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債務整理

米国チャプター11と知的財産ライセンス――ライセンサー・ライセンシー別の§365対応(AI作成)

目次第1 結論第2 §365の基本構造1 未履行契約であること2 引受け,拒絶及び譲渡第3 債務者がライセンサーである場合1 §365(n)の対象2 ライセンシーの選択3 商標ライセンスとMission Product判決4 SaaS及びソフトウェアの限界第4 債務者がライセンシーである場合1 §365(c)(1)の制限2 仮想テストと実際テスト第5 契約当事者別の実務対応1 ライセンシーの対応2 ライセンサーの対応3 契約締結時の共通チェック第6 主要裁判例第7 本記事の範囲と限界第8 出典1 法令2 裁判例3 実務解説・関連資料

第1 結論

米国のチャプター11で知的財産ライセンスを検討するときは,債務者がライセンサーであるのか,ライセンシーであるのかを最初に分ける必要がある。
その上で,①破産申立て時に未履行契約であったか,②対象が「知的財産」の法定定義に入るか,③契約と適用される非破産法がどの権利を残すか,④事件がどの巡回区で係属するかを確認することになる。

債務者の立場
中心となる条文
第一の確認事項

ライセンサー
11 U.S.C. §365(a),(g),(n)
拒絶後にライセンシーが使用権を維持できるか

ライセンシー
11 U.S.C. §365(b),(c),(f)
契約の引受け又は譲渡にライセンサーの同意が必要か

債務者がライセンサーである場合,特許,著作権,営業秘密等のライセンシーは,拒絶による契約違反を理由に終了を選ぶか,所定の支払と権利放棄を伴って破産申立て直前の契約上の権利を維持するかを§365(n)に基づき選択できる。
ただし,§365(n)は継続的な開発,保守,クラウド運用又はデータ移行を一般的に保証する制度ではない。

商標は11 U.S.C. §101(35A)の「知的財産」に列挙されていないため,§365(n)の法定保護にそのまま入るとはいえない。
もっとも,連邦最高裁のMission Product Holdings, Inc. v. Tempnology, LLC,587 U.S. 370 (2019)は,拒絶の効果を破産外の契約違反と同様に扱い,拒絶だけで既に付与された商標使用権を消滅させることはできないとした。

債務者がライセンシーである場合,契約の引受けにはデフォルトの治癒,金銭損失の補償及び将来の履行に関する十分な保証が問題となる。
さらに,適用される非破産法が第三者への履行又は第三者からの履行の受領を相手方に強いることを許さず,相手方が同意しないときは,§365(c)(1)が引受け又は譲渡を制限する。

第2 §365の基本構造
1 未履行契約であること

11 U.S.C. §365(a)の引受け又は拒絶の対象は「executory contract」である。
連邦破産法典に一般定義はないが,Mission Product判決は,当事者双方に少なくとも一定の履行が残っている契約と説明している。

ライセンスという名称だけで未履行性が決まるわけではない。
In re Exide Technologies,607 F.3d 957 (3d Cir. 2010)とIn re Interstate Bakeries Corp.,751 F.3d 955 (8th Cir. 2014) (en banc)は,資産譲渡取引に組み込まれた永久的・ロイヤルティ無料の独占的商標ライセンスにつき,統合された取引全体と残存する重要な義務を検討し,未履行契約ではないと判断した。

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準自己破産とは-破産法19条の申立権者・疎明・費用(AIリライト)

目次

第1 準自己破産とは1 破産法19条による役員等の申立て2 法人の自己破産及び債権者申立てとの違い第2 準自己破産の申立権者1 法人の種類ごとの申立権者2 一人の取締役による申立てと機関決定3 監査役,株主及び従業員第3 破産原因と疎明1 支払不能又は債務超過2 一部の役員等が申し立てる場合の疎明3 裁判所の調査と不誠実な申立て第4 申立書と準備資料1 申立書及び債権者一覧表2 役員資格と破産原因を示す資料3 会社の協力を得られず資料が不足する場合第5 管轄,特別代理人及び取下げ1 管轄裁判所2 特別代理人が問題となる場合3 申立ての取下げと即時抗告第6 申立費用と予納金1 申立人の予納義務2 国庫仮支弁は例外である3 法人財産からの支出と役員の立替え第7 申立てを検討する順序1 初期確認と資料保全2 直ちに申し立てず追加確認をする場合3 公開裁判例で確認できる事実経過第8 特定非常災害による債務超過の特例第9 出典・参考資料1 法令・裁判所規則2 裁判例3 裁判所・行政機関の運用資料4 文献5 関連記事

第1 準自己破産とは

本記事は,令和8年9月6日現在の破産法,破産規則及び裁判所の公開資料に基づき,法人の準自己破産を説明するものである。
準自己破産とは,法人の取締役等が,破産法19条によりその法人について破産手続開始を申し立てることをいう実務上の呼称である。
破産する債務者は法人であり,申立人となる取締役等が個人として自己破産する制度ではない。

1 破産法19条による役員等の申立て

破産法18条1項は,債権者又は債務者に破産手続開始の申立権を認めている。
これとは別に,同法19条は,法人の理事,取締役,業務を執行する社員又は清算人に,その法人について固有の申立権を認めている。
条文は「準自己破産」という名称を用いていないため,実際の手続を確認するときは,申立人が誰であり,18条又は19条のいずれに基づくのかを区別する必要がある。

2 法人の自己破産及び債権者申立てとの違い

三つの申立ては,いずれも法人を債務者とする破産手続であるが,申立人と申立時の疎明事項が異なる。

区分申立人申立時に問題となる疎明根拠法人の自己破産法人破産原因と財産状態を示す資料が必要であるが,破産法19条3項の対象ではない破産法18条1項準自己破産取締役等一部の取締役等による申立てでは破産原因となる事実の疎明が必要である破産法19条3項債権者申立て法人に対する債権者自己の債権と破産原因となる事実の双方の疎明が必要である破産法18条2項

債権者申立ての要件,予納金及び回収上の限界は,債権者による法人破産申立て―要件・予納金・回収リスク(AI作成)で説明している。

第2 準自己破産の申立権者

1 法人の種類ごとの申立権者

破産法19条1項が明示する申立権者は,次のとおりである。
①一般社団法人又は一般財団法人については理事
②株式会社又は相互会社については取締役
③合名会社,合資会社又は合同会社については業務を執行する社員

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自然災害債務整理ガイドライン-対象・メリット・デメリットと手続(AIリライト)

目次

第1 自然災害債務整理ガイドラインの位置付け1 法的拘束力のない自主的な準則であること2 制度の中心となる三つの利点とその限界第2 対象となる災害,債務者及び債務1 対象となる災害2 対象となる債務者3 対象となる債務及び債権者第3 利用するための七つの要件1 ガイドライン本文が定める要件2 返済困難と災害との因果関係を示す資料第4 メリットと誤解しやすい限界1 個人信用情報に関する取扱い2 手元に残せる財産と500万円3 保証人の取扱い4 登録支援専門家の費用第5 手続の流れ1 最大元本債権者への着手申出2 登録支援専門家の委嘱と全対象債権者への申出3 一時停止4 調停条項案と特定調停第6 デメリット及び注意点1 多数決又は強制認可の制度ではないこと2 返済困難なら誰でも利用できるわけではないこと3 一時停止と費用に限界があること4 不成立時に他の債務整理を検討する必要があること第7 個人事業主と税務1 個人事業主の事業継続2 債務免除益の所得税上の取扱い第8 新型コロナウイルス感染症の特則第9 利用状況第10 被災後の初動第11 出典1 ガイドライン及び運用資料2 法令3 行政機関等の資料

自然災害によって住宅,勤務先又は事業に被害を受け,住宅ローンや事業性ローンを返済できなくなった個人は,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」により,破産手続や個人再生手続によらずに債務の減免を受けられる場合がある。
もっとも,この制度は申出だけで債務を強制的に減免するものではなく,利用要件を満たした上で,対象債権者との合意を形成し,特定調停を経る必要がある。
本記事では,令和8年9月6日現在のガイドライン本文及びQ&Aに基づき,対象,要件,メリット,デメリット及び手続を整理する。

第1 自然災害債務整理ガイドラインの位置付け
1 法的拘束力のない自主的な準則であること

自然災害債務整理ガイドラインは,自然災害の影響によって既往債務を弁済できなくなった個人について,金融機関等との合意により,債務の全部又は一部の減免,返済猶予その他の債務整理を行うための自主的な準則である。
法令ではなく法的拘束力もないが,対象債権者,債務者その他の利害関係人が自発的に尊重し,遵守することが期待されている(自然災害債務整理ガイドライン本文2頁~3頁)。

2 制度の中心となる三つの利点とその限界

この制度では,①ガイドラインに基づく債務整理の事実等を信用情報登録機関へ報告・登録しない取扱い,②自由財産等を手元に残せる可能性,③登録支援専門家による無料の手続支援が用意されている。
他方,債務減免には対象債権者の合意形成が必要であり,保有できる財産額,新たな借入れ,保証人の責任又は手続成立が保証される制度ではない。

第2 対象となる災害,債務者及び債務
1 対象となる災害

対象は,東日本大震災及び平成27年9月2日以後に災害救助法の適用を受けた自然災害である。
東日本大震災については,令和3年4月1日から現在のガイドラインの対象に追加された(運営機関のガイドライン案内)。
個別の災害が対象に含まれるかは,更新される被災された皆さまへの案内で確認する必要がある。

2 対象となる債務者

対象となるのは,災害の影響により,既往債務を弁済できない状態又は近い将来に弁済できなくなることが確実と見込まれる状態にある個人であり,個人事業主も含まれる。
返済困難かどうかは,収入,財産,信用,債務総額,返済期間,利率及び家計の状況等を総合して判断される(ガイドラインQ&A10頁~13頁)。

住所が災害救助法の適用市町村外にあることだけで,当然に対象外となるわけではない。
住居又は事業所の直接被害に限らず,勤務先の被災による減収,取引先の被災による売上減少等であっても,災害と返済困難との合理的な因果関係を説明できれば対象となり得る。

3 対象となる債務及び債権者

対象となるのは,原則として災害発生前に負担していた住宅ローン,住宅のリフォームローン,事業性ローンその他の既往債務である。
災害発生後の借入れは,通常の自然災害ガイドラインでは対象とならない。

対象債権者は,銀行,信用金庫,信用組合,労働金庫,農漁協,政府系金融機関,貸金業者,リース会社,クレジット会社,債権回収会社及び保証会社等であり,必要があるときはその他の債権者を含めることができる。
債権者数による制限はなく,債権者が1名の場合でも利用できる(ガイドライン本文3頁~4頁及びガイドラインQ&A8頁)。

第3 利用するための七つの要件
1 ガイドライン本文が定める要件

ガイドラインを申し出るためには,次の要件を全て満たす必要がある。

①災害の影響により,既往債務を弁済できないこと,又は近い将来に弁済できなくなることが確実と見込まれること。

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米国のチャプター11と日本の民事再生手続の徹底比較(AI作成)

第1 チャプター11と民事再生の違いが分かる比較表第2 申立ての条件と経営権1 申立ての条件と開始の時点2 DIPと裁判所・債権者による監督第3 取立ての停止と担保権1 米国のオートマティック・ステイ2 日本の中止命令と別除権3 担保価値と事業に必要な資産の確保第4 DIPファイナンスと優先順位1 米国の融資保護と既存担保に優先する融資2 日本の共益債権と開始前後の区別第5 契約の継続・終了と事業売却1 米国の契約引受けと履行拒絶2 日本の双方未履行契約と倒産解除特約3 計画前の事業売却と清算型の出口第6 取引債権の回収と届出1 従前の売掛金と開始後の取引2 債権届出と期限を逃した場合3 相殺と既払金の返還請求第7 再建計画・再生計画の可決と認可1 計画案を提出する者と期限2 米国のクラス別投票と日本の議決要件3 同じ債権構成でも結論が変わる計算例4 反対者を拘束する認可とクラムダウン第8 株主・保証人・第三者への影響1 旧株主の持分と債務者の免責2 保証人と第三者の免責第9 小規模企業向けのサブチャプターⅤ第10 期間・費用と再生に失敗した場合1 手続の終結と弁済の完了2 米国の四半期手数料3 再建できない場合の清算への移行第11 日本企業の利用と国境を越える効力1 日本での外国倒産手続の承認援助2 米国のチャプター15との違い第12 取引先が申し立てたときの確認事項第13 出典1 法令・裁判所規則・金額改定告示2 裁判例3 司法機関・行政機関による制度説明4 執筆者による実務解説5 関連記事
第1 チャプター11と民事再生の違いが分かる比較表

チャプター11(Chapter 11)は,米国法典第11編の第11章に基づく倒産手続である。
日本の民事再生と同様に,債務者が経営を続けながら債務を整理する仕組みを備えるが,担保権者や株主を計画に取り込む方法,新規融資の保護,債権者の議決要件に大きな違いがある。
したがって,「米国版の民事再生」と理解するだけでは,担保の実行や売掛金の回収について判断を誤るおそれがある。

本記事は,令和8年8月31日を基準日として,一般事業会社の通常のチャプター11と,日本の法人企業の民事再生を比較する。
小規模企業向けのサブチャプターⅤは第9で説明し,個人再生,金融機関等の業種別特則及びステーブルコイン発行者の特則は対象外とする。
米国法令・判決に関する日本語の訳語は仮訳である。
基本となる法令は,米国法典第11編と民事再生法であり,以下の米国法の条番号は,特に断らない限り同編の条番号を指す。

比較事項
米国の通常のチャプター11
日本の民事再生

経営権
原則として債務者が経営を継続する
原則として再生債務者が業務・財産を管理する

申立て直後の保護
原則として申立てにより自動停止が生じる
開始前は保全処分・中止命令等を用いる

担保権の実行
自動停止の対象となり,計画による変更も問題となる
別除権として手続外での行使が原則である

新規融資
超優先権や,一定の条件下で既存担保に優先する担保を付けられる

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自動車部品大手マレリの再建計画案・開示説明書を読む―債権者別の取扱いと財務予測(AI作成)

第1 2026年8月3日に提出された2つの書面
第2 債権者と株主の取扱い

1 DIP融資の現金払い・出口融資・新株への振分け
2 シニア貸付の11%と一般無担保債権の100%

第3 2026年~2028年の財務予測

1 主要数値と債務再編による会計上の利益
2 出口融資と自動車メーカーの支援という仮定
3 未収録の企業価値評価と清算分析

第4 第三者への請求権放棄と計画の補充資料

1 投票の扱いとリリースへの参加は別に読む
2 Plan Supplementと計画の発効条件

第5 出典

【2026年9月6日追記】開示説明書の承認審理は,2026年8月31日付けの審理延期通知(Docket No. 2580)により延期され,新期日は未定となった。
本記事は,引き続き2026年8月3日提出版の再建計画案及び開示説明書案を分析するものである。

第1 2026年8月3日に提出された2つの書面
マレリの2026年8月3日付け再建計画案は,債権の種類に応じた現金払い,新株の交付及び既存株式の消滅などを組み合わせた案である。
一般無担保債権には100%の回収見込みが示されているが,処遇を変更する可能性が留保され,財務予測にも未確定の融資・顧客支援が織り込まれている。

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支払不能と債務超過の違い―破産法上の意味と判断方法(AI作成)

第1 支払不能と債務超過の違い

第2 支払不能の意味と判断方法

1 破産法2条11項の定義

2 支払能力に含まれる要素

3 確認資料

第3 債務超過の意味と判断方法

1 破産法16条1項の定義

2 帳簿上の債務超過と破産法上の債務超過

3 個人と法人の違い

第4 一方だけが認められる場合

1 債務超過であるが支払不能ではない場合

2 支払不能であるが債務超過ではない場合

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自動車部品大手マレリのチャプター11手続状況――再建計画案と取引先への影響(AI作成)

第1 マレリのチャプター11は現在どの段階か

1 事業再建の手続と対象会社
2 通知済みの期日と計画案上の日程

第2 再建計画案が示す債権と株式の扱い

1 一般無担保債権の100%回収見込み
2 資金調達と既存株式
3 債権者委員会の申立てと期間延長命令

第3 取引先が確認する債権届出と支払

1 契約相手と申立前後の債権
2 SchedulesとProof of Claim
3 一般的な届出期限と個別の通知

第4 2022年の再建及び日本の手続との関係
第5 出典

1 法令・手続規則
2 裁判所命令
3 債務者・債権者委員会の提出書面
4 米国裁判所の制度解説
5 会社発表・事件代理人の案内

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早期事業再生法の概要―対象債権,4分の3決議及び裁判所認可(AI作成)

第1 この記事が扱う制度と基準時

1 早期事業再生法とは
2 制度の位置付け

第2 既存の事業再生手続との違い

1 制度の比較
2 想定される利用者

第3 利用要件と対象債権

1 利用開始の要件
2 対象となる債権者と債権
3 担保付債権の扱い

第4 手続の流れ

1 確認申請と一時停止
2 一時停止と破産法上の支払停止
3 計画・資産評定と手続期間
4 債権者集会と4分の3決議
5 裁判所の認可

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破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」―非免責債権の判断基準と主張立証(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論

1 対象

2 結論

第2 条文の構造と2号の要件

1 免責の原則と例外

2 「悪意」は単なる故意ではない

3 2号と3号の違い

第3 積極的害意を判断する事情

1 肯定方向に働く事情

2 否定方向に働く事情

3 行為時を中心とする時系列

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倒産事件の実務メモ―破産・個人再生・私的整理(AIリライト)

第1 この記事が扱う対象1 倒産事件の論点を混同しないこと2 実務で先に確定すべき時点と資料第2 所有権留保と自動車1 留保所有権を確認する四つの事項(1) 最高裁平成22年判決(2) 最高裁平成29年判決2 自動車の評価と提出資料3 公布済みで未施行の担保法制4 譲渡担保法が所有権留保をどう変えるか第3 継続的給付契約と財団債権1 供給拒絶を制限する破産法55条1項2 申立て後・開始前の給付3 財団債権と免責4 公共下水道使用料第4 法人破産における帳簿と電子データ1 法定保存期間2 受任直後の資料保全3 手続終了時の取扱い第5 支払不能と支払の停止1 両概念の違い2 受任通知に関する最高裁判例3 実務上の時系列表第6 否認権と詐害行為取消し1 否認類型を分けること2 第三者資金による弁済3 差押債権者への弁済4 回収額と費用対効果5 詐害行為取消しとの違い第7 破産財団,自由財産及び将来請求権1 破産財団の範囲2 自由財産からの弁済3 将来の死亡保険金請求権第8 租税等の請求権と交付要求1 租税債権の分類2 交付要求の性質と争い方第9 破産管財人の職務と敷金返還請求権の質権1 管財人の判断過程2 最高裁平成18年判決の三つの判断第10 個人再生の申立てと再生計画1 不当目的・不誠実申立て2 不正な方法による再生計画の成立3 倒産解除特約と住宅資金特別条項第11 債権者企業の初動と私的整理1 信用不安を把握した債権者の初動2 法的整理と私的整理3 令和8年12月施行予定の早期事業再生制度第12 関連記事1 破産・免責2 強制執行第13 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公的資料4 文献5 企業法務の解説
第1 この記事が扱う対象
1 倒産事件の論点を混同しないこと

倒産事件では,破産,民事再生,私的整理及び個別執行が相互に関係する一方,それぞれの制度目的と法的効果は異なる。本記事は,実務で繰り返し問題となる論点について,現行法上の結論,事実確認の順序及び判例の射程をまとめるものである。

同じ金銭債権であっても,破産債権,財団債権,優先的破産債権又は非免責債権のいずれに当たるかで,届出,弁済及び免責の扱いが変わる。また,条文上の全国共通ルール,裁判所ごとの提出資料・運用,専門家の経験則及び施行前の新制度は,同じ確度の情報として扱うべきではない。

2 実務で先に確定すべき時点と資料

個別論点を検討する前に,①支払不能及び支払停止の時期,②破産手続開始の申立日,③開始決定日,④問題となる契約又は処分の成立日,⑤登記・登録その他の対抗要件具備時,⑥給付期間又は納期限を時系列にする必要がある。これらの時点を曖昧にしたままでは,所有権留保,継続的給付,相殺,否認及び租税債権のいずれも正確に分類できない。

法人事件では,会計データ,預金履歴,総勘定元帳,契約書,担保資料,固定資産台帳,在庫資料,従業員関係資料及び電子メール等を早期に保全する。個人事件でも,預金履歴,保険,自動車,不動産,退職金,家計及び親族間取引の資料を,名義だけでなく取得原資と実質的な管理状況まで確認する必要がある。

第2 所有権留保と自動車
1 留保所有権を確認する四つの事項

自動車の所有権留保では,①販売会社,購入者及び信販会社の契約関係,②破産手続又は再生手続開始時の所有者登録,③留保所有権が担保する債権の範囲,④保証履行又は立替払による権利移転の根拠を確認する。信販会社が関与しているという事実だけで,別除権を行使できるとは限らない。

自動車の価額が被担保債権残高を上回るときは,担保権者が別除権を行使できる場合であっても,余剰価値が破産財団に帰属し得る。契約解釈と対抗要件の問題を解決した後に,査定額,残債務,処分費用及び余剰の有無を別に計算する必要がある。

(1) 最高裁平成22年判決

最高裁第二小法廷平成22年6月4日判決(平成21年(受)第284号,民集64巻4号1107頁)は,販売会社に留保された所有権が立替払をした信販会社へ移転し,立替金等を担保する旨の三者間合意があった事案を扱った。同判決は,再生手続開始時に信販会社を所有者とする登録がなければ,販売会社名義の登録が残っていても,信販会社がその合意に基づく留保所有権を別除権として行使することはできないとした。

(2) 最高裁平成29年判決

最高裁第一小法廷平成29年12月7日判決(平成29年(受)第408号,民集71巻10号1925頁)は,販売会社に留保された所有権について,保証人が売買代金残額を保証履行し,法定代位した事案を扱った。同判決は,破産手続開始時に販売会社を所有者とする登録があるときは,保証人が留保所有権を別除権として行使できるとしたため,前記判決との違いは保証人という呼称だけでなく,権利移転の法的原因と登録の対応関係にある。

2 自動車の評価と提出資料

自動車を評価するときは,初度登録年月又は初度検査年月だけで機械的に無価値とせず,車種,年式,走行距離,損傷,装備,中古市場,ローン残高及び処分費用を確認する。各裁判所の申立資料には地域差と改訂があるため,事件係属裁判所の最新資料を確認し,必要に応じて複数の査定資料又は価格資料を提出するのが安全である。

電子車検証では,券面だけで所有者情報等の全部を確認できない場合がある。自動車検査証記録事項又は電子車検証のICタグ情報も取得し,登録名義と契約書の記載を照合する必要がある。

3 公布済みで未施行の担保法制

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律(令和7年法律第56号。以下「譲渡担保法」という。)は,譲渡担保及び所有権留保の効力,対抗要件,実行並びに倒産手続上の扱いを成文化した。同時に成立した譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和7年法律第57号)は,動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律を改正し,動産・債権譲渡登記制度を見直す。両法は,令和7年5月30日に成立し,同年6月6日に公布された。

両法は,一部の規定を除き,公布の日である令和7年6月6日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。同日を起算日とする2年6月の期間が満了するのは令和9年12月5日であるから,政令で定めることができる施行日の最終日も同日である。譲渡担保法の本則は,令和8年8月9日現在では施行されておらず,施行期日を定める政令も公表されていない。法務省の案内によれば,施行時には既存契約に関する経過措置も含めて再確認する必要がある。

したがって,現時点の事件は現行法及び前記最高裁判例により処理し,新法を現在の適用法として先取りしてはならない。他方,長期契約,集合動産担保及び施行日をまたぐ契約については,施行日,対抗要件及び経過措置を継続的に確認する必要がある。

4 譲渡担保法が所有権留保をどう変えるか

譲渡担保法のうち所有権留保契約を定めるのは第3章(109条から111条まで)である。同法109条1項は,所有権留保契約に基づく動産の所有権の留保は,所有権留保動産の留保買主等から留保売主等への引渡し(登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない動産にあっては,留保売主等を所有者とする登記又は登録)がなければ第三者に対抗することができないとする。同法2条1号イ⑵は道路運送車両法による登録を受けた自動車を「登録自動車」と定義し,同条16号イは,所有権留保契約の目的となる動産から抵当権の目的とすることができるものを除きつつ,登録自動車をその除外の対象から外している。したがって,登録自動車の所有権留保では,留保売主等を所有者とする登録が対抗要件となる。

同法109条2項は,代金の支払債務又はその履行によって生ずる償還債務のみを担保する所有権留保について,引渡しがなくても第三者に対抗することができるという特則を置く。もっとも,同項の対象となる所有権留保動産からは登記又は登録を対抗要件とする動産が除かれているため,登録自動車はこの特則の対象から外れ,1項の原則に戻る。

同法110条は,留保買主等について再生手続開始の申立て又は更生手続開始の申立てがあったとき,及び留保買主等に再生手続開始の原因となる事実又は更生手続開始の原因となる事実が生じたときに所有権留保契約が解除される旨の特約並びにこれらを理由として留保売主等に解除権を付与する特約を,無効とする。ただし,対象は同法2条16号イの類型,すなわち売主が自ら代金債務等を担保するために所有権を留保する契約に限られ,買主の委託を受けた第三者が代金を支払って所有権を取得する同号ロの類型は含まれない。

同法111条1項は,第2章の規定のうち動産譲渡担保契約に係る部分を留保所有権に準用する。準用から除かれるのは第2章の一部の条及び款であり,第3節「破産手続等における譲渡担保権の取扱い」(97条から108条まで)は除かれていない。同法97条1項は,破産者が譲渡担保権設定者としてその目的である財産について権利を有し,かつ,その権利が破産財団に属する譲渡担保権を有する者について,破産法中破産財団に属する財産につき質権を有する者に関する規定を適用するとしているから,留保所有権を別除権として扱うことが条文上明らかになる。

もっとも,同法109条1項が登記又は登録を求める名義は,留保所有権を有する者である「留保売主等」(同法2条19号)である。保証債務を履行して法定代位した保証人について,販売会社を所有者とする登録のままで対抗要件を満たすといえるかは,条文の文言から一義的に定まらない。前記最高裁平成29年判決の結論が施行後も維持されるかは,施行に向けて公表される解説等で確認する必要がある。

第3 継続的給付契約と財団債権

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