目次
第1 令和8年10月9日の決議と、既に始まっている補償制度1 今回の決議で何が提言されたか2 最高裁判決の検討と、申請支援の検討を分ける第2 補償金と二種類の一時金を区別する1 給付の種類と対象者2 請求期間と、過去の一時金の受給第3 個別通知が求められる理由と、相談の始め方1 制度を知らせることと、申請できることは異なる2 記録が手元になくても、まず都道府県窓口へ相談する第4 成年後見人が確認したいこと1 本人の請求であることを明確にする2 無料の弁護士支援制度を確認する第5 資料の位置付け
第1 令和8年10月9日の決議と、既に始まっている補償制度
1 今回の決議で何が提言されたか
日弁連は令和8年10月9日、旧優生保護法による被害の回復と偏見差別の解消を求める決議を採択した。
補償への接続について、都道府県による被害者・遺族への個別通知、関係施設への周知、家庭裁判所を通じた成年後見人等への情報提供などを求めている。
これは日弁連の提言であり、決議によって新しい給付が創設されたり、全ての家庭裁判所で同じ通知運用が開始されたりしたという意味ではない。
出典は日弁連「旧優生保護法が助長した偏見差別を解消し、全ての個人が等しく尊重される社会の実現を目指す決議」(令和8年10月9日)である。
2 最高裁判決の検討と、申請支援の検討を分ける
補償金等の支給制度は令和7年1月17日に施行されている。
今回の決議を受けて実務上確認したいのは、制度の存在を知っているか、請求する人を特定できるか、本人の負担に配慮して申請を支援できるかという点である。
令和6年7月3日最高裁大法廷判決と除斥期間の問題については、旧優生保護法と除斥期間に関する既存記事を参照されたい。
本記事では、その判決の射程ではなく、現在の補償制度への接続を中心に扱う。
制度の施行日と相談先は、こども家庭庁「旧優生保護法による優生手術等を受けた方への補償金等の支給について」で確認できる。
第2 補償金と二種類の一時金を区別する
1 給付の種類と対象者
現行法では、優生手術等を受けた本人に対する補償金は1500万円、法律上の「特定配偶者」に対する補償金は500万円である。
本人又は特定配偶者が死亡している場合には、法律所定の順位に従い、遺族が自己の名で補償金を請求できる。
特定配偶者の範囲は通常の現在の配偶者という意味に限られず、婚姻時期等の要件を確認する必要がある。
これとは別に、優生手術等一時金320万円と人工妊娠中絶一時金200万円がある。
両一時金は施行日に生存している本人が対象であり、補償金の遺族請求と同じ仕組みではない。
ただし、本人が請求後に死亡した場合の未払一時金については、同一生計遺族等に支給する別の規定がある。
同じ理由による国の損害賠償との調整や、優生手術等一時金と人工妊娠中絶一時金の調整もあるため、各金額を一律に合算して受給額を説明することは適切でない。
以上の根拠は、補償法2条から5条、10条から22条である。
2 請求期間と、過去の一時金の受給
請求期間は、現行法5条3項とその準用規定により、施行日から起算して5年間とされている。
既に旧制度の一時金を受けた人についても、新制度の補償金の請求を確認する必要がある。
過去の認定や支給があったことと、新制度の補償金が自動的に振り込まれることは区別しなければならない。
請求書の種類、過去の受給に応じた添付書類の扱いは、こども家庭庁「補償金等の請求について」で確認できる。
第3 個別通知が求められる理由と、相談の始め方
1 制度を知らせることと、申請できることは異なる