メインコンテンツへスキップ
       

相手方からの利益供与と相手方への利益供与―弁護士職務基本規程53条・54条(AI作成)

第1 利益を受ける側と与える側

53条は,受任している事件に関し,相手方から利益の供与・供応を受けることと,要求・約束を禁止する。
54条は,同じく受任している事件に関し,相手方への利益の供与・供応と,その申込みを禁止する。

第4版177頁~179頁は,職務執行の公正と誠実性を確保する観点から両条を説明する。
弁護士が受領する場面だけでなく,自ら相手方に提供する場面も確認しなければならない。

規定禁止される方向・行為
53条相手方から弁護士への利益供与・供応を受けること,要求すること,約束すること。
54条弁護士から相手方への利益供与・供応をすること,申し込むこと。
弁護士法26条受任中の事件に関し,相手方から利益を受け,要求し,又は約束すること。

第2 相手方本人と代理人

第4版178頁~179頁は,相手方を,依頼を受けた事件の当事者と実質的に利害が対立する者と説明し,相手方本人のほか代理人も含める。
したがって,利益の授受が相手方本人との間でなければ問題がない,ということにはならない。

誰の利益となる支払なのか,誰が負担するのか,事件との関係は何かを確認する必要がある。
依頼者のための正式な和解条件と,弁護士や相手方代理人に個別の利益を与える合意は区別すべきである。

第3 実費名目でも検討が必要である

1 利益の範囲

第4版178頁は,利益を金品や謝礼に限定せず,弁護士の出張に要した日当・旅費等の実費弁償の性質を持つものも含めて説明する。
名称が「交通費」「実費」であれば,受領してよいという説明は適切でない。

2 和解金等との区別

本記事では,依頼者の権利実現として支払われる和解金等と,弁護士自身に与えられる利益とを区別して検討する。
支払が誰に帰属するのか,受領・送金の役割は何か,契約や清算の説明はどうなっているかを明確にする必要がある。

依頼者に帰属する金銭を受け取った場合の管理・交付は,預り金の管理と懲戒の問題となる。
和解金を扱うことと,相手方から弁護士自身が利益を得ることを混同してはならない。

第4 要求・約束・申込みと事件終了後

53条は実際の受領に限らず要求・約束を,54条は実際の提供に限らず申込みを対象とする。
金銭がまだ動いていない段階でも,条文の検討が必要となる。

第4版178頁は,53条の「受任している事件」を現に処理している事件とし,将来の受任予定や処理を終えた過去の事件を含めないと説明する。
ただし,いつ要求や約束がされたか,事件が本当に終了しているかを確かめずに,後払いだから許されると判断することはできない。
53条の文言上の範囲の説明を,弁護士法その他の規律による検討も不要という結論に広げることは適切でない。

第5 弁護士法26条と罰則

弁護士法26条にも受任中の事件の相手方からの利益の受領・要求・約束を禁止する規定があり,同法76条は3年以下の拘禁刑を定める。
現行条文は令和8年10月4日に確認した。
規程違反の検討と刑罰法規の構成要件の判断は区別し,個別の支払が直ちに犯罪に当たると断定してはならない。

具体的な取引では,①事件との関係,②提供者と受益者,③目的・名目と実態,④要求・約束・提供の時点,⑤委任の継続状況を整理することが有用である。
最高裁判決が実費弁償をどう扱ったか等の詳しい事例研究は,原判決を確認して別に行う必要がある。

第6 出典・関連記事

①日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(令和8年10月4日確認)。
②日弁連弁護士倫理委員会編著『解説「弁護士職務基本規程」第4版』(日本弁護士連合会,令和8年9月)177頁~179頁。本記事は同書の解説を参照したものであり,同書の記述を日弁連の公式見解又は個別事件の原議決そのものとして扱うものではない。
③弁護士職務基本規程の現行条文・条文別索引。
④e-Gov法令検索「弁護士法」(令和8年10月4日確認)。