目次
第1 結論とこの記事の対象第2 令和8年10月15日に公表された障害1 裁判所の公表内容2 ローカル障害との切り分け第3 紙提出の法的根拠1 民事訴訟法第132条の11第3項2 民事訴訟規則第52条の14第4 障害発生直後の判断順序1 最初に期限と事件を特定する2 残すべき記録第5 紙提出時にそろえる書類1 新たに訴えを提起する場合2 係属中事件で準備書面や証拠を提出する場合第6 理由説明書の参考例第7 期日・人証・判決への影響1 口頭弁論等の期日2 人証調べと電子判決書第8 復旧後の処理と重複提出の防止第9 期限を徒過した場合第10 適用範囲と一次資料1 対象手続の限界2 一次資料
第1 結論とこの記事の対象
令和8年10月15日に裁判所が公表したmintsの障害では,サインインできない,又は事件・記録一覧が表示されないなどの事象が生じ,裁判所は電子提出できない場合に書面提出を検討するよう案内した。
弁護士等の電子申立て義務者が紙で提出するときは,単に印刷した書類を持参するだけでなく,①期限と緊急性,②裁判所側の障害か利用者側の問題か,③電子申立てができない理由を記載した書面,④手続別の副本・写し・直送,⑤手数料の納付方法,⑥復旧後の重複提出防止を一体として管理する必要がある。
本記事は,令和8年10月15日午後5時44分までに確認できた裁判所の公表内容と,同年10月2日版の「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」を基準として,民事訴訟及び行政訴訟でmintsを使用する場面を対象とする。
個別事件では,提出先,提出部数,手数料及び期日の取扱いについて,担当裁判所の指示を確認する必要がある。
第2 令和8年10月15日に公表された障害
1 裁判所の公表内容
裁判所は,令和8年10月15日午前9時頃から,mintsにサインインできない,又はサインインできても事件・記録一覧が表示されないなど,システムが不安定な状態にあると公表した。
同日午後5時44分の確認時点では,原因の調査及び対応の検討中であり,電子提出できない場合は書面提出を検討し,個別事件は事件係属部へ問い合わせるよう案内していた。
裁判所の最新の稼働状況は,民事裁判手続のデジタル化で確認できる。
障害の原因,復旧時刻又は対象機能は更新され得るため,紙提出の判断時と実際の提出時にそれぞれ画面を保存するのが安全である。
裁判所は,令和8年10月16日午前9時時点では,同様の事象が確認されず,支障なく利用できる状況になったと公表した(同日確認)。
これは公表された確認時点の状況であり,それ以後のすべての操作について障害がないことを保証するものではない。
障害中に紙提出した書面は,復旧後も担当裁判所の指示を確認し,自己判断で重複提出しない。
2 ローカル障害との切り分け
裁判所の障害公表がない場合は,端末,回線,ブラウザ,二段階認証又はアカウントの問題である可能性がある。
その場合は,別の端末・回線,スマートフォンのテザリング又は裁判所設置端末を利用できるかを確認し,期限までに取り得た代替手段を記録する。
弁護士本人の端末,二段階認証又はアカウントの問題であれば,弁護士のアカウントに関連付けた補助者アカウントから,弁護士の名義で電子申立てをすることもできる(準備の手引9頁)。
もっとも,補助者アカウントによる提出や,復代理人を選任して他の弁護士に提出を頼む方法は,同じmintsを使う以上,mints自体に障害が生じている場合の代わりにはならない。
サインアップ,確認コード又はパスワードの問題は,mintsにログインできない場合の対処法で切り分ける。
電子申立て義務の対象者,対象事件及び利用者側の障害に関する一般論は,mintsの義務化はいつからかで説明している。
第3 紙提出の法的根拠
1 民事訴訟法第132条の11第3項
委任を受けた訴訟代理人等は,原則として電子情報処理組織を使用して申立て等をしなければならないが,民事訴訟法第132条の11第3項は,裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由によって電子申立てができない場合を例外としている。
裁判所側の広域的なシステム障害と,事務所の端末故障や操作上の問題では,例外事由の説明と代替手段の検討が異なる。
2 民事訴訟規則第52条の14
民事訴訟規則第52条の14は,この例外により書面で申立て等をするときに,民事訴訟法第132条の11第3項に規定する事由がある旨と,その具体的内容を記載した書面を添付するよう求めている。
同条は添付書面の名称又は書式を定めていないため,事件,提出者,発生日時,障害の内容,裁判所の公表,期限,試した代替手段及び裁判所への連絡経過を一枚の説明書にまとめると確認しやすい。
紙提出が許される例外と,不変期間を徒過した後の訴訟行為の追完は別の制度である。