その他裁判所関係

令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容

目次
1 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
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1 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)434頁ないし438頁には,「情報通信技術を活用した裁判手続等の運用に必要な経費」として以下の記載があります。
(1) 民事訴訟手続のIT化のためのライセンス利用料等
<要求要旨>
    国民生活に関わる様々な分野でオンライン申請を始めとして,手続のIT化が進められ,それが広く受け入れられている状況にあることを踏まえれば,裁判所においても,民事訴訟手続のIT化を見据えて検討を進めていくことが必要であるところ,内閣官房における「裁判手続等のIT化検討会」の取りまとめを受けて,令和元年度から令和2年度にかけて,ウェブ会議等のITツールを積極的に利用した,より効果的・効率的な争点整理の運用(以下「フェーズ1の運用」という。)が第一次実施庁及び第二次実施庁において,順次開始されている。令和3年度には,IT化を更に推進するため,フェーズ1の運用を開始する庁を地方裁判所支部(第三次実施庁)の一部に拡大し,令和4年度には順次残りの地方裁判所支部に拡大していく必要がある。また,現在,法制審議会において民訴法の改正に向けた調査審議が進められており,令和4年中に法改正が実現した場合には,ウェブ会議を用いた非対面での和解期日等の運用(以下「フェーズ2の運用」という。)を同年度中に開始する必要があることから,少なくとも最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)においてフェーズ1の運用やフェーズ2の運用(以下これを合わせて「ウェブ会議等の運用」という。)を開始する必要がある。
    そこで,最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)におけるウェブ会議等の運用を開始するために必要となるLAN配線の敷設工事費用の経費を要求する。
    また,第一次実施庁,第二次実施庁及び第三次実施庁におけるウェブ会議等の運用のほか,最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)でのウェブ会議等の運用開始に伴って,各庁において必要となるウェブ会議用ソフトのライセンス等の経費を要求する。さらに,ウェブ会議等の運用に当たっては,インターネット上で実際の事件情報を取り扱うところ,事件当事者の個人情報等を保護するため,適切な情報セキュリティ対策を施す必要があることから,必要なセキュリティ対策を徹底するための経費を要求する。

(2) ウェブ会議等の円滑な運用を進めるための支援業務費用
<要求要旨>
    令和元年度より,Microsoft365 を用いて,ウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の運用(以下「フェーズ1の運用」という。)を開始しているが,令和4年中の民訴法改正が実現した場合にはウェブ会議を用いた非対面での和解期日等の運用(以下「フェーズ2の運用」という。)も同年度中に開始する必要があり,フェーズ1の運用やフェーズ2の運用(以下これを合わせて「ウェブ会議等の運用」という。)においてウェブ会議等を活用していく中では,不正アクセスや回線の故障のほかソフトウェアの不具合などに起因する,単なる使用方法の不明点の照会だけでは解消しない様々な障害が生じることが予想される。ウェブ会議等の運用を円滑かつ安定的に進めていくためには,障害発生時における原因の切り分けやその後の復旧対応等を迅速に行うことが重要であるところ,専門的な知識を有しない裁判所の職員がそれらの対応を行うことは不可能である。
    そこで,ウェブ会議等の運用を円滑かつ安定的に進めるために,専門業者に対し,障害発生時の対応等を行う運用支援の各業務を委託するための経費を要求する。

(3) 民事訴訟手続のIT化のためのウェブ会議用機器等の購入【要望】
<要求要旨>
    国民生活に関わる様々な分野でオンライン申請を始めとして,手続のIT化が進められ,それが広く受け入れられている状況にあることを踏まえれば,裁判所においても,民事訴訟手続のIT化を見据えて検討を進めていくことが必要であるところ,内閣官房における「裁判手続等のIT化検討会」の取りまとめを受けて,令和元年度から令和2年度にかけて,ウェブ会議等のITツールを積極的に利用した,より効果的・効率的な争点整理の運用(以下「フェーズ1の運用」という。)が第一次実施庁及び第二次実施庁において,順次開始されている。令和3年度には,IT化を更に推進するため,フェーズ1の運用を開始する庁を地方裁判所支部(第三次実施庁)の一部に拡大し,令和4年度には順次残りの地方裁判所支部に拡大していく必要がある。また,現在,法制審議会において民訴法の改正に向けた調査審議が進められており,令和4年中に法改正が実現した場合には,ウェブ会議を用いた非対面での和解期日等の運用(以下「フェーズ2の運用」という。)を同年度中に開始する必要があることから,少なくとも最高裁判所及び高等裁判所(支部を含む。)においてフェーズ1の運用やフェーズ2の運用(以下これを合わせて「ウェブ会議等の運用」という。)を開始する必要がある。
    そこで,運用開始となる裁判所のうち高等裁判所(支部を含む。)においてウェブ会議等の運用に必要となる機器等を整備するための経費を要求する。

(4) 民事訴訟手続のIT化に係るシステム(e 事件管理)開発等
<要求要旨>
    「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ ―「3つのe」の実現に向けて― 」における内閣官房の取りまとめ結果によると,「3つのeの検討・準備にいずれも着手した上で,そのうち実現可能なものから速やかに,段階的に導入していき,柔軟な見直しを図りつつ,IT化の全面実現に向けた環境整備を順次,かつ確実に進めていくのが相当」との提言があるところ,このうち,職員向けのe 事件管理システムの大部分については,法改正を経ることなく実現することが可能であり,法改正後のフェーズ3への対応を意識し,IT化の全面実現に向けた環境整備を進めていくためにも,クラウド環境への移行を前提としたe 事件管理システムを速やかに設計・開発して段階的に導入していくことが相当である。
    また,このように,e 事件管理部分について先行開発を行って段階的に導入していくことは,法改正後のフェーズ3への円滑な移行に資するものであることから,本システムの開発等に係る経費を要求する。

(5) 民事訴訟手続のIT化に係るシステム開発のための法改正等に伴う要件定義及び調達支援業務並びに移行設計方針策定
<要求要旨>
    未来投資戦略2017等を踏まえ,最高裁判所では,平成30年度に,様々な選択肢が考えられるIT化の範囲,手段又は費用の大枠を把握するためのコンサルティングを実施し,令和2年度には,全面IT化後の民事訴訟の業務フローの整理,システム構想の全体像と全体計画の明確化及び具体的なシステムの開発手法や導入展開方法を策定するためのコンサルティングを実施した。
    また,令和2年2月,法制審議会の専門部会である「民事訴訟法(IT化関係)部会」が設置され,この専門部会での調査審議を経て「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」等が取りまとめられ,令和4年中の関係法律の改正を目指すこととされている。
    そして,令和3年度には,上記全体計画を踏まえ,令和4年度からのシステム開発(令和5年度に先行リリースを目指す裁判事務処理システム(民事及び家事事件)(以下,「MINTAS」という。)相当機能のe 事件管理システムの開発に向けた要件定義)及び令和5年度からのシステム開発(残りのe 事件管理システム及びe 提出システム等)に向けた要件定義を実施する。
    以上の経過を踏まえ,本要求にかかる令和4年度においては,前記の令和5年度からのシステム開発に向けた要件定義について,法改正内容を踏まえた修正等を行う必要がある。また,令和7年度のフェーズ3実現時に,令和5年度に開発するシステムも含めて,e 法廷,e 提出及びe 事件管理の「3つのe」に係るシステムが整合的に稼動するよう,将来的な移行方針も定めておく必要がある。
    そこで,(1)令和3年度要件定義において明確に定義できなかった事項や変更点等について,令和4年の法改正の内容を踏まえた修正等を行うための経費及び(2)令和7年度にフェーズ3を実現するシステムを運用開始することを前提に,先行導入されている「e 法廷」(現在Teams を活用して運用している。),「e 提出」(クラウド(MicrosoftAzure)上に開発している。)及び「e 事件管理」(令和4年度から先行開発するシステム及び既存システム(オンプレミス上で稼動している裁判事務支援システム(NAVIUS)及びMINTAS等の諸システム。))からのスムーズな移行及び将来的な運用方針を立てるための経費を要求する。
    なお,こうした作業を裁判所職員のみで行うことは非常に困難であり,外部の知見も活用しつつ検討を進めていくことが必須である。

(6) 民事裁判書類電子提出システムに係るクラウド基盤の提供,運用・保守及び展開支援
<要求要旨>
    「3つのe」のうち,e提出の一部について,現行法上可能な範囲で先行実施するために,令和2年度から令和3年度にかけて開発した民事裁判書類電子提出システム(以下,「本システム」という。)の運用保守を行うための経費を要求する。
    具体的には,本システムは,令和3年度中に2庁について先行導入される予定であり,令和4年度以降,導入範囲を拡大する予定になっているところ,本システムで使用するクラウドサービスの提供,運用業務,ユーザサポート業務及びアプリケーション保守業務並びに令和4年度から令和5年度にかけて導入される各庁への導入支援を行うことで,本システムの安定的な稼動及び円滑な導入を実現するための経費を要求する。

(7) 民事裁判書類電子提出システムの改修等
<要求要旨>
    本システムは民事裁判事務における利用を想定して開発されたシステムであるところ,令和2年度及び令和3年度の開発は,小規模な運用開始を念頭においた必要最小限度の機能を実装するものであった。前記のとおり,令和4年度以降,導入範囲を拡大すると,利用業務及び利用者の範囲の拡大並びに利用事件数の増加が見込まれることから,これらに対応し,より合理化・効率化された裁判事務を実現するための機能を実装して,当事者及び裁判所職員の利便性を高めた利用しやすいシステムとし,また将来的にフェーズ3で必要になると思われる機能を実装することで,当事者及び裁判所職員に対してフェーズ3の円滑な導入を図るためにも,そのために必要な改修の経費を要求する。

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(1) 二弁フロンティア2021年10月号「裁判IT化の現在地」が載っています。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判所の情報化の流れ
 歴代の最高裁判所情報政策課長
 最高裁判所事務総局情報政策課
 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌
 裁判所における主なシステム
 民事事件の裁判文書に関する文書管理
 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
 最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会

新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料

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1 過去の実務協議会の資料
2 関連記事その他

1 過去の実務協議会の資料
(1) 過去の実務協議会の資料は以下のとおりです。
平成30年度冬季令和元年度夏季令和元年度冬季令和2年度夏季令和2年度冬季
(2) 実務協議会というのは,新たに地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長を命ぜられた者を対象に,年に2回開催されている研修です。

2 関連記事その他
(1) 令和元年6月13日付の理由説明書には以下の記載があります。
    最高裁判所は,我が国唯一の最上級裁判所として裁判手続及び司法行政を行う機関であり,最高裁判所判事や事務総局の各局課館長は,裁判所の重大な職務を担う要人として,襲撃の対象となるおそれが高く,その重大な職務が全うされるように,最高裁判所の庁舎全体に極めて高度なセキュリティを確保する必要がある。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 裁判官研修実施計画
・ 幹部裁判官の定年予定日
 毎年6月開催の長官所長会同
 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長

最高裁判所における刑事事件の弁論期日

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1 最高裁判所における刑事事件の弁論期日
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1 最高裁判所における刑事事件の弁論期日
・ 最高裁裁判所裁判部が作成した,刑事書記官実務必携(平成31年4月1日現在)71頁ないし75頁には以下の記載があります。

第9 公判
1 期日前の準備
(1) 弁護人がない場合の措置
   審議の結果,弁論が開かれることになった事件について,上告審の弁護人が選任されていないときは,次の要領により,弁護人の選任に関する照会等の手続を進める。
ア 必要的弁護事件であるときは,担当調査官と相談の上,被告人に対して弁護人選任に関する照会を行い,被告人が弁護人を選任しないときは,速やかに東京地方事務所に国選弁護人候補指名通知を依頼する。
イ 任意的弁護事件であるときは,担当調査官に相談の上,主任裁判官の指示を待って前記弁護人選任に関する照会等の手続を進める。
(2) 期日の調整,指定及び変更
ア 審議の結果,弁論が開かれることとなった事件については,担当調査官又は先任裁判官の秘書官から,審議終了後直ちにその旨の連絡があり,担当調査官から期日の指定等について必要事項の連絡ないし指示がある。担当書記官は,直ちに首席書記官に報告するとともに,前記指示に基づき, 当該小法廷の所定の開廷日の中から複数期日を選定して検察官及び弁護人に電話で期日の都合を打診する。
   この場合,期日の選定に当たっては,弁論要旨等の作成提出に要する期間,弁護人の住所地からの交通の便等をも考慮し,期日指定の日から公判期日まで少なくとも1箇月くらいの余裕を見込むのが通例である。
   また,要警備事件については,期日調整の時点で,裁判関係庶務係を通して,東京地裁警務課の差支えの有無を確認しておく。
   なお,この期日調整は,情報管理の観点からできるだけ短時間のうちに済ませ,調整後直ちに,期日の指定・通知等の事務処理を完了する。
イ 期日の調整が終了したときは,直ちに首席書記官に報告するとともに,担当調査官の承諾を得,秘書官を通じて当該主任裁判官の支障の有無を確認した上,公判期日指定書を作成し,裁判長の決裁を受ける。
ウ 期日の調整の際, 出頭予定の弁護人の数及び氏名,弁論時間その他弁論進行予定等を確かめるほか,事案によっては被告人を含めた傍聴人の見込み数等法廷警備に関する情報をも収集する。
エ 期日が指定告知された後, この期日の変更請求があったときは,直ちに,その旨担当調査官に連絡するとともに,相手方の意見を聴いた上,所要事項を記載した決裁票,期日変更請求書,相手方の意見書(又は電話聴取書)の順にクリップで一括し, 当審記録とともに担当調査官,主任裁判官に提出して決裁を受ける。
   その上で,公判期日変更決定(又は却下決定)書を作成し,裁判体の押印を受ける。変更決定の場合は訴訟関係人にその謄本を送達する。
(3) 公判期日の通知
   期日が指定されると,弁護人には特別送達郵便により,被告人には簡易書留郵便により,検察官には検察庁送付簿により,それぞれ公判期日通知書を送達又は送付して通知する。収容被告人であっても封筒の表書きは被告人本人あてとする。被告人に通知したことは,記録表紙継続用紙の通知事項欄に所要事項を記入し,書記官が認印してこれを明らかにするとともに,前記公判期日指定書及び公判期日通知書の写しを記録に編てつする。
   なお,国選弁護人の場合は,東京地方事務所(霞が関分室)に当該事件について公判期日が指定された旨電話連絡する。それを受けて同事務所から公判等時間連絡メモが送付される。
(4) 期日表の作成及び配布
   期日指定後,同期日の立会検察官が決まった段階で刑事弁論期日表を作成し,関係者に配布する。
   期日表の作成は, 開廷時刻,立会検察官名を記入するほか, 同表の「摘要」欄には,経過を明らかにする趣旨で「21.1.29の弁論期日変更」等と記入し,更に該当する事件は「検察官上告」, 「双方上告」, 「死刑事件」と記入する。
   事例によっては,弁論後即日判決を宣告することが予想される場合(非常上告事件にその例が多い。)があるが,期日表には弁論期日のみ記載することとされている期日表の配布先と必要部数は,原則として以下のとおりである。

期日表の配布先と部数

配 布 先弁論期日表宣告期日表備考
各裁判官室3(×5)3(×5)
首席・上席調査官室
主任調査官室
各調査官室1(×3)1(×3)
大法廷書記官室
小法廷書記官室首席・上席書記官控えを含む
他の小法廷書記官室1(×2)1(×2)死刑事件のみ参考送付
裁判関係庶務係
合   計3131

(5) 答弁書,弁論要旨等の提出と付随事務
   公判期日における弁論に備え, 当事者から答弁書,弁論要旨等が提出されたときの措置は,次の要領による。
ア 答弁書は,原本を記録に編てつするとともに,その謄本を速やかに相手方に送達し,その写しを全裁判官及び担当調査官に配布する。公判期日までに相手方に送達する時間的余裕がないときは,公判開廷前に交付送達する。
イ 弁論要旨についても前記と同様であるが,相手方には,普通郵便その他適宜の方法で送付すれば足りる。送付したことは,原本初葉左欄外下部に,その旨及び年月日を記載し,書記官が認印するなどの方法により, これを記録上明らかにしておくのが相当である。
(6) 期日の接近に伴う準備
ア 記録を再点検し,追加された弁護人の氏名,その他変動のあった事項の記録表紙への記載の有無や,公判期日等の通知,答弁書の送達,弁論要旨の送付の有無,適否などについて調査する。
   また,公判期日において陳述,顕出が予定される書面については,事案により,その初葉下部に書面の標題を記載した附せんを付けるなどして,法廷での検索がしやすいように記録を整理する。さらに,顕出が予定される証拠物,取寄せ記録等があるときは,仮出し手続をするなどの準備をしておく必要がある。
イ 弁論進行予定表は,担当調査官から必要なデータの提供を受けて担当書記官が作成するが,担当調査官の了解を得た後,必要部数をコピーし,各裁判官及び首席書記官等に配布する。
ウ 法廷備付けの録音機を使用する事件にあっては, 開廷日の前日にマイクロホンを設置した上,試験操作を行う。
(7) 法廷内の準備
   小法廷には, 当事者席10 (検察官側,弁護人側各5) ,報道記者席24,傍聴席48が設けられている。出頭弁護人が多数で5人を超える場合の当事者席の増設については,担当調査官を経由して,主任裁判官の指示を受ける。
   また,被告人の出頭が予定されるときは,傍聴券(特別傍聴券を含む。)を発行し,指定された傍聴席に被告人を着席させる(法廷警備事件以外で被告人が出頭したときは,一般の傍聴席に着席させる。) 。

2 期日の開催
(1) 開廷準備
ア 法廷出入口の開扉,法廷内空調及び照明等の設備の調整,法廷入口の所要事項の掲示,裁判官入退廷扉の開閉点検, 当事者出頭確認,合議室の整備及び法卓上の裁半リ官席札の配列(注①),法廷内のマイクロホンの設置等の開廷準備は,法廷担当事務官が行う。
   なお,法廷担当事務官は,2人で一期日の事務を担当し, 1人は法廷内における事件の呼上げ等に,他の1人は合議室と法廷との連絡等に,それぞれ従事する。
イ 事件記録は,1,2審判決のつづられている記録及び当審記録のみを裁判長の法卓上に置き,その他の記録(注②),証拠物等は書記官の卓上に置く。
ウ 立会書記官が法廷に携行するものは,筆記用具,手控え用紙,弁論期日表,録音テープ,陳述が予定される書面の写し等である。
(2) 入廷
   訴訟関係人及び傍聴人の入廷は,原則として, 開廷15分前までに終了させる。
   訴訟関係人は,それまでは控室において待機する。傍聴人の入廷が終わった段階で,裁判関係庶務係職員から傍聴人に対し,傍聴心得が伝達される。
(3) 審判
ア 審判の進行順序等
   開廷宣言は主任裁判官(裁判長)が,休廷宣言は当該事件の裁判長が, 閉廷宣言は最後の事件の裁判長が,それぞれ行うこととされている。また,同一日に民事及び刑事の判決及び弁論が行われるときは,原則として次の順序による。
(ア) 刑事
判決 裁判官就任順
弁論 裁判官就任順
(イ) 民事
判決 裁判官就任順
弁論 裁判官就任順
イ 弁論の実施
(ア) 立会書記官の執務
   立会書記官のうち1人は,主として弁論経過の記録を担当する。他の1人は,主として法廷の秩序維持に関する事務を担当し,法廷担当事務官に対して必要な指示を与えるほか,弁論経過以外の法廷内の状況を記録する。
(イ) 弁論の経過
当審における弁論は
a  告申立人上告趣意書陳述
b 相手方答弁書(又は弁論要旨)陳述
c 裁判長(当事者双方に対し,他に陳述する事項があるかどうかを確かめた上)弁論終結,判決宣告期日追って指定
の経過によって終了するのが通例である。
ウ 調書の作成
(ア) 公判調書
   公判調書は,立会書記官のうち1人が作成し, これを板目紙に添付して担当調査官に供閲の上,裁判長に提出して認印を受ける。
   なお,期日に行われた訴訟行為について,公判調書への記載に疑問を生じた場合は,担当調査官の意見を聞く。
(イ) その他の調書等
   立会書記官のうち法廷の秩序維持に関する事務を担当した者は,法廷等の秩序維持に関する規則9条に定める制裁調書等を作成するほか,法廷内における特異な事項, これに対する裁判長の措置等について経過書を作成する。
注① 各小法廷における裁判官の入廷・着席は,合議室では,裁判官就任順に着席される。法廷では,主任裁判官が中央に着席し,続いて傍聴席に向かって右,左と就任順に交互に着席される。構成が5人に満たないときは,必要に応じて入廷・着席順序を繰り上げることとされているので,席札もこれに従って配列する。
   なお,数件のうち1件の弁論について不関与の裁判官の退席を必要とする場合は, 当該事件の呼上げを最後に回し,席札の移動はしない。もっとも,いったん裁判官全員が退廷し,構成を改めて再入廷する場合は,席札の配列替えをする。
② 事件記録が多数のときは,法廷に搬入する記録につき, 、担当調査官を経由して裁判体の指示を受ける。

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(1) 昭和24年7月15日発生の三鷹事件(死者6名,負傷者20名)に関する最高裁大法廷昭和30年6月22日判決では,8対7という意見の相違がある事件(意見の内訳は,8人が上告棄却(死刑確定),7人が破棄差戻し(死刑判決の審理やり直し))であり,かつ,地裁判決の無期懲役が書面審理だけの高裁判決で死刑に変更された重大事件であるにもかかわらず,「理由がないことが明らかである」場合にのみ適用される刑訴法408条に基づき(判決文12頁),弁論を開かないで判決をしたことが物議を醸しました。
   そのため,最高裁大法廷昭和30年6月22日判決より後は,どの小法廷においても,また,大法廷においても,死刑事件については必ず弁論を開くようになりました(「最高裁判決の内側」(昭和40年8月30日発行)142頁及び143頁参照)。
(2) 上告裁判所が原判決を破棄するに当たり,原判決の宣告手続に法律に従って判決裁判所を構成しなかった違法があるという破棄事由の性質,被告事件の内容,審理経過等によっては,必ずしも口頭弁論を経ることを要しません(最高裁平成19年7月10日判決)。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 死刑執行に反対する日弁連の会長声明等
・ 弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)
・ 最高裁判所における民事事件の口頭弁論期日
 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携

刑訴法19条に基づく移送請求に際して,新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を考慮しなかった札幌高裁令和3年2月18日決定(裁判長は39期の金子武志裁判官)

目次
1 札幌高裁令和3年2月18日決定に至る事実関係
2 札幌高裁令和3年2月18日決定(資料3)の判示内容
3 予断排除に関する刑訴法及び刑訴規則の定めと,札幌高裁令和3年2月18日決定の判示内容との関係
4 札幌高裁令和3年2月18日決定が出た後の事実関係
5 資料一覧
6 法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針の「出張」に関する記載
7 関連記事その他

1 札幌高裁令和3年2月18日決定に至る事実関係
(1) 釧路地裁は,令和3年1月19日,道路交通法違反(一般道において法定の最高速度を47km超えたというスピード違反)の犯罪地である釧路地裁に起訴された否認事件(以下「別件速度違反事件」といいます。)について,被告人が大阪市に在住していること,私選弁護人である私が大阪弁護士会に所属していること,及び大阪府に新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発令されていることにかんがみ,別件速度違反事件を大阪地裁に移送する旨の決定を出しました(資料1)。
(2) 釧路地検の検察官は,令和3年1月20日,新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言に一切言及することなく,釧路地裁令和3年1月19日決定に対する即時抗告の申立てをしました(資料2)。

2 札幌高裁令和3年2月18日決定(資料3)の判示内容
(1) 札幌高裁は,大阪府について新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発令されていた令和3年2月18日,下記のとおり判示した上で,検察官の即時抗告に基づき,別件速度違反事件に関する釧路地裁令和3年1月19日決定を取り消し,私の移送請求を却下しました(改行を追加しています。)。

    被告人は,本件公訴事実を争う予定であることから,今後釧路地裁に複数回出頭する必要があると考えられ,時間的,経済的な不利益が被告人及び弁護人に生じること自体は否定できないが,弁護人からは,上記のような一般的に生じる不利益について主張があるのみで,被告人の資力や生活状況等に関する具体的な主張や資料の提出があったわけではなく,本件の審理を釧路地裁で実施することに伴う被告人や弁護人の具体的な不利益が明らかになったとはいい難い。
    次に,移送請求書によれば,弁護人は,被告人は本件公訴事実を否認する予定であると主張するだけで,同請求書添付の令和2年12月16日付け千葉県公安委員会宛ての審査請求書によっても,その時点での被告人の主張として,測定機器の故障その他の原因で速度違反が検知されただけで速度違反の事実はなかったというにすぎず,また,被告人は捜査段階で供述調書への署名押印を拒否していて,本件についての被告人の供述が全く得られておらず,その主張の具体的内容が示されたとはいえない状況にある。
    そうすると,本件の争点が測定機器の正確性になるとは限らず,検察官請求証拠に対する意見の見込みも明らかではないことからすれば,公判廷での被告人の供述内容や審理の経過によっては,釧路地裁の周辺に居住する証人に対する尋問が必要となる可能性があるのであるから,同地裁において審理をする方が当該事件の審理に便宜であるのは明らかであり,かつ,捜査機関においても補充捜査が必要となるのであって,本件を他の管轄裁判所に移送すると,本件の捜査を担当しなかった検察官が審理に関与することになり,補充捜査にも支障が生じると考えられる。
    このように,本件では,被告人及び弁護人の主張の内容や,証拠意見の見込みが明らかではなく,およそ検察官が立証計画を定めることができる状況ではないのに,原決定は,本件を釧路地裁で審理することにより生じる被告人及び弁護人の一般的な不利益のみを重視して移送決定をしており,検察官の立証上の不利益を著しく害しているのは明らかであって,取消しを免れないというべきである。
    よって,本件即時抗告は理由があるから,刑事訴訟法426条2項により,主文のとおり決定する。
(2) 担当裁判官は,39期の金子武志裁判官,58期の加藤雅寛裁判官及び59期の渡辺健一裁判官でした。


3 予断排除に関する刑訴法及び刑訴規則の定めと,札幌高裁令和3年2月18日決定の判示内容との関係
(1) 予断排除に関する刑訴法及び刑訴規則の定め
ア 第1回公判期日までの勾留に関する処分は,急速を要する場合を除き,事件の審判に関与すべき裁判官以外の,公訴の提起を受けた裁判所の裁判官が行うこととなっています(刑訴法280条1項,並びに刑訴規則187条1項及び2項)。
    また,検察官及び弁護人を出頭させた上で行う事前の打ち合わせにおいて,事件につき予断を生じさせるおそれのある事項について打ち合わせを行うことはできなません(刑訴規則178条の15第1項)。
    さらに,受訴裁判所が第1回公判期日前に当事者双方の主張等を知ることができるのは,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行えるようにするために実施され(刑訴規則217条の2第1項参照),かつ,当事者双方が等しく参加する場である公判前整理手続に限られます(刑訴法316条の2)。
    そのため,事件の審判に関与すべき裁判官の予断を排除するため,弁護人の主張の内容を移送請求において明らかにすることは本来,刑訴法及び刑訴規則が予定するところではないと思います。
イ 移送の決定は被告事件の実体的審理に入る前にのみなしうるものであって,検察官の冒頭陳述が終わった後はできません(刑訴法19条2項及び東京高裁昭和26年9月6日決定(判例秘書に掲載))。
    また,第1回公判期日前に弁護人が裁判所に連絡すべき事項は,申請予定の証人数,証人調べに要する見込みの時間,第1回公判期日において審理をどこまで進めることができるかについての予定等に限られています(刑訴規則178条の6第3項2号参照)。
    そのため,尋問が必要となる証人の居住市町村を明らかにすることはあっても,事件の審判に関与すべき裁判官の予断を排除するため,移送請求において争点及び証拠意見の見込みを明らかにすることは本来,刑訴法及び刑訴規則が予定するところではないと思います。
(2) 予断排除と,札幌高裁令和3年2月18日決定の判示内容との関係
ア 札幌高裁令和3年2月18日決定は,本件審査請求書を踏まえたとしても,「本件についての被告人の供述が全く得られておらず,その具体的内容が示されたとはいえない状況にある」などと判示しています。
    そのため,移送請求において弁護人の具体的主張を明らかにしていないことは移送請求を否定する大きな事情になるようです。
イ 札幌高裁令和3年2月18日決定は,本件審査請求書を踏まえたとしても,「本件の争点が測定機器の正確性になるとは限らず,検察官請求証拠に対する意見の見込みも明らかではない」などと判示しています。
    そのため,移送請求において争点及び証拠意見の見込みを明らかにしていないことは移送請求を否定する大きな事情になるようです。


4 札幌高裁令和3年2月18日決定が出た後の事実関係
(1) 私は,釧路地裁に対し,令和3年3月20日,被告人及び弁護人の主張の内容や,証拠意見の見込み等を明らかにした上で刑訴法19条に基づく移送請求をしたところ,釧路地検の検察官は,新型コロナウイルス感染症に一切言及することなく,同月24日,移送請求は不相当であり,職権発動すべきではないという意見を述べました(資料4)。
(2) 釧路地裁は,令和3年5月24日,別件速度違反事件を大阪地裁に移送する旨の決定を出した(資料5)。
(3) 釧路地検の検察官は,大阪府及び北海道について新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発令されていた令和3年5月25日,新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言に一切言及することなく,釧路地裁令和3年5月24日決定に対する即時抗告の申立てをしました(資料6)。
(4) 札幌高裁は,令和3年6月23日,釧路地検の検察官の即時抗告を棄却しました(資料7)。

5 資料一覧
資料1 釧路地裁令和3年1月19日決定
資料2 令和3年1月20日付の,釧路地検の検察官の即時抗告申立書
資料3 札幌高裁令和3年2月18日決定
資料4 令和3年3月24日付の,釧路地検の検察官の意見書
資料5 釧路地裁令和3年5月24日決定
資料6 令和3年5月25日付の,釧路地検の検察官の即時抗告申立書
資料7 札幌高裁令和3年6月23日決定

6 法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針の「出張」に関する記載
・ 法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針(令和3年6月30日改訂)8頁には,「出張」に関して以下の記載があります。
    出張先及びその周辺地域等の感染状況,用務の緊急性,重要性を踏まえ,テレビ会議等の代替手段を積極的に検討する。出張の受入れについても同様に検討する。
    用務の重要性を勘案し,出張を行う場合にあっては,出張者に,マスクを着用し,人混みを避け,用務先以外の訪問は差し控える等の感染症対策を講じさせる。出張者に発熱等が認められる場合には,速やかに所属上司等に報告を行わせ,出張を中止させる。なお,緊急事態措置の対象区域等に係る急を要しない出張は,原則として,延期又は中止することとする。
    海外出張については,外務省の渡航情報を踏まえて対応する。

7 関連記事その他
(1)ア 大阪府については,令和3年のうち,1月13日から2月28日までの間,4月25日から6月20日までの間,及び8月2日から9月30日までの間,新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が出ていました(大阪府HPの「令和3年4月25日以降の要請内容(緊急事態措置及びまん延防止等重点措置)」参照)。
イ 北海道については,令和3年のうち,5月16日から6月20日まで,及び8月27日から9月30日までの間,新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が出ていました(旭川市HPの「緊急事態宣言発令に伴う北海道の休業要請等及び支援金の給付について」参照)。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 新型コロナウイルス感染症への対応に関する最高裁判所作成の文書
・ 国内感染期において緊急事態宣言がされた場合の政府行動計画(新型インフルエンザの場合)
→ 平成29年9月12日当時のものです。
・ 国家緊急権に関する内閣法制局長官の国会答弁
・ 業務の再開に関するQ&A(令和2年5月1日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡添付の文書)

裁判所の情報化の流れ

目次
第1 ワープロ導入に関する事情
1 平成元年5月当時の説明
2 平成2年5月当時の説明
3 平成3年5月当時の説明
4 平成5年5月当時の説明
5 平成8年5月当時の説明
第2 平成15年度までの裁判所のIT化の流れ
1 事件処理用パソコンの導入状況
2 個人別パソコンの導入状況
3 システムOAの導入状況
(1) 大都市簡裁督促システム,不動産執行システムの開発,少年事件前歴検索システム及び調停事件管理システムの導入
(2) 期日進行管理プログラムの導入
(3) 民事裁判事務処理システムの導入
(4) 刑事裁判事務処理システムの導入
(5) 民事及び刑事の裁判事務処理システムの導入拡大の凍結
(6) 平成11年5月時点においてシステムOAは不可欠となっていたこと
第3 ロータス・ノーツを基盤とした裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)
1 全国展開の中止前後の経緯
2 平成15年当時のロータス・ノーツに対する否定的評価
第4 平成17年1月1日以降の,裁判所の情報化の流れ
第5 J・NET,MINTAS及びKEITAS
1 J・NET(司法情報通信システム)
2 MINTAS(民事裁判事務支援システム)
3 KEITAS(刑事裁判事務支援システム)
第6 NAIVUS(裁判事務支援システム)
第7 mints(民事裁判書類電子提出システム)
第8 関連記事その他

第1 ワープロ導入に関する事情
1 平成元年5月当時の説明

・ 25期の菅原雄二最高裁総務局第二,第三課長は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成元年5月12日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第107号10頁)。
   昭和六三年度末に、裁判官及び書記官室に対して裁判官約八〇〇台、書記官室約六五〇台という相当の台数のワープロを裁判部に導入しました。これは、昭和六二年度末の補正予算で配布したワープロの使用状況、裁判官、書記官を初めとした裁判所職員の私物ワープロの利用状況等を踏まえて、裁判官用ワープロについては裁判書起案の効率化の観点から、書記官室用ワープロについては、供述調書を始めとする各種の調書の作成の効率化の観点から、ワープロが極めて有用であり、配布の希望も多いということで実行したものです。なお、書記官室用ワープロとして配布されたワープロのうち、大型プリンタを備えたものについては、裁判書作成の補助用ワープロとしての役割も併せて考慮しているところです。
2 平成2年5月当時の説明
・ 25期の菅原雄二最高裁総務局第二,第三課長は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成2年5月11日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第111号14頁)。
   平成元年度中に、裁判官及び書記官室に対して、裁判官約一〇〇〇台、書記官室約五五〇台という相当の台数のワープロを導入しました。そのうち、裁判官用ワープロについては、これまで配布を受けていなかった高・地・家裁判官のうち配布を希望する裁判官全員に配布したものです。書記官室用ワープロについては、調書作成用として立会率五〇%以上の立会書記官に対し、五人以上の支部、独立簡裁を中心として、二人に一台の割合を目処に配布しました。
   今後のワープロ等の導入計画としては、ワープロ、パソコン、ファクシミリ等の単体OA機器を個別の事務処理用に配布する予定です。裁判官用ワープロについては、希望する簡裁判事全員に一・二年のうちに配布し、書記官の調書作成用ワープロについては、先に申し上げたような計画を、今後一・二年で実行するほか、将来的には立合書記官二人に一台の比率を見直していくことも検討したいと考えております。
3 平成3年5月当時の説明
・ 25期の菅原雄二最高裁総務局第一課長は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成3年5月14日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第116号14頁)。
   OA機器に関係する事項の所管は総務局の制度調査室ですが、書記官に対するワープロ配布について御説明しますと、平成二会計年度までに立会い書記官二人に一台の割合で約一八〇〇台配布しました。この中の四〇〇台ぐらいが補助用ワープロを兼ねるということですが、これで一応支部、簡裁等も含めて二人に一台の割合の配布は完了したと見ております。
   ここでの立会い書記官とは、立会いが業務量の中で五〇パーセント以上を占める書記官を指します。
4 平成5年5月当時の説明
・ 25期の菅原雄二最高裁総務局第一課長は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成5年5月21日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第123号13頁及び14頁)。
   口頭弁論調書等各種の調書については、平成元年度にワープロ実験での成果を踏まえて、ワープロで比較的容易に作成し得るような書式及び紙質の用紙を配布したところです。調書用の辞書の開発や、調書作成用のソフトの開発は、種々の問題について相当検討を加える必要があると考えられ、直ちには困難と言わざるを得ません。
   なお、紙質等の改良については今後もさらに検討していきたいと考えています。
5 平成8年5月当時の説明
(1) 28期の服部悟最高裁総務局第一課長は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成8年5月31日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第135号22頁)。
   書記官用ワープロの配布については、昨年度、主として立会事務を担当している書記官に一人一台の配布割合となるように、書記官用ワープロの増配布を行ったところです。
   書記官用ワープロの機種については、操作性及びデータ等の互換性を確保するため、富士通オアシス40APを標準機種としています。キーボードの選択については、各庁の実状に合わせてJISあるいは親指シフトのキーボードを選択していただくこととなっています。
(2) 親指シフトとは,「親指キーを押す場合」と,「親指キーを押さない場合」とで全く違う文字が出る入力方式であり,1970年頃に登場した入力方式です(ヨッセンスHP「親指シフトってなに? かな入力・ローマ字入力とも違う「指がしゃべる」入力方式」参照)。

第2 平成15年度までの裁判所のIT化の流れ
1 事件処理用パソコンの導入状況
(1) 平成4年5月までに,刑事事件の量刑の参考に資するため,量刑資料検索用パソコンが約40台,破産事件実験用,督促事件実験用等のパソコンが約150台,執行事件の配当用パソコンが約220台配布されました(全国裁判所書記官協議会会報第119号16頁)。
(2) 平成7年5月までに,破産事件処理用,督促事件処理用及び執行事件配当用として事件処理用パソコンが配布されましたし,刑事事件の量刑の参考に資するため,全国の高裁本庁,地裁本庁及び大規模支部に量刑検索用パソコンが配布されました(全国裁判所書記官協議会会報第131号16頁)。
2 個人別パソコンの導入状況
(1) 平成7年度には,裁判官1人に1台の割合で,書記官室には原則として各部に1台の割合で,パソコンが整備されました(全国裁判所書記官協議会会報第135号21頁)。
(2) 平成10年度には,全国の高・地裁本庁及び規模の大きい約40庁の地裁支部の民事及び刑事書記官室に,書記官2人に1台の割合でノート型パソコンを整備し,これを,既整備の書記官室パソコン及び裁判官室パソコンと簡易LANで接続し,各部で裁判官室と書記官室によるネットワーク環境が構築されました(全国裁判所書記官協議会会報第147号21頁)。
(3) 平成12年度には,全国の裁判所に更新を含めて相当多数に上る台数のパソコンが配布された結果,書記官には1人1台(事件処理用システムを利用している一部の部署を除く。)のパソコンが整備され,事務官については,民事執行事件又は破産事件担当部署においては1人1台,その他の部署においてもおおむね1.5人に1台以上の整備密度となりました(全国裁判所書記官協議会会報第155号31頁)。
3 システムOAの導入状況
(1) 大都市簡裁督促システム,不動産執行システムの開発,少年事件前歴検索システム及び調停事件管理システムの導入
ア 平成2年5月当時,裁判事務処理システムの中で今後3年ないし5年程度の中長期的なOA化の方向として考えられるのは,大都市簡裁督促システム,不動産執行システムの開発及び少年前歴検索システムの導入拡大でした(全国裁判所書記官協議会会報第111号14頁参照)。
イ 大都市簡裁督促事件処理システムは,平成5年4月,新大阪簡裁において運用を開始し,平成7年1月,東京簡裁において運用を開始しました。
ウ 少年事件前歴検索システムは,平成6年5月までに,千葉家裁,浦和家裁,神戸家裁,横浜家裁,名古屋家裁及び福岡家裁において実験を開始し,平成7年4月,東京家裁において実験を開始しました。
エ 調停事件管理システムは,平成7年3月,東京簡裁及び東京家裁において本稼働を開始しました。
(2) 期日進行管理プログラムの導入
ア 平成8年5月までに,書記官室のパソコン用として,民事,刑事,家事及び少年事件用の期日進行管理プログラムが配布されましたところ,これは,裁判官用パソコン等の実験部において作成したプログラムを参考にして,これを標準化する形で最高裁において作成したものです(全国裁判所書記官協議会会報第135号21頁)。
イ 期日進行管理プログラム(民事通常事件版)については,平成9年度に改訂版が配布され,平成11年3月に三訂版が配布されました。
   期日進行管理プログラム(刑事通常事件版)については,平成8年に配布したプログラムを大幅に回収し,現場のニーズに応える改訂版が平成11年2月に配布されました(全国裁判所書記官協議会会報第147号22頁)。
ウ 平成16年5月から,新潟簡裁,岐阜簡裁及び福島簡裁において,期日進行管理プログラムの試験運用が開始しました。
エ 平成10年5月までに,出頭カードや開廷表等をプログラムを利用して印刷することにより,従来,事務官や書記官が1週間分の全事件について手書きで作成すると通算して半日程度の時間を要していたものが30分程度で作成できるようになりました(全国裁判所書記官協議会会報第143号21頁)。
(3) 民事裁判事務処理システムの導入
ア 平成10年度には,地裁の民事訴訟事件を対象に,事件の受付から終局後の統計処理,記録管理までの手続の流れに沿った裁判事務処理のシステム化に関する検討を行いました。
     具体的には,東京地裁,浦和地裁及び宇都宮地裁において,コンサルタント業者に委託して,訟廷管理官,書記官糖に対するヒアリング等により実際の事務の状況の調査を行ったところであり,その結果を踏まえながら,民事裁判事務のシステム化について検討を行いました(全国裁判所書記官協議会会報第147号21頁)。
イ 民事裁判事務処理システムは,平成12年9月,宇都宮地裁において本格稼働を開始しましたところ,従来導入されてきた期日進行管理プログラムは部単位のネットワークを基盤とし,部内における期日進行管理を主たる目的としていたのに対し,民事裁判事務処理システムは,部を超えたネットワークを構築し,民事訴訟事件の受付から終局までの手続全般を対象としたシステムです。
     具体的には,①事件簿,担当簿,期日簿といった帳簿等の電子化,②開廷表,出頭カード,呼出状等の帳票類の作成機能,③統計機能,④郵便料管理の機能,⑤記録の管理等に関する機能(例えば,記録の授受についてバーコードを利用してシステムで管理する。)及び⑥情報共有の機能(裁判官室,書記官室及び訟廷事務室のみならず,総務課,会計担当,統計関係部署が書く事件の情報を共有する。)といったものが想定されていました(全国裁判所書記官協議会会報第151号19頁)。
ウ 民事裁判事務処理システムは,平成13年6月に大津地裁及び岐阜地裁,同年9月にさいたま地裁,岡山地裁,長崎地裁,福島地裁,旭川地裁及び高松地裁で稼働を開始し(全国裁判所書記官協議会会報第159号29頁),平成14年9月に京都地裁,金沢地裁及び秋田地裁で稼働を開始し,同年12月から平成15年3月にかけて横浜地裁,広島地裁,熊本地裁,宮崎地裁,青森地裁,札幌地裁及び徳島地裁において稼働を開始しました(全国裁判所書記官協議会会報第163号29頁)。
(4) 刑事裁判事務処理システムの導入
ア 平成12年5月当時,刑事裁判事務についても,民事裁判事務処理システムと同様のシステム化についてコンサルティング業者による業務分析が実施されていました(全国裁判所書記官協議会会報第151号20頁)。
イ 平成13年5月当時,刑事裁判事務処理システムの機能として,①事件簿,担当簿,期日簿といった帳簿等の電子化,②開廷表,召喚状,各種決定書等の帳票作成機能,③統計機能,④身柄関係情報の管理機能,⑤記録管理機能(例えば,記録の授受についてバーコードを利用してシステムで管理する。),⑥押収物の管理機能(押収物についてバーコードを利用してシステムで管理する。)といったものが想定されていました(全国裁判所書記官協議会会報第155号30頁及び31頁)。
ウ 刑事裁判事務処理システムは,平成13年10月に名古屋地裁において本格稼働を開始しま(全国裁判所書記官協議会会報第155号30頁及び31頁),平成14年9月に宇都宮地裁,京都地裁,岐阜地裁,長崎地裁,福島地裁及び旭川地裁において稼働を開始し,平成14年12月から平成15年3月にかけて前橋地裁,広島地裁,青森地裁,札幌地裁及び松山地裁において稼働を開始しました(全国裁判所書記官協議会会報第163号29頁)。
(5) 民事及び刑事の裁判事務処理システムの導入拡大の凍結
・ 平成14年秋ころから急激なレスポンス低下の状況が発生していたものの,平成15年5月現在は,安定的な状況となっていたため(全国裁判所書記官協議会会報第163号29頁),平成15年度については千葉地裁ほか7庁において民事裁判事務処理システムの稼働開始,神戸地裁ほか8庁において刑事裁判事務処理システムの稼働開始を予定していました。
     しかし,横浜地裁及びさいたま地裁の民事裁判事務処理システムにおいて,平成16年1月初旬ころから,一時的にレスポンスが低下する現象が生じていることが判明し,総務局制度調査室において,システムの開発業者及びロータス・ノーツの供給元業者と連携を図りながら調査したものの,その原因が判明しなかったため,民事及び刑事の裁判事務処理システムの導入拡大が凍結されました(全国裁判所書記官協議会会報第167号35頁参照)。
(6) 平成11年5月時点においてシステムOAは不可欠となっていたこと
・ 35期の永野厚郎最高裁総務局第一課長は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成11年5月28日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第147号22頁)。
     OAシステムの活用状況については、民事モデル部を中心として、期日進行管理プログラム等の活用により、書記官事務及び事務官事務の効率化が図られており、書記官のコートマネージャーの支援策、廷吏法廷事務の一部を書記官が取り込むに当たっての事務の省力化の方策、裁判官と書記官の協働態勢の形成の支援策として、有効に機能しています。実際、民事モデル部の書記官の実感として、「書記官事務の効率化にとってOA機器の利用は不可欠である。」、「もはやパソコンがなければ仕事にならない状態になりつつある。」、「パソコン及び期日進行管理プログラムは、事件管理のため、なくてはならないものとなっている。」といった報告がされています。


第3 ロータス・ノーツを基盤とした裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)
1 全国展開の中止前後の経緯
(1) 最高裁判所総務局制度調査室は,これまでの稼働状況等を踏まえて,円滑にシステム導入を進めるという観点から,専門業者によるシステム監査を行わせたところ,その結果として,平成15年12月末になって,当時の裁判所のシステムの基盤となっていたロータス・ノーツは,大量かつ複雑なデータ処理が要求される裁判事務処理と適合しない面があり,ユーザ数やデータ量の増加に伴ってレスポンスがさらに低下することが予想されるため,現行のシステム基盤を維持したまま,特大規模庁を含む全国展開を進めることは再考すべきであるとの報告書が提出されました。
    また,平成16年4月になって,システム運用業者から,ノーツのバージョンアップを実施したとしても,コストに比較して微小な改善効果しか見込まれないことから,対策として推奨しない旨の調査結果の報告がありました。
    そのため,最高裁判所は,平成16年4月下旬,ロータス・ノーツを基盤として開発されていた従前のシステム(主たるものは民事裁判事務処理システム及び刑事裁判事務処理システム)のまま全国に展開を進めることを中止しました(全国裁判所書記官協議会会報第167号35頁及び36頁参照)。
(2) 会報書記官第8号29頁には,「裁判事務処理システムの全国展開の中止(平成16年5月)」と書いてあります。
(3)ア 民事裁判事務処理システム導入庁は平成20年度中にMINTASが導入されるようになりました(会報書記官第24号127頁及び128頁)。
イ 刑事裁判事務処理システム導入庁は平成23年10月31日までにKEITASが導入されるようになりました(会報書記官第32号82頁及び83頁参照)。
(4) 歴代の最高裁総務局制度調査室長は以下のとおりです。
・ 44期の絹川泰毅裁判官(H15.4.1 ~ H16.12.31)
・ 40期の細田啓介裁判官(H12.4.1 ~ H15.3.31)
・ 38期の鹿子木康裁判官(H8.9.1 ~ H12.3.31)
・ 35期の永野厚郎裁判官(H6.4.1 ~ H8.8.31)
・ 31期の佐久間邦夫裁判官(H3.7.1 ~ H6.3.31)
2 平成15年当時のロータス・ノーツに対する否定的評価
(1) Wikipediaの「HCL Domino」には「Lotus Notesは1989年に登場した、クライアントサーバー型のグループウェアであり、グループウェアという言葉を市場に浸透させたソフトウエアであるといわれている。」と書いてあります。
(2) Windows用電子メールソフト – 口コミ評判比較ランキングの「18位 (18件中) … Lotus Notes(ロータス ノーツ) … 満足度:11.1%」には,平成15年当時の否定的評価として以下の記載があります。
×これどうしょもないね。なぜこんなヒドイものが存在するんだろう。 (03/12/14)
×これで送ってこられるとめちゃくちゃだよ。普通受信者はノーツなんて使ってないつーの! (03/11/24)
×問題外!!ノーツからのレスは最初はバグかと思った。 (03/10/8)
×ノーツ独自の用語や使い勝手は一般ユーザーにはわかりにくいだけで不便きわまりない。 (03/8/12)
×おもい、つかいにくい、わかりにくい、いいとこなし (03/8/6)
×最低ですね。仕事場で使っておりますが、使いにくい、重い、使えない。こんなもの選んだ担当を恨みたい。 (03/7/4)
×使いにくいです。会社でいやいや使ってます。 (03/6/27)
×つかいにくいよ!ユーザーのことを全く考えないプログラマーの押しつけ的ソフト (03/6/10)
×スタンダードからかけ離れた多くの中途半端な機能は全く役立たず。重いだけで使い物にならない最悪のメーラ。 (03/6/5)
×メールは確かに酷いと思う。 (03/5/25)
×メール機能はひどいの一言につきる (03/5/18)
×使い勝手最低、重い (03/5/5)
×会社で導入しているが酷すぎて使い物にならない。 (03/4/28)
×鈍重、チープ、送られて迷惑、まさにゴミだね。 (03/4/24)
×最低、使いにくいったらありゃしない。おまけに受信者にも迷惑かけがち。 (03/3/30)
×一度これ使ったら他のどんなメーラでも素晴らしく思えてしまうという点で存在価値はある。誰もが二度と使いたくないよなこれ。 (03/2/9)

第4 平成17年1月1日以降の,裁判所の情報化の流れ
・ 「裁判所の情報化の流れ」によれば,以下のとおりです。
平成16年度
・ 情報政策課の設立
平成17年度
・ 全国職員からの意見聴取・情報課戦略計画策定
平成18年度
・ MINTASの開発開始
平成19年度
・ 情報セキュリティポリシーの策定
・ 職員ポータルサイトの運用開始
・ Internet Explorer,Outlook Expressの全国展開完了
平成20年度
・ MINTASの地裁への導入展開開始
・ KEITASの開発開始
平成23年度
・ MINTASの地裁への全国展開完了
・ KEITASの地裁への導入展開開始
・ 情報化戦略計画の改定
平成24年度
・ 高地家裁における情報化担当部署の整備
・ システムの全体最適化計画の策定
・ 最高裁判所データセンタへのサーバ移転計画の実行
・ MINTASの高裁への導入展開開始
・ KEITASの地裁への全国展開完了
平成25年度
・ システムの全体最適化計画の実行
・ 最高裁判所データセンタの運用開始
・ MINTASの高裁への全国展開完了
平成26年度
・ 情報セキュリティポリシーの改定
・ MINTASの家事分野対応改修
平成27年度
・ 情報セキュリティポリシーの改定
・ MINTASの家裁への全国展開完了
平成28年度
・ システムの全体最適化計画の改定
・ 職員貸与パソコン及び共用パソコンの一斉更新
平成29年度
・ 情報セキュリティ室の新設
・ 最高裁データセンタの更改開始(~平成31年度)
平成30年度
・ 情報セキュリティポリシーの改定
・ NAVIUSの第1次開発(少年・簡裁民事・督促事件部分)開始
平成31年度(令和元年度)
・ NAVIUS(少年事件部分)の家裁への導入・展開開始
・ NAVIUSの第2次開発(高裁・簡裁刑事事件部分)開始



第5 J・NET,MINTAS及びKEITAS
1 J・NET(司法情報通信システム)
(1) J・NET(司法情報通信システム)は,ロータス・ノーツを利用して,平成7年度に導入されました(全国裁判所書記官協議会第151号20頁)。
    平成10年度末には,高地裁の訟廷事務室にJ・NET端末が,家裁の訟廷事務室に訟廷パソコンが整備されました(全国裁判所書記官協議会第147号22頁)。
(2) 平成19年8月より,ロータス・ノーツに代わる情報共有のシステムとして,J・NETポータルが導入され,平成20年4月からは全国の裁判所のIE・OE化(インターネットエクスプローラー(IE)及びアウトルックエクスプレス(OE)の導入)が完成したことにより,OEのメールアドレスが付与されている職員は,各自が利用している端末からJ・NETポータルを閲覧することが可能となりました(会報書記官第16号81頁及び82頁)。
(3) ロータス・ノーツ上の各種データベースについても,平成20年度末までに必要に応じて,J・NETポータル上に移行されました(会報書記官第16号82頁)。
(4) 平成23年度には,J・NETポータル用サーバを更新して最新の機器を導入するとともに,各種設定の見直しを行い,ポータルの起動のみならず,「ダイヤルイン番号一覧」や「裁判所職員総合研修所」(通称「総研コンテンツ」)といった,様々なコンテンツを利用する際のレスポンスが相当向上しました(会報書記官第32号85頁)。
(5) 平成24年度には,裁判官を含む全職員が閲覧できる「書記官事務の整理」が設けられ,平成25年度には各庁での情報共有等に利用できるよう「高地家簡裁掲示板」の運用が開始され,平成26年当時,一日に約2万件のアクセスがありました(会報書記官第40号88頁)。
2 MINTAS(民事裁判事務支援システム)
(1) MINTAS(民事裁判事務支援システム)は平成18年4月から開発が進められ(請負業者は株式会社日立製作所),平成20年2月12日に第1次導入庁であるさいたま地裁に導入し,本格稼働を開始し(会報書記官第16号76頁参照),平成23年1月11日に東京地裁及び大阪地裁での稼働を開始した結果,全国の地裁本庁及び支部への導入が完了しました(会報書記官第28号22頁)。
(2) 平成26年1月,支部を含む全高裁へのMINTAS導入が完了しました(会報書記官第40号85頁)。
3 KEITAS(刑事裁判事務支援システム)
・ KEITAS(刑事裁判事務支援システム)は平成21年9月から開発が進められ(開発請負業者は三菱電機株式会社であり,開発管理支援請負業者は株式会社インテック),平成22年3月までに設計作業が終わり(会報書記官第24号130頁),平成23年1月17日から名古屋地裁本庁で稼働を開始し(会報書記官第28号24頁),平成25年2月末までに全国の地裁本庁及び支部への導入が完了しました(会報書記官第36号84頁)。

第6 NAIVUS(裁判事務支援システム)
1 日本裁判所書記官協議会と,最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会(令和元年6月28日開催)における発言として,会報書記官第61号64頁及び65頁には,「裁判事務支援システム(以下「NAVIUS」という。)の開発状況等について【情報政策課】」として以下の記載があります。
    平成28年6月に「裁判所のシステム最適化計画」が改定されましたが.同計画においては,様々情報システムを統合集約化して運用の合理化を図り,重複投資の排除の観点から,必要な資源を無駄なく裁判所全体で合理的に活用できるように取り組む必要があると定められています。また.システムの開発に当たっては.単に現状の業務を前提として,利便性だけを追求してシステム化するのではなく,本来の業務の在るべき姿を見据えたものとする必要があることも定められています。
    NAVIUSは,この「裁判所のシステム最適化計画」を踏まえ,異なる事件種類の情報システムであっても,可能な限り,共通の機能を利用するというコンセプトの下,複数の既存の情報ステムを順次統合していくことを視野に入れて開発を行っているところであり,システム化すべき業務の範囲についても,利便性という観点最優先で網羅的に決定するのではなく,書記官事務の在り方を踏まえて,真に必要かつ相当なものは何かという観点から検討を行う必要があります。
    現在,第1次(少年事件部分)の開発が完了し,今年度中に,少年事件を取り扱う本庁及び支部に導入していく予定です。
    また,これと並行して,第1次(簡裁民事,督促事件部分)及び第2次(高裁・簡裁刑事事件部分)の開発も行っており,さらに,令和2年度には,第3次開発として,高裁・地裁民事及び家事事件部分(MINTAS相当部分)の開発も予定しています。
    当課では,前述のような視点に立った上で,ユーザにとって利用しやすいシステムになるよう努力しています。
2 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)125頁には,「裁判事務支援システム」として以下の記載があります。
<要求要旨>
    裁判事務支援システムは,裁判所の既存システムの業務要件・機能要件等の見直しを行い,統合集約化することにより,IT関連予算の低減・合理化及び情報セキュリティ対策の充実強化を実現するというコンセプトのもと開発されたシステムである。
(ア) 運用保守
    本システムは,令和3年度中に簡裁民事及び支払督促(第一次開発)並びに高裁刑事及び簡裁刑事部分(第二次開発)の導入展開を完了し,既存の少年事件部分(第一次開発)に加えて運用を開始することになるところ,本システムを長期にわたって安定的かつ効率的に運用するために必要となる運用保守業務に要する費用(ヘルプデスク業務,アプリケーション保守業務を含む),データセンタにて運用中の各共通サーバ機能の段階的更新への対応及び少年法改正に伴う対応に要する費用を要求する。
(イ) 機器等リース料
    本システムは,平成31年4月から機器等(ハードウェア・ソフトウェア)のリースを開始しており,令和4年度についても,引き続き機器等をリースする必要があることから,同費用を要求する。
(ウ) バックアップテープの保管
    最高裁近郊において大規模災害等があった際に,確実に本システムを復旧させるためにはバックアップテープを遠隔地に保管することが必要となるため,令和4年度も引き続き上記バックアップテープの保管に係る費用を要求する。
(エ) 刑法改正対応等改修
    本システムは,平成30年度以降,複数の既存システムの統合を目指して順次開発が行われ,現在,家庭裁判所における少年事件,簡易裁判所における民事,督促及び刑事事件並びに高等裁判所における刑事事件を取り扱うシステムとして稼働中である。
    この点,刑事事件分野において,関係する法律が改正され,自由刑(懲役・禁錮)が単一化されること等に伴い,新たに追加が想定される刑種や執行猶予に関する事項について,システム上の登録を可能にし,統計を取るために必要な改修を行う必要がある。
    また,既導入庁から寄せられる機能改修要望の内,改修の相当性等を検討し,高度の必要性が認められるものについては,本システムを用いた適正迅速な裁判の実現のために改修を行う必要がある。
    以上により,これらの改修に係る費用を要求する。
3 全司法新聞には以下の記載があります。
・ 2354号(2021年5月)
    IT化では「NAVIUSで宛名を作成するだけで相当な時間がかかる」「NAVIUS導入による事務量増加のために増員された」「簡素化・効率化を阻む最大の原因はNAVIUS」と多くの参加者から報告されるなど、NAVIUSには使い勝手の悪さを超えた問題が多くあることが報告されました。
・ 2350号(2021年2月)
    IT化の課題では、NAVIUS、SEABIS等の各種システムの使い勝手の悪さ、毎週木曜日の職員端末のフルスキャンによる事務支障等の実態が報告されました。また、インターネット閲覧専用PCの台数が不足していることや、ウェブ分離ソリューションの概要や導入スケジュールを早期に示してもらいたいとの意見も出されました。
・ 2327号(2020年2月)
    NAVIUSの少年事件部分の導入に関して、「今まで1クリックで済んだ帳票の印刷に多くの手順を踏まなければならず煩雑である、少年事件を全く知らない人が作ったのではないかと思うほど入力項目などに問題がある」(愛知)といった現場の怒りの声が紹介されました。東京地裁支部と京都支部からは、保管金システムや庁舎施設を例に、公契約のあり方について改善を求める発言がありました。
・ 2322号(2019年12月)
   NAVIUSについては、帳票が旧システムより不足していることや差込み印刷機能の使い辛さが報告されました。民事裁判手続のIT化がすすむもとで、システムの不具合が多いとの声も出されました。


第7 mints(民事裁判書類電子提出システム)
1 mints(民事裁判書類電子提出システム)は,令和4年5月頃に甲府地裁本庁及び大津地裁本庁で運用を開始する予定です。
2 令和3年6月現在,甲府地家裁所長は43期の安東章裁判官(元最高裁情報政策課長)であり,大津地家裁所長は40期の冨田一彦裁判官です。


第8 関連記事その他
1 DIME HPに「【プレーバック 平成元年】30年前のワープロ事情を蒸し返す」が載っています。
2(1) 中長期的観点に立った職員制度に関する提言(平成8年3月1日付の最高裁判所人事局参事官室の提言)には以下の記載があります。
    裁判所の事務処理態勢全般の見直し,改善の方策としてOA化を一層推進し,事務処理の効率化を図る。具体的には,事務局事務処理のシステム化,オンライン化のほか,訟廷事務を始めとする裁判事務処理のシステム化,オンライン化を推進する。
(2) 会報書記官第32号85頁には以下の記載があります。
    平成23年12月より,一部の例外を除いて,裁判所において利用する標準ワープロソフトはワード(Microsoft Word)のみとなりました。また,平成25年度のパソコンの更新時期までには,ほぼすべての職員貸与端末において標準ワープロソフトはワードのみとなります。
(3) 最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)84頁には「裁判所の組織運営を見直し,司法制度の改善方策を検討,決定するための情報収集の手段としてのインターネット導入が
平成8年度に認められ,その後,インターネットの通信に必要な使用料及び通信費用が認められた。」と書いてあります。
3 31期の瀬木比呂志裁判官が著した絶望の裁判所53頁には以下の記載があります。
    同等のレヴェルのポストにある人物について露骨に差を付けるといった、過去にはあまりみられなかった不自然な人事もある。私のよく知っているある期(前記のとおり、司法研修所修了の「期」)の東京地裁民事と刑事の所長代行に関する人事を例にして説明しよう。一方は裁判官としての実績があり弁護士からもかなり評価されている人物、一方は追随姿勢で取り立てられた中身に乏しい人物であった。ところが、最高裁判所事務総局に対しても自分なりの意見を述べていた前者が遠方の所長に、後者が東京近辺の所長に、それぞれ異動になったのである。この人事については、民事訴訟法学者の間からさえ奇妙だという声が聞かれた。これは一種の見せしめ人事なのであるが、「事務総局の方針に意見など述べず黙って服従しないとこうなるぞ」という脅しの効果は絶大である。なお、「事務総局に逆らうと」といったレヴェルの問題ではないことに注意していただきたい。先の人物も、ただ、「自分の意見を述べた」だけであり、ことさらに逆らってなどいない。
4 以下の文書を掲載しています。
・ 民事裁判書類電子提出システムの導入計画について(令和3年6月17日付の最高裁判所情報政策課参事官及び民事局総括参事官の事務連絡)
・ 民事裁判書類電子提出システムの運用開始に関する連絡文書(令和3年6月24日付の,日弁連事務総長宛の最高裁民事局長の文書)
・ 令和3年度情報通信ネットワーク専門官(デジタル推進室)の選考結果(最高裁判所の文書)
・ 最高裁のデジタル化推進を牽引するIT領域のジェネラリストの募集広告を出すために株式会社ビズリーチとの間で授受した文書
5 以下の記事も参照してください。
・ 歴代の最高裁判所情報政策課長
 最高裁判所事務総局情報政策課
・ 最高裁判所事務総局情報政策課の事務分掌
・ 裁判所における主なシステム
・ 
民事事件の裁判文書に関する文書管理
・ 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
・ 最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会

簡易裁判所においては尋問調書の作成が原則として省略されること

目次
1 尋問調書の作成が省略されていること
2 録音テープの取扱い及び反訳
3 最高裁判所の事務連絡
4 尋問調書の作成が省略されるようになった背景
5 関連記事その他

1 尋問調書の作成が省略されていること
(1)ア 簡易裁判所における尋問は通常,証人等の陳述の記載,つまり,尋問調書の作成が省略され(民事訴訟規則170条1項参照),当事者の裁判上の利用に供するため,録音テープ等で記録されるだけです(民事訴訟規則170条2項前段)。
つまり,簡易裁判所における尋問の内容は紙ベースでは裁判所に残りません。
イ この場合,第4号書式(証人等目録)の「調書の作成に関する許可等」欄では,「調書省略」にレ点が付きます。
(2) 地方裁判所における尋問を実施した後に訴訟上の和解が成立した場合,民事訴訟規則67条2項本文に基づき,尋問調書の作成が省略されることが多いですものの,民事訴訟規則170条1項とは別の話です。

2 録音テープの取扱い及び反訳
(1) 録音テープの取扱い
ア 民事訴訟規則170条2項前段に基づき簡易裁判所における尋問を記録した録音テープ等は訴訟記録ではありません(東京高裁平成24年7月25日判決)。
    そのため,控訴審である地方裁判所は録音テープ等を聴取する必要がありませんし,そもそも録音テープ等は控訴審である地方裁判所に送付しません。
    その結果,簡易裁判所における尋問内容を控訴審の証拠としたい場合,録音テープ等の複製(民事訴訟規則170条2項後段)をした上で,その反訳文を控訴審に提出する必要があります。
イ 録音テープ等又はその反訳文を控訴審に提出しない場合,簡易裁判所における尋問の内容は一切,控訴審の証拠にはならないこととなります。
(2) 録音テープの反訳
ア 簡易裁判所の録音テープ等について司法協会に録音反訳(テープ起こし)を依頼した場合,60分当たり1万6800円(1分当たり280円)が必要となります。
また,納期の目安として,90分の録音データの場合,中9日で,Eメールで納品されるとのことです(司法協会HPの「録音反訳(テープ起こし)」参照)。
イ オプションとしての認証正本については,録音反訳文の証拠方法を原本とするために1部を作成してもらえばいいと思います。
(3) 録音テープの反訳費用は自己負担となること
ア 交通事故に基づく損害賠償請求訴訟において,簡易裁判所で実施された尋問の録音反訳に要した費用は,交通事故と相当因果関係のある損害とはいえないとされています(控訴審たる富山地裁平成29年6月21日判決及び上告審たる名古屋高裁平成30年2月27日判決(いずれも判例秘書に掲載)参照)。
イ 名古屋高裁令和2年5月27日決定(公刊物未登載)は以下のとおり判示しており,反訳費用は訴訟費用に含まれないとしています。
    民事訴訟費用等に関する法律は,一般的に権利の伸張又は防御に必要であると考えられる費用を類型化して列挙するとともに,その額もできる限り権利の伸張又は防御に必要な限度のものを法定したものであり(費用法定主義),当該紛争の解決過程を通じて支出された一切の費用について当事者等に負担させることにすると,その範囲は極めて漠然とするばかりでなく,金額が過大になり,訴訟に伴う費用負担の危険性が著しく,司法制度の利用を阻害する結果ともなる恐れがあるため,その負担すべき範囲が明確に定められているものと解される。
    かかる同法の趣旨に鑑みれば,同法に費用の種目として掲げられていないものは考慮する必要はなく,掲げられたものに該当する当事者等の出費のみが償還の対象となるものと解され,反訳費用については,同法に費用の種目として掲げられていない以上,訴訟費用となる余地はないことになる。
ウ 最高裁令和2年4月7日判決は以下のとおり判示していますから,名古屋高裁令和2年5月27日決定を支持することは確実と思います。
    費用法2条が法令の規定により民事執行手続を含む民事訴訟等の手続の当事者等が負担すべき当該手続の費用の費目及び額を法定しているのは,当該手続に一般的に必要と考えられるものを定型的,画一的に定めることにより,当該手続の当事者等に予測できない負担が生ずること等を防ぐとともに,当該費用の額を容易に確定することを可能とし,民事執行法等が費用額確定処分等により当該費用を簡易迅速に取り立て得るものとしていることとあいまって,適正な司法制度の維持と公平かつ円滑なその利用という公益目的を達成する趣旨に出たものと解される。
エ したがって,録音テープの反訳費用は自己負担となります。


3 最高裁判所の事務連絡
(1) 「民事訴訟規則第68条第1項及び第170条第2項の録音テープ等への記録の手続等について」(平成9年12月8日付の最高裁判所民事局第一課長,総務局第三課長事務連絡)を掲載しています。
(2) 民事訴訟規則(調書の記載に代わる録音テープ等への記録)68条1項の録音テープ等は事件記録の一部となっているのに対し,民事訴訟規則170条(証人等の陳述の調書記載の省略等)2項の録音テープ等は訴訟記録とは別に保管されており,保管期間の終期は,判決による終了の日から1年となっています。

4 尋問調書の作成が省略されるようになった背景
(1) 簡易裁判所の民事訴訟事件は通常,1,2回の期日にわたる証拠調べによって, 口頭弁論が終結される簡易なものが多く,その判決に対する控訴率も低いことから,証人等の陳述や検証の結果を調書に記載する必要性は地方裁判所におけるそれと比べると低いものと考えられます。
また,録音テープに証人等の陳述を記録していた場合,旧民事訴訟法358条ノ2第1項(調書ハ当事者ニ異議アル場合ヲ除クノ外裁判官ノ許可アルトキハ之ニ記載スヘキ事項ヲ省略スルコトヲ得)に基づき証人等の陳述の調書への記載の省略について当事者から異議が出されることもありませんでした。
そのため,平成10年1月1日施行の民事訴訟規則170条では,簡易裁判所の民事訴訟事件では,尋問調書の作成を省略できることとなりました(条解民事訴訟規則357頁参照)。
(2) 25期の菅原雄二最高裁総務局第二,第三課長(平成13年3月3日,博多港発のフェリーから投身自殺)は,最高裁総務局・人事局各課長,参事官を囲む座談会(平成2年5月11日開催)において以下の発言をしています(全国裁判所書記官協議会会報第111号14頁。改行を追加しています。)。
    最高裁民事局が中心となって行っている録音体利用実験の状況でありますが、昭和六三年六月から平成元年五月までの一年間についての実験結果によると、当該期間中の対象となる合計一四一九の証人、本人調べのうち、省略されたのが七六九人、率にして約五四%と、従来の調書省略率に比べて相当高い率となっており、録音帯利用が調書省略の運用に有益であるという結果が出ていると考えられます。
    こうした結果及び簡裁で人証の取調べをした全民訴既済事件のうち、取り調べた証人又は本人の延べ人数が三人以下の事件が約八五%を占めている実情を考慮して、平成元年七月に、今後は、集中的取調べの可能な事件について、当事者の理解を得ながら、録音体の利用による調書省略を運用していただくようお願いしたいところであります。

5 関連記事その他
(1) 簡易裁判所における尋問の場合,補充尋問の直前,裁判官の隣に座っている司法委員から質問されることがあります(民事訴訟規則172条参照)。
(2) 東弁リブラ2021年10月号「東京簡裁書記官に訊く-民事訴訟手続を中心に-」が載っています。
(3) 以下の記事も参照してください。
・ 民事事件記録一般の閲覧・謄写手続
 地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合
 録音反訳方式による逐語調書
 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達

地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合

目次
1 訴訟が裁判によらないで完結した場合の取扱い(民事訴訟規則67条2項)
2 録音テープ等による調書代用,及び陳述記載書面(民事訴訟規則68条)
3 民事訴訟規則67条及び68条の条文
4 録音反訳方式と速記に関する国会答弁
5 関連記事

1 訴訟が裁判によらないで完結した場合の取扱い(民事訴訟規則67条2項)
(1)   訴訟が裁判によらないで完結した場合,裁判長の許可に基づき,尋問調書の作成が省略されます(民事訴訟規則67条2項本文)。
    例えば,当事者尋問をした直後の和解期日で訴訟上の和解が成立した場合,尋問調書の作成は省略されることが多いです。
(2) 当事者が訴訟の完結を知った日から1週間以内に尋問調書を作成すべき旨の申出をした場合,尋問調書が作成されます(民事訴訟規則67条2項ただし書)。

2 録音テープ等による調書代用,及び陳述記載書面(民事訴訟規則68条)
(1)   裁判長の許可に基づき,録音テープ等による調書代用(民事訴訟規則68条1項)があった場合,録音テープ等が尋問調書の代用となりますから,尋問調書は作成されません。
(2)ア   訴訟が完結するまでに当事者の申出があった場合等には,陳述記載書面が作成されます(民事訴訟規則68条2項)。
    この場合,①事件番号,②証人等を取り調べた期日,③証人等の氏名及び④規則68条2項に基づく書面である旨が記載されます。
イ 陳述記載書面の作成者につき,条文上明確は規定はありませんが,通常は,証人等の尋問に立ち会った書記官が作成することになりますし,立ち会った書記官が転勤等の事情により異動した場合,書面作成時における当該事件の担当書記官が作成することになります。
ウ 新民事訴訟法における書記官事務の研究(1)225頁が参考になります。
(3) 民事訴訟規則76条(口頭弁論における陳述の録音)は,調書の記載の正確性を確保するための補助手段として,録音という方法を利用できることを明らかにしたものです。
    これに対して民事訴訟規則68条(調書の記載に代わる録音テープ等への記録)は,口頭弁論における陳述それ自体の記録化の方法として録音が可能であることを前提として,その結果としての録音テープを訴訟記録として活用することを認めているものです。
    そのため,両者の想定する利用方法は異なります(条解民事訴訟規則167頁及び168頁参照)。

3 民事訴訟規則67条及び68条の条文
(1) 民事訴訟規則67条(口頭弁論調書の実質的記載事項・法第百六十条)
① 口頭弁論の調書には、弁論の要領を記載し、特に、次に掲げる事項を明確にしなければならない。
一 訴えの取下げ、和解、請求の放棄及び認諾並びに自白
二 法第百四十七条の三(審理の計画)第一項の審理の計画が同項の規定により定められ、又は同条第四項の規定により変更されたときは、その定められ、又は変更された内容
三 証人、当事者本人及び鑑定人の陳述
四 証人、当事者本人及び鑑定人の宣誓の有無並びに証人及び鑑定人に宣誓をさせなかった理由
五 検証の結果
六 裁判長が記載を命じた事項及び当事者の請求により記載を許した事項
七 書面を作成しないでした裁判
八 裁判の言渡し
② 前項の規定にかかわらず、訴訟が裁判によらないで完結した場合には、裁判長の許可を得て、証人、当事者本人及び鑑定人の陳述並びに検証の結果の記載を省略することができる。ただし、当事者が訴訟の完結を知った日から一週間以内にその記載をすべき旨の申出をしたときは、この限りでない。
③ 口頭弁論の調書には、弁論の要領のほか、当事者による攻撃又は防御の方法の提出の予定その他訴訟手続の進行に関する事項を記載することができる。
(2) 民事訴訟規則68条(調書の記載に代わる録音テープ等への記録)
① 裁判所書記官は、前条(口頭弁論調書の実質的記載事項)第一項の規定にかかわらず、裁判長の許可があったときは、証人、当事者本人又は鑑定人(以下「証人等」という。)の陳述を録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録することができる物を含む。以下「録音テープ等」という。)に記録し、これをもって調書の記載に代えることができる。この場合において、当事者は、裁判長が許可をする際に、意見を述べることができる。
② 前項の場合において、訴訟が完結するまでに当事者の申出があったときは、証人等の陳述を記載した書面を作成しなければならない。訴訟が上訴審に係属中である場合において、上訴裁判所が必要があると認めたときも、同様とする。

4 録音反訳方式と速記に関する国会答弁
・ 40期の中村慎最高裁判所総務局長は,平成28年3月16日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しました。)。
①   委員が要約調書と速記調書というものの比較をされました。要約調書というのは書記官が概要を書く調書でございますので、それと比較いたしますと、速記調書の方が、まさに逐語的にとっているのでそういう感想が出たんだと思います。
   逐語調書という中におきましては、録音反訳方式と速記の調書、両方がございます。一般的に、裁判利用者の要望については真摯に耳を傾ける必要があると考えております。
   ただ、録音反訳方式でありましても、反訳業者が提出した反訳書を裁判所書記官が確認して、必要に応じて校正を行った上で書記官の調書として完成させておりまして、正確性を欠くということはございません。また、反訳書をつくる期間につきましても、最短の場合では音声データを業者が受領したときから四十八時間で完成させるというような迅速性についても、十分な手当てをしているところでございます。
② このように、録音反訳方式と速記とについては、いずれも逐語録需要に対応するものであるところ、この両者について、どちらがすぐれているということはないというふうに考えておりまして、利用者からの要望のみによって速記録を作成するということにはならないというふうに考えております。

5 関連記事その他
(1) 第4号書式(証人等目録)の「調書の作成に関する許可等」欄につき,①民事訴訟規則67条2項又は170条1項に基づき証人等の陳述の記載を省略する許可があった場合,「調書省略」欄の□にレ点を付け,②民事訴訟規則68条1項に基づき録音テープ等に記録することによって調書の記載に代える許可があった場合,「調書記載に代わる録音テープ等」の□にレ点を付けます。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 民事事件記録一般の閲覧・謄写手続
・ 録音反訳方式による逐語調書
・ 地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合
・ 簡易裁判所においては尋問調書の作成が原則として省略されること
・ 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達

民事事件記録一般の閲覧・謄写手続

目次
1 総論
2 訴訟記録閲覧時のメモ取りの可否
3 大阪地裁における事件記録の謄写手続
4 東京地裁等における事件記録の謄写手続
5 謄写事業の担当者
6 関連記事その他

1 総論
(1) 民事事件の場合,事件記録の「閲覧」自体は誰でもできます(民事訴訟法91条1項のほか,外部HPの「訴訟の記録も,誰でも閲覧できます」参照)。
(2) 事件記録の謄写については,当事者及び利害関係を疎明した第三者しかできません(民事訴訟法91条3項)。
(3) 事件記録の閲覧謄写に関する裁判所内部の手続は「事件記録等の閲覧等に関する事務の取扱いについて」(平成9年8月20日付の最高裁判所総務局長の通達)(略称は「閲覧等通達」です。)に書いてあります。

2 事件記録閲覧時のメモ取りの可否
(1) 利害関係のない第三者が民事事件の事件記録を閲覧した際にメモを取ることができるかどうかについては,各地の裁判所によって取扱いに違いがあるみたいです(君の瞳に恋してる眼科ブログ「訴訟記録閲覧時のメモ取り行為と,裁判の公開原則,レペタ裁判の関係」参照)。
(2) 平成29年12月22日付の司法行政文書不開示通知書によれば,民事訴訟法91条1項に基づき,第三者が民事訴訟記録を閲覧する際,詳細なメモを取ることが禁止されていることが分かる文書は存在しません。

3 大阪地裁における事件記録の謄写手続
(1) 大阪地裁の場合,具体的な窓口は以下のとおりです(一般財団法人司法協会HPの「記録謄写(複写)」のほか,全国弁護士協同組合HPにある,大阪弁護士協同組合の「当組合おすすめお役立ち情報」参照)。
① 本庁本館及び第2別館(主として,大阪地裁民事部及び刑事部,並びに大阪高裁刑事部)に入居している民事部・刑事部の事件記録の場合
「本館」1階に入居している司法協会大阪出張所(電話:06-6363-1290)
② 本庁の第1別館(主として,大阪高裁民事部及び大阪簡裁)に入居している民事部・刑事部の事件記録の場合
「第1別館10階」に入居している司法協会大阪出張所(電話:06-6363-1290)
③ 大阪地裁第14民事部(大阪地裁執行センター)の事件記録の場合
〒532-8503
大阪市淀川区三国本町1-13-27
大阪地方裁判所執行部庁舎3階
司法協会新大阪出張所(電話:06-6350-6987)
④ 大阪家裁の事件記録の場合
〒540-0008
大阪市中央区大手前4-1-13
大阪家裁庁舎3階
司法協会大阪出張所家裁分室(電話:06-6944-7571)
⑤ 大阪地家裁堺支部の事件記録の場合
〒590-8511
大阪府堺市堺区南瓦町2番28号
大阪地家裁堺支部庁舎6階
司法協会堺出張所(電話:072-227-4781)
⑥ 大阪地家裁岸和田支部の事件記録の場合
〒596-0042
大阪府岸和田市加守町4-27-2
大阪地家裁岸和田支部庁舎1階
司法協会岸和田出張所(電話:072-441-4374)
(2)ア 大阪地裁で郵送により事件記録の謄写申請をする場合,堺支部及び岸和田支部も含めて,閲覧謄写票「だけ」を司法協会の出張所に郵送すればいいです。
後日,謄写した記録と一緒に請求書及び郵便局の振込用紙が司法協会の出張所から郵送されてきますから,郵便局の振込用紙を使って,複写料金(1枚40円)及び送料を支払えばいいです。
イ 独立簡易裁判所(地家裁支部に併設されている簡易裁判所ではなく,単独で設置されている簡易裁判所)の場合,司法協会の職員が常駐しているわけではないため,週に1回とか,月に1回といったペースで,裁判所を訪問するにすぎません.
そのため,独立簡易裁判所で事件記録の謄写申請をする場合,非常に時間がかかることがありますところ,1枚150円の収入印紙を支払ってもいいのであれば,裁判所書記官に対し,事件記録の謄本交付申請(民事訴訟費用等に関する法律別表第二・2項)をした方がいいです。
(3) 大阪弁護士会館の北近くの秋田ビル1階に入居している西村謄写館は,主として「検察庁の」刑事記録の謄写をやっています。

4 東京地裁等における事件記録の謄写手続
(1) 東京地裁本庁で郵送により事件記録の謄写申請をする場合,司法協会が指定する書式での委任状「だけ」を司法協会に郵送すればいいです(閲覧謄写票の送付は不要です。)。
(2) 神戸地裁本庁で郵送により事件記録の謄写申請をする場合,閲覧謄写票「だけ」を兵庫県弁護士協同組合に郵送すればいいです。
(3) 名古屋地裁本庁で郵送により事件記録の謄写申請をする場合,愛知県弁護士協同組合が指定する書式での「記録謄写申請」と題する書面「だけ」を愛知県弁護士協同組合に郵送すればいいです(閲覧謄写票の送付は不要です。)。

5 謄写事業の担当者
(1)ア 東京地家裁,横浜地家裁,さいたま地家裁,千葉地家裁及び大阪地家裁については,司法協会が謄写事業を担当しています(一般財団法人司法協会HPの「記録謄写(複写)」参照)。
イ それ以外の地家裁については,弁護士協同組合が謄写事業を担当しています(全弁協HPの「全国の弁護士協同組合」参照)。
(2) 各地の裁判所の民事事件記録一般の閲覧・謄写手続については以下のHPが参考になります。
① 東京地裁HPの「民事事件記録の閲覧・謄写の御案内」
② 大阪地裁HPの「民事事件記録の閲覧・謄写手続について」
③ 京都地裁HPの「不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売)記録の閲覧・謄写Q&A」
④ 神戸地裁HPの「記録の謄写・閲覧」

6 関連記事その他
(1) 尋問の際に訴訟代理人をしていた弁護士であっても,事件終了後6ヶ月を経過してから民事事件の確定記録の「謄写」をする場合,地裁民事訟廷記録係に対し,改めて依頼者の委任状を提出する必要があります。
(2)ア 病院等の画像データが入ったCD-Rのコピーを取り寄せる場合,裁判所書記官室に対し,「申請区分」欄を「複製」とした閲覧・謄写票を,「申請区分」欄を「謄写」とした閲覧・謄写票とは別に作成して郵送する必要があります。
イ その際,返信用封筒を付けておく必要があります。
(3) アメリカの連邦裁判所の場合,PACERというインターネット上のサービスを利用すれば,裁判手続に関する資料(ただし,個人情報として保護の必要があるもの等は除く。)を閲覧したり,ダウンロードしたりできるみたいです(法と経済ジャーナルHPの「インターネットで訴訟記録を閲覧できる米国に見るサービスの進歩」参照)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 地方裁判所において尋問調書の作成が省略される場合
・ 簡易裁判所においては尋問調書の作成が原則として省略されること
・ 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
 刑事裁判係属中の,起訴事件の刑事記録の入手方法(被害者側)
 刑事裁判係属中の,起訴事件の刑事記録の入手方法(加害者である被告人側)
 刑事記録の入手方法等に関する記事の一覧

平成5年4月27日発生の,東京地裁構内の殺人事件に関する国会答弁

目次
第1 平成5年5月25日の参議院法務委員会における質疑応答
第2 平成6年3月29日の参議院法務委員会における質疑応答
第3 警察官等に係る傷病補償年金,障害補償又は遺族補償の特例
第4 関連記事その他

第1 平成5年5月25日の参議院法務委員会における質疑応答
・ 最高裁判所長官代理者(泉徳治君)は,15期の泉徳治最高裁判所人事局長であり,下稲葉耕吉は昭和57年から昭和59年まで警視総監をした後,昭和63年7月から参議院議員をしていた人です。

○下稲葉耕吉君 商法の審議に入ります前に一件ほど御質問いたしたいと思います。
    今、カンボジア問題で大変国内が沸き立っているわけでございますが、その中で中田さん、高田警視の痛ましい殉職がございました。私も大変関心を持ってその問題に取り組んでいる一人でございますけれども、当委員会の所管でございます裁判所でも実は本当に痛々しい殉職事件があったわけでございます。
    新聞報道によりますと、四月二十七日の十時ごろ、東京地方裁判所において田村善四郎警備員、警備係長が殉職された事案が報道されているわけであります。
    ひとつその問題につきまして、事案の概要等を最高裁の方から御報告いただきたい。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ただいま委員からお話のございましたように、本年四月二十七日、東京地裁で田村法廷警備員が民事事件の当事者に登山ナイフで刺し殺されるという事件が発生いたしました。
    この民事事件は、二十四歳の女性原告が四十四歳の男性被告に対しまして婚姻無効の確認を請求するというものでございます。訴状によりますと、二人は昭和六十三年に同棲を始めまして、平成三年に同棲を解消したにもかかわらず、平成四年に男性被告が勝手に婚姻届を行った、こういうことで無効確認を求めるというものでございます。
    四月二十七日午前十時から、東京地裁六階の六一五号法廷におきまして第一回口頭弁論が開かれる予定になっておりました。九時四十六分ころには原告の女性とその代理人の弁護士が出頭いたしまして、法廷内で開廷を待っておりました。九時五十分ころに被告の男性が出頭いたしまして、法廷内の原告女性を見つけ、いきなり顔面を殴るなどいたしましてその場に転倒させ、その左手首におもちゃの手錠をかけまして、ジャンパーの下に隠し持っておりました刃渡り十六センチの登山ナイフを取り出しまして、逃さないぞ、おまえを殺しておれも死ぬつもりだなどと叫びながら、ナイフを女性の背中に突きつけ、法廷から廊下に連れ出そうといたしました。制止しようとした廷吏に対しましても、近づくとおまえも殺すぞとおどしております。九時五十五分ころに、この騒ぎを聞きつけて駆けつけました隣の法廷の廷吏が、法壇に備えつけてございます緊急連絡用のボタンを押しまして警務課に連絡いたしました。
    そこで、警務課長と法廷警備員八名が六一五号法廷に急行いたしましたところ、ちょうど男が女性を法廷から連れ出すというところでございました。このとき、廷吏は法廷警備員に対しまして男がナイフを持っているということを告げてございます。
    男は、女性を抱えるようにして廊下を歩き出しまして、その周りを法廷警備員が取り囲むようにして一団となって移動する形になりました。警務課長が男に対しまして、どうしたのか、とまりなさい、放しなさいなどと話をしているうちに、女性が男を振り切りまして、助けてと叫びながら反対方向に走り出しました。これを男がナイフを持って追いかける形になったのでございます。
    そこで、亡くなりました田村善四郎法廷警備員が男に後ろから飛びつき、取り押さえようといたしました。このときに、田村法廷警備員は男にナイフで刺されたのでございます。
    男は、後日起訴されておりますが、起訴状によりますと、男は取り押さえられそうになったためにナイフで田村法廷警備員の右肩を力任せに刺したということでございます。
    田村法廷警備員は、救急車で日大病院に運ばれましたが、午前十一時二十七分、出血多量で死亡いたしました。享年五十九歳でございました。
    なお、女性の方は、廷吏の誘導で法廷専用エレベーターによりまして十階に逃れまして、裁判所の医師、看護婦の付き添いで警察病院に収容されましたが、こちらの方は、幅一センチ、深さ〇・五センチの軽傷で、手当てを受けた後そのまま帰宅しております。
    また、男の方はそのまま逃走いたしましたが、翌日逮捕されまして、五月十九日に殺人罪で起訴されております。
    このように、裁判所職員が職務遂行中に殺害されるというのは初めてのことでまことに残念でございまして、痛惜の念にたえないところでございます。また、このような不幸な事件を防止することができなかったことにつきまして、関係者一同反省もいたしているところでございます。
○下稲葉耕吉君 大変痛ましい、そしてまた壮絶な殉職でございまして、心からお悔やみ申し上げたいと思うのでございます。
そこで、私が問題にいたしたいのは、今御説明がございましたように、裁判所では初めての経験だということでございました。それだけに、殉職に伴う遺族の方々に対する褒賞といいますか、そういうふうなものがどういうふうになっているのか、ひとつ簡明に御答弁いただきたいと思います。

○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 私どもでは、田村法廷警備員は民間人の生命を守るためにナイフを振りかざす犯人に立ち向かいまして犠牲になったものでございますので、裁判所職員表彰規程の「危険を顧みず身をていして職員を尽した者」ということで最高裁長官表彰を行った次第でございます。
    また、田村法廷警備員は、本年四月一日付で東京地裁の警務課警備第二係長に昇進いたしまして六級十五号俸に昇格したばかりでございますが、殉職の四月二十七日付で警務課課長補佐へ昇任させまして、また八級十四号俸への昇格昇給の措置をとったところでございます。また、叙位叙勲につきましても現在申請中でございます。
    今お尋ねの御遺族に対するどういう手当てがなされるかということでございますが、退職金が二千五百四万三千二百八円、それから、これは公務災害でございますので、公務災害補償が千五百十三万二千二百六十円、それから遺族共済年金といたしまして百六十八万五千六百円、合計で四千百八十六万一千六十八円の給付がなされるという状況でございます。
○下稲葉耕吉君 ここに大臣もいらっしゃいますけれども、私も長いこと警察の仕事に従事させていただきまして、私自身も殉職者を出したりいろいろな事案がございました。
    そういうふうなことで、そういうような背景でお伺いいたしたいんですが、公務災害補償につきましても、特殊公務災害ですか、人事院の規則等によりまして、普通の災害補償より五割増しの規定がございます。多分これは初めてのことだということでそういうふうな規定が整備されていないんじゃないかというふうな感じもいたします。
    それから、警察官等の賞じゅつ金につきましては、また別に殉職者賞じゅつ金制度というものがほとんどの都道府県で条例で制定されております。加えて、警察庁長官の殉職者特別賞じゅつ金という制度もございます。さらに、今回の高田警視の例に見られるような殉職につきましては、それに加えまして内閣総理大臣の特別褒賞金というふうなものもあるわけでございます。
    今私が申し上げました点につきましては、今回の事案についてはそれまで規定が整備されていないだろうと思います。最高裁判所は法律の有権的な解釈をなさるんだけれども、自分たちのそういうような問題につきましては規定の整備がなされていないというのが私は実情ではなかろうかと思います。
    これ以上申し上げませんけれども、大変起きたことは残念なことでございますが、早急にそういうふうな問題について整備されまして、そして遡及して適用ができるような手だてを積極的にお取り組みいただきたい、私どもも積極的に御支援してまいりたい、このように思いますが、局長の御感想なり決意があればお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ただいま大変御理解のあるお言葉をいただきまして大変感謝いたしております。
    先ほど申しましたように、こういった殉職という事態が発生いたしましたのが今回初めてでございましたものですから、私どもでは賞じゅつ金支給規程がつくられておりませんで賞じゅつ金を支給するという制度ができていないのでございます。それから、御指摘の公務災害の一・五倍の給付ということにつきましても適用の対象職員となっていないのでございます。
    私どもといたしましては、今回の事態を受けまして、法務省職員でありますとか警察官等に設けられております賞じゅつ金の制度を裁判所職員についてもつくることができないかという観点から、早速他省庁の賞じゅつ金規程を取り寄せるなどいたしまして、現在検討いたしているところでございます。あわせまして、公務災害の一・五倍の支給につきましても裁判所職員が適用対象にならないか、現在調査研究して検討いたしているところでございます。

第2 平成6年3月29日の参議院法務委員会における質疑応答
○下稲葉耕吉君 私は、この法律案(山中注:裁判所職員定員法の一部を改正する法律案)の質疑に入ります前に、若干関連あるわけでございますが、昨年の五月二十五日の当委員会におきまして、当時法務大臣は後藤田大臣でいらっしゃいましたけれども、昨年四月二十七日に東京地方裁判所において田村善四郎という警備員の方が殉職されました。その御報告をいただきまして、この殉職事案に対します裁判所の補償の問題についてお伺いいたしました。
    裁判所にはそういう殉職を予定したような法令といいますか、規則の整備がされておりませんでした。そこで、例えば警察官等の殉職の事例を申し上げまして、総理大臣なりあるいは警察庁長官なり、あるいは条例によって都道府県の警察なり、あるいはまた公務災害補償につきまして特別公務災害補償の適用を受けられるようなこと等もお考えになったらどうだろうかというふうなことを申し上げたことがあるわけでございます。
    当時の泉局長は、一生懸命努力いたしますということでございましたが、その後どういうふうに最高裁判所として善処されたか、ひとつ御報告いだだきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(泉徳治君) ただいま下稲葉委員から仰せの事故が昨年四月に発生いたしまして、本委員会にも御報告申し上げましたところでございます。
    こういった痛ましい事故と申しますのは裁判所始まって以来のことでございまして、こういった特殊な殉職に対する補償の制度というものが不備でございました。本委員会でも下稲葉委員から警察官等の殉職の場合の補償制度等についていろいろ貴重な御教示をいただきまして、その後私ども関係当局と交渉いたしておりまして、でき上がった制度につきまして御報告申し上げたいと思います。
    まず、最初の公務災害の特例でございますけれども、国家公務員災害補償法の二十条の二というところに「警察官等に係る傷病補償年金、障害補償又は遺族補償の特例」という規定がございまして、その特例の対象にならないかということで検討しておりましたが、昨年の秋に法廷警備員等法廷の警備に携わる職員もこの特例の対象にするということで規則を制定いたしました。そして、田村善四郎法廷警備員の事故にさかのぼって適用するという措置をいたしました。この措置によりまして、御遺族にお支払いいたします遺族補償年金、遺族特別給付金、これにつきましては一般の公務災害の場合よりも一・五倍、五割増の補償を行うということができまして、御遺族にお支払いをしたところでございます。
    また、その際、下稲葉委員から警察官等につきまして賞じゅつ金の規定があるという御示唆もいただきました。これにつきましては、来年度の予算に向けまして財政当局と折衝をいたしておりまして、その了解も得られましたので、新会計年度に向けましてこの賞じゅつ金の制度をつくるべくただいま規定の整備を行っているところでございます。
以上でございます。
○下稲葉耕吉君 わかりました。いろいろ努力いたしておられる様子がよくわかるわけでございます。こういうふうな事案があってはならないわけでございますけれども、絶対ないとは言い切れないわけでございまして、ひとつよく検討されまして、今後の対応に誤りのないようにお願いいたしたいと思います。


第3 警察官等に係る傷病補償年金、障害補償又は遺族補償の特例
1 国家公務員災害補償法20条の2(警察官等に係る傷病補償年金、障害補償又は遺族補償の特例)は以下のとおりです。
    警察官、海上保安官その他職務内容の特殊な職員で人事院規則で定めるものが、その生命又は身体に対する高度の危険が予測される状況の下において、犯罪の捜査、被疑者の逮捕、犯罪の制止、天災時における人命の救助その他の人事院規則で定める職務に従事し、そのため公務上の災害を受けた場合における当該災害に係る傷病補償年金、障害補償又は遺族補償については、第十二条の二第二項の規定による額、第十三条第三項若しくは第四項の規定による額、第十七条第一項の規定による額又は第十七条の六第一項の人事院規則で定める額は、それぞれ当該額に百分の五十を超えない範囲内で人事院規則で定める率を乗じて得た額を加算した額とする。
2 傷病補償年金等の特例の適用を受ける裁判所職員の範囲等を定める規則(平成5年9月22日最高裁判所規則第4号)は以下のとおりです(制定時から令和3年9月までの間に改正されたことがありません。)。
(傷病補償年金等の特例の適用を受ける裁判所職員の範囲及びその職務)
第一条 裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号。以下「法」という。)本則第五号において読み替えて準用する国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)第二十条の二の最高裁判所規則で定める職員は、法廷の秩序維持等にあたる裁判所職員に関する規則(昭和二十七年最高裁判所規則第二十三号)第一条の規定により同条に規定する事務を取り扱うべきことを命ぜられた裁判所職員とする。
2 法本則第五号において読み替えて準用する国家公務員災害補償法第二十条の二の最高裁判所規則で定める職務は、次に掲げる職務とする。
一 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第七十一条第二項又は第七十二条第一項若しくは第三項の規定による命令の執行又は処置の補助
二 法廷等の秩序維持に関する法律(昭和二十七年法律第二百八十六号)第三条第二項の規定による行為者の拘束に係る措置
三 その他の他法廷又は裁判所若しくは裁判官の職務が行われる法廷外の場所における秩序の維持のため裁判長又は裁判官により特に命ぜられた事務
(傷病補償年金等の加算額に係る率)
第二条 法本則第五号において読み替えて準用する国家公務員災害補償法第二十条の二の最高裁判所規則で定める率は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条に規定する一般職に属する国家公務員の例による。
附 則
 この規則は、公布の日から施行し、平成五年四月一日以後に発生した事故に起因する公務上の災害に係る傷病補償年金、障害補償又は遺族補償について適用する。
3 人事院規則16-0(職員の災害補償)32条(警察官等に係る傷病補償年金、障害補償又は遺族補償の特例)は以下のとおりです。
    補償法第二十条の二の人事院規則で定めるものは、皇宮護衛官、海上保安官補、刑事施設の職員、入国警備官、麻薬取締官、内閣府沖縄総合事務局又は国土交通省地方整備局若しくは北海道開発局に所属し、河川又は道路の管理に従事する職員、警察通信職員(人事院が定める職員に限る。)及び国土交通省地方航空局に所属し、消火救難業務に従事する職員(人事院が定める職員に限る。)とし、同条の人事院規則で定める職務は、職員の区分に応じ、次の表に定める職務とする。

職員
職務
一 警察官、皇宮護衛官、海上保安官及び海上保安官補
一 犯罪の捜査
二 犯人又は被疑者の逮捕、看守又は護送
三 勾引状、勾留状又は収容状の執行
四 犯罪の制止
五 天災、危険物の爆発その他の異常事態の発生時における人命の救助その他の緊急警察活動又は警備救難活動
二 刑事施設の職員
一 刑事施設における被収容者の犯罪の捜査
二 刑事施設における被収容者の犯罪に係る犯人又は被疑者の逮捕
三 被収容者の看守又は護送
三 入国警備官
一 入国、上陸又は在留に関する違反事件の調査
二 収容令書又は退去強制令書の執行
三 入国者収容所、収容場その他の収容施設の警備
四 麻薬取締官
一 麻薬、向精神薬、大麻、あへん又は覚醒剤に関する犯罪の捜査
二 麻薬、向精神薬、大麻、あへん又は覚醒剤に関する犯罪に係る犯人又は被疑者の逮捕又は護送
三 麻薬、向精神薬、大麻、あへん又は覚醒剤に関する犯罪に係る勾引状、勾留状又は収容状の執行
五 内閣府沖縄総合事務局又は国土交通省地方整備局若しくは北海道開発局に所属し、河川又は道路の管理に従事する職員
豪雨等異常な自然現象により重大な災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における河川又は道路の応急作業
六 警察通信職員(人事院が定める職員に限る。)
警察官が一の項の職務欄に掲げる職務に従事する場合に当該警察官と協同して行う現場通信活動
七 国土交通省地方航空局に所属し、消火救難業務に従事する職員(人事院が定める職員に限る。)
空港又はその周辺における次に掲げる職務
一 航空機その他の物件の火災の鎮圧
二 天災、危険物の爆発その他の異常事態の発生時における人命の救助又は被害の防ぎよ

第4 関連記事その他
1 東京高裁及び東京地裁の庁舎で所持品検査が開始したのは,平成7年3月20日に地下鉄サリン事件が発生した後の同年5月16日でした。
2 大阪高裁平成27年1月22日判決(裁判長は30期の森宏司裁判官)は,
   平成19年「5月24日」,兵庫県龍野高校のテニス部の練習中に発生した高校2年生の女子の熱中症事故(当日の最高気温は27度)について,
   兵庫県に対し,「元金だけで」約2億3000万円の支払を命じ,平成27年12月15日に兵庫県の上告が棄却されました(CHRISTIAN TODAY HP「龍野高校・部活で熱中症,当時高2が寝たきりに 兵庫県に2億3千万円賠償命令確定」参照)。
   その結果,兵庫県は,平成27年12月24日,3億3985万5520円を被害者代理人と思われる弁護士の預金口座に支払いました(兵庫県の情報公開文書を見れば分かります。)。
3(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 裁判所の敷地内において加害行為が発生した際の留意点について(平成28年8月23日付の最高裁判所総務局参事官の事務連絡)
・ 平成31年3月20日に東京家裁で発生した殺人事件に関して東京家裁が作成し,又は取得した文書
(2) 以下の記事も参照してください。
 裁判所の所持品検査
 全国の下級裁判所における所持品検査の実施状況
・ 裁判所の庁舎等の管理に関する規程及びその運用
・ 平成31年3月20日発生の,東京家裁前の殺人事件に関する国会答弁

弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)

目次
第1 弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)
第2 上告に関する刑事訴訟法の条文
第3 関連記事その他

第1 弁護人上告に基づき原判決を破棄した最高裁判決の判示事項(平成元年以降の分)
50 最高裁令和3年9月7日判決(差戻し)
    被告人は心神耗弱の状態にあったとした第1審判決を事実誤認を理由に破棄し何ら事実の取調べをすることなく完全責任能力を認めて自判をした原判決が,刑訴法400条ただし書に違反するとされた事例
49 最高裁令和3年7月30日判決(差戻し)
    違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
48 最高裁令和2年10月1日判決(差戻し)
    数罪が科刑上一罪の関係にある場合において,各罪の主刑のうち重い刑種の刑のみを取り出して軽重を比較対照した際の重い罪及び軽い罪のいずれにも選択刑として罰金刑の定めがあり,軽い罪の罰金刑の多額の方が重い罪の罰金刑の多額よりも多いときの罰金刑の多額
47 最高裁令和2年1月23日判決(差戻し)
    犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した第1審判決を控訴裁判所が何ら事実の取調べをすることなく破棄し有罪の自判をすることと刑訴法400条ただし書
46 最高裁平成30年3月19日判決(自判)
    子に対する保護責任者遺棄致死被告事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
45 最高裁平成29年3月10日判決(自判)
    置き忘れられた現金在中の封筒を窃取したとされる事件について,封筒内に現金が在中していたとの事実を動かし難い前提として被告人以外には現金を抜き取る機会のあった者がいなかったことを理由に被告人による窃取を認定した第1審判決及び原判決の判断が論理則,経験則等に照らして不合理で是認できないとされた事例
44 最高裁平成28年12月19日判決(自判)
    被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後訴訟能力の回復の見込みがないと判断される場合と公訴棄却の可否
43 最高裁平成28年12月5日判決(自判)
    土地につき所有権移転登記等の申請をして当該登記等をさせた行為が電磁的公正証書原本不実記録罪に該当しないとされた事例
42 最高裁平成28年3月18日判決(差戻し)
    自動車運転過失致死の公訴事実について防犯カメラの映像と整合しない走行態様を前提に被告人を有罪とした原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
41 最高裁平成26年7月24日判決(自判)
    傷害致死の事案につき,懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第1審判決及びこれを是認した原判決が量刑不当として破棄された事例
40 最高裁平成26年3月28日判決(自判)
    暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において暴力団関係者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為が,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たらないとされた事例
39 最高裁平成26年3月28日判決(自判)
    暴力団関係者の利用を拒絶しているゴルフ場において暴力団関係者であることを申告せずに施設利用を申し込む行為が,詐欺罪にいう人を欺く行為に当たらないとされた事例
38 最高裁平成24年9月7日判決(差戻し)
    前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いることが許されないとされた事例
37 最高裁平成24年4月2日判決(差戻し)
    併合罪の一部である証拠隠滅教唆の事実につき重大な事実誤認の疑いが顕著であるとして原判決を破棄して差し戻した事例
36 最高裁平成24年2月13日判決(自判)
    覚せい剤を密輸入した事件について,被告人の故意を認めず無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
35 最高裁平成23年7月25日判決(自判)
    通行中の女性に対して暴行,脅迫を加えてビルの階段踊り場まで連行し,強いて姦淫したとされる強姦被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例
34 最高裁平成22年12月20日判決(自判)
    観賞ないしは記念のための品として作成された家系図が,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たらないとされた事例
33 最高裁平成22年4月27日判決(差戻し)
    殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
32 最高裁平成21年12月7日判決(差戻し)
    旧株式会社日本債券信用銀行の平成10年3月期の決算処理における支援先等に対する貸出金の査定に関して,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によることも許容されるとして,資産査定通達等によって補充される平成9年7月31日改正後の決算経理基準を唯一の基準とした原判決が破棄された事例
31 最高裁平成21年10月16日判決(差戻し)
    被告人の検察官調書の取調べ請求を却下した第1審の訴訟手続について,同調書が犯行場所の確定に必要であるとして,その任意性に関する主張立証を十分にさせなかった点に審理不尽があるとした控訴審判決が,刑訴法294条,379条,刑訴規則208条の解釈適用を誤っているとされた事例
30 最高裁平成21年9月25日判決(差戻し)
    被告人と本件犯行とを結びつける共犯者の供述の証拠価値に疑問があり,原判決には,審理を尽くさず,ひいては重大な事実誤認をした疑いが顕著であるとして,原判決を破棄し事件を原審に差し戻した事例
29 最高裁平成21年7月16日判決(自判)
    財産的権利等を防衛するためにした暴行が刑法36条1項にいう「やむを得ずにした行為」に当たるとされた事例
28 最高裁平成21年4月14日判決(自判)
    満員電車内における強制わいせつ被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定が是認できないとされた事例
27 最高裁平成21年3月26日判決(自判)
    軽犯罪法1条2号所定の器具に当たる催涙スプレー1本を専ら防御用として隠して携帯したことが同号にいう「正当な理由」によるものであったとされた事例
26 最高裁平成20年7月18日判決(自判)
    旧株式会社日本長期信用銀行の平成10年3月期に係る有価証券報告書の提出及び配当に関する決算処理につき,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によったことが違法とはいえないとして,同銀行の頭取らに対する虚偽記載有価証券報告書提出罪及び違法配当罪の成立が否定された事例
25 最高裁平成20年4月25日判決(差戻し)
    統合失調症による幻覚妄想の強い影響下で行われた行為について,正常な判断能力を備えていたとうかがわせる事情があるからといって,そのことのみによって被告人が心神耗弱にとどまっていたと認めるのは困難とされた事例
24 最高裁平成18年10月12日判決(自判)
    祖父母による未成年者誘拐事件につき懲役10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例
23 最高裁平成16年12月10日判決(差戻し)
    窃盗の犯人による事後の脅迫が窃盗の機会の継続中に行われたとはいえないとされた事例
22 最高裁平成16年10月29日判決(差戻し)
    被告会社が土地を造成し宅地として販売するに当たり地方公共団体から都市計画法上の同意権を背景として開発区域外の排水路の改修工事を行うよう指導された場合においてその費用の見積金額を法人税法22条3項1号にいう「当該事業年度の収益に係る売上原価」の額として損金の額に算入することができるとされた事例
21 最高裁平成16年9月10日判決(差戻し)
    銀行の頭取が信用保証協会の役員と共謀して同協会に対する背任罪を犯したと認めるには合理的な疑いが残るとされた事例
20 最高裁平成16年2月16日判決(自判)
    被告人のみの控訴に基づく控訴審において裁判所が第1審判決の理由中で無罪とされた事実を第1審に差し戻すことが職権の発動の限界を超え許されないとされた事例
19 最高裁平成15年11月21日判決(自判)
    自動車の保管場所の確保等に関する法律11条2項2号,17条2項2号の罪の主観的要件
18 最高裁平成15年1月24日判決(自判)
    黄色点滅信号で交差点に進入した際,交差道路を暴走してきた車両と衝突し,業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について,衝突の回避可能性に疑問があるとして無罪が言い渡された事例
17 最高裁平成14年3月15日判決(差戻し)
    業務上横領罪における不法領得の意思を肯定した控訴審判決が審理不尽,事実誤認の疑いなどにより破棄された事例
16 最高裁平成13年7月19日判決(差戻し)
    請負人が欺罔手段を用いて請負代金を本来の支払時期より前に受領した場合と刑法246条1項の詐欺罪の成否
15 最高裁平成13年1月25日判決(自判)
    交通事故による休業損害補償金として自動車共済契約による共済金を騙し取ったとされた事件において詐欺の故意が認められないとして無罪が言い渡された事例
14 最高裁平成11年10月21日判決(自判)
    監禁,強姦事件につき,監禁罪の成立を認めた点で第一,二審判決には事実誤認があるとして破棄自判した事例
13 最高裁平成9年9月18日判決(自判)
    保護処分決定が抗告審で取り消された事件について家庭裁判所が少年法二〇条により検察官送致決定をした場合に同法四五条五号に従って行われた公訴提起の効力
12 最高裁平成9年6月16日判決(自判)
    刑法三六条一項にいう「急迫不正の侵害」が終了していないとされた事例
11 最高裁平成8年9月20日判決(自判)
    死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に当たるとはいい難いとして原判決及び第一審判決が破棄され無期懲役が言い渡された事例
10 最高裁平成6年12月6日判決(自判)
    複数人が共同して防衛行為としての暴行に及び侵害終了後になおも一部の者が暴行を続けた場合において侵害終了後に暴行を加えていない者について正当防衛が成立するとされた事例
9 最高裁平成4年7月10日判決(自判)
    夜間無灯火で自車の進行車線を逆行して来た対向車と正面衝突した事故につき自動車運転者の過失が否定された事例
8 最高裁平成3年11月14日判決(自判)
    デパートの火災事故につきこれを経営する会社の取締役人事部長並びに売場課長及び営繕課員に業務上過失致死傷罪が成立しないとされた事例
7 最高裁平成2年5月11日判決(自判)
    業務上過失致死事件につき禁錮10月の実刑が破棄されて執行猶予が付された事例
6 最高裁平成元年11月13日判決(自判)
    刑法三六条一項にいう「巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為」に当たるとされた事例
5 最高裁平成元年10月26日判決(自判)
    小学四年生の少女に対する強制わいせつ事件につき被告人が犯人であるとする右少女の供述等の信用性を肯定した原審の有罪判決が破棄され第一審の無罪判決が維持された事例
4 最高裁平成元年7月18日判決(自判)
    公衆浴場法八条一号の無許可営業罪における無許可営業の故意が認められないとされた事例
3 最高裁平成元年6月22日判決(差戻し)
    共犯者の供述に信用性を認めた原判決が破棄された事例
2 最高裁平成元年4月21日判決(自判)
    業務上過失致死事件につき被告人車が轢過車両であると断定することに合理的な疑いが残るとして破棄無罪が言い渡された事例
1 最高裁平成元年4月21日判決(差戻し)
    恐喝の事実につき審理不尽ないし事実誤認の疑いがあるとして原判決を破棄差戻した事例

第2 上告に関する刑事訴訟法の条文
第四百五条 高等裁判所がした第一審又は第二審の判決に対しては、左の事由があることを理由として上告の申立をすることができる。
一 憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。
二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
三 最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
第四百六条 最高裁判所は、前条の規定により上告をすることができる場合以外の場合であつても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、裁判所の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる。
第四百七条 上告趣意書には、裁判所の規則の定めるところにより、上告の申立の理由を明示しなければならない。
第四百八条 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。
第四百九条 上告審においては、公判期日に被告人を召喚することを要しない。
第四百十条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。但し、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合は、この限りでない。
② 第四百五条第二号又は第三号に規定する事由のみがある場合において、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項の規定は、これを適用しない。
第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二 刑の量定が甚しく不当であること。
三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。
第四百十二条 不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄控訴裁判所又は管轄第一審裁判所に移送しなければならない。
第四百十三条 前条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所若しくは第一審裁判所に差し戻し、又はこれらと同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、上告裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び第一審裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。
第四百十三条の二 第一審裁判所が即決裁判手続によつて判決をした事件については、第四百十一条の規定にかかわらず、上告裁判所は、当該判決の言渡しにおいて示された罪となるべき事実について同条第三号に規定する事由があることを理由としては、原判決を破棄することができない。
第四百十四条 前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。
第四百十五条ないし第四百十八条 (省略)

第3 関連記事その他
1 上告審における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理かどうかの観点から行われます(最高裁平成21年4月14日判決)。
2 上告裁判所が弁護人を付する場合であって,上告審の審理のため特に必要があると認めるときは,裁判長は,原審における弁護人であった弁護士を弁護人に専任することができます(刑事訴訟規則29条4項・29条3項)。
3 上告審判決は原則として「差戻し」であって,「自判」は例外です(刑事訴訟法413条)。
4 東弁リブラ2010年3月号の「上告審の弁護活動について」には以下の記載があります。
    上告審が411条により控訴審判決を破棄できるのは,411条各号所定の事由があり,かつ,控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときに限られており(「著反正義」といわれます),きわめて高いハードルがあります。実際,上告審での破棄事例は,事実誤認であれば,主要な訴因について全部無罪とすべき(またはその疑いがある)場合が大半,量刑不当であれば,死刑/無期懲役,実刑/執行猶予の境界を分ける場合が大半で,しかも,全事件中に占める破棄事例の割合はきわめて少ないものとなっています。
5 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所における刑事事件の弁論期日
・ 刑事事件の上告棄却決定に対する異議の申立て
 最高裁判所事件月表(令和元年5月以降)
・ 判決要旨の取扱い及び刑事上訴審の事件統計
・ 最高裁判所調査官
・ 最高裁判所判例解説

第75期司法修習の日程

目次
0 第75期修習日程の全体像
1 導入修習
2 分野別実務修習
 「新型コロナウイルス感染症への対応に関する最高裁判所作成の文書」も参照してください。
3 A班の集合修習及びB班の選択型実務修習
4 A班の選択型実務修習及びB班の集合修習
5 二回試験(推測)
6 二回試験の不合格発表(推測)
7 その後の日程(推測)
8 その他関係記事

* 「第75期司法修習開始前の日程」,及び「司法修習等の日程」も参照してください。

0 第75期修習日程の全体像


1 導入修習
令和3年11月15日(月)~12月7日(火)


*1 以下の記事も参照してください。
(導入修習関係)
 司法修習開始前に送付される資料
 導入修習の日程予定表及び週間日程表
③ 導入修習カリキュラムの概要
 68期導入修習カリキュラムの概要は非常に詳しいです。
④ 導入修習期間中の入寮手続及び退寮手続に関する文書
 導入修習初日に持参するもの
⑥ 導入修習初日の日程
 導入修習初日の配布物
⑧ 導入修習チェックシート
 導入修習の実施に関する司法研修所事務局長の説明
(司法研修所教官関係)

 司法研修所教官
② 司法研修所民事裁判教官の名簿
③ 司法研修所刑事裁判教官の名簿
 司法研修所の教官組別表,教官担当表及び教官名簿
⑤ 司法研修所弁護教官の任期,給料等
*2 住居届の締切は採用日から1週間後であり,移転届の締切は導入修習開始日から1週間後です。


2 分野別実務修習
第1クール:令和3年12月14日(火)~令和4年2月9日(水)
第2クール:令和4年 2月10日(木)~ 4月 6日(水)
第3クール:令和4年 4月 7日(木)~ 6月 2日(木)
第4クール:令和4年 6月 3日(金)~ 7月26日(火)
*1 以下の記事も参照してください。
(総論)
① 実務修習結果簿
 司法修習の場所とクラスの対応関係(67期以降)
③ 司法修習の場所ごとの実務修習開始時期
 司法修習生配属現員表(48期以降)
⑤ 司法修習の場所を選ぶ際の基礎データ
 司法行政文書に関する文書管理
 裁判文書及び司法行政文書がA4判・横書きとなった時期
 司法修習生等に対する採用に関する日弁連の文書(73期以降の取扱い)
⑨ 司法修習期間中の就職説明会の日程(69期以降)
 弁護士会別期別の弁護士数の一覧表
(裁判修習)
 司法修習等の日程(70期以降の分)
→ 過年度の問研起案の日程が含まれていますところ,それぞれのクールの開始日から2週間後ぐらいに問研起案が実施されます。
 裁判文書の文書管理に関する規程及び通達
③ 民事訴訟記録の編成
④ 刑事訴訟記録の編成
⑤ 裁判所職員採用試験に関する各種データ
⑥ 平成3年度以降の裁判所職員採用試験の採用案内パンフレット
⑦ 66期民事裁判修習及び刑事裁判修習のアンケート結果概要
⑧ 第69期裁判修習の日程
(検察修習)
 全国一斉検察起案
→ それぞれのクールの検察修習3日目ぐらいに全国一斉検察起案が実施されます。
 司法修習生による取調べ修習の合法性
 検視,解剖,調査及び検査並びに病理解剖等
④ 各地の検察庁の執務規程
⑤ 第69期検察修習の日程
 法務省の定員に関する訓令及び通達
→ 全国の検察庁の職員の配置定員が含まれています。
⑦ 法務・検察幹部名簿(平成24年4月以降)
⑧ 法務省作成の検事期別名簿
*2 以下のとおり,現職裁判官の名簿(平成31年4月1日時点)を掲載しています。
① ポスト順
 修習期順
 生年月日順
*3 移転届の締切は実務修習開始日から7日後であると思います。
*4 導入修習終了後に住居給付の要件を具備した場合,住居届の締切は実務修習開始日の翌日から起算して7日後であると思います。
*5 判例タイムズ1128号(2003年11月1日号)38頁以下に「民事裁判実務修習の一つの試み -サマリージャッジメント-」(サマリーライティングのことが詳しく書いてあります。)が載っています。



3 A班の集合修習及びB班の選択型実務修習
A班の集合修習:   令和4年 8月 1日(月)~令和4年9月12日(月)
B班の選択型実務修習:令和4年 7月27日(水)~令和4年9月12日(月)
*1 集合修習については以下の記事も参照してください。
① 集合修習の開始等について
 集合修習の日程予定表及び週間日程表
③ 集合修習カリキュラムの概要
④ 集合修習初日の配布物
⑤ 集合修習期間中の入寮手続及び退寮手続に関する文書



*2 選択型実務修習については以下の記事も参照してください。
 選択型実務修習の運用ガイドライン
 選択型実務修習の運用ガイドラインQ&A
 選択型実務修習に関する資料
 選択型実務修習に関する平成22年3月当時の説明
 法務行政修習プログラム
*3 A班の集合修習の開始に伴い転居した場合,移転届の締切は集合修習開始日から7日後であると思います。

4 A班の選択型実務修習及びB班の集合修習
A班の選択型実務修習:令和4年 9月16日(金)~11月 2日(水)
B班の集合修習:   令和4年 9月20日(火)~11月 2日(水)
*1 A班の選択型実務修習の開始に伴い転居した場合,移転届の締切は選択型実務修習開始日から7日後であると思います。
*2 B班の集合修習の開始に伴い転居した場合,移転届の締切は集合修習開始日から7日後であると思います。
*3 二回試験開始の前日は,司法修習生にとっては自由研究日であるものの,試験会場となる司法研修所又は新梅田研修センターにおいて,試験事務担当者の研修等が実施されています(「二回試験直前の自由研究日」参照)。





5 二回試験(推測)
令和4年
11月 9日(水):刑裁
11月10日(木):検察
11月11日(金):民弁
11月14日(月):民裁
11月15日(火):刑弁

* 以下の記事も参照してください。
(二回試験等のスケジュール等)
① 65期以降の二回試験の日程等
 65期以降の二回試験の試験科目の順番
→ 二回試験の試験日程を推測できる根拠が書いてあります。
③ 二回試験の科目の順番の通知時期
④ 二回試験直前の自由研究日
⑤ 司法修習生考試応試心得(65期以降)
⑥ 64期以降の二回試験に関する,合格者及び不合格者の決定に関する議事録
⑦ 司法修習生考試の会場借用等業務に関する賃貸借契約書(新梅田研修センター)
(二回試験の不合格答案)
 二回試験落ちにつながる答案
 二回試験の不合格答案の概要
(二回試験の統計数字)
① 二回試験の推定応試者数
② 60期以降の二回試験の不合格者数及び不合格率(再受験者を除く。)
③ 二回試験の科目別不合格者数
④ 二回試験再受験者の不合格率の推移
 綴りミスが原因で二回試験に落ちた人の数
(司法修習生考試委員会及び考試担当者)
① 司法修習生考試委員会委員名簿(65期二回試験以降)
② 司法修習生考試委員会席図(65期二回試験以降)
③ 司法修習生考試担当者名簿(65期二回試験以降)

6 二回試験の不合格発表(推測)
令和4年12月6日(火)
*1 司法修習終了の前日です。
*2 以下の記事も参照してください。
(二回試験の不合格発表後のスケジュール)
 二回試験の不合格発表
② 65期以降の二回試験の不合格発表及びその後の日程
(二回試験に落ちた場合の取扱い)
 二回試験不合格時の一般的な取扱い
② 二回試験不合格と,修習資金貸与金の期限の利益との関係
③ 二回試験の不合格体験に関するブログ
 二回試験に3回落ちた人(三振した人)の数
⑤ 52期までの二回試験の場合,合格留保者に対しても給与が支給されていたこと
(弁護士資格認定制度)
① 平成16年4月1日創設の,弁護士資格認定制度
 弁護士資格認定制度に基づく認定者数の推移
(その他)
① 38期二回試験において,書き込みをした六法全書が持ち込まれたことに関する国会答弁
 65期二回試験以降の事務委託に関する契約書,及び67期二回試験の不祥事
 検事採用願を提出した検事志望の司法修習生は二回試験に落ちない限り採用されると思われること
④ 二回試験終了後の海外旅行に関する,「司法修習生の規律等について」の記載
⑤ 二回試験終了後の海外旅行に関する各種文書が存在しないこと
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7 その後の日程(推測)
(1) 弁護士登録をする人に関する日程

令和4年12月8日(木):弁護士の一斉登録日
*1 法曹三者に共通する事項として,以下の記事も参照してください。
(修習給付金の確定申告関係)
 司法修習終了翌年の確定申告
② 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
③ 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
④ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
⑤ 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等
 修習給付金の確定申告に関する記事の一覧
(修習資金→修習専念資金の返還関係)
① 修習資金貸与金の返還状況
② 修習資金の返還の免除
③ 修習資金の返還の猶予
 修習資金貸与金の返還を一律に免除するために必要な法的措置,及びこれに関する国会答弁
 谷間世代(無給修習世代)に対する救済策は予定していない旨の国会答弁等
*2 新人弁護士に関する記事として,以下の記事も参照してください。
① 弁護士となる資格
② 弁護士登録番号と修習期の対応関係
 弁護士の社会保険
 日本弁護士国民年金基金
⑤ 日本弁護士国民年金基金の年金月額を3万円とするための掛金額の推移
 個人型確定拠出年金(iDeCo)
(2) 判事補志望者に関する日程(推測)
令和4年
12月 8日(木)及び9日(金):採用面接
12月14日(水):下級裁判所裁判官指名諮問委員会の作業部会
12月16日(金):下級裁判所裁判官指名諮問委員会の答申
12月21日(水):内定通知の電話(71期及び72期の場合,午前11時頃から午後5時頃までの間)
* 以下の記事も参照してください。
 新任判事補の採用内定通知から辞令交付式までの日程
→ 73期までの場合,下級裁判所裁判官指名諮問委員会の作業部会は毎年12月中旬の水曜日に開催されていますところ,その前の週の木曜及び金曜に採用面接が実施されています。
 判事補採用願等の書類,並びに採用面接及び採用内定通知の日程
 新任判事補任命の閣議決定及び官報掲載の日付
 新任判事補研修の資料
⑤ 新任判事補を採用する際の内部手続
⑥ 判事補の採用日程における,旧司法修習と新司法修習の比較
⑦ 集合修習時志望者数(A班及びB班の合計数)と現実の判事補採用人数の推移
⑧ 最高裁判所による判事補の指名権の行使に関する裁判例
(3) 検事志望者に関する日程(推測)
令和4年
12月 1日(木)及び 2日(金):採用面接
12月 8日(木):新任検事任官日
* 以下の記事も参照してください。
① 司法修習生の検事採用までの日程
 検事採用願を提出した検事志望の司法修習生は二回試験に落ちない限り採用されると思われること
③ 新60期以降の,新任検事辞令交付式及び判事補の採用内定の発令日
④ 検事の研修日程
⑤ 現行60期以降の,検事任官者に関する法務省のプレスリリース


8 その他関係記事
(1) 司法研修所事務局関係
① 司法修習生の司法修習に関する事務便覧
② 司法修習生の旅費に関する文書
③ 司法研修所事務局の事務分掌(平成25年4月1日現在)
④ 司法研修所の職員配置図,各施設の配置及び平成24年8月当時の門限
⑤ 司法研修所事務局の,教材・資料関係事務
⑥ 69期貸与記録の表題
⑦ 刑事事実認定ガイド(司法修習生用の教材)の大部分は不開示情報であること
⑧ 司法研修所の食堂に関する修習日誌の記載は不開示情報であること
⑨ 修習教材の電子データ化の弊害が分かる文書は存在しないこと
(2) その他司法研修所関係
① 和光市駅から司法研修所までのバス事情
 司法研修所の食堂及び西館の弁当販売に関する文書
③ 司法修習生の組別(クラス別)志望状況
④ 69期以降の司法修習生組別志望等調査表は存在しないこと
 歴代の司法研修所長
⑥ 司法研修所の沿革
⑦ 司法研修所五十年史(平成10年2月発行)
⑧ 司法省司法研究所の沿革
(3) 修習給付金
① 修習給付金制度が創設されるまでの経緯
② 月額13万5000円の基本給付金の根拠
③ 月額 3万5000円の住居給付金の根拠
④ 司法修習生の修習給付金の導入理由等
⑤ 司法修習生の修習給付金の名称に関する説明
(4) 修習給付金に関連する事項
① 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
 司法修習生と国民年金保険料の免除制度及び納付猶予制度
③ 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等
④ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,衆議院法務委員会における国会答弁資料
⑤ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,参議院法務委員会における国会答弁資料
⑥ 修習給付金制度等に関する規則案についての司法研修所事務局長の説明
⑦ 生活保護受給者と,修習給付金及び修習専念資金との比較
⑧ 修習給付金と最低賃金等との比較
⑨ 司法修習生に対する旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
(5) 修習専念資金
① 修習専念資金
② 修習専念資金の貸与申請状況
③ 66期ないし70期司法修習開始時点における,修習資金の貸与申請状況
(6) 司法修習生の義務関係
 昭和32年12月1日に司法修習生バッジの着用が開始した経緯
② 司法修習生の兼業・兼職の禁止
 司法修習生の兼業の状況
④ 司法修習生の兼業許可の具体的基準を定めた文書は存在しないこと
⑤ 司法修習生に関する規則第3条の「秘密」の具体的内容が書いてある文書
⑥ 司法修習生が取り扱う裁判修習関連の情報のセキュリティ対策
⑦ 司法修習生の欠席承認に関する運用基準(平成30年4月25日施行分)
(7) 司法修習生の義務違反関係

① 司法修習生の守秘義務違反が問題となった事例
② 71期以降の司法修習生に対する戒告及び修習の停止
③ 71期以降の司法修習生に対して,戒告及び修習の停止を追加した理由
④ 司法修習生の罷免
⑤ 司法修習生の罷免理由等は不開示情報であること
 司法修習生の罷免等に対する不服申立方法
⑦ 「品位を辱める行状」があったことを理由とする司法修習生の罷免事例及び再採用
⑧ 司法修習生の逮捕及び実名報道
(8) 給費制及び修習資金貸与制関係
① 給費制時代の司法修習生の各種手当と修習資金貸与制との比較等
② 修習資金貸与制と健康保険の被扶養者等
③ 修習資金貸与制に関する最高裁判所の当初の案
④ 昭和22年の司法修習生の給費制導入
⑤ 司法修習生の給費制に関する,平成10年の裁判所法改正
⑥ 司法修習生の給費制に関する,平成16年の裁判所法改正
⑦ 司法修習生の給費制に関する,平成22年の裁判所法改正及びその後の予算措置
(9) 最高裁判所関係
① 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
② 最高裁判所が作成している,高裁長官・地家裁所長等名簿
 最高裁判所裁判部作成の民事・刑事書記官実務必携
(10) その他

① 司法修習生指導担当者協議会
② 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明
③ 司法修習生の身上報告書等の取扱い
④ 修習開始時点における司法修習生の人数の推移
 司法修習生の就職関係情報等が載ってあるHP及びブログ
 民間労働者と司法修習生との比較
 業務が原因で心の病を発症した場合における,民間労働者と司法修習生の比較

修習給付金に関する所得税更正処分取消請求事件の訴状(令和3年5月11日付)

    令和3年5月11日に大阪地裁に提出した,修習給付金に関する所得税更正処分取消請求事件の訴状につき,請求の趣旨及び請求の原因を以下のとおり貼り付けています(別紙1及び別紙2は省略しています。)。

請求の趣旨

1 X税務署長が令和2年2月28日付で原告に対してした,平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分を取り消す
2 訴訟費用は,被告の負担とする
との判決を求める。

請求の原因

第1 事案の要旨
1 本件確定申告
    原告は,◯◯◯弁護士会所属の弁護士である(甲3の1)ところ,大阪地裁配属の第71期司法修習生であることに基づき平成30年中に支給された合計155万7000円の基本給付金(甲22参照)(以下「本件給付金」という。)について,司法研修所の公式見解(甲3の2)に従い,その全額が雑所得の総収入金額に該当することを前提に,平成31年2月21日,平成30年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告(以下「本件確定申告」という。)をした。
2 X税務署長に対する更正の請求
    原告は,①主位的主張として,本件給付金は学資金に該当し,非課税所得である点で総収入金額に算入すべきではないこと,及び②予備的主張として,仮に本件給付金が学資金に該当せずに非課税所得でなかったとしても,7万4060円の通勤交通費(以下「本件交通費」という。)のほか,書籍代,名刺代,学習費及び衣服購入費等(以下「本件交通費」とあわせて,「本件費用」という。)は本件給付金に係る雑所得の総収入金額から必要経費として控除すべきところ,本件確定申告に際して雑所得の金額の計算上,本件交通費しか必要経費として控除していなかった点で雑所得の金額が過大になっていることを主張して,X税務署長に対し,平成31年3月20日に更正の請求をした(甲3の3)。
3 X税務署長が行った本件各処分
    X税務署長は,原告に対し,①令和元年12月20日,本件給付金は必要経費のない雑所得であることを主たる理由とする,更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を行い(甲1),さらに,②令和2年2月28日,雑所得の金額の計算上,本件交通費は必要経費に算入できず,また,原告が貸与を受けた修習専念資金(以下「本件資金」という。)に係る利息相当額1万1286円(以下「本件利息相当額」という。)は,経済的利益として雑所得の総収入金額に算入すべきであることを主たる理由とする更正処分(以下「本件更正処分」といい,本件通知処分とあわせて「本件各処分」という。)を行った(甲2)。
4 国税不服審判所長の棄却裁決及び本件訴訟の提起
    原告は,本件各処分の取消しを求めて国税不服審判所長に対して審査請求をしたものの,国税不服審判所長は,令和3年3月24日にこれを棄却する旨の裁決をし(甲39)(以下「本件裁決」という。),原告及び原告訴訟代理人は同年4月9日に本件裁決を知った(甲40参照)。
    そのため,原告は,被告を相手に,本件更正処分の取消しを求めて訴訟を提起した。

第2 本件訴訟の争点等
1 本件訴訟の争点
(1) 本件訴訟の争点は以下の3点である。
① 本件給付金は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。
② 本件給付金が非課税所得に該当しない場合,本件費用は,雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるか否か。
③ 本件利息相当額は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。
(2) ①は主位的主張に関する争点であり,②は予備的主張に関する争点である。
2 ①及び③の争点に関する原告の主張が認められた場合,本件更正処分の全部が取り消されること
    第6で主張するとおり本件給付金を除いて課税関係が問題となる収入は存在しないし,この点については処分行政庁も争っていない(甲39・4頁ないし11頁参照)。
    そのため,①及び③の争点に関する原告の主張が認められた場合,租税法規によって客観的に定まっている税額は0円となる結果,本件更正処分の全部が取り消されることとなる(最高裁平成4年2月18日判決(裁判所HP)参照)。

第3 争点1(本件給付金は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。)に関する原告の主張
1 基本給付金は学資金としての性質を有すること
(1) 基本給付金の内容
ア 修習給付金は,基本給付金,住居給付金及び移転給付金からなるものである(裁判所法67条の2第2項)。
    そして,基本給付金とは,司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用をいい(裁判所法67条の2第3項),修習給付金に関する政府の制度設計等を踏まえて(甲36),月額13万5000円とされている(司法修習生の修習給付金の給付に関する規則(甲16・15頁ないし17頁)2条1項)。
イ ところで,法務省大臣官房司法法制部の説明によれば,基本給付金の月額は,日弁連が第68期司法修習生を対象に実施した修習実態アンケートにおいて,修習期間中につき,生活実費が月額約9.4万円であり,学資金が月額約4.0万円であり,合計の支出が月額約13.5万円であったという司法修習生の生活実態等の事情を総合考慮するなどして決定されたとのことである(甲5末尾1頁及び2頁,並びに甲6)。
    また,基本給付金は,司法修習生の通常の支出のうち,社会保険料,所得税・住民税等,勉強会参加費を除く交際費,奨学金返済費用,教養娯楽費(旅行費・月謝類等。ただし,書籍費を除く。),理美容・嗜好品等,自動車等関係費,仕送り金,家具家電・衣服購入費等まで満たすものとは考えられていない(甲5末尾2頁及び3頁参照)。
    そのため,基本給付金は,修習期間中の最低限の生活費及び教育費に充てるという趣旨で国から司法修習生に支給される金員であるといえる。
(2) 「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費は学資金に含まれること
ア 学資に充てるために給付される金品(所得税法9条1項15号前段)(以下「学資金」という。)とは,一般に,学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるもので,かつ,その目的に使用されるものをいうと国税庁は解釈している(甲4)。
    つまり,学術又は技芸を習得するために直接必要な費用だけが学資金であると国税庁が解釈しているわけではない。
イ 平成18年6月2日法律第50号による改正前の民法34条における学術又は技芸を目的とする法人として私立学校が想定されていた(甲33・1頁)ことからすれば,学校教育は当然に「学術又は技芸の習得」に含まれるといえる。
    そして,甲南大学法科大学院の奨学給付金(甲7),及び日本学生支援機構の給付型奨学金(大学等における修学の支援に関する法律4条及び5条,並びに日本学生支援機構法17条の2)(甲8)は,学術又は技芸の習得に専念する目的で使用される生活費を支給するものであり,かつ,学資金として非課税所得であるとされている(日本学生支援機構の給付型奨学金につき甲31の4)。
ウ 日本学生支援機構の給付型奨学金の場合,学術又は技芸を習得するための資金に充てるために支給する旨の規定は存在しないどころか,その支給目的は「我が国における急速な少子化の進展への対処に寄与すること」であることが明記されている(大学等における修学の支援に関する法律1条),
    それにもかかわらず,国税庁回答では,最大でも月額10万円を超えない給付型奨学金は所得税法上の「学資金」に該当し,個別法に非課税措置の規定を置かなくても所得税法上非課税となるという文部科学省の見解が承認されている(甲31の4)。
    そのため,とある給付金について学術又は技芸を習得するための資金に充てるために支給する旨の規定が存在しないことと,当該給付金が非課税所得であるかどうかとは関係がないといえる。
エ そのため,このような非課税所得に関する事例とのバランスからすれば,「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費は学資金に含まれるといえる。
(3) 司法修習は「学術又は技芸の習得」に当たること
ア 職業訓練は学校教育との重複を避ける必要がある(職業能力開発促進法3条の2第2項)のに対し,司法修習は法科大学院教育との有機的連携の下に行われるものであって(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律2条3号),法科大学院教育との重複を避ける必要があるとはされていない。
イ 法科大学院の授業科目のうちの法律実務基礎科目は,法曹としての技能及び責任その他の法律実務に関する基礎的な分野の科目である(専門職大学院設置基準20条の3第1項2号)から,法科大学院教育は職業訓練としての要素を有しているといえる。
ウ 司法修習生に品位を辱める行状,修習の態度の著しい不良その他これらに準ずる事由がある場合,罷免又は修習の停止を受けることとなる(裁判所法68条2項,及び司法修習生に関する規則17条2項)。
    そして,法務省大臣官房司法法制部は,司法修習生の「罷免」は「退学」に対応し,「修習の停止」(司法修習生の身分は保有するが,一定期間修習をさせない処分)は「停学」に対応すると説明している(甲5末尾10頁及び11頁)ことからしても,司法修習生の身分は学生に類似するところがあるといえる。
エ そのため,司法修習は,学生に類似するところがある司法修習生に対し,職業訓練としての要素を有しつつも「学術又は技芸の習得」に当然に該当する法科大学院教育との有機的連携の下に行われるものであることからすれば,「学術又は技芸の習得」に当たるといえる。
(4) 仮に司法修習が「学術又は技芸の習得」に当たらなかったとしても,それだけでは,基本給付金が「学資金」に当たらないとはいえないこと
ア 貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令(平成24年3月28日政令第71号)(甲34の1参照)による改正後の,貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成19年11月7日政令第329号)附則20条2項2号イは「その業として行う貸付けが、学生、生徒、児童又は幼児に対する学資としての資金の貸付けであること。」と定めている。
    そして,金融庁としては,同号イの解釈として,「学生」には,航空大学校や海技大学校のような特別の法律に基づいて設立された法人において,人材養成のための教育訓練を受けている者も含まれるし,「学資としての資金」の範疇には,幼稚園や保育園の児童又は幼児の保育料等も含まれると考えている(甲34の2・質問番号12番及び14番)。
イ 東京都認証保育所の保育料助成金は,その名称からすれば,「学術又は技芸」を習得するための資金でないにもかかわらず,所得税法9条1項15号前段に基づき非課税所得としての取扱いを受けている(甲32の1)。
    また,当該取扱いについて,東京国税局と東京都との間で授受した文書は存在しない(甲32の2)ことからすれば,協議するまでもなく非課税所得であると判断されたのかも知れない。
ウ そのため,支給対象が学校教育法上の学校の「学生」ではなくても学資金に含まれるし,想定使途が児童又は幼児の保育という「学術又は技芸の習得」とは明らかに異なるものであっても学資金に含まれるという取扱いがされているといえる。
    したがって,仮に司法修習が「学術又は技芸の習得」に当たらなかったとしても,それだけでは,基本給付金が「学資金」に当たらないとはいえない。
(5) 小括
    以上より,学費の負担を前提としていない司法修習生に対して最低限の生活費及び教育費として支給される基本給付金は,学資金としての性質を有するといえる。

2 基本給付金について金額規模等を理由に学資金から除外される理由はないこと
(1) 基本給付金には課税所得となるべき担税力がないこと
ア 所得税法は,23条ないし35条において,所得をその源泉ないし性質によって10種類に分類し,それぞれについて所得金額の計算方法を定めているところ,これらの計算方法は,個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当たる部分を所得とする趣旨に出たものと解される(最高裁平成24年1月13日判決(甲55の2・4頁))から,担税力のないものが課税所得となることはないといえる。
イ 司法研修所がある埼玉県の,平成29年10月1日改定の最低賃金である時給871円(甲9)で1週間当たり40時間(法定労働時間であることにつき労働基準法32条1項)働いた場合,871円×40時間×30日/7日=14万9314円となるから,月額13万5000円の基本給付金は埼玉県の最低賃金を下回る金額である。
    また,基本給付金の13万5000円という金額は,住居費の支出を伴わない第68期司法修習生の平均的な生活費(甲5末尾4頁)等を参考に設定された金額である。
    そして,司法修習生は原則として兼業を禁止されている(司法修習生に関する規則2条)関係で,住居費を除く生活費に使える収入は基本給付金だけであるから,基本給付金には課税所得となるべき担税力がないといえる。
(2) 月額17万円という修習給付金の金額規模は特に大きいわけではないこと
    修習資金の貸与を受けなかった新65期ないし第70期司法修習生が家賃を払って一人暮らしをしていた場合,両親等の扶養義務者から生活費及び教育費という趣旨で月額17万円以上の仕送りを受けていた事案がごく普通にあったと思われる。
    そして,それらの仕送りについて,相続税法21条の3第1項2号の「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」を超えるとして贈与税が課税された事例があるとは思えないことからしても,3万5000円の住居給付金をあわせた月額17万円という修習給付金の金額規模は,「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」(所得税法9条1項15号後段所定の非課税所得)と比べて特に大きいわけではない。
(3) 4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税所得であると思われること
    平成28年度税制改正において所得税法9条1項15号前段が改正され,通常の給与に加算して受ける学資金が非課税とされた結果,医学生等に対する修学等資金の債務免除益は,通常の給与に加算して受ける学資金に該当するものとしてすべて非課税となった(甲10参照)。
    ところで,兵庫県養成医師制度を利用して兵庫医科大学に進学した場合,6年間で合計4480万円(うち,生活費相当額は130万円の6年分となる780万円)の貸付けを受けられる(甲11「貸与金額:授業料等相当額+α」及び甲56参照)し,大学を卒業後,医師として9年間,兵庫県が指定する兵庫県内の医師不足地域等の医療機関で勤務した場合,貸与を受けた修学資金の返還を免除される(甲11及び甲56)。
    そのため,780万円の生活費を含む4480万円もの修学資金の返還免除に基づく債務免除益であっても,学資金として非課税所得であると思われる。
(4) 小括
    したがって,基本給付金は,金額規模等(甲5末尾6頁参照)を理由に学資金から除外される理由はないといえる。

3 職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,基本給付金が非課税所得でないのは憲法14条1項に違反すること
(1) 職業訓練受講給付金及び基本給付金の共通点
    職業訓練受講給付金は,雇用保険を受給できない求職者がハローワークの支援指示により公的職業訓練を受講し,訓練期間中に訓練を受けやすくするための給付であり(甲14),租税その他の公課を課されない非課税所得である(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律10条)。
    また,司法修習は,司法修習生が法曹資格を取得するために国が法律で定めた職業訓練課程であり,高度の専門的実務能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を確保するために必須な臨床教育課程として,実際の法律実務活動の中で実施されるものである(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁))。
    そのため,職業訓練受講給付金及び基本給付金は,職業訓練期間中の生活を支援するという給付目的達成のために必要な最低限の給付である点で共通しているといえる(基本給付金だけでは司法修習生の通常の支出を賄えないことにつき甲5末尾2頁及び3頁参照)。
(2) 基本給付金は,職業訓練受講給付金以上に非課税所得とすべき必要性及び許容性があること
ア 非課税所得とすべき必要性があること
    職業訓練受講給付金(平成21年当時の民主党のマニフェストにおいて,「求職者支援制度」の手当として記載されていたもの)が非課税所得とされた理由は,受給者の最低生活を保障するものであり,公課等を課して給付を減額することは,国の国民に対する最低生活保障の原則に照らして矛盾すると考えられたためであって(甲13),職業訓練の推進という政策的背景が理由とされているわけではない。
    そして,司法修習生の場合,その修習期間中,その修習に専念しなければならないという修習専念義務を負っていて(裁判所法67条2項),原則として兼業を禁止されている(司法修習生に関する規則2条)し,破産手続開始決定を受けたことは罷免事由とされている(司法修習生に関する規則17条1項4号)のであるから,職業訓練期間中の生活を支援する必要性は職業訓練受講生の場合よりも大きいといえる。
    そのため,基本給付金は,職業訓練受講給付金以上に非課税所得とすべき必要性があるといえる。
イ 非課税所得とすべき許容性があること
    職業訓練受講給付金は,支給対象が学校教育との重複を避けるべきとされている職業訓練の受講生であり,想定使途が生活実費だけである(甲13)点で,基本給付金よりも学資金としての性格が明らかに弱いといえる。
    そのため,基本給付金は,職業訓練受講給付金以上に非課税所得とすべき許容性があるといえる。
(3) 小括
    したがって,職業訓練受講給付金が非課税所得であるにもかかわらず,司法試験に合格しない限り採用されない司法修習生について,司法修習という職業訓練期間中の生活を支援するための給付である基本給付金が非課税所得でないのは合理的理由のない差別であるから,憲法14条1項に違反するといえる。

4 本件裁決の判断理由に対する反論
(1) 文化功労者年金の取扱いとの整合性を考慮すべきであること
    文化功労者に対して終身で支給する文化功労者年金(文化功労者年金法3条1項)の場合,文化功労者という地位に基づいて,個々の文化功労者の申請によることなく,また,その給付を受ける個々の文化功労者が実際に文化功労者年金を学問の修業のために必要としているか否かにかかわらず,一方的,かつ,一律に,定額(年額350万円)が給付されるものである。
    しかし,このような事情があるにもかかわらず,文化功労者年金は公益(文化の向上,学術の奨励政策)を目的として非課税所得とされている(所得税法9条1項13号,及び甲41左上482頁)ことからすれば,同様の事情があることを理由として,修習給付金が公益(学術奨励)を目的として非課税所得とされている学資金(甲41左上280頁及び482頁)に該当しないと解することはできないといえる。
    そのため,このような文化功労者年金の取扱いとの整合性を考慮すべきであるといえる。
(2) 修習給付金案内の記載は,基本給付金の税務上の取扱いを決定する理由とはならないこと
ア 71期司法修習生向けの修習給付金案内(甲3の1参照)は,司法研修所事務局総務課・経理課が,文書を作成するほどの複雑な内容の検討をすることもなく決定した(甲42参照),71期司法修習生に対して周知すべき内容を記載したものにすぎない(甲43)。
    そして,移転給付金に関するものではあるが,司法修習生に対する給付の税務上の取扱いについては,最終的には税務当局が判断すべき事項であると最高裁判所事務総長は考えている(甲44)。
    また,修習給付金が非課税所得又は雑所得に該当するかどうかに関する法務省と国税庁の協議文書が存在するわけでもない(甲45)。
    そのため,修習給付金案内の記載をもって,基本給付金の給付者である国の最終的な考えが示されたとはいえない。
イ 修習給付金の支出者は最高裁判所である(甲52・3頁参照)し,最高裁判所における会計法13条1項の支出負担行為担当官は最高裁判所事務総局経理局長である(裁判所会計事務規程別表第二・二(甲47・14頁及び15頁))ところ,修習給付金案内の作成者は司法研修所であって,最高裁判所事務総局経理局長ではない。
    そのため,修習給付金案内は,そもそも基本給付金の給付者である国が作成したものであるとはいえない。
ウ 修習給付金案内は,司法修習生としての採用内定通知の約1週間後に,他の資料と一緒に司法研修所から一方的に普通郵便で送付される資料であって(甲48),司法修習予定者としては,税務上の取扱いに関する司法研修所の認識を通告されただけである。
    そして,修習給付金案内には,「司法研修所及び実務庁会においては,問合せに答えることはできません。」とか,「詳細は,税務署に問い合わせるなどして確認して下さい。」と記載されている(甲3の2)ことからすれば,司法修習予定者又は司法修習生が自分で税務署に問い合わせた場合,税務上の取扱いに関して修習給付金案内の記載とは異なる理解に至る可能性もあったといえる。
エ したがって,修習給付金案内の記載は,基本給付金の税務上の取扱いを決定する理由とはならないといえる。
(3) 基本給付金が「学資として支給する資金」と明記されていないことは,学資金への該当性を否定する理由とはならないこと
    経済的理由により修学に困難があるものを対象とする日本学生支援機構の給付型奨学金は,「学術又は技芸の習得に専念する目的で使用される生活費」という意味での「学資」として支給される資金である(甲31の4)ことが日本学生支援機構法17条の2第1項に明記されているに過ぎない。
    そのため,基本給付金が「学資として支給する資金」と明記されていないことは,学資金への該当性を否定する理由とはならないといえる。
(4) 基本給付金が一律に支給されていることは,学資金への該当性を否定する理由とはならないこと
    所得税法9条1項15号前段が学資金を非課税所得としているのは,あくまでも学術奨励という公益目的のためであって,所得税法9条1項15号後段と異なり受給者の経済状態への配慮を目的としたものではない(甲41左上482頁参照)ことからすれば,受給者が経済的理由により修学に困難がある者に限定されているかどうかは,学資金への該当性を左右する事情ではないといえる。
    実際,兵庫県養成医師制度に基づき貸与される修学資金の場合,経済的理由により修学が困難であることは支給条件とされていない(甲11)にもかかわらず,その債務免除益は学資金に該当すると思われる。
    そのため,基本給付金が個々の司法修習生の経済的状況を考慮することなく一律に支給されていることは,学資金への該当性を否定する理由とはならないといえる。
(5) 基本給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかった理由が異なること
    法務省が考えるところの,修習給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかった理由が分かる文書は,衆議院法務委員会における国会答弁資料,及び「修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱いについて」(甲5・6頁ないし9頁)だけである(甲46の1)。
    しかし,これらの資料には,修習給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかった理由は記載されていない(甲46の2参照)。
    そのため,職業訓練受講給付金とはその趣旨や目的,対象等を異にすることを理由として,基本給付金について非課税とする旨の立法上の措置が講じられなかったというわけでは全くない。
(6) 小括
    したがって,本件裁決の判断理由(甲39・13頁ないし16頁)は失当であるといえる。

5 結論
    以上より,本件給付金は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるといえる。

第4 争点2(本件給付金が非課税所得に該当しない場合,本件費用は,雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるか否か。)に関する原告の主張
1 雑所得としての基本給付金について必要経費が認められること
(1) 司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は当然に存在すること
ア 司法修習生は修習専念義務を負っている(裁判所法67条2項)し,高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努める義務を負っている(司法修習生に関する規則4条)。
    そして,成績不良であったり,正当な理由なく欠席したりするなど,品位を辱める行状その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由がある場合,司法修習生を罷免されたり,修習の停止を命じられたりすることとなる(裁判所法68条2項,司法修習生に関する規則17条及び18条,並びに甲5・10頁及び11頁)。
イ 司法修習生の罷免理由は公にされていないし,司法修習生のどのような行為が非違行為に該当するかについても公にされていない(甲17)ことからすれば,司法修習生という立場が安定しているとはいえない。
ウ 裁判所法上,法曹に必要な能力を身に付けるために修習を行うべき者と位置づけられている司法修習生の法的地位は,平成16年の裁判所法改正により給費制から貸与制に移行しても何ら変更されていない(甲50・2頁)。
    そして,給費制時代の司法修習生については給与所得控除という形で必要経費が認められていたこととのバランスからすれば,法曹人材確保の強化を図るために導入された修習給付金(甲6)時代の司法修習生についても当然に必要経費が認められるといえる。
エ 営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分される(最高裁平成29年12月15日判決(甲15))。
    そして,営利を目的とする継続的行為について必要経費が一切存在しないというのはそもそも想定できない。
オ したがって,司法修習生の義務を守ることで司法修習生という立場を維持して基本給付金を支給してもらうために必要な経費は当然に存在するといえる。
(2) 基本給付金について必要経費の控除を一切認めないことは憲法14条1項に違反すること
ア 最高裁大法廷昭和60年3月27日判決の判示内容
    サラリーマン税金訴訟に関する最高裁大法廷昭和60年3月27日判決(甲18)は,給与所得者において自ら負担する必要経費の額が一般に旧所得税法所定の給与所得控除の額を明らかに上回るものと認めることは困難であること等を理由として,給与所得者について必要経費の実額控除を認めず,給与所得控除による概算控除しか認めないことは,必要経費の実額控除が認められている事業所得者等との関係において憲法14条1項に違反しないと判示している。
イ 農業次世代人材投資資金には必要経費が存在すること
    農業次世代人材投資資金(かつての青年就農給付金)は,生活費を支給する国の他の事業と重複受給できない点で(甲19の1・2頁及び3頁)生活費に充てることが予定されている。
    ところで,農業次世代人材投資資金(準備型)の場合,道府県の農業大学校等の研修機関等における研修(甲19の1・2頁)の対価として支給されるわけではないし,交付要件を充足するためには研修機関等で概ね1年以上研修する必要がある(甲19の1・2頁)。
    そして,自らの意思で農業者となるべく就農前の研修を選択したことに伴う交通費や授業料など研修に要した費用は必要経費とされている(甲19の2)。
ウ 前述したとおり司法修習生において自ら負担する必要経費が存在する。
    それにもかかわらず,基本給付金について必要経費の控除を一切認めないことは,必要経費の概算控除が認められている給与所得者,及び必要経費の実額控除が認められている他の雑所得者(特に,農業次世代人材投資資金(準備型)の受給者)との関係において合理的理由のない差別であるから,憲法14条1項に違反するといえる。
(3) 小括
    したがって,雑所得としての基本給付金について必要経費が認められるといえる。

2 本件裁決の判断理由に対する反論
(1) 一般対応の必要経費に該当するかどうかを判断する際の基準が異なること
ア 雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,①雑所得を得るため直接に要した費用の額,及び②雑所得を生ずべき業務について生じた費用(②につき,以下「一般対応の必要経費」という。)の額である(所得税法37条1項)。
    ところで,所得税法施行令96条1項は,家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて,経費の主たる部分が「事業所得を・・・生ずべき業務の遂行上必要」であることを要すると規定している上,ある支出が業務の遂行上必要なものであれば,その業務と関連するものでもあるといえる。
    そのため,ある支出が一般対応の必要経費に該当するというためには,雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であれば足りるといえる(事業所得に関する東京高裁平成24年9月19日判決(甲49の1)参照。なお,当該判決に対する国の上告受理申立ては,最高裁平成26年1月17日決定により不受理となったことにつき甲49の2・3頁)
イ そして,一般対応の必要経費に該当するかどうかを判断する際,雑所得が発生する制度の趣旨目的等を考慮する必要は全くないのであって,客観的に見て,当該費用が雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であるかどうかを判断すれば足りるといえる。
(2) 司法修習生が基本給付金を受けるために司法修習に従事するという関係にあるわけではないことは,必要経費の存在を否定する理由とはならないこと
ア 大阪国税局が作成した「司法修習生が受ける修習給付金に係る課税関係について」(甲16)によれば,司法修習生がその修習に伴い住所又は居所を移転するための費用は必要経費に該当することを前提として,移転費用の実費相当額の支給である移転給付金は収入と経費が一致するために課税対象とはならないとされている。
    また,司法修習生がその修習に伴い旅行するための費用は必要経費に該当することを前提として,交通費等の実費相当額の支給である旅費は収入と経費が一致するために課税対象とはならないとされている。
    つまり,司法修習生が移転給付金及び旅費を受けるために司法修習に従事するという関係にあるわけではないにもかかわらず,移転費用及び交通費等については当然に必要経費とされている。
イ 農業次世代人材投資資金(準備型)の場合,同資金を得るために道府県の農業大学校等の研修機関等における研修を受けるという関係にあるわけではないにもかかわらず,交通費や授業料など研修に要した費用については必要経費として認められている。
ウ そのため,司法修習生が基本給付金を受けるために司法修習に従事するという関係にあるわけではないことは,必要経費の存在を否定する理由とはならない。
(3) 小括
    したがって,本件裁決の判断理由(甲39・16頁ないし18頁)は失当であるといえる。

3 本件確定申告で申告した雑所得の金額は過大であること
(1) 本件交通費は必要経費であること
ア 実務修習に出席するための通勤交通費について
(ア) 司法修習生は,埼玉県和光市の司法研修所で実施される導入修習が終了した後,実務修習地における分野別実務修習及び選択型実務修習,並びに司法研修所で実施される集合修習を履修することとされている。
    そして,分野別実務修習は,民事裁判修習,刑事裁判修習,検察修習及び弁護修習からなるものであり(ただし,司法修習生ごとに順番は異なる。),それぞれ,配属地における裁判所,検察庁及び弁護修習先の法律事務所に赴いた上で実施される臨床教育過程である。
    また,選択型実務修習は,分野別実務修習において弁護修習をした法律事務所を拠点(ホームグラウンド)とした上で,裁判所,検察庁及び弁護士会で提供される個別修習プログラム等を自ら選択して履修することとされている。
(イ) 司法修習は,最高裁判所がその基本的内容を定め,司法修習生が司法修習を終了しないと法曹資格が与えられないものであるから,司法修習生は,修習過程で用意されているカリキュラムに出席し,その教育内容を全て履修することが本来要請されている(東京高裁平成30年5月16日判決(甲12・8頁及び9頁))のであって,当該カリキュラムへの出席は修習専念義務の中核をなすものである。
    そのため,裁判所,検察庁及び弁護修習先の法律事務所並びに選択型実務修習の実施場所に出席するために必要となる通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
イ 二回試験の試験会場に出席するための通勤交通費について
    二回試験(正式名称は「司法修習生考試」である。)は裁判所法67条1項に基づく試験であって,二回試験に合格しない限り司法修習を終了できないため,司法修習生が必ず受験する必要がある試験である。
    そのため,二回試験の試験会場である新梅田研修センター(甲21・1頁)に出席するための通勤交通費は,雑所得である基本給付金を得るため直接に要した費用であるといえる。
(2) 書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は必要経費であること
    原告は,「高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない」司法修習生(司法修習生に関する規則4条)であった。
    そのため,法律書を購入し,これを熟読することで法律に関する理論と実務を身に付ける必要があった。
    また,実務法曹及び法科大学院同窓生との勉強会を含む交流,並びに社会人としての司法修習生にふさわしい服装を心がけることを通じて,弁護士にふさわしい品位と能力を備える必要があった。
    そのため,法律書購入に関する書籍代,名刺代,交際費及び衣服購入費等は,雑所得である基本給付金を生ずべき業務の遂行上必要な費用であるといえる。
(3) 原告の雑所得の金額
    前述した事情を考慮すれば,別紙1「原告の収支の一覧表」にあるとおり,本件費用は38万8394円であるといえる。
    そのため,仮に本件給付金が非課税所得でないとしても,必要経費として控除していないものがある点で,本件確定申告で申告した雑所得の金額148万2940円(甲3)は過大であって,原告の雑所得の金額は116万8606円であるといえる。

4 結論
    以上より,本件給付金が非課税所得に該当しない場合,本件費用は,雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるといえる。

第5 争点3(本件利息相当額は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるか否か。)に関する原告の主張
1 修習専念資金の内容
(1) 修習専念資金とは,司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって,修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう(裁判所法67条の3第1項)。
(2) 原告の場合,司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則3条1項に基づき,毎月10万円を貸与されていた(甲23)。

2 本件利息相当額は学資金として非課税所得であること
    修習専念資金は,司法修習生の通常の支出のうち修習給付金では賄われない費用を補填する趣旨を有する金員である(甲5末尾2頁及び3頁参照)から,修習給付金と同様,「学術又は技芸の習得」に専念する目的で使用される生活費であることに変わりはない。
    そのため,修習専念資金は,修習給付金と同様の性格を有するといえるから,修習専念資金が無利息であること(裁判所法67条の3第1項)に起因する,通常の利率により計算した利息の額に相当する利益(甲16・4頁)としての本件利息相当額は学資金として非課税所得であるといえる。

3 本件利息相当額だけが学資金に該当する場合があること
    本件給付金は合計155万7000円であるのに対し,本件利息相当額は合計1万1286円であって(甲2・4頁),両者の金額規模は全く異なる。
    また,司法修習生が成績不良等により罷免された場合,貸与を受けた修習専念資金の全部を直ちに返還しなければならない(司法修習生の修習専念資金の貸与等に関する規則(甲51)8条2項1号・6条2号)ことから,修習専念資金に関しては,給付型奨学金の返還を定める日本学生支援機構法17条の3と類似の規定が存在するといえる。
    そのため,本件給付金が学資金に該当しないと判断された場合であっても,これとは別に,本件利息相当額だけが学資金に該当する場合があるといえる。

4 結論
    以上より,本件利息相当額は,所得税法上の学資金に該当し,非課税所得となるといえる。

第6 本件給付金を除いて課税関係が問題となる収入は存在しないこと
1 司法修習生の地位に基づく本件給付金以外の収入は,課税対象とはならない旅費及び移転給付金だけであること
(1) 司法修習生の地位に基づく平成30年分の入金は別紙2「原告の預金通帳(甲24)記載の入金の中身」のとおりであるところ,別紙2の番号に即して以下のとおり入金内容を補足説明する。
① 別紙2・6番の入金は,実費としての交通費だけである。
② 別紙2・3番,8番及び23番の入金は,移転距離に応じた定額で支給される移転給付金(甲16・16頁及び17頁)である点で実費精算されていないものの,移転費用の実費相当額である(甲16・2頁)。
③ 別紙2・10番及び27番の入金は,実費としての交通費の他,日当が含まれている点で実費精算されていないものの,旅行中の昼食代等を含む実費相当額である(甲16・2頁)。
    なお,導入修習及び集合修習への参加に際して,管内出張計画書(甲38)のような書類を作成することはない。
④ 別紙2・26番の入金は,交通費や日当に代えて長期間の研修等の目的のために支給される日額旅費である点で実費精算されていないものの,実費相当額である(甲16・2頁)。
(2) したがって,大阪国税不服審判所神戸支所は,原告に対し,令和2年8月25日付の回答書の提出について(質問事項)(甲52)において,原告の預金通帳(甲24)に入金されたお金の内容を質問してきたとはいえ,司法修習生の地位に基づく本件給付金以外の収入は,課税対象とはならない実費又は実費相当額としての旅費及び移転給付金(甲16・1頁及び2頁)だけである。

2 本件費用に直接対応した収入は存在しないこと
(1) 本件交通費について
    実務修習中において自宅と修習場所を往復するための通所費は,新65期以降の司法修習生に対しては支給されていない(甲37)。
    また,二回試験の試験会場である新梅田研修センターまでの交通費は,当初から司法修習生に対して支給されたことはない(甲37参照)。
    そのため,本件交通費は本件給付金又は本件資金から支払うべきものとされていたのであって,交通費等の名目で支払われたことはないから,本件交通費に直接対応した収入は存在しない。
(2) 本件交通費以外の本件費用について
    本件交通費以外の本件費用も本件給付金又は本件資金から支払うべきものとされていた(甲5末尾1頁ないし3頁,及び甲6)から,本件交通費以外の本件費用に直接対応した収入は存在しない。

3 結論
    以上より,本件給付金を除いて課税関係が問題となる収入は存在しないといえる。

第7 結語
1 本件給付金は非課税所得であるし,少なくとも本件費用は雑所得の金額の計算上必要経費に算入できるし,本件利息相当額は非課税所得であるから,本件更正処分は違法である。
2 更正の請求の棄却処分(国税通則法23条4項)と増額更正(国税通則法24条)が相前後して行われた場合,更正の請求の棄却処分の取消請求は訴えの利益を欠いて却下される(甲54)。
    そのため,本件通知処分の取消しを求める訴訟は提起できない。
3 よって,請求の趣旨記載の判決を求める。


*1 更正の請求の棄却処分(国税通則法23条4項)と増額更正(国税通則法24条)が相前後して行われた場合,更正の請求の棄却処分の取消請求は訴えの利益を欠いて却下されます(東京高裁平成4年6月29日判決,及び大阪高裁平成8年8月29日判決(いずれも判例秘書に掲載)参照)。
*2 同種の理由で,同一の税務署長から同一の納税者が,複数年分にわたり課税処分を受けた場合,①事実に関する争点が相当程度共通し,かつ,②各請求の基礎となる社会的事実が同一ないし密接に関連する場合,行政事件訴訟法13条6号の関連請求に該当しますから,すべての年分を合計した上で訴額を算定し,これをベースに印紙額を算出する方式によることが可能となります(「税務訴訟の法律実務[第2版]」270頁及び271頁のほか,最高裁平成17年3月29日決定参照)。
*3 更正処分取消訴訟の訴額は,処分によって納付を命ぜられた税額(すでに異議決定又は審査裁決で一部取り消されている場合は一部取り消された後の額) と原告主張の税額との差額ですから,修習給付金に関する所得税更正処分取消請求事件の訴額は10万円未満であり,印紙代は1000円でした。
*4 仮に更正処分の取消訴訟と国税不服審判所の裁決取消訴訟を一緒に提起した場合,両者の訴えで主張する利益は各請求について共通となる(最高裁令和3年4月27日決定参照)結果,訴額の合算はしないと思います。
*5 以下の資料を掲載しています。
・ 課税関係訴訟事務処理要領(平成20年6月23日付の国税庁の事務運営指針(平成26年6月30日最終改正))
・ 国税庁課税部審理室の引継資料(令和元年7月頃の文書)
*6 以下の記事も参照してください。
(公式見解等)
 修習給付金に関する司法研修所の公式見解を前提とした場合の,修習給付金に関する取扱い
・ 修習給付金は必要経費のない雑所得であるとした国税不服審判所令和3年3月24日裁決
 修習給付金の課税関係に関する大阪国税局の見解
・ 司法修習生に対する旅費及び移転給付金について課税関係は発生しないこと
 司法修習生の旅費に関する文書
 修習給付金を受ける司法修習生の社会保険及び税務上の取扱い
 司法修習生の給費制と修習給付金制度との比較等
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,衆議院法務委員会における国会答弁資料
・ 修習給付金制度を創設した平成29年の裁判所法改正法に関する,参議院法務委員会における国会答弁資料
 司法修習終了翌年の確定申告
(公式見解に反対する見解)
・ 修習給付金は非課税所得であると仮定した場合の取扱い
→ 修習給付金は学資金(所得税法9条1項15号)に該当する可能性があります。
・ 修習給付金は必要経費を伴う雑所得であると仮定した場合の取扱い
 修習給付金の税務上の取扱いについて争う方法等
 修習給付金の課税関係に関する審査請求の理由書
(その他)
 司法修習生の身分に関する最高裁判所事務総局審議官の説明
→ 現行65期までの司法修習生に対する給費は,職務の対価ではなく,修習に専念させるための配慮に過ぎないとのことです。
 歴代の国税不服審判所長
 令和元年7月採用の国税審判官の研修資料
 国税庁長官及び東京国税局長の事務引継資料(令和元年7月頃の文書)

令和2年度実務協議会(冬季)

目次
1 令和3年2月5日に開催された,令和2年度実務協議会(冬季)の資料
2 関連記事その他

1 令和3年2月5日に開催された,令和2年度実務協議会(冬季)の資料
① 出席者名簿
② 日程表
③ 民事・行政事件の現状と課題
④ 刑事裁判の現状と課題
⑤ 参考統計表
⑥ 裁判員裁判の実施状況について(制度施行~令和2年10月末・速報)
⑦ 家庭裁判所の現状と課題
⑧ 最高裁判所経理局作成資料
⑨ 裁判所職員総合研修所の概要

2 関連記事その他
(1) 実務協議会というのは,新たに地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長を命ぜられた者を対象に,年に2回開催されている研修です(「裁判官研修実施計画」参照)。
(2) 令和2年度冬季については,最高裁判所人事局が作成した資料はなぜかありません。
(3) 令和2年度実務協議会(冬季)に関する資料として一本化しています。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 新任の地家裁所長等を対象とした実務協議会の資料
→ 平成30年度冬季以降の資料を掲載しています。

外務省国際法局長経験のある最高裁判所判事

目次
第1 外務省国際法局長経験のある,歴代の最高裁判所判事(新しい順)
9 長嶺安政最高裁判所判事(令和3年2月8日任命・令和6年4月15日限り定年退官予定)
8 林景一最高裁判所判事(平成29年4月10日任命・令和3年2月7日限り定年退官)
7 竹内行夫最高裁判所判事(平成20年10月21日任命・平成25年7月19日限り定年退官)
6 福田博最高裁判所判事(平成7年9月4日任命・平成17年8月1日限り定年退官)
5 中島敏次郎最高裁判所判事(平成2年1月24日任命・平成7年9月1日限り定年退官)
4 高島益郎最高裁判所判事(昭和59年12月17日任命・昭和63年5月2日死亡退官)
3 藤崎萬里最高裁判所判事(昭和52年4月5日任命・昭和59年12月15日限り定年退官)
2 下田武三最高裁判所判事(昭和46年1月12日任命・昭和52年4月2日限り定年退官)
1 栗山茂最高裁判所判事(昭和22年8月4日任命・昭和31年10月5日限り定年退官)
第2 2012年以降の外務省国際法局長(着任順)
1 兼原信克(昭和56年入省)
2 石井正文(昭和55年入省)
3 秋葉剛男(昭和57年入省)
4 斎木尚子(昭和57年入省)
5 三上正裕(昭和61年入省)
6 岡野正敬(昭和62年入省)
第3 外務省国際法局長経験者枠での次の最高裁判所判事
第4 外務省国際法局の組織
第5 関連記事その他

第1 外務省国際法局長経験のある,歴代の最高裁判所判事(新しい順)

・ 外務省国際法局長経験のある最高裁判所判事は,着任日の新しい順に以下のとおりです。
9 長嶺安政最高裁判所判事(令和3年2月8日任命・令和6年4月15日限り定年退官予定)
・ 昭和52年に外務省に入省し,平成22年8月20日から平成24年9月10日までの間,外務省国際法局長をしていました。
・ 最高裁判所判事に任命される直前は駐英大使をしていました。


8 林景一最高裁判所判事(平成29年4月10日任命・令和3年2月7日限り定年退官)
・ 昭和49年に外務省に入省し,平成14年9月20日から平成17年8月2日までの間,外務省国際法局長(ただし,平成16年7月31日までは外務省条約局長)をしていました。
・ 最高裁判所判事に任命される直前は駐英大使をしていました。
7 竹内行夫最高裁判所判事(平成20年10月21日任命・平成25年7月19日限り定年退官)
・ 昭和42年に外務省に入省し,平成9年8月1日から平成10年7月28日までの間,外務省条約局長をしていました。
・ 平成17年1月4日に外務事務次官を退任した後,最高裁判所判事に任命される直前は政策研究大学院大学連携教授をしていました。
6 福田博最高裁判所判事(平成7年9月4日任命・平成17年8月1日限り定年退官)
・ 昭和35年に外務省に入省し,平成元年1月27日から平成2年8月31日までの間,外務省条約局長をしていました。
・ 最高裁判所判事に任命される直前は外務審議官(政務担当)をしていました。
・ 中島敏次郎最高裁判所判事の後任は,外務省条約局長経験者である小和田恒国連大使(昭和30年入省。当時の皇太子妃雅子の父親)であると報道されたことがあります
5 中島敏次郎最高裁判所判事(平成2年1月24日任命・平成7年9月1日限り定年退官)
・ 昭和23年に外務省に入省し,昭和51年1月22日から昭和52年9月15日までの間,外務省条約局長をしていました。
・ 最高裁判所判事に任命される直前は駐中国大使をしていました。
4 高島益郎最高裁判所判事(昭和59年12月17日任命・昭和63年5月2日死亡退官)
・ 昭和16年に外務省に入省し,昭和47年1月18日から昭和48年8月7日までの間,外務省条約局長をしていました。
・ 太平洋戦争中,陸軍に召集され,終戦後に北朝鮮で捕虜となり,そのままソ連で抑留生活を送った結果,極寒のために凍傷にかかり,足の小指を失いました。
・ 最高裁判所判事に任命される直前は駐ソ連大使をしていました。
3 藤崎萬里最高裁判所判事(昭和52年4月5日任命・昭和59年12月15日限り定年退官)
・ 昭和12年に外務省に入省し,昭和39年3月19日から昭和42年12月26日までの間,外務省条約局長をしていました。
・ 駐オランダ大使及び駐タイ大使を経験し,最高裁判所判事に任命される直前は海洋開発審議会委員をしていました。
2 下田武三最高裁判所判事(昭和46年1月12日任命・昭和52年4月2日限り定年退官)
・ 昭和6年に外務省に入省し,昭和27年5月30日から昭和32年1月23日までの間,外務省条約局長をしていました。
・ 最高裁判所判事に任命される直前は駐米大使をしていました。
1 栗山茂最高裁判所判事(昭和22年8月4日任命・昭和31年10月5日限り定年退官)
・ 昭和2年8月13日から同年11月25日までの間,外務省条約局長(心得)をしていました。

第2 2012年以降の外務省国際法局長(着任順)
1 兼原信克(昭和56年入省)
・ 平成24年9月から同年12月まで外務省国際法局長をしていました。
・ その後の役人としてのキャリアは内閣官房副長官補(H24.12~)→内閣官房副長官補兼国家安全保障局次長(H26.1~)→退官(R1.10)です。


2 石井正文(昭和55年入省)
・ 平成25年1月から平成26年7月まで外務省国際法局長をしていました。
・ その後の外務省でのキャリアは,駐ベルギー大使(H26.7.29~)→駐インドネシア大使(H29.3.3~)→退官(R2.10)です。
3 秋葉剛男(昭和57年入省)
・ 平成26年7月から平成27年10月5日まで外務省国際法局長をしていました。
・ その後の役人としてのキャリアは,総合外交政策局長→外務審議官(政務担当)(H28.6.7~)→外務事務次官(H30.1.19~)→退官(R3.6)→国家安全保障局長(R3.7~)です。
4 斎木尚子(昭和57年入省)
・ 平成27年10月6日から平成29年7月まで外務省国際法局長をしていました。
・ 日刊ゲンダイに「事務次官の妻を局長に 安倍官邸「外務省人事」に大ブーイング」(2015年9月28日公開)が載っています。
・ その後の外務省でのキャリアは外務省研修所長(H29.7~)→退官(H31.1)です。
5 三上正裕(昭和61年入省)
・ 平成29年7月から令和元年7月まで外務省国際法局長をしていました。
・ その後の外務省でのキャリアは駐カンボジア大使(R2.8~)です。
6 岡野正敬(昭和62年入省)
・ 令和元年7月から外務省国際法局長をしています。
・ その後の外務省でのキャリアは外務省総合外交政策局長(R3.6.22~)です。
7 鯰博行(平成元年入省)
・ 令和3年6月22日から外務省国際法局長をしています。

第3 外務省国際法局長経験者枠での次の最高裁判所判事
1 1977年4月に外務省に入省し,2012年9月10日まで外務省国際法局長をしていた長嶺安政(1954.4.16生)は,2021年2月8日に最高裁判所判事となりました。
2(1) 長嶺安政最高裁判所判事が定年退官する2024年4月時点でいえば,秋葉剛男(1958.12.19生),斎木尚子(1958.10.11生),三上正裕(1962.7.10生)及び岡野正敬(1964.6.15生)の4人が外務省国際法局長経験者枠で最高裁判所判事に任命される可能性があることとなります。
(2) 最高裁判所判事としての任期で考えた場合,三上正裕及び岡野正敬は長すぎますから,長嶺安政の後任にはならないと思います。
    また,同じような経歴的資源を有する場合,女性の方が最高裁判所判事に任命されやすいと思います。
    そのため,外務省国際法局長経験者枠での次の最高裁判所判事としては,女性である斎木尚子が最有力の候補者であると個人的に思います。

第4 外務省国際法局の組織
1 外務省組織令12条によれば,外務省国際法局の所掌事務は以下のとおりです。
① 国際法に係る外交政策に関すること。
② 条約その他の国際約束の締結に関すること。
③ 条約その他の国際約束及び確立された国際法規の解釈及び実施に関すること。
④ 日本国政府として処理する必要のある渉外法律事項に関すること。
⑤ 国際司法裁判所常設仲裁裁判所国際法委員会及びアジア・アフリカ法律諮問委員会に関すること。
⑥ 第三号及び第五号に掲げるもののほか、条約その他の国際約束(経済の分野に係る事項に関するものに限る。)に基づく紛争解決の処理に関すること。
⑦ 第二号から前号までに掲げるもののほか、条約その他の国際約束及び確立された国際法規並びに日本国政府として処理する必要のある渉外法律事項に関する対外関係事務の処理及び総括に関すること。
2 令和3年4月現在,外務省国際法局には,国際法課,条約課,経済条約課及び経済紛争処理課並びに社会条約官が置かれています(外務省組織令78条)。
3 外務省国際法局に経済紛争処理課が設置されたのは令和2年8月3日です(新日本法規HPの「外務省組織令の一部改正(令和2年7月31日政令第232号 令和2年8月3日から施行)」参照)。
4 外務省国際法局研究序説-政軍関係への影響に注目して-が参考になります。

第5 関連記事その他
1 立命館大学HPに「戦後日本における外務官僚のキャリアパス―誰が幹部になるのか?―」(立命館法学2011年3号)が載っています。
2 以下の資料も参照してください。
・ 在外公館の証明事務のマニュアル
→ 令和3年3月の外務省の開示文書です。
3 以下の記事も参照してください。
 最高裁判所裁判官の任命に関する各種説明
 最高裁判所長官任命の閣議書
 高輪1期以降の,裁判官出身の最高裁判所判事

池田知子裁判官(49期)の経歴

生年月日 S44.11.12
出身大学 不明
定年退官発令予定日 R16.11.12
R2.4.1 ~ 京都地裁6民部総括
H31.4.1 ~ R2.3.31 東京高裁11民判事
H27.4.1 ~ H31.3.31 司研民裁教官
H24.4.1 ~ H27.3.31 宇都宮家地裁足利支部判事
H22.4.1 ~ H24.3.31 東京地裁4民判事
H19.3.22 ~ H22.3.31 総研書研部教官
H18.4.1 ~ H19.3.21 札幌家地裁判事補
H16.4.1 ~ H18.3.31 札幌法務局訟務部付
H14.4.1 ~ H16.3.31 さいたま家地裁川越支部判事補
H13.7.18 ~ H14.3.31 さいたま家地裁判事
H11.4.1 ~ H13.7.17 前橋地家裁高崎支部判事補
H9.4.10 ~ H11.3.31 東京地裁判事補