その他裁判所関係

文書提出命令に関する最高裁判例

1 民事訴訟法219条(書証の申出)に関する最高裁判例
・ 地方公共団体は,その機関が保管する文書について,文書提出命令の名宛人となる文書の所持者に当たります(最高裁平成29年10月4日決定)。

2 民事訴訟法220条3号(法律関係文書)に関する最高裁判例
(1) 総論
・ 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等の名誉,プライバシーの侵害等の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし,当該保管者の有する裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するものであるときは,裁判所は,その提出を命ずることができます(最高裁平成16年5月25日決定)。
・ 捜査に関して作成された書類の写しが民訴法220条1号所定の引用文書又は同条3号所定の法律関係文書に該当し,当該写しを所持する都道府県による提出の拒否が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであるときは,裁判所は,その提出を命ずることができます(最高裁平成31年1月22日決定)。
(2) 該当する例
・ 警察官が文書提出命令の申立人の住居等において行った捜索差押えに係る捜索差押許可状及び捜索差押令状請求書は,いずれも,当該警察官が所属し,上記各文書を所持する地方公共団体と文書提出命令申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当します(最高裁平成17年7月22日決定)。
・ 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当します(最高裁平成19年12月12日決定)。
・  鑑定のために必要な処分としてされた死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体は,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当します(最高裁令和2年3月24日決定)。

3 除外事由としての民事訴訟法220条4号ロ(公務秘密文書)に関する最高裁判例
(1) 総論
・ 民訴法220条4号ロにいう「公務員」には,国立大学法人の役員及び職員も含まれます(最高裁平成25年12月19日決定)。
(2) 該当する例
・ 県が漁業協同組合との間で漁業補償交渉をする際の手持ち資料として作成した補償額算定調書中の文書提出命令申立人に係る補償見積額が記載された部分は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ロ所定の文書に該当します(最高裁平成16年2月20日決定)。
・ 外務省が外国公機関に交付した照会文書の控え及び同機関が同省に交付した回答文書は,具体的事情によっては,民訴法223条4項1号の「他国との信頼関係が損なわれるおそれ」があり同法220条4号ロ所定の文書に該当する旨の監督官庁の意見に相当の理由があると認められます(最高裁平成17年7月22日決定)。
・ 全国消費実態調査の調査票情報を記録した準文書は,具体的事情によっては,民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の「その提出により…公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」に当たります(最高裁平成25年4月19日決定)。
(3) 該当する例及び該当しない例
・ 労働災害が発生した際に労働基準監督官等の調査担当者が労働災害の発生原因を究明し同種災害の再発防止策等を策定するために調査結果等を踏まえた所見を取りまとめて作成した災害調査復命書に,(1)当該調査担当者が事業者や労働者らから聴取した内容,事業者から提供を受けた関係資料,当該事業場内での計測,見分等に基づいて推測,評価,分析した事項という当該調査担当者が職務上知ることができた当該事業者にとっての私的な情報のほか,(2)再発防止策,行政指導の措置内容についての当該調査担当者の意見,署長判決及び意見等の行政内部の意思形成過程に関する情報が記載されていること,(1)の情報に係る部分の中には,上記聴取内容がそのまま記載されたり,引用されたりしている部分はなく,当該調査担当者において,他の調査結果を総合し,その判断により上記聴取内容を取捨選択して,その分析評価と一体化させたものが記載されていること,調査担当者には,事業場に立ち入り,関係者に質問し,帳簿,書類その他の物件を検査するなどの権限があることなど判示の事情の下においては,上記災害調査復命書のうち,(2)の情報に係る部分は民訴法220条4号ロ所定の文書に該当しないとはいえないが,(1)の情報に係る部分は同号ロ所定の文書に該当しません(最高裁平成17年10月14日決定)。

4 除外事由としての民事訴訟法220条4号ハ(職務上知り得た事実で黙秘すべきもの,技術又は職業の秘密に関する文書)に関する最高裁判例
(1) 総論
・ 民訴法197条1項3号所定の「技術又は職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいいます(最高裁平成12年3月10日決定)。
(2) 該当しない例
・ 破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため,上記命令の実行として弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会を設置し,当該調査委員会から上記調査の結果が記載された調査報告書の提出を受けたという事実関係の下では,当該調査報告書は,民訴法220条4号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」に当たりません(最高裁平成16年11月26日決定)。
・ A,Bを当事者とする民事訴訟の手続の中で,Aが金融機関Cを相手方としてBとCとの間の取引履歴が記載された明細表を対象文書とする文書提出命令を申し立てた場合において,Bが上記明細表を所持しているとすれば民訴法220条4号所定の事由のいずれにも該当せず提出義務が認められること,Cがその取引履歴を秘匿する独自の利益を有するものとはいえないことなど判示の事情の下では,上記明細表は,同法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえず,同法220条4号ハ所定の文書に該当しません(最高裁平成19年12月11日決定)。
・ 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が行った顧客の財務状況等についての分析,評価等に関する情報が記載された文書につき,具体的事情によっては,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しません(最高裁平成20年11月25日決定)。

5 除外事由としての民事訴訟法220条4号ニ「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に関する最高裁判例
(1) 総論
・ ある文書が,その作成目的,記載内容,これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯,その他の事情から判断して,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であって,開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど,開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には,特段の事情がない限り,当該文書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たります(最高裁平成11年11月12日決定)。
・ 国立大学法人が所持し,その役員又は職員が組織的に用いる文書についての文書提出命令の申立てには,民訴法220条4号ニ括弧書部分が類推適用されます(最高裁平成25年12月19日決定)。
(2) 該当する例
・ 仙台市議会の議員が所属会派に交付された政務調査費によって費用を支弁して行った調査研究の内容及び経費の内訳を記載して当該会派に提出した調査研究報告書及びその添付書類は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たります(最高裁平成17年11月10日決定)。
・ 名古屋市議会の会派が市から交付された政務調査費を所属議員に支出する際に各議員から諸経費と使途基準中の経費の項目等との対応関係を示す文書として提出を受けた報告書及びこれに添付された領収書は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たります(最高裁平成22年4月12日決定)。
・  弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当します(最高裁平成23年10月11日決定)。
(3) 該当しない例
・ 信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは,当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえません(最高裁平成12年12月14日決定)。
・ 信用組合の貸出稟議書は民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないことがあります(最高裁平成13年12月7日決定)。
・ 銀行の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書であって一般的な業務遂行上の指針等が記載されたものは,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成18年2月17日決定)。
・ 介護サービス事業者が介護給付費等の請求のために審査支払機関に伝送する情報を利用者の個人情報を除いて一覧表にまとめた文書は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成19年8月23日決定)。
・  銀行が,法令により義務付けられた資産査定の前提として,監督官庁の通達において立入検査の手引書とされている「金融検査マニュアル」に沿って債務者区分を行うために作成し,保存している資料は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成19年11月30日決定)。
・ 岡山県議会の議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿は,具体的事情によっては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たりません(最高裁平成26年10月29日決定)。

6 除外事由としての民事訴訟法220条4号ホ(刑事事件に係る訴訟に関する書類)に関する最高裁判例
・  検察官等から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成し若しくは受領した文書等又はその写しは,民訴法220条4号ホに定める刑事事件に係る訴訟に関する書類又は刑事事件において押収されている文書に該当します(最高裁令和2年3月24日決定)。

7 民事訴訟法223条1項に関する最高裁判例
・ 裁判所は,財務諸表等の監査証明に関する省令(平成12年総理府令第65号による改正前のもの)6条に基づき監査調書として整理された記録又は資料のうち,貸付先の一部の氏名,会社名等の部分を除いて文書提出命令を発することができます(最高裁平成13年2月22日決定)。

8 民事訴訟法223条6項(インカメラ手続)に関する最高裁判例
・ 事実審である抗告審が民訴法223条6項に基づき文書提出命令の申立てに係る文書をその所持者に提示させ,これを閲読した上でした文書の記載内容の認定は,それが一件記録に照らして明らかに不合理であるといえるような特段の事情がない限り,法律審である許可抗告審において争うことができません(最高裁平成20年11月25日決定)。
・ 情報公開法に基づく行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において,不開示とされた文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは,原告が検証への立会権を放棄するなどしたとしても許されず,上記文書を検証の目的として被告にその提示を命ずることも許されません(最高裁平成21年1月15日決定)。

9 民事訴訟法223条7項(即時抗告)に関する最高裁判例
・ 証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては,当該必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできません(最高裁平成12年3月10日決定)。
・ 文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は抗告の利益を有しません(最高裁平成12年12月14日決定)。
・ 文書提出命令の申立てを却下する決定に対し,口頭弁論終結後に即時抗告をすることはできません(最高裁平成13年4月26日決定)。

最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会

1 最高裁総務局・人事局・情報政策課との座談会を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和 元年
(平成時代)
平成29年平成30年

2 以下の記事も参照してください。
① 最高裁判所が作成している,最高裁判所判事・事務総局局長・課長等名簿
② 裁判所書記官の役職
③ 家庭裁判所調査官の役職

最高裁判所裁判官及び高裁長官人事の一覧表

1(1) 最高裁判所裁判官及び高裁長官人事の一覧表として,以下の時点のものを掲載しています。
・ 令和 2年 2月 6日時点
・ 平成31年 1月 1日時点
・ 平成30年 1月29日時点
・ 平成29年 7月14日時点
・   平成29年 2月 6日時点
(2)  この一覧表を見れば,高裁長官の直前のポストが何であるか,及び高裁長官の直後のポストが何であるかが分かります。
(3) 一覧表における氏名右の括弧内の数字は期であり,0期は高輪1期(昭和22年12月修習終了)及び高輪2期(昭和23年4月修習終了)ことです。
   高輪1期及び高輪2期というのは,日本国憲法が施行された昭和22年5月3日時点で司法官試補の地位にあった人のことであり,裁判所法施行令18条1項に基づき,司法修習生を命ぜられたものとして取り扱われています。

2 平成30年1月29日を基準日とする,以下の表を掲載しています。
① 最高裁長官,最高裁判事,事務総長,首席調査官及び司研所長前後の経歴一覧表
② 最高裁の審議官,秘書課長兼広報課長,情報政策課長,局長6人,上席調査官3人,司研事務局長及び総研所長,並びに法務省の民事局長,訟務局長及び人権擁護局長前後の経歴一覧表
③ 高裁長官及び知財高裁所長前後の経歴一覧表
④ 高裁事務局長前後の経歴一覧表
⑤ 大規模地家裁所長(東京地裁,東京家裁,横浜地裁,さいたま地裁,千葉地裁,大阪地裁,大阪家裁,京都地裁,神戸地裁,名古屋地裁及び福岡地裁)の所長前後の経歴一覧表

国家緊急権に関する内閣法制局長官の国会答弁

○国家緊急権とは,戦争,内乱,恐慌又は大規模な自然災害その他平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において,国家の存立を維持するために,国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を採る権限をいいますところ,国家緊急権に関する内閣法制局長官の答弁を以下のとおり掲載しています(ナンバリングをしたり,改行を加えたりしています。)。
   結論としては,国家緊急権というものは日本国憲法において認められないものの,大規模な災害や経済上の混乱などの非常な事態に対応すべく,公共の福祉の観点から,合理的な範囲内で国民の権利を制限し,国民に義務を課す法律を制定することは可能であり,例としては,災害対策基本法,国民生活安定緊急措置法及び武力攻撃事態対処法があります。

秋山収内閣法制局長官の,平成16年5月11日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における答弁
1 (山中注:日本と同じように内閣制をとっている国で非常大権が元首にない国の例を質問されたことに対して)外国に関する法令を正確に把握することは難しい点がございますけれども、私どもが承知しております限りでは、ドイツ連邦共和国でございますが、これは憲法上に規定があるわけではございませんが、一応、国のトップとして大統領が元首であるというふうに解されていると思います。
   しかしながら、ドイツ連邦共和国におきましては、防衛事態などの国家の緊急事態におきましても、立憲的な憲法秩序を一時停止するような性格を有する国家緊急権のような権限は大統領にも与えられておりませんで、現行ドイツ基本法の規定に基づき制定されている、あるいは、新たに制定される法律の定めるところにより連邦政府がこれに対処するものとされているものと承知しております。
2 ただ、細部にわたってこれは正確かどうかちょっと自信がございませんけれども、大勢としてはそういう考え方でございます。

○秋山収内閣法制局長官の,平成16年4月20日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における答弁
1(1) お尋ねの大統領非常大権、これは法律学ではいわゆる国家緊急権という言葉で議論されるものでございます。
   すなわち、戦争とか内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処することが困難なような非常事態におきまして、国家の存立を維持するために国家権力が通常の立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限というふうに考えられております。
(2) それで、フランスでは、御指摘のとおり、フランス第五共和国憲法は第16条でそういう規定があるわけでございます。それから、大日本帝国憲法でも、先ほど御指摘のとおりのものがございます。
   日本国憲法においてはこのような規定は存在しておらず、したがって、先ほど申し上げたような国家緊急権というものは現行の憲法下では認められないものと考えております。
(3) ただ、現行憲法下でも、大規模な災害とか経済的混乱などのような非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から合理的な範囲内で国民の権利を制限し、あるいは義務を課す法律を制定することは可能でございまして、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法など、既に多くの立法がございます。
   今回提案しております有事関連の法律も、そのような系列のものに入るものと考えております。
2 累次、この国会に至る前にも政府側から答弁しておりますけれども、今回の法案は、現行憲法のもとで、基本的な人権の尊重に十分配慮しつつ、事態の特性に応じて必要な制約を加えるというものでありまして、これは、冒頭申し上げましたような国家緊急権の発動というものではないというふうに考えております。

○津野修内閣法制局長官の,平成14年5月8日の衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会における答弁
1 事務的に、経緯でございますので事実関係をお答えさせていただきますが、国家緊急権と申しますのは、これは講学上の概念でございまして、戦争とか内乱とか、あるいは恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない、そういった非常事態におきまして、国家の存立を維持するために、国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限をいうものと解されているわけでございます。これは、一般的に、学説上、大体このような概念でございます。
   このような国家緊急権につきましては、大日本帝国憲法におきましては、戦争、内乱等の非常事態において、天皇による戒厳、それから非常大権などとして憲法に規定されておりまして、制度化が図られているところでございますが、日本国憲法においては、そういった規定はないわけであります。
2 この点につきましては、要するに規定されていないということにつきましては、その具体的な経緯は明らかではありませんが、憲法制定議会におきまして、第90回帝国議会の衆議院帝国憲法改正案委員会におきまして、金森国務大臣は、非常事態の際に、大日本帝国憲法第31条、非常大権のような制度が必要ではないかという質問に対しまして、
   民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、左様ナ場合ノ政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス
言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、
随テ此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス、
随テ特殊ノ必要ガ起リマスレバ、臨時議会ヲ召集シテ之ニ応ズル処置ヲスル、又衆議院ガ解散後デアツテ処置ノ出来ナイ時ハ、参議院ノ緊急集会ヲ促シテ暫定ノ処置ヲスル、同時ニ他ノ一面ニ於テ、実際ノ特殊ナ場合ニ応ズル具体的ナ必要ナ規定ハ、平素カラ濫用ノ虞ナキ姿ニ於テ準備スルヤウニ規定ヲ完備シテ置クコトガ適当デアラウト思フ訳デアリマス、
と答弁しているわけであります。
3 こういったことでございまして、いわゆる国家緊急権が設けられなかった理由が答弁として残されているわけでありますが、ただ、日本国憲法のもとにおきましては、例えば、大規模な災害や経済上の混乱などの非常な事態に対応すべく、公共の福祉の観点から、合理的な範囲内で国民の権利を制限し、国民に義務を課す法律を制定することは可能であり、これまでにも、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法などの多くの立法がなされているところでございます。
   また、今回のいわゆる武力攻撃事態対処関連三法案につきましては、申すまでもありませんが、日本国憲法の範囲内で立法化をしようとするものでありますから、これまで述べてきました立憲的な憲法秩序を一時停止する性格を有する講学上の国家緊急権の制度を図るといったような法律ではないということでございます。

○吉國一郎内閣法制局長官の,昭和50年5月14日の衆議院法務委員会における答弁
1(1) 現行憲法のもとにおいて非常時立法ができるかというお尋ねでございますが、非常時立法というものにつきまして、もともとこれは法令上の用語ではございませんから明確な定義があるわけではございませんけれども、まあわが国に大規模な災害が起こった、あるいは外国から侵略を受けた、あるいは大規模な擾乱が起こった、経済上の重要な混乱が起こったというような、非常な事態に対応いたしますための法制として考えますと、それはあくまでも憲法に規定しております公共の福祉を確保する必要上の合理的な範囲内におきまして、国民の権利を制限したり、特定の義務を課したり、また場合によりましては個々の臨機の措置を、具体的な条件のもとに法律から授権をいたしまして、あるいは政令によりあるいは省令によって行政府の処断にゆだねるというようなことは現行憲法のもとにおいても考えられることでございまして、現に一昨年の11月に国会で非常に多大の御労苦を願いまして御審議いただきました国民生活安定緊急措置法というものがございます。
(2) これはその当時の緊急経済事態に対応いたしまして諸般の措置を定めたものでございますが、その中には、割り当てまたは配給につきまして全面的に政令以下に権限をゆだねていただいておるような法令もございます。
(3) これも、一定の限られた範囲ではございますけれども非常時立法の一例でございましょうし、また古くは、災害対策基本法の中で、非常災害が起こりました場合に、財政上、金融上の相当思い切った措置を講じ得るようになっておりますが、これもそのたびごとに政令をもって具体的な内容を規定いたすことになっております。
2 このように、現憲法のもとにおきましても特定の条件のもとにおいてはこのような立法ができることは、すでに現在先例を見ていることから言っても明らかでございまして、いわゆる非常時立法と申すものにつきまして、一定の範囲内においてこれを制定することができることは申すまでもないと思います。
   もちろん、旧憲法において認められておりましたような戒厳の制度でございますとか、あるいは非常大権の制度というようなものがとれないことは当然のことでございますし、また、現段階において全面的な広範な非常時立法を考えているというような事態はございませんことを申し上げておきます。

○高辻正己内閣法制局長官の,昭和44年3月15日の参議院予算委員会における答弁
1 私に対する御質疑は、いまやるかどうかという問題を離れて、憲法上可能かどうかという問題のようでございます。憲法にはこの非常事態に関する特別の規定は、御承知のとおり、政治機構に関して例の参議院緊急集会の制度があるくらいでございまして、そのほか一般的に非常事態に際してどうという規定はございません。
   しかしながら、御指摘のように、人権の保障も、常に公共の福祉のために利用する責任を負うということになっておりまして、公共の福祉に反する利用ということになりますと、まあいまのいろんな法律にもありますような、いろんな制限をこうむる場合がございます。
2 したがって非常事態というような場合になりますれば、それほど、相関関係における公共の福祉というものが当然問題になりますから、それと厳密に均衡のとれた制限であれば不可能とは言えない。
   むろん公共の人権の制限に関するものでありますから、立法にあたりましては慎重を期する必要がありますけれども、理論的には不可能であるということは申すわけにはまいらないと思います。

秘匿情報の管理に関する裁判所の文書

秘匿情報の適切な管理について(平成27年2月19日付の最高裁判所総務局,民事局,刑事局及び家庭局の課長の事務連絡)別紙1ないし3は以下のとおりです。

秘匿情報の適切な管理について(別紙1)

1 はじめに
   裁判所は,記録上に表れている情報のうち,当事者や被害者等の利害関係人(以下「当事者等」という。)からの秘匿を希望する旨の申出等を踏まえて,秘匿すべきであると判断した情報(以下「秘匿情報」という。)については,裁判所の意図に反して流出させることのないように適切に管理しなければならない。仮に,裁判所として行うべき管理を怠って秘匿情報を流出させるといった事態を発生させた場合には,秘匿を希望した当事者等の名誉や社会生活の平穏が著しく害されたり,身体や財産への危害が加えられたりするおそれを生じさせることになり,ひいては,あらゆる裁判の基盤となっている裁判所に対する信頼を大きく揺るがすことになりかねないしたがって,秘匿情報の適切な管理の重要性についての意識を,裁判官を含めた関係職員間で共有し,共通の視点を持って日々の事務処理を行っていく必要がある。
2 秘匿情報の適切な管理に向けて
(1) 事務処理態勢の構築
   秘匿情報の適切な管理は,事件受理時における教示の段階から事件終局後の関係機関等への引継ぎの段階までといった,裁判所が関わる手続の流れを意識しながら,関係職員が互いに有機的な連携を図りつつ,実現されなければならない。これに向けて,個々の職員が秘匿情報の管理について高い問題意識を有することも重要ではあるが,それのみに依存するのでは不十分である。秘匿情報の管理が必要となる事件が常に係属し得ることを前提に,あらかじめ万全な事務処理態勢を組織として検討し, これを構築した上で,関係職員間で適切に認識を共有しておく必要がある。
(2) 検討すぺき事項の整理
   事務処理態勢を検討するに当たっては,秘匿情報の適切な管理の重要性を踏まえた上で,事務を行う根拠・目的に照らして合理的な対策を検討する必要があるが, どのような視点で何をどこまで検討すればよいのか,考えられる対策の中からどのような対策を選択し実践すべきかについては,悩みが多いものと思われる。そのような検討を効果的に進めるためには,検討すべき事項を具体的に整理することが有用であり,その内容としては,次のようなものが考えられる。
① (当事者等がどのような情報について秘匿を希望しているかを把握し,それらを踏まえた上で)どの情報を秘匿情報として取り扱うかを具体的に判断し,その内容について秘匿情報を取り扱う可能性のある者との間で相互に共有すること(秘匿情報の確定)
② 事件処理上,当然に記録に表れるべき情報と必ずしも記録に表れなくてもよい情報とを整理し,不必要な秘匿情報が記録上に表れないような措置を講じること(記録上に不必要な秘匿情報が表れないようにするための措置)
③ ②の措置を講じたとしても,記録上に表れることとなった秘匿情報(秘匿情報として取り扱うことを決めた際には既に記録に表れていたものを含む。)について,裁判官を含めた関係職員間で相互に共有すること(記録上に表れることとなった秘匿情報の共有)④ 記録上に表れている秘匿情報が裁判所の意図に反して流出しないように取り扱うこと(記録上に表れた秘匿情報の流出の防止)
   以上のことを十分に検討した上で,事務処理態勢が構築され,関係職員で認識が共有されれば,基本的には,秘匿情報の適切な管理を実現することができると考えられる。しかし,上記の各事項の中でも,①秘匿情報の確定の場面においては,例えば, どのような手順で秘匿情報を確定し,その内容をどの範囲で,どのように共有するのかといったことが問題となるし,④流出の防止の場面においては,秘匿情報がどのような契機で流出し得るのか,流出しないためにどのような措置がとれるのかなど,更に検討すべき事項を整理する必要が生じる。そのような事項を,上記の各事項に従って整理すると別紙第2のとおりになると考えられる。
(3) 工夫例の活用
   秘匿情報の適切な管理の問題は,あらゆる裁判所の,あらゆる事件分野において,検討されるべき問題で,実際に,各庁各部ごとに様々な工夫がされている。参考になると思われる工夫例については, これまでも事務連絡等(民事訴訟事件,人事訴訟事件の分野については別紙第3の番号7,刑事事件の分野については別紙第3の番号5,9の各事務連絡等)で紹介しており,今後とも,適宜紹介していきたいと考えている。事務処理態勢を構築するに当たっては, このような工夫例を活用することも有益であろう。
(4) 適時の連携・協働等
   各庁における検討の結果として,構築され,認識が共有された事務処理態勢は,一般的な事務処理の指針にすぎないのであるから,特別な事情が存在する場合には,適時に裁判官を含めた関係職員で問題状況を整理し,具体的な対応策を検討し,改めて認識を共有しなけれぱならない。
(5) その他留意すべき点
ア 職員の意識
   各庁における検討の結果として,事務処理態勢が構築され,認識が共有されたとしても,これに基づいて実際に事務を行う者が秘匿情報の適切な管理の重要性を琶癖していないと,その趣旨に従った事務処理が行われないおそれがある。したがって,関係職員に対する問題意識の喚起がされていること,そして,それが聯的に行われていることが不可欠となる。
イ 他部署との連携とこれを踏まえた当事者等への教示
   例えば訟廷と担当部,第一審担当部と第二審担当部との間のように,実際の事務処理は異なる部署で行われるものの,秘匿情報の管理に当たって必要な情報を共有すべきである部署間においては,情報の引継ぎが適切に行われるような事務処理態勢を構築しなければならない。他方で,保全事件担当部,本案事件担当部,執行事件担当部相互間のように,情報を引き継ぐことを前提にした事務処理態勢を構築しにくいところも現実にはある。そこで,裁判所としては, どのような場合にどのような情報をどのような方法で引き継ぐのかという点を整理した上で,その整理を踏まえた適切な教示方法を検討しておく必要がある。
   また,住所や氏名を秘匿することで,執行や登記の場面で問題が生じる場合もある。相手方が勝訴した場合に執行の場面で困ることは容易に想像がつくが,秘匿を希望した側が勝訴した場合でも,例えば,本人の住所を秘匿するために現住所に代えて代理人住所を記載していたが,本訴と執行で代理人が異なったために連続性を証明できない場合や,同様の事例で現住所に代えて記載した代理人住所に弁護士事務所名が入っているなどしていたため,単なる連絡先であるとして法務局において(仮)差押登記を受け付けてもらえない場合などがあり得る。裁判所としては,このような問題点が生じ得る可能性があることを,あらかじめ当事者等に教示しておく必要がある。
ウ 法の規律や記録の概念
   裁判所は,適正な手続に則って裁判手続を行っていく使命を負っており,たとえ,当事者等が秘匿を希望したとしても,常にそれをかなえられるわけではない。記録の作成や保管を適切に行い,かつ,法で規律されている当事者等の権利を適切に保護する必要があることを前提にした上で,裁判所として,秘匿情報を適切に管理するためにどのようなことができるのかを,手続の流れ全体を通して整理し,法律上の根拠を踏まえて検討していく必要がある。例えば,適法に送達がされたことを証明する送達報告書や,裁判所による調査嘱託決定に対する回答書は,裁判手続が適正に遂行されたことを明らかにするものであり,記像として構成されるべき書類であると考えられる。そうであるとすれば,秘匿の要否にかかわらず,本来は,記録につづり込まなければならないものであって,秘匿情報が記載されているからといって記録にしないことは許されない。
3 おわりに
   どのような情報について秘匿情報とする必要があるか,秘匿情報が何を契機として外部に流出し得るかは,記録に表れ得る情報の種別,記録に表れた情報へのアクセス権の範囲によって違いが生じるから,実際には,事件等の特性に応じた個別の検討をしていかなければ,秘匿情報の適切な管理のための事務処理態勢を構築することができない。また,執務態勢によっても,検討結果は異なってくる可能性がある。したがって,各裁判所の置かれた状況を前提にし,その実情に即した事務処理態勢を検討した上で, このようにして構築された事務の流れが実効的であり,かつ,無理のないものになっているかを実際の事務処理を通じて不断に検証して, より良い事務魑態勢の構築に努めていく必要がある。


* 以下の事務連絡等を掲載しています。
・ 訴状等における当事者の住所の記載の取扱いについて(平成17年11月8日付の事務連絡)
・ 犯罪被害者等の保護のための諸制度に関する参考事項について(平成19年12月25日付の事務連絡)
・ 刑事損害賠償命令手続から民事訴訟手続に移行した場合の犯罪被害者等の特定事項への配慮について(平成22年6月7日付の事務連絡)
・ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う留意点について(平成25年3月27日付の事務連絡)
・ 被害者特定事項の秘匿決定がされた事件における被害者等の住所等の取扱いについて(平成25年6月28日付の事務連絡)
・ 平成25年9月18日付の刑事局第二課長・家庭局第一課長書簡(平成25年度特別研究会の議論概要メモの送付)
・ 人事訴訟事件及び民事訴訟事件において秘匿の希望がされた住所等の取扱いについて(平成25年12月4日付の事務連絡)
・ 平成26年9月24日付の総務局第三課長・刑事局第二課長書簡(被害者匿名化事案において判決書等に実名を記載した場合の抄本等の作成及び交付等に関する東京地裁での取扱いについて)
・ 被害者特定事項の秘匿決定がされた事件における被害者等の住所等の取扱いについて(平成26年9月24日付の事務連絡)

検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書

1 検事総長,次長検事及び検事長任命の閣議書を以下のとおり掲載しています。
・ 片岡弘 大阪高検検事長任命の閣議書(令和元年12月23日付)
・ 甲斐行夫 広島高検検事長任命の閣議書(令和元年8月22日付)
・ 黒川弘務 東京高検検事長任命の閣議書(平成31年1月8日付)
・ 稲田伸夫 検事総長,堺徹 次長検事,八木宏幸 東京高検検事長及び大谷晃大 仙台高検検事長任命の閣議書(平成30年7月10日付)
・ 榊原一夫 福岡高検検事長及び井上宏 札幌高検検事長任命の閣議書(平成30年2月16日付)
・ 林眞琴 名古屋高検検事長及び小川新二 高松高検検事長任命の閣議書(平成29年12月26日付)




2(1) 35期の黒川弘務と林眞琴のどちらが検事総長となるかについて,法と経済ジャーナルHPに以下の記事が載っています(ログインしない限り,途中までしか読めませんが,途中まででも読み応えのある記事です。)。
・ 官邸の注文で覆った法務事務次官人事  「検事総長人事」に影響も(2016年11月22日付)
・ 法務・検察人事に再び「介入」した官邸 高まる緊張(2017年9月17日付)
・ 上川法相が林刑事局長の次官昇格を拒否か、検事総長人事は?(2018年1月18日付)
・ 「次の検事総長は黒川氏」で決まりなのか、検察の論理は(2019年1月24日付)
・ 稲田検事総長が退官拒絶、後任含みで黒川氏に異例の定年延長(2020年1月31日付)
(2)ア 林眞琴は,2014年1月9日から2018年1月8日までの間,法務省刑事局長をしていました。
イ 黒川弘務は,2011年8月26日から2016年9月4日までの間,法務省大臣官房長をしていて,2016年9月5日から2019年1月17日までの間,法務事務次官をしていました。

3 衆議院議員奥野総一郎君提出東京高検検事長の定年が半年間延長された件に関する質問に対する答弁書(令和2年2月18日付)には以下の記載があります。
① 黒川弘務検事長の勤務期間の延長は、検察庁における業務遂行上の必要性に基づくものであるところ、検察官も一般職の国家公務員であるから、一般職の国家公務員に適用される国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十一条の三第一項の規定により、任命権者である内閣において閣議決定して行ったものである。
② 検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第十九条第一項に定める資格を有し、かつ、国家公務員法第三十八条及び検察庁法第二十条に定める欠格事由に該当しない日本国籍を有する者については、年齢が六十五年に達していない限り、検事総長に任命することは可能である。


4 以下の記事も参照してください。
① 最高裁判所長官任命の閣議書
② 最高裁判所判事任命の閣議書
③ 各府省幹部職員の任免に関する閣議承認の閣議書
④ 衆議院解散の閣議書(平成29年9月28日付)
⑤ 令和への改元に関する閣議書等

裁判所の永年勤続者表彰

1 裁判所の永年勤続者の表彰に関する文書を以下のとおり掲載しています。
・ 永年勤続者の表彰について(平成21年2月2日付の最高裁判所事務総長の依命通達)
・ 永年勤続者の表彰における被表彰者の決定方法について(平成21年2月2日付の最高裁判所人事局長の通達)
・ 新たな永年勤続表彰制度について(平成21年2月2日付の最高裁判所人事局能率課長の事務連絡)2通
・ 「永年勤続者の表彰について」の発出に伴う留意点(平成21年2月2日付の最高裁判所人事局能率課長の事務連絡)
・ 最高裁判所に勤務する永年勤続者の表彰における被表彰者の決定方法について(平成21年2月9日付の最高裁判所人事局長の通達)
・ 永年勤続者の表彰について(平成28年3月24日付の最高裁判所人事局能率課長の事務連絡)
・ 永年勤続者の表彰の運用について(平成28年6月16日付の最高裁判所人事局能率課長の事務連絡)

2 「裁判所の永年勤続者の表彰に関する通達及び事務連絡(令和2年1月当時のもの)」としてひとまとめの文書にしています。


新たな永年勤続表彰制度の概要(新たな永年勤続表彰制度について(平成21年2月2日付の最高裁判所人事局能率課長の事務連絡))別紙

裁判員等の日当

1 日当の具体的な額は,選任手続や審理・評議などの時間に応じて,裁判員候補者・選任予定裁判員については1日当たり8050円以内,裁判員・補充裁判員については1日当たり1万50円以内で,決められます(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条)。

2 裁判員等の日当の支給基準について(平成21年3月30日付の最高裁判所刑事局長及び経理局長の通達)によれば,具体的な支給基準は以下のとおりです。
(1) 裁判員及び補充裁判員の日当
ア 執務時間等があった場合
・ 2時間以内の場合,4400円以上4740円以内
・ 2時間を超え4時間以内の場合,4740円を超え5780円以内
・ 4時間を超え7時間以内の場合,5780円を超え8700円以内
・ 7時間を超える場合,8700円を超え1万50円以内
イ 専ら旅行に要した日及びそのほかの日
・ 3950円
ウ 執務時間等には,執務等が午前から午後までにわたって行われた場合におけるいわゆる昼休み時間が含まれます。
   また,基準額には,裁判員又は補充裁判員に選任された日における選任予定裁判員又は裁判員候補者としての日当の額が含まれます。
(2) 選任予定裁判員及び裁判員候補者の日当
ア 手続時間があった場合
・ 2時間以内の場合,4400円以上4740円以内
・ 2時間を超え4時間以内の場合,4740円を超え5780円以内
・ 4時間を超えの場合,5780円を超え8050円以内
イ 専ら旅行に要した日
・ 3950円

3 裁判員等に支給される旅費、日当及び宿泊料に対する所得税法上の取扱いについて(平成20年11月6日付の国税庁課税部審理室長の回答)によれば,税務上の取扱いは以下のとおりです。
① 裁判員等に対して支給される旅費等については、その合計額を雑所得に係る総収入金額に算入する。
② 実際に負担した旅費及び宿泊料、その他裁判員等が出頭するのに直接要した費用の額の合計額については、旅費等に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入する。

4 佐賀労働局HPの「従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のご質問について取りまとめました」に以下の問答が載っています。

問2 就業規則において、裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合に
   (1) 裁判員として受領した日当は使用者に納付する
   (2) 日当を受領した時はその金額について給与から減額する
  などと定めることは問題ないでしょうか。  

答 例えば、(1)のように、裁判員として受領した日当は使用者に納付するという規定を置いた場合、その規定により実質的に労働者が不利益を被るような場合は、裁判員法第100条が禁止している不利益取扱いに該当する可能性があります(例えば、受領した日当が1万円であり、特別の有給休暇に支払われる給与額が6000円である場合には、日当を納付することで4000円の不利益を被ることになります。)。
  また、(2)のように、特別の有給休暇としているにもかかわらず、給与額から裁判員の日当を差し引くことは一般的に認められません。
  なお、例えば、「裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合には、1日分に相当する給与額(例えば1万5000円)と日当相当額(例えば1万円)との差額(例えば5000円)を支給する。」というように、給与額と日当相当額との差額を支給するような特別の有給休暇制度にすることは問題がないと考えられます。

5 「尋問に出席した場合の旅費日当」も参照してください。



第一次世界大戦におけるドイツの賠償金の,現在の日本円への換算等

第1 1921年5月に決定された賠償金の金額等
1 ベルサイユ条約233条及び244条第二附属書によって設置された連合国賠償委員会は,1921年4月28日,第一次世界大戦におけるドイツの賠償金は1320億金マルク(純金ベースで4万7256トン)であると決定し,同年5月5日,30年間の分割払いとすることを決定し,同年5月11日,ドイツはこれらを受諾しました。
2 「ドイツのハイパーインフレ」(平成24年5月25日作成)には以下の記載があります。
 1320億マルクがどれくらいのものかを推測してみました。
   【計算1】大戦前の為替レートでは、1マルク=50銭。
   当時の日本の勤労者家族の一か月の平均的な支出は100円くらい。
   これを現代の40万円とすると、当時の1円は現代の4000円に相当します。
   すると、当時の1マルクは現代の2000円、1320億マルクは264兆円になります。
   【計算2】この1マルクは金0.358423グラムと等価の1金マルクです。
   最近金相場は高騰しており、1g=約4600円。
   1320億マルクの金は、218兆円になります。
   どちらにしても、200兆円。なるほど、大変な賠償金です。
3 なんぼやHP「金のこれまでの採掘量と地球に残された埋蔵量」には,「これまで人類が採掘してきた金の総量は約18万tです。」と書いてあります。
4 1924年4月9日策定のドーズ案に基づき,ドイツは,ドーズ債(アメリカが中心となって引き受けた賠償金支払のための公債)の導入によって好景気となり,1928年末までに合計60億マルクを支払いました(Wikipediaの「第一次世界大戦の賠償」参照)。

第2 1930年5月発効のヤング案で減額された賠償金の金額等

1 1929年6月4日にヤング委員会において大枠が合意され,1930年5月17日に発効したヤング案では,ドイツの賠償残額は358億1400万ライヒスマルクとされ,59年間の分割払いとなりました。
2 ライヒスマルクは,1923年のハイパーインフレに対処するため,パピルスマルクの代替として1924年に導入されたものであり,4.2ライヒスマルクが1米ドルとされていました。
   そのため,ヤング案の賠償金を米ドルに換算した場合,85億2714万2857米ドルとなります。
3 1929年10月に大恐慌が発生するまでは,1トロイオンス(31.1035グラム)の金が20.67米ドルと等しいとされていました(1トロイオンスが35米ドルとなったのは1934年から1971年8月15日のニクソンショックまでです。)。
   そのため,ヤング案の賠償金を金(ゴールド)に換算した場合,4億1253万7148トロイオンスとなり,128億3134万9182グラム,つまり,約1万2831トンとなります。
4 金相場を1グラム4000円とした場合,約51兆3240億円となります(ただし,直近5年の金相場はもっと高いことにつき,田中貴金属工業HP「金価格推移」参照)。
   そのため,1年当たりの支払金額は約8700億円となります。
5 1933年7月,ナチスドイツは外債のモラトリアム(支払停止)を実施しましたから,ヤング案に基づく賠償金の支払が停止しました。
6 前述したとおり,1953年2月のロンドン債務協定では、戦前債務135億ドイツマルクが75億ドイツマルクに圧縮されていますところ,ヤング案に基づく賠償残額との連続性はよく分かりません。
7 ドイツは,ロンドン債務協定5条1項( Consideration of governmental claims against Germany arising out of the first World War shall be deferred until a final general settlement of this matter.)に基づき,東西ドイツの統一後に,ヤング案に基づく賠償金等の支払を再開しました。
   そのため,ドイツが,ロンドン債務協定で減額された後の,ヤング案に基づく賠償金等の支払を終了したのは2010年10月3日です。

第3 賠償金の配分率等

1 1920年7月,ベルギーのスパで開催された会議の結果,賠償金の配分率はフランスが52%,イギリスが22%,イタリアが10%,ベルギーが8%,日本及びポーランドが0.75%とされ,残りの6.5%はユーゴスラビア、ルーマニア、ギリシャを含めた協定非署名国のため留保すると定められました(Wikipediaの「第一次世界大戦の賠償」参照)。
2 Wikipediaの「第一次世界大戦の犠牲者」によれば,民間人を含めた連合国の戦没者は約940万人であり,戦傷者は約1280万人でありますところ,計算しやすように222兆円を2220万人(連合国の戦没者及び戦傷者の合計)で割った場合,1人当たり1000万円となります。
3 ちなみに,日本は,対日平和条約8条(c)に基づき,ドイツに対する第一次世界大戦における賠償請求権を放棄しました。

第4 日本の普通国債の残高(参考)
1   平成31年3月末時点における日本の普通国債の残高は874兆434億円です(うち,建設国債が270兆1853億円であり,特例国債(いわゆる赤字国債)が573兆4461億円です。)。
2 財務省HPに「最近20カ年間の年度末の国債残高の推移(建設・特例・減税特例・国鉄・林野・交付税・復興債・年金特例及び財投債別、種類別)」が載っています。

民事執行事件担当者等協議会の資料

1 民事執行事件担当者等協議会の資料を以下のとおり掲載しています。
・ 令和 元年度の事前アンケート資料(倒産執行子の引渡し),統計資料(倒産民事執行),協議結果要旨
・ 平成30年度の協議結果要旨及び資料
・ 平成29年度の協議結果要旨
・ 平成28年度の配布資料1/22/2及び協議結果要旨

2 以下の記事も参照してください。
① 裁判所の協議会等開催計画
② 民事事件担当裁判官の協議会及び事務打合せの資料

渉外レポート(最高裁判所秘書課渉外連絡室が作成したもの)

1 渉外レポート(最高裁判所秘書課渉外連絡室が作成したもの)を以下のとおり掲載しています。
(令和2年分)
13号(1月22日付)
(平成31年分→令和元年分)
なし。
(平成30年分)
 9号(2月2日付)10号(5月7日付)11号(8月1日付)12号(12月21日付)
(平成29年分)
6号(4月26日付)7号(8月23日付)8号(11月7日付)

2 第1号から第5号までの渉外レポートは,平成31年1月15日までに廃棄されました(平成31年1月15日付の不開示通知書参照)。

民事調停委員及び家事調停委員に対する表彰制度

1(1) 民事調停委員及び家事調停委員に対する最高裁判所長官表彰は,原則として以下の人が対象となります。
① 民事調停委員又は家事調停委員としての実歴年数が15年以上であり,その間の取扱件数が200件以上である者
② 人格識見共に高く,職務に精励して他の模範とされた者
(2) 最高裁判所長官表彰は,最高裁判所において,最高裁判所長官の表彰状を授与し,副賞を贈呈して行われます。
(3) 運用の詳細については以下の通達に書いてあります。
① 民事調停委員及び家事調停委員に対する最高裁判所長官表彰について(昭和60年12月28日付の最高裁判所事務総長依命通達)
② 民事調停委員及び家事調停委員に対する最高裁判所長官表彰の被表彰者の決定方法について(平成28年3月24日付の最高裁判所人事局長の通達)
(4) 弁護士法人川越法律事務所HP「細田初男弁護士が、最高裁判所長官より調停委員として表彰されました。」(2016年2月2日付)が載っています。

2 民事調停委員及び家事調停委員に対する最高裁判所長官表彰被表彰者名簿を以下のとおり掲載しています。
(令和時代)
令和元年度
(平成時代)
平成25年度平成26年度平成27年度
平成28年度平成29年度平成30年度


最高裁判所長官表彰式日程(令和元年10月24日実施分)

3 令和2年1月31日付の司法行政文書不開示通知書によれば,平成24年度以前の最高裁判所長官表彰被表彰者名簿は,令和2年1月31日までに廃棄されました。

4(1) 民事調停委員及び家事調停委員に対する高裁長官表彰は,人格識見共に高く,職務に精励し,その功績が顕著な者に対して行われます(民事調停委員及び家事調停委員に対する高等裁判所長官表彰について(平成29年4月28日付の最高裁判所事務総長の通達)参照)。
(2) 民事調停委員に対する地裁所長表彰,及び家事調停委員に対する家裁所長表彰は,原則として68歳以上であって,おおむね8年以上にわたり職務に精励し,調停制度の発展に特に貢献したものに対して行われます(民事調停委員及び家事調停委員に対する地方裁判所長表彰又は家庭裁判所長表彰について(平成元年4月1日付の最高裁判所事務総長通達)参照)。

5 以下の通達及び事務連絡を掲載しています。
① 最高裁判所表彰規程(昭和31年4月1日施行)
② 民事調停委員及び家事調停委員の表彰に関する通達及び事務連絡(令和2年1月当時のもの)
→ 調停委員の叙勲,褒章及び表彰の各推薦事務について(平成30年3月1日付の最高裁判所人事局調査課長及び能率課長の事務連絡)等が含まれています。
③ 民事調停委員及び家事調停委員の任免等について(平成16年7月22日付の最高裁判所事務総長通達)
④ 民事調停委員及び家事調停委員の任免手続等について(平成16年7月22日付の最高裁判所人事局長通達)
⑤ 民事調停委員の再任等について(平成30年1月24日付の最高裁判所民事局長の事務連絡)
⑥ 補導委託先の表彰に関する通達及び事務連絡(令和2年1月当時のもの)

6 以下の記事も参照してください。
① 調停委員
② 裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場
③ 勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)
④ 調停委員協議会の資料

海外送達

0 はじめに
   私は,海外送達に関する業務は一切取り扱っていませんから,本記載に関する相談にはお答えできないのであって,本記事の記載は,最高裁判所作成の資料を利用した,単なるメモ書きにすぎません。

1 総論
(1) 外国在住者に対する訴状等の送達方法については,最高裁判所作成の資料である「送達嘱託手続に関する関係書類の送付経路図」で始まる資料を参照してください。
   民訴条約は,1954年3月1日に作成された,民事訴訟手続に関する条約(昭和45年6月5日条約第6号)のことであり,送達条約は,1965年11月15日にハーグで作成された,民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約(昭和45年6月5日条約第7号)のことです。
(2) 最高裁判所作成の資料である「アメリカ合衆国・大韓民国・ブラジル連邦共和国・シンガポール共和国への送達嘱託フローチャート」を見れば,送達嘱託の流れがわかります。
(3) 外国在住者に対して強制執行をしたい場合,少なくとも,訴状等の送達,判決書の送達及び差押命令の送達が必要となりますから,3回は送達する必要がある気がします。
   そのため,民事訴訟法3条の3に基づき,日本に国際裁判管轄がある場合であっても,送達にかかる時間を考えた場合,差押財産が存在する海外の裁判所に直接,訴訟提起した方がいいのかもしれません。
(4) 最高裁判所作成の資料である,「送達嘱託記載例」を掲載しています。
(5) 国名呼称につき,日経スタイルHPの「グルジアはジョージアが正しい?国名呼称の不思議」が参考になります。
(6) 訴訟当事者に判決の内容が了知されず又は了知する機会も実質的に与えられなかったことにより不服申立ての機会が与えられないまま確定した外国裁判所の判決に係る訴訟手続は民訴法118条3号にいう公の秩序に反します(最高裁平成31年1月18日判決)。

2 領事送達,中央当局送達,指定当局送達,管轄裁判所送達及び公示送達
(1) 領事送達
ア 領事送達の根拠は以下の3種類です。
① 領事条約
   日本は,アメリカ合衆国及び英国と領事条約を締結していますところ,領事条約では,領事官は,派遣国の裁判所のために,裁判上の文書を送達することができる旨が定められています(日米領事条約17条1項(e)号(i),日英領事条約25条)。
   そのため,アメリカ合衆国又は英国に在住する者に対しては,日本人であると外国人であるとを問わず,また,送達すべき文書が民事又は商事に関する文書であるか否かを問わず,当該国に駐在する日本の領事館に嘱託して送達をすることができます。
② 民訴条約及び送達条約
・   民訴条約及び送達条約では,各締約国は外国にいる者に対する直接の送達を自国の外交官又は領事官(以下「在外領事等」といいます。)に行わせる権能を有する旨を定めています(民訴条約6条1項3号,送達条約8条1項)。
   そのため,これらの条約の締結国に在住する者に対しては,当該国に駐在する日本の在外領事等に嘱託して送達をすることができます。
   ただし,その国が,嘱託国の国民以外の者に対する領事送達を拒否しているときは,日本人に対してだけ領事送達をすることができます(民訴条約6条2項,送達条約8条2項)。
・ 民訴条約又は送達条約に基づき送達することができる文書は,民事又は商事に関する文書に限られています(民訴条約1条1項,送達条約1条1項)。
③ 個別の応諾
・   国家間において条約等の合意がなくても,相手国が,我が国の在外領事等によるその国に在住する者に対する送達を応諾する場合には,当該国に在住する者に対し,当該国に駐在する我が国の在外領事等に嘱託して送達をすることができます。
   この場合,受送達者は日本人に限られることが多いです。
・ 領事送達は,強制によらないものに限られます(送達条約8条1項ただし書)から,受領拒否のおそれがある場合は利用できません。
(2) 中央当局送達
ア   中央当局送達は,送達条約により認められた送達方法であり,受送達者が在住する国が送達条約の締約国である場合に行うことができます。
   中央当局は,送達の要請を受理し,かつ,処理する責任を負う当局のことであり,各締約国によって指定されています。
イ 送達することができる文書は民事又は商事に関する文書に限られます(送達条約1条1項)。
ウ ルートの選択の目安につき,中央当局送達は,受送達者が日本人であると外国人であるとを問わず実施することができ,また,任意交付の方法による場合を除き,受送達者が受領を拒んでも送達の効力が認められる場合があります。
   しかし,領事送達に比べ時間がかかることも多く,また,送達方法として任意交付以外の方法を希望した場合には受送達者が日本語を解するときでも一般に訳文の添付が求められます。
   そのため,中央当局送達は,外国人に対し領事送達の方法によることができない場合,または受送達者が受領を拒む恐れがある場合に利用することが考えられます。
(3) 指定当局送達
ア 指定当局送達は,民訴条約による送達の原則的形態でありますものの,民訴条約及び送達条約の両条約締約国については送達条約が優先し,中央当局送達によることができません(送達条約22条)。
   そのため,指定当局送達は,送達条約に加入していない国に在住する受送達者に対して行うこととなります。
イ 送達することができる文書は民事又は商事に関する文書に限られます(民訴条約1条1項)。
ウ ルートの選択の目安については,中央当局送達と同じです。
(4) 管轄裁判所送達
ア 管轄裁判所送達の根拠は以下の2種類です。
① 二国間共助取決め
   日本が受送達者の在住する国との間で司法共助の取決めを締結している場合,その取決めに基づき当該国の裁判所に嘱託して送達することができます。
② 個別の応諾
   二国間共助取決めがなくても,受送達者が在住する国が応諾する場合,当該国の裁判所に嘱託して送達することができます。
イ ブラジルは,領事送達を拒否しているうえ,民訴条約や送達条約にも加入っしていないので,ブラジルに在住する者に対して送達を行う方法は,二国間共助の取決め等に本地て,管轄裁判所送達を行うこととなります。
(5) 公示送達
ア 民事訴訟法110条は,一定の要件の下に,外国に在住する者に対して公示送達を行うことを認めています。
イ   受訴裁判所において,民事訴訟法110条1項4号の「外国の管轄官庁に嘱託を発した日」を確認したい場合の取扱いは以下のとおりです。
・ 外国の管轄官庁に嘱託を発した日について,最高裁判所民事局長等が外務省等に送達嘱託の手続をした日と解する場合,最高裁判所の国際司法共助事務の担当係に電話をして,最高裁判所が外務省等に発出した日付を確認し,確認した結果について,電話聴取書に残す等の方法が考えられます。
・ 外務省→在外日本国大使館→外国の外務省へと送付される場合(管轄裁判所送達の場合等)について,外国の管轄官庁に嘱託を発した日を,実際に在外日本国大使館から外国の外務省(管轄官庁)に送付した日と解する場合,外務省にその日付を確認するため,最高裁判所の国際司法共助事務の担当係に連絡します。
   外務省から問い合わせ等があるので,公示送達を実施した場合,最高裁判所の国際司法共助事務の担当係あてに電話等で連絡しておきます。
・ ブラジル連邦共和国のように送達実施までの通常の方法で約14か月かかる国に対しては,その点の配慮を行う必要があります。
ウ 民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律(昭和45年6月5日法律第115号)28条は,「外国においてすべき送達条約第十五条第一項の文書の送達については、同条第二項(a)、(b)及び(c)に掲げる要件が満たされたときに限り、民事訴訟法第百十条の規定により公示送達をすることができる。」と定めています。
エ 台湾や北朝鮮等国交のない国に在住する者に対して文書を送達する場合,公示送達によらざるを得ません。
   なお,外国に在住する者に対して工事送達を行った場合,民事訴訟規則46条2項後段により,公示送達があったことを受送達者に通知することができます(通知は,日本語による文書を普通郵便で送付することなどが考えられます。)。
オ 外国においてすべき送達についてした公示送達は,掲示を始めた日から6週間を経過することによって,その効力を生じます(民事訴訟法112条2項)。

3 個別の国ごとの所要期間等
(1)   最高裁判所作成の以下の資料を見れば,それぞれの国における送達方法がわかります。領事送達,中央当局送達及び管轄裁判所送達の3種類になっています。
① アメリカ合衆国
→ 領事送達の期間は3か月,中央当局送達の期間は5か月,管轄裁判所送達は先例なし。
② 英国
→ 領事送達の期間は3か月,中央当局送達の期間は4か月,管轄裁判所送達は先例なし。
③ オーストラリア連邦
→ 領事送達の期間は4か月,中央当局送達は先例なし,管轄裁判所送達は9か月
④ カナダ
→ 領事送達は4か月,中央当局送達は5か月,管轄裁判所送達は7か月
⑤ シンガポール共和国
→ 領事送達は4か月,管轄裁判所送達は4か月
⑥ 大韓民国
→ 領事送達は4か月,中央当局送達は4か月,管轄裁判所送達は6か月
⑦ 中華人民共和国(香港,マカオを含む。)
→ 中国(香港,マカオを除く)の場合,領事送達は4か月,中央当局送達は6か月,管轄裁判所送達は4か月
香港の場合,領事送達は4か月,中央当局送達は5か月,管轄裁判所送達は先例なし。
   マカオの場合,領事送達は3か月,中央当局送達及び管轄裁判所送達は先例なし。
⑧ ドイツ連邦共和国
→ 領事送達は4か月,中央当局送達は4か月,管轄裁判所送達は8か月
⑨ ニュージーランド
→ 領事送達は4か月,管轄裁判所送達は9か月
⑩ フィリピン共和国
→ 領事送達は3か月,管轄裁判所送達は7か月
⑪ ブラジル連邦共和国
→ 管轄裁判所送達は14か月
⑫ フランス共和国
→ 領事送達は4か月,中央当局送達は7か月,管轄裁判所相殺は6か月
⑬ ロシア連邦
→ 領事送達は5か月,中央当局送達は13か月,管轄裁判所送達は先例なし。
(2) 期間については,過去の例において最高裁判所が外務省に通知した日から最高裁判所が嘱託庁に送達結果を通知するまでの平均所要期間が記載されているものの,同一国に対し,同一ルートで嘱託しても期間にかなりの差が出ることがあるそうです。
   また,嘱託庁(多分,受訴裁判所のことと思います。)と最高裁判所との間のやり取りでも時間がかかる気がします。

4 外務省HPに「外国の裁判所が日本に裁判文書の送達及び証拠調べを要請する方法」が載っています。

転勤した際,裁判所共済組合に提出する書類等

1 平成29年4月3日付の裁判所共済組合最高裁判所支部のお知らせによれば,転入者及び新採用者は,裁判所共済組合に対し,以下の書類のうちの該当書類を提出する必要があります。
① 被扶養者申告書
② 被扶養者申告書(取消)
③ 長期組合員資格取得届
④ 長期組合員資格変更届
⑤ 国民年金第3号被保険者住所変更届
⑥ 児童手当・特例給付認定請求書
⑦ 財形貯蓄変更申込書(「年金」・「住宅」)
⑧ 財形貯蓄変更申込書(「一般」)
⑨ 旧組合員証・旧組合員被扶養者証・旧限度額適用認定証・旧高齢者受給者証
⑩ (確定拠出年金)第2号加入者に係る事業主の証明申請書

2 平成29年8月22日付の司法行政文書不開示通知書によれば,裁判所の新規採用職員が裁判所の共済組合に加入する際,どのような書類を裁判所が作成することになっているかが分かる文書は存在しません。