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裁判官の訴追請求状の書き方―弾劾裁判までの流れ・提出先・期限(AI作成)

第1 訴追請求状を作る前に確認すること

1 訴追請求と弾劾裁判は別の段階である

裁判官について弾劾による罷免の事由があると思うときは,裁判官訴追委員会に対し,罷免の訴追を求める書面を提出できる。これが訴追請求である。国民が裁判官弾劾裁判所に直接訴えを起こす手続ではない。

流れは「訴追請求状の提出 → 訴追委員会の調査・審議 → 訴追の議決 → 弾劾裁判所への訴追状提出 → 弾劾裁判所の審理・裁判」となる。請求書を出しただけで弾劾裁判が始まるわけではなく,調査の結果,不訴追又は訴追猶予となることもある。

制度の根拠,過去の事件及び罷免後の資格回復については,弾劾裁判とは―裁判官を罷免する仕組み・手続・過去の事例を参照されたい。本稿は,提出する書面と資料の準備に焦点を当てる。

2 目的が判決の変更や担当裁判官の交代ではないか

訴追委員会は,裁判官の罷免の訴追を扱う機関である。係属中の事件に介入し,判決を取り消したり,担当裁判官を交代させたり,裁判官を懲戒したりする権限を持たない。

判決や訴訟指揮に納得できないという事情は,それだけで罷免事由になるものではない。裁判の内容を争うのであれば,その事件の上訴等の手続を検討する必要がある。訴追請求を準備していても,事件の上訴期間が延長されるわけではない。

一方,職務上の義務に著しく違反する行為,職務を甚だしく怠る行為,又は職務の内外を問わず裁判官としての威信を著しく失うべき非行は,裁判官弾劾法2条の罷免事由となり得る。書面では,単なる結論への不満と,どの行為を罷免事由として問題にするのかを分けて整理する必要がある。

3 対象と請求者を確認する

対象は現職の裁判官であり,既に退官した人や裁判所書記官等の職員について同じ手続を利用することはできない。担当裁判官の氏名が分からない場合は,裁判所名,事件番号及び判決年月日等,裁判官を特定できる情報を記載する。

訴追委員会のFAQは,日本国民であれば訴訟の当事者以外も請求できると説明している。法人・団体名義の請求については,異議がなければ代表者等個人の請求として扱い,外国人からの請求については,罷免事由があると思われる場合に職権立件して調査するという取扱いを示している。これらの取扱いを,裁判官弾劾法15条1項の「何人も」という条文の文言と区別して確認しておくとよい。

第2 3年の期間制限に注意する

1 3年以内に送れば足りるという意味ではない

裁判官弾劾法12条は,原則として罷免事由があった後3年を経過すると罷免の訴追ができなくなると定めている。訴追委員会のFAQによれば,この期間には委員会の調査・審議だけでなく,訴追を議決して弾劾裁判所へ訴追状を提出する段階まで含まれる。

したがって,期限直前に請求状を郵送すれば間に合うと考えるのは適切ではない。問題とする行為の日付を整理し,時間的な余裕を持って準備する必要がある。行為が複数ある場合も,それぞれの日付と内容を分けて記載する。

2 法律には例外もある

同条には,衆議院議員の任期満了・解散の場合や,同一事由について刑事訴追があった場合の特則がある。刑事訴追がある場合には,その事件の判決確定後1年まで訴追できるという規定が置かれている。

もっとも,例外に該当するかは具体的な事実関係の確認を要する。「発覚した日から3年」「請求状を提出すれば期間が止まる」などと読み替えず,行為の日,刑事訴追の有無,判決確定日等を確認する必要がある。

第3 訴追請求状の記載事項と整理例

1 公式の記載要領を優先する

裁判官訴追委員会の「訴追の請求」には,記載要領と記載例が掲載されている。提出時には,最新の公式案内を確認する必要がある。用紙はA4判とし,左側に3cm程度の余白を設けるという案内である。

請求者の住所・氏名・ふりがな,作成年月日,対象裁判官の氏名・所属裁判所,罷免の訴追を求める旨及びその理由を,読み手が順に確認できる形にする。訴訟に関係する事実の場合は,裁判所名,事件番号,当事者名等も記載する。

2 事実と評価を分けて書く

理由の中心は,いつ,どこで,誰が,何をしたのかという具体的な事実である。「不当な裁判官である」等の評価だけでは,調査すべき出来事が特定できない。自分が直接経験したこと,記録に残っていること,他者から聞いたことを区別すると,事実の根拠が明確になる。

実務上の整理方法としては,①問題とする行為,②その日時・場所,③自分との関係,④根拠資料,⑤罷免事由に当たると考える理由の順に記載することが考えられる。この並べ方は整理の一例であり,委員会が指定する必須の書式や受理・訴追を保証するものではない。

3 自分の事案に合わせた構成例

以下は,公式の記載例を確認した上で文章を組み立てるための構成例である。角括弧の部分は実際の事実に置き換え,該当しない項目は整理する。事実が不明な点を想像で埋めないことが大切である。

訴追請求状

裁判官訴追委員会 御中

[作成年月日]
請求者 住所[住所]
    氏名[氏名・ふりがな]

1 対象裁判官
 [所属裁判所・氏名。氏名不明の場合は事件番号等の特定情報]

2 請求の趣旨
 上記裁判官について,以下の事由により罷免の訴追を求める。

3 請求の事由
 (1)[具体的な行為の日時,場所及び内容]
 (2)[その事実を確認した経緯及び根拠資料]
 (3)[その行為が罷免事由に当たると考える理由]

4 関係する訴訟
 [裁判所名,事件番号及び当事者名等。該当する場合]

5 添付資料
 資料1 [資料名・作成日・説明]
 資料2 [資料名・作成日・説明]

長い経緯を記載する場合は,まず問題とする行為を要約し,その後に時系列の説明を続けると読みやすい。複数の裁判官の行為を問題にする場合は,各人が何をしたのかが混ざらないようにする。

第4 資料の付け方と提出方法

1 証拠の提出は法律上の必須条件ではない

裁判官弾劾法15条4項は,事由を記載した書面の提出を必要とする一方,証拠は要しないと定めている。資料が全部そろっていなければ請求できないという仕組みではない。

もっとも,手元に資料がある場合は,委員会が事実を確認する助けとなるよう,請求理由との対応を明示して添付するとよい。例えば,判決書,調書,該当部分を印刷した投稿等について,「資料1の何頁が,請求事由3(1)のどの事実に関係するか」を説明する方法がある。

資料は写しを提出する。公式案内によれば,提出した資料は返却されないため,原本や自分の唯一の控えを送らない。請求状と添付資料一式の控えを手元に残しておくことが望ましい。

2 郵送又は持参で書面を提出する

訴追請求状は,添付資料を含めて1部を郵送するか,持参して提出する。電子メール,FAX,USBメモリ及びCD等による提出は受け付けられていない。電子データの資料も紙に印刷して提出する。

提出先は,〒100-8982 東京都千代田区永田町2-1-2 衆議院第二議員会館内 裁判官訴追委員会である。持参する場合の受付時間は,公式FAQでは平日の午前9時から午後5時までとされている。提出前に,住所,受付日・時間及び最新の案内を確認されたい。

訴追請求自体の手数料は不要である。郵送の費用や資料の複写費用等は別に必要となる。送付方法や発送記録の保管は,提出した時期を自分で確認できるようにするための準備であり,郵送した時点で訴追の3年の期間制限を満たすことを意味しない。

3 受付通知が必要な場合

通常は,受領の通知は送られない。公式FAQは,受付通知を希望する場合には,110円切手を貼り,自分の郵便番号・住所・氏名を記載した返信用封筒を同封する方法を案内している。郵便料金や同封方法は,送付時点の公式案内を再確認する必要がある。

第5 提出後の手続と結果

1 委員会の調査と審議

訴追委員会は必要な調査を行い,訴追,不訴追又は訴追猶予を決定する。訴追猶予は,罷免事由が認められる場合でも,情状により訴追の必要がないと判断するもので,不訴追と同じ意味ではない。

請求者が希望すれば当然に委員会へ出席して説明できるわけではない。必要があるときは,委員会側から呼び出すという取扱いである。請求後に追加の連絡を受けた場合に対応できるよう,自分の請求内容と提出資料を整理しておくとよい。

2 所要期間と結果の通知

公式FAQは,決定までの期間について,おおむね半年から1年程度を要し,さらに長くかかる場合もあると説明している。個別の案件について一定期間内の処理を保証するものではない。

結果は書面で通知される。委員会の議事は非公開であり,通知に詳しい理由が記載されるとは限らない。自分の主張がどこまで認定されたのかを,通知の文言を超えて推測しないことが大切である。

3 不訴追決定に不服がある場合

公式FAQは,不訴追決定に対する不服申立てや裁判所への提訴を行うことはできず,同じ事実について再度訴追請求することもできないと説明している。請求状は,最初の提出時に対象とする事実及び根拠が伝わるよう整理する必要がある。

第6 提出前の確認事項

提出前には,次の事項を点検するとよい。

確認すること点検の内容
手続の目的判決の変更や担当裁判官の交代ではなく,罷免の訴追を求める趣旨か。
対象と日時現職裁判官を特定できるか。問題とする行為の日付と期間制限を確認したか。
具体的な事実いつ,どこで,誰が,何をしたか。確認できた事実と評価を区別したか。
資料と控え資料との対応が分かるか。原本ではなく写しか。提出一式の控えを残したか。
送付方法書面1部を正しい提出先へ送るか。受付通知を希望する場合の封筒を同封したか。

なお,裁判官弾劾法43条は,裁判官に弾劾による罷免の裁判を受けさせる目的で虚偽の申告をする行為を処罰の対象としている。事実関係を正確に書き,不明な点や自分の推測を事実として断定しないことが必要である。

第7 出典・関連記事

本稿の手続案内は,令和8年10月11日に確認した次の法令・公式案内に基づく。記載構成と資料の整理方法については,公式要件と区別して整理の一例を示した。

・裁判官弾劾法(2条,12条,15条,43条)
・裁判官訴追委員会「訴追の請求」
・裁判官訴追委員会「よくある質問」
・裁判官訴追委員会「訴追の事由」
・裁判官訴追委員会「訴追の請求」制度説明
・裁判官訴追委員会「訴追等の決定」
・裁判官弾劾裁判所「手続」

関連記事として,弾劾裁判の制度全体及び最高裁判所が受領した訴追請求関係文書の不開示の事例がある。後者は特定の文書の不開示判断を紹介する記事であり,請求した事件の処理結果を示すものではない。