民事裁判のIT化(mints)により,訴訟記録は原則として電子データ(裁判所ファイル上の電磁的訴訟記録)となる。
この電子化によって,裁判記録の「保存期間」がどう変わるのか(あるいは変わらないのか)は,依頼者から記録の入手可否を問われる場面や,将来の関連紛争に備えて記録の謄写・証明取得の要否を判断する場面で問題となる。
本記事は,保存期間を定める規範の構造,電子化で変わる部分と変わらない部分,及び令和5年から令和6年にかけての保存・廃棄制度の見直しを整理し,弁護士が実務上留意すべき点を示す。
目次
第1 本記事の対象と結論の要旨
1 扱う問題と射程
2 用語の整理
第2 保存期間を定める規範の構造
1 根拠は民事訴訟法ではなく最高裁判所規程
2 事件の種類ごとの保存期間
3 廃棄の仕組みと所長の認可
第3 IT化(mints)で変わる部分と変わらない部分
1 記録の電子化——電磁的訴訟記録と非電磁的訴訟記録
2 保存期間は媒体を問わず維持される
3 電子化されない例外
4 電子記録の「廃棄」の意味
第4 特別保存(永久保存)と令和6年の制度改正