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スマートフォンのロック解除と捜索・差押え-暗証番号・生体認証・黙秘権(AI作成)

第1 問題の全体像

スマートフォンの捜索を考えるときは,①端末を差し押さえること,②端末内の電磁的記録を探索・複写すること,③暗証番号を質問すること,④暗証番号を入力させること,⑤指紋又は顔で生体認証を解除することを区別する必要がある。
令状により端末を差し押さえることができる場合でも,そのことから直ちに暗証番号の供述又は生体認証による解除まで無制限に強制できるとはいえない。

第2 端末の差押えとデータの探索

刑事訴訟法218条及び219条は,捜査機関による捜索・差押えに令状を要求し,令状に記載すべき対象等を定めている。
スマートフォンは私生活に関する大量の情報を保存し得るため,端末の差押えの可否だけでなく,被疑事実との関連性,探索対象,期間及びデータの範囲が問題となる。

令状に記載された対象又は被疑事実と無関係なデータまで一般探索的に調べてよいということにはならない。
捜索現場では,令状の罪名,差し押さえるべき物,場所及び有効期間を確認し,任意提出又は任意のロック解除を求められているのか,令状に基づく処分なのかを区別する必要がある。

第3 暗証番号と黙秘権

1 暗証番号を質問された場合

日本国憲法38条1項及び刑事訴訟法198条2項は,自己に不利益な供述を強要されない権利と被疑者の供述拒否権を定めている。
暗証番号を記憶から述べる行為は言語による情報の表出であるため,端末そのものの提出とは別に黙秘権との関係を検討する必要がある。

東京高裁平成31年2月19日判決は,捜索・差押えの現場で警察官が黙秘権を告知せずに携帯電話の暗証番号を聞き出した事案について,当該事案の状況の下では違法とはいえないと判断した。
同判決は裁判所ウェブサイト未掲載であり,あらゆる場面で黙秘権告知が不要であること,又は暗証番号の供述を強制できることまで判示したものではない。

2 令和7年刑事訴訟法改正の国会審議

電磁的記録提供命令をめぐる令和7年の国会審議では,法務大臣が,パスワード等の供述は強制されるものではないと答弁する一方,既に存在する電磁的記録の提供と,パスワードそのものを伝える供述とを区別して説明している。
これは新たな電磁的記録提供命令の説明であり,押収済みスマートフォンの現場にそのまま一般化せず,処分の根拠と求められている行為を確認する必要がある。

第4 指紋・顔による生体認証

生体認証では,暗証番号を言語で述べる場合と異なり,指又は顔という身体的特徴を端末に読み取らせる行為が問題となる。
実務文献では,身体検査令状により指紋又は顔を認証画面に読み取らせる方法が論じられているが,この点について一般的基準を示した最高裁判例が公表されているわけではない。

生体認証であれば当然に無令状で強制できる,または暗証番号であれば常に解除を拒める,という単純な区分はできない。
令状の種類,記載内容,対象者の地位,強制の態様及び取得するデータの範囲を個別に検討すべきである。

第5 捜索を受ける側の確認事項

① 令状の提示を受け,罪名,対象物,場所及び有効期間を確認すること。
② 端末の提出,暗証番号の供述,入力操作及び生体認証のどれを求められているかを確認すること。
③ 任意の協力に同意しない場合は,妨害行為をせず,その意思を明確に伝えること。
④ 令状の範囲又は解除方法に疑問がある場合は,できるだけ早く弁護人へ連絡すること。
⑤ データの削除,遠隔消去又は端末の破壊をしてはならない。

第6 関連記事

司法修習生の逮捕事例を含む従来記事として,司法修習生の逮捕及び実名報道(AIリライト)がある。
取調べと黙秘権については,取調べに関するメモ書きを参照されたい。
令状関係資料については,令状事務処理の手引を参照されたい。

出典

① e-Gov法令検索「日本国憲法」35条及び38条。
② e-Gov法令検索「刑事訴訟法」198条,218条及び219条。
③ 衆議院「第217回国会法務委員会第9号(令和7年4月9日)」及び「同第11号(令和7年4月18日)」。
④ 東京高裁平成31年2月19日判決(判例秘書で全文確認。裁判所ウェブサイト未掲載)。
⑤ 「身体に関する令状実務について(覚書)」判例タイムズ1476号26頁~27頁。