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労働・社会保険

定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるか(AI作成)

第1 条件変更を断っただけで契約終了になるわけではない第2 契約途中の変更・更新拒絶・変更への同意を分ける1 契約途中では勤務表だけを変えても足りない2 更新時には労働契約法19条の要件を確認する3 署名があっても同意の経緯を確認する第3 結論が分かれた西田通商事件と東光高岳事件1 西田通商事件――週5日から週3日への変更と雇止め無効2 東光高岳事件――更新期待を認めた上で更新拒絶を有効とした例3 二つの判決から確認できる比較の視点第4 65歳までの雇用確保と同一労働同一賃金との関係1 65歳までの雇用確保は旧賃金の当然の保障とは異なる2 本人の前年との比較と通常の労働者との比較は別である第5 労働者が更新前に行う確認と記録1 旧条件での更新希望と就労意思を伝える2 手元の資料を先にそろえ,説明を求める3 就労を拒まれた期間の賃金と時効を確認する第6 会社側の提案準備と,交渉・手続へ進む判断第7 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例3 所管行政機関のQ&A・改正案内4 法律事務所の事件紹介
第1 条件変更を断っただけで契約終了になるわけではない

定年後再雇用の契約更新時に,会社が勤務日数や賃金を引き下げる条件を提案することは,一律に禁止されていない。
しかし,労働者がその提案に同意しなかったという理由だけで,会社が従前の条件による更新を自由に拒絶できるわけではない。
変更の合意が成立するかという問題と,労働契約法19条によって雇止めが制限されるかという問題を分けて考える必要がある。

週5日勤務を週3日に減らし,月給を日数に比例して減らす場合も,日給・時給が変わらないことだけでは結論は決まらない。
西田通商事件では,このような変更を拒否した労働者の雇止めが無効とされた一方,東光高岳事件では,事情の異なる条件変更の提案について更新拒絶が有効とされている。

本記事は,令和8年8月31日現在の法令と確認できた裁判例に基づき,民間企業の定年後の有期再雇用契約を更新する場面を扱う。
定年直後に初めて再雇用契約を結ぶ場面や,勤務日数の最低保証がない変動シフトについては前提が異なるため,まず契約上の日数・時間・賃金を確認する。

第2 契約途中の変更・更新拒絶・変更への同意を分ける
1 契約途中では勤務表だけを変えても足りない

労働契約法8条は,労使の合意による労働条件の変更を認めている。
契約上,週5日勤務と月給が定められている場合に,会社が勤務表を週3日に書き換えただけで,契約上の日数と賃金も当然に変更されたことにはならない。

同意のない就業規則による不利益変更は,同法9条の原則と10条の例外に従って判断する。
10条では,変更後の就業規則の周知に加え,不利益の程度,変更の必要性,内容の相当性,労働組合等との交渉状況その他の事情に照らした合理性が問題となる。
就業規則の変更によっては変更しないと個別に合意した条件には,同条ただし書の検討も残る。

また,同法12条により,就業規則の基準に達しない条件を定めた個別契約は,その部分について無効となり,就業規則の基準による。
したがって,会社と本人が合意したかだけでなく,適用される再雇用規程・賃金規程との関係も確認する。

2 更新時には労働契約法19条の要件を確認する

更新時に新条件で合意できなかった場合は,労働者の旧条件による更新申込みを会社が拒絶してよいかが問題となる。
労働契約法19条による保護を検討する順序は,次のとおりである。

①反復更新の実態から雇止めを無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合(1号),又は更新への期待に合理的な理由がある場合(2号)に当たるか。
②労働者が,契約満了日までに更新を申し込み,又は満了後遅滞なく有期契約の締結を申し込んだか。
③会社の拒絶が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないか。

これらの要件を満たすと,会社は「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」とされる。
更新期待があるだけで旧条件の更新が決まるわけではないが,新条件を提示しただけで同条の適用を避けられるわけでもない。
更新期待・不更新条項・無期転換の一般的な説明は,有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルールを参照されたい。

3 署名があっても同意の経緯を確認する

最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決(平成25年(受)第2595号,山梨県民信用組合事件)は,不利益変更への同意について,労働者の自由意思に基づくと認めるに足りる客観的に合理的な理由があるかを慎重に判断すべきであるとした。
不利益の内容・程度,同意に至る経緯,事前の情報提供や説明等が問題となる。

これは退職金の変更に関する破棄差戻し判決であり,再雇用契約への署名を一律に無効としたものではない。
再雇用の更新でも,署名の有無に加え,変更後の勤務日数・年収・賞与が説明されたか,検討の機会があったか,異議や留保をどのように伝えたかを確認することが考えられる。

第3 結論が分かれた西田通商事件と東光高岳事件
1 西田通商事件――週5日から週3日への変更と雇止め無効

横浜地裁令和6年6月27日判決(令和4年(ワ)第1403号,労働判例1346号17頁)は,定年後の再雇用者に対し,週5日・基本賃金月額20万0998円から,週3日・月額12万0599円への変更が提案された事案である。
労働者は旧条件での更新を求めたが,会社は契約を更新しなかった。
裁判所HP未掲載であり,判例秘書で判決本文を確認した。

裁判所は,再雇用に関する規程,契約内容,更新の経過等から,雇用継続への合理的期待を認めた。
契約書に,更新時には個別合意の上で労働条件を変更することがあると記載されていても,合意できなければ当然に契約が終了するとは扱わなかった。

日給・時間給に換算した賃金単価は変わらなかったが,裁判所は,月額約12万円で家計を維持することや,空いた曜日に別の仕事を確保することの難しさを考慮した。
会社の業績悪化についても,雇止め後に別の労働者を再雇用し,役員報酬を増額した事情や,本人が売上げに直結しない業務にも従事していた事情を検討し,提示条件を不合理と判断した。

結論として,雇止めを無効とし,旧条件による契約の更新を認め,労働者の地位確認及び未払賃金の請求を認容した。
ただし,鈴悠法律事務所の事件紹介には控訴後和解と記載されており,本判決の判断がそのまま確定したと扱うことはできない。

2 東光高岳事件――更新期待を認めた上で更新拒絶を有効とした例

東京高裁令和6年10月17日判決(令和6年(ネ)第2731号,労働判例1323号5頁)は,定年後再雇用の契約満了と吸収合併が重なり,存続会社の制度に合わせた条件変更が提案された事案である。
提案には,週4日から週5日に勤務を増やしながら基本賃金を約15%減らす案と,週4日勤務のまま賃金を月額換算で約51%減らす案があり,業務内容を修正した案も提示された。
裁判所HP未掲載であり,判例秘書及び掲載誌の判決本文を確認した。

高裁は,労働契約法19条2号の更新期待は,同一条件での更新への期待に限らず,条件変更を伴う更新への期待も含むとした。
その上で,65歳までの継続雇用を原則とする規程等から更新期待を認め,労働者の旧条件による更新申込みを会社が拒絶したと判断した。

もっとも,高裁は,従前と同一の条件で更新されるとの期待に合理的理由があるとは認め難いとした。
被吸収会社の経営悪化,存続会社の再雇用者との条件統一の必要性,他の再雇用者の同意,担当事業からの撤退予定,事前説明と複数案の提示等を検討し,存続会社自体の業績が堅調であることや大幅な減額も考慮した上で,更新拒絶を有効として控訴を棄却した。

原審の東京地裁令和6年4月25日判決(令和4年(ワ)第6348号,労働判例1318号27頁。裁判所HP未掲載。判例秘書により確認)は,19条2号の更新期待を同一条件によるものに限定していたが,高裁はこの限定を採用していない。
また,高裁判決は約51%の減額を一般的に許容したものでも,低い条件の契約が本人の同意なしに成立するとしたものでもない。

3 二つの判決から確認できる比較の視点

本記事では,両判決の分岐を,次の資料を比較する際の視点として整理する。
いずれも個別の事情を組み合わせた判断であり,一つの事情があれば必ず有効・無効になるという基準ではない。

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昼休みの電話番・来客対応は労働時間になるか―休憩と残業代の判断・立証(AI作成)

第1 昼休みの電話番は,対応義務の実態で判断する第2 昼休み全体の待機と単発の対応を分ける1 電話が鳴らなくても待機義務が続く場合2 自由な休憩中に一度だけ対応した場合3 当番表がなくても実際の指示と運用を確認する第3 大星ビル管理事件の判断と昼休みへの射程1 実作業のない仮眠時間も労働時間とした理由2 契約上の手当と法定割増賃金は別に判断した第4 休憩不足と残業代を別々に計算する1 実労働時間が8時間を超えると必要な休憩も変わる2 勤務時間帯と実際の休憩による四つの設例3 25%割増の対象と既払額を確認する第5 当番の実態と時間をどの資料で示すか1 従業員は手元の資料から指示・時間・控除を具体化する2 会社は自動控除と実際の当番を照合する3 追加調査へ進む条件と調査を広げない基準第6 時効の確認と昼当番の運用改善1 賃金の時効と記録保存期間を混同しない2 会社は対応を引き継ぎ,勤務途中に休憩を確保する第7 出典1 法令2 裁判例3 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料
第1 昼休みの電話番は,対応義務の実態で判断する

昼休み中に電話や来客への対応を求められ,労働から離れることが保障されていない場合は,実際に対応していない待機時間も労働時間となる。
厚生労働省も,昼当番として電話・来客対応をする時間は勤務時間に含まれ,昼休みが費やされた場合には別途休憩を与える必要があると説明している(昼当番に関するQ&A)。

ただし,本来自由に休める時間に単発の対応をした場合と,昼休み全体にわたり応答を求められた場合とでは,計上する時間の範囲が異なる。
①労働時間に含める範囲,②法定休憩の不足,③通常賃金及び割増賃金の不足を分けて確認する必要がある。

本記事は,令和8年8月31日現在の法令等を基に,民間事業場の通常の日中勤務を扱うものである。
公務員,管理監督者等の適用除外,変形労働時間制等に固有の問題は対象とせず,計算例は1日8時間・1週40時間制を前提とする。

第2 昼休み全体の待機と単発の対応を分ける
1 電話が鳴らなくても待機義務が続く場合

12時から13時まで電話当番を命じられ,電話が鳴れば直ちに応答しなければならない場合,通話が5分で終わったからといって,残り55分を当然に休憩とすることはできない。
食事ができたことや,その日に来客がなかったことだけでは,対応義務が解除されていたとはいえない。

厚生労働省の「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」問6も,電話・来客への対応が要求される場合には,実際の対応がない時間も労働時間に該当すると説明している。
客が途切れたときに休んでよいという運用でも,来店があれば即座に業務へ戻る必要があるなら,労働から離れることを保障した休憩ではないとされている(同資料20頁~21頁〔PDF27頁~28頁〕)。

2 自由な休憩中に一度だけ対応した場合

同じ問6は,外出等が自由で,電話・来客対応を義務付けられていなかった時間を休憩としている。
そのような休憩中に顧客対応を余儀なくされた場合には,その対応に要した時間を労働時間として扱うと説明している。

したがって,対応の前後に自由な休憩へ戻れたのか,対応後も電話のそばで待つよう求められたのかを区別する必要がある。
「1件電話を受けた」という事実だけから,昼休み全部又は通話時間だけのいずれかに決めることはできない。

なお,この参考事例集は,脳・心臓疾患及び精神障害の労災認定に用いる業務参考資料である。
休憩の実態を整理する参考にはなるが,それ自体が民事の賃金請求について裁判所を拘束する基準というわけではない。

3 当番表がなくても実際の指示と運用を確認する

労働時間適正把握ガイドラインは,明示又は黙示の指示による業務を労働時間とし,即時の業務対応を求められ,労働から離れることが保障されない待機も含めている(1頁~2頁)。
書面の当番表がなくても,受付に残るよう求められたことや,電話に出ないと注意されたことなど,実際の運用が問題となる。

反対に,別の担当者が応答し,本人は対応不要で自由に休めたのであれば,自分の判断で事務所に残ったというだけで労働時間にはならない。
外出の可否,応答しなかった場合の扱い,交代要員の有無及び上司の認識を組み合わせて確認するのが相当である。

第3 大星ビル管理事件の判断と昼休みへの射程
1 実作業のない仮眠時間も労働時間とした理由

最高裁判所第一小法廷平成14年2月28日判決(平成9年(オ)第608号・第609号,民集56巻2号361頁。大星ビル管理事件)は,ビル管理会社の従業員の仮眠時間を扱ったものである。
最高裁は,実作業をしていないことだけで使用者の指揮命令下から離れたとはいえず,労働からの解放が保障されているかによって判断するとした。

同事件では,仮眠室での待機と警報・電話等への即時対応が義務付けられ,実質的にその義務がないといえる事情もなかったため,仮眠時間全体の労働時間性が認められた(判決7頁~8頁)。
昼休みそのものの判決ではないが,対応のない時間にも役務提供の義務が続くかという判断の参考になる。

判決は,実作業の必要が生じることが皆無に等しいなど,実質的な義務付けがない場合も検討している。
ただし,ある日にたまたま電話が鳴らなかったことと,実質的に対応義務がなかったこととは別である。

2 契約上の手当と法定割増賃金は別に判断した

同判決は,労働基準法上の労働時間であることから,当然に労働契約所定の賃金請求権が生じるわけではなく,賃金についての合意内容を確認するとした。
一方で,明確な支払規定がないというだけで無給と解釈することも相当ではないと述べている(判決9頁)。

同事件では,月給や泊り勤務手当等を踏まえ,契約の定めだけに基づく追加の時間外勤務手当等の請求は認められなかったが,労働基準法13条・37条による法定割増賃金の支払義務は別に判断された。
昼当番についても,労働時間に当たるかを確定した後,雇用契約,賃金規程及び既払額を確認する必要がある。
月給制又は当番手当の支給があるという理由だけで,法定割増賃金の不足がないと判断することはできない。

主文は原判決を破棄して東京高裁へ差し戻すものであり,最高裁が請求額をそのまま全額認めたものではない(判決9頁~13頁)。

第4 休憩不足と残業代を別々に計算する
1 実労働時間が8時間を超えると必要な休憩も変わる

労働基準法34条1項・3項は,実労働時間に応じた休憩を勤務の途中に与え,自由に利用させることを求めている。
最低時間は次のとおりであり,終業後に休ませることを勤務途中の休憩の代わりにはできない。

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社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)

第1 最初に確認する休職の根拠と就業の可否第2 就業規則と休職開始日の確認1 会社の規程と本人の適用条件2 年休・欠勤・休職の日付を分ける第3 診断書と具体的な仕事を照合する1 医師に伝える仕事と尋ねる事項2 他の業務への配置可能性3 本人が受診等に応じない場合4 医療情報の取得と共有の範囲第4 業務上の傷病の可能性を確認する第5 休職通知で伝える事項第6 給与・傷病手当金・社会保険料1 無給扱いと休業手当を区別する2 傷病手当金の申請と時効3 社会保険料と立替金の精算第7 休職中の連絡と復職の準備第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法令に基づく指針4 公的な解説・行政資料5 実務書
第1 最初に確認する休職の根拠と就業の可否

社員から療養を要する診断書が提出されたときは,休職の必要性と,会社の制度上いつから休職にするかを分けて確認することが重要である。

本記事では,民間企業の使用者が休職開始時に確認する事項を,①就業規則,②具体的な就労能力,③業務上の傷病の可能性,④休職通知,⑤金銭負担,⑥連絡と復職の準備の順に整理する。

令和8年8月31日現在,労働施策総合推進法27条の3に基づく治療と就業の両立支援措置は,同年4月1日から事業主の努力義務となっている。

同時に適用された厚生労働省の治療と就業の両立支援指針は,長期休業の開始前に,賃金を含む制度,休業可能期間及び復帰手順を本人に説明する流れを示している。

この努力義務は,希望どおりの有給休職を一律に認める義務ではない。

他方,労働契約法5条の安全配慮義務は別に問題となるため,努力義務だから個別の健康上の危険に対応しなくてよいということにもならない。

本人から診断書や休職の申出がない場合でも,過重な業務が続き,体調悪化や欠勤等を会社が把握しているときは,申出を待つだけで対応を終えてはならない。

最高裁平成26年3月24日第二小法廷判決(平成23年(受)第1259号・東芝事件)は,過重な業務が続き体調悪化が認められる状況では,精神的健康に関する情報の積極的な申告を期待し難いことを前提に,業務軽減等の配慮をする必要があると述べている。

本記事では,勤務時間,担当業務,欠勤及び本人の具体的な訴えを記録し,医師への相談や業務負担の軽減等の必要性を検討する手順を勧める。

もっとも,安全確保のために対応を始めることと,就業規則に基づく無給の休職を発令することは,別々に根拠を確認する必要がある。

第2 就業規則と休職開始日の確認
1 会社の規程と本人の適用条件

厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)16頁は,休職の定義,期間の制限及び復職等について労働基準法に定めはないと説明している。

したがって,同モデルの空欄を埋めた期間が法律上の標準になるわけではなく,まず自社の就業規則,雇用契約及び適用対象を確認する。

労働契約法7条は,合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していた場合の契約内容への取込みを定めている。

実務上は,休職事由,必要な欠勤日数,勤続期間による違い,申請又は命令の手続,休職期間及び再休職時の通算規定を確認し,今回の事実がどの条項に該当するかを記録しておくのが適切である。

休職制度の不備が見つかった場合でも,今回の事案に対応するために休職期間を短縮したり,再休職の通算条件や復職要件を不利益に変更したりして,そのまま適用できるわけではない。

労働契約法9条及び10条により,合意のない就業規則による不利益変更は原則として認められず,例外的に変更が認められるには,変更後の規則の周知に加え,不利益の程度,変更の必要性,内容の相当性及び交渉の状況等に照らした合理性が必要となる。

現在適用される規程とその周知状況を確認する作業と,将来に向けて制度を整備する作業を分け,就業規則の変更では変更しないとした個別合意の有無も確認する必要がある。

東京高裁平成7年8月30日判決(平成6年(ネ)第2275号・富国生命事件)は,復職後に約3か月通常勤務をしていた社員について,未治癒で症状が再燃する可能性があるだけでは当該規則の休職事由に当たらないとして,会社の控訴を棄却した。

この判決は当該就業規則と勤務状況についての判断であり,病気なら休職させられるとも,本人が働きたいと言えば必ず就業させるとも述べていない。

なお,同事件では会社が業務外の傷病として扱う一方,労働者側は業務起因性を問題としていたのであり,業務外の傷病であることが争われていない事案として紹介するのは適切でない。

2 年休・欠勤・休職の日付を分ける

診断書の作成日,療養を要するとされた期間の初日,実際の欠勤開始日及び就業規則上の休職開始日は,同じとは限らない。

本記事では,年休の申出と残日数,欠勤期間の算定方法,休職への移行条件を別々に確認し,開始日と満了予定日を計算する手順を勧める。

労働基準法39条5項は,原則として労働者の請求する時季に年休を与える仕組みを定めている。

病気による欠勤を自動的に年休へ振り替えたり,年休を全て消化した日を当然の休職開始日としたりせず,本人の申出と適用規程を確認することが必要である。

第3 診断書と具体的な仕事を照合する

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弁護士国民年金基金の給付請求―老齢年金・未支給年金・遺族一時金の必要書類,電子申請及び5年時効(AI作成)

第1 給付請求の全体像

1 結論

2 最初に区別する四つの手続

第2 老齢年金の請求

1 基金から届く請求書

2 基本となる添付書類

3 電子申請の準備と利用できない場合

第3 受給者又は加入員が死亡した場合

1 まず死亡連絡をする

2 未支給年金

3 遺族一時金

4 未支給年金と遺族一時金を同時に確認する

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弁護士国民年金基金の資格喪失と再加入―弁護士法人・企業内弁護士・海外転居時の手続(AI作成)

第1 資格喪失と再加入を判断する基準

1 弁護士であることだけでは加入資格は決まらない

2 主な場面ごとの資格喪失日と次の手続

3 資格喪失届は原則として14日以内である

第2 弁護士法人及び企業内弁護士になった場合

1 基金資格を失う起点は厚生年金の資格取得日である

2 資格喪失届に添付する資料

3 後に独立して第1号被保険者へ戻る場合

第3 海外へ転出する場合と帰国する場合

1 在外加入を続けるには三つの手続を組み合わせる

2 在外加入中の掛金と弁護士業務

3 帰国時にも在外加入をいったん喪失して国内加入を申し出る

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障害者手帳・障害年金の認定と労務提供能力は同じか―雇用紛争で区別すべき四つの判断層(AI作成)

第1 結論と本記事の射程

1 障害等級と労務提供能力は同じ判断ではない

2 個別判決の当否とは分けて検討する

第2 障害者手帳と障害年金が判定しているもの

1 精神障害者保健福祉手帳

2 障害年金

3 二つの認定が接続する場面

第3 雇用紛争で区別すべき四つの判断層

1 第1層―行政上の認定

2 第2層―診断・症状・治療

3 第3層―日常生活・社会生活上の機能

4 第4層―具体的職務についての労務提供能力

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能力不足・協調性不足による普通解雇―改善指導・配置転換・解雇回避措置と裁判例(AI作成)

第1 能力不足・協調性不足による普通解雇の判断枠組み

1 本記事の対象

2 労働契約法16条と就業規則

3 回数・期間による安全基準はない

第2 雇用契約上の能力・職務・評価基準を確定する

1 一般職と職務限定・高度専門職

2 採用時資料と変更範囲の明示

3 相対評価だけでは足りない

第3 能力不足を具体的な事実と業務影響で示す

1 評価語を事実へ置き換える

2 業務への影響を確認する

3 使用者側の原因を切り分ける

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問題社員対応の基本手順―事実確認・注意指導・改善機会・記録化から処分まで(AI作成)

目次

第1 問題社員対応の出発点

1 「問題社員」は法律上の類型ではないこと

2 最初に問題の種類と保護される事情を分けること

第2 事実確認は結論を決める前に行うこと

1 調査対象を具体的な事実に置き換えること

2 原資料を保全してから関係者を聴取すること

3 本人の説明と反証の機会を確保すること

第3 注意指導は事実・基準・改善方法を示して行うこと

1 業務上の指導と懲戒処分を区別すること

2 指導書に含める内容

3 指導の方法がハラスメントにならないようにすること

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労災保険の未収債権200億円超と民間委託―第三者行為災害の求償・費用徴収・返納金はどう回収されるか(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と「200億円超」の意味

1 対象資料と記事の射程
2 200億円超は4種類を含む収納未済額である
3 令和8年度からの契約

第2 回収対象となる4種類の債権

1 第三者行為災害の求償債権
2 費用徴収債権
3 返納金債権と利得償還金債権
4 労働保険料の滞納とは別である

第3 民間委託による回収の流れ

1 4種類に共通する納入督励
2 弁護士が行う債権回収
3 費用徴収債権を弁護士折衝の対象から外す理由
4 第三者行為災害に関する法務相談
5 訴訟提起は契約の対象外である

第4 接触率40%・回収率10%の読み方

1 接触率40%
2 回収率10%

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税務・労働法・社会保険・フリーランス法における労働者性の判定(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 同じ人でも制度ごとに結論が異なる
2 調査の基準時と用語

第2 制度横断の判定地図

1 各制度が問うもの
2 判定を一つのチェック数で決めない

第3 労働基準法・労働契約法・労災保険法

1 条文と使用従属性
2 昭和60年報告の判断要素
3 最高裁判例が示す事実評価
4 令和8年の見直しは未確定である

第4 労働組合法

1 労働基準法より広い概念である
2 個人事業者の外観があっても肯定される

第5 所得税上の給与所得と事業所得

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高次脳機能障害者を支援するための諸制度――令和8年4月施行の支援法,障害者手帳,障害年金,労災及び障害福祉サービス(AI作成)

第1 この記事が扱う範囲1 検討の対象と時点2 「高次脳機能障害」という語の三つの用法3 使える制度の一覧第2 高次脳機能障害者支援法1 成立の経緯と施行の時期2 政令が定める定義と四つの除外3 高次脳機能障害者支援センター4 地域協議会,専門的な医療機関及び司法手続における配慮5 国会審議で確認された適用範囲6 令和8年度診療報酬改定による退院支援の義務付け第3 診断の基準と障害者手帳1 行政的診断基準の令和5年版2 精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準3 手帳を要する制度と要しない制度第4 障害年金1 器質性精神障害としての認定基準2 等級判定ガイドラインと考慮要素の借用3 就労している場合の評価4 支分権の消滅時効第5 労働者災害補償保険及び公務災害1 四つの能力による障害等級の認定2 画像所見がない場合の第14級の9第6 障害福祉サービス,医療及び介護保険1 障害者総合支援法による給付2 支給量の決定に対する司法審査3 自立支援医療と介護保険との関係第7 就労及び差別の解消1 合理的配慮と法定雇用率2 障害を理由とする差別の解消第8 自動車の運転第9 相談窓口及び期間の制約1 支援センターと大阪府内の窓口2 期間に関する制約の整理出典1 法令2 行政通知3 認定基準・診断基準4 裁判例5 公的資料第1 この記事が扱う範囲1 検討の対象と時点

この記事は,記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等の認知機能の障害を負った人が利用できる公的な制度を,令和8年8月21日の時点で整理するものである。令和8年4月1日に高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)が施行され,同法に基づく実施要綱及び関係通知が同年4月から5月にかけて発出されたことにより,従前は予算事業と個別の給付制度に分かれていた支援の枠組みが,一つの法律を頂点とする体系に組み替えられた。もっとも,実際に金銭給付やサービスを受ける根拠となるのは,従前と同じく障害者手帳,障害年金,労働者災害補償保険及び障害者総合支援法であり,支援法はこれらを置き換えるものではない。

この記事では,交通事故の加害者に対する損害賠償請求を扱わない。高次脳機能障害を理由とする後遺障害等級の認定と,その等級を前提とする賠償額の算定については,高次脳機能障害で後遺障害等級7級4号を認定してもらうための具体的な主張立証方法で扱っている。ここで取り上げるのは,加害者がいるかどうかにかかわらず利用できる制度,すなわち脳血管疾患,低酸素脳症,脳炎,脳腫瘍等の疾病によって障害を負った場合にも同じように使える制度である。厚生労働省は,同法の対象となる患者数を令和4年の調査に基づき全国で約23万人と推計している。本記事はAIを用いて作成し,一次資料への到達性を優先した。記載内容は,令和8年8月時点でe-Gov法令検索により確認した現行条文,厚生労働省,内閣府,日本年金機構及び国立障害者リハビリテーションセンターが公表している通知及び資料,並びに裁判所ウェブサイト及び国立国会図書館国会会議録検索システムで確認した裁判例及び議事録に基づく。

2 「高次脳機能障害」という語の三つの用法

制度を調べるときに最初につまずくのは,「高次脳機能障害」という語が,法令上の定義,行政的な診断基準,個々の給付制度の認定基準という三つの層でそれぞれ別に定義されており,除外される範囲も一致していないことである。第一の層は高次脳機能障害者支援法2条1項及び同法施行令(令和8年政令第60号)1条であり,これは支援法の対象を画する。第二の層は,平成13年度に開始された高次脳機能障害支援モデル事業に由来する行政的診断基準であり,医師が診断書に「高次脳機能障害」と記載するときの基準として機能する。第三の層は,障害年金の障害認定基準,労災保険の障害等級認定基準といった,給付ごとの物差しである。

三つの層は目的が違うため,一方に該当することが他方に該当することを意味しない。支援法施行令1条は認知症を明文で除外しているが,障害年金の障害認定基準は「症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)」という区分の中に認知症も併せて含めている。逆に,労災保険の障害等級認定基準は,画像所見が得られない場合であっても第14級の9として等級を認める余地を明文で残しているのに対し,行政的診断基準は検査所見を診断の要件として掲げている。制度ごとに使う物差しが違うという前提を置かずに一つの基準だけで判断すると,本来受けられる給付を取りこぼすことになる。

3 使える制度の一覧

以下は,この記事で取り上げる制度を,利用したい場面ごとに整理したものである。実施主体と根拠条文を併記したのは,令和8年4月15日障精発0415第1号が各自治体に対して相談窓口の明確化と周知を求めていることからも分かるとおり,窓口が明確でないことが制度利用の入口の問題として認識されているためである。

場面制度(実施主体)根拠相談先を確保する高次脳機能障害者支援センター(都道府県知事又は指定都市市長が指定し,又は自ら実施)高次脳機能障害者支援法19条1項障害があることを公証する精神障害者保健福祉手帳(都道府県知事)精神保健福祉法45条麻痺・失語がある身体障害者手帳(都道府県知事)身体障害者福祉法15条生活費を得る障害基礎年金・障害厚生年金(厚生労働大臣)国民年金法30条,厚生年金保険法47条業務上の負傷による場合障害補償給付(労働基準監督署長)労働者災害補償保険法15条通院の自己負担を下げる自立支援医療(精神通院医療。市町村)障害者総合支援法5条25項生活訓練・機能訓練を受ける自立訓練(市町村の支給決定)同法5条12項住まいを確保する共同生活援助(市町村の支給決定)同法5条18項施設・病院から地域へ移る地域移行支援(市町村の地域相談支援給付決定)同法5条21項就労に向けた訓練を受ける就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援(市町村の支給決定)同法5条13項ないし15項職場で配慮を受ける合理的配慮の提供(事業主)障害者雇用促進法36条の2ないし36条の4事業者から配慮を受ける合理的配慮の提供(事業者)障害者差別解消法8条2項外出を支援してもらう移動支援事業(市町村)障害者総合支援法5条27項,77条1項8号日中の居場所を得る地域活動支援センター(市町村)同法5条28項,77条1項9号

注 支給決定を要する制度については,市町村への申請と障害支援区分の認定が前提となる場合がある。

第2 高次脳機能障害者支援法1 成立の経緯と施行の時期

高次脳機能障害者支援法は,衆議院厚生労働委員長提出の法律案として令和7年12月5日に同委員会で起草・可決され,同月8日に衆議院本会議,同月16日に参議院本会議で可決されて成立し,同月24日に令和7年法律第96号として公布された。施行日は令和8年4月1日であり(附則1項),国は施行後3年を目途として施行の状況について検討を加え,必要があると認めるときは所要の措置を講ずるものとされている(附則2項)。提出者である田畑裕明議員は,同委員会において,超党派の議員連盟を設立して関係者からのヒアリングを重ねた結果として本案を取りまとめた旨を説明しており,内閣提出法案ではなく議員立法として成立した経緯がある。

法律は全4章31条から成り,第1章に目的,定義,基本理念及び責務を,第2章に個別の支援施策を,第3章に高次脳機能障害者支援センター等を,第4章に雑則を置く。基本理念(3条)として掲げられているのは,①意思を尊重しつつ自立及び社会参加の機会が確保され,尊厳を保ちつつ他の人々と共生することを妨げられないこと,②社会的障壁の除去に資すること,③個々の性別,年齢,障害の状態及び生活の実態に応じ,関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に,意思決定の支援に配慮しつつ,医療の提供から地域での生活支援を経て社会参加の支援に至るまで切れ目なく行われること,④居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるようにすること,の四つである。

2 政令が定める定義と四つの除外

同法2条1項は「高次脳機能障害」を,疾病の発症又は事故による受傷による脳の器質的病変に起因すると認められる記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害,失語,失行,失認その他の認知機能の障害として政令で定めるものと定義し,同条2項は「高次脳機能障害者」を,高次脳機能障害がある者であって,高次脳機能障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものと定義する。原因となる疾病や受傷の種類を限定していないため,厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長は,令和7年12月5日の衆議院厚生労働委員会において,循環器病対策基本法が循環器病という疾患に着目しているのに対し,本法は原疾患を問わず高次脳機能障害のある者の支援を対象としている旨を説明している。

政令に委任された部分を定めるのが高次脳機能障害者支援法施行令1条であり,同条は,記憶障害以下の認知機能の障害から,①先天性疾病による認知機能の障害,②周産期における胎児又は新生児が受けた脳の損傷による認知機能の障害,③介護保険法5条の2第1項に規定する認知症に該当する認知機能の障害,④発達障害者支援法2条1項に規定する発達障害に該当する認知機能の障害の四つを除いている。除外されているのはこの四つだけであり,進行性の疾患を原因とする場合が一律に除外されているわけではない。この点は,後述する行政的診断基準の平成16年版が「進行性疾患」を除外項目に掲げていたのと異なっており,除外項目から進行性疾患を落とした令和5年版の診断基準と整合する定め方になっている。

3 高次脳機能障害者支援センター

同法19条1項は,都道府県知事が,①高次脳機能障害者及びその家族その他の関係者に対する専門的な相談,情報の提供又は助言,②円滑な社会生活を促進するための特性に対応した専門的な支援,③関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対する情報の提供及び研修,④これらの機関及び団体との連絡調整,⑤これらに附帯する業務を,高次脳機能障害者支援センターに行わせ,又は自ら行うことができると定める。指定は申請により行われ(同条2項),都道府県知事は,地域の実情を踏まえつつ,可能な限り身近な場所で必要な支援を受けられるよう適切な配慮をするものとされている(同条3項)。センターについては,役職員等の秘密保持義務(20条),報告の徴収等(21条),改善命令(22条)及び指定の取消し(23条)が置かれている。指定都市においては,31条及び施行令2条により,指定都市市長が同様の事務を処理する。

運用上の細目を定めるのは,令和8年4月7日障発0407第19号「高次脳機能障害者支援事業の実施について」の別紙1「高次脳機能障害者支援事業実施要綱」と,令和8年4月15日障精発0415第1号「高次脳機能障害者支援法の施行に伴う留意事項について」である。実施主体は都道府県又は指定都市とされ,事業の全部又は一部を団体等に委託することができる。センターは同一都道府県等の区域内に複数箇所設置することができ,指定数の上限は設けられておらず,都道府県と指定都市が同一の機関を指定することも可能である。都道府県知事等が指定をせずに自ら業務を担う場合も国庫補助の対象となり,「高次脳機能障害者支援センター」の名称を使用することは差し支えないとされている。

センターに配置される支援コーディネーターについて,留意事項通知は,社会福祉士,精神保健福祉士,保健師,作業療法士,公認心理師,言語聴覚士等のほか,高次脳機能障害者やその家族等で,自らの経験を活かして適切に相談支援を行うことができるものが想定されると述べている。当事者や家族による支援を国家資格保持者と並べて明記した点は,同種の相談支援の要綱の中では特徴的である。なお,従前の予算事業である「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」(平成19年5月25日障発0525001号)は上記の新通知により廃止されたが,実施要綱第6は経過措置を置き,センターが指定されるまでの間は従前の支援拠点機関が業務の一部又は全部を引き続き実施することができ,当該業務はセンターが指定された日をもって終了するものとしている。留意事項通知は,やむを得ない事情で直ちに指定することが困難な場合には,令和8年度内に指定することを前提として,指定手続が完了するまでの期間も国庫補助の対象とすることができるとしている。

4 地域協議会,専門的な医療機関及び司法手続における配慮

同法25条1項は,都道府県に対し,支援の体制の整備を図るため,高次脳機能障害者及びその家族,学識経験者その他の関係者並びに医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体等により構成される高次脳機能障害者支援地域協議会を置くよう努めなければならないと定め,同条2項は,協議会が,支援体制に関する課題についての情報共有,関係者の連携の緊密化及び地域の実情に応じた体制の整備に関する協議を行うものとしている。同法24条1項は,都道府県に対し,専門的に高次脳機能障害の診断,治療,リハビリテーション等を行うことができると認める病院又は診療所を確保するよう努めなければならないとし,同条2項は,国及び地方公共団体が医療機関の相互協力を推進し,医療機関に対して情報提供その他必要な援助を行うものとする。

司法手続との関係で置かれているのが15条であり,同条は,高次脳機能障害者が刑事事件若しくは少年の保護事件に関する手続その他これに準ずる手続の対象となった場合,又は裁判所における民事事件,家事事件若しくは行政事件に関する手続の当事者その他の関係人となった場合において,その権利を円滑に行使できるようにするため,個々の特性に応じた意思疎通の手段の確保のための配慮その他の適切な配慮をするものとすると定める。刑事司法の手続と民事・家事・行政の各手続を並べて配慮の対象とした点に特徴がある。これと対をなすのが29条であり,同条は,国及び地方公共団体が研修を実施すべき対象として,医療,保健,福祉,教育,労働等に関する業務に従事する者と並べて「捜査及び裁判に関する業務に従事する者」を挙げている。

5 国会審議で確認された適用範囲

条文だけからは判然としないのが,画像検査で脳の器質的病変を確認できない場合に法の対象となるかという問題である。令和7年12月5日の衆議院厚生労働委員会において,田村貴昭議員は,画像所見がなくても神経学的な診断等により医学的に脳に器質的病変があると診断される患者及び軽度外傷性脳損傷(MTBI)の患者が本案の対象となるかを提出者に質した。これに対し,提出者側の早稲田ゆき議員は,器質的病変の確認方法としてはMRI,CT,脳波等の検査所見によることが原則であるとした上で,受傷や疾病の事実が確認され,かつ認知障害を主たる原因として日常生活や社会生活に制約があるにもかかわらず検査所見で器質的病変を明らかにできない症例については,慎重な評価によって器質的病変が存在しているとの確認ができる場合には高次脳機能障害と診断され得るのであり,その場合には当然に本案の対象になると答弁した。

同議員は,軽度外傷性脳損傷についても,意識消失の時間の長短にかかわらず,高次脳機能障害と認められるものであれば当然に本案の対象に含まれる旨を述べている。もっとも,これは支援法の適用対象に関する立法者の説明であり,個別の給付の等級が認められるかどうかは各制度の認定基準によることに変わりはない。同じ委員会において,田村議員は,画像所見が認められない高次脳機能障害について労災保険の障害給付が請求された場合には各労働局が本省に協議することとされており,厚生労働省から示された資料によれば過去13年間の協議件数171件に対して支給決定は38件であったと述べている。この数値については政府参考人から明示の確認がされておらず,公表資料により裏付けられたものとして扱うことはできないが,法の対象となることと給付を受けられることとが同義ではないという点は,答弁の全体からうかがわれる。

6 令和8年度診療報酬改定による退院支援の義務付け

支援法自体には罰則を伴う義務規定が乏しい。センターの設置は「行わせ,又は自ら行うことができる」という規定であり,地域協議会の設置と専門的医療機関の確保は努力義務である。これに対し,実際の医療機関の行動を規律する形で置かれたのが,令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日適用)における回復期リハビリテーション病棟入院料及び特定機能病院リハビリテーション病棟入院料の施設基準である。令和8年5月8日障精発0508第1号「高次脳機能障害者への退院支援に関する診療報酬の改定等について」によれば,これらの入院料を算定する保険医療機関は,次のアからウまでの要件をいずれも満たすこととされた。

アは,当該地域において高次脳機能障害の患者に適したサービスを提供するもの,すなわち①支援法19条1項の高次脳機能障害者支援センター,②他の保険医療機関,③障害者総合支援法に基づく生活介護,自立訓練,就労継続支援,自立生活援助,共同生活援助,相談支援,計画相談支援等の障害福祉サービス等を提供する事業所又は施設,④児童福祉法に基づく指定障害児通所支援事業者,指定障害児入所施設等及び指定障害児相談支援事業者について,所在地,連絡先及び提供サービス等の情報をあらかじめ把握できる体制を整備することである。イは,基本診療料の施設基準等の別表第9に掲げる「高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害,重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合」に該当する患者の退院時に,患者又はその家族等退院後に患者の看護に当たる者に対して,アの情報を説明の上で提供できる体制を整備することである。ウは,退院後に他の保険医療機関でのリハビリテーション,介護保険によるリハビリテーション又は障害福祉サービスによるリハビリテーションへの移行を予定している患者について,同意が得られた場合には,移行先に対して3月以内に作成したリハビリテーション総合実施計画書等を文書により提供できる体制を整備することである。

同通知は,これと対応させて,高次脳機能障害者支援センターが,高次脳機能障害の患者に適した医療機関及び障害福祉サービス事業所等の情報を把握して一覧を作成し,これを医療機関に情報提供することを求めている。制度の設計としては,センターが地域の受け皿の一覧を作り,回復期リハビリテーション病棟がその一覧を退院時に患者と家族へ渡す,という流れが想定されていることになる。したがって,回復期リハビリテーション病棟から退院するに際してこの種の情報提供を受けていない場合には,施設基準の充足について医療機関に確認を求める余地があると考えられる。

第3 診断の基準と障害者手帳1 行政的診断基準の令和5年版

医師が診断書に「高次脳機能障害」と記載する際に用いられる行政的診断基準には,平成13年度の高次脳機能障害支援モデル事業に由来する平成16年版と,国際疾病分類のICD-10からICD-11への改訂に合わせて作成された令和5年版とがある。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターのウェブサイトには現在も平成16年版が掲載されており,両者は構造こそ同じであるものの,実務に影響する差異がある。

条項平成16年版令和5年版Ⅱ 検査所見MRI,CT,脳波などにより器質的病変の存在が確認されているか,あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる脳MRI,頭部CT,脳波などにより確認されているか,あるいは医学的に十分に合理的な根拠が示された診断書等により確認できるⅢ 除外項目3先天性疾患,周産期における脳損傷,発達障害,進行性疾患を原因とする者を除外先天性疾患,発達障害,周産期における脳損傷を原因とする者を除外(進行性疾患の記載なし)Ⅲ 除外項目2受傷又は発症以前から有する症状と検査所見は除外する発症又は受傷以前から症状や検査所見が存在する場合には,発症又は受傷後に新たに現れた症状や検査所見に基づき診断し,それらが十分とは言えない者を除外する軽度外傷性脳損傷記載なし単回のMTBIについて,病歴,神経心理学的検査による評価及び診断基準の対象とならない精神疾患の除外から総合的に判定する必要があると明記国際疾病分類ICD-10のF04,F06,F07が対象ICD-11ではF0に対応する大分類が消滅し,6D72,6D7,6E6に分散していることを明記

注 いずれも診断基準の本体は「Ⅰ主要症状等」「Ⅱ検査所見」「Ⅲ除外項目」「Ⅳ診断(令和5年版は診断に際しての留意事項)」の四つで構成される。

令和5年版が実務上重要なのは,解説部分において,脳損傷の存在が診断の必要条件であるとしつつ,高次脳機能障害の臨床症状を呈しながらも頭部CTや脳MRIを用いた画像診断において有意な異常所見が得られないケースが多々あるとして,「脳損傷の可視化は決して必要条件ではない」と明言した点である。同版は,画像診断で有意な異常所見が得られないケースにおいては臨床経過と神経心理学的検査の所見が極めて重要になり,ケースによっては神経心理学的検査の所見が診断の決め手になることがしばしばあると指摘している。ただし,この場合には神経心理学的検査の専門家による精密な検査施行と結果の解釈が必須であるとも述べており,検査を受けさえすれば足りるという趣旨ではない。なお,除外項目から進行性疾患が落ちた理由について,同版は,本診断基準が行政的な支援対策推進を目的とするものであるから,他の行政的支援が拡充されている病態(認知症等)については除外する形を取っていると説明している。

2 精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準

高次脳機能障害を理由として取得する手帳は,精神保健福祉法45条に基づく精神障害者保健福祉手帳である。同条1項により居住地の都道府県知事に交付を申請し,同条2項により政令で定める精神障害の状態にあると認められれば交付を受けるが,同条4項により2年ごとに,政令で定める精神障害の状態にあることについて都道府県知事の認定を受けなければならない。等級の判定は,平成7年9月12日健医発第1133号「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」によるところ,平成23年3月3日障発0303第1号による一部改正(平成23年4月1日適用)によって,「⑥器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)」の(b)として高次脳機能障害の定義が明記された。

同改正が定義するところによれば,高次脳機能障害とは,①脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認され,②日常生活又は社会生活に制約があり,その主たる原因が記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害等の認知障害であるものをいい,ICD-10コードではF04,F06又はF07に該当する。等級の判定基準は,器質性精神障害によるものについて,記憶障害,遂行機能障害,注意障害及び社会的行動障害のいずれかがあり,そのうち一つ以上が高度のものを1級,一つ以上が中等度のものを2級,いずれも軽度のものを3級としている。判定は,(1)精神疾患の存在の確認,(2)精神疾患(機能障害)の状態の確認,(3)能力障害(活動制限)の状態の確認,(4)精神障害の程度の総合判定という順を追って行われるものとされており,診断書に記載された機能障害の状態と活動制限の状態の双方を審査することが求められている。

麻痺や失語がある場合には,身体障害者福祉法15条に基づく身体障害者手帳を別に申請することができ,身体症状と精神症状を併せ持つ場合には2種類以上の手帳を同時に取得することが可能である。障害者手帳の等級は制度ごとに意味が異なり,同じ「3級」でも手帳と障害年金では要件が違うことに注意を要する。この点は,別の傷病を素材とするものであるが,大腿骨骨折の障害者手帳と障害年金――「3級」の違いと人工骨頭の認定基準でも整理している。

3 手帳を要する制度と要しない制度

手帳がなければ制度を利用できないという理解は,制度の根拠規定と一致しない。手帳の所持を要件とするかどうかは制度ごとに定め方が異なっており,条文又は基本方針まで立ち返って確認する必要がある。

制度手帳の要否根拠障害福祉サービスの支給申請不要自立支援医療受給者証又はICD-10コードの記載のある医師の診断書によることができる(国立障害者リハビリテーションセンター掲載の関係通知)障害を理由とする差別の解消不要障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針が,法の対象となる障害者はいわゆる障害者手帳の所持者に限られないとし,高次脳機能障害は精神障害に含まれると明記雇用における合理的配慮の提供条文上は不要障害者雇用促進法36条の2ないし36条の4は「障害者」について定めており,37条2項の「対象障害者」とは別の概念である障害者雇用率における算定必要同法37条2項は,対象障害者たる精神障害者を精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限っている障害年金不要国民年金法30条及び厚生年金保険法47条は手帳の所持を支給要件としていない

注 手帳を取得することにより,税の控除,公共料金の減免,公営住宅の入居の優遇等を受けられる場合があるが,その範囲は自治体により異なる。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針は,法の対象範囲を説明する箇所において,法が対象とする障害者はいわゆる障害者手帳の所持者に限られないとした上で,「なお,高次脳機能障害は精神障害に含まれる。」と述べている。障害者基本法2条1号が「精神障害(発達障害を含む。)」としか規定していないのに対し,基本方針が高次脳機能障害を精神障害に含まれると明示していることは,学校や事業者との交渉において最初に確認すべき点である。

第4 障害年金1 器質性精神障害としての認定基準

障害年金における高次脳機能障害の取扱いは,国民年金・厚生年金保険障害認定基準の第3第1章第8節「精神の障害」のうち「B 症状性を含む器質性精神障害」による。同節は,症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)を,先天異常,頭部外傷,変性疾患,新生物,中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に,膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものと定義し,高次脳機能障害については,脳損傷に起因する認知障害全般を指し,日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となると定める。

等級は,高度の認知障害,高度の人格変化,その他の高度の精神神経症状が著明なため常時の援助が必要なものを1級,認知障害,人格変化,その他の精神神経症状が著明なため日常生活が著しい制限を受けるものを2級,認知障害及び人格変化は著しくないがその他の精神神経症状があり労働が制限を受けるもの又は認知障害のため労働が著しい制限を受けるものを3級とし,認知障害のため労働が制限を受けるものを障害手当金とする。同節は,脳の器質障害については精神障害と神経障害を区分して考えることはその多岐にわたる臨床症状から不能であり,原則としてそれらの諸症状を総合して全体像から総合的に判断して認定するとしており,症状を要素ごとに切り分けて評価する建て付けを採っていない。

見落としやすいのが失語の扱いである。同節は,高次脳機能障害の主な症状として失語,失行,失認のほか記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などを挙げた上で,失語の障害については本章第6節「音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定すると定めている。したがって,失語がある場合には第8節と第6節の双方が問題となり,併合認定によって上位の等級となる余地がある。また同節は,障害の状態が代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮するとしており,症状固定を前提とする後遺障害等級とは異なり,経過を通じた評価が予定されている。

制度の入口として決定的なのは,初診日にどの年金制度に加入していたかである。国民年金法30条2項は障害等級を1級及び2級とし,厚生年金保険法47条2項は1級から3級までとしているから,3級及び障害手当金は厚生年金保険にしかない。同じ障害の状態であっても,初診日に国民年金の第1号被保険者であった場合は2級に届かなければ支給されないことになる。

2 等級判定ガイドラインと考慮要素の借用

障害基礎年金の不支給割合に都道府県間の差があることが確認されたことを受けて策定されたのが,平成28年9月の「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」である。同ガイドラインは,診断書の記載項目のうち「日常生活能力の程度」の5段階評価と「日常生活能力の判定」の4段階評価を1から4の数値に置き換えた平均とを組み合わせた表1により障害等級の目安を示し,表2に掲げる考慮要素を踏まえて認定医が総合的に判定する仕組みを採る。

高次脳機能障害について注意を要するのは,表2に器質性精神障害のための独立の考慮要素欄が置かれていないことである。ガイドラインは第3の3(3)②において,障害認定基準に規定する「症状性を含む器質性精神障害」について総合評価を行う場合は,「精神障害」「知的障害」「発達障害」の区分にとらわれず,各分野の考慮すべき要素のうち該当又は類似するものを考慮して評価すると定めており,他の区分の考慮要素を借用する建て付けになっている。この規定を前提とすれば,知能検査の結果が正常範囲であるにもかかわらず社会的行動障害によって生活が破綻している事案では,発達障害の欄に置かれた「知能指数が高くても日常生活能力が低い(特に対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない)場合は,それを考慮する」という要素を,該当又は類似するものとして援用することができると整理される。

3 就労している場合の評価

就労していることが不支給の理由になるかという点については,認定基準とガイドラインの双方が明文で釘を刺している。障害認定基準第8節は,Bの(6)において,日常生活能力等の判定に当たっては身体的機能及び精神的機能を考慮の上,社会的な適応性の程度によって判断するよう努めるとした上で,現に仕事に従事している者については,労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断することと定めている。

等級判定ガイドラインの表2「④就労状況」の共通事項も同旨を定めた上で,「援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも,その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する」とし,就労継続支援A型・B型及び障害者雇用制度による就労並びに就労移行支援については1級又は2級の可能性を検討するとし,障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも,これらと同程度の援助を受けて就労している場合は2級の可能性を検討するとしている。

裁判例にも同様の判断がある。東京地方裁判所令和4年3月18日判決(令和2年(行ウ)第58号)は,広汎性発達障害のほか既存障害として軽度の知的障害等がある者が障害者雇用枠で就職して定型的な作業又は単純な事務作業に従事していた事案において,判断を要するような行為については身のまわりのことであっても自発的かつ適正に行うことができず家族の援助や指導等が必要な状況にあったこと等を勘案し,就労を相当期間継続してきたことについては,本来であれば継続が困難であるところを周囲の理解や援助,指導等によって継続が可能となったものと評価することができるとして,障害等級2級に該当するとし,不支給処分を取り消すとともに,厚生労働大臣に対して2級の裁定をするよう命じた。高次脳機能障害の事案ではないが,就労の事実をどのように評価するかについての判断の型を示したものとして参照できる。

障害年金の認定において就労状況が考慮されることと,特定の職務について労務提供能力があるかを判断することは,同じ問題ではない。
障害者手帳・障害年金の認定と労務提供能力は同じかでは,行政上の認定,診断・症状・治療,日常生活・社会生活上の機能及び具体的職務についての労務提供能力を四つの判断層に分けて整理している。

4 支分権の消滅時効

障害年金には,見落とすと回復できない期間の制約がある。最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決(平成29年(行ヒ)第44号,民集71巻8号1501頁)は,厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)47条に基づく障害年金の支分権,すなわち支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利の消滅時効は,当該障害年金に係る裁定を受ける前であっても,厚生年金保険法36条所定の支払期が到来した時から進行すると判示した。

この判断によれば,障害認定日に遡って等級が認められたとしても,古い支払期の分から順に時効によって消滅していくことになる。障害認定日は初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日)であるから(国民年金法30条1項,厚生年金保険法47条1項),発症又は受傷から相当の年月が経過した後に相談を受けた場合には,遡及請求が可能かどうかの検討と並行して,時効により失われる範囲を早期に確定させる必要がある。障害の程度が重いほど本人による手続が困難であり,家族が制度の存在を知るまでに時間がかかりやすいという事情があるだけに,この点は最初に確認すべき事項の一つである。

第5 労働者災害補償保険及び公務災害1 四つの能力による障害等級の認定

業務上の事由又は通勤による負傷若しくは疾病を原因とする場合の障害等級は,平成15年8月8日基発第0808002号「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」による。同基準は,脳の器質性障害を「高次脳機能障害」(器質性精神障害)と「身体性機能障害」(神経系統の障害)に区分した上で,両者の程度及び介護の要否・程度を踏まえて総合的に判断することとし,たとえば高次脳機能障害が第5級に相当し軽度の片麻痺が第7級に相当するからといって併合の方法を用いて準用等級第3級と定めるのではなく,その場合の全体病像として第1級の3,第2級の2の2又は第3級の3のいずれかに認定すべきものとしている。

高次脳機能障害の評価は,意思疎通能力,問題解決能力,作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力という四つの能力の喪失の程度によって行い,複数の障害が認められるときは原則として最も重篤なものに着目する。等級の対応は,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常に他人の介護を要するものを第1級の3,随時介護を要するものを第2級の2の2,身のまわり処理は可能であるが労務に服することができないもの(四つの能力のいずれか一つ以上が全部失われているもの又はいずれか二つ以上の大部分が失われているもの)を第3級の3,きわめて軽易な労務のほか服することができないもの(いずれか一つ以上の大部分又は二つ以上の半分程度)を第5級の1の2,軽易な労務にしか服することができないもの(いずれか一つ以上の半分程度又は二つ以上の相当程度)を第7級の3,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの(いずれか一つ以上の相当程度)を第9級の7の2,多少の障害を残すもの(いずれか一つ以上が多少失われているもの)を第12級の12とする。

手続面では,障害補償給付請求書等の裏面の診断書の傷病名の欄等に頭部外傷又は脳血管疾患等による高次脳機能障害が想定される障害が記載されている場合について,主治医に対して様式1により,家族(あるいは家族に代わる介護者)に対して様式2により障害の状態についての意見を求めることとされている。そして同基準は,高次脳機能障害の状態について家族と主治医の意見が著しく異なる場合には再度必要な調査を行うことと定めており,本人の病識が低下していることによって主治医の把握と生活実態とがずれる場合に,家族側の意見を無視して処理することは想定されていない。労災保険の給付の全体像については,労災保険の給付内容―給付の種類,金額及び令和8年改正で扱っている。

2 画像所見がない場合の第14級の9

同基準は,「通常の労務に服することはできるが,高次脳機能障害のため,軽微な障害を残すもの」を第14級の9とし,これに該当するものとして「MRI,CT等による他覚的所見は認められないものの,脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき,高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるもの」を挙げている。画像所見が得られない場合の類型が明文で置かれている点は,前記の令和5年版診断基準が「脳損傷の可視化は決して必要条件ではない」と述べていることと方向を同じくする。

もっとも,同基準は,高次脳機能障害が脳の器質的病変に基づくものであることからMRI,CT等によりその存在が認められることが必要であるとも述べており,画像所見が不要であるという趣旨ではない。他方で同基準は,神経心理学的な各種テストの結果のみをもって高次脳機能障害が認められないと判断することなく四つの能力の障害の程度により障害等級を認定することと定め,注記において,神経心理学的な各種テスト等の検査結果は臨床判定の際の有効な手段であるが,知能指数が高いにもかかわらず高次脳機能障害のために生活困難度が高い例があると述べている。知能検査の数値が保たれていることを理由に障害を否定する判断を,基準自身が明示的に戒めている。

公務上の災害による場合は地方公務員災害補償法等によることになる。名古屋地方裁判所平成23年6月29日判決(平成20年(行ウ)第101号)は,中学校の教員が公務遂行中に脳出血により倒れて高次脳機能障害等の後遺症を負い,公務外認定処分を受けた事案において,従事した公務に量的及び質的な過重性が認められ,これにより高血圧及びもやもや病の基礎疾患が自然的経過を超えて増悪化して脳出血の発症に至ったことが推認されるとして,公務起因性を認めた。他方,岐阜地方裁判所平成23年8月4日判決(平成20年(行ウ)第1号)は障害補償の不支給処分の取消請求を棄却し,仙台地方裁判所平成24年1月12日判決(平成22年(行ウ)第25号)は,自宅療養及びそのための休業が医師の事前の指示ないし指導に基づくものでない場合であっても,医師の医学的知見に基づく判断により客観的に見て必要性が明らかであると証明された場合には休業補償給付の支給要件を満たすと解した上で,当該事案では必要性が明らかであるとは認められないとして請求を棄却している。

第6 障害福祉サービス,医療及び介護保険1 障害者総合支援法による給付

日常生活の支援は障害者総合支援法による。高次脳機能障害の事案で用いられることが多いのは,同法5条12項の自立訓練(機能訓練及び生活訓練),同条18項の共同生活援助,同条21項の地域移行支援,同条13項から15項までの就労選択支援,就労移行支援及び就労継続支援である。就労選択支援は,就労を希望する障害者等について短期間の生産活動その他の活動の機会の提供を通じて就労に関する適性,知識及び能力の評価並びに就労に関する意向及び必要な配慮の整理を行うものとして新設された。この新設によって同条の項番号が繰り下がっているため,新設前に刊行された文献の項番号をそのまま引用すると条項の指示を誤ることになる。

施設や病院から地域へ移る場面の給付である地域移行支援,共同生活援助及び自立生活援助の内容,並びに住まいの確保に用いる住宅確保要配慮者居住支援法人等の制度については,精神科病院退院者の環境調整の諸制度――退院後生活環境相談員,地域移行支援,居住支援法人及び費用負担で詳しく扱っている。高次脳機能障害の場合も同じ給付を用いることになるが,精神科病院からの退院に固有の制度である退院後生活環境相談員及び医療保護入院者退院支援委員会は,医療保護入院又は措置入院を経ていない限り適用されない。

なお,令和8年4月15日障精発0415第1号は,各自治体に対し,支援法17条を踏まえて高次脳機能障害者やその家族その他の関係者が相談できる窓口を明確化し,関係機関等との連携を図りながら十分な支援が行われるよう相談支援体制を整備するとともに,必要な周知を進めることを求めている。同通知は地方自治法245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であり,これ自体が個々の住民に対する具体的な請求権を生じさせるものではない。

2 支給量の決定に対する司法審査

サービスの種類や支給量に不服がある場合の枠組みは,一連の裁判例によって形成されてきた。大阪地方裁判所平成22年4月23日判決(平成19年(行ウ)第200号)及びその控訴審である大阪高等裁判所平成22年12月14日判決(平成22年(行コ)第84号)は,重度訪問介護の支給量を1か月当たり318時間とする介護給付費支給決定の取消請求について,市町村がする支給要否決定並びに障害福祉サービスの種類及び支給量の決定は,その判断の基礎となる事実に重大な誤認があり,あるいはその判断内容が社会通念に照らして明らかに合理性を欠くこと等により,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用にわたるものと認められるような場合に限って違法になるとした上で,違法となるかどうかは,決定に至る判断の過程において,勘案事項を適切に調査せず,又はこれを適切に考慮しないことにより,その内容が,当該障害者等の個別具体的な障害の種類及び内容並びにその程度その他の具体的事情に照らして,社会通念上当該障害者等において自立した日常生活又は社会生活を営むことを困難とするものであって,同法の趣旨目的に反するのではないかという観点から検討すべきであると判示した。

この枠組みの下でも,生活場面の切り出し方が不合理であれば違法とされる。東京地方裁判所平成30年10月12日判決(平成28年(行ウ)第369号)は,午前10時から午後2時までの時間帯をボランティア対応として昼食介助及び昼食後の歯磨き介助の時間を算定せず,重度訪問介護の支給量を1か月527時間(1日当たり17時間)を超えて算定しなかったことについて,申請者が作成した利用計画案が1日24時間の常時介助を前提として2人介助を含む1日当たり27時間30分から自助努力分として4時間を差し引いた1日当たり23時間30分を求めるものとなっており,支給決定における支給量が申請者の求める時間に満たない場合にまで4時間分全部の支給量を不要とする意向であるとは解し難いこと等の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとした。

さらに,最高裁判所第一小法廷令和7年7月17日判決(令和5年(行ヒ)第276号)は,両下肢の機能の全廃及び両上肢の機能の著しい障害により1級の身体障害者手帳の交付を受け,障害支援区分4の認定を受けた上で居宅介護(身体介護月45時間及び家事援助月25時間)の支給決定を受けていた者が,同じ内容の支給決定を求めたところ却下処分を受けた事案について,処分当時65歳に達していたが介護保険法27条1項に基づく申請をしていなかったという事情の下で,処分を違法とした原審の判断には,市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果,受けることができる介護給付のうち自立支援給付に相当するものの量を算定することができないとした市の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かについて審理を尽くさなかった違法があるとして,原判決を破棄し差し戻した。これらはいずれも身体障害等の事案であり,高次脳機能障害の支給量を正面から争った裁判例を裁判所ウェブサイトで確認することはできなかったが,判断の枠組み自体は障害の種別を問わないものとして組み立てられている。

3 自立支援医療と介護保険との関係

通院医療費の負担軽減には,障害者総合支援法5条25項の自立支援医療(精神通院医療)を用いる。介護保険との関係では,年齢によって扱いが分かれる。介護保険法7条3項2号及び同法施行令2条は,第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)が要介護認定を受けるための特定疾病を16列挙しており,その13号に「脳血管疾患」が置かれている。したがって,40歳以上65歳未満の場合,脳血管疾患を原因とする高次脳機能障害であれば介護保険の給付を受け得るが,交通事故等による外傷性脳損傷を原因とする場合は特定疾病に当たらないため介護保険を利用することができず,障害福祉サービスによることになる。65歳以上であれば原因を問わず介護保険の被保険者となる。

もう一つ,介護保険法5条の2第1項の「認知症」との関係にも注意を要する。同項は認知症を,アルツハイマー病その他の神経変性疾患,脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態と定義しており,高次脳機能障害者支援法施行令1条はこれに該当する認知機能の障害を支援法の対象から除いている。脳血管疾患を原因とする事案では,同じ状態が「認知症」と評価されるか「高次脳機能障害」と評価されるかによって適用される制度が分かれ得ることになるが,行政的診断基準の令和5年版が認知症を除外する理由として他の行政的支援が拡充されていることを挙げていることからすれば,いずれの制度からも漏れることを想定した仕分けではないと考えられる。

第7 就労及び差別の解消1 合理的配慮と法定雇用率

雇用の場面では,二つの制度を区別して考える必要がある。第一は合理的配慮の提供義務であり,障害者雇用促進法36条の2は,事業主に対し,労働者の募集及び採用について,障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため,募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないと定め,同法36条の3は,採用後について,均等な待遇の確保又は有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため,障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備,援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないと定める。いずれも事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときはこの限りでないという留保が付されている。同法36条の4は,これらの措置を講ずるに当たって障害者の意向を十分に尊重すべきこと,及び障害者である労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずべきことを定める。

第二は障害者雇用率制度である。同法37条2項は,雇用義務の対象となる「対象障害者」のうち精神障害者について,精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限ると定めており,実雇用率の算定に当たっては手帳が必要になる。したがって,手帳を取得していない高次脳機能障害者について事業主が合理的配慮を提供する義務を負う一方で,その労働者は実雇用率には算入されないという状態があり得る。法定雇用率の水準及び算定方法については,令和8年7月の障害者法定雇用率2.7%への引上げ―37.5人基準,算定方法及び企業の対応で扱っている。

支援法13条1項は,国及び地方公共団体に対し,公共職業安定所,地域障害者職業センター,障害者就業・生活支援センター,社会福祉協議会,教育委員会その他の関係機関及び民間団体相互の連携を確保しつつ,個々の特性に応じた適切な就労の機会の確保及び就労の定着のための支援に努めるべきことを定め,同条3項は,事業主に対し,高次脳機能障害者の雇用に関し,その有する能力を正当に評価し,適切な雇用の機会を確保するとともに,個々の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならないと定める。また,支援法6条は,事業主が高次脳機能障害者又はその家族の雇用の継続等に配慮するよう努めるべきものとしており,本人だけでなく介護に当たる家族の就業継続を条文上取り上げている。

2 障害を理由とする差別の解消

障害者差別解消法7条は行政機関等に,同法8条は事業者に,それぞれ不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供を義務付ける。事業者による合理的配慮の提供は,令和3年法律第56号による改正により努力義務から法的義務に改められ,同改正法は令和6年4月1日に施行された。合理的配慮の提供は,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときに,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて必要かつ合理的な配慮をするというものである。

前記のとおり,同法の基本方針は高次脳機能障害が精神障害に含まれること及び対象が手帳の所持者に限られないことを明記している。もっとも,同法が求めるのは意思の表明を契機とする個別の調整であり,記憶障害や社会的行動障害のために自ら配慮を求めることが難しい場合には,その意思の表明を誰がどのように補うかという問題が残る。支援法3条3項が意思決定の支援への配慮を基本理念に掲げているのは,この局面にも関わる。成年後見制度の側からの手当てについては,令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で扱っている。

第8 自動車の運転

運転免許を維持できるかどうかは,条文を追うだけでは答えが出ない領域である。道路交通法103条1項1号は,免許の取消し又は効力の停止の事由となる病気として,イ「幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの」,ロ「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」,ハ「イ及びロに掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」を掲げ,同項1号の2は認知症であることが判明したときを掲げる。同項1号ハの政令で定める病気は,道路交通法施行令38条の2第3項が同令33条の2の3第3項各号を引用しており,同項は,1号にそう鬱病,2号に重度の眠気の症状を呈する睡眠障害を掲げた上で,3号に「前二号に掲げるもののほか,自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気」を掲げる。高次脳機能障害は病名として列挙されておらず,この3号の包括的な規定への当てはめの問題となる。

手続としては,公安委員会は,免許を受けた者が同項1号から3号までのいずれかに該当することとなったと疑う理由があるときは,臨時に適性検査を行い,又は内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができ,この場合には,免許の申請又は更新の際に提出された質問票の記載内容,法101条の5の規定による報告の内容その他の事情を考慮するものとされている(法102条4項)。また,法101条の6第1項は,医師が,その診察を受けた者が法103条1項1号,1号の2又は3号のいずれかに該当すると認めた場合において,その者が免許を受けた者であることを知ったときは,診察の結果を公安委員会に届け出ることができるとし,同条3項は,刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は,この届出をすることを妨げるものと解釈してはならないと定める。届出は義務ではないが,守秘義務違反にならないことが法律上明示されている。

質問票について注意を要するのは罰則である。法117条の4第1項3号は,法89条1項(免許の申請),法101条1項(免許証等の更新の申請)又は法101条の2第1項の質問票に虚偽の記載をして提出した者を,1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処すると定める。免許を失うことをおそれて質問票に事実と異なる記載をすることは犯罪を構成し得るのであって,運転の継続を希望する場合には,臨時適性検査又は医師の診断書の提出という手続の中で判断を求めることになる。運転の再開を支援する体制も整備されつつあり,令和8年4月7日障障発0407第1号等による高次脳機能障害支援養成研修の実施要綱は,実践研修の標準的なカリキュラムの講義科目に「自動車運転再開支援」を置き,高次脳機能障害者の自動車運転支援に関連する法制度,運転評価,課題や留意事項の理解を内容とすると定めている。

第9 相談窓口及び期間の制約1 支援センターと大阪府内の窓口

これまで見てきたとおり,制度の実施主体は国,都道府県,指定都市,市町村,労働基準監督署及び厚生労働大臣に分かれている。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターは,都道府県別の支援拠点機関の一覧を公開しており,令和8年3月現在の大阪府については,大阪府障がい者医療・リハビリテーションセンター(大阪府高次脳機能障がい相談支援センター。大阪市住吉区大領3丁目2番36号,電話06-6692-5262)及び堺市立健康福祉プラザ生活リハビリテーションセンター(指定管理者は社会福祉法人堺市社会福祉事業団。堺市堺区旭ヶ丘中町4丁3番1号,電話072-275-5019)の2機関が掲載されている。指定都市である大阪市を実施主体とする機関は,同一覧には掲載されていない。

実施要綱によれば,センターの業務には,相談支援及び情報提供のほか,診断・評価,適切なリハビリテーション及び福祉サービス等の提供並びに情報提供という専門的な支援,関係施設・関係機関等の職員,当事者及びその家族等に対する研修,並びに普及啓発活動及び地域における実態及びニーズの把握が含まれる。相談の対象は本人に限られず,家族その他の関係者及び関係機関も含まれる。都道府県等は,センターから業務の実施状況等について少なくとも年1回の報告を聴取し,業務内容について定期的に評価を行い,必要に応じて改善を促すなど,適切な運営の確保に努めるものとされている。

2 期間に関する制約の整理

制度ごとに期間の定めがあり,遅れると回復できないものがある。主なものを挙げると,①障害認定日は初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内に傷病が治った場合はその日)である(国民年金法30条1項,厚生年金保険法47条1項),②障害年金の支分権は支払期の到来時から時効が進行し,裁定を受ける前であっても進行する(最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決),③精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに都道府県知事の認定を受ける必要がある(精神保健福祉法45条4項),④高次脳機能障害者支援センターの指定については,旧支援拠点機関を指定する予定であるがやむを得ない事情により直ちに指定することが困難な場合について,令和8年度内に指定することを前提とする取扱いが示されている,⑤支援法附則2項により,国は施行後3年を目途として施行の状況について検討を加えるものとされている,となる。

このうち実務上最も影響が大きいのは②であり,発症又は受傷から年月が経過してから相談に至る事案では,遡及請求の可否を検討する前に,まず時効によって失われる範囲を確定する必要がある。高次脳機能障害は外形から判断しにくく,本人が自らの障害を認識しにくいという特性があるため,制度の存在に気付くまでに時間がかかりやすい。厚生労働省が公表した支援法の概要も,この障害が外形上判断しづらくその特性の理解も進んでいない等の理由で,患者と家族が適切な支援を受けることができず日常生活や社会生活に困難を抱えているとの指摘があることを,立法の理由として挙げている。

出典1 法令

①高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)2条・3条・6条・11条・13条・15条・17条・19条・20条・21条・22条・23条・24条・25条・29条・31条・附則(e-Gov法令検索)
②高次脳機能障害者支援法施行令(令和8年政令第60号)1条・2条(e-Gov法令検索)
③精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)45条(e-Gov法令検索)
④障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)5条12項・13項・14項・15項・18項・21項・25項・27項・28項,77条1項(e-Gov法令検索)
⑤障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)36条の2・36条の3・36条の4・37条2項(e-Gov法令検索)
⑥障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)7条・8条(e-Gov法令検索)
⑦障害者基本法(昭和45年法律第84号)2条(e-Gov法令検索)
⑧発達障害者支援法(平成16年法律第167号)2条1項(e-Gov法令検索)
⑨国民年金法(昭和34年法律第141号)30条(e-Gov法令検索)
⑩厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)36条・47条(e-Gov法令検索)
⑪労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)15条(e-Gov法令検索)
⑫介護保険法(平成9年法律第123号)5条の2第1項・7条3項2号・27条1項(e-Gov法令検索)
⑬介護保険法施行令(平成10年政令第412号)2条(e-Gov法令検索)
⑭道路交通法(昭和35年法律第105号)89条1項・101条1項・101条の5・101条の6・102条4項・103条1項・117条の4第1項(e-Gov法令検索)
⑮道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)33条の2の3・38条の2(e-Gov法令検索)
⑯身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)15条(e-Gov法令検索)

2 行政通知

①厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「「高次脳機能障害者支援法」の公布について(通知)」(障発1224第1号,令和7年12月24日)(厚生労働省)
②厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「高次脳機能障害者支援事業の実施について」(障発0407第19号,令和8年4月7日)及び別紙1「高次脳機能障害者支援事業実施要綱」(厚生労働省)
③厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長「高次脳機能障害者支援法の施行に伴う留意事項について」(障精発0415第1号,令和8年4月15日)(厚生労働省)
④厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長・精神・障害保健課長「高次脳機能障害支援養成研修の実施について」(障障発0407第1号・障精発0407第3号,令和8年4月7日)及び別添「高次脳機能障害支援養成研修実施要綱」(厚生労働省)
⑤厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長「高次脳機能障害者への退院支援に関する診療報酬の改定等について」(障精発0508第1号,令和8年5月8日)(厚生労働省)
⑥厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「「地域生活支援事業等の実施について」の一部改正について」(障発0407第31号,令和8年4月7日)(厚生労働省)
⑦厚生労働省労働基準局長「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(基発第0808002号,平成15年8月8日)(厚生労働省法令等データベースサービス)
⑧厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準についての一部改正について」(障発0303第1号,平成23年3月3日。平成7年9月12日健医発第1133号の一部改正)(国立障害者リハビリテーションセンター)

3 認定基準・診断基準

①日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第3第1章第8節「精神の障害」(令和4年4月1日改正)56頁~62頁(日本年金機構)
②厚生労働省年金局「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)1頁~10頁(厚生労働省)
③「高次脳機能障害診断基準ガイドライン」(平成16年度作成版)1頁~6頁(国立障害者リハビリテーションセンター)
④「令和5年版 高次脳機能障害 診断基準 ガイドライン」1頁~9頁(日本高次脳機能障害学会)

4 裁判例

①最高裁判所第一小法廷令和7年7月17日判決(令和5年(行ヒ)第276号,裁判所ウェブサイト)
②最高裁判所第三小法廷平成29年10月17日判決(平成29年(行ヒ)第44号,民集71巻8号1501頁,裁判所ウェブサイト)
③東京地方裁判所平成30年10月12日判決(平成28年(行ウ)第369号,裁判所ウェブサイト)
④大阪高等裁判所平成22年12月14日判決(平成22年(行コ)第84号,裁判所ウェブサイト)

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確定申告しない金融所得と後期高齢者医療の保険料――令和8年法律第31号による改正と窓口負担割合への影響(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 対象と時点
2 先に結論

第2 現行制度で確定申告の有無が負担を分ける仕組み

1 保険料と窓口負担の根拠規定
2 政令が所得を市町村民税に接続している
3 地方税法313条12項から15項までの構造
4 NISA口座と預貯金の利子が入らない理由

第3 金額でみた差

1 厚生労働省が示した設例
2 設例の数値の内訳
3 均等割額の軽減がもたらす段差
4 窓口負担割合が1割から2割に変わる仕組み

第4 令和8年法律第31号による改正

1 法律の特定と経過
2 新設される138条の2から138条の6まで
3 報告の対象となる書類
4 罰則及び住民基本台帳法の改正

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中途採用における使用者側の留意点――募集・選考・内定・試用期間の実務(AI作成)

第1 中途採用で先に押さえるべき結論

1 採用の成否は入社前の設計で大きく決まること

2 「中途採用なら解雇しやすい」とはいえないこと

第2 募集前に職務と労働条件を固めること

1 不採用となる本質的要件を先に言語化すること

2 募集表示と契約時の条件明示を区別すること

3 固定残業代と年収表示を分解すること

4 紹介会社と求人媒体の運用も使用者が点検すること

第3 選考で取得する情報を必要な範囲に絞ること

1 採用の自由には現行法上の限界があること

2 面接は職務要件に結び付く共通質問で行うこと

3 健康情報と雇入時健康診断を混同しないこと

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労働組合の団体交渉と弁護士法72条――個別労働紛争・拠出金・退職代行の境界(AI作成)

第1 この記事が扱う問題

1 労働組合による交渉が非弁行為にならない範囲

2 記事の対象と確認時点

第2 労働組合法6条と弁護士法72条の関係

1 労働組合の交渉権限

2 弁護士法72条の構成要件

3 両条の関係を説明する三つの構成

第3 東京高裁令和4年12月15日判決

1 争われた団体交渉と拠出金

2 東京地裁令和4年5月24日判決

3 東京高裁令和4年12月15日判決

4 判決の射程

第4 個別労働紛争を交渉できる範囲

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高齢者の大腿骨骨折と障害者手帳――3級・4級・5級・7級の認定基準(AI作成)

第1 大腿骨骨折の傷病名や年齢だけでは等級は決まらない

1 最初に認定経路を分ける
2 手帳の等級は障害年金・自賠責と別である

第2 3級・4級・5級・7級の違い

1 3級は一下肢全体の機能全廃である
2 4級には一下肢全体と一関節の二つの経路がある
3 5級・7級は股関節又は膝関節の機能で分かれる
4 下肢短縮は別の基準で判定する

第3 高齢者の認定で分けて考えるべき要素

1 高齢であることは認定除外事由ではない
2 骨折前の歩行能力と併存疾患を記録する
3 骨折部位により確認する関節が異なる

第4 人工骨頭・人工股関節を一律4級とする基準は廃止された

1 平成26年4月から実際の機能で判定する
2 申請時期は術後経過の安定を基準とする

第5 申請と診断書で確認する事項

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USB型フォレンジックツールを労務管理で利用する場合の法的注意点(AI作成)

第1 この記事が扱う対象第2 個人情報保護法制上の位置付け1 雇用管理分野ガイドラインの廃止と通則編への統合2 個人情報保護委員会Q&Aが示すモニタリング実施の要件3 就業規則への明記の要否第3 場面別の法的注意点1 懲戒・解雇における証拠としての利用2 未払残業代・労災における労働時間の記録としての位置付け3 情報漏えい・営業秘密調査における秘密管理性との関係4 内部通報・ハラスメント調査における調査手法の相当性5 退職時のPC監査第4 証拠としての技術的留意点第5 現在の法改正・改訂動向出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献5 ウェブ資料第1 この記事が扱う対象

対象PCにUSBメモリを挿すだけで,ファイルの閲覧・削除履歴,Web閲覧履歴,USB接続履歴及びログオン履歴等を解析できる簡易型のデジタルフォレンジック製品が,弁護士や企業の法務・人事部門に向けて販売されている。たとえば,AOS Fast Forensics(AIデータ社が販売代理店を通じて提供する製品)は,Windows7及びWindows10を対象に,OS情報,Web履歴,ファイル閲覧履歴,USB接続履歴,イベントログ(ログイン・ログオフ時刻)等を取得できるとされ,管理者権限のあるアカウントでのログイン又は管理者パスワードの把握を前提として動作する。年間利用料を抑え,USB1本を挿すという簡易な操作で解析が完了するため,情報漏えい対応,懲戒・解雇の証拠収集,未払残業代請求への対応,内部通報・ハラスメント調査の初動及び退職時のPC監査等,使用者(企業)の労務管理の様々な場面での活用が想定されている。

本記事は,令和8年8月18日時点で公表されている法令,行政ガイドライン及び裁判例に基づき,使用者がこの種のUSB型フォレンジックツールを労務管理その他の目的で利用する場合に,どのような法的根拠が必要となり,どのような場面でどのような限界があるかを整理するものである。生成AIを用いて,個人情報保護法制,労働時間管理に関する行政指針,不正競争防止法制,公益通報者保護法制及び関連裁判例の一次資料を確認した上で構成した。個別の製品の性能又は導入の当否を評価するものではなく,製品カテゴリー全般に共通する法的枠組みを対象とする。

第2 個人情報保護法制上の位置付け1 雇用管理分野ガイドラインの廃止と通則編への統合

厚生労働省は,平成16年厚生労働省告示第259号として「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」を定め,平成24年厚生労働省告示第357号により全部改正し,平成27年厚生労働省告示第454号により一部改正した。同ガイドラインは,雇用管理情報(労働者等の雇用管理のために収集,保管,利用等する個人情報で,病歴,収入,家族関係等の機微に触れる情報を含む。)の利用目的の特定,取得,個人データの管理,第三者提供及び保有個人データの開示等について事業者が遵守すべき事項を定めるものであったが,電子メールの監視,GPSによる位置情報の取得又は防犯カメラによる監視といった,モニタリングに固有の規定は置かれていなかった。

同ガイドラインは,平成29年5月30日をもって廃止された。個人情報保護委員会が同年,分野別ガイドラインの多くを「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」等4編へ一元化したことに伴うものである。現在,雇用管理分野に固有の行政文書として個別に存続しているのは,個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」のみであり,これは健康情報の取扱いに特化した内容であって,PC・メール・GPS等のモニタリングには触れていない。

2 個人情報保護委員会Q&Aが示すモニタリング実施の要件

雇用管理分野の専門ガイドラインが廃止された結果,従業者に対するモニタリングの実施に関する実務上の指針は,通則編ガイドラインに付属する個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」のQ5-7が担っている。同Q&Aは,「従業者に対する監督の一環として,個人データを取り扱う従業者を対象とするビデオやオンライン等による監視(モニタリング)を実施する際の留意点」として,①モニタリングの目的をあらかじめ特定した上で,社内規程等に定め,従業者に明示すること,②モニタリングの実施に関する責任者及びその権限を定めること,③あらかじめモニタリングの実施に関するルールを策定し,その内容を運用者に徹底すること,④モニタリングがあらかじめ定めたルールに従って適正に行われているか確認を行うこと,の4点を挙げる。同Q&Aは,これに加えて,モニタリングに関して個人情報の取扱いに係る重要事項等を定めるときは,あらかじめ労働組合等に通知し必要に応じて協議を行うことが望ましく,重要事項等を定めたときは従業者に周知することが望ましいとする。

USB型フォレンジックツールは,ファイル閲覧・削除履歴,Web閲覧履歴,USB接続履歴及びログオン履歴等を一度の接続で広く取得する設計であるため,上記①の目的の特定を,モニタリング対象の情報の範囲に対応させて具体的に行っておくことが,Q&Aの要件を満たすための出発点となる。

3 就業規則への明記の要否

モニタリングの適法性は,個人情報保護法制上の要件だけでなく,労務管理の一環としての通信機器の監視・点検が許容される範囲という観点からも検討する必要がある。この点について,企業法務の実務書は,使用者が職場のパソコン等の通信機器に関する私的使用の有無及びその程度を監視・点検できるかについて,就業規則に合理的な内容で記載して従業員に明らかにしておけば,職場における通信機器の利用権限が制限されていることが明らかになり,企業が監視・点検することは可能と解している。これに対し,就業規則に記載がない場合は,業務との関係で監視する必要性があり,その手段・程度が相当である場合に限り合法となるとされる。さらに,就業規則の記載事項に比べて実際の情報取得が広範にされている場合には,従業員の想定範囲を超えるものとして違法となる可能性があるとも指摘されている。

USB型フォレンジックツールのように取得情報の範囲を個別の目的ごとに絞りにくいツールを用いる場合,就業規則等に記載したモニタリングの目的及び取得情報の範囲と,実際にツールが取得する情報の範囲との間に乖離が生じないよう,事前に確認しておく必要がある。取得範囲がその乖離を超えて私的領域に及ぶときは,プライバシー侵害として不法行為を構成し得る余地があり,その違法性判断の一般的な枠組みについては,別稿「名誉毀損又はプライバシー侵害が違法となる場合」も参照されたい。

第3 場面別の法的注意点

USB型フォレンジックツールの利用が想定される主な場面として,①懲戒・解雇,②未払残業代・労災,③情報漏えい・営業秘密調査,④内部通報・ハラスメント調査,⑤退職時のPC監査が挙げられる。場面ごとに適用される法的根拠及び留意点は異なるため,以下順に整理する。

1 懲戒・解雇における証拠としての利用

懲戒処分又は普通解雇の効力が争われた場合,使用者は,処分の理由となった事実を主張立証する責任を負う。USB型フォレンジックツールで取得したファイル閲覧・削除履歴やWeb閲覧履歴は,この主張立証を支える客観的な証拠となり得るが,取得手続自体の相当性が争点化するおそれがある点に留意する必要がある。最高裁判所は,所持品検査について,「検査を必要とする合理的理由に基づいて,一般的に妥当な方法と程度で,しかも制度として,職場従業員に対して画一的に実施される」ことを適法性の要件とした(最高裁判所第二小法廷昭和43年8月2日判決・昭和42年(オ)第740号,民集22巻8号1603頁)。この判断枠組みは金品の不正隠匿摘発を目的とする身体・所持品検査に関するものであり,電子端末の内部データ調査を直接の対象とするものではないが,調査の必要性・方法・程度の相当性を審査するという骨格は,PC調査の相当性を検討する際にも参考になる。

2 未払残業代・労災における労働時間の記録としての位置付け

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は,始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法として,使用者による現認のほか,「タイムカード,ICカード,パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し,適正に記録すること」を挙げ,パソコンの使用時間の記録を,タイムカード及びICカードと並ぶ客観的な記録の一類型として位置付けている。同ガイドラインは,自己申告制による労働時間管理を行う事業場についても,入退場記録やパソコンの使用時間の記録など事業場内にいた時間の分かるデータを保有している場合には,自己申告により把握した労働時間との間に著しい乖離が生じていないかを確認し,乖離があれば実態調査の上で労働時間を補正することを求めている。

もっとも,USB型フォレンジックツールで事後的に取得したPCログを,未払残業代請求への反証又は労災における長時間労働の認定資料として用いる場合には,二つの限界を踏まえる必要がある。第一に,PCログは特定の端末における操作の記録にとどまり,会議,電話対応,外勤その他その端末を用いない業務時間を捕捉できない。第二に,使用者が平時からパソコンの使用時間の記録を労働時間管理の資料として活用していなかったにもかかわらず,紛争が生じた場面でのみ防御的にログを取得する場合には,前記ガイドラインが求める平時の労働時間把握体制の不備そのものが,安全配慮義務違反の判断において不利な事情として評価される可能性がある。

3 情報漏えい・営業秘密調査における秘密管理性との関係

営業秘密の不正取得・使用・開示は,不正競争防止法2条1項4号から10号までに定める不正競争に該当し得る。同法上の保護を受けるには,当該情報が秘密として管理されていること(秘密管理性),事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)及び公然と知られていないこと(非公知性)の三要件を満たす必要がある。経済産業省「営業秘密管理指針」(最終改訂令和7年3月31日)は,秘密管理性を担保する措置の例としてID・パスワードによるアクセス制限等を挙げる一方,「不正利用・不正取得のリスクが顕在化している場合には,追加的に,人事異動・退職毎のパスワード変更,メーラーの設定変更による私用メールへの転送制限,物理的にUSBやスマートフォンを接続できないようにすること等によって,秘密管理意思の明示がより確固としたものになることが想定される」が,「通常の状況においては,これらの措置は,情報漏えい対策上有効であるとしても,秘密管理性を充足するための必須のものではない」とする。すなわち,USB接続を制限していなかったこと自体は,秘密管理性を直ちに否定する事情にはならない。

もっとも,同じ指針は,情報が生成AIの提供事業者のような第三者へ渡る場合には秘密管理性が否定される場合もあり得るとしており,私用の端末や個人アカウントからの利用が常態化している状態は別途の評価を受ける。従業員が会社の把握しないまま生成AIを業務に用いるいわゆるシャドーAIについて,秘密管理性を否定した裁判例と肯定した裁判例の分かれ目は,別稿「シャドーAIの問題点――営業秘密,個人情報保護法及び懲戒処分をめぐる法的枠組み」で整理している。

情報漏えいが発覚した後の対応として,フォレンジック調査を実施すること自体が,不正競争行為による損害の一部として賠償請求の対象になり得ることを示す近時の裁判例がある。知的財産高等裁判所第2部令和8年6月29日判決(令和8年(ネ)第10004号)は,元従業員が社内資料を報道機関へ提供した行為が不正競争防止法2条1項4号,5号及び7号の不正競争に該当すると認めた事案において,原告が「事実を解明するため,フォレンジック調査等を実施し」不正競争行為を特定するに至ったとの事実認定を前提に,フォレンジック調査費用の一部を不正競争行為と相当因果関係のある損害と認めた。被告側は,フォレンジック調査の実施が見せしめにすぎないと主張したが,同判決はこれを排斥している。この判断は,フォレンジック調査の実施自体が事後的な争点となり得ること,そして相当な範囲の調査費用は損害として回収し得ることの双方を示すものである。なお,デジタルフォレンジックの実施自体が裁判上言及された事案として,知的財産高等裁判所平成27年12月24日判決(平成27年(ネ)第10046号)もある。同事案は,未公表原稿等の持ち出しの営業秘密該当性が争われたもので,元従業員側が,会社側のデジタルフォレンジックを含む網羅的な証拠収集にもかかわらず特定の報告書だけ提出を控えたのは不自然であると主張した事案である。

4 内部通報・ハラスメント調査における調査手法の相当性

公益通報者保護法11条は,事業者に対し,公益通報対応業務従事者を定める義務(1項)のほか,「公益通報の内容の活用により…適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置」をとる義務(2項)を課す。従業員数300人以下の事業者については努力義務にとどまる(同条3項)。同法自体は,調査の具体的な手法までは規定していない。消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針の解説」(令和3年10月)は,調査は「公益通報者の意向に反して調査を行うことも原則として可能」としつつ,通報者を特定させる事項の伝達範囲は「必要性の高い調査が実施できない等のやむを得ない場合」に限り必要最小限に限定すべきものとしている。公益通報者保護制度の全体像については,別稿「公益通報制度に関するメモ書き」も参照されたい。

日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年7月15日策定,同年12月17日改訂)は,第三者委員会が決定する調査手法について,「第三者委員会設置の目的を達成するために必要十分なものでなければならない」とし,「デジタル調査の必要性を認識し,必要に応じてデジタル調査の専門家に調査への参加を求めるべきである」と定める。同ガイドラインは,その全部又は一部が内部調査委員会にも準用されることが期待される旨を付言しており,内部通報を端緒とする社内調査一般においても,調査手法の選択が目的達成に必要十分な範囲にとどまるべきという考え方が妥当する。他方,厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)は,ハラスメント事案の事実確認の方法として,相談者及び行為者双方からの聴取並びに事実に不一致がある場合の第三者からの聴取を挙げるにとどまり,端末調査への言及はない。同指針は,相談者・行為者等に関する情報がプライバシーに属するものであることを前提に,プライバシー保護のために必要な措置を講ずることを求めている。

5 退職時のPC監査

退職予定者又は退職者が使用していたPCについて,機密情報の持ち出しの有無を確認するためにUSB型フォレンジックツールを用いることも想定される。会社貸与のPCであれば,第2の1及び2で述べたモニタリングの要件,すなわち就業規則等への明記及び個人情報保護委員会Q&AのQ5-7が示す4要件が及ぶ。これに対し,私物端末に会社データが保存されている場合,私物端末そのものへの調査協力を求める法的根拠は必ずしも明確でなく,実務上は対象者本人から具体的な同意を得ることが望ましいと指摘されている。

第4 証拠としての技術的留意点

USB型フォレンジックツールを用いて取得した記録を紛争における証拠として用いる場合には,取得手続の記録化が重要になる。第3の1で述べた懲戒・解雇の場面及び第3の2で述べた未払残業代・労災の場面のいずれにおいても,取得したログの証拠価値は,取得の日時,取得者,取得方法及び改ざんの有無を裏付ける記録(いわゆるチェーン・オブ・カストディ)が整っているかによって左右され得る。取得手続が不透明であれば,相手方から改ざんの可能性を指摘され,証拠としての評価を減殺されるおそれがある。訴訟の相手方が調査結果の開示を求めてくる場面における文書提出命令の要件については,別稿「文書提出命令」を参照されたい。

第3の3で述べたニデック株式会社事件の判示が示すとおり,フォレンジック調査の実施自体が事後的に争点化し得るため,調査を実施する目的,範囲及び手法を記録に残しておくことは,調査費用を損害として主張する場面においても,調査の相当性を裏付ける資料としても有用である。

第5 現在の法改正・改訂動向

公益通報者保護法は,改正法(施行日令和8年12月1日)により内容が見直される予定である。これに伴い,消費者庁の指針及び指針の解説についても令和8年3月31日付けの改正版が既に公表されている。調査手法に関する記載に変更があるかどうかは,本記事の執筆時点では確認できていない。

不正競争防止法は,令和5年の改正(施行日令和6年4月1日)により,限定提供データの保護対象に秘密管理データを含む形での拡充が図られた。これを受けて,経済産業省の営業秘密管理指針も令和7年3月31日に改訂されている。テレワークの普及及びクラウドによるデータ管理の進展を踏まえた実務対応が,現在の課題として位置付けられている。

出典・参考資料1 法令

①公益通報者保護法(平成16年法律第122号)11条・12条・15条・16条(e-Gov法令検索)
②不正競争防止法(平成5年法律第47号)2条1項4号~10号・21条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

①知的財産高等裁判所第2部令和8年6月29日判決(令和8年(ネ)第10004号,損害賠償請求控訴事件,裁判所ウェブサイト)
②知的財産高等裁判所平成27年12月24日判決(平成27年(ネ)第10046号,損害賠償等請求控訴事件,裁判所ウェブサイト)
③最高裁判所第二小法廷昭和43年8月2日判決(昭和42年(オ)第740号,解雇無効確認等請求事件,民集22巻8号1603頁,裁判所ウェブサイト)

3 公的資料

①個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q5-7(個人情報保護委員会)
②個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(個人情報保護委員会)
③厚生労働省「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平成16年厚生労働省告示第259号,平成24年厚生労働省告示第357号による全部改正,平成27年厚生労働省告示第454号による一部改正。平成29年5月30日廃止)
④厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)
⑤厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)
⑥消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針の解説」(令和3年10月)
⑦経済産業省「営業秘密管理指針」(最終改訂令和7年3月31日)
⑧日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年7月15日策定,2010年12月17日改訂)

4 文献

①「企業における個人情報・プライバシー情報の利活用と管理」(青林書院,平成30年)382頁~385頁

5 ウェブ資料

①AOS Fast Forensics製品ページ(AIデータ社)
②高橋郁夫「会社のデータを保存した私物のパソコン,スマートフォン(電子端末)を調査するうえでの考え方」ビジネスローヤーズ(2020年3月18日)

大腿骨骨折の障害者手帳と障害年金――「3級」の違いと人工骨頭の認定基準(AI作成)

第1 「3級」は制度ごとに意味が異なる

1 結論
2 4制度の比較

第2 身体障害者手帳の認定基準

1 手帳3級は一下肢全体の機能全廃である
2 股関節一関節の障害は4級・5級・7級で判定する
3 人工骨頭を一律4級とする取扱いは平成26年に改められた

第3 障害年金の認定基準

1 障害基礎年金には3級がない
2 人工骨頭・人工関節は障害厚生年金3級となる
3 人工骨頭以外の機能障害・偽関節も別に評価する

第4 申請前に確認する時期と資料

1 身体障害者手帳は術後経過が安定してから申請する
2 障害年金は初診日から順に確認する

(1) 初診日と保険料納付要件
(2) 診断書・初診日の証明・申立書
(3) 交通事故では第三者行為の書類も必要となる

第5 よくある誤解

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令和8年4月施行の改正女性活躍推進法――情報公表義務,算定方法及びえるぼしプラス(AI作成)

第1 この記事が扱う改正内容

1 令和8年4月施行部分の中心

2 法改正の背景となる数値

第2 公布日,令和8年4月及び同年10月の施行事項

1 施行日は一つではないこと

2 法の有効期限

第3 企業規模別の情報公表義務

1 301人以上と101人以上300人以下の違い

2 「常時雇用する労働者」の意味

3 最初の公表時期

4 公表場所と更新

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令和8年7月の障害者法定雇用率2.7%への引上げ―37.5人基準,算定方法及び企業の対応(AI作成)

第1 令和8年7月に変わった制度1 令和8年7月は法律本体の新たな施行ではないこと2 法定雇用率と対象事業主の変更3 除外率は令和7年4月に引き下げられていること第2 常用労働者と障害者の算定方法1 分母となる労働者数2 分子となる障害者数3 法定雇用障害者数の計算例第3 雇用状況報告と障害者雇用納付金1 令和8年6月1日報告は2.5%で判定すること2 令和8年度の納付金は月を分けて計算すること3 未達成に対する行政上の履行確保第4 雇用率算定と差別禁止・合理的配慮の違い1 雇用率算定の対象者は比較的狭いこと2 合理的配慮は全ての事業主に課されること3 職務の剝奪・変更が争われた裁判例第5 令和8年7月以後に企業が確認すべき事項第6 雇用状況の到達点と今後の制度論1 令和7年6月1日現在の雇用状況2 数量達成と雇用の質出典・参考資料1 法令・指針2 裁判例3 公的資料・統計
第1 令和8年7月に変わった制度
1 令和8年7月は法律本体の新たな施行ではないこと

令和8年7月1日,民間企業の障害者法定雇用率は2.5%から2.7%へ引き上げられ,障害者を1人以上雇用すべき事業主の範囲は,算定基礎となる労働者40.0人以上から37.5人以上へ拡大した。本記事は,この変更の法形式,対象人数の算定,令和8年度の報告・納付金及び雇用率義務とは別に存在する合理的配慮義務を説明するものである。

一般に「令和8年7月施行の改正障害者雇用促進法」と説明されることがあるが,厳密には,令和8年7月に法律本体の主要規定が新たに施行されたものではない。障害者雇用促進法43条2項を受けた同法施行令9条の本則は2.7%であり,令和5年政令第44号附則が令和8年6月30日まで2.5%に読み替えていたところ,その経過措置が終了したものである。

2 法定雇用率と対象事業主の変更

令和8年7月1日の変更は次のとおりである。民間企業の37.5人基準は単純な在籍頭数ではなく,週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者を0.5人とするなど,法令所定の方法で算定した労働者数によって判定する。

区分
令和8年6月30日まで
令和8年7月1日以後

民間企業
2.5%
2.7%

国及び地方公共団体等
2.8%
3.0%

都道府県等の教育委員会
2.7%
2.9%

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令和8年10月1日施行のカスハラ対策義務化―全事業主が整える10項目(AI作成)

第1 令和8年10月1日に何が変わるか

1 全事業主に雇用管理上の措置義務が生じる
2 令和8年10月1日以前も使用者の責任は存在する
3 統計からみる施行対応の必要性

第2 法律上のカスハラを判定する3要件

1 3要件の全てを満たす必要がある
2 要求内容と要求手段を分けて評価する
3 就業環境が害されたかは平均的な労働者を基準にする

第3 事業主が整えるべき10項目

1 方針,判断基準及び研修
2 相談,事実確認及び被害者保護
3 再発防止,悪質事案及び相談者保護

第4 現場対応の6段階と正当な苦情との線引き

1 初動から外部対応までの6段階
2 顧客の権利及び個別業法との調整

第5 取引先,公務部門及びフリーランス

1 自社が加害側にならないための責務
2 公務部門には別の履行確保もある
3 フリーランスは直接の保護対象とは限らない

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令和8年4月施行の在職老齢年金改正―65万円基準の計算方法と注意点(AI作成)

第1 改正の結論

1 令和8年度は51万円から65万円へ引上げ
2 法律の62万円と実際の65万円は矛盾しない

第2 誰のどの年金が調整されるか

1 60歳以上の厚生年金加入者と70歳以上被用者
2 支給停止の対象に含まれない部分

第3 令和8年度の計算方法

1 基本月額と総報酬月額相当額
2 計算式と具体例
3 65万円は収入が急減する「壁」ではない

第4 給与,賞与,転職及び退職の注意点

1 賞与は支給月だけでなく直近1年間に影響する
2 変更月,退職改定及び在職定時改定

第5 繰下げ受給,高年齢雇用継続給付及び税制

1 繰下げ受給では支給停止相当額が増額の基礎から外れる
2 65歳未満の雇用保険調整と令和9年分からの所得税

第6 改正の政策目的,効果及び裁判例の射程

(続きを読む...)令和8年4月施行の在職老齢年金改正―65万円基準の計算方法と注意点(AI作成)

令和時代の社会保険の適用拡大―短時間労働者の加入要件と改正時期(AI作成)

目次

第1 この記事が扱う制度と時点

1 「社会保険」の範囲

2 制度の状態を分けて読む必要性

第2 現行制度による加入判定

1 適用事業所であること

2 最初に確認する4分の3基準

3 短時間労働者の四つの要件

4 企業規模の数え方

5 契約と勤務実績が異なる場合

第3 令和時代の適用拡大

1 令和2年改正による二段階の拡大

2 令和7年改正法の施行予定表

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業務内容が変わらない定年後再雇用社員の賃金水準の目安(AI作成)

第1 この記事が扱う対象と結論

1 対象と基準時
2 何%なら適法という基準はない
3 本記事における実務上の目安
4 市場相場と法的評価は別である

第2 現行法の判断枠組み

1 高年齢者雇用安定法は賃金率を定めていない
2 短時間・有期雇用労働法8条の均衡待遇
3 同法9条の均等待遇
4 説明義務と令和8年改正ガイドライン

第3 「業務内容が同じ」を分解する方法

1 作業だけでなく責任と権限を比べる
2 変更範囲は規程と実績の双方を見る
3 基本給を一つの性質に決めつけない

第4 主要裁判例が示すもの

1 長澤運輸事件――76%から80%は一般基準ではない
2 名古屋自動車学校事件――60%基準の否定
3 低い割合を認めた裁判例の読み方

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従業員を使用しない弁護士が企業の訴訟代理をする場合のフリーランス法(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 対象と基準時
2 結論
3 適用判断の境界

第2 対象となる弁護士

1 「従業員を使用」の基準
2 共同事務所と弁護士法人
3 判断時点と確認記録

第3 企業に課される義務

1 義務の全体像
2 取引条件の明示
3 支払期日
4 長期委託の追加義務

第4 中部電力に対する勧告

1 訴訟代理人契約を含む直接の行政執行
2 勧告から分かる明示の不備
3 勧告の射程

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退職時の定期代精算と最終給与からの控除(AI作成)

第1 結論と問題の分け方

1 定期代は当然には控除できない

2 実務上最も安全な方法

第2 返還義務の有無

1 通勤手当も賃金になり得る

2 支給方法によって結論が異なる

(1) 実費補填型

(2) 定額・固定給型

(3) 会社購入・現物交付型

(4) 複数月分の一括現金支給型

3 退職日と最終出勤日は区別する

4 規程がない場合と不当利得

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定年再雇用社員・嘱託社員に昇給・家族手当・住宅手当を正社員と同様に行う必要性(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討する待遇と労働者の区分
2 同一労働同一賃金の規制の全体像と本記事の位置付け

第2 高年齢者雇用確保措置と待遇の適正化は別の規制体系である
第3 家族手当・住宅手当の不支給が許容された事例――長澤運輸事件

1 事案と最高裁判決の結論
2 住宅手当・家族手当に関する判示

第4 家族手当に類する手当の支給が必要とされた事例――日本郵便(大阪)事件

1 事案と最高裁判決の結論
2 扶養手当に関する判示

第5 家族手当・住宅手当の支給が必要となる場合の判断基準
第6 昇給を正社員と同様に行う必要性――名古屋自動車学校事件

1 最高裁判所令和5年7月20日判決が示した分析の視点
2 差戻控訴審・名古屋高等裁判所令和8年2月26日判決の認定
3 昇給の必要性を検討する際の着眼点

第7 令和8年10月1日施行の改正ガイドラインへの反映

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特定技能1号に退職手当を支給しないことの法的リスク――同一労働同一賃金ガイドラインの改正と報酬同等性要件(AI作成)

第1 この記事の対象
第2 同一労働同一賃金ガイドラインにおける退職手当規定の新設

1 現行のガイドラインは退職手当の判断基準を示していない
2 令和8年10月1日施行の改正で退職手当の項目が新設される
3 パートタイマーへの退職手当支給は,この規律が想定する対応の一例である

第3 特定技能1号の報酬に関する入管法上の規律

1 特定技能雇用契約における報酬同等性の要件
2 「報酬」の範囲と退職手当の位置付け
3 比較対象となる「日本人労働者」の範囲

第4 パートタイマーには支給し特定技能1号には支給しない場合の検討

1 特定技能1号自身とパート有期法との関係
2 「その他の事情」の明確化が与える影響
3 入管法上の報酬同等性要件との関係
4 労働基準法3条との関係

第5 実務上の対応

1 待遇検討票に特定技能外国人を含める
2 報酬に関する説明書の作成における留意点

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パートタイマーが正社員に転換する際の退職手当の取扱い――勤続年数の通算義務と同一労働同一賃金ガイドラインの改正(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 検討の対象と時点
2 「正社員転換」と「無期転換」の違い

第2 通常の労働者への転換を定める規定

1 パート・有期法13条
2 転換推進措置の性質

第3 退職手当と不合理な待遇差の禁止

1 パート・有期法8条
2 メトロコマース事件最高裁判決

第4 転換時の勤続年数の通算

1 法律上の一律の義務はない
2 就業規則における設計例
3 インターネット上の誤った説明

第5 税務上の勤続年数の計算との違い

1 退職所得控除額の計算原則

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労災保険の給付内容―給付の種類,金額及び令和8年改正(AI作成)

第1 この記事の対象と労災保険給付の全体像

1 この記事が扱う範囲
2 給付の4系列と3つの名称体系

第2 給付額の土台となる給付基礎日額

1 原則と複数事業労働者の合算
2 最低保障額と令和8年8月1日からの改定
3 スライド制と年齢階層別の最低・最高限度額

第3 個別の給付の内容と額

1 療養(補償)等給付
2 休業(補償)等給付
3 傷病(補償)等年金
4 障害(補償)等給付
5 遺族(補償)等給付
6 葬祭料等,介護(補償)等給付及び二次健康診断等給付
7 前払一時金及び差額一時金

第4 特別支給金及び社会復帰促進等事業の給付

1 特別支給金は保険給付ではない
2 社会復帰促進等事業による援護費等

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地震後に私物を取りに職場へ戻った際のガス爆発は労災か(AI作成)

第1 結論と記事の対象
第2 業務災害の判断枠組み

1 業務遂行性と業務起因性
2 避難と再入場は分けて考える
3 再入場禁止マニュアル違反

第3 私物の携帯電話を取りに戻った目的の評価

1 純粋な私物回収は否定方向である
2 私物であっても業務上必要な場合がある
3 店舗の鍵返却等との混合目的

第4 地震とガス爆発の位置付け

1 地震であることは一律の除外理由ではない
2 施設内にいたことだけでは足りない場合

第5 関連裁判例・裁決例とその射程

1 主要な裁判例
2 厚生労働省公開裁決例の全件確認

第6 個別事案で優先して確認する証拠

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令和8年12月1日施行の改正公益通報者保護法に基づき,民間企業で対応が必要な事項(AI作成)

目次

第1 施行日と企業対応の全体像

1 令和8年12月1日施行
2 法定の公益通報と社内通報制度の範囲
3 301人以上と300人以下の違い
4 規程改定だけでは足りない理由

第2 改正法が企業実務を変える六つの点

1 フリーランス及び契約終了後1年以内の者の追加
2 内部公益通報対応体制の周知
3 通報妨害の禁止
4 通報者探索の禁止
5 通報後1年以内の解雇・懲戒に関する推定
6 刑事罰及び行政措置の強化

第3 施行までに民間企業が実施する事項

1 適用判定と責任体制の確定
2 規程・契約・雛形の横断改定
3 窓口・周知・通知
4 従事者指定と情報管理
5 受付・調査手順
6 人事・契約判断の報復防止
7 記録・評価・行政調査への備え

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東弁リブラ2026年7・8月号掲載の竹内浩史 元裁判官寄稿の「プロ野球界を救った東京高裁決定」を踏まえた東京高裁平成16年9月8日決定の論評(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と射程
第2 本決定の概要と事案

1 事案と手続の経緯
2 決定の結論・合議体・掲載

第3 本決定の判断構造

1 被保全権利——団体交渉権と義務的団交事項
2 保全の必要性——「団交に応じていた」ことと将来の見通し

第4 寄稿の叙述に対する論評

1 労働法の観点——義務的団交事項の説明と使用者性
2 民事保全の観点——理由中で権利を認めつつ棄却する手法
3 スポーツ法の観点——当事者適格と「救った」という評価
4 裁判の独立と法曹倫理の観点

第5 実務への示唆
出典

第1 本記事の対象と射程
本記事は,東弁リブラ2026年7・8月号掲載の寄稿「プロ野球界を救った東京高裁決定」(寄稿者は39期の竹内浩史 元裁判官。以下「本寄稿」という。)を踏まえ,そこで取り上げられた東京高裁平成16年9月8日決定(平成16年(ラ)第1479号)[裁1]を,決定文に即して検討し,あわせて本寄稿の叙述を論評するものである。本決定は,団体交渉を求め得る地位を仮に定めることを求めた仮処分の抗告審であり,集団的労働法(団体交渉・不当労働行為)と民事保全とが交錯する。

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残業代請求訴訟における仮執行宣言に基づく仮払い後の取扱い

目次
第1 仮払い日以降の遅延損害金は発生しないこと
1 「解除条件付きの弁済」という考え方
2 請求異議訴訟における取扱い
第2 源泉徴収のタイミングは「仮払い日」であること
1 所得の認識時期に関する最高裁の考え方
2 民事上の効力発生日との関係
3 従業員の逆転敗訴が確定した場合の処理
第3 源泉徴収の対象
1 総論
2 残業代の元本(給与所得)
3 遅延損害金(雑所得)
4 付加金(一時所得)
第4 未払残業代を「賞与」として源泉徴収することについて
1 原則的な取扱い
2 所得の帰属年分と賞与該当性の検討
3 従業員との関係で留意点
4 源泉徴収税額に関する合意が成立しなかった場合の対応
第5 賞与としての源泉徴収の方法
1 計算の前提
2 具体的な計算ステップ(前月の給与支払がない場合)
3 具体的な計算例
第6 その他

* 本ブログ記事はAIの出力内容をベースとしたものです。

第1 仮払い日以降の遅延損害金は発生しないこと

結論として、仮執行宣言付判決に基づく支払(以下「仮払い」という。)が元本に充当される以降、その充当された元本に対する仮払い日以降の遅延損害金は発生しないと解される。

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高年齢者雇用安定法に関するメモ書き

目次
1 総論
2 定年引き上げの経緯
3 高年齢雇用継続給付の最大給付率
4 継続雇用
5 役職定年
6 関連記事その他

1 総論
(1) 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和46年5月25日法律第68号)は,昭和61年4月30日法律第43号によって,「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という名前に変わりました。
(2) HRドクターHPに「高齢者の雇用延長|継続雇用制度における再雇用制度と勤務延長制度の違いとは?」が載っています。

2 定年引き上げの経緯
・ 定年引き上げの経緯は以下のとおりです。
① 昭和61年10月1日に60歳定年が努力義務となりました。
② 平成2年10月1日に65歳までの再雇用が努力義務となりました。
③ 平成10年4月1日に60歳定年が義務となりました。
④ 平成12年10月1日に65歳までの高年齢者雇用確保措置が努力義務となりました。
⑤ 平成18年4月1日に高年齢者雇用確保措置が義務化となりました(当初は62歳までであり,平成25年4月以降は65歳までとなりました。)。
⑥ 平成25年4月1日に継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止されました。ただし,平成24年度までに労使協定で対象者の基準を定めていた事業主には,老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の者について基準を用いる経過措置がありましたが,令和7年3月31日をもって終了しました(厚生労働省の「高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了(2025年3月31日)」参照)。
⑦ 令和3年4月1日に70歳までの高年齢者就業確保措置が努力義務となりました(厚生労働省HPの「シニア世代の“仕事力”を引き出す―改正高年齢者雇用安定法が4月から施行―」参照)。

3 高年齢雇用継続給付の最大給付率

・ 高年齢雇用継続給付は,60歳到達時等に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働く,60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者を対象とする給付です。支給額は,賃金の減少額ではなく,各月に支払われた賃金額に所定の支給率を乗じて計算します(雇用保険法61条1項・5項,厚生労働省の「Q&A~高年齢雇用継続給付~」Q1・Q8参照)。

令和7年4月1日以降に60歳に達した日を迎える人については,最大支給率が10%となりました。ただし,60歳到達時に被保険者であった期間が5年未満の場合は,その期間が5年を満たすこととなった日を基準とします。この基準日が同年3月31日以前の人については,従前の最大15%が引き続き適用されます。実際の支給率・支給額は賃金の低下率や支給限度額等によって異なります(厚生労働省の「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」PDF1頁参照)。

4 継続雇用
(1) 最高裁平成24年11月29日判決は,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に基づく再雇用の制度を導入した事業主とその従業員との間に,当該制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係の存続が認められた事例です。
(2) 福岡高裁平成29年9月7日判決(判例秘書掲載)は,高年齢者雇用安定法の趣旨に反する事業主の行為,例えば,再雇用について,極めて不合理であって,労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し,到底受け入れがたいような労働条件を提示する行為は,継続雇用制度の導入の趣旨に反した違法性を有するものであり,事業主の負う高年齢者雇用確保措置を講じる義務の反射的効果として65歳まで安定的雇用を享受できるという法的保護に値する利益を侵害する不法行為となり得るとされた例です。
    結論として,時給が半分以下となり,月額賃金が約4分の1となったことについて,100万円の慰謝料の支払を命じました。

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有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルール(AI作成)

第1 この記事が扱う有期労働契約1 契約期間の定めがある労働契約2 1回の契約期間の上限第2 締結時及び更新時に明示される事項1 令和6年4月から追加された明示事項2 更新上限を新設又は短縮する場合3 現行の雇止め基準第3 契約期間途中の解雇及び退職1 使用者による期間途中の解雇2 労働者による期間途中の退職第4 無期転換申込権1 発生要件及び申込みができる期間2 申込みの効果及び無期転換後の労働条件3 無契約期間による通算の中断4 申込権の事前放棄及び特例第5 雇止めを制限する労働契約法19条1 雇止め法理の適用要件2 更新期待の合理性を判断する事情3 更新上限及び不更新条項4 雇止め理由とは別の禁止規定第6 主要裁判例が示す区別1 雇止め法理の形成と法定化2 有期契約の更新と無期契約への移行3 期間途中の解雇と期間満了第7 待遇及び実務上の確認事項1 有期契約労働者の待遇2 使用者及び労働者が確認する資料第8 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例3 厚生労働省資料第1 この記事が扱う有期労働契約1 契約期間の定めがある労働契約

有期労働契約とは,契約の終了日が定められた労働契約である。「契約社員」「パート」「アルバイト」「嘱託」等の呼称ではなく,労働契約に期間の定めがあるかによって判断する。派遣労働者の場合,原則として労働契約上の使用者は派遣元であるため,派遣先との労働者派遣契約の終了と,派遣元との有期労働契約の終了を区別する必要がある。

本記事は,民間企業等における有期労働契約について,契約期間の上限,令和6年4月以降の労働条件明示,期間途中の解雇・退職,無期転換及び雇止めの順に,令和8年8月15日現在の制度を整理するものである。個別事案では契約書,就業規則,更新経過及び使用者の説明によって結論が変わるため,本記事は特定の事案に対する法的助言を目的とするものではない。

2 1回の契約期間の上限

労働基準法14条により,1回の有期労働契約の期間は原則として3年を超えることができない。高度の専門的知識等を有する労働者及び満60歳以上の労働者については5年までとすることができ,一定の事業の完了に必要な期間を定める契約については,その事業の完了に必要な期間を定めることができる。

この上限は1回の契約期間に関するものであり,更新後を含む通算契約期間の一般的上限ではない。1回の契約期間,更新回数又は通算契約期間について使用者が設ける更新上限,労働契約法18条の通算5年ルールは,それぞれ別の制度である。

第2 締結時及び更新時に明示される事項1 令和6年4月から追加された明示事項

労働基準法15条及び労働基準法施行規則5条により,使用者は,労働契約の締結時に賃金,労働時間,契約期間その他の労働条件を明示しなければならない。令和6年4月1日以降は,全ての労働者について,就業場所及び業務の「変更の範囲」を締結時と有期労働契約の更新時に明示する必要がある。

有期労働契約については,更新上限,すなわち通算契約期間又は更新回数の上限の有無及び内容を,契約締結時と更新時ごとに明示する必要がある。無期転換申込権が発生する契約の更新時には,無期転換を申し込むことができる旨及び無期転換後の労働条件を明示しなければならない。申込権を行使しない意向を労働者が示した場合も,申込権が発生する更新時ごとの明示が必要である。具体的な記載例は,厚生労働省の令和6年4月からの労働条件明示ルール変更案内及び改正労働基準法施行規則等に係るQ&Aで確認できる。

2 更新上限を新設又は短縮する場合

契約締結後,契約の変更又は更新に際して更新上限を新設し,又は従前の上限を短縮しようとする場合,使用者は,あらかじめその理由を労働者に説明しなければならない。説明方法は法令上限定されていないが,説明した内容及び時期を後から確認できるよう,書面等の記録を残すことが紛争防止に資する。

更新上限を労働条件通知書に記載しなかったことだけから,直ちに私法上の上限が存在しないという結論が生じるとは限らない。他方,明示又は説明を欠いたことは,労働基準法上の問題となるほか,更新上限に関する合意の有無や,後述する更新期待の合理性を判断する事情になり得る。

3 現行の雇止め基準

厚生労働大臣は労働基準法14条2項に基づき,有期労働契約の締結,更新,雇止め等に関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)を定めている。令和6年4月1日以降の現行基準は,次の5項目で構成される。

①契約締結後に更新上限を新設し,又は短縮する場合の事前の理由説明,②3回以上更新した者又は雇入れから1年を超えて継続勤務した者に対する原則30日前までの雇止め予告,③労働者が請求した場合の雇止め理由証明書の遅滞ない交付,④1回以上更新し,かつ,1年を超えて継続勤務した者を更新する場合に契約期間をできる限り長くする努力義務,⑤無期転換後の労働条件を定める際に均衡を考慮した事項について説明する努力義務である。

30日前予告の対象からは,あらかじめ当該有期労働契約を更新しない旨が明示されているものが除かれる。雇止め理由証明書には,単なる「契約期間満了」ではなく,担当業務の終了,事業縮小,能力・勤務成績等,更新しなかった実質的な理由を記載することが求められる。これらの手続に違反したことだけで雇止めが当然に無効となるわけではないが,労働契約法19条による雇止めの審査とは別に履行すべき基準である。

第3 契約期間途中の解雇及び退職1 使用者による期間途中の解雇

労働契約法17条1項は,使用者が有期労働契約の期間途中に労働者を解雇するためには「やむを得ない事由」が必要であると定める。この要件は,期間の定めのない労働契約における労働契約法16条の解雇権濫用法理よりも厳格であり,使用者は,残りの契約期間を含めて雇用を継続することが困難な事情を具体的に示す必要がある。

同条2項は,使用者に対し,労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定め,その契約を反復更新しないよう配慮することも求めている。有期契約であれば終了させやすいとは限らず,期間途中の解雇と期間満了時の雇止めでは要件が異なる。

2 労働者による期間途中の退職

労働者側が期間途中に退職する場合は,労働契約法17条1項ではなく,民法628条が基本となる。同条は,当事者にやむを得ない事由がある場合,直ちに契約を解除できるとする一方,その事由が一方当事者の過失によって生じた場合の損害賠償も定めている。

もっとも,一定の1年を超える有期労働契約については,労働基準法137条により,契約開始から1年を経過した後,労働者は使用者に申し出ることによっていつでも退職できる。一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約及び労働基準法14条1項各号に該当する契約は,この取扱いから除かれる。

第4 無期転換申込権1 発生要件及び申込みができる期間

労働契約法18条により,同一の使用者との間で二つ以上の有期労働契約が締結され,契約期間を通算して5年を超える場合,労働者は期間の定めのない労働契約の締結を申し込むことができる。通算対象となるのは,平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする有期労働契約である。

申込権は,通算契約期間が5年を超えることになる契約の初日から発生する。例えば,1年契約を5回更新して6年目の契約を締結する場合,6年目の契約の初日から満了日まで申込みができる。5年を経過した日の翌日に自動的に無期契約へ変わる制度ではなく,労働者の申込みが必要である。申込みをしないままさらに更新した場合も,その後の更新ごとに申込権が発生する。

「同一の使用者」は原則として労働契約の当事者である法人又は個人事業主を単位として判断する。1回限りの完成事業型契約が5年を超えても,「二以上の有期労働契約」という要件を満たさないため,同条による申込権は発生しない。この点は厚生労働省の労働契約法施行通達にも明記されている。

2 申込みの効果及び無期転換後の労働条件

労働者が無期転換を申し込むと,使用者はその申込みを承諾したものとみなされ,拒否することはできない。ただし,申込み時の有期労働契約が直ちに無期契約へ変わるのではなく,その契約の満了日の翌日から無期労働契約が始まる。口頭による申込みが一律に排除されているわけではないが,申込日及び内容を確認できる書面又は電子メール等によることが望ましい。

無期転換後の労働条件は,契約期間を除き,原則として申込み時の有期労働契約と同一である。就業規則,労働協約又は個別合意に別段の定めがある場合はその定めが問題となるが,無期転換は当然に正社員化,昇給又は職務・勤務地限定の解除を意味しない。反対に,無期転換を理由として不合理に不利益な条件を設けることが当然に許されるわけでもなく,現行の雇止め基準5条は,他の労働者との均衡を考慮した事項について説明する努力義務を定めている。

3 無契約期間による通算の中断

有期労働契約の間に一定の無契約期間があると,その前の契約期間が通算されないことがある。直前までの通算契約期間が1年以上である場合は6か月以上の無契約期間が必要であり,1年未満の場合は次のとおりである。

直前までの通算契約期間通算を中断する無契約期間2か月以下1か月以上2か月超4か月以下2か月以上4か月超6か月以下3か月以上6か月超8か月以下4か月以上8か月超10か月以下5か月以上10か月超6か月以上

休職,育児休業その他の在籍したままの不就労期間は,労働契約が終了していないため,通常は無契約期間に当たらない。クーリング期間の計算例は,厚生労働省の無期転換ルールハンドブック2025で確認できる。

4 申込権の事前放棄及び特例

厚生労働省の労働契約法施行通達は,無期転換申込権が発生する前に,申込権を行使しないことを更新の条件とするなど,将来の申込権を放棄させる意思表示について,労働契約法18条の趣旨を没却し,公序良俗に反して無効と解されるとしている。申込権が発生した後の放棄についても,権利内容及び不利益を理解した自由な意思に基づくかを個別に確認する必要があり,定型書式への署名だけで一律に判断することはできない。

有期雇用特別措置法に基づく認定計画の対象となる高度専門職及び定年後継続雇用者には,通算契約期間の算定に関する特例がある。高度専門職については年収1,075万円以上等の要件があり,特定有期業務の期間中,最長10年まで無期転換申込権が発生しない。定年後継続雇用者についても,第二種計画の認定を受けた事業主等に定年後引き続いて雇用される期間が対象である。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2又は大学教員任期法7条の対象となる研究者・教員等については,労働契約法18条1項の「5年」が「10年」と読み替えられるため,対象となる業務,大学等との関係及び任期に関する定めを個別に確認する必要がある。制度の対象と申請手続は,厚生労働省の無期転換ルール及び有期雇用特別措置法の案内で確認できる。

第5 雇止めを制限する労働契約法19条1 雇止め法理の適用要件

有期労働契約は原則として期間満了により終了するが,労働契約法19条は,一定の場合に使用者の雇止めを制限する。同条が対象とするのは,①過去に反復更新された契約について,雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できる場合,又は②契約期間満了時に更新されるものと労働者が期待することについて合理的な理由がある場合である。

労働者は,契約期間満了日までに更新を申し込むか,期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結を申し込む必要がある。雇止めに異議を述べ,就労継続の意思を明らかにする行為も申込みと評価され得る。これらの要件を満たし,使用者の更新拒絶に客観的に合理的な理由がなく,社会通念上相当と認められない場合,使用者は従前の有期労働契約と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなされる。その効果は有期契約の更新であり,当然に無期契約又は正社員契約が成立するわけではない。

更新時に賃金又は所定労働日数を引き下げる条件が提示された場合は,変更後の条件についての合意の成否と,従前の条件による更新申込みに対する拒絶が労働契約法19条によって制限されるかを分けて検討する必要がある。単に条件が折り合わなかったというだけで契約終了と判断せず,同条の適用要件及び申込みの有無を確認する。新しい契約書が作成されている場合も,署名の有無と併せて,従前の条件による更新を求めた時期,異議又は留保の内容,説明・交渉の経過を確認することが有用である(労働契約法8条・19条)。

定年後再雇用における更新条件の切下げと雇止めの具体例,更新前の対応については,定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるかを参照されたい。

定年後再雇用の制度については高年齢者雇用安定法に関するメモ書き,通常の労働者との待遇差については業務内容が変わらない定年後再雇用社員の賃金水準の目安も参照されたい。

2 更新期待の合理性を判断する事情

更新期待の合理性は,契約期間満了時を基準として,契約書の文言だけでなく,契約関係の全体から判断される。主な事情は,①業務が恒常的か臨時的か,②職務内容及び正社員との相違,③更新回数及び通算勤務期間,④更新手続が実質的な審査を伴っていたか又は形式化していたか,⑤採用時及び更新時の説明・言動,⑥同種労働者の更新・雇止め実績,⑦更新上限又は不更新条項の設定時期・内容・運用,⑧更新基準と実際の運用が一貫していたかである。

初回の契約でも,採用時の具体的な説明等によっては更新期待が成立する余地がある。他方,更新回数が多いことだけで労働契約法19条の適用が決まるわけではなく,業務の性質,更新審査及び契約締結時からの説明を含む総合判断となる。

3 更新上限及び不更新条項

採用時から更新上限が明確に示され,実際にも一貫して運用されている場合,上限を超える更新期待は認められにくくなる。他方,長期間の反復更新によって更新期待が形成された後に上限を新設し,労働者が不更新条項のある契約書に署名した場合も,従前の更新期待が当然に消滅するわけではない。署名しなければ直近の更新を受けられない状況,説明内容,例外運用及び労働者が雇用継続を求めた経過等を併せて検討する必要がある。

福岡地裁令和2年3月17日判決(平成30年(ワ)第1904号)は,約30年間に29回更新された契約について,平成25年以降の契約書に5年後は更新しない旨が記載されていた事案を扱った。同判決は,不更新条項のある契約書への署名だけから契約終了の明確な意思を認定せず,従前の形骸化した更新,例外を含む制度及び雇用継続を求めた経過等を踏まえて合理的な更新期待を認め,一般的な人件費削減等の理由では雇止めの合理性を肯定するには不十分であると判断した。これは個別事案の判断であり,全ての更新上限又は雇止めを無効とするものではない。

無期転換申込権の発生を避ける動機があったことだけで,更新上限又は雇止めが直ちに無効になると断定することもできない。もっとも,厚生労働省は,無期転換ルールの適用を免れる意図で申込権発生前に雇止め等を行うことは労働契約法18条の趣旨に照らして望ましくなく,従前の更新実績等によっては雇止めが許されない場合があると説明している。

4 雇止め理由とは別の禁止規定

労働契約法19条の更新期待が認められない場合でも,妊娠・出産,育児休業,介護休業又は正当な労働組合活動等を理由とする不利益取扱いが許されるわけではない。雇止めの理由が男女雇用機会均等法,育児介護休業法又は労働組合法等の禁止規定に抵触しないかは,労働契約法19条とは別に検討する必要がある。

第6 主要裁判例が示す区別1 雇止め法理の形成と法定化

最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決(昭和45年(オ)第1175号,民集28巻5号927頁)は,反復更新された有期契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態にあった事案で,雇止めに解雇法理を類推した。最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決(昭和56年(オ)第225号,裁判集民事149号209頁)は,実質的に無期契約と同視できない場合でも,更新期待に合理性があるときは雇止めが制限され得ることを示した。労働契約法19条1号及び2号は,これらの判例法理を条文化したものである。

2 有期契約の更新と無期契約への移行

最高裁平成28年12月1日第一小法廷判決(平成27年(受)第589号)は,3年の更新限度後に無期契約へ移行できる制度について,規程の内容,本人の認識,職務の性質及び無期契約へ移行しなかった者の実績等を踏まえ,当然に無期契約へ移行したとはいえないとした。有期契約が更新される期待と,期間満了後に無期契約へ移行できる期待は同一ではなく,労働契約法18条の要件又は別の合意がないまま無期契約が成立するとは限らない。

3 期間途中の解雇と期間満了

最高裁令和元年11月7日第一小法廷判決(平成30年(受)第755号)は,有期労働契約の期間途中の解雇が労働契約法17条1項に反して無効であっても,その後に契約期間が満了した場合,契約が終了したかを別途判断しなければならないとした。期間途中の解雇が無効であることから,契約期間満了後も当然に地位が継続するわけではなく,満了後については更新の合意又は労働契約法19条の要件を検討する必要がある。

第7 待遇及び実務上の確認事項1 有期契約労働者の待遇

有期契約労働者と通常の労働者との待遇差については,短時間・有期雇用労働法8条の不合理な待遇差の禁止及び9条の差別的取扱いの禁止が中心となる。旧労働契約法20条は削除されているため,現在の待遇差を同条によって説明するのは適切でない。通常の労働者への転換措置及び説明義務を含む制度の詳細は,同一労働同一賃金で整理している。

無期転換後の労働者は,契約期間の定めがなくなるため,「有期雇用労働者」ではなくなる。もっとも,週の所定労働時間が通常の労働者より短ければ短時間労働者として同法の対象となり得るほか,労働契約法,就業規則の合理性その他の規制がなくなるわけではない。

2 使用者及び労働者が確認する資料

使用者側では,①契約開始日,更新日,通算契約期間及び無契約期間を記録すること,②契約書及び労働条件通知書に更新基準・更新上限・変更の範囲を明示すること,③申込権が発生する更新時に無期転換申込機会及び転換後の労働条件を明示すること,④更新上限を新設又は短縮する前に理由を説明すること,⑤雇止め前に更新期待,禁止される理由,30日前予告及び理由証明への対応を確認することが基本となる。労働条件の一般的な明示事項は,労働基準法に関するメモ書きも参照されたい。

労働者側では,契約書,労働条件通知書,就業規則,更新通知,評価資料及び更新に関する電子メール等を保存し,更新又は無期転換を希望する場合は,申込日と内容を確認できる方法で意思を表示することが有用である。雇止め後の申込みは「遅滞なく」行う必要があり,契約満了日が迫っている場合は,行政相談又は法律相談を含む早期の確認が必要となる。

第8 出典・参考資料1 法令・告示

①e-Gov法令検索「労働基準法」14条,15条及び137条

②e-Gov法令検索「労働契約法」8条及び16条~19条

③e-Gov法令検索「民法」628条

④e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」8条,9条,13条及び14条

⑤e-Gov法令検索「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」

⑥e-Gov法令検索「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」15条の2及びe-Gov法令検索「大学の教員等の任期に関する法律」7条

⑦厚生労働省「有期労働契約の締結,更新,雇止め等に関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号,令和5年厚生労働省告示第114号による改正後)

2 裁判例

①最高裁判所第一小法廷昭和49年7月22日判決(昭和45年(オ)第1175号,民集28巻5号927頁,裁判所ウェブサイト)

②最高裁判所第一小法廷昭和61年12月4日判決(昭和56年(オ)第225号,裁判集民事149号209頁,裁判所ウェブサイト)

③最高裁判所第一小法廷平成28年12月1日判決(平成27年(受)第589号,裁判所ウェブサイト)

④最高裁判所第一小法廷令和元年11月7日判決(平成30年(受)第755号,裁判所ウェブサイト)

⑤福岡地方裁判所令和2年3月17日判決(平成30年(ワ)第1904号,裁判所ウェブサイト)

3 厚生労働省資料

①厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります」及び「令和6年4月施行の改正労働基準法施行規則等に係るQ&A」

②厚生労働省「有期契約労働者の無期転換サイト」及び「無期転換ルールハンドブック2025」

③厚生労働省「労働契約法の施行について」の一部改正について(平成30年12月28日基発1228第17号)

④厚生労働省「無期転換ルール及び有期雇用特別措置法」

労働者名簿,賃金台帳及び記録の保存

目次
1 労働者名簿
2 賃金台帳
3 記録の保存
4 関連記事その他

1 労働者名簿
(1) 使用者は,各事業場ごとに労働者名簿を各労働者について調製し、労働者の氏名,生年月日,履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければなりませんし(労働基準法107条1項),記入すべき事項に変更があった場合,遅滞なく訂正しなければなりません(労働基準法107条2項)。
(2)ア 労働基準法施行規則53条1項によれば,労働者名簿には労働者の氏名,生年月日及び履歴のほか,以下の事項を記載しなければなりません。
① 性別
② 住所
③ 従事する業務の種類
④ 雇入の年月日
⑤ 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあっては,その理由を含む。)
⑥ 死亡の年月日及びその原因
イ 常時30人未満の労働者を使用する事業においては,従事する業務の種類を記入することを要しません(労働基準法施行規則53条2項)。

2 賃金台帳
(1) 使用者は,各事業場ごとに賃金台帳を調製し,賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければなりません(労働基準法108条)。
(2)ア 労働基準法施行規則54条1項によれば,賃金台帳には労働者各人別は以下の事項を記入しなければなりません。
① 氏名
② 性別
③ 賃金計算期間
④ 労働日数
⑤ 労働時間数
⑥ 延長した労働時間数,休日労働時間数及び深夜労働時間数
⑦ 基本給,手当その他賃金の種類ごとにその額
⑧ 労働基準法24条1項によって賃金の一部を控除した場合には,その額
イ 延長した労働時間数,休日労働時間数及び深夜労働時間数については,就業規則に基づいて算定する労働時間数をもってこれに代えることができます(労働基準法施行規則54条1項)。
(3) 賃金台帳の様式は,労働基準法施行規則55条及び様式第20号によって定められています(厚生労働省HPの「労働基準法関係主要様式」参照)。

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労働協約(AIリライト)

第1 総論
第2 労働協約の有効期間
第3 労働協約の規範的部分及び債務的部分

1 規範的部分
2 債務的部分

第4 労働協約の規範的効力の限界

1 労働組合の目的を逸脱した締結
2 既に発生した権利の遡及的処分の禁止

第5 労働協約の拡張適用

1 工場事業場単位の拡張適用(労働組合法17条)
2 拡張適用の限界
3 地域的拡張適用(労働組合法18条)

第6 ユニオン・ショップ協定
第7 就業規則と一体となった労働協約
第8 労働協約と労使協定の違い

1 趣旨・目的
2 締結主体
3 効力要件

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時間外労働,休日労働及び深夜労働並びに残業代請求

目次
第1 総論
第2 労働基準法上の労働時間の意義
第3 労働時間の管理
第4 36協定
第5 時間外労働
第6 休日労働
第7 深夜労働
第8 割増賃金の基礎となる賃金
第9 管理監督者
第10 残業代請求
第11 固定残業代
第12 歩合給と残業代
第13 関連記事その他

第1 総論
1 使用者は,労働者に時間外労働,休日労働,深夜労働を行わせた場合,法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払う必要があります(時間外労働又は休日労働につき労働基準法37条1項・労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年1月4日政令第5号),深夜労働につき労働基準法37条4項。)。
2(1) 割増賃金率は時間外労働が25%以上(1か月60時間を超える時間外労働については50%以上),休日労働が35%以上,深夜労働が25%以上です。
(2) 休日労働の割増賃金が35%となったのは平成6年4月1日です。
(3) 1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金が50%となったのは平成22年4月1日です(厚生労働省HPの「労働基準法の一部改正法が成立~平成22年4月1日から施行されます~」参照)。
3 割増賃金は,1時間当たりの賃金額×時間外労働,休日労働又は深夜労働を行わせた時間数×割増賃金率で計算されます。
4 残業時間の削減方法につき,社会保険労務士はなだ事務所HPの「ノー残業の労務管理術」が参考になります。
5(1) 平成11年3月31日までは,女性労働者については原則として,一定の時間を超える時間外労働のほか,休日労働及び深夜労働が禁止されていましたが,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成9年6月18日法律第92号)により,これらの制限が撤廃されました。
(2) やまがた労働情報HPに,「3.労働時間などに係る女性保護規定について」が載っています。

第2 労働基準法上の労働時間の意義
1 労働基準法32条の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,右の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではありません(三菱重工業長崎造船所事件に関する最高裁平成12年3月9日判決)。
2(1) 大星ビル管理事件に関する最高裁平成14年2月28日判決は,ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間が労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例です。
(2) 大林ファシリティーズ事件に関する最高裁平成19年10月19日判決はマンションの住み込み管理員が所定労働時間の前後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において,上記一定の時間が,管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例です。

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就業規則とは―記載事項・作成届出・周知・変更・懲戒の基本(AIリライト)

第1 就業規則の二つの役割

1 労働基準法上の作成・届出ルール
2 労働契約法上の労働条件としての効力

第2 作成・届出義務が生じる事業場

1 常時10人以上かは事業場ごとに判断する
2 10人未満でも労働契約上の効力が生じ得る

第3 就業規則に記載する事項

1 必ず記載する事項
2 制度を設ける場合に記載する事項
3 賃金規程などの別規程も就業規則の一部になり得る

第4 作成・変更・届出の手続

1 過半数組合又は過半数代表者から意見を聴く
2 過半数代表者の選出方法
3 労働基準監督署への届出と電子申請
4 本社一括届出

第5 周知と労働契約上の効力

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年次有給休暇に関するメモ書き

目次
第1 総論
1 年次有給休暇の付与
2 時季指定権及び時季変更権
3 不利益取扱いの禁止
第2 労働者の時季指定権
1 総論
2 労働者の時季指定権の限界
3 その他
第3 使用者の時季指定義務及び計画年休
1 使用者の時季指定義務
2 年次有給休暇の計画的付与
3 その他
第4 使用者の時季変更権
1 総論
2 勤務割による勤務体制が取られている場合の時季変更権
3 使用者の時季指定権行使を適法とした最高裁判例
第5 年次有給休暇の賃金及び買取
1 年次有給休暇の賃金
2 年次有給休暇の買取
第6 年次有給休暇と休業補償給付及び傷病手当金との関係
1 年次有給休暇と休業補償給付との関係
2 年次有給休暇と傷病手当金との関係
第7 関連記事その他

第1 総論
1 年次有給休暇の付与
(1) 雇入れの日から6か月間継続勤務し,全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては最低10日の年次有給休暇を与える必要があります(労働基準法39条1項)。
(2) 通常の労働者の年次有給休暇の日数は、その後、勤続年数が1年増すごとに所定の日数を加えた年次有給休暇を付与しなければならないのであって,勤続6年半以上の場合,毎年20日の年次有給休暇を与える必要があります(労働基準法39条2項)。 
2 時季指定権及び時季変更権

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職場におけるハラスメント防止に関するメモ書き

目次
1 総論
2 パワハラ関係
3 パワハラに関する懲戒処分の最高裁判例
4 関連記事その他

1 総論
(1) 職場におけるパワーハラスメントとは,職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって,②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,③労働者の就業環境が害されるものであり,①から③までの要素を全て満たすものをいいます(厚生労働省HPの「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」参照)。
(2) 職場で発生しやすいハラスメントとしては,セクシュアルハラスメント(セクハラ),パワーハラスメント(パワハラ),マタニティハラスメント(マタハラ),アルコールハラスメント(アルハラ)及び時短ハラスメント(ジタハラ)があります(弁護士法人ALG&Associates HPの「職場でのハラスメントを防止するために取るべき対応策」参照)。

パワの方は仕事との絡みがあるからまだ言い訳が聞きやすいんやけど、セクの方は基本職場に必要ない行為やからフォローしにくい。
しかも、迎合的言動にすぎないってことで同意も同意誤信の弁解も通りにくい。
当職に言わせると、職場の異性に手を出すってのは自殺行為に等しい。 https://t.co/6NtlZ3kNZJ

— 弁護士A (@NOlHT1yemE0873v) September 4, 2024

以前は

裁判所の周囲に
お手頃な定食屋、ちょこっと引っかけられる角打ち的なお店もあった

①昼休みが1時間→45分化
②コロナでの飲み会文化衰退
③パワハラセクハラ気にして課や係、支部での職員同士の楽しい飲み会淘汰で

ほとんど閑古鳥に

さみしい時代

昔はアフター 5の裁判所職員も楽しかった

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労働安全衛生法に関するメモ書き

目次
1 労働安全衛生法の概要
2 労働者の労働時間の状況の把握義務
3 労働災害防止計画
4 その他

第2 労働安全衛生法に関するメモ書き
1 労働安全衛生法の概要
    厚生労働省HPの「安全・衛生」には「労働安全衛生法の概要」として以下の記載があります。
・ 事業場における安全衛生管理体制の確立
 総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等の選任
 安全委員会、衛生委員会等の設置
・ 事業場における労働災害防止のための具体的措置
 危害防止基準:機械、作業、環境等による危険に対する措置の実施
 安全衛生教育:雇入れ時、危険有害業務就業時に実施
 就業制限 :クレーンの運転等特定の危険業務は有資格者の配置が必要
 作業環境測定:有害業務を行う屋内作業場等において実施
 健康診断 :一般健康診断、有害業務従事者に対する特殊健康診断等を定期的に実施
・ 国による労働災害防止計画の策定
 厚生労働大臣は、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画を策定。
※ 労働安全衛生法のほか、労働安全衛生分野の法律として、じん肺法や作業環境測定法がある。
2 労働者の労働時間の状況の把握義務
(1) 平成31年4月1日以降,事業者は,タイムカードによる記録,パソコン等の電子計算機の使用時間の記録その他の適切な方法により,労働者の労働時間の状況を把握しなければならなくなりました(労働安全衛生法66条の8の3及び労働安全衛生規則52条の7の3のほか,労務SEARCHの「【社労士監修】労働時間の把握が義務化!企業の管理方法や罰則は?」参照)。
(2)ア 厚生労働省HPの「働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます」の6頁及び7頁に,平成31年4月1日以降に実施すべき具体的な勤務時間の把握方法が書いてあります。
イ 厚生労働省HPの「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」(平成30年12月28日付の厚生労働省労働基準局長の通知)8頁ないし11頁に,労働時間の状況の把握に関する問答が載っています。
(3) 労務事情2022年11月1日号に「〈Q&A〉労働時間管理に関する実務対応」及び「〈Q&A〉自動車管理に関する法的留意点」が載っています。
(4)ア 最高裁平成26年1月24日判決は,募集型の企画旅行における添乗員の業務につき,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされた事例です。
イ 最高裁令和6年4月16日判決は, 外国人の技能実習に係る監理団体の指導員が事業場外で従事した業務につき,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例です(つまり,「労働時間を算定し難いとき」に当たる可能性があるということです。)。

意識高く「自分で仕事を生み出す」と言う人のほとんどは、実際には余計な仕事・やらなくてもいい仕事を無限に量産して自己満足してるだけで、大して利益に貢献してないように見えます。どちらかというと、価値があるのは「仕事を減らすこと」「3人でやっていた仕事を1人で回せるようにすること」です。

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職業安定法及び採用活動に関するメモ書き

目次
第1 職業安定法に関するメモ書き
1 職業紹介事業の許可制
2 ハローワークインターネットサービス
3 社員紹介制度
4 職業紹介事業に係る法令・指針
5 その他
第2 採用活動に関するメモ書き
1 公正な採用選考
2 求職者等の個人情報の取得制限
3 その他
第3 関連記事その他

1 職業紹介事業の許可制
(1) 求人及び求職の申込みを受け,求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんするという意味での職業紹介事業(職業安定法4条1項)を営むためには,管轄都道府県労働局を経由して,厚生労働大臣の許可を受ける必要があります(職業安定法30条1項及び33条1項の他,厚生労働省HPの「職業紹介事業制度の概要」参照)。
(2) 職業安定法4条1項(成立時の職業安定法5条1項)の「雇用関係」とは,必ずしも厳格に民法623条の意義に解すべきものではなく,広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に使用者に対し肉体的,精神的労務を供給する関係にあれば足ります(最高裁昭和29年3月11日判決)。

NBL1241の倉重公太朗ほか「採用分野における法務・人事の共創(下)」は、採用選考時のSNS裏垢チェックや当該チェック結果に基づく内定取消の法的問題点(個情法、職安法等)について考察されており良い。上・下とも労働実務家必読としたい。

— そらまめ (@sollamame) June 13, 2023

2 ハローワークインターネットサービス
・ ハローワークインターネットサービスには,「仕事をお探しの方へのサービスのご案内」及び「事業主の方へのサービスのご案内」とかが載っています。

3 社員紹介制度
(1) 社員紹介制度と労働基準法6条及び職業安定法40条との関係については,BUSINESS LAWYERS HPの「社員紹介制度における法的な問題はどこにあるか」が参考になります。
(2)    単発で社員候補者を紹介した社員に対し,就業規則に基づく賃金等として支払うのであれば,問題ありません。

4 職業紹介事業に係る法令・指針
・ 厚生労働省HPの「職業紹介事業に係る法令・指針」には以下の資料が掲載されています。
① 職業安定法

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総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医並びに安全衛生推進者及び衛生推進者

目次
1 総論
2 総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医
3 安全衛生推進者及び衛生推進者
4 労働安全コンサルタント試験及び労働衛生コンサルタント試験の試験区分
5 関連記事その他

1 総論
(1) 総括安全衛生管理者等は選任が必要な状態になった日から14日以内に選任し,かつ,労基署に報告する必要がありますところ,厚生労働省HPに「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」が載っています。
(2) 安全衛生推進者及び衛生推進者については労基署への報告義務はないものの,選任が必要な状態になった日から14日以内に選任する必要があります(労働安全衛生法施行規則12条の3第1項1号)。

2 総括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者及び産業医
(1) 総括安全衛生管理者(労働安全衛生法10条)は,建設業,運送業等については100人以上の事業場で必要となり,製造業等については300人以上の事業場で必要となり,その他の業種では1000人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行令2条)ところ,当該事業場においてその事業の実施を実質的統括管理する権限及び責任を有する者(例えば,支店長及び工場長)から選任する必要があります。
(2) 安全管理者(労働安全衛生法11条)は,50人以上の事業場で必要となりますし,建設業等については300人以上の事業場で専任の安全管理者が必要となります(労働安全衛生法施行令3条)ところ,産業安全に関する実務経験又は労働安全コンサルタントの資格が必要になります。
    また,新たに安全管理者を選任する場合,従来の学歴と実務経験に加え,厚生労働大臣が定める安全管理者選任時研修を修了している必要があります(労働安全衛生法施行規則5条)。
(3) 衛生管理者(労働安全衛生法12条)は,50人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行令4条)ところ,衛生管理者免許,衛生工学衛生管理者免許,医師,歯科医師,労働衛生コンサルタント等の資格が必要になります。
    なお,製造業,運送業等の衛生管理者については第二種衛生管理者免許では足りません。
(4) 産業医(労働安全衛生法13条)は,50人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行令5条)ところ,医師であることに加え,労働衛生コンサルタント試験(試験区分は保健衛生)に合格していること等が必要になります。
(5) 東京労働局HPの「共通 3 「総括安全衛生管理者」 「安全管理者」 「衛生管理者」 「産業医」のあらまし」が参考になります。

3 安全衛生推進者及び衛生推進者
(1) 安全衛生推進者又は衛生推進者(労働安全衛生法12条の2)は,10人以上の事業場で必要となります(労働安全衛生法施行規則12条の2)ところ,労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタント等でない限り,事業場に専属の者を選任する必要があります(労働安全衛生法施行規則12条の3第1項)し,関係労働者に氏名を周知させる必要があります(労働安全衛生法施行規則12条の4)。
(2) 建設業,運送業,製造業,自動車整備業等の業種の場合,安全衛生推進者が必要となり,その他の業種の場合,衛生推進者が必要となります。
(3) 安全衛生推進者及び衛生推進者は,都道府県労働局長の登録を受けたもの(例えば,公益社団法人労務管理教育センター)が行う講習(安全衛生推進者養成講習及び衛生推進者養成講習)の修了者でもなることができます。

4 労働安全コンサルタント試験及び労働衛生コンサルタント試験の試験区分
(1) 労働安全コンサルタント試験の試験区分は機械,電気,化学,土木及び建築です。
(2) 労働衛生コンサルタント試験の試験区分は保健衛生及び労働衛生工学です。

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労働者派遣法に関するメモ書き

目次
1 労働者派遣法の沿革
2 労働者派遣の禁止業務
3 労働者供給事業の原則禁止
4 労働者派遣契約
5 紹介予定派遣
6 厚生労働省HPの説明
7 労働者派遣と在籍型出向との差異
8 関連記事その他

1 労働者派遣法の沿革
・ ①労働者派遣法が施行された昭和61年当時,労働者派遣業の対象業務は専門知識が必要な13業務(ただし,施行後直ちに3業務が追加されて16業務)とされていて,②平成8年に10業務が追加されて26業務となり,③平成11年に対象業務が原則として自由化され(「対象業務のネガティブリスト化」といいます。),④平成16年に製造業務への派遣解禁及び派遣期間の延長があり,⑤平成24年に日雇い派遣の原則禁止があり,⑥平成27年に派遣期間の上限の3年統一及び労働者派遣事業の許可制への統一があり,⑦令和2年に同一労働同一賃金が導入があり,⑧令和3年に派遣労働者への説明義務の強化がありました(アデコHPの「労働者派遣法とは? 改正の歴史や罰則まで押さえるべきポイントをまとめて解説」参照)。

2 労働者派遣の禁止業務
(1) 労働者派遣の禁止業務としては,港湾運送業務,建設業務,警備業務があり(労働者派遣法4条1項),労働者派遣の原則禁止業務としては病院等における医療関連業務があります(労働者派遣法施行令2条)。
(2) 厚生労働省HPの「労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・」には「2 その他労働者派遣事業ができない業務等」として以下の記載があります。
◯ 次の業務は、当該業務について定める各法令の趣旨から、労働者派遣事業を行うことはできません。
① 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士の業務
② 公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士の業務(それぞれ一部の業務を除きます。)
③ 建築士事務所の管理建築士の業務
◯ 人事労務管理関係のうち、派遣先において団体交渉又は労働基準法に規定する協定の締結等のための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務は、法第25条の趣旨に照らして行うことはできません。
◯ 同盟罷業(ストライキ)若しくは作業所閉鎖(ロックアウト)中又は争議行為が発生しており、同盟罷業や作業書閉鎖に至るおそれの多い事業所への新たな労働者派遣を行ってはなりません。(法第24条、職業安定法第20条)
◯ 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をすることはできません。(法第58条)

3 労働者供給事業の原則禁止との関係
(1) リクルートスタッフィングHPの「労働者派遣法①|わかりやすく解説「派遣法」の歴史【前編1986〜2004】」には「強制的な労働や搾取が横行した人材ビジネス」として以下の記載があります。
    江戸時代から戦前までの労働者供給は「人貸し」「組請負」などと呼ばれ、供給業者による労働者の不当な支配が伴っていました。雇用関係や責任所在が曖昧だったため、劣悪な労働環境や供給元による賃金の搾取(いわゆるピンハネ)といった問題が蔓延します。これらの問題を受け、戦後1947年に公布された職業安定法第44条により、「労働者供給事業」は原則として禁止されるに至りました。
(2) 大阪労働局HPの「労働者派遣事業の概要」には以下の記載があります。
    労働者派遣事業は、昭和61年の労働者派遣法の施行に伴い改正される前の職業安定法第44条によって労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き、全面的に禁止されていた労働者供給事業(下図 i. 参照)の中から、供給元と労働者との間に雇用関係があり、供給先と労働者との間に指揮命令関係しか生じさせないような形態を取り出し、種々の規制の下に適法に行えることとしたものです。

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従業員の健康診断

目次
1 健康診断の実施
2 雇入時の健康診断
3 定期健康診断
4 健康診断実施後の措置
5 健康診断を受けている間の賃金
6 関連記事その他

1 総論
(1) 労働者を雇い入れた場合,事業主は健康診断を行う必要があります(労働安全衛生法66条・労働安全衛生規則43条)。
(2) 事業主は,1年以内ごとに1回,労働者の健康診断を行う必要があります(労働安全衛生法66条・労働安全衛生規則44条)。
(3) RELO総務人事タイムズHPに「健康診断の代行業者を活用する。業務負担軽減に役立つ代行業者3社」が載っています。

2 雇入時の健康診断
(1) 栃木労働局HPの「定期健康診断等について」には以下の記載があります。
 パート・アルバイトについても、次の1~3までのいずれかに該当し、かつ1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であるときは、健康診断を実施する必要があります。
 なお、4分の3未満であっても、1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の概ね2分の1以上であるときは、健康診断を実施することが望ましいとされています。
1. 雇用期間の定めのない者
2. 雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上(注)使用される予定の者
3. 雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上(注)引き続き使用されている者
(注)特定業務従事者(深夜業、有機溶剤等有害業務従事者)にあっては6ヶ月以上 
(2) 例えば,「雇入れ時健康診断 大阪市」でグーグル検索すれば,大阪市内で雇入れ時健康診断を実施している医療機関を調べることができます。

3 定期健康診断
(1) 定期健康診断の項目は以下の11項目です(労働安全衛生規則44条1項のほか,BeHealthの「健康診断の義務(実施・負担・把握・報告・保管)について」参照)。
(調査事項)
一 既往歴及び業務歴の調査
(検査事項)
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

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令和8年10月1日施行の改正同一労働同一賃金ガイドラインに基づき,民間企業で対応が必要な事項(AI作成)

第1 改正の対象と企業対応の出発点

1 令和8年10月1日に変わるもの
2 対象となる労働者を先に分類する
3 最初に作成すべき待遇一覧表

第2 新たに明記された六つの待遇と記載が拡充された待遇

1 六つの新規項目
2 賞与及び病気休職・病気休暇
3 六項目以外の待遇も点検する

第3 雇入れ時の明示と待遇差の説明方法

1 労働条件通知書等への追加事項
2 説明資料に必要な内容
3 説明不足が実体判断にも影響する

第4 待遇差を判断する法的枠組み

1 待遇ごとに性質・目的を認定する
2 規程と人事運用の実態を一致させる
3 抽象的な人材確保目的は免責理由にならない
4 定年後再雇用及び無期転換

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「労働者性」の判断基準

目次
1 労働基準法における「労働者性」の判断基準
2 労働組合法における「労働者性」の判断基準等
3 労災保険法における「労働者性」の判断事例
4 在宅勤務者が雇用保険の被保険者となる場合
5 関連記事その他

1 労働基準法における「労働者性」の判断基準
(1) 労働基準法における「労働者性」の判断基準の概要は以下のとおりです(業務委託契約書の達人HPの「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)とは」参照)。
ア 「使用従属性」に関する判断基準
① 「指揮監督下の労働」であること
a. 仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
b. 業務遂行上の指揮監督の有無
c. 拘束性の有無
d. 代替性の有無(指揮監督関係を補強する要素)
② 「報酬の労務対償性」があること
イ 「労働者性」の判断を補強する要素
① 事業者性の有無
② 専属性の程度
(2)ア  最高裁平成8年11月28日判決は,車の持込み運転手が労働基準法及び労災保険法上の労働者に当たらないとされた事例であり,最高裁平成19年6月28日判決は,作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらないとされた事例です。
イ 最高裁平成17年6月3日判決(関西医科大学事件)は,臨床研修として病院において研修プログラムに従い臨床研修指導医の指導の下に医療行為等に従事する医師は,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り労働基準法上の労働者に当たるとされた事例です。
(3)ア 一人親方建設業共済会HPに載ってある「労働基準法研究会労働契約等法制部会 労働者性検討専門部会報告 」(平成8年3月)には,建設業手間請け従事者及び芸能関係者について,労働者性の判断基準が書いてあります。
イ 社会保険労務士法人大野事務所HPの「労働基準法における「労働者性」の判断基準」では,「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(令和3年3月26日)」(略称は「フリーランスガイドライン」です。)で示された考え方が図解されています。
(4) 未払い残業代請求の法律相談(2022年9月20日付)261頁には「労蟇法上の労働者に該当すると判断されるリスクが相当程度あると考えられる場合には,業務従事者の労働時間の長さを確認又は推知することができる資料を収集,確保しておくことが必要となります。」と書いてあります。

マニュアルって一部の職人気質の人には馬鹿にされがちだけど、毎回コンスタントにパフォーマンスを発揮するにはマニュアルはむしろ必要不可欠。

むしろ、マニュアルを作らずに経験や勘だけを頼りに活動する方が、パフォーマンスがブレるという点で、顧客に対して不誠実とすら言えるかもしれない。

— ついぶる (@harvey61616) April 13, 2022

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公益通報者保護法と公益通報制度―通報先・証拠保全・令和7年改正(AI作成)

1 総論
2 令和4年6月1日施行の改正公益通報者保護法の概要
3 令和7年改正法の概要(令和8年12月1日施行)
4 通報先の選択,証拠保全及び紛争対応

(1) 通報先の選択
(2) 通報書面及び証拠の作り方
(3) 不利益な取扱いを争う場合の主張立証
(4) 事業者が通報を受けた場合の初動

5 消費者庁の指針に関するパブコメへの意見
6 消費者庁の指針及びその解説

(5) コーポレートガバナンス・コード原則2-3と内部通報制度

7 消費者庁が指針に関して内閣法制局に説明していた内容
8 公益通報制度に関する弁護士会の懲戒事例
9 裁判所の公益通報制度,関連裁判例その他

1 総論
公益通報者保護法の保護を受けるための要件は,通報先と通報者の立場によって異なります。本稿はAIで作成したものであり,令和4年6月1日施行改正後の現行法,令和8年12月1日に施行される令和7年改正法,通報先の選択,証拠保全,不利益な取扱いを争う場合の立証及び事業者の初動対応を整理します。

(1) 公益通報者保護法(平成16年6月18日法律第122号)は平成18年4月1日に施行されました。
(2) 公益通報者保護制度は,国民生活の安心や安全を脅かすことになる事業者の法令違反の発生と被害の防止を図る観点から,労働者,派遣労働者,通報日前1年以内の退職者及び役員が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく,勤務先等における一定の法令違反を通報した場合に,解雇その他の不利益な取扱いから保護する制度です。通報先には,①事業者内部,②処分又は勧告等をする権限を有する行政機関等及び③一定の要件を満たす場合の報道機関等があり,通報先ごとに保護要件が異なります(e-Gov法令検索「公益通報者保護法」及び消費者庁HPの「通報者の方へ」参照)。
(3) 消費者庁消費者制度課が令和2年2月及び3月に内閣法制局に提出した,公益通報者保護法の一部を改正する法律案に関する説明資料及び用例集を掲載しています。

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男女雇用機会均等法に関するメモ書き

目次
1 総論
2 昭和61年3月31日以前の女性保護
3 募集・採用,配置・昇進についての差別解消
4 深夜業の解禁
5 坑内労働の解禁
6 セクハラ等の防止
7 セクハラ等に関する判例
8 妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いの禁止
9 女性労働者に対する積極的差別解消措置
10 国際婦人年
11 女子差別撤廃条約
12 関連記事その他

1 総論
(1) 男女雇用機会均等法は,勤労婦人福祉法(昭和47年7月1日法律第113号)の一部改正により成立しました(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律(昭和60年6月1日法律第45号)参照)。
(2) 男女雇用機会均等法制定後の大きな改正法は以下のとおりです。
① 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成9年6月18日法律第92号)
→ 原則として平成11年4月1日施行でした。
② 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律(平成18年6月21日法律第82号)
→ 原則として平成19年4月1日施行でした。
(3) 男女雇用機会均等法の制定当初の名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」でしたが,平成11年4月1日以降は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」となっています。
(4) ①勤労婦人福祉法が施行された昭和47年7月1日以降は「勤労婦人」という表現であり,②男女雇用機会均等法が施行された昭和61年4月1日以降は「女子労働者」という表現であり,③改正男女雇用機会均等法が施行された平成11年4月1日以降は「女性労働者」という表現になっています。

2 昭和61年3月31日以前の女性保護
(1) 男女雇用機会均等法は昭和61年4月1日に施行されましたところ,それ以前の女性保護は以下のとおりでした(厚生労働省HPの「男女雇用機会均等法の変遷」参照)。
① 残業:原則として1日2時間,週6時間,1年150時間まで
② 深夜業(夜10時から昼5時まで):原則禁止。一部の業務のみOK
③ 危険有害業務:ボイラー,クレーン等の取扱い,5メートル以上の高所作業,深さ5メートル以上の穴の中の作業その他の禁止
④ 帰郷旅費支給の義務付け

(続きを読む...)男女雇用機会均等法に関するメモ書き