目次
1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い
2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準
3 裁判所の機関の権限に属する事項の処分に係る抗告訴訟
4 公務員に対する退職手当の不支給が適法であるとした最高裁令和5年6月27日判決等
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1 罷免判決が出た場合の裁判官の退職手当の取扱い
(1) 参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書(平成21年4月24日付)には以下の記載があります。
① 憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。
② 現行法においても、裁判官弾劾法(昭和二十二年法律第百三十七号)第三十七条の規定により罷免されて裁判官の身分を喪失した者については、最高裁判所は、国家公務員退職手当法第十二条第一項第一号の規定により、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。また、罷免以外の事由により裁判官を退官した者についても、最高裁判所は、同法第十四条第一項第一号の規定により、その者が裁判官在任中の行為について禁錮以上の刑に処せられたとき、又は同項第三号の規定により、最高裁判所においてその者が裁判官在任中に裁判官弾劾法第二条に規定する罷免事由に該当する行為をしたと認めたときは、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。
③ 最近二十年間で、国家公務員退職手当法の規定による退職手当の支給を受けなかった者は、合計三人であり、うち二人は、裁判官弾劾法第三十七条の規定により罷免されたため、国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第九十五号)による改正前の国家公務員退職手当法第八条第一項第一号の規定により退職手当の支給を受けなかった者であり、うち一人は、任期を満了して裁判官を退官したが退職手当請求権を放棄したため、退職手当の支給を受けなかった者である。
(2) 国家公務員退職手当法12条(懲戒免職等処分を受けた場合等の退職手当の支給制限)は以下のとおりです。
① 退職をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該退職に係る退職手当管理機関は、当該退職をした者(当該退職をした者が死亡したときは、当該退職に係る一般の退職手当等の額の支払を受ける権利を承継した者)に対し、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる。
一 懲戒免職等処分を受けて退職をした者
二 国家公務員法第七十六条の規定による失職又はこれに準ずる退職をした者
② 退職手当管理機関は、前項の規定による処分を行うときは、その理由を付記した書面により、その旨を当該処分を受けるべき者に通知しなければならない。
③ 退職手当管理機関は、前項の規定による通知をする場合において、当該処分を受けるべき者の所在が知れないときは、当該処分の内容を官報に掲載することをもつて通知に代えることができる。この場合においては、その掲載した日から起算して二週間を経過した日に、通知が当該処分を受けるべき者に到達したものとみなす。
2 退職手当の全部又は一部を支給しないこととするかどうかの基準
(1) 国家公務員退職手当法施行令17条(一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする場合に勘案すべき事情)は以下のとおりです。
法第十二条第一項に規定する政令で定める事情は、当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者の勤務の状況、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違に至つた経緯、当該非違後における当該退職をした者の言動、当該非違が公務の遂行に及ぼす支障の程度並びに当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響とする。
(2) 国家公務員退職手当法の運用方針(昭和60年4月30日総人第261号)には以下の記載があります。
第十二条関係
一 非違の発生を抑止するという制度目的に留意し、一般の退職手当等の全部を支給しないこととすることを原則とするものとする。
二 一般の退職手当等の一部を支給しないこととする処分にとどめることを検討する場合は、施行令第十七条に規定する「当該退職をした者が行った非違の内容及び程度」について、次のいずれかに該当する場合に限定する。その場合であっても、公務に対する国民の信頼に及ぼす影響に留意して、慎重な検討を行うものとする。
イ 停職以下の処分にとどめる余地がある場合に、特に厳しい措置として懲戒免職等処分とされた場合
ロ 懲戒免職等処分の理由となった非違が、正当な理由がない欠勤その他の行為により職場規律を乱したことのみである場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ハ 懲戒免職等処分の理由となった非違が過失(重過失を除く。)による場合であって、特に参酌すべき情状のある場合
ニ 過失(重過失を除く。)により禁錮以上の刑に処せられ、執行猶予を付された場合であって、特に参酌すべき情状のある場合