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後見・保佐・補助

独身の高齢者に任意後見契約が必要な理由―申立人の不在,受任者の選び方及び令和8年改正(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論の要旨1 本記事の対象2 結論の要旨第2 独身の高齢者に起きること1 一人暮らしの高齢者は増え続けている2 判断能力が低下すると本人名義の手続が滞る3 申立人がいなければ市区町村長の申立てに頼ることになる第3 任意後見契約が独身の高齢者に適する理由1 受任者と代理権の範囲を自分で決められる2 登記された任意後見契約は法定後見に優先する3 権限は契約に書いた範囲に限られる第4 独身の高齢者が任意後見契約でつまずきやすい点1 契約しても発効しないまま終わることがある2 受任者が先に亡くなり,又は衰えることがある3 任意後見監督人の報酬がかかる4 葬儀などの死亡後の事務は任意後見の範囲外である5 医療行為への同意と身元保証も解決しない第5 任意後見契約と組み合わせるもの1 見守りと財産管理の委任2 死後事務委任契約と遺言3 公的支援と民間の事業者4 契約の手順と費用第6 令和8年改正で独身の高齢者に何が変わるか1 施行時期と既存の契約への適用2 発効の申立てを託す人を公正証書で指定できる3 受任者が欠けたときの次順位を決められる4 任意後見監督人を選任しない場合がある5 補助が始まっても任意後見契約は終了しない第7 独身の高齢者が任意後見契約を結ぶときの確認事項第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 所管行政機関の資料・行政ガイドライン4 統計・調査5 職能団体の資料6 文献

第1 本記事の対象と結論の要旨

1 本記事の対象

本記事は,配偶者も子もいない高齢者,又は親族はいても日常的に頼れる関係にない高齢者(以下「独身の高齢者」という。)について,判断能力の低下に備えて任意後見契約を結ぶ必要があるかを扱う。
記載は令和8年9月10日時点の法令及び公表資料に基づき,同月11日に加筆した部分は同日時点の法令及び公表資料による。
令和8年6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)は,成年後見制度の部分がまだ施行されていないため,現行法による説明と改正後の説明を分けて記載する。

移行型の任意後見契約の仕組み,通常委任の段階の濫用防止条項及び移行型に関する裁判例は,移行型の任意後見契約―通常委任からの移行,濫用防止及び令和8年改正で扱っている。
本記事は,独身であることによって生じる問題,すなわち判断能力が低下したときに誰が本人のために動くのかという点に絞って検討する。

2 結論の要旨

独身の高齢者にとって,任意後見契約の必要性は高い。
判断能力が低下した後に預貯金の管理や施設入所の契約を本人に代わって行う人を,配偶者や子のいる人のように家族の中に見込むことができないためである。
任意後見契約がないまま判断能力が低下すると,本人が自ら申し立てるか,親族や市区町村長が申し立てるまで法定後見は始まらず,申立てがされても後見人等は家庭裁判所が選ぶ。

もっとも,任意後見契約は結んだだけでは効力を生じない。
現行法では,家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力を生じ,その申立てができるのは本人,配偶者,四親等内の親族及び任意後見受任者に限られる。
独身の高齢者の場合,申立てを担えるのが事実上受任者だけということがあり,受任者が同世代であれば本人より先に亡くなることもある。
任意後見は本人の死亡で終わり,医療行為への同意や身元保証も引き受けない。

そのため,独身の高齢者が任意後見契約を結ぶときは,受任者の年齢と代わりの受任者,判断能力の低下に誰が気付き誰が申立てをするか,代理権の範囲,監督人報酬を含む費用及び死亡後の事務を,併せて設計することが考えられる。
令和8年改正法が施行されると,発効の申立てを託す人を公正証書で指定し,次順位の受任者を定めることができるようになり,これらの問題の一部に制度上の手当てがされる。

第2 独身の高齢者に起きること

1 一人暮らしの高齢者は増え続けている

内閣府の令和8年版高齢社会白書によれば,65歳以上の一人暮らしの者が65歳以上人口に占める割合は,令和2年に男性15.0%,女性22.1%であり,令和32年には男性26.1%,女性29.3%になると見込まれている。
65歳以上の一人暮らしの者の数も,令和2年の約672万人から,令和32年には約1,084万人になると推計されている。

この統計の「一人暮らし」は単独世帯等を指し,未婚の人や子のいない人の数を直接示すものではない。
配偶者と死別して子と別居している人が含まれる一方,未婚でもきょうだいと同居している人は含まれない。
それでも,判断能力が低下したときに同じ家で異変に気付く家族がいない高齢者が増えていることは,この統計から読み取れる。

2 判断能力が低下すると本人名義の手続が滞る

最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況―令和7年1月~12月―」によれば,成年後見関係事件の主な申立ての動機は,預貯金等の管理・解約が93.4%,身上保護が74.2%,介護保険契約が45.7%,不動産の処分が36.3%であった。
預貯金の払戻し,介護サービスや施設入所の契約,自宅の売却といった手続は,本人が内容を理解して判断できることを前提としており,判断能力が低下すると本人に代わって行う人が必要になる。

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精神科病院入院中の成年被後見人が他科を受診するときの付添い――後見人の義務、病院との役割分担、介護保険・障害福祉・自費サービス

目次第1 結論と検討の対象第2 最初に「付添い」の内容を分ける1 移送と介助は別の機能である2 医療同意とも区別する第3 成年後見人の義務と限界1 民法858条及び859条2 最高裁平成28年3月1日第三小法廷判決3 大阪家裁後見センターだよりの整理第4 精神科病院との役割分担1 病院に最初に確認すべき事項2 他医療機関受診に関する診療上の連携3 全国一律の付添い分担規定は確認できない第5 介護保険の通院等乗降介助1 居宅が始点又は終点となることが基本である2 老健からの受診例をそのまま当てはめない3 実際の確認先第6 障害福祉サービス1 通院等介助にも居宅起点・終点の制約がある2 入院中の重度訪問介護と移送を混同しない3 65歳以上では介護保険との関係も確認する第7 地域の外出支援と自費サービス1 寝屋川市の外出援助サービス2 自費の付添いサービス3 移送部分には道路運送法上の確認が必要である第8 費用負担と後見事務の記録1 本人の必要性と財産から判断する2 記録に残す事項第9 実務上の手順1 病院との打合せ2 公的サービスの照会3 自費サービスの選定4 受診後の引継ぎ第10 判例及び一次資料の到達点第11 出典1 法令及び裁判例2 行政資料
第1 結論と検討の対象

本記事は,令和8年9月10日現在の法令及び公的資料に基づき,精神科病院に入院中の成年被後見人が整形外科等の他の医療機関を受診するとき,誰が付添いを担うのかを整理するものである。
結論からいえば,成年後見人であるというだけで,後見人本人が車椅子を押し,移動中及び待合室で見守り,診察に付き添う事実行為まで当然に行う義務を負うわけではない。
もっとも,本人が必要な診療を安全に受けられるよう,病院と必要な支援内容を確認し,利用可能なサービスを調査し,必要な契約及び支払を行うことは,後見事務となり得る。

付添い方法は,精神疾患の診断名だけで決めるべきではない。
本人ごとの歩行・移乗能力,転倒又は離院のおそれ,意思疎通の方法,服薬及び急変時の対応,入院形態並びに受診先が求める支援を確認して決める必要がある。
本記事は一般的な情報提供を目的とし,個別事案では病院,市町村,介護支援専門員及び相談支援専門員等への確認を要する。

第2 最初に「付添い」の内容を分ける
1 移送と介助は別の機能である

「病院への付添い」という一語には,複数の異なる仕事が含まれる。
少なくとも,①精神科病院から受診先までの車両による移送,②病室から車両まで及び車両から診察室までの歩行・車椅子・移乗介助,③車内及び待合室での見守り,④受付・保険資格確認・会計,⑤診察時の意思疎通支援,⑥診療情報及び処方内容の受渡し,⑦急変又は離院時の対応に分けて考える必要がある。

これらを一人又は一事業者が全部担わなければならないわけではない。
例えば,移送は許可又は登録のあるタクシー等,乗降及び待合室の支援は自費の付添い事業者,診療情報の作成及び帰院後の治療継続は入院先病院という分担も考えられる。

2 医療同意とも区別する

診察に同席して説明を聞くことと,医的侵襲に同意することは別である。
成年後見人には一般的な医療同意権がないと整理されており,後見人が付添いに行くことから直ちに手術,注射その他の医療行為への同意権が生じるわけではない。
この点は,別稿「成年後見人の医療行為の同意」で詳しく扱っている。

第3 成年後見人の義務と限界
1 民法858条及び859条

民法858条は,成年後見人が生活,療養看護及び財産管理に関する事務を行うに当たり,本人の意思を尊重し,心身の状態及び生活の状況に配慮すべきことを定めている。
同法859条1項は,成年後見人が本人の財産を管理し,その財産に関する法律行為について本人を代表することを定めている。

したがって,受診の必要性,安全な実施方法,本人の意向及び費用負担を確認し,必要なサービス契約を締結し,本人の財産から適正な費用を支払うことは,成年後見人の職務に含まれ得る。
他方,条文に「療養看護」とあることから,後見人が自ら介護職又は看護職の代わりとなり,身体介護や継続的見守りを行う義務まで直ちに導くことはできない。

2 最高裁平成28年3月1日第三小法廷判決

最高裁平成28年3月1日第三小法廷判決(平成26年(受)第1434号・第1435号)は,認知症高齢者の鉄道事故をめぐる民法714条の監督義務者責任を扱った判決である。
同判決は,民法858条が成年後見人に事実行為として本人の現実の介護を行うことや本人の行動を監督することを求めるものではない旨を判示した。

この判決は,他科受診の付添い義務を直接判断したものではない。
しかし,「身上配慮義務」と「本人に対する現実の介護・行動監督」を区別する必要があることを示す一次資料として重要である。

3 大阪家裁後見センターだよりの整理

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成年後見人の死後事務と遺骨の引取り-大阪市立斎場の保管,誓約書及び合同埋蔵(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論第2 大阪市の要綱が対象とする遺骨1 すべての身寄りのない遺骨が対象になるわけではないこと2 遺体の火葬と火葬後の遺骨は別の段階であること第3 保管から合同埋蔵までの流れ1 火葬の日から1年間の保管2 南霊園への引継ぎ3 慰霊祭と合同埋蔵4 保管中の参拝第4 誰が遺骨を引き取ることができるか1 行旅死亡人又は生活保護の取扱いによる場合2 親族による引取り3 施設長,病院長又は成年後見人等による引取り4 瓜破霊園合葬式墓地の使用許可を受けていた場合5 親族以外の関係人による引取り第5 成年後見人等が引き取る場合の注意点1 斎場使用申込時の申出を記録に残すこと2 誓約書等の内容は公開資料だけでは確定できないこと3 大阪市の引渡要件と民法上の死後事務権限を分けること4 家庭裁判所の公開案内が明示している範囲5 保佐人,補助人その他の者第6 実務上の確認事項1 斎場使用申込時2 火葬後の保管中3 南霊園への引継ぎが近い場合第7 公開資料だけでは確定できない事項1 斎場への個別確認が必要な事項2 日程を「法律上の権利行使期限」と扱わないこと3 判例の位置付け第8 出典・参考資料1 法令2 大阪市の例規及び要綱3 裁判所の手続案内4 関連記事
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

本記事は,大阪市立斎場で火葬された後,引き取る人がいないため斎場で保管される遺骨について,引渡し,保管及び合同埋蔵の流れを整理するものである。
令和8年9月9日に閲覧した大阪市の例規,要綱及び裁判所の公開資料を基準とする。
大阪市例規データベースは,内容現在を令和8年4月1日と表示している。

2 結論

大阪市の制度では,引取り手のない遺骨が直ちに合同埋蔵されるわけではない。
対象となる遺骨は斎場で一定期間保管され,所定の時点で南霊園に引き継がれた後,無縁堂に合同埋蔵される。
親族のほか,所定の場合には成年後見人等や親族以外の関係人も引取りを申し出ることができるが,申出の時期や誓約書等の条件が異なる。

大阪市の要綱に基づいて遺骨の引渡しを受けられることと,死亡後に納骨その他の契約を締結する民法上の権限があることは別問題である。
成年後見人であった人にとっては,成年被後見人が死亡した後に元後見人ができること-民法873条の2の死後事務と事務管理(AI作成)も併せて確認対象となる。

第2 大阪市の要綱が対象とする遺骨
1 すべての身寄りのない遺骨が対象になるわけではないこと

大阪市立斎場保管遺骨取扱要綱が対象とするのは,大阪市の行旅死亡人関係の細則その他これに準じる規定に基づいて大阪市立斎場で火葬され,引き取る人がいない,又は引き取る人が分からないため保管された遺骨である。
したがって,大阪市内に身寄りのない人が死亡した場合の遺骨をすべて一律に扱う要綱ではない。
実際の案件では,誰の依頼で,どの制度に基づいて,どの大阪市立斎場で火葬されたかが最初の確認事項となる。

2 遺体の火葬と火葬後の遺骨は別の段階であること

墓地,埋葬等に関する法律9条は,死体の埋葬又は火葬を行う人がいない,又は分からない場合の市町村長の対応を定めている。
これに対し,本記事で扱う大阪市の要綱は,火葬が済んだ後に斎場で保管されている遺骨の取扱いを定めるものである。
本記事では,火葬前の手続と火葬後の引取りを分けて検討する。

第3 保管から合同埋蔵までの流れ
1 火葬の日から1年間の保管

大阪市例規データベースに掲載されている大阪市行旅病人及行旅死亡人取扱法施行細則10条は,市立斎場において火葬した遺骨について,火葬の日から1年間保管し,その後に適宜の処置をする旨を定めている。
この1年という期間は,国の行旅病人及行旅死亡人取扱法ではなく,大阪市の細則に置かれた基準である。

2 南霊園への引継ぎ

大阪市立斎場保管遺骨取扱要綱2条によれば,斎場で保管している遺骨は,保管期間の経過後,最初に到来する9月1日以降に処理することが原則である。
斎場から南霊園へ遺骨と火葬許可証が引き継がれる。

「火葬から1年後に直ちに合同埋蔵される」という仕組みではなく,1年経過後の最初の9月1日が行政上の節目となる。
引取りを検討している場合は,火葬日だけでなく,この日程を斎場へ事前に確認することが重要である。

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成年被後見人が死亡した後に元後見人ができること-民法873条の2の死後事務と事務管理(AI作成)

第1 この記事の対象と結論1 対象,基準日及び他の記事との分担2 結論第2 本人の死亡で消えるもの,残るもの1 代理権は消滅する2 民法873条の2の死後事務3 民法874条が準用する654条の応急処分4 民法697条以下の事務管理5 三つの関係――873条の2は上限ではない第3 民法873条の2の柱書の要件1 「必要があるとき」2 「相続人の意思に反することが明らかなとき」3 「相続人が相続財産を管理することができるに至るまで」第4 1号及び2号――家庭裁判所の許可を要しない行為1 1号の保存行為2 2号の弁済3 払戻しが必要になった時点で3号許可が要る第5 3号許可の対象――「相続財産の保存に必要な行為」1 判定の基準2 火葬,埋葬及び納骨3 残置動産の廃棄と借家の明渡し4 後見人報酬及び後見事務費の精算5 申立ての実際第6 葬儀ができないときの経路1 3号許可の対象外とされる理由2 大阪家庭裁判所の取扱い3 事務管理による経路4 親族から依頼された場合第7 原資の確保1 死亡前の引出し2 死亡後の払戻し3 年金受給口座と残す口座第8 管理計算と引継ぎ1 管理の計算2 引継ぎは相続人1人で足りる3 相続人の調査4 受領を拒絶された場合5 相続財産管理人と相続財産清算人第9 監督,報酬及び終了登記第10 保佐人及び補助人第11 令和8年法律第45号による改正1 民法876条の26の構造2 施行日前に開始した後見の扱い第12 実務上の確認手順と停止基準1 死亡の連絡を受けた時点で確認する事項2 根拠を選ぶ順序3 高負担の手続へ進まない基準4 結論を左右し得る不確実な要素第13 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 家庭裁判所の資料4 文献5 関連記事
第1 この記事の対象と結論
1 対象,基準日及び他の記事との分担

本記事は,成年被後見人が死亡した直後に,成年後見人であった者が何を,どの根拠で,どの順序で行うことができるかを整理するものである。
調査の基準日は令和8年9月7日であり,法令は同日現在のe-Gov法令検索で確認した現行条文による。
引用する家庭裁判所の資料は平成29年から平成30年までに公表されたもの,実務書は令和5年に発行されたものであり,資料の対象期間はこの範囲である。
令和8年法律第45号による改正法は本記事の作成時点で施行されておらず,改正後の姿は第11で別に扱う。

火葬許可証の交付手続そのものは火葬許可証で,遺骨の帰属及び葬儀費用の終局的な負担者は葬儀・火葬の実施で,本人の生前に締結する契約は死後事務委任契約の効力,内容及び作成時の注意点で扱っている。
本記事はこれらと重複する説明を置かず,後見人の側の判断だけを対象とする。

この論点には,参照できる裁判例がほとんどない。
裁判所ウェブサイトの裁判例検索を令和8年9月7日に行ったところ,全文検索の語を「民法873条の2」としたときの該当件数は0件,「八百七十三条の二」としたときも0件であった。
「873条の2」では2件が該当したが,いずれも著作権に関する知的財産の事件であって条文の引用として一致したものではない。
同じ検索式で「成年後見人」を検索すると102件が該当するから,検索の仕組み自体は動いている。
裁判所ウェブサイトに掲載がないことは裁判例が存在しないことの証明にはならないが,公開されている範囲で民法873条の2の解釈が正面から争われた例は見当たらないため,本記事は条文と,家庭裁判所自身が公表した運用の説明及び実務書の記述を根拠として組み立てている。

2 結論

本人の死亡により後見は終了し,成年後見人の代理権は消滅する。
それでも元後見人が死後の事務を行うことができる根拠は,①民法873条の2の死後事務,②民法874条が準用する同法654条の応急処分,③民法697条以下の事務管理の三つに分かれる。
どの根拠で動いているかによって,家庭裁判所の許可の要否,費用の求償先及び裁判所への報告の内容が変わる。

実務上の分岐点は三つである。
第一に,凍結された預貯金口座から金銭を払い戻す必要があるかどうかであり,払戻しが必要になった時点で民法873条の2第3号の家庭裁判所の許可(以下「3号許可」という。)が必要になる。
第二に,葬儀を行うかどうかであり,葬儀は3号許可の対象とされていないため,葬儀を行うのであれば事務管理の構成によることになる。
第三に,相続人が引継ぎを受けるかどうかであり,引継ぎは相続人の1人に対して行えば足りるが,その1人すら受け取らないときは弁済供託又は相続財産管理人の選任という別の出口が要る。

第2 本人の死亡で消えるもの,残るもの
1 代理権は消滅する

民法111条1項1号は,代理権が本人の死亡によって消滅すると定める。
民法653条1号も,委任が委任者又は受任者の死亡によって終了すると定めている。
大阪家庭裁判所家事第4部後見係「大阪家裁後見センターだより」第3回(月刊大阪弁護士会2017年10月号54頁~55頁)も,後見人は被後見人の死亡により代理権等の権限を失うことを出発点として説明している。
したがって,本人が死亡した後の元後見人の行為は,いずれも例外規定の上に立つことになる。

2 民法873条の2の死後事務

民法873条の2は,「成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限」という見出しの下に,「成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」と定める。
掲げられている行為は,①相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為(1号),②相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済(2号),③その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前2号に掲げる行為を除く。)(3号)の三つである。
この規定は,成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成28年法律第27号。以下「円滑化法」という。)により新設され,平成28年10月13日に施行された。

3 民法874条が準用する654条の応急処分

民法874条は,民法654条及び655条を後見について準用する。
民法654条は,「委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない」と定めている。
条文の文言が「しなければならない」である以上,これは権限であると同時に義務であり,家庭裁判所の許可を要しない。

4 民法697条以下の事務管理

民法697条1項は,義務なく他人のために事務の管理を始めた者が,その事務の性質に従い,最も本人の利益に適合する方法によって事務の管理をしなければならないと定める。
元後見人が相続人らのために事務管理を行い,その費用を民法702条1項の有益費償還請求により清算する,という構成である。
大阪弁護士会高齢者・障害者総合支援センター編「【全訂版】成年後見人の実務2023」(大阪弁護士協同組合,2023年)131頁~132頁は,この方法によれば裁判所の許可を得る必要はなく,事後的な報告で足りるとする。
もっとも,民法697条2項及び700条ただし書があるため,相続人の意思に反する対応はできない。

5 三つの関係――873条の2は上限ではない

重要なのは,民法873条の2が従前の対応を制限する規定ではないという点である。
前記「大阪家裁後見センターだより」第3回は,円滑化法の施行以前も,後見終了時の応急処分(民法654条)や相続人全員のための事務管理(民法697条)を根拠として一定の範囲の死後事務を行うことは可能であると解されていたとした上で,円滑化法は従前から行うことのできていた行為を制限する趣旨とは解されないので,応急処分等の要件を満たす行為は施行後も家庭裁判所の許可なくして適法に行うことが可能であるとする。
前記「【全訂版】成年後見人の実務2023」128頁も,民法873条の2は保存行為の範囲内で成年後見人に権限があることを確認したものであって,これらが成年後見人の義務となるものではなく,従前の事務管理法理等による対応が否定されるものでもないと述べている。
したがって,3号許可が得られないことは,元後見人が何もできないことを意味しない。

第3 民法873条の2の柱書の要件
1 「必要があるとき」

前記「大阪家裁後見センターだより」第3回は,「必要があるとき」とは,相続人ではなく後見人が当該事務を行わなければならない場合をいうとする。
同回が挙げる例は,入院費等の支払を請求されているが,相続人の連絡先が不明で,成年後見人が支払をしないと相当期間債務の支払がされないこととなる場合である。
相続人が現に対応できる状況であれば,この要件は満たされない。

2 「相続人の意思に反することが明らかなとき」

同回は,これを,後見人が死後事務を行うことについて相続人が明確に反対の意思表示をしている場合をいうとし,相続人が不存在の場合や存否が明らかでない場合,相続人と連絡が取れない場合はこれに当たらないとする。
他方,相続人が複数いる場合には,一人でも反対の意思表示を明らかにしているときはこれに当たると考えられる旨が,同回の注に記されている。
前記「【全訂版】成年後見人の実務2023」128頁~129頁も,相続人の意思を確認することは求められていないから,相続人はいるがすぐに連絡が取れないなどの場合であれば死後事務を行うことは可能であるとする。
実務上は,「連絡が取れない」のか「反対されている」のかを,時期と方法を含めて記録の上で区別しておくことが要点になる。

3 「相続人が相続財産を管理することができるに至るまで」

同書128頁は,相続人に引継ぎができる状況となったときは速やかに引継ぎをしてその後の対応は相続人に委ねるべきであるから,死後事務を行うことができるのはそれまでに限られるとする。
民法873条の2の権限は,引継ぎまでの暫定的なものである。

第4 1号及び2号――家庭裁判所の許可を要しない行為
1 1号の保存行為

前記「【全訂版】成年後見人の実務2023」129頁は,1号の例として,相続財産に属する債権について時効の完成が間近に迫っている場合に行う時効の完成猶予のための行為(民法147条1号の裁判上の請求等)や,相続財産に属する建物に雨漏りがある場合の修繕を挙げる。
これらは特定の財産に対する保存行為であり,家庭裁判所の許可を要しない。

(続きを読む...)成年被後見人が死亡した後に元後見人ができること-民法873条の2の死後事務と事務管理(AI作成)

成年後見人のマイナンバーカード管理-電子証明書の更新・期限切れ・資格確認書(AI作成)

第1 カードと2種類の電子証明書を区別する1 用途と暗証番号の違い2 期限はカード本体と別に確認する第2 後見開始・住所変更で何が変わるか1 署名用の発行と既存証明書の失効は別問題である2 通常の住所変更と転入手続の未了を分ける第3 成年後見人による更新と暗証番号の再設定1 受付開始日と通知書の有無を確認する2 法定代理人の手続として持ち物を確認する第4 電子証明書が期限切れになったときの受診1 期限満了後の取扱いには期間と機能の制限がある2 資格確認書の交付対象と到達を確認する3 顔認証マイナンバーカードも選択肢となる第5 後見人と施設で管理方法を決める1 本人の意向・利用目的・受診手段を記録する2 カードの預かりと暗証番号の共有を分ける3 紛失したときと見つかったときの手順も決めておく第6 出典1 法令2 国・発行主体・保険者の説明資料3 自治体の手続案内4 関連記事

成年後見人がマイナンバーカードを管理する際は,カード本体と2種類の電子証明書を区別し,本人が使う機能と受診時に提示する書類を確認することが出発点となる。
電子証明書を更新する手続と,資格確認書によって受診を続ける方法を把握した上で,本人の意向や生活状況に応じて管理方法を選ぶ。

本記事は,令和8年9月4日現在(第5の3は同月11日現在)の公表資料に基づき,国内に居住する成年被後見人のマイナンバーカードを扱う。
成年後見人が法定代理人として行う手続を対象とし,保佐・補助・任意後見の個別の代理権に基づく手続は別に検討する。

第1 カードと2種類の電子証明書を区別する
1 用途と暗証番号の違い

マイナンバーカードには,署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書を搭載できる。
大阪市の電子証明書の案内と東淀川区の暗証番号の案内による用途の違いは,次のとおりである。

対象主な用途暗証番号・確認事項カード本体券面による本人確認カード自体の有効期限を確認する利用者証明用電子証明書マイナポータルへのログイン,コンビニ交付,マイナ保険証数字4桁。顔認証マイナンバーカードでは設定しない署名用電子証明書電子申請等で電子文書に署名する大文字の英字と数字を組み合わせた6~16文字

数字4桁の暗証番号には,利用者証明用のほか,住民基本台帳用及び券面事項入力補助用もある。
同じ4桁であることだけでは用途を特定できないため,窓口に相談する際は,どの暗証番号が分からないのかを伝える。

2 期限はカード本体と別に確認する

J-LISの更新案内によれば,電子証明書の有効期限は原則として発行後5回目の誕生日であり,満了まで3か月未満となった日から満了日までに更新した場合は,発行後6回目の誕生日までとなる。
ただし,J-LISのFAQが示すカード自体の有効期限等による上限もあるため,一律に「発行日から5年間」と計算せず,実際の期限を確認する。

デジタル庁の案内では,カード本体の期限は券面に印字され,電子証明書の期限は券面に記入する扱いとされている。
電子証明書の記入がない場合は,カード本体の印字された期限で代用せず,市区町村窓口で確認する方法を検討する。

第2 後見開始・住所変更で何が変わるか
1 署名用の発行と既存証明書の失効は別問題である

大阪市は,成年被後見人には署名用電子証明書を原則として発行しないと案内している。
一方,公的個人認証法15条・34条の失効事由には,後見開始そのものは独立した事由として列挙されていない。
したがって,発行に関する取扱いから,既存の証明書が後見開始だけで当然に失効すると結論付けることはできない。

署名用の発行について,横浜市は,原則不発行としつつ,本人と法定代理人が一緒に窓口で申請した場合に限り発行すると説明している。
これに対し,川崎市の案内は,成年被後見人には発行できないという表現を用いている。
案内の記載に差があるため,横浜市の説明を全国共通の受付条件とせず,申請先へ本人の来庁可否と必要な利用目的を伝えて確認する。

2 通常の住所変更と転入手続の未了を分ける

J-LISのFAQは,氏名・住所等の変更により署名用電子証明書は失効するが,利用者証明用電子証明書はその変更だけでは失効しないと説明している。
法的には,署名用について,公的個人認証法12条・15条により,所定の変更を受けた機構の失効情報の記録が失効に結び付く。

利用者証明用も,転出届を出した後,転入届を行わずに転出予定日から30日を経過した場合などは別の失効事由となる(同法31条・34条)。
施設入所に伴って住所を移す際は,通常の住所変更による影響と,転入・カード継続利用の手続が済んでいるかを分けて確認する。

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成年後見制度利用支援事業とは―後見人報酬・申立費用の自治体助成を比較する(AI作成)

第1 成年後見制度利用支援事業とは

1 制度の内容――申立費用と後見人等の報酬を市区町村が助成する
2 高齢者向けと障害者向けで法律上の位置づけが異なる

(1) 高齢者向け――介護保険法の任意事業
(2) 障害者向け――障害者総合支援法上の地域生活支援事業

第2 助成を受けられるのはどのような場合か

1 資力要件
2 対象となる申立人の範囲
3 後見人等が親族である場合の扱い

第3 実際にいくら助成されるか――7市の実例

1 報酬助成の上限額
2 申立費用の助成対象
3 申請期限に注意する

第4 自治体によってどれだけ違うか――全国調査からみる実態

1 助成制度自体がない自治体も存在する

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要介護認定の結果に納得できない場合の資料収集と争い方―認定調査票・主治医意見書・一次判定・二次判定の読み方(AI作成)

目次

第1 最初に確認すること

1 結論

2 結果だけでなく資料の流れを確認する理由

3 期間制限

第2 認定調査から処分までの資料の流れ

1 法定の手続

2 一次判定は最終結論ではない

3 処分時点と現在時点を分ける

第3 最初に集める資料

1 行政側の資料

2 大阪市の情報提供手続

3 本人側で作る資料

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令和8年成年後見制度改正で弁護士の後見業務は採算が悪化するか(AI作成)

目次

第1 結論と記事の対象

1 結論

2 この記事が扱う範囲

第2 1件当たりの継続収益を低下させる改正

1 必要な権限がなければ補助を開始しない仕組み

2 毎年の必要性確認と補助人の交代

3 任意後見監督人を選任しない場合

第3 報酬算定は令和8年改正だけでは説明できない

1 改正民法876条の19

2 令和7年4月に始まった報告書式の変更

3 報酬は二方向へ動き得る

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身元保証人等がいない場合の入院拒否は医師法19条違反か――応招義務と高齢者等終身サポート事業の規制(AI作成)

第1 この記事が対象とする問題と検索意図

1 検討の対象と時点

第2 医師法19条の応招義務と身元保証人の不存在

1 医師法19条1項の「正当な事由」
2 平成30年通知――身元保証人等がいないことのみを理由とする入院拒否
3 令和元年通知――応招義務の法的性質
4 介護保険施設における並行規律

第3 身元保証人・身元引受人・連帯保証人の法的性格

1 身元保証ニ関スル法律は入院患者に適用されない
2 入院保証書の連帯保証条項と極度額規制
3 医療同意権限との峻別

第4 身元保証等高齢者サポート事業の規制の展開

1 日本ライフ協会の経営破綻と消費者委員会の建議
2 総務省行政評価局による実態調査
3 高齢者等終身サポート事業者ガイドラインの策定
4 身元保証契約と死因贈与契約を組み合わせた契約をめぐる規律

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後見監督人とは――選任基準,職務,責任及び令和8年改正による制度再編(AI作成)

第1 後見監督人とは何か

1 この記事が扱う範囲と時点
2 後見監督人,保佐監督人,補助監督人及び任意後見監督人の関係

第2 選任の基準と実務の運用

1 条文上の選任基準
2 選任される事案の実情
3 選任率の低さという構造的な課題

第3 後見監督人の職務と権限

1 後見人の事務の監督及び後任選任の請求
2 同意権とこれを欠く行為の取消し
3 利益相反行為における被後見人の代表
4 急迫の事情がある場合の処分

第4 報酬,辞任及び解任

1 報酬
2 辞任
3 解任

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令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備(AI作成)

目次

第1 令和8年改正の対象と現在の適用関係

1 二つの法律を分けて読む必要がある
2 公布済みであるが成年後見部分は未施行である
3 改革の出発点は包括的な権利制限の縮小である

第2 法定後見を補助へ一元化する仕組み

1 判断能力の三類型から必要な権限の選択へ移る
2 三つの権限は効果が異なる
3 必要性がなくなれば能力回復前でも終了できる
4 意思尊重と任意後見の位置付けも変わる

第3 関係法律整備法が行う五つの接続

1 身分名称の削除と接続先の選択
2 民事訴訟は身分から訴訟能力の個別判断へ移る
3 会社法,信託法及び消費者契約法への影響
4 福祉,医療及び行政手続は一般的な医療同意権を設けない

第4 法律第46号が整備する61法律
第5 旧後見,旧保佐及び旧補助の経過措置

1 旧後見及び旧保佐は一律に新制度へ移らない

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移行型の任意後見契約―通常委任からの移行,濫用防止及び令和8年改正(AI作成)

目次

第1 移行型の任意後見契約とは何か

1 本記事の対象

2 二つの委任契約を組み合わせる仕組み

3 将来型及び即効型との違い

第2 現行法下での開始と終了

1 通常委任の開始

2 任意後見を開始する条件と申立て

3 任意後見監督人の選任後

4 通常委任をいつ終了させるか

第3 移行型に固有の危険

1 公的監督へ移らない移行不全

2 包括的代理権と事後検証の困難

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成年後見人の医療行為の同意(AI作成)

目次

第1 問題の所在と結論

1 本記事が扱う問題
2 結論の要旨

第2 現行法における後見人の権限と医療同意

1 民法が定める後見人の権限の範囲
2 医的侵襲への同意が代理になじまないとされる理由
3 受診の付添いと後見事務の区別

第3 行政ガイドラインが示す実務の到達点

1 身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定のガイドライン
2 意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン
3 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスのガイドライン

第4 個別の特別法における関与規定

1 精神保健福祉法の医療保護入院
2 予防接種法における保護者
3 母体保護法・臓器移植法・感染症法・医療観察法

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成年後見人の解任理由(AI作成)

目次

第1 成年後見人の解任とは

1 解任・辞任・欠格の区別
2 誰が解任を求められるか(請求権者と職権)

第2 解任事由 ― 民法846条の3類型

1 不正な行為
2 著しい不行跡
3 その他後見の任務に適しない事由
4 なぜ解任事由は限定されているか

第3 保佐人・補助人・任意後見人などへの広がり
第4 解任の手続

1 後見人の陳述聴取
2 審判前の保全処分(職務執行停止・職務代行者)
3 不服申立て(即時抗告)

第5 解任の効果
第6 数字で見る後見人の不正(最高裁の実情調査)
第7 令和8年改正による解任事由の見直し
出典

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成年後見人による横領──親族後見人と第三者後見人の比較を中心に(AI作成)

本記事は,家庭裁判所から選任された成年後見人が被後見人の財産を横領した場合の刑事・民事の責任及び監督者の責任と,その予防・是正・回復のための実務対応を,親族後見人と第三者(弁護士,司法書士,社会福祉士等の専門職)後見人の違いに着目して整理するものである。
高齢,障害又は判断能力の低下に関する記述を含むが,特定の個人又は属性を否定的に評価する趣旨はない。本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり,個別の事案に対する法的助言ではない。

目次

第1 後見人の財産管理義務と横領の責任構造

1 善管注意義務と家庭裁判所の監督
2 横領が生じさせる責任の全体像

第2 刑事責任──業務上横領罪と親族相盗例の不準用

1 罪名と適用条文
2 親族相盗例の準用を否定する最高裁決定
3 準用否定の射程と未確定の領域

第3 民事責任と被害の回復

1 損害賠償・不当利得と使い込みの利息
2 相続人による追及と回収の限界

第4 監督者の責任──後見監督人と家庭裁判所

1 後見監督人の職務と責任

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