目次
第1 この記事の対象と結論1 簿価ではなく正味回収額で換価方法を比べる2 査定数や声掛け期間に全国一律の正解はない第2 破産管財人の権限,許可及び善管注意義務1 管理処分権と善管注意義務2 商品一括売却には裁判所の許可が必要となる3 裁判所の許可は判断過程の代わりにならない第3 価格を付ける前に確認する権利関係1 破産財団に属する商品かを仕分ける2 ブランド,画像,顧客情報を商品と混同しない第4 査定と短期の市場確認1 査定条件をそろえる2 正味回収額と時間価値を表にする3 小売販売を実施しない理由も数値化する第5 破産者関係者へ売却するときの透明性1 関係と資金を開示させる2 第三者の価格を使った後出しを避ける3 価格以外の条件を裁判所へ示す第6 衣料品・アパレル在庫に特有の確認事項1 季節,サイズ構成及び保管状態を残す2 季節経過と明渡期限を基準日に結び付ける第7 売買契約,入金及び搬出1 現状有姿の意味を具体化する2 代金と搬出の不履行に備える第8 税理士・会計担当者と共有する事項第9 裁判例から読み取れることと限界1 京都地裁平成13年11月26日判決2 東京地裁平成15年(ワ)第5711号判決第10 裁判所へ提出する説明資料のチェックリスト1 財産と価格の資料2 買主と履行の資料3 手続記録第11 出典・関連資料1 法令・裁判例2 国税庁資料3 関連記事
第1 この記事の対象と結論
1 簿価ではなく正味回収額で換価方法を比べる
婦人服その他の在庫商品は,帳簿上の価額が大きくても,型落ち,季節外れ,サイズ・色の偏り,保管状態及び搬出費用によって一括換価額が大きく下がることがある。
破産管財人が比較すべきなのは簿価と買取額だけではなく,各売却方法の見込売上額から賃料,警備・人件費,決済手数料,返品・苦情対応,搬出・廃棄費用及び値下がり見込額を控除した正味回収額である。
短期間の市場確認で関係者の提示額が独立業者の最高額を上回り,代金回収と早期明渡しの確実性も高いときは,関係者への売却を検討対象から外す必要はない。
ただし,利害関係,価格形成及び代替案を記録し,裁判所の許可を得るだけでなく,後から債権者に説明できる手続を採る必要がある。
2 査定数や声掛け期間に全国一律の正解はない
破産法は,在庫一括売却について査定を何社から取るか,入札期間を何日とするかを定めていない。
したがって,「三社査定なら常に足りる」又は「同業者全社への声掛けが必要」と形式的に決めるのではなく,商品の金額・均質性・季節性,市場参加者の数,賃料等の日額,情報管理,搬出期限及び追加探索で得られる上積みの見込みを踏まえて決める。
重要なのは,採った手続そのものに加え,なぜその範囲と期限で打ち切ったかを記録することである。
第2 破産管財人の権限,許可及び善管注意義務
1 管理処分権と善管注意義務
破産法78条1項により,破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は破産管財人に専属する。
同法85条1項は,破産管財人に善良な管理者の注意をもって職務を行う義務を課している。
在庫換価では,価格だけでなく,代金回収の確実性,換価までの時間,保管費用,価値下落,権利関係及び搬出完了の確実性を含む判断過程が問題となる。
2 商品一括売却には裁判所の許可が必要となる
破産法78条2項4号は,「商品を一括して売却すること」を裁判所の許可を要する行為として掲げている。
同条3項及び破産規則25条の100万円以下の例外は,同項7号から14号までの行為に限られるため,同項4号の商品一括売却には及ばない。
在庫をロットでまとめて処分する場合は,売却額が100万円以下であっても,同項4号に当たるかを確認して許可手続を進める必要がある。
これに対し,個々の商品を通常の営業として販売する場面や,同項7号の動産の任意売却に当たる場面とは,事実関係と条項を分けて検討する。
3 裁判所の許可は判断過程の代わりにならない
最高裁平成18年12月21日第一小法廷判決は,破産管財人が裁判所の許可を得ていたことなどを善管注意義務違反による損害賠償責任を否定する事情として考慮したが,質権者に対する担保価値維持義務の違反自体は認めた。
同判決は在庫売却の価格を判断したものではないが,裁判所の許可が第三者の実体法上の権利や管財人の検討義務を一律に消すものではないことを示す。
第3 価格を付ける前に確認する権利関係
1 破産財団に属する商品かを仕分ける
倉庫や店舗にある物がすべて破産者所有の商品とは限らない。
委託販売品,返品予定品,預かり品,リース品,サンプル品,所有権留保付き商品及び第三者の担保権が付いた商品を,仕入帳,納品書,契約書,棚卸表,商品タグ及び取引先照会で区分する。
所有権又は担保権に争いがある商品を一括ロットへ混ぜると,価格の問題とは別に取戻権又は別除権の問題が生じる。
2 ブランド,画像,顧客情報を商品と混同しない
(続きを読む...)破産管財人が衣料品・在庫商品を一括売却するとき―関係者売却,査定・入札,季節下落及び裁判所の許可(AI作成)