目次
1 総論
2 定年引き上げの経緯
3 高年齢雇用継続給付の最大給付率
4 継続雇用
5 役職定年
6 関連記事その他
1 総論
(1) 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和46年5月25日法律第68号)は,昭和61年4月30日法律第43号によって,「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という名前に変わりました。
(2) HRドクターHPに「高齢者の雇用延長|継続雇用制度における再雇用制度と勤務延長制度の違いとは?」が載っています。
2 定年引き上げの経緯
・ 定年引き上げの経緯は以下のとおりです。
① 昭和61年10月1日に60歳定年が努力義務となりました。
② 平成2年10月1日に65歳までの再雇用が努力義務となりました。
③ 平成10年4月1日に60歳定年が義務となりました。
④ 平成12年10月1日に65歳までの高年齢者雇用確保措置が努力義務となりました。
⑤ 平成18年4月1日に高年齢者雇用確保措置が義務化となりました(当初は62歳までであり,平成25年4月以降は65歳までとなりました。)。
⑥ 平成25年4月1日に継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止されました。ただし,平成24年度までに労使協定で対象者の基準を定めていた事業主には,老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の者について基準を用いる経過措置がありましたが,令和7年3月31日をもって終了しました(厚生労働省の「高年齢者雇用確保措置の経過措置の終了(2025年3月31日)」参照)。
⑦ 令和3年4月1日に70歳までの高年齢者就業確保措置が努力義務となりました(厚生労働省HPの「シニア世代の“仕事力”を引き出す―改正高年齢者雇用安定法が4月から施行―」参照)。
3 高年齢雇用継続給付の最大給付率
・ 高年齢雇用継続給付は,60歳到達時等に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働く,60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者を対象とする給付です。支給額は,賃金の減少額ではなく,各月に支払われた賃金額に所定の支給率を乗じて計算します(雇用保険法61条1項・5項,厚生労働省の「Q&A~高年齢雇用継続給付~」Q1・Q8参照)。
令和7年4月1日以降に60歳に達した日を迎える人については,最大支給率が10%となりました。ただし,60歳到達時に被保険者であった期間が5年未満の場合は,その期間が5年を満たすこととなった日を基準とします。この基準日が同年3月31日以前の人については,従前の最大15%が引き続き適用されます。実際の支給率・支給額は賃金の低下率や支給限度額等によって異なります(厚生労働省の「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」PDF1頁参照)。
4 継続雇用
(1) 最高裁平成24年11月29日判決は,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項所定の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に基づく再雇用の制度を導入した事業主とその従業員との間に,当該制度に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係の存続が認められた事例です。
(2) 福岡高裁平成29年9月7日判決(判例秘書掲載)は,高年齢者雇用安定法の趣旨に反する事業主の行為,例えば,再雇用について,極めて不合理であって,労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し,到底受け入れがたいような労働条件を提示する行為は,継続雇用制度の導入の趣旨に反した違法性を有するものであり,事業主の負う高年齢者雇用確保措置を講じる義務の反射的効果として65歳まで安定的雇用を享受できるという法的保護に値する利益を侵害する不法行為となり得るとされた例です。
結論として,時給が半分以下となり,月額賃金が約4分の1となったことについて,100万円の慰謝料の支払を命じました。
再雇用開始後の更新時に勤務日数・賃金の引下げを提案された場合の判断と対応については,定年後再雇用の更新時に勤務日数・賃金を引き下げられるかを参照されたい。
5 役職定年
(1) 最高裁平成12年9月7日判決は,みちのく銀行(青森市)に関する60歳定年制を採用していた銀行における55歳以上の行員を対象に専任職制度を導入する就業規則の変更のうち賃金減額の効果を有する部分がこれに同意しない右行員に対し効力を生じないとされた事例です。
(2) ガルベラ・パートナーズグループHPの「労務管理|【高齢者の処遇】役職定年を適法に運用するために注意すべき論点」には以下の記載があります。
役職定年自体は法令上に定められた制度ではなく、あくまで企業の人事権に基づく人事制度や賃金制度の一環として運用されますので、制度設計の巧拙や労使合意状況に左右されます。他社で上手くいっている事例をマネしたところで、自社の給与水準にマッチしないとか、社内的な合意が得られないということであれば絵に描いた餅ということになります。
1年毎の契約更新とした定年後再雇用で、更新時に給与条件の折り合いがつかなかったときの雇止めの可否につき、労契法19条の適用ないし準用ありとして、更新拒絶の客観的合理的理由と社会通念上相当性判断をした上で、従前同一条件での契約継続を認めた例が出ておりました(広島高判R2.12.25)。 https://t.co/2gLv6Al9TW
— 弁護士リチャードソン (@Richaso_Law) July 5, 2023
6 関連記事その他
(1)ア 常時雇用する労働者の数が300人以下の事業主について,労使協定をするための努力をしても協議が調わない場合に,継続雇用制度の対象者の基準を就業規則等で定めることができる特例は,平成23年3月31日で終了しました。その後も対象者の基準を維持するためには労使協定が必要となったのであり,希望者全員を対象とする継続雇用制度についてまで,労使協定の締結が必要とされたわけではありません(東京労働局・ハローワークの「定年後の継続雇用制度の対象者の基準を労使協定を締結せずに就業規則で定めている事業主の方へ」PDF1頁~2頁参照)。
イ その後,平成25年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法により,労使協定で継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止され,前記2⑥の経過措置も令和7年3月31日に終了しました(厚生労働省の「高年齢者雇用安定法の改正」参照)。
(2)ア 厚労省HPに「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」が載っています。
イ 厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」によれば,定年制を定めている企業のうち,60歳定年が72.2%であり,65歳以上定年が24.5%(うち,65歳定年は21.1%)です。
(3) 以下の記事も参照して下さい。
・ 労働基準法に関するメモ書き
・ 有期労働契約に関するメモ書き
・ 労働協約
・ 同一労働同一賃金
(4) 出典・参考資料(継続雇用制度の経過措置及び給付)
①法令:雇用保険法61条(e-Gov法令検索)。
②行政資料:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正」,東京労働局・ハローワーク「定年後の継続雇用制度の対象者の基準を労使協定を締結せずに就業規則で定めている事業主の方へ」PDF1頁~2頁。
③行政資料:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」PDF1頁,「Q&A~高年齢雇用継続給付~」Q1・Q7・Q8・Q15。
高年齢者の有期雇用は若干雇い止めのハードルが低いようです。あまり厳しく規制するのも雇用機会が減ることになりかねないので妥当な判断かと思います。
有期雇用契約の高年齢者の契約更新に対する合理的な期待 労務ネットニュースvol195 https://t.co/OIOikHJqb0 @YouTubeより— 向井蘭 (@r_mukai) April 19, 2024