第1 この記事が扱う対象と時点
令和8年9月16日の第6回「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で,国税庁事務局は,現行の土地保有特定会社と株式等保有特定会社を「資産管理会社」に整理統合し,事業承継税制の資産保有型会社・資産運用型会社を参考にした形式基準により帳簿価額で判定した上で,純資産価額方式で評価する案を示した(第6回資料20頁)。
あわせて,純資産価額方式そのものについても,退職給付引当金を負債とする方向や,議決権割合50%以下の同族株主グループに属する株主等の20%評価減を「廃止せざるを得ないのではないか」とする考え方が示されている(第5回当日机上配付資料8頁)。
いずれも国税庁事務局のたたき台であり,決定した改正ではない。
本記事は,有識者会議の資料のうち,特定の評価会社,資産管理会社及び純資産価額方式に関する部分を取り上げ,現行の財産評価基本通達と対比して整理するものである。
基準日は令和8年9月19日現在であり,第6回会議の議事要旨は本記事の作成時点で公表されていない。
第5回の当日机上配付資料「取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」(以下「骨子」という。)は,見直し内容のほか評価水準・税負担の在り方等も含め「最終的には税制改正プロセスにおいて決定いただく」としている(骨子1頁)。
本記事で紹介する基準や割合は,いずれも今後変わり得る。
有識者会議の全体像は,親記事の取引相場のない株式の評価に関する有識者会議で扱っている。
第2 現行の特定の評価会社と資産管理会社の株式評価
1 財産評価基本通達189が定める6つの区分
現行の財産評価基本通達189は,「特定の評価会社の株式」を,評価会社の資産の保有状況,営業の状態等に応じて定めた会社の株式とし,次の6区分を置いている。
各区分の評価方法は,同通達189-2から189-6までが定めている。
| 区分(通達189) | 判定の要点 | 評価方法 |
|---|---|---|
| (1)比準要素数1の会社 | 配当・利益・簿価純資産の3要素のうちいずれか2が0で,かつ直前々期末基準でもいずれか2以上が0 | 純資産価額(納税義務者の選択でL=0.25の併用方式) |
| (2)株式等保有特定会社 | 相続税評価額による総資産価額に占める株式等の価額の割合が50%以上 | 純資産価額(選択によりS1+S2方式) |
| (3)土地保有特定会社 | 土地保有割合が,大会社等は70%以上,中会社等は90%以上 | 純資産価額 |
| (4)開業後3年未満の会社等 | 開業後3年未満,又は3要素がいずれも0 | 純資産価額 |
| (5)開業前又は休業中の会社 | 開業前又は休業中 | 純資産価額 |
| (6)清算中の会社 | 清算中 | 清算分配見込額の複利現価 |
株式等保有特定会社の判定について,通達189(2)は,課税時期において評価会社の有する各資産を「この通達に定めるところにより評価した価額の合計額」のうちに占める株式,出資及び新株予約権付社債の価額の合計額の割合が50%以上である会社としている。
土地保有特定会社の判定も,同(3)が,各資産を「この通達の定めるところにより評価した価額の合計額」のうちに占める土地等の価額の合計額の割合(土地保有割合)で行うとしている。
つまり,現行の判定は帳簿価額ではなく相続税評価額で行う。
2 資産構成の変動を無視する定め
通達189は,株式等保有特定会社又は土地保有特定会社に該当するかどうかを判定する場合において,「課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり,その変動が次の(2)又は(3)に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは,その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする」と定めている。
比率基準による判定を外す行動を,現行通達自体が想定している。
3 純資産価額方式の算式と20%評価減
財産評価基本通達185本文は,1株当たりの純資産価額を,各資産の相続税評価額の合計額から各負債の金額及び評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除し,発行済株式数で除して計算するとしている。
その際,評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等・家屋等は,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
評価差額に対する法人税額等に相当する金額について,通達186-2は,相続税評価額による純資産価額と帳簿価額による純資産価額の差額に「38%」を乗じて計算すると定めている。
この割合は,令和8年の改正(令8課評2-28外)で防衛特別法人税の創設を受けて37%から38%に改められたものであり,国税庁の改正説明によれば,令和8年4月1日以後に相続,遺贈又は贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用される。
計算手順は取引相場のない株式(出資)の評価明細書の書き方で整理している。
通達185ただし書は,株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合には,中会社・小会社の算式で用いる1株当たりの純資産価額に「100分の80を乗じて計算した金額とする」と定めている。
この20%評価減は,比準要素数1の会社(通達189-2),株式等保有特定会社(同189-3),土地保有特定会社及び開業後3年未満の会社等(同189-4)の純資産価額にも及ぶ。
他方,開業前又は休業中の会社(同189-5)には,ただし書の準用がない。
現行の評価体系の全体像は,遺産相続における非上場株式の評価方法で扱っている。
第3 見直し案における特定の評価会社の4類型
1 純資産価額方式は特定の評価会社の評価方式へ
第4回資料で国税庁が委員に意見を求めた6項目のうち⑥は,「一般の評価会社の評価見直しに応じ,特定の評価会社の範囲と評価方法について検討が必要となるところ,少なくとも資産管理会社については,純資産価額方式で評価することについて」である(第4回資料16頁)。
第5回資料4頁は,継続企業を清算価値で評価すべきではないとの意見を踏まえ,純資産価額方式を「原則的評価方式ではなく,『特定の評価会社の株式の評価方式』として位置付けることとしてはどうか」とした。
骨子2頁の見直しイメージでは,見直し後の特定の評価会社として,資産管理会社,組織再編成直後の会社,開業後5年未満の会社,開業前又は休眠中の会社,清算中の会社(清算分配見込金額で評価)が並んでいる。
現行の一覧にある比準要素数1の会社と3要素全てが0の会社は,見直し後の一覧には現れない。
比準要素という概念が類似業種比準方式のものである以上,同方式の廃止案(類似業種比準方式は廃止されるのか参照)とあわせて区分から外れるものと考えられる。
2 第6回資料が示した4類型
第6回資料19頁は,残余利益方式によらず純資産価額方式で評価することが相当と認められる会社を「特定の評価会社」と整理し,これを4類型に分けている。
| 類型 | 会社例 | 純資産価額方式等によることが妥当とされる理由(要旨) |
|---|---|---|
| ①株式の価値の大半を保有資産の価値が占めると考えられる会社 | 資産管理会社(資産保有特定会社) | 資産増殖能力を考慮せず純資産価額で評価するのが最も適当。個人で資産を保有する場合との均衡 |
| ②残余利益方式での評価が技術上困難と認められる会社 | 組織再編直後の会社,開業後5年未満の会社,開業前の会社 | 将来予測に必要な実績値が確認できない。開業前は再設立した場合のコスト面から評価 |
| ③継続企業の前提に疑義がある会社 | 休業中の会社 | 事業再開を含め不確実で,事業継続を前提とする残余利益方式が適さない |
| ④継続企業の前提を欠いている会社 | 清算中の会社 | 清算分配見込額により評価することが実態にかなう |
資産管理会社について同頁は,「単に資産の保有・管理することを主たる目的とする(と認められる)会社については,その資産増殖能力を考慮することなく,純資産価額により評価することが最も適当」とし,「個人で資産を保有する場合の評価との均衡を図る必要」を挙げている。
組織再編直後の会社については,組織再編後の会社としての将来予測に必要な実績値が確認できない場合に純資産価額で評価することとしつつ,「一定の合理的な予測が可能な場合は,残余利益方式により評価することが妥当」との留保を付けている。
3 現行の区分との対応
現行の区分と見直し案を並べると,次の変化が読み取れる。
①株式等保有特定会社と土地保有特定会社が,資産管理会社という一つの類型に統合される。
②開業後の期間の基準が3年未満から5年未満に延びる。
③組織再編直後の会社が新たに加わる。
④比準要素数1の会社及び比準要素がいずれも0の会社の区分がなくなる。
④により,委員が指摘していた「赤字が続くと特定の評価会社になり評価額が上昇するのは問題」(第4回資料14頁)という点は,区分としては解消する方向にある。
第4 資産管理会社の形式基準
1 資産管理会社の定義
骨子8頁は,資産管理会社を「評価会社が実質的に資産の保有及び管理を主たる目的として設立された又は存続していると認められる会社の株式」とし,事業承継税制においてその対象から除かれる会社(特定資産保有割合が70%以上又は特定収入割合が75%以上)を参考に形式基準を設ける方向で検討するとしている。
第6回資料20頁は,判定の枠組みとして,①土地・株式ごとの保有割合ではなく投資目的等の「特定資産」合計額の総資産に対する保有割合により行う,②事業承継税制の対象から除かれる「資産保有型会社」及び「資産運用型会社」を参考に形式基準を設定する,③コンプライアンス・コストの観点から割合の判定は時価に洗い替えず簿価のままで行う,の3点を示している。
2 事業承継税制の資産保有型会社・資産運用型会社
参考とされている定義は,中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(以下「円滑化省令」という。)1条にある。
同条17項は,「この省令において『資産保有型会社』とは,一の日において,第一号及び第三号に掲げる金額の合計額に対する第二号及び第三号に掲げる金額の合計額の割合が百分の七十以上である会社をいう。」と定める。
第1号は資産の帳簿価額の総額,第2号は特定資産の帳簿価額の合計額であり,第3号は後継者等に支払われた配当等及び損金不算入の給与の額である。
同条18項は,「この省令において『資産運用型会社』とは,一の事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上である会社をいう。」と定める。
特定資産は,同条17項2号が,有価証券等(一定の特別子会社の株式等を除く。),現に自ら使用していない不動産,ゴルフ会員権等,絵画・貴金属等,現金・預貯金等(後継者等に対する貸付金・未収金等を含む。)と定めている。
第6回資料20頁も「円滑化省令1⑰二に定める『特定資産』を基準に整理」とし,保険積立金,同族関係者への貸付金・未収金を例示している。
なお,円滑化省令1条17項・18項には,借入れ等により一時的に割合を超えた場合に一定期間該当しないものとみなすただし書があるが,これを株式評価に取り込むかどうかは第6回資料からは読み取れない。
事業承継税制は法人版事業承継税制の特例措置の期限でも扱っている。
3 判定方法の変更――帳簿価額で判定し,時価に洗い替えない
第6回資料20頁は,現行と見直し後を次のように対比している。
現行は「判定に当たっては,特定資産を時価(相続税評価額)に洗替えた上で行う」ため「全ての評価会社で判定のための洗替えが必要=事務負担大」であり,見直し後は「判定に当たっては,特定資産を時価に洗替えず,帳簿価額に基づいて行う」ので「時価への洗替えが不要=事務負担軽減」となる。
本記事の見方としては,帳簿価額基準には二つの面がある。
取得時期の古い賃貸用の土地を多く持つ会社では,相続税評価額に比べて帳簿価額が小さいため,現行の土地保有割合より特定資産の割合が低く出ることがあり得る。
反対に,現預金や有価証券を多く持つ会社では,帳簿価額と時価の差が小さいため,判定結果は現行と大きく変わらないと考えられる。
また,現行は土地等と株式等を別々の比率で判定するため,賃貸用の土地が4割,有価証券が4割といった会社はいずれの特定会社にも当たらないことがあるが,特定資産を合計して判定する案では,このような会社も資産管理会社に当たる可能性がある(本記事の試算ではなく,比率の構造からの推論である)。
4 検討中の修正点
第6回資料20頁は,資産保有型会社・資産運用型会社の基準を「対象範囲のベース」としつつ,次の点を検討が必要な事項として挙げている。
①現金,預貯金その他これに類する資産のうち,事業活動に必要な部分(いわゆる運転資金等)については対象外とすることとしてはどうか(「“運転資金”の範囲については整理が必要」)。
②賃貸不動産に加え,リース取引により保有する資産等(貸付用船舶・航空機等)も対象とすることとしてはどうか。
③資産比率が特定資産に偏る業種(不動産賃貸業など)について,単に資産の保有・管理を目的とする会社(資産管理会社)と区別する場合,どのような基準を設けるべきか。
骨子8頁は,資産管理会社の形式基準には,円滑化省令6条2項に規定する常時使用従業員数が5人以上,事務所,店舗,工場等の所有又は賃貸,商品販売等の要件(事業実態要件)は設けないとしていた。
事業承継税制ではこれらを満たす資産保有型会社等を一定の場合に該当しないものとみなすが,株式評価ではその除外を設けないという案である。
もっとも,第6回資料24頁の検討事項整理表は,資産管理会社の判定について「対象資産の範囲,該当基準,判定方法及び適用除外要件」を検討事項としており,適用除外の在り方はなお検討の対象となっている。
5 不動産賃貸業と「財産を法人に入れただけの会社」
第5回議事要旨9頁によれば,委員からは,事業承継税制の対象外となるいわゆる資産保有型会社であっても,継続して家賃収入を得ているような不動産賃貸業の会社については,純資産価額方式でなく残余利益方式で評価してもよいのではないかという意見が出された。
他方で,特定の評価会社も残余利益方式で評価してよいとしつつ,「ただ財産を法人に入れただけの会社が,(株主資本コスト分だけ)評価額が下がってしまうということが起きてしまう点が気になる」という意見もあった。
さらに,上場株式や債券,価値が把握できる不動産等,時価がほぼ分かるもので構成される会社は,最初から時価に引き直して純資産だけで評価した方が実態の企業価値に近いという観点から,純資産価額方式の適用対象を考えるべきとの意見も出されている(同頁)。
残余利益方式は簿価純資産に将来の残余利益を加算する方式であり,毎年の利益が株主資本コストを下回る会社では簿価純資産を下回る評価額になり得る(第5回資料3頁)。
賃貸不動産や金融資産を法人に移しただけの会社がこの方式で評価されれば,含み益を持つ資産が簿価で取り込まれる上,低い利回りのために評価額がさらに下がることがあり得ると考えられる。
もっとも,第5回議事要旨9頁には,簿価が時価より低い場合には株主資本コストが小さく計算されて見かけ上の超過利益が生じるという,逆向きの効果を指摘する委員の発言もある。
資産管理会社を純資産価額方式に回す案は,こうした事態を防ぐ意味を持つと考えられる。
不動産賃貸業をどこまで資産管理会社に含めるかは,賃貸不動産を個人で持つ場合と法人で持つ場合の均衡に直結する。
評価額圧縮スキームとの関係は,国税庁が例示した評価額圧縮スキーム8類型で扱う。
第5 純資産価額方式そのものの見直し
1 純資産価額方式の三つの位置付け
第6回資料17頁は,純資産価額方式の位置付けとして,清算価値,会社財産に対する持分,個人事業者の財産評価との均衡の三つを示している。
同資料21頁は,これを特定の評価会社の区分ごとに当てはめ,「最も実態と整合する評価方式として適用する純資産価額方式を使い分けることも考えられる」とした。
| 項目 | 清算価値 | 会社財産に対する持分 | 個人事業者との均衡 |
|---|---|---|---|
| 退職給付引当金等 | 控除可 | 控除可 | 控除不可(個人事業者の債務控除との整合) |
| 含み益に対する法人税等相当額 | 控除可(繰越損失を考慮する) | 控除不可(会社財産の換価は想定されない) | 控除可(繰越損失は考慮しない) |
| 出資の払戻時のみなし配当に係る源泉徴収税額 | 控除可 | 控除不可 | 控除不可 |
| 適用する特定の評価会社 | 休業中の会社,清算中の会社 | 組織再編直後の会社,開業後5年未満の会社,開業前の会社 | 資産管理会社 |
資産管理会社については「資産の保有・管理することを主たる目的とする会社」として「個人での財産所有との均衡を図るための純資産価額方式」を当てるとされている(第6回資料21頁)。
骨子8頁も,資産管理会社については個人が資産を直接保有する場合との評価の均衡を図る必要があると考えられることから,「従来の評価方式を踏襲するのが合理的ではないか」としている。
この整理によれば,資産管理会社の純資産価額では,退職給付引当金等は控除せず,含み益に対する法人税額等相当額は控除することになり,現行の算式の骨格が維持される。
他方,組織再編直後の会社や開業後5年未満の会社では,退職給付引当金等を控除する代わりに,含み益に対する法人税額等相当額を控除しないという,現行とは異なる算式になる。
2 退職給付引当金を負債とする方向
骨子8頁は,「株式は会社財産に対する持分としての性格を有することに鑑み,一般の評価会社を純資産価額方式で評価する場合には,一定の要件に該当する『従業員に対する退職給付引当金』を負債として取り扱う方向で検討」としている。
骨子9頁は,個人事業主の負債は相続税法14条により「確実な債務」に限られるため退職給付引当金等を負債としていないが,個人事業者との均衡という考えを取り払えば同条との関係を考慮する必要はなくなる,と説明している。
相続税法14条1項は,「前条の規定によりその金額を控除すべき債務は,確実と認められるものに限る。」と定めている。
もっとも,前記の表のとおり,第6回資料21頁は資産管理会社について退職給付引当金等を「控除不可」としており,この方向は資産管理会社には及ばない整理となっている。
3 20%評価減の廃止案
骨子8頁は,「個人事業主との比較という考えからの脱却に伴い,議決権割合50%以下の同族株主グループに属する株主等の保有する株式に係る20%の評価減の取扱いは廃止せざるを得ないのではないか」としている。
骨子9頁は,この評価減は一同族株主グループだけでは会社を完全支配できない場合の支配力の格差を考慮するものであり,個人事業者との関係性を取り払った場合には「この取扱いを残すことは理論的に困難」とする。
第6回資料1頁は,「中会社・小会社における同族株主グループの議決権の保有割合(50%以下グループ)による評価減」を純資産価額方式に関する第7回会議以降の想定論点に掲げている。
本記事の見方としては,資産管理会社との関係で一つの問題が残る。
骨子の廃止理由は「個人事業主との比較という考えからの脱却」であるのに対し,資産管理会社の純資産価額方式は,第6回資料21頁で「個人での財産所有との均衡」を図るものと位置付けられている。
現行では株式等保有特定会社・土地保有特定会社にも20%評価減が及ぶ(通達189-3・189-4)ところ,資産管理会社でもこれが残るのか一律に廃止されるのかは,資料上まだ決着していないと考えられる。
4 評価差額に対する法人税額等相当額(38%)
第6回資料21頁の整理では,資産管理会社については含み益に対する法人税等相当額を「個人所有と同一の条件のもとに置き換えた上で評価の均衡を図る」として「控除可」とし,繰越損失は考慮しない。
現行の38%控除(通達186-2)の骨格は維持される方向である。
ただし,第6回資料1頁は「法人税額等相当額の控除とその対象範囲」を第7回会議以降の想定論点に掲げており,対象範囲は未定である。
5 純資産価額による頭打ちの要否
現行の財産評価基本通達179は,大会社・中会社について,納税義務者の選択により類似業種比準価額に代えて1株当たりの純資産価額を用いることを認めており,実質的に純資産価額が上限となる。
第6回資料17頁は,これを見直し後も残すかについて,清算価値と位置付けると「清算価値を継続企業の価値評価として選択を可能(上限)と整理することは困難ではないか」とし,「見直しにより原則的評価方式ではなくなる純資産価額方式の選択を認める妥当性をどのように説明ができるか要検討」とした上で,「次回以降,純資産価額方式の各論として引き続き検討が必要」としている。
頭打ちの要否は,現時点で未決である。
6 第7回以降に残された論点
第6回資料1頁は,純資産価額方式について第7回会議以降の想定論点として,①計算方法の簡便化,②法人が3年以内に取得した不動産の取扱い,③退職給付引当金等の取扱い,④法人税額等相当額の控除とその対象範囲,⑤中会社・小会社における同族株主グループの議決権の保有割合(50%以下グループ)による評価減,⑥特定の評価会社の区分により異なる評価方法,の6点を挙げている。
②は,通達185が課税時期前3年以内に取得した土地等・家屋等を通常の取引価額で評価するとしている点に関わる。
第4回資料の別添には,貸付用不動産を借入れにより購入して4年6か月保有し,この定めの適用を外した上で株式を移転するスキームが掲載されている。
第6 資産管理会社のオーナーにとっての実務上の注意
1 現時点では現行通達で評価する
見直し案はたたき台であり,通達改正の時期も経過措置も資料には示されていない。
令和8年9月19日現在,相続,遺贈又は贈与により取得した株式は,現行の財産評価基本通達185・186-2・189等によって評価する。
2 特定会社の判定を外す対策の意味が変わり得る
現行では,課税時期前に資産構成を動かして特定会社の判定を外し,類似業種比準方式を含む評価を可能にする対策が行われてきた。
東京高等裁判所令和7年6月19日判決(令和7年(行コ)第51号,訟務月報72巻2号79頁)は,上場株式の売却代金で資産管理会社の新株の払込み(約36億円)を行い,投資有価証券の割合を89.2%から26.1%へ下げて株式等保有特定会社の判定を外すなどした事案で,財産評価基本通達6項による評価を肯定した(裁判所ホームページ未掲載であり,判例秘書で全文を確認した)。
総則6項の適用の在り方は財産評価基本通達6項(総則6項)の適用で扱っている。
見直し案がそのまま採用されれば,判定を外しても評価方式は類似業種比準方式ではなく残余利益方式となる上,特定資産の合計で判定されるため,土地と株式の配分を変えるだけでは判定を外しにくくなると考えられる。
他方,帳簿価額基準の下では,含み益の大きい古い賃貸用の土地を持つ会社が資産管理会社に当たりにくくなる可能性もあり,制度設計が固まるまで確定的なことはいえない。
3 組織再編直後の会社・開業間もない会社
見直し案では,組織再編直後の会社と開業後5年未満の会社も純資産価額方式で評価される。
第6回資料21頁の整理では,これらの会社については退職給付引当金等を控除する一方,含み益に対する法人税額等相当額は控除しないため,含み益の大きい資産を持つ会社では現行より評価額が高くなる方向に働き得る。
持株会社の設立や会社分割を伴う事業承継では,組織再編と株式移転の時期の関係が評価額に影響する可能性があり,「一定の合理的な予測が可能な場合」の例外(第6回資料19頁)の具体化も確認が必要である。
4 生前贈与の計画
資産管理会社の株式を複数年にわたって後継者へ贈与する計画は,各年の評価額が通達改正の前後で変わり得ることを前提に組み立てる必要がある。
20%評価減,運転資金相当額の除外,不動産賃貸業の扱いは,いずれも資料上未決の論点である。
賃貸不動産を法人で持つか個人で持つかの比較では,個人保有の場合の評価や特例(例えば小規模宅地等の特例-貸付事業用宅地等の三年要件と例外)との比較も欠かせない。
第7 関連記事
見直し案全体の骨格と各回の経過は取引相場のない株式の評価に関する有識者会議で扱っている。
原則的評価方式として提案されている算式は残余利益方式とは,第6回資料の1,378社試算による影響は非上場株式の相続税評価は見直しでどれだけ上がるか,少数株主の評価は配当還元方式の見直し案,資産管理会社を使った評価額圧縮の類型は国税庁が例示した評価額圧縮スキーム8類型でそれぞれ扱っている。
第8 出典
1 法令・通達
①中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(平成21年経済産業省令第22号)1条17項・18項,6条2項(e-Gov法令検索)
②相続税法(昭和25年法律第73号)14条1項(e-Gov法令検索)
③財産評価基本通達179(国税庁)
④財産評価基本通達185・186-2(国税庁)
⑤財産評価基本通達189・189-2~189-6(国税庁)
⑥国税庁「取引相場のない株式等の評価(純資産価額方式における法人税額等相当額)」(令和8年3月)
2 有識者会議の資料
①国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 第4回資料」(令和8年7月3日)14頁・16頁,別添2
②国税庁「第5回資料」(令和8年8月20日)3頁・4頁
③国税庁「第5回当日机上配付資料 取引相場のない株式の評価の見直し(骨子)」(令和8年8月20日)1頁・2頁・8頁・9頁
④国税庁「第5回議事要旨」9頁
⑤国税庁「第6回資料」(令和8年9月16日)1頁・17頁・19頁~21頁・24頁
3 裁判例
①東京高等裁判所令和7年6月19日判決(令和7年(行コ)第51号,訟務月報72巻2号79頁。裁判所HP未掲載。判例秘書により全文確認)