目次
第1 財産分与とは何か1 婚姻中に協力して形成した財産を清算する2 慰謝料・養育費・年金分割との違い第2 財産分与の対象になるもの・ならないもの1 対象財産を種類ごとに確認する2 結婚前の貯金・相続した財産はどうなるか3 子供名義の預金・学資保険も名義だけでは決めない第3 割合と金額はどう計算するか1 原則2分の1と,双方が既に持つ財産2 預金だけの場合の計算例3 いつの財産を,いつの価額で見るか第4 自宅・ローン・退職金・使い込みの注意点1 自宅とローンを一緒に確認する2 結婚30年なら一定額をもらえるわけではない3 使ってしまえば分けなくてよいのか第5 財産分与はいつまで請求できるか1 離婚日によって5年と2年に分かれる2 年金分割は別の手続が必要である第6 話合いがまとまらないときの手続と資料1 離婚前と離婚後の手続を分ける2 相談前にそろえる資料3 税金と実行方法まで確認する第7 主な根拠資料
第1 財産分与とは何か
1 婚姻中に協力して形成した財産を清算する
財産分与とは,離婚に際して,夫婦が婚姻中に協力して取得・維持した財産などを考慮し,離婚後の財産上の衡平を図る制度である。
夫名義の預金や妻名義の自宅という名義だけで,分与の対象になるか,いくら分けるかが決まるわけではない。
専業主婦・専業主夫であっても,家事や育児による協力を含めて判断する。
本記事は,令和8年10月16日現在の民法,裁判所及び法務省の案内を基に,対象財産,計算,期限及び手続の入口を説明する。
具体的な財産の評価や分与額は,双方の資料と事情に基づいて判断する必要がある。
2 慰謝料・養育費・年金分割との違い
財産分与は財産の清算が中心であり,離婚後の生活保障や慰謝料の要素が含まれることもある。
慰謝料を別に請求するときは,財産分与で何を清算するのかを明確にし,同じ損害を重ねて請求しないよう整理する。
養育費は子の養育に必要な費用の分担であり,夫婦の財産を分ける問題とは異なる。
厚生年金の年金分割も,財産分与とは別の制度である。
離婚に関して決める事項全体は,離婚の手続と決めることで説明している。
第2 財産分与の対象になるもの・ならないもの
1 対象財産を種類ごとに確認する
対象となるのは,婚姻中に夫婦の協力によって取得・維持した財産である。
婚姻中に存在する財産を無条件にすべて半分にする制度ではなく,取得時期,原資,夫婦の協力及び現在までの変化を確認する。
財産確認する事項現金・預貯金名義,管理者,基準日の残高,婚前・相続資金の混在自宅・土地取得時期,頭金の原資,現在の評価,ローン残高株式・投資信託取得資金,基準日の数量,評価時点,移管・売却生命保険等契約者,保険料の原資,基準日の解約返戻金自動車取得時期,使用者,査定額,対応するローン退職金勤続期間,婚姻後の同居期間,支給状況・規程
借金は,夫婦の財産形成や共同生活のための債務かを確認する。
一方の個人的な借金を,名義や借入日だけから当然に他方へ負担させるものではない。
また,夫婦間で負担を決めても,金融機関とのローン契約が当然に変わるわけではない。
2 結婚前の貯金・相続した財産はどうなるか
婚姻前から有する財産,一方が相続又は贈与によって取得した財産は,原則として清算の対象から区別する。
ただし,現在の預金のどの部分がその財産なのか,別の財産の購入に使ったのか,婚姻中の維持への寄与があるのかなどを検討する必要がある。
「自分の口座にあるから全部自分のもの」「同じ口座に給与が入ったから婚前の貯金も全部共有」という判断はいずれも適切ではない。
預貯金の資料のそろえ方は,結婚前の貯金・相続財産・へそくりと財産分与で説明している。
3 子供名義の預金・学資保険も名義だけでは決めない
子供名義の口座があるときは,原資が親の収入なのか,子供が受けた祝い金等なのか,子供への贈与がされたのかを分けて確認する。
学資保険は,契約者,保険料の負担,解約返戻金の有無,離婚後の継続方針を確認する。