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有期雇用契約における試用期間-設定と契約終了の法的整理(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象と基準日

本記事は,有期労働契約の契約期間内に別の試用期間を置く場合と,有期労働契約そのものを適性判断のために用いる場合を区別し,令和8年9月6日現在の法令及び裁判例に基づいて,設定時と契約終了時の問題を整理する。
有期労働契約の期間,更新,雇止め及び無期転換の一般的な制度は,有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルール(AI作成)で別に扱っている。

2 試用期間を置けば解雇しやすくなるわけではないこと

試用期間の設定可否及び長さを一律に定める一般的な条文はなく,中央労働委員会サイトに掲載された令和7年度労使関係セミナー資料も,設定の可否及び長さ等について現行法上特別の規制はないと整理している。
もっとも,契約書に「試用期間」と書くだけで,契約期間途中の解雇又は期間満了時の雇止めが容易になるわけではない。

有期労働契約に試用期間を設けるときは,①契約の存続期間,②適格性を評価する期間,③試用期間中に雇用を終了する場合,④契約期間満了後の更新又は無期契約への移行を分けて設計する必要がある。
特に,試用期間中の解雇は有期労働契約の期間途中の解雇であるから,少なくとも労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」が必要となる。

第2 有期契約と試用期間の二つの組合せ

1 有期契約の中に別の試用期間を置く場合

例えば,契約期間を令和8年4月1日から令和9年3月31日までの1年間とし,そのうち最初の3か月を試用期間とする設計がある。
この場合,試用期間の満了は1年間の労働契約の満了ではなく,試用期間を通過した後も同じ有期労働契約が残りの期間について続くのが基本である。

試用期間満了後に無期契約又は別の職種へ移行させる予定がある場合は,同じ有期契約が続く場面と,新しい契約を締結する場面を区別しなければならない。
「本採用」という一語だけでは,試用終了後も同じ有期契約が続くのか,無期契約又は正社員契約へ切り替わるのかが明らかにならない。

2 有期契約そのものを適性判断の期間とする場合

「まず6か月の有期契約を締結し,適性があれば無期契約へ移行する」という設計では,6か月が契約の存続期間なのか,無期契約に付された試用期間なのかが問題となり得る。
最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決(平成元年(オ)第854号,民集44巻4号668頁,神戸弘陵学園事件)は,新規採用の際に設けた期間の趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断することにある場合,期間満了によって契約が当然に終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り,その期間を契約の存続期間ではなく試用期間と解するのが相当であるとした。

同判決では,契約期間が「一応」1年と説明されたこと,長期勤務を期待させる発言があったこと,1年で当然に終了すると記載した契約書への署名が就労開始後であったこと等が問題となり,原判決が破棄されて更に審理するため差し戻された。
したがって,契約書の名称だけでなく,募集時及び面接時の説明,契約締結の時期,期間を定めた業務上の理由,無期契約への移行手続並びに実際の運用を整合させることが重要となる。

3 無期契約への移行条件を明確にすること

最高裁平成28年12月1日第一小法廷判決(平成27年(受)第589号,福原学園事件)は,1年の有期労働契約を締結し,更新限度を3年とした事案を扱った。
同事件の規程は,勤務成績を考慮して使用者が任用を必要と認め,かつ,労働者が希望した場合に無期の職種へ異動できると定めており,最高裁は,3年の経過だけで当然に無期労働契約へ移行したとする原審の判断を破棄した。

同判決は,期間満了後の無期契約への移行が自動であるのか,使用者の判断及び労働者の希望を要するのかを,規程と契約締結時の認識から区別したものである。
もっとも,この判断は,更新に関する労働契約法19条の適用を一般に否定するものではなく,契約の更新と無期契約への移行は別の問題である。

第3 試用期間を設定するときに書面で分ける事項

1 契約期間と試用期間を別々に記載すること

労働基準法15条及び労働基準法施行規則5条により,使用者は,労働契約の締結時に,契約期間,更新する場合があるときの基準,更新上限がある場合の内容,賃金,労働時間,就業場所及び業務並びに退職に関する事項等を明示しなければならない。
試用期間中に賃金,職務又は勤務場所を異ならせる場合は,その労働条件も明確にする必要がある。

労働契約法4条2項は,期間の定めに関する事項を含む労働契約の内容について,労働者と使用者ができる限り書面で確認するものとしている。
本記事では,有期契約に試用期間を置く場合,法令上の明示事項と同じ書面又は相互に参照できる書面に,契約期間と試用期間を別々に記載することを基本形とする。

2 終了場面まで区別して記載すること

設定時に区別する事項は,①有期契約の開始日と満了日,②試用期間の開始日と満了日,③評価の目的・項目・時期,④試用期間中の労働条件,⑤試用期間満了後も同じ有期契約が続くのか,⑥有期契約を更新する可能性及び判断基準,⑦無期契約又は正社員契約への移行制度がある場合の申込み・判断・契約締結の手続である。
「試用期間中又は満了時に不適格と判断したときは契約を終了する」とだけ定めても,期間途中の解雇に関する労働契約法17条1項を排除することはできない。

3 評価基準と運用を一致させること

適格性の評価は,担当業務と採用時に示した職務要件に結び付け,評価者,中間面談,指導又は支援,説明の機会及び最終判断日をあらかじめ設計することが考えられる。
評価記録には「能力がない」「協調性に欠ける」という結論だけでなく,いつ,どの業務について,何を求め,どのような行動と結果があり,本人がどのように説明したかを残すことが有用である。

評価資料は解雇を正当化するためだけの記録ではない。
契約内容との不一致,教育又は情報の不足,評価者ごとの基準の違いを早期に発見し,契約を続けられるかを判断する資料でもある。

4 長さと延長を自動的に決めないこと

中央労働委員会サイト掲載の前記セミナー資料は,採用後3か月から6か月程度を試用期間とすることが企業実務では一般に行われていると説明する一方,適格性の評価に必要な期間を超えて労働者を長期間不安定な状態に置くことは適当でないと整理している。
3か月又は6か月であれば当然に有効となるわけではなく,職務内容,採用時に確認できた事項,実際の観察機会及び有期契約全体の長さに照らして設定する必要がある。

延長についても,判断を先送りするために自動的に行うのではなく,就業規則又は契約上の根拠,採用時に予見できなかった事情,観察できなかった項目,延長期間及び延長後の判断日を確認することが考えられる。
延長が有期契約の満了日を越える場合は,試用期間の延長だけでは処理できず,契約更新又は新しい契約の問題となる。

第4 試用期間中に雇用を終了する場合

1 労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」

使用者が有期労働契約の期間途中で労働者を解雇するには,労働契約法17条1項により「やむを得ない事由」が必要である。
試用期間中であっても,契約満了日より前に雇用を終了する以上,試用期間の条項だけを根拠としてこの要件を外すことはできない。

能力不足又は適格性不足を理由とするときは,抽象的な評価だけでなく,採用時に合意した職務及び水準,問題となる具体的事実,本人の説明,指導又は支援後の状況並びに契約満了まで雇用を継続できない事情を確認する必要がある。
契約期間の残りが短いことだけで結論は決まらないが,期間満了を待てない事情があるかという検討を省略することはできない。

2 試用契約における留保解約権の限界

神戸弘陵学園事件最高裁判決は,解約権留保付の試用契約について,留保解約権の行使は通常の解雇より広い範囲で認められ得るとしつつ,試用の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当として是認できる場合に限られるとした。
有期労働契約の中に試用期間を置いた場合は,この試用に関する判断枠組みだけでなく,期間途中の解雇を制限する労働契約法17条1項も問題となる。

3 採用後14日以内は自由解雇期間ではないこと

労働基準法21条4号は,試の使用期間中の労働者を同法20条の解雇予告制度の例外とし,14日を超えて引き続き使用された場合には例外を認めない。
これは,30日前の解雇予告又は解雇予告手当に関する手続上の例外であって,労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」や,試用契約における解約権行使の合理性及び相当性を不要にする規定ではない。

第5 試用結果を契約期間満了時に扱う場合

1 期間満了と雇止めの制限

契約の存続期間として有効な有期労働契約は,原則として期間満了により終了する。
しかし,過去に反復更新されて無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合,又は契約期間満了時に更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合には,労働契約法19条が雇止めを制限することがある。

更新期待の合理性は,契約書だけでなく,募集及び採用時の説明,更新回数,更新手続,同種労働者の取扱い,業務の恒常性,更新基準と実際の評価並びに無期契約への移行に関する発言等から判断される。
試用評価を理由に更新しない場合も,「試用不合格」と表示しただけで同条の検討が不要になるわけではない。

2 更新申込み又は異議を遅らせないこと

労働契約法19条は,労働者が契約期間の満了日までに更新を申し込んだ場合,又は満了後遅滞なく新しい有期労働契約の締結を申し込んだ場合を対象としている。
労働者が就労継続を希望する場合は,雇止め又は試用不合格の通知を受けた後,更新を求める意思及び異議を,日時と内容を確認できる書面又は電子メール等で速やかに示すことが考えられる。

使用者側でも,期間満了と期間途中の解雇を混同せず,契約満了日,更新基準,評価資料,過去の説明及び同種労働者の運用を先に確認する必要がある。
更新申込み又は異議の有無,雇止め予告及び理由証明の要否は,満了後に初めて整理するのではなく,判断前に確認すべき事項である。

第6 紛争になったときに先に確認する資料

1 共通して確認する資料

先に確認する資料は,①求人票及び募集画面,②面接時の説明資料及び連絡記録,③内定通知書,④労働条件通知書及び雇用契約書,⑤就業規則,⑥試用及び更新の規程,⑦職務記述書及び評価基準,⑧指導・面談・評価の記録,⑨契約終了又は雇止めの通知,⑩同種労働者の更新手続を確認できる資料である。
まず,契約成立時から終了通知までを時系列に並べ,契約期間,試用期間,評価日,通知日及び満了日を対応させる。

2 使用者側と労働者側で確認する事実

使用者側では,期間を定めた業務上の理由,採用時に示した職務水準,採用後に判明した事実,指導又は支援,評価の一貫性,契約満了まで雇用を続けられない事情及び更新実績を確認する。
労働者側では,長期雇用又は無期移行を示す説明,契約書を受領・署名した時期,担当業務と評価基準の不一致,本人の説明,改善状況,更新申込み及び異議の記録を確認する。

3 高負担の調査へ進む条件

契約書,就業規則,募集時の表示,電子メール及び評価記録を確認しても,契約の種類,期間途中の終了か期間満了か,又は更新申込みの有無が決まらない場合に,関係者からの聴取,社内データの追加保全その他の調査を検討する。
追加資料によって契約の法的性質又は終了の有効性が変わらないときは,調査範囲を広げる前に,残る争点,費用及び得られる効果を見直すべきである。

第7 関連記事

中途採用における募集,選考,内定,試用期間及び本採用拒否の全体像は,中途採用における使用者側の留意点-募集・選考・内定・試用期間の実務(AI作成)で扱っている。
有期労働契約の期間上限,労働条件明示,無期転換及び雇止めの一般論は,有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルール(AI作成)を参照されたい。

第8 出典・参考資料

1 法令

e-Gov法令検索「労働契約法」4条及び16条~19条。
e-Gov法令検索「労働基準法」15条,20条及び21条。
e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」5条。

2 裁判例

最高裁判所第三小法廷平成2年6月5日判決(平成元年(オ)第854号,民集44巻4号668頁,神戸弘陵学園事件,裁判所ウェブサイト)。
最高裁判所第一小法廷平成28年12月1日判決(平成27年(受)第589号,労働契約上の地位確認等請求事件,労働判例1156号5頁,福原学園事件,裁判所ウェブサイト)。

3 行政機関の解説及び掲載資料

厚生労働省「労働契約(契約の締結,労働条件の変更,解雇等)に関する法令・ルール」
②皆川宏之「労働契約の成立と労働条件」(中央労働委員会東日本区域地方調整委員会,令和7年度第3回労使関係セミナー資料)25頁~38頁。同資料は講師作成の解説資料であり,法令又は中央労働委員会の裁定ではない。

4 文献

①石田信平「試用・見習・研修期間の法的性質と法規制」日本労働研究雑誌757号(2023年)20頁~31頁