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解雇・退職・雇止め

選択定年制・早期退職優遇制度の申出を会社は承認しないことができるか―最高裁平成19年1月18日判決と割増退職金(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論の要旨第2 事案の概要1 選択定年制の定め2 退職の申出と不承認第3 原審の判断第4 最高裁の判断1 承認がなければ割増退職金を伴う退職の効果は生じない2 不承認の理由について第5 実務上の確認事項1 会社が制度を設けるとき2 従業員が申し出るとき3 国家公務員の早期退職募集との違い第6 関連記事第7 出典1 裁判例2 法令
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,定年前に退職する従業員を定年退職の扱いとし,割増退職金を支給する選択定年制(早期退職優遇制度)について,従業員が退職を申し出たのに使用者が承認しなかった場合に,割増退職金を受け取れるかを判断した最高裁平成19年1月18日判決(平成16年(受)第380号・集民223号5頁)を紹介するものである。
判決の内容は,裁判所HPの裁判例検索に掲載されている判決全文によっている。

2 結論の要旨

①選択定年制による退職が,従業員の申出に対する使用者の承認によって効果を生ずるものとされ,承認をするかどうかに関し就業規則等で特段の制限が設けられていない場合,使用者が承認しなければ,割増退職金債権の発生を伴う退職の効果は生じない。
②割増退職金は,従業員の申出と使用者の承認とを前提に,早期の退職の代償として特別の利益を付与するものである。
③承認されなかった従業員も,選択定年制によらない退職を申し出ることは妨げられないから,退職の自由を制限されるものではない。
④この事件で,経営悪化から事業譲渡及び解散が不可避となったとの判断の下に,事業を譲渡する前に退職者の増加によりその継続が困難になる事態を防ぐために承認しなかったことは,理由が不十分であるというべきものではないとされた。

第2 事案の概要
1 選択定年制の定め

上告人は,農業協同組合法に基づいて設立された信用農業協同組合である。
上告人の就業規則13条は,従業員は満60歳をもって定年とし,定年に達した日の属する事業年度末をもって退職とすると定めた上,本人の希望により定年前の年齢で退職する者は,選択定年制実施要項の規定により定年扱いとし,特別処置を講ずると定めていた。

選択定年制実施要項は,次のように定めていた。
①対象者は,退職時点において48歳以上の職員でかつ勤続年数が15年以上の職員のうち,所定の手続によりこの制度による退職を選択し,組合が認めたものとする(2条)。
②この制度による退職は,定年扱いとし,別表の割増退職金を支給する(3条)。
③この制度による退職を希望する職員は,退職を希望する6か月前までに組合長に申し出るものとし,事業年度末をもって退職とする(4条)。

判決によれば,選択定年制を設けた趣旨は,組織の活性化,従業員の転身の支援及び経費の削減にあり,事業上失うことのできない人材の流出をとどめることができるようにすることなどを考慮して,上告人の承認を必要とすることとされたものである。

2 退職の申出と不承認

被上告人らは,平成13年7月と9月に,選択定年制により,平成14年3月31日付けで退職することを希望する旨の申出をした。

上告人は,平成13年7月に神奈川県から資産査定状況の検査において自己資本比率の低下等を指摘されて指導を受け,他の信用農業協同組合との合併の道を探ったが,同年8月,経営悪化から事業譲渡及び解散が不可避となったと判断し,事業を譲渡する前に退職者の増加によりその継続が困難になる事態を防ぐため,選択定年制を廃止する方針を立てた。
上告人は,同年9月,申出の資格を有する者全員に対し,既にされた申出についても今後される申出についても承認をしない趣旨の説明をし,同月18日の理事会で,申出を承認しないこと及び選択定年制を廃止することを決定し,同月27日,被上告人らを含む申出者に承認しない旨を告げた。

上告人は,平成14年1月23日の総会で事業の全部を譲り渡して解散することを決議し,同年3月31日,全従業員を解雇した。
被上告人らは,選択定年制により退職したものと取り扱われるべきであるとして,割増退職金債権を有することの確認を求めた。

第3 原審の判断

原審の東京高等裁判所は,上告人は申出に対して承認をするかどうかの裁量権を有するが,不承認とすることが従業員の退職の自由に対する制限となることなどからすれば,その裁量権の行使は選択定年制の趣旨目的に沿った合理的なものでなければならず,不合理な裁量権の行使により不承認とした場合には,申出のとおり選択定年制による退職の効果が生ずるとした。
その上で,不承認により被上告人らの受ける不利益は受忍し得る程度のものとはいい難く,従業員個々の具体的事情にかかわらない事由に基づいて不承認とするのは理由が不十分であるとして,被上告人らの請求を認容すべきものとした。

第4 最高裁の判断
1 承認がなければ割増退職金を伴う退職の効果は生じない

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自己都合退職の給付制限―1か月・3か月の区別,重責解雇の認定基準,教育訓練による解除と退職合意書(AI作成)

目次第1 給付制限の仕組み1 条文の定め2 給付制限は給付日数を減らさない第2 給付制限の期間の区別1 退職日と回数による区別2 期間を決めるのは退職日第3 「正当な理由」があれば給付制限はかからない1 判断の基準2 事実の細部で結論が変わる例第4 重責解雇の認定基準1 懲戒解雇なら当然に重責解雇となるわけではない2 離職票の記載と解雇の性質は別の問題である第5 離職理由の認定と争い方1 ハローワークは離職者の申立ても聴く2 審査請求と取消訴訟第6 教育訓練による給付制限の解除1 令和7年4月からの新しい解除事由2 解除される期間3 申出の期限を過ぎると遡って解除されない第7 退職合意書と退職勧奨で確認すること1 合意書の離職理由はハローワークを拘束しない2 代理人が確認する事項第8 別セッションで掘り下げるテーマと未検討点第9 出典・関連記事1 検討した資料2 法令3 裁判例4 関連記事
第1 給付制限の仕組み
1 条文の定め

雇用保険法33条1項本文は,被保険者が「自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」には,待期期間(同法21条の7日間)の満了後「一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」は,基本手当を支給しないと定めている。
これが,いわゆる給付制限である。

条文が定めているのは1か月以上3か月以内という幅だけである。
給付制限に当たるかどうかの認定は,公共職業安定所長が厚生労働大臣の定める基準に従って行う(同条2項)。
具体的に何か月とするかは,厚生労働省の「雇用保険に関する業務取扱要領」(以下「要領」という。)の運用で決まる。
本記事は,令和8年10月4日に公表されていた要領(令和8年8月1日以降版。給付制限の部分の改訂表示は令和8年4月)を確認して整理する。

2 給付制限は給付日数を減らさない

要領52205-1イは,給付制限は所定給付日数の短縮ではないとしている。
給付制限の期間中は基本手当が支給されず,失業の認定も行われないが,その分の日数が失われるわけではない。

ただし,基本手当を受けられる期間(受給期間)は原則として離職日の翌日から1年であるため,給付制限が長いと期間内に受け切れないことがある。
雇用保険法33条3項は,給付制限の期間等を加えると1年を超える場合に,その超える期間だけ受給期間を延ばすと定めている。

第2 給付制限の期間の区別
1 退職日と回数による区別

要領52205-1ロ・ハによれば,給付制限の期間は次のとおりである。

離職の理由給付制限の期間正当な理由なく自己都合で退職し,退職日が令和7年4月1日以降原則1か月正当な理由なく自己都合で退職し,退職日が令和7年3月31日以前原則2か月退職日から遡って5年間に2回以上,正当な理由なく自己都合で退職して求職申込みをしていた場合(令和2年10月1日以降の退職に限って数える。)3か月自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)3か月

要領の「当該退職した日から遡って5年間のうちに2回以上」は,今回の退職を数えずに過去の自己都合退職を数える趣旨である。
令和2年10月に給付制限を3か月から2か月へ短縮したときの厚生労働省のリーフレットは,5年間のうち2回までは短縮後の期間とし,3回目の離職以降は,その離職から遡って5年間に2回以上の自己都合による離職があるかを確認すると説明していた。
したがって,5年以内に3回目となる自己都合退職から3か月になる。

2 期間を決めるのは退職日

給付制限が1か月か2か月かは,求職申込みの日ではなく退職日で決まる。
令和7年3月31日に退職して4月に求職申込みをした者は,原則2か月である。
相談を受けた時点で過去の退職歴を聴き取らないと,3か月になるかどうかを見誤る。

第3 「正当な理由」があれば給付制限はかからない
1 判断の基準

要領52203は,「正当な理由」とは,被保険者の状況(健康状態,家庭の事情等)や事業所の状況(労働条件,雇用管理の状況,経営状況等)からみて,その退職が真にやむを得ないことが客観的に認められる場合をいい,被保険者の主観的判断は考慮されないとしている。

同要領が正当な理由があるとする場合には,例えば次のものがある。
①倒産手続の申立てや不渡り等により事業所の倒産がほぼ確実となった場合,大量の人員整理が行われた場合,事業所が廃止された場合

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会社備品を盗んで転売した社員への対応―証拠保全,懲戒解雇と預金仮差押えを並行して進める方法(AI作成)

目次第1 最初に分けるべき3つの判断1 逮捕と,会社が証明できる行為を分ける2 懲戒,損害賠償及び仮差押えを別々に検討する第2 発覚直後に確保する証拠と被害品の台帳1 会社所有と持出し・転売の対応を確認する2 原資料を残し,調査権限の限界を守る第3 懲戒解雇の根拠,手続及び重さを確認する1 行為時の就業規則と周知を確認する2 拘禁中でも,可能な弁明方法を検討する第4 解雇予告除外認定と本人への通知1 懲戒解雇でも解雇予告の問題は残る2 通知の到達と未払賃金を別に管理する第5 品物ごとの損害額と回収済み部分を整理する1 帳簿価額,転売代金及び新品価格を混同しない2 返還,弁償及び保険金の二重回収を避ける第6 預金仮差押えの申立てを準備する1 請求権と保全の必要性を疎明する2 銀行,取扱店舗及び対象債権を特定する3 申立先と提出資料を確認する第7 発令後の送達,本訴及び回収1 銀行への送達と2つの期間を混同しない2 仮差押えは回収完了ではない3 刑事手続中の被害弁償と示談第8 出典・確認範囲1 法令2 公的資料
第1 最初に分けるべき3つの判断
1 逮捕と,会社が証明できる行為を分ける

会社の工場から備品が繰り返し持ち出され,転売の疑いで社員が逮捕された場合,会社は,証拠保全,雇用上の処分及び損害回収を並行して検討することになる。
しかし,逮捕の事実だけで,その社員が全ての在庫不足を生じさせたこと,懲戒解雇が有効であること,又は預金の仮差押えが認められることまで決まるわけではない。
本記事は,令和8年10月3日時点の法令と公的資料に基づき,会社が確認すべき事実と手続を一般向けに整理するものである。

2 懲戒,損害賠償及び仮差押えを別々に検討する

懲戒解雇では,就業規則上の根拠,周知,処分対象行為の証拠,処分の重さ及び所定の手続を確認する。
損害賠償では,本人の行為,会社の権利侵害,故意・過失,品物ごとの損害額及び因果関係を確認する。
仮差押えでは,その賠償請求権に加え,将来の強制執行ができなくなり,又は著しく困難になるおそれと,差し押さえる預金債権の特定が必要となる。

会社が民法709条に基づく損害賠償請求権を有する場合,その保全を検討するために,懲戒解雇の完了を待つ必要はない。
資産処分の危険が具体的であれば,処分の検討や本人の弁明の確認と並行して,証拠のそろった範囲で保全申立てを準備することが考えられる。

第2 発覚直後に確保する証拠と被害品の台帳
1 会社所有と持出し・転売の対応を確認する

被害品の品名,型番,製造番号,取得日,保管場所,管理担当者,最終確認日及び不足が判明した日を記録する。
購入資料,固定資産台帳,棚卸記録,写真,入退室記録,防犯カメラ映像,持出し承認及び廃棄・払下げの記録を突き合わせ,会社の物であることと,無断で持ち出されたことを分けて確認する。
古い備品であっても,帳簿価額が零であることだけで会社所有ではなくなったり,損害が零になったりするわけではない。

転売先の取引記録と会社の備品を結び付けるには,製造番号,特徴,数量,売却日及び持込み人物等の対応が重要である。
在庫不足の総額を,逮捕された社員1人の被害額として直ちに扱うべきではない。
他の持出し,記帳漏れ,正規の廃棄・譲渡等の可能性も確認し,本人の行為と結び付く品物を特定する。

原材料や薬品については,倉庫から担当者への払出しと,機台・工程への実投入を区別する。
払出し時点で使用済みと記帳している場合,帳簿と倉庫在庫が合っていても,その後の持出しを把握できない可能性があるが,実際の記帳方法と担当者の説明による確認が必要である。
長期間発覚しなかったというだけで,大量購入していたはずと説明する必要が常にあるわけではない。

会社が提供できる購入・実在庫・工程投入・回収・製品検査の資料と,その依頼理由は,工場の原材料が長期間盗まれていたときの被害立証―購入・在庫・工程使用量・売却記録から数量と損害額を組み立てる(AI作成)で整理している。
社外の買取台帳や本人の口座明細が会社にあるとは限らないため,会社保有資料の依頼と,社外資料の取得手続を分ける。

2 原資料を残し,調査権限の限界を守る

防犯カメラは自動上書きの期限を確認し,必要な期間の原映像と日時設定を保全する。
ログやメールも取得者,取得日時,取得元及び複製の方法を記録し,調査用のコピーと原資料を区別する。
私物端末や個人アカウントについて,会社が当然に強制調査できると考えてはならない。

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会社の破産と解雇予告手当―財団債権か優先的破産債権か,東京地裁・大阪地裁の運用と申立前の支払(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 解雇予告手当の基本1 労働基準法20条2 予告なしに解雇した場合の効力3 付加金第3 破産手続での位置づけ1 関係する条文2 二つの考え方3 全国の運用第4 東京地方裁判所の運用第5 大阪地方裁判所の運用第6 破産手続開始後に解雇した場合第7 申立前に支払う場合1 未払賃金立替払制度の対象にならない2 滞納税金がある場合3 付加金の危険を避ける意味第8 実務で確認する事項第9 関連記事第10 出典1 法令2 裁判例3 文献第11 確認状態
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,会社が破産するに当たって従業員を解雇する場合に,解雇予告手当が破産手続でどう扱われるか,破産手続開始の申立ての前に支払ってよいかを整理する。
法令は,判例秘書の現行法令アーカイブ(令和8年8月1日現在の法令データ)で条文を確認し,最高裁判所の判決は裁判所ウェブサイトで確認した。
裁判所ごとの運用は,裁判官等が執筆した実務書の原本で確認した。
東京地方裁判所の運用は『破産管財の手引〔第2版〕』(平成27年)で確認しており,その後の版は確認していない。

2 結論

①予告期間を置かず予告手当も支払わない解雇は,即時解雇としては効力を生じないが,使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り,通知後30日を経過するか予告手当を支払った時に効力を生ずる(最高裁昭和35年3月11日判決)。
②破産手続開始前に解雇した従業員の解雇予告手当が,財団債権となる「給料」(破産法149条1項)に当たるか,優先的破産債権となる「雇用関係に基づいて生じた債権」(民法308条)にとどまるかは争いがあり,裁判所ごとに運用が分かれている。
③東京地方裁判所は,破産管財人が「給料」に当たるとして財団債権の承認許可を申し立てれば,これを適法なものと認める運用をしている。
④大阪地方裁判所は,解雇予告手当は「給料」に当たらないとしつつ,破産法101条1項(労働債権の弁済許可)を類推適用して,配当手続によらずに弁済できるとしている。
⑤破産手続開始後に破産管財人が解雇した場合の解雇予告手当は,財団債権(破産法148条1項8号)となる。
⑥解雇予告手当は未払賃金立替払制度の対象にならない。
そのため,申立前に労働債権の一部しか支払えない場合には,解雇予告手当から支払うことが望ましいとする実務書がある。
⑦財団債権となる滞納税金が残っていても,申立前に先に解雇予告手当を支払うことは不当性や有害性がないとする考え方が実務に浸透しているとされる。

第2 解雇予告手当の基本
1 労働基準法20条

労働基準法20条1項は,「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と定めている。
ただし書は,天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合を除外している。
会社の資金繰りが行き詰まって破産を申し立てる場合は,通常この例外には当たらないと考えられるため,即時に解雇するなら解雇予告手当の支払が問題になる。

2 予告なしに解雇した場合の効力

最高裁判所第二小法廷昭和35年3月11日判決(昭和30年(オ)第93号,民集14巻3号403頁)は,使用者が予告期間を置かず,予告手当の支払もしないで解雇の通知をした場合,その通知は即時解雇としては効力を生じないが,使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り,通知後30日の期間を経過するか,又は予告手当の支払をしたときに解雇の効力を生ずるとした。
破産を申し立てる状況では,従業員は解雇の効力を争わず,解雇予告手当を請求するのが通常であるとされている(『破産管財の手引〔第2版〕』210頁)。

3 付加金

労働基準法114条は,裁判所が,同法20条等に違反した使用者に対し,労働者の請求により,未払金のほかこれと同一額の付加金の支払を命ずることができ,この請求は違反のあった時から5年以内にしなければならないと定めている。
前記の最高裁判所昭和35年3月11日判決は,付加金の支払義務は労働者の請求により裁判所が支払を命ずることによって初めて発生するものであるから,使用者が予告手当に相当する金額の支払を完了した後は,労働者は付加金の請求をすることができないとした。

第3 破産手続での位置づけ
1 関係する条文

破産法149条1項は,「破産手続開始前三月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。」と定めている。

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大学教員の有期雇用と無期転換―大学教員任期法の10年特例と最高裁令和6年10月31日判決(AI作成)

目次
第1 結論とこの記事の対象

1 結論
2 最高裁令和6年10月31日判決の位置付け

第2 無期転換の原則と大学教員任期法の特例

1 労働契約法18条の5年ルール
2 大学教員任期法7条の10年特例
3 大学教員であれば一律に10年ではない

第3 最高裁令和6年10月31日判決の事案

1 採用及び契約更新の経過
2 原審の判断
3 最高裁の判断

第4 判決の射程と誤解しやすい点

1 実務家教員なら必ず10年となるわけではない
2 10年特例と雇止めは別問題である
3 5年を超えた後の申込みが常に無効とは限らない

第5 大学側の実務対応

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会社を辞めて早期リタイア(FIRE)する前に確認すること―退職の申入れ,失業給付の「労働の意思」,健康保険の任意継続,国民年金及び住民税(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 退職の申入れ1 期間の定めのない雇用2 期間の定めのある雇用3 退職願の撤回第3 雇用保険の基本手当1 働くつもりがなければ受けられない2 後から働く気になった場合第4 健康保険1 三つの選択肢2 任意継続3 国民健康保険4 家族の被扶養者第5 国民年金1 第2号被保険者から第1号被保険者へ2 配偶者の手続3 60歳以上で退職する場合4 確定拠出年金第6 住民税と所得税1 住民税は退職した翌年度も課税される2 年の途中で退職した場合の所得税3 退職金の税第7 家族の扶養義務がある場合第8 関連記事第9 出典1 法令2 通達・通知3 裁判例4 所管行政機関等の案内
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

本記事は,資産形成の結果として,会社を辞めて働かない生活に入ること(いわゆるFIRE。本記事では「早期リタイア」という。)を考える会社員に向けて,早期リタイアを決める前に確認しておくべき法律,社会保険及び税の扱いを,退職の手続から順に整理するものである。
投資の判断や,早期リタイアに必要な資産額は扱わない。

調査基準日は令和8年9月26日である。
条文はe-Gov法令検索の現行条文で確認し,手続の運用はハローワーク,全国健康保険協会(協会けんぽ)及び日本年金機構の案内で確認した。
裁判例は,裁判所ウェブサイト又は判例秘書で全文を確認したものに限っている。

2 結論

①期間の定めのない雇用は,退職の申入れの日から2週間を経過することによって終了する(民法627条1項)。
②退職願を提出し,退職を承認する権限を持つ者がこれを受理すると,その時点で合意解約が成立し,撤回できなくなることがある。
③雇用保険の基本手当は,「労働の意思及び能力」があるのに職業に就くことができない人に支給されるものなので,働くつもりがない早期リタイアでは受けられない。
④健康保険は,任意継続(資格喪失日から20日以内に申出,期間は2年,保険料は全額自己負担),国民健康保険又は家族の健康保険の被扶養者から選ぶことになる。
⑤60歳未満で退職すると,国民年金の第1号被保険者となり,14日以内に届出をして保険料を自分で納めることになる。
⑥住民税は前年の所得に課税されるので,退職した翌年度も課税される。
⑦国民健康保険料の非自発的失業者の軽減は,倒産・解雇等による離職者等が対象であり,働くつもりのない早期リタイアでは受けられない。
⑧企業型確定拠出年金の資産は,資格喪失の翌月から6か月以内に移換の手続をしないと,国民年金基金連合会へ自動的に移換される。
⑨退職所得の受給に関する申告書を出さないと,退職金から20.42%の所得税等が源泉徴収され,確定申告で精算することになる。

第2 退職の申入れ
1 期間の定めのない雇用
(1) 申入れから2週間で終了する

民法627条1項は,「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」と定める。
同条2項は,期間によって報酬を定めた場合の申入れの時期を制限しているが,その対象は「使用者からの解約の申入れ」に限られている。
したがって,月給制の正社員であっても,労働者からの申入れについては同条1項の2週間が基準になる。

(2) 就業規則の予告期間との関係

東京地裁昭和51年10月29日判決(昭和50年(ワ)第9187号,判例秘書の判例番号 L03130273)は,退職を希望する場合は1か月前(役付者は6か月前)までに退職願を提出し,会社の許可を得なければならないとする就業規則について,「民法第六二七条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である」とし,同条に抵触しない範囲でのみ有効であるとした。
同判決は,退職に会社の許可を要するとする部分も,効力を有しないとした。
ただし,同判決は,予告期間の延長の可否については説が分かれているとした上での一つの地裁判決であり,当時の民法627条2項は労働者からの申入れにも適用されていた。
就業規則の予告期間に法的な拘束力がない場合でも,引継ぎを含めて円満に退職するため,その定めに沿って早めに申し出ておくことが考えられる。

2 期間の定めのある雇用

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「静かな退職」の社員に会社は何ができるか―最低限の勤務,業務命令違反及び勤務成績不良の区別(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象2 結論第2 契約で約束した仕事と「それ以上」の区別1 労働者の義務は労働契約の内容で決まる2 「最低限の仕事」が問題になる場合とならない場合第3 業務命令に従う義務と拒否1 残業命令2 精密検診の受診命令3 通常業務から外して命じる作業4 配転命令5 業務命令の有効性を確かめる順序第4 業務命令違反を懲戒するときの要件1 就業規則の定めと周知2 処分の相当性3 下級審の判断例第5 評価が低いだけでは解雇は難しい1 労働契約法16条2 セガ・エンタープライゼス事件3 指示された業務に就かない状態が続いた場合4 評価と処遇に反映するときの記録第6 精神的な不調が疑われる場合第7 関連記事第8 出典1 法令2 裁判例
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象

必要最低限の仕事だけをこなし,残業,担当外の仕事,昇進等を避ける働き方は,「静かな退職」と呼ばれることがある。
資産形成が進んだ人に向けて,嫌な仕事は断り,評価や査定を気にせずに働けばよいと勧める発信も見られる。
本記事は,このような働き方をする社員について,使用者が法的に何を求めることができ,何ができないかを,業務命令,懲戒及び解雇の順に整理するものである。
従業員の側から見れば,どこまでが労働契約上の義務で,どこからが断ってよいものかを確かめるための整理でもある。

調査基準日は令和8年9月26日である。
条文はe-Gov法令検索の現行条文で確認し,裁判例は裁判所ウェブサイトの裁判例検索で全文を確認したものに限っている。

2 結論

①労働契約で約束した仕事を所定の水準で果たしている限り,それ以上の熱意や無償の貢献がないことは,それだけでは懲戒や解雇の理由になりにくい。
②他方で,就業規則等に根拠があり,内容が合理的な業務命令(残業命令,精密検診の受診命令,通常業務から外して命じる作業,配転命令等)には,労働者が従う義務がある。
③業務命令を拒否した社員を懲戒するには,就業規則に懲戒の種別及び事由を定めて周知していることが必要であり,処分は行為の性質及び態様その他の事情に照らして相当なものでなければならない(労働契約法15条)。
④評価が低いことだけを理由とする解雇は難しく,相対評価で下位にあるというだけでは足りないとした裁判例がある。
⑤精神的な不調が疑われる場合は,懲戒の前に,受診や休職等の対応を検討する必要がある。

第2 契約で約束した仕事と「それ以上」の区別
1 労働者の義務は労働契約の内容で決まる
(1) 労働契約と就業規則

労働契約法6条は,「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と定める。
同法7条本文は,使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には,労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものとしている。
したがって,社員が何をしなければならないかは,個別の労働契約と,周知された合理的な就業規則によって決まる。

(2) 義務を誠実に履行する義務

同法3条4項は,「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」と定める。
この規定は,労働者と使用者の双方に,契約上の義務を誠実に履行することを求めるものである。
契約の範囲を超える仕事を無償で引き受けることまで求めるものではないと考えられる。

2 「最低限の仕事」が問題になる場合とならない場合

契約で求められた職務を所定の水準で果たし,正当な指示に従っている社員について,熱意や自発的な提案が乏しいことだけを取り上げて懲戒しても,就業規則所定の懲戒事由に当たらないか,労働契約法15条の相当性を欠くと判断されやすいと考えられる。
これに対し,①正当な業務命令を拒否する,②担当業務を放置する,③期待される水準に達しない状態が続く,という場合は,それぞれ別の法的問題になる。
①と②は主に懲戒の問題として,③は評価・処遇と普通解雇の問題として検討することになる。

第3 業務命令に従う義務と拒否

(続きを読む...)「静かな退職」の社員に会社は何ができるか―最低限の勤務,業務命令違反及び勤務成績不良の区別(AI作成)

整理解雇は30日前に予告すれば有効か―人員削減の必要性,解雇回避措置,選定基準及び説明・協議(AI作成)

目次

第1 30日前に予告しても整理解雇が有効とは限らない第2 予告手続と解雇の有効性を分ける第3 整理解雇の四つの考慮事項第4 人員削減の必要性第5 解雇回避措置第6 人選の合理性第7 説明・協議の妥当性第8 実施前に確認する別の規制第9 証拠化する資料第10 使用者・労働者別の確認事項第11 関連記事第12 出典・参考資料
第1 30日前に予告しても整理解雇が有効とは限らない

結論として,30日前に解雇を予告し,又は不足日数分の解雇予告手当を支払っただけで,整理解雇が有効になるわけではない。予告は労働基準法20条の手続であり,解雇が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められるかは労働契約法16条により別に判断される。

整理解雇は労働者側の非違行為ではなく,経営上の事情による人員削減である。そのため,人員削減の必要性,解雇回避措置,人選の合理性及び説明・協議を,計画時から証拠化する必要がある。

第2 予告手続と解雇の有効性を分ける
問題根拠確認内容解雇予告労働基準法20条原則30日前の予告又は不足日数分の平均賃金。解雇の実体的有効性労働契約法16条客観的合理性と社会通念上の相当性。解雇理由証明書労働基準法22条労働者から請求があれば遅滞なく交付する。法定の解雇禁止労働基準法等業務災害療養中,産前産後,申告,妊娠・育休,組合活動等を理由とする禁止。

予告手当を支払えば自由に解雇できるという理解は,手続と実体を混同する。逆に,十分な経営上の理由があっても,予告又は予告手当等の手続を省略してよいわけではない。

第3 整理解雇の四つの考慮事項

厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」は,整理解雇について,①人員削減の必要性,②解雇回避の努力,③人選の合理性,④解雇手続の妥当性を挙げる。

裁判例には「四要件」と表現するものと「四要素」として総合判断するものがある。どれか一つの名称だけで結論を出さず,四つの事項をすべて事実と資料に結び付けるべきである。東京地裁平成18年11月29日判決(東京自転車健康保険組合事件)は四要素を考慮し,黒字・内部留保,新規採用,配置転換等の検討不足などから整理解雇を無効とした。

第4 人員削減の必要性

企業が倒産寸前でなければ整理解雇が常に許されないというわけではない。他方,売上減少又は部門閉鎖という経営判断があるだけで,直ちに特定人数の解雇が必要になるものでもない。

少なくとも,直近の月次・年次損益,資金繰り,受注見込み,固定費,削減対象部門の収支,人員計画,外注・派遣・新規採用,役員報酬及び関連会社への業務移管を確認する。解雇の直前又は直後に同種業務で採用・外注をしていると,人員削減の必要性との整合が問われる。

第5 解雇回避措置

解雇回避措置には,残業削減,新規採用停止,外注見直し,配置転換,出向,一時帰休,賃金・役員報酬の見直し,希望退職募集及び退職勧奨などがある。ただし,これらをすべて機械的に実施すべきという意味ではなく,企業規模,職種,緊急性及び労働条件変更の可否に応じて,実行可能性と効果を具体的に検討する。

希望退職又は退職勧奨は労働者の自由意思による合意退職であり,強迫的な面談,長時間・多数回の勧奨又は不利益の示唆があれば別の違法問題を生む。回避措置の名目で不当な圧力をかけてはならない。

第6 人選の合理性

対象者の選定基準は,解雇対象者を決めた後に作るのではなく,事前に客観化する。職務の消滅,技能,資格,勤務成績,懲戒歴,雇用形態,勤続年数等を用いる場合,各指標の目的,配点,評価期間及び資料を固定する。

年齢,性別,妊娠・出産,育児・介護休業,労働組合加入,労働基準監督署への申告その他の保護される事情を理由に選定してはならない。勤務成績を使う場合,評価者ごとのばらつき,直前だけの低評価,記録のない主観評価及び休業期間の扱いを検証する。

第7 説明・協議の妥当性

使用者は,労働組合又は労働者に対し,人員削減の必要性,時期,規模,選定基準,回避措置及び退職条件を具体的に説明し,質問に答える。単に結論を通知するだけでなく,資料を示し,検討時間を確保し,意見を受けて再検討した過程を記録する。

労働者の同意を常に得なければ整理解雇ができないという意味ではないが,説明内容が抽象的で,選定基準も開示せず,結論だけを急ぐと,手続の相当性を欠く方向に評価される。

第8 実施前に確認する別の規制
就業規則・労働協約の解雇事由,協議条項及び退職金規定業務上災害の療養中及び産前産後休業中の解雇制限妊娠・出産,育児介護休業,組合活動又は行政申告を理由とする不利益取扱いの禁止一定数の離職者が生じる場合の再就職援助計画又は大量雇用変動の届出有期契約の期間途中であれば,労働契約法17条の「やむを得ない事由」障害者,高年齢者及び外国人労働者についての個別法・届出
第9 証拠化する資料
段階主な資料必要性決算・試算表,資金繰り,受注・売上予測,部門別損益,取締役会資料回避措置採用・外注一覧,配置可能職,出向打診,希望退職案,検討メモ人選基準策定日,評価表,配点,評価根拠,選定前後の名簿説明・協議説明資料,議事録,質問回答,労組通知,提案修正履歴解雇手続解雇通知,理由証明書,予告日,予告手当計算,退職金計算
第10 使用者・労働者別の確認事項

使用者側は,対象者決定前に基準と資料を固定し,回避策を実施できない理由を記録する。通知文だけを整えるのではなく,経営資料から選定・協議まで一貫して説明できるようにする。

労働者側は,解雇理由証明書を請求し,会社の説明資料,採用・外注の状況,配置可能な職務,評価資料及び同僚との取扱差を保存する。解雇無効を争う場合,地位確認,賃金請求及び労働審判・仮処分等の手続選択を早期に検討する。

第11 関連記事

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整理解雇は30日前に予告すれば有効か―民法627条,解雇回避措置・人選基準・説明協議(AI作成)

目次

第1 30日前に予告しても整理解雇が有効とは限らない第2 予告手続と解雇の有効性を分ける第3 整理解雇の四つの考慮事項第4 人員削減の必要性第5 解雇回避措置第6 人選の合理性第7 説明・協議の妥当性第8 実施前に確認する別の規制第9 証拠化する資料第10 使用者・労働者別の確認事項第11 関連記事第12 出典・参考資料
第1 30日前に予告しても整理解雇が有効とは限らない

結論として,30日前に解雇を予告し,又は不足日数分の解雇予告手当を支払っただけで,整理解雇が有効になるわけではない。予告は労働基準法20条の手続であり,解雇が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められるかは労働契約法16条により別に判断される。

期間の定めのない雇用で使用者が解約の意思表示をする法律上の出発点は民法627条1項である。ただし,雇用の解約は,労働契約法16条の解雇権濫用法理,労働基準法19条・20条,雇用平等・育児介護・組合活動等を理由とする個別の解雇禁止に制約される。民法627条を書いただけで整理解雇が有効になるわけではない。

有期契約の期間途中の解雇は,労働契約法17条1項により「やむを得ない事由」を要し,期間の定めのない契約より厳しい。

整理解雇は労働者側の非違行為ではなく,経営上の事情による人員削減である。そのため,人員削減の必要性,解雇回避措置,人選の合理性及び説明・協議を,計画時から証拠化する必要がある。

第2 予告手続と解雇の有効性を分ける
問題根拠確認内容解雇予告労働基準法20条原則30日前の予告又は不足日数分の平均賃金。解雇の実体的有効性労働契約法16条客観的合理性と社会通念上の相当性。解雇理由証明書労働基準法22条労働者から請求があれば遅滞なく交付する。法定の解雇禁止労働基準法等業務災害療養中,産前産後,申告,妊娠・育休,組合活動等を理由とする禁止。

予告手当を支払えば自由に解雇できるという理解は,手続と実体を混同する。逆に,十分な経営上の理由があっても,予告又は予告手当等の手続を省略してよいわけではない。

第3 整理解雇の四つの考慮事項

厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」は,整理解雇について,①人員削減の必要性,②解雇回避の努力,③人選の合理性,④解雇手続の妥当性を挙げる。

裁判例には「四要件」と表現するものと「四要素」として総合判断するものがある。どれか一つの名称だけで結論を出さず,四つの事項をすべて事実と資料に結び付けるべきである。東京地裁平成18年11月29日判決(東京自転車健康保険組合事件)は四要素を考慮し,黒字・内部留保,新規採用,配置転換等の検討不足などから整理解雇を無効とした。

第4 人員削減の必要性

企業が倒産寸前でなければ整理解雇が常に許されないというわけではない。他方,売上減少又は部門閉鎖という経営判断があるだけで,直ちに特定人数の解雇が必要になるものでもない。

少なくとも,直近の月次・年次損益,資金繰り,受注見込み,固定費,削減対象部門の収支,人員計画,外注・派遣・新規採用,役員報酬及び関連会社への業務移管を確認する。解雇の直前又は直後に同種業務で採用・外注をしていると,人員削減の必要性との整合が問われる。

第5 解雇回避措置

解雇回避措置には,残業削減,新規採用停止,外注見直し,配置転換,出向,一時帰休,賃金・役員報酬の見直し,希望退職募集及び退職勧奨などがある。ただし,これらをすべて機械的に実施すべきという意味ではなく,企業規模,職種,緊急性及び労働条件変更の可否に応じて,実行可能性と効果を具体的に検討する。

希望退職又は退職勧奨は労働者の自由意思による合意退職であり,強迫的な面談,長時間・多数回の勧奨又は不利益の示唆があれば別の違法問題を生む。回避措置の名目で不当な圧力をかけてはならない。

第6 人選の合理性

対象者の選定基準は,解雇対象者を決めた後に作るのではなく,事前に客観化する。職務の消滅,技能,資格,勤務成績,懲戒歴,雇用形態,勤続年数等を用いる場合,各指標の目的,配点,評価期間及び資料を固定する。

年齢,性別,妊娠・出産,育児・介護休業,労働組合加入,労働基準監督署への申告その他の保護される事情を理由に選定してはならない。勤務成績を使う場合,評価者ごとのばらつき,直前だけの低評価,記録のない主観評価及び休業期間の扱いを検証する。

第7 説明・協議の妥当性

使用者は,労働組合又は労働者に対し,人員削減の必要性,時期,規模,選定基準,回避措置及び退職条件を具体的に説明し,質問に答える。単に結論を通知するだけでなく,資料を示し,検討時間を確保し,意見を受けて再検討した過程を記録する。

労働者の同意を常に得なければ整理解雇ができないという意味ではないが,説明内容が抽象的で,選定基準も開示せず,結論だけを急ぐと,手続の相当性を欠く方向に評価される。

第8 実施前に確認する別の規制
就業規則・労働協約の解雇事由,協議条項及び退職金規定業務上災害の療養中及び産前産後休業中の解雇制限妊娠・出産,育児介護休業,組合活動又は行政申告を理由とする不利益取扱いの禁止一定数の離職者が生じる場合の再就職援助計画又は大量雇用変動の届出有期契約の期間途中であれば,労働契約法17条の「やむを得ない事由」障害者,高年齢者及び外国人労働者についての個別法・届出
第9 証拠化する資料
段階主な資料必要性決算・試算表,資金繰り,受注・売上予測,部門別損益,取締役会資料回避措置採用・外注一覧,配置可能職,出向打診,希望退職案,検討メモ人選基準策定日,評価表,配点,評価根拠,選定前後の名簿説明・協議説明資料,議事録,質問回答,労組通知,提案修正履歴解雇手続解雇通知,理由証明書,予告日,予告手当計算,退職金計算
第10 使用者・労働者別の確認事項

使用者側は,対象者決定前に基準と資料を固定し,回避策を実施できない理由を記録する。通知文だけを整えるのではなく,経営資料から選定・協議まで一貫して説明できるようにする。

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定年後再雇用で退職金が再度発生する場合―日本経営通信社事件と就業規則・再雇用手続(AI作成)

目次

第1 結論
第2 定年退職と再雇用を分けて考える理由
第3 日本経営通信社事件

1 事件の概要
2 退職金規程の適用を認めた理由
3 判決から直ちに一般化できないこと

第4 退職金が再度発生するかを判断する順序

1 適用対象者の文言
2 再雇用契約の内容
3 定年前後の実態
4 退職金の性質と計算条項

第5 会社側が整備すべき文書と運用
第6 労働者側が確認・保存すべき資料
第7 紛争時の主張立証
第8 実務チェックリスト
第9 出典・参考資料

第1 結論

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スポット勤務医師の労働契約は一勤務ごとか―定期非常勤との区別,確定シフトの取消し・雇止め・証拠(AI作成)

目次第1 問題の所在1 四つの論点を分けて検討する2 契約名より合意と運用を見る第2 労働契約の成立と労働条件の明示1 署名押印がなくても労働契約は成立し得る2 労働条件明示と契約成立は別問題である第3 一勤務ごとの契約か継続契約か1 一勤務ごとの契約を示す事情2 継続契約を示す事情3 求人票と実際の合意が違う場合第4 確定シフトの取消し,解雇及び雇止め1 確定済みの一勤務を取り消す場合2 未確定の将来勤務を依頼しない場合3 反復更新と雇止め法理第5 証拠収集の実務1 契約成立と契約単位に関する資料2 メッセージの意味を前後関係から読む第6 病院側と医師側の予防策1 病院側の対応2 医師側の対応第7 宿日直及び労働時間との関係第8 関連記事第9 主要な一次資料
第1 問題の所在
1 四つの論点を分けて検討する

スポット勤務医師をめぐる紛争では,次の四つを分けて検討する必要がある。
①実際に勤務した時間について,医師が労働基準法及び労働契約法上の「労働者」に当たるか。
②個々の勤務日について,労働契約が成立したか。
③個々の勤務とは別に,将来の勤務枠まで含む包括的・継続的な労働契約が成立したか。
④確定済みの勤務を取り消し,又は継続的な勤務を終了させた場合に,解雇又は雇止めの規制が適用されるか。

医師が病院の指揮命令を受けて診療し,病院から賃金を受ける個々の勤務について労働者性が認められても,そのことだけで将来の勤務枠を含む継続契約が成立するわけではない。他方,「スポット」という呼称だけで,確定済みの勤務についての労働契約や賃金請求権が消えるわけでもない。

本記事は,令和8年9月20日現在の現行法令に基づき,契約単位の確定方法と実務上の証拠を整理するものである。

2 契約名より合意と運用を見る

求人票に「スポット」と記載されていても,毎週同じ曜日の勤務が自動的に割り当てられ,将来分を自由に断れない運用であれば,継続契約を基礎付ける事情になり得る。反対に,求人票に「定期非常勤」とあっても,勤務のたびに空き枠が提示され,病院と医師の双方が自由に承諾又は拒絶していた場合,各勤務日ごとの契約と評価される余地がある。

したがって,契約書の題名だけでなく,求人から勤務終了までのメール,チャット,シフト表,賃金処理及び拒否・代替の実例を時系列で確認する必要がある。

第2 労働契約の成立と労働条件の明示
1 署名押印がなくても労働契約は成立し得る

労働契約法6条は,労働者が使用者に使用されて労働し,使用者がこれに対して賃金を支払うことについて,当事者が合意することによって労働契約が成立すると定める。

一般に,雇用契約書への署名押印は労働契約の成立要件ではない。口頭の合意,メール又はチャットによる応募と承諾,勤務の実施,賃金の支払等から,契約の成立及び内容が認定されることがある。

未署名の契約書は無意味ではない。その文書が示す契約期間,固定曜日,更新条件,業務内容等について当事者の意思が一致したかを判断する重要な証拠である。しかし,「署名・返送がないから,実施済みの勤務についても労働契約がない」と一般化することはできない。

2 労働条件明示と契約成立は別問題である

労働基準法15条及び労働基準法施行規則5条により,使用者は,労働契約の締結に際し,契約期間,就業場所・業務,始業・終業時刻,休日,賃金,退職等の労働条件を明示しなければならない。主要事項は書面の交付等による明示が必要である。

労働条件通知書を交付しなかったことと,私法上の労働契約が成立しなかったことは,同じ問題ではない。紛争処理では,①契約が成立したか,②どのような内容で成立したか,③法定の明示義務が履行されたかを順に分けて検討する。

第3 一勤務ごとの契約か継続契約か
1 一勤務ごとの契約を示す事情

次の事情は,各勤務について個別に契約が成立するという評価を支えやすい。
①各回について,病院が空き枠を提示し,医師がその都度応募又は承諾する。
②病院と医師の双方が,将来回を理由なく断ることができ,実際の拒否例がある。
③勤務日,勤務時間,診療科,報酬その他の条件が回ごとに異なる。
④他の医師が先に決まった場合,病院が依頼をしない,又は取り下げる運用である。
⑤特定曜日の勤務が自動的に割り当てられず,シフト確定前には勤務義務がない。
⑥各回の終了後に,次回勤務の保証や最低勤務回数が残らない。

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労働審判か民事訴訟か―復職希望・金銭解決・証拠量から選ぶ実務(AI作成)

目次第1 手続選択は解決目標から始める第2 労働審判の基本構造第3 労働審判と民事訴訟の比較第4 復職希望と金銭解決の意向を具体化する第5 争点と証拠の量を見積もる1 最初に主要争点を一覧化する2 証拠を時系列と争点の両方で整理する第6 労働審判を選ぶ場合の準備第7 民事訴訟を選ぶ場合と保全手続第8 統計と裁判例の扱い第9 出典
第1 手続選択は解決目標から始める

労働事件で労働審判と民事訴訟のどちらを選ぶかは,短期間で終わる可能性だけでは決められない。
まず,依頼者が復職を望むのか,金銭解決を望むのか,地位確認と賃金支払を最後まで判決で求めるのかを確認する。

令和8年2月の令和7年度実務協議会(冬季)資料は,裁判所,弁護士会,労働局等が各手続の特徴について認識を共有し,適切な手続選択を促す必要性を挙げている(PDF実頁11頁)。
同資料は司法行政上の課題認識を示すものであり,個別事件について特定の手続を選ぶ基準を法的に定めるものではない。

第2 労働審判の基本構造

労働審判手続は,個々の労働者と事業主との間の労働関係民事紛争を対象とする非公開の手続である。
労働審判官1人と,労使双方の実情に関する知識経験を有する労働審判員2人で構成する労働審判委員会が審理し,まず調停による解決を試みる。

期日は原則として3回以内であるため,申立段階から主張と証拠を集中的に準備する必要がある。
調停が成立しないときは,認められた権利関係と手続の経過を踏まえて労働審判が行われることがあり,2週間以内に適法な異議が申し立てられると労働審判は効力を失って訴訟へ移行する。

労働審判員の任命,役割,権限及び関連裁判例は,既存記事「労働審判員の任命,役割,権限及び裁判例(AI作成)」も参照されたい。

第3 労働審判と民事訴訟の比較

確認項目労働審判を検討しやすい事情民事訴訟を検討しやすい事情解決目標早期の金銭解決を含む調整の余地がある地位確認等について判決による終局的判断を重視する争点・証拠主要な争点と証拠を申立時に集約できる多数の争点,関係者又は証拠について段階的な審理を要する相手方の対応出席と具体的な協議が見込める異議申立てが強く見込まれ,訴訟移行を前提に準備する必要がある公開性非公開の手続による解決が適する公開法廷での判決を求める必要性が高い時間・費用原則3回以内の期日に主張立証を集中できる争点整理,証拠調べ等に時間をかける必要がある緊急性早期期日の中で解決可能性を探る仮処分等の保全手続を含む別の対応を要する

この表は法定の振分け基準ではなく,相談時の検討項目である。
一つの事情だけで結論を出さず,証拠の準備状況,相手方の交渉姿勢,移行後の訴訟費用及び依頼者の負担を総合して選ぶ。

提出先の地理的負担も手続選択の判断要素となる。労働審判を取り扱うのは全国50地裁本庁と立川,浜松,松本,福山及び小倉の5支部であり,通常の民事訴訟なら住所地支部で取り扱われる事件でも,労働審判では本庁等への移動が必要になり得る。本庁集約と公表開廷日割の全国比較は,全国の地方裁判所支部における本庁集約と開廷頻度―合議・裁判員・労働審判・民事執行の比較(AI作成)参照。

第4 復職希望と金銭解決の意向を具体化する

復職希望がある場合は,「元の職場へ戻りたい」という表現だけでなく,職務内容,勤務地,指揮命令関係,休職・配置転換の可能性,職場での関係及び就労可能時期を確認する。
復職後の労務提供が具体的に想定できるかによって,調停条項の設計や訴訟上の主張立証も変わる。

金銭解決を検討する場合は,解決金の総額だけでなく,未払賃金,バックペイ,退職日,離職理由,秘密保持,会社物品の返還,社会保険・税務上の取扱い及び支払期限を分ける。
金額だけを先に決めると,依頼者が重視する非金銭条件を見落とすことがある。

第5 争点と証拠の量を見積もる

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採用内定取消し・試用期間・本採用拒否の判例法理―三菱樹脂事件,大日本印刷事件及び下級審裁判例の法律事務所への射程(AI作成)

第1 最初に区別すべき三つの段階1 採用選考中,採用内定後及び試用開始後を分ける2 この記事の結論第2 三菱樹脂事件が示した試用期間の法理1 本採用拒否は留保解約権の行使である2 客観的合理性と社会通念上の相当性が必要である3 思想・信条に関する判示と現在の採用実務を分ける第3 大日本印刷事件及びオプト事件が示す内定取消しの限界1 採用内定による契約成立は事実関係から判断する2 既に知っていた印象を後から取消事由にできない3 伝聞的な悪評だけで内定を取り消さない第4 神戸弘陵学園事件が示す有期契約と試用期間の区別1 適性評価のための期間は試用期間と解され得る2 契約書の名称だけで当然終了にはならない第5 下級審裁判例にみる能力・協調性評価1 EC委員会駐日代表部事件―具体的な成果物と指示対応2 ライトスタッフ事件―短い観察期間と使用者側の対応3 246設計事件―指示不足と改善経過4 三事件を比較した実務上の軸第6 法律事務所の採用評価への射程1 直接の法律事務所事案は確認できていない2 「自走性」は権限の境界を守る能力として評価する3 起案能力は完成物と修正過程の双方で見る4 協調性は異論の有無ではなく業務行動で見る第7 採用から本採用判断までの記録方法1 募集前に職務要件と評価尺度を決める2 内定前に確認できる事項を後回しにしない3 試用開始時に期待と支援を共有する4 事実,指導,本人の説明及び改善を一組で残す5 本採用拒否前により軽い対応を検討する第8 関連記事第9 出典・確認状況1 判例秘書で全文を確認した裁判例2 裁判所及び厚生労働省の公開資料3 法令4 調査範囲の限界
第1 最初に区別すべき三つの段階
1 採用選考中,採用内定後及び試用開始後を分ける

採用をめぐる紛争では,①労働契約が成立する前の不採用,②採用内定によって労働契約が成立した後の内定取消し,③試用を目的とする労働契約が始まった後の本採用拒否を分ける必要がある。
同じ「採用しない」という言葉が用いられても,契約締結前の選考と,成立済みの労働契約を終了させる行為とでは,法的な出発点が異なる。

採用内定によって労働契約が成立したかは,内定通知の名称だけでなく,募集,応募,採用通知,誓約書,入所予定日,労働条件及びその後に別の契約締結行為が予定されていたかによって判断される。
試用期間も,通常は労働契約が成立した後に適格性を観察する期間であり,本採用拒否を新規の不採用と同じように扱うことはできない。

2 この記事の結論

採用内定取消し又は本採用拒否の適法性は,「能力が足りない」,「協調性がない」,「自走できない」等の抽象的な人物評価だけでは決まらない。
採用時に何を職務要件として示したか,問題となる事実をいつ知ることができたか,実際にどの業務をどの程度観察したか,指示・教育・支援が十分であったか,本人に説明及び改善の機会を与えたか,より軽い対応が可能でなかったかを具体的に検討する必要がある。

判例秘書で全文を確認した裁判例を比較すると,職務上の成果物,誤り,報告,指示への対応及び改善経過が具体的に立証された事案と,短い観察期間,伝聞的な悪評又は使用者側の指示不足に依拠した事案との違いが重要である。
法律事務所でも,期限管理,起案,法令・判例調査,依頼者対応,守秘,所内連携等を観察可能な行動へ分解し,採用時の説明から試用期間中の記録まで一貫させる必要がある。

第2 三菱樹脂事件が示した試用期間の法理
1 本採用拒否は留保解約権の行使である

最高裁判所大法廷昭和48年12月12日判決(昭和43年(オ)第932号,民集27巻11号1536頁,三菱樹脂事件)は,当該事案の試用契約を,労働契約の成立と同時に雇用の効力が確定する一方,試用期間中に不適格と認めた場合の解約権を留保した労働契約と捉えた。
したがって,本採用拒否は,契約締結前の不採用ではなく,成立した労働契約について留保された解約権を行使する解雇に当たる。

試用の趣旨は,採否決定時には十分に調査できない資質,性格,能力その他の適格性を,採用後の調査又は観察によって判断することにある。
そのため,通常の解雇より広い範囲で解約権の行使が認められ得るが,無制限ではない。

2 客観的合理性と社会通念上の相当性が必要である

同判決は,採用後の調査又は試用期間中の勤務状態等により,当初知ることができず,又は知ることを期待できない事実を知った場合に,その事実に照らして引き続き雇用することが相当でないと判断することが,解約権留保の趣旨及び目的から客観的に相当と認められるときに解約権を行使できるとした。
判決は,留保解約権の行使について,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当として是認できることを要求している。

法律事務所でいえば,採用前に確認できた単なる印象を後から言い換えるだけでは足りず,入所後のどの業務で,どのような事実が新たに分かり,職務又は依頼者への影響がどの程度であったかを示す必要がある。
もっとも,最高裁判決は本採用拒否を最終的に有効と確定したものではなく,原判決を破棄して東京高等裁判所へ差し戻した判決である。

3 思想・信条に関する判示と現在の採用実務を分ける

三菱樹脂事件は,学生運動歴等に関する身上書及び面接回答をめぐって,私企業の採用の自由,憲法の私人間効力及び労働基準法3条の適用範囲を判示した歴史的事件でもある。
しかし,昭和48年当時の判示を,現在の採用担当者が思想・信条その他の職務と関係のない情報を自由に収集できる根拠として用いるべきではない。

現在は,職業安定法5条の5により,求職者等の個人情報は業務目的の達成に必要な範囲内で目的を明らかにして収集することが原則とされ,厚生労働省は本人の適性及び能力に基づく公正な採用選考を求めている。
本籍,家族,宗教,支持政党,人生観,労働組合活動等を把握しないという現在の行政指針及び個別法上の差別禁止と,三菱樹脂事件の歴史的判示は,時間層を分けて理解する必要がある。

第3 大日本印刷事件及びオプト事件が示す内定取消しの限界
1 採用内定による契約成立は事実関係から判断する

(続きを読む...)採用内定取消し・試用期間・本採用拒否の判例法理―三菱樹脂事件,大日本印刷事件及び下級審裁判例の法律事務所への射程(AI作成)

就業規則による定年制の新設――既存の従業員に適用できるか,労働契約法10条と合理性の判断要素(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 対象2 結論第2 定年制の新設と就業規則の拘束力1 秋北バス事件2 労働契約法との関係3 定年の新設は不利益といえるか第3 合理性の判断1 考慮要素2 定年制の新設に当てはめる場合3 個別の同意と,賃金・退職金に波及する場合第4 法令上の制約1 高年法2 男女で異なる定年第5 手続1 作成・届出と意見聴取2 過半数代表者の選出3 周知第6 定年制を新設する前に確認する事項第7 関連記事第8 出典1 法令(e-Gov法令検索)2 裁判例(裁判所HPの裁判例検索)3 行政通達・行政資料
第1 本記事の対象と結論
1 対象

本記事は,これまで定年の定めがなかった会社が,就業規則で定年制を新しく設け,既に働いている従業員にも適用しようとする場面を扱う。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は,退職に関する事項について就業規則を作成して届け出なければならないが(労働基準法89条柱書・3号),それより小さな会社では,就業規則がなく,定年の定めもないまま年月が経っていることがある。
その会社が就業規則を初めて作り,あわせて定年を定める場合には,施行の時点で定年年齢に近い従業員や,既に定年年齢を超えている従業員がいることが少なくない。

本記事は,最高裁判例,労働契約法とその施行通達,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」という。)及び厚生労働省の資料を,e-Gov法令検索,裁判所HPの裁判例検索及び厚生労働省の法令等データベースで確認して整理したものである。
基準日は2026年9月13日である。

2 結論

結論を先に示すと,次のとおりである。
①定年の定めがないことは終身雇用を保障するものではなく,就業規則で新たに定年を定めても既得権の侵害にはならない(最高裁大法廷昭和43年12月25日判決)。
②もっとも,既存の従業員に定年の定めを及ぼすには,その就業規則の条項が合理的なものであることを要し,就業規則が既にある会社で定年の条項を加える場合は労働契約法10条の問題となる。
③合理性は,不利益の程度,必要性,内容の相当性,経過措置や代償措置,労働組合等との交渉の経緯などを総合して判断され,施行後すぐに定年に達する者への配慮を欠いたり,特定の者を退職させる狙いがうかがわれたりすると,否定される方向に働くと考えられる。
④定年は60歳を下回ることができず(高年法8条),65歳未満の定年とする場合は65歳までの雇用確保措置が必要である(同法9条1項)。
⑤過半数代表者からの意見聴取と周知の手続も,合理性の判断で考慮され得る。

第2 定年制の新設と就業規則の拘束力
1 秋北バス事件
(1) 事案

最高裁大法廷昭和43年12月25日判決(昭和40年(オ)第145号,民集22巻13号3459頁,秋北バス事件)は,定年制の新設を正面から扱った最高裁判例である。
会社には一般の従業員について50歳の停年の定めがあったが,主任以上の職にある者には停年の定めが適用されていなかった。
会社は,昭和32年4月1日に就業規則を改正して主任以上の職にある者の停年を55歳と定め,既に55歳に達していた従業員に対し,同月25日付で解雇を通知した。

(2) 判断

同判決は,就業規則は合理的な労働条件を定めている限り法的規範としての性質を持つとした上で,次のように述べた。
「新たな就業規則の作成又は変更によつて、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいつて、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであり、これに対する不服は、団体交渉等の正当な手続による改善にまつほかはない。」
さらに,「新たな停年制の採用のごときについても、それが労働者にとつて不利益な変更といえるかどうかは暫くおき、その理を異にするものではない。」とした。

同判決は,定年の定めがないことの意味について,「労働契約に停年の定めがないということは、ただ、雇用期間の定めがないというだけのことで、労働者に対して終身雇用を保障したり、将来にわたつて停年制を採用しないことを意味するものではなく」と述べ,新たに停年を定めても既得権侵害の問題は生じないとした。
また,定年制は,人事の刷新や経営の改善等のために行われるものであって,「一般的にいつて、不合理な制度ということはできず」とした。
その上で,再雇用の特則が設けられて苛酷な結果を緩和する途が開かれていたこと,現にその従業員にも嘱託として再雇用する旨の意思表示がされていたこと等を総合して,改正後直ちに適用されて解雇される者との関係でも条項は不合理ではなく,信義則違反や権利濫用にも当たらないとした。
なお,同判決は,この条項を定年に達したことを理由とする解雇の定めと解し,これに基づく解雇は労働基準法20条の解雇の制限に服するとも述べている。

(3) 現在の目で読むときの注意

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退職勧奨の適法性と進め方―違法となる場合,諭旨退職・解雇との違い及び配転・降格との関係(AI作成)

目次第1 退職勧奨の法的性質1 退職勧奨とは何か2 本記事の対象第2 退職勧奨が違法となる場合1 裁判例が示した判断の枠組み2 下関商業高校事件の位置付け3 法令による制約第3 退職勧奨の進め方1 面談の前に決めておくこと2 面談での説明3 労働者が拒否した場合4 合意の成立と記録第4 諭旨退職・解雇・配転・降格との関係1 諭旨退職は懲戒処分であること2 解雇との違い3 配転・降格と同じ機会に行う場合第5 雇用保険の離職理由第6 関連する山中弁護士ブログの記事第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例

第1 退職勧奨の法的性質

1 退職勧奨とは何か

退職勧奨は,使用者が労働者に対し,合意による労働契約の終了(合意退職)又は労働者自身による退職を促す働きかけである。
使用者が一方的に労働契約を終了させる解雇とは異なり,退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由な意思に委ねられる。
解雇は,「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされている(労働契約法16条)が,同法には,退職勧奨それ自体の要件を定めた規定はない。

期間の定めのない雇用では,労働者はいつでも解約の申入れをすることができ,雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する(民法627条1項)。
退職勧奨に応じた労働者が退職届を提出した場合,それが労働者からの一方的な解約の申入れなのか,使用者の承諾によって成立する合意退職の申込みなのかによって,撤回できるかどうかが問題になることがある。
退職日や条件を明確にするためにも,後記第3の4のとおり,合意の内容を書面に残しておくことが考えられる。

2 本記事の対象

本記事は,民間企業の使用者が個々の労働者に退職を勧める場面を対象として,退職勧奨が違法となる場合,面談の進め方,諭旨退職・解雇・配転・降格との関係及び雇用保険上の扱いを説明する。
希望退職の募集や整理解雇は対象としない。
本記事の記載は,令和8年9月11日時点の法令及び公表資料に基づく。

第2 退職勧奨が違法となる場合

1 裁判例が示した判断の枠組み

東京地裁平成23年12月28日判決(日本アイ・ビー・エム退職勧奨事件)は,「退職勧奨は,勧奨対象となった労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動であるが,これに応じるか否かは対象とされた労働者の自由な意思に委ねられるべきものである。」とした。
その上で,使用者は,説得活動の手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しない限り,正当な業務行為として退職勧奨を行い得るとした。
他方,社会通念上相当と認められる限度を超えて,労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり,その名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりすることによって,その自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をした退職勧奨は,違法なものとして不法行為を構成するとした。

同判決は,退職勧奨の対象となった理由(業績不良の具体的事実等)を説明し,退職した場合の支援策を具体的に説明して再検討を求めることは,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱した態様でない限り許容されるとした。
また,労働者が消極的な意思を表明しただけで直ちに説得活動を終了しなければならないものではないが,退職勧奨に応じない意思が堅固であり,面談に応じられないことを明確に表明し,上司にその旨を確実に認識させた段階で,それ以降の説得活動は社会通念上相当な範囲を逸脱した違法なものと評価されることがあり得るとした。

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有期雇用契約における試用期間-設定と契約終了の法的整理(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 試用期間を置けば解雇しやすくなるわけではないこと第2 有期契約と試用期間の二つの組合せ1 有期契約の中に別の試用期間を置く場合2 有期契約そのものを適性判断の期間とする場合3 無期契約への移行条件を明確にすること第3 試用期間を設定するときに書面で分ける事項1 契約期間と試用期間を別々に記載すること2 終了場面まで区別して記載すること3 評価基準と運用を一致させること4 長さと延長を自動的に決めないこと第4 試用期間中に雇用を終了する場合1 労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」2 試用契約における留保解約権の限界3 採用後14日以内は自由解雇期間ではないこと第5 試用結果を契約期間満了時に扱う場合1 期間満了と雇止めの制限2 更新申込み又は異議を遅らせないこと第6 紛争になったときに先に確認する資料1 共通して確認する資料2 使用者側と労働者側で確認する事実3 高負担の調査へ進む条件第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 行政機関の解説及び掲載資料4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,有期労働契約の契約期間内に別の試用期間を置く場合と,有期労働契約そのものを適性判断のために用いる場合を区別し,令和8年9月6日現在の法令及び裁判例に基づいて,設定時と契約終了時の問題を整理する。
有期労働契約の期間,更新,雇止め及び無期転換の一般的な制度は,有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルール(AI作成)で別に扱っている。

2 試用期間を置けば解雇しやすくなるわけではないこと

試用期間の設定可否及び長さを一律に定める一般的な条文はなく,中央労働委員会サイトに掲載された令和7年度労使関係セミナー資料も,設定の可否及び長さ等について現行法上特別の規制はないと整理している。
もっとも,契約書に「試用期間」と書くだけで,契約期間途中の解雇又は期間満了時の雇止めが容易になるわけではない。

有期労働契約に試用期間を設けるときは,①契約の存続期間,②適格性を評価する期間,③試用期間中に雇用を終了する場合,④契約期間満了後の更新又は無期契約への移行を分けて設計する必要がある。
特に,試用期間中の解雇は有期労働契約の期間途中の解雇であるから,少なくとも労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」が必要となる。

第2 有期契約と試用期間の二つの組合せ
1 有期契約の中に別の試用期間を置く場合

例えば,契約期間を令和8年4月1日から令和9年3月31日までの1年間とし,そのうち最初の3か月を試用期間とする設計がある。
この場合,試用期間の満了は1年間の労働契約の満了ではなく,試用期間を通過した後も同じ有期労働契約が残りの期間について続くのが基本である。

試用期間満了後に無期契約又は別の職種へ移行させる予定がある場合は,同じ有期契約が続く場面と,新しい契約を締結する場面を区別しなければならない。
「本採用」という一語だけでは,試用終了後も同じ有期契約が続くのか,無期契約又は正社員契約へ切り替わるのかが明らかにならない。

2 有期契約そのものを適性判断の期間とする場合

「まず6か月の有期契約を締結し,適性があれば無期契約へ移行する」という設計では,6か月が契約の存続期間なのか,無期契約に付された試用期間なのかが問題となり得る。
最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決(平成元年(オ)第854号,民集44巻4号668頁,神戸弘陵学園事件)は,新規採用の際に設けた期間の趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断することにある場合,期間満了によって契約が当然に終了する旨の明確な合意等の特段の事情がない限り,その期間を契約の存続期間ではなく試用期間と解するのが相当であるとした。

同判決では,契約期間が「一応」1年と説明されたこと,長期勤務を期待させる発言があったこと,1年で当然に終了すると記載した契約書への署名が就労開始後であったこと等が問題となり,原判決が破棄されて更に審理するため差し戻された。
したがって,契約書の名称だけでなく,募集時及び面接時の説明,契約締結の時期,期間を定めた業務上の理由,無期契約への移行手続並びに実際の運用を整合させることが重要となる。

3 無期契約への移行条件を明確にすること

最高裁平成28年12月1日第一小法廷判決(平成27年(受)第589号,福原学園事件)は,1年の有期労働契約を締結し,更新限度を3年とした事案を扱った。
同事件の規程は,勤務成績を考慮して使用者が任用を必要と認め,かつ,労働者が希望した場合に無期の職種へ異動できると定めており,最高裁は,3年の経過だけで当然に無期労働契約へ移行したとする原審の判断を破棄した。

同判決は,期間満了後の無期契約への移行が自動であるのか,使用者の判断及び労働者の希望を要するのかを,規程と契約締結時の認識から区別したものである。
もっとも,この判断は,更新に関する労働契約法19条の適用を一般に否定するものではなく,契約の更新と無期契約への移行は別の問題である。

第3 試用期間を設定するときに書面で分ける事項
1 契約期間と試用期間を別々に記載すること

労働基準法15条及び労働基準法施行規則5条により,使用者は,労働契約の締結時に,契約期間,更新する場合があるときの基準,更新上限がある場合の内容,賃金,労働時間,就業場所及び業務並びに退職に関する事項等を明示しなければならない。
試用期間中に賃金,職務又は勤務場所を異ならせる場合は,その労働条件も明確にする必要がある。

労働契約法4条2項は,期間の定めに関する事項を含む労働契約の内容について,労働者と使用者ができる限り書面で確認するものとしている。
本記事では,有期契約に試用期間を置く場合,法令上の明示事項と同じ書面又は相互に参照できる書面に,契約期間と試用期間を別々に記載することを基本形とする。

2 終了場面まで区別して記載すること

設定時に区別する事項は,①有期契約の開始日と満了日,②試用期間の開始日と満了日,③評価の目的・項目・時期,④試用期間中の労働条件,⑤試用期間満了後も同じ有期契約が続くのか,⑥有期契約を更新する可能性及び判断基準,⑦無期契約又は正社員契約への移行制度がある場合の申込み・判断・契約締結の手続である。
「試用期間中又は満了時に不適格と判断したときは契約を終了する」とだけ定めても,期間途中の解雇に関する労働契約法17条1項を排除することはできない。

3 評価基準と運用を一致させること

適格性の評価は,担当業務と採用時に示した職務要件に結び付け,評価者,中間面談,指導又は支援,説明の機会及び最終判断日をあらかじめ設計することが考えられる。
評価記録には「能力がない」「協調性に欠ける」という結論だけでなく,いつ,どの業務について,何を求め,どのような行動と結果があり,本人がどのように説明したかを残すことが有用である。

評価資料は解雇を正当化するためだけの記録ではない。
契約内容との不一致,教育又は情報の不足,評価者ごとの基準の違いを早期に発見し,契約を続けられるかを判断する資料でもある。

4 長さと延長を自動的に決めないこと

中央労働委員会サイト掲載の前記セミナー資料は,採用後3か月から6か月程度を試用期間とすることが企業実務では一般に行われていると説明する一方,適格性の評価に必要な期間を超えて労働者を長期間不安定な状態に置くことは適当でないと整理している。
3か月又は6か月であれば当然に有効となるわけではなく,職務内容,採用時に確認できた事項,実際の観察機会及び有期契約全体の長さに照らして設定する必要がある。

延長についても,判断を先送りするために自動的に行うのではなく,就業規則又は契約上の根拠,採用時に予見できなかった事情,観察できなかった項目,延長期間及び延長後の判断日を確認することが考えられる。
延長が有期契約の満了日を越える場合は,試用期間の延長だけでは処理できず,契約更新又は新しい契約の問題となる。

第4 試用期間中に雇用を終了する場合

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定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるか(AI作成)

第1 条件変更を断っただけで契約終了になるわけではない第2 契約途中の変更・更新拒絶・変更への同意を分ける1 契約途中では勤務表だけを変えても足りない2 更新時には労働契約法19条の要件を確認する3 署名があっても同意の経緯を確認する第3 結論が分かれた西田通商事件と東光高岳事件1 西田通商事件――週5日から週3日への変更と雇止め無効2 東光高岳事件――更新期待を認めた上で更新拒絶を有効とした例3 二つの判決から確認できる比較の視点第4 65歳までの雇用確保と同一労働同一賃金との関係1 65歳までの雇用確保は旧賃金の当然の保障とは異なる2 本人の前年との比較と通常の労働者との比較は別である第5 労働者が更新前に行う確認と記録1 旧条件での更新希望と就労意思を伝える2 手元の資料を先にそろえ,説明を求める3 就労を拒まれた期間の賃金と時効を確認する第6 会社側の提案準備と,交渉・手続へ進む判断第7 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例3 所管行政機関のQ&A・改正案内4 法律事務所の事件紹介
第1 条件変更を断っただけで契約終了になるわけではない

定年後再雇用の契約更新時に,会社が勤務日数や賃金を引き下げる条件を提案することは,一律に禁止されていない。
しかし,労働者がその提案に同意しなかったという理由だけで,会社が従前の条件による更新を自由に拒絶できるわけではない。
変更の合意が成立するかという問題と,労働契約法19条によって雇止めが制限されるかという問題を分けて考える必要がある。

週5日勤務を週3日に減らし,月給を日数に比例して減らす場合も,日給・時給が変わらないことだけでは結論は決まらない。
西田通商事件では,このような変更を拒否した労働者の雇止めが無効とされた一方,東光高岳事件では,事情の異なる条件変更の提案について更新拒絶が有効とされている。

本記事は,令和8年8月31日現在の法令と確認できた裁判例に基づき,民間企業の定年後の有期再雇用契約を更新する場面を扱う。
定年直後に初めて再雇用契約を結ぶ場面や,勤務日数の最低保証がない変動シフトについては前提が異なるため,まず契約上の日数・時間・賃金を確認する。

第2 契約途中の変更・更新拒絶・変更への同意を分ける
1 契約途中では勤務表だけを変えても足りない

労働契約法8条は,労使の合意による労働条件の変更を認めている。
契約上,週5日勤務と月給が定められている場合に,会社が勤務表を週3日に書き換えただけで,契約上の日数と賃金も当然に変更されたことにはならない。

同意のない就業規則による不利益変更は,同法9条の原則と10条の例外に従って判断する。
10条では,変更後の就業規則の周知に加え,不利益の程度,変更の必要性,内容の相当性,労働組合等との交渉状況その他の事情に照らした合理性が問題となる。
就業規則の変更によっては変更しないと個別に合意した条件には,同条ただし書の検討も残る。

また,同法12条により,就業規則の基準に達しない条件を定めた個別契約は,その部分について無効となり,就業規則の基準による。
したがって,会社と本人が合意したかだけでなく,適用される再雇用規程・賃金規程との関係も確認する。

2 更新時には労働契約法19条の要件を確認する

更新時に新条件で合意できなかった場合は,労働者の旧条件による更新申込みを会社が拒絶してよいかが問題となる。
労働契約法19条による保護を検討する順序は,次のとおりである。

①反復更新の実態から雇止めを無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合(1号),又は更新への期待に合理的な理由がある場合(2号)に当たるか。
②労働者が,契約満了日までに更新を申し込み,又は満了後遅滞なく有期契約の締結を申し込んだか。
③会社の拒絶が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないか。

これらの要件を満たすと,会社は「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」とされる。
更新期待があるだけで旧条件の更新が決まるわけではないが,新条件を提示しただけで同条の適用を避けられるわけでもない。
更新期待・不更新条項・無期転換の一般的な説明は,有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルールを参照されたい。

3 署名があっても同意の経緯を確認する

最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決(平成25年(受)第2595号,山梨県民信用組合事件)は,不利益変更への同意について,労働者の自由意思に基づくと認めるに足りる客観的に合理的な理由があるかを慎重に判断すべきであるとした。
不利益の内容・程度,同意に至る経緯,事前の情報提供や説明等が問題となる。

これは退職金の変更に関する破棄差戻し判決であり,再雇用契約への署名を一律に無効としたものではない。
再雇用の更新でも,署名の有無に加え,変更後の勤務日数・年収・賞与が説明されたか,検討の機会があったか,異議や留保をどのように伝えたかを確認することが考えられる。

第3 結論が分かれた西田通商事件と東光高岳事件
1 西田通商事件――週5日から週3日への変更と雇止め無効

横浜地裁令和6年6月27日判決(令和4年(ワ)第1403号,労働判例1346号17頁)は,定年後の再雇用者に対し,週5日・基本賃金月額20万0998円から,週3日・月額12万0599円への変更が提案された事案である。
労働者は旧条件での更新を求めたが,会社は契約を更新しなかった。
裁判所HP未掲載であり,判例秘書で判決本文を確認した。

裁判所は,再雇用に関する規程,契約内容,更新の経過等から,雇用継続への合理的期待を認めた。
契約書に,更新時には個別合意の上で労働条件を変更することがあると記載されていても,合意できなければ当然に契約が終了するとは扱わなかった。

日給・時間給に換算した賃金単価は変わらなかったが,裁判所は,月額約12万円で家計を維持することや,空いた曜日に別の仕事を確保することの難しさを考慮した。
会社の業績悪化についても,雇止め後に別の労働者を再雇用し,役員報酬を増額した事情や,本人が売上げに直結しない業務にも従事していた事情を検討し,提示条件を不合理と判断した。

結論として,雇止めを無効とし,旧条件による契約の更新を認め,労働者の地位確認及び未払賃金の請求を認容した。
ただし,鈴悠法律事務所の事件紹介には控訴後和解と記載されており,本判決の判断がそのまま確定したと扱うことはできない。

2 東光高岳事件――更新期待を認めた上で更新拒絶を有効とした例

東京高裁令和6年10月17日判決(令和6年(ネ)第2731号,労働判例1323号5頁)は,定年後再雇用の契約満了と吸収合併が重なり,存続会社の制度に合わせた条件変更が提案された事案である。
提案には,週4日から週5日に勤務を増やしながら基本賃金を約15%減らす案と,週4日勤務のまま賃金を月額換算で約51%減らす案があり,業務内容を修正した案も提示された。
裁判所HP未掲載であり,判例秘書及び掲載誌の判決本文を確認した。

高裁は,労働契約法19条2号の更新期待は,同一条件での更新への期待に限らず,条件変更を伴う更新への期待も含むとした。
その上で,65歳までの継続雇用を原則とする規程等から更新期待を認め,労働者の旧条件による更新申込みを会社が拒絶したと判断した。

もっとも,高裁は,従前と同一の条件で更新されるとの期待に合理的理由があるとは認め難いとした。
被吸収会社の経営悪化,存続会社の再雇用者との条件統一の必要性,他の再雇用者の同意,担当事業からの撤退予定,事前説明と複数案の提示等を検討し,存続会社自体の業績が堅調であることや大幅な減額も考慮した上で,更新拒絶を有効として控訴を棄却した。

原審の東京地裁令和6年4月25日判決(令和4年(ワ)第6348号,労働判例1318号27頁。裁判所HP未掲載。判例秘書により確認)は,19条2号の更新期待を同一条件によるものに限定していたが,高裁はこの限定を採用していない。
また,高裁判決は約51%の減額を一般的に許容したものでも,低い条件の契約が本人の同意なしに成立するとしたものでもない。

3 二つの判決から確認できる比較の視点

本記事では,両判決の分岐を,次の資料を比較する際の視点として整理する。
いずれも個別の事情を組み合わせた判断であり,一つの事情があれば必ず有効・無効になるという基準ではない。

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能力不足・協調性不足による普通解雇―改善指導・配置転換・解雇回避措置と裁判例(AI作成)

第1 能力不足・協調性不足による普通解雇の判断枠組み

1 本記事の対象

2 労働契約法16条と就業規則

3 回数・期間による安全基準はない

第2 雇用契約上の能力・職務・評価基準を確定する

1 一般職と職務限定・高度専門職

2 採用時資料と変更範囲の明示

3 相対評価だけでは足りない

第3 能力不足を具体的な事実と業務影響で示す

1 評価語を事実へ置き換える

2 業務への影響を確認する

3 使用者側の原因を切り分ける

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高年齢者雇用安定法の60歳・65歳・70歳ルールと制度の沿革(AIリライト)

第1 現行法の全体像1 この記事の対象と基準日2 60歳未満の定年は禁止される3 65歳までの雇用確保措置は義務である4 70歳までの就業確保措置は努力義務である第2 65歳までの高年齢者雇用確保措置1 三つの措置2 希望者全員を対象とする原則と例外3 継続雇用先の範囲4 契約期間・賃金・勤務時間5 行政上の措置と個別契約上の効果第3 70歳までの高年齢者就業確保措置1 五つの選択肢2 創業支援等措置の手続第4 制度の沿革1 60歳定年の努力義務から義務化まで2 65歳までの雇用確保措置3 希望者全員の継続雇用4 70歳までの就業機会第5 高年齢雇用継続給付1 制度の対象2 最大支給率3 賃金自体の保障とは別の制度である第6 継続雇用制度と個別の労働契約1 津田電気計器事件最高裁判決2 判決の射程第7 統計から見た企業の対応1 令和4年就労条件総合調査2 令和7年高年齢者雇用状況等報告3 二つの統計は分母が異なる第8 関連記事第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 法定指針・基本方針4 行政資料5 統計
第1 現行法の全体像
1 この記事の対象と基準日

高年齢者雇用安定法は,正式には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という。
本記事では,令和8年9月3日現在の法令等に基づき,定年を定める場合の最低年齢,65歳までの雇用確保義務,70歳までの就業確保の努力義務及び高年齢雇用継続給付を整理する。

同法は,船員職業安定法上の船員には適用されない。
また,国家公務員及び地方公務員には,定年の引上げ及び継続雇用制度等を定める同法第2章などが適用されない(同法7条)。

2 60歳未満の定年は禁止される

事業主が定年を定める場合,その年齢は原則として60歳を下回ることができない(高年齢者雇用安定法8条)。
これは60歳定年を義務付ける規定ではなく,定年を定めるならば原則として60歳以上にしなければならないという最低年齢の規定である。

3 65歳までの雇用確保措置は義務である

65歳未満の定年を定めている事業主は,①定年の引上げ,②継続雇用制度の導入,③定年の廃止のいずれかを講じなければならない(同法9条1項)。
この高年齢者雇用確保措置は企業規模にかかわらない法的義務であるが,直ちに65歳定年制を採用しなければならないという意味ではない。

4 70歳までの就業確保措置は努力義務である

65歳以上70歳未満の定年を定めている事業主又は70歳未満までの継続雇用制度を導入している事業主は,65歳から70歳までの就業機会を確保するよう努めなければならない(同法10条の2)。
65歳までの措置が雇用の確保を内容とする法的義務であるのに対し,70歳までの措置は雇用以外の選択肢も含む努力義務である。

第2 65歳までの高年齢者雇用確保措置
1 三つの措置

65歳未満定年の事業主が選択できる高年齢者雇用確保措置は,①定年を65歳まで引き上げること,②65歳までの継続雇用制度を導入すること,③定年制を廃止することである。
継続雇用制度には,定年後に改めて雇用契約を締結する再雇用制度と,同一の雇用契約を定年後も存続させる勤務延長制度が含まれる。

2 希望者全員を対象とする原則と例外

継続雇用制度を選ぶ場合,原則として定年後も働くことを希望する者全員を対象にしなければならない。
平成25年4月1日の改正法施行前に労使協定で設けた対象者基準を老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢に合わせて用いることができた経過措置は,令和7年3月31日に終了した。

もっとも,心身の故障により業務に堪えない場合又は勤務状況が著しく不良で職責を果たせない場合など,就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当するときは,継続雇用しないことができる。
この場合も,年齢に関する事由を用いることはできず,継続雇用しないことについて客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であることを要する(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A」Q1-1)。

3 継続雇用先の範囲

65歳までの継続雇用制度には,自社で引き続き雇用する制度のほか,法令上の特殊関係事業主が引き続き雇用する制度も含まれる。
この仕組みを利用するには,元の事業主と特殊関係事業主との間で,定年後の雇用を約する契約を締結する必要がある(高年齢者雇用安定法9条2項)。

4 契約期間・賃金・勤務時間

継続雇用後の労働時間,賃金及び待遇は,定年前と同一でなければならないわけではなく,関係法令を守った上で労使が話し合って定めることになる。

(続きを読む...)高年齢者雇用安定法の60歳・65歳・70歳ルールと制度の沿革(AIリライト)

有期労働契約の期間・更新・雇止め・無期転換ルール(AI作成)

第1 この記事が扱う有期労働契約1 契約期間の定めがある労働契約2 契約期間より先に契約単位を確定する3 1回の契約期間の上限第2 締結時及び更新時に明示される事項1 令和6年4月から追加された明示事項2 更新上限を新設又は短縮する場合3 現行の雇止め基準第3 契約期間途中の解雇及び退職1 使用者による期間途中の解雇2 労働者による期間途中の退職第4 無期転換申込権1 発生要件及び申込みができる期間2 申込みの効果及び無期転換後の労働条件3 無契約期間による通算の中断4 申込権の事前放棄及び特例第5 雇止めを制限する労働契約法19条1 雇止め法理の適用要件2 更新期待の合理性を判断する事情3 更新上限及び不更新条項4 雇止め理由とは別の禁止規定第6 主要裁判例が示す区別1 雇止め法理の形成と法定化2 有期契約の更新と無期契約への移行3 期間途中の解雇と期間満了第7 待遇及び実務上の確認事項1 有期契約労働者の待遇2 使用者及び労働者が確認する資料第8 出典・参考資料1 法令・告示2 裁判例3 厚生労働省資料第1 この記事が扱う有期労働契約1 契約期間の定めがある労働契約

有期労働契約とは,契約の終了日が定められた労働契約である。「契約社員」「パート」「アルバイト」「嘱託」等の呼称ではなく,労働契約に期間の定めがあるかによって判断する。派遣労働者の場合,原則として労働契約上の使用者は派遣元であるため,派遣先との労働者派遣契約の終了と,派遣元との有期労働契約の終了を区別する必要がある。

本記事は,民間企業等における有期労働契約について,契約期間の上限,令和6年4月以降の労働条件明示,期間途中の解雇・退職,無期転換及び雇止めの順に,令和8年8月15日現在の制度を整理するものである。個別事案では契約書,就業規則,更新経過及び使用者の説明によって結論が変わるため,本記事は特定の事案に対する法的助言を目的とするものではない。

2 契約期間より先に契約単位を確定する

短期又は一日単位の勤務では,契約期間の上限や雇止めを検討する前に,各勤務ごとに独立した契約が成立するのか,将来の勤務枠まで含む包括的・継続的な有期契約が成立するのかを確定する必要がある。労働契約は当事者の合意により成立し(労働契約法6条),署名押印は一般的な成立要件ではない。

各回の新たな募集・依頼・承諾,双方の拒否の自由,勤務日の変動,他の労働者への代替及び回ごとの条件変更は,一勤務ごとの契約を示す事情となり得る。固定曜日の継続担当,勤務枠の恒常的確保,シフトへの自動的な組込み,将来分の一括合意及び更新を期待させる具体的説明は,包括的な契約を示す事情となり得る。

確定済みの一勤務を使用者が取り消す場合は,成立済みの有期契約の期間途中の終了として労働契約法17条が問題になり得る。これに対し,将来分の包括契約がなく,まだ個別の依頼・承諾もない勤務を依頼しない場合は,終了対象となる契約が存在するかを先に確認する。短期契約が反復されたときは,契約単位が短いという理由だけで同法19条の適用可能性がなくなるものではない。

医師のスポット勤務に即した判断事情及び証拠は,スポット勤務医師の労働契約は一勤務ごとか―定期非常勤との区別,確定シフトの取消し・雇止め・証拠(AI作成)参照。

3 1回の契約期間の上限

労働基準法14条により,1回の有期労働契約の期間は原則として3年を超えることができない。高度の専門的知識等を有する労働者及び満60歳以上の労働者については5年までとすることができ,一定の事業の完了に必要な期間を定める契約については,その事業の完了に必要な期間を定めることができる。

この上限は1回の契約期間に関するものであり,更新後を含む通算契約期間の一般的上限ではない。1回の契約期間,更新回数又は通算契約期間について使用者が設ける更新上限,労働契約法18条の通算5年ルールは,それぞれ別の制度である。

第2 締結時及び更新時に明示される事項1 令和6年4月から追加された明示事項

労働基準法15条及び労働基準法施行規則5条により,使用者は,労働契約の締結時に賃金,労働時間,契約期間その他の労働条件を明示しなければならない。令和6年4月1日以降は,全ての労働者について,就業場所及び業務の「変更の範囲」を締結時と有期労働契約の更新時に明示する必要がある。

有期労働契約については,更新上限,すなわち通算契約期間又は更新回数の上限の有無及び内容を,契約締結時と更新時ごとに明示する必要がある。無期転換申込権が発生する契約の更新時には,無期転換を申し込むことができる旨及び無期転換後の労働条件を明示しなければならない。申込権を行使しない意向を労働者が示した場合も,申込権が発生する更新時ごとの明示が必要である。具体的な記載例は,厚生労働省の令和6年4月からの労働条件明示ルール変更案内及び改正労働基準法施行規則等に係るQ&Aで確認できる。

2 更新上限を新設又は短縮する場合

契約締結後,契約の変更又は更新に際して更新上限を新設し,又は従前の上限を短縮しようとする場合,使用者は,あらかじめその理由を労働者に説明しなければならない。説明方法は法令上限定されていないが,説明した内容及び時期を後から確認できるよう,書面等の記録を残すことが紛争防止に資する。

更新上限を労働条件通知書に記載しなかったことだけから,直ちに私法上の上限が存在しないという結論が生じるとは限らない。他方,明示又は説明を欠いたことは,労働基準法上の問題となるほか,更新上限に関する合意の有無や,後述する更新期待の合理性を判断する事情になり得る。

3 現行の雇止め基準

厚生労働大臣は労働基準法14条2項に基づき,有期労働契約の締結,更新,雇止め等に関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)を定めている。令和6年4月1日以降の現行基準は,次の5項目で構成される。

①契約締結後に更新上限を新設し,又は短縮する場合の事前の理由説明,②3回以上更新した者又は雇入れから1年を超えて継続勤務した者に対する原則30日前までの雇止め予告,③労働者が請求した場合の雇止め理由証明書の遅滞ない交付,④1回以上更新し,かつ,1年を超えて継続勤務した者を更新する場合に契約期間をできる限り長くする努力義務,⑤無期転換後の労働条件を定める際に均衡を考慮した事項について説明する努力義務である。

30日前予告の対象からは,あらかじめ当該有期労働契約を更新しない旨が明示されているものが除かれる。雇止め理由証明書には,単なる「契約期間満了」ではなく,担当業務の終了,事業縮小,能力・勤務成績等,更新しなかった実質的な理由を記載することが求められる。これらの手続に違反したことだけで雇止めが当然に無効となるわけではないが,労働契約法19条による雇止めの審査とは別に履行すべき基準である。

第3 契約期間途中の解雇及び退職1 使用者による期間途中の解雇

労働契約法17条1項は,使用者が有期労働契約の期間途中に労働者を解雇するためには「やむを得ない事由」が必要であると定める。この要件は,期間の定めのない労働契約における労働契約法16条の解雇権濫用法理よりも厳格であり,使用者は,残りの契約期間を含めて雇用を継続することが困難な事情を具体的に示す必要がある。

同条2項は,使用者に対し,労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定め,その契約を反復更新しないよう配慮することも求めている。有期契約であれば終了させやすいとは限らず,期間途中の解雇と期間満了時の雇止めでは要件が異なる。

有期労働契約に試用期間を設ける場合の契約設計,期間途中の解雇及び期間満了時の取扱いについては,有期雇用契約における試用期間-設定と契約終了の法的整理(AI作成)を参照されたい。

2 労働者による期間途中の退職

労働者側が期間途中に退職する場合は,労働契約法17条1項ではなく,民法628条が基本となる。同条は,当事者にやむを得ない事由がある場合,直ちに契約を解除できるとする一方,その事由が一方当事者の過失によって生じた場合の損害賠償も定めている。

もっとも,一定の1年を超える有期労働契約については,労働基準法137条により,契約開始から1年を経過した後,労働者は使用者に申し出ることによっていつでも退職できる。一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約及び労働基準法14条1項各号に該当する契約は,この取扱いから除かれる。

これらの法定解除とは別に,労使が合意すれば,契約期間中でも合意した日をもって退職できる。また,労働者が一定の予告により期間途中に退職できる旨の,労働者に有利な契約条項又は就業規則がある場合は,その適用を確認する。有期契約であることだけで,合意退職や約定に基づく中途退職まで否定されるものではない。

派遣労働者については,派遣元との労働契約の終了と,派遣元・派遣先間の個別派遣契約の終了は別である。退職後に派遣先へ入社する際の雇用制限,紹介手数料及び中途解約等の費用については,派遣社員の直接雇用-雇用禁止条項,紹介手数料及び紹介予定派遣(AI作成)を参照されたい。

第4 無期転換申込権1 発生要件及び申込みができる期間

労働契約法18条により,同一の使用者との間で二つ以上の有期労働契約が締結され,契約期間を通算して5年を超える場合,労働者は期間の定めのない労働契約の締結を申し込むことができる。通算対象となるのは,平成25年4月1日以後の日を契約期間の初日とする有期労働契約である。

申込権は,通算契約期間が5年を超えることになる契約の初日から発生する。例えば,1年契約を5回更新して6年目の契約を締結する場合,6年目の契約の初日から満了日まで申込みができる。5年を経過した日の翌日に自動的に無期契約へ変わる制度ではなく,労働者の申込みが必要である。申込みをしないままさらに更新した場合も,その後の更新ごとに申込権が発生する。

「同一の使用者」は原則として労働契約の当事者である法人又は個人事業主を単位として判断する。1回限りの完成事業型契約が5年を超えても,「二以上の有期労働契約」という要件を満たさないため,同条による申込権は発生しない。この点は厚生労働省の労働契約法施行通達にも明記されている。
同一法人との契約が続く限り,職種,部署,勤務地,役職又は契約名称の変更だけで通算契約期間が当然にリセットされるものではない。法人格の異なる会社への転籍・再雇用又は事業譲渡等では,契約当事者,実態及び脱法目的の有無を個別に確認する。

2 申込みの効果及び無期転換後の労働条件

労働者が無期転換を申し込むと,使用者はその申込みを承諾したものとみなされ,拒否することはできない。ただし,申込み時の有期労働契約が直ちに無期契約へ変わるのではなく,その契約の満了日の翌日から無期労働契約が始まる。口頭による申込みが一律に排除されているわけではないが,申込日及び内容を確認できる書面又は電子メール等によることが望ましい。

無期転換後の労働条件は,契約期間を除き,原則として申込み時の有期労働契約と同一である。就業規則,労働協約又は個別合意に別段の定めがある場合はその定めが問題となるが,無期転換は当然に正社員化,昇給又は職務・勤務地限定の解除を意味しない。反対に,無期転換を理由として不合理に不利益な条件を設けることが当然に許されるわけでもなく,現行の雇止め基準5条は,他の労働者との均衡を考慮した事項について説明する努力義務を定めている。

3 無契約期間による通算の中断

有期労働契約の間に一定の無契約期間があると,その前の契約期間が通算されないことがある。直前までの通算契約期間が1年以上である場合は6か月以上の無契約期間が必要であり,1年未満の場合は次のとおりである。

直前までの通算契約期間通算を中断する無契約期間2か月以下1か月以上2か月超4か月以下2か月以上4か月超6か月以下3か月以上6か月超8か月以下4か月以上8か月超10か月以下5か月以上10か月超6か月以上

休職,育児休業その他の在籍したままの不就労期間は,労働契約が終了していないため,通常は無契約期間に当たらない。クーリング期間の計算例は,厚生労働省の無期転換ルールハンドブック2025で確認できる。

同一の使用者との間で引き続き有期労働契約を締結する場合,従前と異なる契約書を作成し,又は「更新」ではなく「新規契約」「再契約」と呼んだだけでは,通算契約期間が当然に中断するものではない。
通算から除外されるためには,労働契約法18条2項及び関係省令が定める無契約期間等を確認する必要がある。

更新上限後の再雇用をあらかじめ予定しながら,無期転換申込権の発生を避けるために形式的な無契約期間を設けた疑いがある場合は,使用者の同一性,業務の継続性,再雇用の約束及び制度の目的を含め,契約関係の実態を確認する必要がある。
厚生労働省の「無期転換ルールQ&A」も,契約更新上限を設けた上で形式的にクーリング期間を設定し,期間経過後の再雇用を約束して雇止めを行う場合,その雇止めが客観的に合理的な理由を欠くものとされる可能性があると説明している。

4 申込権の事前放棄及び特例

厚生労働省の労働契約法施行通達は,無期転換申込権が発生する前に,申込権を行使しないことを更新の条件とするなど,将来の申込権を放棄させる意思表示について,労働契約法18条の趣旨を没却し,公序良俗に反して無効と解されるとしている。申込権が発生した後の放棄についても,権利内容及び不利益を理解した自由な意思に基づくかを個別に確認する必要があり,定型書式への署名だけで一律に判断することはできない。

有期雇用特別措置法に基づく認定計画の対象となる高度専門職及び定年後継続雇用者には,通算契約期間の算定に関する特例がある。高度専門職については年収1,075万円以上等の要件があり,特定有期業務の期間中,最長10年まで無期転換申込権が発生しない。定年後継続雇用者についても,第二種計画の認定を受けた事業主等に定年後引き続いて雇用される期間が対象である。制度の対象と申請手続は,厚生労働省の無期転換ルール及び有期雇用特別措置法の案内で確認できる。

科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律15条の2又は大学教員任期法7条の対象となる研究者・教員等については,労働契約法18条1項の「5年」が「10年」と読み替えられる。しかし,大学で有期雇用されていることだけで一律に10年となるわけではない。任期を定める根拠,所属する教育研究組織,職位,担当業務,必要な資格・実務経験及び任期規程を確認する必要がある。

最高裁令和6年10月31日第一小法廷判決(令和5年(受)第906号)は,実務上の知識・経験を有する者を大学院の実務家教員として任用した事案について,大学教員任期法4条1項1号の要件を充足し,同法7条による10年の特例が適用され得ると判断した。同判決は,同号を殊更に厳格に解すべきではなく,最新の実務経験・知見を不断に採り入れることが望ましい教育上の役割にも着目して原判決を破棄し,差し戻したものである。したがって,判決は全ての大学教員を10年特例の対象としたものでも,雇止めの有効性を最終判断したものでもない。

大学教員任期法の10年特例と同判決の射程は,「大学教員の有期雇用と無期転換―大学教員任期法の10年特例と最高裁令和6年10月31日判決(AI作成)」で詳しく整理する。

第5 雇止めを制限する労働契約法19条1 雇止め法理の適用要件

有期労働契約は原則として期間満了により終了するが,労働契約法19条は,一定の場合に使用者の雇止めを制限する。同条が対象とするのは,①過去に反復更新された契約について,雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できる場合,又は②契約期間満了時に更新されるものと労働者が期待することについて合理的な理由がある場合である。

労働者は,契約期間満了日までに更新を申し込むか,期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結を申し込む必要がある。雇止めに異議を述べ,就労継続の意思を明らかにする行為も申込みと評価され得る。これらの要件を満たし,使用者の更新拒絶に客観的に合理的な理由がなく,社会通念上相当と認められない場合,使用者は従前の有期労働契約と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなされる。その効果は有期契約の更新であり,当然に無期契約又は正社員契約が成立するわけではない。

ただし,19条によって成立した更新後の有期契約は,18条の通算契約期間にも組み込まれる。例えば,1年契約が5年で満了する時点で使用者が6年目の更新を拒絶しても,19条により従前と同一条件で6年目の契約申込みを承諾したものとみなされれば,通算契約期間が5年を超えることになる。労働者は,その6年目の契約期間中に18条1項の無期転換申込みをすることができる。

19条の適用だけで自動的に無期契約へ転換するわけではない。まず更新申込みと19条の要件・効果を確定し,更新によって通算期間が5年を超えるかを再計算し,その後に18条の申込みの有無と始期を確認する。この順序を飛ばして,「満了時にちょうど5年だから18条は無関係」と結論付けないことが重要である。

更新時に賃金又は所定労働日数を引き下げる条件が提示された場合は,変更後の条件についての合意の成否と,従前の条件による更新申込みに対する拒絶が労働契約法19条によって制限されるかを分けて検討する必要がある。単に条件が折り合わなかったというだけで契約終了と判断せず,同条の適用要件及び申込みの有無を確認する。新しい契約書が作成されている場合も,署名の有無と併せて,従前の条件による更新を求めた時期,異議又は留保の内容,説明・交渉の経過を確認することが有用である(労働契約法8条・19条)。

定年後再雇用における更新条件の切下げと雇止めの具体例,更新前の対応については,定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるかを参照されたい。

定年後再雇用の制度については高年齢者雇用安定法に関するメモ書き,通常の労働者との待遇差については業務内容が変わらない定年後再雇用社員の賃金水準の目安も参照されたい。

2 更新期待の合理性を判断する事情

更新期待の合理性は,契約期間満了時を基準として,契約書の文言だけでなく,契約関係の全体から判断される。主な事情は,①業務が恒常的か臨時的か,②職務内容及び正社員との相違,③更新回数及び通算勤務期間,④更新手続が実質的な審査を伴っていたか又は形式化していたか,⑤採用時及び更新時の説明・言動,⑥同種労働者の更新・雇止め実績,⑦更新上限又は不更新条項の設定時期・内容・運用,⑧更新基準と実際の運用が一貫していたかである。

初回の契約でも,採用時の具体的な説明等によっては更新期待が成立する余地がある。他方,更新回数が多いことだけで労働契約法19条の適用が決まるわけではなく,業務の性質,更新審査及び契約締結時からの説明を含む総合判断となる。

3 更新上限及び不更新条項

採用時から更新上限が明確に示され,実際にも一貫して運用されている場合,上限を超える更新期待は認められにくくなる。他方,長期間の反復更新によって更新期待が形成された後に上限を新設し,労働者が不更新条項のある契約書に署名した場合も,従前の更新期待が当然に消滅するわけではない。署名しなければ直近の更新を受けられない状況,説明内容,例外運用及び労働者が雇用継続を求めた経過等を併せて検討する必要がある。

福岡地裁令和2年3月17日判決(平成30年(ワ)第1904号)は,約30年間に29回更新された契約について,平成25年以降の契約書に5年後は更新しない旨が記載されていた事案を扱った。同判決は,不更新条項のある契約書への署名だけから契約終了の明確な意思を認定せず,従前の形骸化した更新,例外を含む制度及び雇用継続を求めた経過等を踏まえて合理的な更新期待を認め,一般的な人件費削減等の理由では雇止めの合理性を肯定するには不十分であると判断した。これは個別事案の判断であり,全ての更新上限又は雇止めを無効とするものではない。

無期転換申込権の発生を避ける動機があったことだけで,更新上限又は雇止めが直ちに無効になると断定することもできない。もっとも,厚生労働省は,無期転換ルールの適用を免れる意図で申込権発生前に雇止め等を行うことは労働契約法18条の趣旨に照らして望ましくなく,従前の更新実績等によっては雇止めが許されない場合があると説明している。

4 雇止め理由とは別の禁止規定

労働契約法19条の更新期待が認められない場合でも,妊娠・出産,育児休業,介護休業又は正当な労働組合活動等を理由とする不利益取扱いが許されるわけではない。雇止めの理由が男女雇用機会均等法,育児介護休業法又は労働組合法等の禁止規定に抵触しないかは,労働契約法19条とは別に検討する必要がある。

第6 主要裁判例が示す区別1 雇止め法理の形成と法定化

最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決(昭和45年(オ)第1175号,民集28巻5号927頁)は,反復更新された有期契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態にあった事案で,雇止めに解雇法理を類推した。最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決(昭和56年(オ)第225号,裁判集民事149号209頁)は,実質的に無期契約と同視できない場合でも,更新期待に合理性があるときは雇止めが制限され得ることを示した。労働契約法19条1号及び2号は,これらの判例法理を条文化したものである。

2 有期契約の更新と無期契約への移行

最高裁平成28年12月1日第一小法廷判決(平成27年(受)第589号)は,3年の更新限度後に無期契約へ移行できる制度について,規程の内容,本人の認識,職務の性質及び無期契約へ移行しなかった者の実績等を踏まえ,当然に無期契約へ移行したとはいえないとした。有期契約が更新される期待と,期間満了後に無期契約へ移行できる期待は同一ではなく,労働契約法18条の要件又は別の合意がないまま無期契約が成立するとは限らない。

3 期間途中の解雇と期間満了

最高裁令和元年11月7日第一小法廷判決(平成30年(受)第755号)は,有期労働契約の期間途中の解雇が労働契約法17条1項に反して無効であっても,その後に契約期間が満了した場合,契約が終了したかを別途判断しなければならないとした。期間途中の解雇が無効であることから,契約期間満了後も当然に地位が継続するわけではなく,満了後については更新の合意又は労働契約法19条の要件を検討する必要がある。

第7 待遇及び実務上の確認事項1 有期契約労働者の待遇

有期契約労働者と通常の労働者との待遇差については,短時間・有期雇用労働法8条の不合理な待遇差の禁止及び9条の差別的取扱いの禁止が中心となる。期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めていた旧労働契約法20条は,働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)により令和2年4月1日から削られ,現在の同法20条は船員に関する特例の規定であるため,現在の待遇差を労働契約法20条によって説明するのは適切でない。通常の労働者への転換措置及び説明義務を含む制度の詳細は,同一労働同一賃金で整理している。

無期転換後の労働者は,契約期間の定めがなくなるため,「有期雇用労働者」ではなくなる。もっとも,週の所定労働時間が通常の労働者より短ければ短時間労働者として同法の対象となり得るほか,労働契約法,就業規則の合理性その他の規制がなくなるわけではない。

2 使用者及び労働者が確認する資料

使用者側では,①契約開始日,更新日,通算契約期間及び無契約期間を記録すること,②契約書及び労働条件通知書に更新基準・更新上限・変更の範囲を明示すること,③申込権が発生する更新時に無期転換申込機会及び転換後の労働条件を明示すること,④更新上限を新設又は短縮する前に理由を説明すること,⑤雇止め前に更新期待,禁止される理由,30日前予告及び理由証明への対応を確認することが基本となる。労働条件の一般的な明示事項は,労働基準法に関するメモ書きも参照されたい。

労働者側では,契約書,労働条件通知書,就業規則,更新通知,評価資料及び更新に関する電子メール等を保存し,更新又は無期転換を希望する場合は,申込日と内容を確認できる方法で意思を表示することが有用である。雇止め後の申込みは「遅滞なく」行う必要があり,契約満了日が迫っている場合は,行政相談又は法律相談を含む早期の確認が必要となる。

第8 出典・参考資料1 法令・告示

①e-Gov法令検索「労働基準法」14条,15条及び137条

②e-Gov法令検索「労働契約法」6条,8条及び16条~19条

③e-Gov法令検索「民法」628条

④e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」8条,9条,13条及び14条

⑤e-Gov法令検索「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」

⑥e-Gov法令検索「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」15条の2及びe-Gov法令検索「大学の教員等の任期に関する法律」7条

⑦厚生労働省「有期労働契約の締結,更新,雇止め等に関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号,令和5年厚生労働省告示第114号による改正後)

2 裁判例

①最高裁判所第一小法廷昭和49年7月22日判決(昭和45年(オ)第1175号,民集28巻5号927頁,裁判所ウェブサイト)

②最高裁判所第一小法廷昭和61年12月4日判決(昭和56年(オ)第225号,裁判集民事149号209頁,裁判所ウェブサイト)

③最高裁判所第一小法廷平成28年12月1日判決(平成27年(受)第589号,裁判所ウェブサイト)

④最高裁判所第一小法廷令和元年11月7日判決(平成30年(受)第755号,裁判所ウェブサイト)

⑤福岡地方裁判所令和2年3月17日判決(平成30年(ワ)第1904号,裁判所ウェブサイト)

⑥最高裁判所第一小法廷令和6年10月31日判決(令和5年(受)第906号,大学教員任期法7条の10年特例,裁判所ウェブサイト)

3 厚生労働省資料

①厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが変わります」及び「令和6年4月施行の改正労働基準法施行規則等に係るQ&A」

②厚生労働省「有期契約労働者の無期転換サイト」及び「無期転換ルールハンドブック2025」

③厚生労働省「労働契約法の施行について」の一部改正について(平成30年12月28日基発1228第17号)

④厚生労働省「無期転換ルール及び有期雇用特別措置法」

⑤厚生労働省「無期転換ルールQ&A」