目次
第1 刑事事件と民事事件の違い1 何を決める手続か2 同じ出来事について両方が問題となる場合第2 刑事事件の流れ―逮捕されない経路もある1 捜査の開始と身柄・在宅の分岐2 送致と検察官の判断3 起訴後の公判と略式手続4 判決,上訴と記録の確認第3 立場別に最初に確認する事項1 疑いをかけられた本人2 家族が逮捕・勾留された場合3 被害者・参考人第4 弁護士に相談する場面と準備するもの第5 よくある疑問1 逮捕・送検されたら有罪になるのか2 在宅事件なら軽い処分で終わるのか3 刑事事件の判決書はインターネットで読めるのか第6 主な一次資料
刑事事件とは,犯罪の疑いについて捜査を行い,起訴するかどうか,有罪か無罪か,どのような刑罰を科すかなどを扱う事件である。逮捕される事件だけを意味するわけではなく,身柄を拘束せずに捜査が進む事件もある。
警察から連絡を受けた人,家族が逮捕された人,被害を受けた人では,確認すべき事項が異なる。本記事では,主に成人の刑事事件について,民事事件との違いと手続の分岐を整理し,それぞれの場面に応じた詳しい解説を案内する。少年事件は家庭裁判所での手続などが異なるため,同じ流れをそのまま当てはめない。
第1 刑事事件と民事事件の違い
1 何を決める手続か
刑事手続では,犯罪の疑いを捜査し,検察官が起訴・不起訴を判断し,起訴された事件について裁判所が有罪・無罪や刑罰を判断する。捜査の対象となる人を被疑者,起訴された人を被告人という。
民事手続では,貸金の返還,損害賠償などの権利・義務に関する紛争を扱う。刑事事件の被害者が当然に刑事裁判の原告になるわけではなく,損害の回復には民事上の請求や被害者のための制度も検討する必要がある。
比較する点刑事事件民事事件主な問題犯罪の成立,有罪・無罪,刑罰お金の支払などの権利・義務手続を進める者捜査機関が捜査し,原則として検察官が起訴する請求する当事者が訴えを起こすなどして進める裁判の結論の例有罪判決,無罪判決,略式命令支払を命じる判決,請求棄却,和解
2 同じ出来事について両方が問題となる場合
例えば,人を負傷させた出来事については,刑事責任と,被害者への治療費・慰謝料などの損害賠償責任が併せて問題となり得る。刑事処分の結果と民事上の賠償額は,別々の要件と手続に基づいて検討する。
示談や被害弁償は刑事処分・量刑の判断で考慮され得るが,示談が成立すればすべての事件で必ず不起訴になるという関係ではない。親告罪における告訴取消しの効果など,罪名や手続段階によって確認すべき点も異なる。詳しくは被害弁償は刑事処分・量刑にどう影響するかを参照されたい。
第2 刑事事件の流れ―逮捕されない経路もある
1 捜査の開始と身柄・在宅の分岐
被害の申告などをきっかけに,警察や検察が事情聴取,資料の収集などの捜査を行う。被疑者の身柄を拘束して進める事件と,拘束せずに進める在宅事件がある。身柄を拘束されているかどうかと,犯罪が成立するかどうかは別の問題である。
逮捕と勾留も別の手続である。逮捕後に必ず勾留されるわけではなく,釈放後に在宅で捜査が続くこともある。身柄手続には期間の制限があり,起訴前と起訴後では勾留の制度が異なる。
身柄を拘束されていない事件の進み方や,連絡がない場合の処分確認については,在宅事件とは―身柄事件との違い,捜査から処分までの流れと結果の確認を参照されたい。
被疑者の逮捕/被疑者及び被告人の勾留
2 送致と検察官の判断
警察から検察官へ事件を送ることを送致といい,一般に送検とも呼ばれる。送致されたこと自体が,起訴又は有罪の決定を意味するわけではない。検察官は必要な捜査を行い,証拠と事情を検討して起訴・不起訴を判断する。
不起訴には,嫌疑がない場合,嫌疑が不十分な場合,起訴猶予などがある。不起訴は裁判所が言い渡す無罪判決とは異なる。処分の有無や理由を確認する方法も,確認する人の立場によって異なる。
検察庁から連絡を受けた場合の確認事項は,検察庁から呼び出されたら―理由・持ち物・日程変更と当日の流れで整理している。
3 起訴後の公判と略式手続
起訴には,公開の法廷で審理する公判請求と,一定の要件の下で書面審理を求める略式命令請求がある。略式命令請求も起訴であり,不起訴ではない。略式手続では,簡易裁判所が100万円以下の罰金又は科料を科すことができる。
公判では,起訴された事実について証拠を調べ,検察官・弁護人の意見や被告人の陳述などを経て,裁判所が判断する。検察官の求刑は検察官の意見であり,裁判所の判決そのものではない。
刑事事件の略式手続には,略式命令と正式裁判請求の詳しい説明がある。起訴後に勾留されている場合の釈放については,被告人の保釈を参照されたい。保釈は起訴前の被疑者を対象とする制度ではない。
4 判決,上訴と記録の確認
第一審の判決に対する控訴など,不服申立てには手続と期間の定めがある。判決書や略式命令を受け取った場合は,告知・言渡しの時期と書面の内容を確認し,必要な相談を早めに行う。刑事事件の上訴・不服申立ても参照されたい。
事件の進み方をまとめると,「捜査〔身柄を拘束する場合/拘束しない場合〕→検察官の処分〔不起訴/起訴〕→起訴の場合の裁判〔公判/略式〕→確定又は不服申立て」という分岐になる。すべての事件が「逮捕→有罪判決」と進むわけではない。
第3 立場別に最初に確認する事項
1 疑いをかけられた本人