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示談金・解決金・和解金に税金はかかるか―名目ではなく補填対象・所得区分・権利確定時期で判断する(AI作成)

第1 結論―名称ではなく何を補填する金銭かを見る

示談金,解決金又は和解金という名目だけで,所得税が課税されるか,非課税となるかは決まらない。受領者が誰か,どの権利・損害・費用を補う金銭か,役務や権利移転の対価を含むか,いつ権利が確定したかを項目ごとに判断する。

同じ一つの振込に,慰謝料,治療費,逸失利益,営業損失,未払賃金,退職金,弁護士費用,遅延損害金等が含まれることがある。税務上は,振込額全体を一括して扱うのではなく,各項目の実質に沿って所得区分,非課税,必要経費,源泉徴収及び消費税を検討する。

本記事は,令和8年9月25日現在の法令及び国税庁公表資料に基づく。

第2 最初に分ける五つの項目

確認項目主な資料税務上の意味
受領者当事者表示,振込先,代理受領の有無個人と法人では非課税規定・益金算入が異なる。
発生原因事故,契約違反,退職,明渡し,知財侵害等心身又は資産の損害か,所得・費用・対価の補填かを決める。
内訳請求書,訴状,準備書面,計算表,和解条項課税・非課税及び所得区分を項目別に判断する。
権利確定時期示談成立日,判決確定日,条件,分割払条項どの年分・事業年度に計上するかを判断する。
支払方法支払日,源泉徴収,消費税,遅延条項控除額,納付義務及び受取額を確定する。

第3 個人が受け取る場合

1 心身に加えられた損害

所得税法9条1項18号及び所得税法施行令30条は,心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金等を非課税とする。国税庁タックスアンサーNo.1700は,事故による治療費,慰謝料及び負傷して働けないことによる収益の補償等を例示する。ただし,治療費の補填額は医療費控除の計算で支払医療費から控除する。

2 資産に加えられた損害

不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害を補う損害賠償金等は,施行令30条2号の範囲で非課税となり得る。他方,必要経費に算入される金額を補填する部分は各種所得の収入金額となり,棚卸資産,休業中の固定費,事業用資産の損失等では,損失・必要経費との対応関係を確認する。

3 失われた所得,契約上の対価その他の経済的利益

本来所得となるべき金額,役務の対価,事業上の必要経費,借家権の消滅又は資産・権利の譲渡等を補う部分は,単に「解決金」と記載しても当然には非課税とならない。事業所得,給与所得,退職所得,譲渡所得,一時所得又は雑所得のいずれに該当するかを,紛争前の法律関係と補填対象から判定する。

遅延損害金は元本と別に検討する。元本が非課税でも,遅延損害金が当然に同じ取扱いになるとは限らない。

第4 法人が受け取る場合

個人についての所得税法9条の非課税所得を,法人へそのまま当てはめることはできない。法人税法22条2項により,資本等取引以外の取引に係る収益は原則として益金の額に算入される。損害賠償金又は和解金を受け取った法人は,損害に係る損失,修繕費その他の損金と,受取賠償金の益金をそれぞれ検討する。

法人税基本通達2-1-43は,他の者から受ける損害賠償金を,支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金としつつ,実際に支払を受けた事業年度に益金算入している場合の取扱いも定める。役員・使用人による横領等,権利の存在・内容が早期に把握できる事案は別の検討を要する。

第5 所得が帰属する時期

所得税の収入金額は,原則として実際の入金日だけでなく,収入すべき権利が確定した時期を基準に判断する。示談・訴訟上の和解では,合意成立日,効力発生条件,金額の確定,分割払の約定,取消条件及び判決確定の有無を確認する。

「支払を受けた年に一律計上する」「損害が発生した年に一律計上する」のいずれも危険である。所得の種類,合意内容及び権利確定の程度に応じて判断し,複数年にわたる損失・支払があるときは税理士と年分又は事業年度を確認する。

第6 源泉徴収の有無

源泉徴収は,支払金の名称ではなく,給与,退職手当,弁護士報酬等の法定の対象に実質的に該当するかで決まる。未払賃金を「解決金」として支払う場合,その賃金部分について源泉徴収を検討する。一般の損害賠償金であるという理由だけで源泉徴収するものでも,和解金であるという理由だけで源泉徴収しないものでもない。

合意書には,総額,課税対象と考える各項目,源泉徴収額,控除後支払額及び法定調書の取扱いを記載する。支払者と受領者の見解が異なる場合は,手取額だけを合意せず,誰がどの法的根拠で納付・還付・求償を行うかを確認する。

第7 消費税の取扱い

心身又は資産への損害の発生に伴う損害賠償金は,通常,資産の譲渡等の対価に当たらないため,消費税の課税対象とならない。しかし,国税庁タックスアンサーNo.6257は,名称ではなく実質で判定するとし,使用可能な棚卲資産等の引渡し,特許権・商標権等の侵害,事務所の明渡遅延等に係る金銭が対価に当たり得る例を示す。

所得税・法人税で収益となるかという問題と,消費税で資産の譲渡等の対価に当たるかという問題は同じではない。両者を別々に検討する。

第8 示談書・和解条項の作り方

  1. 紛争の対象となる契約,事故又は行為を特定する。
  2. 支払総額だけでなく,慰謝料,治療費,財産損害,営業損失,未払賃金,退職金,弁護士費用,遅延損害金等の内訳と算定期間を示す。
  3. 各項目と請求資料,証拠及び損失計上の対応関係を残す。
  4. 源泉徴収の対象と考える金額,控除額及び実際の振込額を区別する。
  5. 分割払,期限の利益喪失,遅延損害金及び条件成就日を明記する。
  6. 税務当局の判断を当事者間だけで拘束できないことを前提に,追加負担・還付・資料提供の協力条項を検討する。

税負担を有利にする目的で実際の紛争内容と異なる内訳を置いてはならない。合意前の請求書,訴状,準備書面,交渉記録と整合する合理的な配分を用いる。

第9 確認資料と実務チェックリスト

  • 当事者,受領名義人及び実際の帰属者
  • 請求原因,請求項目,計算期間及び証拠
  • 訴状・答弁書・準備書面・判決・調停調書・和解調書
  • 示談書の内訳,清算条項,源泉徴収条項及び支払条件
  • 損失・必要経費・資産簿価・保険金その他の補填額
  • 入金日,権利確定日,分割払日及び遅延損害金
  • 支払調書,源泉徴収票,領収書及び振込記録

第10 調査範囲と限界

確認済みは,所得税法・同施行令,法人税法,法人税基本通達及び国税庁公表資料である。個別の和解条項に関する税務判断は,紛争原因,受領者,内訳,必要経費との対応及び権利確定時期により変わる。判例秘書の網羅検索は本記事では実施しておらず,税務訴訟資料も一般化せず,事案ごとの確認が必要である。

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第12 出典・参考資料

①e-Gov法令検索「所得税法」
②e-Gov法令検索「所得税法施行令」
③e-Gov法令検索「法人税法」
④国税庁タックスアンサーNo.1700「加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
⑤国税庁タックスアンサーNo.2200「収入金額とその計算」
⑥国税庁「法人税基本通達 第7款 その他の収益等」
⑦国税庁タックスアンサーNo.6257「損害賠償金」