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親子交流は調停と審判のどちらで決めるか―間接強制ができる定め方,試行的実施及び統計(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象とする場面

本記事は,別居や離婚によって子と離れて暮らす親と子との交流(親子交流)を,家庭裁判所の調停で決めるか審判で決めるかを考える際に,知っておくべき法令,最高裁の判断及び統計を整理する。
令和6年の民法等の改正(令和6年法律第33号。令和8年4月1日施行)により,民法766条1項の「父又は母と子との面会及びその他の交流」は「父又は母と子との交流」と改められ,裁判所の手続案内でも「親子交流調停」の語が用いられている。
本記事の統計と裁判例は改正前のものであり,そこでは「面会交流」の語が使われているので,引用する箇所ではその語をそのまま用いる。

以下,最高裁の決定にならい,子を監護している親を「監護親」,子を監護していない親を「非監護親」という。
本記事の条文は,令和8年9月28日時点の現行法をe-Gov法令検索で確認した。

2 結論の要点

①令和7年に全国の家庭裁判所で終局した面会交流の事件1万2135件のうち,調停成立は6508件(53.6%),審判による認容は1495件(12.3%)であった。
②調停調書でも審判でも,面会交流の日時又は頻度,各回の時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められ,監護親がすべき給付が特定されていれば,間接強制ができる(最高裁平成25年3月28日決定)。
③最高裁は同時に,面会交流は柔軟に対応できる条項に基づき,監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましいとも述べている。
そのため,取決めでは,協力による柔軟な実施と,守られない場合に備えた特定とをどう両立させるかが問題になる。
④改正法により,審判事件と調停事件で家庭裁判所が当事者に交流の試行的実施を促す規定が設けられた(家事事件手続法152条の3,258条3項)。
⑤取決めが守られないときは,履行勧告,間接強制,定めの変更の申立てを使い分けることになる。

第2 親子交流を定める手続

1 協議,調停及び審判

(1) 民法の定め

民法766条1項は,父母が協議上の離婚をするときは,「子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と定める。
同条2項は,協議が調わないとき又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が同項の事項を定めるとする。
離婚前の別居中の交流など,766条の場合のほかの交流については,民法817条の13第1項・2項が,父母の協議で定め,協議が調わないときは家庭裁判所が父又は母の請求により定めるとしている。
祖父母等の父母以外の親族と子との交流は,祖父母等と子との交流―最高裁令和3年3月29日決定と民法766条の2で扱っている。

(2) 調停から審判へ

家庭裁判所の手続は,通常,親子交流調停の申立てから始まる。
裁判所の「親子交流調停」の案内は,「話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には審判手続が開始され、裁判官が、一切の事情を考慮して、判断(審判)をすることになります。」と説明している。
家事調停の申立てから終了までの流れは,家事調停の申立て,進行,ウェブ会議及び終了後の手続で扱っている。

2 交流の試行的実施

家事事件手続法152条の3第1項は,「家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判事件(子の監護に要する費用の分担に関する処分の審判事件を除く。)において、子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がなく、かつ、事実の調査のため必要があると認めるときは、当事者に対し、子との交流の試行的実施を促すことができる。」と定める。
同条2項により,家庭裁判所は,交流の方法,日時,場所,家庭裁判所調査官その他の者の立会いの有無を定め,子の心身に有害な影響を及ぼす言動の禁止等の条件を付けることができ,同条3項により,結果の報告を求めることができる。
この規定は,子の監護に関する処分の調停事件(養育費に関するものを除く。)と離婚調停事件に準用される(同法258条3項)。

試行的実施は,交流の定めそのものではなく,事実の調査のために促されるものである。
東京家庭裁判所委員会の令和5年6月21日の議事概要では,裁判所側の説明として,家庭裁判所の児童室で試行的面会交流をするのは「本当に限られたケースであると感じる」と述べられている。

第3 調停と審判の終わり方

1 全国の統計(令和7年)

令和7年司法統計年報(家事編)第41表によれば,全国の家庭裁判所で令和7年に終局した子の監護事件のうち,申立ての趣旨が面会交流である事件の終局区分は次のとおりである。
申立ての趣旨が2種類以上にわたる事件は重複して数えられている。
割合は,本記事で総数に対する比率を計算したものである。

終局区分件数割合
調停成立650853.6%
取下げ285823.6%
認容149512.3%
調停に代わる審判6755.6%
却下2952.4%
調停をしない2372.0%
当然終了670.6%
総数12135100%

調停成立が半数を超え,審判で結論が示された事件(認容と却下)は合わせて約15%である。
総数のうち8658件は,統計表の区分で「調査命令有り」とされている。

2 東京家庭裁判所の説明

東京家庭裁判所委員会の平成27年3月13日の議事概要では,裁判所側の説明として,東京家庭裁判所本庁の平成26年の面会交流事件の調停成立率(終了した全ての面会交流事件のうち調停成立で終了した事件の割合)は61%(速報値)で,全事件の調停成立率53%(速報値)と比べてかなり高いと説明されている。
同じ説明の中では,後記の最高裁決定を紹介したうえで,面会交流は別居親と子が実際に会うことが重要であり,間接強制によって金銭的な問題となることで,子の健全な成長のために必要な面会交流を行うという真の目的が達成できないことになってしまう,という趣旨も述べられている。

第4 間接強制ができる定め方(最高裁平成25年3月28日決定)

1 判断基準

最高裁第一小法廷は,平成25年3月28日,面会交流の間接強制に関する3件の決定をした。
いずれの決定も,面会交流について定める場合には子の利益が最も優先して考慮されるべきであり,「面会交流は,柔軟に対応することができる条項に基づき,監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい」と述べた。
そのうえで,監護親が引渡場所で子を引き渡し,面会交流を妨害しないなどの給付は,性質上,間接強制ができないものではないとした。
審判については,「面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である」とした(平成24年(許)第48号)。

2 間接強制が認められた定め(平成24年(許)第48号)

(1) 定めの内容

この事案の審判の面会交流要領には,次の定めがあった。
①月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで
②子の受渡場所は当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは特定の駅の改札付近とし,監護親は面会交流開始時に受渡場所で子を引き渡し,非監護親は終了時に受渡場所で子を引き渡すこと
③子の病気などやむを得ない事情で実施できない場合は,子の福祉を考慮して代替日を決めること

(2) 判断

最高裁は,日時,各回の時間の長さ及び子の引渡しの方法の定めにより,監護親がすべき給付の特定に欠けるところはないとして,不履行1回につき5万円の支払を命じる間接強制決定をすべきものとした原審の判断を是認した。
受渡場所を原則として協議に委ねつつ,協議が調わないときの場所を定めておくことで,柔軟さと特定性を両立させた例といえる。

3 間接強制が認められなかった定め

(1) 引渡しの方法の定めがない審判(平成24年(許)第41号)

審判が「1箇月に2回,土曜日又は日曜日に,1回につき6時間」の面会交流を認めるよう命じていた事案で,最高裁は,頻度と各回の時間の長さは定められているが,子の引渡しの方法が何ら定められていないとして,給付が十分に特定されているとはいえず,間接強制はできないとした。

(2) 大枠だけを定めた調停調書(平成24年(許)第47号)

調停調書が,面会交流を「2箇月に1回程度」,「半日程度(原則として午前11時から午後5時まで)」とし,「最初は1時間程度から始めることとし,長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。」とし,具体的な日時,場所,方法等は当事者間で協議して定めるとしていた事案である。
最高裁は,調停調書に給付の特定に欠けるところがないといえるときは,間接強制を許さない旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り,間接強制ができるとした。
そのうえで,本件の条項は面会交流の大枠を定め,具体的な内容は協議で定めることを予定しているものであり,給付が十分に特定されているとはいえないとして,間接強制を認めなかった。
なお,面会交流を「認める」という文言だけで給付の意思が表示されていないとするのは相当でないとも述べている。

4 子が交流を拒んでいる場合

第48号の決定は,面会交流を命ずる審判は子の心情等を踏まえてされているから,子が面会交流を拒絶する意思を示していることは,間接強制決定をすることを妨げる理由にはならないとした。
他方で,審判時と異なる状況が生じたといえるときは,面会交流を禁止し,又は新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となりうるとも述べている。
子の引渡しの間接強制と権利濫用については,子の引渡しの間接強制と権利濫用―最高裁平成31年決定と令和4年決定の違いで扱っている。

第5 取決めが守られないときの手段

1 履行勧告

家事事件手続法289条1項は,義務を定める審判をした家庭裁判所は,権利者の申出があるときは,審判で定められた義務の履行状況を調査し,義務者に対し,その義務の履行を勧告することができるとする。
同条7項により,調停又は調停に代わる審判で定められた義務にも準用される。
東京家庭裁判所委員会の平成27年3月13日の議事概要では,履行勧告は,家庭裁判所調査官が義務者に電話や手紙又は面接などで履行を促すものであり,それでも任意に履行しない場合は強制執行を申し立てることになる,と説明されている。

2 間接強制

民事執行法172条1項は,作為又は不作為を目的とする債務で直接強制ができないものについて,執行裁判所が,「債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う」とする。
執行裁判所は,決定をする場合には申立ての相手方を審尋しなければならない(同条3項)。
間接強制ができるかどうかは,第4のとおり,調停調書又は審判の定めの特定性で決まる。

3 定めの変更

民法766条3項は,「家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。」と定める。
子の年齢や生活状況が変わって従前の定めが実情に合わなくなったときは,変更の調停・審判を申し立てることが考えられる。

第6 調停で決めるか審判で決めるか

1 調停で決める場合の注意点

調停では,当事者が合意する限り,子の年齢や生活に合わせた柔軟な定めができる。
統計上も面会交流の事件の半数以上は調停成立で終わっており,東京家庭裁判所も調停成立率の高さを説明している。
もっとも,第4の3のとおり,協議に委ねる部分が多い調停条項では間接強制ができない。
相手方が約束を守らないおそれがある事案では,本記事では,第48号の事案のように,原則的な日時と時間,協議が調わないときの受渡場所と引渡しの方法,やむを得ない事情があるときの代替日の決め方を条項に書いておくことが考えられると整理する。

2 審判を求める場合の注意点

審判では,裁判官が一切の事情を考慮して判断するので,当事者の希望どおりの内容になるとは限らない。
また,審判で具体的な定めを得て間接強制をしても,金銭の支払を命じるだけであり,子が実際に交流できるかは監護親の協力に左右される。
東京家庭裁判所の説明も,この点を指摘している。
そのため,審判を求める場合でも,試行的実施や調査の結果を踏まえて,実施できる内容を具体的に主張することが重要になると考えられる。

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第8 出典

1 法令

①民法(e-Gov法令検索)766条,817条の13
②家事事件手続法(e-Gov法令検索)152条の3,258条3項,289条
③民事執行法(e-Gov法令検索)172条

2 裁判例

①最高裁平成25年3月28日第一小法廷決定(平成24年(許)第48号)民集67巻3号864頁
②最高裁平成25年3月28日第一小法廷決定(平成24年(許)第41号)集民243号261頁
③最高裁平成25年3月28日第一小法廷決定(平成24年(許)第47号)集民243号271頁

3 統計・裁判所の資料

①最高裁判所事務総局令和7年司法統計年報3家事編第41表(冊子57頁,PDF69頁)
②東京家庭裁判所委員会議事概要(平成27年3月13日)
③東京家庭裁判所委員会議事概要(令和5年6月21日)
④裁判所親子交流調停