更する場合3 一部の財産について遺言を執行し、残部だけを協議する場合4 遺言どおりの取得後、又は最初の分割後に変更する場合5 金銭信託の代替条項がある場合第4 登記原因の検討1 民事上の有効性と登記原因は別の確認事項である2 登記前に確認する資料第5 課税関係の検討1 真正な代償分割である場合2 別個の低額譲渡・贈与と評価される場合3 後の再分割・申告訂正の場合第6 実務上の確認順序1 合意前に作る資料第7 出典
第1 検討の対象と結論
1 「最初の協議」であることの意味

特定の財産を特定の相続人に「相続させる」と定めた遺言がある場合でも、相続開始後、相続人全員がその財産を別の相続人に取得させることについて最初に合意することがある。この合意を、有効な遺産分割として扱えるか、遺言によりいったん取得した相続人からの贈与・交換・譲渡として扱うべきかは、登記と税務の双方に影響する。
結論を先に述べると、「全員による最初の協議」という形式だけで登記原因や課税関係が一律に確定するわけではない。遺言の文言、対象財産の範囲、遺言執行の状況、全員の合意内容、対価の性質及び従前の申告・登記を分けて確認する必要がある。

2 本記事の資料上の限界

本記事で確認した裁判例・裁決には、特定財産承継遺言がある不動産について、最初の全員協議により別の相続人が代償金を支払って取得した事案の登記原因と相続税・贈与税・所得税のすべてを一体として確定したものはない。民事上の協議の効力を認めた判決を、直ちに税務又は登記の先例として扱うことはできない。
以下では、資料が直接判断した事項と、実務上検討すべき事項を区別する。

第2 まず確認すべき判決・裁決
1 最高裁平成3年4月19日判決――遺言による取得の時点

最高裁平成3年4月19日判決は、特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言について、特段の事情がない限り、その遺産は被相続人の死亡時に直ちに当該相続人に承継されると判断した。後の協議を検討する出発点は、遺言によるこの権利移転である。
もっとも、この判決自体は、その後の相続人全員による最初の合意の効力、登記原因又は課税関係を判断したものではない。

2 さいたま地裁平成14年2月7日判決――最初の全員協議の民事上の効力

同判決の事案では、土地全部を一人の相続人に相続させる遺言があったが、相続人全員は、別の相続人に土地の74%、残る二人に各13%を帰属させる内容の協議をした。裁判所は、遺言が協議を禁じておらず、第三者の権利も害しないなどの事実関係の下で、協議の効力を認めた。判決は、その合意に贈与や交換を含む混合契約の性質があり得ることにも触れた上で、通常の遺産分割と同様に取り扱うことが適切と述べている。
これは当該協議の民事上の効力に関する判断である。登記申請の原因を一律に「遺産分割」とできることや、贈与税・譲渡所得税が生じないことまで判示したものではない。また、代償金を伴う事案の税務を判断したものでもない。

3 最高裁平成22年12月16日判決――中間の権利移転を省略する登記の限界

同判決は、贈与を受けた者が死亡して相続が生じた事案について、贈与と相続という中間の権利移転を飛ばし、最終取得者に「真正な登記名義の回復」を原因として直接移転登記をすることは認められないとした。
これは特定財産承継遺言と全員協議の事案ではない。したがって、同判決をそのまま当てはめることはできないが、実際に生じた権利移転と異なる登記原因を便宜的に選べないことを検討する資料となる。

4 国税不服審判所の裁決――後のやり直しを「最初の協議」と混同しない

平成17年12月15日裁決では、有効に成立した最初の遺産分割の後で、錯誤を理由に再分割したと主張された事案につき、贈与税の課税が維持された。平成23年12月6日裁決は、全財産を各2分の1とする遺言、相続税申告後の紛争及び遺留分をめぐる和解に関するもので、相続税法55条等の適用が争われた。
両裁決は「遺言と異なる最初の全員協議」そのものを判断したものではない。協議がいつ成立したのか、従前の申告・分割が何を前提にしていたかによって論点が変わることを示す資料である。

第3 事例別にみた協議の位置付け
1 特定財産承継遺言があり、執行・登記前に最初の全員協議をする場合

相続人全員の合意により遺言と異なる帰属を定める協議は、さいたま地裁判決のように民事上有効と評価され得る。ただし、遺言による死亡時の権利承継を踏まえると、合意の法的構成にはなお検討を要する。対象財産の取得者を変更した理由、他の遺産との調整、支払金の位置付け、第三者の権利及び遺言執行者の権限を確認すべきである。
協議書の表題を「遺産分割協議書」としたことだけで、登記及び税務の取扱いは決まらない。

2 全遺産を一人に取得させる遺言を、最初の分割で変更する場合

国税庁タックスアンサーNo.4176は、遺言で財産全部を一人の相続人に取得させることとされていたが、相続人全員の協議で遺言と異なる分割をした場合、取得財産について相続税の課税対象として扱い、相続人間の贈与税の問題は生じないと説明する。関連する質疑応答は、全財産の包括遺贈を題材にしている。
この説明を、特定の土地だけを取得させる遺言と、別途執行される預貯金等がある事案へ無条件に拡張することはできない。個別の遺言と協議の構造を示して税務上の確認を要する。

3 一部の財産について遺言を執行し、残部だけを協議する場合

預貯金等は遺言どおりに払い戻し、土地だけを別の相続人が金銭を支払って取得する場合、土地の移転を遺産全体の分割調整として説明できるかが問題となる。協議書に「代償金」と記載しただけでは、遺言に基づいて土地を承継した者からの別個の移転という評価を排除できない。

(続きを読む...)特定財産承継遺言と異なる最初の相続人全員の協議――登記原因と課税関係(AI作成)

遺言を一部執行し残りを遺産分割協議で変更する場合―代償金・税務・信託銀行報酬(AI作成)

目次第1 問題の所在と結論第2 最初に財産ごとに確認すること1 遺言による帰属と執行の対象2 遺言執行者の就職と契約上の範囲第3 協議の範囲と順序1 遺産全体について最初の協議をする場合2 金融資産を執行し,別の財産だけ協議する場合3 協議が成立しない場合4 遺言に金銭信託と放棄時の代替条項がある場合第4 代償金の性質と相続税1 真正な代償分割の場合2 評価方法による課税価格の違い第5 低額譲渡と評価される場合の税務第6 信託銀行報酬を含む三つの選択肢1 比較する三つの案2 報酬額と作業範囲を三列で照合する第7 協議書と税務申告に残す資料第8 関連記事第9 出典
第1 問題の所在と結論

遺言に預貯金・有価証券と不動産の取得者がそれぞれ指定されているとき,金融資産だけを遺言どおりに移し,不動産について相続人全員の協議で取得者を変更する案がある。この場合,金融資産を移した事実だけで不動産についての協議が無効になるわけではないが,「残りは未分割の遺産である」「代償金と書けば必ず相続税だけで済む」ともいえない。遺言の文言,遺産の帰属,遺言執行の進捗,協議の当事者と対象,金銭支払の実質を分けて確認する必要がある。

相続税について,国税庁の「No.4176 遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の相続税と贈与税」は,「特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言」があり,相続人全員で異なる分割をした事例への回答である。複数の財産について取得者を定めた遺言の一部を執行し,別の財産だけについて協議する事例を直接扱っていない。この違いを踏まえずに贈与税の心配はないと断定すべきではない。

第2 最初に財産ごとに確認すること
1 遺言による帰属と執行の対象

まず,財産目録の各行について,①遺言のどの条項が取得者を定めるか,②遺言執行者は誰か,③実際に執行の対象となるか,④払戻し・名義変更・登記がどこまで進んだかを照合する。「その他一切の財産」などの残余財産条項も確認する。遺言の特定財産承継条項がある財産を,手続が済んでいないという理由だけで当然に未分割財産と扱うことはできない。

2 遺言執行者の就職と契約上の範囲

信託銀行が遺言で指定されていても,就職の有無,受任・辞退・辞任の段階,対象財産,すでに行った手続を確認する。銀行の一般的な案内でも,相続人と財産の状況を確認してから遺言執行者に就職し,調査対象は遺言執行対象財産に限ると説明されている(三菱UFJ信託銀行「お手続きの流れ」)。個別の遺言と契約の内容が優先するため,公開案内だけで当該銀行の義務や報酬を決めることはできない。

第3 協議の範囲と順序
1 遺産全体について最初の協議をする場合

相続人全員と必要な受遺者が,遺言と異なる取得関係を遺産全体について合意できる見込みがあるなら,執行前に協議書をまとめる方法がある。各財産の最終取得者,代償金,支払期限,費用負担,遺言執行者への連絡を一通の協議書と別紙財産一覧で示しやすい。ただし,遺言執行者が就職済みの場合はその権限との関係を先に整理し,銀行の辞退・辞任に要する条件と費用も確認する。

2 金融資産を執行し,別の財産だけ協議する場合

協議の対象を一部の財産に限ること自体は検討できるが,「遺言による金融資産の取得」と「別の財産の協議による取得」を時系列で説明できるようにする必要がある。協議書には対象財産と対象外財産を具体的に分け,先行する執行,遺言による取得,代償金の趣旨,残余財産の扱いを明記する。遺言で特定の人への帰属が既に定められている財産については,協議の名称だけで相続税上の取得原因まで確定するわけではない。

3 協議が成立しない場合

全員の合意が得られなければ,遺言の内容と遺言執行者の権限を基礎に手続を進めることになる。成立するか不明の段階で,協議が成立したことを前提に金融機関への指図,代償金の送金,登記を先行させるべきではない。法定の申告・登記の期限がある場合は,合意待ちと期限対応を別に管理する。

4 遺言に金銭信託と放棄時の代替条項がある場合

遺言に金融資産の取得者を指定するだけでなく,その一部から金銭信託を設定し,受益者が受益権を放棄したときの代替取得者まで定めている場合は,銀行の遺言執行サービスと信託法上の信託を分けて扱う。銀行に遺言執行を依頼しないだけでは,信託設定条項や代替条項は消えない。遺言による信託は遺言の効力発生により効力を生ずる(信託法4条2項)。受益権放棄は,受益者が信託行為の当事者である場合を除き,受託者への意思表示による(同法99条)。放棄時に別の相続人が金銭を取得する遺言なら,その者の金融資産の取得額も変わり得る。

受益権放棄後の課税は,遺言の代替条項に基づく被相続人からの取得か,成立後の信託に関する権利の移転かを検討する。相続税法9条の2及び国税庁の基本通達9の2関係を確認し,遺言全文,放棄の記録,銀行・受託者の地位,実際の金銭移動を税理士に示す。詳しくは遺言による金銭信託の受益権を放棄した場合を参照。

第4 代償金の性質と相続税
1 真正な代償分割の場合

国税庁の「No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」は,現物を取得した人が他の共同相続人等に債務を負担する代償分割について,支払者の課税価格から代償財産の価額を控除し,受取者の課税価格に加算する取扱いを示す。代償金を支払者の固有の現金から出すこと自体は,この説明と矛盾しない。ただし,固有の現金で支払えば必ず代償分割になる,という意味ではない。代償金を支払うこと自体が贈与税を生じさせるわけでもない。代償金のない合意と代償金のある合意で,取得原因の判断を機械的に逆転させない。

民事上の代償金は,具体的相続分と現物取得額の差額と機械的に一致しなければならないものではない。寄与分・特別受益,評価の違い,紛争解決のための譲歩などを踏まえて合意する余地がある。一方,金額を自由に合意できるという民事上の問題と,その金銭が税務上も相続に伴う代償債務と認められるかという問題は別である。協議前に遺言で定められた帰属,遺産全体の取得額,評価資料,金額の算定経緯を確認する必要がある。

2 評価方法による課税価格の違い

代償金が対象財産の分割時の通常の取引価額を基に決められた場合,相続税の課税価格に算入する代償財産の額は,単純な支払額と異なり得る。国税庁No.4173は,相続開始時の相続税評価額と分割時の通常取引価額との割合を用いる例を示している。協議書には,時価,評価基準日,評価根拠,代償金の算定方法を残し,申告書との整合を税理士と確認する。

第5 低額譲渡と評価される場合の税務

遺言で特定の人が財産を取得した後,別の人に金銭と引換えに移したと評価されれば,後の移転は真正な代償分割と異なる課税関係になり得る。国税庁の「No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」によれば,個人間で財産を著しく低い価額で譲り受けた場合,時価と対価との差額は贈与により取得したものとみなされる。判定は個々の事案による。法人向けの「時価の2分の1未満」という基準を,個人間取引の一律の安全基準にすることはできない。

土地については通常の取引価額がこの検討の出発点になる。ただし,見積もった時価から代償金を差し引いた全額が直ちに課税される,と計算することもできない。まず取得原因が相続に伴う分割なのか,遺言による取得後の有償移転なのかを検討し,土地の権利関係と評価の妥当性,遺産全体の配分と他の負担,金銭の実際の授受を調べる必要がある。有償移転と整理される場合には,譲渡した側の所得税・住民税の検討も別途必要となる。

第6 信託銀行報酬を含む三つの選択肢
1 比較する三つの案

①銀行が対象の金融資産について遺言を執行し,別財産は関係者が協議する案,②執行前に遺産全体について協議し,銀行の就職や対象変更を調整する案,③協議が不成立なら遺言どおり執行する案を並べる。①には金融機関との手続を任せる便益がある一方,協議書・登記・税務申告は別の担当者と費用が必要になり得る。②は法律関係を一通の協議書と一覧表で示しやすいが,全員の合意が前提である。③は合意不成立時の現実的な経路として残る。

2 報酬額と作業範囲を三列で照合する

報酬を比較するときは,①報酬計算の基礎に入る財産,②銀行が実際に執行する財産,③相続人・他の専門家に残る仕事と費用を分けて確認する。銀行が金融資産だけを扱うことが,直ちに不合理とはいえない。口座数や証券の種類,換価・送金の負担,銀行の専門性,合意成立の見込みによって便益が変わる。一方,高額の報酬に見合う作業がどこまで含まれるかは,個別契約で確かめなければならない。

(続きを読む...)遺言を一部執行し残りを遺産分割協議で変更する場合―代償金・税務・信託銀行報酬(AI作成)

相続した株式を遺言執行者が売却した場合の税金―法定相続分による申告と確定申告の方法(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 この記事の対象2 結論3 最初に確認する順序第2 誰が譲渡所得を申告するか1 国税庁が法定相続分による申告とした事例2 法定相続分が常に結論となるわけではないこと3 遺言執行者本人の所得にはならないこと4 売却後に疑問が生じた場合第3 各相続人の譲渡所得の計算1 基本式と按分2 取得費は相続税評価額ではないこと3 相続税の取得費加算は各人ごとに計算すること4 上場株式等と一般株式等を分けること5 税率第4 遺言執行者が作成・交付する資料1 共通計算書2 各人に渡す資料3 売却代金の分配と所得税第5 各相続人による確定申告の具体的方法1 申告前の準備2 確定申告書等作成コーナー又はe-Taxを利用する場合3 書面で提出する場合4 申告期限と納付第6 計算例1 法定相続分で申告する例2 分配割合と申告割合が異なる可能性第7 特に注意を要する場合1 特定口座と源泉徴収2 NISA口座の株式3 譲渡損失4 相続した非上場株式を発行会社へ売る場合5 限定承認,国外居住者及び外国証券第8 関連する記事1 遺言執行者による換価実務2 換金指定のある遺言と現物取得第9 出典1 法令2 国税庁の質疑応答・解説・手引き3 研究資料
第1 この記事の対象と結論
1 この記事の対象

本記事は,被相続人が所有していた株式を遺言執行者が売却し,その代金を相続人又は受遺者に分配する場面を対象とする。
遺言執行者が売却名義人であるため遺言執行者が一括して申告するのか,各相続人が法定相続分で申告するのか,遺言で定めた分配割合によるのかが問題となる。

2 結論

国税庁の質疑応答事例には,遺言執行者が遺産である不動産及び有価証券を換価した事案について,譲渡所得は法定相続分に応じて各相続人が申告するとしたものがある。
したがって,当該事例と同様に,売却時まで株式が共同相続人に帰属し,遺言執行者の処分の効果が相続人に直接生ずると整理できる事案では,各相続人が法定相続分に応じて確定申告するのが基本となる。遺言執行者が遺言執行者名義で一括申告するものではない。
もっとも,この結論は遺言執行者が売却したという一点だけから常に導かれるものではない。遺言が特定の者に換価代金のみを遺贈する趣旨か,包括遺贈か,相続分又は遺産分割方法を指定したものかによって,売却時の権利帰属と所得の帰属が異なり得る。

3 最初に確認する順序

①遺言の全文と遺言執行者の権限,②売却時に株式が誰に帰属していたか,③譲渡所得の申告者と割合,④各人に配分する売却代金・取得費・売却費用,⑤各人固有の取得費加算・損益通算等の順に確認する。
分配割合をそのまま申告割合と考えたり,相続税評価額を取得費と考えたりすると誤りやすい。

第2 誰が譲渡所得を申告するか
1 国税庁が法定相続分による申告とした事例

国税庁「遺言に基づき遺産の換価代金で特定公益信託を設定した場合の相続税及び譲渡所得の課税関係」は,遺言執行者が遺産である不動産及び有価証券を売却した事例について,遺産の換価処分は遺言執行者の職務として行われ,その権限内の行為は相続人に直接効力を生ずることを理由に,「法定相続分に応じて各相続人が申告する必要があります」と回答している。
この事例に従う場合,各相続人は自分の法定相続分だけを自分の確定申告書に計上する。遺言執行者は,各人が同じ基礎資料に基づいて申告できるように,共通の計算書と証拠資料を交付する。

2 法定相続分が常に結論となるわけではないこと

前記の国税庁ページは,照会された事実関係を前提とする一般的な回答であり,具体的な取引では異なる課税関係が生ずることがあると明記している。
小柳誠「換価遺言が行われた場合の課税関係について」(税務大学校論叢85号)は,換価遺言を一律に捉えず,不特定物である金銭の遺贈,包括遺贈又は相続分・遺産分割方法の指定のいずれと解するかを検討する必要があるとする。そして,金銭の遺贈と解される類型では,受遺者を譲渡所得の納税義務者とする見解を示している。
これは税務大学校の研究論文であり,前記の質疑応答事例と同じ位置付けの公式回答ではない。しかし,遺言の型によって納税義務者の検討が変わることを示す重要な資料である。

3 遺言執行者本人の所得にはならないこと

遺言執行者は,遺言の内容を実現するために株式を管理・処分する者であり,売却代金を自分のために取得する者ではない。
したがって,遺言執行者が注文を出し,売却代金を遺言執行者名義の管理口座で受領したという外形だけで,遺言執行者個人の譲渡所得になるものではない。遺言執行者自身が相続人又は受遺者でもある場合は,その者として帰属する部分を個人の申告に含める。

4 売却後に疑問が生じた場合

既に売却済みでも,まず遺言書,遺言執行者の就職・権限を示す書類,証券会社の相続手続書類,売却報告書,換価代金の分配計算書及び相続関係を揃える。
申告期限前に税理士又は所轄税務署へ事実関係を具体的に示して確認し,誰がどの割合で申告するかを相続人間で統一して記録する。同じ売却について重複申告又は申告漏れが生じないようにする。

第3 各相続人の譲渡所得の計算
1 基本式と按分

国税庁タックスアンサーNo.1463によれば,株式等の譲渡所得等は,譲渡価額から取得費と委託手数料等を差し引いて計算する。
法定相続分で申告する事案では,各人の譲渡価額,取得費及び売却に直接要した費用を同じ法定相続分で按分するのが出発点となる。すなわち,「各人の譲渡所得等=売却代金×申告割合-被相続人の取得費×申告割合-売却手数料等×申告割合」である。

(続きを読む...)相続した株式を遺言執行者が売却した場合の税金―法定相続分による申告と確定申告の方法(AI作成)

弁護士が遺言執行者に就任した後の預貯金・国債・年金保険の手続―就任通知・財産目録,口座の照会と取引経過,ゆうちょ銀行の流れ,非課税貯蓄の死亡届出及び報酬の精算(AI作成)

目次第1 この記事の対象と確認の方法1 対象2 確認の方法と結論の要旨第2 就任直後の法律上の義務1 任務の開始,相続人への通知及び財産目録2 権利義務,委任規定の準用及び行為の効果3 特定財産承継遺言と預貯金の払戻し・解約4 相続人の処分の制限(民法1013条)第3 金融機関への連絡・照会と口座の停止1 死亡の連絡で口座が止まること2 口座の照会と取引経過の開示3 遺言執行者が手続をするときの書類第4 ゆうちょ銀行の相続手続の流れ1 六つのステップ2 相続確認表,必要書類及び払戻金の受取方法3 民営化前の郵便貯金第5 個人向け国債1 相続人の口座への移管と中途換金の特例第6 非課税貯蓄(マル優・特別マル優)の死亡届出1 非課税貯蓄者死亡届出書2 死亡後の利子の課税第7 年金保険(保証期間付きの個人年金)1 年金受取人が死亡した場合の手続2 相続税と所得税の扱い第8 報酬・執行費用の精算と執行の終了1 遺言執行者の報酬2 執行費用3 執行の終了と報告第9 実務チェックリスト1 就任から精算までの確認事項第10 関連記事第11 出典1 法令2 裁判例3 官公庁・金融機関の公表資料4 弁護士会の告示
第1 この記事の対象と確認の方法
1 対象
(1) 弁護士個人が遺言執行者として金融機関とやり取りする場面

本記事は,遺言で指定され,又は家庭裁判所で選任されて遺言執行者に就任した弁護士が,被相続人名義の預貯金,個人向け国債及び年金保険について金融機関とやり取りする場面を扱う。
読者として想定しているのは,遺言執行者に就任した弁護士その他の専門家と,遺言執行者に手続を任せる相続人及び受遺者である。
信託銀行が遺言執行者に就任した場合の流れは,信託銀行が遺言執行者に就任した後の手続とスケジュールで扱っている。

(2) この記事で扱わないこと

遺言の文言が「任せる」「託す」のようにあいまいで,金融機関が払戻しに応じない場面は,「任せる」「託す」と書かれた遺言は有効か―遺言の解釈の基準,有効・無効とされた裁判例,金融機関が払戻しを拒んだ場合の対応及び作成時の注意で扱う。
相続人の代理人として銀行口座の相続手続をする場面は,弁護士が代理人として被相続人の銀行口座の相続手続をする方法で扱っている。
証券口座の株式・投資信託は,遺言執行者が相続株式・有価証券を売却して分配する際の実務上の問題点に譲る。

2 確認の方法と結論の要旨
(1) 確認の方法と資料の性質

令和8年9月26日に,民法,家事事件手続法,所得税法,同法施行令,租税特別措置法,同法施行令及び相続税法の条文をe-Gov法令検索(法令API)で取得し,平成30年法律第72号の附則は民法の附則として取得した。
裁判例は,裁判所HPの裁判例検索で書誌,判示事項及び裁判要旨を確認し,判決全文のPDFを読んだものだけを挙げる。
金融機関の手続は,同日時点の各金融機関の公式ページ及び公式ページに掲載されたPDFの記載だけを書き,各ページのURLを本文と出典に示す。
金融機関の手続は予告なく変わることがあるので,以下の記載は令和8年9月26日時点のものであり,着手の際には各金融機関の案内を取り直す必要がある。

(2) 結論の要旨

①遺言執行者は,就職を承諾したら直ちに任務を開始し,遅滞なく遺言の内容を相続人に通知し,相続財産の目録を作成して相続人に交付しなければならない(民法1007条,1011条1項)。
②特定財産承継遺言の目的が預貯金債権であれば,遺言執行者は払戻しを請求でき,預貯金債権の全部が目的であれば解約の申入れもできる(民法1014条3項)が,令和元年7月1日(施行日)前にされた遺言には同条2項から4項までは適用されない(平成30年法律第72号附則8条2項)。
③ゆうちょ銀行,三井住友銀行,みずほ銀行及び三菱UFJ銀行の公式ページには,名義人の死亡の連絡を受けると口座の入出金を止める旨の記載がある。
④共同相続人の一人は,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を単独で求めることができる(最高裁平成21年1月22日判決)が,遺言執行者自身の開示請求権について判断した最高裁判例は確認できなかった。
ただし,三菱UFJ銀行,三井住友銀行及びみずほ銀行の公式ページは,遺言執行者を取引明細等の証明書の依頼者として挙げている。
⑤非課税貯蓄(障害者等のマル優・特別マル優)の預金者が死亡したときは,相続人が非課税貯蓄者死亡届出書を金融機関に提出する(所得税法施行令46条1項)。
死亡後に支払を受けるべき利子のうち死亡した日までの期間に対応する部分を超える利子には,原則として非課税の規定が適用されない(所得税基本通達10-21)。
⑥報酬は,遺言に定めがあればそれにより,定めがなければ家庭裁判所が定めることができる(民法1018条1項,家事事件手続法別表第一の105項)。

第2 就任直後の法律上の義務
1 任務の開始,相続人への通知及び財産目録
(1) 任務の開始と通知(民法1007条)

民法1007条1項は「遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。」と定める。

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清算型遺言の清算金から信託を設定する場合―遺言執行者・受託者・受益者の役割,受託者への引渡し,代替条項及び課税(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 この記事の対象と基準日2 結論の要約第2 「遺言信託」という言葉の二つの意味1 銀行サービスとしての遺言信託2 財産管理制度としての信託第3 信託を設定する方法と時期1 生前に設定した信託へ拠出する場合2 遺言による信託(信託法3条2号)の場合3 相続開始後に信託契約を締結する場合4 受託者となるべき者が引き受けない場合第4 遺言執行者・受託者・受益者の役割1 三者の根拠と任務2 同じ者が遺言執行者と受託者を兼ねる場合第5 相続開始から完了報告までの手順1 遺言執行者の就職と受託者の引受けの確認2 預貯金・有価証券の換価3 費用・債務・税金の留保額の確定4 受託者への指定額の引渡し5 残額の分配6 引継資料・通知・完了報告第6 遺言を作成するときに置いておく条項1 信託銀行が就職又は受託を辞退した場合の代替条項2 清算金が不足する場合の減額順序3 受益者の先死亡と判断能力の低下4 信託の終了と残余財産の帰属5 受益者が受益権を放棄する場合の代替条項第7 課税と信託業法1 信託に関する権利の相続税2 国税庁の質疑応答事例の位置付け3 換価による譲渡所得4 受託者と信託業法5 受益権放棄後の課税関係第8 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の資料4 業界団体の解説・文献
第1 この記事の対象と結論
1 この記事の対象と基準日
(1) 想定する遺言

本記事は,遺言者が遺産を換価し,費用及び債務を支払った後の金銭(以下「清算金」という。)のうち一定額を信託の財産とし,残額を相続人又は受遺者に分配するよう定めた遺言を扱う。
例えば,「遺言執行者は,遺言者の預貯金及び有価証券を換価し,その換価金から遺言者の債務,遺言執行費用及び遺言執行者の報酬を控除した残額のうち,第○条に定める額をBに信託する。Bは,これをCの生活費等に充てるため管理し,Cに給付する。残額は,D及びEに各2分の1の割合で取得させる。」という形の遺言である(本記事で作成した一般的な例である)。
清算型遺言一般の実現方法,信託銀行が遺言執行者への就職を辞退した場合の手続及び換価による譲渡所得の帰属は,清算型遺言(財産を換金して分ける遺言)の実現方法で扱っており,本記事は,清算金の一部を信託へ回す場合に固有の問題を取り上げる。

(2) 資料と基準日

本記事は,令和8年9月25日時点でe-Gov法令検索に掲載されている信託法,民法,相続税法,信託業法等の条文,裁判所ウェブサイトに掲載された最高裁判所の判決,国税庁の質疑応答事例及び信託協会の公開資料に基づいて整理したものであり,AIを用いて作成した。
条文の文言から直接導けない部分は,「本記事では~と整理する」「~と考えられる」という形で示す。

2 結論の要約

①信託銀行が商品名として用いる「遺言信託」は,遺言書の保管や遺言の執行を中心とするサービスであり,その契約だけで信託法上の信託が設定されるわけではない。
②遺言で信託を設定する場合(信託法3条2号),信託は遺言の効力の発生によって効力を生ずる(同法4条2項)から,遺言執行者が受託者へ送金することは信託を成立させる行為ではなく,信託財産となる金銭を受託者に移転する遺言の執行である。
③受託者に指定された者は引受けを義務付けられず,引受けの催告に確答しなければ引受けをしなかったものとみなされる(信託法5条2項)から,予備的な受託者を遺言で定めておくことが考えられる。
④遺言執行者は,換価,費用・債務・税金の留保額の確定,受託者への引渡し及び残額の分配の順に執行し,計算書,振込記録,受領書及び完了報告を残す。
⑤清算金が予定額に足りない場合の減額順序,受益者の先死亡と判断能力の低下,信託の終了事由及び残余財産の帰属は,遺言で定めておかないと法律の補充規定や解釈に委ねられる。
⑥遺言による信託の受益者は,信託に関する権利を遺言者から遺贈により取得したものとみなされる(相続税法9条の2第1項)。

第2 「遺言信託」という言葉の二つの意味
1 銀行サービスとしての遺言信託

信託協会の解説ページは,「遺言信託」を,信託銀行等が遺言書作成の相談から遺言書の保管,遺言の執行までの相続手続を支援するサービスとして説明している。
このサービスの中核である遺言の執行は,金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(以下「兼営法」という。)1条1項4号が,認可を受けた金融機関の営むことができる業務として掲げる「財産に関する遺言の執行」に当たる。
そのため,信託銀行と「遺言信託」の契約をしただけでは,遺言者の財産が受託者に移るわけではなく,信託法上の信託財産や受益権は生じない。
信託銀行の遺言信託を利用するときの費用や辞退の問題は,信託銀行の遺言信託を利用する遺言者と家族の注意事項で扱っている。

2 財産管理制度としての信託

信託法2条1項は,信託を,同法3条各号の方法により,特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分等をすべきものとすることと定義している。
信託財産は受託者に属する財産であり(同法2条3項),受託者は信託行為の定めに従い信託財産の管理又は処分等をすべき義務を負い(同条5項),受益者は受益権を有する(同条6項・7項)。
本記事で「信託」というときは,この信託法上の信託を指す。
銀行サービス,遺言による信託及び遺言代用信託の違い全般は,遺言信託の記事で説明している。

第3 信託を設定する方法と時期
1 生前に設定した信託へ拠出する場合

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遺言書を開示した信託銀行はいつ遺言執行者に就任するのか―指定,死亡通知,就職の審査,就職通知及び任務開始の違い(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 この記事の対象2 結論第2 指定から執行完了までの5段階1 5段階の整理2 信託銀行の公開案内での書き方第3 就職の承諾が任務開始の基準となること1 民法1007条の定め2 開示や資料提出は就職の承諾を意味しないこと第4 就職の承諾前でも相続人の処分は制限されること1 最高裁昭和62年4月23日判決2 承諾前でも制限される理由3 現行民法1013条2項ただし書4 制限が及ぶ範囲第5 相続人側が確認し,働きかけられること1 日付を分けて確認する2 民法1008条の催告3 辞退された場合の家庭裁判所による選任4 就職後の辞任には家庭裁判所の許可が必要であること第6 出典1 法令2 裁判例3 法務省の公表資料4 文献5 信託銀行及び業界団体の公開案内
第1 この記事の対象と結論
1 この記事の対象

信託銀行の遺言信託を利用した遺言者が亡くなると,信託銀行は保管していた遺言書を相続人等に開示し,その後,遺言執行者として相続手続を進めるのが一般的な流れである。
もっとも,遺言書で信託銀行が遺言執行者に指定されていても,遺言書を開示した時点で,その銀行が遺言執行者として任務を開始しているとは限らない。
本記事は,信託銀行がいつ遺言執行者に就任するのかを,民法の用語である「就職」を用いて,遺言書での指定,死亡連絡と遺言書の開示,就職の審査,就職の承諾と通知及び任務の遂行という段階に分けて説明する。
本記事は,令和8年9月25日時点でe-Gov法令検索に掲載されている民法の条文,裁判所ウェブサイトに掲載された最高裁判所の判決,法務省の公表資料,立案担当者の解説書並びに信託銀行及び信託協会の公開案内に基づいて作成した。

2 結論

遺言執行者として任務を行う義務が生じる基準は,遺言書の開示ではなく,指定された者が就職を承諾した時である(民法1007条1項)。
他方で,相続人が相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないという制限(民法1013条1項)について,最高裁判所は,指定された者が就職を承諾する前であっても及ぶとしている(最高裁昭和62年4月23日第一小法廷判決)。
そのため,遺言書の開示から就職の承諾までの間は,信託銀行がまだ遺言執行者として執行事務を始めていない一方で,相続人も遺言の内容に反する処分を自由にはできない期間となる。
相続人側は,遺言書の開示日,就職を承諾した日,就職通知書の日付及び遺言の内容の通知を別々に確認し,就職の判断が長引く場合には民法1008条の催告を検討することになる。

第2 指定から執行完了までの5段階
1 5段階の整理

信託銀行が遺言執行者に指定された場合の流れを,本記事では次の5段階に整理する。
このうち②と③は,指定された信託銀行が就職を承諾する前の段階である。

段階主な出来事民法上の位置付け相続人側が確認すること①遺言書で指定遺言者が公正証書遺言で信託銀行を遺言執行者に指定し,銀行が遺言書を保管する遺言で遺言執行者を指定することができる(1006条1項)。遺言の効力は遺言者の死亡の時から生ずる(985条1項)遺言書の写し,遺言信託の約定書②死亡連絡・遺言開示通知人が死亡を連絡し,銀行が相続人等に遺言書を開示する就職の承諾前。ただし,相続人の処分の制限(1013条)は既に及ぶ開示を受けた日,開示を受けた相続人等の範囲③就職の審査相続人の確定,財産の変動,遺言内容の実現可能性を銀行が調査する就職の承諾前。承諾するか辞退するかの判断過程審査の見込み期間,提出を求められた資料④就職承諾・就職通知銀行が就職を承諾し,相続人に就職を通知する承諾により直ちに任務を行う義務が生じ(1007条1項),任務の開始時に遅滞なく遺言の内容を通知する(同条2項)就職を承諾した日,通知書の日付,遺言の内容の記載の有無⑤財産調査・換価・分配・完了報告財産調査,財産目録の作成・交付,換価・名義変更・分配,完了の報告財産目録の作成・交付(1011条1項),遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務(1012条1項)財産目録,執行の対象となる財産の範囲,費用

表の各段階は,次の2で紹介する信託銀行の公開案内に記載された流れを,民法の条文に対応させて並べたものである。
銀行ごとの手続の細部や所要期間は,遺言信託の約定書及び銀行からの個別の案内で確認することになる。
就職した後の財産目録,換価・名義変更,税務等の具体的な進み方は,信託銀行が遺言執行者に就任した後の手続とスケジュールで説明している。
①の段階で遺言者と家族が確認しておくべき費用や辞退の条件は信託銀行の遺言信託を利用する遺言者と家族の注意事項で,⑤の段階で株式・投資信託等を売却して分配する際の問題は遺言執行者が相続株式・有価証券を売却して分配する際の実務上の問題点で扱っている。
遺言で清算金の一部を信託へ拠出するよう定めている場合は,遺言執行者の就職とは別に受託者の引受けも確認する必要があり,その手順は清算型遺言の清算金から信託を設定する場合で説明している。

2 信託銀行の公開案内での書き方
(1) 開示と就職を別の項目にしている例

三菱UFJ信託銀行の「遺言信託[遺心伝心]」の手続の流れの案内は,遺言の執行の段階として「ご逝去のご通知」,「遺言書の開示」,「遺言執行者への就職」及び「財産調査へのご協力」を順に別の項目として掲げている。
同案内は,通知人から逝去の通知を受けると相続人等関係者に保管している遺言書を開示するとした上で,就職については「相続人確定・財産変動等、遺言内容の実現性を調査・確認のうえ、遺言執行者に就職いたします。」と記載している。
この案内の上でも,遺言書の開示と遺言執行者への就職の間には,相続人の確定や遺言内容の実現性の調査という段階が置かれている。

(2) 開示と就任を一つの項目にまとめている例

三井住友信託銀行の遺言信託の案内は,「遺言書のご披露と遺言執行者就任」を一つの項目とし,遺言書の内容を相続人・受遺者に披露した「その後」に遺言執行者に就任すると記載している。
信託協会の遺言信託の案内も,相続開始後の流れとして,信託銀行等が遺言書の内容を相続人などに披露し,遺言執行者となって執行業務を始めることを一つの項目で説明している。

(続きを読む...)遺言書を開示した信託銀行はいつ遺言執行者に就任するのか―指定,死亡通知,就職の審査,就職通知及び任務開始の違い(AI作成)

余命宣告を受けた後に特定の相続人へ多くのお金を残す方法―一時払終身保険,遺言代用信託,生前贈与及び遺言の比較(非課税枠・特別受益・遺留分)(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 この記事の対象2 結論の要約第2 「生前に渡す」と「死亡時に渡す」の区別1 生前に渡す手段は贈与である2 死亡時に確実に渡す手段第3 終身保険を使う場合1 死亡保険金は受取人の固有の権利である2 相続税の非課税枠3 原則として特別受益に当たらない4 原則として遺留分の算定にも入らない5 余命宣告を受けた後に加入できるか6 既に加入している保険の受取人を変更する第4 遺言代用信託を使う場合1 仕組み2 相続税に非課税枠はない3 特別受益と遺留分4 遺言代用信託が向いている場面第5 生前贈与を使う場合1 暦年課税の贈与と加算期間2 相続時精算課税3 民法上の扱い第6 数値例による比較1 前提2 比較表第7 手段の選び方1 比較の一覧2 組合せの例3 余命宣告を受けた後に急ぐべきこと第8 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説4 商品資料
第1 この記事の対象と結論
1 この記事の対象
(1) 問題となる場面

余命宣告を受けた人が,同居して介護をしてくれた子,障害のある子,配偶者等,特定の相続人に他の相続人より多くのお金を残したいと考えることがある。
その手段としては,終身保険(特に保険料を一度に払い込む一時払終身保険)の保険金受取人をその相続人にする方法,信託銀行の遺言代用信託(例えば三菱UFJ信託銀行の「ずっと安心信託」)を使う方法,生前贈与をする方法及び遺言を書く方法が考えられる。
本記事は,これらの手段を,相続税の非課税枠,特別受益,遺留分,余命宣告後に実際に利用できるか等の観点から比べる。

(2) 本記事の資料と基準日

本記事は,令和8年9月25日時点でe-Gov法令検索に掲載されている民法・保険法・相続税法・租税特別措置法・信託法の条文,裁判所ウェブサイトに掲載された最高裁判所の裁判例,判例秘書で確認した下級審の裁判例,国税庁のタックスアンサー並びに保険会社及び信託銀行が公表している商品資料に基づいて整理したものである。
商品の内容(加入年齢,金額の上限,手数料等)は改定されることがあるので,申込みの前に最新の約款と商品概要を確かめる必要がある。

2 結論の要約

特定の相続人に多く渡すことが目的であれば,保険に加入できる限り,被相続人が保険契約者・被保険者・保険料負担者となり,その相続人を死亡保険金受取人とする終身保険が有利である。
死亡保険金は受取人の固有の権利であり,相続人が受け取る死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり,原則として特別受益にも遺留分の算定にも入らないからである。
ただし,余命宣告を受けた後は告知が必要な保険には通常は加入できず,告知不要型の一時払終身保険でも,入院中の人や余命宣告を受けた人の申込みを引き受けないと明記している商品が多い。
そのため,余命宣告を受けた後は,既に加入している保険の受取人を変更できないかを先に確かめるべきである。
遺言代用信託は,死亡後すぐに指定した相続人へお金を渡す手段としては有用であるが,非課税枠はなく,特別受益や遺留分の対象となる可能性があるので,多く渡す手段としては保険より弱い。
生前贈与は,相続開始前の一定期間の贈与が相続税の計算に加算され,民法上も特別受益や遺留分の算定の対象となるので,余命宣告を受けた後の手段としては効果が小さい。

第2 「生前に渡す」と「死亡時に渡す」の区別
1 生前に渡す手段は贈与である

存命中にまとまったお金を相続人に渡せば,それは贈与であり,贈与税と,相続開始前の贈与の加算の問題が生じる。
民法上も,生計の資本としての贈与は特別受益となり得る(民法903条1項)。
詳しくは第5で説明する。

2 死亡時に確実に渡す手段

終身保険と遺言代用信託は,どちらも生前に手配しておき,本人の死亡時に指定した相続人へお金が届く仕組みである。
遺言も死亡時に効力を生じるが,遺言執行や遺産分割の手続を経るので,預貯金を受け取るまでに時間がかかることがある。
「生前にまとまったお金を渡したい」という相談の多くは,実際には「生きているうちに手配して,死亡したら確実に特定の相続人へ渡したい」という意味であるから,本記事では主に死亡時に渡す手段を比べる。

第3 終身保険を使う場合
1 死亡保険金は受取人の固有の権利である

保険法42条は,「保険金受取人が生命保険契約の当事者以外の者であるときは、当該保険金受取人は、当然に当該生命保険契約の利益を享受する。」と定める。
最高裁判所第二小法廷平成16年10月29日決定(平成16年(許)第11号,民集58巻7号1979頁)は,被相続人が自己を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の一人を保険金受取人と指定した養老保険契約に基づく死亡保険金請求権について,保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって,相続財産に属するものではないとした。

(続きを読む...)余命宣告を受けた後に特定の相続人へ多くのお金を残す方法―一時払終身保険,遺言代用信託,生前贈与及び遺言の比較(非課税枠・特別受益・遺留分)(AI作成)

遺言で換金して分けるとされた株式・投資信託を現物で受け取れるか―遺言の型,全員の合意,遺言執行者の権限及び税金(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 この記事の対象2 結論の要約第2 換金を指示する遺言の型1 遺産分割の方法として換金を指定する遺言2 清算型遺贈3 型を見分ける手掛かり第3 証券と換金の実務上の前提1 株式・投資信託は当然には分割されない2 被相続人名義の口座では売却しない3 遺言執行者の換金権限第4 現物で受け取るための要件1 相続人全員と受遺者全員の合意2 遺言執行者がいる場合3 遺言執行者がいない清算型遺贈4 価額の基準を合意する5 遺言の存在を知った上で合意したことを明らかにする6 清算金の一部を信託へ拠出する遺言の場合第5 税金の違い1 相続税と贈与税2 遺言執行者が換金した場合の譲渡所得3 現物で受け取って後で売る場合4 NISA口座の資産第6 手続の進め方1 協議前の確認2 協議書に書く事項3 関連記事第7 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・質疑応答及び研究資料4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 この記事の対象
(1) 問題となる場面

遺言書に,「有価証券を売却し,その代金を長男と長女に2分の1ずつ相続させる」,「遺言執行者において一切の財産を換価し,債務と費用を控除した残額を甲・乙・丙に遺贈する」等と書かれていることがある。
相続人の側では,相場が下がっているので今は売りたくない,長期保有の株式をそのまま持ち続けたい,売却による税金を避けたい等の理由から,換金せずに株式や投資信託のまま受け取りたいと考えることがある。
本記事は,このような場合に現物で受け取ることができるか,誰の合意が要るか,遺言執行者の権限がどうなるか,税金がどう変わるかを整理する。

(2) 本記事の資料と基準日

本記事は,令和8年9月25日時点でe-Gov法令検索に掲載されている民法・所得税法・租税特別措置法の条文,裁判所ウェブサイトに掲載された最高裁判所の判決,国税庁の質疑応答事例,立案担当者の解説書及び実務書に基づいて整理したものである。
遺言と異なる遺産分割一般の要件と裁判例は,遺言と異なる遺産分割協議はできるかで詳しく説明している。

2 結論の要約

換金を指示した遺言があっても,相続人全員と受遺者全員が合意すれば,株式や投資信託を現物で受け取る内容の遺産分割をすることは可能と考えられる。
遺言執行者が就職している場合には,相続人及び受遺者全員の合意だけで換金の指示を変更するのではなく,遺言執行者を協議に加え,その明示の同意を得る必要があると考えるべきである。
証券会社がその方法による移管を受け付けるか,及び課税関係がどうなるかも,実行前に確認しなければならない。
遺言執行者がいない清算型遺贈では,遺贈を履行する義務を負う相続人全員の協力が要る。
税金の面では,遺言執行者が換金すれば,その譲渡所得を誰が申告するかが問題となり,現物で受け取って後で売れば,受け取った人が被相続人の取得費を引き継いで譲渡所得を申告することになる。

第2 換金を指示する遺言の型
1 遺産分割の方法として換金を指定する遺言

民法908条1項は,「被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。」と定める。
相続人に対して「株式を換金してその代金を2分の1ずつ相続させる」とする遺言は,遺産分割の方法として換価分割を指定したものと読める場合がある。

2 清算型遺贈

「遺言執行者において,不動産・有価証券・預貯金その他一切の財産を換価売却し,債務・費用を控除した残額を遺贈する」という遺言は,一般に清算型遺贈と呼ばれる。
実務書は,このような遺言は遺言執行者の権限が一切の財産に及ぶので包括遺贈の一種であると考えられるとした上で,実質的には遺言の効力発生時点において割合的包括遺贈の効力が発生しており,遺贈義務のみが法定相続人あるいは相続財産法人に帰属すると解釈し,換価売却して現金化してから遺贈義務を果たすのが清算型遺贈の本質であると考えるべきであるとしている(遺言・相続実務問題研究会編,野口大・藤井伸介編集代表『事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務』日本加除出版,2023年,229頁~230頁)。
同書は,預貯金・有価証券・動産類については,遺言執行者の権限により預貯金を解約し,有価証券についても解約あるいは売却することにより換価作業を行えるとしている(同書231頁)。

3 型を見分ける手掛かり

次の点を遺言全文から確かめる。
①「相続させる」「遺贈する」「取得させる」のどの文言か
②換金の対象が特定の銘柄・口座か,一切の財産か
③換金の主体として遺言執行者が指定されているか
④代金の受取人が相続人だけか,相続人でない者を含むか

(続きを読む...)遺言で換金して分けるとされた株式・投資信託を現物で受け取れるか―遺言の型,全員の合意,遺言執行者の権限及び税金(AI作成)

信託銀行が遺言執行者に就任した後の手続とスケジュール―財産目録,換価・名義変更,債務,税務及び相続人の協力(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論第2 最初に分ける四つの担当領域第3 相続開始後の手続とスケジュール1 死亡通知から就職まで2 就職後から財産目録まで3 名義変更・換価から完了報告まで第4 銀行の財産目録と全遺産は一致しない1 三つの財産範囲2 目録に載ることと銀行が処理することは別である第5 預貯金・有価証券の換価と名義変更1 遺言の内容が出発点となる2 換価の時期と価格3 現物で受け取る場合の準備第6 不動産登記と遺言作成日の確認第7 債務・税務・保険等は別工程で管理する1 債務承継2 税務申告と納税資金3 保険・年金・家財等第8 相続人の協力が得られない場合第9 費用・追加財産・完了後の確認第10 弁護士が確認するチェックリスト第11 関連記事第12 出典・参考資料1 法令・法務省資料2 裁判例3 税務資料4 信託協会・金融機関の公式資料

信託銀行が遺言執行者に指定されている相続では,銀行へ死亡を連絡すれば,すべての相続手続が自動的に終了するわけではない。
銀行が扱う遺言執行,司法書士・税理士等へ依頼する手続,相続人又は受遺者が自ら行う手続を分け,法定期限と銀行の予定日を別々に管理する必要がある。

第1 本記事の対象と結論

本記事は,令和8年9月24日現在の法令及び公開資料に基づき,銀行又は信託銀行が商品として提供する「遺言信託」のうち,相続開始後に信託銀行が遺言執行者へ就職する場面を扱う。
遺言によって信託法上の信託を設定する制度や,遺言のない相続について相続人全員から委任を受ける遺産整理業務とは異なる。

実務上の要点は,次の三つである。
第一に,遺言書で信託銀行が指定されていても,相続開始後の調査と就職承諾を経るまで,その銀行が遺言執行者として任務を開始したとは限らない。
第二に,銀行が調査・処理する「遺言執行対象財産」は,被相続人の全財産や相続税申告の対象財産と一致しないことがある。
第三に,債務承継,税務申告,紛争処理,保険金・年金等の請求は,銀行の遺言執行と別の担当者及び期限で進める必要がある。

特に,信託銀行から示される工程表では,「遺言開示」,「就職通知」,「財産調査」及び「財産目録交付」が一つの予定表に続けて記載されることがあるため,遺言書を開示した日を就職の日と誤解しやすい。
「遺言書の開示」,「遺言内容及び予定の説明」並びに「戸籍・財産資料の提出」は,通常,就職を判断する前の段階であり,これらが行われただけで信託銀行が遺言執行者に就職したとは限らない。
就職を承諾した日,就職通知書の日付及び任務開始の通知を,それぞれ別に確認する必要がある。
就職に至るまでの段階と,就職の承諾前でも相続人の処分が制限される関係は,遺言書を開示した信託銀行はいつ遺言執行者に就任するのか―指定,死亡通知,就職の審査,就職通知及び任務開始の違いで説明している。

第2 最初に分ける四つの担当領域
担当領域主な内容確認事項信託銀行(就職前の指定された銀行)死亡の受付,遺言の開示,資料の確認,遺言内容の実現可能性の審査,就職の判断就職承諾の有無及びその日付,審査の見込み期間,辞退した場合の対応信託銀行(就職後の遺言執行者)就職通知,執行対象財産の調査・目録作成,預貯金等の解約・売却・名義変更,換価代金の管理・清算・分配,完了報告遺言書及び約定上の対象財産,対象外業務,費用,予定日司法書士相続・遺贈による不動産登記その他の登記申請誰が委任者になるか,登録免許税及び司法書士報酬税理士準確定申告,相続税申告,換価後の譲渡所得等申告義務,資料の受渡し,納税資金及び各期限相続人・受遺者又は弁護士債務承継,保険金・年金等の請求,公共料金等の口座変更,遺留分・遺言無効その他の紛争銀行の対象外であることを前提に,担当者と期限を別に置く

この表は一般的な整理であり,具体的な担当範囲は,遺言書,信託銀行との約定,最新の手数料規定及び各専門職との委任契約によって確認する必要がある。

第3 相続開始後の手続とスケジュール
1 死亡通知から就職まで

遺言者が死亡したときは,あらかじめ定めた死亡通知人又は家族が,遺言書を保管する信託銀行へ連絡する。
銀行は,遺言書を開示し,相続人・受遺者,財産の変動,後日付の遺言の有無及び遺言内容の実現可能性等を調査した上で,遺言執行者への就職を判断する。

民法1007条1項は,指定された者が就職を承諾したときは直ちに任務を行うことを定め,同条2項は,任務を開始したときは遅滞なく遺言の内容を相続人へ通知することを定める。
これとは別に,民法1008条は,相続人その他の利害関係人が相当の期間を定めて就職承諾の有無を確答するよう催告できることを定めている。

銀行の就職判断を待つ間も,相続放棄・限定承認は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月,準確定申告は原則4か月,相続税申告・納付は原則10か月という別の期限が進む。
銀行の工程表に記載された目標日と法律上の期限を同じ欄で管理してはならない。

2 就職後から財産目録まで

就職後は,戸籍等による相続関係の確認,遺言執行対象財産の調査,残高証明書等の取得,不動産及び金融商品の手続準備へ進む。
民法1011条1項は,遺言執行者に対し,遅滞なく相続財産の目録を作成して相続人へ交付することを求める。

もっとも,遺言が特定の財産に関する場合,民法1014条1項により,民法1011条から1013条までの規定はその財産についてのみ適用される。
三菱UFJ信託銀行の現在の公開案内も,調査及び財産目録の対象を「遺言執行対象財産」に限ると説明している。

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信託銀行の遺言信託を利用する遺言者と家族の注意事項-費用,紛争時の辞退及び資金拘束の問題(AI作成)

目次第1 遺言信託の意味と本記事の対象1 同じ名称で異なる制度がある2 本記事が中心に扱う銀行サービス3 本記事の結論第2 契約前に疑うべき三つの前提1 銀行が担当する範囲2 相続開始後の就任判断3 費用4 遺言内容の実行可能性第3 契約後に遺言者が見直す事項1 遺言内容と財産の変化2 判断能力が低下する前の対応3 家族への情報共有第4 相続開始前に家族が準備する事項1 死亡通知を行う者と連絡先2 資料と相談先3 紛争の兆候第5 相続開始後に家族が確認する事項1 銀行への通知と就任確認2 範囲,費用及び予定の書面化3 遺言執行と紛争対応を分ける4 三つの財産範囲を照合する5 換価・名義変更と受取口座を確認する6 債務・税務・対象外手続を別に管理する第6 信託法上の遺言信託を用いる場合1 受託者の引受けと後継者2 管理,給付及び報告3 終了条件と変更可能性第7 契約書と遺言書のチェックリスト1 遺言者が確認する事項2 家族が確認する事項3 弁護士への事前相談が特に有用な場合第8 信託銀行の遺言信託に内在する構造的な問題1 費用と担当業務が対応しているか分かりにくい2 サービスが必要な局面ほど業務対象外になり得る3 商品提供者の提案を独立して検証する仕組みがない4 銀行が関与しなくなっても複雑な法的効果は残る第9 銀行サービスの利点と限界第10 関連記事第11 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 信託協会の資料4 金融機関の公式資料
第1 遺言信託の意味と本記事の対象
1 同じ名称で異なる制度がある

「遺言信託」は,一つの法制度だけを指す言葉ではない。
銀行又は信託銀行が行う遺言書作成の相談,遺言書の保管及び遺言執行を組み合わせたサービスを指す場合と,遺言によって財産を信託する信託法上の制度を指す場合がある。

信託協会のQ&Aも,金融機関が用いる「遺言信託」は,通常,信託法上の信託契約ではなく,遺言書作成の相談,遺言書の保管及び遺言執行等を組み合わせたサービスであると説明している。
両者では,契約当事者,財産管理の仕組み,相続開始後に必要となる手続及び費用が異なるため,まず利用中又は検討中の商品がどちらであるかを確認する必要がある。

2 本記事が中心に扱う銀行サービス

本記事は,令和8年9月22日現在の日本法を前提として,銀行又は信託銀行が提供する遺言書作成の相談,保管及び遺言執行のサービスを中心に,遺言者と家族が時系列で確認すべき事項を説明する。
信託法上の遺言信託については,第6で追加の注意事項を取り上げる。

制度の全体像と用語の違いについては,遺言信託(AI作成)を参照されたい。

3 本記事の結論

信託銀行の遺言信託は,「相続をまとめて任せられるサービス」と受け取られやすいが,実際には,財産事務,紛争対応,税務申告,不動産登記及び信託財産の管理が別々の主体と料金で処理される。
しかも,家族間の対立が顕在化してサービスの必要性が最も高くなった場面で,銀行が遺言執行者への就任を辞退することがある。

このため,最大の問題は,手数料が高いことだけではない。
遺言者が生前に費用を負担して複雑な遺言又は信託を設計した後も,紛争処理,就任辞退後の遺言執行者選任,登記,税務及び事情変更への対応が家族側に残り得るという,費用,権限及び責任の分断にある。

財産関係が単純で家族間の対立もない場合には,公正証書遺言と弁護士等による個別対応の方が低コストで柔軟なことがある。
反対に,財産又は家族関係が複雑で紛争可能性が高い場合には,信託銀行だけでは処理できない事項が増えるため,契約前に銀行から独立した弁護士の審査を受ける必要性が高い。

第2 契約前に疑うべき三つの前提
1 銀行が担当する範囲
(1) 財産に関する事務

銀行の遺言執行サービスは,預貯金,有価証券及び不動産等の財産に関する遺言を対象とするのが通常である。
認知,未成年後見人の指定その他の身分行為は,銀行が遺言執行者として処理できる財産事務とは別に考える必要がある。

契約前には,①対象財産,②相続人及び受遺者への通知,③財産目録の作成,④預貯金等の解約又は名義変更,⑤不動産の移転登記の手配,⑥遺言執行の完了報告のうち,どこまでが基本業務に含まれるかを確認する必要がある。
「遺言執行を任せる」という説明だけでは,実際の担当範囲は確定しない。
商品名に「信託」又は「相続サポート」と付いていても,家族間の利害調整まで引き受けるワンストップサービスであるとは限らない。

(2) 法的紛争と専門職業務

相続人間の争いについて代理交渉を行うこと,税務申告を行うこと及び不動産登記申請を代理することは,通常の銀行事務だけでは完結しない。
信託協会のQ&Aも,遺言執行報酬には税理士への相続税申告報酬及び司法書士への不動産登記報酬等が含まれないことがあると説明している。

弁護士法72条は,弁護士又は弁護士法人でない者が,報酬を得る目的で,訴訟事件その他一般の法律事件に関する法律事務を業として取り扱うこと等を原則として禁止している。

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清算型遺言(財産を換金して分ける遺言)の実現方法―遺言執行者がいない場合・信託銀行が就職を辞退した場合の手続,登記及び課税(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論の要旨第2 清算型遺言の法的性質1 清算型遺言の典型的な文言2 特定遺贈・包括遺贈・相続分の指定のいずれと解されるか3 性質の違いが影響する場面第3 遺言執行者の権限と相続人の処分の制限1 遺言執行者がいる場合の換金と分配2 指定された者が就職を承諾する前の相続人の処分3 就職前の辞退と就職後の辞任第4 遺言執行者がいない場合の二つの方法1 家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる方法2 相続人と取得する人の全員で換金・分配する方法第5 金融機関での手続1 預金2 証券会社3 弁護士が取得者の一部の代理人となる場合第6 不動産を換金する場合の登記1 相続登記を経てから買主に移転する2 遺言執行者がいない場合の相続登記と贈与税3 売買契約の条項第7 換金と課税1 譲渡所得は誰の所得になるか2 被相続人の準確定申告との関係3 相続税第8 出典1 法令2 裁判例3 裁判所の手続案内4 国税庁の質疑応答事例・研究論文5 金融機関の公開資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,遺産の全部又は一部を売却・解約して金銭に換え,債務や費用を支払った残りを定めた割合で分けるよう定めた遺言(以下「清算型遺言」という。)を,遺言執行者がいない場合や,指定された信託銀行等が就職を辞退した場合にどう実現するかを,民法,家事事件手続法,不動産登記法,所得税法,国税庁の公表資料及び金融機関の公開資料に基づいて整理するものであり,AIを用いて作成した。
法令は令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文により,裁判例は裁判所ウェブサイトで個別ページ及び全文を確認したものに限って用いる。
金融機関の必要書類は同日に各社のウェブサイトで確認した内容であり,手続の細部は変更され得るため,実際には各社の最新の案内で確認する必要がある。

2 結論の要旨

清算型遺言は,遺言執行者が就職していれば遺言執行者が換金と分配を行う。
遺言執行者が指定されていない場合や,指定された者が就職を辞退した場合のように,遺言執行者がいない場合には,遺言で財産を取得する人だけでなく,遺贈を履行する義務を負う法定相続人全員(遺言で何も取得しない相続人を含む。)と取得者全員が協力することにより,換金・分配できる場合がある。
ただし,遺言執行者に指定された者がまだ就職を承諾していないだけの場合は,「遺言執行者がいない場合」と同じには扱えず,就職するか辞退するかを確認する必要がある。
①清算型遺言は,一律に特定遺贈又は包括遺贈と決まるものではなく,遺言の趣旨により,包括遺贈や,相続分の指定及び遺産分割方法の指定と解されることがある。
②遺言執行者に指定された者が就職を承諾する前でも,民法1013条の「遺言執行者がある場合」に当たるとした最高裁判例があるため,指定された者が就職を辞退したことを書面で確認してから相続人側の手続に移るのが安全である。
③遺言執行者がいない場合は,家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てるか,相続人全員と取得する人全員の書類で金融機関や登記の手続を進めるかを選ぶことになる。
④金融機関は,遺言書があって遺言執行者がいない場合の書類を別に定めていることが多いが,分ける割合や承継人が明確でない場合は,法定相続人全員の書類を求める扱いがある。
⑤遺言執行者が遺産を換金した場合の譲渡所得について,国税庁の質疑応答事例は,法定相続分に応じて各相続人が申告する必要があるとしているが,これは同事例の個別の事実関係を前提とした回答であり,すべての清算型遺言に当然に当てはまるものではなく,受遺者に帰属するとする研究論文の見解もある。

第2 清算型遺言の法的性質
1 清算型遺言の典型的な文言

清算型遺言は,例えば「遺言者の有する一切の財産を換価し,その換価金から遺言者の債務及び遺言執行に関する費用を弁済した残金を,Aに2分の1,B及びCに各4分の1の割合で取得させる。」という形で書かれる(本記事で作成した例である)。
遺産そのものではなく,換金した後の金銭を分けることを定めている点で,特定の不動産や預金を特定の人に承継させる遺言とは構造が異なる。
遺産の一部だけを換金の対象とし,自宅などの特定の財産は別の条項で特定の人に承継させる形の遺言もある。

2 特定遺贈・包括遺贈・相続分の指定のいずれと解されるか
(1) 民法の規定

民法964条は,「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。」と定め,民法990条は,「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」と定めている。
また,民法902条1項は遺言による相続分の指定を,民法908条1項は遺言による遺産の分割の方法の指定を認めている。

(2) 国税庁の研究論文の整理

国税庁税務大学校の研究論文である小柳誠「換価遺言が行われた場合の課税関係について」(税大論叢85号,平成28年6月30日)は,清算型遺言(同論文の用語では換価遺言)について,「一義的には、換価遺言の場合は、その目的物は、換価代金すなわち金銭と考えられるから、これは相続財産自体でなく、不特定物であり、この点のみで考えれば、換価遺言は、一応、不特定物遺贈と考えられる。」としている。
その上で,同論文は,「しかしながら、債務の清算に着目し、遺言の趣旨の解釈を行うと包括遺贈との性質決定にもなりうる。また、相続人に対する換価遺言の場合では、相続分の指定及び遺産分割の方法を指定したと解する場合があり得る。」とし,「結局、換価遺言も特定遺贈か、包括遺贈かなどと一義的に解するのではなく、個々の場面における遺言者の遺言の趣旨に照らし、相続人、受遺者に及ぼす法的効果として妥当する法的性質決定が必要である。」と結論付けている。
同論文は研究者個人の論文であり,国税庁の公式見解ではないが,清算型遺言の性質を一律に決められないことを確認する資料として参考になる。

3 性質の違いが影響する場面

清算型遺言をどう性質決定するかは,債務を誰が負担するか,取得者が相続人以外の者である場合に相続人と同一の権利義務を持つか(民法990条),遺言執行者の有無や権限の範囲をどう考えるかに影響する。

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遺言による生命保険金受取人の変更―保険法44条・73条の要件,保険会社への通知,遺言執行者の役割並びに遺留分及び特別受益(AI作成)

目次第1 結論の要旨と本記事の対象1 結論の要旨2 本記事の対象と基準日第2 保険法の条文1 保険金受取人の変更の原則(43条・72条)2 遺言による変更(44条・73条)3 被保険者の同意(45条・74条)第3 適用時期―平成22年4月1日以後に締結された契約1 施行日と経過措置の原則2 施行日前に締結された契約第4 遺言の要件と記載内容1 遺言の方式と効力発生時期2 契約と新受取人の特定3 遺言の撤回と生前の変更との関係第5 保険会社への通知(対抗要件)1 通知をする者2 遺言執行者による通知3 通知の前に旧受取人へ支払われた場合第6 遺留分・特別受益・相続税1 遺留分2 特別受益3 相続税第7 実務上の注意点1 生前の変更手続と遺言による変更の比較2 遺言の文案例3 遺言執行者を指定しておく意味4 受取人が先に死亡した場合5 期間制限6 相続放棄との関係第8 出典1 法令2 裁判例3 立法資料・所管行政機関の説明4 文献
第1 結論の要旨と本記事の対象
1 結論の要旨
(1) 遺言で変更できる場合と効力

生命保険の死亡保険金の受取人は,保険契約者が遺言で変更することができる(保険法44条1項)。
傷害疾病定額保険契約(死亡保険金を含む医療保険等)についても同じ規定がある(保険法73条1項)。
遺言による変更は,遺言が民法の方式を満たしていれば,遺言者の死亡の時に効力を生ずる(民法960条,985条1項)。
ただし,この規定が直接適用されるのは,保険法の施行日である平成22年4月1日以後に締結された保険契約である(保険法附則2条本文)。

(2) 保険会社への通知と遺言執行者

遺言による変更は,遺言の効力が生じた後に「保険契約者の相続人」が保険会社に通知しなければ,保険会社に対抗することができない(保険法44条2項)。
法務省の立案担当者の解説は,この通知は相続人の1人がすれば足り,遺言執行者が通知することもできるとしている。
通知の前に保険会社が旧受取人へ保険金を支払ってしまうと,新受取人は保険会社に支払を求めることができず,旧受取人との間で清算を求めることになると考えられる。

(3) 遺留分・特別受益・相続税

死亡保険金請求権は受取人の固有の権利であり,受取人の変更は遺留分減殺の対象となる遺贈又は贈与に当たらないとした最高裁判決がある。
特別受益についても,原則として持戻しの対象ではないが,著しい不公平がある特段の事情があれば民法903条の類推適用により持戻しの対象となる。
相続税では,新受取人が相続人であるか否かにより,非課税限度額の適用の有無が変わる(相続税法3条1項1号,12条1項6号)。

2 本記事の対象と基準日

本記事は,遺言で保険金受取人を変えたい保険契約者,変更後又は変更前の受取人となる人,他の相続人,遺言執行者を読者として想定し,遺言による保険金受取人の変更の要件,通知の方法,相続上の紛争及び税金の扱いを,法令,裁判例及び法務省の立案資料で確認できた範囲で整理したものである。
法令は,令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文を確認した。
遺言執行者が相続財産の目録にこの保険金を記載するかどうかは,姉妹記事の遺言執行者の財産目録で扱う。

第2 保険法の条文
1 保険金受取人の変更の原則(43条・72条)
(1) 保険法43条の条文

保険法43条は,生命保険契約について次のとおり定めている。
1項「保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。」
2項「保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。」
3項「前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない。」

(2) 変更の権限を持つ者

傷害疾病定額保険契約についての保険法72条も,「保険事故」を「給付事由」とするほかは同じ内容である。
変更する権限を持つのは「保険契約者」であり,被保険者や保険金受取人ではない。

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遺言執行者の財産目録には何を載せるか―死亡保険金・入院給付金・死亡退職金・未支給年金と特定財産に関する遺言(AI作成)

目次第1 結論と本記事の対象1 結論2 本記事の対象と基準日第2 遺言執行者の目録作成義務と他の義務との区別1 民法1011条の目録作成・交付義務2 遺言内容の通知義務及び報告義務との違い第3 目録に載せる範囲―相続財産と特定財産に関する遺言1 目録の対象は「相続財産」である2 特定財産に関する遺言では,その財産に限られる3 信託銀行の財産目録と全遺産は一致しないことがある第4 相続財産に当たるもの・当たらないもの1 一覧表2 死亡保険金3 入院給付金・手術給付金4 死亡退職金5 未支給年金と遺族年金6 確定拠出年金(iDeCoを含む)の死亡一時金第5 相続財産に属しないものを「参考」として記載する理由と記載例1 参考欄を設ける理由2 管理処分権が及ぶと誤解させない書き方3 記載例第6 目録の作り方の実務1 基準日と記載事項2 金額未確定の債権と債務の記載3 交付の方法と記録第7 目録が交付されない・内容が不十分な場合の相続人の手段1 報告請求と目録の作成方法の指定2 善管注意義務と解任請求第8 遺言で保険金受取人を変更している場合第9 出典1 法令2 裁判例3 行政機関の通達4 関連記事
第1 結論と本記事の対象
1 結論

遺言執行者が民法1011条1項に基づいて作成・交付する目録の対象は「相続財産」であり,相続人等が保険契約や支給規程に基づいて自己固有の権利として取得するものは,同条の目録に記載すべき財産ではない。
結論を先にまとめると,次のとおりである。
①特定の相続人を受取人とする生命保険の死亡保険金請求権は,受取人の固有の権利であり,相続財産の目録に載せる義務はない。
②被保険者本人が受け取るはずだった入院給付金・手術給付金の請求権は,本人が生前に取得していた権利として相続財産に属し,目録に載せる対象となる。
③死亡退職金,未支給年金,遺族年金及び確定拠出年金(iDeCoを含む)の死亡一時金は,支給規程又は法律が受給者の範囲を定めている限り,相続とは別に受給者が取得するものであり,相続財産の目録に載せる義務はない。
④遺言が相続財産のうち特定の財産に関するものである場合,目録を作成する義務はその財産についてだけ生じる(民法1014条1項)。
⑤相続財産に属しないものでも,相続税申告,特別受益及び遺留分の検討のため,「参考(相続財産に属しないもの)」として区分して記載しておくことは,実務上の工夫として考えられる。

2 本記事の対象と基準日

本記事は,遺言執行者に就いた弁護士,遺言執行者から目録を受け取る相続人及び受遺者を読者として,目録に何を載せ,何を載せないかを条文と最高裁判例に即して説明するものであり,AIを用いて作成した。
法令は令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文により,裁判例は裁判所ウェブサイトで個別ページ及び全文を確認したものに限って用いる。
遺言執行者が指定されている場合に相続人が受ける制約や解任手続の全体像は,遺言執行者が指定されている場合の相続人の注意点で扱っているため,本記事では目録に関係する範囲に絞る。

第2 遺言執行者の目録作成義務と他の義務との区別
1 民法1011条の目録作成・交付義務
(1) 遅滞なく作成して相続人に交付する義務

民法1011条1項は,「遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。」と定めている。
条文は「遅滞なく」とするだけで,何日以内という期限を定めていない。
交付の相手方は条文上「相続人」であるが,包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ため,包括受遺者にも交付しておくことが考えられる。

(2) 相続人の請求による立会い又は公証人による作成

民法1011条2項は,「遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。」と定めている。
遺言執行者が単独で作った目録の正確性に相続人が疑問を持つ場合,相続人は,この規定により,立会いの下での作成又は公証人による作成を求めることができる。
東京地裁平成25年2月27日判決(平成23年(ワ)第23673号)は,公証人に調製させた相続財産目録に記載のなかった特許権の共有持分について,遺言執行者がその後これを相続財産と認識した事案で,当初の目録作成時点での義務違反は否定しつつ,公正証書に新たな目録作成を予定する旨の陳述があったことにも照らして,「本件特許権を記載した相続財産目録を新たに作成する義務があったというべき」とした。
ただし,同判決は,遺言執行者としての一般的な義務違反から直ちに不法行為上の義務違反が導かれるものではないとして,遺言執行者に対する損害賠償請求を棄却している。

2 遺言内容の通知義務及び報告義務との違い

目録の交付は,遺言内容の通知や事務処理状況の報告とは根拠条文も内容も異なる。

義務根拠内容時期遺言内容の通知民法1007条2項遺言の内容を相続人に知らせる任務開始後,遅滞なく相続財産の目録の作成・交付民法1011条相続財産の目録を作成して相続人に交付する遅滞なく事務処理状況の報告民法1012条3項・645条請求があれば事務処理の状況を報告し,任務終了後は経過及び結果を報告する請求時及び任務終了後

民法1012条3項は,受任者の善管注意義務(同法644条),報告義務(同法645条),受取物の引渡し等(同法646条),金銭の消費についての責任(同法647条)及び費用償還請求等(同法650条)の規定を遺言執行者に準用している。
目録は執行開始時点の財産の全体を示す書面であるのに対し,報告は執行の途中経過や結果を示すものであるから,目録を交付した後も,払戻しや名義変更の進み具合は報告として別に伝えることになる。

(続きを読む...)遺言執行者の財産目録には何を載せるか―死亡保険金・入院給付金・死亡退職金・未支給年金と特定財産に関する遺言(AI作成)

公正証書遺言の検索を弁護士が代理する方法-必要書類・委任状・謄本請求(AI作成)

目次第1 代理人弁護士による遺言検索の基本第2 依頼者の資格と必要書類1 誰を委任者とするか2 依頼者の資料と来所代理人の資料を分ける第3 委任状の書き方と職員が来所する場合1 検索と謄本の請求・受領を区別する2 職員が来所するときは権限のつながりを確認する第4 公証役場への申出と検索後の謄本取得1 最寄りの公証役場に連絡する2 判明した保管公証役場へ謄本等を請求する3 現行法の謄本等と正本等を区別する第5 費用と検索結果を受け取った後の注意1 無料の検索と有料の交付・閲覧を分ける2 該当なしと遺言の不存在・無効は同じではない3 相続手続の期限は検索と別に管理する第6 出典1 法令2 日本公証人連合会の制度Q&A3 各公証役場の手続案内・委任事項記載例4 裁判所の手続案内
第1 代理人弁護士による遺言検索の基本

相続人等から委任を受けた弁護士は,公証役場に公正証書遺言の検索を申し出ることができる。
準備する資料は,①遺言者の死亡と依頼者の資格を示す資料,②依頼者からの委任を示す資料,③来所する代理人の本人確認資料に分けると整理しやすい(世田谷公証役場「手続案内」)。

本記事は,令和8年9月4日現在の法令・公表資料に基づき,主として遺言者の死亡後に相続人を代理する場合の手順を説明するものである。
遺言の作成ではなく,既に作成された遺言の検索と,検索後の謄本等の取得を扱う。

日本公証人連合会の遺言検索Q&Aによれば,全国の公証役場で遺言公正証書の有無と保管公証役場を検索でき,最寄りの公証役場に申し出ることができる。
全国検索の対象は昭和64年1月1日以後に作成されたものであり,検索だけで遺言の内容まで分かるわけではない(銀座公証役場「FAQ」遺言検索)。

保存期間や検索制度全体については,公正証書遺言の保存期間及び検索方法を参照されたい。
以下では,代理利用で取り違えやすい委任者・来所者・請求先の違いに重点を置く。

第2 依頼者の資格と必要書類
1 誰を委任者とするか

遺言者の死亡後に検索を申し出ることができるのは,相続人等の利害関係人である。
弁護士が代理する場合も,まず依頼者がどの資格で申し出るのかを確認し,その資格を示す資料と委任状を準備する(日本公証人連合会のQ&A,世田谷公証役場の代理手続案内)。

相続人以外の者から依頼を受ける場合は,その者の利害関係を何によって示すかを,書類の取寄せに着手する前に申出先へ確認するのが適切である。
相続人向けの戸籍の案内を,受遺者等についてもそのまま当てはめることはできない。

遺言者の生存中は,遺言者本人が委任者となる場合に代理検索が認められる。
家族が将来の相続人になるという理由だけで,その家族から依頼を受けて検索する場合とは異なる(銀座公証役場「FAQ」,世田谷公証役場「検索等の委任状と必要書類等」)。

2 依頼者の資料と来所代理人の資料を分ける

次の表は,遺言者の死亡後に相続人を代理して来所する場合について,世田谷公証役場の案内に沿ってまとめた基本例である。
加古川公証役場の必要書類案内も,死亡・相続関係の資料に加え,委任状,依頼者の印鑑登録証明書,来所代理人の身分証明書類及び認印を挙げている。

確認すること準備する資料の基本例注意点遺言者の死亡死亡の記載がある除籍謄本等原本を準備し,別の死亡証明資料を使う場合は扱いを確認する依頼者の相続人資格相続関係が分かる戸籍謄本等必要な戸籍の範囲は相続関係によって異なる依頼者からの委任依頼者が実印を押した委任状遺言者と代理人を特定し,委任する手続を記載する委任者の印鑑依頼者の印鑑登録証明書原本世田谷の案内では来所日に発行後3か月以内来所する代理人の本人確認運転免許証・マイナンバーカード等依頼者ではなく,実際に来所する代理人の資料である来所代理人の押印認印世田谷の案内ではシャチハタでないもの

依頼者の印鑑登録証明書と,代理人の本人確認資料は,それぞれ確認する対象が異なる。
弁護士として来所する場合も,資格証明書による代替の可否を含め,利用する本人確認資料と委任状の取扱いを申出先へ確認しておく。

銀座公証役場のFAQは,相続人であることを示す資料として,戸籍謄本のほか法定相続情報一覧図も挙げている。
一覧図を利用する場合は,どの資料に代えることができるかを確認し,委任状や代理人の本人確認資料まで不要になったと扱わない。

戸籍の読み方と一覧図の作成方法は,法定相続情報一覧図の作成方法―戸籍謄本の読み方と相続人の確認で説明している。
検索のために必要な相続関係を,手元のどの資料で示せるかを確認してから,不足分を取得するとよい。

第3 委任状の書き方と職員が来所する場合
1 検索と謄本の請求・受領を区別する

世田谷公証役場の委任状案内は,検索する遺言者の氏名・ふりがな・生年月日を記載し,代理人の氏名・住所を本人確認書類どおりに記載するよう求めている。
遺言者の表示は戸籍等と照合し,依頼者自身の情報と取り違えないようにする。

銀座公証役場の委任事項記載例では,遺言検索と正本・謄本の交付請求について,別の例が示されている。
検索後の謄本取得まで依頼を受けるのであれば,検索だけでなく,謄本等の交付請求と受領を委任することも明示するのが確実である。

委任状を準備する際は,次の事項を申出先の様式と照合する。
①検索対象となる遺言者の氏名・ふりがな・生年月日
②委任者の氏名・住所と,遺言者との関係
③代理人の氏名・住所
④遺言検索,謄本等の交付請求及び受領のうち,委任する事項
⑤職員を復代理人として利用する場合の選任権限

検索前には証書番号や保管公証役場が分からない場合もある。
検索後の請求にも同じ委任状を使用できるか,判明した証書を特定する追加書類が必要かは,謄本を交付する公証役場へ確認する。

2 職員が来所するときは権限のつながりを確認する

銀座公証役場の遺言検索の委任事項例には,復代理人の選任に関する事項も含まれている。
弁護士が依頼者から委任を受け,事務所職員が復代理人として来所する場合には,依頼者から弁護士への委任と,弁護士から職員への権限付与をどの書類で示すかを確認する(同役場の委任事項記載例)。

職員が行うのが申出・受領なのか,単なる書類の持参なのかを明らかにし,職員の本人確認資料も含めて事前に役場と打ち合わせる。
弁護士を代理人とする委任状だけを職員に持たせれば足りると判断せず,実際に来所する人と,その人が行う手続に合わせて準備することが重要である。

第4 公証役場への申出と検索後の謄本取得
1 最寄りの公証役場に連絡する

まず,最寄りの公証役場へ,相続人の代理人弁護士として遺言検索を希望する旨を伝える。
その際,依頼者の資格,弁護士本人又は職員のどちらが来所するか,持参予定の資料を示し,予約の要否を確認する。

予約については,加古川公証役場は事前予約を求める一方,銀座公証役場のFAQは遺言検索の予約を不要としている。
全国一律の予約方法があるものとして準備せず,申出先の案内に従う。

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借地権付き建物の遺言と底地取得-混同後の効力と見直し(AI作成)

第1 底地取得後の遺言は見直すべきか第2 混同による借地権の消滅と例外1 地上権と賃借権では根拠条文が異なる2 抵当権との関係で消滅しない場合3 共同借地権と共有持分の取得4 未登記の底地取得後に第三者が登記した場合第3 誰がいつ底地を取得したか第4 以前の遺言は取得後の土地にも及ぶか1 建物・借地権の記載と土地所有権の関係2 残余財産条項によって承継先が分かれる問題3 遺贈の規定から土地や金銭への置換えを当然視しない第5 遺言条項の整え方1 取得済みの土地と建物を明記する2 将来の底地取得に備える条項3 旧遺言と残余財産条項を整える4 見直し時に確認する資料と配分第6 相続開始後に土地と建物の取得者が分かれた場合第7 出典1 法令2 裁判例3 実務資料・文献
第1 底地取得後の遺言は見直すべきか

借地権付き建物を特定の相続人に残す遺言をした後,遺言者が底地を買い取った場合には,土地所有権もその相続人に承継させる趣旨が明確か,遺言を見直すことを勧める。
借地権が混同によって消滅することと,買い取った土地が以前の遺言の対象に含まれることは,別の問題である。
底地取得だけから,土地も当然に同じ相続人へ移るとも,建物に関する条項を含めて遺言全体が効力を失うともいえない。

本記事の初稿は令和8年9月4日現在の法令を前提とし,未登記の底地取得後の二重譲渡に関する追記は同年10月2日に判例と現行法を確認した。
以下では,遺言者Tが「建物とその敷地の借地権を長男Aに相続させる」と定めた後の底地取得を扱う。
以下の条項案は,Aが相続開始時に相続人であることを前提とする。

借地権とは,建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権である(借地借家法2条1号)。
底地は,その借地権が設定された土地を地主の所有権の側から呼ぶものである。

第2 混同による借地権の消滅と例外
1 地上権と賃借権では根拠条文が異なる

借地権が地上権である場合,同じ土地の所有権と地上権が同一人に帰属すると,地上権は原則として消滅する(民法179条1項)。
土地所有者が,自分の土地を利用するための地上権を別に持ち続ける必要は通常ないためである。

借地権が賃借権である場合には,債権と債務が同一人に帰属する混同の規定が問題となる(民法520条)。
底地の取得に伴って賃貸人と賃借人の地位が同一人に帰属するかを確認するのであり,賃貸人の地位の移転・留保を定める民法605条の2や契約内容も点検する。
土地の所有権移転だけを見て,賃借権が必ず消滅したと判断することはできない。

2 抵当権との関係で消滅しない場合

最高裁昭和46年10月14日第一小法廷判決(昭和46年(オ)第582号,民集25巻7号933頁)は,土地賃借権が対抗要件を備え,その後に土地へ抵当権が設定されていた場合には,土地所有権と賃借権が同一人に帰属しても,民法179条1項ただし書の準用により賃借権は消滅しないとした。
抵当権があるという事実だけでなく,賃借権の対抗要件と抵当権設定の先後が重要である。

したがって,底地を購入するときは,土地の登記記録だけでなく,借地権の対抗要件をいつ備えたかも確認する。
借地権については,借地権者が土地上に登記された建物を所有することによる対抗力も認められている(借地借家法10条1項)。

3 共同借地権と共有持分の取得

借地借家法15条2項は,借地権が借地権設定者に帰した場合でも,他の者と共にその借地権を有するときは消滅しないと定める。
これは,土地の所有権と借地権の全部が一人に帰属する場合とは異なる。

また,底地の共有持分だけを購入した場合を,底地全部の取得と同じに扱うこともできない。
土地所有権の持分,借地権の持分及び建物の持分をそれぞれ分けて確認することが出発点となる。

4 未登記の底地取得後に第三者が登記した場合

借地人が地主から土地を買い受けても,所有権移転登記を得る前に地主が第三者へ重ねて譲渡し,第三者が登記を得る場合がある。最高裁昭和47年4月20日判決は,この場合,借地人の土地賃借権は混同で消滅したものとして第三者に対抗できなくなるわけではないとした。借地人の未登記所有権を第三者に対抗できるという判断ではなく,賃借権の存続を問題にする判例である。

第三者に土地賃借権を主張するには,その対抗要件も別途確認する。現行法では,借地上の建物に借地人名義の登記があるか等が重要である(借地借家法10条1項)。遺言の見直しでは,底地売買契約,所有権移転登記,建物登記及びその後の二重譲渡の有無を時系列で確認し,遺言者が相続開始時に土地を対抗できる地位にあるかを確かめる。

第3 誰がいつ底地を取得したか

遺言は原則として遺言者の死亡時から効力を生ずるため,底地取得がその前か後かで検討対象が変わる(民法985条)。
次の表は,停止条件等の特別な定めがなく,混同による消滅の例外にも当たらない通常の場面を,上記の条文と相続による承継の時期に沿って整理したものである。

底地を取得する者と時期
確認する問題

Tが生前に取得する
Tの借地権が消滅した後,死亡時に残る土地所有権と建物を,旧遺言がどの範囲で対象にしているか。

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遺言執行者が相続株式・有価証券を売却して分配する際の実務上の問題点(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 遺言の対象と遺言執行者の権限1 遺言全文から換価対象を確定すること2 通知,財産目録及び相続人による妨害の防止第3 証券口座及び保有商品の調査1 口座開設先と保有残高を分けて調べること2 証券会社から取得する資料第4 証券会社における換価経路1 相続人名義口座へ移管してから売却する取扱い2 遺言執行者による換金分割用の取扱い第5 換価時期及び注文方法1 善管注意義務と相場変動2 売却方針を先に記録すること3 信託銀行が遺言執行者である場合第6 相続税評価額,取得費及び譲渡所得1 四つの金額を区別すること2 換価による譲渡所得を誰が申告するか3 NISAと取得費加算の特例第7 商品別の例外と分配・報告1 非上場株式,外国証券及び信用取引2 配当金等と換価代金の範囲3 換価代金の管理と相続人への報告出典・参考資料1 法令2 所管行政機関の解説・質疑応答及び研究資料3 証券関係機関及び金融商品取引業者の手続資料4 文献5 裁判例・判決紹介

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和8年9月4日現在の法令及び公開資料に基づき,被相続人名義の株式,投資信託,債券その他の有価証券を遺言執行者が換価し,その代金を相続人に分配する遺言の執行を扱う。
相続人が現物のまま有価証券を取得する場合や,遺言がなく遺産分割協議によって換価する場合は,直接の対象ではない。

相続人から委任を受けた弁護士が,証券口座の調査,必要書類の収集,受入口座への移管及び売却を代理する一般的な手順は,「株式・証券口座の相続手続を弁護士が代理する方法-口座調査,必要書類,移管及び売却(AI作成)」で説明している。

有価証券の換価分配では,遺言執行者に民法上の処分権限があることと,証券会社が被相続人名義の口座で直ちに売却注文を受け付けることとは別問題である。
実際には,①遺言の対象と権限,②口座及び保有商品の全体像,③証券会社所定の換価経路,④売却時期及び注文方法,⑤譲渡所得の帰属及び分配可能額を順に確定する必要がある。

本記事では,換価方針を相場予測で決めるのではなく,遺言の文言,証券会社の手続,銘柄の流動性,税務上の取扱い及び相続人間の公平を確認した上で,判断時点の資料と理由を記録して執行することを基本形とする。
遺言執行者に関する一般的な相続人側の注意点は,「遺言執行者が指定されている場合の相続人の注意点」で説明している。

第2 遺言の対象と遺言執行者の権限

1 遺言全文から換価対象を確定すること

民法1012条1項は,遺言執行者が遺言の内容を実現するため,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると定めている。
一方,遺言が特定の財産に関する場合,遺言執行者の権限はその財産についてのみ及ぶ(同法1014条1項)ため,「有価証券を売却する」という一節だけでなく,遺言全文から対象と目的を確定する必要がある。

なお,民法1014条3項が遺言執行者の払戻し・解約の権限を明文で定めているのは預貯金債権についてだけであり,株式・投資信託の売却・解約の権限は,換価を命じる遺言の内容や遺言で付与された権限によって決まる。
立案担当者の解説も,預貯金以外の金融商品について遺言執行者に解約権限があるかは解釈に委ねられるが,遺言者が明示又は黙示に意思表示をして遺言執行者に解約権限等を付与することは当然に可能であるとしている(堂薗幹一郎・野口宣大編著『一問一答 新しい相続法』商事法務,2019年,118頁~119頁)。

確認する事項は,①すべての有価証券を対象とするのか,特定の証券会社,口座又は銘柄に限るのか,②株式分割,合併,償還,再投資等によって形を変えた資産を含むのか,③外貨預り金,未収配当金,分配金及び株主優待を含むのか,④換価費用,遺言執行者報酬,債務及び税金をどこまで控除するのか,⑤誰にどの割合で分配するのかである。
受取人の先死亡,相続放棄又は受遺放棄が生じた場合の代替的な分配条項も確認する。

『履行困難な遺言執行の実務』136頁~138頁が紹介する事例では,遺言が対象とした上場株式を遺言者本人が生前に売却して預金へ変えた結果,遺言執行者がその預金について当然には換価・分配権限を行使できないことが問題となった。
有価証券を特定した遺言が,売却後の代金又は別口座の預金にまで当然に及ぶとは限らない。

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信託銀行に遺言執行者を辞退・辞任してもらう方法-相続開始後のメリット・デメリット(AI作成)

目次

第1 結論と本記事の対象

1 就任前は辞退の申入れ,就任後は家庭裁判所の許可が問題となること
2 調査基準日及び対象範囲
3 銀行サービスとしての「遺言信託」と信託法上の信託を区別すること

第2 辞退,辞任及び解任の違い

1 就職承諾前の「辞退」
2 就職承諾後の「辞任」
3 利害関係人による「解任」
4 遺言執行契約の精算と遺言上の指定は別問題であること

第3 信託銀行に辞退又は辞任してもらうメリット

1 未発生の遺言執行報酬を減らせる可能性があること
2 残る事務に適した担い手を選べること
3 既に大半の手続が終わっている場合に役割を絞れること

第4 信託銀行に辞退又は辞任してもらうデメリットとその限界

1 信託銀行でなければできない遺言執行は限られること
2 手続の遅延と二重費用は就職承諾後に問題となること

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家庭裁判所が選任した遺言執行者の報酬の目安-現行法と旧基準(AI作成)

目次

第1 結論と対象範囲第2 選任の審判と報酬付与の審判は別である1 家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合2 選任時に報酬額まで当然に決まるわけではない第3 報酬の決まり方1 遺言に報酬の定めがある場合2 家庭裁判所が考慮する事情第4 旧日弁連報酬等基準規程による歴史的な参考額1 旧基準の内容2 旧基準を単純計算した場合3 現在の目安として使う場合の限界第5 誰が,いつ報酬を支払うか1 原則として遺言執行後に支払う2 報酬は相続財産の負担となる3 合意により報酬を定めて払戻金から差し引く場合第6 報酬付与の申立てで示すべき資料第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁決3 裁判所及び法務省の資料4 職能団体の旧規程5 その他の文献

第1 結論と対象範囲

民法1018条は,家庭裁判所が選任した遺言執行者の報酬について,全国一律の金額表又は料率を定めていない。
家庭裁判所は,相続財産の状況その他の事情を考慮して報酬を定めるため,令和8年9月4日現在の法令及び確認できた公表資料からは,遺産額だけで個別の審判額を正確に予測することはできない。

実務書には,弁護士である遺言執行者について,平成16年4月に廃止された旧日弁連報酬等基準規程を参考にし,これを若干減額して決定していた時期があるとの記載がある。
旧基準を機械的に当てはめると,執行対象の価額が1000万円なら44万円,5000万円なら104万円,1億円なら154万円となるが,これは現在の家庭裁判所の基準額,最低額又は予測額ではない。

したがって,現在の報酬の見通しを立てる際は,遺産額に一定割合を掛けるだけでは足りない。
財産の種類及び評価額,執行した事務の内容,期間,難易度,紛争対応,支出した費用並びに執行結果を示す資料を準備するのが有用である。

本記事は,家庭裁判所が選任した遺言執行者に対する報酬付与を中心に扱う。
遺言で指定された専門家又は信託銀行の契約上の報酬は,家庭裁判所が定める報酬との違いを説明する範囲に限って取り上げる。

第2 選任の審判と報酬付与の審判は別である

1 家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合

遺言執行者がいないとき,又はいったん就任した遺言執行者が辞任,解任又は死亡等によっていなくなったときは,家庭裁判所は,利害関係人の請求により遺言執行者を選任することができる(民法1010条)。
裁判所ウェブサイトの「遺言執行者の選任」も,申立人は相続人,遺言者の債権者又は受遺者等の利害関係人であり,申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所であると案内している。

2 選任時に報酬額まで当然に決まるわけではない

遺言執行者の選任は,家事事件手続法別表第一の104の項の事件であり,遺言執行者に対する報酬の付与は,同表105の項の別事件である。
したがって,家庭裁判所が遺言執行者を選任したという事実だけから,報酬額が確定したことにはならない。

報酬付与事件の管轄は,相続を開始した地を管轄する家庭裁判所にある(家事事件手続法209条1項)。
相続開始地は,被相続人の住所である(民法883条)ため,通常は遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになる。

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遺言書保管事実証明書・遺言書情報証明書の郵送請求―必要書類と手順(AI作成)

第1 どちらの証明書を請求するか

1 2種類の違いと郵送請求の基本

2 請求できる人と代理請求

第2 遺言書保管事実証明書の必要書類

1 基本となる添付書類

2 通知書などがある場合の省略

第3 遺言書情報証明書の必要書類

1 初回の請求と法定相続情報一覧図

2 関係遺言書保管通知と指定者通知の違い

3 数次相続・法人・法定代理人の追加書類

第4 請求書の作成から発送まで

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保管証書遺言とは―令和8年民法等改正で新設された第4の遺言方式,成立要件及び施行時期(AI作成)

第1 保管証書遺言の位置付けと本記事の範囲

1 新設された第4の遺言方式であること
2 本記事の基準日及び対象範囲

第2 保管証書遺言の法的根拠及び新設の経緯

1 根拠法令
2 法制審議会における審議経過
3 制度創設の背景となった課題

第3 保管証書遺言の成立要件

1 署名等・口述と保管による効力発生(改正民法968条の2)
2 電磁的記録による作成と署名に代わる措置
3 遺言書保管官の意義
4 口がきけない者の特則(民法968条の3)

第4 作成手続の具体的な流れ

1 保管申請とオンライン利用
2 本人確認とウェブ会議の利用
3 財産目録の口述省略

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自筆証書遺言書保管制度―法務局の保管手続と検認不要のメリット(AI作成)

第1 自筆証書遺言書保管制度の対象及び最大のメリット

1 本記事の対象及び結論
2 制度の目的及び根拠法令
3 検認が不要になる仕組み

第2 遺言者本人による保管の申請

1 保管の申請ができる遺言書保管所
2 保管の申請の要件―本人出頭の原則
3 保管する遺言書の様式
4 保管後に遺言者ができること

第3 遺言者の死亡後に相続人等ができる手続

1 遺言書情報証明書の交付請求
2 遺言書保管事実証明書の交付請求
3 閲覧請求及び非表示措置の申出

第4 手数料
第5 通知制度

1 関係遺言書保管通知
2 指定者通知

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遺言執行者が指定されている場合の相続人の注意点――処分禁止,通知請求権及び解任手続(AI作成)

第1 この記事の対象と全体像
第2 処分禁止の内容と違反行為の効力

1 遺言執行者の就任と任務開始
2 相続人による処分等の禁止
3 違反行為の無効と善意の第三者保護
3の2 特定遺贈後に相続人が第三者へ売却した場合
4 相続人の債権者による権利行使への影響

第3 相続人が遺言執行者から受けられる通知と説明

1 任務開始の通知
2 相続財産目録の作成及び交付
3 通知が来ないときの催告

第4 遺言執行者がいても相続人ができること

1 特定財産承継遺言の対抗要件具備
2 遺産分割前の預貯金の払戻し制度との関係
3 遺留分侵害額請求は遺言執行者に対してする請求ではない

第5 遺言執行者に問題があるときの手続

1 処分制限は放置によって当然には外れない
2 解任請求の要件と管轄

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秘密証書遺言の作成方法,効力,検認及び令和8年改正(AI作成)

第1 秘密証書遺言の位置付け

1 内容を秘密にしたまま存在を明確にする遺言であること

2 利用件数が少ないこと

第2 現行法による作成方法

1 民法970条1項の4段階

2 本文の日付と訂正

3 口がきけない者及び成年被後見人の特則

第3 遺言本文の作成者である「筆者」

1 パソコンを実際に操作した者が筆者となること

2 専門家の指示で事務職員が入力した事案

第4 証人,費用及び保管

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自筆証書遺言の押印―必要な印と押し方・令和8年改正(AI作成)

第1 現在は自筆証書遺言に押印が必要である

1 本記事の対象と結論

2 現行民法968条の三つの押印

3 令和8年改正は成立したが未施行である

第2 実印・認印・指印・花押の扱い

1 実印でなく認印でも足りる

2 指印は押印に当たる

3 花押やサイン様の略号は押印にならない

4 本人以外が物理的に押した場合

5 押印を全く欠く遺言の例外は極めて狭い

第3 押印の場所・複数枚・押印時期

1 氏名の直下が安全だが法定の場所ではない

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相続させる遺言と特定財産承継遺言――違い,効力,登記及び遺言執行者の権限(AI作成)

第1 「相続させる」遺言と特定財産承継遺言の関係

1 結論――両者は重なるが,同じ意味ではない
2 法定の成立要件
3 「相続させる」という語だけでは決まらない

第2 最高裁平成3年判決が確立した直接承継の仕組み

1 遺産分割方法の指定と解する原則
2 相続開始時の直接承継
3 相続放棄及び遺言と異なる分配

第3 特定遺贈,相続分の指定及び包括遺贈との区別

1 特定遺贈との違い
2 相続分の指定との違い
3 包括遺贈との違い

第4 第三者対抗要件と相続登記

1 旧法下では登記なく第三者に対抗できた
2 現行民法899条の2
3 相続登記申請義務と登録免許税

第5 遺言執行者の権限は旧法と現行法で異なる

1 平穏な未登記事案を扱った最高裁平成7年判決
2 賃借権確認訴訟の被告適格を扱った最高裁平成10年判決

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遺言執行者は信託銀行より弁護士に依頼する方が合理的か——「遺言信託」の手数料構造と辞退リスクからの検討(AI作成)

◯山中弁護士への事件のご相談・ご依頼は「遺言・相続のお問い合わせ」から可能です。

目次

第1 本記事の対象と結論の要旨

1 対象と射程
2 結論の要旨——原則として弁護士を選ぶ方が合理的
3 用語——「遺言信託」は信託法上の信託ではない

第2 信託銀行が遺言執行を担える法的根拠とその限界

1 兼営法1条1項4号による併営業務
2 弁護士法72条による限界——紛争になれば扱えない
3 就職辞退・辞任という帰結と依頼者の負担

第3 遺言執行者の職務・報酬・費用の枠組み

1 職務の内容と権限
2 報酬の決まり方(民法1018条)
3 費用の負担(民法1021条)と復任(民法1016条)

第4 「遺言信託」の手数料構造

1 署名時・保管中・執行時の三層と別途実費
2 最低報酬額と算定基礎

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遺言信託(AI作成)

◯本ブログ記事は専らAIで作成したものです。
◯「日弁連と信託協会の協議会合意書(平成6年2月22日付)」も参照してください。

目次

第1 最初に区別すべき3つの制度

1 銀行サービスとしての「遺言信託」
2 信託法上の遺言による信託
3 遺言代用信託
4 制度選択の基準

第2 銀行サービスとしての遺言信託

1 法的根拠と提供業務
2 平成6年合意書が定めた紛争対応の限界

(1) 遺言書作成の相談
(2) 遺産整理業務
(3) 遺言執行者への就任

3 合意書の法的性質
4 契約と費用の確認

第3 信託法上の遺言による信託

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公正証書遺言の証人及び立会人(AI作成)

◯山中弁護士への事件のご相談・ご依頼は「遺言・相続のお問い合わせ」から可能です。

目次

第1 はじめに

1 公正証書遺言における「証人」の重み
2 本稿の視点――令和7年のデジタル化を踏まえて

第2 証人の意義と職責

1 なぜ2人以上の証人が必要なのか
2 証人が担う3つの確認

(1) 人違いでないことの確認
(2) 真意に基づく口授等の確認
(3) 筆記・記録の正確性の確認

3 立会いによる職権濫用の防止

第3 令和7年改正(公証制度のデジタル化)と証人

1 民法969条の方式――改正前後の対比

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