その他裁判所関係

最高裁判所の国会答弁資料

目次
1 最高裁判所の国会答弁資料
2 国会答弁資料が存在しないことに関する最高裁の説明
3 関連記事

1 最高裁判所の国会答弁資料
(1) 最高裁判所の国会答弁資料を以下のとおり掲載しています。
・ 第210回国会(令和4年10月3日から同年12月10日までの会期)の,最高裁の国会答弁資料
→ 衆議院法務委員会等での使用分,及び参議院法務委員会等での使用分があります。
・ 第208回国会(令和4年1月17日から同年6月15日までの会期)の,最高裁の国会答弁資料
→ 衆議院法務委員会等での使用分,及び参議院法務委員会等での使用分があります。
(2) 衆議院HPに「国会会期一覧」が載っています。

2 国会答弁資料が存在しないことに関する最高裁の説明
・ 令和元年度(最情)答申第53号(令和元年10月18日答申)には以下の記載があります(本件開示申出文書は「平成30年11月22日の参議院法務委員会における国会答弁資料のうち,裁判所の所持品検査に関するもの」です。)。
    苦情申出人は,特定日の参議院法務委員会における国会答弁の内容及び参議院インターネット審議中継の動画からすれば,最高裁判所において本件開示申出文書を保有している旨主張する(山中注:令和元年5月7日付の意見書に記載した主張です。)。しかし,当委員会において上記法務委員会の会議録を閲読し,出席者である長官代理者がした説明の内容を確認したところ,その内容を踏まえて検討すれば,議員の質問事項について,裁判所の基本的な見解を概括的に述べたものであり,上記法務委員会に係る国会答弁においては司法行政文書として長官代理者の説明案を作成していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
    したがって,最高裁判所において本件開示申出文書を保有していないと認められる。


3 関連記事
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 裁判所をめぐる諸情勢について
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所職員の予算定員の推移
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
・ 毎年6月開催の長官所長会同
・ 高等裁判所事務局長事務打合せ

裁判所をめぐる諸情勢について

目次
1 裁判所をめぐる諸情勢について
2 関連記事

1 裁判所をめぐる諸情勢について
(令和時代)
令和元年6月令和2年8月令和3年6月
令和4年7月令和5年8月
(平成時代)
平成23年7月

2 関連記事
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
 裁判所職員の予算定員の推移
 級別定数の改定に関する文書
 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
 毎年6月開催の長官所長会同
 高等裁判所事務局長事務打合せ


裁判官に対する期末手当及び勤勉手当の支給月数表

目次
1 裁判官に対する期末手当及び勤勉手当の支給月数表
2 関連記事

1 裁判官に対する期末手当及び勤勉手当の支給月数表
・ 令和 5年度及び令和 6年度以降(令和5年12月1日現在)
・ 令和 4年度及び令和 5年度以降(令和4年11月18日現在)
・ 令和 3年度及び令和 4年度以降(令和3年12月1日現在)
・ 令和 2年度及び令和 3年度以降
・ 令和 元年度及び令和 2年度以降
・ 平成30年度及び平成31年度以降
・ 平成29年度及び平成30年度以降
* 「裁判官に対する期末手当及び勤勉手当の支給月数表(令和5年度及び令和6年度以降)(令和5年12月1日現在)」といったファイル名です。

2 関連記事
・ 裁判官の号別在職状況
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
→ 最高裁判所が作成した裁判官・検察官の給与月額表を掲載しています。
・ 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
・ 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
・ 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
・ 最高裁判所が作成している,下級裁判所幹部職員名簿
・ 判検事トップの月収と,行政機関の主な特別職の月収との比較
・ 裁判官の昇給

裁判所職員(裁判官を含む。)の年齢階層・男女別在職状況

目次
1 裁判所職員(裁判官を含む。)の年齢階層・男女別在職状況
2 関連記事その他

1 裁判所職員(裁判官を含む。)の年齢階層・男女別在職状況
平成28年12月1日平成29年12月1日
平成30年12月1日令和 元年12月1日
令和 2年12月1日令和 3年12月1日
令和 4年12月1日令和 5年12月1日
* 「裁判所職員(裁判官を含む。)の年齢階層・男女別在職状況(裁判官につき令和5年12月1日現在)」といったファイル名です。

2 関連記事その他
(1) 令和元年12月1日分までは,裁判官の年齢階層・男女別在職状況だけでした。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官の早期退職
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
・ 判検事トップの月収と,行政機関の主な特別職の月収との比較
・ 裁判官の号別在職状況
・ 裁判官の昇給
・ 裁判官の給料と他の国家公務員の給料との整合性に関する答弁例
・ 裁判官の兼職
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)
・ 裁判官の退官情報
・ 50歳以上の裁判官の依願退官
・ 裁判所の指定職職員
→ 「早期退職希望者の募集実施要項(一般職向け)」を掲載しています。
・ 平成18年度以降の,公証人の任命状況

最高裁判所の経理局メールマガジン

目次
1 経理局メールマガジン
2 関連記事

1 経理局メールマガジン
令和6年:83号
令和5年:80号81号82号
令和4年:76号78号79号
* 「最高裁判所の経理局メールマガジン80号(令和5年2月6日発行)→(主計課)~会計年度末における支払計画の示達について~」といったファイル名です。


2 関連記事
・ 最高裁判所事務総局経理局の事務分掌
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所庁舎
・ 最高裁判所裁判官等の公用車
・ 平成29年7月1日施行の裁判所会計事務規程及び関連通達
・ 会計検査院第1局司法検査課の実地検査日程表

鈴木実里裁判官(68期)の経歴

生年月日 H1.6.16
出身大学 慶応大院
定年退官発令予定日 R36.6.16
R5.4.1 ~ 静岡地家裁浜松支部判事補
R3.4.1 ~ R5.3.31 東京地裁判事補
H31.4.1 ~ R3.3.31 岩田合同法律事務所(一弁)
H31.3.25 ~ H31.3.31 東京地裁判事補
H30.4.1 ~ H31.3.24 東京地家裁判事補
H28.1.16 ~ H30.3.31 東京地裁判事補

* 判事補任官時点の氏名は「岩崎実里」でした。

堀田康介裁判官(67期)の経歴

生年月日 S62.6.21
出身大学 同志社大院
定年退官発令予定日 R34.6.21
R4.4.1 ~ 京都地家裁判事補
R2.4.1 ~ R4.3.31 大江橋法律事務所(大弁)
R2.3.25 ~ R2.3.31 大阪地裁判事補
H30.4.1 ~ R2.3.24 山口地家裁下関支部判事補
H29.4.1 ~ H30.3.31 名古屋地家裁判事補
H27.1.16 ~ H29.3.31 名古屋地裁判事補

最高裁判所判事の就任記者会見の関係文書

目次
1 最高裁判所判事の就任記者会見の関係文書
2 就任記者会見実施のマニュアル等は存在しないこと
3 関連記事その他

1 最高裁判所判事の就任記者会見の関係文書
・ 石兼公博最高裁判所判事の就任記者会見(令和6年4月17日実施分)の関係文書
・ 宮川美津子最高裁判所判事の就任記者会見(令和5年11月6日実施分)の関係文書
・ 尾島明最高裁判所判事の就任記者会見(令和4年7月5日実施分)の関係文書
・ 岡正晶最高裁判所判事及び堺徹最高裁判所判事の就任記者会見(令和3年8月27日実施分)の関係文書
・ 安浪亮介及び渡邉恵理子最高裁判所判事の就任記者会見(令和3年7月16日実施分)の関係文書
・ 長嶺安政最高裁判所判事の就任記者会見(令和3年2月8日実施分)の関係文書
・ 岡村和美最高裁判所判事の就任記者会見(令和元年10月2日実施分)の関係文書
・ 林道晴最高裁判所判事の就任記者会見(令和元年9月2日実施分)の関係文書
・ 宇賀克也最高裁判所判事の就任記者会見(平成31年3月20日実施分)の関係文書

2 就任記者会見実施のマニュアル等は存在しないこと
(1) 令和2年10月27日付の答申(令和2年度(最情)答申第29号)には以下の記載があります(本件開示申出文書は「最高裁判所判事就任記者会見を実施する際の留意事項,準備事項等が書いてあるマニュアル(最新版) 」です。)。
    最高裁判所事務総長の上記説明によれば,最高裁判所判事就任記者会見の実施に関する留意事項,準備事項等が書いてあるマニュアルを組織的に作成することを予定した定めはなく,また,就任記者会見は最高裁判所判事個人の考えを語る場として設けられ,その実施に当たってマニュアルの作成を要するほどの留意事項や準備事項は特段存在しないとのことであり,このことは当委員会庶務を通じて確認した結果に合致する。このような就任記者会見の趣旨及び性格を踏まえれば,本件開示申出文書は作成し又は取得していないという最高裁判所事務総長の上記説明の内容が不合理とはいえない。そのほか,最高裁判所において,本件開示申出文書に該当する文書を保有していることをうかがわせる事情は認められない。
    苦情申出人は,札幌高等裁判所長官の就任記者会見の際には準備・進行メモ等が存在していたことからすれば,本件開示申出文書は存在するといえる旨主張する。 しかしながら,苦情申出人が指摘する準備・進行メモは現に実施された特定の長官の就任記者会見に際して作成されたものであり, それ自体,マニュアルに該当するものではないことからすれば,上記メモが存在するからといって,本件開示申出文書が存在することを裏付けることにはならない。 したがって,苦情申出人の上記主張は採用できない。
    よって,最高裁判所において本件開示申出文書を保有していないと認められる。
(2) 34期の植村稔札幌高裁長官の就任記者会見関係文書(平成30年10月3日実施)には以下の文書が含まれています。

3 関連記事その他

(1) 日本裁判官ネットワークHPには,2004年6月1日付で,「60歳代 男性 元裁判所職員」からのメールが掲載されていますところ,その内容は以下のものがあります。

  山崎豊子原作「白い巨塔」が再びドラマ化された。ドラマでは,浪速大学病院の教授回診のシーンがたびたび登場する。白衣を着た教授が殿様のように,助教授・講師・インターンを引き連れて病室を練り歩くのだ。あのシーンを見るたびに,裁判所で行われている最高裁判事や高裁長官の視察を思い出し,気が滅入る。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 所長等就任記者会見,及び記者会見実施上の一般的な留意事項(最高裁判所の広報ハンドブックからの抜粋)
・ 最高裁判所裁判官の送別会関係資料
・ 憲法週間における最高裁判所判事の視察
・ 最高裁判所裁判官国民審査
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所裁判官等の公用車
・ 高輪1期以降の,裁判官出身の最高裁判所判事
・ 外務省国際法局長経験のある最高裁判所判事
・ 最高裁判所裁判官の少数意見
・ 最高裁判所第一小法廷(着任順)
・ 最高裁判所第二小法廷(長官以外は着任順)
・ 最高裁判所第三小法廷(着任順)

最高裁判所裁判官の送別会関係資料

目次
1 最高裁判所裁判官の送別会関係資料
2 送別会関係資料の作成方法が書いてある文書は存在しないこと
3 関連記事その他

1 最高裁判所裁判官の送別会関係資料
(4) 長嶺安政裁判官送別会関係資料 プロフィール・関与裁判例等(令和6年4月16日定年退官発令)
→ 国民審査公報掲載文主要関与裁判例一覧在任中の終局事件数略歴等関与事件の判例集・裁判集登載件数が含まれています。
(3)  山口厚裁判官送別会関係資料 プロフィール・関与裁判例等(令和5年11月6日定年退官発令)
→ 国民審査公報掲載文主要関与裁判例一覧在任中の終局事件数関与事件の判例集・裁判集登載件数主要関与事件が含まれています。
(2) 菅野博之裁判官送別会関係資料 プロフィール・関与裁判例等(令和4年7月3日定年退官発令)
→ 国民審査公報掲載文,主要関与裁判一覧表在任中の終局事件数関与事件の判例集・裁判集登載件数各上席調査官が選別した主要関与事件が含まれています。
(1) 大谷直人長官送別会関係資料 プロフィール・関与裁判例等(令和4年6月23日定年退官発令)
→ 国民審査公報掲載文,主要関与裁判一覧表在任中の終局事件数関与事件の判例集・裁判集登載件数各上席調査官が選別した主要関与事件が含まれています。

2 送別会関係資料の作成方法が書いてある文書は存在しないこと
・ 令和4年度(最情)答申第16号(令和4年9月13日答申)には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
    当委員会庶務を通じて確認したところ、退官記念資料は、退官予定の最高裁判所判事に係る最高裁判所裁判官国民審査公報への掲載文、主要関与裁判例一覧表、在任中の終局事件数並びに関与した事件の判例集及び裁判集登載件数等によって構成されることが通例であることが認められた。
    上記確認結果を踏まえれば、退官記念資料の構成内容は定型的であり、退官記念資料を作成する事務は、特段の作成要領等を作成せずとも支障なく行うことが可能であるということができる。
    したがって、本件開示申出に係る文書は作成し、又は取得していないとする最高裁判所事務総長の説明は、結論として不合理とはいえない。

3 関連記事その他
(1) 東弁リブラ2022年1・2月合併号「元最高裁判所判事 木澤克之会員」には以下の記載があります。
    最高裁時代の自分の事件関係の手控え記録は,退官と同時に全部廃棄されてしまうので,手元にはありません。その代わり,退官の際に,記念としてこれ(「ご退官記念資料」)が渡されるのです。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官国民審査
・ 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
・ 最高裁判所長官任命の閣議書
・ 最高裁判所裁判官等の公用車
・ 高輪1期以降の,裁判官出身の最高裁判所判事
・ 外務省国際法局長経験のある最高裁判所判事
・ 最高裁判所裁判官の少数意見
・ 最高裁判所第一小法廷(着任順)
・ 最高裁判所第二小法廷(長官以外は着任順)
・ 最高裁判所第三小法廷(着任順)

最高裁判所事務総局デジタル審議官

目次
第1 総論
第2 デジタル審議官
第3 デジタル審議官付参事官及びデジタル審議官付
1 総論
2 デジタル審議官付参事官
3 デジタル審議官付
第4 デジタル審議官付審査官
第5 サイバーセキュリティ管理官及びデジタル基盤管理官
第6 令和6年4月1日現在のデジタル審議官以下の人員構成
第7 デジタル推進室設置前の情報政策課
第8 令和3年4月1日設置のデジタル推進室
第9 マイクロソフト365を活用した業務の効率化事例を紹介した最高裁判所の資料(令和6年6月23日追加)

第10 RoootSの導入の遅れ
第11 最高裁判所の審議官
第12 関連記事その他

第1 総論
1 令和6年4月1日,最高裁判所事務総局規則の改正により最高裁判所事務総局にデジタル審議官が設置され,最高裁判所事務総局分課規程の改正により情報政策課が廃止されました(同規程1条参照)。
2 裁判所時報1835号(令和6年4月1日付)6頁には以下の記載があります(原文は縦書きです。)。
≪最高裁判所事務総局規則の一部改正について≫
    最高裁判所事務総局規則の一部を改正する規則が、令和六年三月一日に公布され、四月一日から施行されます。
    この規則は、最高裁判所事務総局における事務の適正かつ円滑な運営を図るため、デジタル審議官並びにその下に置く参事官及びデジタル審議官付の新設等の所要の整備を行ったものです。

第2 デジタル審議官
1(1) デジタル審議官は,最高裁判所事務総局規則の改正により令和6年4月1日に最高裁判所事務総局に新設されたポストでありますところ,最高裁判所事務総局規則3条の2の2は以下のとおりです。
① 最高裁判所事務総局にデジタル審議官を置き、裁判所事務官をもつて充てる。
② デジタル審議官は、上司の命を受けて、事務総局の事務のうちデジタル化の推進、情報セキュリティの確保、情報システムの整備及び管理並びに統計情報に関する重要な事項の企画及び立案に参画し、関係事務を総括整理する。
(2) デジタル審議官の直属の上司は最高裁判所事務総長であると思います。
2 令和6年4月1日,51期の清藤健一裁判官(令和6年3月31日までの役職は最高裁審議官兼情報政策課長)がデジタル審議官に任命されました。
3 令和3年9月1日設置のデジタル庁にもデジタル審議官がいる(デジタル庁設置法12条1項)ものの,最高裁判所事務総局のデジタル審議官とは別の存在です。

第3 デジタル審議官付参事官及びデジタル審議官付
1 総論
・ デジタル審議官の下に,デジタル審議官付参事官(最高裁判所事務総局規則6条の2第2項)及びデジタル審議官付(最高裁判所事務総局規則7条2項)が設置されています。
2 デジタル審議官付参事官
(1)ア デジタル審議官付参事官の職務は,上司の命を受けて,デジタル審議官の職務のうち重要な事項の企画及び立案に参画することです(最高裁判所事務総局規則6条の2第5項)。
イ 令和6年4月1日以降の最高裁判所事務総局規則4条の2は以下のとおりですから,デジタル審議官付参事官は,局又は課の所掌に属しない事務を所掌する準課長ポストとなります。
① 最高裁判所事務総局に局又は課の所掌に属しない事務を所掌する職で課長に準ずるものを置くことができる。
② 前項の職は、裁判所事務官をもつて充てる。
(2)ア 令和6年4月1日,以下の裁判官がデジタル審議官付参事官に任命されましたところ,同年3月31日までの間,いずれも情報政策課参事官を兼任していましたから,新規配属者はいません。
① 52期の榎本光宏裁判官(兼務あり)
② 54期の内田曉裁判官(兼務あり)
③ 56期の内田哲也裁判官(兼務あり)
④ 60期の草野克也裁判官
イ 令和5年度の場合,情報政策課参事官を本務とする人は野澤秀和(令和5年3月31日までの役職は広島高裁事務局人事課長)だけでした(裁判所時報(令和5年4月15日付)29頁参照)。
3 デジタル審議官付
(1) デジタル審議官付の職務は,上司の命を受けて,デジタル審議官の職務を助けることです(最高裁判所事務総局規則7条5項)。
(2)ア 令和6年4月1日,以下の裁判官がデジタル審議官付に任命されました。
 61期の水木淳裁判官
② 62期の中嶋邦人裁判官
③ 65期の簗田真央裁判官
④ 65期の大西正悟裁判官
⑤ 63期の山田一哉裁判官(本務は民事局付)
⑥ 64期の秋田純裁判官(本務は民事局付)
⑦ 65期の狹間巨勝裁判官(本務は民事局付)
⑧ 62期の小西隆博裁判官(本務は刑事局付)
⑨ 66期の小泉敬祐裁判官(本務は刑事局付)
⑩ 65期の瀧澤孝太郎裁判官(本務は家庭局付)
イ 令和6年3月31日までの間,62期の中嶋邦人裁判官及び65期の簗田真央裁判官の2人については情報政策課付を兼務していましたし,63期の山田一哉裁判官,64期の秋田純裁判官,65期の狹間巨勝裁判官及び65期の瀧澤孝太郎裁判官は総務局付を兼務していましたから,新規配属者は4人です。


第4 デジタル審議官付審査官
1 デジタル審議官の下に,デジタル審議官付審査官(最高裁判所事務総局等職制規程2条2項)が設置されています。
2 デジタル審議官付審査官の職務は,上司の命を受けて,デジタル審議官の職務のうち特定事項の調査,企画及び立案に参画することです(最高裁判所事務総局等職制規程2条5項)。
3 デジタル審議官付審査官については,裁判官以外の裁判所職員が任命されていると思います。

第5 サイバーセキュリティ管理官及びデジタル基盤管理官
1 令和6年4月1日,最高裁判所事務総局分課規程の改正により,最高裁判所事務総局にサイバーセキュリティ管理官及びデジタル基盤管理官が新設されました(最高裁判所事務総局分課規程1条)。
2(1) サイバーセキュリティ管理官の職務は「情報セキュリティの確保に関する政策の企画及び立案並びに調整に関する事務」であり(最高裁判所事務総局分課規程40条の2),デジタル基盤管理官の職務は「情報システムの利用に必要な基盤等の整備及び管理に関する政策の企画及び立案並びにこれらに必要な調整に関する事項」及び「統計情報に関する事項」です(最高裁判所事務総局分課規程40条の3)。
(2) サイバーセキュリティ管理官の職務及びデジタル基盤管理官の職務はいずれも,令和6年3月31日までは情報政策課が担当していた職務であります(最高裁判所事務総局の各係の事務分掌に関する文書(平成26年4月1日時点)参照)。
3 サイバーセキュリティ管理官及びデジタル基盤管理官はデジタル審議官の下に設置されているわけではありません(最高裁判所事務総局分課規程1条参照)。
4(1) 令和6年4月1日,54期の世森亮次 裁判官(令和6年3月31日までの役職は最高裁情報政策課情報セキュリティ室長兼情報政策課参事官兼総務局参事官)が最高裁サイバーセキュリティ管理官兼デジタル基盤管理官兼デジタル審議官付参事官に任命されました。
(2) 54期の世森亮次が兼務しているデジタル審議官付参事官はデジタル審議官の下に置かれるポストですから,令和6年4月1日現在,サイバーセキュリティ管理官及びデジタル基盤管理官は事実上,デジタル審議官の指揮監督を受けているのかもしれません。


第6 令和6年4月1日現在のデジタル審議官以下の人員構成
・ 令和6年4月1日現在のデジタル審議官以下のうち,裁判官の人数は以下のとおりであり,本務者は合計16人でした。
① デジタル審議官1人
→ 令和6年3月31日以前は審議官兼情報政策課長でした。
② デジタル審議官付参事官4人(うち3人は兼務あり)
→ 令和6年3月31日以前に総務局付参事官を本務としていた裁判官は4人です。
③ デジタル審議官付10人(うち6人は兼務あり)
→ 令和6年3月31日以前に総務局付を本務又は兼務していた裁判官は6人です。
④ サイバーセキュリティ管理官及びデジタル基盤管理官1人
→ 令和6年3月31日以前は情報セキュリティ室長兼参事官でした。

第7 デジタル推進室設置前の情報政策課
1(1) 平成28年4月1日当時,情報政策課の裁判官は情報政策課長1人及び参事官1人の合計2人だけでした(最高裁判所事務総局情報政策課参照)。
(2) 令和元年10月1日に情報政策課の裁判官が合計3人となりました(課長,情報セキュリティ室長及び課付)。
2 令和2年4月1日に情報政策課長が審議官を兼務するようになり,情報政策課の裁判官が兼務者を含めて合計4人になりました(課長,情報セキュリティ室長,参事官及び課付)。
3 最高裁判所事務総局規則7条は以下のとおりです。
① 局及び課に局付又は課付を置くことができる。
② 局付及び課付は、裁判所事務官を以てこれに充て、上司の命を受けて、その局又は課の事務を掌る。

第8 令和3年4月1日設置のデジタル推進室
1(1) デジタル推進室は,審議官兼情報政策課長をトップとして,令和3年4月1日に事務総局内のプロジェクトチームとして発足しました(日経XTECH「最高裁が急ピッチで進めるクラウド活用の舞台裏、「紙ベースの業務フロー」とも決別へ」参照)。
(2) 令和3年4月1日にデジタル推進室が設置された際,最高裁判所事務総局分課規程の改正はありませんでしたところ,最高裁判所の職員配置図からすれば,デジタル推進室は総務局に近い組織のようでした。
2(1) 令和4年4月1日現在,デジタル推進室には総務・企画グループ及びシステム開発グループがあり,4人の専門人材は総務・企画グループに配属されていました(最高裁判所の令和4年度職員配置図のうちのデジタル推進室職員配置図(令和4年4月1日現在)参照)。
(2) 以下の資料を掲載しています。
・ 中村慎最高裁判所事務総長と,デジタル専門官及び最高裁職員との対談記事(令和4年3月18日実施)
・ デジタル専門官による対談のライブ配信(概要及び対談録)(令和4年8月30日実施)
3(1) 令和5年9月1日現在のデジタル推進室の場合,裁判官の人数は以下のとおりであり,兼務者を含む担当者は合計17人でした。
① 審議官兼情報政策課長1人
→ 令和6年4月1日,同じ人がデジタル審議官になりました。
② 情報セキュリティ室長兼参事官1人
→ 令和6年4月1日,同じ人がサイバーセキュリティ管理官及びデジタル基盤管理官になりました。
③ 総務局参事官兼情報政策課参事官4人
→ 令和6年4月1日,4人ともデジタル審議官付参事官になりました。
④ 情報政策課付兼総務局付1人(多分,デジタル推進室担当)
→ 令和6年4月1日,東京地裁判事になりました。
⑤ 総務局付兼情報政策課付3人(多分,デジタル推進室担当)
→ 令和6年4月1日,このうちの2人がデジタル審議官付になりました。
⑥ 民事局付兼総務局付3人(多分,デジタル推進室担当)
→ 令和6年4月1日,このうちの2人がデジタル審議官付になりました。
⑦ 民事局付兼家庭局付兼総務局付1人(多分,デジタル推進室担当)
→ 令和6年4月1日,民事局付兼デジタル審議官付になりました。
⑧ 刑事局付兼総務局付2人(多分,デジタル推進室担当)
→ 令和6年4月1日,千葉地家裁判事及び名古屋地裁判事になりました。
⑨ 家庭局付兼総務局付1人(多分,デジタル推進室担当)
→ 令和6年4月1日,家庭局付兼デジタル審議官付になりました。
(2) 裁判官以外の裁判所職員1人が情報政策課参事官をしていました(参事官の人数につき最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿(令5.9.1現在)参照)ものの,デジタル推進室には所属していなかったと思います。
4 デジタル推進室は事実上,総務局及び情報政策課にまたがる業務をしていて両者の兼務裁判官が大量にいたため,総務局及び情報政策課から分離する形でデジタル審議官が設置されたのだと思います。

第9 マイクロソフト365を活用した業務の効率化事例を紹介した最高裁判所の資料
1 令和6年1月時点で存在した文書は以下のとおりです。
① 最高裁でのMicrosoft365活用事例の紹介について(令和5年7月の最高裁判所事務総局の文書)
② イチから始めるMicrosoft365~Vol.3 Outlook(予定表共有・会議室予約)~
③ イチから始めるMicrosoft365~Vol.4 FormsとOneNote~
④ 「Microsoft365で業務改善やってみた」①
⑤ M365先行導入結果について(令和5年12月の仙台高裁デジタル企画チームの文書)
⑥ M365第二次先行導入取組結果について(令和5年12月の札幌高裁デジタル企画チームの文書)
⑦ Teamsで投稿する工夫例
⑧ 総研デジタルラボとは?【ケース1】M365で『確認テスト』をやってみた。
2 夜明けの翼法律事務所HP「裁判所Teams新テナント移行後にchromeでTeamsが開けない場合」には,「一度chromeの履歴をcookieも含めて全て削除してchromeを再起動したところ、Teamsが開けました。キャッシュやcookieが邪魔をしていたようです。」と書いてあります。



第10
 RoootSの導入の遅れ
・ 令和5年11月16日の最高裁判所事務総局会議において,令和6年1月までのRoootS(裁判所職員向けのe事件管理システム)の先行導入を同年5月以降とすることが報告されましたところ,同日の会議資料には「再遅延の原因と現在の対策」として以下の記載があります。
・ 再度の遅延の主な原因が、受注業者によるバグの解消に時間がかかっていることは前述のとおりですが、受注業者において、裁判所の業務を踏まえてシステム全体の仕様や整合性をチェックできる者が乏しいことが背景にあることが判明しています。
・ この課題に対しては、受注業者の人的態勢の強化を求めてきましたが、開発要員の単なる増員では解決できないこともあり、最高裁職員が直接助言を行うことはもとより、受注業者との更に緊密なコミュニケーションを図るため、最高裁職員を受注業者の開発現場に出張させるといった対策も行っており、少しずつではあるもののシステムの品質を積み上げていくことができつつあります。
・ 引き続き、品質の確保を最も重視し、各庁における準備や習熟に十分な時間を確保する方針で、開発を進めて行きます。


第11 最高裁判所事務総局の審議官
1 最高裁判所事務総局の審議官の職務は,上司の命を受けて事務総局の事務のうち重要な事項の企画及び立案に参画し,関係事務を総括整理することであって(最高裁判所事務総局規則3条の2第2項),中央省庁でいうところの大臣官房総括審議官(国家行政組織法21条4項に基づく局長級分掌官)に相当します。
2(1) 平成30年6月30日までは事実上の裁判官ポストでしたが,同年7月1日に審議官が2人に増員されたため,1人は裁判官が就任し,残り1人は裁判所書記官が就任するようになりました。
(2) 裁判官以外の裁判所職員が司法行政部門で到達できる最上位のポストは審議官(裁判所書記官の場合)及び家庭審議官(家庭裁判所調査官の場合)であり,裁判部門で到達できる最上位のポストは最高裁判所大法廷首席書記官です。
    これらはいずれも指定職俸給表3号棒(判事4号と同じです。)が適用されるポストであり(指定職俸給表の準用を受ける職員の棒号について(平成30年6月6日付の最高裁判所裁判官会議議決)参照),退官後に瑞宝中綬章を授与されるポストです。
3 組織・定員管理に係る基準(平成13年11月22日付の総務省行政管理局の文書)には以下の記載があります。
    局長級(部長級)分掌職:局長級(部長級)分掌職は、官房及び局(又は部)の所掌に属しない事務の能率的な遂行のためこれを所掌する職で局長(部長)に準ずるものとして置くものとする。
    個々の分掌職間における所掌事務の割り振りや移動が機動的かつ柔軟に行うことが必要な場合には、一定の業務を複数の分掌職で担当する(「複数官型」)ものとし、専門的知識を持った局長級又は部長級の判断のみが求められ、下級の職員によって処理すべき作業が少ない場合には単一の官として分掌職を置く(「単官型」)ものとする。
職務については、「単官型」の場合は「・・・をつかさどる。」と定めることとし、「複数官型」の場合は「命を受け、・・・を分掌する。」と定めること。名称は○○統括官とすること(例:政策統括官、国際統括官)。他の職に「統括官」の名称は用いないこと。
    局長級(部長級)分掌職は、所掌事務や分担を各府省の判断と責任において臨機に変更でき、あるいは、ごく少数の補助者の補助を得てこれを処理することが効率的な業務遂行につながるため、その活用を図ること。
(備考)局長級(部長級)分掌職が置かれる組織:
・(必置)内閣府本府
・(特に必要がある場合)省及び庁


第12 関連記事その他

1 司法行政に関する事項の審議立案その他司法行政上の事務を掌る職のうち,最高裁判所において指定するものは,判事又は判事補をもって充てることができます(司法行政上の職務に関する規則(昭和25年1月17日最高裁判所規則第3号)1項)。
2(1) 裁判所時報1835号(令和6年4月1日付)6頁には以下の記載がありますところ,この記載だけでは改正の趣旨が全く分からないと思います。
≪最高裁判所事務総局等の組織通達及び職制の実施通達の改正について≫
    最高裁判所事務総局における事務の適正かつ円滑な運営を図るため、最高裁判所事務総局規則、最高裁判所事務総局分課規程及び最高裁判所事務総局等職制規程が改正されると共に、 「最高裁判所事務総局等の組織について」 「職制の実施について」の各通達が改正されました。
    これらの通達改正は、最高裁判所事務総局における事務の適正かつ円滑な運営を図るための所要の整備を行ったものです。
(2) 令和6年4月1日以降の「最高裁判所事務総局等の組織について(平成元年3月22日付の最高裁判所事務総長通達)」にデジタル審議官について記載されていないのは,デジタル審議官は最高裁判所事務総局に置かれた局及び課ではないためと思います。
3(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判手続における文字の取扱い等について(令和6年7月5日付の最高裁デジタル審議官等の通知)
・ 事務処理態勢等について(令和6年4月25日付の最高裁判所事務総局デジタル審議官の文書)
・ 令和6年1月30日の最高裁判所事務総局会議の資料
→ 令和6年4月1日施行の①最高裁判所事務総局規則,②最高裁判所事務総局分課規程及び③最高裁判所事務総局等職制規程の新旧対照表が含まれています。
・ 令和6年4月1日現在の,最高裁判所事務総局分課規程最高裁判所事務総局等職制規程最高裁判所事務総局等の組織について(平成元年3月22日付の最高裁事務総長通達)及び職制の実施について(平成4年7月20日付の最高裁事務総長通達)
・ 刑事手続(少年手続を含む)のデジタル化に係るシステムの段階的開発について(令和6年1月16日の最高裁判所事務総局会議の配布資料)
・ 情報セキュリティに関する対策基準における生成AIの取扱いについて(令和5年7月27日付の最高裁判所情報政策課長等の事務連絡)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所が開発しているmints,RoootS及びTreeeS
・ 最高裁判所の職員配置図(平成25年度以降)
 民事裁判手続のIT化
 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 裁判所の情報化の流れ
 歴代の最高裁判所情報政策課長
 最高裁判所事務総局情報政策課
 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌
 裁判所における主なシステム
 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について

最高裁判所が開発しているmints,RoootS及びTreeeS

目次
第1 総論
1 「3つのe」からなる裁判手続等のIT化
2 3つのeの導入経緯
第2 令和2年度に開発を開始したmints(民事裁判書類電子提出システム)
1 総論
2 mintsの名称の由来
3 mintsの操作関係
4 mintsの位置づけ
5 mintsに関する論文
第3 令和4年度に開発を開始したRoootS(裁判所職員向けのe事件管理システム)
1 総論
2 RoootSの導入の遅れ
3 最高裁の財務省に対する説明内容
第4 令和5年度に開発を開始したTreeeS(国民及び裁判所職員向けのe提出・e法廷・e事件管理システム)
1 総論
2 最高裁の財務省に対する説明内容
第5 mintsはTreeeSに移行する予定であること
第6 令和6年3月下旬に発生した登記・供託オンライン申請システムの障害
第7 ロータス・ノーツを基盤とした裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)
第8 システム開発失敗の
原因及びその裁判例
1 システム開発失敗の原因
2 システム開発失敗の裁判例
第9 関連記事その他

第1 総論
1 「3つのe」からなる裁判手続等のIT化
(1) 平成29年6月9日,未来投資戦略2017(成長戦略)及び骨太の方針2017において,裁判手続等のIT化を推進することとされました。
(2)ア 平成30年3月30日,同検討会で「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて-」が取りまとめられられましたところ,同取りまとめ20頁では,①フェーズ1は現行法の下でのウェブ会議・テレビ会議等の運用(e法廷)であり,②フェーズ2は新法に基づく弁論・争点整理等の運用(e法廷)であり,③フェーズ3はオンラインでの申立て等の運用(e提出及びe事件管理)であるとされました。
イ 平成30年6月15日,未来投資戦略2018において,民事訴訟に関する裁判手続等の全面IT化の実現を目指すとされました。
ウ 行政のデジタル化に関する基本原則及び行政手続の原則オンライン化のために必要な事項等を定めたデジタル手続法(令和元年5月31日法律第16号)は令和元年12月16日に施行されました(地方自治研究機構(RILG)HP「デジタル手続法の概要(令和元年12月)」参照)。
(3) 令和2年7月17日,成長戦略フォローアップにおいて,「2025年度中に当事者等による電子提出等の本格的な利用を可能とすることを目指し、一部について先行した運用開始の検討等を司法府に期待し,行政府は必要な措置を講ずるとされました。
2 3つのeの導入経緯

(1) e法廷
ア フェーズ1としてのTeamsを利用したe法廷は,令和2年2月3日に東京地裁及び大阪地裁等で開始し,令和4年11月7日にすべての下級裁判所で開始しました(裁判所HPの「全国の高等裁判所及び地方裁判所でウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の運用を開始しました。」参照)。
イ フェーズ2としてのTeamsを利用したe法廷は,弁論準備手続期日及び和解期日については令和5年3月1日に開始し,弁論期日については令和6年3月1日に開始しました。
ウ 証人尋問及び当事者尋問をWeb会議で行うという意味でのe法廷は,令和8年5月24日までに開始する予定であり,TreeeSを利用したものになるかもしれません(最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)437頁参照)。
(2) e提出
ア e提出の一部先行実施であるmints(民事裁判書類電子提出システム)は,令和4年2月15日に甲府地裁本庁及び大津地裁本庁で試行運用が開始し,令和5年11月28日にすべての裁判所で本格運用が開始しました(裁判所HPの「民事裁判書類電子提出システム(mints)について」参照)。
イ フェーズ3としてのe提出はTreeeSを利用したものであり,令和8年5月24日までに開始する予定です。
(3) e事件管理
ア 裁判所職員向けのe事件管理はRoootSを利用したものであり,令和6年5月以降に一部の庁で先行導入される予定です。
イ フェーズ3としてのe事件管理はTreeeSを利用したものであり,令和8年5月24日までに開始する予定です。


第2 令和2年度に開発を開始したmints(民事裁判書類電子提出システム)
1 総論
(1) mintsは,①民事訴訟法132条の10等に基づき裁判書類をオンラインで提出するためのシステムであり,②対象となるのは,準備書面,書証の写し,証拠説明書など,民訴規則3条1項によりファクシミリで提出することが許容されている書面であり,③当事者双方に訴訟代理人があり、双方の訴訟代理人がmintsの利用を希望する事件において利用できます(mints規則1条1項及び民訴規則3条1項のほか,裁判所HPの「民事裁判書類電子提出システム(mints)について」参照)。
(2) mintsを通じてオンライン提出された裁判書類は印刷して紙の訴訟記録となります(令和4年改正前の民訴法132条の10第5項参照)。
(3) 令和4年2月15日に甲府地裁本庁及び大津地裁本庁で試行運用が開始し,令和5年11月28日にすべての裁判所で本格運用が開始しました。
(4) mints利用事件数(令和5年6月から同年10月までの分)を掲載しています。
2 mintsの名称の由来
(1) 民事訴訟手続における裁判書類の電子提出に係るアプリケーションの主な機能等について(令和3年6月17日付の最高裁判所情報政策課参事官,民事局総括参事官の事務連絡)には以下の記載があります。
    「mints」とは,「MINji saibansyorui denshi Teisyutsu System」の略称である。本システムの利用により,一層,裁判手続のIT化(デジタル化)が促進され,裁判手続の新しい時代を迎えることを示すものとして,「mint(ミント)」のさわやかな語感も意識し,命名したものである。
(2) かなやま総合法律事務所HP「mintsについて(裁判のweb化)について」には「「電子」が略語に入っていないと書記官が自嘲気味に仰っていましたが電子化が重要ですからそのご指摘は仰る通りかと思います。」と書いてあります。
3 mintsの操作関係
(1)ア アップロードする電 子データは,A4又は A3サイズのPDF 形式とする必要があります(mints規則2条 1項)。
イ A3サイズのPDFをアップロードできるようになったのは令和5年4月1日です(裁判所HPの「mints機能改修の概要~mintsに5つの機能が増えます~」(令和5年3月の最高裁判所事務総局の文書)参照)。
(2) オンライン提出の際に識別符号(アカウント)及び暗証符号(パスワード)を入力するため(mints規則2条2項)、提出書面への押印は不要となります。
(3)ア 住所,氏名等の秘匿申立て(民訴法133条1項)及び秘匿事項の届出(民訴法133条2項)は書面でしなければなりません(前者につき民訴規則52条の9第1号)から,mintsを利用することはできません。
イ 令和4年改正民訴法が施行された後であっても,秘匿事項の届出は書面又は電磁的な記録媒体(例えば,USBメモリ)で行うことが想定されています(東弁リブラ2024年5月号「民事裁判手続のIT化の現在とこれから(後編)」(リンク先PDF10頁)参照)。
(4) mints(民事裁判書類電子提出システム)HP「操作マニュアル」等が載っています。
4 mintsの位置づけ
(1) mintsは,e提出の一部先行実施である現行民訴法132条の10に基づく準備書面等の電子提出を可能とするために開発されたシステムであり(裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)32頁参照),令和2年度から令和3年度にかけてクラウド上で開発されました(最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)438頁)。
(2) 東弁リブラ2024年4月号「民事裁判手続のIT化の現在とこれから(前編)」には「mints の導入段階について、mints がオンライン申立ての機能の一部を実施するものであることから「フェーズ 3 の先行実施」とするものもあるが、改正前民訴132条の10第1項に基づく最高裁規則の制定により始まったmintsは改正民訴法を前提とするフェーズ3とは異なる側面もあることから、本稿では「フェーズ 1における e 提出実施段階」と捉えることとする。」と書いてあります(リンク先のPDF7頁)。
5 mintsに関する論文
・ 52期の橋爪信最高裁民事局参事官及び56期の内田哲也最高裁総務局参事官は,他の2人との連名で,NBL1212号(2022年2月15日号)に,「民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用開始について」を寄稿し,金融法務事情2191号(2022年8月10日号)に「民事裁判書類電子提出システム(mints)の概要と運用状況」を寄稿しています。


第3 令和4年度に開発を開始したRoootS(裁判所職員向けのe事件管理システム)
1 総論
(1) RoootSは,法改正を経ることなく実現可能な裁判所職員向けのe事件管理システムであり,令和4年4月からクラウド(MicrosoftAzure)上で開発が行われています。
(2) RoootSは,高地裁民事だけではなく,MINTASを利用している家裁家事・人訴,NAVIUSを利用している簡裁民事,最高裁事件管理システムを利用している最高裁民事も対象とすることとし,これらのいずれについても令和5年度に新システムを導入することを目指して開発されています(全司法新聞2381号(2022年7月)参照)。
(3) 令和6年7月16日,RoootSの裁判所での導入が開始しました(裁判所HPの「民事・家事分野の裁判手続における文字の取扱いについて」参照)。
2 RoootSの導入の遅れ
(1)ア RoootSは,令和5年8月当時,令和6年1月までに一部の裁判所(最高裁裁判部,広島及び札幌の高地家裁(本庁)及び簡裁)での運用を開始する予定でした(裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)33頁参照)。
イ RoootSは,MINTAS(民事裁判事務支援システム)に代わる事件管理システムであり,令和5年8月当時,令和6年度前半に全国の家裁に導入される見込みでした(裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)35頁)。
(2) 令和5年11月16日の最高裁判所事務総局会議において,令和6年1月までのRoootSの先行導入を同年5月以降とすることが報告されましたところ,同日の会議資料には「本年6月の導入計画の見直し後の経過」として以下の記載があります。
・ 実務の安定的運用のためのシステムの品質確保を最も重視し、本年6月に導入計画を見直して、お伝えした態勢強化等の対策は全て実施した上で、受注業者に対し全てのテスト工程のやり直しを指示し、最高裁と工程監理業者とで毎日監理してきました。単体テスト(機能・画面ごとのテスト)及び結合テスト(機能間・画面間のテスト)を再実施し、これらのテスト工程については、概ね順調に進んできました。
・ 本年8月頃より、再度、総合テスト(受注業者が開発工程の仕上げとして行う総合的なテスト)を実施し始めたところ、同月末頃から、テストが予定どおり進まないケースが見られるようになりました。具体的には、総合テストのシナリオ(業務に沿ったテストケース)の実施・完了を阻害するバグが多く発生し、そのバグの解消に時間を要したり、バグを解消してシナリオを進めると更に別のバグが発生してシナリオの実施が中断したりし、総合テスト全体の進捗状況が悪化しました。
・ 総合テストは本年9月末に完了する予定でしたが、現在まで完了せず、その後の最高裁による受入テストを実施するに至っていません。システムの品質を確保し、その上で、運用開始までの各庁における準備や習熟に十分な時間を確保する観点から、令和6年1月までの先行導入は断念し、 先行導入時期を延伸すべきものと判断しました。
3 最高裁の財務省に対する説明内容
(1) 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)436頁には以下の記載があります。
    「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて― 」における内閣官房の取りまとめ結果によると,「3つのeの検討・準備にいずれも着手した上で,そのうち実現可能なものから速やかに,段階的に導入していき,柔軟な見直しを図りつつ,IT化の全面実現に向けた環境整備を順次,かつ確実に進めていくのが相当」との提言があるところ,このうち,職員向けの e 事件管理システムの大部分については,法改正を経ることなく実現することが可能であり,法改正後のフェーズ3への対応を意識し,IT化の全面実現に向けた環境整備を進めていくためにも,クラウド環境への移行を前提とした e 事件管理システムを速やかに設計・開発して段階的に導入していくことが相当である。
    また,このように,e 事件管理部分について先行開発を行って段階的に導入していくことは,法改正後のフェーズ3への円滑な移行に資するものであることから,本システムの開発等に係る経費を要求する。
(2) 最高裁判所の令和5年度概算要求書(説明資料)380頁には以下の記載があります。
    本システム(山中注:RoootSのこと。)は、民事訴訟手続のデジタル化を実現するシステム(山中注:TreeeSのこと。)のうち、令和5年度中のリリースを目指して開発するe事件管理部分(第1次開発部分)のシステムであり、令和5年度に第1次開発を実施することで、フェーズ3で民事訴訟手続の全面デジタル化を実現するための環境整備を段階的に実施する必要がある。
(3) 最高裁判所の令和6年度概算要求書(説明資料)399頁には以下の記載があります。
    本システム(山中注:RoootSのこと。)は、民事訴訟手続のデジタル化を実現するシステム(山中注:TreeeSのこと。)のうち、職員向けのe事件管理部分(第1次開発部分)のシステムであるところ、フェーズ3で民事訴訟手続の全面デジタル化を実現するための環境整備を段階的に実施するため、令和5年度中のリリースを目指して第1次開発を実施し、リリース後は本システムの運用・保守を実施する。


第4 令和5年度に開発を開始したTreeeS(国民及び裁判所職員向けのe提出・e法廷・e事件管理システム)
1 総論
(1) TreeeSは「Trial e-filing e-case management e-court Systems」の略称であり(日弁連法務研究財団HPに載ってある「民事訴訟のIT化と今後の課題」(2024年3月13日付)7頁参照),国民及び裁判所職員向けのe提出・e法廷・e事件管理システムです(裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)33頁参照)。
(2) TreeeSのうち,RoootS以外の民事訴訟手続のデジタル化に係るシステム開発については,令和4年度に法改正の内容を踏まえた要件定義を行った後,令和5年4月から開発を行われています(裁判所をめぐる諸情勢について(令和5年8月の最高裁判所事務総局の文書)33頁)。
2 最高裁の財務省に対する説明内容
(1) 最高裁判所の令和5年度概算要求書(説明資料)380頁には以下の記載があります。
    第208回通常国会で成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律については、公布の日から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日において施行とされている(附則第1条)ところ、令和4年6月7日に閣議決定された規制改革実施計画においては、「民事訴訟手続のデジタル化について、遅くとも令和7年度に本格的な運用を円滑に開始する」こととされており、本改正内容にかかる規律は令和7年度中に施行される見込みである。
    そのため、同法律に定める訴状等のオンライン提出や、訴訟記録を電子化して裁判所としても本改正内容を実現するためのシステムを開発(第2次開発)する必要があるところ、開発に要する期間を考慮すると、令和5年度予算に必要経費を計上した上で開発を進め、施行に備える必要がある。なお、本システムは別途開発を行うe事件管理システム(第1次開発部分)と疎結合することで、全体として民事デジタル化を実現するシステムとなる。
    そこで、令和5年度はこれらのシステム開発にかかる経費を要求する。
    なお、本件は、複数年度にわたる契約を締結する必要があるため、併せて3箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており、令和5年度はその1年目である
(2) 最高裁判所の令和6年度概算要求書(説明資料)399頁には以下の記載があります。
    208回通常国会で成立した民事訴訟法等の一部を改正する法律については、公布の日から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日において施行とされている(附則第1条)ところ、令和5年6月16日に閣議決定された規制改革実施計画においては、「民事訴訟手続のデジタル化について、遅くとも令和7年度に本格的な運用を円滑に開始する」こととされており、本改正内容にかかる規律は令和7年度中に施行される見込みである。
    そのため、裁判所としては、同法律に定める訴状等のオンライン提出や訴訟記録の電子化といった本改正内容を実現するためのシステムを開発(第2次開発)する必要があるところ、令和5年度に引き続き、令和6年度予算に必要経費を計上した上で開発を進め、施行に備える必要がある。なお、本システムは別途開発を行うe事件管理システム(第1次開発部分)と疎結合することで、全体として民事デジタル化を実現するシステムとなる。
    そこで、令和6年度においても、これらのシステム開発にかかる経費を要求する。
    なお、本件は、複数年度にわたる契約を締結する必要があるため、併せて3箇年の国庫債務負担行為によることを要求しており、令和6年度はその2年目である。

第5 mintsはTreeeSに移行する予定であること
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)437頁には以下の記載があります。
    本要求(山中注:「民事訴訟手続のIT化に係るシステム開発のための法改正等に伴う要件定義及び調達支援業務並びに移行設計方針策定」に関する概算要求)にかかる令和4年度においては,前記の令和5年度からのシステム開発に向けた要件定義について,法改正内容を踏まえた修正等を行う必要がある。また,令和7年度のフェーズ3実現時に,令和5年度に開発するシステムも含めて,e 法廷,e 提出及び e 事件管理の「3つの e」に係るシステムが整合的に稼動するよう,将来的な移行方針も定めておく必要がある。
    そこで,(1)令和3年度要件定義において明確に定義できなかった事項や変更点等について,令和4年の法改正の内容を踏まえた修正等を行うための経費及び(2)令和7年度にフェーズ3を実現するシステム(山中注:TreeeSのこと。)を運用開始することを前提に,先行導入されている「e 法廷」(現在 Teams を活用して運用している。),「e 提出」(クラウド(MicrosoftAzure)上に開発している。)(山中注:mintsのこと。)及び「e 事件管理」(令和4年度から先行開発するシステム(山中注:RoootSのこと。)及び既存システム(オンプレミス上で稼動している裁判事務支援システム(NAVIUS)及びMINTAS等の諸システム。))からのスムーズな移行及び将来的な運用方針を立てるための経費を要求する。
    なお,こうした作業を裁判所職員のみで行うことは非常に困難であり,外部の知見も活用しつつ検討を進めていくことが必須である。


第6 令和6年3月下旬に発生した登記・供託オンライン申請システムの障害
1 登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと 供託ねっと)は,平成23年2月14日,法務省オンライン申請システムとは別のシステムとして運用を開始しました(同HPの「登記・供託オンライン申請システムとは」参照)。
2 令和6年3月に生じた登記・供託オンライン申請システムの障害に関し、法務省に対し、国民の信頼に足るシステムの改善及び適正運用等を強く求める会長声明(令和6年4月5日付の東京司法書士会の会長声明)には以下の記載があります。
 令和6年3月25日(月)及び同月29日(金)、法務省の登記・供託オンライン申請システム(以下「本システム」という。)に障害が生じ、長時間にわたり、インターネットによる登記申請(以下「オンライン登記申請」という。)ができない状態となった。とりわけ3月29日の障害の程度は非常に重く、午前、午後ともに障害が生じ、午後の障害では、午後2時30分頃から午後7時30分頃までオンライン登記申請ができない状態であった。
 法務省は、3月29日当日の障害への対策として、通常は法務局の窓口開庁時間、オンライン登記申請の受付時間のいずれも午後5時15分までとしているところ、同日の法務局の窓口開庁時間を午後8時まで、障害から復旧後のオンライン登記申請の受付時間を午後9時までとする措置を採った。
 午後9時までにオンライン登記申請をしたにもかかわらず、同日付けの受付とならず、令和6年4月1日付けの受付扱いになった事案も多く、その後法務省は、これらについて「3月29日付けの受付にするシステム上の対応を実施します。」、「システムにおいて個々の申請ごとに対応する必要があるため、一定のお時間をいただくことになります。今後1週間程度を目処に行いますが、具体的な実施日等については改めてご連絡いたします。」と公表し、現在においても障害の影響は続いている。


第7 ロータス・ノーツを基盤とした裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)
1 最高裁判所総務局制度調査室は,これまでの稼働状況等を踏まえて,円滑にシステム導入を進めるという観点から,専門業者によるシステム監査を行わせたところ,その結果として,平成15年12月末になって,当時の裁判所のシステムの基盤となっていたロータス・ノーツは,大量かつ複雑なデータ処理が要求される裁判事務処理と適合しない面があり,ユーザ数やデータ量の増加に伴ってレスポンスがさらに低下することが予想されるため,現行のシステム基盤を維持したまま,特大規模庁を含む全国展開を進めることは再考すべきであるとの報告書が提出されました。
    また,平成16年4月になって,システム運用業者から,ノーツのバージョンアップを実施したとしても,コストに比較して微小な改善効果しか見込まれないことから,対策として推奨しない旨の調査結果の報告がありました。
    そのため,最高裁判所は,平成16年4月下旬,ロータス・ノーツを基盤として開発されていた従前のシステム(主たるものは民事裁判事務処理システム及び刑事裁判事務処理システム)のまま全国に展開を進めることを中止しました(全国裁判所書記官協議会会報第167号35頁及び36頁参照)。
2(1) 会報書記官第8号29頁には,「裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)」と書いてあります。
(2) 「裁判所の情報化の流れ」には,平成17年1月1日以降の裁判所の情報化の流れが書いてあるだけであるため,平成16年5月の,ロータス・ノーツを基盤とした裁判事務処理システムの全国展開の中止のことは書いてありません。


第8 システム開発失敗の原因及びその裁判例
1 システム開発失敗の原因
・ Qiitaの「こんなシステム開発はもうイヤだ!ありがち失敗事例10連発 ~ あるいはユーザーが本当にホントーに欲しかったものは何か」によれば,システム開発の失敗原因としては以下のものがあります。
① 現場が、アレが欲しいコレが欲しいと言うだけ
② IT部門が、要件をまとめられない
③ 経営者が、やれと言うだけで調整しない
④ 新規事業企画で、市場検証せずにシステム開発を始める
⑤ 要件定義があいまいなまま、開発会社にマル投げする
⑥ 必要な機能か見極められず、無駄な機能を作り込む
⑦ 開発スケジュールが間に合わず、開発者が疲弊する
⑧ 開発プロジェクトの人手不足
⑨ 開発スケジュールを厳守するため、品質にしわ寄せ
⑩ 技術力不足
2 システム開発失敗の裁判例
(1) 弁護士法人モノリス法律事務所HP「システム開発と関係のある法律上の「責任」とは」には以下の記載があります。
システム開発の仕事にかかわる人にとって、ある意味、もっとも法律上の「責任」というものを身近に理解しやすいのは、業務を受注するベンダーにとっての「プロジェクトマネジメント義務」と、業務を発注するユーザーにとっての「協力義務」の二つでしょう。すなわち、システム開発の専門家として、ベンダーも責任を負うし、ユーザーも自社のシステムの問題を他人事にせず開発業務に協力する責任を負っているというわけです。
(2) IT・システム判例メモ(筆者は弁護士伊藤雅浩)の「判例一覧」には,システム開発紛争に関する裁判例が時系列で掲載されていますし,「【争点別】システム開発をめぐる紛争インデックス」には,システム開発紛争に関する裁判例が争点別に掲載されています。
(3)ア 東京高裁平成25年9月26日判決(担当裁判官は29期の小池裕38期の大久保正道及び44期の西森政一)(判例秘書掲載)は,ユーザーである甲とベンダーである乙間で締結されたシステム開発契約に基づくプロジェクトがシステムの開発に至らずに頓挫した責任はいわゆる「プロジェクト・マネジメント義務」に違反した乙にあるとして甲が乙に対して115億8,000万円の損害賠償を求めた請求を74億1,366万6,128円の賠償を求める限度で認容した第1審判決を控訴審において変更して41億7,210万3,169円の賠償を求める限度で認容した事例です(ユーザー勝訴ということです。)。
イ ウエストロージャパンの「第15号 勘定系システム開発失敗で約42億円の支払を命じる判決 ~システム開発トラブルで起きる諸問題(スルガ銀行vs日本IBM事件 )」は,東京高裁平成25年9月26日判決の判例評釈です。
(4)ア  札幌高裁平成29年8月31日判決(担当裁判官は33期の竹内純一47期の高木勝己及び48期の小原一人)(判例秘書掲載)は,病院情報管理システムの構築と同システムをリースすることを目的とする契約(以下「本件契約」という。)に関し,一審原告(ユーザー)は,一審被告(ベンダー)に対し,納期までに上記システムの完成及び引渡しがなかったために損害を被ったとし債務不履行に基づく損害賠償を請求し,一審被告は,一審原告に対し,上記遅滞につき,一審被告には帰責性はないのに一審原告の協力義務違反及び不当な受領拒絶により,売買代金を得られなくなったとして,債務不履行に基づく損害賠償を請求した事案において,一審原告には本件契約上の協力義務違反がある一方,一審被告にはプロジェクトマネジメント義務違反があったとは認められず,一審被告には債務不履行(履行遅滞)について帰責性はないとして,一審原告の請求を棄却し,一審被告の請求のうち,元金ベースで14億1501万9523円を認容しました(ベンダー勝訴ということです。)。
イ イノベンティアHPの「システム開発において仕様確定後の大量の追加要望等がユーザの協力義務違反に当たるとした札幌高裁判決(旭川医大対NTT東日本事件)について」は,札幌高裁平成29年8月31日判決の判例評釈です。

第9 関連記事その他
1(1) 令和4年5月公布の民事訴訟法の改正については法務省HPの「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」「改正の概要」等が載っています。
    また,令和5年6月公布の民事執行手続等の改正については法務省HPの「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律について」「改正の概要」等が載っています。
(2) 東弁リブラ2024年4月号「民事裁判手続のIT化の現在とこれから(前編)」が載っていて,東弁リブラ2024年5月号「民事裁判手続のIT化の現在とこれから(後編)」が載っています。
2(1) 内閣官房HPの「これまでの成長戦略について」に,「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-(2013年)」から「戦略(2021年)」までが載っています。
(2) 全司法新聞2391号(2022年12月)には「当事者サポートの方策として、TreeeSにおけるAIチャットボット機能の活用を検討していることを明らかにしました。」と書いてあります。
3 新版 システム開発紛争ハンドブック 第2訂 ―発注から運用までの実務対応―(2023年3月8日出版)はシステム開発に係る「紛争」にフォーカスした書籍であり,条項解説 事例から学ぶシステム開発契約書作成の実務(2023年12月1日出版)には「紛争を想定した契約条項の作り方」が載っています。
4 以下の記事も参照してください。
・ 民事裁判手続のIT化
・ 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 裁判所の情報化の流れ
・ 歴代の最高裁判所情報政策課長
・ 最高裁判所事務総局情報政策課
・ 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌
・ 裁判所における主なシステム
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について

裁判官に対する罷免判決と退職手当

目次
1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い
2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準
3 裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟
4 公務員に対する退職手当の不支給が適法であるとした最高裁令和5年6月27日判決等
5 関連記事その他

1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い
(1) 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には以下の記載があります。
① 憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。
② 現行法においても、裁判官弾劾法(昭和二十二年法律第百三十七号)第三十七条の規定により罷免されて裁判官の身分を喪失した者については、最高裁判所は、国家公務員退職手当法第十二条第一項第一号の規定により、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。また、罷免以外の事由により裁判官を退官した者についても、最高裁判所は、同法第十四条第一項第一号の規定により、その者が裁判官在任中の行為について禁錮以上の刑に処せられたとき、又は同項第三号の規定により、最高裁判所においてその者が裁判官在任中に裁判官弾劾法第二条に規定する罷免事由に該当する行為をしたと認めたときは、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。
③ 最近二十年間で、国家公務員退職手当法の規定による退職手当の支給を受けなかった者は、合計三人であり、うち二人は、裁判官弾劾法第三十七条の規定により罷免されたため、国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第九十五号)による改正前の国家公務員退職手当法第八条第一項第一号の規定により退職手当の支給を受けなかった者であり、うち一人は、任期を満了して裁判官を退官したが退職手当請求権を放棄したため、退職手当の支給を受けなかった者である。
(2) 国家公務員退職手当法12条(懲戒免職等処分を受けた場合等の退職手当の支給制限)は以下のとおりです。
① 退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支払を受ける権利を承継した者)に対し、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる。
一 懲戒免職等処分を受けて退職をした者
二 国家公務員法第七十六条の規定による失職又はこれに準ずる退職をした者
② 退職手当管理機関は、前項の規定による処分を行うときは、その理由を付記した書面により、その旨を当該処分を受けるべき者に通知しなければならない。
③ 退職手当管理機関は、前項の規定による通知をする場合において、当該処分を受けるべき者の所在が知れないときは、当該処分の内容を官報に掲載することをもつて通知に代えることができる。この場合においては、その掲載した日から起算して二週間を経過した日に、通知が当該処分を受けるべき者に到達したものとみなす。

2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準
(1) 国家公務員退職手当法施行令17条(一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする場合に勘案すべき事情)は以下のとおりです。
    法第十二条第一項に規定する政令で定める事情は、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者の勤務の状況、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違に至つた経緯、当該非違後における当該退職をした者の言動、当該非違が公務の遂行に及ぼす支障の程度並びに当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響とする。
(2) 国家公務員退職手当法の運用方針(昭和60年4月30日総人第261号)には以下の記載があります。
第十二条関係
一 非違の発生を抑止するという制度目的に留意し、一般の退職手当等の全部を支給しないこととすることを原則とするものとする。
二 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることを検討する場合は、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者が行った非違の内容及び程度」について、次のいずれかに該当する場合に限定する。その場合であっても、公務に対する国民の信頼に及ぼす影響に留意して、慎重な検討を行うものとする。
イ 停職以下の処分にとどめる余地がある場合に、特に厳しい措置として懲戒免職等処分とされた場合
ロ 懲戒免職等処分の理由となった非違が、正当な理由がない欠勤その他の行為により職場規律を乱したことのみである場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ハ 懲戒免職等処分の理由となった非違が過失(重過失を除く。)による場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ニ 過失(重過失を除く。)により禁錮以上の刑に処せられ、執行猶予を付された場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
三 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることとすることを検討する場合には、例えば、当該退職をした者が指定職以上の職員であるとき又は当該退職をした者が占めていた職の職務に関連した非違であるときには処分を加重することを検討すること等により、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任」を勘案することとする。
四 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることとすることを検討する場合には、例えば、過去にも類似の非違を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがある場合には処分を加重することを検討すること等により、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者の勤務の状況」を勘案することとする。
五 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることとすることを検討する場合には、例えば、当該非違が行われることとなった背景や動機について特に参酌すべき情状がある場合にはそれらに応じて処分を減軽又は加重することを検討すること等により、施行令第十七条に規定する「当該非違に至った経緯」を勘案することとする。
六 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることとすることを検討する場合には、例えば、当該非違による被害や悪影響を最小限にするための行動をとった場合には処分を減軽することを検討し、当該非違を隠蔽する行動をとった場合には処分を加重することを検討すること等により、施行令第十七条に規定する「当該非違後における当該退職をした者の言動」を勘案することとする。
七 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることとすることを検討する場合には、例えば、当該非違による被害や悪影響が結果として重大であった場合には処分を加重することを検討すること等により、施行令第十七条に規定する「当該非違が公務の遂行に及ぼす支障の程度」を勘案することとする。
八 本条第一項第二号に規定する「これに準ずる退職」とは、例えば次に掲げる規定による退職をいう。
イ 国会職員法第十条
ロ 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第九十条
ハ 自衛隊法第三十八条第二項

3 裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟
(1) 法務省大臣官房訟務企画課が作成した「逐条解説 法務大臣権限法」(平成19年3月発行の第2版)116頁ないし118頁には以下の記載があります(注釈部分は削っています。なお,取消訴訟は抗告訴訟の一種です(行政事件訴訟法3条2項))。
○裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟
   裁判所には,裁判所法80条により職員の任免等の司法行政事務を所掌する権限が与えられているので,例えば,裁判所のした裁判官以外の裁判所職員に対する懲戒処分を不服として裁判所の長を処分行政庁とし国を被告とする抗告訴訟が提起された場合に,当該訴訟は,5条1項に規定する行政庁の処分に係る国を被告とする訴訟に該当するから,当該訴訟について,裁判所の長は,行政庁として所部の職員を代理人に指定し,又は弁護士を訴訟代理人に選任して追行させることができる。
   これらの訴訟についても,三権分立制度の趣旨から,本条の適用を消極に解する考え方がある。しかし,裁判官以外の裁判所職員に対する懲戒処分等は,その本来的権限である司法権の行使に係るものではないから,これに被告国を代表する法務大臣が関与することが直ちに三権分立の趣旨に反するとは言い難い。むしろ裁判所職員に対する懲戒処分等については,国公法の規定が準用され(裁判所職員臨時措置法),一般の国家公務員に対する懲戒処分等と共通の問題を有することを考慮すると,基本的には本条の適用を肯定した上で,実際上,法務大臣の関与の必要性,相当正当を個別具体的に検討するのが相当であると考えられる。
   この点に関する従前の訟務実務の取扱いとしては,例えば,裁判官以外の裁判所職員の懲戒処分等に係る訴訟について,訟務部局として実質的に関与したものは見あたらず,裁判所自らが弁護士を訴訟代理人に選任して追行しているのが通例と思われる(大阪高裁昭和40年3月22日判決・判時408号27ページ,東京高裁昭和55年10月29日判決・行裁集31巻10号2140ページ等)。この取扱いは,国会の機関を当事者とする訴訟についての訟務実務の取扱いをも考慮すると,司法行政事務を処理する裁判所自体が争訟ないし法律の専門組織であって,その機関を当事者とする訴訟の追行については,裁判所の自主的判断にゆだね,法務大臣の関与は差し控えるのが適当であるとする考え方によるものと思われる。
   なお,国有財産法や会計法,債権管理法等においては,財務大臣の総轄の下に,最高裁判所長官又はその委任を受けた者が,部局長等としてその所掌事務を処理するとされており,これらの者がその処理に係る処分についての国を被告とする抗告訴訟の処分行政庁となり得ることが想定される場合には,当該事務は司法権の行使とは関係がなく,また,被告国を代表する法務大臣として訴訟の統一的処理を確保する必要性が認められるから,当然に法務大臣権限法6条の適用があると解するのが相当である。
(2) 罷免された70期司法修習生に対する平成29年1月18日付の最高裁判所人事局長の通知には以下の記載があります。
    この処分については,行政事件訴訟法の規定により, この通知を受けた日の翌日から起算して6か月以内に国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣となります。) ,処分の取消しの訴えを提起することができます(なお,この通知を受けた日の翌日から起算して6か月以内であっても,この処分の日の翌日から起算して1年を経過すると処分の取消しの訴えを提起することができなくなります。)。

4 公務員に対する退職手当の不支給が適法であるとした最高裁令和5年6月27日判決等
(1) 最高裁令和5年6月27日判決は以下の判示をしています(裁判官宇賀克也の反対意見が付いています。)。
    本件条例の規定により支給される一般の退職手当等は、勤続報償的な性格を中心としつつ、給与の後払的な性格や生活保障的な性格も有するものと解される。そして、本件規定は、々の事案ごとに、退職者の功績の度合いや非違行為の内容及び程度等に関する諸般の事情を総合的に勘案し、給与の後払的な性格や生活保障的な性格を踏まえても、当該退職者の勤続の功を抹消し又は減殺するに足りる事情があったと評価することができる場合に、退職手当支給制限処分をすることができる旨を規定したものと解される。このような退職手当支給制限処分に係る判断については、平素から職員の職務等の実情に精通している者の裁量に委ねるのでなければ、適切な結果を期待することができない。
    そうすると、本件規定は、懲戒免職処分を受けた退職者の一般の退職手当等につき、退職手当支給制限処分をするか否か、これをするとした場合にどの程度支給しないこととするかの判断を、退職手当管理機関の裁量に委ねているものと解すべきである。したがって、裁判所が退職手当支給制限処分の適否を審査するに当たっては、退職手当管理機関と同一の立場に立って、処分をすべきであったかどうか又はどの程度支給しないこととすべきであったかについて判断し、その結果と実際にされた処分とを比較してその軽重を論ずべきではなく、退職手当支給制限処分が退職手当管理機関の裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、当該処分に係る判断が社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に違法であると判断すべきである。
    そして、本件規定は、退職手当支給制限処分に係る判断に当たり勘案すべき事情を列挙するのみであり、そのうち公務に対する信頼に及ぼす影響の程度等、公務員に固有の事情を他の事情に比して重視すべきでないとする趣旨を含むものとは解されない。また、本件規定の内容に加え、本件規定と趣旨を同じくするものと解される国家公務員退職手当法(令和元年法律第37号による改正前のもの)12条1項1号等の規定の内容及びその立法経緯を踏まえても、本件規定からは、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする場合を含め、退職手当支給制限処分をする場合を例外的なものに限定する趣旨を読み取ることはできない。
(2)ア 最高裁令和5年6月27日判決の裁判要旨は以下のとおりです。
    酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を受けて公立学校教員を退職した者が、職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により、県の教育委員会から、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分に係る上記教育委員会の判断は、上記の者が管理職ではなく、上記懲戒免職処分を除き懲戒処分歴がないこと、約30年間にわたって誠実に勤務してきており、反省の情を示していること等を勘案しても、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。
⑴ 上記酒気帯び運転の態様は、自家用車で酒席に赴き、長時間にわたって相当量の飲酒をした直後に、同自家用車を運転して帰宅しようとしたところ、運転開始から間もなく、過失により走行中の車両と衝突し、同車両に物的損害を生じさせる事故を起こすというものであった。
⑵ 上記の者が教諭として勤務していた高等学校は、上記酒気帯び運転の後、生徒やその保護者への説明のため、集会を開くなどの対応を余儀なくされた。
⑶ 上記教育委員会は、上記酒気帯び運転の前年、教職員による飲酒運転が相次いでいたことを受けて、複数回にわたり服務規律の確保を求める通知等を発出するなどし、飲酒運転に対する懲戒処分につきより厳格に対応するなどといった注意喚起をしていた。
(2につき、反対意見がある。)
イ 村松法律事務所HPの「判例速報:懲戒免職処分を受けたことによる、退職手当等の全部不支給処分の違法性に関する最高裁判例(弁護士 内田健太)」最高裁令和5年6月27日判決の判例評釈が載っています。
(3) 最高裁令和6年6月27日判決(反対意見なし。)は, 飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けて地方公共団体の職員を退職した者に対してされた大津市職員退職手当支給条例(昭和37年大津市条例第7号。令和元年大津市条例第25号による改正前のもの)11条1項1号の規定による一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例です。

5 関連記事その他

(1) 裁判官弾劾裁判所令和6年4月3日判決(判決要旨)は,46期の岡口基一裁判官を罷免しましたところ,当該判決について,金岡法律事務所HPの「岡口罷免判決要旨を読む」には「裁判官のあるべき身分保障、裁判官のあるべき市民的自由、比例原則など、思考を巡らせるに値する事件であったのに、途中で辟易するほど、中身のない判決であった。」と書いてあります。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所の人事行政事務の実情
・ 裁判官の年収及び退職手当(推定計算)
・ 判検事トップの月収と,行政機関の主な特別職の月収との比較
・ 裁判官の号別在職状況
・ 裁判官の昇給
・ 裁判官の給料と他の国家公務員の給料との整合性に関する答弁例
・ 裁判官の兼職
・ 任期終了直前の依願退官及び任期終了退官における退職手当の支給月数(推定)
・ 裁判官の退官情報
・ 裁判官の早期退職
・ 50歳以上の裁判官の依願退官
・ 平成18年度以降の,公証人の任命状況
・ 裁判官の「報酬」,検察官の「俸給」及び国家公務員の「給与」の違い
・ 戦前の裁判官の報酬減額の適法性に関する国会答弁
・ 裁判官の報酬減額の合憲性に関する国会答弁
・ 司法修習生の罷免等に対する不服申立方法

最高裁及び法務省から国会への情報提供文書

目次
1 最高裁から衆議院への情報提供文書
2 最高裁から参議院への情報提供文書
3 法務省から参議院への情報提供文書
4 関連記事その他

1 最高裁から衆議院への情報提供文書
・ 委員会決議及び附帯決議の対処状況に関する情報提供について(令和4年1月11日付の衆議院調査局の依頼)情報提供文書
・ 委員会決議及び附帯決議の対処状況に関する情報提供について(令和5年1月6日付の衆議院調査局の依頼)情報提供文書
・ 委員会決議及び附帯決議の対処状況に関する情報提供について(令和6年1月5日付の衆議院調査局の依頼)情報提供文書
* 最高裁からの情報提供文書のファイル名は「委員会決議及び附帯決議の対処状況に関する,衆議院調査局に対する最高裁の情報提供文書(令和4年1月のもの)」といったものです。

2 最高裁から参議院への情報提供文書
・ 令和4年度予算案関係資料要求(裁判所関係)(令和4年1月26日付の参議院法務委員会調査室の依頼)情報提供文書
・ 令和5年度予算案関係資料要求(裁判所関係)(令和5年1月30日付の参議院法務委員会調査室の依頼)情報提供文書
・ 令和6年度予算案関係資料要求(裁判所関係)(令和6年1月29日付の参議院法務委員会調査室の依頼)情報提供文書
* 最高裁からの情報提供文書のファイル名は「令和4年度予算案関係資料要求(裁判所関係)(令和4年1月26日付の参議院法務委員会調査室の依頼)に基づいて参議院法務委員会に提供した文書」といったものです。

3 法務省から参議院への情報提供文書
・ 令和4年度法務省関係予算委嘱審査要求(法務省関係)(令和4年1月26日付の参議院法務委員会調査室の依頼)情報提供文書
・ 令和5年度法務省関係予算委嘱審査要求(法務省関係)(令和5年1月30日付の参議院法務委員会調査室の依頼)情報提供文書
・ 令和6年度法務省関係予算委嘱審査要求(法務省関係)(令和6年1月29日付の参議院法務委員会調査室の依頼)情報提供文書
* 法務省からの情報提供文書のファイル名は「参議院法務委員会調査室予算委嘱審査資料(令和6年2月の法務省の文書)」といったものです。

4 関連記事その他
(1) 参議院法務委員会に対する情報提供文書の締切が毎年2月末日となっている関係で,情報提供文書の基準日は毎年12月1日になっていることが多いです。
(2) 以下の記事も参照してください。
(概算要求から級別定数の配布まで)
・ 最高裁判所の概算要求書(説明資料)
・ 最高裁判所の国会答弁資料
・ 最高裁及び法務省から国会への情報提供文書
・ 裁判所をめぐる諸情勢について
・ 裁判所職員定員法の一部を改正する法律に関する国会答弁資料等
・ 級別定数の改定に関する文書
・ 裁判所職員の予算定員の推移
・ 下級裁判所の裁判官の定員配置
(その他)
 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
 毎年6月開催の長官所長会同
・ 高等裁判所事務局長事務打合せ
・ 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長
・ 下級裁判所事務局の係の事務分掌
・ 東京高裁及び大阪高裁事務局,並びに東京地裁,大阪地裁及び大阪家裁事務局に設置されている係
・ 裁判所書記官,家裁調査官及び下級裁判所事務局に関する規則,規程及び通達

令和5年度実務協議会(夏季)

目次
1 令和5年7月13日及び14日に開催された,令和5年度実務協議会(夏季)の資料
2 関連記事その他

1 令和5年7月13日及び14日に開催された,令和5年度実務協議会(夏季)の資料
① 出席者名簿
② 日程表
③ 民事・行政事件の現状と課題
④ 刑事裁判最前線
⑤ 家庭裁判所の現状と課題
⑥ 最高裁判所経理局作成資料
→ 参考資料として,裁判手続等のデジタル化関連予算額推移庁舎新営工事における次世代対応について冷暖房の運転時間延長をはじめとする柔軟な稼働について(令和5年6月5日付の最高裁判所経理局総務課長等の事務連絡),及び今後の裁判所共済組合について(令和5年度実務協議会(夏季)の資料)が含まれています。
⑦ 裁判所職員総合研修所の概要
→ 参考資料として,令和5年度研修実施計画令和5年度研修実施計画一覧表(令和4年度との比較表)及び令和5年度裁判所職員(裁判官以外)研修のイメージが含まれています。

2 関連記事その他
(1) 実務協議会というのは,新たに地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長を命ぜられた者を対象に,年に2回開催されている研修です(「裁判官研修実施計画」参照)。
(2) 最高裁判所人事局が作成した資料はなぜかありません。
(3) 令和5年度実務協議会(夏季)に関する文書として一本化しています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
→ 平成30年度冬季以降の資料を掲載しています。

令和4年度実務協議会(夏季)

目次
1 令和4年7月15日に開催された,令和4年度実務協議会(夏季)の資料
2 関連記事その他

1 令和4年7月15日に開催された,令和4年度実務協議会(夏季)の資料
① 出席者名簿
② 日程表
③ 民事・行政事件の現状と課題
④ 刑事裁判最前線
⑤ 家庭裁判所の現状と課題
⑥ 最高裁判所経理局作成資料
⑦ 裁判所職員総合研修所の概要
→ 参考資料として,令和4年度研修実施計画令和4年度研修実施計画一覧表(令和3年度との比較表)及び令和4年度裁判所職員(裁判官以外)研修が含まれています。

2 関連記事その他
(1) 実務協議会というのは,新たに地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長を命ぜられた者を対象に,年に2回開催されている研修です(「裁判官研修実施計画」参照)。
(2) 最高裁判所人事局が作成した資料はなぜかありません。
(3) 令和4年度実務協議会(夏季)に関する文書として一本化しています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
→ 平成30年度冬季以降の資料を掲載しています。