第1 §363売却を知ったときの結論1 売掛金・契約・責任を別々に確認する2 最初に固定する事件座標第2 §363売却の仕組みと文書の読み方1 通常の事業外の売却と裁判所の承認2 APAとSale Orderは役割が異なる3 free and clearの五つの条件第3 売掛金は誰が支払うか1 日本企業が債務者に対して有する売掛金2 債務者が日本企業に対して有する売掛金3 売掛金確認のための対照表第4 契約は買主へ承継されるか1 assumption and assignmentを確認する2 cure額と将来履行の十分な保証3 譲渡禁止条項だけでは結論が出ない第5 後継者責任とfree and clearの限界1 責任の遮断は一律ではない2 TWA事件が示す資産との結び付き3 Motors事件が示す通知と買主自身の行為第6 期限を逆算する1 連邦規則上の基準日数2 事件ごとの命令が日数を変える3 上訴とstayは別問題である第7 日本企業の実務確認表1 売掛金2 契約承継3 後継者責任と通知4 現地弁護士へ渡す資料第8 関連記事1 チャプター11申立直後の対応2 日本の民事再生との比較3 公開事件記録の読み方第9 出典1 法令2 裁判所規則・地方規則3 裁判例4 実務解説
米国チャプター11で取引先の事業が第三者へ売却されても,日本企業の売掛金,契約及び請求権が一括して買主へ移るわけではない。
最初に確認すべきものは,売却を伝えるニュースではなく,売主・買主の法人名,Asset Purchase Agreement(APA),Sale Order,Assumed Contractsの一覧,Assumed Liabilitiesの定義及び各種通知である。
本記事では,日本企業が§363売却の場面で,誰に売掛金を請求するか,契約が買主へ承継されるか,後継者責任を主張できるか,いつまでに異議又は上訴対応を要するかを,公開された裁判記録から確認する方法を説明する。
本記事は,2026年9月6日現在の米国連邦倒産法及び連邦倒産手続規則を前提とし,具体的な事件では係属裁判所のローカルルール,最新の命令,適用される巡回区判例及び契約準拠法を別途確認する必要がある。
第1 §363売却を知ったときの結論
1 売掛金・契約・責任を別々に確認する
§363売却は資産の売却であり,法人そのものの株式取得とは異なる。
そのため,買主が取得する資産,承継する契約及び引き受ける債務は,APAとSale Orderで画されるのが基本である。
日本企業が確認する対象は,①日本企業が米国債務者に対して有する申立前の売掛金,②米国債務者が日本企業に対して有する売掛金又は支払請求権,③継続中の供給契約・販売店契約・ライセンス等,④製品事故その他の後継者責任に関する請求の四つである。
同じ「売掛金」でも債権者がどちらかによって結論が逆になるため,債権の向きを明記して整理する必要がある。
一般的な申立直後の対応は,取引先が米国チャプター11を申し立てた場合の初動対応-自動停止・債権届出・20日商品・重要取引先(AI作成)にまとめている。
また,日本の民事再生との制度上の違いは,米国のチャプター11と日本の民事再生手続の徹底比較(AI作成)を参照されたい。
2 最初に固定する事件座標
売却文書を読む前に,①裁判所名,②事件番号,③申立法人の正式名称,④自社契約の相手方,⑤売却対象法人,⑥買主の正式名称及び⑦売却完了日を一枚にまとめる。
企業グループの一部だけが申立てをし,又は一部の事業だけが売却されることがあるため,ブランド名だけで債務者又は買主を特定してはならない。
次に,裁判所のDocketから,①Bidding Procedures Motion,②Bidding Procedures Order,③Sale Motion,④APAとそのSchedules,⑤Sale Notice,⑥Cure Notice又はAssumption and Assignment Notice,⑦Sale Order及び⑧Closing Noticeを時系列に並べる。
申立書又はプレスリリースは入口にすぎず,最終的な権利関係は,修正後のAPA,最終の契約一覧,Sale Order及び実際のClosingの有無まで確認して判断する。
第2 §363売却の仕組みと文書の読み方
1 通常の事業外の売却と裁判所の承認
米国連邦倒産法§363(b)(1)は,通常の事業過程外で財団財産を使用し,売却し,又は賃貸する場合,通知と審理を要求している。
チャプター11では,債務者が再建計画の成立前に主要事業を売却する手段として用いられることがある。
実務では,債務者がストーキング・ホースと呼ばれる最初の買主候補とのAPAを示し,入札資格,入札期限,オークション,違約金等を定めるBidding Procedures Orderを先に求めることが多い。
入札手続後に,裁判所は落札者,対価,売却対象及びSale Orderの条項を審査するため,Bidding Procedures Orderだけを見て最終結果と考えてはならない。
2 APAとSale Orderは役割が異なる
APAは売主と買主の契約であり,Purchased Assets,Excluded Assets,Assumed Liabilities,Excluded Liabilities,Assumed Contracts,Closing条件等を定める。
他方,Sale Orderは裁判所の命令であり,売却の承認,free and clearの範囲,通知の適否,買主のgood faith,後継者責任に関する条項,契約承継等を定める。
したがって,APAに責任を引き受けない旨があるだけで第三者の請求権が消えるとは限らず,Sale Orderの文言だけで買主の契約上の引受範囲が確定するとも限らない。
両文書及びSchedulesを相互参照し,後日の修正,補足書面又はClosing時の選択変更がないかを確認する必要がある。
3 free and clearの五つの条件
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