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弁護士倫理・懲戒

弁護士報酬の請求と懲戒――時間制報酬・過大請求・預り金からの控除をめぐる懲戒例と日弁連の取消裁決(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論第2 報酬に関する規律1 弁護士法による懲戒2 弁護士職務基本規程3 弁護士の報酬に関する規程第3 報酬の請求が懲戒の対象とされた例1 時間制報酬2 適正かつ妥当な額を超える報酬3 預り金や受領金からの控除4 受任時の説明と委任契約書5 詐欺被害の回復事件の着手金第4 日弁連が処分を取り消し,又は変更した例1 審級ごとに算出した報酬の合算請求2 目的未達の満額請求と審査請求後の和解3 未払報酬と預り金の相殺4 過大報酬とされた着手金と破産申立ての報酬5 法テラスを利用しなかったこと6 異議の申出を受けて処分を重くした例7 裁決等から読み取れること第5 懲戒手続と報酬の清算1 懲戒は報酬の返還を命じる手続ではない2 紛議調停第6 受任時と請求時に確認しておくこと1 依頼者の立場から2 弁護士の立場から第7 関連記事第8 出典1 日弁連の会規2 法令3 懲戒処分及び裁決の公告
第1 この記事の対象と結論

本記事は,弁護士が依頼者に報酬を請求し,又は受領した行為が懲戒の対象となった例と,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)が弁護士会の懲戒処分を取り消し,又は変更した例を,日弁連の機関誌『自由と正義』に掲載された懲戒処分の公告及び裁決の公告に基づいて整理するものである。
本記事の法令及び会規は令和8年9月13日現在のものである。
公告は処分又は裁決の理由の要旨を記載したものにとどまるため,本記事の記述も公告の記載の範囲に限られる。
個々の弁護士の氏名は,本記事の目的との関係で必要がないため記載しない。

結論は次の4点である。
①報酬をめぐる懲戒例では,額が高いことに加えて,受任時に報酬を説明していない,委任契約書を作成していない,依頼者の了解なく預り金や受領金から報酬を差し引いた,時間制報酬で見込み時間の説明が足りないといった事情が重なっていることが多い。
②他方で,報酬の額が適正かつ妥当な範囲を超えることを主な理由として,弁護士職務基本規程24条違反とされた例もある。
③日弁連は,報酬をめぐる紛争が実質的には依頼者と弁護士の間の民事上の紛争であることや,審査請求後の和解等を考慮して,弁護士会の処分を取り消し,又は軽くした例がある一方で,懲戒請求者の異議の申出を受けて,弁護士会の処分を重くした例もある。
④懲戒は弁護士に報酬の返還を命じる手続ではないため,金銭の清算を求めるには,弁護士会の紛議調停や民事訴訟による必要がある。

第2 報酬に関する規律
1 弁護士法による懲戒

弁護士法56条1項は,弁護士及び弁護士法人は,同法又は所属弁護士会若しくは日弁連の会則に違反し,所属弁護士会の秩序又は信用を害し,「その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。」と定めている。
懲戒は所属弁護士会が行い(同条2項),弁護士に対する懲戒の種類は,戒告,2年以内の業務の停止,退会命令及び除名の4種である(同法57条1項)。
弁護士会の懲戒処分について審査請求があったときは,日弁連は,日弁連の懲戒委員会に事案の審査を求め,その議決に基づいて裁決をしなければならない(同法59条1項)。

後記の公告例の多くは,弁護士職務基本規程や弁護士の報酬に関する規程の条項に違反するとした上で,その行為が弁護士法56条1項の品位を失うべき非行に当たるとしている。
規程の条項を挙げずに,同項の非行に当たるとだけ記載した公告もある。

2 弁護士職務基本規程
(1) 報酬の額に関する規律

弁護士職務基本規程(平成16年11月10日会規第70号)24条は,「弁護士は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして、適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなければならない。」と定める。
同規程5条は,「弁護士は、真実を尊重し、信義に従い、誠実かつ公正に職務を行うものとする。」と定めており,後記の時間制報酬の例には同条違反とされたものがある。

(2) 受任時の説明と委任契約書

同規程29条1項は,「弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。」と定める。
同規程30条1項は,「弁護士は、事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならない。」と定め,ただし書で,委任契約書を作成することに困難な事由があるときは,その事由がやんだ後に作成するとしている。
同条2項は,受任する事件が法律相談,簡易な書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものであるときその他合理的な理由があるときは,委任契約書の作成を要しないとしている。

(3) 預り金と委任の終了

同規程38条は,事件に関して依頼者等から金員を預かったときは,自己の金員と区別し,預り金であることを明確にする方法で保管し,その状況を記録しなければならないと定める。
同規程45条は,「弁護士は、委任の終了に当たり、委任契約に従い、金銭を清算した上、預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければならない。」と定める。

3 弁護士の報酬に関する規程

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弁護士が事件の依頼を断るときの通知義務―弁護士法29条・職務基本規程34条とAIによる問い合わせの一次判定(AI作成)

目次第1 本記事の対象1 扱う問い2 結論の要旨第2 受任の諾否の通知を定める規定1 弁護士法29条(依頼不承諾の通知義務)2 弁護士職務基本規程34条(受任の諾否の通知)3 刑事事件の弁護人選任の申出と不受任の通知第3 通知義務の中身1 義務の趣旨2 通知すべき内容と方法3 面識のない者からの依頼第4 受任するかどうかの自由とその例外1 弁護士は依頼を受ける義務を負わない2 弁護士会や官公署から委嘱された事項第5 断る連絡を急ぐべき理由1 期間制限が迫っている相談2 断るときに添えると役立つ事項第6 問い合わせをAIで一次判定する場合1 AIの判定は対応の順番を決める道具にとどめる2 問い合わせ内容を外部のAIに送るときの守秘義務と個人情報3 事務職員に連絡を任せる場合4 電話や電子メールで受任する場合の広告の表示事項5 受付から諾否通知までを状態で管理する第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 職能団体の規程3 所管行政機関の資料4 文献
第1 本記事の対象
1 扱う問い

本記事は,弁護士が事件の依頼を受けたときに,受けるか断るかを依頼者へ知らせる義務(受任の諾否の通知)を扱う。
根拠は,弁護士法29条と弁護士職務基本規程34条の二つである。
あわせて,法律事務所がウェブサイトやメールの問い合わせをAI(人工知能)で一次判定する場合に,この義務との関係で何に気を付けるべきかを整理する。
法令及び規程の内容は,令和8年9月13日時点で確認したものである。

2 結論の要旨

弁護士は事件の依頼を受ける義務を負わないが,受けないときは,速やかにその旨を依頼者に知らせなければならない。
日本弁護士連合会の解説書は,知らせる内容は受けるか断るかだけで足り,理由を述べる必要はなく,方法も書面に限られないと説明している。
AIによる判定は対応の順番を決める道具にとどめ,断る判断とその連絡は弁護士の責任で行う形にしておくのが安全だと考えられる。

第2 受任の諾否の通知を定める規定
1 弁護士法29条(依頼不承諾の通知義務)

弁護士法29条は,「弁護士は、事件の依頼を承諾しないときは、依頼者に、すみやかに、その旨を通知しなければならない。」と定める。
法律が直接定める義務であり,同法56条1項は,弁護士がこの法律に違反したときを懲戒の事由の一つとしている。

2 弁護士職務基本規程34条(受任の諾否の通知)
(1) 条文の内容

弁護士職務基本規程34条は,「弁護士は、事件の依頼があったときは、速やかに、その諾否を依頼者に通知しなければならない。」と定める。
弁護士法29条が承諾しない場合の通知を定めるのに対し,34条は「諾否」,つまり受ける場合も含めて通知を求めている。
『解説弁護士職務基本規程 第3版』は,34条は旧弁護士倫理21条とほぼ同じ規定であり,弁護士法29条に沿ったものだと説明している(115頁)。

(2) 努力目標ではなく義務として定められていること

弁護士職務基本規程82条2項は,同規程のうち行動指針又は努力目標として解釈適用すべき条項を列挙している。
34条はこの列挙に含まれていないから,努力目標ではなく,義務を定めた規定として扱われる。
同じ受任時の規律でも,33条(法律扶助制度等の説明)は列挙に含まれており,扱いが異なる。

(3) 弁護士法人にも準用されること

弁護士職務基本規程69条は,第1章から第3章まで(一部の条項を除く。)の規定を弁護士法人に準用している。
34条は第3章第3節の規定であり,除外されていないから,弁護士法人が依頼を受けた場合にも同じ規律が及ぶ。

3 刑事事件の弁護人選任の申出と不受任の通知

刑事事件では,被告人又は被疑者が弁護士会に対して弁護人の選任を申し出る制度がある(刑事訴訟法31条の2第1項)。
弁護士会は,申出を受けたときは速やかに弁護人となろうとする者を紹介しなければならず,そのような者がいないときや,紹介した弁護士が選任の申込みを拒んだときは,申出をした者に速やかにその旨を通知しなければならない(同条2項・3項)。

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弁護士に対する業務妨害と対策――日弁連の宣言,濫用的懲戒請求,国選弁護人の解任及び法律事務所のカスハラ対策(AI作成)

目次第1 本記事の対象と基準日第2 日弁連の宣言と会長声明に見る業務妨害の現状1 令和7年12月5日の臨時総会宣言2 提案理由が挙げる妨害の態様3 令和6年12月19日の会長声明と日弁連のアンケート調査4 雑誌の会員アンケートに見る被害の頻度第3 業務妨害に当たり得る行為と刑事・民事の責任1 刑法上の犯罪2 民事上の損害賠償責任3 弁護士に不満がある場合に弁護士会が設けている手続第4 濫用的懲戒請求と不法行為1 懲戒請求は何人もできる2 違法な懲戒請求の判断基準3 大量懲戒請求をめぐる損害賠償請求訴訟第5 国選弁護人の解任1 被告人の暴行・脅迫等を理由とする解任2 辞任の申出と解任の裁判第6 法律事務所のカスハラ対策1 令和8年10月1日施行の労働施策総合推進法33条2 法律事務所に当てはめた場合第7 弁護士と法律事務所が取り得る対策1 弁護士会の委員会への相談2 1人で対応しない第8 出典1 法令及び法令に基づく指針2 裁判例3 日弁連の総会宣言,総会報告及び会長声明4 弁護士会の委員会紹介及び市民向け案内5 雑誌
第1 本記事の対象と基準日

本記事は,弁護士及び法律事務所に対する業務妨害について,日弁連の総会宣言と会長声明,弁護士会の委員会紹介,法令及び裁判例という公開資料から,現状と対策を整理するものである。
想定する読者は,弁護士及び司法修習生と,弁護士に事件を依頼している市民である。
後者については,相手方の代理人弁護士に向けた行為がどこから犯罪又は不法行為になり得るかという観点を含めている。

本記事の基準日は令和8年9月12日である。
法令は同日現在の条文をe-Gov法令検索で確認し,令和8年10月1日に施行される改正後の労働施策総合推進法については,施行後の条文を確認した。

個別の事案で犯罪又は不法行為が成立するかは具体的な事実によって決まるため,本記事は判断の枠組みと公的資料の記載を示すにとどめる。
インターネット上の投稿の削除請求や発信者情報開示の手続は扱わない。
日弁連及び弁護士会が会員向けに作成している業務妨害対策の資料についても,その内容は扱わない。

第2 日弁連の宣言と会長声明に見る業務妨害の現状
1 令和7年12月5日の臨時総会宣言

日弁連は,2025年(令和7年)12月5日の臨時総会で,「坂本堤弁護士一家遺体発見から30年の節目に、弁護士業務妨害を許さず、その対策に積極的に取り組む宣言」を採択した。
同日の臨時総会報告によれば,この宣言案は第4号議案として上程され,挙手による採決の結果,賛成多数で可決された。

宣言の提案理由によれば,坂本堤弁護士は,オウム真理教の出家信者らの救出活動等に取り組む中で,1989年に教団により妻子と共に殺害された。
日弁連は,この事件を契機として1996年6月に弁護士業務妨害対策委員会を設置し,その後,全ての弁護士会に同委員会又はそれに相当する組織が設置されたとされている。

宣言本文は,同委員会を通じて,妨害実態の調査・情報収集・分析,妨害行為の原因及び対策の研究,会員への情報共有と周知・啓発を行うとともに,「警察との連携強化等の活動をより一層徹底する」とする。
あわせて,妨害を受けた弁護士に対する各弁護士会の支援活動をサポートするとしている。

2 提案理由が挙げる妨害の態様

宣言の提案理由は,弁護士の殺害にまでは至らない場合でも,次のような妨害が多いとする。
①弁護士や事務職員への暴行・傷害
②脅迫・強要
③法律事務所を突然訪問しての業務妨害
④頻繁な架電,郵便物の送付及びメールの送信等による妨害
⑤濫用的懲戒請求
⑥濫用的訴訟提起による妨害

提案理由は,共同親権等に関する法改正について情報発信を行っている弁護士に対する激しい妨害行為も数多く報告されているとする。
さらに,SNSやGoogleマップ等の口コミ・レビュー機能を有するサイトへの書き込みによる誹謗中傷等により,弁護士の名誉やプライバシー権が侵害される事案も発生しているとしている。

殺害に至った事件として,提案理由は,坂本事件のほかに,2010年6月に横浜で離婚事件の相手方から弁護士が殺害された事件と,同年11月に秋田で財産分与請求事件の元相手方から弁護士が殺害された事件を挙げている。
日弁連の弁護士業務妨害対策委員会の紹介ページも,2010年6月2日に横浜弁護士会(現在の神奈川県弁護士会)所属の弁護士が,同年11月4日に秋田弁護士会所属の弁護士が殺害されたと記載している。

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取締役責任調査委員会の委員弁護士は後続訴訟を代理できるか-最高裁令和4年6月27日決定と弁護士法25条(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 扱う問題と基準日2 最高裁の結論第2 取締役責任調査委員会と後続訴訟1 二つの委員会は別の組織である2 事情聴取前の説明と訴訟代理第3 弁護士法25条2号及び4号が類推適用されなかった理由1 2号の信頼関係に基づく協議ではないこと2 4号の公務員又は裁判官に類する立場ではないこと3 弁護士法25条の拡張・類推は抑制されること第4 第三者委員会の委員について同じ結論になるとは限らない1 日弁連ガイドライン型の第三者委員会との違い2 事情聴取時の説明が異なる場合第5 訴訟行為の排除と職務倫理は別に検討する1 弁護士職務基本規程違反だけでは排除できないこと2 秘密保持及び利益相反の確認第6 受任前に確認する資料と停止基準1 最初に確認する資料2 追加確認又は受任停止が必要となる場合3 法律事務所内の確認第7 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 職能団体の規程・ガイドライン4 文献
第1 この記事の対象と結論
1 扱う問題と基準日

この記事は,取締役責任調査委員会の委員であった弁護士が,調査対象となった取締役に対する会社側の損害賠償請求訴訟を代理できるかを扱う。
中心となる裁判例は,最高裁令和4年6月27日第一小法廷決定(令和4年(許)第3号,集民268号323頁)であり,法令及び規程は令和8年9月9日現在の内容を確認した。

この問題では,①弁護士法25条により職務を行うことが禁止されるか,②相手方が裁判所に訴訟行為の排除を求められるか,③弁護士職務基本規程,秘密保持及び調査の信用性の面から受任が適切かを区別する必要がある。
最高裁決定が直接判断したのは,本件の具体的事情の下で①及び②に関する弁護士法25条2号及び4号の類推適用を認められるかという点である。

2 最高裁の結論

最高裁は,本件の取締役責任調査委員会が会社の委託を受けて取締役の責任を調査する組織であり,調査対象者には事情聴取の結果が後の責任追及訴訟で証拠として用いられる可能性が示されていたことを重視した。
その上で,同委員会の委員であった弁護士が会社の訴訟代理人となることについて,弁護士法25条2号又は4号を類推適用して訴訟行為から排除することはできないと判断した。

ただし,この決定は,調査委員会の委員であった弁護士が常に後続訴訟を代理できるとしたものではない。
委員会の目的,委嘱者,調査対象者に対する説明,取得した秘密情報,委員会が公表した独立性の内容及び後続訴訟の依頼者を個別に確認する必要がある。

第2 取締役責任調査委員会と後続訴訟
1 二つの委員会は別の組織である

本件会社では,役員らによる金品受領問題について,最初に,日本弁護士連合会の第三者委員会ガイドラインに準拠する第三者委員会が設置された。
その後,会社は,取締役であった者が会社法423条1項により会社に対する損害賠償責任を負うかを調査・検討するため,太田洋弁護士及び木目田裕弁護士を含む4名の外部弁護士に委員を委嘱し,別の取締役責任調査委員会を設置した。

会社は,取締役責任調査委員会について,独立性を確保した利害関係のない立場にある社外弁護士から成る委員会であると公表していた。
もっとも,委員会が会社から委嘱を受けて取締役の会社に対する責任を調査する組織であることと,委員が会社から離れた紛争解決者であることとは同じではない。

2 事情聴取前の説明と訴訟代理

委員会が調査対象者に送付した事情聴取の依頼文書には,聴取結果が会社による責任追及訴訟で証拠として用いられる可能性がある旨が記載されていた。
委員会は事情聴取を経て取締役であった者らの責任を認める内容の報告書を提出し,会社は,委員であった弁護士2名を訴訟代理人として損害賠償請求訴訟を提起した。

取締役であった者らは,委員であった弁護士の訴訟行為が弁護士法25条2号及び4号の趣旨に反すると主張し,訴訟行為の排除を申し立てた。
大阪高裁令和3年12月22日決定(令和3年(ラ)第580号)は排除を認めたが,最高裁は原決定を破棄し,申立てを却下した原々決定に対する抗告を棄却した。

第3 弁護士法25条2号及び4号が類推適用されなかった理由
1 2号の信頼関係に基づく協議ではないこと

弁護士法25条2号は,相手方から協議を受けた事件のうち,協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められる事件について,弁護士が職務を行うことを禁止している。
本件では,調査対象者が委員である弁護士に法的な解決を求めて相談したのではなく,会社のために行われる責任調査に応じて回答していた。

最高裁は,委員会の名称及び設置目的に加え,聴取結果が後続訴訟の証拠となり得る旨の事前説明を考慮し,調査対象者も委員会が会社のために調査をしていることを認識していたと判断した。
そのため,事情聴取に対する回答を,弁護士に法的解決を求めるための信頼関係に基づく協議と同視しなかった。

2 4号の公務員又は裁判官に類する立場ではないこと

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事務職員の生成AI利用と弁護士職務基本規程19条-ルールを定めず個人判断に委ねている事務所が最多という調査結果を踏まえて(AI作成)

目次

第1 調査結果-ルールを定めず個人判断に委ねている事務所が最多である1 アンケート調査の概要2 母数が設問ごとに異なる3 使わせている事務所ほどルールがある第2 弁護士職務基本規程19条1 条文2 19条は努力目標ではなく義務規定である3 指導監督の内容第3 生成AIの利用は19条の問題になるか1 生成AIそれ自体は19条の対象ではない2 事務職員に使わせる場合は19条の対象になる3 「秘密を漏らし」への該当性第4 共同事務所の場合-55条は努力目標にとどまる第5 指導監督として何をするか第6 違反事例の調べ方第7 関連記事出典・参考資料
第1 調査結果-ルールを定めず個人判断に委ねている事務所が最多である
1 アンケート調査の概要

2026年9月5日に福岡市で開催された第24回弁護士業務改革シンポジウム第2分科会の配布資料のうち,資料2-1は,日本弁護士連合会弁護士業務改革委員会事務職員関連小委員会による「事務職員と生成AIに関するアンケート調査 報告書」である。
調査は2026年3月23日から同年4月27日までの間に行われ,有効回答は223件である。
配布資料は,日本弁護士連合会のウェブサイトで公開されている。

この調査の対象は「主に事務職員を雇用する会員,または生成AIの利用に関心のある会員」である。
したがって全弁護士の縮図ではなく,生成AIへの関心が高い層に偏った母集団である。
報告書自身がこの限定を明示しているから,引用する際も「事務職員を雇用する会員又は生成AIに関心のある会員223名の回答」という限定を付す必要がある。

事務所における生成AIの導入状況は,弁護士と事務職員がともに利用しているものが26.7パーセント,弁護士のみが利用しているものが43.4パーセント,利用していないものが29.4パーセント,利用を禁止しているものが0.5パーセントである(回答221件)。
事務所の方針については,「ルールを定めておらず個人の判断に委ねている」が31.8パーセントで最多であった(回答151件)。
研修又はガイドラインについては,策定済みが10.1パーセント,検討中が33.1パーセント,予定なしが41.2パーセントである(回答148件)。

2 母数が設問ごとに異なる

この報告書を引用するときに最も注意を要するのは,母数が設問ごとに異なることである。
有効回答223件がそのまま母数になるのは一部の設問だけであり,事務所の方針を尋ねた設問の母数は151件,研修及びガイドラインを尋ねた設問の母数は148件である。
報告書は添付資料2で設問ごとの回答数を開示しているから報告書自体に不備はないが,本文のパーセントだけを取り出して「223名のうち何パーセント」と書けば誤りになる。
本記事では,数値を挙げるときに母数を併記する。

3 使わせている事務所ほどルールがある

クロス集計によれば,事務職員にも使わせている57件では研修又はガイドラインの策定済みが24.6パーセントである一方,弁護士のみが利用している91件では1.1パーセント(1件)にとどまる。
報告書は,ルールを定めていない状態を,判断自体がなされていない状態にあると評価している。

もっとも,報告書は,この状態について弁護士職務基本規程上の評価には触れていない。
規程上どう位置付けられるかは,事務職員に生成AIを使わせるかどうかを決める上で避けられない論点である。
本記事では,この点を同規程19条から検討する。

第2 弁護士職務基本規程19条
1 条文

弁護士職務基本規程(平成16年11月10日会規第70号。改正平成26年12月5日,令和3年6月11日)19条は,次のとおり定める。
日本弁護士連合会のウェブサイトに規程全文のPDFが掲載されており,認証を要せずに参照することができる。

「(事務職員等の指導監督)
第十九条 弁護士は、事務職員、司法修習生その他の自らの職務に関与させた者が、その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければならない。」

2 19条は努力目標ではなく義務規定である

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弁護士の職務上請求用紙の購入・保管・紛失対応-用紙管理,返還及び懲戒リスク(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 この記事が扱う用紙管理の範囲

2 購入,保管,紛失及び返還の基本線

第2 職務上請求用紙を購入するときの確認事項

1 購入先,価格及び本人確認は所属弁護士会で確認する

2 受領時に管理台帳へ登録する

第3 未使用用紙を保管・持出しするときの管理

1 規則が直接定める禁止事項と管理義務

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非弁提携業者による弁護士の取込みから撤収まで(AI作成)

第1 この記事が扱う非弁提携

1 非弁行為と非弁提携の違い
2 本記事でいう「取込み」と「撤収」
3 先に示す結論

第2 弁護士を取り込む入口

1 標的となりやすい状況を探す
2 公益と適法な経営支援の外観を作る
3 収入保証と既成事実を組み合わせる

第3 法律事務所を支配する四つの手段

1 顧客接点の支配
2 人員と事件処理の支配
3 資金の支配
4 情報の支配

第4 弁護士が離脱しにくくなる仕組み

1 止めるほど債務が表面化する
2 アカウントと記録への依存が強まる
3 依頼者保護の責任感が逆に利用される

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訴訟活動における名誉毀損・侮辱と弁護士会の懲戒(AI作成)

この記事は,弁護士が訴訟活動やSNS等で相手方,相手方訴訟代理人又は他の弁護士の名誉を毀損し,若しくは侮辱したことを理由に弁護士会から受けた懲戒処分の実例を,弁護士職務基本規程70条・71条の内容とあわせて場面別に整理したものです。
対象は,日本弁護士連合会の機関誌『自由と正義』の懲戒処分公告で確認できる事例(令和7年〔2025年〕分まで)で,各事例には掲載号・頁と処分の効力発生日を付し,公告に記載された問題の表現をできる限りそのまま示します。

訴訟活動の中でされた表現が,相手方等に対する不法行為(民法709条)や国家賠償として違法になるかどうかは,これとは別の判断枠組みの問題であり,本記事では扱いません。その点は,関連記事「陳述書の作成が違法となる場合に関する裁判例」で整理しています。本記事は,これとは別のレイヤーである弁護士会による懲戒処分に焦点を当てます。

目次

第1 弁護士職務基本規程70条・71条・73条──名誉の尊重と不利益行為の禁止

1 70条(名誉の尊重)の内容と趣旨
2 71条(信義に反する不利益行為の禁止)
3 73条(他の弁護士等との紛議は協議・紛議調停で)
4 「品位を失うべき非行」との実質判断(弁護士法56条1項)

第2 懲戒事例──場面別に見た問題の表現

1 準備書面等で相手方本人を攻撃した例
2 相手方代理人・他の弁護士を攻撃した例
3 メーリングリスト・手紙・文書・メールでの誹謗中傷や威圧
4 SNS・インターネット・記者会見での表現
5 懲戒請求制度の濫用・懲戒請求書での名誉毀損

第3 単位弁護士会と日弁連で判断が分かれた例

1 懲戒請求書の記載を取り消した例
2 準備書面の記載を取り消した例

第4 関連論点・関連記事

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弁護士の「品位を失うべき非行」の不明確性と懲戒制度への批判(AI作成)

この記事は,弁護士の懲戒事由である「品位を失うべき非行」(弁護士法56条1項)という概念が不明確であるという批判と,処分基準の要否をめぐる議論を整理するものです(2026年7月時点の法令・裁判例に基づきます。)。
目次

第1 「品位を失うべき非行」は不明確か(弁護士法人ベリーベスト法律事務所等の意見)
第2 処分基準の要否(行政手続法12条)
第3 明確性の要請と限定解釈
第4 懲戒制度への批判・他士業との比較
第5 関連論点・関連記事
出典

第1 「品位を失うべき非行」は不明確か(弁護士法人ベリーベスト法律事務所等の意見)
非弁提携を理由とする業務停止6月の懲戒処分(弁護士法人ベリーベスト法律事務所,弁護士酒井将及び弁護士浅野健太郎に対するもの)の審査請求事件では,懲戒事由の文言の不明確性が正面から争われました。審査請求書(令和2年6月11日公表)9頁・10頁には,おおむね次の主張があります(書証番号・URLは省略)。
① 「品位」「非行」「非弁提携」といった曖昧な文言の下に広い裁量をそのまま重大な不利益処分(さらには刑事処分)の要件として適用すると,その場その場の恣意的判断に陥りやすい。行政手続法12条は不利益処分の処分基準を設定することを求めており(努力義務だが,多くの行政庁は予測可能性の確保と恣意的判断の抑制のため具体的な処分基準を定めている),弁護士の懲戒処分にもこの考え方を適用すべきである。模範となるのは,点数制をとる交通反則金制度や一級建築士の処分基準である。

② 弁護士法(43条の15,49条の2)は行政手続法の定めのうち行政指導以外を適用除外としているが,それは手続保障が薄くてよいという趣旨ではなく,法律家の団体であればこそ一層充実した権利防御手続を自主的に用意することが期待されているからである。ところが弁護士会は,行政手続(予定される処分の通知,弁明・聴聞の機会の付与)に著しく劣る手続しか用意せず,処分基準も設定していないので,場当たり的・恣意的になりやすい。
この事件については,「非弁提携を理由とする懲戒請求について」と題するウェブサイトに,東京弁護士会懲戒委員会の議決書(令和2年2月28日付)や審査請求書(令和2年6月11日公表)等の文書が掲載されています。
第2 処分基準の要否(行政手続法12条)
行政手続法12条は,処分基準について次のとおり定めています。
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。(1項)/行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。(2項)
弁護士懲戒には行政手続法が直接適用されるわけではありませんが,予測可能性の確保と恣意的判断の抑制という同条の趣旨は,弁護士の懲戒処分についても妥当するのではないか,というのが上記の批判の核心です。
第3 明確性の要請と限定解釈
不明確な要件の解釈については,表現の自由を規制する法律の分野で,限定解釈が許される場合の基準が示されています。最高裁大法廷昭和59年12月12日判決は,表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈が許されるのは,その解釈により規制対象となるものとそうでないものとが明確に区別され,かつ,合憲的に規制し得るもののみが規制対象となることが明らかにされる場合でなければならず,また,一般国民の理解において,具体的場合に当該表現物が規制対象となるかどうかの判断を可能にする基準をその規定から読み取ることができるものでなければならない,としています。

「品位を失うべき非行」という概念の運用にも,同様に,予測可能性を確保する明確な基準が求められる,という視点につながります。
第4 懲戒制度への批判・他士業との比較

判例時報2447号には「弁護士の懲戒処分に対する救済制度の違憲・違法性と是正案の提案(阿部泰隆)」が掲載されており,救済制度の在り方が論じられています。
他士業と比較すると,司法書士の場合は,業務外の違反行為については刑事罰の対象となる行為だけが懲戒処分の対象になるとされています(司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)別表23項参照)。弁護士について,職務外の非行がどこまで懲戒対象となるかという議論の参考になります。

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弁護士のSNS・ネット表現と懲戒(AI作成)

この記事は,弁護士のSNS・インターネット上の表現をめぐる懲戒として,いわゆる「タヒね」懲戒とその取消し,表現の自由との関係,対象弁護士の日弁連総会における発言を取り上げるものです(2026年7月時点の法令・裁判例に基づきます。)。
目次

第1 「タヒね」懲戒とその取消し
第2 侮辱・名誉毀損の法的責任(概要)
第3 表現の自由と萎縮効果
第4 対象弁護士の日弁連総会における発言
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出典

第1 「タヒね」懲戒とその取消し
令和3年3月1日発効の大阪弁護士会の戒告では,次の行為について,弁護士法56条1項に定める品位を失うべき非行に該当すると判断されました(月刊大阪弁護士会2021年3月号60頁)。
対象会員は,懲戒請求者から国家賠償請求訴訟について委任を受け訴訟代理人として活動していたが,その後辞任を求められ,これを受託して辞任届を提出した。その後,着手金の返還を巡るやりとりのころ,弁護士の肩書きとともに登録氏名及び法律事務所名を表示したツイッターにおいて,「金払わん奴はタヒね」「金払うつもりないなら法律事務所来るな」「弁護士費用を踏み倒すやつはタヒね」等とツイートを行った。
もっとも,この戒告は,被懲戒者の審査請求に基づき,令和4年5月17日付で日弁連により取り消されました(弁護士ドットコムニュース「ツイッターで「タヒね」、弁護士の懲戒取り消す逆転判断 日弁連」(2022年5月26日付)参照)。単位弁護士会の懲戒処分が日弁連で取り消されることがある一例です。
第2 侮辱・名誉毀損の法的責任(概要)
SNS上の暴言は,懲戒とは別に,民事・刑事の責任を生じさせることがあります。要点だけを挙げると,次のとおりです。

事実を摘示しないで公然と人を侮辱した場合,侮辱罪が成立します(刑法231条)。侮辱罪の法定刑は,令和4年の刑法改正で引き上げられ,現在は「1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
インターネットの個人利用者による表現行為であっても,摘示した事実を真実と誤信したことについて,確実な資料・根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しません(最高裁平成22年3月15日決定)。
自己の正当な利益を擁護するためやむをえず他人の名誉を損なう言動をした場合は,その他人が行った言動に対比して,方法・内容において適当と認められる限度を超えない限り,違法性を欠くとされています(最高裁昭和38年4月16日判決参照。学界誌の記事をめぐる民事の名誉毀損の事案です。)。

民事の侮辱(名誉感情の侵害)が違法となる基準や,侮辱罪の法定刑引上げの経緯など,より詳しい整理は,別記事「陳述書の作成が違法となる場合に関する裁判例」の該当箇所を参照してください。
第3 表現の自由と萎縮効果
令和元年9月9日付の東京弁護士会の意見書(「裁判官の市民的自由を萎縮させない対応を求める意見書」)には,次の記載があります。
いかなる表現行為が「許容される限度を逸脱」するのかが示されないでされる制約は,許容される表現行為の予測可能性を奪い,裁判官の表現行為に萎縮的効果を与えるものである。そのことは,一般市民との合理的な差異の不明確性とも相まって,一般市民の表現活動にも予測可能性を奪うおそれがあり,一般市民の表現活動についても萎縮効果を与えることにつながりかねない懸念がある。
表現の自由については,市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)19条が,すべての者が意見を持つ権利と表現の自由についての権利を有するとしつつ,その行使には特別の義務・責任が伴い,法律により,他の者の権利・信用の尊重や公の秩序等の目的のために必要とされる一定の制限を課すことができるとしています。
第4 対象弁護士の日弁連総会における発言
「タヒね」懲戒の対象弁護士は,令和2年9月4日の日弁連定期総会において,新型コロナウイルス感染症に関する宣言・決議の件(第6号議案)に関して,日弁連執行部を強く批判する発言をしました。いわゆる「谷間世代」(貸与金世代)の弁護士の経営の苦しさを踏まえ,弁護士の経営基盤への配慮を欠いたまま「弁護士の使命」を説くだけでは市民への法的サービスは実現できない,という趣旨の発言です。弁護士の懲戒や会務をめぐる会内の意見対立を示す一例として参考になります。
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弁護士の表現と名誉毀損(AI作成)

この記事は,弁護士の弁護活動に関する発言(テレビでの懲戒請求の呼びかけなど)が名誉毀損として違法になるかの判断枠組みと,名誉毀損が成立しない場合でも弁護士会の懲戒対象となり得ることを,最高裁判例に即して整理したものです(2026年7月時点の法令・裁判例に基づきます。)。
目次

第1 名誉毀損の違法性が阻却される場合(最高裁平成17年6月16日判決)
第2 名誉毀損が成立しなくても弁護士会の懲戒対象となり得る(最高裁平成23年7月15日判決)
第3 弁護士・弁護士会に求められる説明責任(須藤正彦裁判官の補足意見)
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出典

第1 名誉毀損の違法性が阻却される場合(最高裁平成17年6月16日判決)
名誉毀損が成立するかどうかは,表現が「事実の摘示」か「意見・論評の表明」かで枠組みが分かれます。最高裁平成17年6月16日判決は,先例を引用しつつ,一般論として次のとおり判示しています(番号は引用者が付し,接続の語句と先例の表示は省略しています。)。
① 事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される。

② ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は違法性を欠くものというべきであり,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される。
同じ日付で出された別事件の上告棄却決定(最高裁平成17年6月16日決定)には,名誉毀損の成立を否定すべきとする裁判官島田仁郎の詳細な反対意見が付されています。
第2 名誉毀損が成立しなくても弁護士会の懲戒対象となり得る(最高裁平成23年7月15日判決)
大阪弁護士会に所属しタレント活動もしていた橋下徹弁護士が,平成19年5月27日放送のテレビのトーク番組において,光市母子殺害事件の弁護団を構成する弁護人に対する懲戒請求を呼びかけた行為について,大阪弁護士会は,平成22年9月17日,意見・論評の域を逸脱すること等を理由に2か月間の業務停止処分としました。

しかし,最高裁平成23年7月15日判決は,原審である広島高裁平成21年7月2日判決(平成20年(ネ)第454号)を破棄した上で,橋下徹弁護士の発言は不法行為法上違法とはいえないと判断しました(第1審被告である橋下徹弁護士が最高裁で逆転勝訴しました。)。

このように,弁護士会の懲戒処分の判断と,最高裁判所の不法行為の成否の判断とが一致しない事例があります。名誉毀損(不法行為)が成立しないと評価される表現であっても,弁護士会は,別途,品位を失うべき非行に当たるかを判断します。

最高裁平成23年7月15日判決は,一般論として,刑事事件における弁護人の弁護活動は被告人の言い分を無視して行うことができないことをその本質とするものであって,被告人の言い分や弁護人との接見内容等を知ることができない場合には,憶測等により当該弁護活動を論難することには十分に慎重でなければならない,と判示しています。

なお,前提となった光市母子殺害事件については,最高裁平成24年2月20日判決が,死刑判決を下した広島高裁平成20年4月22日判決を支持しました。
第3 弁護士・弁護士会に求められる説明責任(須藤正彦裁判官の補足意見)
上記の最高裁平成23年7月15日判決の裁判官須藤正彦の補足意見は,弁護士・弁護士会が批判に対して説明を尽くすべき立場にあることを述べています(改行は引用者が付しています。)。
弁護士は裁判手続に関わって司法作用についての業務を行うなど,その職務の多くが公共性を帯有し,また,弁護士会も社会公共的役割を担うことが求められている公的団体であるところ,主権者たる国民が,弁護士,弁護士会を信認して弁護士自治を負託し,その業務の独占を認め(弁護士法72条),自律的懲戒権限を付与しているものである以上,弁護士,弁護士会は,その活動について不断に批判を受け,それに対し説明をし続けなければならない立場にあるともいえよう。

懲戒制度の運用に関連していえば,前記のとおり,弁護士会による懲戒権限の適正な行使のために広く何人にも懲戒請求が認められ,そのことでそれは国民の監視を受けるのだから,弁護士,弁護士会は,時に感情的,あるいは,無理解と思われる弁護活動批判ないしはその延長としての懲戒請求ないしはその勧奨行為があった場合でも,それに対して,一つ一つ丹念に説得し,予断や偏見を解きほぐすように努めることが求められているといえよう。あるいは,著名事件であるほどにその説明負担が大きくなることはやむを得ないところもあろう。

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不当な懲戒請求と不法行為責任(AI作成)

この記事は,弁護士に対する懲戒請求が「違法な懲戒請求」として不法行為(民法709条)になる場合を,最高裁平成19年4月24日判決に即して整理したものです(2026年7月時点の法令・裁判例に基づきます。)。
目次

第1 懲戒請求は何人でもできる(弁護士法58条1項)
第2 懲戒請求が不法行為となる場合(最高裁平成19年4月24日判決)
第3 田原睦夫裁判官の補足意見
第4 関連論点・関連記事
出典

第1 懲戒請求は何人でもできる(弁護士法58条1項)
弁護士に対する懲戒請求は,誰でもすることができます。
何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。(弁護士法58条1項)
懲戒請求があると,弁護士会は懲戒の手続に付し,まず綱紀委員会が事案を調査します。綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求めることを相当と認める議決をした場合に,懲戒委員会の審査に進みます(弁護士法58条2項ないし6項)。この「何人も」という広い請求権があることの意義については,別記事「弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義」で扱っています。
第2 懲戒請求が不法行為となる場合(最高裁平成19年4月24日判決)
懲戒請求が誰でもできるといっても,根拠のない懲戒請求を無限定に許せば,対象とされた弁護士は大きな不利益を受けます。そこで最高裁は,一定の場合に,懲戒請求それ自体が違法な不法行為になるとしています。

最高裁平成19年4月24日判決は,次のように判示しました。すなわち,弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成する,というものです。

つまり,単に懲戒請求が認められなかったというだけでは違法にはならず,根拠を欠くことを知り,又は容易に知り得たのにあえて請求したなど,制度の趣旨目的に照らして相当性を欠く場合に,はじめて不法行為となります。
第3 田原睦夫裁判官の補足意見
同判決の田原睦夫裁判官の補足意見は,懲戒請求が対象弁護士に与える影響の大きさを具体的に述べています。以下はその要旨です(原文を要約したもので,ナンバリングは引用者が付しています。)。
① 弁護士に対する懲戒は,弁護士としてあるまじき行為を行ったことを意味し,弁護士としての社会的信用を根底から覆しかねないものであるだけに,懲戒事由に該当しない事由に基づくものであっても,懲戒請求がされたという事実が第三者に知れるだけでも,その業務上の信用や社会的信用に大きな影響を与えるおそれがある。虚偽の事由に基づいて懲戒請求をした場合には,虚偽告訴罪(刑法172条)に該当すると解されている。

② 懲戒請求がされると,被請求者は,根拠のない請求であっても,反論・反証活動のために相当なエネルギーを割かれる。加えて,綱紀委員会の調査に付されると手続終了まで他の弁護士会への登録換えや登録取消しの請求ができないと解されており,弁護士の身分に重大な制約が課される。

③ こうした負担の大きさからして,懲戒請求をする者は,被請求者に懲戒事由があることを事実上・法律上裏付ける相当な根拠について調査・検討すべき義務を負うのは当然である。

④ 殊に弁護士が自ら懲戒請求者となり,又はその代理人等として関与する場合には,根拠のない懲戒請求が被請求者に多大な負担を課し,懲戒請求の濫用が弁護士自治という自らの拠って立つ基盤を傷つけかねないことを自覚すべきであって,慎重な対応が求められる。
第4 関連論点・関連記事

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弁護士の守秘義務(AI作成)

弁護士に相談したり事件を依頼したりすると,「話した内容や渡した資料はどこまで秘密として守られるのか」「裁判や捜査,国会の場で弁護士が私のことを話してしまうことはないのか」といった疑問を持たれることがあります。この記事では,弁護士の守秘義務の根拠と範囲,守秘義務が例外的に解除される場合,証言や押収を拒める場面,司法修習生が事件記録に触れること,及び依頼者側でも第三者に見せない方がよい文書について,条文と最高裁判例を確認しながら整理します。条文は令和7年6月1日施行の拘禁刑への一本化を含む現行の内容によります。

目次

第1 弁護士の守秘義務と秘密漏示罪

1 守秘義務の根拠と対象

(1) 二つの根拠と「依頼者」の範囲
(2) 「職務上知り得た秘密」の意味と範囲
(3) 同じ法律事務所の弁護士も義務を負う

2 秘密漏示罪(刑法134条1項)

(1) 罰則の内容
(2) 依頼者本人以外の秘密も対象になり得る

第2 弁護士の証言拒絶権・押収拒絶権等

1 民事裁判での証言拒絶・文書提出拒絶
2 刑事裁判での押収拒絶・証言拒絶
3 依頼者との通信の傍受禁止と秘匿特権
4 国会での証言・書類提出

(1) 証人として呼ばれた場合
(2) 参考人として招致された場合

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個人情報漏洩に関する弁護士会の懲戒事例(AI作成)

◯本ブログ記事は,2005年4月から2026年3月までの自由と正義の懲戒公告,及び弁護士懲戒事件議決例集第8集ないし第27集に基づき,専らAIで作成したものです。
目次

第1 はじめに——弁護士に課される情報保護の責務

1 なぜ個人情報漏洩が懲戒の重要テーマなのか
2 本稿で扱う「漏洩」の範囲
3 検討の素材と引用の方針

第2 弁護士の情報保護義務を支える法令の体系

1 弁護士法23条——秘密保持義務
2 弁護士職務基本規程の関連条項
3 戸籍・住民票をめぐる法令
4 個人情報保護法と弁護士
5 守秘義務が及ぶ人的範囲

第3 類型1——職務上知り得た秘密の第三者開示

1 秘密保持義務違反の基本構造
2 書面やインターネットで秘密を公開した事例
3 通報者・相談者の情報を漏らした事例
4 相談・聴取で得た情報と立場の利用

第4 類型2——プライバシー情報の暴露とネット公開

1 デジタルタトゥーという新しい危険

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学習オフ設定のClaudeコード及びGoogle AI Ultraの利用は弁護士の守秘義務等に違反しないという個人的意見(AIリライト)

第1 この記事の位置づけと結論
第2 用いている環境と設定

1 Claudeコード(Anthropic社)
2 Google AI Ultra(Google社)
3 端末上で動作する形態に固有の情報の出口
4 プランの選択――ゼロ保持と最新機能のどちらを採るか
5 両者を同じ数字で語ることはできない

第3 技術的評価

1 学習への不使用
2 暗号化及び国際認証
3 人間による確認の範囲
4 情報の滞留期間
5 過度な禁止がかえって危険であること

第4 東京弁護士会の選定基準との対照
第5 弁護士職務基本規程との整合性

1 第三者開示に関する評価
2 弁護士情報セキュリティ規程が求める安全管理措置
3 依頼者の同意――委任契約約款

第6 個人情報保護法との整合性

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日本司法支援センター(法テラス)を利用しなかったことに関して単位弁護士会で戒告となり,日弁連で不懲戒となった事例

目次
1 平成31年2月  5日発効の,山梨県弁護士会の懲戒処分(戒告)
2 令和  2年7月17日発効の,日弁連の取消裁決
3 弁護士職務基本規程の関連条文
4 関連記事その他

「法テラスの評判が悪いことについて、弁護士の立場から」https://t.co/G6maRFMIrr
分かりやすくていいなこれ

「法テラスの弁護報酬は、極めて低額ですから、ほとんど儲かりません」
「とにかく法テラス利用は手続きが面倒です」
「この場合、離婚を拒否し続け、調停が不成立で終わると、成果がなか

— _hznf_ (@_hznf_) October 15, 2024

1 平成31年2月5日発効の,山梨県弁護士会の懲戒処分(戒告)
・ 自由と正義2019年6月号81頁及び82頁に載っている「処分の理由の要旨」は以下のとおりです。
(1) 被懲戒者は、懲戒請求者が株式会社Aから解雇された事件について2016年12月26日に相談を受けた際、懲戒請求者がその事件について日本司法支援センターの代理援助の申込みの趣旨で記載した援助申込書に関して、懲戒請求者の承諾を得ずに相談実施日時柵に2017年2月6日と記載して、同日に懲戒請求者から受けた法律相談についての援助申込書として日本司法支援センターに提出して法律相談料を請求した。
(2) 被懲戒者は、上記(1)の事件の処理について日本司法支援センターを利用することで懲戒請求者と合意しており、遅くとも2017年3月5日時点では日本司法支援センターの代理援助の申請ができる状態であったにもかかわらず、同日、日本司法支援センターを利用せずに懲戒請求者との間で雇用契約上の地位の確認等を求める内容の委任契約を締結し、日本司法支援センターを利用できることを説明しなかった。
(3) 被懲戒者は、上記(1)の事件について懲戒請求者の代理人としてA社と和解するに際して、A社が納付していない懲戒請求者の社会保険料等を支払うことを和解の内容とすることについて懲戒請求者が明確に要望していたにもかかわらず、懲戒請求者との間で十分な協議をせず、2017年3月23日、A社との間で上記要望に反した和解契約を締結した。
(4) 被懲戒者の上記(2)の行為は弁護士職務基本規程第29条第1項に、上記(3)の行為は同規程第22条第1項に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

「法テラスの利用要件を満たしたとしても法テラスを利用して受任するかどうかは私の選択に委ねられています。私はこの件を法テラスでは受任しませんので、法テラス利用をご希望であればほかを当たってください」と堂々と言えるようになるまでには色んな葛藤と経験を要した。 https://t.co/1EV8PRmwUe

— まゆろん (@mayukotaniguchi) October 23, 2020

誰に言ってもほとんど共感されたことがないんだけど、「高いお金を出す人は、金額が大きいぶん要求も多くて細かい」というのは誤謬で、ギャラが高いお客さんほど仕事がやりやすいのよな…。こちらをプロと見て、すべて任せてくれる。単価が低くなるほど、ヘンな仕様や注文、無理な設定が増える(´ω`)

— 葛葉 (@Cuznoha) June 2, 2019

手を差し伸べたら、その不十分さを恨まれる。

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遺言執行者が特定の相続人の代理人をしたことに関する,弁護士会の懲戒例(AIリライト)

目次

第1 総論

1 本記事の結論の要旨
2 遺言執行者が特定の相続人の代理人をすることが許される場合

(1) 解説「弁護士職務基本規程」の記載の変遷
(2) 平成18年の日弁連裁決による制約
(3) 現在の懲戒実務における「特段の事情」

3 遺言執行者が特定の相続人の代理人になれるかを判断する要素

(1) 実質的な判断の必要性
(2) 6つの考慮要素

4 遺言執行者代理人をした後に特定の相続人の代理人をすることが許される場合の取扱い
5 遺言執行者が特定の相続人の代理人をしたことに関する懲戒理由の分類

(1) 利益相反のみを理由とするもの
(2) 職務の中立性・誠実さ・公正さのみを理由とするもの
(3) 両方を理由とするもの
(4) 具体的理由の記載がないもの

6 東弁リブラの連載記載

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日弁連懲戒委員会の異議申出棄却――原議決書参照型の議決を受けた体験談(AIリライト)

目次

第1 事案と手続の経過

1 3つの懲戒請求事由
2 日弁連への異議申出と棄却

第2 日弁連懲戒委員会の理由付け

1 議決書が示した理由
2 「議決」「決定」「裁決」の違い

第3 原議決書参照型の理由付けは他にも存在する

1 議決例集と裁判所HPで確認できる同型例
2 反対意見の記載がなくても全員一致とは限らない
3 日弁連会長との関係

第4 3つの懲戒請求事由の現在の評価

1 破産管財人による不動産売却と消費税
2 破産管財人の免責に関する意見
3 管財人の任務終了後に破産者の代理人となったこと

第5 本件議決書に対する評価

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弁護士職務基本規程-現行条文,82条及び判例上の位置付け(AIリライト)

第1 現行規程の位置付け1 制定・改正と現行版の確認方法2 弁護士法との関係3 現行版で特に注意すべき点第2 弁護士職務基本規程の現行本文1 第1章 基本倫理2 第2章 一般規律3 第3章 依頼者との関係における規律(1) 第1節 通則(2) 第2節 職務を行い得ない事件の規律(3) 第3節 事件の受任時における規律(4) 第4節 事件の処理における規律(5) 第5節 事件の終了時における規律4 第4章 刑事弁護における規律5 第5章 組織内弁護士における規律6 第6章 事件の相手方との関係における規律7 第7章 共同事務所における規律8 第8章 弁護士法人等における規律9 第9章 他の弁護士等との関係における規律10 第10章 裁判の関係における規律11 第11章 弁護士会との関係における規律12 第12章 官公署との関係における規律13 第13章 解釈適用指針第3 解釈・適用上の注意1 82条は実質的な解釈を求めていること2 規程違反と懲戒事由とは同一ではないこと3 私法上の効力及び訴訟行為の効力は別に検討すること第4 関連記事第5 出典1 現行規程及び法令2 裁判例

弁護士職務基本規程は,日本弁護士連合会が弁護士の職務に関する倫理と行為規範を定めた会規である。
本記事は,令和8年9月9日現在に日弁連が公表する現行本文を掲載し,改正履歴,82条の解釈適用指針,懲戒及び判例上の位置付けを整理する。

第1 現行規程の位置付け
1 制定・改正と現行版の確認方法

弁護士職務基本規程は,平成16年11月10日に会規第70号として制定され,平成17年4月1日に施行された。日弁連の現行規程PDFは,平成26年12月5日改正及び令和3年6月11日改正を掲げており,後者は令和4年11月1日から施行されている。
日弁連の会則・会規等の一覧は,冊子掲載後の改正をウェブ掲載規程へ順次反映すると説明している。したがって,旧版の転載ではなく,同一覧から到達できるPDFを基準に確認する必要がある。

2 弁護士法との関係

弁護士法22条は,弁護士に所属弁護士会及び日弁連の会則を守る義務を課している。弁護士職務基本規程自体は日弁連の会規であり,国会が制定した法律ではない。
弁護士法56条1項は,法律又は会則への違反,弁護士会の秩序又は信用を害する行為その他品位を失うべき非行を懲戒事由としている。個々の規程違反が懲戒,私法上の効力又は訴訟行為の効力にどのように影響するかは,規程の文言だけで一律に決まるものではなく,具体的事案と適用法令を分けて検討する必要がある。

3 現行版で特に注意すべき点

令和3年改正後の本文では,第8章が「弁護士法人等における規律」とされ,共同法人及び外国法事務弁護士法人に関する文言並びに68条の2の読替表が置かれている。60条の準用関係も旧版とは異なるため,改正前の本文を混在させないよう注意を要する。
現行の82条2項が行動指針又は努力目標として列挙するのは,33条であり,32条ではない。これは日弁連公表PDFの印刷頁31で確認できる。

第2 弁護士職務基本規程の現行本文

以下は,日弁連公表PDFの前文及び1条から82条までを,横書き用に改行と句読点を整えて収録したものである。内容に疑義がある場合は公式PDFを基準とする。

前文
弁護士は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。
その使命達成のために,弁護士には職務の自由と独立が要請され,高度の自治が保障されている。
弁護士は,その使命を自覚し,自らの行動を規律する社会的責任を負う。
よって,ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため,弁護士職務基本規程を制定する。

1 第1章 基本倫理

(使命の自覚)
第一条 弁護士は,その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し,その使命の達成に努める。

(自由と独立)
第二条 弁護士は,職務の自由と独立を重んじる。

(弁護士自治)
第三条 弁護士は,弁護士自治の意義を自覚し,その維持発展に努める。

(司法独立の擁護)
第四条 弁護士は,司法の独立を擁護し,司法制度の健全な発展に寄与するように努める。

(信義誠実)
第五条 弁護士は,真実を尊重し,信義に従い,誠実かつ公正に職務を行うものとする。

(名誉と信用)
第六条 弁護士は,名誉を重んじ,信用を維持するとともに,廉潔を保持し,常に品位を高めるように努める。

(研鑽)
第七条 弁護士は,教養を深め,法令及び法律事務に精通するため,研鑽に努める。

(公益活動の実践)
第八条 弁護士は,その使命にふさわしい公益活動に参加し,実践するように努める。

2 第2章 一般規律

(広告及び宣伝)
第九条 弁護士は,広告又は宣伝をするときは,虚偽又は誤導にわたる情報を提供してはならない。
2 弁護士は,品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。

(依頼の勧誘等)
第十条 弁護士は,不当な目的のため,又は品位を損なう方法により,事件の依頼を勧誘し,又は事件を誘発してはならない。

(非弁護士との提携)
第十一条 弁護士は,弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条から第七十四条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け,これらの者を利用し,又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。

(報酬分配の制限)
第十二条 弁護士は,その職務に関する報酬を弁護士,弁護士法人又は弁護士・外国法事務弁護士共同法人(以下「共同法人」という。)でない者との間で分配してはならない。ただし,法令又は本会若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その他正当な理由がある場合は,この限りでない。

(依頼者紹介の対価)
第十三条 弁護士は,依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。
2 弁護士は,依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。

(違法行為の助長)
第十四条 弁護士は,詐欺的取引,暴力その他の違法若しくは不正な行為を助長し,又はこれらの行為を利用してはならない。

(品位を損なう事業への参加)
第十五条 弁護士は,公序良俗に反する事業その他の品位を損なう事業を営み,若しくはこれに加わり,又はこれらの事業に自己の名義を利用させてはならない。

(営利業務従事における品位保持)
第十六条 弁護士は,自ら営利を目的とする業務を営むとき,又は営利を目的とする業務を営む者の取締役,執行役その他業務を執行する役員若しくは使用人となったときは,営利を求めることにとらわれて,品位を損なう行為をしてはならない。

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弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義(AIリライト)

第1 弁護士法58条1項が「何人も」懲戒請求できると定める理由

1 条文と手続の全体像
2 最高裁判所の補足意見が示す立法趣旨

(1) 裁判官竹内行夫の補足意見
(2) 裁判官須藤正彦の補足意見

3 日弁連が国の検討会で説明した立法趣旨

第2 懲戒請求をする側に生じ得る法的責任

1 虚偽告訴罪(刑法172条)
2 懲戒請求をしたこと自体が懲戒事由となる場合
3 不当な懲戒請求による損害賠償責任

第3 懲戒制度を濫用する意図があると評価された事例

1 懲戒請求者本人の事例
2 懲戒請求者の代理人弁護士の事例

第4 2017年の大量懲戒請求問題-「何人も」の濫用と司法的是正

1 事案の概要

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弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表,事前公表及び懲戒処分歴の開示(AIリライト)

第1 公告,通知,公表,事前公表及び処分歴開示の違い

1 五つの制度の区別

2 懲戒処分と公表情報の関係

第2 懲戒処分の公告

1 官報による公告

2 『自由と正義』による公告

第3 懲戒手続に関する通知

1 懲戒処分をした場合の通知先

2 処分に至らない場合を含む手続通知

3 関係官公署等への通知

第4 懲戒処分後の公表

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弁護士の業務停止処分に関する取扱い(AIリライト)

目次

第1 業務停止処分の意義と法的性質

1 業務停止処分とは何か
2 業務停止によって停止される業務の範囲

(1) 依頼者その他関係人の依頼に基づく事務
(2) 官公署の委嘱による事務
(3) 弁理士及び税理士の業務
(4) 弁護士会等の会務活動との関係

3 業務停止の期間とその計算方法
4 業務停止期間中の会費と登録取消し

第2 業務停止処分を受けた場合の取扱い

1 取扱いの基準

(1) 弁護士の場合
(2) 弁護士法人の場合

2 業務停止期間中に取るべき措置の具体的内容
3 訴訟代理人の権限消滅の通知
4 弁護士法人の依頼者による個人受任をめぐる問題

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弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名,並びに第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由(AIリライト)

目次

第1 弁護士に対する懲戒処分の概要(総論)

1 懲戒処分の4種類と根拠規定

(1) 4種類の懲戒処分(弁護士法57条1項)
(2) 懲戒事由(弁護士法56条1項)

2 懲戒処分の法的性質

(1) 広い意味での行政処分
(2) 二重処罰・二重の危険との関係

3 懲戒処分の効力発生時期(告知時説)

(1) 告知の時に効力が生じる
(2) 確定時説から告知時説への変遷
(3) 税理士の懲戒処分との対比

4 懲戒処分の周知・公表・処分歴の開示

(1) 官報公告と「自由と正義」への掲載
(2) 関係官公署等への通知
(3) 公表制度・事前公表制度
(4) 懲戒処分歴の開示制度

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弁護士職務基本規程82条の行動指針・努力目標-対象条文と懲戒判断(AIリライト)

第1 弁護士職務基本規程82条の位置付け

1 規程全体の実質的な解釈
2 行動指針又は努力目標とされる条文
3 現行条文は33条ではなく32条を列挙していること

第2 現行の対象条文

1 基本倫理
2 依頼者との関係
3 刑事弁護及び組織内弁護士
4 共同事務所,法人,弁護士間及び裁判

第3 形式的違反と懲戒判断との関係

1 努力目標の違反も判断要素になり得ること
2 列挙されない規定の違反も直ちに懲戒とは限らないこと

第4 最高裁判例に現れた職務基本規程の位置付け

1 最高裁平成21年8月12日決定
2 最高裁平成25年4月16日判決

第5 関連記事
第6 出典・参考資料

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非弁護士との提携の禁止(AIリライト)

第1 総論1 弁護士職務基本規程11条及び大阪弁護士会会則108条2項による規制2 「自己の名義を利用させる」の意義第2 弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容1 違反行為の類型と罰則2 弁護士法人制度導入に伴う整理3 自己の法律事件を依頼した者の罪責4 隣接士業との提携が弁護士職務基本規程11条違反となる場合第3 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)1 条文及び前身規定(1) 条文(2) 前身規定(法律事務ノ取扱ノ取締ニ関スル法律)(3) 最高裁大法廷昭和46年判決が示した立法趣旨(4) 「報酬を得る目的」及び「業として」という要件(5) 昭和30年改正前の弁護士法7条との関係(6) 別段の定めによる法律事務の取扱い2 「訴訟事件」等の各文言の意義(1) 訴訟事件(2) 非訟事件(3) 行政庁に対する不服申立事件(4) その他一般の法律事件に含まれる例(5) 事件性の要否をめぐる見解の対立(6) ビルの明渡し交渉が問題となった事例(7) 鑑定,代理,仲裁及び和解の意義(8) 業としての意義(9) 周旋の意義(10) 72条違反行為の私法上の効力第4 弁護士法73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)1 条文等(1) 条文(2) 他人,権利及び譲り受けの意義(3) 73条の趣旨(4) 前身規定と事件屋の概念(5) 社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるとされた事例(6) 73条違反行為の私法上の効力2 サービサー法の位置づけ等(1) サービサー法の趣旨(2) 債権管理回収業の定義(3) 弁護士による係争目的物の譲受けとの違い(4) 債権回収会社の許可基準(5) 譲受けが禁止される債権の範囲(6) 無許可での債権管理回収業と最高裁平成24年決定(7) 最高裁令和5年決定第5 非弁護士との提携の取締り1 日弁連の規程等による取締り2 大阪弁護士会の場合3 東京弁護士会における注意喚起4 大阪地裁のあゆみ共同法律事務所事件5 東京ミネルヴァ法律事務所事件第6 弁護士法人ベリーベストの懲戒処分に関する文書第7 関連記事その他出典・参考資料

第1 総論

1 弁護士職務基本規程11条及び大阪弁護士会会則108条2項による規制

非弁提携の禁止に関しては,「弁護士は,弁護士法第72条から第74条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け,これらの者を利用し,又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。」(弁護士職務基本規程11条。なお,同趣旨の規定につき大阪弁護士会会則108条2項)と規定されている。
禁止される提携の対象は,弁護士法27条と異なり,①弁護士法72条ないし74条の規定に違反する者に限らず,「違反すると疑うに足りる相当な理由のある者」にまで広げられているほか,②「事件の周旋」に限らず,「依頼者の紹介」にまで広げられている。

2 「自己の名義を利用させる」の意義

「自己の名義を利用させる」とは,「弁護士某」という名義のほか,氏名だけの利用も含み,「○○法律事務所」という表示についても名義の利用に当たる場合がある。
例としては,大量に処理する報告書,内容証明郵便等に,弁護士の氏名を記載し,更に弁護士の印鑑を弁護士でない者に預けて押捺させる場合がある。

再び、AIレビューと弁護士法72条の論点で、2件同時にグレーゾーン解消制度の回答が公表されています。
いずれも違反すると評価される可能性がある、との結論となっています。
①https://t.co/Ty6RvO0fqj
②https://t.co/1AQVjiZygQ

— 弁護士水井大|Dai MIZUI (@DaiMizui_law) October 14, 2022

あまた法律事務所の事務員の求人募集。事務員が依頼者にヒヤリングして依頼の諾否を判断。さらに事務員が解決方法を提案して、訴状や和解書の作成も行う。69期弁護士が2019年7月に設立し、現在弁護士6名、事務員45名。借金減額シミュレーターの広告に頻繁に登場。https://t.co/mYOJbOCIor pic.twitter.com/1rpLlganYG

— はむ弁護士 (@hamhambenben) August 31, 2022

第2 弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容

1 違反行為の類型と罰則

弁護士法72条から74条までの規定に違反している者の内容は以下のとおりであり,①ないし③に該当する場合は2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処せられ(弁護士法77条),④ないし⑥に該当する場合は100万円以下の罰金に処せられる(弁護士法77条の2)。
①弁護士又は弁護士法人でないのに,報酬を得る目的で,業として,訴訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定,代理,和解等の法律事務を取り扱う者(弁護士法72条本文前段違反)
②弁護士又は弁護士法人でないのに,報酬を得る目的で,業として,法律事件に関する法律事務の取扱いを周旋する者(弁護士法72条本文後段違反)
③他人の権利を譲り受けて,訴訟等の手段によって,その権利を実行することを業とする者(弁護士法73条違反)
④弁護士又は弁護士法人でないのに,弁護士又は法律事務所の標示又は記載をする者(弁護士法74条1項違反)
⑤弁護士又は弁護士法人でないのに,利益を得る目的で,法律相談その他法律事務を取り扱うことを標示又は記載した者(弁護士法74条2項違反)
⑥弁護士法人でないのに,その名称中に弁護士法人又はこれに類似する名称を用いた者(弁護士法74条3項違反)

2 弁護士法人制度導入に伴う整理

平成13年6月8日法律第41号(平成14年4月1日施行)に基づき弁護士法人の制度が導入されたことに伴い,弁護士法人を主体とする犯罪(弁護士法30条の21において準用される弁護士法27条及び28条に違反した場合)についても弁護士法77条の適用があることが明確にされるとともに,罰金刑の最高額が100万円から300万円に引き上げられた。

3 自己の法律事件を依頼した者の罪責

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日弁連の懲戒手続(AIリライト)

目次

第1 日弁連の綱紀委員会1 異議の申出に対する議決2 委員の資格と選任3 異議申出の方法第2 日弁連の綱紀審査会1 綱紀審査の申出とその議決2 制度創設の経緯3 委員の資格と選任第3 日弁連の懲戒委員会1 懲戒請求者からの異議申出2 対象弁護士等からの審査請求3 委員の資格と選任第4 懲戒手続に関する日弁連の規程第5 関連記事第6 出典・参考資料1 法令2 会則・会規3 公的資料

第1 日弁連の綱紀委員会

弁護士会が行う一次的な懲戒手続に対し,日弁連は,異議の申出があった場合に,綱紀委員会,綱紀審査会又は懲戒委員会という3つの機関のいずれかで審査を行う。懲戒請求者が弁護士会の綱紀委員会の判断に不服がある場合は綱紀委員会(本項)及び綱紀審査会(第2)が,懲戒請求者又は対象弁護士等が弁護士会の懲戒委員会の判断に不服がある場合は日弁連の懲戒委員会(第3)が,それぞれ担当する。

1 異議の申出に対する議決

弁護士会の「綱紀」委員会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をした場合,懲戒請求者は日弁連に対し異議の申出ができ(弁護士法64条1項前段),異議の申出があった場合,日弁連は,綱紀委員会において異議の審査を行う(同法64条の2第1項)。日弁連の綱紀委員会は,審査の結果,①弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決をするか(同条2項),②異議の申出を却下又は棄却する旨の議決をする(同条5項)。①の議決があったときは,日弁連は当該議決に基づき原弁護士会の不処分決定を取り消して事案を原弁護士会に送付し,原弁護士会はその懲戒委員会に事案の審査を求めなければならない(同条3項)。

2 委員の資格と選任

日弁連の綱紀委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ日弁連の会長が委嘱する(弁護士法70条の3第2項前段)。この場合,①裁判官又は検察官である委員はその地の高等裁判所若しくは地方裁判所又は高等検察庁検事長若しくは地方検察庁検事正の推薦に基づき,②その他の委員は日弁連の総会の決議に基づき,委嘱しなければならない(同項後段,同法66条の2第2項後段)。委員の任期は2年であり(同法70条の3第3項),予備委員の選任(同法70条の5)も含めて,毎年5月の定時総会の決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されている(同会則59条6号参照)。

3 異議申出の方法

異議申出の方法については,日弁連HPの「懲戒請求事案に関する異議の申出の方法について」が参考になる。異議申出をする場合,正本1通及び副本2通の合計3通の異議申出書を日弁連に提出する。

第2 日弁連の綱紀審査会

1 綱紀審査の申出とその議決

異議の申出の却下又は棄却に対して不服がある場合,懲戒請求者は,日弁連に対し,綱紀審査会による綱紀審査の申出ができる(弁護士法64条の3)。日弁連の綱紀審査会は,審査の結果,①弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決をするか(同法64条の4第1項),②綱紀審査の申出を却下又は棄却する旨の議決をする(同条4項及び5項)。①の議決は,出席した委員の3分の2以上の多数によらなければならない(同条1項後段)。

2 制度創設の経緯

綱紀審査会は,平成15年7月25日法律第128号(平成16年4月1日施行)による弁護士法改正により日弁連に設置された機関であり,法曹三者(裁判官,検事及び弁護士)以外の11人の学識経験者で構成される(弁護士法71条の2及び71条の3)。この制度創設の直接の契機は,平成13年6月12日付けの司法制度改革審議会意見書(第3・6(2)「弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備」)が,綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化の方策の一つとして,「懲戒請求者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を棄却・却下された場合に,国民が参加して構成される機関に更なる不服申立ができる制度の導入」を求めたことにある。同意見書は,これと併せて,綱紀委員会等の委員構成の見直し(弁護士以外の委員の増加)や,綱紀委員会の弁護士以外の委員への評決権の付与も求めていた。

3 委員の資格と選任

日弁連の綱紀審査会の委員は,日弁連の会長が日弁連の総会の決議に基づき委嘱する(弁護士法71条の3第1項)。委員の任期は2年であり(同条2項),予備委員の選任(同法71条の5)も含めて,毎年5月の定時総会の決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されている(同会則59条6号参照)。

第3 日弁連の懲戒委員会

1 懲戒請求者からの異議申出

弁護士会の懲戒委員会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をした場合,懲戒請求者は,日弁連に対し,異議の申出ができ(弁護士法64条1項前段),弁護士会がした懲戒の処分が不当に軽い場合も,同様に異議の申出ができる(同項後段)。いずれの異議の申出も,当該事案が原弁護士会の懲戒委員会の審査に付されたものであるときは,日弁連は,懲戒委員会において異議の審査を行う(同法64条の5第1項)。日弁連の懲戒委員会は,審査の結果,①弁護士会の懲戒しない旨の決定を取り消して対象弁護士を懲戒するか(同条2項),②弁護士会の懲戒の処分を取り消してより重い処分に変更するか(同条4項),③異議の申出を却下又は棄却する(同条5項)。日弁連が議決をしたときは,速やかに,理由を付した議決書を作成しなければならない(同法67条の2)。異議申出の方法は,前記第1の3と同様であり,正本1通及び副本2通の合計3通の異議申出書を提出する。

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弁護士会の懲戒手続(AIリライト)

弁護士会の懲戒手続は,弁護士又は弁護士法人の職業規律を維持するための手続であり,懲戒請求者と対象弁護士等との民事上の紛争を解決したり,返金又は損害賠償を命じたりする手続ではない。

手続は,原則として対象弁護士等の所属弁護士会で始まり,綱紀委員会の調査,必要に応じた懲戒委員会の審査,弁護士会による処分又は不懲戒の決定という順序で進む。

本記事では,現行の弁護士法,日弁連及び大阪弁護士会の案内並びに専門書に基づき,懲戒請求から日弁連への異議申出までの流れを整理する。

目次

第1 懲戒制度の目的と全体像

1 懲戒手続の基本的な流れ
2 懲戒事由と懲戒処分の種類

第2 懲戒手続の開始

1 何人も所属弁護士会に懲戒を求めることができること
2 弁護士会自身による会請求
3 懲戒請求者の手続上の地位

第3 綱紀委員会の調査

1 調査の権限
2 審査相当と審査不相当
3 調査対象と情状

第4 懲戒委員会の審査と弁護士会の決定

1 懲戒委員会が審査する事項
2 対象弁護士等の手続保障

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弁護士の懲戒手続の除斥期間―3年の起算点と手続開始時(AIリライト)

第1 弁護士法63条の除斥期間

1 懲戒の事由があった時から3年であること

2 3年を経過した場合の処理

3 民法上の消滅時効との違い

第2 除斥期間の起算点

1 行為が終了した時が原則であること

2 預り金又は預り品を返還しない場合

3 委任関係が終了した場合

4 複数の行為がある場合

第3 「懲戒の手続を開始する」の意味

1 懲戒請求書の提出時ではないこと

2 平成15年改正による明文化

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弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分(平成29年10月11日付)(AIリライト)

第1 本件懲戒処分の概要

1 平成29年10月11日の処分

2 本記事で区別する手続

第2 期間限定広告と消費者庁の措置命令

1 三段階の広告表示

2 平成28年2月16日付措置命令

第3 東京弁護士会の懲戒処分

1 法人に対する業務停止2月

2 石丸幸人弁護士に対する業務停止3月

3 法人全体が処分対象となったこと

第4 業務停止の法的効果

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弁護士法人の懲戒事例(AIリライト)

第1 本記事の対象と一覧の読み方第2 弁護士法人に対する懲戒の制度1 法人と個人は別の懲戒対象である2 処分の種類と支店への処分3 移転・解散と懲戒手続の関係第3 平成22年から平成29年までの事例1 アディーレ法律事務所――破産申立事件の処理2 かすが総合――依頼者に対する別事件の受任3 協立法律事務所――広告と事務職員の監督4 片山会――事務職員への対応の委任と事件紹介5 公尽会――事件放置と預り金の未清算6 ひいらぎ綜合法律事務所――面談・説明・和解の協議7 十枝内総合法律事務所――上告期限の徒過8 美咲総合法律税務事務所――職務上請求書の利用目的9 北斗――預り金の管理と破産事件の遅延10 菅谷法律事務所――遺産分割事件等の未清算11 アディーレ法律事務所――広告表示と後続の裁決12 クローザー法律事務所――非弁提携第4 令和2年以降の事例1 ベリーベスト法律事務所――業務停止期間の変更と裁判2 清源法律事務所――職場のセクシュアル・ハラスメント3 あゆみ共同法律事務所――2件の除名公告4 東京ミネルヴァ法律事務所――預り金の不正流用等5 フィード――動産の誤廃棄6 日本橋さくら法律事務所――事件紹介の対価7 フェニックス――官報で確認できる処分内容第5 処分情報を確認するときの留意点第6 出典1 法令2 懲戒処分・裁決・判決確定の公告3 裁判書

第1 本記事の対象と一覧の読み方

本記事は,弁護士法人に対する懲戒処分について,法人名,処分の効力発生日,処分内容及び理由の要旨を整理するものである。
『自由と正義』の懲戒公告を中心に,令和8年8月31日までに確認できた資料を用い,日弁連の裁決による変更・取消しや裁判の結果が確認できるものは,原処分と区別して示す。

以下は確認した事例を選んだ一覧であり,全国の全処分を網羅した統計ではない。
法人名・事務所の構成は原則として公告当時のものであり,過去の業務停止処分の掲載は,その法人が現在も業務停止中であることを意味しない。

法人名・詳細へのリンク原処分の効力発生日原処分の内容アディーレ法律事務所平成22年10月5日戒告かすが総合平成23年1月12日業務停止1月協立法律事務所平成23年3月7日戒告片山会平成23年7月6日業務停止1年公尽会平成23年11月8日除名ひいらぎ綜合法律事務所平成28年12月7日戒告十枝内総合法律事務所平成29年2月10日戒告美咲総合法律税務事務所平成29年3月28日戒告北斗平成29年8月31日業務停止1年6月菅谷法律事務所平成29年10月11日除名アディーレ法律事務所平成29年10月11日業務停止2月クローザー法律事務所平成29年12月26日業務停止1年ベリーベスト法律事務所令和2年3月12日業務停止6月。裁決で3月に変更清源法律事務所令和2年9月17日業務停止6月あゆみ共同法律事務所令和3年2月26日東京弁護士会による除名あゆみ共同法律事務所令和3年3月30日大阪弁護士会による除名東京ミネルヴァ法律事務所令和6年2月17日除名フィード令和6年7月17日戒告日本橋さくら法律事務所令和7年8月7日業務停止1月フェニックス令和8年7月9日業務停止2月

表の法人名はいずれも「弁護士法人」を省略している。
日付は雑誌の発行月や官報の掲載日ではなく,公告に記載された原処分の効力発生日であり,取消しとなった別処分などは各事例の本文で説明する。

第2 弁護士法人に対する懲戒の制度

1 法人と個人は別の懲戒対象である

弁護士法56条は,弁護士と弁護士法人の双方を懲戒の対象とし,原則として所属弁護士会が懲戒を行うと定めている。
したがって,代表弁護士個人の処分を確認しただけでは,法人に対する処分の有無や内容まで確認したことにはならない。

また,法人に対する懲戒と,社員である弁護士個人に対する懲戒では,法人への影響も異なる。
社員が業務停止・退会命令・除名の処分を受けた場合は法定脱退の事由となり,法人自身の除名や社員の欠亡は法人の解散事由となる(弁護士法30条の22第6号,30条の23第1項6号・7号)。

2 処分の種類と支店への処分

弁護士法人に対する懲戒は,次の4種類である(弁護士法57条2項)。
同じ「業務停止」という表示でも,法人全体の業務を停止する処分か,特定の法律事務所の業務を停止する処分かを確認する必要がある。

(続きを読む...)弁護士法人の懲戒事例(AIリライト)

平成29年5月開始の大量懲戒請求事案

1(1) 朝鮮学校への高校授業料無償化の適用,補助金交付等を求める声明を出した全国の弁護士会に対し,平成29年10月12日までの時点で,弁護士会長らの懲戒を請求する懲戒請求書が4万件以上提出されています(毎日新聞HPの「懲戒請求 弁護士会に4万件超 「朝鮮学校無償化」に反発」(平成29年10月12日付)参照)。
そのため,平成29年の懲戒請求件数は,過去最高であった平成19年の9585件(うち,8095件は光市母子殺害事件の弁護団に対する懲戒請求です。)をはるかに超えています。
(2) 平成30年6月12日までの時点で,全国21弁護士会で約13万件に上っているみたいです(週プレNEWSの「弁護士への”不当懲戒請求”13万件を先導した黒幕--『余命三年』の正体とは?」(平成30年6月12日付)参照)。

2 日弁連は,平成29年12月25日,全国各地における弁護士会員多数に対する懲戒請求についての会長談話を出しました。

3(1) BLOGOSに「熱心なネトウヨ、実は中高年が中心? 弁護士への不当な懲戒請求、「40代後半から50代が多い。女性も3~4割いる」 」が載っています。
(2) 大量懲戒請求事件につき,一部の弁護士が懲戒請求者に対して損害賠償請求訴訟の提起を予告しています(事実を整えるブログの「弁護士への「大量」不当懲戒請求:余命信者と佐々木・北弁護士の和解の論点」(平成30年6月7日付)参照)。
(3) クローズアップ現代HPに「なぜ起きた?弁護士への大量懲戒請求」(平成30年10月29日放送分)が載っています。

4 弁護士に対する業務妨害(濫用的懲戒請求を含みます。)とその対策については,「弁護士に対する業務妨害と対策――日弁連の宣言,濫用的懲戒請求,国選弁護人の解任及び法律事務所のカスハラ対策」を参照してください。

https://twitter.com/yamanaka_osaka/status/1179765030654365697

会務活動における弁護士の秘密保持義務-適用範囲,個別規則及び裁判例(AIリライト)

目次

第1 会務で知った情報の取扱いに関する結論1 「会務で知った」という名称だけでは決まらないこと2 確認の順序第2 弁護士法23条と弁護士職務基本規程23条1 弁護士法23条2 弁護士職務基本規程23条3 二つの規定を同じものとして扱わないこと第3 大阪高裁平成19年2月28日判決1 事案の概要2 第1審と控訴審の判断3 判決の射程第4 会務の中に法律事務が含まれる場合1 法律相談その他の対外的活動2 内部の審査,調査及び委員会活動第5 日弁連の特別委員会規則1 規則12条の内容2 個別規則を先に確認する意味第6 違反した場合に問題となる責任1 懲戒責任2 民事責任及び刑事責任第7 綱紀委員会議事録と文書提出命令1 最高裁平成23年10月11日決定2 決定全文第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 弁護士会等の規程及び公表資料4 文献5 関連記事
第1 会務で知った情報の取扱いに関する結論
1 「会務で知った」という名称だけでは決まらないこと

弁護士会の会務で知った情報であるというだけで,弁護士の秘密保持義務が一律に否定されるわけではない。
まず,情報を取得した具体的な活動が弁護士の法律事務に当たるかを確認し,次に,所属弁護士会又は日本弁護士連合会の会則,会規,規則,委嘱条件その他の個別の根拠を確認する必要がある。

弁護士会が運営する活動であっても,担当弁護士が市民の法律相談を受ける場面では,弁護士として法律事務を行っている場合がある。
例えば,東京弁護士会は,公益通報相談窓口のQ&Aにおいて,同会の相談窓口に来たこと及び相談内容について,弁護士法23条に基づく秘密保持義務があると説明している。

2 確認の順序

会務情報を外部に開示し,又は別の目的に利用する前には,少なくとも次の順序で検討する必要がある。
①情報を取得したときの立場と具体的な活動
②相談者,申立人,関係者等との信頼関係及び秘密性
③適用される法令,会則,会規,規則,委嘱条件及び内部決定
④開示先,開示目的,開示範囲及び必要性
⑤本人の同意,法令上の根拠又は権限者の承認の有無
⑥より限定的な代替手段及び情報セキュリティ上の措置

第2 弁護士法23条と弁護士職務基本規程23条
1 弁護士法23条

弁護士法23条は,弁護士及び弁護士であった者について,職務上知り得た秘密を保持する権利と義務を定め,法律に別段の定めがある場合を例外としている。
同条の文言は,秘密の帰属主体を「依頼者」に限定していない。

2 弁護士職務基本規程23条

弁護士職務基本規程23条は,弁護士が,正当な理由なく,依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし,又は利用することを禁じている。
同条は,秘密の漏えいだけでなく利用も明示的に対象としている。

3 二つの規定を同じものとして扱わないこと

両規定は,対象者,秘密の帰属主体,禁止される行為及び例外の表現が同一ではない。
弁護士法23条は秘密を保持する権利と義務を定めるのに対し,弁護士職務基本規程23条は依頼者についての秘密の漏えい又は利用を規律している。

したがって,会務に弁護士法23条が直接適用されるかという問題と,個別の会則,会規又は規則に基づく秘密保持義務があるかという問題は,分けて検討すべきである。
また,規程違反が直ちに懲戒処分になるわけではないものの,弁護士法56条1項は,法令又は会則への違反,所属弁護士会の秩序若しくは信用を害する行為その他の品位を失うべき非行を懲戒事由としている。

第3 大阪高裁平成19年2月28日判決
1 事案の概要

この判決は,弁護士会の委員会活動そのものを対象とした事件ではない。

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弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」-判断枠組みと50の懲戒例(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と資料の範囲1 対象2 50例の位置付け第2 「品位を失うべき非行」の判断枠組み1 弁護士法56条1項と懲戒の種類2 最高裁判所が示した考慮事情3 弁護士職務基本規程82条第3 平成24年版ハンドブックに掲載された50例1 表の読み方2 50例と原出典第4 後発の公表例と懲戒しないとされた例1 事件放置と連絡・報告懈怠の公表例2 外形が似ていても懲戒しないとされた例第5 50例を参照するときの確認事項第6 関連記事第7 出典1 法令2 裁判例及び懲戒処分の公表資料3 職能団体の規程4 文献
第1 この記事の対象と資料の範囲
1 対象

弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」は,職務上の行為だけでなく,職務外の行為にも適用され得る懲戒事由である。
本記事は,2026年9月7日現在の法令・会規と公表資料を確認し,AIを用いて判断枠組み,過去の50例,その後の公表例及び懲戒しないとされた境界事例を照合・整理したものである。

2 50例の位置付け

第3の50例は,日本弁護士連合会調査室『弁護士業務ハンドブック』(平成24年)45頁~48頁が,弁護士法56条1項に関する懲戒議決の例として掲げたものを,原出典と対応させて要約したものである。
同書自体が一部の例を紹介する資料であるため,この50例は網羅的な懲戒事由一覧ではない。
また,同種の行為でも具体的事情により結論が異なるため,個々の例を現在の事案に機械的に当てはめることはできない。

第2 「品位を失うべき非行」の判断枠組み
1 弁護士法56条1項と懲戒の種類

弁護士法56条1項は,弁護士又は弁護士法人につき,弁護士法違反,所属弁護士会・日弁連の会則違反,所属弁護士会の秩序・信用を害する行為その他職務の内外を問わず品位を失うべき非行があったときを懲戒事由としている。
同法57条1項が定める懲戒は,戒告,2年以内の業務停止,退会命令及び除名の4種類である。
懲戒事由の全体像は,弁護士の懲戒事由で別途整理している。

2 最高裁判所が示した考慮事情

最高裁平成18年9月14日第一小法廷判決(平成15年(行ヒ)第68号,裁決取消請求事件,集民221号87頁)は,受領した解決金の一部について依頼者に虚偽の報告をし,追加立退料の受領を報告せず秘匿した弁護士に対する業務停止3月の処分が問題となった事件である。
同判決は,非行の内容・程度,被害や社会的影響,弁護士の社会的評価に与える影響,本人に及ぼす影響,弁護士の使命の重要性その他の諸般の事情を総合考慮する判断枠組みを示した。
その上で,非行に当たるか,どの懲戒処分を選ぶかは弁護士会の合理的な裁量に委ねられ,その判断が全く事実の基礎を欠くか,社会通念上著しく妥当性を欠くときに限り,裁量権の逸脱又は濫用として違法となると判断した。

3 弁護士職務基本規程82条

弁護士職務基本規程82条は,同規程の解釈適用に当たり,弁護士の職務の多様性と個別性を考慮し,その自由と独立を不当に侵害することのないよう,実質的に解釈・適用しなければならない旨を定めている。
また,特に同規程5条の刑事弁護活動への解釈適用には,被疑者・被告人の防御権や適正手続の保障などに十分に留意しなければならない旨も定めている。
したがって,行為の外形だけでなく,当時の職務上の地位,受任の範囲,当事者間の利害,主観的態様,被害及び事後対応を具体的に確認する必要がある。

第3 平成24年版ハンドブックに掲載された50例
1 表の読み方

「原出典」欄は,『弁護士業務ハンドブック』45頁~48頁の注記を基に,「同」とされた巻名を補って表示したものである。
事実の要約は一覧性のために簡略化しており,懲戒の可否や量定を確認するときは,当該議決例の事実認定と理由を直接確認する必要がある。

2 50例と原出典

番号
行為の要約
原出典


母親が差入営業をする店舗の奥に法律事務所を置いた事例
議決例集第1集241頁・2頁

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弁護士の懲戒事由-弁護士法56条の4類型と判断基準(AI作成)

目次

第1 弁護士法56条1項が定める懲戒事由第2 四つの懲戒事由の内容1 弁護士法に違反したとき2 弁護士会又は日本弁護士連合会の会則に違反したとき3 所属弁護士会の秩序又は信用を害したとき4 その他,品位を失うべき非行があったとき第3 弁護士職務基本規程と懲戒事由の関係1 個別規定の役割2 形式的違反だけで決めないこと3 行動指針又は努力目標とされる規定第4 懲戒事由該当性と処分の判断基準1 最高裁平成18年9月14日判決2 懲戒しないことが明らかな場合3 具体例を見るときの注意点第5 懲戒判断と私法上・刑事上の評価1 契約等の私法上の効力とは別の問題であること2 民事責任及び刑事責任とも区別されること第6 期間制限と関連記事1 懲戒手続の除斥期間2 懲戒手続等の記事第7 出典1 法令,会則及び会規2 裁判例3 公的機関の解説
第1 弁護士法56条1項が定める懲戒事由

弁護士法56条1項は,弁護士及び弁護士法人の懲戒事由を,①弁護士法違反,②所属弁護士会又は日本弁護士連合会の会則違反,③所属弁護士会の秩序又は信用を害する行為,④その他職務の内外を問わない品位を失うべき非行という四つの類型で定めている。
前三者に該当しない行為であっても,具体的事情に照らして④に当たることがあり,複数の類型に同時に該当することもある。

「職務の内外を問わず」と定められているため,受任事件の処理だけが審査対象になるわけではない。
もっとも,弁護士に好ましくない行為があれば直ちに懲戒されるという意味ではなく,懲戒事由該当性,懲戒の要否及び処分の種類は,事案ごとに判断される。

本記事は,令和8年9月7日現在の法令等に基づき,懲戒事由とその判断枠組みを説明するものである。
懲戒請求の手続,処分の種類及び処分歴の公表については,第6に掲げる関連記事で扱っている。

第2 四つの懲戒事由の内容
1 弁護士法に違反したとき

弁護士法には,秘密保持義務,非弁護士との提携の禁止,係争権利の譲受けの禁止等,弁護士の職務及び身分に関する規律が置かれている。
個別行為が弁護士法違反に当たるかは,各条文の要件に即して判断する必要がある。

2 弁護士会又は日本弁護士連合会の会則に違反したとき

弁護士は,所属弁護士会及び日本弁護士連合会の会則を守らなければならない(弁護士法22条)。
日本弁護士連合会会則29条は,弁護士が所属弁護士会及び日本弁護士連合会の会則,会規及び規則を守る義務を定めているため,弁護士職務基本規程を含む各規律の内容を確認することになる。

3 所属弁護士会の秩序又は信用を害したとき

所属弁護士会の組織秩序又は社会的信用を害する行為は,独立の懲戒事由である。
弁護士個人の行為について,所属弁護士会との関係及び信用への影響を具体的に検討する必要がある。

4 その他,品位を失うべき非行があったとき

「品位を失うべき非行」は,個別の禁止規定に形式的に該当する行為だけに限られない。
弁護士の使命,職務の公共性及び社会的信頼との関係から,職務上又は私生活上の行為が実質的に評価される包括的な懲戒事由である。

第3 弁護士職務基本規程と懲戒事由の関係
1 個別規定の役割

弁護士職務基本規程は,依頼者との関係,相手方との関係,共同事務所における規律,非弁護士との関係その他の職務上の行為準則を定めている。
利益相反についても,公職就任中の職務を対象とする同規程81条だけでなく,職務を行い得ない事件を定める同規程27条及び28条等,場面に応じた個別規定を確認する必要がある。

2 形式的違反だけで決めないこと

弁護士職務基本規程82条1項は,弁護士の職務の多様性と個別性に鑑み,弁護士の自由と独立を不当に侵すことのないよう,同規程を実質的に解釈し適用しなければならないとしている。
したがって,弁護士職務基本規程に関する懲戒判断は,個々の条文の文言だけで完結せず,具体的な職務及び行為の実質を検討する必要がある。

3 行動指針又は努力目標とされる規定

同規程82条2項が列挙する規定は,弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用することになる。

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弁護士の懲戒制度の概要(AI作成)

第1 制度の目的とこの記事の範囲第2 懲戒事由と処分の種類1 懲戒事由2 弁護士に対する4種類の処分3 弁護士法人に対する処分第3 懲戒請求から処分までの流れ1 誰がどこへ請求するか2 綱紀委員会の調査と懲戒委員会の審査3 日弁連が自ら手続を開始する場合第4 懲戒請求者による異議申出1 異議申出の対象と期間2 日弁連綱紀委員会と日弁連懲戒委員会の役割3 綱紀審査会第5 懲戒を受けた弁護士側の不服申立て第6 3年の除斥期間第7 懲戒処分の判断1 懲戒権者の裁量2 行政手続法12条との関係第8 懲戒請求の限界第9 通知,公告及び処分歴情報第10 関連記事第11 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 職能団体の制度案内・運用資料
第1 制度の目的とこの記事の範囲

本記事は,令和8年9月7日現在の弁護士法に基づき,弁護士に対する懲戒制度の目的,懲戒事由,処分の種類,手続,不服申立て及び公表の概要を説明するものである。
個別の弁護士会が定める提出書式その他の運用は異なり得るため,実際に懲戒請求をするときは,提出先となる弁護士会の最新案内も確認する必要がある。

最高裁昭和49年11月8日判決は,弁護士の懲戒制度について,弁護士会又は日本弁護士連合会の自主的な判断に基づき,弁護士の綱紀,信用及び品位等を保持することを目的とする制度であると述べている。
懲戒請求権と異議申出権は,この目的を適正に達成するという公益的見地から認められたものであり,懲戒請求者個人の損害賠償,返金その他の私的救済を実現するための制度ではない。

第2 懲戒事由と処分の種類
1 懲戒事由

弁護士法56条1項は,①弁護士法又は所属弁護士会若しくは日弁連の会則に違反したとき,②所属弁護士会の秩序又は信用を害したとき,③職務の内外を問わず品位を失うべき非行があったときに,弁護士及び弁護士法人が懲戒を受けると定めている。
懲戒は,原則として対象となる弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が行う。

2 弁護士に対する4種類の処分

弁護士法57条1項が定める弁護士に対する懲戒処分は,次の4種類である。
①戒告は,規律違反を戒める処分である。
②業務停止は,2年以内の期間,弁護士業務を行うことを禁止する処分である。
③退会命令は,弁護士の身分を失わせるが,弁護士となる資格までは失わせない処分である。
④除名は,弁護士の身分を失わせ,弁護士法7条3号により,処分の日から3年を経過しない間は弁護士となる資格も失わせる処分である。

3 弁護士法人に対する処分

弁護士法人に対しても,戒告,2年以内の業務停止又は法律事務所の業務停止,退会命令及び除名が定められているが,従たる法律事務所だけを有する地域か,主たる法律事務所を有する地域かによって処分の範囲が異なる。
各処分の効果は,弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名の記事で詳しく説明している。

第3 懲戒請求から処分までの流れ
1 誰がどこへ請求するか

弁護士法58条1項により,何人も,懲戒事由があると思料するときは,その事由の説明を添えて,対象となる弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会に懲戒を求めることができる。
事件の依頼者又は相手方であることは要件ではないが,個人が最初から日弁連へ懲戒請求をすることはできない。

提出方法,書式及び本人確認資料は,提出先の弁護士会の案内を確認することになる。
例えば,大阪弁護士会の案内は,書面による懲戒請求書と本人確認書類の提出を求めている。

2 綱紀委員会の調査と懲戒委員会の審査

所属弁護士会は,懲戒請求を受けたとき,対象となる弁護士等を懲戒の手続に付し,綱紀委員会に事案を調査させなければならない。
綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求めないことを相当と議決したときは,弁護士会が懲戒しない旨を決定する。

綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求めることを相当と議決したときは,弁護士会が懲戒委員会に審査を求める。
懲戒委員会は,懲戒するかどうか及び懲戒する場合の処分内容を審査して議決し,弁護士会はその議決に基づいて懲戒又は懲戒しない旨の決定をする。

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弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(1993年以降の分)(AIリライト)

第1 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(原資料)第2 全国の弁護士に対する懲戒請求・懲戒処分の推移(1993年~2025年)第3 日弁連に対する審査請求等の推移第4 弁護士賠償責任保険の支払実績第5 関連記事出典・参考資料1 裁判例2 公的資料

第1 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(原資料)

日本弁護士連合会(日弁連)は,各弁護士会に対する懲戒請求,日弁連に対する審査請求,異議申出及び綱紀審査申出の件数を毎年集計し,「懲戒請求事案集計報告」として自由と正義誌及び日弁連ウェブサイトで公表している。この公表は毎年3月中旬から下旬にかけて行われ,直近10年分の推移がまとめて掲載されるのが通例である。日弁連ウェブサイトの「基礎的な統計情報」は,2026年8月時点で2010年版から2025年版まで毎年更新されているが,そこに掲載されている懲戒統計のグラフも,新受件数の推移は2008年分から,懲戒処分率の推移は2002年分からしか遡っていない。本記事は,日弁連が毎年公表する当該年分の集計報告を通算し,1993年分から2025年分までを一覧化したものである。1993年から2002年までの分は,現在の日弁連ウェブサイトでは個別の集計報告として公開されておらず,自由と正義誌のバックナンバーによって確認した。

日弁連が公表している各年分の集計報告(2015年分以降,日弁連ウェブサイトで確認できる分)は次のとおりである。

2015年分
2016年分
2017年分
2018年分
2019年分
2020年分
2021年分
2022年分
2023年分
2024年分
2025年分

第2 全国の弁護士に対する懲戒請求・懲戒処分の推移(1993年~2025年)

次の表は,各年の懲戒請求の新受件数,懲戒処分の内訳(戒告,業務停止,退会命令,除名)及びその合計,並びに懲戒処分率をまとめたものである。懲戒処分率は,日弁連の懲戒委員会で審査が開始された事案のうち,実際に懲戒処分に至った事案の割合であり,日弁連が公表資料で示す「懲戒請求の新受件数に対する処分件数の割合」(2024年分で3.1%)とは分母が異なる別の指標である点に注意されたい。年度のずれ(弁護士会での受付年と日弁連の集計年のずれ)は無視して示している。

年新受戒告業務停止退会命令除名懲戒計処分率

20253,04959514111549.4%

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