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消費税に関するメモ書き-免税点・簡易課税・中間申告・インボイス(AI作成)

第1 本記事の対象

本記事は,令和8年9月7日現在の法令及び公表資料に基づき,個人事業者を含む事業者が確認しておきたい消費税の基本構造,納税義務,簡易課税,中間申告及びインボイス制度を整理するものである。
令和8年度税制改正は成立・公布されているが,令和8年10月1日以後の取引,令和8年10月1日以後に開始する課税期間,令和9年分又は令和10年分など,規定ごとに適用時期が異なる。

個別の取引については,取引日,課税期間,個人・法人の別,売手・買手の立場,国内取引か国外取引か,届出及びインボイス登録の状況を確認する必要がある。
本記事の金額・割合だけで,具体的な申告方法又は届出の要否を決めることはできない。

第2 消費税の基本構造及び税率

1 課税対象及び納税義務者

消費税は,国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡,資産の貸付け及び役務の提供等を原則として課税対象とするほか,外国貨物の輸入にも課される(消費税法4条)。
法律上の納税義務者は事業者又は外国貨物を保税地域から引き取る者であり,最終消費者が申告納税する制度ではない(同法5条)。

事業者が受け取る消費税相当額は,個々の取引の対価の一部であり,受け取った金額をそのまま国へ納付するものではない。
課税事業者の納付税額は,課税売上げに係る消費税額から,要件を満たす課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算する(同法30条)。

2 不課税,非課税及び輸出免税

消費税の課税要件を満たさない取引は不課税であり,課税対象となる取引のうち法令が列挙する土地の譲渡・貸付け,住宅の貸付け,社会保険医療等は非課税となる(消費税法6条及び別表第2)。
輸出取引等は課税対象であることを前提として税を免除する輸出免税であり,非課税取引とは仕入税額控除の取扱いが異なる(同法7条)。

損害賠償金,違約金,キャンセル料,立替金等は,名目だけで不課税又は非課税になるわけではない。
何らかの資産の譲渡又は役務提供の対価であるか,損害の補填にすぎないかなど,受領の原因と実質を確認する必要がある。

3 現在の税率及び主な沿革

標準税率は10%であり,国税である消費税7.8%と地方消費税2.2%から成る。
酒類・外食を除く飲食料品及び一定の定期購読新聞には軽減税率8%が適用され,国税6.24%と地方消費税1.76%から成る。

適用開始主な内容
平成元年4月1日消費税を税率3%で導入
平成9年4月1日税率を5%へ引上げ
平成26年4月1日税率を8%へ引上げ
令和元年10月1日標準税率を10%へ引き上げ,軽減税率8%及び区分記載請求書等保存方式を導入
令和5年10月1日適格請求書等保存方式(インボイス制度)を開始

第3 納税義務及び免税事業者

1 基準期間の課税売上高

個人事業者については前々年,法人については原則として前々事業年度が基準期間となる。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下である事業者は,原則として消費税の納税義務を免除されるが,適格請求書発行事業者はこの免除を受けない(消費税法9条)。

基準期間に課税事業者であった場合の課税売上高は税抜額で計算するのに対し,免税事業者であった場合は,受け取った対価の全額で計算する。
最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決は,免税事業者であった基準期間の対価から,納付義務を負わなかった消費税相当額を控除して課税売上高を算定することはできないとした。

2 基準期間だけでは決まらない場合

基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも,特定期間の判定,新設法人又は特定新規設立法人に関する特例,高額特定資産の取得,課税事業者選択届出書の提出,相続・合併・会社分割に関する特例その他の理由により,納税義務が免除されないことがある。
適格請求書発行事業者の登録を受けた場合も,基準期間の売上規模にかかわらず課税事業者となる。

特定期間は,個人事業者では前年1月1日から6月30日まで,法人では原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間である。
特定期間の課税売上高による判定では,法令上認められる場合に給与等支払額を用いて判定することができるため,売上高と給与等支払額の関係を個別に確認する必要がある。

第4 税抜経理方式及び税込経理方式

課税事業者は,消費税及び地方消費税を売上げ・仕入れ等の金額と区分して処理する税抜経理方式と,これらを売上げ・仕入れ等の金額に含めて処理する税込経理方式のいずれかを選択できる。
免税事業者は税込経理方式による。

税抜経理方式では,売上げに係る消費税等を仮受消費税等,仕入れに係る消費税等を仮払消費税等として処理する。
税込経理方式では,消費税等を含む金額を売上げ,仕入れ又は経費等として処理する。

いずれの方式を採用しても,消費税の納付税額は同じである。
もっとも,固定資産の取得価額,交際費等の損金算入限度額その他の法人税又は所得税の計算には差が生じることがあるため,経理方式は継続的に管理する必要がある。

第5 簡易課税制度

1 適用要件及び計算方法

簡易課税制度は,基準期間の課税売上高が5,000万円以下であり,原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出した課税事業者が利用できる(消費税法37条)。
実際の課税仕入れ等に係る消費税額ではなく,売上げに係る消費税額に事業区分ごとのみなし仕入率を乗じた額を仕入控除税額として計算する。

簡易課税制度を選択すると,原則として2年間は継続して適用する必要がある。
高額特定資産等を取得した場合には簡易課税制度の選択又は納税義務の免除が制限されることがあるため,大きな設備投資又は不動産取得を予定している場合は,届出前に適用関係を確認する必要がある。

2 事業区分及びみなし仕入率

事業区分主な事業みなし仕入率
第一種事業卸売業90%
第二種事業小売業等80%
第三種事業製造業,建設業等70%
第四種事業他の区分に該当しない事業60%
第五種事業運輸通信業,金融・保険業,サービス業等50%
第六種事業不動産業40%

弁護士が依頼者に法律事務を提供して得る報酬は,通常は第五種事業に該当し,みなし仕入率は50%となる。
もっとも,事業区分は取引ごとに判定するため,不動産賃貸収入又は事業用固定資産の売却等を,法律事務の報酬と同じ第五種事業として一括処理してはならない。

3 一般課税との比較及び届出期限の特例

簡易課税制度は帳簿・請求書等から実額の仕入税額を積み上げないため,経理負担を抑えやすい反面,設備投資その他の課税仕入れが大きい課税期間には,一般課税より不利となることがある。
売上構成,事業区分,予定する設備投資及び原則2年間の継続適用を踏まえて選択する必要がある。

インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者となった場合や,2割特例又は3割特例の適用後に簡易課税へ移行する場合には,届出期限の特例がある。
特例を適用できる課税期間及び提出期限は一律ではないため,国税庁の最新の「インボイス制度に関するQ&A」問117及び問117-3で確認する必要がある。

第6 中間申告及び中間納付

1 中間申告の回数

中間申告の回数は,直前の課税期間の確定消費税額で判定する。
ここでいう確定消費税額は地方消費税を含まない国税分である。

直前の課税期間の確定消費税額中間申告の回数
48万円以下原則として不要
48万円超400万円以下年1回
400万円超4,800万円以下年3回
4,800万円超年11回

前年実績による中間申告書を期限までに提出しなかった場合は,法定額による中間申告があったものとみなされるが,納付義務がなくなるわけではない(消費税法44条)。
税務署から申告書又は納付書が届いたかどうかにかかわらず,自ら申告回数及び期限を管理する必要がある。

2 前年実績による方法及び仮決算による方法

中間申告では,直前の課税期間の確定消費税額を基礎とする方法のほか,中間申告対象期間を一課税期間とみなして仮決算を行う方法を選択できる。
仮決算による中間申告を選んだ結果がマイナスとなっても,中間申告による還付を受けることはできない。

第7 インボイス制度及び令和8年度改正

1 売手及び買手の基本的な取扱い

適格請求書発行事業者は,課税事業者である取引先から求められた場合,法令上交付義務が免除される取引を除き,適格請求書又は適格簡易請求書を交付し,その写しを保存する義務を負う(消費税法57条の4)。
買手が一般課税により仕入税額控除を受けるには,原則として一定事項を記載した帳簿及び適格請求書等を保存する必要がある(同法30条7項~9項)。

簡易課税制度又は2割・3割特例では,仕入税額を実額で積み上げて納付税額を計算しない。
また,帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引,少額特例及び適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れに係る経過措置があるため,「インボイスがなければ一切控除できない」と説明するのは正確でない。

2 少額特例その他の例外

基準期間の課税売上高が1億円以下又は特定期間の課税売上高が5,000万円以下である事業者については,令和5年10月1日から令和11年9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れにつき,一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる少額特例がある。
公共交通機関による一定額未満の旅客運送,自動販売機等による一定額未満の購入その他にも帳簿のみの保存が認められる場合があるため,国税庁Q&Aの各要件を確認する必要がある。

免税事業者との取引条件を見直す場合は,登録していないことだけを理由として一方的に著しく低い価格を設定するなど,独占禁止法上の優越的地位の濫用等の問題を生じさせないようにする必要がある。
取引条件を見直す際には,公正取引委員会等が公表する「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」に示された考え方も確認する必要がある。

3 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置

適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについては,一定の帳簿及び請求書等を保存することにより,仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置がある。

仕入れの日控除できる割合
令和5年10月1日~令和8年9月30日80%
令和8年10月1日~令和10年9月30日70%
令和10年10月1日~令和12年9月30日50%
令和12年10月1日~令和13年9月30日30%
令和13年10月1日以後控除不可

一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの税込合計額が,その年又は事業年度で1億円を超える場合には,その超過部分へ経過措置を適用できない。
この1億円の上限は,令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用される。

4 2割特例及び3割特例

インボイス登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった者は,令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間について,要件を満たせば,納付税額を売上税額の2割とする特例を選択できる。
単純に令和8年9月30日で全ての事業者の適用が終わるのではなく,課税期間単位で判定する。

令和9年分及び令和10年分については,インボイス登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった一定の個人事業者が,納付税額を売上税額の3割とする特例を選択できる。
法人は3割特例の対象とならないため,2割特例終了後は一般課税又は簡易課税による申告を検討することになる。

2割特例は,適用要件を満たす場合でも常に最も有利な計算方法とは限らない。一般課税で仕入税額控除額が売上税額の8割を超える場合や,簡易課税の卸売業のようにみなし仕入率が90%となる場合は,2割特例より納付税額が少なくなり,又は還付となる可能性がある。申告前に一般課税,簡易課税及び2割特例を比較する必要がある(国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」)。

第8 不動産取引及び仕入税額控除に関する注意点

1 居住用賃貸建物

居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額は,原則として仕入税額控除の対象とならない(消費税法30条10項)。
対象となるのは,住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で,高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するものである。

建物の一部が店舗用である場合など,居住用賃貸以外の部分と居住用賃貸部分を構造,設備その他の状況により合理的に区分しているときは,居住用賃貸以外の部分に対応する税額まで一律に控除対象外となるわけではない。
控除制限を受けた後,一定期間内に課税賃貸用に供し,又は他の者へ譲渡した場合には,仕入控除税額の調整が行われることがある。

2 最高裁令和5年3月6日判決2件

最高裁令和5年3月6日第一小法廷判決(令和4年(行ヒ)第10号,民集77巻3号440頁)は,転売目的で取得したものの取得時に住宅として賃貸されていた建物について,課税売上げだけでなく住宅賃料という非課税売上げにも対応する課税仕入れであるとして,共通対応課税仕入れに該当すると判断した。
同判決の対象には現在の消費税法30条10項が適用される前の課税期間が含まれるため,現在の建物取得では同項の居住用賃貸建物に関する控除制限を別に確認する必要がある。

最高裁令和5年3月6日第一小法廷判決(令和3年(行ヒ)第260号,集民270号25頁)は,同種の建物取得に係る消費税額を全額控除した申告について,当時の公刊資料等から税務当局の見解を知り得たことなどを踏まえ,過少申告加算税を課さない「正当な理由」を否定した。
後者は個別の事情に基づく事例判断であり,税法解釈を誤った全ての場合に正当な理由が否定されると一般化することはできない。

3 帳簿及び請求書等の保存

最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決(平成13年(行ヒ)第116号,民集58巻9号2458頁)は,当時の消費税法30条7項について,帳簿又は請求書等を整理し,税務職員による検査の際に適時提示できるよう所定の期間・場所で保存していなかった場合は,同項の「保存しない場合」に当たるとした。
旧法下の判決であるが,単に書類を所持するだけでなく,法定期間中,検査に対応できる状態で保存することの意味を示している。

第9 弁護士・個人事業者向けの関連記事及び公式サイト

1 関連記事との役割分担

個人弁護士が独立するときの開業届,青色申告,課税事業者の選択及びインボイス登録の手順は,「弁護士の独立開業時の税務手続-開業届・青色申告・消費税・インボイス(AI作成)」で整理している。
弁護士登録初年度の給与,弁護士報酬,源泉徴収票及び必要経費は,「弁護士登録初年度の確定申告-給与・弁護士報酬・源泉徴収票・必要経費(AI作成)」を参照されたい。

弁護士報酬の源泉徴収と消費税の区分は,「弁護士報酬の源泉徴収義務と支払調書―税率・消費税・納期限(AIリライト)」で説明している。
個人事業者の税務・社会保険の全体像は「個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き」,廃業時の手続は「個人事業主の廃業に関するメモ書き」を参照されたい。

弁護士報酬その他の売掛債権が回収不能となった場合の法人税・所得税上の貸倒損失は,「貸倒損失の計上基準(AI作成)」で扱っている。
消費税について貸倒れに係る税額控除を受けるには,課税取引に係る債権であること,貸倒れの事実を明らかにする書類を保存していること及び貸倒れ時の課税関係を別に確認する必要がある(消費税法39条)。

2 申告書の作成及び登録確認

消費税の申告書は,国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成できる。
民間の税額計算サイトは概算確認には利用できるが,課税区分,端数処理,経過措置又は届出の適用判断を代替するものではない。

取引先から示された登録番号は,国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録状態及び履歴を確認できる。
請求書に番号が記載されていることだけで,取引日に有効な登録であったと当然に扱わない方が安全である。

第10 出典・参考資料

1 法令

消費税法4条~12条の4,30条,37条,39条,42条~44条,57条の2及び57条の4。
消費税法施行令
租税特別措置法のインボイス制度に関する経過措置。
④所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)及び衆議院の議案審議経過

2 裁判例

最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決,平成12年(行ヒ)第126号,民集59巻2号245頁。
最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決,平成13年(行ヒ)第116号,民集58巻9号2458頁。
最高裁令和5年3月6日第一小法廷判決,令和4年(行ヒ)第10号,民集77巻3号440頁。
最高裁令和5年3月6日第一小法廷判決,令和3年(行ヒ)第260号,集民270号25頁。

3 国税庁及び公正取引委員会の解説・Q&A

①国税庁「No.6505 簡易課税制度」(令和7年4月1日現在)。
②国税庁「No.6609 中間申告の方法」(令和7年4月1日現在)。
③国税庁「No.6375 税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理」(令和7年4月1日現在)。
④国税庁「インボイス制度に関するQ&A」。
⑤国税庁「令和8年度税制改正特集」。
⑥国税庁「消費税法改正のお知らせ(令和2年4月)」1頁~2頁(PDF1頁~2頁)。
⑦国税庁「消費税法基本通達1-4-5」。
⑧公正取引委員会ほか「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」。

4 文献

①横田寛『弁護士・事務職員のための法律事務所の確定申告入門-会計処理から税務調査対応まで』日本加除出版,2016年,147頁。
②安田雄飛「転売目的でなされた居住用賃貸建物取得の仕入税額控除を巡って」『税経通信』2023年7月号,税務経理協会,83頁~84頁,90頁~91頁及び95頁。
③佐藤明弘「インボイス制度の改正(令和8年度改正)と実務上の留意点」『税経通信』2026年7月号,税務経理協会,97頁~100頁及び103頁。