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自賠責・任意保険

自賠責保険の被害者請求・加害者請求の消滅時効―3年の起算点,時効中断申請書及び時効完成後の回収方法(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 根拠条文と期間1 被害者請求と仮渡金2 加害者請求3 政府保障事業4 平成22年3月31日以前の事故は2年第3 起算点と実務の取扱い1 国土交通省の案内による起算日2 条文上の起算点とのずれ3 加害者本人への請求権(5年)とのずれ4 任意保険会社の一括払第4 時効の更新1 加害者への訴えでは止まらない2 時効更新の手続3 手続の注意点第5 政府保障事業の起算点1 最高裁平成8年3月5日判決2 判決の理由と事案3 現在の実務との関係第6 時効完成後の回収方法1 任意保険会社からの支払2 判決に基づく差押え・転付命令3 転付命令の手順と注意点第7 日付で見る計算例1 設例2 読み方第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 その他の資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,交通事故の被害者が自賠責保険会社に直接請求する権利(被害者請求・仮渡金),加害者が賠償金を支払った後に自賠責保険会社に請求する権利(加害者請求),及び政府の自動車損害賠償保障事業(政府保障事業)に対する請求権の消滅時効を整理するものである。
調査基準日は令和8年9月19日である。
加害者本人に対する損害賠償請求権の時効は交通事故の損害賠償請求権の時効はいつから進行するか―症状固定,物損の別進行及び弁護士費用で扱い,消滅時効の全体像は消滅時効に関するメモ書きにまとめている。

2 結論

自賠責保険の請求権の時効は,被害者請求・加害者請求・政府保障事業のいずれも3年である(自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)19条・23条・75条,保険法95条1項)。
平成22年3月31日以前に発生した事故については2年である。

国土交通省の案内では,時効の起算日は次のとおりとされている。
①被害者請求のうち傷害は事故発生日の翌日から3年。
②被害者請求のうち後遺障害は症状固定日の翌日から3年。
③被害者請求のうち死亡は死亡日の翌日から3年。
④加害者請求は加害者が損害賠償金を支払った日の翌日から3年。

注意すべき点は次の3つである。
第一に,加害者本人に対する人身損害の損害賠償請求権は令和2年4月1日施行の民法改正で5年になったが,自賠責保険の被害者請求は3年のままであり,多くの場合,自賠責保険の方が先に時効にかかる。
第二に,加害者に対して訴えを提起しても,自賠責保険会社に対する被害者請求の時効は止まらない。
第三に,期限内に請求できないときは,自賠責保険会社所定の書式で時効の更新(旧法の時効中断)を申請し,保険会社の承認を得ることで,承認の時から新たに3年が進行する。

被害者請求の時効が完成した後でも,加害者の任意保険会社から支払を受けることや,加害者に対する判決に基づいて加害者の自賠責保険金請求権を差し押さえて転付命令を得ること(最高裁昭和56年3月24日判決)により,回収の途が残る場合がある。

第2 根拠条文と期間
1 被害者請求と仮渡金

自賠法19条は,「第十六条第一項及び第十七条第一項の規定による請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び保有者を知つた時から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。」と定める。
16条1項は被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する権利(被害者請求)を,17条1項は損害賠償額の支払のための仮渡金を請求する権利を定めている。
条文上の起算点は,民法724条1号と同じく,被害者又は法定代理人が「損害及び保有者を知つた時」という主観的な起算点である。

2 加害者請求

自賠法15条は,「被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。」と定める。
この保険金請求権の時効について自賠法は定めを置いていないが,同法23条が「責任保険の契約については、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、保険法第一章、第二章(第五節を除く。)及び第五章の規定による。」と定めている。
保険法95条1項は,「保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と定めるから,加害者請求も3年である。
加害者請求は賠償金を支払った限度でしかできないから,その「行使することができる時」は支払をした時となる。

3 政府保障事業

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人身傷害保険金を受け取った後も加害者に遅延損害金を請求できるか―最高裁平成24年2月20日判決と保険代位の範囲(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 最高裁平成24年2月20日判決の事案と判断1 事案の概要2 遅延損害金の請求権は代位取得されないとした判断3 過失がある場合の代位の範囲(裁判基準差額説)4 保険法25条との関係第3 被害者が加害者に請求できる遅延損害金の範囲と計算例1 請求できる遅延損害金の範囲2 計算例1(被害者に過失がない場合)3 計算例2(被害者に過失がある場合)第4 無保険車傷害保険金との比較1 最高裁平成24年4月27日判決①(保険金額の算定)2 同判決②(保険金の支払債務の遅延損害金の利率)3 両判決に共通する考え方と違い第5 実務上の確認事項1 約款に遅延損害金を支払う定めがあるか2 人傷先行か賠償先行か3 示談や和解で遅延損害金を落とさないこと4 人身傷害保険以外の保険との区別5 保険会社が加害者に求償する場面(最高裁平成24年5月29日判決)第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,交通事故の被害者が自分の加入する自動車保険の人身傷害条項に基づいて保険金(以下「人傷保険金」という。)を受け取った後,加害者に対して,事故日から人傷保険金の支払日までの遅延損害金を請求できるかを扱う。
調査基準日は令和8年9月19日である。
中心となる裁判例は,最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決(平成21年(受)第1461号,民集66巻2号742頁)であり,比較の対象として,無保険車傷害保険金に関する最高裁判所第二小法廷平成24年4月27日判決(平成21年(受)第1923号,集民240号223頁)を取り上げる。

人傷保険金と過失相殺の関係(いわゆる裁判基準差額説)や,人傷先行・賠償先行の選択の全体像は,既存記事の人身傷害保険の補償範囲と請求順序―人傷先行・賠償先行,保険代位及び自賠責回収及び過失相殺と素因減額が併存する場合の人身傷害保険会社の代位の範囲――最高裁令和7年7月4日判決で説明している。
本記事では,それらとの重複を避け,遅延損害金の帰属に焦点を当てる。

2 結論

約款に保険会社が損害元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めがない人身傷害条項に基づいて保険金を支払った保険会社は,損害金元本の支払請求権(被害者に過失があるときは,裁判基準差額説による範囲)を代位取得するだけであり,その元本に対する遅延損害金の支払請求権は代位取得しない(最高裁平成24年2月20日判決)。
したがって,被害者は,人傷保険金を受け取った後も,加害者に対し,事故日から人傷保険金の支払日までの遅延損害金を請求できる。
この遅延損害金は,保険会社に移った元本部分に対応するものも含め,支払日時点の損害金元本の全体について計算される。
人傷保険金の支払日の翌日以降に被害者が請求できる遅延損害金は,被害者に残った元本に対するものだけとなる。

利率は,事故日が令和2年3月31日以前であれば年5%,令和2年4月1日以後であれば年3%となるのが原則である。
無保険車傷害保険金についても,最高裁平成24年4月27日判決は,同じく約款上遅延損害金を塡補しない保険であることを前提に,保険金額の算定で遅延損害金への充当を考慮しないとした。
もっとも,いずれの結論も「約款に遅延損害金を支払う定めがないこと」を前提とするから,実際の事件では,契約時の約款を確認する必要がある。

第2 最高裁平成24年2月20日判決の事案と判断
1 事案の概要

平成17年5月1日,道路を横断中の歩行者Aが自動車に衝突されて負傷し,同年11月26日に死亡した。
Aの両親である原告らが,運転者に対して民法709条に基づき,保有者に対して自賠法3条に基づき,損害賠償を請求した事案である(判決全文2頁)。

Aの損害は合計7,828万2,219円,Aの過失割合は10%であり,過失相殺後の損害金は7,045万3,997円であった。
原告らは共済組合から123万9,297円,保有者から793万0,904円の支払を受け,過失相殺後の残元本は6,128万3,796円となっていた。
その後,平成19年10月25日,原告らは,原告の一人(X1)が契約していた自動車保険の人身傷害条項に基づき,人傷保険金5,824万6,898円を受け取った(判決全文2頁~4頁)。

判決が確定事実として挙げる約款の内容のうち,本記事に関係するのは次の2点である。
①代位条項は,保険会社が「その損害に対して支払った保険金の額の限度内で,かつ,保険金請求権者の権利を害さない範囲内で」,保険金請求権者が他人に対して有する権利を取得するというものであった。
②「本件約款には,訴外保険会社が上記(6)アの損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めはない。」とされた(判決全文4頁)。

原審は,人傷保険金を,旧民法491条に準じて,まず残元本に対する支払日までの遅延損害金762万2,696円に充当し,残りを元本に充当するという処理をした(判決全文5頁~6頁)。
最高裁は,この処理を是認しなかった。

2 遅延損害金の請求権は代位取得されないとした判断
(1) 判決の理由

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労災保険給付と自賠責保険の直接請求が競合する場合―最高裁平成30年9月27日判決と国への支払の効力(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 第三者行為災害と自賠責保険の直接請求権1 労災保険法12条の4の求償と控除2 自賠法16条1項の直接請求権と国への移転3 競合が生じる場面第3 最高裁平成30年9月27日判決(被害者は国に優先する)1 事案2 判断3 理由4 計算例(案分説との比較)5 同じ判決の自賠法16条の9に関する判断第4 最高裁令和4年7月14日判決(国への支払は有効な弁済)1 事案2 判断3 「相対的な優先劣後関係」の意味4 この判決が判断していないこと第5 実務上の対応1 自賠先行と労災先行2 厚生労働省の事務処理基準3 労災保険給付を受ける事案では被害者請求を早く行う4 自賠責保険会社への連絡5 国に支払われてしまった場合6 示談と遅延損害金第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,業務中又は通勤中の交通事故(第三者行為災害)で労災保険給付を受けた被害者が,加害車両の自賠責保険会社に対して自賠法16条1項の直接請求(被害者請求)をする場面を扱う。
この場面では,労災保険給付をした国も,労災保険法12条の4第1項により被害者の直接請求権を取得して自賠責保険会社に請求するため,被害者の請求と国の請求が同じ自賠責保険金額の枠を取り合うことがある。
本記事の調査基準日は令和8年9月19日であり,条文はe-Gov法令検索の現行条文,裁判例は裁判所HPの裁判例検索で確認した。

2 結論

①被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときでも,被害者は,国に優先して自賠責保険金額の限度で支払を受けることができる(最高裁平成30年9月27日判決)。
②もっとも,この優先は被害者と国との間の相対的な優先劣後関係にとどまり,自賠責保険会社が国の請求を受けて国に対して自賠責保険金額の限度でした支払は,有効な弁済に当たる(最高裁令和4年7月14日判決)。
③そのため,国に先に支払われると,被害者は自賠責保険会社に残額を請求できなくなる。
④国が被害者に不当利得返還義務を負うかどうかについて,令和4年判決は「別論である」と述べるにとどまり,返還義務があると判断したわけではない。
⑤実務上は,労災保険給付を受ける事案では被害者請求を早く行い,未塡補損害が自賠責保険金額を超える見込みであることを自賠責保険会社に早めに伝えることが考えられる。
⑥厚生労働省の「第三者行為災害事務取扱手引」は,平成30年4月版では按分比例による支払を前提としていたが,令和2年4月版の改正点に被害者請求が求償に優先する旨を掲げており,令和4年判決の後に取扱いを変更した通達は見当たらなかった。

令和4年判決は,平成30年判決の被害者優先の考え方を保険会社の支払の効力にまで広げた判決ではない。
むしろ,被害者優先は保険会社の弁済の効力を左右しないとして,その及ぶ範囲を限定した判決である。

第2 第三者行為災害と自賠責保険の直接請求権
1 労災保険法12条の4の求償と控除

労災保険法12条の4は,次のとおり定める。
「政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。」(1項)
「前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。」(2項)

厚生労働省「第三者行為災害のしおり」は,1項による調整を「求償」,2項による調整を「控除」と呼んでいる(同しおり8頁~9頁)。
労災保険給付が先に行われた場合は国が被害者の損害賠償請求権を取得して加害者側に請求し,損害賠償が先に行われた場合は国がその価額の限度で労災保険給付をしないという仕組みである。
控除と損益相殺の計算順序は,損益相殺とは―労災保険給付・年金・保険金の控除と計算順序で扱っている。

2 自賠法16条1項の直接請求権と国への移転

自賠法16条1項は,「第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。」と定める。
これが被害者請求と呼ばれる直接請求権である。
最高裁令和4年7月14日判決は,直接請求権が加害者に対する自賠法3条の損害賠償請求権と同額のものとして成立し,労災保険給付が行われた場合には労災保険法12条の4第1項によりその給付の価額の限度で国に移転し,国はその限度で直接請求権を取得すると述べている。

したがって,労災保険給付を受けた被害者の直接請求権は,労災保険給付の価額に相当する部分が国に移り,被害者の手元には労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)に対応する部分が残る。
国は,移転を受けた直接請求権に基づき,自賠責保険会社に請求することになる。

3 競合が生じる場面

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自賠責保険の被害者請求と遅延損害金―自賠法16条の9の「必要な期間」,利率及び訴訟提起の実益(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 対象とする場面2 結論第2 被害者請求による支払債務の性質1 自賠法16条1項の被害者請求2 保有者の保険金請求権の変形ではない第3 保険会社が遅滞に陥る時期1 最高裁昭和61年10月9日判決(請求時に遅滞)2 自賠法16条の9の新設3 「必要な期間」の意義4 「必要な期間」の目安5 被害者が調査に応じない場合第4 遅延損害金の利率1 年5%か年3%か2 商事法定利率は適用されない第5 訴訟提起の実益1 遅延損害金は訴訟でなければ得にくい2 支払基準によらない算定3 過失相殺の扱い4 保険金額の上限と遅延損害金5 訴訟を選ぶ前に確認すること第6 関連記事第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料
第1 本記事の対象と結論
1 対象とする場面

本記事は,交通事故の被害者が,加害車両の自賠責保険会社に対し,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)16条1項に基づいて損害賠償額の支払を直接請求する場合(被害者請求)に,保険会社がいつから遅延損害金を負担するか,その利率は何%か,及び遅延損害金との関係で訴訟を提起する実益があるかを扱う。
調査基準日は令和8年9月19日である。
条文はe-Gov法令検索の現行条文,裁判例は裁判所HPの裁判例検索で確認したものに限っている。

加害者本人に対する不法行為に基づく損害賠償請求の遅延損害金(事故日から発生する。)は,不法行為・交通事故の遅延損害金はいつから発生するかで扱う。
遅延損害金に関する論点の全体像は,遅延損害金に関するメモ書きにまとめている。

2 結論

結論は次のとおりである。

① 被害者請求による保険会社の支払債務は,被害者が保険会社に対して有する固有の損害賠償請求権に対応するものであり,保有者の保険金請求権の変形ではなく,商行為によって生じた債務にも当たらない(最高裁昭和57年1月19日判決)。
② 保険会社は,請求を受けた後,事故及び損害賠償額の確認をするために「必要な期間」が経過するまでは遅滞の責任を負わない(自賠法16条の9第1項)。
③ この規定は,保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成20年法律第57号)によって新設され,平成22年4月1日に施行された。
それより前は,請求を受けた時に遅滞に陥るとされていた(最高裁昭和61年10月9日判決)。
④ 「必要な期間」は,保険会社が事故及び損害賠償額の確認に要する調査をするために必要とされる合理的な期間であり,取得資料の内容・取得時期,争いの有無・内容,交渉経過等の事情を考慮して個別に判断され,訴訟で請求した場合も同じである(最高裁平成30年9月27日判決)。
法令にも判例にも一律の日数の定めはない。
⑤ 利率は,必要な期間が経過して遅滞に陥った時点の法定利率である。
その時点が令和2年4月1日以後であれば,事故が令和2年3月以前であっても年3%となり得る。
⑥ 訴訟外の被害者請求は支払基準に従った支払であり,遅延損害金を加算する定めは支払基準に置かれていない。
訴訟では,支払基準によらずに損害賠償額が算定され(最高裁平成18年3月30日判決),遅延損害金も請求の対象になる。
もっとも,過失相殺が支払基準より厳しく働くことがあるなど,訴訟が常に有利とは限らない。

第2 被害者請求による支払債務の性質
1 自賠法16条1項の被害者請求
(1) 条文

自賠法16条1項は,「第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。」と定める。
これが被害者請求である。
加害者(被保険者)が被害者に賠償金を支払った後に,その支払の限度で保険会社に保険金を請求する被保険者請求(自賠法15条)とは,請求の主体と根拠条文が異なる。

責任共済(JA共済等)についても,自賠法23条の3第1項により,12条から23条の2までの規定が準用される。
したがって,本記事で述べる16条1項及び16条の9の扱いは,責任共済にもそのまま当てはまる。

(2) 支払基準との関係

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自賠責保険審議会の役割-委員構成,開催時期及び令和8年11月の保険料改定(AI作成)

目次第1 自賠責保険審議会とは1 金融庁に置かれる法定の審議会2 個別の保険金請求を審査する機関ではないこと第2 審議会が基準料率について果たす役割1 保険料率に適用される二つの基準2 算出,届出,諮問及び適合性審査3 各保険会社で保険料に差が生じにくい理由第3 委員構成と会議の成立1 13人の委員の内訳2 特別委員と令和8年4月30日現在の名簿3 会長,定足数,議決及び庶務第4 開催時期と次回日程の確認方法1 開催日は法律で1月に固定されていないこと2 次回の日程は金融庁の二つのページで確認すること第5 令和8年11月の保険料改定1 第152回で示された引上げの方向性2 第153回の答申と適合性審査3 代表的な24か月契約の改定額第6 公表資料の読み方1 同じ会議について複数の資料がある理由2 契約に適用される金額の確認先第7 制度の沿革1 昭和30年の制度発足時2 平成12年答申と平成14年施行の制度改革第8 出典1 法令2 金融庁の審議会資料3 基準料率及び制度説明4 沿革資料
第1 自賠責保険審議会とは
1 金融庁に置かれる法定の審議会

自賠責保険審議会の正式名称は「自動車損害賠償責任保険審議会」であり,自動車損害賠償保障法31条に基づいて金融庁に置かれる審議会である。
本記事では,令和8年9月14日を調査基準日として,現行法上の役割,委員構成,開催時期,公表資料の読み方及び令和8年11月から適用される新しい基準料率を整理する。

2 個別の保険金請求を審査する機関ではないこと

審議会が扱うのは,基準料率,保険会社の算出方法書・普通保険約款の認可,共済規程等に関する行政庁の同意など,制度全体に関する行政上の事項である。
交通事故ごとの後遺障害等級,損害額又は保険金支払の当否を審査する機関ではなく,これらの個別問題と審議会の制度上の役割は区別する必要がある。

第2 審議会が基準料率について果たす役割
1 保険料率に適用される二つの基準

自動車損害賠償保障法25条は,自賠責保険の保険料率について,能率的な経営の下における適正な原価を償う範囲内で,できる限り低いものであることを求めている。
また,損害保険料率算出団体に関する法律8条は,料率団体が算出する基準料率について,合理的かつ妥当であり,不当に差別的でないことを求めており,自賠責保険の基準料率は両方の基準に適合する必要がある。

2 算出,届出,諮問及び適合性審査
(1) 損害保険料率算出機構による算出と届出

損害保険料率算出団体に関する法律9条の3によれば,料率団体は,基準料率を算出したとき,純保険料率,付加保険料率,算出方法その他の事項を記載した書類を添えて内閣総理大臣に届け出る。
自賠責保険については,損害保険料率算出機構が毎年度の収支状況などを検証し,改定が必要と判断した場合に新しい基準料率を算出して届け出ている。

(2) 審議会への諮問と行政庁の審査

自動車損害賠償保障法33条は,同法28条に定める処分や基準料率の適合性審査期間の短縮などについて,内閣総理大臣が審議会に諮らなければならない場合を定めている。
したがって,審議会は改定内容を調査審議して答申するが,基準料率を算出して届け出る主体は損害保険料率算出機構であり,法定基準への適合性を審査する行政庁の手続も別に存在する。

3 各保険会社で保険料に差が生じにくい理由

自賠責保険については,自動車損害賠償保障法26条の2により,通常の基準料率を中心とする範囲料率ではなく,基準料率そのものを使用する仕組みとされている。
国土交通省の制度説明も,自賠責保険の保険料は保険会社による違いがないと説明しており,任意保険のように契約先ごとの価格を比較する性質の保険ではない。

第3 委員構成と会議の成立
1 13人の委員の内訳

自動車損害賠償責任保険審議会令1条及び2条によれば,審議会は13人の委員で組織され,その内訳は,①学識経験のある者7人,②自動車交通又は自動車事故に関し深い知識及び経験を有する者3人,③保険業に関し深い知識及び経験を有する者3人である。
委員は,内閣総理大臣が国土交通大臣の同意を得て任命し,任期は2年で,再任が可能な非常勤の職である。

2 特別委員と令和8年4月30日現在の名簿

特別の事項を調査審議させる必要があるときは,審議会に特別委員を置くことができ,特別委員は学識経験のある者から金融庁長官が任命する。
金融庁が公表した令和8年4月30日現在の名簿では,13人の委員に加えて8人の特別委員が掲載されている。
この名簿からは,法令上の委員定数と,特別の調査審議のために置かれる特別委員とを区別して確認できる。

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労災保険又は障害年金を支給される可能性がある事案における示談(AIリライト)

目次

第1 最初に区別すべき制度と示談実務の結論

1 「公的給付とは別に支払う」だけでは足りない

2 第三者行為災害と事業主責任災害を分ける

3 給付ごとに損害との対応関係を確定する

第2 第三者行為災害における示談

1 政府の代位と保険給付の控除

2 真正な全部示談が労災保険給付に及ぼす影響

3 労災保険給付を期待していたという内心だけでは足りない

4 示談後に予想外の後遺障害が判明した場合

第3 事業主責任災害における示談

1 労災保険法12条の4とは別の調整である

2 損害賠償を労災保険の上積みとする合意

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任意保険の示談代行とは-利用できない場合,一括払及び直接請求権との関係(AIリライト)

目次

第1 示談代行制度の意味

1 制度の内容

2 弁護士法72条との関係

3 保険会社と被保険者の利益が一致しない場合

第2 示談代行が行われない主な場合

1 被害者に過失がない事故

2 示談代行がなくても損害賠償責任は消えないこと

第3 一括払制度と自賠責保険

1 一括払制度の内容

2 自賠責保険の支払基準との関係

第4 示談書,免責証書その他の合意書

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任意保険が適用されない場合――免責条項,契約の失効及び会社ごとの違い(AIリライト)

目次

第1 任意保険が支払われない場合の全体像

1 免責の範囲は約款で決まり,自賠責保険より広い

2 免責事由は被保険者ごとに個別に適用される

3 本記事の整理の順序

第2 契約そのものの効力によって支払われない場合

1 運転者限定特約及び運転者年齢条件特約

2 告知義務違反,危険増加及び重大事由による解除

3 保険料の不払いによる保険休止

4 保険金請求権の消滅時効

第3 すべての補償に共通する免責事由

1 故意

2 異常危険及び競技・曲技のための使用

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自賠責保険の支払基準――令和2年4月1日以降の交通事故に適用される告示の全文,別表及び改正経緯(AIリライト)

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目次

第1 支払基準の位置付けと効力

1 自賠法16条の3に基づく告示であること
2 支払基準は保険会社を拘束するが裁判所を拘束しないこと
3 支払の限度となる保険金額
4 責任共済及び政府保障事業への広がり

第2 支払基準の全文

1 第1 総則
2 第2 傷害による損害
3 第3 後遺障害による損害
4 第4 死亡による損害
5 第5 死亡に至るまでの傷害による損害
6 第6 減額
7 附則

第3 支払基準が引用する別表

1 別表Ⅰ 労働能力喪失率表
2 別表Ⅱ-1 就労可能年数とライプニッツ係数表
3 別表Ⅱ-2 平均余命年数とライプニッツ係数表
4 別表Ⅲ及び別表Ⅳ 平均給与額
5 後遺障害等級表

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昭和48年9月1日付の日本損害保険協会・日弁連交通事故相談センター覚書の内容と制度史(AI作成)

目次

第1 覚書の対象と本記事の射程

1 対象となる文書
2 家庭用自動車保険の発売前に生じた課題

第2 覚書が定めた事項

1 日本損害保険協会側が提案した四項目
2 日弁連交通事故相談センター側が提案した六項目
3 継続協議と同日付の確認メモ

第3 示談代行と被害者の直接請求権

1 昭和48年当時の制度設計
2 現在の示談交渉サービスの限界
3 保険法22条の先取特権との違い

第4 中立的な紛争処理機関の制度化

1 設置見合わせと実際の発足は別の出来事であること
2 現在の二つの交通事故ADR

第5 統一支払基準及び内払のその後

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国自保第2358号通知-自賠責保険金等の支払適正化と情報提供(AIリライト)

目次

第1 本通知の位置付け1 国自保第2358号通知と資料の版2 平成13年改正と平成14年4月1日施行3 一括払の示談提示に関する通知の射程第2 現行法上の情報提供と紛争処理1 支払基準による支払2 請求時,支払時及び不払時の書面3 詳細説明の請求4 国土交通大臣への申出と指定紛争処理機関5 令和5年改正を反映した現行統合版第3 平成14年3月11日付け国自保第2358号通知1 政府再保険の廃止等2 支払基準(法第一六条の三関係)3 情報提供(1) 保険金等の支払請求があった時(2) 保険金等の支払を行った時(3) 保険金等を支払わないこととした時(4) 交付又は説明等の後に詳細な説明を求められた時(5) その他の情報提供4 保険金額(共済金額)5 保険金等の支払に関する紛争処理制度6 届出事案7 報告及び立入検査8 通達の廃止第4 関連記事1 自賠責保険の支払基準2 任意保険の示談代行と一括払3 後遺障害等級認定に対する異議申立て第5 出典1 法令・告示2 行政通知・公文書3 所管行政機関の解説・FAQ4 裁判例
第1 本通知の位置付け
1 国自保第2358号通知と資料の版

本通知は,国土交通省自動車交通局保障課長が平成14年3月11日付け国自保第2358号として発出した「自動車損害賠償保障法及び関係政省令の改正等に伴う事務の実施細目について」である。
本記事は,平成14年当時の通知本文を資料として掲載するとともに,調査基準日である令和8年9月9日現在の法令及び国土交通省の現行統合版との主な違いを先に整理するものである。

確認できる資料は,①国土交通省の平成14年原通知HTML,②令和5年2月28日付け国官参自保第510号による改正を反映した国土交通省の現行統合版,③本サイトに保存した通知及び平成14年当時の支払基準のPDFである。
③の8頁から16頁までは平成14年当時の支払基準及び別表であり,現在の事故の計算にそのまま用いる資料ではない。

2 平成13年改正と平成14年4月1日施行

本通知は,平成13年法律第83号による自動車損害賠償保障法等の改正と,これに伴う政省令,通達及び支払基準の整備を受けて発出されたものである。
同法は平成13年6月29日に公布され,主要部分は平成14年4月1日に施行された。

改正では,政府再保険制度の廃止とともに,保険会社による支払基準の遵守,請求時,支払時及び不払時の情報提供,詳細説明,国土交通大臣への申出並びに指定紛争処理機関による紛争処理等が整備された。
本通知は,これらの制度を保険会社及び共済組合等が実施するための細目を示した行政通知である。

3 一括払の示談提示に関する通知の射程

本通知の実施細目3(2)2は,任意保険会社が自賠責分を含めて支払う一括払の場合について,示談額提示時点で自賠責保険又は共済の支払限度額内にある事案では,示談提示額が自賠責支払基準に従って積算した額より低い額ではないこと及び支払基準の概要を説明する取扱いを示している。
この記載は,一括払,示談額提示時点及び自賠責支払限度額内という条件を伴うものであり,任意保険部分を含む総損害額又は裁判所の損害認定を自賠責支払基準で拘束するものではない。

最高裁平成18年3月30日第一小法廷判決は,自賠法16条1項の被害者請求訴訟について,支払基準は保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合の基準であり,裁判所はこれによらず損害賠償額を算定できるとした。
最高裁平成24年10月11日第一小法廷判決は,自賠法15条の保険金請求訴訟についても同じ考え方を示した。

第2 現行法上の情報提供と紛争処理
1 支払基準による支払

自動車損害賠償保障法16条の3第1項は,保険会社が保険金等を支払うときは,死亡,後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従って支払わなければならないと定めている。
具体的な金額及び計算方法は,事故日により適用される版が異なり得るため,国土交通省の支払基準案内及び現行公開の支払基準PDFで確認する必要がある。

2 請求時,支払時及び不払時の書面

自賠法16条の4は,保険金等の請求があったとき,支払を行ったとき及び支払を行わないこととしたときに,それぞれ所定事項を記載した書面を交付する仕組みを定めている。
支払適正化措置命令2条から4条までは,請求時の支払基準及び手続等の概要,支払時の事故日,損害ごとの支払額,後遺障害等級及び判断理由等並びに不払時の事故状況及び判断理由等を定めている。

3 詳細説明の請求

自賠法16条の5は,支払時の書面又は不払時の書面が交付された後,被保険者又は被害者が書面で詳細な説明を求めた場合に,保険会社が原則として請求日から30日以内に書面で説明する仕組みを定めている。
説明を求めた者の同意があるときは書面以外の方法を用いることができ,第三者の権利利益を不当に害するおそれその他の正当な理由があるときは全部又は一部を説明しないことができるが,その場合は説明しない旨及び理由を記載した書面の交付が必要である。
また,事務処理上の困難その他の正当な理由により30日以内に説明等ができないときは,期間内に理由及び説明等の期限を書面で通知するものとされ,承諾を得た電磁的方法も認められている。

支払適正化措置命令7条が定める詳細説明事項は,①事故状況の詳細,②損害の細目及び積算の詳細,③後遺障害等級の判断理由の詳細,④減額割合の判断理由の詳細,⑤損害賠償責任がないとした理由の詳細,⑥事故による損害がないとした理由の詳細,⑦自賠法14条によりてん補責任を免れるとした理由の詳細である。
後遺障害に関して,本通知は「後遺障害等級認定票」,「後遺障害事案整理票」,「面接調査票」等を例示しているが,詳細説明の対象はこれらの資料だけではなく,また書類名は「整理表」ではなく「整理票」である。

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