第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日
本記事は,森本暁史簡易裁判所判事について,裁判所の人事資料で確認できる経歴,報道で伝えられた刑事事件,最高裁判所による罷免訴追の請求及び裁判官弾劾裁判所に係属する令和8年(訴)第1号事件を整理するものである。
基準日は令和8年10月30日であり,同日までに確認できた公的資料,刑事判決書及び報道に基づく。
刑事判決の認定・量刑理由は裁判所ウェブサイトの判決書,弾劾裁判の係属状況は裁判官弾劾裁判所の公式サイト,公判での本人の発言等は公判を傍聴した弁護士ドットコムニュースの記事に分けて記載する。
2 結論
①裁判所の人事資料によれば,森本暁史簡裁判事は,最高裁判所事務総局秘書課専門官,東京簡易裁判所判事,湯沢簡易裁判所判事兼横手簡易裁判所判事等を経て,令和7年4月に新潟簡易裁判所へ異動した。
②秋田地方裁判所令和8年7月23日判決は,共益費の業務上横領,預金口座取引明細表の偽造・行使及びオンラインカジノでの常習賭博の罪について,懲役3年,執行猶予4年を言い渡した。裁判所ウェブサイトで判決書本文が公開されている。
③最高裁判所は令和8年5月に罷免訴追を請求し,裁判官訴追委員会は同年9月10日に罷免の訴追をしたと報じられている。
④裁判官弾劾裁判所の公式サイトによれば,令和8年(訴)第1号事件は係属中であり,第1回公判は同年10月28日に開かれた。第2回公判期日は未定である。
⑤弁護士ドットコムニュースは,第1回公判で本人質問まで行われて審理が終結し,判決は後日と報じている。ただし,同月30日現在,弾劾裁判所の公式サイトに罷免又は不罷免の裁判は掲載されていないため,罷免済みであるかのように記載することはできない。
第2 森本暁史簡裁判事の経歴
最高裁判所が開示した「裁判官略歴」には,生年月日が昭和49年3月5日,現官職が新潟簡裁判事と記載され,経歴として,令和3年8月1日に東京簡裁判事,令和4年3月25日に湯沢簡裁判事・横手簡裁判事,令和7年4月1日に新潟簡裁判事となったことが記載されている。
同略歴の司法修習期の欄は空欄である。
1 裁判所事務官から最高裁判所事務総局まで
最高裁判所の説明を伝えた報道によれば,森本暁史氏は平成11年4月に裁判所事務官として採用された。
最高裁判所が作成した令和元年度の自庁研修資料には,最高裁判所事務総局秘書課専門官として森本暁史氏の氏名が掲載されている。
2 東京簡易裁判所判事への任命
報道によれば,森本暁史氏は令和3年8月に簡易裁判所判事に任命された。
令和4年1月1日現在の東京地方裁判所の裁判官配置等には,東京簡易裁判所民事室の簡易裁判所判事として氏名が掲載されている。
3 湯沢簡易裁判所及び横手簡易裁判所
裁判所時報第1788号には,令和4年3月25日付けで,東京簡易裁判所判事から湯沢簡易裁判所判事兼横手簡易裁判所判事へ異動したことが記載されている。
令和6年4月1日施行の秋田地方裁判所及び管内各簡易裁判所の裁判事務分配資料には,湯沢簡易裁判所の司法行政事務掌理者及び横手簡易裁判所判事として氏名が掲載されている。
4 新潟簡易裁判所
令和7年3月5日の最高裁判所裁判官会議の人事関係資料及び裁判所時報第1860号には,令和7年4月1日付けで新潟簡易裁判所判事へ異動したことが記載されている。
令和8年の刑事事件及び罷免訴追に関する報道も,森本暁史氏を新潟簡易裁判所判事としている。
5 読み方及び出身大学
確認した裁判所の人事資料,弾劾裁判所の公表資料及び主要な報道には,氏名の読み方及び出身大学の記載は見当たらなかった。
「暁史」の読み方や出身大学は推測せず,確認できる一次資料が公表された場合に追記する。
第3 刑事事件
1 判決書で確認できる犯罪事実
秋田地方裁判所令和8年7月23日判決(令和8年(わ)第33号)は,常習賭博,業務上横領及び有印私文書偽造・同行使の事実を認定した。
常習賭博については,令和5年4月7日から同年9月20日までの間,多数回にわたり,オンラインカジノサイトに接続し,現金に交換可能な同サイト内のポイントを賭けて「バカラ」と称する賭博をしたと認定している。
業務上横領については,国家公務員合同宿舎の居住者で組織された組合の管理当番等として共益費の管理等の業務に従事していた被告人が,令和5年4月7日から令和7年4月28日までの間に71回にわたり組合の預金口座から現金合計312万円を払い戻し,令和5年4月7日から令和7年5月1日までの間に127回にわたり,そのうち合計278万5200円を自己名義の預金口座等へ入金して着服したと認定している。
有印私文書偽造・同行使については,横領の発覚を免れる目的で,令和7年5月9日頃から同月13日頃までの間に,自宅で預金取引明細表の画像データを加工して印刷し,これから作成したPDFデータを,新潟簡易裁判所の簡裁裁判官室から職務上使用するパソコンを用いて後任の管理当番へ電子送信したと認定している。
2 令和8年6月4日の初公判
神戸新聞社の共同通信配信記事によれば,令和8年6月4日の秋田地方裁判所の初公判で,被告人は起訴内容を認めた。
同記事によれば,検察側は懲役3年を求刑し,弁護側は執行猶予付きの判決を求め,同日結審した。
3 令和8年7月23日の判決と量刑理由
秋田地方裁判所は,懲役3年,執行猶予4年を言い渡した。
判決は,量刑の中心を業務上横領とし,2年以上の長期間にわたり着服を繰り返し,合計278万円余りの被害を生じさせたことを悪質と評価した。
賭博についても,横領や借入れで資金を用意してまで昼夜これに耽溺しており,常習性が顕著であるとした。
文書偽造と行使は,着服を隠蔽する不当な意図に基づくものであり,量刑上看過できないとしている。
簡易裁判所判事として法令の遵守を特に強く求められる立場にあった以上,責任が加重されるとしつつ,職業上の地位や権限を悪用した要素は見出し難いとも述べている。
他方で,横領の被害全額が弁償されたこと,反省の態度を示していること,前科がないこと及び親族等の支援を考慮し,刑の執行を猶予しつつ,その期間は標準より長期に設定するのが相当とした。
同年9月の報道は,この判決が確定したと伝えている。
判決確定の事実は報道に基づくが,犯罪事実と量刑理由は公開判決書で確認できる。
第4 最高裁判所の訴追請求と裁判官訴追委員会の訴追
1 最高裁判所の罷免訴追請求
令和8年5月13日の共同通信配信記事によれば,最高裁判所は,同日,森本暁史簡裁判事について,裁判官訴追委員会に罷免の訴追を請求した。
同記事は,最高裁判所が一連の行為を裁判官弾劾法2条2号の「職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行」に当たると判断したと伝えている。
2 裁判官訴追委員会による罷免の訴追
令和8年9月11日の共同通信配信記事等によれば,裁判官訴追委員会は,同月10日,森本暁史簡裁判事を罷免すべきであるとして,裁判官弾劾裁判所に訴追状を提出した。
弾劾裁判所の公式サイトも,同日付けの令和8年(訴)第1号事件が係属していることを公表している。
第5 令和8年(訴)第1号弾劾裁判
1 係属状況
裁判官弾劾裁判所の「事務局からのお知らせ」は,令和8年9月10日に訴追された令和8年(訴)第1号罷免訴追事件が係属中であると公表している。
同ページは被訴追者の氏名を表示していないが,前記報道は,この事件の被訴追者を森本暁史簡裁判事と伝えている。
2 第1回公判
弾劾裁判所の「事務局からのお知らせ」によれば,第1回公判は令和8年10月28日に開かれた。
公式サイトは,第2回公判期日を未定としている。
公判を傍聴した弁護士ドットコムニュースによれば,本人は起訴された事実を認め,オンラインカジノを始めた経緯,借金,共益費の流用,取引明細の偽造及び被害弁償について述べた。
同記事は,本人質問まで行われて審理が終結し,判決は後日と報じている。
これらの本人の発言及び審理終結の情報は弾劾裁判所の公式記録ではなく,同記事の傍聴報道に基づく。
3 現時点で罷免は確定していないこと
令和8年10月30日現在,弾劾裁判所は罷免又は不罷免の裁判を公表していない。
刑事判決の確定,罷免訴追の請求,訴追及び弾劾裁判所の罷免判決は,それぞれ別の段階である。
したがって,係属中の現段階で罷免を既成事実として扱うべきではない。
第6 有罪判決と裁判官の身分の関係
1 有罪判決だけで当然に罷免されるわけではないこと
日本国憲法78条前段は,裁判官は,心身の故障のために職務を執ることができないと裁判で決定された場合を除き,公の弾劾によらなければ罷免されないと定めている。
裁判所法48条も,公の弾劾等による場合を除き,裁判官をその意思に反して免官等することはできないと定めている。
このため,刑事事件の有罪判決と弾劾裁判所による罷免の判断を区別する必要がある。
2 弾劾裁判で判断されること
裁判官弾劾法2条は,職務上の義務への著しい違反又は著しい職務懈怠と,職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行を罷免事由としている。
森本暁史簡裁判事の事件では,報道によれば,同条2号に該当するかが訴追の理由とされている。
罷免の可否は,弾劾裁判所が公開の口頭弁論を経て判断する。
3 裁判官は自己破産や債務整理を利用できないのか
弁護士ドットコムニュースによれば,本人は第1回公判で,裁判官は自己破産や債務整理をできないと思い込み,共益費に手を付けた旨を述べた。
これは本人の認識を伝える報道であり,「裁判官は自己破産できない」という法令上の一般原則を示すものではない。
裁判所法46条が定める裁判官の欠格事由に破産手続開始決定は掲げられておらず,憲法78条及び裁判所法48条も,破産を当然の罷免事由としていない。
もっとも,借金の原因となった賭博,職務上又は私生活上の非行,破産手続での不正行為等は,それぞれ別の法的評価を受け得る。
自己破産の可否と,個別の行為が刑事責任,分限又は弾劾の対象になるかは分けて考える必要がある。
ギャンブルによる借金の免責については,破産免責の許可・不許可の限界事例で説明している。
第7 経過一覧
| 日付 | 出来事 | 根拠の種類 |
|---|---|---|
| 平成11年4月 | 裁判所事務官として採用 | 最高裁判所の説明を伝えた報道 |
| 令和元年度 | 最高裁判所事務総局秘書課専門官として研修資料に掲載 | 裁判所資料 |
| 令和3年8月 | 簡易裁判所判事に任命され,東京簡易裁判所に勤務 | 裁判所資料・報道 |
| 令和4年3月25日 | 湯沢簡易裁判所判事兼横手簡易裁判所判事へ異動 | 裁判所時報 |
| 令和7年4月1日 | 新潟簡易裁判所判事へ異動 | 最高裁判所資料・裁判所時報 |
| 令和8年5月13日 | 最高裁判所が罷免訴追を請求 | 報道 |
| 令和8年6月4日 | 秋田地方裁判所の刑事事件が初公判・結審 | 報道 |
| 令和8年7月23日 | 懲役3年,執行猶予4年の判決 | 秋田地方裁判所判決書 |
| 令和8年9月10日 | 裁判官訴追委員会が罷免の訴追を提起 | 弾劾裁判所資料・報道 |
| 令和8年10月28日 | 弾劾裁判の第1回公判。報道によれば同日審理終結 | 弾劾裁判所資料・傍聴報道 |
第8 よくある質問
1 森本暁史簡裁判事は何をしたと報じられているか
国家公務員合同宿舎の共益費278万5200円の業務上横領,預金口座取引明細表の偽造・行使及び海外オンラインカジノでの常習賭博について有罪判決を受けた。
犯罪事実と量刑理由は,裁判所ウェブサイトで公開された刑事判決書で確認できる。
2 刑事裁判の判決はどうなったか
秋田地方裁判所は令和8年7月23日,懲役3年,執行猶予4年の判決を言い渡した。
判決書本文は裁判所ウェブサイトで公開されており,判決確定はその後の報道で確認した。
3 森本暁史簡裁判事は既に罷免されたのか
令和8年10月30日現在,罷免されたとは確認できない。
令和8年(訴)第1号事件は弾劾裁判所に係属中であり,第1回公判は開かれたが,罷免又は不罷免の裁判は公表されていない。
4 弾劾裁判の第1回公判はどうなったか
令和8年10月28日に開かれた。
弁護士ドットコムニュースは審理が終結して判決は後日と報じているが,弾劾裁判所の公式サイトは,第2回公判期日を未定としており,判決をまだ公表していない。
5 森本暁史氏の読み方と出身大学は何か
確認した公的資料及び主要な報道では,読み方と出身大学を確認できなかった。
同名人物の情報や一般的な読み方から推測することはしない。
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第10 出典・調査範囲
1 裁判所及び弾劾裁判所の資料
①最高裁判所の自庁研修の参加者名簿及び日程表(令和元年度)
②東京地裁の裁判官配置等(令和4年1月1日現在)
③裁判所時報第1788号
④秋田地裁の裁判官配置等(令和6年4月1日施行)
⑤令和7年3月5日の最高裁判所裁判官会議の人事関係資料
⑥裁判所時報第1860号
⑦裁判官弾劾裁判所「事務局からのお知らせ」
⑧裁判官弾劾裁判所「裁判の傍聴についてのお知らせ」
⑨最高裁判所が開示した森本暁史裁判官の略歴
⑩秋田地方裁判所令和8年7月23日判決(令和8年(わ)第33号)
2 法令
①日本国憲法(e-Gov法令検索)64条,78条
②裁判官弾劾法(e-Gov法令検索)2条,15条,22条以下
③裁判所法(e-Gov法令検索)48条
④裁判所法(e-Gov法令検索)46条
3 報道及び二次資料
①神戸新聞社・共同通信「秋田地裁で初公判」(令和8年6月4日)
②徳島新聞社・共同通信「秋田地裁判決」(令和8年7月23日)
③熊本日日新聞社・共同通信「裁判官訴追委員会が罷免訴追」(令和8年9月11日)
④神戸新聞社・共同通信「最高裁が罷免訴追を請求」(令和8年5月13日)
⑤弁護士ドットコムニュース「秋田地裁判決の紹介」(判決書全文そのものではない。)
⑥弁護士ドットコムニュース「『夢を叶えたのに…』裁判所職員から簡裁判事になった男性、オンラインカジノで転落…弾劾裁判で語った後悔」(令和8年10月28日の第1回公判の傍聴報道)
4 調査の限界
刑事判決書の公開本文は裁判所ウェブサイトで確認した。
罷免訴追状及び第1回公判の公式記録は確認できていないため,弾劾裁判での本人の発言,審理終結及び判決が後日となることは傍聴報道に基づく。
氏名の読み方及び出身大学は確認できていない。
判例データベースの網羅的な検索はしていない。
したがって,他に関連する裁判例がないという意味ではない。
弾劾裁判の係属状況及び期日は変動するため,令和8年10月30日後の状況は弾劾裁判所の公式サイトで再確認する必要がある。