第1 支払督促の結論と本記事の対象1 令和8年5月21日以後は三つの申立方法がある2 支払督促は金銭等の請求について裁判所書記官が発する3 利用に向く場合と通常訴訟を検討すべき場合第2 mints・督促手続オンライン・書面の比較1 三つの申立方法の違い2 mintsは請求類型を限定せずに電子申立てをする入口である3 督促手続オンラインシステムは定型類型に強い4 書面申立てを選べる者もいる第3 申立先の簡易裁判所1 原則は債務者の普通裁判籍である2 複数の債務者には共通の申立先が必要である3 督促手続オンラインシステムには東京簡易裁判所の特例がある4 送達先を確認する第4 mintsによる申立ての手順1 申立前に準備する情報2 新規申立てフォームで支払督促を選ぶ3 PDF及び添付書類を確認する4 提出後は納付情報と受付状況を確認する第5 支払督促の費用1 申立手数料の計算方法2 郵送料を別に予納する必要はない3 督促異議後には追加手数料が生じる第6 発付・送達と督促異議1 裁判所書記官の審査後に債務者へ送達される2 仮執行宣言前の督促異議3 仮執行宣言後にも異議期間がある第7 仮執行宣言の申立て1 2週間経過後から30日以内に申し立てる2 手続費用と支払状況を明らかにする3 仮執行宣言付支払督促の効力第8 申立前と受領後のチェックリスト1 債権者側の確認事項2 債務者側の確認事項第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令及び規則2 裁判所資料
第1 支払督促の結論と本記事の対象
1 令和8年5月21日以後は三つの申立方法がある
令和8年5月21日以後に支払督促を申し立てる方法は,①mints,②督促手続オンラインシステム,③書面の三つである。
mintsと督促手続オンラインシステムは別のシステムであり,利用できる請求,準備すべきアカウント等及び申立先の扱いが異なるため,単に「オンラインで申し立てる」と理解するだけでは足りない。
本記事は,令和8年9月1日現在の法令及び裁判所公表資料に基づき,同年5月21日以後に開始する支払督促手続を対象とする。
同月20日以前に申し立てた事件には旧法の取扱いが残り,後に仮執行宣言を申し立てる時点が同月21日以後であっても,郵送料の納付等について新法事件と同じ扱いにはならない。
2 支払督促は金銭等の請求について裁判所書記官が発する
支払督促は,金銭その他の代替物又は有価証券の一定数量の給付を求める請求について,債権者の申立てにより裁判所書記官が発する手続である(民事訴訟法382条)。
債務者を審尋せず,申立書の審査により進むため,通常訴訟のように申立人が審理のため裁判所へ出頭することは予定されていない。
もっとも,支払督促は,日本国内で公示送達によらずに債務者へ送達できる場合に限られる。
債務者の所在が分からず,公示送達が必要となる場合には利用できないほか,債務者が異議を申し立てれば通常訴訟へ移行する。
3 利用に向く場合と通常訴訟を検討すべき場合
支払督促を選びやすいのは,請求額及び発生原因が特定され,債務者の送達先を把握しており,債務者が具体的な反論をする可能性が低い金銭請求である。
請求額自体に上限はないが,異議後は請求額に応じて簡易裁判所又は地方裁判所の通常訴訟へ移行するため,金額が大きい事件でも最後まで簡易裁判所だけで完結するとは限らない。
これに対し,契約の成否,仕事の完成,損害額,相殺その他の争点について反論が予想される場合は,異議による訴訟移行と追加手数料まで見込んで方法を選ぶ必要がある。
金銭以外の履行を求める場合,公示送達が必要な場合又は申立前に証拠保全若しくは仮差押えを検討すべき場合には,支払督促とは別の手続を検討することになる。
第2 mints・督促手続オンライン・書面の比較
1 三つの申立方法の違い
項目mints督促手続オンラインシステム書面位置付け民事裁判書類電子提出システムによる電子申立て支払督促専用のオンラインシステムによる電子申立て紙の申立書による申立て利用できる請求支払督促の要件を満たす請求定型処理が可能な所定の類型に限られる支払督促の要件を満たす請求主な準備mintsアカウント,PDF等電子証明書,対応するWindows環境等申立書,添付書類等申立先管轄する簡易裁判所所定の場合は東京簡易裁判所へ申立て可能管轄する簡易裁判所申立内容フォームへの直接入力又はPDF提出専用画面,CSV又はAPI裁判所書式等に記載大量申立て簡裁用一括申立て機能がある法人向けに最大300件の複数申立て及びAPIがある事件ごとに書面を提出利用時間稼働状況及び保守案内を確認平日の午前9時から午後5時まで窓口時間又は郵送の取扱いによる
2 mintsは請求類型を限定せずに電子申立てをする入口である
mintsでは,新規申立てフォームの申立種別から「支払督促」を選び,提出先の簡易裁判所,請求額,手数料,当事者情報及び申立内容等を入力して提出する。
申立内容はフォームへ直接入力するほか,PDFファイルで提出することもできる。
mintsを利用するには事前のアカウント登録が必要である。
また,委任を受けた訴訟代理人等,民事訴訟法132条の11第1項各号の者は,責めに帰することができない事由がある場合等を除き,電子申立てをしなければならない。
3 督促手続オンラインシステムは定型類型に強い
督促手続オンラインシステムで利用できるのは,貸金,立替金,求償金,売買代金,リース料及び通信料の所定類型並びに所定の複合型である。
請負代金,給料,賃料,損害賠償及び過払金等は同システムの対象外であるため,mints又は書面を利用する。
同システムは,事件の進行状況の確認,仮執行宣言の申立て,更正処分の申立て,再送達上申,補正及び取下げ等にも対応する。
一方,専用の利用環境と電子証明書が必要であり,システムの利用時間も平日の午前9時から午後5時までに限られる。
4 書面申立てを選べる者もいる
本人当事者等,電子申立てを法律上義務付けられていない者は,紙の申立書を管轄する簡易裁判所へ提出することができる。
ただし,書面申立てと電子申立てでは手数料が異なり,オンライン上での記録確認その他の利便性にも差があるため,利用環境と事件の内容を併せて検討する必要がある。
第3 申立先の簡易裁判所
1 原則は債務者の普通裁判籍である
支払督促は,原則として債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる(民事訴訟法383条1項)。
個人であれば住所地,法人であれば主たる事務所又は営業所の所在地が判断の出発点となる。
事務所又は営業所の業務に関する請求はその所在地,手形又は小切手による金銭請求は支払地を管轄する簡易裁判所にも申し立てることができる(同条2項)。
もっとも,通常訴訟の関連裁判籍を定める民事訴訟法7条を使って支払督促の申立先を広げることはできない。
2 複数の債務者には共通の申立先が必要である
複数の債務者に対する申立ては,各債務者について支払督促の管轄が共通する場合に限って併合できる。
通常訴訟なら共同訴訟の要件を満たす関係であっても,各債務者の申立先が共通しなければ,一件の支払督促としてまとめて申し立てることはできない。
3 督促手続オンラインシステムには東京簡易裁判所の特例がある
督促手続オンラインシステムでは,本来は東京簡易裁判所以外の簡易裁判所が管轄する事件についても,民事訴訟法397条及び関係規則に基づき,東京簡易裁判所の裁判所書記官へ申し立てることができる場合がある。
これは同システムに関する特例であり,mintsを利用すれば常に東京簡易裁判所へ申し立てられるという意味ではない。
(続きを読む...)mintsによる支払督促-督促手続オンライン・書面の違い,申立先,費用,異議及び仮執行宣言(AI作成)