目次第1 通常第一審における過失運転致傷罪の量刑分布1 懲役・禁錮の刑期区分別内訳2 終局区分と全部執行猶予率3 表の見方第2 出典及び集計方法1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別3 統計上の「過失運転致傷」の範囲第3 分布から読み取れること第4 量刑分布を読む前提となる法改正1 懲役及び禁錮は令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された2 自動車運転死傷処罰法の施行と統計の連続性第5 関連記事出典
第1 通常第一審における過失運転致傷罪の量刑分布
1 懲役・禁錮の刑期区分別内訳
地方裁判所及び簡易裁判所の通常第一審において過失運転致傷罪で有罪となり,懲役又は禁錮を言い渡された人員を,刑期区分別に示すと次のとおりである。
年次懲役・禁錮総数5年以下3年2年以上1年以上6月以上6月未満平成23年3,3391171821,9101,21118平成24年3,2642351921,7761,22534平成25年3,0301241761,7751,02925平成26年3,015−211831,7451,05115平成27年2,821−331651,63996915平成28年2,7172161501,61990624平成29年2,6822251661,59088613平成30年2,6231171491,57986017令和元年2,533−231601,5667759令和2年2,337−221501,3927676令和3年2,243−171441,4426382令和4年2,1352201211,3726137
過失運転致傷罪の法定刑は7年以下の拘禁刑(改正前は7年以下の懲役又は禁錮)又は100万円以下の罰金であり,傷害が軽いときは情状により刑を免除することができる(自動車運転死傷処罰法5条)。概況の表には「7年を超える」及び「7年以下」の欄があるが,本記事の12年間ではいずれも該当がないため省略した。
2 終局区分と全部執行猶予率
同じ人員を,終局区分別に整理すると次のとおりである。
年次終局人員有罪総数懲役・禁錮うち全部執行猶予全部執行猶予率(%)罰金無罪その他平成23年3,6143,5173,3393,13894.0178493平成24年3,4873,4053,2643,07194.1141478平成25年3,2443,1643,0302,88395.2134971平成26年3,2323,1603,0152,88095.51451161平成27年3,0532,9912,8212,73597.0169656平成28年2,9082,8352,7172,65497.8117865平成29年2,8962,8362,6822,64698.7154357平成30年2,7992,7442,6232,58498.6121253令和元年2,7202,6662,5332,47897.8133747令和2年2,4982,4552,3372,30598.6118439令和3年2,4132,3612,2432,21498.7118250令和4年2,2792,2312,1352,09698.396−48
「その他」は,公訴棄却,正式裁判請求の取下げ,移送等である。有罪総数が懲役・禁錮と罰金との合計を1人上回る年(平成27年及び平成28年)があるのは,刑の免除が各1人あるためである。
3 表の見方
各欄は刑期の上限を示しており,「1年以上」は1年以上2年未満,「2年以上」は2年以上3年未満,「3年」はちょうど3年を意味する。実刑人員は表に直接掲げられていないが,本記事で懲役・禁錮の総数から全部執行猶予人員を差し引いて算出すると,令和4年は39人,令和3年は29人,令和2年は32人であり,平成23年の201人から大きく減っている。
第2 出典及び集計方法
1 出典は法曹時報の「刑事事件の概況(上)」である
本記事の数値は,毎年2月1日発行の法曹時報に登載される「○年における刑事事件の概況(上)」の図表から採録したものである。同概況は最高裁判所事務総局刑事局が作成しており,各図表は当該年を末尾とする最近5年間を掲げる形式である。したがって,1冊で5年分を確認することができ,年ごとに号を遡る必要はない。
注意を要するのは,同じ表であっても号ごとに図表番号が変わることである。本記事が採録した図表は次のとおりである。
法曹時報の号(対象年)図表番号頁平成27年分(69巻2号)図表144548頁~549頁平成28年分(70巻2号)図表144566頁~567頁平成30年分(72巻2号)図表139404頁~405頁令和4年分(76巻2号)図表137688頁~689頁
概況は概況年の約2年後に登載されるため,本記事が現に確認した最新の号は令和4年分(76巻2号)である。令和5年分及び令和6年分についても既に登載されている可能性が高いが,本記事の執筆時点で現物を確認していないため,数値は令和4年までとした。
なお,各年の数値は後の号で遡及的に訂正されることがある。本記事では,同一年について複数の号に数値がある場合,最も新しい号の数値を採用している。過失運転致傷罪については,本記事が確認した範囲で,号をまたぐ数値の食い違いはなかった。
2 全部執行猶予率の算出方法と「一部執行猶予」との区別
概況の注記によれば,全部執行猶予率は,全部執行猶予言渡人員を懲役,禁錮3年以下の有罪人員で除して100を乗じて算出されている。分母は有罪人員全体ではなく,猶予を付し得る範囲に限られている点に注意を要する。
刑の一部執行猶予制度の施行日は平成28年6月1日である(平成30年分・72巻2号404頁の注記)。これ以降の概況は「一部執行猶予率」と「全部執行猶予率」とを別欄に分けており,本記事が掲げるのはいずれも全部執行猶予率である。平成27年以前の号は単に「執行猶予率」と表示しているが,一部執行猶予制度が存在しない時期の数値であるから,実質は全部執行猶予率と同義である。
表中の「−」は,該当する人員がないことを示す。全部執行猶予率の欄の「−」は,全部執行猶予の言渡しがなかったこと,又は分母となる人員が存在しないことのいずれかを意味する。
3 統計上の「過失運転致傷」の範囲
概況の注記によれば,「過失運転致傷」には,平成25年法律第86号による改正前の刑法211条2項の罪(自動車運転過失傷害)が含まれる。自動車運転死傷処罰法は平成25年11月27日に公布され,平成26年5月20日から施行された。したがって,本記事の平成25年以前の数値は改正前の刑法上の罪に係るものである。
第3 分布から読み取れること
第一に,全部執行猶予がほぼ例外なく付されている。全部執行猶予率は平成23年の94.0%から平成29年の98.7%まで上昇し,以後は97.8%から98.7%の範囲で推移している(令和4年は98.3%)。過失運転致死罪(9割台前半から半ば)と比べても更に高い。
第二に,刑期の中心は1年以上2年未満であり,その割合は54.4%(平成24年)から64.3%(令和3年・令和4年)の範囲にある。次いで6月以上1年未満が3割前後を占める。3年の言渡しは年16人から35人にとどまり,5年以下(3年を超えるもの)は年0人から2人である。
第三に,人員が大きく減少している。終局人員は平成23年の3,614人から令和4年の2,279人へと約37%減った。同じ期間に略式手続の人員も5万3,501人から3万2,853人へ減っており,過失運転致傷事件全体が縮小している。
第四に,通常第一審で処理されるのはごく一部である。令和4年についてみると,通常第一審の終局人員2,279人に対し,略式手続における過失運転致傷罪の終局人員は3万2,853人であり,件数の桁が異なる。令和4年分の概況691頁の図表139によれば,第一審における過失運転致傷事件の刑種の割合は,令和4年が懲役1.5%,禁錮4.6%,罰金93.9%であり,略式手続を含めた全体では罰金が9割を超えている。
(続きを読む...)通常第一審における過失運転致傷罪の量刑分布(地裁及び簡裁)(AIリライト)