第1 被告本人が最初に確認すること
1 mintsの登録より先に期限を確認する
民事訴訟の被告本人が訴状,口頭弁論期日呼出状,答弁書催告状その他の書類を受け取った場合,最初に確認すべきなのは,①裁判所名・担当部・係,②事件番号,③答弁書の提出期限,④第1回口頭弁論期日,⑤原告が求める判決とその理由である。mintsのアカウント登録又は招待キーの入力に時間を要しても,裁判所が指定した期限が自動的に延びるわけではない。
答弁書を出さず,かつ期日に出頭しない場合,被告が原告の請求を争う意思を示していないものとして,原告の請求どおりの判決が言い渡される可能性がある。期限が迫っているときは,係属裁判所へ提出方法を確認し,本人には紙提出も認められていることを踏まえて,登録完了を待つべきか紙で提出すべきかを先に決める必要がある。
2 訴状が紙で届いても新法事件の場合がある
被告が訴状送達前にシステム送達を届け出ていない事件では,電子的に提出された訴状も,通常は出力書面によって被告へ送達される。したがって,最初の訴状が郵便で届いたことは,その事件でmintsを利用できないことを意味しない。
本記事は,一般の本人当事者が令和8年5月21日以後に提起された民事訴訟へ対応する場合を中心に説明する。個別事件の請求が認められるか,どの事実を争い,どの証拠を出すべきかは事案ごとに異なるため,本記事は特定の事件についての法的助言をするものではない。
第2 アカウント登録と招待キー
1 アカウントがない場合
mintsを利用するには,先にアカウント登録と本人確認を完了する。一般個人は,最寄りの地方裁判所・簡易裁判所又は裁判所ウェブサイトの登録届出フォームへメールアドレスを届け出て,招待メールからサインアップし,窓口又は郵送で本人確認を受ける。登録手順と必要資料は,裁判所のmintsアカウント登録ガイド一般個人編で確認できる。本人,弁護士,法人及び補助者で異なる届出先・確認資料は,mintsの登録方法に整理している。
アカウントは1事件ごとに作るものではなく,一度登録すれば複数事件で利用できる。既にアカウントがある場合は,新しいアカウントを作らず,登録済みのメールアドレスとパスワードでサインインする。初回サインアップ又は登録後のログインで止まった場合は,mintsにログインできない場合の対処法を参照されたい。
2 招待キーは事件との関連付けに使う
本人確認が完了した後,裁判所からメール又は書面で交付された12桁の半角英数字の招待キーを,ホーム画面の「招待キー入力」から送信する。正常に処理されると,裁判所職員の関連付けを待たずに当該事件の当事者として設定され,事件一覧から記録の閲覧及びファイルの提出を始めることができる。
招待キーには有効期限が表示される。存在しない,使用できない又は期限を過ぎたとの表示が出た場合は,何度も入力を試すのではなく,通知に記載された係属裁判所の担当部・係へ問い合わせる。補助者アカウントから招待キーを入力することはできず,親ユーザ本人が操作する必要がある。
3 事件アクセスキーとの違い
招待キーと事件アクセスキーはいずれも12桁であるが,用途が異なる。招待キーは原告又は被告を事件の当事者として関連付けるためのキーであり,事件アクセスキーは,金融機関等の第三者が当事者として関連付けられずに特定ファイルを提出する場面で使う。被告本人が事件一覧へ入るために入力すべきなのは,裁判所から被告用に交付された招待キーである。
第3 答弁書を作成して提出する
1 答弁書で明らかにする事項
答弁書では,通常,①原告の請求を認めるか争うか,②訴状に記載された事実のうち認める部分,否認する部分及び知らない部分,③被告側の反論,④送達場所その他裁判所が求める事項を記載する。単に「争う」とだけ記載して足りるかは事件の内容と裁判所の指示によるため,提出期限までに詳細な認否・反論を整理できない場合は,担当部へ今後の提出方法を確認すべきである。
裁判所が公開する民事訴訟で使う書式には,新法適用事件と旧法適用事件で書式が異なることがあるとの注意がある。送付された答弁書書式又は係属裁判所が案内する現行書式を優先し,事件番号,原告・被告名及び提出先を照合する。
2 mintsからの提出
事件一覧から対象事件を開き,答弁書のPDFを所定の記録一覧へアップロードする。操作上の「記録外」は正式な提出にならないため,アップロード場所を取り違えないことが必要である。また,提出ボタンを押した後は,完了表示,新着情報又は事件記録で提出済みファイルを確認し,送信途中の状態で終了しない。
書証を提出する場合は,答弁書とは別に,証拠の番号,立証趣旨,原本・写しの別その他の取扱いを確認する。証拠のPDF作成,証拠説明書及び直送については,mints後の証拠説明書で説明している。
3 秘匿情報と誤提出
住所その他の秘匿を求める必要がある事件では,秘匿事項を含むファイルを通常の記録へそのまま提出してはならない。秘匿事項届出書面,マスキングした書面及びマスキングのない書面の提出方法が分かれるため,mintsにおける当事者間秘匿を確認し,不明な場合は提出前に担当部へ問い合わせるべきである。
誤ったファイルをアップロードした場合,利用者が自由に削除して提出前の状態へ戻せるとは限らない。直ちに係属裁判所へ連絡し,誤アップロードの対象,提出時刻及びファイル名を伝える必要がある。
第4 システム送達を受ける場合の期限管理
1 事件への関連付けと送達の届出は同じではない
アカウントを作成したこと又は招待キーで事件に関連付けられたことだけから,すべての文書が直ちにシステム送達になるわけではない。民事訴訟法第109条の2は,システム送達を受ける旨の届出を前提とし,民事訴訟規則は電子申立てをするときにこの届出を行う仕組みを定めている。被告本人がmintsで答弁書を提出する場合は,以後の送達をオンラインで受けることを前提に,通知先メールアドレスと日常の確認方法を整える必要がある。
2 メールを開いた日が送達日とは限らない
通常のシステム送達は,①送達対象データを閲覧した時,②自分の端末のファイルへ記録した時,③通知が発せられた日から1週間が経過した時,のうち最も早い時に効力を生ずる。通知メールを見落としても,1週間経過による送達効が生じ得るため,メールの受信箱だけでなくmintsのホーム画面と事件一覧を定期的に確認すべきである。
閲覧又はダウンロードの操作はアクセス状況として記録される。判決書その他の送達日から不服申立期間が進行する書面もあるため,誰がいつ開くかを家族又は補助者任せにせず,期限台帳へ直ちに記録する必要がある。制度の詳細は,mintsのシステム送達と期限管理で説明している。
第5 紙提出を選ぶ場合と本人サポート
1 本人被告には紙提出も認められる
本人当事者は,民事訴訟法第132条の11第1項の電子申立て義務者ではない。そのため,答弁書を紙で提出することもでき,適法な紙提出は原則として裁判所書記官が電子化して裁判所のファイルに記録する。もっとも,民事訴訟規則第52条の12は,必要な機器を利用できない事情がある場合を除き,本人にも電子提出を利用することを求める趣旨の利用促進規定を置いている。
紙提出を選ぶときは,必要な副本の通数,郵送先,窓口受付時間及び期限内到達の要否を係属裁判所へ確認する。期限当日の郵便差出しが当然に期限内提出となるわけではない。
2 操作支援と法律相談を区別する
裁判所には来庁者用パソコン及びWi-Fiがあり,一部の裁判所にはスキャナも設置されている。裁判所における本人サポート態勢によれば,端末ではOfficeソフトを利用できず,端末に保存したデータは利用終了後に削除されるため,完成したPDFをUSBメモリ等で持参する準備が必要となる場合がある。
法テラスの本人サポート案内は,アカウント作成,PDF化,アップロード,提出及び受領の支援例を示している。しかし,請求の当否,抗弁,時効,反訴又は証拠評価は操作支援では解決しない。請求額が大きい,処分禁止等の緊急性がある,専門的な契約・損害計算が争点となる又は最初の期限までに反論を整理できない場合は,早期に弁護士へ相談することが考えられる。
出典・参考資料
1 法令・規則
①民事訴訟法(平成8年法律第109号)第109条の2ないし第109条の4,第132条の10ないし第132条の13(e-Gov法令検索)
②民事訴訟規則第45条の2ないし第45条の4,第52条の9ないし第52条の17,第58条(最高裁判所)
2 裁判所・公的機関資料
①最高裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」
②最高裁判所「mintsアカウント登録ガイド~一般個人編~」1頁~2頁
③最高裁判所「mints操作マニュアル~当事者ユーザ編~2.3版」(令和8年7月15日改訂)14頁~19頁・65頁~79頁・84頁~85頁
④最高裁判所事務総局民事局「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引(令和8年6月19日版)」
⑤最高裁判所「裁判所における本人サポート態勢」及び日本司法支援センター「本人サポートではどんな支援が受けられますか?」