令和4年司法試験経済法第1問について,技術的な抱き合わせと私人の差止請求を検討する。
法務省の公式採点基準・配点ではなく,公式資料から独自に抽出した評価項目である。
第1 この記事の対象と結論
対象は令和4年司法試験・経済法第1問(問題PDF実頁14~15)である。
法務省の出題の趣旨・採点実感から,37項目を独自に抽出した。
本答案は,日本国内のY社製甲向け乙市場を画定し,一般指定10項を主に,同14項も補足して検討した上で,独占禁止法24条の差止請求を肯定する。
重み5は8項目であり,公開表の番号1・2・16・18・21・23・28・30に対応する。
その内容は,差止めの法的入口,適切な違反類型,購入時の情報,甲乙市場の競争の接続,新旧製品の区別,20%という主張,利益侵害及び著しい損害の規範である。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一つの項目につき一つの判定対象を置き,出典はPDFの実頁と見出しで示す。
必須,高評価,負例及び許容分岐の区分は,重みとは別である。
一般指定10項と14項はいずれも的確に論じれば同等に評価され,両方の記載は全答案の必須条件ではない。
市場の取り方や結論に応じた条件付き項目も,全答案に累積して求めるものではない。
一方の資料に「記載なし」とした箇所は,本問の関連範囲を読んだ結果である。
「間接」は関連記述からの推論であり,明示された採点項目と同一ではない。
本記事の表は37行で,内部の追跡IDと公開番号は一対一で対応する。
2 5段階の重み付けの基準
重み5は採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのもの,4は出題の趣旨が検討を求め採点実感も取り上げた事項,3は一方が明示する中核の理由付け,2は補強又は典型的な誤り,1は控えめに触れる事項とした。
本問の重み4は,採点実感による評価又は具体的な不十分さの指摘を含み,すべてについて「高く評価した」との明示があるという意味ではない。
法務省の公式採点基準・配点ではなく,公式資料から独自に抽出した評価項目である。
第3 本問の概要
Y社は家庭用電化製品甲と交換部品乙を製造販売し,X・D・E社は非純正乙を製造販売する。
甲はメーカーごとに専用乙を必要とし,Y社製甲用乙では純正品が約40%,非純正品が合計約60%を占める。
甲の競争は活発だが,甲購入時に乙の交換費用・時期は十分認識されていない。
他社製品で生じた発火問題が解決した後,Y社は新規の甲乙に電子部品を付け,純正乙だけで甲が作動するようにした。
X社は売上減少と在庫の発生を見込み,設備の再転換も資金的に難しいため,差止請求を検討している。
設問は,Y社の甲市場シェア約20%という主張と安全性の主張を踏まえ,その差止請求の独禁法上の問題を検討させるものである。
第4 評価項目と重み
1 救済の入口
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 私人の差止請求の根拠を独禁法24条とする〔必須;全答案〕 | 5 | 26頁1(該当事項を検討) | 17頁ア(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 2 | 19条の禁止規定と一般指定10項又は14項を接続する〔必須;全答案〕 | 5 | 27頁2(該当事項を検討) | 17頁ア(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 3 | Y社が製造販売という商業を行う事業者(2条1項)であると簡潔に示す〔必須;全答案〕 | 3 | 記載なし | 17頁イ(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
2 10項の行為要件
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 4 | 甲と乙が独立した取引対象であり乙が他の商品であると示す〔必須;一般指定10項を採用する答案〕 | 4 | 27頁3(該当事項を検討) | 17頁ウ(イ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 5 | 購入させるとは客観的に少なからぬ顧客が購入を余儀なくされることと解釈する〔必須;一般指定10項を採用する答案〕 | 4 | 27頁3(該当事項を検討) | 17頁ウ(イ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 6 | 電子部品が甲使用継続と後日の純正乙購入を結び付けることを当てはめる〔必須;一般指定10項を採用する答案〕 | 4 | 26頁1(該当事項を検討) | 16頁第2・1(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
3 14項の行為要件
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 7 | Y社とX社が国内の乙の製造販売で競争関係にあると示す〔許容分岐;一般指定14項を採用する答案〕 | 4 | 27頁3(該当事項を検討) | 17頁ウ(イ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 8 | 取引妨害の方法は限定されず技術的手段も含まれると解釈する〔許容分岐;一般指定14項を採用する答案〕 | 4 | 27頁3(該当事項を検討) | 17頁ウ(イ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 9 | 電子部品がX社とユーザーの乙取引成立を妨げると当てはめる〔許容分岐;一般指定14項を採用する答案〕 | 3 | 26頁1・27頁3(該当事項を検討) | 17頁ウ(イ)(間接:対応領域の評価) |
4 市場と競争効果
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 不当にを公正競争阻害性と解釈する〔必須;全答案〕 | 4 | 27頁2(該当事項を検討) | 17頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 11 | 本件を主に自由競争減殺で捉え競争の実質的制限より低い程度で足りると示す〔必須;全答案〕 | 4 | 27頁4(該当事項を検討) | 17頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 12 | 自由競争減殺を認定するため市場画定が必要であると説明する〔必須;全答案〕 | 4 | 27頁4(該当事項を検討) | 17頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 13 | 商品・地理の範囲を需要代替性を基本に必要に応じ供給代替性も考慮して定める〔必須;全答案〕 | 4 | 27頁4(該当事項を検討) | 17頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 14 | 取付け形状により他社甲用乙では代替できないと評価する〔必須;全答案〕 | 3 | 27頁4(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(間接:対応領域の評価) |
| 15 | 乙の価格上昇に対し他社甲への買換えが十分生じるか検討する〔必須;全答案〕 | 3 | 27頁4(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(間接:対応領域の評価) |
| 16 | 甲購入時に乙の交換費用・時期を十分認識しないことを市場又は競争効果に位置付ける〔高評価;全答案〕 | 5 | 27頁4(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 17 | 乙交換時に純正・非純正を自ら選ぶことを市場分析に反映する〔必須;全答案〕 | 3 | 27頁4(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(間接:対応領域の評価) |
| 18 | 甲の活発な競争が乙に十分な競争圧力を及ぼすか因果関係を説明する〔高評価;全答案〕 | 5 | 27頁4(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 19 | 広い乙市場を採る場合は他社甲用乙の供給と対象がY甲用に限られる点を整合させる〔許容分岐;広い乙市場を採る答案〕 | 3 | 27頁4(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 20 | 行為後の新規Y社製甲に向けた非純正乙の販売不能を評価する〔必須;全答案〕 | 4 | 27頁5(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 21 | 既存Y社製甲向け非純正乙は当面販売できると明示して評価する〔高評価;全答案〕 | 5 | 27頁5(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 22 | 甲の買換えに伴い非純正品を使えない甲の割合が増えるという経時的効果を述べる〔高評価;全答案〕 | 3 | 27頁5(該当事項を検討) | 記載なし |
| 23 | Yの甲市場20%を乙市場の効果との関係抜きに免責根拠にしない〔必須;全答案〕 | 5 | 27-28頁5(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
5 安全性の正当化
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 24 | 安全性が一般消費者利益・公益に関わるため公正競争阻害性で考慮できると説明する〔高評価;全答案〕 | 4 | 28頁6(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 25 | 目的の正当性と手段の相当性等の枠組みを示して正当化を判断する〔必須;全答案〕 | 4 | 28頁6(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 26 | 事故がC社甲用E社乙に限定され解決済みである点を正当化の評価に使う〔必須;全答案〕 | 3 | 28頁6(該当事項を検討) | 18頁ウ(ウ)(間接:対応領域の評価) |
| 27 | Yの事故原因の認識を断定しない構成では安全目的を仮定して手段相当性を評価する〔許容分岐;事故原因認識不明を維持する構成〕 | 3 | 28頁6(該当事項を検討) | 記載なし |
6 利益侵害と著しい損害
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 28 | 24条の利益の意味を示して営業上の利益等を特定する〔必須;全答案〕 | 5 | 28頁7(該当事項を検討) | 18頁エ(イ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 29 | 販売機会喪失・売上大幅減の予想を利益侵害又はそのおそれに当てはめる〔必須;全答案〕 | 3 | 28頁7(該当事項を検討) | 18頁エ(イ)(間接:対応領域の評価) |
| 30 | 著しい損害を利益侵害と区別し意味又は判断方法を示す〔必須;全答案〕 | 5 | 28頁7(該当事項を検討) | 18頁エ(ウ)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 31 | 非純正乙の製造販売不能を著しい損害の具体的評価に組み込む〔必須;全答案〕 | 3 | 28頁7(該当事項を検討) | 18頁エ(ウ)(間接:対応領域の評価) |
| 32 | 大幅な売上減の予測を著しい損害に即して評価する〔必須;全答案〕 | 3 | 28頁7(該当事項を検討) | 18頁エ(ウ)(間接:対応領域の評価) |
| 33 | 販売不能在庫が発生する点を著しい損害に即して評価する〔必須;全答案〕 | 3 | 28頁7(該当事項を検討) | 18頁エ(ウ)(間接:対応領域の評価) |
| 34 | Yの中止拒否から自発的解消を期待できない点を評価する〔必須;全答案〕 | 3 | 28頁7(該当事項を検討) | 記載なし |
| 35 | 差止否定の結論を採る場合も24条各要件の規範と事実評価を示す〔許容分岐;差止請求を否定する答案〕 | 3 | 28頁7(該当事項を検討) | 21-22頁第3・3(1)(間接:対応領域の評価) |
7 差止請求における誤りの回避
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 36 | 私的独占の検討で差止めの答案を終えたり不必要な比重を置いたりしない〔負例;全答案〕 | 2 | 26-27頁1-2(間接) | 18頁エ(ア)(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
| 37 | 私人の差止請求の根拠を行政上の20条又は調査端緒の45条と取り違えない〔負例;全答案〕 | 2 | 記載なし | 17頁ア(規範・当てはめ又は不十分さを指摘) |
8 重みの分布
重み1=0項目,2=2項目,3=15項目,4=12項目,5=8項目,合計37項目である。
重みの単純合計は137であり,公式得点・合格可能性又は科目間の難易度を示さない。
重み5の対応は次のとおりである。
番号1:私人の差止請求の根拠を独禁法24条とする。
番号2:19条の禁止規定と一般指定10項又は14項を接続する。
番号16:甲購入時に乙の交換費用・時期を十分認識しないことを市場又は競争効果に位置付ける。
番号18:甲の活発な競争が乙に十分な競争圧力を及ぼすか因果関係を説明する。
番号21:既存Y社製甲向け非純正乙は当面販売できると明示して評価する。
番号23:Yの甲市場20%を乙市場の効果との関係抜きに免責根拠にしない。
番号28:24条の利益の意味を示して営業上の利益等を特定する。
番号30:著しい損害を利益侵害と区別し意味又は判断方法を示す。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
令和4年5月11日の試験時を基準とする。
答案は見出しを含み改行を除いて2061字であり,2500字以内である。
一般指定10項を主たる構成とし,14項を補足的に論じる。
差止めを肯定する解釈を採ったが,公式資料は理由付けを伴う否定結論も許容している。
2 答案
1 差止請求の根拠
X社の請求は独占禁止法24条による。
同条は19条違反等による利益侵害又はそのおそれと,これによる著しい損害又はそのおそれを要する。
私的独占を定める3条違反だけでは足りない。
Y社は甲を製造販売する商業を行う者として「事業者」(2条1項)に当たる。
本件では,不公正な取引方法である抱き合わせ販売等(2条9項6号ハ,一般指定10項)及び競争者に対する取引妨害(同号ヘ,同14項)による19条違反を検討する。
2 抱き合わせ販売等
(1)行為要件
甲と乙は,乙が甲の使用に必要であっても,別々に製造販売され,ユーザーが乙の交換時に購入先を選択している。
両者は独立した取引対象であり,乙は「他の商品」に当たる。
「購入させ」るとは,客観的に少なからぬ顧客が他商品の購入を余儀なくされることであり,同時購入や契約による強制に限らない。
電子部品を付したY社製甲は純正乙でしか作動しないから,そのユーザーは使用継続のためY社製乙を買わざるを得ない。
甲の供給と後日の乙の購入を結び付ける技術的な抱き合わせに当たる。
(2)不当性
不当性は公正競争阻害性を意味し,本件では乙市場の自由競争を減殺するおそれから判断する。
市場支配力や競争の実質的制限までは必要でない。
競争への影響は,需要・供給の代替性を踏まえて市場を画定して検討する。
乙は甲のメーカーごとに取付け形状等が異なり,他社製甲用乙では代替できない。
乙は甲に比べ安価であり,乙の購入を避けるため高価な甲を買い替えることも容易でない。
輸入品もなく,他社甲メーカーがY社製甲用乙に進出する計画もない。
そこで,日本国内のY社製甲向け乙の製造販売を対象とする。
確かに,甲市場では4社の競争が活発であり,Y社のシェアも約20%にすぎない。
甲と乙の総費用を比較して甲を選択できるなら,甲市場の競争が乙の取引をも規律し得る。
しかし,甲購入者は乙の交換費用や時期を十分認識しておらず,買換え時期や交換頻度も大きく異なる。
購入後には他社の乙へ切り替えられず,甲の買換えにも大きな負担がある。
したがって,甲市場の活発な競争だけでY社製甲向け乙市場の競争制限を否定できない。
当該乙市場では,低価格の非純正品が合計約60%,Y社の純正品が約40%を占め,非純正品が競争圧力となっていた。
本件行為は,行為後に製造販売されるY社製甲についてX社ら3社の乙を全て使用不能にし,その取引機会を奪う。
新規参入・輸入の見込みもないため,純正品間の競争も期待できない。
既存の甲まで直ちに排他的になったわけではないが,甲の買換えが進むほど非純正乙を使えないY社製甲の割合は増加する。
新規販売分では競争者を技術的に締め出し,買手の選択と低価格競争を失わせる。
X社も代替的な製造販売先へ容易に転換できないから,自由競争減殺のおそれがある。
(3)安全性の主張
安全性確保は競争と直接同じ性質ではないが,一般消費者の利益に資し広い意味の公益に関わるから,公正競争阻害性の判断で考慮できる。
製品の安全性確保は正当な目的であり,必要な技術改良は許容される。
しかし,手段は目的達成に必要かつ相当な範囲に限られる。
Y社の真の目的や事故原因の認識は断定できないとしても,事故はC社製甲用のE社製乙の接触部分の設計に由来し,調整によって解決した。
他の乙に同様の問題はなく,Y社製甲について発火や非純正乙による不具合の報告もない。
非純正品全体を危険と扱う根拠は乏しく,特定の問題箇所の改善等で対処できるのに,全ての非純正品を一律に使用不能にするのは過大である。
安全性による正当化は認められず,10項に該当し19条に違反する。
3 競争者に対する取引妨害
Y社とX社は日本国内のY社製甲向け乙の競争者である。
本件行為は,電子部品という方法でX社と当該甲のユーザーとの乙の取引成立を不可能にする。
14項は妨害方法を限定していないから,直接X社に働き掛けていなくても該当し得る。
不当性についても,前記の競争減殺のおそれがあり,安全性による正当化はできない。
したがって,同項によっても19条違反となる。
両類型は差止めのための選択的な違反構成である。
4 利益侵害及び著しい損害
「利益」は,不公正な取引方法によって侵害される,公正な競争を通じて事業活動を行う営業上の利益を含む。
本件行為により,X社は新規Y社製甲向け乙の製造販売機会を失い,営業上の利益を侵害されるおそれがある。
「著しい損害」は,損害の程度・態様や回復の困難性等を踏まえて判断する。
X社は,他社甲向け設備の一部をY社製甲向けに変更した直後で,売上高の大幅な減少と販売不能在庫が予想される。
資金的に設備を再転換することも困難であり,単なる一時的な売上減少にとどまらない重大で回復困難な損害のおそれがある。
Y社は中止要求を拒否しており,自発的な解消も期待できない。
現実の損害発生を待つ必要はない。
よって,X社はY社に対し,本件の電子部品によって非純正乙を排除する行為の停止又は予防を請求できる。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案1は番号1~3と36~37の入口,答案2(1)は番号4~6,答案3は番号7~9に対応する。
答案2(2)は番号10~23,答案2(3)は番号24~27,答案4は番号28~35に関係する。
番号19と35は,本答案が採用しない条件付き分岐である。
(2) 市場と行為要件の区別
甲と乙が別商品であることと,乙の市場をどの範囲にするかは別の判断である。
甲を購入すれば後日乙が必要になることから,技術的な購入強制も検討対象となる。
甲市場の20%をそのまま乙市場での自由競争減殺の否定理由にせず,購入時の情報不足や買換え費用を介して甲乙の競争関係を説明することが必要である。
番号19のように乙全体の広い市場を採る構成も許容される。
その場合は,制約されるのがY社製甲向け乙に限られることを評価し,甲購入時の費用認識の不足も競争効果に反映させる必要がある。
(3) 新旧の製品と正当化
本件行為は,新規に製造販売するY社製甲を対象とする。
既存甲に対応する非純正乙を当面販売できることを認めた上で,買換えにつれて閉鎖範囲が広がる経時的な効果を説明する。
安全性は消費者利益・公益に関わるため考慮できるが,事故が限定的かつ解決済みであることと,一律排除の広さを比較する必要がある。
(4) 差止請求と答案の弱点・扱わなかった事項
番号28の利益侵害と番号30の著しい損害は,19条違反と区別して規範と当てはめを置く。
本答案は,営業上の利益を特定し,売上減・在庫・設備再転換の困難・中止拒否から著しい損害のおそれを肯定した。
著しい損害には複数の理解があり,回復困難性だけが唯一の判定基準であるという趣旨ではない。
番号35の否定結論を採る場合も,違反行為による利益侵害と著しい損害の判断を示す必要がある。
14項の補足は加点につながり得る一方,10項の規範や24条のその他の要件を圧迫してはならない。
公取委への申告・行政上の排除措置・課徴金・損害賠償は,本問の私人の差止めの根拠とは区別する。
細かなガイドライン知識や裁判例名の暗記自体を必須評価単位とはしていない。
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第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①法務省・令和4年司法試験問題(選択科目)実頁14~15。
②法務省・令和4年司法試験出題の趣旨実頁26末尾~28の経済法第1問。
③法務省・令和4年司法試験の採点実感(選択科目)実頁16~18の科目総論・第1問,21~22の第1問評価水準及び科目共通注記。
2 法令
①公正取引委員会・独占禁止法2条1項・9項,19条。
②公正取引委員会・差止請求制度の関係条文24条(平成25年改正施行以後の抜粋)。
③公正取引委員会・不公正な取引方法一般指定10・14項(平成21年改正,平成22年施行)。
3 裁判例及び行政資料
①大阪高裁平成5年7月30日判決・東芝エレベータテクノス事件の安全性・選択自由に関する理由部分。
②公取委・藤田屋事件平成4年2月28日審判審決の購入強制の解釈部分。
③公取委・令和2年度相談事例4「分析機器の消耗品として非純正品が使用された場合の分析機器の動作に係る仕様変更」の独禁法上の考え方(令和3年公表)。
4 確認状態
問題・公式資料の上記範囲,告示の該当文言及び上記裁判例・審決の関連理由部分を確認した。
独占禁止法全文の現行掲載を歴史版全文の正本確認と同一視せず,24条の旧来の抜粋・一般指定の施行版及び試験以前の行政資料と分けて用いた。
裁判例の全記録を確認したものではなく,公取委の相談回答も裁判所を拘束する判例ではない。
評価単位への分解,重み及び具体的な当てはめは,本記事の分析である。