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非純正部品が使えなくなったとき―仕様変更の差止めと在庫の法人税処理(AI作成)

第1 仕様変更で失われる販売機会を整理する

機器メーカーが認証機能や更新ソフトを変更すると,従来使えていた非純正の部品・消耗品が使えなくなることがある。
部品の販売会社にとっては,独占禁止法上の問題と,売上・在庫・設備への影響を並行して確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月14日を確認基準日として,非純正品の使用制限,差止請求の資料,法人が保有する在庫の税務処理を整理する。

1 最初に記録すること

対象機器の型番,部品の品番,変更前後のソフトの版,変更通知日,実施日を記録する。
新規販売機器だけの変更か,既に販売された機器への更新も含むのかを分け,実際にどの操作ができなくなったかを確認する。
比較試験を行う場合は,試験条件,画面,出力結果,使用した部品,担当者を残し,変更前後の違いを再現できる形にする。

従来の機器で引き続き使える在庫と,更新後の機器で使えない在庫を分けることも必要である。
顧客の保有機器と更新状況を把握すれば,販売機会の喪失範囲と,在庫の残存需要を同じ資料から確認できる。
ただし,独禁法上の違反,差止請求の損害,税務上の評価損は,それぞれの要件で判断する。

第2 純正品への限定と独占禁止法

1 部品の市場と購入の強制

機器と消耗品が別々に取引され,非純正品にも需要がある場合には,機器を使うために純正品を買わなければならない仕組みが,技術的な抱き合わせとして問題となり得る。
一般指定10項の抱き合わせ販売等や,同14項の競争者に対する取引妨害に該当するかを,実際の使用制限と競争への影響に即して検討する。

機器本体の販売市場だけでなく,購入後に必要となる当該機器用の消耗品市場にも目を向ける。
ユーザーが他社機器へ容易に乗り換えられるか,本体購入時に使用制限や将来の消耗品費用を把握できたか,非純正品がどの程度利用されてきたかは,確認すべき事情である。
本体市場のシェアが小さいという理由だけで,特定機器用の消耗品への影響を検討せずに済ませることはできない。

2 安全性の説明と制限の範囲

公取委の令和2年度相談事例4は,分析機器で純正消耗品を使用した場合だけ分析値を表示する仕組みを,独禁法上問題となるおそれがあるとした。
安全性・分析精度の確保という目的だけで,一律の排除を正当化した事例ではない。

同事例は,非純正品の使用を可能にしたまま,分析値と併せて保証対象外・精度未検証と表示する取組については,その事実関係の下で問題ないと回答した。
この回答は,保証対象外と書けば常に適法になるという一般的な免責ではない。
実務では,不具合の記録,試験結果,制限される品目,表示や個別検証による代替の可否を対応させ,技術上の必要性と制限の範囲を説明する。

第3 差止請求と損害の資料

1 違反行為と自社の損害を分ける

独禁法24条は,8条5号又は19条に違反する行為による利益侵害又はそのおそれがあり,著しい損害又はそのおそれがある場合の差止請求を定める。
事業者の仕様変更を問題とする場合は,19条違反となる不公正な取引方法を具体化し,請求者自身への影響を別に説明する必要がある。
私的独占の疑いを指摘するだけで,24条の要件を満たしたことにはならない。

差止めの対象も,認証の導入,既存機器への更新,特定部品の排除など,問題の行為に対応させる。
メーカーへの申入れや公取委への報告では,変更前後の事実と求める対応を具体化する。
公取委への報告と24条の民事請求は,担当機関と要件が異なる手続である。

2 数量・利益・事業継続への影響

次の表は資料を整理するための例であり,裁判所が一律に要求する書類や数値基準ではない。
売上減少をそのまま損害額とせず,利益,回復可能性,代替先への転換に必要な時間・費用を区別する。

確認する事項用意する資料の例説明する内容
取引機会の喪失顧客別・機器別の注文履歴,注文取消し,使用不能の連絡仕様変更がどの注文に影響したか
数量と利益の変化月別販売数,原価・粗利益,変更前後の推移季節変動等と区別した減少の理由
在庫の影響品番別の数量・原価,対応機器,販売実績売れる在庫と販売困難な在庫の区分
転換と事業継続他機器向けの改修見積り,設備・人員の計画,資金繰り表転換費用,所要期間,継続への具体的影響

在庫価額,失われた利益,設備転換費用は,性質と期間の異なる項目である。
同じ損失を重ねて計上しないよう,各項目の計算根拠と相互の関係を示す。
受注の回復,返品,転売,別機器への転用が可能かも資料に残す。

第4 在庫の評価減と法人税

1 帳簿の減額だけでは損金にならない

法人税法33条1項は,資産の評価換えによる帳簿価額の減額を,原則として損金に算入しない。
同条2項の例外では,政令で定める事実が生じ,損金経理によって帳簿価額を減額するなどの条件が必要となる。
損金算入額にも,評価換え直前の帳簿価額と,その事業年度末の資産価額との差額という上限がある。

棚卸資産については,法人税法施行令68条1項1号が,災害による著しい損傷,著しい陳腐化,これらに準ずる特別の事実を挙げている。
メーカーの仕様変更や独禁法上の違反が認められたこと自体を,そのまま在庫評価損の損金算入理由とすることはできない。
設備の評価損や将来の売上減少も,棚卸資産と同じ項目へまとめず,別に検討する。

2 旧型機器の需要と価額の回復を確認する

法人税基本通達9-1-4は,物質的な欠陥がなくても,経済的環境の変化により価値が著しく減少し,今後回復しないと認められる状態を,著しい陳腐化として説明する。
同9-1-6は,単なる物価変動,過剰生産,建値の変更等による値下がりを,評価損の計上ができる事実から区別している。

非純正品の在庫では,旧型機器で引き続き使えるか,更新をしない顧客への販売が可能か,修理・改修によって適合できるかを品目別に確認する。
返品条件,転売先への見積り,実際の値下げ販売,販売を試みた記録も,期末の価額と回復可能性を検討する資料となる。
一部の機器で使えなくなったという理由だけで,すべての在庫を無価値と扱わない。

3 低価法による期末評価を別に検討する

法人税法29条と同施行令28条に基づく棚卸資産の評価方法には,原価法と低価法がある。
適用している評価方法,選定の届出,変更に必要な手続を確認し,33条の評価損の例外と混同しない。
低価法の期末価額については,法人税基本通達5-2-11も確認する必要がある。

帳簿上の在庫価額を減らした場合は,税務上も減額できるかを検討し,会計と税務の差額を把握する。
法人税法33条6項は,同条1項によって損金に算入されなかった評価減について,後の事業年度の税務上の帳簿価額を,減額がなかったものとして扱う。
当期の申告だけでなく,後に在庫を売却・処分したときの原価計算にもつながるため,品番ごとの記録を保持する。

第5 会社・弁護士・税理士で共有する資料

会社は,変更通知,技術資料,顧客との連絡,品番別在庫表,総勘定元帳,棚卸表,売上と原価の推移を対応させる。
弁護士は,行為の内容,競争への影響,利益侵害,著しい損害,求める差止めの範囲を検討する。
税理士は,事業年度末の在庫数量・価額,評価方法,陳腐化等の事実,損金経理,申告調整の要否を検討する。

独禁法上の損害を示す試算と,法人税の在庫評価の計算は,目的と要件が異なる。
共通する基礎資料は共有し,金額が異なる場合には,対象品目,計算期間,原価,残存需要の違いを説明できるようにする。
本記事の税務部分は法人が保有する棚卸資産を対象としており,個人事業主については所得税の規定に即した検討が必要である。

第6 出典と関連記事

1 法令・公表資料

①独占禁止法(19条,24条,45条)
②公正取引委員会「関係条文抜粋」(24条,一般指定10項・14項)
③公正取引委員会「令和2年度相談事例4」(分析機器の仕様変更。相談時の事実関係に対する回答)
④法人税法(29条,33条)
⑤法人税法施行令(28条~30条,68条)
⑥国税庁「法人税基本通達第9章第1節第1款」(9-1-1,9-1-3)
⑦国税庁「法人税基本通達第9章第1節第2款」(9-1-4~9-1-6)
⑧国税庁「法人税基本通達第5章第2節第2款」(5-2-11)

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