目次第1 借地権課税は当事者と取引段階を分けて考える第2 借地権を設定したときの課税1 個人地主が受け取った権利金2 法人地主の権利金認定課税3 相当の地代は現行取扱いで年6%である4 法人借地人が支払った権利金等第3 地代,更新料及び名義書換料の課税1 個人地主が受け取る地代等2 借地人が支払った更新料3 地代,更新料等に対する消費税第4 借地権を売却したときの税金1 個人の借地権譲渡は分離課税となる2 取得費及び譲渡費用3 法人による借地権の譲渡4 借地権の売却と消費税第5 借地権又は底地を相続・贈与したときの評価1 普通借地権の評価2 定期借地権等の評価3 親族間の使用貸借4 無償返還届出書がある土地の評価第6 借地権課税を検討するために確認する資料第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 国税庁通達4 国税庁の解説・質疑応答・手続案内
第1 借地権課税は当事者と取引段階を分けて考える
本記事は,借地権の設定,地代の支払,契約更新,借地権の売却並びに相続及び贈与の各段階について,地主側と借地人側の課税関係を整理するものである。
調査の基準日は令和8年9月17日であり,同日までに確認できた法令,国税庁通達・解説及び裁判所公表判決を基礎としている。
借地権に関する税務は,「借地権には何税がかかるか」という一つの問いでは決まらない。
地主又は借地人が個人か法人か,権利金,地代,更新料,譲渡代金又は相続のどれが問題となっているか,権利金を授受する取引上の慣行がある地域か,土地の無償返還に関する届出書が提出されているかによって,所得区分及び評価方法が変わるからである。
以下では,①借地権を設定したとき,②地代を支払いながら土地を利用しているとき,③契約を更新したとき,④借地権を売却したとき,⑤借地権又は底地を相続・贈与したときの順に説明する。
地代の相場,借地条件の変更及び借地非訟の手続は,借地権の地代・権利金・評価方法-相場,税務及び借地非訟(AIリライト)で説明している。
第2 借地権を設定したときの課税
1 個人地主が受け取った権利金
個人地主が土地に借地権を設定して受け取った権利金その他の一時金は,原則として不動産所得の総収入金額となる。
更新料,名義書換料,承諾料及び返還を要しない保証金等も,通常は不動産所得の収入に含まれると国税庁は説明している。
もっとも,建物又は構築物を所有するための借地権の設定により受け取った権利金等が土地の時価の2分の1を超える場合は,土地の一部を譲渡した場合と同様に譲渡所得として扱われる。
地下又は空間の一部について設定される権利では,土地の利用が制限される程度に応じ,土地価額の4分の1を超えるかどうかが基準となる場合がある。
この判定では,契約書に「権利金」と記載された金額だけを見れば足りるものではない。
借地権の設定に伴って地主に特別な経済的利益が与えられた場合,その利益も権利金等の額に含めて判定されるためである。
2 法人地主の権利金認定課税
法人が所有する土地について,権利金を授受する取引上の慣行があるにもかかわらず,借地人から通常収受すべき権利金を受け取らない場合,原則として権利金相当額の認定課税が行われる。
法人税基本通達13-1-3は,借地権の設定時に通常収受すべき権利金の額と実際に収受した権利金等との差額を,借地人に対する贈与として取り扱う仕組みを定めている。
権利金の認定課税が行われない代表的な場合は,①権利金に代えて相当の地代を収受するとき及び②契約書に将来土地を無償で返還する旨を定め,地主と借地人が連名で「土地の無償返還に関する届出書」を遅滞なく提出したときである。
地主が個人で借地人が法人である場合も,無償返還届出書の対象となる。
無償返還届出書を提出しても,実際の地代が相当の地代より低い場合の問題までなくなるわけではない。
法人税基本通達13-1-3は,実際の地代と相当の地代との差額について,法人地主から借地人への贈与として取り扱い,借地人が役員又は使用人である場合には給与の問題が生じ得ることを示している。
3 相当の地代は現行取扱いで年6%である
権利金に代えて収受する相当の地代は,原則として,土地の更地価額のおおむね年6%である。
更地価額の基礎には,通常の取引価額のほか,課税上弊害がない限り,公示価格等から合理的に算定した価額又は相続税評価額・その過去3年間の平均額を用いる方法がある。
法人税基本通達13-1-2の本文には8%との記載があるが,昭和63年12月の土地基本通達改正後の取扱いを定めた個別通達は,同項中の「100分の8」を「100分の6」として取り扱うことを明記している。
国税庁の現行タックスアンサーも,相当の地代を更地価額のおおむね年6%として説明しているため,基本通達の本文だけから現在も8%であると理解するのは正確でない。
相当の地代方式を選ぶ場合,契約書に将来の地代の改訂方法を定め,借地人と連名で「相当の地代の改訂方法に関する届出書」を遅滞なく提出する取扱いがある。
土地の価額に連動して相当の地代を改訂する方法を選択した場合,国税庁は,おおむね3年以下の期間ごとに地代を見直すものとしている。