目次第1 本記事の概要1 資料2 用語第2 廃棄の背景1 保存期間の短縮と記録庫の狭隘2 運用要領の策定前の状況第3 廃棄された少年事件(別紙1-1)1 一覧2 廃棄に至った経緯の分類3 類型Ⅰの事件4 類型Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの要因5 保存されていた少年事件(番号53~59)第4 廃棄された憲法判例百選の民事事件(別紙2-1)1 一覧2 保存されていた3件のきっかけ第5 特別保存に付された後の廃棄と,運用要領の策定後の廃棄1 特別保存に付された後の廃棄(別紙3-1)2 運用要領の策定後の廃棄第6 弁護士の実務から見た意味第7 出典
第1 本記事の概要
1 資料
最高裁判所事務総局は,令和5年5月,「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」(以下「報告書」という。)を公表した。
報告書は,神戸連続児童殺傷事件の少年保護事件記録が特別保存に付されないまま廃棄されていたこと等を受け,「事件記録の保存・廃棄の在り方に関する有識者委員会」の意見を聴きながら調査した結果をまとめたものである。
本記事は,報告書の本体のうち,廃棄された事件の一覧である別紙1-1(少年事件)・別紙2-1(憲法判例百選に掲載された民事事件等)・別紙3-1(特別保存に付された後の廃棄事案)と,廃棄の経緯と原因を分析した本文20頁~30頁を整理する。
報告書の本体は,裁判所HPの「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書について」のページに掲載されている(令和8年9月19日確認)。
2 用語
当時の事件記録等保存規程9条には,保存期間満了後も保存する特別保存が2種類あった。
1項特別保存は,特別の事由により保存の必要がある記録を保存するもので,現在の「保存期間の延長」に当たる。
2項特別保存は,史料又は参考資料となるべき記録を保存するもので,令和6年1月30日に施行された事件記録等の特別保存に関する規則の「特別保存」(永久保存)に引き継がれた。
現在の制度は,令和6年全国統一運用・裁判所の特別保存制度で説明している。
第2 廃棄の背景
1 保存期間の短縮と記録庫の狭隘
報告書20頁によれば,記録庫の狭隘化が深刻になり,保存及び廃棄の事務が停滞していたことから,記録庫の狭隘解消と円滑な事務処理のための方策として,平成11年の保存規程の改正により保存期間が見直され,民事訴訟事件の事件記録の保存期間は10年から5年に短縮された。
その後,平成31年2月に東京地方裁判所の記録廃棄の問題が発覚して運用要領が策定されるまで,記録の保存に係る規律に大きな改正はなく,2項特別保存の件数も低調な状態が続いた。
令和8年5月21日以後に提起された訴えに係る事件の記録については,新しく定められた「電子情報処理組織を使用する方法により申立て等を行うことができる事件の事件記録保存規程」(令和7年最高裁判所規程第4号)により,保存期間が原則10年とされた。
詳しくはmints後の裁判記録の保存期間で説明している。
2 運用要領の策定前の状況
報告書20頁によれば,令和2年に運用要領が策定される前は,2項特別保存の事務処理要領等を明文化していた庁は約2割にとどまり,運用通達の基準を具体的かつ客観的にし,詳細な認定プロセスまで定めた庁はなかった。
2項特別保存の認定時期が定まっていない庁も相当数あった。
第3 廃棄された少年事件(別紙1-1)
1 一覧
別紙1-1は,報道機関から問合せのあった少年事件の概要を,報道機関からの問合せや保存票の記載のまま掲げている。
番号1~52は廃棄された事案,番号53~59は2項特別保存に付されていた事案である。
類型は,次の第3の2の分類による(報告書21頁~27頁)。
番号事件の概要(報告書の記載のまま)裁判所報告書の分類
1平成3年に札幌市北区内の道職員夫婦が殺害され、遺体が同市東区中沼町の原野に遺棄された事件札幌家裁本庁廃棄(類型Ⅲ)
2平成4年3月に、高知市内において、15歳の兄が妹を殺害した事件高知家裁本庁廃棄(類型Ⅲ)
3平成4年12月、札幌市内で両親を刺殺した事件札幌家裁本庁廃棄(類型Ⅲ)
(続きを読む...)裁判所で廃棄された著名事件の記録―少年事件52件・憲法判例百選の民事事件35件と廃棄の原因(最高裁の調査報告書の別紙)(AI作成)