目次
第1 産業医意見書は復職日を自動的に決める文書ではない第2 意見書を読む順序1 判断の基準日と情報源2 結論と条件を分ける3 措置の期間と再評価時期第3 書面・口頭説明・本人申告・会社観察を分ける第4 短時間の面談と1日勤務の耐久性を分ける第5 体力回復プログラム・通勤訓練・試し出勤・正式復職の違い第6 再面談と会社の最終判断第7 会社が残す記録と健康情報の取扱い第8 よくある質問1 産業医が「大筋では問題ない」と述べた場合,復職させるべきか2 意見書に再面談日が書かれている場合,その日まで休業か3 本人がプログラムに同意すれば足りるか第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令に基づく指針2 厚生労働省の様式・手引き
第1 産業医意見書は復職日を自動的に決める文書ではない
産業医意見書は,労働者の健康状態と実際の職務を照合し,通常勤務,条件付き就業又は休業の継続について医学的見地から意見を示す重要な資料である。
しかし,「復職可」とあるだけで復職日,配属先及び具体的な就業条件が自動的に決まるわけではない。
会社は,意見書の作成時点,産業医が把握した仕事内容,判断の結論,必要な就業上の措置,措置を続ける期間及び再評価時期を確認し,本人の意向,主治医や産業医等の意見及び職場の意見を総合的に勘案して最終判断を行う(治療と就業の両立支援指針5(5)ウ)。
ただし,同指針は,事業主が一方的に判断しないよう,十分な話合い等を通じて本人の了解を得られるよう努めることを求めている。
「できる仕事から始める」「無理をさせない」といった表現は,対象作業,勤務時間,休憩,禁止作業,見直し日及び中止基準まで具体化して初めて実施可能な条件となる。
第2 意見書を読む順序
1 判断の基準日と情報源
最初に,面談日,意見書作成日及び会社が受領した日を分ける。
次に,産業医が確認した資料を確かめる。
本人との面談だけか,主治医の診断書,検査結果,服薬情報,勤務情報提供書,工程表又は職場巡視の情報まで確認したかによって,意見の前提は異なる。
産業医が想定した仕事が,実際の通常業務と一致しているかも重要である。
「製造業」「軽作業」「事務作業」という職種名だけでは,重量,姿勢,反復,移動,危険機械,運転,夜勤及び緊急時対応を評価できない。
2 結論と条件を分ける
次の区分は,手引きの様式例の「可・条件付き可・不可」を参考に,本記事が実務上整理したものである。
区分確認する内容通常勤務可従前業務を制限なく行える趣旨か,なお除外作業があるか条件付き就業可勤務時間,作業内容,重量,姿勢,危険作業,通院,休憩等の具体的条件現時点では就業不可休業を要する理由,再評価までに確認する事項及び見込み時期判断保留不足資料,追加検査又は試行で確認する事項
チェック欄に明確な選択がない場合や,本文の条件とチェック欄が整合しない場合は,空欄を会社に有利な結論へ補わず,産業医へ確認する。
3 措置の期間と再評価時期
短時間勤務,残業禁止,重量物回避その他の制限については,内容だけでなく開始日,予定期間及び見直し日を記録する。
再面談の予定日は,その日に必ず復職するという意味ではなく,次の判断に必要な情報をそろえて評価する日である。
第3 書面・口頭説明・本人申告・会社観察を分ける
情報意味と注意点産業医意見書産業医が書面に残した結論,条件及び再評価時期産業医の口頭説明書面の補足となり得るが,伝聞で意味が変わるおそれがある本人の申告症状,治療,生活状況及び復職意思を知る資料であるが,医学的所見そのものではない会社の観察歩行,面談時の応答等の事実を記録できるが,診断や1日勤務能力の判定ではない
口頭説明が重要な条件を含むときは,誰が,いつ,どのような質問に対して聞いたかを記録し,復職可否又は制限を左右する内容は産業医に書面で確認する。
会社担当者の要約を意見書の文言として扱わない。
第4 短時間の面談と1日勤務の耐久性を分ける
面談室まで歩けること,短時間座って話せること又は外見上の動作が改善したことは,有用な観察事実である。
しかし,通勤を含む1日の勤務,反復作業,午後の疲労,連日の勤務及び翌日までの回復を直接示すものではない。
身体負荷のある仕事では,連続可能時間,1日の累積負荷,休憩による回復,勤務後及び翌日の症状,予定外の動作・緊急時対応並びに週を通じた継続可能性を分けて確認する。
本記事は,危険機械,運転,高所作業又は重量物作業を,体力や機能を確かめるための試験にしない方向で整理する。