目次
第1 8400円は何の費用か第2 紙の謄本,証明付きの提供,閲覧・謄写の違い1 取得方法ごとの根拠と費用2 閲覧・謄写と証明付きの提供は別の手続第3 電子データの提供が高額な理由第4 施行時期と適用対象の確認1 施行時期2 経過措置と段階的な対象拡大第5 判決書の取得前に確認する事項第6 よくある疑問1 判決のPDFを見るだけでも8400円か2 電子データでの提供が始まれば紙は選べなくなるのか3 第三者も8400円を払えば取得できるのか第7 関連記事第8 出典
第1 8400円は何の費用か
令和7年法律第39号による改正後の刑事訴訟法46条2項は,裁判書が電磁的記録である場合等に,その内容と同一であることの証明がされた書面又は電磁的記録の提供を請求する制度を設けている。
同法による改正後の刑事訴訟法施行法10条2項は,その費用を,当分の間,書面については用紙1枚につき60円,電磁的記録については1件につき8400円と定めている。
したがって,8400円は,同一であることの証明がされた電子データとして裁判書の提供を受ける場合の費用である。
刑事記録の閲覧,裁判所のウェブサイトに掲載された判決の閲覧又はオンラインでの証拠開示について,一律に8400円がかかる制度ではない。
また,46条2項と施行法10条2項を定める改正規定は,刑事手続の電子化に関する主要規定と同じく,令和9年3月31日までの間において政令で定める日から施行される。
令和8年10月23日現在,その施行日を定める政令は,e-Gov法令検索では確認できない。
適用時期と対象事件については,第4で説明する。
第2 紙の謄本,証明付きの提供,閲覧・謄写の違い
1 取得方法ごとの根拠と費用
刑事判決書の内容を手元に置く方法は,次のように根拠と費用が異なる。
取得方法根拠費用・注意点紙の裁判書の謄本・抄本の交付刑事訴訟法46条(改正後は46条1項)刑事訴訟法施行法10条1項により用紙1枚につき60円電磁的記録である裁判書について,同一であることの証明がされた書面の提供改正後の刑事訴訟法46条2項改正後の施行法10条2項により用紙1枚につき60円電磁的記録である裁判書について,同一であることの証明がされた電磁的記録の提供改正後の刑事訴訟法46条2項改正後の施行法10条2項により1件につき8400円弁護人による訴訟記録の閲覧・謄写刑事訴訟法40条,改正後の40条の246条2項の提供請求とは別の制度であり,8400円の対象ではない。方法によっては裁判長の許可を要する
例えば,証明付きの書面で10枚の提供を受ける場合,用紙代の計算は1枚60円として600円となる。
これは上の表の単価だけを計算した例であり,郵送等の付随費用や具体的な請求方法まで定めたものではない。
2 閲覧・謄写と証明付きの提供は別の手続
弁護人による閲覧・謄写について,改正後の刑事訴訟法40条2項は,証拠物の謄写,電磁的記録を複写する方法による謄写及び書類等を電磁的記録として記録する方法による謄写に,裁判長の許可を要するとしている。
また,改正後の40条の2は,裁判所のファイルに記録された訴訟に関する書類又は証拠物を,裁判長の許可を受けて,裁判所の規則で定める電磁的方法により閲覧・謄写する制度である。
閲覧・謄写によって判決書の内容を確認・保存できても,それは同一であることの証明がされた裁判書の提供とは異なる。
『自由と正義』令和8年10月号の野上小夜子論稿も,同一事項の証明がされた判決書が必要な場合は,閲覧・謄写ではなく裁判書の提供請求が必要になると説明している(同号24頁)。
証明付きの裁判書の提供を求める46条2項と,閲覧・謄写を定める40条・40条の2を同じ手続として扱うと,費用と許可の要否を取り違えることになる。
起訴後の被告人側による記録入手の全体像は,刑事裁判係属中の,起訴事件の刑事記録の入手方法(加害者である被告人側)で説明している。
第3 電子データの提供が高額な理由
令和7年4月1日の衆議院法務委員会で,森本宏法務省刑事局長は,裁判書等の電子データを提供する場合には,セキュリティー確保の観点から,請求者が持参した記録媒体を検察庁や裁判所の電子機器に接続することはできないと答弁している。
その上で,無限定な拡散を防止するセキュリティー措置を講じることができる記録媒体を提供する側で用意する必要があり,8400円は,1件当たりの人件費と記録媒体の購入費用を含む物件費を積算して定めたと説明している。
同じ答弁では,記録媒体にコピーガード等の機能が必要であることが電磁的記録の費用が高い理由として挙げられ,請求者は利用目的や費用を考慮して,電子データと書面のどちらの提供を請求するかを自由に選択できるとされている。
また,例えば100枚であれば書面では6000円となるため,その程度以上の分量であれば,データで受け取る方が使いやすいと考える者もいるのではないかとの見通しも述べられている。
ただし,これらは法案審議時の政府の説明である。
具体的に使用される媒体の種類,保存・印刷の可否及び請求の手順は,法律の条文から確定することはできない。
実際に請求するときは,裁判書を保管する裁判所等の案内を確認する必要がある。