第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日
本記事は,成年被後見人,被保佐人又は被補助人(以下「本人」という。)が死亡した後に,成年後見人,保佐人又は補助人(以下「後見人等」という。)が大阪家庭裁判所へ提出する報告書類について,提出の順序,書類ごとの作り方,期限及び誤りやすい点を整理するものである。
基準日は令和8年9月19日であり,法令は同日時点の現行条文をe-Gov法令検索で確認した。
令和8年法律第45号(民法等の一部を改正する法律)による改正後の条文は,e-Gov法令検索の未施行版と法務省が公表した法律案本文で確認した。
本人死亡後に元後見人が何をどの根拠で行うことができるか(民法873条の2の死後事務,応急処分及び事務管理)は,成年被後見人が死亡した後に元後見人ができること-民法873条の2の死後事務と事務管理で扱っている。
相続人が遺産を受け取らない場合の受領の催告,供託及び相続財産管理人の選任は,相続人が遺産を受け取らないとき――成年後見人の引継ぎ,受領の催告,供託,民法897条の2の相続財産管理人で扱う。
遺体・遺骨の引取りをめぐる親族との調整は,親族が遺体・遺骨の引取りを拒む・条件を付ける・連絡がつかないとき及び成年後見人の死後事務と遺骨の引取りで扱っている。
本記事は,これらと重複する説明を置かず,家庭裁判所に対する報告の側だけを対象とする。
2 素材とした本と,その記述の時点
素材として,大阪家庭裁判所後見センター編『大阪家庭裁判所後見センターだより』(大阪弁護士協同組合,2025年。以下「本書」という。)を用いた。
本書は,月刊大阪弁護士会に平成29年5月号から連載された「大阪家裁後見センターだより」の第1回から第41回までを再編したものであり,本記事が主に扱うのは,連載第8回(平成30年8月号初出),第19回(令和2年6月号初出),第21回(令和2年10月号初出),第22回(令和2年12月号初出)と,書記官の視点による小窓3本(連載第11回・平成31年2月号,第16回・令和元年12月号,第29回・令和4年2月号の各初出)である(本書240頁~268頁)。
本書1頁は,書籍化に当たって現在では取扱いが変わっているもの等について若干の修正や加筆をしたが,原則として初出当時の運用等を記載した記事であることに注意するよう求めている。
そこで本記事は,大阪家庭裁判所の成年後見のページ(令和8年9月19日確認)と「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(Q&A付き)」(令和8年2月1日版。以下「大阪家裁ハンドブック」という。)で現在も確認できる事項と,本書の記載にとどまる事項とを分けて書く。
なお,連載は第42回以降も続いており,第42回は本人死亡後の事務の監督を扱っているが(大阪家裁後見センターだよりの一覧参照),本書には収録されておらず,本記事の素材には含めていない。
3 結論
①本人が死亡すると後見等は終了し,後見人等の代理権は消滅するが,相続人に対しては2か月以内に管理の計算をして財産を引き継ぐ義務が残り,家庭裁判所に対しては引継ぎまでの報告が求められる。
②大阪家庭裁判所の現在の案内は,本人が亡くなったら,2週間以内に死亡診断書又は除籍謄本のコピーを添えて裁判所に亡くなった旨を連絡し,その他に必要な書類は追って送付される事務連絡に従う,というものである。
③本書が説明する流れは,死亡を証する書面の提出→死亡時3点セット(死亡時までの後見等事務報告書,死亡時を基準日とする財産目録,裏付け資料)を添付した報酬付与申立て→報酬付与審判→死後収支報告書,引継書及び引継時の財産目録の提出,である。
④本書が示す期限は,引継ぎが必要な事案で本人死亡から4か月以内,報酬付与申立てをした結果として財産が残らない事案で報酬付与審判から1か月以内,報酬付与申立てをしないで財産が残らない事案で本人死亡から2か月以内である。
ただし,大阪家庭裁判所は現在これらの期限を一般には公表しておらず,個別の事務連絡で案内するとしているから,実際の期限は事務連絡で確認する必要がある。
⑤誤りが多いのは,死亡時の財産目録の基準日を作成日にしてしまうこと,死後の収支報告書に手持現金の収支だけを書くこと,引継書別紙の財産目録に死亡時の目録を流用することである。
死亡時の財産目録の預貯金・現金の合計に死後収支報告書の収支を加減すると,引継時の財産目録の合計になるはずであり,この検算で誤りの多くは防げる。
⑥引継書,死後の収支報告書及び報酬付与申立ての書類は,大阪家庭裁判所の成年後見のページと裁判所の後見ポータルサイトに掲載されている最新の書式を使う。
⑦令和8年改正後は,後見・保佐が補助に一元化され,管理の計算は民法876条の23,死後事務は民法876条の26に規定されるが,施行日前に開始した後見・保佐は原則として従前の例による。
第2 本人の死亡で終わるものと残る義務
1 後見等の終了と代理権の消滅
代理権は本人の死亡によって消滅する(民法111条1項1号)。
本書254頁注4は,死亡と同時に法定後見が終了し,本人の権利義務は相続人に帰属し,後見人等は管理権限を失うという重大な効果が発生すると説明している。
大阪家裁ハンドブック30頁(Q21)も,被後見人が死亡した場合には後見自体が終了するとしている。
2 相続人に対する管理の計算と引継ぎ
民法870条は,「後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。」と定める。
後見監督人があるときは,後見の計算はその立会いをもってしなければならない(民法871条)。
保佐人・補助人の任務が終了した場合も,民法870条及び871条が準用される(民法876条の5第3項,876条の10第2項)。
大阪家裁ハンドブック30頁(Q21)は,死亡の時点から2か月以内に管理していた財産の収支を計算し,管理していた財産を相続人に引き継がなければならないとし,後見人自身が相続人の場合は引継ぎの事務は必要ないとしている。
同頁は,保佐人・補助人についても同様であるが,相続財産の引継ぎは被保佐人・被補助人の財産を管理する保佐人・補助人に限るとしている。
引継ぎは相続人の1人に対して行えば足りるという大阪家庭裁判所の考え方と,相続人の調査の方法は,前記の元後見人の記事第8で扱っている。
3 家庭裁判所に対する報告
家庭裁判所は,いつでも,後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求めることができ(民法863条1項),被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる(同条2項)。
この規定は保佐・補助の事務にも準用される(民法876条の5第2項,876条の10第1項)。
本書240頁によれば,大阪家庭裁判所家事第4部後見センターは,それまで本人の死亡が確認されれば監督を終了していたところ,平成30年8月1日以降に死亡した本人については,相続人等への財産引継ぎが必要な事案では原則として引継関係書類の提出までを求め,適正な引継ぎが行われたことを確認した上で監督を終了する運用に改めた。
同頁注2は,この報告とは別に,法務局に対する終了登記の申請と,相続人に対する管理計算の報告が必要であることに注意を促している。
つまり,本人の死亡後には,①相続人に対する管理計算と引継ぎ,②家庭裁判所に対する報告,③法務局に対する終了登記という,相手方の異なる3つの手続が並行する。
この運用改定の経緯は,大阪家裁後見センター――組織の位置付け,沿革及び独自の運用実務第6でも触れている。
4 法務局に対する終了登記
後見等に係る登記記録に記録されている成年後見人等は,成年被後見人等が死亡したことを知ったときは,終了の登記を申請しなければならない(後見登記等に関する法律8条1項)。
大阪家裁ハンドブック30頁(Q21)及び51頁は,終了登記は裁判所ではなく後見人等が行う手続であり,申請先は東京法務局民事行政部後見登録課に限られ,郵送する場合は書留郵便によること,手数料は無料であることを説明している。
同51頁は,終了登記とは別に,裁判所に連絡票を送付することも忘れないよう求めている。
第3 死亡直後の連絡
1 大阪家庭裁判所の現在の案内
大阪家庭裁判所の成年後見のページ(終了時の報告)は,本人が亡くなった場合は,2週間以内に死亡診断書又は除籍謄本のコピーを添えて裁判所に亡くなった旨の連絡をすること,その他に必要な書類があれば追って事務連絡を送付して連絡することを案内している。
大阪家裁ハンドブック30頁(Q21)は,被後見人の死亡事実が記載された戸籍謄本又は死亡診断書(いずれも写しでよい)を添付して,連絡票(書式集No.6-1)で報告するよう求めている。
同25頁及び41頁の「連絡すべきこと」の一覧にも,本人が死亡したときが挙げられており,添付資料は本人の死亡の記載のある戸籍謄本又は死亡診断書の写しとされている。
同ハンドブック所収の連絡票の記載例7(本人が死亡した場合)は,死亡の年月日と除籍謄本を同封する旨を書くだけの短い文例である。
2 本書の説明――「直ちに」と「連絡後2週間以内」
本書254頁は,後見人等は本人死亡の情報に接した後,直ちに死亡を証する書面(死亡診断書の写し,死亡届の写し又は除籍謄本)を後見センターに提出するよう求め,同頁注5は,直ちに提出できない場合は,まず死亡の連絡をし,連絡後2週間以内に死亡を証する書面を提出するよう求めている。
同頁注4は,死亡によって後見人等が管理権限を失うという重大な効果が生じるから,後見人等の事務を監督する裁判所(民法863条1項,876条の5第2項,876条の10第1項)としては,本人死亡の連絡を「直ちに」行うことが非常に重要であると考えていると説明する。
本書259頁注3は,除籍謄本も写しの提出で構わないと補足している。
本書267頁(小窓,連載第29回初出)は,後見人等から本人死亡の連絡票が提出されたときは,担当書記官から後見人等に対して2週間以内に死亡を証する書面を提出するよう電話で依頼することにしていると述べる。
現在の成年後見のページは「2週間以内に」コピーを添えて連絡するという言い回しであり,本書の「直ちに提出,できなければまず連絡して2週間以内に提出」とは表現が異なる。
また,本書が挙げる死亡届の写しは,現在の成年後見のページ及び大阪家裁ハンドブックの案内には挙がっていない(使えないとまで書かれているわけではない)。
実務上は,死亡を知ったらその日のうちに連絡票で死亡の事実を知らせ,死亡診断書の写しを取得次第送る,という進め方をとれば,いずれの表現にも沿うことになる。
第4 その後の書類を決める三つの分岐
1 三つの分岐
本書244頁は,本人死亡後の裁判所への報告の内容及び提出期限は,①相続人等への引継ぎが必要か否か,②報酬付与の申立てを行うか否か,③相続人等へ引き継ぐべき財産が残存するか否かによって異なるとしている。
本書246頁には,この分岐をフローチャートにした【別表1】(後見人等用)と【別表2】(監督人用)が掲載されている。
2 引継ぎが不要な場合
本書241頁によれば,後見人等自身が相続人である場合や,保佐・補助類型で財産管理に関する代理権が付与されていない場合は,相続人等に対する財産の引継ぎが予定されていないので,死亡を証する書面の提出により後見事務は終了し,引継関係書類の提出も不要である。
ただし,報酬付与の申立てを行う場合は,後記第5の死亡時3点セットを提出する(同頁)。
同頁注3は,後見人等自身が相続人である場合として,弁護士が後見監督人として選任されている事案が想定されるとしている。
大阪家裁ハンドブック30頁(Q21)も,後見人自身が相続人の場合は引継ぎの事務は必要ないが,相続人の立場で相続手続は行う必要があるとしている。
3 本書が示す期限
本書242頁~243頁,254頁~255頁,259頁~260頁及び268頁が示す提出書類と期限は,次のとおりである。
| 場面 | 提出する書類 | 期限 | 本書の頁 |
|---|---|---|---|
| 死亡直後 | 死亡を証する書面 | 直ちに(できなければ連絡後2週間以内) | 254頁,267頁 |
| 報酬付与申立てをする場合 | 死亡時3点セットを添付した報酬付与申立て | 速やかに | 241頁~242頁,254頁~255頁 |
| 報酬付与審判後に財産が残る場合 | 死後収支報告書,引継書,引継時の財産目録 | 本人死亡から4か月以内 | 242頁~243頁,255頁,268頁 |
| 報酬付与審判後に財産が残らない場合 | 死後収支報告書 | 報酬付与審判から1か月以内 | 243頁,260頁,268頁 |
| 報酬付与申立てをせず財産が残る場合 | 死亡時3点セット,死後収支報告書,引継書,引継時の財産目録 | 本人死亡から4か月以内 | 243頁,255頁 |
| 報酬付与申立てをせず財産が残らない場合 | 死亡時3点セット,死後収支報告書 | 本人死亡から2か月以内 | 243頁,259頁 |
本書243頁は,4か月以内という期限は,原則として本人死亡から4か月の間に最後の報酬の付与を経て相続人等への引継ぎを完了する必要があることを意味すると説明している。
弁護士が後見人等に選任されている事案では,ほとんどの事案で報酬付与を申し立てることになると思われるとされているから(本書241頁),実務上重要なのは,財産が残る場合の「本人死亡から4か月以内」と,財産が残らない場合の「報酬付与審判から1か月以内」である。
「本人死亡から2か月以内」は,報酬付与申立てをしない場合に限られる点に注意を要する。
4 現在の期限は事務連絡で確認する
大阪家庭裁判所の成年後見のページは,死亡の連絡の後に必要な書類は追って事務連絡で連絡するとしており,上の表の期限を一般には公表していない。
大阪家裁ハンドブック30頁(Q21)にも,家庭裁判所への報告の期限は書かれていない。
本書268頁(小窓,連載第29回初出)も,死亡を証する書面の提出後は,裁判所から所定の事務連絡を送付して,その後の事務の流れや期限を案内しているとした上で,代表的なパターンを説明するという形をとっている。
したがって,上の表は,事務の段取りを組むための目安として用い,個々の事件の期限は,死亡の連絡の後に届く事務連絡で確認する必要がある。
裁判所の後見ポータルサイトも,本人の判断能力が回復した場合又は本人が亡くなった場合の終了報告書等は,各家庭裁判所において必要な書式を準備しているため,監督している家庭裁判所に連絡し,指示を受けるよう案内している。
令和7年4月から全国統一書式となった初回報告・定期報告と異なり,終了時の報告は各家庭裁判所の運用に委ねられているということである。
第5 死亡時3点セットと報酬付与申立て
1 死亡時3点セットの中身
本書241頁~242頁は,報酬付与の申立てに当たっては,①報酬付与申立書,②事情説明書に加え,③本人の死亡時を報告基準日とした財産目録(死亡時財産目録),④死亡時までの後見等事務報告書,⑤財産目録の裏付けとなる預金通帳の写し等の資料を提出するよう求め,③から⑤までの3点をまとめて「死亡時3点セット」と呼んでいる。
本書255頁及び259頁は,後見等事務報告書の対象期間を「前回の定期報告時~死亡時」と明示している。
本書265頁(小窓,連載第16回初出)は,監督人が選任されている事案では監督事務報告書も必要であるとしている。
2 後見等事務報告書は定期報告と同じ書式で作る
本書260頁~261頁によれば,死亡時3点セットの後見等事務報告書は,本人死亡前の定期報告と同じ書式で作成する。
後見センターは,前回の定期報告時から死亡時までの後見人等の事務も監督しており,その監督はそれ以前の定期報告と同じ方法で行われるからである。
同頁は,他の家庭裁判所の書式や古い書式を使うと,定期収支の変更や10万円以上の臨時収支の存在といった監督に必要な事項が漏れ,報告書の再提出,電話による聴取り又は資料の追完が必要になり,審査に時間がかかると注意している。
本書265頁(小窓)も,運用開始前に各自で使われていた「終了報告書」は,多くが本人死亡日と引継状況だけの記載であり,前回報告から本人死亡時までの定期収支の変動や臨時収支の有無の記載がないため,再提出が必要になるとしている。
大阪家庭裁判所の定期報告の書式は,令和7年4月から後見ポータルサイトの全国統一書式に変わった。
現在の成年後見のページは,報酬付与申立てに必要なものとして,後見ポータルサイトにある申立書,報酬付与申立事情説明書,後見等事務報告書及び財産目録を挙げ,本人が亡くなった場合には誕生日の属する月に関係なく速やかに申し立てるよう求めている。
大阪家裁ハンドブック所収の統一書式の後見等事務報告書にも,定期収入・定期支出で変化がある費目と,1回につき10万円以上の臨時収入・臨時支出の有無を答える欄があり,本書が漏れやすいとした事項は現在の書式でも問われている。
統一書式の書き方は,令和7年4月全国統一書式による後見等事務報告書・報酬付与申立事情説明書の書き方で扱っている。
本書266頁(小窓)は,報告全般の注意として,収支予定表に計上済みの定期収支を臨時収支として二重に計上しないことも挙げている。
3 財産目録の基準日は死亡時
本書242頁は,死亡時3点セットは通常の報告時に提出を求めているものと大きく変わらないが,基準時を死亡時点として作成するよう求め,特に現金は死亡時点での金額を把握して記載するよう求めている。
死亡時の前後で後見人等の権限が大きく異なるため,死亡時点における本人の財産状況を把握する必要があるからである(本書242頁,261頁)。
本書261頁は,死亡時財産目録の中に,作成日など死亡時以外の日を基準日とするものや,死亡時を基準日としながら記載された預貯金等の額が死亡時以外の時点のものになっているものがしばしば見られ,後見センターで額を引き直して計算しなければならなくなると指摘している。
本書264頁(小窓,連載第11回初出)も,財産目録の作成日を基準時とした事例が散見されると注意している。
本書266頁(小窓)は,財産目録の「記帳を確認した日」欄には実際に記帳を確認した日を書き,定期預金も記帳確認をするよう求めている。
実務上は,本人の死亡を知った段階で手持現金を数えて記録し,死亡日の翌日以降に通帳記帳をして死亡日時点の残高を特定しておくと,死亡時財産目録を正確に作りやすい。
本人の死亡前後は現金による臨時支出が生じることが多いため(本書244頁),死亡日をまたぐ現金の出入りは現金出納帳で区別しておく必要がある。
4 報酬付与申立ての時期と費用
本書254頁注6は,報酬等を精算した後に相続人へ本人財産を引き継ぐ後見人等が多いところ,相続人に対する管理計算報告義務の履行期限が原則として死亡後2か月であること(民法870条)からすると,報酬付与の申立ては速やかに行う必要があるとし,後見センターでは死後1か月ないし1か月半程度で報酬付与申立てがされる例が多いと述べている。
本書241頁注4は,報酬付与の申立てを相続人等への引継ぎより前にすることを想定しているのは,付与を受けた報酬及び事務費等を精算した上で残余財産を引き継ぐことが多いと思われるからであると説明している。
現在の大阪家庭裁判所の成年後見のページによれば,報酬付与申立てに必要な費用は,収入印紙800円分と郵便切手110円分である。
報酬の額の目安と申立ての一般的な手続は,成年後見人等の報酬額の目安――大阪家裁の基準,令和7年全国実績及び申立手続で扱っている。
5 死後事務についての付加報酬
本書242頁注5は,本人死亡後,報酬付与の申立ての時点までに何らかの死後事務を行った場合には付加報酬の付与を検討することになり,付加報酬を求める場合には,事情説明書に行った死後事務の内容を記載し,裏付け資料と共に提出するよう求めている。
本書255頁注6は,後見センターでは死後事務を付加報酬の事由として掲げており,本人財産の引継前に報酬付与の申立てがされた場合には,予想される死後事務の内容に基づいて付加報酬を算定する扱いも行っていると述べている。
大阪家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」(令和7年4月)は,後見等事務において特に労力を要するものがあった場合には相当額の報酬を付加することがあるとするにとどまり,死後事務を個別に挙げてはいない。
予想される死後事務に基づく付加報酬の算定という扱いは,本書(令和2年10月号初出)の記載にとどまり,現在の公開資料では確認できない。
第6 死後収支報告書
1 書式
大阪家庭裁判所の成年後見のページの「終了時の報告」欄には,「収支報告書」として,「収支報告書(死亡後)」(R041001)の書式が掲載されている。
この書式は,基本事件番号と本人の氏名を記入し,後見センター,堺支部又は岸和田支部を宛先として選び,「本人の死亡後の収支の内容について下記のとおり報告します。」との文言の下に,年月日,収支の内容,収入,支出及び備考・資料番号の各欄と合計欄を設けたものである。
本書266頁(小窓)は,基本事件番号とは,後見・保佐・補助では現在の類型に係る開始事件番号を指し,後見等の開始後に立件された後見人等選任事件の番号は基本事件番号ではないと注意している。
2 死亡時から引継時までの全ての収支を書く
本書261頁~262頁は,死後収支報告書には,後見人等の手持現金の収支か本人の預貯金の収支かを問わず,死亡時から引継時(又は財産がなくなった時)までの全ての収支を記載するよう求めている。
本人の死亡により後見人等は本人財産の管理権限を失い,本人の財産は原則として変動が予定されないから,全収支の報告が必要になるという理由である(本書261頁)。
同262頁は,手持現金の収支だけを掲げるなど,収支の一部しか掲げていない報告書がしばしば見られると指摘している。
死亡後の収支としては,例えば,死亡直前の入院費・施設利用料の支払,火葬費用の支払,後見人等の報酬の受領,後見事務費の精算,年金の返還,未支給分の入金等が考えられる。
本人の死亡後に口座に振り込まれた年金や,自動引落しが止まる前に引き落とされた公共料金も「収支」であるから,後見人等が自ら動かした金銭だけでなく,通帳上の全ての動きを拾う必要がある。
3 5万円を超える収支の裏付け資料
本書242頁,255頁及び268頁は,5万円を超える収支については裏付け資料を添付するよう求めている。
この金額基準は,定期報告の「1回につき10万円以上の臨時収支」とは異なるので混同しないようにする。
5万円という基準は本書の記載であり,現在の成年後見のページ及び収支報告書(死亡後)の書式には書かれていない(書式には備考・資料番号の欄がある。)。
4 財産が残らない場合
本書243頁は,報酬付与審判後,報酬を含む債務を清算した結果,相続人等に引き継ぐべき本人の財産が残らない場合には,引継ぎを行う必要がないので引継書の提出は不要であり,本人の死亡時以降本人財産が0になるまでの収支を全て記載した収支報告書を,報酬付与審判から1か月以内に提出するよう求めている。
本書255頁注8も,後見事務費や報酬等を精算した後に本人財産がなくなった場合は,引継書及び引継書別紙の財産目録は提出不要であるとしている。
財産が残らない事案で相続人がいない場合の終わらせ方(少額の残余財産の扱い等)は,相続人が遺産を受け取らないとき――成年後見人の引継ぎ,受領の催告,供託,民法897条の2の相続財産管理人で扱う。
第7 引継書と引継時の財産目録
1 引継書の書式
大阪家庭裁判所の成年後見のページの「終了時の報告」欄には,「引継書【R6/9/2】」が掲載されている。
この書式(別紙4-1,R060902)は,基本事件番号,日付,引継ぎを受けた者の住所,亡くなった本人との続柄及び氏名を記入し,相続人が署名・押印する形式であり,本文は,亡本人の成年後見人等であった者から「別紙財産目録記載の遺産の引継ぎを受けました。」というものである。
本書245頁は,本書に掲載した書式は令和6年6月時点のものであるとし,必ず後見センターのウェブサイトに掲載されている最新の書式を利用するよう求めている。
本書247頁に掲載された引継書【書式2-1】も相続人が署名・押印する形式であるが,現在の書式はその後の令和6年9月2日付けのものである。
本書262頁は,後見センターでは引継書の署名・押印をもって,相続人に相続財産が引き継がれたか否かを確認しているとしている。
引継書は相続人が作成する書面であるから,引き継ぐ際に署名・押印をしてもらえるよう,事前に書式を相続人に送っておくのが通常の段取りになる。
2 引継ぎの相手が相続人であることの説明
本書262頁は,本人の推定相続人については後見等の開始申立時に親族関係図等を提出してもらっているが,後見センターにはそれ以外の資料がないことが多いため,後見等の開始後に新たに推定相続人が判明した場合や推定相続人の範囲が変動した場合には,引継相手が本人の相続人であるか否かが判明しないことがあると説明する。
そのため同頁は,後見等の開始後に新たに判明した相続人に相続財産を引き継ぐ場合には,相続関係図を添付して本人とその相続人との関係を説明するよう求めている。
同頁注9は,戸籍謄本等の客観的な資料の提出までは必須ではないが,担当裁判官の判断により提出を求めることもあるとしている。
本書255頁注9は,例えば,甥姪に引き継ぐ際に,後見等開始時の記録では甥姪の親(本人の兄弟姉妹)が死亡した事実が確認できない場合には,引継相手が相続人であることを証する資料の提出を求めることがあるとしている。
大阪家庭裁判所の成年後見のページには,相続財産の保存に関する処分の申立て用の書式の一つとして「相続関係図」の様式も掲載されている。
3 引継書別紙の財産目録は引継時が基準日
本書262頁は,引継書には,別紙として「引継時」を基準日とする財産目録を添付するよう求めている。
相続人に実際に引き継がれた財産の内容を確認するためである。
同頁は,引継書別紙の財産目録の基準日が引継時以外の日(例えば死亡時。死亡時3点セットの財産目録をそのまま添付したものと思われる。)となっているものや,引き継がれた預貯金通帳等の名称しか書かれておらず残高の記載がないものがしばしば見られると注意している。
現在の成年後見のページの「終了時の報告」欄には,引継書と収支報告書(死亡後)が掲載されているだけで,引継書別紙の財産目録専用の書式は掲載されていないから,どの様式を使うかは事務連絡の指示に従うことになる。
4 三つの書類の検算
本書263頁は,①死亡時3点セットの財産目録の基準日は「死亡時」,②死後収支報告書には「死亡時」から「引継時」までの全ての収支が記載され,③引継書別紙の財産目録の基準日は「引継時」であるから,①に記載された預貯金・現金の合計額に②に記載された収入・支出を加算・減算すれば,③に記載された預貯金・現金の合計額になると説明している。
そして,引継書の作成や後見センターへの報告に際して後見人等自身がこれを確認すれば,本人死亡後の報告に関するミスを防ぐことができるとしている。
例えば,死亡時の預貯金・現金の合計が300万円で,死亡後に年金の入金5万円があり,入院費20万円,火葬費用15万円,後見人等の報酬40万円及び後見事務費2万円を支払った場合,引継時の預貯金・現金の合計は228万円になるはずである。
一致しないときは,死亡時の現金額の誤り,死後収支報告書の記載漏れ,又は引継時の目録の基準日の誤りのいずれかを疑うことになる。
本書263頁は,こうしたミスがあると,本人死亡後の後見人等への報酬の処理に時間を要することがあるとしている。
5 引継ぎの際の実務上の注意
本書264頁(小窓,連載第11回初出)は,後見人等からの質問への回答として,①相続人が引継ぎに応じない場合の通帳は,それ自体に財産的価値はなく権利を徴表する書類にすぎないから,一定期間経過後(法令上の保管期間経過後)に廃棄して差し支えない,②債務の弁済は本来的に相続人の義務であるから,後見人等が未払債務を清算しなければ相続人に引き継ぐことができないものではない,としている。
本書256頁は,引継相手の相続人による使込みを防ぐためにも,引継ぎに際しては現金を預貯金口座に預け入れ,口座を凍結するのが無難かと思われるとしている。
本書242頁注6は,第三者に対する債務等の弁済は本来的には相続人が行うべきものであり,後見人が清算義務を負うものではないと注記している。
第8 4か月以内に引継ぎが終わらないとき
1 進捗状況の報告
本書243頁は,相続人との連絡や引継ぎが円滑に進んでいないなど,何らかの事情で引継関係書類を提出できない場合には,本人死亡から4か月の時点で,その時点における進捗状況の報告書を提出するよう求めている。
本書255頁も,死亡後4か月以内の提出が難しい場合は,必ずその理由を後見センターに報告するよう求めている。
2 連絡がないときの口座凍結の指示
本書255頁注10は,死亡後4か月以内に何も連絡がない場合,後見センターとしては,後見人等による本人財産の使込みのリスクも考慮し,民法863条2項の「必要な処分」として,金融機関に対し口座を凍結するよう指示せざるを得ない場合もあるとしている。
この扱いは本書(令和2年10月号初出)の記載であり,現在の公開資料では確認できないが,期限を過ぎても何も報告しないことが家庭裁判所の側からどう見えるかを示すものとして重要である。
引継ぎが遅れている事情があるなら,期限内に連絡票で理由と見通しを報告しておくべきである。
3 相続人間の紛争で合意を待つ場合の中間報告
本書256頁は,相続人間の紛争が顕在化している事例について,事実上のトラブルを回避するなどの目的で,相続人間で合意が整うのを待ってから引継ぎを行う取扱いも後見センターは否定していないとする。
しかし,合意が整うまで相続人に何の管理計算報告もしないと,一部の相続人から,後見人等が他の相続人に財産を引き渡したのではないかなどの疑念が示されることもある(同頁)。
そこで同頁は,合意を待つ場合であっても,引継ぎに先立って,口座凍結時など今後は収支が変動しないと考えられる時点の財産目録,死亡時からその目録作成時までの収支報告書及び5万円を超える収支の裏付け資料を後見センターに提出するとともに,知れたる相続人全員にこれらの資料を送付することを検討するよう求めている。
同頁注12は,こうすることで相続人の疑念を一定程度和らげ,後見人等の中立性・透明性を証明することにもつながる場合があるとしている。
相続人間の紛争のために引継ぎができない場合に相続財産管理人の選任を申し立てる手順は,相続人が遺産を受け取らないとき――成年後見人の引継ぎ,受領の催告,供託,民法897条の2の相続財産管理人で扱う。
4 長期間が経過した後の相続債務の弁済
本書257頁は,後見人等が本人死亡後長期間経過後に相続債務を弁済することは原則として望ましくないと考えているとし,速やかに,死亡直前の医療費・住居費,火葬・埋葬費用など弁済期が到来した相続債務のうち必要最小限のものを弁済し,報酬と後見事務費を精算して,相続人,相続財産管理人(民法897条の2第1項)又は相続財産清算人(民法952条)に相続財産を引き継ぐよう求めている。
死後事務の終期に関する同頁の説明は,前記の元後見人の記事第3の3の論点に関わるものであり,本記事では,報告の期限を守ることと,死後事務を必要最小限にとどめることが同じ方向を向いているという点だけを指摘しておく。
第9 死後事務の許可申立てと報告との関係
1 3号許可の申立て
成年後見人は,本人の死亡後,必要があるときは,相続人の意思に反することが明らかなときを除き,相続人が相続財産を管理することができるに至るまで,「その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為」をすることができるが,これには家庭裁判所の許可を得なければならない(民法873条の2第3号,同条ただし書)。
大阪家庭裁判所の成年後見のページによれば,この許可の申立てには,後見ポータルサイトの申立書(申立事情説明書を含む。),収入印紙800円分(1つの申立書で2つ以上の行為の許可を求める場合も800円),郵便切手110円分及び死亡診断書(死体検案書)のコピー又は本人の死亡の記載がある戸籍謄本(連絡票等で提出済みなら不要)が必要である。
許可を求める行為ごとの資料は,火葬又は埋葬に関する契約の締結と電気・ガス・水道の供給契約の解約は疎明資料不要,施設等に残置していた動産等の寄託契約の締結は寄託契約書(案)のコピー,債務弁済のための預貯金の払戻しは預貯金通帳(表紙,見開き及び申立て時点の残高が記載された頁)のコピーと債務の存在を裏付ける資料(費用明細や請求書のコピー等)とされている。
3号許可で払い戻した金銭や,それで支払った債務は,死後収支報告書に記載する収支になる。
2 許可を得なかったことが当然に違法となるわけではない場面
本書250頁(連載第19回初出)は,成年後見人が応急処分(民法874条,654条)や事務管理(民法697条)を根拠として死後事務を行うことは民法873条の2の新設後も否定されないとした上で,時間的制約等により3号許可を得ずに火葬契約等を締結した場合でも当然に違法となるわけではなく,大阪家庭裁判所でこれを違法視・問題視した事案も報告されていないとし,この点を誤解した3号許可の申立てが散見されると注意喚起している。
同頁は,預貯金口座がまだ凍結されていない場合の払戻しについても,応急処分等の要件を満たせば権限があり,3号許可を得ずに払い戻しても当然に違法となるわけではないとしている。
このような場合でも,死後収支報告書には全ての収支を記載し,5万円を超えるものには裏付け資料を付けることになるから,許可を経ない支出ほど,領収書等の資料を確実に残しておく必要がある。
3号許可の要否の考え方の詳細は,前記の元後見人の記事第4・第5で扱っている。
3 払戻しを求める金額は債務額に限る
本書251頁は,①請求書等の提出資料から認められる債務額を上回る払戻しを求める申立てや,②資料の提出なく今後必要となると予想される概算額の払戻しを求める申立てについて,裏付けのない債務は「相続財産の保存に必要な行為」の対象とはいいにくいから,原則として認めることができないとし,今後弁済する債務を認めるに足りる資料を提出し,払戻しを求める金額をその債務の額に限定するよう求めている。
現在の成年後見のページが債務の存在を裏付ける資料の提出を求めているのも,これと整合する。
4 報酬の精算のための払戻し
本書251頁~252頁は,報酬付与の審判を受けた時点では,後見人報酬を直ちに精算しなければ相続財産が減少するとは考えにくいとしつつ,報酬も履行の請求をすれば遅滞に陥り遅延損害金が発生するから(民法412条3項),精算のための払戻しは3号許可の対象となる「相続財産の保存に必要な行為」に当たるとし,申立てに際してはあらかじめ相続人に報酬を請求しておくのが無難であるとしている。
同252頁は,相続人が請求を受けたのに支払わないというだけでは「相続人の意思に反することが明らかなとき」に当たらないとし,同頁注7は,相続人が支払を明確に拒絶している場合は同要件に当たるとみられるが,報酬の額は家庭裁判所の審判によって定められたものであるから,相続人がこれを免れるために同要件への該当性を主張することは権利の濫用に当たるとして3号許可が認められる可能性もあろう,としている。
報酬付与審判の後に報酬を受け取るための段取りであるから,報酬付与申立ての時点で,本人の口座が凍結されているか,相続人に報酬を請求できる状況にあるかを確認しておく必要がある。
5 保佐人・補助人の場合
民法876条の5第3項及び876条の10第2項は,保佐人・補助人の任務が終了した場合に民法654条,655条,870条,871条及び873条を準用するが,民法873条の2は準用していない。
本書252頁~253頁は,保佐人・補助人は火葬契約等について3号許可を得ることはできず,これまでどおり応急処分等を根拠として行うことになり,大阪家庭裁判所でこれを違法視・問題視した事案は報告されていないとする。
凍結された口座の払戻しについては,民法897条の2第1項本文の「相続財産の保存に必要な処分」として払戻しを命ずる審判を得る方法があり,成年後見人であれば3号許可が認められるような事案であれば認められることが多いと考えられるとしている(本書253頁)。
ただし,民法897条の2第1項ただし書は,相続人が1人である場合においてその相続人が単純承認をしたとき,相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき,又は相続財産の清算人が選任されているときは,同項の処分を命ずることができないとしている。
第10 後見等監督人が選任されている場合
1 書類は監督人を経由する
本書244頁は,後見等監督人が選任されている事案でも,原則として引継関係書類を確認した上で監督を終了することに変わりはないが,死亡時3点セット及び引継関係書類は,まず後見人等から監督人に提出され,監督人がこれを精査した上で,監督事務報告書を添付して監督人から後見センターに提出されることを予定しているとしている。
後見人等自身が相続人である場合に引継関係書類の提出を要しないことは監督人が選任されていても同様であり,この場合は報酬付与申立ての際に死亡時3点セットを提出すれば足りる(同頁)。
後見監督人があるときの後見の計算は,その立会いをもってしなければならない(民法871条)。
2 監督人が確認すべきこと
本書244頁は,弁護士が,相続人以外の親族後見人や第三者後見人等の監督人に選任された場合には,後見人等に対して死亡後の事務の流れを説明するとともに必要な資料の提出を求め,本人の死亡時までの後見等事務及び相続人等への財産引継ぎまでが適正に行われているかを確認する必要があるとしている。
同頁は,本人の死亡前後は現金による臨時支出が生じることも多いため,現金については現金出納帳による管理を行うよう指導した上,通帳原本のみならず領収書類等の原本も適宜確認するよう求めている。
監督人の職務の全体は,後見監督人とは――選任基準,職務,責任及び令和8年改正による制度再編で扱っている。
第11 本書の記述のうち現在は変わった点と確認できない点
1 変わった点
①定期報告の後見等事務報告書と財産目録は,令和7年4月から全国統一書式となった。
本書が死亡時3点セットの報告書を「定期報告と同じ書式」で作るとしているのは,現在では後見ポータルサイトの統一書式を指すことになる。
②引継書は,本書掲載の令和6年6月時点の書式の後,令和6年9月2日付けで改訂された書式が大阪家庭裁判所の成年後見のページに掲載されている。
③死亡の連絡について,現在の成年後見のページは「2週間以内に」死亡診断書又は除籍謄本のコピーを添えて連絡するという表現をとっており,本書が挙げる死亡届の写しは現在の案内には挙がっていない。
④本書は,連載当時の民法918条2項の相続財産管理人と952条の相続財産管理人を,書籍化に当たって民法897条の2第1項の相続財産管理人と952条の相続財産清算人に読み替えている(本書242頁,244頁,257頁)。
一方,大阪家裁ハンドブック30頁(Q21)は「相続人がいない時は、相続財産管理人の選任の申立て」と書いており,民法952条の現在の名称は「相続財産の清算人」であるから,読み替えて理解する必要がある。
⑤本書が「後見サイト」と呼ぶ大阪家裁後見センターのウェブサイトは,現在は大阪家庭裁判所の成年後見のページとして公開されている。
2 現在の公開資料では確認できない点
次の事項は本書に記載があるが,大阪家庭裁判所の成年後見のページ,大阪家裁ハンドブック及び後見ポータルサイトでは確認できなかった。
①本人死亡から4か月以内,報酬付与審判から1か月以内,本人死亡から2か月以内という各期限(現在は事務連絡で個別に案内される。)
②5万円を超える収支に裏付け資料を付けるという基準
③4か月以内に連絡がない場合の口座凍結の指示
④連絡票の提出後に書記官が電話で2週間以内の提出を依頼する扱い
⑤死後1か月ないし1か月半程度で報酬付与申立てがされる例が多いという実情と,予想される死後事務に基づく付加報酬の算定
⑥引継ぎが困難な事案で合意を待つ場合の中間報告と相続人全員への送付
これらは,本書の初出当時の大阪家庭裁判所の運用として参照し,個別の事件では事務連絡と,必要に応じ連絡票での問合せによって確認することになる。
第12 令和8年改正後の扱い
1 補助への一元化と終了時の条文
令和8年法律第45号による改正後の民法では,後見と保佐が廃止されて補助に一元化され,補助人の任務の終了に関する規定が新たに置かれる。
改正後の民法876条の23は,「補助人の任務が終了したときは、補助人又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「補助の計算」という。)をしなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。」と定め,改正後の民法876条の24は,補助監督人があるときは補助の計算にその立会いを要するとする。
改正後の民法876条の22は,同条並びに876条の23及び876条の25にいう「補助人」を,改正後の民法11条1項の代理権を付与する旨の審判を受けた者に限っているから,管理の計算の義務を負うのは代理権を持つ補助人である。
これは,財産管理に関する代理権のない保佐人・補助人には引継ぎの事務がないという現在の大阪家庭裁判所の扱い(本書241頁,大阪家裁ハンドブック30頁)と同じ方向の整理である。
家庭裁判所の監督(改正後の民法876条の20)と報酬(改正後の民法876条の19)の規定も補助の節に置かれ,改正後の民法876条の21は,補助人が毎年1回一定の時期に家庭裁判所に報告しなければならないと定める。
2 死後事務の規定
改正後の民法876条の26第1項は,補助人は,本人が死亡した場合において必要があるときは,家庭裁判所の許可を得て,その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結をすることができると定める。
同条2項は,相続人の意思に反することが明らかなときを除き,相続人が相続財産を管理することができるに至るまで,①相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為,②弁済期が到来した相続債務の弁済,③その他相続財産の保存に必要な行為(家庭裁判所の許可が必要)をすることができるとするが,これらは「当該死亡した時における権限内の行為に限る」とされている。
改正後の民法876条の27は,民法654条及び655条を補助について準用する。
したがって,死後事務と家庭裁判所への報告の関係という本記事の枠組みは,改正後も補助人について基本的に維持されると考えられるが,家庭裁判所がどのような報告書類と期限を定めるかは,施行に合わせて改めて確認する必要がある。
3 施行日と経過措置
改正法の成年後見に関する部分は,公布の日(令和8年6月24日)から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行され,基準日現在は未施行であり,施行日を定める政令も公布されていない(改正法附則1条)。
改正法附則2条1項は,施行日前に後見開始の審判がされた場合の成年被後見人並びにその成年後見人及び成年後見監督人に関する民法の規定の適用については,附則に特別の定めがある場合を除き,なお従前の例によると定め,附則3条1項は保佐について同様に定める。
したがって,施行日前に開始した後見・保佐の本人が施行後に死亡した場合も,後見の計算(民法870条)や死後事務(民法873条の2)は現行の規定によることになると考えられる。
他方,改正法附則4条1項は,施行日前にされた補助開始の審判は施行日以後は改正後の補助開始の審判とみなすとしているから,既存の補助人には,施行日以後は改正後の民法876条の23や876条の26が適用されると考えられる。
改正の全体像は,令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で扱っている。
第13 出典・参考資料
1 法令
民法(111条,412条,654条,655条,863条,870条,871条,873条の2,874条,876条の5,876条の10,897条の2,952条) e-Gov法令検索
後見登記等に関する法律(8条) e-Gov法令検索
民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)による改正後の民法(876条の19~876条の24,876条の26,876条の27)及び同法附則1条~4条 e-Gov法令検索(民法・未施行版)
法務省「民法等の一部を改正する法律案」(法律案本文) 法務省
2 公的資料
大阪家庭裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)」(終了時の報告,報酬付与申立て,成年被後見人の死亡後の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為についての許可の申立て,相続財産の保存に関する処分の申立て) 裁判所
大阪家庭裁判所「引継書【R6/9/2】」 裁判所
大阪家庭裁判所「収支報告書(死亡後)」 裁判所
大阪家庭裁判所「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック(Q&A付き)」(令和8年2月1日版)25頁,30頁,40頁~41頁,51頁,書式集(連絡票の記載例,後見等事務報告書) 裁判所
大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(令和7年4月) 裁判所
裁判所「後見ポータルサイト」(成年後見人・保佐人・補助人(これらの監督人)に選任された方へ) 裁判所
大阪家庭裁判所家事第4部(後見センター)「本人死亡後の後見等監督に関する運用について」(平成30年7月13日) 本サイト掲載のPDF
3 文献
大阪家庭裁判所後見センター編『大阪家庭裁判所後見センターだより』(大阪弁護士協同組合,2025年)1頁,240頁~268頁
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