目次
第1 トランプ関税はすべて還付されるのか第2 誰が申請し,誰が返金を受けるのか1 記録上の輸入者と通関業者2 受領口座と契約上の帰属は別に確認する第3 清算状態とCAPEの対象を確認する1 未清算,清算後,最終清算済みを区分する2 フェーズ3について確認できる範囲3 reconciliation対象の申告第4 申請から返金までの確認1 対象一覧を作成して申請結果を追う2 期限を混同しない第5 日本企業が契約上の精算で確認すること1 関税分をどのように負担したか2 将来の契約で精算条件を定める第6 出典・参考資料1 判決とCBPの原資料2 フェーズ3の報告と期限の法令
第1 トランプ関税はすべて還付されるのか
トランプ関税がすべて還付されるわけではない。
2026年2月20日の米国連邦最高裁判決は,国際緊急経済権限法(IEEPA)に関税を課す権限がないと判断したものであり,通商法301条や通商拡大法232条の関税まで一括して取り消したものではない。
還付の検討では,まず納付した税額のうち,IEEPAに基づく部分を分ける必要がある。
IEEPA関税については,米国税関・国境警備局(CBP)がCAPEという電子的な処理の仕組みを段階的に導入している。
ただし,最高裁判決があったことと,個別の輸入申告について申請でき,返金を受けられることは別の問題である。
以下は,2026年10月14日に確認したCBP通知とJETROの10月7日付け報告を基に,申請主体,清算状態,申請後の確認及び契約当事者間の精算を整理する。
関税制度全体と日本原産品の税率の仕組みは,トランプ関税とは―税率の仕組み・日本への影響・最高裁判決を解説を参照されたい。
第2 誰が申請し,誰が返金を受けるのか
1 記録上の輸入者と通関業者
CAPEの申請主体は,記録上の輸入者であるImporter of Record(IOR),又はそのIORに代わって輸入概要書を提出した通関業者である。
日本から商品を輸出したというだけで,日本の売主が他社の輸入申告について直接申請できるとは限らない。
米国子会社,現地の買主又は日本企業自身のいずれがIORになっているかを,輸入申告の記録から確認する。
通関業者に依頼する場合も,対象申告番号,IEEPA関税額,申請対象となる清算状態及び作業を引き受ける範囲を共有する必要がある。
すべての申告を一括して渡すよりも,処理済み・未処理・対象外・要確認を区分した一覧を用意すると,重複申請や確認漏れを防ぎやすい。
2 受領口座と契約上の帰属は別に確認する
CBPの案内では,還付はIOR又はCBP Form 4811によって指定された者への支払として扱われる。
また,電子還付用の銀行口座情報の登録は,申請用のACEアカウントや申請の受理とは別に確認する事項である。
JETROの10月7日付け報告も,ACHの口座情報未登録によって支払手続が進まなかった例を紹介している。
CBPから実際に送金を受ける者と,売主・買主間で最終的に還付の利益を取得すべき者は,同じとは限らない。
例えば,買主がIORであっても,売主が関税相当額を別途補填していた場合には,その補填の合意,請求書及び精算条項を確認する必要がある。
反対に,関税込みの固定価格で販売したという事情だけから,売主に当然の返還請求権があると結論付けることもできない。
この部分は米国の申請制度の説明ではなく,契約内容と準拠法に基づいて検討すべき問題である。
第3 清算状態とCAPEの対象を確認する
1 未清算,清算後,最終清算済みを区分する
liquidationは,輸入時に概算で納付した関税等をCBPが最終的に確定する手続である。
商品の引渡しが終わった日や,請求書を支払った日と同じ意味ではない。
申告ごとの清算日と現在の状態を,ACEやCBPの通知,通関業者の記録で確認する。
区分確認すること申請上の注意未清算又は清算後80日以内清算日,対象税目,申告の種類フェーズ1・2の対象条件を確認する。期間内でもすべての申告が無条件に受理されるわけではない。reconciliationの対象調整申告の提出済み・未提出,提出期限CBPの専用通知に従い,CAPEと調整申告の順序を確認する。最終清算済みCITでの救済,IOR番号の提出状況,対象者への通知フェーズ3は限定された対象から始まっている。最終清算済みというだけで申請可能とはいえない。