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裁判官の分限・懲戒・弾劾

岡口基一裁判官の弾劾裁判―訴追から令和6年4月3日罷免判決まで(AI作成)

目次第1 弾劾裁判の概要第2 分限裁判と弾劾裁判の違い1 憲法上の根拠2 罷免事由3 手続の特徴第3 訴追された二つの行為群1 刑事事件の被害者遺族に関する発信2 犬の返還請求訴訟の当事者に関する発信第4 弾劾裁判所の判断1 刑事事件に関する10件の発信2 犬の返還請求訴訟に関する3件の発信3 罷免という結論4 弾劾判決が扱った13件の投稿等と判決理由の対応5 13件を最終結論に対応させた整理第5 二つの分限裁判との関係第6 罷免判決の効力と資格回復1 罷免判決の効力2 資格回復第7 関連記事第8 出典
第1 弾劾裁判の概要

裁判官訴追委員会は令和3年6月16日,岡口基一裁判官を罷免するよう裁判官弾劾裁判所に訴追した。
裁判官弾劾裁判所は,令和6年4月3日,令和3年(訴)第1号事件について罷免判決を言い渡した。

裁判官弾劾裁判所の公式記録によれば,訴追事由は,①刑事事件の被害者遺族に関する10件の発信及び②犬の返還請求訴訟の当事者に関する3件の発信の二つの行為群であった。

第2 分限裁判と弾劾裁判の違い
1 憲法上の根拠

日本国憲法78条は,裁判官は,公の弾劾によらなければ罷免されないと定めている。
裁判官の身分保障を維持しつつ,重大な非行がある場合に国会の弾劾制度によって罷免できる仕組みである。

2 罷免事由

裁判官弾劾法2条は,①職務上の義務に著しく違反し,又は職務を甚だしく怠ったとき,②その他職務の内外を問わず,裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったときを罷免事由とする。

これに対し,分限裁判は,裁判所法49条及び裁判官分限法に基づき,戒告又は1万円以下の過料を科す手続である。
懲戒処分を受けた行為が,直ちに弾劾裁判の罷免事由になるわけではない。

3 手続の特徴

裁判官訴追委員会の制度説明によれば,弾劾裁判は公開の法廷で行われ,裁判員14人のうち9人以上が出席し,罷免判決には出席裁判員の3分の2以上の賛成を要する。
弾劾裁判は一審制であり,判決に対する不服申立ての制度はない。

第3 訴追された二つの行為群
1 刑事事件の被害者遺族に関する発信

第1の行為群は,殺人事件の判決文掲載後,被害者遺族についてSNSその他で行った10件の発信である。
訴追委員会は,これらが遺族を侮辱し,又は遺族の名誉若しくは感情を傷つけるものであり,裁判官としての威信を著しく失うべき非行に当たると主張した。

2 犬の返還請求訴訟の当事者に関する発信

第2の行為群は,犬の返還請求訴訟の原告についてSNSで行った3件の発信である。
この訴訟をめぐる最初のTwitter投稿については,最高裁が平成30年10月17日に戒告決定をしていた。

第4 弾劾裁判所の判断
1 刑事事件に関する10件の発信

裁判官弾劾裁判所の公式判例要旨によれば,10件のうち,「因縁をつけている」という趣旨の文書に関する1件は非行に当たらないとされた。
残る9件は非行に当たるとされたものの,そのうち東京高裁及び訴追委員会を批判した2件は,裁判官としての威信を「著しく」失うべき非行には当たらないとされた。

その結果,残る7件が裁判官弾劾法2条2号の罷免事由に当たると判断された。

2 犬の返還請求訴訟に関する3件の発信

弾劾裁判所は,犬の返還請求訴訟に関する3件の発信をいずれも非行と評価した。

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岡口基一裁判官の第2次分限裁判―犯罪被害者遺族に関するFacebook投稿と最高裁令和2年8月26日戒告決定(AI作成)

目次第1 第2次分限裁判の概要第2 本件投稿に至る経緯1 平成29年の刑事判決紹介投稿2 令和元年11月12日のFacebook投稿第3 分限事件で審理された行為1 懲戒の原因となった事実2 最高裁が中心的に評価した点第4 最高裁大法廷の判断1 裁判官に対する信頼の毀損2 表現の自由に関する判断3 過去の注意及び戒告第5 第1次分限裁判との違い第6 その後の弾劾裁判との関係第7 関係文書及び関連記事第8 出典
第1 第2次分限裁判の概要

岡口基一裁判官に対する第2次分限裁判は,刑事事件の被害者遺族についてFacebookに投稿した行為が,裁判所法49条の「品位を辱める行状」に当たるかが問題となった事件である。
最高裁判所大法廷は,令和2年8月26日,令和2年(分)第1号事件について戒告決定をした(集民264号41頁)。

本件は,犬の返還請求訴訟に関する投稿を対象とした平成30年の第1次分限裁判とは別の事件である。

第2 本件投稿に至る経緯
1 平成29年の刑事判決紹介投稿

岡口裁判官は,平成29年12月13日頃,強盗殺人及び強盗強姦未遂事件の東京高裁判決を閲覧できる裁判所ウェブサイトのURLとともに,被告人の性的嗜好及び犯行の猟奇性に着目した文言をTwitterに投稿した。
最高裁決定は,この投稿を「前回投稿」と呼び,法律上の論点を周知するものではなく,閲覧者の性的好奇心に訴えて興味本位で判決を閲覧するよう誘導するものであったと評価した。

被害者の両親は平成29年12月26日,東京高裁に対し,被害者の尊厳に対する配慮を欠くなどとして処分を求める要望書を提出した。
東京高裁長官は平成30年3月15日,前回投稿について書面による厳重注意をした。

2 令和元年11月12日のFacebook投稿

岡口裁判官は,令和元年11月12日,遺族が東京高裁事務局及び毎日新聞によって洗脳されているという趣旨の文章をFacebookに投稿し,一般の閲覧に供した。

最高裁決定は,この表現が遺族を侮辱する内容であり,遺族の感情をさらに傷つけるものであったと認定した。

第3 分限事件で審理された行為
1 懲戒の原因となった事実

第2次分限裁判で懲戒の原因とされたのは,令和元年11月12日のFacebook投稿である。
過去の刑事判決紹介投稿,遺族の抗議,厳重注意及び第1次分限裁判の戒告は,本件投稿に至る経緯及び懲戒の相当性を判断する事情として記載された。
裁判官分限法6条は,懲戒の裁判手続が管轄裁判所への申立てによって開始されることを定めている。

2 最高裁が中心的に評価した点

最高裁は,とりわけ遺族を洗脳されたと表現したFacebook投稿を重く評価した。
遺族が以前の情報発信によって精神的苦痛を受け,東京高裁に苦情を申し入れていた経緯を知りながら,更に遺族を侮辱する発信をした点が問題とされた。

第4 最高裁大法廷の判断
1 裁判官に対する信頼の毀損

最高裁令和2年8月26日大法廷決定は,Facebook投稿が遺族の人格を軽視し,遺族に二次的な被害を与えるものであると評価した。

岡口裁判官は,現職裁判官であることを明らかにして情報発信を続けていた。
そのため,投稿は個人間の発言にとどまらず,裁判官が事件被害者の遺族を侮辱したものとして,裁判官及び裁判所に対する国民の信頼を損なうと判断された。

2 表現の自由に関する判断

決定は,裁判官にも一市民として表現の自由が保障されることを前提とした。
もっとも,本件投稿は具体的事件の遺族を侮辱し,その感情をさらに傷つけるものであり,裁判官に許容される表現の範囲を逸脱したとした。

(続きを読む...)岡口基一裁判官の第2次分限裁判―犯罪被害者遺族に関するFacebook投稿と最高裁令和2年8月26日戒告決定(AI作成)

鬼頭史郎判事補事件―ニセ電話,身分帳閲覧,裁判官弾劾裁判所の罷免判決,資格回復及び弁護士登録(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 2つの事件と最高裁判所の調査1 ニセ電話事件2 宮本身分帳閲覧事件3 最高裁判所の事情聴取と調査委員会4 最高裁判所の訴追請求第3 国会の対応1 証人喚問と宣誓の拒絶2 宣誓拒絶の告発についての不起訴第4 裁判官訴追委員会と裁判官弾劾裁判所1 訴追2 職務停止と被訴追者が出頭しないままの審理3 罷免判決の理由4 罷免の効果5 裁判官弾劾法規の見直しの契機第5 刑事事件1 ニセ電話事件(軽犯罪法違反)2 宮本身分帳閲覧事件の付審判3 第一審の無罪判決と東京高等裁判所昭和54年判決4 最高裁判所昭和57年1月28日決定5 差戻し後の有罪判決の確定と特赦第6 資格回復の裁判第7 弁護士登録の拒絶1 登録請求と日本弁護士連合会の裁決2 東京高等裁判所平成3年9月4日判決第8 山本祐司『最高裁物語(下巻)』の記述との関係第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 国会会議録4 公的資料5 文献6 調査範囲
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,昭和51年に発覚した鬼頭史郎京都地方裁判所判事補をめぐる一連の事件について,最高裁判所,国会,裁判官訴追委員会,裁判官弾劾裁判所,刑事裁判所及び弁護士会の手続を時系列で整理する。
対象となる行為は,検事総長を名乗って内閣総理大臣に電話をかけたいわゆるニセ電話事件と,網走刑務所で身分帳簿を閲覧したいわゆる宮本身分帳閲覧事件の2つである。
事実は,国会会議録,裁判官弾劾裁判所のウェブサイト及び裁判所ウェブサイトに掲載された裁判例で確認できたものに限っている。
裁判官弾劾裁判所のウェブサイトと裁判所ウェブサイトの裁判例は当事者の氏名を伏せているため,本記事では,国会会議録で確認できる日付,裁判所及び事件の内容と一致することを確かめた上で,本件の裁判として紹介している。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。

2 結論

①昭和51年10月21日と22日の新聞報道を受けて,最高裁判所は事務総局に調査委員会を設けて本人から事情を聴取し,同年11月19日,裁判官訴追委員会に罷免の訴追を請求した。
②最高裁判所の訴追請求の理由は,ニセ電話の録音テープを新聞社の者に聞かせたことに限られており,電話をかけたのが本人であることや,網走刑務所での身分帳簿の入手は理由に含まれていなかった。
③裁判官訴追委員会は昭和52年2月2日に訴追状を提出し,裁判官弾劾裁判所は,被訴追者が出頭しないまま審理を進め,同年3月23日,裁判官弾劾法2条2号に当たるとして罷免の判決を言い渡した。
④ニセ電話については,軽犯罪法1条15号の官職の詐称の罪で起訴され,拘留29日の有罪判決が,昭和56年11月20日の最高裁判所の上告棄却決定を経て確定した。
⑤身分帳簿の閲覧については,検察官は起訴しなかったが,東京高等裁判所の付審判決定により公務員職権濫用罪で審判に付され,第一審の無罪判決,控訴審の破棄差戻し判決,最高裁判所昭和57年1月28日決定を経て,懲役10月執行猶予2年の有罪判決が昭和62年12月に確定した。
⑥この有罪判決は,執行猶予期間中の平成元年7月11日の特赦により,有罪の言渡しの効力を失った。
⑦裁判官弾劾裁判所は,昭和60年5月9日,資格回復の決定をした。
⑧しかし,平成元年11月の弁護士名簿への登録請求について,日本弁護士連合会は,平成2年7月24日,弁護士会の秩序又は信用を害するおそれがある者に当たるとして審査請求を棄却し,東京高等裁判所平成3年9月4日判決もこの裁決を適法とした。

第2 2つの事件と最高裁判所の調査
1 ニセ電話事件

裁判官弾劾裁判所のウェブサイトによれば,昭和51年10月22日付けの読売新聞朝刊が,京都地方裁判所の判事補が同年8月4日に検事総長の名前をかたって内閣総理大臣に指揮権発動を促す電話をかけていたと報じた。
のちに渋谷簡易裁判所に起訴された公訴事実の要旨は,法務省刑事局公安課長の国会答弁によれば,検事総長でないのに,昭和51年8月4日ころ,東京都渋谷区の当時の内閣総理大臣三木武夫氏の自宅に電話をかけ,検事総長の布施であると称して,ロッキード事件に関連して勾留中であった田中角榮元内閣総理大臣の処分等について直接裁断を仰ぎたい旨を申し向けるなどして,検事総長の官職を詐称したというものである。
その電話の内容は録音されており,裁判官弾劾裁判所の訴追の事由によれば,鬼頭判事補は,その録音テープを新聞記者に聞かせた。

最高裁判所の事情聴取に対し,鬼頭判事補は電話をかけたこと自体を否定した。
勝見嘉美最高裁判所人事局長は,昭和51年10月26日の衆議院法務委員会で,「鬼頭判事補は、三木総理にそのような電話をしてはいないということでございました。」と答弁している。

2 宮本身分帳閲覧事件

ニセ電話の報道の前日である昭和51年10月21日の朝日新聞朝刊は,網走刑務所の問題に関する記事を掲載したが,その記事は裁判官とするだけで,氏名を記載していなかった。
勝見人事局長の答弁によれば,同日,衆議院議員からこの裁判官は鬼頭判事補であるとの連絡があり,京都地方裁判所長が事情を聴いたところ,本人はその裁判官が自分であることを認めた。

後に確定した刑事判決の認定は,東京高等裁判所平成3年9月4日判決に引用されている。
それによれば,鬼頭判事補は,昭和49年7月22日ころから同月24日までの間,網走刑務所に電話をかけて,東京地方裁判所八王子支部の判事補であると名乗り,治安裁判の調査や研究をしているなどと言って,当時の日本共産党中央委員会幹部会委員長の身分帳簿等の資料の閲覧等を申し入れた。
鬼頭判事補は,同月24日に網走刑務所を訪れ,「東京地方裁判所裁判官」の肩書を付した名刺を渡した上,身分帳簿を閲覧し,携行した録音機でその内容を音読して録音し,写真撮影の許可も得て撮影した。

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安川輝夫簡裁判事の失職と裁判官弾劾法41条の2―訴追請求中の町長選立候補で退職手当が支払われた事件と法改正(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 事件の経過1 担当事件の女性被告人との接触2 最高裁判所長官による訴追請求3 町長選挙への立候補と失職4 訴追委員会の審査打切り第3 退職手当と年金1 全額支払となる旨の答弁2 支払を控える余地の検討3 退職手当の額第4 刑事事件1 捜査2 最高裁判所昭和60年7月16日決定第5 国会の議論と改正の経緯1 政府と最高裁判所の当初の反応2 改正の方法をめぐる議論3 最高裁判所事務当局の案4 裁判員会議の決定と改正の依頼5 小委員会での審議6 可決と公布7 簡易裁判所判事の推薦基準の見直し第6 裁判官弾劾法41条の2の内容1 条文2 適用の効果3 適用される場面と適用されない場面4 同時に改正された15条第7 罷免と退職手当の関係1 罷免された場合2 公職選挙法90条による退職3 退職後の刑事処分第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 国会会議録4 公的資料5 文献6 調査範囲
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,昭和55年,最高裁判所長官から罷免の訴追を求められていた小倉簡易裁判所判事の安川輝夫(以下「安川簡裁判事」という。)が福岡県久山町長選挙に立候補して裁判官の身分を失い,裁判官訴追委員会が審査を打ち切った経緯と,これを受けた裁判官弾劾法41条の2の新設までを整理するものである。
経緯は,国会会議録,裁判官弾劾裁判所の公表資料,衆議院の制定法律情報及び裁判所ウェブサイトの最高裁判所決定で確認した。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。
山本祐司『最高裁物語(下巻)』(講談社+α文庫,1997年)の記述は,同書によるものであることを示して補足的に用いた。

2 結論

①昭和55年9月10日,最高裁判所長官は,担当する刑事事件の女性被告人と私的に接触した安川簡裁判事について,裁判官訴追委員会に罷免の訴追を求めた。
②安川簡裁判事は,同年10月12日に久山町長選挙に立候補したため,公職選挙法90条により裁判官の身分を失い,訴追委員会は同月17日に審査打切りの決定をした。
③弾劾裁判による罷免がなかったため,退職手当と共済年金は法律に従って支払われることになり,最高裁判所は支払を控える解釈の余地を検討したものの,年度末に支払を決定した。
④国会では,罷免の訴追を逃れるための立候補を防ぐ方法として,公職選挙法90条を改める方法と裁判官弾劾法を改める方法が議論され,最高裁判所事務当局の案を骨格とする裁判官弾劾法の改正が選ばれた。
⑤裁判官弾劾法の一部を改正する法律(昭和56年法律第66号)は,衆議院議院運営委員長が提出した議員立法であり,衆参両院で全会一致により可決され,昭和56年6月5日に公布され,同日施行された。
⑥新設された裁判官弾劾法41条の2により,最高裁判所から罷免の訴追を求められている裁判官と訴追委員会から罷免の訴追をされている裁判官には,公職選挙法90条が適用されなくなった。
⑦もっとも,最高裁判所が訴追請求をする前の段階での立候補は同条の対象外であり,その場合の退職手当については,現行の国家公務員退職手当法12条1項2号及び14条1項が支給制限の根拠となり得る。
⑧安川簡裁判事は刑事事件でも起訴され,最高裁判所第三小法廷昭和60年7月16日決定は,担当する窃盗被告事件の女性被告人を喫茶店に呼び出した行為が公務員職権濫用罪に当たるとした原判断を是認し,上告を棄却した。

第2 事件の経過
1 担当事件の女性被告人との接触

最高裁判所第三小法廷昭和60年7月16日決定(昭和58年(あ)第1309号,刑集39巻5号245頁)が示す第一審判決の認定(原判決が是認したもの)によれば,被告人は小倉簡易裁判所判事で,女性被告人に対する窃盗被告事件の審理を担当していた。
同事件の次回公判期日は,被害弁償を待つために昭和55年7月16日に指定されていた。
被告人は,同月11日午後8時40分ころ,自己との交際を求める意図で女性被告人に電話をし,被害弁償のことで会いたいなどと言って呼び出した。
女性被告人は,被告事件について出頭を求められたものと誤信し,同日午後9時ころから9時30分ころまで,駅付近の喫茶店で被告人と同席した。

国会では,勝見嘉美最高裁判所事務総局人事局長が,昭和55年10月15日の衆議院法務委員会で,最高裁判所が把握した事実を説明した。
その説明によれば,9月6日の第1回事情聴取で,安川簡裁判事は,担当する刑事事件の女性被告人と7月11日,同月15日及び8月4日の3回にわたり喫茶店で面会したことは認めたが,旅館に行ったことと5万円を渡したことは否認した。
しかし,9月8日の第2回事情聴取で,安川簡裁判事は,7月15日に女性被告人と旅館に行って情交関係を持ち,別れる際に5万円を手渡したことを認めた。

2 最高裁判所長官による訴追請求

勝見人事局長は,上記の事情聴取の後,最高裁判所長官が訴追委員会に対して罷免の訴追を求めたと説明した。
昭和56年5月27日の衆議院議院運営委員会国会法改正等に関する小委員会で,大西勝也最高裁判所事務総局人事局長は,その日付を昭和55年9月10日と述べている。
裁判官弾劾裁判所の公表資料も,昭和55年9月10日に最高裁判所長官が訴追委員会に訴追請求をしたとしている。
当時の裁判官弾劾法15条3項は,罷免の訴追を求める義務を「最高裁判所長官」に負わせていた(後記第6の4)。

(続きを読む...)安川輝夫簡裁判事の失職と裁判官弾劾法41条の2―訴追請求中の町長選立候補で退職手当が支払われた事件と法改正(AI作成)

裁判官弾劾制度の仕組み―訴追請求,訴追委員会の調査・議決,弾劾裁判所の裁判,罷免の効果及び資格回復(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 憲法と法律の規定1 憲法の規定2 国会法と弾劾法3 分限裁判との違い第3 罷免の事由1 二つの類型2 訴追請求で主張された事実第4 訴追の請求と訴追委員会の手続1 訴追の請求ができる者2 最高裁判所の請求義務と報告義務3 訴追委員会の職権による調査4 訴追委員会の構成と議決5 訴追期間6 不訴追決定に対する不服第5 弾劾裁判所の手続1 構成と職権の独立2 訴追状の提出から審理まで3 罷免の裁判4 退官による手続回避の防止第6 罷免の効果と資格回復1 罷免の効果2 資格回復の裁判第7 これまでの事件1 罷免訴追事件2 訴追猶予の決定3 資格回復裁判請求事件第8 司法試験との関係第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 公的資料3 調査範囲
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,裁判官を罷免するための弾劾の手続を,訴追の請求から,裁判官訴追委員会(以下「訴追委員会」という。)の調査・議決,裁判官弾劾裁判所(以下「弾劾裁判所」という。)の裁判,罷免の効果及び資格回復の裁判まで,条文の順に整理するものである。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。
これまでの事件の内容と件数は,同日に弾劾裁判所及び訴追委員会の公式サイトで確認した。
本記事でいう「弾劾法」は裁判官弾劾法を指す。

2 結論

①裁判官は,心身の故障のために職務を執ることができないと裁判で決定された場合を除き,公の弾劾によらなければ罷免されず,弾劾は,国会が両議院の議員で組織する弾劾裁判所が行う。
②罷免の事由は,職務上の義務に著しく違反し又は職務を甚だしく怠ったとき(弾劾法2条1号)と,職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき(同条2号)の二つである。
③訴追委員会に罷免の訴追を求める請求は,何人もすることができ,最高裁判所は,罷免の事由があると思料するときは請求をしなければならない。
④もっとも,訴追委員会は,請求がなくても,罷免の事由があると思料するときは調査しなければならず,最高裁判所の請求は訴追の要件とされていない。
⑤罷免の訴追と訴追の猶予は,出席した訴追委員の3分の2以上の多数で決し,罷免の裁判は,審理に関与した裁判員の3分の2以上の多数の意見による。
⑥弾劾裁判所と訴追委員会は,国会の閉会中でも職権を行うことができる。
⑦罷免された者は,裁判官・検察官に任命されることができず,弁護士となる資格も失うが,罷免の裁判の宣告の日から5年を経過し相当とする事由があるとき等には,本人の請求により,弾劾裁判所は資格回復の裁判をすることができる。
⑧弾劾裁判所の公式サイトによれば,同裁判所が判断した罷免訴追事件は10件(うち罷免8件)であり,資格回復裁判請求事件は7件(うち資格回復4件)である。

第2 憲法と法律の規定
1 憲法の規定

憲法78条前段は,「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。」と定める。
憲法64条1項は,「国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。」と定め,同条2項は,「弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。」と定める。
これを受けて,裁判所法48条は,裁判官は,公の弾劾又は国民の審査に関する法律による場合及び別に法律で定めるところにより心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合を除いては,その意思に反して,免官,転官,転所,職務の停止又は報酬の減額をされることはないと定める。

2 国会法と弾劾法

国会法125条1項は,裁判官の弾劾は,各議院においてその議員の中から選挙された同数の裁判員で組織する弾劾裁判所がこれを行うと定める。
同法126条1項は,裁判官の罷免の訴追は,各議院においてその議員の中から選挙された同数の訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行うと定める。
同法127条は,弾劾裁判所の裁判員は,同時に訴追委員となることができないと定めている。
訴追する機関と裁判する機関が分けられ,同じ議員が両方を兼ねることはできない仕組みである。
弾劾法1条は,裁判官の弾劾については,国会法に定めるもののほか,弾劾法の定めるところによるとしている。

3 分限裁判との違い

裁判官の懲戒は,弾劾とは別の制度である。
裁判官分限法2条は,裁判官の懲戒は戒告又は1万円以下の過料とすると定め,同法3条・4条により,地方裁判所等の裁判官については高等裁判所の5人の合議体が,最高裁判所及び高等裁判所の裁判官については最高裁判所の大法廷が裁判をする。

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裁判官に対する罷免判決と退職手当

目次
1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い
2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準
3 裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟
4 公務員に対する退職手当の不支給が適法であるとした最高裁令和5年6月27日判決等
5 関連記事その他

1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い
(1) 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には以下の記載があります。
① 憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。
② 現行法においても、裁判官弾劾法(昭和二十二年法律第百三十七号)第三十七条の規定により罷免されて裁判官の身分を喪失した者については、最高裁判所は、国家公務員退職手当法第十二条第一項第一号の規定により、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。また、罷免以外の事由により裁判官を退官した者についても、最高裁判所は、同法第十四条第一項第一号の規定により、その者が裁判官在任中の行為について禁錮以上の刑に処せられたとき、又は同項第三号の規定により、最高裁判所においてその者が裁判官在任中に裁判官弾劾法第二条に規定する罷免事由に該当する行為をしたと認めたときは、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。
③ 最近二十年間で、国家公務員退職手当法の規定による退職手当の支給を受けなかった者は、合計三人であり、うち二人は、裁判官弾劾法第三十七条の規定により罷免されたため、国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第九十五号)による改正前の国家公務員退職手当法第八条第一項第一号の規定により退職手当の支給を受けなかった者であり、うち一人は、任期を満了して裁判官を退官したが退職手当請求権を放棄したため、退職手当の支給を受けなかった者である。
(2) 国家公務員退職手当法12条(懲戒免職等処分を受けた場合等の退職手当の支給制限)は以下のとおりです。
① 退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支払を受ける権利を承継した者)に対し、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる。
一 懲戒免職等処分を受けて退職をした者
二 国家公務員法第七十六条の規定による失職又はこれに準ずる退職をした者
② 退職手当管理機関は、前項の規定による処分を行うときは、その理由を付記した書面により、その旨を当該処分を受けるべき者に通知しなければならない。
③ 退職手当管理機関は、前項の規定による通知をする場合において、当該処分を受けるべき者の所在が知れないときは、当該処分の内容を官報に掲載することをもつて通知に代えることができる。この場合においては、その掲載した日から起算して二週間を経過した日に、通知が当該処分を受けるべき者に到達したものとみなす。

2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準
(1) 国家公務員退職手当法施行令17条(一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする場合に勘案すべき事情)は以下のとおりです。
    法第十二条第一項に規定する政令で定める事情は、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者の勤務の状況、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違に至つた経緯、当該非違後における当該退職をした者の言動、当該非違が公務の遂行に及ぼす支障の程度並びに当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響とする。
(2) 国家公務員退職手当法の運用方針(昭和60年4月30日総人第261号)には以下の記載があります。
第十二条関係
一 非違の発生を抑止するという制度目的に留意し、一般の退職手当等の全部を支給しないこととすることを原則とするものとする。
二 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることを検討する場合は、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者が行った非違の内容及び程度」について、次のいずれかに該当する場合に限定する。その場合であっても、公務に対する国民の信頼に及ぼす影響に留意して、慎重な検討を行うものとする。
イ 停職以下の処分にとどめる余地がある場合に、特に厳しい措置として懲戒免職等処分とされた場合
ロ 懲戒免職等処分の理由となった非違が、正当な理由がない欠勤その他の行為により職場規律を乱したことのみである場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ハ 懲戒免職等処分の理由となった非違が過失(重過失を除く。)による場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ニ 過失(重過失を除く。)により禁錮以上の刑に処せられ、執行猶予を付された場合であって、特に参酌すべき情状のある場合

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昭和27年4月発覚の刑事裁判官の収賄事件(弾劾裁判は実施されず,在宅事件として執行猶予付きの判決が下り,元裁判官は執行猶予期間満了直後に弁護士登録をした。)

目次
第1 荒木辰生名古屋地裁判事の依願退官及び在宅起訴
第2 昭和27年7月当時の,国会への報告内容
第3 荒木辰生 元裁判官の収賄事件に関する名古屋地裁昭和29年7月23日判決
第4 荒木辰生 元裁判官等のその後
第5 荒木辰生 元裁判官の収賄事件については判決原本しか保存されなかったこと
第6 裁判官に罷免の事由がある場合,最高裁判所に対する通知義務があること
第7 関連記事その他

第1 荒木辰生名古屋地裁判事の依願退官及び在宅起訴
1(1)ア 荒木辰生(昭和27年4月2日依願退官)は,名古屋地裁の刑事単独部で刑事事件を担当していた際,自分が担当する労働基準法違反,強盗,関税法違反被告事件について,それぞれ被告人の親族など縁故者から有利寛大な処分をされたい旨の請託を受け,現金及び飲食合計3万円相当の賄賂を収受した疑いにより,昭和27年7月16日,収賄事件として在宅起訴されました。
イ 名古屋地裁は,荒木辰生 元裁判官に対し,昭和29年7月23日,懲役1年執行猶予3年,追徴金1万2031円の判決を下し,当該判決は同年8月7日に確定しました。
(2) 名古屋地検の捜査が進んでいることを察知した荒木辰生裁判官は,昭和27年3月27日に辞表を提出し,当時の名古屋地裁所長は,裁判官会議に付することもなく,収賄容疑について最高裁判所に伝えることもなく,荒木辰生裁判官の辞表を最高裁判所に伝達しましたから,同年4月2日付で依願退官が発令されました。
 ただし,荒木辰生裁判官は,依願退官を伝えられた昭和27年4月4日まで刑事裁判官としての職務を続けていましたから,同月2日から同月4日までに言い渡した判決については,その後,名古屋高裁が,裁判官でない者の行為として無効であるとして破棄差戻しとしました。
(3) 汚れた法衣111頁ないし138頁に詳しい経緯が書いてあります。

汚れた法衣-ドキュメント司法記者の表紙です。

第2 昭和27年7月当時の,国会への報告内容
・ 伊藤修 参議院法務委員会理事は,昭和27年7月28日の参議院法務委員会において以下の報告をしています(ナンバリングを追加したり,事件関係者の氏名を匿名にしたりしています。)。
① 名古屋地裁荒木元判事の汚職容疑事件について、第一に、その調査の経過を御報告申上げます。
 本年四月十九日付中部日本新聞紙上に、名古屋地方裁判所荒木辰生判事の汚職容疑に関する記事が大きく掲載せられ、世人の注目を惹いたところであるが、当委員会においても、問題の重大性に鑑み、これを重視し、五月九日の委員会において伊藤委員より最高裁判所事務総局鈴木人事局長に対し、本件について質疑が行われた。
 委員会においては、本件について更に詳細にこれを調査し、その真相を究明するために、現地に委員を派遣することを決定した。
 かくて五月十四日伊藤、中山の両委員は名古屋に赴き、名古屋高等裁判所、同地方裁判所において、それぞれ長官並に所長より、名古屋高等検察庁、同地方検察庁において検事長及び検事正より詳細に事情を聽取した。
 当時本件は名古屋地方検察庁において捜査中で同庁では、荒木元判事の汚職容疑について、すでに相当程度の確証を挙げてはいたのであるが、なおまだこれを起訴すべきや否やについては決定を見ていなかつた。よつてこの処分が決定するまでは、本件についての報告を留保するのが妥当なりと認め、これを留保してきたのであるが、法務府よりの通知によれば、名古屋地方検察庁は去る七月十六日、荒木辰生を收賄被疑によつて起訴したことが明らかとなつた。よつてここに本件について報告に及ぶものである。
② 二、事件の概要
 名古屋地方裁判所元判事荒木辰生は、昭和四年高文司法科試験に合格、同五年千葉弁護士会に登録、弁護士を開業、同十年判事に任ぜられ、以来、東京、金沢、安濃津、名古屋各地方裁判所に勤務し、昭和十九年に至り陸軍司政官としてスマトラに赴き、以来昭和二十一年十月帰国するまで南方各地に在勤し、同月帰国と同時に判事に任ぜられ、名古屋地方裁判所岡崎支部に勤務、昭和二十二年十一月名古屋地方裁判所に転勤、昭和二十七年四月二日依願退官するまで、同庁刑事単独部において判事として勤務したものである。
 荒木は別添名古屋高等検察庁検事長藤原末作より木村法務総裁宛の昭和二十七年七月十日付日記秘第一八四号写記載の通り
 (一)昭和二十五年十一月十七日名古屋地方裁判所刑事単独部に係属中の◯◯◯株式会社名古屋工場の工場長Aに対する労働基準法違反被告事件審理に関し、同事件の当初担当判事が、同二十六年三月十五日同裁判所刑事会議部に転出したるため、同事件の配填替えを受け、その審理を担当するに至るとともに、同事件の被告人Aが自己に対する裁判について、有利寛大なる判決を受けたいという趣旨のもとに行うものであることを知り乍ら、同年三月以降六月頃までの間に、名古屋市所在の旅館◯◯◯において、二十一回に亘り酒食の饗応を受け、同年六月二十五日言渡したる判決においては、右Aに無罪を言渡し、更に判決言渡当日たる六月二十五日及び同月二十九日頃の二回に亘つて、同じく◯◯◯において、Aより酒食の饗応を受け

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裁判官の記録紛失に基づく分限裁判(AIリライト)

目次

第1 事件記録の紛失を理由とする分限決定

1 公表資料から確認できた5件
2 5件の事案

(1) 大阪高裁昭和55年7月17日決定
(2) 大阪高裁昭和58年3月11日決定
(3) 東京高裁昭和58年12月6日決定
(4) 東京高裁平成5年3月5日決定
(5) 東京高裁平成12年12月7日決定

第2 記録紛失と裁判官の懲戒

1 懲戒事由と処分
2 管轄,申立て及び審理
3 確定決定の官報公示

第3 伊藤達也裁判官の記録紛失

1 平成30年の紛失
2 情報公開答申で確認できる範囲
3 分限事件の有無についての確認結果

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柳本つとむ裁判官の公表情報と裁判官分限事件の最高裁大法廷決定(AIリライト)

第1 柳本つとむ裁判官について公表資料から確認できること

1 経歴及び現在の配置

2 平成31年3月の報道と国会答弁

3 令和2年1月24日付け情報公開答申

4 公表資料から確認できる範囲

第2 裁判官分限事件の制度

1 分限事件には執務不能と懲戒があること

2 管轄,審理及び官報公示

3 政治運動の禁止と表現の自由

第3 裁判所ウェブサイトで本文を確認できる5件

1 最高裁昭和33年10月28日大法廷決定

2 寺西和史裁判官に対する戒告決定

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岡口基一裁判官の第1次分限裁判―犬の返還訴訟ツイートと最高裁平成30年10月17日戒告決定(AI作成)

目次第1 第1次分限裁判の概要第2 分限裁判の法的根拠1 裁判所法49条2 分限裁判と弾劾裁判の違い第3 戒告の原因となった投稿1 犬の返還請求訴訟2 平成30年5月17日のTwitter投稿第4 最高裁大法廷の判断1 「品位を辱める行状」の意味2 本件投稿に対する評価3 表現の自由との関係第5 3裁判官の補足意見第6 第1次分限裁判の前後にある手続第7 関係文書及び関連記事第8 出典
第1 第1次分限裁判の概要

岡口基一裁判官に対する第1次分限裁判は,犬の返還を求める民事訴訟についてTwitterに投稿した行為が,裁判所法49条の「品位を辱める行状」に当たるかが問題となった事件である。
最高裁判所大法廷は,平成30年10月17日,平成30年(分)第1号事件について戒告決定をした(民集72巻5号890頁)。

本記事はこの決定だけを扱う。令和元年のFacebook投稿等を原因とする第2次分限裁判及びその後の弾劾裁判は,別の記事で整理する。

第2 分限裁判の法的根拠
1 裁判所法49条

裁判所法49条は,裁判官に職務上の義務違反,職務懈怠又は品位を辱める行状があったときは,別に法律で定めるところにより裁判によって懲戒されると定めている。
裁判官分限法2条によれば,懲戒は戒告又は1万円以下の過料である。

2 分限裁判と弾劾裁判の違い

分限裁判による戒告又は過料と,国会に設置された裁判官弾劾裁判所による罷免は別の制度である。
本件の結論は戒告であり,罷免ではない。

第3 戒告の原因となった投稿
1 犬の返還請求訴訟

問題となったのは,飼い主であった原告が,犬を保護して育てていた被告に返還を求めた民事訴訟である。
東京高裁は,原告が犬の所有者であるとして,被告に犬の引渡しを命じた。

2 平成30年5月17日のTwitter投稿

岡口裁判官は,平成30年5月17日,この訴訟を取り上げたインターネット記事のURLとともに,公園に置き去りにされた犬を保護して育てていた人に対し,元の飼い主が返還を求めたという趣旨を投稿した。

最高裁決定は,リンク先の記事が主として被告側の言い分を記載していたこと,投稿が原告の請求を不当と評価する見方を示したこと及び記録に基づかない一面的な情報発信であったことを重視した。

第4 最高裁大法廷の判断
1 「品位を辱める行状」の意味

最高裁平成30年10月17日大法廷決定は,裁判所法49条の「品位を辱める行状」について,職務上か私生活上かを問わず,裁判官に対する国民の信頼を損ね,又は裁判の公正を疑わせるような言動をいうとした。

2 本件投稿に対する評価

最高裁は,岡口裁判官が現職裁判官であることを広く知られた状態で投稿していたことを前提に,次の事情を指摘した。
①投稿は,判決を受けた私人である原告が不当な訴えを起こしたかのような印象を与えた。
②原告の感情を傷つけるとともに,裁判官が当事者を一方的に非難していると受け取られるおそれがあった。
③事件記録に基づかない表面的かつ一面的な情報発信であり,裁判及び裁判官に対する信頼を損なった。

その上で,投稿は「品位を辱める行状」に当たり,戒告が相当であるとした。

3 表現の自由との関係

決定は,裁判官にも一市民として表現の自由が保障されることを前提とした。

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42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒処分(戒告)

○42期の山崎秀尚岐阜地家裁判事(当時)に対する,平成30年6月28日付の名古屋高裁の懲戒処分(戒告)の全文は以下のとおりです(平成30年7月19日付の官報に載っています。)。
○山崎秀尚岐阜地家裁判事に対する懲戒申立てを全員一致で議決した,平成30年6月12日の岐阜地家裁裁判官会議議事録を掲載しています。
○「分限裁判及び罷免判決の実例」も参照してください。

裁判官分限事件の裁判の公示

平成30年(分)第1号

決   定

岐阜地方裁判所判事

兼岐阜家庭裁判所判事

岐阜簡易裁判所判事

被申立人 山崎 秀尚

上記被申立人に対し岐阜地方裁判所から裁判官分限法6条の規定による申立てがあったので,当裁判所は,被申立人に陳述の機会を与えた上,次のとおり決定する。

主 文

被申立人を戒告する。

理 由

1 被申立人は,平成26年4月1日から平成30年3月31日まで名古屋地方裁判所岡崎支部判事の職にあった者であるが,その在任期間中の平成29年4月17日から平成30年3月30日までの間に,36件の民事訴訟事件について,民事訴訟法252条に違反して,判決書の原本に基づかずに判決を言い渡したものである。

上記の事実は,被申立人の履歴書,岐阜地方裁判所長作成の報告書及び名古屋地方裁判所民事首席書記官作成の報告書により,これを認める。

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