メインコンテンツへスキップ

裁判官の分限・懲戒・弾劾

森本暁史簡裁判事の経歴―共益費横領・オンラインカジノ事件,有罪判決と弾劾裁判(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 森本暁史簡裁判事の経歴1 裁判所事務官から最高裁判所事務総局まで2 東京簡易裁判所判事への任命3 湯沢簡易裁判所及び横手簡易裁判所4 新潟簡易裁判所5 読み方及び出身大学第3 刑事事件1 報道された起訴事実2 令和8年6月4日の初公判3 令和8年7月23日の判決第4 最高裁判所の訴追請求と裁判官訴追委員会の訴追1 最高裁判所の罷免訴追請求2 裁判官訴追委員会による罷免の訴追第5 令和8年(訴)第1号弾劾裁判1 係属状況2 第1回公判期日3 現時点で罷免は確定していないこと第6 有罪判決と裁判官の身分の関係1 有罪判決だけで当然に罷免されるわけではないこと2 弾劾裁判で判断されること第7 経過一覧第8 よくある質問1 森本暁史簡裁判事は何をしたと報じられているか2 刑事裁判の判決はどうなったか3 森本暁史簡裁判事は既に罷免されたのか4 弾劾裁判の第1回公判はいつか5 森本暁史氏の読み方と出身大学は何か第9 関連記事第10 出典・調査範囲1 裁判所及び弾劾裁判所の資料2 法令3 報道及び二次資料4 調査の限界
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,森本暁史簡易裁判所判事について,裁判所の人事資料で確認できる経歴,報道で伝えられた刑事事件,最高裁判所による罷免訴追の請求及び裁判官弾劾裁判所に係属する令和8年(訴)第1号事件を整理するものである。
基準日は令和8年10月15日であり,同日までに確認できた公的資料及び報道に基づく。

2 結論

①裁判所の人事資料によれば,森本暁史簡裁判事は,最高裁判所事務総局秘書課専門官,東京簡易裁判所判事,湯沢簡易裁判所判事兼横手簡易裁判所判事等を経て,令和7年4月に新潟簡易裁判所へ異動した。
②報道によれば,秋田地方裁判所は,令和8年7月23日,共益費の業務上横領,取引明細の偽造・行使及びオンラインカジノでの常習賭博の罪について,懲役3年,執行猶予4年の判決を言い渡し,その後,判決は確定した。
③最高裁判所は令和8年5月に罷免訴追を請求し,裁判官訴追委員会は同年9月10日に罷免の訴追をしたと報じられている。
④裁判官弾劾裁判所の公式サイトによれば,令和8年(訴)第1号事件は係属中であり,第1回公判は同年10月28日午後2時40分に予定されている。
⑤令和8年10月15日現在,罷免の裁判は公表されていないため,「罷免された裁判官」又は「元裁判官」と記載することはできない。

第2 森本暁史簡裁判事の経歴

最高裁判所が開示した「裁判官略歴」には,生年月日が昭和49年3月5日,現官職が新潟簡裁判事と記載され,経歴として,令和3年8月1日に東京簡裁判事,令和4年3月25日に湯沢簡裁判事・横手簡裁判事,令和7年4月1日に新潟簡裁判事となったことが記載されている。
同略歴の司法修習期の欄は空欄である。

1 裁判所事務官から最高裁判所事務総局まで

最高裁判所の説明を伝えた報道によれば,森本暁史氏は平成11年4月に裁判所事務官として採用された。
最高裁判所が作成した令和元年度の自庁研修資料には,最高裁判所事務総局秘書課専門官として森本暁史氏の氏名が掲載されている。

2 東京簡易裁判所判事への任命

報道によれば,森本暁史氏は令和3年8月に簡易裁判所判事に任命された。
令和4年1月1日現在の東京地方裁判所の裁判官配置等には,東京簡易裁判所民事室の簡易裁判所判事として氏名が掲載されている。

3 湯沢簡易裁判所及び横手簡易裁判所

裁判所時報第1788号には,令和4年3月25日付けで,東京簡易裁判所判事から湯沢簡易裁判所判事兼横手簡易裁判所判事へ異動したことが記載されている。
令和6年4月1日施行の秋田地方裁判所及び管内各簡易裁判所の裁判事務分配資料には,湯沢簡易裁判所の司法行政事務掌理者及び横手簡易裁判所判事として氏名が掲載されている。

4 新潟簡易裁判所

令和7年3月5日の最高裁判所裁判官会議の人事関係資料及び裁判所時報第1860号には,令和7年4月1日付けで新潟簡易裁判所判事へ異動したことが記載されている。
令和8年の刑事事件及び罷免訴追に関する報道も,森本暁史氏を新潟簡易裁判所判事としている。

5 読み方及び出身大学

確認した裁判所の人事資料,弾劾裁判所の公表資料及び主要な報道には,氏名の読み方及び出身大学の記載は見当たらなかった。
「暁史」の読み方や出身大学は推測せず,確認できる一次資料が公表された場合に追記する。

第3 刑事事件

(続きを読む...)森本暁史簡裁判事の経歴―共益費横領・オンラインカジノ事件,有罪判決と弾劾裁判(AI作成)

裁判官の訴追請求状の書き方―弾劾裁判までの流れ・提出先・期限(AI作成)

目次

第1 訴追請求状を作る前に確認すること1 訴追請求と弾劾裁判は別の段階である2 目的が判決の変更や担当裁判官の交代ではないか3 対象と請求者を確認する第2 3年の期間制限に注意する1 3年以内に送れば足りるという意味ではない2 法律には例外もある第3 訴追請求状の記載事項と整理例1 公式の記載要領を優先する2 事実と評価を分けて書く3 自分の事案に合わせた構成例第4 資料の付け方と提出方法1 証拠の提出は法律上の必須条件ではない2 郵送又は持参で書面を提出する3 受付通知が必要な場合第5 提出後の手続と結果1 委員会の調査と審議2 所要期間と結果の通知3 不訴追決定に不服がある場合第6 提出前の確認事項第7 出典・関連記事
第1 訴追請求状を作る前に確認すること
1 訴追請求と弾劾裁判は別の段階である

裁判官について弾劾による罷免の事由があると思うときは,裁判官訴追委員会に対し,罷免の訴追を求める書面を提出できる。これが訴追請求である。国民が裁判官弾劾裁判所に直接訴えを起こす手続ではない。

流れは「訴追請求状の提出 → 訴追委員会の調査・審議 → 訴追の議決 → 弾劾裁判所への訴追状提出 → 弾劾裁判所の審理・裁判」となる。請求書を出しただけで弾劾裁判が始まるわけではなく,調査の結果,不訴追又は訴追猶予となることもある。

制度の根拠,過去の事件及び罷免後の資格回復については,弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例を参照されたい。本稿は,提出する書面と資料の準備に焦点を当てる。

2 目的が判決の変更や担当裁判官の交代ではないか

訴追委員会は,裁判官の罷免の訴追を扱う機関である。係属中の事件に介入し,判決を取り消したり,担当裁判官を交代させたり,裁判官を懲戒したりする権限を持たない。

判決や訴訟指揮に納得できないという事情は,それだけで罷免事由になるものではない。裁判の内容を争うのであれば,その事件の上訴等の手続を検討する必要がある。訴追請求を準備していても,事件の上訴期間が延長されるわけではない。

一方,職務上の義務に著しく違反する行為,職務を甚だしく怠る行為,又は職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行は,裁判官弾劾法2条の罷免事由となり得る。書面では,単なる結論への不満と,どの行為を罷免事由として問題にするのかを分けて整理する必要がある。

3 対象と請求者を確認する

対象は現職の裁判官であり,既に退官した人や裁判所書記官等の職員について同じ手続を利用することはできない。担当裁判官の氏名が分からない場合は,裁判所名,事件番号及び判決年月日等,裁判官を特定できる情報を記載する。

訴追委員会のFAQは,日本国民であれば訴訟の当事者以外も請求できると説明している。法人・団体名義の請求については,異議がなければ代表者等個人の請求として扱い,外国人からの請求については,罷免事由があると思われる場合に職権立件して調査するという取扱いを示している。これらの取扱いを,裁判官弾劾法15条1項の「何人も」という条文の文言と区別して確認しておくとよい。

第2 3年の期間制限に注意する
1 3年以内に送れば足りるという意味ではない

裁判官弾劾法12条は,原則として罷免事由があった後3年を経過すると罷免の訴追ができなくなると定めている。訴追委員会のFAQによれば,この期間には委員会の調査・審議だけでなく,訴追を議決して弾劾裁判所へ訴追状を提出する段階まで含まれる。

したがって,期限直前に請求状を郵送すれば間に合うと考えるのは適切ではない。問題とする行為の日付を整理し,時間的な余裕を持って準備する必要がある。行為が複数ある場合も,それぞれの日付と内容を分けて記載する。

2 法律には例外もある

同条には,衆議院議員の任期満了・解散の場合や,同一事由について刑事訴追があった場合の特則がある。刑事訴追がある場合には,その事件の判決確定後1年まで訴追できるという規定が置かれている。

もっとも,例外に該当するかは具体的な事実関係の確認を要する。「発覚した日から3年」「請求状を提出すれば期間が止まる」などと読み替えず,行為の日,刑事訴追の有無,判決確定日等を確認する必要がある。

第3 訴追請求状の記載事項と整理例
1 公式の記載要領を優先する

裁判官訴追委員会の「訴追の請求」には,記載要領と記載例が掲載されている。提出時には,最新の公式案内を確認する必要がある。用紙はA4判とし,左側に3cm程度の余白を設けるという案内である。

請求者の住所・氏名・ふりがな,作成年月日,対象裁判官の氏名・所属裁判所,罷免の訴追を求める旨及びその理由を,読み手が順に確認できる形にする。訴訟に関係する事実の場合は,裁判所名,事件番号,当事者名等も記載する。

2 事実と評価を分けて書く

理由の中心は,いつ,どこで,誰が,何をしたのかという具体的な事実である。「不当な裁判官である」等の評価だけでは,調査すべき出来事が特定できない。自分が直接経験したこと,記録に残っていること,他者から聞いたことを区別すると,事実の根拠が明確になる。

実務上の整理方法としては,①問題とする行為,②その日時・場所,③自分との関係,④根拠資料,⑤罷免事由に当たると考える理由の順に記載することが考えられる。この並べ方は整理の一例であり,委員会が指定する必須の書式や受理・訴追を保証するものではない。

3 自分の事案に合わせた構成例

以下は,公式の記載例を確認した上で文章を組み立てるための構成例である。角括弧の部分は実際の事実に置き換え,該当しない項目は整理する。事実が不明な点を想像で埋めないことが大切である。

(続きを読む...)裁判官の訴追請求状の書き方―弾劾裁判までの流れ・提出先・期限(AI作成)

岡口基一裁判官の弾劾裁判―訴追から令和6年4月3日罷免判決まで(AI作成)

目次

第1 弾劾裁判の概要第2 分限裁判と弾劾裁判の違い1 憲法上の根拠2 罷免事由3 手続の特徴第3 訴追された二つの行為群1 刑事事件の被害者遺族に関する発信2 犬の返還請求訴訟の当事者に関する発信第4 弾劾裁判所の判断1 刑事事件に関する10件の発信2 犬の返還請求訴訟に関する3件の発信3 罷免という結論4 弾劾判決が扱った13件の投稿等と判決理由の対応5 13件を最終結論に対応させた整理第5 二つの分限裁判との関係第6 罷免判決の効力と資格回復1 罷免判決の効力2 資格回復第7 関連記事第8 出典

第1 弾劾裁判の概要

本件は,裁判官のインターネット上の発信を対象とした弾劾裁判である。二つの分限裁判による戒告と,令和6年4月3日の罷免判決は,判断主体・基準・効果を異にする。訴追された13件すべてを同じ評価として扱わず,以下では各行為について判決が認めた事実と「著しい」非行への評価を分けて説明する。

裁判官訴追委員会は令和3年6月16日,岡口基一裁判官を罷免するよう裁判官弾劾裁判所に訴追した。
裁判官弾劾裁判所は,令和6年4月3日,令和3年(訴)第1号事件について罷免判決を言い渡した。

裁判官弾劾裁判所の公式記録によれば,訴追事由は,①刑事事件の被害者遺族に関する10件の発信及び②犬の返還請求訴訟の当事者に関する3件の発信の二つの行為群であった。

第2 分限裁判と弾劾裁判の違い
1 憲法上の根拠

日本国憲法78条は,裁判官は,公の弾劾によらなければ罷免されないと定めている。
裁判官の身分保障を維持しつつ,重大な非行がある場合に国会の弾劾制度によって罷免できる仕組みである。

2 罷免事由

裁判官弾劾法2条は,①職務上の義務に著しく違反し,又は職務を甚だしく怠ったとき,②その他職務の内外を問わず,裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときを罷免事由とする。

これに対し,分限裁判は,裁判所法49条及び裁判官分限法に基づき,戒告又は1万円以下の過料を科す手続である。
懲戒処分を受けた行為が,直ちに弾劾裁判の罷免事由になるわけではない。

3 手続の特徴

裁判官訴追委員会の制度説明によれば,弾劾裁判は公開の法廷で行われ,裁判員14人のうち9人以上が出席し,罷免判決には出席裁判員の3分の2以上の賛成を要する。
弾劾裁判は一審制であり,判決に対する不服申立ての制度はない。

第3 訴追された二つの行為群
1 刑事事件の被害者遺族に関する発信

第1の行為群は,殺人事件の判決文掲載後,被害者遺族についてSNSその他で行った10件の発信である。
訴追委員会は,これらが遺族を侮辱し,又は遺族の名誉若しくは感情を傷つけるものであり,裁判官としての威信を著しく失うべき非行に当たると主張した。

2 犬の返還請求訴訟の当事者に関する発信

第2の行為群は,犬の返還請求訴訟の原告についてSNSで行った3件の発信である。
この訴訟をめぐる最初のTwitter投稿については,最高裁が平成30年10月17日に戒告決定をしていた。

第4 弾劾裁判所の判断
1 刑事事件に関する10件の発信

裁判官弾劾裁判所の公式判例要旨によれば,10件のうち,「因縁をつけている」という趣旨の文書に関する1件は非行に当たらないとされた。
残る9件は非行に当たるとされたものの,そのうち東京高裁及び訴追委員会を批判した2件は,裁判官としての威信を「著しく」失うべき非行には当たらないとされた。

(続きを読む...)岡口基一裁判官の弾劾裁判―訴追から令和6年4月3日罷免判決まで(AI作成)

岡口基一裁判官の第2次分限裁判―犯罪被害者遺族に関するFacebook投稿と最高裁令和2年8月26日戒告決定(AI作成)

目次

第1 第2次分限裁判の概要第2 本件投稿に至る経緯1 平成29年の刑事判決紹介投稿2 令和元年11月12日のFacebook投稿第3 分限事件で審理された行為1 懲戒の原因となった事実2 最高裁が中心的に評価した点第4 最高裁大法廷の判断1 裁判官に対する信頼の毀損2 表現の自由に関する判断3 過去の注意及び戒告第5 第1次分限裁判との違い第6 その後の弾劾裁判との関係第7 関係文書及び関連記事第8 出典

第1 第2次分限裁判の概要

岡口基一裁判官に対する第2次分限裁判は,刑事事件の被害者遺族についてFacebookに投稿した行為が,裁判所法49条の「品位を辱める行状」に当たるかが問題となった事件である。
最高裁判所大法廷は,令和2年8月26日,令和2年(分)第1号事件について戒告決定をした(集民264号41頁)。

本件は,犬の返還請求訴訟に関する投稿を対象とした平成30年の第1次分限裁判とは別の事件である。

第2 本件投稿に至る経緯
1 平成29年の刑事判決紹介投稿

岡口裁判官は,平成29年12月13日頃,強盗殺人及び強盗強姦未遂事件の東京高裁判決を閲覧できる裁判所ウェブサイトのURLとともに,被告人の性的嗜好及び犯行の猟奇性に着目した文言をTwitterに投稿した。
最高裁決定は,この投稿を「前回投稿」と呼び,法律上の論点を周知するものではなく,閲覧者の性的好奇心に訴えて興味本位で判決を閲覧するよう誘導するものであったと評価した。

被害者の両親は平成29年12月26日,東京高裁に対し,被害者の尊厳に対する配慮を欠くなどとして処分を求める要望書を提出した。
東京高裁長官は平成30年3月15日,前回投稿について書面による厳重注意をした。

2 令和元年11月12日のFacebook投稿

岡口裁判官は,令和元年11月12日,遺族が東京高裁事務局及び毎日新聞によって洗脳されているという趣旨の文章をFacebookに投稿し,一般の閲覧に供した。

最高裁決定は,この表現が遺族を侮辱する内容であり,遺族の感情をさらに傷つけるものであったと認定した。

第3 分限事件で審理された行為
1 懲戒の原因となった事実

第2次分限裁判で懲戒の原因とされたのは,令和元年11月12日のFacebook投稿である。
過去の刑事判決紹介投稿,遺族の抗議,厳重注意及び第1次分限裁判の戒告は,本件投稿に至る経緯及び懲戒の相当性を判断する事情として記載された。
裁判官分限法6条は,懲戒の裁判手続が管轄裁判所への申立てによって開始されることを定めている。

2 最高裁が中心的に評価した点

最高裁は,とりわけ遺族を洗脳されたと表現したFacebook投稿を重く評価した。
遺族が以前の情報発信によって精神的苦痛を受け,東京高裁に苦情を申し入れていた経緯を知りながら,更に遺族を侮辱する発信をした点が問題とされた。

第4 最高裁大法廷の判断
1 裁判官に対する信頼の毀損

最高裁令和2年8月26日大法廷決定は,Facebook投稿が遺族の人格を軽視し,遺族に二次的な被害を与えるものであると評価した。

岡口裁判官は,現職裁判官であることを明らかにして情報発信を続けていた。
そのため,投稿は個人間の発言にとどまらず,裁判官が事件被害者の遺族を侮辱したものとして,裁判官及び裁判所に対する国民の信頼を損なうと判断された。

2 表現の自由に関する判断

決定は,裁判官にも一市民として表現の自由が保障されることを前提とした。

(続きを読む...)岡口基一裁判官の第2次分限裁判―犯罪被害者遺族に関するFacebook投稿と最高裁令和2年8月26日戒告決定(AI作成)

鬼頭史郎判事補事件―ニセ電話,身分帳閲覧,裁判官弾劾裁判所の罷免判決,資格回復及び弁護士登録(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 2つの事件と最高裁判所の調査1 ニセ電話事件2 宮本身分帳閲覧事件3 最高裁判所の事情聴取と調査委員会4 最高裁判所の訴追請求第3 国会の対応1 証人喚問と宣誓の拒絶2 宣誓拒絶の告発についての不起訴第4 裁判官訴追委員会と裁判官弾劾裁判所1 訴追2 職務停止と被訴追者が出頭しないままの審理3 罷免判決の理由4 罷免の効果5 裁判官弾劾法規の見直しの契機第5 刑事事件1 ニセ電話事件(軽犯罪法違反)2 宮本身分帳閲覧事件の付審判3 第一審の無罪判決と東京高等裁判所昭和54年判決4 最高裁判所昭和57年1月28日決定5 差戻し後の有罪判決の確定と特赦第6 資格回復の裁判第7 弁護士登録の拒絶1 登録請求と日本弁護士連合会の裁決2 東京高等裁判所平成3年9月4日判決第8 山本祐司『最高裁物語(下巻)』の記述との関係第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 国会会議録4 公的資料5 文献6 調査範囲

第1 本記事の対象と結論

鬼頭史郎判事補事件を読む際は,ニセ電話事件と身分帳閲覧事件を区別し,弾劾裁判,刑事事件,資格回復及び弁護士登録の各判断を分けて確認する必要がある。罷免は第4,資格回復は第6,登録拒絶は第7で説明する。資格回復が認められたことだけで弁護士登録が当然に認められるわけではない。制度全体は弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例を参照されたい。

1 本記事の対象と基準日

本記事は,昭和51年に発覚した鬼頭史郎京都地方裁判所判事補をめぐる一連の事件について,最高裁判所,国会,裁判官訴追委員会,裁判官弾劾裁判所,刑事裁判所及び弁護士会の手続を時系列で整理する。
対象となる行為は,検事総長を名乗って内閣総理大臣に電話をかけたいわゆるニセ電話事件と,網走刑務所で身分帳簿を閲覧したいわゆる宮本身分帳閲覧事件の2つである。
事実は,国会会議録,裁判官弾劾裁判所のウェブサイト及び裁判所ウェブサイトに掲載された裁判例で確認できたものに限っている。
裁判官弾劾裁判所のウェブサイトと裁判所ウェブサイトの裁判例は当事者の氏名を伏せているため,本記事では,国会会議録で確認できる日付,裁判所及び事件の内容と一致することを確かめた上で,本件の裁判として紹介している。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。

2 結論

①昭和51年10月21日と22日の新聞報道を受けて,最高裁判所は事務総局に調査委員会を設けて本人から事情を聴取し,同年11月19日,裁判官訴追委員会に罷免の訴追を請求した。
②最高裁判所の訴追請求の理由は,ニセ電話の録音テープを新聞社の者に聞かせたことに限られており,電話をかけたのが本人であることや,網走刑務所での身分帳簿の入手は理由に含まれていなかった。
③裁判官訴追委員会は昭和52年2月2日に訴追状を提出し,裁判官弾劾裁判所は,被訴追者が出頭しないまま審理を進め,同年3月23日,裁判官弾劾法2条2号に当たるとして罷免の判決を言い渡した。
④ニセ電話については,軽犯罪法1条15号の官職の詐称の罪で起訴され,拘留29日の有罪判決が,昭和56年11月20日の最高裁判所の上告棄却決定を経て確定した。
⑤身分帳簿の閲覧については,検察官は起訴しなかったが,東京高等裁判所の付審判決定により公務員職権濫用罪で審判に付され,第一審の無罪判決,控訴審の破棄差戻し判決,最高裁判所昭和57年1月28日決定を経て,懲役10月執行猶予2年の有罪判決が昭和62年12月に確定した。
⑥この有罪判決は,執行猶予期間中の平成元年7月11日の特赦により,有罪の言渡しの効力を失った。
⑦裁判官弾劾裁判所は,昭和60年5月9日,資格回復の決定をした。
⑧しかし,平成元年11月の弁護士名簿への登録請求について,日本弁護士連合会は,平成2年7月24日,弁護士会の秩序又は信用を害するおそれがある者に当たるとして審査請求を棄却し,東京高等裁判所平成3年9月4日判決もこの裁決を適法とした。

第2 2つの事件と最高裁判所の調査
1 ニセ電話事件

裁判官弾劾裁判所のウェブサイトによれば,昭和51年10月22日付けの読売新聞朝刊が,京都地方裁判所の判事補が同年8月4日に検事総長の名前をかたって内閣総理大臣に指揮権発動を促す電話をかけていたと報じた。
のちに渋谷簡易裁判所に起訴された公訴事実の要旨は,法務省刑事局公安課長の国会答弁によれば,検事総長でないのに,昭和51年8月4日ころ,東京都渋谷区の当時の内閣総理大臣三木武夫氏の自宅に電話をかけ,検事総長の布施であると称して,ロッキード事件に関連して勾留中であった田中角榮元内閣総理大臣の処分等について直接裁断を仰ぎたい旨を申し向けるなどして,検事総長の官職を詐称したというものである。
その電話の内容は録音されており,裁判官弾劾裁判所の訴追の事由によれば,鬼頭判事補は,その録音テープを新聞記者に聞かせた。

最高裁判所の事情聴取に対し,鬼頭判事補は電話をかけたこと自体を否定した。
勝見嘉美最高裁判所人事局長は,昭和51年10月26日の衆議院法務委員会で,「鬼頭判事補は、三木総理にそのような電話をしてはいないということでございました。」と答弁している。

2 宮本身分帳閲覧事件

ニセ電話の報道の前日である昭和51年10月21日の朝日新聞朝刊は,網走刑務所の問題に関する記事を掲載したが,その記事は裁判官とするだけで,氏名を記載していなかった。
勝見人事局長の答弁によれば,同日,衆議院議員からこの裁判官は鬼頭判事補であるとの連絡があり,京都地方裁判所長が事情を聴いたところ,本人はその裁判官が自分であることを認めた。

(続きを読む...)鬼頭史郎判事補事件―ニセ電話,身分帳閲覧,裁判官弾劾裁判所の罷免判決,資格回復及び弁護士登録(AI作成)

安川輝夫簡裁判事の失職と裁判官弾劾法41条の2―訴追請求中の町長選立候補で退職手当が支払われた事件と法改正(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 事件の経過1 担当事件の女性被告人との接触2 最高裁判所長官による訴追請求3 町長選挙への立候補と失職4 訴追委員会の審査打切り第3 退職手当と年金1 全額支払となる旨の答弁2 支払を控える余地の検討3 退職手当の額第4 刑事事件1 捜査2 最高裁判所昭和60年7月16日決定第5 国会の議論と改正の経緯1 政府と最高裁判所の当初の反応2 改正の方法をめぐる議論3 最高裁判所事務当局の案4 裁判員会議の決定と改正の依頼5 小委員会での審議6 可決と公布7 簡易裁判所判事の推薦基準の見直し第6 裁判官弾劾法41条の2の内容1 条文2 適用の効果3 適用される場面と適用されない場面4 同時に改正された15条第7 罷免と退職手当の関係1 罷免された場合2 公職選挙法90条による退職3 退職後の刑事処分第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 国会会議録4 公的資料5 文献6 調査範囲

第1 本記事の対象と結論

本件は弾劾裁判所が罷免判決を出した事例ではなく,訴追請求中の立候補による失職と,その後の法改正を扱う記事である。過去の事件の経緯と,現在の裁判官弾劾法41条の2の適用場面を区別して読む必要がある。弾劾制度全体の流れは弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例で説明している。

1 本記事の対象と基準日

本記事は,昭和55年,最高裁判所長官から罷免の訴追を求められていた小倉簡易裁判所判事の安川輝夫(以下「安川簡裁判事」という。)が福岡県久山町長選挙に立候補して裁判官の身分を失い,裁判官訴追委員会が審査を打ち切った経緯と,これを受けた裁判官弾劾法41条の2の新設までを整理するものである。
経緯は,国会会議録,裁判官弾劾裁判所の公表資料,衆議院の制定法律情報及び裁判所ウェブサイトの最高裁判所決定で確認した。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。
山本祐司『最高裁物語(下巻)』(講談社+α文庫,1997年)の記述は,同書によるものであることを示して補足的に用いた。

2 結論

①昭和55年9月10日,最高裁判所長官は,担当する刑事事件の女性被告人と私的に接触した安川簡裁判事について,裁判官訴追委員会に罷免の訴追を求めた。
②安川簡裁判事は,同年10月12日に久山町長選挙に立候補したため,公職選挙法90条により裁判官の身分を失い,訴追委員会は同月17日に審査打切りの決定をした。
③弾劾裁判による罷免がなかったため,退職手当と共済年金は法律に従って支払われることになり,最高裁判所は支払を控える解釈の余地を検討したものの,年度末に支払を決定した。
④国会では,罷免の訴追を逃れるための立候補を防ぐ方法として,公職選挙法90条を改める方法と裁判官弾劾法を改める方法が議論され,最高裁判所事務当局の案を骨格とする裁判官弾劾法の改正が選ばれた。
⑤裁判官弾劾法の一部を改正する法律(昭和56年法律第66号)は,衆議院議院運営委員長が提出した議員立法であり,衆参両院で全会一致により可決され,昭和56年6月5日に公布され,同日施行された。
⑥新設された裁判官弾劾法41条の2により,最高裁判所から罷免の訴追を求められている裁判官と訴追委員会から罷免の訴追をされている裁判官には,公職選挙法90条が適用されなくなった。
⑦もっとも,最高裁判所が訴追請求をする前の段階での立候補は同条の対象外であり,その場合の退職手当については,現行の国家公務員退職手当法12条1項2号及び14条1項が支給制限の根拠となり得る。
⑧安川簡裁判事は刑事事件でも起訴され,最高裁判所第三小法廷昭和60年7月16日決定は,担当する窃盗被告事件の女性被告人を喫茶店に呼び出した行為が公務員職権濫用罪に当たるとした原判断を是認し,上告を棄却した。

第2 事件の経過
1 担当事件の女性被告人との接触

最高裁判所第三小法廷昭和60年7月16日決定(昭和58年(あ)第1309号,刑集39巻5号245頁)が示す第一審判決の認定(原判決が是認したもの)によれば,被告人は小倉簡易裁判所判事で,女性被告人に対する窃盗被告事件の審理を担当していた。
同事件の次回公判期日は,被害弁償を待つために昭和55年7月16日に指定されていた。
被告人は,同月11日午後8時40分ころ,自己との交際を求める意図で女性被告人に電話をし,被害弁償のことで会いたいなどと言って呼び出した。
女性被告人は,被告事件について出頭を求められたものと誤信し,同日午後9時ころから9時30分ころまで,駅付近の喫茶店で被告人と同席した。

国会では,勝見嘉美最高裁判所事務総局人事局長が,昭和55年10月15日の衆議院法務委員会で,最高裁判所が把握した事実を説明した。
その説明によれば,9月6日の第1回事情聴取で,安川簡裁判事は,担当する刑事事件の女性被告人と7月11日,同月15日及び8月4日の3回にわたり喫茶店で面会したことは認めたが,旅館に行ったことと5万円を渡したことは否認した。
しかし,9月8日の第2回事情聴取で,安川簡裁判事は,7月15日に女性被告人と旅館に行って情交関係を持ち,別れる際に5万円を手渡したことを認めた。

2 最高裁判所長官による訴追請求

勝見人事局長は,上記の事情聴取の後,最高裁判所長官が訴追委員会に対して罷免の訴追を求めたと説明した。

(続きを読む...)安川輝夫簡裁判事の失職と裁判官弾劾法41条の2―訴追請求中の町長選立候補で退職手当が支払われた事件と法改正(AI作成)

弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 憲法と法律の規定1 憲法の規定2 国会法と弾劾法3 国民審査・分限裁判との違い第3 罷免の事由1 二つの類型2 訴追請求で主張された事実第4 訴追の請求と訴追委員会の手続1 訴追の請求ができる者2 最高裁判所の請求義務と報告義務3 訴追委員会の職権による調査4 訴追委員会の構成と議決5 訴追期間6 不訴追決定に対する不服7 訴追請求前によくある疑問第5 弾劾裁判所の手続1 構成と職権の独立2 訴追状の提出から審理まで3 罷免の裁判4 退官による手続回避の防止第6 罷免の効果と資格回復1 罷免の効果2 資格回復の裁判第7 これまでの事件1 罷免訴追事件2 係属中の罷免訴追事件3 訴追猶予の決定4 資格回復裁判請求事件第8 司法試験との関係第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 公的資料3 調査範囲

第1 本記事の対象と結論

日本の弾劾裁判は,裁判官の重大な職務違反や非行について,国会に設けられた裁判官弾劾裁判所が罷免するかを判断する制度である。裁判官訴追委員会が調査・訴追を担当し,弾劾裁判所が審理・裁判を担当する。国民が弾劾裁判所に直接訴える手続ではない。

手続の入口は「訴追請求 → 訴追委員会の調査・審議 → 訴追 → 弾劾裁判所の審理 → 罷免又は不罷免」である。請求を出しただけで裁判が始まるわけではなく,不訴追や訴追猶予となる場合もある。

提出する書面,資料の整理,提出先及び期間制限は,裁判官の訴追請求状の書き方―弾劾裁判までの流れ・提出先・期限で説明している。

1 本記事の対象と基準日

本記事は,裁判官を罷免するための弾劾の手続を,訴追の請求から,裁判官訴追委員会(以下「訴追委員会」という。)の調査・議決,裁判官弾劾裁判所(以下「弾劾裁判所」という。)の裁判,罷免の効果及び資格回復の裁判まで,条文の順に整理するものである。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。
終局した事件の内容と件数は,同日に弾劾裁判所及び訴追委員会の公式サイトで確認した。
係属中の事件及び公判期日は,令和8年10月15日に弾劾裁判所の公式サイトで確認した。
本記事でいう「弾劾法」は裁判官弾劾法を指す。

2 結論

①裁判官は,心身の故障のために職務を執ることができないと裁判で決定された場合を除き,公の弾劾によらなければ罷免されず,弾劾は,国会が両議院の議員で組織する弾劾裁判所が行う。
②罷免の事由は,職務上の義務に著しく違反し又は職務を甚だしく怠ったとき(弾劾法2条1号)と,職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき(同条2号)の二つである。
③訴追委員会に罷免の訴追を求める請求は,何人もすることができ,最高裁判所は,罷免の事由があると思料するときは請求をしなければならない。
④もっとも,訴追委員会は,請求がなくても,罷免の事由があると思料するときは調査しなければならず,最高裁判所の請求は訴追の要件とされていない。
⑤罷免の訴追と訴追の猶予は,出席した訴追委員の3分の2以上の多数で決し,罷免の裁判は,審理に関与した裁判員の3分の2以上の多数の意見による。
⑥弾劾裁判所と訴追委員会は,国会の閉会中でも職権を行うことができる。
⑦罷免された者は,裁判官・検察官に任命されることができず,弁護士となる資格も失うが,罷免の裁判の宣告の日から5年を経過し相当とする事由があるとき等には,本人の請求により,弾劾裁判所は資格回復の裁判をすることができる。
⑧弾劾裁判所の公式サイトによれば,同裁判所が終局判断をした罷免訴追事件は10件(うち罷免8件)であり,資格回復裁判請求事件は7件(うち資格回復4件)である。
⑨これとは別に,令和8年(訴)第1号罷免訴追事件が係属中であり,第1回公判は同年10月28日に予定されている。

第2 憲法と法律の規定
1 憲法の規定

憲法78条前段は,「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。」と定める。
憲法64条1項は,「国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。」と定め,同条2項は,「弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。」と定める。
これを受けて,裁判所法48条は,裁判官は,公の弾劾又は国民の審査に関する法律による場合及び別に法律で定めるところにより心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合を除いては,その意思に反して,免官,転官,転所,職務の停止又は報酬の減額をされることはないと定める。

2 国会法と弾劾法

国会法125条1項は,裁判官の弾劾は,各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する弾劾裁判所がこれを行うと定める。

(続きを読む...)弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例(AI作成)

弾劾裁判で罷免された裁判官の退職金―退職手当の支給制限と判断基準

目次

第1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い第2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準第3 裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟第4 公務員に対する退職手当の不支給が適法であるとした最高裁令和5年6月27日判決等
第5 関連記事その他

弾劾裁判で罷免された裁判官の退職金は,「罷免されたから法律上一律に全額不支給」と整理するものではない。国家公務員退職手当法12条は,職務・責任,非違の内容・程度及び国民の信頼への影響等を勘案して,全部又は一部を支給しない処分を行うことができると定めている。

以下では,裁判官への適用を説明する国会答弁,判断基準及び関連裁判例を紹介する。令和8年10月11日に同法12条の現行条文を確認した。制度全体は弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例を参照されたい。

第1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い
(1) 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には以下の記載があります。
① 憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。
② 現行法においても、裁判官弾劾法(昭和二十二年法律第百三十七号)第三十七条の規定により罷免されて裁判官の身分を喪失した者については、最高裁判所は、国家公務員退職手当法第十二条第一項第一号の規定により、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。また、罷免以外の事由により裁判官を退官した者についても、最高裁判所は、同法第十四条第一項第一号の規定により、その者が裁判官在任中の行為について禁錮以上の刑に処せられたとき、又は同項第三号の規定により、最高裁判所においてその者が裁判官在任中に裁判官弾劾法第二条に規定する罷免事由に該当する行為をしたと認めたときは、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。
③ 最近二十年間で、国家公務員退職手当法の規定による退職手当の支給を受けなかった者は、合計三人であり、うち二人は、裁判官弾劾法第三十七条の規定により罷免されたため、国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第九十五号)による改正前の国家公務員退職手当法第八条第一項第一号の規定により退職手当の支給を受けなかった者であり、うち一人は、任期を満了して裁判官を退官したが退職手当請求権を放棄したため、退職手当の支給を受けなかった者である。
(2) 国家公務員退職手当法12条(懲戒免職等処分を受けた場合等の退職手当の支給制限)は以下のとおりです。
① 退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支払を受ける権利を承継した者)に対し、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる。
一 懲戒免職等処分を受けて退職をした者
二 国家公務員法第七十六条の規定による失職又はこれに準ずる退職をした者
② 退職手当管理機関は、前項の規定による処分を行うときは、その理由を付記した書面により、その旨を当該処分を受けるべき者に通知しなければならない。
③ 退職手当管理機関は、前項の規定による通知をする場合において、当該処分を受けるべき者の所在が知れないときは、当該処分の内容を官報に掲載することをもつて通知に代えることができる。この場合においては、その掲載した日から起算して二週間を経過した日に、通知が当該処分を受けるべき者に到達したものとみなす。

第2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準
(1) 国家公務員退職手当法施行令17条(一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする場合に勘案すべき事情)は以下のとおりです。
    法第十二条第一項に規定する政令で定める事情は、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者の勤務の状況、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違に至つた経緯、当該非違後における当該退職をした者の言動、当該非違が公務の遂行に及ぼす支障の程度並びに当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響とする。
(2) 国家公務員退職手当法の運用方針(昭和60年4月30日総人第261号)には以下の記載があります。
第十二条関係
一 非違の発生を抑止するという制度目的に留意し、一般の退職手当等の全部を支給しないこととすることを原則とするものとする。
二 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることを検討する場合は、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者が行った非違の内容及び程度」について、次のいずれかに該当する場合に限定する。その場合であっても、公務に対する国民の信頼に及ぼす影響に留意して、慎重な検討を行うものとする。
イ 停職以下の処分にとどめる余地がある場合に、特に厳しい措置として懲戒免職等処分とされた場合
ロ 懲戒免職等処分の理由となった非違が、正当な理由がない欠勤その他の行為により職場規律を乱したことのみである場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ハ 懲戒免職等処分の理由となった非違が過失(重過失を除く。)による場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ニ 過失(重過失を除く。)により禁錮以上の刑に処せられ、執行猶予を付された場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
三 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることとすることを検討する場合には、例えば、当該退職をした者が指定職以上の職員であるとき又は当該退職をした者が占めていた職の職務に関連した非違であるときには処分を加重することを検討すること等により、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任」を勘案することとする。
四 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることとすることを検討する場合には、例えば、過去にも類似の非違を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことがある場合には処分を加重することを検討すること等により、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者の勤務の状況」を勘案することとする。

(続きを読む...)弾劾裁判で罷免された裁判官の退職金―退職手当の支給制限と判断基準

昭和42年に依願免官された高松高裁長官―『汚れた法衣』が記す金品受領疑惑(AIリライト)

目次

第1 最高裁判所裁判官会議議事録で確認できる依願免官

1 昭和42年4月28日の決定

2 議事録に記録されていない事項

第2 『汚れた法衣』が記す金品受領疑惑

1 資料の性質と参照範囲

2 同書が列挙する金品

3 検察の捜査と弾劾をめぐる同書の記述

4 新聞報道の見送りに関する同書の記述

第3 昭和42年当時と現在の弾劾・分限制度

1 昭和42年当時の裁判官弾劾法15条

2 昭和56年改正後の現行制度

3 弾劾,分限及び刑事責任の区別

(続きを読む...)昭和42年に依願免官された高松高裁長官―『汚れた法衣』が記す金品受領疑惑(AIリライト)

昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)

目次
第1 荒木辰生名古屋地裁判事の依願退官及び在宅起訴
第2 昭和27年7月当時の,国会への報告内容
第3 荒木辰生 元裁判官の収賄事件に関する名古屋地裁昭和29年7月23日判決
第4 荒木辰生 元裁判官等のその後
第5 荒木辰生 元裁判官の収賄事件については判決原本しか保存されなかったこと
第6 裁判官に罷免の事由がある場合,最高裁判所に対する通知義務があること
第7 関連記事その他

第1 荒木辰生名古屋地裁判事の依願退官及び在宅起訴
1(1)ア 荒木辰生(昭和27年4月2日依願退官)は,名古屋地裁の刑事単独部で刑事事件を担当していた際,自分が担当する労働基準法違反,強盗,関税法違反被告事件について,それぞれ被告人の親族など縁故者から有利寛大な処分をされたい旨の請託を受け,現金及び飲食合計3万円相当の賄賂を収受した疑いにより,昭和27年7月16日,収賄事件として在宅起訴されました。
イ 名古屋地裁は,荒木辰生 元裁判官に対し,昭和29年7月23日,懲役1年執行猶予3年,追徴金1万2031円の判決を下し,当該判決は同年8月7日に確定しました。
(2) 名古屋地検の捜査が進んでいることを察知した荒木辰生裁判官は,昭和27年3月27日に辞表を提出し,当時の名古屋地裁所長は,裁判官会議に付することもなく,収賄容疑について最高裁判所に伝えることもなく,荒木辰生裁判官の辞表を最高裁判所に伝達しましたから,同年4月2日付で依願退官が発令されました。
 ただし,荒木辰生裁判官は,依願退官を伝えられた昭和27年4月4日まで刑事裁判官としての職務を続けていましたから,同月2日から同月4日までに言い渡した判決については,その後,名古屋高裁が,裁判官でない者の行為として無効であるとして破棄差戻しとしました。
(3) 汚れた法衣111頁ないし138頁に詳しい経緯が書いてあります。

汚れた法衣-ドキュメント司法記者の表紙です。

第2 昭和27年7月当時の,国会への報告内容
・ 伊藤修 参議院法務委員会理事は,昭和27年7月28日の参議院法務委員会において以下の報告をしています(ナンバリングを追加したり,事件関係者の氏名を匿名にしたりしています。)。
① 名古屋地裁荒木元判事の汚職容疑事件について、第一に、その調査の経過を御報告申上げます。
 本年四月十九日付中部日本新聞紙上に、名古屋地方裁判所荒木辰生判事の汚職容疑に関する記事が大きく掲載せられ、世人の注目を惹いたところであるが、当委員会においても、問題の重大性に鑑み、これを重視し、五月九日の委員会において伊藤委員より最高裁判所事務総局鈴木人事局長に対し、本件について質疑が行われた。
 委員会においては、本件について更に詳細にこれを調査し、その真相を究明するために、現地に委員を派遣することを決定した。
 かくて五月十四日伊藤、中山の両委員は名古屋に赴き、名古屋高等裁判所、同地方裁判所において、それぞれ長官並に所長より、名古屋高等検察庁、同地方検察庁において検事長及び検事正より詳細に事情を聽取した。
 当時本件は名古屋地方検察庁において捜査中で同庁では、荒木元判事の汚職容疑について、すでに相当程度の確証を挙げてはいたのであるが、なおまだこれを起訴すべきや否やについては決定を見ていなかつた。よつてこの処分が決定するまでは、本件についての報告を留保するのが妥当なりと認め、これを留保してきたのであるが、法務府よりの通知によれば、名古屋地方検察庁は去る七月十六日、荒木辰生を收賄被疑によつて起訴したことが明らかとなつた。よつてここに本件について報告に及ぶものである。
② 二、事件の概要
 名古屋地方裁判所元判事荒木辰生は、昭和四年高文司法科試験に合格、同五年千葉弁護士会に登録、弁護士を開業、同十年判事に任ぜられ、以来、東京、金沢、安濃津、名古屋各地方裁判所に勤務し、昭和十九年に至り陸軍司政官としてスマトラに赴き、以来昭和二十一年十月帰国するまで南方各地に在勤し、同月帰国と同時に判事に任ぜられ、名古屋地方裁判所岡崎支部に勤務、昭和二十二年十一月名古屋地方裁判所に転勤、昭和二十七年四月二日依願退官するまで、同庁刑事単独部において判事として勤務したものである。
 荒木は別添名古屋高等検察庁検事長藤原末作より木村法務総裁宛の昭和二十七年七月十日付日記秘第一八四号写記載の通り
 (一)昭和二十五年十一月十七日名古屋地方裁判所刑事単独部に係属中の◯◯◯株式会社名古屋工場の工場長Aに対する労働基準法違反被告事件審理に関し、同事件の当初担当判事が、同二十六年三月十五日同裁判所刑事会議部に転出したるため、同事件の配填替えを受け、その審理を担当するに至るとともに、同事件の被告人Aが自己に対する裁判について、有利寛大なる判決を受けたいという趣旨のもとに行うものであることを知り乍ら、同年三月以降六月頃までの間に、名古屋市所在の旅館◯◯◯において、二十一回に亘り酒食の饗応を受け、同年六月二十五日言渡したる判決においては、右Aに無罪を言渡し、更に判決言渡当日たる六月二十五日及び同月二十九日頃の二回に亘つて、同じく◯◯◯において、Aより酒食の饗応を受け

(続きを読む...)昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)

華井俊樹裁判官の弾劾裁判―平成25年4月10日罷免判決の全文

目次

判決の概要と掲載方法主文第1 認定した事実第2 証拠の標目第3 法律上の判断第4 弁護人らの主張に対する判断第5 結論

判決の概要と掲載方法

華井俊樹裁判官の弾劾裁判は,電車内の盗撮行為について,裁判官弾劾法2条2号の罷免事由に当たるとして罷免した事例である。以下に,官報公示の判決を転記した既存本文を掲載する。事件当時の法令・罪名及び判決の表現は,現行法の説明と区別して読む必要がある。

判決の主文は罷免である。認定事実,弁護人の主張及びそれに対する裁判所の判断を混同せず,目次から該当箇所を参照されたい。制度全体は弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例で説明している。

   平成25年4月12日付の官報(第6025号8頁ないし11頁)の「裁判官弾劾裁判所 終局裁判」で公示された,新63期の華井俊樹裁判官に対する平成25年4月10日付の罷免判決は以下のとおりです(着色,太字等の加工は加えています。)。
   弁護人の主張において華井俊樹裁判官に有利な事情が一通り主張されていると思いますが,すべて排斥されました。
裁判官弾劾制度の手続の全体については,弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例を参照してください。
   
平成24年(訴)第1号 罷免訴追事件
判決
本 籍  岐阜県(以下,本HPでは記載省略)
住 居  大阪府枚方市(以下,本HPでは記載省略)
大阪地方裁判所判事補
華井俊樹
昭和59年9月26日生
主文
被訴追者を罷免する。
理由
第1 認定した事実
1 被訴追者の経歴
   被訴追者は、平成23年1月16日、判事補に任命され、同日付けで大阪地方裁判所判事補に補せられ、今日に至っている者である。
2 罷免事由に当たる被訴追者の行為
   被訴追者は、大阪地方裁判所判事補として勤務していた平成24年8月29日午前8時30分頃、大阪府寝屋川市早子町16番11号所在の京阪電気鉄道株式会社京阪本線(以下「京阪本線」という。)寝屋川市駅から同市萱島本町198番1号所在の同線萱島駅までの間を走行中の電車内において、乗客のAに対し、録画状態にした携帯電話機を右手に持って同女の背後からそのスカートの下に差し入れ、同スカート内の下着を動画撮影し、もって、人を著しくしゅう恥させ、かつ、人に不安を覚えさせるような方法で、公共の乗物における衣服等で覆われている人の下着を撮影したものである。
第2 証拠の標目
(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける裁判官訴追委員会請求証拠の番号を示す。)
全部の事実について
1 被訴追者の当公判廷における供述
2 「被審査裁判官華井俊樹の事情聴取書」と題する書面(乙4)
第1の1の事実について

(続きを読む...)華井俊樹裁判官の弾劾裁判―平成25年4月10日罷免判決の全文

裁判官の記録紛失に基づく分限裁判(AIリライト)

目次

第1 事件記録の紛失を理由とする分限決定

1 公表資料から確認できた5件
2 5件の事案

(1) 大阪高裁昭和55年7月17日決定
(2) 大阪高裁昭和58年3月11日決定
(3) 東京高裁昭和58年12月6日決定
(4) 東京高裁平成5年3月5日決定
(5) 東京高裁平成12年12月7日決定

第2 記録紛失と裁判官の懲戒

1 懲戒事由と処分
2 管轄,申立て及び審理
3 確定決定の官報公示

第3 伊藤達也裁判官の記録紛失

1 平成30年の紛失
2 情報公開答申で確認できる範囲
3 分限事件の有無についての確認結果

(続きを読む...)裁判官の記録紛失に基づく分限裁判(AIリライト)

20期の田中正人大阪高裁判事に対する懲戒処分(戒告)

○20期の田中正人大阪高裁判事(当時)(前職は神戸地裁所長)に対する,最高裁大法廷平成13年10月10日決定の全文は以下のとおりです。
○「分限裁判及び罷免判決の実例」も参照してください。

裁判官分限事件の裁判の公示

平成13年(分)第4号

決   定

大阪高等裁判所判事

被申立人 田中 正人

上記被申立人に対し大阪高等裁判所から裁判官分限法6条の規定による申立てがあったので,当裁判所は,被申立人に陳述の機会を与えた上,次のとおり決定する。

主 文

被申立人を戒告する。

理 由

被申立人は,平成12年7月31日から同13年9月6日まで,神戸地方裁判所長の職にあった者であるが,同年8月30日午後7時40分ころから同日午後7時53分ころまでの間にわたり,大阪市淀川区所在の阪急電鉄株式会社十三駅付近から兵庫県西宮市所在の同会社西宮北口駅付近までの間を進行中の阪急梅田駅発三宮駅行き通勤急行電車の車両内において,2人掛け座席の自席の右側に座っていた乗客の女性(当時24歳)に対し,右膝,右ふくらはぎを同人の左膝,左ふくらはぎに押し付け,右肘を同人の左肘に押し付けたものである。

上記の事実は,被申立人の履歴書,大阪高等裁判所の被申立人に対する事情聴取の報告書並びに平成13年9月18日付け,同月21日付け及び同月27日付けの大阪高等裁判所事務局長作成の各報告書により,これを認める。

被申立人の上記行為は,裁判所法49条所定の品位を辱める行状に該当する。

よって,裁判官分限法2条の規定により被申立人を戒告することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(続きを読む...)20期の田中正人大阪高裁判事に対する懲戒処分(戒告)

柳本つとむ裁判官の公表情報と裁判官分限事件の最高裁大法廷決定(AIリライト)

第1 柳本つとむ裁判官について公表資料から確認できること

1 経歴及び現在の配置

2 平成31年3月の報道と国会答弁

3 令和2年1月24日付け情報公開答申

4 公表資料から確認できる範囲

第2 裁判官分限事件の制度

1 分限事件には執務不能と懲戒があること

2 管轄,審理及び官報公示

3 政治運動の禁止と表現の自由

第3 裁判所ウェブサイトで本文を確認できる5件

1 最高裁昭和33年10月28日大法廷決定

2 寺西和史裁判官に対する戒告決定

(続きを読む...)柳本つとむ裁判官の公表情報と裁判官分限事件の最高裁大法廷決定(AIリライト)

岡口基一裁判官の第1次分限裁判―犬の返還訴訟ツイートと最高裁平成30年10月17日戒告決定(AI作成)

目次

第1 第1次分限裁判の概要第2 分限裁判の法的根拠1 裁判所法49条2 分限裁判と弾劾裁判の違い第3 戒告の原因となった投稿1 犬の返還請求訴訟2 平成30年5月17日のTwitter投稿第4 最高裁大法廷の判断1 「品位を辱める行状」の意味2 本件投稿に対する評価3 表現の自由との関係第5 3裁判官の補足意見第6 第1次分限裁判の前後にある手続第7 関係文書及び関連記事第8 出典

第1 第1次分限裁判の概要

岡口基一裁判官に対する第1次分限裁判は,犬の返還を求める民事訴訟についてTwitterに投稿した行為が,裁判所法49条の「品位を辱める行状」に当たるかが問題となった事件である。
最高裁判所大法廷は,平成30年10月17日,平成30年(分)第1号事件について戒告決定をした(民集72巻5号890頁)。

本記事はこの決定だけを扱う。令和元年のFacebook投稿等を原因とする第2次分限裁判及びその後の弾劾裁判は,別の記事で整理する。

第2 分限裁判の法的根拠
1 裁判所法49条

裁判所法49条は,裁判官に職務上の義務違反,職務懈怠又は品位を辱める行状があったときは,別に法律で定めるところにより裁判によって懲戒されると定めている。
裁判官分限法2条によれば,懲戒は戒告又は1万円以下の過料である。

2 分限裁判と弾劾裁判の違い

分限裁判による戒告又は過料と,国会に設置された裁判官弾劾裁判所による罷免は別の制度である。
本件の結論は戒告であり,罷免ではない。

第3 戒告の原因となった投稿
1 犬の返還請求訴訟

問題となったのは,飼い主であった原告が,犬を保護して育てていた被告に返還を求めた民事訴訟である。
東京高裁は,原告が犬の所有者であるとして,被告に犬の引渡しを命じた。

2 平成30年5月17日のTwitter投稿

岡口裁判官は,平成30年5月17日,この訴訟を取り上げたインターネット記事のURLとともに,公園に置き去りにされた犬を保護して育てていた人に対し,元の飼い主が返還を求めたという趣旨を投稿した。

最高裁決定は,リンク先の記事が主として被告側の言い分を記載していたこと,投稿が原告の請求を不当と評価する見方を示したこと及び記録に基づかない一面的な情報発信であったことを重視した。

第4 最高裁大法廷の判断
1 「品位を辱める行状」の意味

最高裁平成30年10月17日大法廷決定は,裁判所法49条の「品位を辱める行状」について,職務上か私生活上かを問わず,裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうとした。

2 本件投稿に対する評価

最高裁は,岡口裁判官が現職裁判官であることを広く知られた状態で投稿していたことを前提に,次の事情を指摘した。
①投稿は,判決を受けた私人である原告が不当な訴えを起こしたかのような印象を与えた。
②原告の感情を傷つけるとともに,裁判官が当事者を一方的に非難していると受け取られるおそれがあった。
③事件記録に基づかない表面的かつ一面的な情報発信であり,裁判及び裁判官に対する信頼を損なった。

その上で,投稿は「品位を辱める行状」に当たり,戒告が相当であるとした。

3 表現の自由との関係

(続きを読む...)岡口基一裁判官の第1次分限裁判―犬の返還訴訟ツイートと最高裁平成30年10月17日戒告決定(AI作成)

性犯罪を犯した裁判官の一覧(AIリライト)

目次

第1 性犯罪を犯した裁判官の一覧第2 性犯罪を犯したものの,起訴猶予処分となった裁判官第3 身体拘束中の裁判官であっても報酬を受領できること第4 裁判官が在任中に任命欠格事由に該当するに至った場合であっても,その身分を当然には失わないこと第5 関連記事その他出典1 法令2 裁判官弾劾裁判所の裁判等3 裁判例4 文献5 ウェブ資料

第1 性犯罪を犯した裁判官の一覧

以下の一覧では,刑事事件の処分・判決,懲戒処分及び弾劾裁判による罷免を区別する必要がある。刑事責任を問う手続と裁判官の罷免を判断する手続は同じではなく,出向中の検事として受けた懲戒免職も,裁判官弾劾裁判所の罷免判決とは異なる。弾劾の手続と身分保障は,弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例を参照されたい。

本稿は,裁判官弾劾裁判所の裁判,刑事事件の判決及び懲戒処分等の一次資料に基づき,性犯罪を理由として有罪判決,懲戒処分又は弾劾裁判所の罷免判決を受けた裁判官を,新しい順に整理したものである。

本稿が用いる罪名(強制わいせつ罪,準強制わいせつ罪等)は,いずれも各事件の発生当時の刑法上の罪名である。令和5年(2023年)の刑法改正により,強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪(刑法176条)に統合され,同時に,盗撮行為を直接処罰する性的姿態等撮影処罰法(正式名称は「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」,令和5年法律第67号)が新設された。以下の各事件は,いずれもこの改正前に,都道府県の迷惑防止条例違反等として処理されたものである。

新しい順に並べると,次のとおりである。

⑥ 駅ホームの階段で女性のスカート内を盗撮した59期の飯島暁(法務総合研究所教官)

平成28年8月26日,盗撮をして,その後に逮捕された(東京都迷惑防止条例違反)。
平成28年9月15日,罰金50万円の有罪判決を受けた(東京都迷惑防止条例違反)。
同日,停職3か月の懲戒処分を受けて辞職した。
復権令(令和元年10月22日政令第131号)に基づき,令和元年10月22日に復権した可能性がある(復権令は罰金刑の執行を終えた者を一括して対象とするものであり,同氏個人が実際に復権したことを公的に確認できる記録は見当たらない)。

⑤ 法務省の女子トイレ内で盗撮をした46期の近藤裕之(法務省大臣官房財産訟務管理官)

平成26年3月14日,盗撮をした(逮捕はされていない)。
平成26年5月1日,罰金50万円の有罪判決を受けた(東京都迷惑防止条例違反)。
同日,懲戒免職となった。

1 令和2年6月1日,登録番号60051番で「近藤裕之」という人が弁護士登録しました。

2 平成26年5月1日に懲戒免職された近藤裕之裁判官(46期)(出向中につき,当時の身分は検事です。)の経歴
https://t.co/nVFktZQtQQ

— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) August 6, 2020

(続きを読む...)性犯罪を犯した裁判官の一覧(AIリライト)

42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒処分(戒告)

○42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事(当時)に対する,平成30年6月28日付の名古屋高裁の懲戒処分(戒告)の全文は以下のとおりです(平成30年7月19日付の官報に載っています。)。
○山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒申立てを全員一致で議決した,平成30年6月12日の岐阜地家裁裁判官会議議事録を掲載しています。
○「分限裁判及び罷免判決の実例」も参照してください。

裁判官分限事件の裁判の公示

平成30年(分)第1号

決   定

岐阜地方裁判所判事

兼岐阜家庭裁判所判事

岐阜簡易裁判所判事

被申立人 山崎 秀尚

上記被申立人に対し岐阜地方裁判所から裁判官分限法6条の規定による申立てがあったので,当裁判所は,被申立人に陳述の機会を与えた上,次のとおり決定する。

主 文

被申立人を戒告する。

理 由

1 被申立人は,平成26年4月1日から平成30年3月31日まで名古屋地方裁判所岡崎支部判事の職にあった者であるが,その在任期間中の平成29年4月17日から平成30年3月30日までの間に,36件の民事訴訟事件について,民事訴訟法252条に違反して,判決書の原本に基づかずに判決を言い渡したものである。

上記の事実は,被申立人の履歴書,岐阜地方裁判所長作成の報告書及び名古屋地方裁判所民事首席書記官作成の報告書により,これを認める。

(続きを読む...)42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒処分(戒告)