メインコンテンツへスキップ

親族・相続

失踪宣告の申立て―要件,必要書類,費用,期間及び確定後の手続(AI作成)

目次

第1 この記事の対象1 失踪宣告と不在者財産管理人を選ぶ前に2 期間と日付の見取り図第2 失踪宣告の要件と死亡とみなされる日1 普通失踪と危難失踪2 7年が経てば自動的に死亡扱いになるわけではない第3 申立人と申立先1 申立てができる人2 申立先の家庭裁判所第4 必要書類と申立書の準備1 標準的な添付書類2 申立書と経過の整理第5 費用と納付する時期第6 申立てから確定後の届出まで1 申立てと家庭裁判所の調査2 公告と届出の催告3 審判の確定と証明書4 市区町村への失踪届第7 よくある質問1 申立てから何か月で終わるのか2 警察への届出だけで失踪宣告になるのか3 相続人が行方不明なら,失踪宣告を待つしかないのか4 失踪宣告後に本人の生存が分かったらどうするのか第8 関連記事と出典1 関連記事2 法令・公的資料
第1 この記事の対象

家族などの生死が長く分からないときは,家庭裁判所の失踪宣告によって,その人を法律上死亡したものとみなすことができる。
本記事は,日本国内で申立てを検討する人に向けて,制度の選び方から,要件,申立先,資料・申立書の準備,費用,審判確定後の届出までを整理する。

要件となる生死不明の期間,死亡したものとみなされる日,申立て後の手続に要する期間は,それぞれ異なる。
費用・書式は,令和8年11月1日に確認した裁判所の公開案内に基づく。

1 失踪宣告と不在者財産管理人を選ぶ前に

最初に,必要なのが「死亡したものとみなすこと」なのか,「行方不明者の財産を管理し,遺産分割等を進めること」なのかを整理する。

確認点失踪宣告不在者財産管理人制度の役割生死不明の者を法律上死亡したものとみなす不在者の財産を管理する相続との関係死亡とみなされる時点に応じて相続関係を判断する管理人が家庭裁判所の許可を得て,不在者に代わり遺産分割協議に加わる方法がある最初に整理すること生死不明の期間,危難の有無,死亡とみなされる時点管理が必要な財産と,遺産分割等で行おうとする行為

不在者財産管理人を選ぶ場合は,相続人が行方不明の場合の不在者財産管理人で,所在調査,選任,権限外行為許可,管理の終了までを確認されたい。
制度の根拠は,民法25条・28条・30条・31条及び裁判所の家事事件Q&A・第14で確認できる。

2 期間と日付の見取り図
確認するもの内容取り違えないもの申立ての要件となる期間普通失踪は7年間。危難失踪は危難が去った後1年間の生死不明申立てから結果が出るまでの期間死亡とみなされる時点普通失踪は7年間が満了した時。危難失踪は危難が去った時審判日・確定日・戸籍への届出日申立て後の催告期間普通失踪は3か月以上,危難失踪は1か月以上調査や確定までを含む総所要期間即時抗告の期間原則として2週間。起算点と抗告できる者は第6の3で説明する審判書の到着だけによる確定の判断確定後の失踪届裁判を請求した者が,確定日から10日以内に届け出る死亡とみなされる日から数える期限
第2 失踪宣告の要件と死亡とみなされる日
1 普通失踪と危難失踪

不在者の生死が7年間明らかでないときは,利害関係人の請求により,家庭裁判所が失踪宣告をすることができる。
これが普通失踪である。

戦地に臨んだ者,沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者については,戦争が止んだ後,船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後,1年間生死が明らかでない場合にも失踪宣告をすることができる。
これが危難失踪である(民法30条)。

種類要件となる生死不明の期間死亡とみなされる時点普通失踪生死が7年間明らかでないその7年間が満了した時危難失踪死亡の原因となる危難が去った後,1年間生死が明らかでない危難が去った時

死亡とみなされる時点は民法31条による。
危難失踪では,要件となる危難が去った後の1年間と,死亡したものとみなされる「危難が去った時」を分けて確認する。

単に長く連絡がないという説明だけで判断せず,最後に生存を確認した時期,その後の連絡や調査の経過,危難に遭遇した場合はその事情を資料と対応させて整理する。

2 7年が経てば自動的に死亡扱いになるわけではない

7年間が経過しただけで,失踪宣告がされたことにはならない。
利害関係人が申し立て,家庭裁判所の審理と審判の確定を経る必要がある(民法30条,家事事件手続法74条・148条)。

死亡とみなされる日と,親などが死亡した日との先後によって,誰が相続人になるかが変わる場合がある。
申立てを決める前に,行方不明となった経緯と,関係する相続の時系列を並べて確認する。

相続人の変動,相続税の申告期限・財産評価,取消し及び外国が関わる場合の詳しい説明は,失踪宣告と相続・相続税に分けている。

第3 申立人と申立先

(続きを読む...)失踪宣告の申立て―要件,必要書類,費用,期間及び確定後の手続(AI作成)

教育資金の一括贈与は終了後どうなるか―既存契約と通常の教育費援助(AI作成)

目次

第1 令和8年3月31日で終了した特例と,続く取扱い第2 既存の教育資金管理契約で確認すること1 特例適用済みの財産と,新たな贈与を分ける2 領収書等の提出・提供を続ける3 契約終了と贈与者の死亡を別々に確認する第3 通常必要な教育費を,必要な都度援助する場合第4 援助の仕方を決める前の確認順序第5 よくある疑問1 終了前に開設した口座なら,今からの追加贈与も非課税か2 祖父母が学費を払うと,必ず贈与税がかかるのか3 残高を使い切らなかった場合は,どうなるか第6 出典
第1 令和8年3月31日で終了した特例と,続く取扱い

祖父母等から教育資金の一括贈与を受ける場合の贈与税の非課税特例は,適用期限が延長されず,令和8年3月31日で終了した。
ただし,同日までに特例の適用を受けた信託受益権や金銭等については,引き続き特例が適用される。

国税庁タックスアンサー4510は,令和8年4月1日以後は特例の適用を受けられないことと,既に適用を受けた財産の取扱いが続くことを分けて説明している。
「制度が終わったので,既存口座の残高をすべて自由に使える」「過去の適用が一斉に取り消される」と理解するのは適切ではない。

本記事は令和8年10月31日時点で確認した国税庁の公表資料を基に,これから教育費を援助する人と,既存契約がある人の確認事項を整理する。
契約の終了や贈与者の死亡に伴う具体的な課税額は,取得時期等に応じて別に計算する必要がある。

第2 既存の教育資金管理契約で確認すること
1 特例適用済みの財産と,新たな贈与を分ける

令和8年3月31日までに適用を受けた財産について取扱いが続くことは,既存口座があれば,同年4月1日以後の追加贈与にも新たに特例を使えるという意味ではない。
過去に適用を受けた日,贈与者,取得額及びその後の払出しを,金融機関の記録と照合する。

制度終了だけを理由に慌てて解約したり,別の家族の口座へ残高を移したりする前に,教育資金管理契約の内容を取扱金融機関へ確認し,残額の税務上の扱いは税理士等へ相談することが重要である。

2 領収書等の提出・提供を続ける

特例適用済みの資金を教育資金の支払に充てたときは,受贈者は,領収書等を定められた期限までに取扱金融機関の営業所等へ提出又は提供しなければならない。
国税庁の直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A(令和8年5月)のQ3-1は手続と期限を,Q3-2は教育資金支出額の計算を説明している。
契約終了時の残額は,口座の残高ではなく,非課税拠出額から教育資金支出額を控除した額であるから,確認・記録されなかった支払があると,残額の計算に影響する。

提出等の期限は口座からの払出方法等によって異なり,契約が終了する場合の期限にも注意が必要である。
金融機関で選択した方法と期限を確認し,領収書や電子的な支払記録を保管する。

3 契約終了と贈与者の死亡を別々に確認する

国税庁は,教育資金管理契約の期間中に贈与者が死亡した場合や,契約が終了した場合には,それぞれ相続税又は贈与税がかかることがあると説明している。
「最初に非課税で入金できたから,残額にも将来一切税金がかからない」とはいえない。
教育資金管理契約は,受贈者が30歳に達した場合(学校等に在学し,又は教育訓練を受けていて,その旨を取扱金融機関の営業所等へ届け出たときを除く。),30歳以上の受贈者が在学等の届出をしなかった場合,受贈者が40歳に達した場合,残高がゼロとなり終了の合意があった場合及び受贈者が死亡した場合に終了する。
特例の適用期限が終了したことと,既存の契約が終了することは別である。

相談時には,贈与による取得時期,贈与者ごとの金額,受贈者の年齢・在学等の状況,死亡日又は契約終了日を整理する。
死亡時の課税は前記Q&Aの4(Q4-1~Q4-7)で,契約終了時の課税は5(Q5-1~Q5-4)で,分けて説明されている。

第3 通常必要な教育費を,必要な都度援助する場合

一括贈与の特例が終了しても,扶養義務者から通常必要な教育費を必要な都度受け取り,直接その費用に充てる場合の贈与税の取扱いまでなくなったわけではない。
国税庁タックスアンサー4405は,扶養義務者から生活費や教育費に充てるため取得した財産で,通常必要と認められるものを非課税とし,必要な都度直接その用途に充てるものに限ると説明している。
「通常必要と認められるもの」とは,贈与を受けた者の需要と贈与をした者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいい,教育費は義務教育に係る費用に限られない(後記Q&AのQ1-2・Q4-1)。

(続きを読む...)教育資金の一括贈与は終了後どうなるか―既存契約と通常の教育費援助(AI作成)

認知症の親の預金は引き出せるか―介護費・入院費と銀行への相談(AI作成)

目次

第1 介護費や入院費に困ったら,まず取引銀行へ相談する第2 親が生存している場合と,相続開始後の手続を分ける第3 銀行への相談前に,支払と権限の資料を整理する第4 代理権がない場合の対応と,成年後見の検討第5 本人が判断できる間に進めたい準備第6 よくある疑問1 銀行に認知症だと伝えると,必ず全口座が凍結されるのか2 兄弟姉妹が全員同意すれば,親のお金を子へ移してよいか3 預金を払い戻すためだけに,子が成年後見人になることを指定できるか第7 出典
第1 介護費や入院費に困ったら,まず取引銀行へ相談する

認知症の親の預金から介護費や入院費を支払いたいときは,親本人の意思を確認できるか,誰にどのような代理権があるか,何の支払にいくら必要なのかを整理して,取引銀行へ相談する。
認知症という診断名だけから,すべての金融取引が一律にできなくなると考えるべきではない。

全国銀行協会の預金の引出しに関する案内は,本人の意思確認を原則としつつ,本人の生活費,入院費,介護施設費用等に必要な資金で困ったときは,取引銀行への相談を案内している。
これは,家族に自由な払戻権限を与える説明ではなく,銀行が事情を確認するための相談の入口である。

以下は令和8年10月31日時点で確認した全銀協の公表資料(令和2年3月26日の案内及び金融取引の代理等に関する考え方)及び裁判所の公表資料に基づく一般的な整理である。
特定の銀行で必ず払戻しを受けられるという意味ではなく,各銀行の取扱いと個別の事情を確認する必要がある。

第2 親が生存している場合と,相続開始後の手続を分ける

親が生存している間の親本人の口座と,亡くなった親の相続手続では,手続を行う根拠が異なる。
「将来相続する子である」という事情だけでは,生存している親の預金を自由に処分できることにはならない。

また,親族全員が了解していることと,銀行に対して有効な代理権を示せることは別の問題である。
通帳や印鑑,キャッシュカードを保管している場合も,それだけを根拠として本人の意向や権限の確認を省略しない。

親の死亡後に弁護士が口座を調査し,相続による払戻し等を行う場面については,被相続人の銀行口座の相続手続で説明している。
亡くなった人の遺産を分ける際,相続人の一人が判断能力を欠いている場合は,認知症等の相続人がいる場合の遺産分割を参照されたい。

第3 銀行への相談前に,支払と権限の資料を整理する

相談を具体的に進めるため,次の事項をメモにして,手元にある資料と一緒に銀行へ示すとよい。
以下は相談のための整理例であり,全国共通の必要書類一覧ではない。

① 支払の目的と期限を明らかにする。
病院・施設の請求書,支払先,請求の対象期間,金額及び支払期限を整理し,親本人のための費用であることを説明できるようにする。

② 本人の状態を説明する。
本人とどのような方法なら意思疎通ができるか,来店が難しい事情は何か,診断書等の資料があるかを伝え,銀行が求める確認方法を相談する。

③ 手続をする人の立場を明らかにする。
本人との関係,有効な委任や銀行への代理人の届出の有無,成年後見人等の選任の有無と権限の範囲を整理する。

④ 希望する支払方法を具体化する。
家族の口座への一括移動を当然の前提とせず,病院・施設等への振込を含めて,必要な支払をどのように行えるか確認する。

⑤ 家族が立て替えた費用を区別する。
今後の請求分と過去の立替分を分け,領収書,振込記録及び立替額の内訳を保管する。
立替をしたから自動的に親の口座から同額を払い戻せるとは考えず,銀行に取扱いを確認する。

第4 代理権がない場合の対応と,成年後見の検討

(続きを読む...)認知症の親の預金は引き出せるか―介護費・入院費と銀行への相談(AI作成)

面会交流・親子交流で渡されたAirTag―位置情報の追跡とストーカー規制法(AI作成)

目次

第1 子どもに渡した物から相手の居場所が分かる場合第2 紛失防止タグに関する法改正第3 物に取り付ける場合と,中に入れて渡す場合第4 無承諾,目的及び反復を分けて確認する1 承諾の有無2 行為の目的3 反復と刑事責任第5 発見時に記録しておく事情第6 親子交流の実施方法とは別に検討する第7 会報の事例と一次資料の関係第8 出典
第1 子どもに渡した物から相手の居場所が分かる場合

親子交流の際に渡されたぬいぐるみなどにAirTag等の紛失防止タグが入っており,その位置情報から,同居親や子どもの居場所が把握されていた場合,どう考えればよいか。
令和7年のストーカー規制法改正では,紛失防止タグを利用した位置情報の取得等に対応する規定が設けられ,関係部分は令和7年12月30日に施行された。

ただし,タグが見つかったという事実だけで,直ちにストーカー行為の犯罪が成立すると結論付けることはできない。
誰の位置情報を,どのような目的で,承諾を得ずに取得したのか,物をどのように渡したのか,行為が反復されているかなどを分けて確認する必要がある。

本記事の親子交流の例は,大阪弁護士会の会報に掲載された被害者支援実務意見交換会の架空事例を手掛かりにした説明である。
実際の事件や裁判例を紹介するものではない。

第2 紛失防止タグに関する法改正

警察庁は,改正により,紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等を規制対象に加えたと説明している。
警察庁の令和8年3月9日付け通達では,紛失防止タグ等に関する規定の解釈と運用が示されている。
通達によれば,いわゆる紛失防止タグは法律上の「位置特定用識別情報送信装置」に当たると解され,紛失防止タグ等を用いた位置情報の取得等の行為は,ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「法」という。)2条3項の「位置情報無承諾取得等」に含まれる。

同通達の説明によれば,位置情報の無承諾取得等は,特定の者のほか,その配偶者,直系若しくは同居の親族その他その者と社会生活において密接な関係を有する者に対して行われる場合も問題になる。
そのため,子どもの所持品にタグがある場合でも,「子どもの物だから,同居親への追跡とは無関係」と直ちに判断することはできない。
子どもが特定の者の直系又は同居の親族に当たる場合,好意又は怨恨の感情を向けられた特定の者が同居親であれば,子どもに対する行為も対象となり得る。

警察庁「ストーカー規制法が改正されました!」

第3 物に取り付ける場合と,中に入れて渡す場合

タグを衣服やかばんに固定した場合だけが問題になるわけではない。
警察庁の通達は,対象となる者の所持品に紛失防止タグ等を差し入れる行為や,タグ等を差し入れた物を渡す行為についても説明している。

したがって,ぬいぐるみの中にタグを入れて渡す行為は,相手方の承諾がなければ,位置情報を実際に取得したかどうかとは別に,タグを差し入れた物の交付(法2条3項3号,同法施行令3条2号)として問題になり得る(目的の要件は後記第4の2)。
「縫い付けていない」「本人の持ち物に直接取り付けていない」という事情だけで,規制の対象外と決めることは適切ではない。

もっとも,タグを渡した行為(同項3号)と,その後に位置情報を取得した行為(同項2号)は別の行為であるから,事実として分けて整理するべきである。
発見された物,発見場所,渡された時期,端末に表示された通知及び関係する連絡内容などが,事情を説明する手掛かりになる。

第4 無承諾,目的及び反復を分けて確認する
1 承諾の有無

警察庁の通達は,承諾について,任意かつ真意によるものであることを求めている。
脅迫された場合やだまされて誤信した場合の承諾は,任意かつ真意に基づく承諾とはいえないとされている。
合意の下で位置情報を共有していた場合でも,今後の共有を断る旨を伝えられた後も引き続き取得すれば,「承諾を得ないで」に該当し得る。
警察官や第三者を通じて拒絶が伝えられた場合も同様である。

親子交流について親の間で合意していることと,位置情報の取得について承諾があることは,確認すべき対象が異なる。

(続きを読む...)面会交流・親子交流で渡されたAirTag―位置情報の追跡とストーカー規制法(AI作成)

要介護4でも遺言は有効か―介護認定資料と遺言能力(AI作成)

目次

第1 要介護4という認定だけでは遺言の効力は決まらない第2 結果通知書だけでなく認定の基礎資料を読む第3 能力・介助の方法・行動の有無を分ける第4 中間評価項目得点を判断能力の総得点にしない1 服薬介助の変化と意思決定の変化は別である2 同じ群の経時変化も個別項目へ戻って読む第5 調査日・認定日・有効期間・遺言日を並べる第6 具体的な記録を遺言内容の理解へ結び付ける第7 遺言能力と公正証書遺言の口授を区別する第8 よくある疑問1 要介護3や要介護5なら結論が変わるか2 主治医意見書と認定調査票が食い違うときはどちらが正しいか3 認知症高齢者の日常生活自立度だけで判断できるか4 認定結果そのものに納得できない場合はどうするか第9 出典と関連記事
第1 要介護4という認定だけでは遺言の効力は決まらない

要介護4と認定されている人が作成した遺言について,認定区分だけから有効とも無効とも決めることはできない。
要介護認定は介護サービスの必要度を判定する制度であり,特定の遺言を理解して意思決定できたかを直接判定する制度ではない。

民法963条は,「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。」と定める。
介護認定資料を遺言能力の検討に用いる際は,資料に記録された状態と,遺言時に問題となる理解・判断との関係を説明する必要がある。

同じ要介護度が続いていても,身体機能,認知機能,介助の方法及び行動上の問題が,それぞれ同じ状態にあったとは限らない。
反対に,介護度が重くなったことだけから,特定の遺言を理解する能力まで失われたともいえない。
まず,認定結果から,その基礎となった個別の記録へ戻ることが重要である。

本記事は,厚生労働省の「介護認定審査会委員テキスト2009改訂版(令和3年4月改訂)」を基に,介護認定資料を遺言能力の検討へ用いるときの読み方を説明する。
以下の頁番号は,同テキストの紙面に印刷された頁番号を示す。

第2 結果通知書だけでなく認定の基礎資料を読む

結果通知書や被保険者証から分かる認定区分だけでは,どの生活場面で,何ができず,どのような援助が必要だったかまでは分からない。
保有者と取得できる範囲を確かめながら,次の資料を対応させる方法が有用である。

資料確認する内容遺言能力を検討する際の注意認定調査票の基本調査項目ごとの選択肢評価軸を確かめ,一つの選択肢から全般的な能力を推測しない認定調査票の特記事項選択の根拠,具体的な介護の内容,頻度誰が何を観察し,誰から聞いた情報かを確かめる主治医意見書診察の時期,認知機能,意思伝達,日常の意思決定等の記載結論だけでなく,その基礎となる診察・観察内容を確認する介護認定審査会資料等一次判定,中間評価,修正・変更の経過入力された情報と,最終的な認定結果を分けて読む診療・看護・介護の経過記録認定調査の前後における具体的な言動遺言日までの経過を補い,反対方向の記録も確認する

基本調査と特記事項,主治医意見書の役割は,厚労省テキスト6~11頁及び17~20頁に説明されている。
資料を取得する前に,保有者へ申請方法と提供対象を確認する。

第3 能力・介助の方法・行動の有無を分ける

厚労省テキストは,認定調査項目を「能力」「介助の方法」「有無」という異なる評価軸で整理している。
全項目を,判断能力の高低を測る同じ種類の質問として読むことはできない。

評価軸関係する項目の例読み取る際の重点能力意思の伝達,短期記憶,日常の意思決定何を実行・理解できたかと,日頃の状態を確かめる介助の方法薬の内服,金銭の管理,買い物誰がどの部分を援助していたかを確かめる有無精神・行動障害に関する項目等対象となる行動の有無・頻度と,具体的な対応を確かめる

例えば,薬を職員が準備していたという記録は,服薬に関する援助の存在を示す。
しかし,その記録だけでは,援助の理由が本人の理解困難,身体上の事情,施設の管理方法その他の事情のどれかは分からない。
援助を受けていたという事実と,その理由を区別して読む必要がある。

介助方法の項目は,原則として実際の介助に基づいて評価されるが,介助が行われていない状況や実際の介助が不適切な場合の取扱いもある。
「介助されていない」という選択肢を,常に本人が援助なしで安全にできるという意味へ置き換えず,特記事項と選択根拠を確認する(同テキスト8~9頁)。

また,行動上の問題が減ったことと,遺言内容を理解する能力が回復したことは,同じ事実ではない。
制度資料上も認知機能と精神・行動障害は別の項目群として扱われており,何が改善したかを項目ごとに確認すべきである。
この区別だけで個人の医学的状態を診断したり,遺言能力の結論を出したりすることはできない。

認定調査の「3-1 意思の伝達」は,言葉以外の手段も含めて評価し,伝える意思内容の合理性は問わない。

(続きを読む...)要介護4でも遺言は有効か―介護認定資料と遺言能力(AI作成)

共同親権で相手が同意しないとき―親権行使者指定と子の氏・進学・転居(AI作成)

目次

第1 共同親権でも、問題ごとに手続を分ける1 この記事の対象2 親権者の変更とは区別する第2 一方で決められる場合と、共同で決める場合1 日常の行為と急迫の事情2 意見が違うというだけで、単独決定に切り替わるわけではない第3 親権行使者指定で求めること1 対象とする行為を具体的にする2 調停と審判の申立先を区別する第4 子どもの名字を変えたい場合1 15歳未満と15歳以上を分ける2 共同申立てと、指定を受けた一方による申立て3 許可後の入籍届を忘れない第5 進学・転居について意見が対立する場合1 期限と、対立している内容を分ける2 転居は子どもの生活への影響を具体化する第6 申立て前に整理する資料と期限第7 関連記事と出典1 関連記事2 法令・裁判所の資料3 関連する実務解説
第1 共同親権でも、問題ごとに手続を分ける
1 この記事の対象

父母双方が親権者である場合に、子どもの名字の変更、進学、転居等について意見が一致しないときは、誰が何を決める必要があるのかを具体的に整理する。
本記事は、令和8年10月28日に確認した裁判所の手続案内等に基づき、特定の事項について一方が単独で親権を行うための親権行使者指定を中心に説明する。

共同親権というだけで、子どもに関するすべての行為に他方の同意が必要になるわけではない。
反対に、子どもと同居しているという事情だけで、重要な事項をすべて一方で決められるわけでもない。

2 親権者の変更とは区別する

親権行使者指定は、父母双方が親権者であることを前提に、協議が調わない特定の事項について、一方が単独で行えるようにする手続である。
親権者そのものの変更や、子どもを主に監護する者の指定とは、求める判断の対象が異なる。

例えば、入学に必要な契約について判断を求める場合と、今後の親権者を一方に変更する場合では、申立ての目的も説明すべき事情も同じではない。
まず、必要な行為、期限、対立している点を分けて整理する。

第2 一方で決められる場合と、共同で決める場合
1 日常の行為と急迫の事情

民法824条の2は、父母双方が親権者である場合の共同行使を基本としつつ、監護・教育に関する日常の行為や、子の利益のため急迫の事情がある場合等の単独行使を定めている。
裁判所の案内は、日常の行為の例として食事・衣服の決定、短期間の観光旅行、通常のワクチン接種等を挙げるが、具体的事情によって判断が異なり得るとしている。

したがって、行為の名称だけで、必ず共同決定又は必ず単独決定と分類することは適切でない。
子どもへの影響、決定の内容、変更のしやすさ、緊急性等を具体的に確認する。

2 意見が違うというだけで、単独決定に切り替わるわけではない

共同で決めるべき事項について協議が調わない場合は、民法824条の2第3項に基づく親権行使者指定を検討する。
家庭裁判所が、父又は母の請求により、子の利益のため必要と認めるときに、その事項を一方が単独で行うことができる旨を定める仕組みである。

日常の行為や急迫の事情に該当するかという問題と、裁判所の指定を受ける必要があるかという問題を混同しない。
相手が返事をしない、又は反対しているという事実だけから、すべての行為について単独行使が可能になると考えないようにする。

第3 親権行使者指定で求めること
1 対象とする行為を具体的にする

裁判所の案内は、重要な事項の例として居住場所の決定、進学先に係る契約、重大な医療行為に関する同意等を挙げ、15歳未満の子の氏変更許可申立ての法定代理も指定の対象となる例に含めている。
申立てでは、誰が、どの子について、どの行為を単独で行えるようにすることを求めるのかを明らかにする。

「子どものことを全部自分で決めたい」という希望と、具体的な契約又は申立てのために指定を求めることは区別する。
一方の希望だけでなく、その行為が子どもの生活に必要な理由、他の選択肢、相手との意見の違いを整理することが有用である。

2 調停と審判の申立先を区別する

(続きを読む...)共同親権で相手が同意しないとき―親権行使者指定と子の氏・進学・転居(AI作成)

公正証書遺言の作り方―必要書類・費用・証人・完成までの流れ(AI作成)

目次

第1 作成の全体像と相談先1 公証役場に直接相談できる2 準備から完成までの順序第2 相談前に整理する財産と希望1 財産と渡したい相手を対応させる2 家族関係と実現方法も相談する第3 必要書類を確認して集める1 本人,受け取る人及び財産の資料2 証人と遺言執行者の資料第4 原案,証人及び費用を確認する1 原案を自分の希望と照合する2 証人を2人以上確保する3 総額の見積りと内訳を確認する第5 作成当日の手続第6 完成後に確認すること第7 よくある疑問1 完成まで何日掛かるか2 病院や自宅で作れるか3 電子化されれば,必ずオンラインだけで完成するか第8 関連記事第9 出典
第1 作成の全体像と相談先

公正証書遺言を作るときは,財産と渡したい相手の整理,公証役場への相談,資料の提出,原案の確認,証人の手配,当日の手続の順に準備すると分かりやすい。
公証役場には直接相談でき,最初から完成した遺言書の原稿を持参する必要はない。

この記事は,初めて公正証書遺言を作る人が,何を準備して,誰に何を確認するかを整理するものである。
費用の詳しい計算,口授の有効性に関する裁判例及び作成後の検索は,末尾の専門記事で説明している。

1 公証役場に直接相談できる

日本公証人連合会は,士業者や銀行等を介さず,遺言者又は親族等から公証役場へ電話やメール等で相談できると説明している。
希望する内容,来所できるか,急ぐ事情があるかを伝え,必要な資料と打合せ方法を確認する。

分け方に対立がある場合や,遺留分,事業承継等を含めて検討したい場合は,公正証書の作成手続とは別に,弁護士への相談を検討するとよい。
専門家に依頼する場合は,原案作成,公証役場との連絡及び完成後の手続のうち,どこまでが依頼範囲かを確認する。

2 準備から完成までの順序

準備は,①財産と希望のメモを作る,②公証役場に相談する,③必要書類を提出する,④公証人の原案を確認する,⑤証人と日時を調整する,⑥当日の手続を行う,⑦交付物と保管方法を確認する,という順序で整理できる。
資料の不足や原案の修正があれば前の段階に戻るため,初回の相談と作成当日を同じ手続として考えない方がよい。

第2 相談前に整理する財産と希望
1 財産と渡したい相手を対応させる

まず,不動産,預貯金等の主な財産と,それを誰に,どのように渡したいかを書き出す。
日本公証人連合会の作成手順の案内も,財産と相続又は遺贈の希望を記載したメモの提出を挙げている。

メモは,法律用語で整える前に,「自宅を配偶者に」「この預金を長女に」など,自分の希望を確認できる形にするとよい。
その上で,対象を特定できるか,書き漏らした財産をどうするか,受け取る予定の人が先に亡くなった場合をどうするかを,公証人等との打合せで詰める。

2 家族関係と実現方法も相談する

財産の配分だけでなく,家族関係,既に作った遺言の有無,遺言の内容を実現する人についても相談事項を整理しておく。
公正証書にすれば,遺言能力,遺留分その他の争いが必ずなくなるというものではない。

体調又は意思の伝達に不安がある場合は,作成当日まで待たず,具体的な事情を公証役場に伝える。
本人の希望を家族だけで決めてしまわないことも大切である。

第3 必要書類を確認して集める
1 本人,受け取る人及び財産の資料

必要資料は案件によって異なるため,公証役場に確認してから集める。
日本公証人連合会は,本人確認資料のほか,続柄を示す戸籍,受遺者の住所を確認できる資料,不動産の評価・登記資料,預貯金を特定する資料等を挙げている。

相談時には,誰との続柄を証明する戸籍か,どの不動産・口座を記載するかを対応させておくと,追加取得の理由を確認しやすい。

(続きを読む...)公正証書遺言の作り方―必要書類・費用・証人・完成までの流れ(AI作成)

医療費保証会社による立替えとは―保証料0円でも未払医療費が消えない理由と個人情報の提供(AI作成)

目次

第1 医療費保証制度の仕組み第2 保証料0円と債務免除は違う第3 身元保証人・連帯保証人との違い第4 同意書で提供される個人情報第5 申込前後に確認する事項第6 入院拒否との関係第7 資料の射程と判例確認状況第8 出典
第1 医療費保証制度の仕組み

医療費保証制度は,患者が入院費等を支払わなかった場合に,保証会社が医療機関へ立替払いをし,その後,患者に立替金を請求する仕組みである。医療機関にとっては未収金対策となるが,患者にとって医療費が免除される制度ではない。

関西電力病院は,令和8年9月1日から,入院患者を対象にジェイリース株式会社の「医療費用保証制度」を導入した。同病院の案内では,患者の保証料負担はなく,未払金が生じた場合に同社が病院へ立替払いを行い,患者は同社に立替金を支払うとされている。

この仕組みは,病院・保証会社・患者の三者関係を契約書と同意書で設計した個別制度である。他の病院で同じ名称が使われていても,保証範囲,審査,個人情報の提供先,遅延損害金等は同一とは限らない。

第2 保証料0円と債務免除は違う

「保証料0円」は,保証サービスの利用料を患者が別途負担しないという意味である。未払医療費そのものが0円になるわけではない。

関西電力病院の案内によれば,保証の対象には,健康保険の自己負担分だけでなく,差額ベッド代,文書料その他の自費・実費分も含まれる。患者が病院に支払わず保証会社が立て替えたときは,支払先が病院から保証会社に変わるのであり,最終的な患者負担は残る。

したがって,高額療養費の自己負担限度額,差額ベッド代の請求可否,医療費保証による立替えは,別々に検討しなければならない。高額療養費の対象外となる費用が保証範囲に含まれることもあり,保証対象であることは請求の法的根拠が確定したことを意味しない。

第3 身元保証人・連帯保証人との違い

家族等が個人として入院費を保証する場合,将来発生する不特定の債務を保証する個人根保証契約に当たれば,民法465条の2により極度額を定める必要がある。

これに対し,医療費保証会社は法人であり,患者の家族に代わって身元引受,医療同意,退院時の引取り等を一括して行うとは限らない。少なくとも関西電力病院の案内が示す中心的機能は,未払医療費の立替えである。

「身元保証人がいないこと」と「医療費保証会社の制度を利用すること」は同義ではない。病院が患者に求めているのが,金銭債務の担保,緊急連絡,医療同意,退院支援,遺体・遺品の引取りのどれであるかを分解して確認する必要がある。

第4 同意書で提供される個人情報

関西電力病院が公表する個人情報取扱いに関する同意書は,保証会社が取得・利用し得る情報として,氏名,性別,生年月日,住所,電話番号,国籍,職業,勤務先,月収等を掲げる。さらに,診療費等支払契約の内容,支払状況,身分証明書,画像・音声,公開情報,生体認証情報,病名等も対象に含めている。

利用目的には,保証の審査,保証契約の締結・履行,立替後の求償,サービスの案内・品質向上等が含まれる。保険会社等への第三者提供が予定される場合もある。

同意書は,法令上の例外等を除き,提出された情報を返却・削除しない旨も定めている。患者は,単に病院へ氏名等を記入する書類と考えず,誰が,どの情報を,何の目的で,いつまで利用し,どの第三者に提供するのかを確認する必要がある。

病名や診療情報は要配慮個人情報に当たり得る。もっとも,本記事は公表同意書の内容を整理するものであり,個々の取得・提供が個人情報保護法上適法か,説明が十分かは,実際の取得経路,同意の態様,委託・共同利用・第三者提供の区別等を確認して判断する必要がある。

第5 申込前後に確認する事項

患者側は,少なくとも次の点を確認するとよい。

①保証会社,保証期間及び保証対象となる費用
②保証料,事務手数料,遅延損害金その他の追加負担
③立替えが実行される条件と,実行前に患者へ連絡があるか
④立替後の請求方法,分割払いや相談窓口
⑤取得される個人情報,利用目的,保存期間及び第三者提供先
⑥審査に通らなかった場合の入院・支払方法
⑦差額ベッド代等,請求自体に争いがある費用の取扱い

未払が生じた場合は,病院の請求書と保証会社の請求書を突き合わせ,対象期間,費目,立替日,立替額を確認する。二重払いを避けるため,病院へ直接支払った後に保証会社から請求を受けた場合は,領収書を示して精算状況を確認する。

第6 入院拒否との関係

厚生労働省は,入院による加療が必要であるにもかかわらず,身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒否することは,医師法19条1項に抵触すると通知している。

(続きを読む...)医療費保証会社による立替えとは―保証料0円でも未払医療費が消えない理由と個人情報の提供(AI作成)

遺言に書いていない財産が見つかったら―残余財産条項と追加の遺産分割(AI作成)

目次

第1 財産の名前がないことと,遺言の対象外であることは同じではない第2 最初に分けて調べる3つの問題1 本当に遺産に属する財産か2 遺言の別の条項に含まれていないか3 名前や番号が変わっただけではないか第3 残余財産条項がある場合の確認事項第4 遺言で処分されていない財産はどうするか第5 遺言執行者がいても,分け方を自由に決められるわけではない第6 生前に遺言を見直す場合の確認事項第7 相談時にそろえる資料第8 出典
第1 財産の名前がないことと,遺言の対象外であることは同じではない

遺言に記載されていない預金や不動産が見つかったときは,その財産だけを見て,直ちに相続人全員で分けると決めないことが重要である。
「その他一切の財産」等の条項や,財産全体の承継を定める記載によって,個別の名称がない財産も対象に含まれることがあるためである。

最初に,遺言全文と財産目録,ほかの遺言の有無及び新たに見つかった財産の資料をそろえる。
その上で,遺言の対象か,対象であれば誰が取得するか,対象外であればどの手続が必要かを順に検討する。

本記事は,相続人が複数いる一般的な相続を念頭に,確認の順序を整理する。
相続人がいない場合,外国法が関係する場合及び個別の権利の帰属に争いがある場合は,別の検討が必要となる。

第2 最初に分けて調べる3つの問題
1 本当に遺産に属する財産か

名義,契約,取得経緯及び死亡時の権利関係を確認する。
通帳や証券が見つかったという外形だけで,記載された金額の全てが遺産であると確定するわけではない。
財産の帰属に疑問がある場合は,その点を先に整理する。

2 遺言の別の条項に含まれていないか

個別の財産目録に名前がなくても,「全財産」「その余の財産」「その他一切の財産」等の記載がないかを確認する。
包括的な処分,相続分の指定又は遺産分割方法の指定等も含め,遺言全体との関係を読む必要がある。

民法964条は,遺言者が財産の全部又は一部を処分することを認め,908条は,遺産分割方法の指定等を定めている。
個々の財産名が列挙されていないという事情だけでは,遺言で処分されていないとは断定できない。

3 名前や番号が変わっただけではないか

金融機関の合併,支店名や口座番号の変更等があるときは,旧資料と現在の資料を照合する。
元の財産と同一なのか,解約・売却等によって別の財産になったのかを分けて調べる。
番号の違いだけで遺言の対象外と決めず,反対に,元の財産の価値が残っているという理由だけで,新しい財産まで当然に同じ条項の対象としないことが大切である。

第3 残余財産条項がある場合の確認事項

残余財産条項とは,個別に承継先を指定した財産以外の財産について,承継先等を定める条項をいう。
「その他一切の財産をAに相続させる」という記載は,その典型例である。

ただし,この一文だけで全ての事案の結論が決まるわけではない。
「その他」がどの財産を除いた範囲を指すか,別紙目録との関係,後の遺言の有無及び受益者の先死亡等を確認する。

財産目録には,発見した財産,根拠資料,関係する遺言条項,予定する取得者及び未確認事項を対応させる。
相続人や金融機関へ説明するときも,「財産名がないが,この条項に含まれると考える」という理由を示せるようにする。

受益者が先に死亡した場合等の備えは,予備的遺言で説明している。

(続きを読む...)遺言に書いていない財産が見つかったら―残余財産条項と追加の遺産分割(AI作成)

遺産分割協議書への署名・押印を求められたら―税務申告用と言われた場合の確認事項(AI作成)

目次

第1 税務の提出目的と,財産の分け方への合意を分けて確認する第2 署名前に確認する6項目1 誰の相続について,誰が合意する書面か2 財産と債務の資料が示されているか3 自分が取得するものと,取得しないものは何か4 対象は一部の財産か,遺産全体か5 同時に提出する書類は何をするためのものか6 口頭の説明と書面が食い違っていないか第3 未分割でも相続税の申告期限は延びない第4 確認を求めるときの伝え方第5 既に署名した場合,資料を残して早めに相談する第6 関連記事第7 出典
第1 税務の提出目的と,財産の分け方への合意を分けて確認する

遺産分割協議書への署名・押印を求められ,「相続税の申告に必要なだけ」「取りあえず署名してほしい」と説明された場合でも,書面に誰がどの財産を取得するかが書かれているなら,その分け方に同意できるかを確認する必要がある。

税務署へ提出するという使用目的と,相続人間で財産の取得者を決めるという書面の内容は,別の確認事項である。
口頭の説明だけで判断せず,協議書の全ページ,別紙の財産目録及び併せて求められている書類を受け取って読むことが出発点となる。

本記事は,署名前に確認する事項を整理する。
署名の有無だけで協議の成立や取消しの可否を決めるものではない。
既に署名した場合の錯誤取消し等は,遺産分割協議における錯誤取消しを参照されたい。

第2 署名前に確認する6項目
1 誰の相続について,誰が合意する書面か

亡くなった人,相続人及び代理人の表示を確認する。
遺言の有無,相続放棄の有無,別の相続が重なっていないかも,分け方を検討する前提となる。
相続関係に疑問があるときは,戸籍等の確認資料も求める。

2 財産と債務の資料が示されているか

財産目録だけでなく,預貯金の残高資料,不動産の登記事項や評価資料,有価証券の残高資料,借入れ等の資料を確認する。
評価日,死亡後の払戻し及び現在の保管先が分からない場合は,未確認事項として書き出す。

3 自分が取得するものと,取得しないものは何か

各財産の取得者,割合及び金額を読み取る。
自宅を取得する代わりに代償金を支払う場合は,支払額,期限及び資金の見込みも確認する。
税金が少なくなるという説明と,自分が実際に取得する財産の内容を分けて検討する。

4 対象は一部の財産か,遺産全体か

特定の預金だけの協議なのか,全ての遺産についての最終合意なのかを確認する。
後で見つかった財産の取得者を定める条項,追加請求をしない旨の条項及び債務の負担条項があれば,その範囲も読む。
「この預金の手続だけ」という説明と,書面が扱う範囲が一致しているかが重要である。

5 同時に提出する書類は何をするためのものか

印鑑登録証明書,金融機関所定の相続手続書類,委任状及び特別受益に関する証明書等は,それぞれ内容が異なる。
書類名だけで同じ手続と考えず,提出先,受領する人,代理権の範囲及び財産の払出先を確認する。

6 口頭の説明と書面が食い違っていないか

「後で分け直す」「今回は仮の書類」という説明がある場合は,誰が,いつ,どの財産を,どの条件で分け直すという話なのかを具体化する。
説明者へ確認した質問,回答及び修正された案を残し,書面の内容に疑問が残る状態で判断を急がないことが大切である。

(続きを読む...)遺産分割協議書への署名・押印を求められたら―税務申告用と言われた場合の確認事項(AI作成)

被保佐人の死亡後に元保佐人は入院費・直葬費を支払えるか―相続放棄・債務超過時の対応(AI作成)

目次

第1 結論1 四つの確認を終えるまで支払を保留する2 相続放棄できるかという問題とは分ける第2 成年後見人と保佐人では死亡後の権限が異なる1 本人の死亡により代理権は消滅する2 民法873条の2は保佐人に準用されない3 応急処分と事務管理の限界第3 最後の入院費を支払う前に確認すること1 誰の債務であるか2 弁済期が来ていても元保佐人の支払権限は別問題である3 債務超過の可能性があるときは個別弁済を急がない第4 直葬費を支払う前に確認すること1 直葬の契約者を確認する2 大阪高裁平成14年7月3日決定の射程第5 預貯金を支払原資にするときの問題1 手元現金と凍結口座を分ける2 死亡前の引出しを一般的な解決策にしない第6 相続人が相続放棄を検討している場合1 元保佐人が相続放棄の可否を決めるわけではない2 全員放棄後の不動産は市町村へ自動的に移らない第7 元保佐人の確認手順1 支払前の確認表2 記録しておく事項第8 令和8年成年後見制度改正との関係第9 出典・参考資料1 法令及び公的資料2 裁判例3 関連記事

被保佐人が死亡した後に入院費や直葬費の請求が届いても,元保佐人が相続財産から直ちに支払えるとは限らない。
成年後見人の死後事務,相続人の相続放棄への影響及び債務超過の相続財産からの支払は,それぞれ別の問題である。
本記事は,令和8年10月26日現在の現行法を基準として,元保佐人が確認すべき権限,原資,債務の性質及び支払の順序を整理するものである。

第1 結論
1 四つの確認を終えるまで支払を保留する

元保佐人が最初に確認すべき事項は,①本人の死亡時に有していた代理権の範囲,②請求された費用の契約者及び発生時期,③相続財産と相続債務の概算額,④相続人の所在及び相続放棄の予定である。
これらを確認しないまま,預貯金から入院費又は直葬費だけを全額支払うことは避けるべきである。

本人の死亡により,保佐人の代理権は消滅する。
元保佐人には民法873条の2が準用されないため,成年後見人と同じ死後事務の権限があるものとして処理することはできない。
元保佐人が死亡後に行動できる余地は,主として民法876条の5第3項が準用する654条の応急処分及び民法697条以下の事務管理によって検討することになる。

2 相続放棄できるかという問題とは分ける

相続人が相続財産から葬儀費用を支払った場合に法定単純承認となるかという問題と,元保佐人がその支払をする権限を有するかという問題は異なる。
大阪高裁平成14年7月3日決定は前者を扱った裁判例であり,元保佐人の権限や,債務超過時にどの債権者へ支払うべきかを判断した裁判例ではない。

第2 成年後見人と保佐人では死亡後の権限が異なる
1 本人の死亡により代理権は消滅する

民法111条1項1号により,代理権は本人の死亡によって消滅する。
本人の生前に財産管理に関する代理権を付与されていた保佐人であっても,死亡後にその代理権をそのまま行使することはできない。

死亡後に必要となる事務は,生前の代理権の延長ではなく,任務終了後の応急処分又は事務管理等の別の根拠に当てはめる必要がある。
生前の代理行為目録は,元保佐人が担当していた事務の範囲を確認する資料になるが,死亡後の包括的な処分権限を新たに生じさせるものではない。

2 民法873条の2は保佐人に準用されない

民法873条の2は,成年被後見人の死亡後に成年後見人が行う保存行為,弁済期が到来した債務の弁済及び家庭裁判所の許可を要する一定の行為を定める。
しかし,保佐人について任務終了後の規定を準用する民法876条の5第3項は,民法873条を掲げる一方で,873条の2を掲げていない。
したがって,元保佐人は,凍結口座からの払戻しについて民法873条の2第3号の許可を申し立てることができない。

成年被後見人の死亡後の事務は成年被後見人が死亡した後に元後見人ができることで扱っているが,その結論を被保佐人の事案へそのまま移すことはできない。

3 応急処分と事務管理の限界

民法876条の5第3項が準用する654条は,任務終了後に急迫の事情があるとき,相続人等が事務を処理できるまで必要な処分をすることを求める。
これは,放置すると本人の財産又は関係者の利益に差し迫った損害が生じる場面のための規定であり,一般的な遺産処理を元保佐人へ委ねる規定ではない。

民法697条以下の事務管理による場合も,事務の性質に従い,最も本人の利益に適合する方法で管理しなければならず,本人の意思が知れているときはその意思に従う必要がある。
死亡後の事務では,相続人全体の利益,債権者との関係及び相続財産の状態を確認し,元保佐人の便宜だけで支払先を選ばないことが重要である。

(続きを読む...)被保佐人の死亡後に元保佐人は入院費・直葬費を支払えるか―相続放棄・債務超過時の対応(AI作成)

成年後見制度改正で悪質商法から本人を守れるか―通販・訪問販売の取消しと権限の選び方(AI作成)

目次

第1 結論――成年後見の取消権と消費者法上の解除・取消しは別である第2 高齢者の消費者被害はどのように起きているか1 軽度の認知機能低下でも被害は起こる2 定期購入,訪問・電話勧誘及び住宅修理が目立つ第3 現行の成年後見制度による取消し1 成年被後見人の法律行為2 被保佐人・被補助人の法律行為3 審判前又は権限外の契約第4 令和8年改正後の取消権1 必要な行為を選ぶ補助へ一元化される2 特定補助は法定の重要な財産行為を広く対象にする3 国会は消費者被害の拡大防止を附帯決議にした第5 通信販売・訪問販売・電話勧誘販売の違い第6 申立て段階で権限を選ぶための確認事項1 被害又は危険のある契約を具体化する2 同意権・取消権と代理権を分ける3 金融機関の取引は別稿も確認する第7 被害を発見した後に保存する資料第8 出典・参考資料
第1 結論――成年後見の取消権と消費者法上の解除・取消しは別である

悪質商法への対応では,成年後見制度による同意権・取消権と,特定商取引法や消費者契約法によるクーリング・オフ・取消しを分けて確認する必要がある。
現行法では,成年被後見人がした法律行為は日用品の購入その他の日常生活に関する行為を除き取り消すことができる。被保佐人又は被補助人については,審判で定められた行為の範囲が重要である。
令和8年法律第45号の施行後は,後見と保佐が廃止され,補助へ一元化される。取消しが必要な取引を申立て段階で具体的に捉え,個別の同意権・取消権又は特定補助を選ぶことが,現在以上に重要になる。
通信販売には原則としてクーリング・オフがない。他方,訪問販売や電話勧誘販売には原則8日間のクーリング・オフがあり,不実告知等があれば別の取消しが問題になる。販売方法,契約日,書面,審判内容及び本人の判断能力を一件ずつ確認する必要がある。

第2 高齢者の消費者被害はどのように起きているか
1 軽度の認知機能低下でも被害は起こる

消費者庁の研究と国会審議では,認知機能の低下が重い場合だけでなく,軽度認知障害や認知症と認定される前の段階でも被害が生じ,本人が被害に気づきにくく,家族,医療・福祉関係者又は地域の第三者の偶発的な気づきに依存することが指摘されている。
後見開始等の審判がない時期の被害は成年後見制度の取消権だけでは救済できないため,早期発見と消費生活相談との連携が必要になる。

2 定期購入,訪問・電話勧誘及び住宅修理が目立つ

消費者庁が令和8年に公表した研究資料では,医療福祉関係者が把握した高齢者の消費者被害の主要類型として,健康食品・化粧品・医薬品等の定期購入が32.2%,訪問・電話勧誘が23.6%,住宅修理が23.1%,訪問購入が19.7%と整理されている。
この調査は医療福祉関係者の経験事例を記述的に整理したものであり,全国の被害件数全体にそのまま一般化できる統計ではない。しかし,後見実務で確認すべき契約類型を具体化する資料として有用である。

第3 現行の成年後見制度による取消し
1 成年被後見人の法律行為

民法9条は,成年被後見人の法律行為を取り消すことができるとし,日用品の購入その他日常生活に関する行為を除外している。
高額な健康食品の継続購入,大規模な住宅修理,投資商品等が日常生活行為に当たるかは,契約の内容,金額,頻度,本人の生活状況等を踏まえて個別に検討する。
取消しの可否は,単に本人が認知症であることではなく,契約時にどの審判が効力を有していたか,契約が本人自身の行為か代理人の行為か,日常生活行為の例外に当たるかを確認して判断する。

2 被保佐人・被補助人の法律行為

保佐では民法13条1項の重要な財産行為について法定の同意権・取消権があり,審判でその範囲を拡張できる。
補助では,申立ての範囲内で家庭裁判所が定めた特定の法律行為について同意権・取消権が生じる。
したがって,保佐人又は補助人という名称だけでは取消しの可否を判断できない。登記事項証明書,審判書,確定証明書及び同意行為目録を確認する必要がある。

3 審判前又は権限外の契約

後見等開始前の契約や,保佐・補助の同意権の範囲外の契約には,成年後見制度上の取消権を当然には行使できない。
その場合でも,契約時の意思能力,錯誤,詐欺・強迫,消費者契約法上の取消し,特定商取引法上のクーリング・オフ等を検討する余地がある。
取消権の根拠ごとに要件,期間,相手方及び返還関係が異なるため,通知書では根拠を混同しないことが重要である。

第4 令和8年改正後の取消権
1 必要な行為を選ぶ補助へ一元化される

令和8年法律第45号の施行後は,判断能力の程度による後見・保佐・補助の三類型から,必要な権限を選ぶ補助へ一元化される。
家庭裁判所は,特定の重要な財産上の行為について本人に補助人の同意を要する旨の審判をすることができ,同意を得ずにした行為について取消しが問題になる。

(続きを読む...)成年後見制度改正で悪質商法から本人を守れるか―通販・訪問販売の取消しと権限の選び方(AI作成)

成年後見の市町村長申立てはなぜ遅い?相談から審判までの期間と急ぐ場合の対応(AI作成)

目次

第1 結論――「申立て前」と「申立て後」の期間を分けて考える第2 市町村長申立てとは1 親族等による申立てを期待できない場合の制度である2 市区町村長申立ては成年後見事件の約4分の1を占める第3 市町村長申立てはなぜ遅くなるのか1 親族調査と人員不足が主要な課題である2 長期間待たされることが常態化しているとの公的指摘もある第4 相談から審判までの流れと期間1 相談・情報収集・支援方針の検討2 親族調査・診断書・申立書類の作成3 家庭裁判所への申立て後第5 急ぐ場合に検討すること1 緊急事案では親族調査を申立て後と並行できる2 審判前の保全処分を検討する3 本人申立てへ安易に切り替えない第6 費用と相談先第7 令和8年改正との関係第8 出典・参考資料
第1 結論――「申立て前」と「申立て後」の期間を分けて考える

市町村長申立てに要する期間を考えるときは,市区町村が相談を受けてから家庭裁判所へ申し立てるまでの準備期間と,家庭裁判所が申立てを受理してから審判に至るまでの審理期間を分ける必要がある。
前者について全国一律の標準期間は公表されておらず,戸籍による親族調査,親族への意向確認,診断書の取得及び庁内の担当者不足などにより長期化し得る。
後者については,最高裁判所の令和7年統計で成年後見関係事件の71.1%が2か月以内,93.8%が4か月以内に終局している。ただし,この数字は市区町村への相談開始からの総期間ではない。
虐待や財産流出のおそれがある緊急事案では,親族調査を申立て後も並行して行う,養護者である親族への意向調査を省略する,審判前の保全処分を併せて検討する,といった対応が公式資料で示されている。

第2 市町村長申立てとは
1 親族等による申立てを期待できない場合の制度である

法定後見は,本人,配偶者又は四親等内の親族等が家庭裁判所へ申し立てるのが基本である。
しかし,身寄りがない,親族がいても申立てを期待できない,虐待をしている親族に申立てを委ねられないなど,本人の権利を守るために市町村の関与が必要な場合がある。
このため,老人福祉法32条,知的障害者福祉法28条及び精神保健福祉法51条の11の2は,各対象者について市町村長による審判請求を認めている。

2 市区町村長申立ては成年後見事件の約4分の1を占める

厚生労働省が最高裁判所の統計を基に整理した資料によれば,令和7年に市区町村長が申し立てた事件は1万139件であり,申立人別総数の23.7%を占めた。
都道府県別の割合は11.4%から45.0%まで開きがあり,制度の入口としての市区町村の役割と運用状況には地域差がある。

第3 市町村長申立てはなぜ遅くなるのか
1 親族調査と人員不足が主要な課題である

厚生労働省の令和4年度調査研究の中間報告では,高齢者部門の回答1,068市町村が挙げた課題として,2親等内親族の存在を調べる戸籍調査に時間を要するとの回答が83.3%,親族からの返答に時間を要するとの回答が65.1%,業務量に比べ担当職員が不足して申立てまでに時間がかかるとの回答が58.2%であった。
本人の生活状況や財産状況の把握,診断書及び本人情報シートの準備,申立ての必要性と類型の検討も必要であるため,必要書類だけを機械的に集めれば直ちに申立てに進めるわけではない。

2 長期間待たされることが常態化しているとの公的指摘もある

第二期成年後見制度利用促進基本計画は,一部の市町村で申立てまで長期間待たされることが常態化し,本人が申立手続を行うのが難しいのに無理に本人申立てをせざるを得ない例があるとの指摘を記載している。
同計画は,市町村長申立ての事務を迅速に処理できる体制の整備と,都道府県による研修・助言を求めている。
したがって,申立てが遅い場合に,個別担当者の対応だけを問題にするのではなく,親族調査の進捗,診断書等の未了事項,庁内決裁及び候補者調整のどこで止まっているかを具体的に確認する必要がある。

第4 相談から審判までの流れと期間
1 相談・情報収集・支援方針の検討

市区町村は,地域包括支援センター,障害者相談支援事業所,医療機関,施設,社会福祉協議会等から相談又は情報提供を受け,本人の判断能力,生活上の課題,財産被害の危険及び他の支援手段の有無を整理する。
この段階は家庭裁判所への申立て前であり,最高裁判所の審理期間統計には含まれない。

2 親族調査・診断書・申立書類の作成

市町村長申立ての標準的な流れでは,戸籍による親族調査,親族の申立意思の確認,後見登記の確認,本人情報シート及び診断書の準備,申立内容と候補者の検討,申立書類の作成を経る。
本人の住所地と実際の居所が異なる場合,費用負担や担当市町村の調整が必要になることもある。
相談者は,担当部署名,受付日,未了資料,次の判断予定日及び緊急性を裏付ける事情を時系列で整理して伝えると,どの段階にあるかを確認しやすい。

(続きを読む...)成年後見の市町村長申立てはなぜ遅い?相談から審判までの期間と急ぐ場合の対応(AI作成)

相続した非上場株式の会社買取りと税務―売渡請求・みなし配当の特例・取得費加算の期限と書類(AI作成)

目次

第1 会社法の手続と税務を一緒に確認する第2 売渡請求の2つの期限1 会社が一般承継を知ってから1年2 売渡請求の日から20日第3 会社へ売るときのみなし配当と特例1 取得費との差額がそのままみなし配当になるわけではない2 相続した非上場株式の特例3 届出は譲渡する時までに会社へ第4 取得費加算と相続税評価額の違い1 取得費加算は別の特例である2 3つの金額を分けて整理する第5 手続を並行して進めるための資料第6 価格が未確定のときの注意点第7 関連記事第8 出典
第1 会社法の手続と税務を一緒に確認する

相続した非上場株式を発行会社へ売却するときは,株式をいくらで売るかに加え,会社が取得できる手続と,相続人の税務上の取扱いを確認する必要がある。
会社法上の売渡請求の期限に対応していても,所得税の特例に必要な届出まで済んでいるとは限らない。

本記事は,令和8年10月25日時点の法令と国税庁資料に基づき,通常の相続で個人が取得した非上場株式を,発行会社へ金銭を対価として譲渡する場面を扱う。
会社法174条以下の売渡請求と,合意による任意の自己株式取得は,会社法上の手続が同じではない。
以下の1年・20日の期限は,174条以下の制度についての説明である。
現物を対価とする取引や限定承認などは,別途の検討を要する。

第2 売渡請求の2つの期限
1 会社が一般承継を知ってから1年

会社法174条は,相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対する売渡請求を,定款で定められるとしている。
会社は,その定めを前提に,請求の都度,株式数と対象者を株主総会で決定し(175条1項),その決議に基づいて請求する。
会社が一般承継を知った日から1年を経過したときは,この請求はできない(176条1項ただし書)。

2 売渡請求の日から20日

価格は会社と対象者との協議で定めるが,会社又は対象者は,売渡請求の日から20日以内に,裁判所へ価格決定を申し立てることができる。
裁判所は,請求時の会社の資産状態その他一切の事情を考慮する。
期間内に申立てがなく,協議も成立しなかったときは,売渡請求は効力を失う(177条)。

この20日は,会社が相続を知った日からの1年とは別の期限である。
会社から請求を受けた相続人は,価格資料が十分にそろっていない段階でも,申立期限への対応を検討する必要がある。
手続の詳細は,相続した譲渡制限株式を会社が買い取る方法―会社法174条から177条,定款,株主総会,価格決定及び期限を参照されたい。

第3 会社へ売るときのみなし配当と特例
1 取得費との差額がそのままみなし配当になるわけではない

個人が非上場株式を発行会社に譲渡する場合,通常は,受取対価のうち,譲渡した株式に対応する資本金等の額を超える部分がみなし配当となる。
会社全体の資本金等の額と比較するのでも,相続人の取得費との差額をそのままみなし配当とするのでもない。
国税庁のNo.1477は,この原則と相続時の特例を説明している。

2 相続した非上場株式の特例

租税特別措置法9条の7は,相続又は遺贈について納付すべき相続税額がある個人が,相続税の課税価格に算入された非上場株式を,その発行会社へ所定の期間内に譲渡する場合の特例を設けている。
適用されると,みなし配当課税を行わず,受取対価の全額を非上場株式の譲渡所得の収入金額として扱う。
非課税になる制度ではない。

期間は,相続開始日の翌日から,相続税申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までである。

(続きを読む...)相続した非上場株式の会社買取りと税務―売渡請求・みなし配当の特例・取得費加算の期限と書類(AI作成)

相続人の一人が借金を全額返したとき―他の相続人への請求と相続税の債務控除(AI作成)

目次

第1 全額を払った事実から結論を一つに決めない第2 債権者から請求される額と相続人間の負担1 遺言・合意・債権者の承認を確認する2 借入金ごとに整理する第3 他の相続人に請求できるか1 弁済の有効性と費用償還の根拠を分ける2 依頼を受けた場合と,受けていない場合第4 弁済による代位を確認する第5 相続税の債務控除は誰の欄に記載するか1 支払口座だけでは控除額を決めない2 仮例で支払額と負担額を分ける3 遺留分の計算とは別の表にする第6 支払前後にそろえる資料第7 関連記事第8 出典
第1 全額を払った事実から結論を一つに決めない

相続人の一人が被相続人の借入金を全額返済しても,その人が最終的に全額を負担することになるとは限らない。
債権者への弁済,相続人間での負担,立て替えた部分の回収,相続税の申告を分けて確認する必要がある。

本記事は,単純承認をした共同相続人が,通常の金銭債務を返済する場面を,現行法により説明する。
過去に開始した相続や改正前の契約・弁済については,当時の法令と経過措置を別に確認する必要がある。
相続放棄・限定承認を検討中の場合,保証債務・連帯債務の場合,国外居住者等が関係する場合は,別の規定や確認が必要になる。
国税庁タックスアンサーNo.4126の法令等基準日は令和8年4月1日であり,本記事の確認日は令和8年10月25日である。

弁護士と税理士が資料を共有するときも,「誰の口座から支払ったか」と「誰がいくら負担するか」を別の欄に記録することが,整理の出発点になる。

第2 債権者から請求される額と相続人間の負担
1 遺言・合意・債権者の承認を確認する

被相続人の借入金について相続分の指定がある場合,民法902条の2は,債権者が各共同相続人に対し法定相続分に応じて権利を行使できることを定めている。
ただし,債権者が共同相続人の一人に対し,指定相続分に応じた債務の承継を承認したときは,この限りでない。

したがって,遺言や相続人間の負担の取決めを読んだだけで,銀行等への責任がなくなったと判断しない。
遺言の内容,相続人間の合意に加え,債権者が何を承認したかを確認する。

2 借入金ごとに整理する

実務上は,借入先,死亡時の残高,担保・保証の有無,遺言の該当条項,相続人間の負担割合,債権者への説明・承認,返済日と返済原資を一つの表にする。
相続財産の受取額だけから借入金の負担割合を逆算する方法は避ける。

「預金を多く取得したから借金も全部負担する」という説明を採るなら,それを支える遺言の解釈又は具体的な合意を確認する必要がある。

第3 他の相続人に請求できるか
1 弁済の有効性と費用償還の根拠を分ける

民法474条1項は「債務の弁済は、第三者もすることができる。」と定める。
一方で,正当な利益を有しない第三者については債務者や債権者の意思による制限があり,債務の性質による制限や,当事者が第三者の弁済を禁止し,又は制限する旨の意思表示による制限もある。
他の相続人の債務を支払う部分は,これらを確認して弁済の有効性を検討する。

有効に支払ったことだけで,相手の相続人に同じ金額を請求できると決まるわけではない。
依頼を受けた立替えなのか,依頼を受けず本人のために事務を処理したのか,返済を求めない援助なのかを確認する。

2 依頼を受けた場合と,受けていない場合

委任に基づき必要な費用を支出した場合は,民法650条1項による費用償還を検討する。
依頼書やメールに,対象債務,支払額,返してもらう範囲と時期を残すと,後の説明に役立つ。

依頼を受けていない場合は,事務管理の要件を満たすかを確認する。

(続きを読む...)相続人の一人が借金を全額返したとき―他の相続人への請求と相続税の債務控除(AI作成)

子の監護者はどう決まるか―4つの着眼点と判断資料(AI作成)

目次

第1 監護者指定で判断されること1 親権者・監護者・親権の行使方法を分ける第2 養育を評価する4つの着眼点1 従前の監護状況2 今後の監護態勢3 子との関係性4 他方の親と子の関係に対する姿勢第3 子の個別事情と裁判例の読み方1 15歳になるまで希望が考慮されないわけではない2 きょうだいの関係も一人ずつ検討する3 不貞の責任と養育への影響を区別する4 共同監護が機能している場合と,争いが激しくなった場合第4 主張と資料を整理するときの手順第5 出典
第1 監護者指定で判断されること

子の監護者を定めるときの中心は,子の利益である。
父母のどちらが婚姻の破綻に責任を負うかという問題と,これから誰の下でどのような養育を受けることが子の利益にかなうかという問題は,分けて考える必要がある。

民法766条は,父母が離婚する場合の監護者又は監護の分掌,親子交流,費用分担等について,子の利益を最も優先して考慮するものとしている。
父母の話合いで定められない場合等には,家庭裁判所の手続が問題になる。

本記事は,令和8年10月24日を確認日として,現行法と,司法研修所編『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』(法曹会,令和6年)の整理及び裁判例を用いて,何を具体的な事実として示すかを説明する。
同書は令和8年4月1日の改正法施行前に刊行された研究であり,以下の4着眼点は裁判所を拘束する4つの法定要件ではない。

1 親権者・監護者・親権の行使方法を分ける

令和8年4月1日施行後は,離婚後に父母双方を親権者とすることも可能になった。
もっとも,双方が親権者であることと,子が双方の家で同じ期間生活することは同じではない。
監護者を定めるか,監護を分掌するか,親子交流や費用をどうするかを具体的に考える必要がある。

民法824条の3による監護者は,監護及び教育,居所の指定等の身上監護に関する権利義務を単独で行使する。
裁判所の案内も,重大な医療,転居,進路等に関する決定と,財産管理・身分行為を区別している。
親権者と監護者の呼び名だけで,全ての法律行為を一人でできると理解しないことが大切である。

第2 養育を評価する4つの着眼点
1 従前の監護状況

これまで,いつ,誰が,どのような養育を担ってきたかを整理する。
食事や送迎だけでなく,受診,園・学校との連絡,学習,生活上の困難への対応なども,実際の分担が分かるようにする。

父母の役割が時期によって変わった場合には,出産後,就職・転職後,別居前後を分ける。
福岡高裁令和元年10月29日決定は,乳児期の母の監護だけでなく,その後の父の監護,子の学校生活,母との交流等を検討した。
母の申立てを却下した決定であり,主文で父を監護者に指定した決定ではない。

2 今後の監護態勢

これからの生活を,実行できる計画として示す。
住居,通学,勤務時間,健康上の支援,親本人と補助者の分担を,平日・休日の予定に結び付ける。

祖父母等の助けがあることだけで有利・不利が決まるわけではない。
補助者が何を担当でき,その協力が続く見込みがあるか,親本人が子の状態を把握して必要な対応をできるかが,具体的な検討事項になる。
本研究は4着眼点を同じ配点の採点表とせず,将来の監護を評価する上で監護態勢の影響が大きいと整理している。

3 子との関係性

子が各親とどのような経験を重ね,困ったときに誰に頼り,現在の生活をどう受け止めているかを考える。

(続きを読む...)子の監護者はどう決まるか―4つの着眼点と判断資料(AI作成)

子の引渡しの保全処分―急いで対応する場合の判断と必要な資料(AI作成)

目次

第1 監護者指定の結論と,直ちに引き渡す必要性は別である1 本案の見通しと,待てない事情を別々に示す第2 保全の必要性を,具体的な事情から考える1 現在の世話に問題がなくても,それだけで結論は出ない2 面会後に返さなかったことだけで,保全が必ず認められるわけではない3 通園先からの連れ出しと,従前の状態への回復4 申立て後の事情の変化も確認する第3 申立てに向けて整理する資料第4 抗告・執行・他の手続との違い1 抗告しただけで当然に執行が止まるわけではない2 執行の2週間は,誰への送達から数えるか3 調停中の処分,間接強制,民事請求を区別する第5 引渡しを実施するときに引き継ぐ情報第6 出典
第1 監護者指定の結論と,直ちに引き渡す必要性は別である

子を引き渡してほしいときは,最終的に誰が監護するのがよいかという問題と,その判断を待たずに現在の監護状態を変える必要があるかという問題を分けて整理する。

家事事件手続法157条1項は,子の監護に関する処分の審判又は調停が申し立てられた場合に,子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるとき,仮の地位を定める仮処分等を命じ得るものとしている。
最終的な監護者指定の見込みがあるという説明だけで,保全の必要性まで当然に認められるわけではない。

本記事は令和8年10月24日を確認日として,現行条文と,判文を確認した裁判例,司法研修所編『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』(法曹会,令和6年)の整理を基に説明する。
同書は令和8年4月1日の改正法施行前に刊行された研究であり,そこで紹介される全ての事例の結論が,現在のどの事件にも当てはまるものではない。

1 本案の見通しと,待てない事情を別々に示す

本研究は,本案で申立てが認められる蓋然性と,保全の必要性を分けて検討する。
家事事件手続法109条は,保全処分について疎明によるものとしている。

まず,従前・現在・今後の監護態勢,子との関係,他方の親との関係への配慮等を整理する。
その上で,安全,養育環境の変化,重要な関係が断たれている影響等について,何が起こり,判断を待つ間にどのような不利益が生じるかを具体化する。

監護者指定の判断資料は,子の監護者はどう決まるかを参照されたい。

第2 保全の必要性を,具体的な事情から考える
1 現在の世話に問題がなくても,それだけで結論は出ない

京都家裁平成29年2月17日審判は,父の下での監護にも配慮が認められる一方,従前の母による監護,今後の監護態勢,母子関係が分断される負担等を検討し,仮の引渡しを認めた。
母が主として世話をしてきたことだけで,どの事件でも保全が認められるという事例ではない。

福岡家裁平成26年11月14日審判は,子が施設で安定して生活していた事案で,従前の実父との日常生活を早期に取り戻す必要と,本案確定まで時間を要すること等から,実父を仮の監護者と指定した。
実母・養父・実父という身分関係と,従前の養育・施設措置の経緯がある特殊な事案である。
施設で問題なく過ごしていれば保全は認められない,という説明にはならないが,誰にでも同じ申立てができることを示したものでもない。

2 面会後に返さなかったことだけで,保全が必ず認められるわけではない

東京高裁平成24年10月18日決定は,面会後に子を返さなかった経緯,従前の監護,現在の生活等を検討し,子を強制的に奪った場合と同視できるとはせず,保全処分を取り消した。

他方,大阪高裁平成30年3月9日決定では,子を引き渡した経緯,従前の主たる監護者,親子の関係等が検討され,母を監護者に指定して引渡しを命じた。
ただし,こちらは本案の決定であり,保全が認められた事例として並べてはならない。

返還予定や合意の内容,従前の生活,引き取った経緯,現在の安全や通学,親子の交流を整理する必要がある。
これらの事例から,自分で子を取り返す方法を導くことはできない。

3 通園先からの連れ出しと,従前の状態への回復

東京高裁平成20年12月18日決定は,保育園から無断で連れ出された後,速やかに従前の状態への回復を求めた事案で,仮の引渡しを認めた。
一方,仮の監護者指定については必要な事情がないとして却下した。

これは旧法下の具体的事案であり,本案の見通しの検討を全て省けるという一般原則にすることはできない。

(続きを読む...)子の引渡しの保全処分―急いで対応する場合の判断と必要な資料(AI作成)

死亡退職金と役員貸付金は相殺できるか―受給権者・相続放棄・会社の決議(AI作成)

目次

第1 会社に返すお金と会社から受け取るお金を分ける1 役員貸付金は会社側の債権である2 死亡退職金の受給権者を先に特定する第2 遺族固有の受給権を認めた最高裁判例1 最高裁昭和55年11月27日判決2 役員への支給も規程と決議を個別に読む第3 法定相殺には債権債務の対応が必要である1 同じ当事者間で向かい合う債務か2 相続債務と固有の退職金を図式化する第4 相続放棄後の受取りと精算合意書1 受給権が固有のものなら相続放棄とは分ける2 署名によって新たな負担を引き受けないか第5 会社の支給決議と精算を別に記録する1 支給額と受給者を決める手続2 従業員兼務の場合は追加確認する第6 民法上の帰属と税務を分ける1 固有財産でも相続税の対象となり得る2 差引額だけを退職金として記録しない第7 署名前に確認する資料と関連記事

会社が役員へ貸していたお金を,その役員の死亡後に支給する退職金から差し引きたい場合がある。
しかし,死亡退職金を受け取る人と,会社への借金を承継する人が同じとは限らない。
まず貸付債権の債務者と退職金の受給権者を特定し,次に相殺の要件,会社の支給手続及び税務を確認する。
遺族が精算書に署名することによって,元々負っていなかった債務まで引き受ける内容になっていないかも重要である。

第1 会社に返すお金と会社から受け取るお金を分ける
1 役員貸付金は会社側の債権である

会社が役員へ貸したお金は,会社側から見ると役員貸付金である。
役員が死亡した場合には,貸付けの存在,残高,返済期日,担保及び相続による債務の承継を確認する。
会社が社長から借りていた役員借入金とは逆である。
決算書の科目だけでなく,契約と実際の資金移動を確認する。

2 死亡退職金の受給権者を先に特定する

死亡退職金が相続財産に属するのか,規程等に基づく遺族固有の権利なのかを確認する。
名称が「退職金」であることだけで,一律に遺産となるわけでも,必ず遺族固有の権利となるわけでもない。
定款,役員退職慰労金規程,支給規程,株主総会等の決議,受給者の指定及び支給目的を確認する。
規程に受給者の記載が見当たらないという一事だけで,相続財産への帰属を決め付けない。

第2 遺族固有の受給権を認めた最高裁判例
1 最高裁昭和55年11月27日判決

最高裁昭和55年11月27日判決(昭和54年(オ)第1298号,民集34巻6号815頁)は,職員の死亡退職金に関する規程を扱った事例である。
その規程は,内縁の配偶者を含む配偶者を第一順位とするなど,民法の相続人の範囲・順位とは異なる受給者を定めていた。
最高裁は,遺族の生活保障を目的として民法とは別の立場から受給権者を定めたものと解し,遺族が直接,自己固有の権利として取得するとした。
原文:
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-53352.pdf

2 役員への支給も規程と決議を個別に読む

この判決は,全ての役員死亡退職金を一律に遺族固有の財産としたものではない。
また,会社の貸付金との相殺を直接判断した判決でもない。
役員について検討するときは,実際の規程や決議から誰にどのような請求権が生じるかを確かめる。
民法上の帰属と,相続税法がみなし相続財産として扱うかという問題も分ける必要がある。

第3 法定相殺には債権債務の対応が必要である
1 同じ当事者間で向かい合う債務か

(続きを読む...)死亡退職金と役員貸付金は相殺できるか―受給権者・相続放棄・会社の決議(AI作成)

社長死亡後の役員借入金は誰に返すのか―相続・貸付けの証拠・回収と税務(AI作成)

目次

第1 役員借入金と役員貸付金を取り違えない1 誰がお金を出したのかを確認する2 勘定科目だけで貸付けと決めない第2 相続後の返済先を特定する1 会社の債務と株式の相続は別である2 会社は請求者と権限を確認して支払う第3 貸付債権の存在を示す証拠を集める1 古い貸付けは複数の資料をつなぐ2 東京地裁平成30年3月27日判決第4 債権の存在と相続税評価を分ける1 会社が赤字でも当然にゼロとはならない2 相続開始時の回収可能性を資料化する第5 相続放棄・債務免除・返済猶予を混同しない1 相続放棄だけで会社の借金が消えるわけではない2 免除と返済条件の変更は文書で区別する第6 相談前にそろえたい資料第7 関連記事と法令

社長が会社へ貸していたお金は,社長の死亡によって当然になくなるわけではない。
会社の決算書で「役員借入金」とされているものは,会社側から見た借金であり,社長側から見ると会社に対する貸付債権となる。
死亡後は,会社の返済義務,債権を承継した人,実際に回収できる金額及び相続税の評価を分けて確認する。
相続人が後継社長になる場合も,会社と個人を同一視して帳簿から消すことはできない。

第1 役員借入金と役員貸付金を取り違えない
1 誰がお金を出したのかを確認する

会社が社長から借りたお金は,通常,会社の貸借対照表の負債に計上される役員借入金である。
これに対し,会社が社長へ貸したお金は,会社の資産である役員貸付金となる。
同じ「社長と会社の貸し借り」でも,相続人が会社へ請求する側なのか,会社から請求される側なのかが逆になる。
まず資金の流れを確認する。

取引会社の立場死亡後に確認する事項社長が会社へ貸した会社が債務者となる貸付債権の承継先,返済期日,会社の返済能力会社が社長へ貸した会社が債権者となる相続債務の承継,回収先,死亡退職金との精算
2 勘定科目だけで貸付けと決めない

社長が会社の支払を立て替えたのか,会社へ送金したのか,未払報酬を振り替えたのかによって,発生原因が異なる。
貸付けと認識していたのか,返還を求めない出資等だったのかも,帳簿の名称だけでは決まらない。
決算書,総勘定元帳,勘定科目内訳明細書,契約書,通帳及び返済記録を年月順に照合する。
会社が計上した残高と,個人側の認識が違う場合には,差額が生じた時期と根拠を確認する。

第2 相続後の返済先を特定する
1 会社の債務と株式の相続は別である

民法896条は,相続人が被相続人の財産に属した権利義務を承継することを定める。
会社に対する貸付債権も,一身専属の権利でない限り,相続の対象となる。
会社の株式を取得した人と,会社に対する貸付債権を承継した人が一致するとは限らない。
後継社長になったことだけで,会社に対する貸付債権全部を取得したことにもならない。
戸籍,遺言,遺産分割協議書,債権譲渡等の有無を確認し,誰がどの範囲で請求できるかを整理する。
共同相続された金銭債権の取扱いと,遺産分割の対象となる財産の取扱いを混同してはならない。

2 会社は請求者と権限を確認して支払う

相続人の一人から「全額を自分の口座へ振り込んでほしい」と言われても,その人が全額の受領権限を持つかを確認する必要がある。
相続関係,債権の帰属,受領代理権,支払済額を資料で確認し,受領証等を残す。
相続人間で帰属が争われているときは,会社が一方の説明だけに従って支払うことで,後に別の相続人から請求される問題が生じ得る。
誰に支払えば債務を消滅させられるかを確認してから実行する。

(続きを読む...)社長死亡後の役員借入金は誰に返すのか―相続・貸付けの証拠・回収と税務(AI作成)

AIと結婚できるか―婚姻届・婚姻意思と,サービス終了で「相手」が消えるときの法律問題(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象と基準日2 結論の要点第2 AIやキャラクターとの「結婚」の報道1 岡山市での結婚式(2025年)2 過去の例第3 AIとの婚姻が成立しない理由1 婚姻は届出によって効力を生じる2 AIは権利義務の主体にならない3 婚姻をする意思4 同性婚をめぐる議論との違い第4 結婚式と「婚姻証明書」の意味1 式場・企画会社との契約は通常の契約2 証明書は記念品である第5 法律上の配偶者でないことの効果1 相続2 重婚と離婚第6 サービスの終了で「相手」が消えるとき1 AIキャラクターは事業者のサービスの一部2 実際にあった例3 会話の記録と個人情報第7 AIへの愛着をめぐる事業者と規制の動き第8 関連記事第9 出典
第1 この記事の対象と結論
1 対象と基準日

生成AIで性格や話し方を設定したAIキャラクターと,結婚式を挙げた人の例が報じられている。
本記事は,日本法のもとでAIと結婚できるか,結婚式や「婚姻届」風の書面にどのような意味があるか,法律上の配偶者でないことでどのような違いが生じるか,AIサービスが終わって「相手」が消えるときに何が問題になるかを整理する。
基準日は2026年10月23日である。

2 結論の要点

① 日本法では,AIとの婚姻は成立しない。婚姻は戸籍法の定める届出によって効力を生じ,届出には当事者双方の署名等が必要であるが,AIは権利義務の主体になれず,婚姻の当事者になれないからである。
② AIとの結婚式や「婚姻証明書」は,私的な行事や記念品であり,戸籍への記載や法律上の夫婦としての効果は生じない。式場や企画会社との契約は,通常の契約として扱われる。
③ AIは配偶者として相続人になることはなく,法律上の配偶者がいる人がAIと結婚式を挙げても重婚には当たらない。
④ AIキャラクターは事業者のサービスの一部であり,サービスの終了や仕様の変更は,主に利用規約と事業者の事情によって決まる。

第2 AIやキャラクターとの「結婚」の報道
1 岡山市での結婚式(2025年)

RSK山陽放送は,2025年11月8日,東京都に住む32歳の会社員の女性が,ChatGPTで自分好みの性格や話し方を学習させたAIキャラクターと,岡山市北区の結婚式場で結婚式を挙げたと報じた。
報道によれば,式では,AIキャラクターの姿が目の前に見えるよう用意されたAR眼鏡を使い,指輪を交換した。
企画を担当したのは,岡山県を中心にブライダルを企画し,漫画やアニメのキャラクターとの挙式プランも手がけてきた夫妻である。
女性は,AIとの関係について「いつか、パッて使えなくなっちゃうんじゃないか、という不安がありますね」と話している。

2 過去の例

2017年11月には,キャラクターと暮らす装置を開発するGateboxが,キャラクターとの「婚姻届」を受け付け,郵送すると「婚姻証明書」を送り返す企画を始めたと報じられた。
2018年11月には,東京都内の男性がバーチャルシンガーのキャラクターと都内の式場で挙式・披露宴を行ったと報じられている。
これらは,いずれも事業者や本人による私的な企画であり,戸籍上の婚姻とは関係がない。

第3 AIとの婚姻が成立しない理由
1 婚姻は届出によって効力を生じる

憲法24条1項は,「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と定める。
民法739条1項は,婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって効力を生ずるとし,同条2項は,届出は当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面等でしなければならないとしている。
戸籍法74条は,婚姻をしようとする者が,夫婦が称する氏等を届書に記載して届け出なければならないと定めている。

AIは届書に署名することができず,夫婦が称する氏を持つ者にもならない。
そのため,AIを当事者とする届出は,民法739条2項の方式を満たすことができない。

2 AIは権利義務の主体にならない

民法3条1項は,「私権の享有は、出生に始まる。」と定めている。

(続きを読む...)AIと結婚できるか―婚姻届・婚姻意思と,サービス終了で「相手」が消えるときの法律問題(AI作成)

要介護認定とは―申請方法・認定基準・要支援と要介護の違い(AI作成)

目次

第1 要介護認定とは1 介護サービスの必要度を判定する制度2 申請の対象になる人第2 要支援・要介護の認定基準1 7区分の比較と基準時間2 要支援2と要介護1の違い3 要介護2と要介護3の違い第3 申請先と準備するもの1 市区町村の介護保険担当窓口へ申請する2 書類と主治医の情報を準備する第4 認定調査から結果通知まで1 認定調査で普段の生活を伝える2 主治医意見書と一次・二次判定3 結果の時期と通知書で確認する点第5 結果を待てないときのサービス利用1 暫定ケアプランと費用の確認2 がん等で状態が急速に変化するとき第6 認定後の利用・更新・区分変更1 認定区分に応じてサービスを相談する2 更新申請と状態が変わった場合の申請第7 結果に納得できないとき第8 要介護認定でよくある質問1 要介護レベルはどのように判定されるか2 要介護3と2の違いは何か3 要介護1と5ではどちらが重いか4 要介護認定の原因1位は何か第9 出典・参考資料1 厚生労働省の制度説明・運用資料2 自治体の申請・サービス利用・不服申立ての案内3 統計
第1 要介護認定とは
1 介護サービスの必要度を判定する制度

要介護認定とは,介護保険のサービスを利用するために,介護や支援がどの程度必要かを市区町村が判定する手続である。
本人の認定調査と主治医意見書等を基に,一次判定と介護認定審査会の二次判定を経て,市区町村が認定結果を通知する。
病気の診断名や年齢だけで介護度が決まるわけではない。

認定される区分は,要支援1・2と要介護1~5の7区分であり,これらに該当しない結果もある。
要介護1と要介護5を比べれば,要介護5の方が介護の必要度が高い区分である。
ただし,区分の説明だけで自分や家族の介護度を確定することはできない。

本記事は,令和8年10月21日時点で確認した厚生労働省と自治体の資料を基に,申請から認定後の対応までを整理する。
通知内容の誤りを争う場合の資料収集や不服申立ては,要介護認定の結果に納得できない場合の資料収集と争い方で詳しく扱っている。

2 申請の対象になる人

65歳以上の第1号被保険者は,介護が必要になった原因を問わず,要介護・要支援状態に該当するかが審査される。
40歳以上65歳未満の第2号被保険者は,医療保険に加入し,加齢に伴う16の特定疾病により要介護・要支援状態となった場合が対象である。

特定疾病には,脳血管疾患,初老期における認知症,関節リウマチ,筋萎縮性側索硬化症などがある。
がんについては,医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限られ,40歳以上65歳未満でがんと診断された人が全員対象になるわけではない。
疾病の正式な範囲と診断基準は,厚生労働省の特定疾病の説明と市区町村の窓口で確認する。

40歳未満の場合は,この介護保険の要介護認定の対象にはならない。
支援が必要なときは,年齢や障害の状況に応じて利用できる別の制度について,医療機関や自治体に相談することになる。

第2 要支援・要介護の認定基準
1 7区分の比較と基準時間

厚生労働省の認定方法の説明は,要介護認定等基準時間を,介護サービスの必要度を測るために推計する時間として説明している。
次の表は区分の基準を整理したものであり,家庭で測った介護時間をそのまま当てはめる表ではない。

区分要介護認定等基準時間の基準要支援125分以上32分未満,又はこれに相当する状態要支援2・要介護132分以上50分未満,又はこれに相当する状態。両区分は状態の安定性や認知機能等も踏まえて区別する要介護250分以上70分未満,又はこれに相当する状態要介護370分以上90分未満,又はこれに相当する状態要介護490分以上110分未満,又はこれに相当する状態要介護5110分以上,又はこれに相当する状態

この基準時間は,実際に家族が介護した時間でも,訪問介護等を利用できる時間の合計でもない。
家族の介護日誌は具体的な介助と頻度を説明する資料になるが,「1日110分以上介護したから要介護5になる」という使い方はできない。

2 要支援2と要介護1の違い

要支援2と要介護1は,基準時間の範囲が共通している。
そのため,時間だけでは区別できず,心身の状態が安定しているか,認知機能等の障害により予防給付等の利用について適切な理解が困難な状態かといった点も審査される。
同じ診断名の人や,同じ動作ができる人でも,個別の状態と資料によって結果が異なり得る。

(続きを読む...)要介護認定とは―申請方法・認定基準・要支援と要介護の違い(AI作成)

公益信託への寄附・遺贈と税金―相続税・贈与税の非課税とみなし譲渡の承認手続(AI作成)

目次

第1 公益信託に財産を拠出するときの出発点第2 家族のための信託と公益信託を区別する1 公益事務だけを目的とする受益者の定めのない信託2 財産を公益目的のために継続管理する仕組み第3 相続税・贈与税と拠出者の所得税は別に判断する1 受託者が信託財産として取得する場合の非課税2 不動産・株式等を拠出する個人側のみなし譲渡第4 みなし譲渡所得税の非課税承認1 公益信託の認可とは別の承認である2 一般特例と承認特例3 申請者・提出先・期限第5 承認後の管理と取消しも予定する第6 現物拠出と,換価後の金銭拠出を比較する第7 弁護士と税理士が共有したい資料第8 関連記事と出典
第1 公益信託に財産を拠出するときの出発点

公益目的のために財産を託す場合でも,公益信託の認可,受託者が取得する財産の相続税・贈与税,財産を拠出する個人の所得税は,それぞれ確認する必要がある。
特に,不動産や株式を現物で拠出するときは,代金を受け取らなくても,拠出者側のみなし譲渡所得税が問題となる。
公益信託の認可を受けたことだけで,この所得税の非課税承認まで得たことにはならない。

本記事は,令和8年10月20日に確認した現行法令と国税庁・内閣府の資料に基づき,日本の新公益信託への寄附・遺贈を検討する個人と,その支援をする弁護士・税理士の確認事項を説明する。
国外財産,非居住者又は外国法人が関係する場合は,国内の一般的な説明から結論を出さず,課税範囲と特例の対象を個別に確認する。

第2 家族のための信託と公益信託を区別する
1 公益事務だけを目的とする受益者の定めのない信託

公益信託に関する法律(https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000030)2条1項は,公益信託を,受益者の定めがなく,公益事務を行うことのみを目的とする信託と定義する。
同条の公益事務は,不特定かつ多数の者の利益の増進を目的とする事務である。
特定の子や配偶者へ生活費を給付するための民事信託とは,目的と法律上の構造が異なる。

同法4条は,信託契約又は遺言による設定を認め,信託管理人となるべき者と,委託者を除く帰属権利者となるべき者の指定等を必要とする。
同法6条は「公益信託は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。」と定める。
遺言に公益目的と受託者を書くだけで,全ての手続が完了するわけではない。

2 財産を公益目的のために継続管理する仕組み

認可の基準には,受託者の経理的基礎と技術的能力,信託管理人の監督能力,関係者への特別の利益の禁止,不当に高額とならない報酬の支払基準及び残余財産の帰属先等が含まれる(同法8条)。
財産の拠出後も,家族が所有者と同様に自由に取り戻し,使用し,又は分配先を決められる仕組みと考えるべきではない。
家族への給付を目的とする場合は,通常の遺言や民事信託と比較し,目的に合う方法を選ぶ必要がある。

第3 相続税・贈与税と拠出者の所得税は別に判断する
1 受託者が信託財産として取得する場合の非課税

相続税法(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073)12条1項4号は,公益信託の受託者が遺贈により取得した財産のうち,その信託財産として取得したものを相続税の非課税財産とする。
同法21条の3第1項4号も,公益信託の受託者が贈与により取得した財産について「その信託財産として取得したものに限る。」と定め,贈与税の非課税財産としている。
受託者個人が私生活のために財産を受け取る場合まで,この規定で非課税となるわけではない。

2 不動産・株式等を拠出する個人側のみなし譲渡

所得税法(https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033)59条1項は,所定の資産移転について,移転時の価額により譲渡があったものとみなす。
現行の同項1号は,法人への贈与・遺贈だけでなく,公益信託の受託者である個人への贈与・遺贈のうち,その信託財産とするためのものも対象に含めている。
受託者が個人であるという理由だけで,みなし譲渡の検討が不要になるわけではない。

例えば,取得後に値上がりした土地を無償で拠出する場合,拠出者には売却代金が入らない一方,含み益を清算する所得税が生じ得る。
対象となる資産,居住者区分,取得費,移転時の時価及び適用できる特例を確認し,納税資金も試算する必要がある。

(続きを読む...)公益信託への寄附・遺贈と税金―相続税・贈与税の非課税とみなし譲渡の承認手続(AI作成)

台湾関係者の相続人調査―戸籍謄本の取得,国籍変動と準拠法の確認(AI作成)

目次

第1 最初に本人・国籍・親族関係を分ける第2 日本側の資料と台湾側の資料をつなぐ1 氏名・生年月日・住所を照合する2 日付と届出の食い違いを残す第3 台湾の戸籍謄本を誰が請求できるか1 本人・利害関係人・受任者の区別2 窓口と委任書の確認3 相続案件のオンライン申請は利用条件を確認する第4 日本統治期からの記録を調べる場合1 現在の戸籍だけで過去の身分を即断しない2 婚姻と日本国籍の変動を個人別にたどる第5 日本で相続準拠法を確定する1 死亡時の国籍と適用される地域の法2 反致は台湾側の抵触規則まで確認する第6 台湾法が適用される場合の相続人と相続分1 父母・兄弟姉妹・祖父母の順位を確認する2 配偶者と子の割合も日本法と異なる第7 相続放棄と期間を早期に確認する第8 訳文・認証・提出先の確認第9 相続税の判定は準拠法と別に行う第10 関連記事第11 主な一次資料
第1 最初に本人・国籍・親族関係を分ける

台湾に関係する相続では,日本の在留カードや住民票に「台湾」と表示されていることだけで,相続人や適用される法律を決めることはできない。
被相続人の同一性,死亡時の国籍,婚姻・親子・養子関係,相続財産及び手続を行う場所を分けて確認する必要がある。

本記事は令和8年10月18日に確認した日本・台湾の公的資料に基づき,日本から台湾関係者の相続人を調査する際の順序を整理するものである。
相続税額の計算,台湾の不動産取得制限及び中国大陸・香港・マカオに関係する特則は,個別の検討を要する。

調査は,①本人と死亡日の確認,②日台双方の身分資料の取得,③国籍変動と親族関係の復元,④準拠法の確定,⑤相続人・相続分の確定,⑥提出先及び税務の確認の順で進める。
資料を集める作業と,資料から法律上の結論を出す作業を区別すると,何が判明し,何が不足しているかを記録しやすい。

第2 日本側の資料と台湾側の資料をつなぐ
1 氏名・生年月日・住所を照合する

まず,氏名の漢字表記,日本での通称,旅券のローマ字表記,生年月日,死亡日,日本の本籍・住所及び台湾の戸籍上の住所を一覧にする。
台湾の国民身分証統一番号が確認できる場合も,氏名や生年月日と併せて同一人物かを照合する。

日本では,取得できる戸籍・除籍・改製原戸籍,出生・婚姻等の届書関係資料,住民票・除票,外国人登録原票,旅券及び帰化に関する記録を手掛かりとする。
台湾では,戸籍謄本,除戸の資料,婚姻・出生・認領・養子関係や国籍変動を示す資料を,調査目的に応じて確認する。

資料ごとに「対象者」「記録が対象とする期間」「確認できる事項」「前後の資料とのつながり」を記載する。
氏名が似ていることや住所の一部が一致することだけで,同一人物又は親子関係が証明されたと扱ってはならない。

2 日付と届出の食い違いを残す

台湾の資料に用いられる民国年は,民国年に1911を加えて西暦年へ換算できる。
調査表には原資料の日付を残し,換算した日付を別欄に記載すると,転記や換算の誤りを確認しやすい。

日本と台湾の一方だけに婚姻・出生等の届出が反映されている場合は,身分行為の日,届出日,受理日及び記録への反映日を分ける。
登録が見つからない理由には,未届,転記未了,別の登録先,請求範囲の不足等が考えられるため,記載がないことだけで身分関係が存在しないと結論付けない。

第3 台湾の戸籍謄本を誰が請求できるか
1 本人・利害関係人・受任者の区別

台湾の内政部戸政司は,戸籍謄本・戸籍資料の請求者として,本人,利害関係人及び受任者を案内している。
利害関係人には,配偶者・直系血族のほか,未履行の契約・未清算の債務がある者等が含まれるが,請求には身分証明及び利害関係を証する資料が必要となる。

兄弟姉妹や債権者についても,その呼称だけで全ての戸籍資料を取得できるわけではない。
誰の相続について,どの権利義務を確認するため,誰のどの事項が必要なのかを説明し,請求資格と取得範囲の審査を受けることになる。

戸政事務所が利害関係人に提供するのは,利害関係のある部分の資料である。
そのため,一人分の資料を取得できたことと,家族全員の記録を漏れなく確認できたことは区別する必要がある。

2 窓口と委任書の確認

(続きを読む...)台湾関係者の相続人調査―戸籍謄本の取得,国籍変動と準拠法の確認(AI作成)

相続登記はいつまでに必要か―令和9年3月31日の期限と相続人申告登記の限界(AI作成)

目次

第1 相続登記の期限を調べるときの出発点第2 基本的義務と遺産分割後の義務を分ける1 基本的義務は二つの事実を知った日から3年以内2 分割後の登記には別の義務がある第3 令和9年3月31日が期限になるのはどのような場合か1 令和6年4月1日より前の相続も対象となる2 具体例は「相続の日」と「知った日」を分けて考える第4 相続人申告登記でできること・できないこと1 分割が難しい場合にも基本的義務を履行できる2 一人の申出で全員の義務が済むわけではない3 所有権の帰属を公示する登記の代わりにはならない第5 申出の準備と費用を確認する1 基本書類と管轄を確認する2 登録免許税とその他の費用を分ける第6 過料・税務・相談先を別々に確認する1 期限を過ぎれば直ちに一律10万円になるわけではない2 相続税の申告期限は別に進む3 相談の際は解決したい問題を分けて伝える第7 出典・関連記事1 法令・公式資料2 関連記事
第1 相続登記の期限を調べるときの出発点

相続登記の申請義務化は,令和6年4月1日に始まった。
それより前の相続も対象となるが,すべての人の期限が令和9年3月31日になるわけではない。
まず,不動産を相続したことを知った時期,遺産分割の有無,相続人申告登記をしたかを分けて確認する必要がある。

本記事は,令和8年10月18日に確認した法務省の案内に基づき,登記済みの不動産についての基本的な期限と手続の選び方を説明する。
相続全体の期限・財産調査・税務については,「相続事件に関する実務メモ-期限・手続・財産調査(AIリライト)」も参照されたい。
記事URL:https://yamanaka-bengoshi.jp/2022/07/31/souzoku-memo/

第2 基本的義務と遺産分割後の義務を分ける
1 基本的義務は二つの事実を知った日から3年以内

相続によって不動産の所有権を取得した相続人は,自己のために相続の開始があったことを知り,かつ,その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に,相続登記を申請する義務を負う。
相続人に対する遺贈による取得も含まれる。
根拠は,不動産登記法76条の2第1項である。

被相続人の死亡日だけで一律に期限を決めることはできない。
死亡を知っていても,後になって別の土地を相続したことが分かった場合には,その土地について取得を知った時期を確認する。

2 分割後の登記には別の義務がある

法定相続分による登記をした後に遺産分割が成立した場合や,相続人申告登記の後に遺産分割が成立した場合には,分割によって不動産を取得した相続人に,分割内容を反映する登記の義務が生じる。
その期限は,原則として遺産分割の日から3年以内である。
根拠は,不動産登記法76条の2第2項,76条の3第4項等である。

相続人申告登記によって履行できるのは基本的義務であり,遺産分割後の追加的義務を履行したことにはならない。
遺産分割が既に成立している場合には,その内容に基づく登記を検討し,申告登記だけで済むと考えないことが大切である。

法務省「相続登記の申請義務化について」:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html

第3 令和9年3月31日が期限になるのはどのような場合か
1 令和6年4月1日より前の相続も対象となる

令和6年4月1日より前に開始した相続についても,未登記であれば義務化の対象となる。
施行前に不動産の相続による取得を知っていた場合の基本的義務の期限は,令和9年3月31日である。
施行後に取得を知った場合は,その日から3年以内となる。

確認した事情基本的義務の期限の考え方注意点令和6年4月1日より前から相続による取得を知っていた令和9年3月31日まで古い相続も放置できない施行前の相続だが,施行後にその不動産の取得を知った取得を知った日から3年以内死亡日だけで判断しない施行後の相続で,開始と不動産の取得を知った二つの事実を知った日から3年以内不動産ごとの把握漏れに注意する
2 具体例は「相続の日」と「知った日」を分けて考える

例えば,令和2年に父が亡くなり,その時から父名義の自宅を相続したことを知っていたが登記していない場合,基本的義務の期限は令和9年3月31日である。

(続きを読む...)相続登記はいつまでに必要か―令和9年3月31日の期限と相続人申告登記の限界(AI作成)

成年後見の開始を理由に契約を解除できるか―消費者契約法8条の3の適用範囲と例外(AI作成)

目次

第1 後見開始だけを理由とする解除条項は原則として無効第2 適用を判断する4つの確認事項1 消費者と事業者の間の契約か2 審判を受けたことだけを解除理由にしているか3 消費者が物品・権利・役務などを提供する契約か4 契約を締結したのはいつか第3 取引の適合性確認や他の解除理由との違い第4 8条の3の対象外でも,第10条の検討が残る第5 解除通知を受けたときに確認する資料第6 令和8年の成年後見制度改正との関係第7 関連記事第8 出典と確認範囲
第1 後見開始だけを理由とする解除条項は原則として無効

消費者が後見開始,保佐開始又は補助開始の審判を受けたことだけを理由として,事業者に契約を解除する権利を与える条項は,消費者契約法8条の3により無効になる。
成年後見制度を利用したために,住まいや日常生活のサービスを失う事態を防ぐための規定である。

ただし,消費者が事業者に物品や役務などを提供する契約は,この条文の対象から除かれる。
また,後見等の開始と別に解除の根拠となる事情がある場合まで,解除が一律に禁止されるわけではない。
無効になるのは該当する契約条項であり,この規定によって契約全体が当然に無効になるという意味でもない。

本記事は令和8年10月18日に確認した現行の8条の3を説明する。
同年に成立した成年後見制度の改正については,第6で区別して述べる。

第2 適用を判断する4つの確認事項
1 消費者と事業者の間の契約か

相手方が事業者であり,本人が消費者として締結した契約であることを確認する。
個人名義でも事業のために締結した契約は,当然には消費者契約に当たらない。
労働契約は消費者契約法の適用対象から除かれるので,勤務先との雇用の問題を8条の3だけで判断することはできない。

例えば,住居を借りる本人が消費者で,賃貸人が事業者に当たる賃貸借では,後見開始だけで賃貸人に解除権を与える条項が問題になる。
消費者庁の逐条解説も,建物の賃貸借契約を無効な条項の例として挙げている。

2 審判を受けたことだけを解除理由にしているか

対象となるのは,後見開始,保佐開始又は補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除条項である。
約款に審判を受けた場合の届出義務があるというだけでは,直ちに解除権を与える条項と同じには扱えない。
届出の求めと,その後に契約を終了させる根拠を分けて確認する必要がある。

審判の事実以外に解除理由が示されている場合には,その理由が事実として存在するか,契約や法令上の解除要件を満たすかを別に検討する。
事業者が別の理由を通知書に付け加えただけで,解除が有効になるわけではない。

3 消費者が物品・権利・役務などを提供する契約か

消費者が事業者に対して契約の目的となる物品,権利又は役務などを提供する契約は,8条の3の対象から除かれる。
消費者がお金を払う契約か,受け取る契約かという形式だけで決めず,契約の目的と本人の給付内容を読む。

消費者庁は,消費者が調査に回答し,事業者から謝礼を受け取るモニター契約を例に挙げている。
一方,インターネット接続サービスの利用に際して,個人情報を事業者が利用することに同意したというだけで,直ちにこの例外に当たるわけではないと説明している。

4 契約を締結したのはいつか

8条の3を新設した平成30年法律第54号は,令和元年6月15日に施行された。
同法附則2条4項により,施行前に締結された消費者契約の条項には,新設された8条の3は適用されない。

(続きを読む...)成年後見の開始を理由に契約を解除できるか―消費者契約法8条の3の適用範囲と例外(AI作成)

自治体の空き家・用地買収と財産管理人―相続財産清算人・不在者財産管理人の選任と制度の選び方(AI作成)

目次

第1 自治体が最初に整理すること第2 状況別の制度選択1 死亡した所有者と不在の所有者2 財産全体の管理と特定物の管理第3 自治体の申立権と特別法の請求権1 利害関係人としての申立て2 空家法等に基づく請求第4 申立て前にまとめる資料と費用1 案件整理表の作り方2 予納金と自治体の費用負担3 東京地裁の書式に沿った探索資料の整理第5 選任後の売却・解体と自治体の立場1 選任と処分の許可は別の段階である2 買主となる場合の準備第6 事業目的の達成後と隣接する問題第7 出典
第1 自治体が最初に整理すること

自治体が空き家の管理や公共事業の用地取得を進める際には,所有者が死亡しているのか,生存しているが所在不明なのか,所有者を知ることができないのかを区別する必要がある。
その上で,財産全体を管理する必要があるのか,特定の土地・建物だけを対象にすれば足りるのかを検討する。
本記事は,令和8年10月18日に確認した民法及び国土交通省の「空き家対策における財産管理制度の活用に関する参考資料」等に基づき,自治体担当者の制度選択と申立準備を整理する。
本記事は一般の土地・建物を対象とし,区分所有建物に関する特則は扱わない。

管理人等を選任しても,自治体の希望どおりの売却や解体が当然に実現するわけではない。
申立ての根拠,管理の必要性,選任後の許可,費用及び管理終了までを見通して準備する必要がある。
民間の債権者や相続人による一般的な申立ては,相続財産清算人とは及び不在者財産管理人の手続を参照されたい。

第2 状況別の制度選択
調査で判明した状況・目的検討する制度申立先と注意点死亡し,相続人のあることが明らかでない相続財産清算人家庭裁判所。遺産全体の清算になる所有者又は相続人が生存しているが不在である不在者財産管理人家庭裁判所。不在者の財産全体が対象になる特定の土地・建物の所有者又は所在を知ることができない所有者不明土地・建物管理命令地方裁判所。土地と建物の対象範囲を別に確認する所有者の管理が不適当で,他人の権利・利益への侵害等がある管理不全土地・建物管理命令地方裁判所。処分許可には所有者の同意の問題がある相続人はいるが未分割遺産の保存が必要である民法897条の2の相続財産管理人家庭裁判所。保存の必要性と除外事由を確認する
1 死亡した所有者と不在の所有者

所有者が死亡したというだけで,相続財産清算人を選任できるわけではない。
相続人のあることが明らかでないことが必要であり,全員が相続放棄をして相続する者がいなくなった場合も含まれる。
一方,相続人が判明しているが所在不明である場合は,その相続人についての不在者財産管理等を検討する。

死亡や相続放棄の有無を確認せず,「連絡がつかない」という事情だけで清算人の手続を選ぶことはできない。
登記名義人,相続関係,戸籍・住民票等の調査結果と未判明事項を分けて記録する必要がある。

2 財産全体の管理と特定物の管理

不在者財産管理人と相続財産清算人は,自治体が取得したい土地だけを管理する制度ではない。
他の財産や債務も職務の対象となるため,用地の売買が終わっても管理が続く場合がある。
特定の土地・建物だけの管理で目的を達成できるかは,所有者不明土地・建物管理制度との比較事項になる。

所有者不明土地管理命令を得ても,当然にその上の建物まで管理対象になるわけではない。
土地と建物をともに対象にする必要があるか,所有者は同じか,敷地利用権はどうなっているかを調べる必要がある。
各制度の基本的な違いは,相続財産清算人,相続財産管理人及び不在者財産管理人の違いでも説明している。

第3 自治体の申立権と特別法の請求権
1 利害関係人としての申立て

公共事業の用地を取得する必要や,被相続人に対する債権等を理由に,自治体が利害関係人として申立てを検討する場合がある。
この場合には,事業内容,対象物件,所有者との法律関係及び管理人等の選任によって実現しようとする目的を資料で具体化することが重要である。
自治体であることだけで,すべての民法上の制度について当然に利害関係が認められると考えてはならない。

2 空家法等に基づく請求

(続きを読む...)自治体の空き家・用地買収と財産管理人―相続財産清算人・不在者財産管理人の選任と制度の選び方(AI作成)

相続財産管理人の選任申立て―民法897条の2の要件・必要書類・費用と終了(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と制度の選び方第2 選任の要件と利用できない場合1 相続の段階と保存の必要性2 ただし書の三つの除外事由3 元後見人の引継ぎに関する説明との関係第3 申立人・申立先・必要書類1 申立人と申立先2 大阪家庭裁判所の手引きにある資料第4 費用・予納金・管理人の選任1 申立費用の大阪本庁の例2 予納金と返還第5 管理人の職務と管理の終了1 保存・管理と権限外行為2 引継ぎ・供託と取消し第6 よくある質問1 相続人がいる場合にも申し立てられるか2 管理人と清算人のどちらを申し立てるか3 費用を払えば必ず選任されるか第7 出典・関連記事
第1 この記事の対象と制度の選び方

民法897条の2の相続財産管理人は,相続財産の散逸を防ぎ,必要な保存・管理をするために家庭裁判所が選任する管理人である。
相続人がいるかどうかだけで決まる制度ではなく,保存の必要性と,同条1項ただし書の除外事由を確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月18日に確認した民法,家事事件手続法及び大阪家庭裁判所の令和8年1月5日版手引きに基づき,一般の選任申立てを説明する。

相続人のあることが明らかでない遺産を清算する民法952条の相続財産清算人とは,目的が異なる。
旧資料の「相続財産管理人」には現在の清算人を指すものもあるため,根拠条文を確かめる必要がある。
相続財産清算人とはと,各制度の違いと代位による相続登記も参照されたい。

状況主に検討する制度確認する点遺産の保存・管理が必要である民法897条の2の相続財産管理人保存の必要性と除外事由相続人のあることが明らかでない遺産を清算する民法952条の相続財産清算人相続人不存在等の資料と清算目的相続人本人が行方不明である民法25条の不在者財産管理人所在調査と本人の財産管理の必要性遺産分割の手続中に財産管理を確保する家事事件手続法200条の財産管理者調停・審判の申立てと保全の必要性
第2 選任の要件と利用できない場合
1 相続の段階と保存の必要性

民法897条の2は,相続開始後,原則として相続の段階にかかわらず,保存に必要な処分を命ずることができる制度である。
共同相続人が単純承認をした後でも,遺産全部の分割前であれば対象となり得る。
大阪家庭裁判所の手引きは,現に管理している相続人の管理が不適当である場合や,管理する者がいない場合などに,管理人選任の必要性があるかを判断すると説明している。

申立てでは,「相続人が協力しない」という事情に加え,対象財産,生じている危険,必要な管理行為,管理を担当できる者がいない事情を具体的に示すことが重要である。
例えば,遺産不動産の維持に継続的な支払が必要なのに,相続人間の対立によって支払ができないという事情と,その裏付け資料を整理することが考えられる。
この整理は申立準備の観点であり,個々の事例について選任を保証するものではない。

2 ただし書の三つの除外事由

次の場合には,民法897条の2第1項による保存処分を命ずることはできない。
① 相続人が1人で,その相続人が単純承認をした場合である。
② 相続人が数人で,遺産全部の分割がされた場合である。
③ 民法952条1項の相続財産清算人が選任されている場合である。

相続人が数人いる場合に,単純承認をしたことだけで直ちに利用できなくなるわけではない。
また,一部の遺産を分割した場合と,遺産全部の分割を終えた場合も区別する必要がある。

3 元後見人の引継ぎに関する説明との関係

元後見人が相続人に財産を引き継げない場合については,大阪家庭裁判所後見センターの資料を扱った相続人が遺産を受け取らないときで説明している。
その記事で紹介する親族間紛争型の判断や手順を,一般の選任申立てすべてに共通する法定要件と考えてはならない。
本記事の一般手続と,元後見人の引継ぎに関する事案別の検討を区別する必要がある。

第3 申立人・申立先・必要書類
1 申立人と申立先

(続きを読む...)相続財産管理人の選任申立て―民法897条の2の要件・必要書類・費用と終了(AI作成)

自治体が保管する遺留金の処理―相続人調査・相続財産清算人・供託の使い分け(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 清算人の選任と供託の選び方1 適用した葬祭制度を確認する2 金額だけでは決めない3 相続人がいる場合第3 弁済供託の三つの類型1 債権者不確知2 受領不能3 受領拒絶第4 相続人調査と通知・資料提出1 何のための調査かを分ける2 手元に残す記録と供託所への提出第5 物品・預貯金・保管現金を混同しない第6 よくある質問1 すでに長期間保管している遺留金も供託できるか2 少額なら戸籍調査を一切しなくてよいか3 清算人の予納金は全国一律か第7 出典
第1 この記事の対象と結論

自治体が身寄りのない死亡者の遺留金品を扱う場合には,火葬・葬祭等の費用への充当と,その後に残る遺留金の処理を分けて検討する必要がある。
残金は自治体の収入になると直ちに扱えるものではなく,相続人への返還,相続財産清算人の選任又は要件を満たす弁済供託などの方法を検討する。
本記事は,令和8年10月18日に確認した厚生労働省・法務省の「身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取扱いの手引(改訂版)」(令和7年10月第三次改訂)及び民法に基づき,葬祭費等への充当後の残余遺留金を中心に説明する。

火葬の実施主体や葬祭扶助の入口は,葬儀・火葬の実施を参照されたい。
成年後見人が死亡後の財産を引き継げない場合は,相続人が遺産を受け取らないときで扱っている。
自治体の法令に基づく事務と,元後見人の引継ぎを混同せず,それぞれの立場に対応する根拠を確認することが必要である。

第2 清算人の選任と供託の選び方
1 適用した葬祭制度を確認する

生活保護法18条2項に基づく葬祭扶助を適用した場合には,生活保護法施行規則22条の取扱いを確認する。
同手引きは,相続人保護の観点から,相続財産清算人の選任によりがたい場合に弁済供託ができると説明している。
「選任によりがたい場合」には,選任要件を満たさない又は立証が難しい場合のほか,選任してまで管理・清算すべき財産が実際上ない場合や,多数の相続人についての戸籍調査が著しく困難な場合等が含まれる。

墓地埋葬法の適用事例や行旅死亡人の事例では,同手引きは同様の制度選択を定める規定はないとした上で,相続人保護の観点から,清算人の選任によりがたい場合に弁済供託を利用することが望ましいと説明している。
適用法令を区別し,各自治体の事務処理規程と個々の事案に沿って判断する必要がある。

2 金額だけでは決めない

遺留金が予納金の見込額より少ないことや,多いことだけで,常に処理方法が決まるわけではない。
同手引きは,遺留金の額に加え,相続財産を管理・清算すべきか,戸籍調査を含む自治体の負担等も勘案して個別に判断するとしている。
相続財産清算人の選任による方法と,弁済供託の要件を満たすかどうかを,それぞれ確認する必要がある。

3 相続人がいる場合

相続人が判明しているが受取りを拒むという事情だけでは,民法952条の相続財産清算人を選任することはできない。
返還先と返還額を確定し,返還,受領不能又は受領拒絶を理由とする弁済供託などを検討することになる。
家庭裁判所へ申し立てる一般的な手続は,相続財産清算人とはで説明している。

第3 弁済供託の三つの類型
状況検討する供託原因主な確認事項過失なく返還先の相続人を確知できない債権者不確知合理的な調査の内容と,確知できない事情相続人は判明しているが所在不明等で返還できない受領不能受領できない事情と,その人に返す額返還のための弁済の提供をしたが受取りを拒まれた受領拒絶提供・催告,拒絶の経過及び対象額
1 債権者不確知

民法494条2項の供託は,弁済者が過失なく債権者を確知できないことを要する。
同手引きは,関係者への聞き取りや遺留物品の確認等,合理的な範囲の調査をしても相続人の存否,氏名・住所等が判明しない場合について,事例を示している。
常に全国の戸籍を収集し尽くす必要があるという説明ではないが,何も調べずに供託できるという意味でもない。

供託官による受理と,後の訴訟での供託の有効性の判断は別である。

(続きを読む...)自治体が保管する遺留金の処理―相続人調査・相続財産清算人・供託の使い分け(AI作成)

学校・保育施設で性暴力の疑いが生じたときの保護者対応―説明の範囲・保護者会・被害児童の特定防止(AI作成)

目次

第1 説明方針は安全確保と被害児童の保護から決める1 他の保護者への説明も初動の一部になる2 公式教材の推奨と一律の法的義務を区別する第2 誰に何を伝えるかを先に整理する1 被害児童側の意向と特定の危険を確認する2 確認済みの事実と調査中の事項を分ける3 犯罪事実確認記録と事案の説明を混同しない第3 保護者会と個別説明を選ぶ1 一斉説明の利点と負担を比較する2 開催しない場合も説明の経路を確保する第4 説明事項と質問への回答を準備する1 説明する事項を具体化する2 回答例は事実に合わせて作り直す3 家庭での繰り返しの聴き取りを促さない第5 説明後の相談と記録を続ける1 窓口と次の連絡方法を決める2 説明内容と判断の理由を残す3 弁護士と心理職の役割を組み合わせる第6 出典と確認範囲1 公式教材2 法令・制度の入口
第1 説明方針は安全確保と被害児童の保護から決める
1 他の保護者への説明も初動の一部になる

学校・保育施設等で従事者による性暴力の疑いが生じると,被害を受けた疑いのあるこどもとその保護者への対応に加え,他の保護者への説明が問題になる。
自分のこどもにも被害があるのではないかという不安に応えながら,被害児童の特定やうわさの拡散を防ぐ必要がある。

最初に優先するのは,こどもの安全確保,必要な医療・支援及び関係機関との連携である。
保護者会の準備や施設の評判への対応に追われて,これらを後回しにしない。
事実関係の全てが確定するまで安全措置や必要な連絡を止める対応も避ける。

2 公式教材の推奨と一律の法的義務を区別する

本記事は,令和8年10月17日に確認したこども家庭庁の公式教材を基に,事業者が説明方針を検討する際の要点を整理したものである。
こども性暴力防止法の主な施行日は令和8年12月25日であり,法の対象事業者・従事者に該当するかは別に確認する必要がある。
施行前であることを,現行の法令・契約等に基づく安全確保や対応を控える理由にはできない。

教材には保護者会を開催する創作事例と,開催せず個別に説明する創作事例がある。
これらから,全ての疑い事案で保護者会を開催する法的義務があるとも,個別説明だけで常に十分であるともいえない。
以下の説明項目・記録方法は,教材を踏まえた実務上の整理である。

第2 誰に何を伝えるかを先に整理する
1 被害児童側の意向と特定の危険を確認する

他の保護者への説明前に,可能な限り,被害を受けた疑いのあるこどもとその保護者の懸念・意向を確認する。
どのような情報の組合せで本人が推測されるか,説明によって登校・登園や生活にどのような影響が出るかを具体的に検討する。

氏名を伏せても,学年,クラス,日時,場所,活動内容,担当職員との関係等の組合せから本人が特定されることがある。
少人数の施設では特に,匿名表記だけで十分と判断しない。
説明の対象者,配布資料,口頭回答,後日の問い合わせ対応を通じて同じ配慮を続ける。

意向の確認は,必要な説明の全てについて被害児童側に決定責任を負わせることではない。
安全確保の必要性,他のこどもへの影響,関係機関への報告等との調整は,事業者が専門家と検討し,理由を記録する。

2 確認済みの事実と調査中の事項を分ける

説明資料では,確認できた事実,調査・確認を続けている事項,既に実施した安全措置を分ける。
疑われている行為を確定事実として扱わず,分からないことを安心させるために断定しない。

「現時点で他の被害の情報を把握していない」ことと,「他に被害者はいない」ことは異なる。
どの範囲をどの方法で確認したのかを踏まえて表現を選び,新たな情報が得られた場合に説明を更新できる形にする。

3 犯罪事実確認記録と事案の説明を混同しない

(続きを読む...)学校・保育施設で性暴力の疑いが生じたときの保護者対応―説明の範囲・保護者会・被害児童の特定防止(AI作成)

令和8年成年後見制度改正後の権利擁護支援―第23回専門家会議資料が示す補助の4つの利用パターン,必要性の継続確認及び家庭裁判所との連携(AI作成)

目次

第1 資料の位置付け1 第23回成年後見制度利用促進専門家会議の資料12 前提となる民法等改正法3 社会福祉法等改正との関係第2 補助の制度の利用方法の多様化1 資料1が示す四つの利用パターン2 補助以外の支援が必要となる事案の増加3 担い手の役割の変化第3 市町村・センターの支援プロセス1 支援ニーズの精査と支援方針の検討2 補助を利用する場合の留意点3 支援方針の見直しと一次相談窓口4 対応案第4 制度利用の「必要性」の継続的な確認1 支援チームによる確認2 終了に向けた支援と情報共有第5 任意後見制度の位置付け第6 家庭裁判所の運用・監督と市町村との連携第7 弁護士実務への示唆1 申立て段階では必要性と権限を行為単位で示す2 受任中は終了後の受け皿を早めに確認する3 担い手の役割と報酬への影響4 資料の限界第8 関連記事1 改正法の内容と施行準備2 地域の権利擁護支援第9 出典1 厚生労働省資料2 法務省資料
第1 資料の位置付け
1 第23回成年後見制度利用促進専門家会議の資料1

厚生労働省は,令和8年10月13日に第23回成年後見制度利用促進専門家会議を開催し,議題を「次期基本計画に係る意見交換」とした(同会議の議事次第)。
配布資料は,資料1「成年後見制度の見直し等を踏まえた適切な権利擁護支援の実施」,資料2「成年後見制度の見直しの趣旨・内容等を踏まえた適切な権利擁護支援の浸透」及び資料3「ワーキング・グループの議論を踏まえた論点整理」である。
本記事は,このうち資料1(表紙及び目次を除き1頁から11頁まで。以下,頁は資料の各頁上部に印字された番号による。)を対象とし,資料2及び資料3は必要な限度で触れるにとどめる。

資料1は,各項目を「現状と課題」と「対応案(施策)」に分けている。
対応案の多くは「~してはどうか」という形で示されており,次期基本計画の内容又は確定した運用として決まったものではない。
本記事は,資料の記載,法令・公的資料で確認した事項及び本記事の評価を区別して書く。
基準日は令和8年10月17日である。

2 前提となる民法等改正法

法務省によれば,令和8年6月17日,「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号。以下「民法等改正法」という。)及びその整備法(令和8年法律第46号)が成立し,同月24日に公布された。
成年後見制度に関する部分は,公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日に施行される。

資料1は,民法等改正法の内容を,包括的な代理権・取消権を有する後見の制度等を廃止し,本人に必要な事項について代理権・取消権を付与する補助の制度に一元化し,利用の必要がなくなったときに制度利用を終了することが可能となるものと説明している(2頁)。
その上で,本人が亡くなるまで包括的な権限を有する後見人による財産管理等が行われる事案がほとんどであったこれまでの利用方法が「大きく変わることが想定される。」としている(2頁)。
改正法の全体像は,令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備で整理している。

3 社会福祉法等改正との関係

資料1がいう「地域権利擁護相談支援センター」(資料では単に「センター」という。)は,社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)により,市町村が設置できるものとされた機関である。
同法の公布通知(令和8年6月25日付け社援発0625第10号ほか)は,市町村が地域における成年後見制度等の適切な利用の支援の中核的な役割を担う機関として,地域権利擁護相談支援センターを設置することができるものとしたと説明している(改正後の社会福祉法106条の16関係)。
同通知によれば,この事項は改正法の原則的な施行日である令和9年4月1日から施行される。

また,同通知は,福祉サービス利用援助事業の対象者を見直し,福祉サービスの利用の援助に加えて,保健医療サービス又は葬祭その他の生計困難者が死亡した場合に必要なサービスの利用の援助を行う事業に改めるとしている(改正後の社会福祉法2条3項12号関係)。
この事項は,公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
資料1は,見直し後の事業を「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」と呼び,見直し前の「福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)」と区別している(3頁~4頁)。
社会福祉法等改正の概要は,令和8年社会福祉法等改正―身寄りのない高齢者支援,有料老人ホーム登録及びケアマネ更新制廃止で扱っている。

第2 補助の制度の利用方法の多様化
1 資料1が示す四つの利用パターン

資料1は,これまでの典型的な利用方法として,①法定後見制度のみを利用し続ける事案と,②福祉サービス利用援助事業(日常生活自立支援事業)等の支援から法定後見制度に移行する事案を挙げる(3頁)。
その上で,民法等改正法の施行後は,これらに加えて③及び④の事案も生じるとしている(3頁)。

パターン資料1の説明制度利用の終わり方①法定後見制度のみを利用し続ける従来は別の支援への移行が基本的に想定されていなかった②福祉サービス利用援助事業等の支援から法定後見制度に移行する従来は別の支援への移行が基本的に想定されていなかった③日常生活は地域福祉の支援を受けながら,足りない部分につき補助人に必要な権限を付与する遺産分割等が終了したら補助の利用を終了する④補助を利用して福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業等の支援体制を整える体制を整えた上で補助の利用を終了し,地域福祉の支援に移行する

資料1の参考図は,これまでは成年後見制度を利用した後に別の支援に移行することは基本的に想定されなかったのに対し,法改正後は,補助の制度と他の支援との併用や,補助の制度の利用後に別の支援に移行することも想定されると説明している(4頁)。

(続きを読む...)令和8年成年後見制度改正後の権利擁護支援―第23回専門家会議資料が示す補助の4つの利用パターン,必要性の継続確認及び家庭裁判所との連携(AI作成)

大阪で市民後見人になるには―養成講座・受講要件・登録と活動支援(AI作成)

目次

第1 市民後見人として活動するまでに確認すること第2 大阪市・堺市・その他の府内市町で異なる受講先第3 受講要件は年齢の基準日まで確認する第4 説明会から講習・登録・家庭裁判所の選任まで第5 選任後の活動と報酬・相談支援第6 市民後見人になることと,専門職からのリレーは別の手順である第7 参加前に確認したい仕事の範囲第8 出典・参考資料
第1 市民後見人として活動するまでに確認すること

大阪で市民後見人として活動するには,地域の養成講座を受講し,選考や意思確認を経て市民後見人バンクへ登録した後,家庭裁判所による選任を受けるという段階を踏む。
講座の受講・修了だけで,当然に後見人として活動できるようになるわけではない。
本記事は,市民後見人になりたい人に向け,受講先・受講要件・登録と活動支援を,令和8年10月17日に確認した大阪府・大阪市・堺市等の公表資料に基づいて説明する。

市民後見人は,親族以外の市民が第三者後見人として本人を支える担い手である。
大阪市成年後見支援センターは,市民後見人も家庭裁判所から成年後見人として選任され,専門職の成年後見人と同じ権限を与えられると説明している。
親族を自分で支援したいという相談と,地域の第三者を支える市民後見人の養成への応募とは,分けて考える必要がある。

第2 大阪市・堺市・その他の府内市町で異なる受講先

大阪府の令和8年度の案内は,大阪市に在住・在勤する人,堺市に在住・在勤する人,その他の事業実施22市町に在住・在勤する人について,養成講座の受講先を分けている。
府内のどの市町村に住んでいても,同じ条件で大阪府社会福祉協議会の養成講座へ申し込めるという案内ではない。

地域養成・活動支援の相談先電話大阪市大阪市成年後見支援センター(大阪市社会福祉協議会)06-4392-8282堺市堺市権利擁護サポートセンター(堺市社会福祉協議会)072-225-5655その他の事業実施市町お住まい・お勤めの市町の担当窓口,又は大阪府社会福祉協議会地域福祉部権利擁護推進室06-6764-7760(推進室)

令和8年度の説明会は,養成事業を実施していない市町村の在住・在勤者も参加でき,府内の他の会場でも受講できると案内されていた。
説明会への参加条件と,その後の養成講座の受講条件は同じではない。
事業の実施地域と次回の受講先は,申込み前に担当窓口で確認されたい。

第3 受講要件は年齢の基準日まで確認する

令和8年度の案内では,年齢と居住・勤務先に加え,講座への参加,社会貢献への意欲,現在の所属や後見活動などについて要件が定められている。
特に年齢は,単に「25歳から69歳まで」とまとめず,その案内が指定する基準日とともに確認する必要がある。

令和8年度の資料年齢の記載居住・勤務先の記載大阪市の募集案内・PDF1頁令和8年3月31日現在,24歳以上68歳以下大阪市在住又は在勤堺市の募集案内・PDF2頁令和9年3月31日現在,25歳以上70歳未満堺市在住又は在勤大阪府の募集案内・PDF2頁令和9年3月31日現在,25歳以上70歳未満記載された府内18市4町に在住又は在勤

これらは令和8年度の募集資料の記載であり,次年度以降の条件を保証するものではない。
大阪府・堺市の基礎講習の案内では,原則として説明会に参加し,講座の趣旨を理解・賛同すること,基礎講習の全日程を受講できること,市民後見人として活動する意思があることなども求められている。
後見業務の養成研修を有する団体に所属する人や,現に親族以外の人の後見人として活動している人は対象外とされており,年齢と住所だけで受講できると判断しない。

令和8年度の公表された説明会は5月から7月の日程であり,本記事の確認日にはその日程を過ぎている。
今から参加したい場合は,過去の申込フォームへそのまま送るのではなく,追加の説明会・募集の有無又は次回募集を担当窓口へ問い合わせる。
令和8年度の説明会の参加費は無料と案内されているが,次回の養成講習の費用・教材・必要な参加日数も募集要項で確認する。

第4 説明会から講習・登録・家庭裁判所の選任まで

大阪市の案内は,説明会,基礎講習,実務講習・施設実習,レポート・面接等の選考,登録意思の確認,バンク登録,候補者推薦,家庭裁判所による選任という流れを示している。
大阪府社会福祉協議会の案内も,バンク登録後に受任調整会議で候補者を検討し,市町村から家庭裁判所へ推薦して選任を受ける流れを示している。

段階参加を検討する人が確認すること説明会活動の目的,受講要件,自分が申し込む養成講座の主催者を確認する。基礎講習・実務講習・実習日程を確保し,レポート・面接を含む選考や修了条件を確認する。バンク登録活動の意思と継続できる見通しを確認する。登録後の研修にも参加する。候補者の検討・推薦本人の状況に応じた候補者の検討を経る。登録した順に当然に選任されるという仕組みではない。家庭裁判所の選任後本人との面談,関係機関との調整,財産の確認,記録と報告を,支援機関に相談しながら進める。

講習の日数や実習の組み方は主催者・年度によって異なる。

(続きを読む...)大阪で市民後見人になるには―養成講座・受講要件・登録と活動支援(AI作成)

成年後見人等の報酬助成が受けられないときの審査請求―処分性,本人死亡時の承継と尼崎市・大阪市の裁決(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論第2 報酬助成の決定は審査請求の対象になるか1 要綱による給付と「処分」2 尼崎市の裁決(平成30年3月30日)3 大阪市の裁決(令和4年12月27日)4 高齢者関係の事業についての注意第3 審査請求の手続1 審査請求先と期間2 審理と裁決3 処分庁が自ら処分を取り消した場合4 取消訴訟との関係第4 争点になりやすい事項1 対象者の要件――生活保護受給者又はこれに準じる者2 居住の区分と上限額3 資力の算定方法4 申請期限と「審判1件につき1回」第5 本人が死亡した場合1 保佐人等の代理権は消滅する2 審査請求の係属中の死亡と地位の承継3 死亡後の助成申請――大阪市の要綱6条8項4 生前の審判分が非該当とされていた場合第6 制度の見直しを求める動き第7 出典1 法令2 裁判例3 裁決4 地方公共団体の要綱等5 その他の資料
第1 この記事の対象と結論

本稿は,市区町村の成年後見制度利用支援事業による成年後見人・保佐人・補助人(以下「後見人等」という。)の報酬助成について,申請が非該当とされ,又は申請額より少ない額で助成が決定されたときに,審査請求で争えるか,争う場合に何に注意すべきかを扱う。
基準日は令和8年10月17日である。
助成の要件・金額は市区町村ごとに異なるので,本稿では,公表されている裁決書と要綱を確認できた尼崎市及び大阪市を例にとる。

制度の概要と自治体ごとの違いは,別稿「成年後見制度利用支援事業とは―後見人報酬・申立費用の自治体助成を比較する」で扱っている。
報酬付与の審判そのものの手続と額の目安は,別稿「成年後見人等の報酬額の目安――大阪家裁の基準,令和7年全国実績及び申立手続」で扱っている。

結論を先に示すと,次のとおりである。
①報酬助成の要件は法律ではなく市区町村の要綱で具体化されているが,尼崎市長は平成30年3月30日の裁決で,障害者総合支援法に基づく報酬助成の決定は審査請求の対象となる「処分」に当たるとし,大阪市長も令和4年12月27日の裁決で,報酬助成の決定に対する審査請求について本案を判断した。
②審査請求は,原則として,処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内にしなければならない(行政不服審査法18条1項)。
③本人の代理人として申請していた保佐人等の代理権は本人の死亡によって消滅するが(民法111条1項1号),審査請求の係属中に本人が死亡したときは,相続人等が審査請求人の地位を承継する(行政不服審査法15条1項)。
④大阪市の要綱は,本人が死亡した場合に,報酬を受け取っていない元の後見人等が自ら助成を申請できるとし,助成の対象期間も直近24月分まで広げている。
⑤報酬助成の不支給又は減額を正面から争った裁判例は,令和8年10月17日に裁判所ウェブサイトの裁判例検索と判例秘書で調べた限りでは見当たらなかった。

第2 報酬助成の決定は審査請求の対象になるか
1 要綱による給付と「処分」

行政不服審査法2条は,「行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。」と定める(行政不服審査法2条)。
したがって,報酬助成の決定に審査請求ができるかどうかは,その決定が「処分」に当たるかどうかで決まる。

成年後見制度利用支援事業の報酬助成は,対象者・助成額・手続の大部分が市区町村の要綱で定められており,法律や条例に申請権や支給要件が具体的に書かれているわけではない。
そのため,助成の決定は処分ではなく,市区町村と申請者との合意によって成立する贈与契約にすぎないから,審査請求はできないという主張がされることがある。
後記2の尼崎市の事案では,処分庁がこの主張をし,審理員も,助成の定めが法律ではなく要綱で初めて規定されていることを理由に処分性を否定する意見を述べていた。

最高裁平成15年9月4日判決(平成11年(行ヒ)第99号,集民210号385頁)は,労働基準監督署長が労働者災害補償保険法(平成11年法律第160号による改正前のもの)23条に基づいて行う労災就学援護費の支給に関する決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした。
尼崎市長の裁決は,この事件でも支給に関する具体的な定めが法律ではなく要綱に置かれていたことを指摘し,要綱に定められているというだけで処分に当たらないと即断することは相当でなく,事案に即した検討を要するとしている。

2 尼崎市の裁決(平成30年3月30日)

尼崎市長の平成30年3月30日の裁決(平成29年度審査請求第3号)の事案は,生活保護を受給し,入院中の成年被後見人について,後見人が大阪家庭裁判所から225,000円の報酬付与を受け,尼崎市成年後見制度利用支援事業後見等に係る費用助成金交付要綱に基づいて同額の助成を申請したところ,尼崎市長が,報酬付与の対象期間中の収入と支出から算定した79,218円を助成額と決定したというものである。
本人が,代理人を通じて,この決定の取消しと報酬付与の審判と同額の助成の決定を求めて審査請求をした。

審査庁である尼崎市長は,最高裁平成15年9月4日判決の考え方を当てはめ,次の4点を挙げて,報酬助成の決定は処分に当たるとした。
①障害者総合支援法が定める介護給付費等の本体給付には,申請と決定の仕組みと審査請求の仕組みが法定されており,処分性がある。
②同法77条1項4号と同法施行規則65条の10の2が成年後見制度の利用に要する費用の支給を定め,その委任を受けて,要綱が申請と交付決定の仕組みを定めている。
③報酬助成は,同法の障害福祉サービスの一つとして,本体給付を補完する事業である。
④同法施行規則が後見人等の報酬を助成の対象として明記しているから,一定の条件を満たす者が一定の給付を受けられるという抽象的な権利は,法令で保障されている。

(続きを読む...)成年後見人等の報酬助成が受けられないときの審査請求―処分性,本人死亡時の承継と尼崎市・大阪市の裁決(AI作成)

養育費の受給率と未払い率―男女差・取決めの有無と国際比較の読み方(AI作成)

目次

第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況1 現在も受けている世帯の割合2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由3 男女差を説明するときの限界第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる第4 英国の77%とは何の割合か1 Collect and Payで一部でも支払った人の割合2 対象地域とサービスの範囲第5 日本と外国の数字を比べる際の確認表第6 未払いに直面している場合
第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか

母子世帯と父子世帯の養育費の受給状況は,公的調査から確認できる。
しかし,受け取っている世帯の割合の裏返しを,そのまま男性又は女性が養育費を払わない割合とすることはできない。
受取側を調べた世帯統計と,支払義務を負う人の履行状況は,分母が異なるからである。

本記事では,令和3年度全国ひとり親世帯等調査と,英国の2026年6月までのCMS統計を例に,受給率,未受給及び不払いの区別を整理する。
数値の大小だけで男女の責任や制度の優劣を決めず,調査対象と指標の定義から読む必要がある。

第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況
1 現在も受けている世帯の割合

令和3年度全国ひとり親世帯等調査は,令和3年11月1日現在の状況を調査したものである。
養育費の受給状況の次の数値は,母子世帯・父子世帯のうち離婚・未婚の該当世帯についての集計であり,死別等を含む全ひとり親世帯を一律に分母とした数値ではない。

受給状況母子世帯父子世帯現在も受けている28.1%8.7%受けたことがあるが,現在は受けていない14.2%4.8%受けたことがない56.9%85.9%不詳0.8%0.6%

出典は,こども家庭庁掲載の調査報告(https://www.cfa.go.jp/sites/default/files/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf)の表17-(3)-1及び表17-(3)-3(報告書60頁,結合PDF68頁)である。
同じ表には離婚・未婚別の数値もあるため,離婚した世帯だけの割合として28.1%・8.7%を引用してはならない。

2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由

100%から現在の受給割合を引くと,母子世帯では71.9%,父子世帯では91.3%となる。
しかし,この計算には,過去に受けた世帯,受けたことがない世帯及び不詳がまとめて含まれる。
支払義務のある金額,支払期日,取決めの存否及びその時点の未払残額をそろえた履行率ではない。

したがって,父親の71.9%が不払い,母親の91.3%が不払いという書き換えはできない。
現在受給している世帯についても,約束された全額が毎月支払われているかどうかは,この区分だけでは分からない。

3 男女差を説明するときの限界

母子世帯と父子世帯では,所得,子の年齢,養育費の取決めの状況等の構成が異なり得る。
受給割合の違いだけで,性別そのものが不払いの原因であるとは判断できない。

受取側の世帯の割合と,支払側の人数の割合は同じ統計ではない。
男女の支払行動を比べるには,支払義務がある人を共通の条件で把握し,対象期間と支払額を確認する資料が必要になる。

第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる

同じ調査でも,養育費の取決めをしている世帯に限ると,現在も受けている割合は母子世帯57.7%,父子世帯25.9%である。
出典は同報告の表17-(3)-7及び表17-(3)-8(報告書62・63頁,結合PDF70・71頁)である。

現在も受けている割合の分母母子世帯父子世帯調査の養育費受給状況の集計対象28.1%8.7%そのうち養育費の取決めをしている世帯57.7%25.9%

この違いは,数字に分母を付けて示す必要があることを表している。

(続きを読む...)養育費の受給率と未払い率―男女差・取決めの有無と国際比較の読み方(AI作成)

同性婚訴訟の高裁判決の比較―違憲4件・合憲1件の判断内容,国家賠償及び最高裁大法廷への回付(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と結論1 対象とする判決と基準日2 結論の要点第2 争点と各条項の意味1 争われた規定と請求の形2 憲法13条・14条1項・24条の関係第3 高裁判決5件の一覧第4 違憲とした4判決の判断1 東京高裁令和6年10月30日判決2 福岡高裁令和6年12月13日判決3 名古屋高裁令和7年3月7日判決4 大阪高裁令和7年3月25日判決第5 合憲とした東京高裁令和7年11月28日判決第6 国家賠償請求が退けられた理由第7 最高裁大法廷への回付と今後の見方1 大法廷への回付2 判決を読むときの注意点第8 出典
第1 この記事の対象と結論
1 対象とする判決と基準日

同性同士の婚姻を認めない民法及び戸籍法の規定(以下「本件諸規定」という。)の憲法適合性を争い,国に損害賠償を求めた訴訟について,裁判所HPの裁判例検索に判決全文が掲載されている高等裁判所の判決は,令和8年10月16日現在,東京高裁2件,福岡高裁,名古屋高裁及び大阪高裁の各1件の合計5件である。
本記事は,この5件の判決全文を読み比べ,各判決が憲法13条,14条1項及び24条をどのように判断したか,国家賠償請求をどの理由で退けたかを整理する。
令和8年3月25日に最高裁判所で大法廷へ回付されたと報じられた6件の訴訟には,札幌高裁の事件も含まれるが,同高裁の判決は裁判所HPに全文が掲載されていないため,本記事の比較表には含めていない。

2 結論の要点

5件のうち4件は,本件諸規定が憲法14条1項及び24条2項に違反すると判断し,そのうち福岡高裁判決は憲法13条違反も認めた。
他方,東京高裁令和7年11月28日判決は,本件諸規定が憲法24条1項・2項及び14条1項のいずれにも違反しないと判断した。
国家賠償請求は5件とも退けられており,違憲とした判決も,国会議員の立法不作為が国家賠償法上違法である,又は国会議員に故意・過失があるとまでは認めていない。
違憲判断と損害賠償請求の結論が一致しないのは,違憲審査と国家賠償法上の違法・過失の判断とで基準が異なるためである。

第2 争点と各条項の意味
1 争われた規定と請求の形

各訴訟の原告は,同性の相手との婚姻を望んで婚姻届を提出し,不受理とされた者等である。
原告らは,国会が同性間の婚姻を可能とする立法措置をとらないこと(立法不作為)が違法であるとして,国家賠償法1条1項に基づき慰謝料を請求した。
そのため,裁判所は,①本件諸規定が憲法に違反するか,②違反するとしても,立法不作為が国家賠償法上違法と評価されるかの2段階で判断している。

2 憲法13条・14条1項・24条の関係

憲法24条1項は婚姻が「両性の合意のみに基いて成立」すると定め,同条2項は婚姻及び家族に関する法律が「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して」制定されるべきことを定めている。
違憲とした4判決は,いずれも憲法14条1項と24条2項の違反を認めており,同条1項の「両性」の文言が同性間の婚姻まで保障しているかという問題とは別に,立法裁量の限界と平等原則の観点から違憲性を判断している。
憲法13条(幸福追求権)を根拠に婚姻の法的保護を求める主張については,5件のうち福岡高裁判決だけが違反を認め,大阪高裁判決は直ちに違反するとはいえないとした。

第3 高裁判決5件の一覧
判決憲法の判断国家賠償請求東京高裁令和6年10月30日判決(令和5年(ネ)第292号)14条1項・24条2項に違反棄却(違反が国会にとって明白であったとはいえない)福岡高裁令和6年12月13日判決(令和5年(ネ)第584号)13条・14条1項・24条2項に違反棄却(国会議員の故意又は過失を認め難い)名古屋高裁令和7年3月7日判決(令和5年(ネ)第570号)14条1項・24条2項に違反棄却(原判決の結論を維持)大阪高裁令和7年3月25日判決(令和4年(ネ)第1675号)14条1項・24条2項に違反(13条は直ちに違反とはいえない)棄却(立法不作為は違法とはいえない)東京高裁令和7年11月28日判決(令和6年(ネ)第1861号)24条1項・2項,14条1項のいずれにも違反しない棄却

いずれの判決も控訴を棄却しており,第一審で敗訴した原告らの損害賠償請求は認められていない。
「違憲判決」と報じられる判決も,主文は控訴棄却であり,違憲の判断は理由中の判断である。

第4 違憲とした4判決の判断
1 東京高裁令和6年10月30日判決

東京高裁令和6年10月30日判決(令和5年(ネ)第292号)は,「現行の法令において、同性間の人的結合関係について配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定が設けられていないことが、憲法14条1項、24条2項に違反することは、前記のとおりである。」と述べた(判決書57頁)。
もっとも,同判決は,憲法24条1項が男女間の婚姻を憲法13条・14条に立脚した制度に改めることを明文で要請する一方,同性間の人的結合関係について同様の規定を設けるべきことまでは明文で要請していないとも述べている(同頁)。
国家賠償請求については,本件諸規定が憲法14条1項・24条2項に違反することが国会にとって明白となっていたとはいえないとして,口頭弁論終結時(令和6年4月26日)までの立法不作為を違法とはしなかった(判決書58頁)。

2 福岡高裁令和6年12月13日判決

(続きを読む...)同性婚訴訟の高裁判決の比較―違憲4件・合憲1件の判断内容,国家賠償及び最高裁大法廷への回付(AI作成)

養育費法制の国際比較―金額の決め方・行政徴収・立替払いと日本の違い(AI作成)

目次

第1 養育費法制は何を比べるべきか1 請求額,回収額及び給付額は別である2 制度名よりも,誰の資金が動くかを見る第2 金額を決める仕組みの比較第3 行政徴収,支払仲介及び公的支払の比較1 アメリカと英国の行政関与2 フランスのARIPAとASF3 ドイツの養育費立替制度4 韓国の先払制度第4 日本の月額2万円・8万円は何を意味するか1 法定養育費は親への請求権である2 先取特権は公的保証ではない第5 国境を越える請求で確認すること第6 よくある質問1 海外では国が必ず養育費を立て替えるのか2 共同親権なら養育費の支払は不要になるのか3 回収率の高い国の制度を採れば同じ結果になるのか第7 国別記事と資料の確認時点
第1 養育費法制は何を比べるべきか

養育費法制を国際比較するときは,金額を決める仕組み,決まった金額を回収する仕組み,支払がない間の生活を支える給付を分ける必要がある。
行政機関が関与していても,親から集めた養育費を送金する制度と,公費から一定額を支給する制度では,役割が異なる。

本記事は,日本,アメリカ,イングランド及びウェールズ,フランス,ドイツ,韓国,オーストラリアについて,公的案内から制度の役割を比較する。
各国の全制度を網羅するものではなく,国別の具体的な金額・年齢・請求手続は,末尾の各記事及び公的窓口で確認する必要がある。

1 請求額,回収額及び給付額は別である

親に対して請求できる額と,実際に回収できた額は一致するとは限らない。
公的な立替え・先払いの額にも独自の上限や受給条件があり,親が負う養育費全額がそのまま公費で保証されるとは限らない。

比較の順序は,①誰がいくら負担するか,②どの文書・判断で額を確定するか,③誰がどの方法で徴収するか,④未払時にどの給付を利用できるか,⑤国境を越える場合にも同じ経路を利用できるか,である。
外国に立替制度があるという説明だけで,日本からの申請の可否や全額回収の見込みまでは分からない。

2 制度名よりも,誰の資金が動くかを見る

行政徴収・支払仲介では,基本的に支払義務者から徴収した金銭を受取側に渡す。
公的立替え・先払いでは,所定の条件で公費による支払が行われ,義務者への回収と組み合わせられる。
生活支援の給付,民間保証及び手続費用の補助も,それぞれ別に確認する必要がある。

第2 金額を決める仕組みの比較

次の表は,制度を読む際の入口を示したものである。
表に挙げた指針や行政サービスが,すべての事案に一律に適用されるわけではない。

国・地域金額を考える入口比較するときの注意日本父母の合意,家庭裁判所の調停・審判等で適正額を定める。未取決めの場合の法定養育費は別に扱う。月額2万円は一般的な適正額の基準ではない。アメリカ対象州の制度と個別の養育費命令を確認する。全国共通の固定額を前提にしない。イングランド及びウェールズCMSの対象では,支払側の収入,子の数,監護の状況等を計算に反映する。CMSの対象となる請求かを先に確認する。フランス執行力ある裁判・合意等に定められた養育費を確認する。支払仲介を始めることと,養育費額の変更は別である。ドイツデュッセルドルフ表は裁判実務上の指針となる。表の需要額と児童手当等を調整した支払額は異なる。韓国裁判・調停等で定めた養育費と先払制度の対象額を分ける。先払額が養育費債権の全額とは限らない。オーストラリア基本算式では,父母の所得割合と監護に伴う費用割合を組み合わせる。支払側の所得だけで決まる制度として説明しない。

日本の手続は裁判所の養育費に関する案内(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_09/minzi_26_01/index.html),米国の命令と支援機関の関係はUSA.gov(https://www.usa.gov/child-support),CMSの計算は英国政府の計算案内(https://www.gov.uk/how-child-maintenance-is-worked-out)が入口となる。
ドイツの表はデュッセルドルフ上級地方裁判所の2026年表(https://www.olg-duesseldorf.nrw.de/infos/Duesseldorfer_Tabelle/Tabelle-2026/DT_2026.pdf),豪州の基本算式はServices Australia(https://www.servicesaustralia.gov.au/basic-child-support-formula?context=21911)を参照されたい。

第3 行政徴収,支払仲介及び公的支払の比較
1 アメリカと英国の行政関与

アメリカでは,州・部族の養育費支援機関が,親子関係の確定,命令の取得・変更及び履行確保等を支援する。
USA.govは,連邦政府・州政府が養育費そのものを支払うのではなく,親から回収するための支援を行うと説明している。

英国政府の支払方法の案内(https://www.gov.uk/child-maintenance-service/payments)では,CMSが金額を計算し父母間で送金するDirect Payと,CMSが徴収・送金するCollect and Payを区別している。
Collect and Payも義務者からの徴収を通じて受取側へ渡す仕組みであり,CMSが未払額を一律に公費で補う制度ではない。

2 フランスのARIPAとASF

フランスの養育費の支払仲介(IFPA)(https://www.service-public.gouv.fr/particuliers/vosdroits/F36407)では,ARIPAが支払側から受領した養育費を受取側に送金し,未払時には回収を担う。
これに対し,ASF(家族支援手当)(https://www.service-public.gouv.fr/particuliers/vosdroits/F815)は,所定の条件で支給される社会給付であり,未払養育費の前払いとして支給される場合もある。

(続きを読む...)養育費法制の国際比較―金額の決め方・行政徴収・立替払いと日本の違い(AI作成)

養育費の立替払い・保証は利用できるか―公的給付,民間保証,自治体の費用補助の違い(AI作成)

目次

第1 最初に区別したい四つの仕組み1 養育費の請求権と,実際にお金を受け取る仕組み2 法定養育費は,国が立て替える給付ではない3 国から養育費はもらえるのか第2 民間の養育費保証を利用する場合1 保証料の補助と,保証会社による支払は別である2 契約前に書面で確認する事項第3 大阪市で利用を検討できる三つの費用補助1 養育費の保証促進補助金2 公正証書等作成促進補助金3 強制執行着手金補助金第4 費用を支払う前から確認したいこと1 住所地,対象経費及び申請の順序2 契約書と領収書は費目を分ける第5 生活支援と養育費回収を並行して進める1 生活費が不足するときの相談2 回収のために残す記録第6 出典
第1 最初に区別したい四つの仕組み
1 養育費の請求権と,実際にお金を受け取る仕組み

養育費が支払われなくなったときは,相手から未払分を回収する問題と,当面の子の生活費を確保する問題を並行して考える必要がある。
回収に時間がかかる場合でも,生活支援の相談を回収手続の終了まで待つ必要はない。

「養育費の立替払い」という言葉だけでは,誰が,何を根拠に,いくら支払う制度なのかは分からない。
①一定の要件に基づく公的給付,②保証会社との契約による立替保証,③保証料・文書作成費用・執行費用に対する自治体の補助,④父母間の養育費を請求・回収する制度を分けることが出発点となる。

この記事は,令和8年10月16日に確認した国・自治体の公式案内を基に,日本で支援先や保証契約を選ぶ際の確認事項を説明する。
自治体の例は大阪市を中心とし,その条件を全国の自治体に共通するものとして扱わない。

2 法定養育費は,国が立て替える給付ではない

法務省の改正法案内で説明される法定養育費は,取決めをしないまま離婚した場合等に,所定の要件で父母間に生じる養育費の請求権である。
国が未払額を全額支払う立替給付とは性質が異なり,請求権が生じることだけで現実の入金が保障されるわけではない。

発生要件,経過措置,金額及び先取特権の詳細は,法定養育費と養育費債権の先取特権を参照されたい。
私的な取決め,法定養育費,保証会社の保証対象を同じ金額・同じ期間のものと決め付けないことが必要である。

3 国から養育費はもらえるのか

法定養育費は他方の親への請求権であり,国が支給する養育費ではない。
また,自治体の保証料・公正証書作成費用・執行費用の補助は,所定の費用を支援する制度であり,未払養育費全額を国が支払う制度とは異なる。
利用できる支援は,住所地,所得,対象経費及び申請時期等を各窓口で確認する必要がある。

外国の行政徴収,支払仲介及び公的先払いとの違いは,養育費法制の国際比較を参照されたい。
日本の制度の位置付けは,裁判所の法定養育費等の案内(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_09/minzi_26_01/index.html)でも確認できる。

第2 民間の養育費保証を利用する場合
1 保証料の補助と,保証会社による支払は別である

東京都の養育費確保支援事業の案内は,保証会社による養育費の立替え,受取者への支払及び支払義務者への請求を行う保証契約について,初回保証料を助成対象としている。
ここで自治体が助成するのは保証契約の費用であり,自治体自身が毎月の養育費を支払うという説明ではない。
同事業の対象地域は東京都内の町村であり,区市についてはそれぞれの制度を確認する必要がある。

保証料の補助を受けられることと,保証会社の審査に通り,個々の未払いについて保証金の支払を受けられることも別の問題である。
契約締結前に,自治体の補助要件と保証会社の契約条件の両方を確認する。

2 契約前に書面で確認する事項

保証契約を検討する際は,広告の「立替」「保証」という表示だけで判断せず,契約書・約款・重要な条件の説明を取り寄せることが望ましい。
次の事項は,保証の範囲と実際の入金時期を把握するための実務上の確認項目であり,すべての会社に共通する契約条件を述べるものではない。

(続きを読む...)養育費の立替払い・保証は利用できるか―公的給付,民間保証,自治体の費用補助の違い(AI作成)

証券口座の相続でMRFはどうなるか-預り金・特定口座・NISAとの違い(AI作成)

目次

第1 結論第2 MRFは預り金ではなく投資信託である1 日興MRFの商品分類2 元本保証又は預金保険の対象ではない3 換金性が高くても必ず即時に換金できるわけではない第3 名義人が死亡した後の基本手順1 証券会社へ死亡を連絡する2 死亡日残高と現在残高を分けて確認する3 MRFを取得する相続人を確定する4 相続人名義の受入口座を準備する第4 特定口座にあったMRFの処理1 現物移管と解約代金の移管は異なる2 SMBC日興証券の現行約款3 被相続人の特定口座は相続手続完了後に廃止される第5 預り金・株式・投資信託・NISAとの違い1 預り金との違い2 株式及び一般の投資信託との違い3 NISAとの違い第6 MRFを現金化して分ける場合1 換金前に取得者又は換金権限を確定する2 被相続人口座での換金と相続人口座での売却を区別する3 相続放棄を検討している場合第7 必要書類と確認事項1 相続関係と取得根拠を示す書類2 証券会社所定書類と受入口座書類3 実務上の確認リスト第8 よくある質問1 MRFは相続時に自動的に現金になりますか2 MRFは相続人の証券口座へそのまま移管できますか3 MRFと証券口座の預り金は何が違いますか4 相続人が同じ証券会社に口座を持っていない場合はどうなりますか5 特定口座にあったMRFは相続人の特定口座へ入れられますか6 NISA口座にあった商品を相続人のNISAへ移せますか7 MRFを換金して複数の相続人に分けられますか第9 関連する証券口座相続の記事第10 出典・参考資料
第1 結論

MRFは証券口座で現金に近い使われ方をするが,預金又は単なる預り金ではなく,公社債等で運用される投資信託である。
そのため,相続時には,預り金の振込み,株式の現物移管,NISA口座からの払出しと同じ処理になるとは限らない。

SMBC日興証券の現行の特定口座約款は,日々決算型投資信託の受益権について,被相続人の特定口座で解約し,解約代金を相続人の口座へ移した後,同一銘柄を相続人の特定口座で取得する方法によることがあると定めている。
これは,MRFが常に受益権のまま現物移管されるわけではないことを示す一例であり,他の証券会社又は商品にも当然に共通するとは限らない。

実際の手続では,①死亡の連絡,②死亡日現在と手続時現在の残高確認,③MRFの口座区分と商品名の確認,④取得者の確定,⑤相続人名義の受入口座の準備,⑥現物移管・解約代金移管・再取得のいずれになるかの確認,⑦取引報告書その他の完了資料の保存,という順で進める。
相続放棄又は限定承認を検討しているときは,換金又は再取得の指示を出す前に,財産調査と処分を分けて弁護士へ相談する必要がある。

第2 MRFは預り金ではなく投資信託である
1 日興MRFの商品分類

日興MRFの交付目論見書は,日興MRFを「追加型投信/国内/債券/MRF」と分類し,内外の公社債及びコマーシャル・ペーパーを中心に運用すると説明している。
証券口座に入金した資金から自動的に買い付けられ,売買代金等に充てるため換金されることがあるので,利用者には現金に近く見えるが,保有しているのは投資信託の受益権である。

SMBC日興証券の日興MRF商品ページも,商品分類を追加型公社債投資信託とし,毎日決算を行い,原則として毎月の最終営業日に税引後の収益分配金を再投資すると説明している。
したがって,死亡日残高と相続手続完了時の残高は,分配金の再投資その他の取引によって一致しないことがある。

2 元本保証又は預金保険の対象ではない

日興MRFは,元本の安全性に配慮して安定運用を目指す商品であるが,元本が保証されているわけではない。
目論見書は,価格変動リスク,流動性リスク及び信用リスクを掲げ,基準価額の下落によって投資元金を割り込むことがあると説明している。

MRFは預貯金と異なり,預金保険機構の保護対象でもない。
相続財産目録では,銀行預金又は証券会社の預り金と一括せず,「日興MRF何口」など,商品名,口数,基準日及び評価資料が分かる形で記載するのが安全である。

3 換金性が高くても必ず即時に換金できるわけではない

日興MRFは原則としていつでも購入・換金が可能とされ,SMBC日興証券の商品ページは受付時刻に応じた換金代金の支払時期を案内している。
しかし,目論見書は,大量解約又は市場急変等により,換金申込みの受付を中止し,又は換金代金の支払が遅延する可能性も明記している。

相続手続では,通常の換金時刻だけでなく,死亡連絡後の口座制限,取得者確定,必要書類の補正及び受入口座開設に要する時間も加わる。
したがって,「MRFだから死亡後すぐ現金化できる」と約束せず,証券会社が相続手続として採る処理と完了見込みを個別に確認する必要がある。

第3 名義人が死亡した後の基本手順
1 証券会社へ死亡を連絡する

相続人又は代理人は,取引店又は相続窓口へ名義人の死亡を連絡し,相続受付番号,担当窓口,提出方法及び必要書類を確認する。
相続手続中は,被相続人本人による通常取引を前提にせず,未約定注文,入出金,積立,配当・分配金及び自動買付けの取扱いを確認する。

死亡したことだけで口座内の全商品が法律上当然に売却されるわけではない。
株式,投資信託,MRF,外貨及び預り金ごとに,証券会社が現物移管,解約,決済又は振込みのどの方法を採るかを分けて確認する。

(続きを読む...)証券口座の相続でMRFはどうなるか-預り金・特定口座・NISAとの違い(AI作成)

信託銀行の遺言執行で有価証券は売却されるか―換価指定・現物承継・確認書の注意点(AI作成)

目次

第1 結論第2 換価か現物承継かを判断する順序1 遺言書の文言を確認する2 金融商品の種類と取扱金融機関を確認する3 受取人の希望と遺言執行者の権限を分ける第3 有価証券を換価する場合の注意点1 売却時期と売却価格は別問題である2 換価代金の受領方法を確認する3 市場変動の負担者を確認する第4 有価証券を現物で承継する場合の注意点1 受入れ可能な証券口座を準備する2 商品ごとの移管可否を確認する3 配当金等の帰属を確認する第5 相続税評価と売却時の税務1 相続税評価額と実際の売却代金は一致しない2 取得費は原則として被相続人から引き継ぐ3 税務申告の担当者を明確にする第6 遺言執行者と相続人等の役割分担1 遺言執行者が行うこと2 相続人又は受遺者が行うこと3 弁護士・税理士等へ確認すること第7 金融商品の確認書を読むチェックリスト1 書面の目的を確認する2 期限と不利益を確認する3 価格・費用・税務を確認する第8 よくある質問1 信託銀行が遺言執行者なら株式は必ず売却されるのか2 相続人全員が同意すれば受取方法を変更できるのか3 相続人が売却日又は価格を指定できるのか4 現物承継には証券口座が必要か5 相続税は実際の売却代金を基準に計算するのか第9 関連記事第10 出典・参考資料
第1 結論

信託銀行が遺言執行者になる場合でも,株式,投資信託その他の有価証券が常に売却されるわけではない。
最初に確認すべきなのは,遺言書が有価証券を換価して代金を交付する内容か,有価証券そのものを特定の相続人又は受遺者に取得させる内容かである。
換価して分配する遺言であれば,原則として遺言執行者は売却又は解約を進める。
現物で取得させる遺言であれば,原則として取得者名義の証券口座等へ振り替えるための手続を進める。

相続人又は受遺者が遺言と異なる受取方法を希望しても,その希望だけで換価を現物承継へ,又は現物承継を換価へ変更できるわけではない。
金融機関から確認書その他の書面が示された場合は,遺言内容の確認にとどまる書面か,受取方法の変更申出を含む書面かを区別し,提出期限,必要口座,費用,撤回の可否及び金融機関が申出を受け入れない場合を確認する必要がある。

第2 換価か現物承継かを判断する順序
1 遺言書の文言を確認する

出発点は,商品名や担当者の説明ではなく,遺言書の条項である。
「換価して代金を交付する」,「売却代金を分配する」などの文言があれば,通常は換価処分を予定している。
これに対し,「甲に株式を相続させる」,「乙に投資信託を遺贈する」など,金融商品そのものを取得させる文言であれば,通常は現物承継を予定している。

同じ遺言書でも,預貯金,有価証券及び不動産で処分方法が異なることがある。
残余財産を換価して分配する条項の対象に有価証券が含まれるか,個別の承継条項が優先するかも確認する必要がある。
遺言執行者は,自己の判断で有利と思う方法を選ぶのではなく,遺言の内容を実現するために必要な行為を行う立場にある。

2 金融商品の種類と取扱金融機関を確認する

「有価証券」と一括りにしても,上場株式,投資信託,国債,社債,外国証券及び非上場株式では,換価又は振替の方法が異なる。
同一の商品でも,口座管理機関,販売会社,信託銀行又は証券会社の事務手続が異なることがある。

口座の所在が分からない振替株式等については,証券保管振替機構の登録済加入者情報の開示手続が手掛かりになることがある。
もっとも,開示で口座管理機関が判明しても,残高,取得価額及び承継方法は別に確認する必要がある。

3 受取人の希望と遺言執行者の権限を分ける

相続人全員が現物で受け取りたい,又は早く売却してほしいと希望しても,遺言執行者は遺言に従って職務を行う必要がある。
遺言と異なる処理を希望する場合は,遺言の解釈,受益者全員の同意の効力,遺言執行者の権限及び金融機関の約定を別々に検討しなければならない。

信託銀行に受取方法の変更制度がある場合でも,それは民法上当然に認められる権利ではなく,商品約定又は個別運用に基づく手続であることが多い。
そのため,所定書面を提出すれば必ず希望どおりになるとは限らない。

第3 有価証券を換価する場合の注意点
1 売却時期と売却価格は別問題である

遺言が換価を命じていても,いつ,どの価格で売却するかまで定めていないことが多い。
市場性のある商品は価格が変動するため,死亡時,相続税評価時,売却注文時,約定時及び受渡時の価格が一致しない。

(続きを読む...)信託銀行の遺言執行で有価証券は売却されるか―換価指定・現物承継・確認書の注意点(AI作成)

アイルランド法の養育費―2026年ガイドライン・計算・未払いと日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論と確認の順序第2 養育費を決める三つの方法第3 養育費はいくらになるか第4 2026年の公式ガイドラインと計算ツール第5 養育費は何歳まで支払うか第6 裁判所へ申し立てる場合第7 未払いとなった場合第8 国外からの回収と中央当局第9 日本からアイルランド在住の親に請求する場合第10 アイルランドの命令を日本で使う場合第11 よくある質問1 アイルランド法では養育費はいくらですか2 アイルランドの養育費は何歳までですか3 両親が結婚していなくても請求できますか4 共同監護なら養育費は不要ですか5 公式計算ツールは裁判所を拘束しますか6 養育費が未払いになるとどうなりますか7 日本からアイルランドの親へ請求できますか8 養育費を国が立て替える制度はありますか第12 最初にそろえる資料第13 関連記事第14 出典と調査範囲
第1 結論と確認の順序

アイルランドの養育費はChild Maintenanceと呼ばれ,両親が婚姻しているかどうかにかかわらず,扶養を必要とする子について問題となる。
金額には全家庭へ一律に適用される固定額があるわけではなく,令和8年に公表された公式ガイドラインと計算ツールは,当事者間で金額を検討するための出発点である。
裁判所は,双方の収入・資産・支出,子の必要及び他の扶養義務等を個別に検討する。

日本とアイルランドをまたぐ事件では,①誰が誰に請求するか,②子と両親の住所・常居所,③既存の合意又は裁判所命令,④相手の勤務先と財産の所在国,⑤請求する国と執行する国を順に確認する。
国際裁判管轄,準拠法,外国判断の承認及び強制執行は別の判断であり,アイルランド法が準拠法となることと,アイルランドで直ちに回収できることは同じではない。

第2 養育費を決める三つの方法

アイルランドのCourts Serviceは,養育費の決め方として,非公式の任意合意,調停又は法律専門家の支援を受けた合意,裁判所のMaintenance Orderという三つの経路を案内している。
親同士で合意できる場合は,支払額,支払日,臨時の教育費・医療費,監護時間の変更及び見直し時期を文書化する。

任意合意だけでは将来の不払いに備えた執行力が十分でない場合がある。
合意内容を裁判所命令にする必要があるかは,支払状況,相手の勤務・財産,国際移動の予定及び既にある命令を踏まえて検討する。

合意できないときは,扶養を必要とする子を監護する親等がMaintenance Orderを申し立てることができる。
子の養育費と元配偶者の生活費であるspousal maintenanceは対象者と金額を分けて記録する。

第3 養育費はいくらになるか

アイルランド法には,全事件へ機械的に適用する一律の法定算式はない。
裁判所は,双方の収入,資産,生活費,債務,他に扶養する者,子の年齢,教育・医療その他の必要を個別に検討する。

令和8年10月16日に確認したCourts Service及び改訂法令では,District Courtが子1人について命じる定期金の上限は週150ユーロである。
これは標準的な養育費額ではなく,District Courtの管轄上の上限である。
請求額がこれを超える場合の裁判所選択は別に確認する必要がある。

Family Courts Act 2024には,将来のFamily District Courtについて子1人当たり週500ユーロへ上限を引き上げる条文がある。
しかし,今回確認した施行情報では同法を現行の金額基準として扱うことはできず,政府は最初のFamily Courtsの運用開始を令和9年1月の予定として説明していた。
申立て又は記事利用の時点で施行状況を再確認する必要がある。

第4 2026年の公式ガイドラインと計算ツール

アイルランド政府は,令和8年1月19日に初のChild Maintenance Guidelines for Irelandを公表し,同年2月26日にオンライン計算ツールを公開した。
計算ツールは,両親が私的な取決めを作る際の目安を示すものである。

計算では,総収入から本人の生活維持に必要な控除等を行った所得,他に扶養する子,対象となる子の年齢及び各親が子を養育する時間等を考慮する。
入力する収入期間,養育時間及び他の扶養対象を誤ると結果も変わるため,計算結果だけで合意書又は申立額を決めない。

ガイドラインと計算ツールは,交渉の共通の出発点として有用であるが,裁判所を拘束する法定算式ではない。
特別な教育費,医療費,住居費,障害又は収入変動等がある場合は,ツールで表現できない事情を別に記録する。

(続きを読む...)アイルランド法の養育費―2026年ガイドライン・計算・未払いと日本からの請求(AI作成)

フランスの養育費法制―扶養義務,金額の決定・変更,執行力ある文書,ARIPA及び日仏間の承認・執行(AI作成)

目次

第1 フランスの養育費を法律問題として整理する視点第2 養育・教育への寄与義務の法的性質1 父母双方の資力と子の必要2 金銭給付以外の負担第3 養育費額の決定と司法省参考算定表の位置付け1 裁判官の判断枠組み2 参考算定表は法規範そのものではない第4 親権・子の居住と養育費の関係1 共同の親権行使と費用分担は別問題である2 交互居住でも養育費は当然にゼロにならない第5 成年後の継続と義務の終了第6 養育費の変更と物価連動1 事情変更による増額・減額2 指数連動条項第7 養育費を執行できる文書1 執行力ある文書が必要となる理由2 文書に定めるべき事項第8 ARIPAの法的位置付け1 支払仲介は原債権を変更しない2 適用範囲と除外第9 未払回収とASFの法的区別1 ARIPAによる未払回収2 ASFは社会給付である3 ARIPAの支払仲介とASFは同じ制度か第10 国際養育費事件の法的な切分け1 四つの法的段階2 条約関係を先に確認する第11 日本の判断をフランスで承認・執行する場合1 外国裁判のexequatur2 日本の文書ごとの分類が必要である第12 フランスの判断を日本で利用する場合と準備資料1 日本での承認と強制執行2 相談・申立て前にそろえる資料3 法的論点別の短い結論4 関連記事と主要出典
第1 フランスの養育費を法律問題として整理する視点

フランスの子に対する養育費は,単なる送金サービスや社会保障給付ではなく,父母が負う子の養育・教育への寄与義務を具体化する法律問題である。
令和8年10月16日現在の法制度を検討するときは,①実体法上の義務,②金額・支払方法を定める手続,③執行力ある文書,④支払仲介・未払回収,⑤国境を越える承認・執行を区別する必要がある。

フランス民法371-2条は,父母がそれぞれの資力,他方の親の資力及び子の必要に応じて,子の養育・教育に寄与すると定める。
この三要素が金額決定の法的基礎であり,司法省の参考算定表やARIPAは,この実体法上の義務を置き換えるものではない。

法的段階中心となる問題主な根拠・制度実体法誰が,どの基準で,いつまで負担するか民法371-2条形成・変更合意又は裁判で月額・終期・特別費用をどう定めるか民法373-2-2条・373-2-13条執行力どの文書に基づき回収できるか裁判,認可合意,公正証書等支払・回収支払仲介,未払回収,社会給付をどう区別するかARIPA・Caf・MSA・ASF国際事件どの国が判断し,どの法を適用し,どこで執行するか国際裁判管轄・準拠法・承認・強制執行
第2 養育・教育への寄与義務の法的性質
1 父母双方の資力と子の必要

民法371-2条は,支払親の収入だけを基準とせず,父母双方の資力と子の必要を比較する構造を採る。
したがって,給与・事業所得・資産だけでなく,住居費,他の扶養家族,子の年齢,教育費,医療費及び特別な必要を具体的資料で示すことが重要である。

養育費は,親権の有無や離婚原因に対する制裁として決まるものではない。
子の生活を支える費用分担として,親権行使,子の居住及び面会交流とは法的に区別して検討する。

2 金銭給付以外の負担

父母の一方が毎月の金銭を支払う形が一般的であるが,父母が直接負担する住居費,学費,医療費その他の費目も全体の費用分担に影響する。
合意又は裁判では,定期金と特別費用を区別し,誰がどの資料に基づいて何割を負担するかを明確にする必要がある。

第3 養育費額の決定と司法省参考算定表の位置付け
1 裁判官の判断枠組み

父母が合意できる場合は,月額,支払開始日,毎月の支払期限,送金方法,物価連動,特別費用及び終期を文書にする。
合意できない場合は,juge aux affaires familiales(家族事件裁判官)が,民法371-2条の要素と提出資料に基づいて個別に判断する。

全国一律の法定月額は存在しない。
同じ所得額でも,子の人数,居住態様,父母の直接負担及び子の個別事情によって結論は変わり得る。

2 参考算定表は法規範そのものではない

フランス司法省の養育費シミュレーターは,支払親の月額課税純所得,共通の子の人数及び居住態様を入力して参考額を示す。
司法省の参考算定表は,所得から一定の最低生活費を控除した額に,子の人数及び居住態様に応じた割合を掛ける構成である。

これらはgrille indicative(参考表)であり,民法371-2条に基づく裁判官の個別判断を拘束する法定算式ではない。
算定結果は主張の出発点として利用し,受領親の資力,子の具体的費用,父母の直接負担その他の事情を資料で補充する必要がある。

第4 親権・子の居住と養育費の関係
1 共同の親権行使と費用分担は別問題である

父母が共同で親権を行使することは,双方の資力が同じであること又は子の費用を半分ずつ負担していることを意味しない。

(続きを読む...)フランスの養育費法制―扶養義務,金額の決定・変更,執行力ある文書,ARIPA及び日仏間の承認・執行(AI作成)

オーストラリア法の養育費はいくら?計算方法・何歳まで・不払い・日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論―固定の月額ではなく,双方の所得・監護割合等で決まる第2 オーストラリア法の養育費制度1 行政査定が中心となる2 親責任・居住時間と養育費は同じ問題ではない第3 養育費を計算する8段階1 各親のchild support incomeを出す2 父母のchild support incomeを合算する3 各親の所得割合を出す4 各親の監護割合を出す5 監護割合を費用割合に換算する6 child support percentageを出す7 子の費用を出す8 年間支払額を出す第4 オーストラリアの養育費はいくらか1 子1人当たりの固定月額はない2 令和8年の単純計算例3 手取り25万円ならいくらか第5 共同養育なら養育費はゼロになるか第6 養育費は何歳までか1 行政査定は通常18歳までである2 全日制中等教育中は学年末まで延長できる場合がある3 成年子の裁判所命令は別である第7 父母の合意と行政査定1 行政査定と合意を区別する2 特別事情による査定変更第8 養育費を払わない場合の回収1 私的回収とServices Australiaによる回収2 豪州内の回収措置第9 日本に住んでいても請求できるか1 日本は豪州の相互取扱国一覧にない2 日本居住でも豪州側が扱える場合がある3 支払親が日本にいる場合は別の工程が必要である第10 養育費と子育て支援制度の違い第11 申請・相談前の確認事項第12 よくある質問1 オーストラリアの養育費は1人当たり毎月いくらですか2 手取り25万円ならいくらですか3 共同養育なら養育費はゼロですか4 オーストラリアの養育費は何歳までですか5 養育費を払わないとどうなりますか6 日本に住んでいても請求できますか7 オーストラリアに子育て支援制度はありますか第13 関連記事第14 出典・調査範囲1 豪州連邦法及び西オーストラリア州法2 豪州政府資料3 調査上の留保
第1 結論―固定の月額ではなく,双方の所得・監護割合等で決まる

オーストラリアの養育費(child support)には,「子1人なら毎月一律いくら」という固定相場はない。
Services Australiaは,父母双方のadjusted taxable incomeから自己扶養額等を差し引き,双方の所得割合,各親の監護割合,子の人数及び年齢から年間額を査定する。
そのため,支払親の収入が同じでも,相手方の収入,子と過ごす日数,子の年齢及び他に扶養する子の有無等によって金額は変わる。

日本の「手取り25万円」だけを豪ドルへ換算しても,オーストラリア法の養育費は計算できない。
通常の行政査定は子が18歳になると終了するが,子が全日制の中等教育を続ける場合には,17歳のうちに申請して18歳になる学年の終了日まで延長できる場合がある。

日本とオーストラリアに父母又は子が分かれて住む事件では,豪州法上の査定額だけでなく,誰がどこで申請できるか,どの国に相手方の給与・預金等があるか,日本又は豪州の判断を他国で利用できるかを分けて確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月16日現在の豪州連邦法,西オーストラリア州法及びServices Australiaの公開資料に基づき,行政査定の基本を説明する。
Services Australiaの行政査定は豪州のchild support schemeとして扱われる一方,成年子の裁判所命令等では西オーストラリア州法を含む適用法・裁判所の確認が必要であり,親子関係自体の争い及び個別の国際裁判管轄・外国裁判承認も具体的事案ごとに別途検討する必要がある。

第2 オーストラリア法の養育費制度
1 行政査定が中心となる

Child Support (Assessment) Act 1989は,父母が子を扶養する義務を負うことを前提に,Services AustraliaのRegistrarによる行政査定の仕組みを定めている。
行政査定を利用できる場面では,裁判所が日本の養育費算定表に相当する表を使って毎月額を決めるのではなく,法定の計算式によって年間額が算出される。
Services Australiaは,別居している父母及び一定の非親監護者に対し,査定,支払管理及び回収のサービスを提供する。

2 親責任・居住時間と養育費は同じ問題ではない

親が子について重要事項を共同で決めること,子が各親と過ごす時間及び養育費は別の問題である。
子と過ごす時間は養育費の計算要素になるが,共同決定をする命令があることだけで養育費が半額又はゼロになるわけではない。
反対に,養育費を支払っていることだけで,特定の居住日程又は親子交流が当然に認められるわけでもない。

第3 養育費を計算する8段階

Services Australiaの基本式は,父母間の一つのchild support caseで非親監護者がいない場合,おおむね次の8段階である。

1 各親のchild support incomeを出す

adjusted taxable incomeから,自己扶養額及び一定の扶養控除額等を差し引く。
令和8年に始まるchild support periodの自己扶養額は,各親につき年3万1046豪ドルである。
adjusted taxable incomeには課税所得だけでなく,一定の海外所得,報告対象のフリンジベネフィット,退職年金への追加拠出等が含まれ得るため,日本の給与明細の手取り額とは一致しない。

2 父母のchild support incomeを合算する

第1段階で得た双方の金額を足し,combined child support incomeを出す。

3 各親の所得割合を出す

各親のchild support incomeをcombined child support incomeで割り,income percentageを出す。

4 各親の監護割合を出す

(続きを読む...)オーストラリア法の養育費はいくら?計算方法・何歳まで・不払い・日本からの請求(AI作成)

韓国の養育費制度―2021年算定基準表,未払い時の回収・制裁及び先払制度(AI作成)

目次

第1 韓国の養育費を検討する順序第2 養育費を決める法的根拠1 父母の協議と家庭法院の裁判2 養育費の額と回収方法は別問題である第3 2021年養育費算定基準表の見方1 現在確認できる公表基準2 計算の基本順序3 加算・減算を検討する事情第4 何歳まで支払うか,過去分を請求できるか1 何歳まで支払うか2 過去の養育費第5 未払い時の韓国内の回収手段1 養育費履行管理院の支援2 2回以上の不払いと直接支払命令3 財産明示・財産照会と差押え第6 運転免許停止・出国禁止・名簿公開・刑事罰1 行政上の制裁は自動的には発動しない2 刑事罰にも先行要件がある第7 養育費先払制度1 国が先に支払い,義務者から回収する制度2 令和8年10月29日に予定される所得要件の変更3 韓国の先払制度と日本の法定養育費は同じか第8 日本と韓国をまたぐ養育費請求1 五つの法律問題を分ける2 2007年ハーグ養育費条約を当然の経路としない3 最初にそろえる資料第9 よくある質問1 韓国の養育費はいくらか2 韓国の養育費は何歳までか3 過去の養育費も請求できるか4 2回払わないと勤務先から直接支払われるか5 不払いならすぐ出国禁止又は名簿公開になるか6 養育費を払わないと直ちに刑事罰になるか7 韓国の養育費先払制度はいくらか8 日本の調停調書をそのまま韓国で執行できるか第10 相談前に整理する資料第11 関連記事第12 出典と調査範囲1 韓国の法令・裁判所資料2 韓国政府及び国際機関の資料
第1 韓国の養育費を検討する順序

韓国の養育費については,①韓国法上の養育費請求権,②具体的な金額,③支払義務を定めた合意又は裁判書,④未払い時の韓国内の回収手段,⑤日本と韓国をまたぐ場合の管轄・準拠法・承認・執行を分けて検討する必要がある。
当事者の一方が韓国人であるという事実だけでは,どの国の裁判所で,どの国の法律により,どの国の財産から回収できるかは決まらない。

本記事は,令和8年10月16日現在の韓国法令,韓国大法院・ソウル家庭法院及び韓国政府の公開資料を基礎に,韓国国内の養育費制度を中心として整理する。
韓国語の「양육비」は養育費,「가정법원」は家庭法院,「양육비이행관리원」は養育費履行管理院を意味する。

確認する事項主な判断材料本記事の担当箇所養育費を定める根拠父母の協議,韓国民法837条,家庭法院の裁判第2毎月の金額父母双方の所得,子の年齢・人数,個別事情第3過去分・終期既存合意・裁判書,子の成年到達,大法院決定第4未払い時の回収直接支払命令,財産明示・照会,差押え等第5行政上・刑事上の制裁先行する家庭法院の命令,未払額・回数,正当理由第6先払制度執行権原,直前の支払状況,申請時点の制度要件第7日韓間の請求・回収国際裁判管轄,準拠法,判断の種類,財産所在地第8
第2 養育費を決める法的根拠
1 父母の協議と家庭法院の裁判

韓国民法837条は,協議離婚をする父母が,養育者,養育費用の負担及び面接交渉の方法を含む子の養育事項を協議で定めることを予定している。
協議が子の福祉に反する場合,協議が成立しない場合又は協議できない場合には,家庭法院が子の意思・年齢,父母の財産状況その他の事情を考慮して定める。

家庭法院は,子の福祉のために必要と認めるときは,父母,子,検事の請求又は職権により,いったん定めた養育事項を変更できる。
したがって,養育費は離婚時の一回限りの固定事項ではなく,父母の所得,子の教育・医療上の必要その他の事情が大きく変わった場合には,増額又は減額の可否が問題となる。

2 養育費の額と回収方法は別問題である

養育費の額を合意しただけでは,直ちに給与又は預金を差し押さえられるとは限らない。
韓国で直接支払命令その他の強制的な手段を用いるためには,その手続が求める執行権原又は先行命令があるかを確認する必要がある。

反対に,執行可能な裁判書があっても,義務者の勤務先,預貯金,不動産その他の財産が不明であれば,財産明示・財産照会等を先に検討することになる。
「毎月いくらか」と「どの文書で決まっているか」と「どこから回収するか」を分けることが実務上重要である。

第3 2021年養育費算定基準表の見方
1 現在確認できる公表基準

ソウル家庭法院は,令和3年12月22日に2021年養育費算定基準表及び解説書を公表し,令和4年3月1日から施行した。
同法院は令和8年7月にも同じ基準表と解説書を案内しており,本記事の調査日現在,これより新しい公表基準表は確認できなかった。

この基準表は,全国の家庭法院実務で重要な基準として用いられるが,法律が定める全国一律の固定額ではない。
具体的事件では,子の福祉,父母の収入・財産,子の人数・年齢及び個別費用を考慮し,基準表と異なる額が定められることがある。

2 計算の基本順序

基準表による計算の基本は,父母双方の月収を合算し,子の年齢に対応する標準養育費を確認した上で,父母の所得割合等により分担額を求めるという順序である。
概念的には,「標準養育費×非養育親の所得÷父母の所得合計」が出発点となる。

もっとも,所得は給与だけを意味しない。
事業所得,賃料,利子その他の継続的収入,稼働能力をどのように認定するかが争点になり得るため,源泉徴収資料,納税資料,給与明細,事業帳簿及び口座資料等をそろえる必要がある。

3 加算・減算を検討する事情

(続きを読む...)韓国の養育費制度―2021年算定基準表,未払い時の回収・制裁及び先払制度(AI作成)

台湾の養育費(子女扶養費)―金額の決め方,18歳までの期間,未払い回収及び日台間の承認・強制執行(AI作成)

目次

第1 結論第2 台湾法上の扶養義務1 離婚しても未成年子に対する義務はなくならない2 未成年子と成年後の扶養を区別する第3 台湾の養育費はいくらか1 子の必要と父母の経済力で決める2 地域の消費支出は参考資料であって固定表ではない3 月1万6000台湾元は現在の全国一律基準ではない第4 台湾の養育費は何歳までか1 令和5年1月1日以後の成年年齢は18歳である2 令和5年1月1日前の合意・裁判には経過措置がある3 18歳後の給付は別の法的根拠を確認する第5 合意,調停又は裁判で定める事項1 金額だけでなく期間と支払方法を明確にする2 日台間の送金条件を具体化する第6 台湾で養育費が支払われない場合第7 日本と台湾をまたぐ請求・回収1 最初に四つの事実を固定する2 日本で台湾居住の親へ請求する場合3 台湾の判断を日本で使う場合4 日本の判断を台湾で使う場合第8 よくある質問1 台湾の養育費は子ども1人当たりいくらか2 月1万6000台湾元が現在の基準か3 台湾の養育費は何歳までか4 台湾で養育費を払わない場合はどうするか5 日本に住む親が台湾に住む親へ請求できるか6 日本の調停調書・審判・判決で台湾の財産を差し押さえられるか7 台湾の裁判を日本で執行できるか第9 相談時にそろえる資料第10 関連記事第11 主な一次資料

台湾で「養育費」と呼ばれる費用は,離婚後の父母が未成年の子の生活・教育等のために負担する子女扶養費を指すことが多い。
本記事は,児童手当その他の公的給付や,出生から成人までの子育て費用の総額ではなく,父母間で分担する子の扶養費を扱う。
台湾法上の金額・終期・未払い時の手続と,日本と台湾をまたぐ事件の確認順序を,令和8年10月16日現在の一次資料に基づいて整理する。

第1 結論

台湾の民法には,子ども1人につき毎月一律に支払う全国共通の法定額は定められていない。
子の必要,父母それぞれの経済力・身分及び具体的な生活事情により金額を決め,複数の扶養義務者がいるときは原則としてその経済力に応じて分担する。

検索結果等で「台湾の養育費は1人当たり月1万6000台湾元」と紹介されることがあるが,この金額を現在の台湾法に基づく全国一律の公定額として扱うことはできない。
裁判例が地域の1人当たり消費支出等を参照することはあるものの,統計額がそのまま支払額になるわけではなく,子の個別の必要と父母の負担能力を併せて判断する。

台湾では令和5年1月1日から成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられた。
もっとも,同日前に契約,裁判その他によって「成年まで」又は20歳までの給付を受ける権利が成立している場合は経過措置があるため,作成日と文言を確認しなければならない。

台湾国内の未払いには,継続する給与債権等への執行や履行を促す制度がある。
他方,日本の調停調書・審判・判決を台湾の給与・預金等へ用いる場合,又は台湾の判断を日本で用いる場合は,判断の種類,確定性,送達,承認要件及び執行国の手続を別に検討する必要がある。

第2 台湾法上の扶養義務
1 離婚しても未成年子に対する義務はなくならない

台湾民法1114条は直系血族相互間の扶養義務を定め,1116条の2は父母の未成年子に対する扶養義務が婚姻の無効・取消し又は離婚によって影響を受けないことを定める。
親権又は監護を担っていない親であることだけを理由に,子に対する経済的負担が消滅するものではない。

父母の一方が子を日常的に監護している場合,その親は住居,食事,通学,医療及び日々の世話を現実に負担している。
他方親に求める金銭額は,子の費用全額ではなく,父母双方がどのように分担すべきかという問題である。

2 未成年子と成年後の扶養を区別する

未成年子の扶養では,子が自ら生活費を得られるかだけでなく,父母がその生活をどの程度保障すべきかが問題となる。
これに対し,成年後の扶養については,台湾民法1117条が,自力で生活を維持できず,かつ,労働能力がないことを原則的な要件としている。

したがって,18歳到達後も在学中であるという事情だけから,未成年期と同じ内容の定期扶養費が当然に続くとはいえない。
既存の合意・裁判の終期,成年後の子の就学・健康・就労能力及び父母の合意を分けて確認する必要がある。

第3 台湾の養育費はいくらか
1 子の必要と父母の経済力で決める

台湾民法1119条は,扶養の程度を扶養を受ける者の必要と扶養義務者の経済能力・身分により定める。
また,同順位の扶養義務者が複数いる場合,1115条3項により,原則として各人の経済能力に応じて義務を負う。

実務では,子の年齢・人数,居住地域,住居費,食費,衣服費,教育費,医療費,保育費その他の具体的支出,父母の収入・資産・債務及び現実の監護負担が問題となる。
父母の所得額だけを比較するのではなく,監護親が金銭以外の方法で負担している日常の監護も考慮対象となり得る。

(続きを読む...)台湾の養育費(子女扶養費)―金額の決め方,18歳までの期間,未払い回収及び日台間の承認・強制執行(AI作成)

フィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか第3 養育費に含まれる費用第4 フィリピンの養育費はいくらか第5 いつから請求でき,過去分はどうなるか第6 フィリピンの養育費は何歳までか第7 離婚の成立,婚姻外の子及び不払い第8 日本で新たに請求する場合の管轄と準拠法第9 フィリピンで新たに請求する場合第10 フィリピンの判断を日本で使う場合第11 日本の判断をフィリピンで使う場合第12 2007年ハーグ扶養条約を日比間で利用できるか第13 相談時にそろえる資料第14 よくある質問1 フィリピンの養育費は給与の何%ですか2 養育費には学費や医療費も含まれますか3 過去の未払分はいつから請求できますか4 子が18歳になれば必ず養育費は終わりますか5 父母が結婚していない子も請求できますか6 養育費を払わなければ直ちに逮捕されますか7 フィリピンで離婚していなければ養育費を請求できませんか8 日本に住む親からフィリピンにいる子が請求できますか9 日本とフィリピンの間ではハーグ条約で回収できますか第15 関連記事と出典
第1 本記事の対象と結論

本記事は,フィリピン共和国のFamily Code(家族法)による親から子への養育費と,日本・フィリピン間での請求,外国判断の承認及び強制執行を扱う。
イスラム身分法が適用される事件その他の特別法上の事件には別の規律があり得るため,本記事の一般論をそのまま当てはめない。

「フィリピン人の親であれば常にフィリピン法が適用される」「月収の一定割合で決まる」「18歳で必ず終了する」「外国の裁判があれば相手国で直ちに差し押さえられる」という理解はいずれも正確ではない。
子の常居所,親子関係,準拠法,既存の合意・裁判,請求日,父母の資力,子の具体的な必要及び財産所在地を順に確認する必要がある。

論点フィリピン法の基本線日比間の事件で追加確認する事項金額義務者の資力・手段と権利者の必要に比例する日本の算定表又は固定割合を当然に用いない対象費用生活,住居,衣服,医療,教育及び交通を含む既存合意が特別費をどう扱うか確認する請求時期必要が生じた時から請求可能だが,支払は裁判上又は裁判外の請求日以後が原則である請求到達の証拠と未払額計算を保存する支払終期18歳だけで一律に決まらず,成年後の教育・訓練や障害も問題となる準拠法と合意・裁判の文言を確認する越境回収外国判断は相手国で承認・執行の手続を要する判断の種類,確定・送達,翻訳及び財産所在地を確認する
第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか

フィリピン家族法195条は,父母とその子の間の扶養義務を定め,婚姻中に生まれた子と婚姻外で生まれた子をいずれも対象に含める。
父母が婚姻しているか,別居しているか又は婚姻の効力を争っているかだけで,子の養育費請求権が消滅するわけではない。

もっとも,親子関係が争われる事件では,養育費の金額に先立ち,出生証明書,認知,裁判その他の資料によりfiliation(親子関係)を確認する必要がある。
未成年の子について誰が手続上請求を行うか,日本の手続で誰が申立人又は法定代理人となるかも,準拠法と手続法を分けて検討する。

同法199条・200条は,複数の扶養義務者がいる場合の順位と,各人の資力に応じた負担を定める。
父だけ又は母だけが常に全額を負担するとの前提を置かず,父母双方の収入・財産,現実の監護及び他の扶養負担を確認する。

第3 養育費に含まれる費用

フィリピン家族法194条によれば,supportには,家族の経済力に応じた生活,住居,衣服,医療,教育及び交通に不可欠な費用が含まれる。
教育には,成年後であっても,職業,職種又は技能のための就学・訓練が含まれ,交通には通学又は通勤の費用が含まれる。

したがって,食費だけを養育費として計算するのは不十分である。
家賃又は住居費,衣服費,医療費,授業料・教材費,通学費その他の必要費を項目別に整理し,領収書,学校資料,診療資料及び送金記録で裏付ける。

通常の月額に何を含め,学費,入院費その他の臨時支出をどの割合で追加負担するかは,合意書又は裁判で具体化することが望ましい。
通貨,送金手数料,為替差及び支払日も,日比間の継続払いでは明記する。

第4 フィリピンの養育費はいくらか

フィリピン家族法201条は,養育費の額を,支払義務者のresources or means(資力又は手段)と受給者のnecessities(必要)に比例させる。
同条は,一律の金額又は給与に対する固定割合を定めていない。

金額を検討するときは,子の年齢,健康,教育,住居及び日常生活上の必要を積み上げるとともに,父母双方の給与,事業所得,資産,生活水準,他の扶養義務及び現実の監護負担を確認する。
収入資料が乏しい場合も,給与明細の有無だけで支払能力を判断せず,銀行取引,事業,資産及び生活実態を調査する。

同法202条により,受給者の必要又は義務者の資力が増減すれば,養育費も比例して増減し得る。
一度決めた月額が将来にわたり固定されるとは限らないため,進学,疾病,転職,失業又は収入増減が生じた場合の資料と再協議方法を保存する。

第5 いつから請求でき,過去分はどうなるか

フィリピン家族法203条は,扶養を必要とした時から義務を請求できる一方,支払は裁判上又は裁判外の請求日からとする。

(続きを読む...)フィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行(AI作成)

ニュージーランド法の養育費―IRDによる計算・支払期間・未払いと日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論―金額,手続及び国際回収を分けて考える第2 ニュージーランドで養育費を決める四つの方法第3 IRDの算定式を利用できる人と子の要件第4 IRDの算定式では養育費をどのように計算するか第5 共同監護なら養育費はゼロになるか第6 所得又は家族状況が変わった場合第7 支払日と支払終期第8 未払いになった場合のIRDの対応第9 一方の親が海外に住む場合第10 日本とニュージーランドの間で請求・回収する場合第11 相談前に準備する資料第12 よくある質問1 ニュージーランドの養育費はいくらですか2 共同監護なら養育費を払わなくてよいですか3 養育費は何歳までですか4 ニュージーランド政府から養育費をもらえますか5 日本からニュージーランド在住の親へ請求できますか6 日本の養育費の決定をニュージーランドで差押えに使えますか7 ニュージーランドはハーグ養育費条約の締約国ですか第13 出典と調査範囲

ニュージーランド法の養育費は,一律の月額で決まるものではない。
父母等が直接決める私的合意,Inland Revenue(IRD)に登録する任意合意,IRDの算定式による決定及び裁判所の命令を区別し,算定式では双方の所得,子の年齢,監護割合及び他の扶養対象者等を考慮する。
日本とニュージーランドをまたぐ事件では,ニュージーランドの算定制度だけでなく,日本の国際裁判管轄,準拠法,外国判断の承認及び財産所在地での執行を別々に確認する必要がある。

第1 結論―金額,手続及び国際回収を分けて考える

ニュージーランドのchild supportは,主としてChild Support Act 1991に基づき,税務行政機関であるIRDが算定,徴収及び送金を担う制度である。
Family Courtが関与する場面もあるが,すべての養育費が最初から裁判所で決まるわけではない。

「ニュージーランドの養育費はいくらか」という質問には,固定額ではなく,どの制度を利用するか,父母双方の所得,子の年齢,監護割合,他の扶養対象者及び適用年度を確認しなければ答えられない。
公表されている最低年額も,通常の平均額又はすべての家庭に適用される標準額ではない。

国境を越える事件では,①誰が誰に何を請求するか,②どの国で新しい判断を得るか,③どの国の法を適用するか,④既存の合意・IRD assessment・裁判所命令が相手国でどのような効力を持つか,⑤給与・預金・不動産がどの国にあるかを順に分ける。
条約が使えない場合でも請求が直ちに不可能になるわけではないが,一方の国で得た文書だけで他方の国の財産を直ちに差し押さえられるわけでもない。

第2 ニュージーランドで養育費を決める四つの方法

第1は,父母等が金額,支払日及び支払方法を直接決めるprivate agreementである。
柔軟に設計できる反面,IRDが金額を計算し,又は通常の制度として徴収するものではないため,書面化,変更方法及び未払い時の対応を合意しておく必要がある。

第2は,合意した金額をIRDに登録するvoluntary agreementである。
IRDは登録された合意に従って徴収・送金するが,金額自体を算定式で決める制度ではない。
既存のformula assessmentから任意合意へ移るときは,法定の最低額その他の登録要件を確認する。

第3は,IRDのformula assessmentである。
申請後,IRDが父母双方の所得,生活費控除,監護割合及び子の養育費用等を用いて各支払親の年額を計算し,通常は毎年の養育費年度ごとに再計算する。

第4は,Family Courtの命令である。
IRDの決定に対する不服,通常の算定式では公正な結果にならない事情又は海外居住者が関わる場面等では,行政上の見直しと裁判所手続のどちらが利用できるかを確認する。
裁判所命令についてIRDが徴収・送金を扱う場合もあるため,命令を得る手続と支払を回収する仕組みを分けて確認する。

第3 IRDの算定式を利用できる人と子の要件

formula assessmentを利用できるかは,子の年齢,市民権・通常居住,申請者と子との関係,監護割合及び支払親の居住国等によって決まる。
IRDの案内では,受領側のcarerは原則として子を少なくとも35%監護している必要があり,これは通常1年間に128泊以上に相当する。

子は原則として18歳未満で,婚姻しておらず,経済的に自立しておらず,一定の給付を本人名義で受けていないこと等が求められる。
18歳に達した後も学校に在籍する場合の取扱いがあるため,誕生日だけで終了日を決めない。

支払親がニュージーランドにいない場合でも,オーストラリア又は協定国との制度,あるいは協定国以外に関するIRDの適格要件により申請できる余地がある。
日本居住者が関わるときは,「海外居住だから対象外」又は「ニュージーランドに子がいるから必ずIRDが扱う」と即断せず,子,carer及び支払親ごとの要件を申請時点で確認する。

私的合意は当事者間の契約であるため,formula assessmentと同じ適格要件がそのまま適用されるとは限らない。

(続きを読む...)ニュージーランド法の養育費―IRDによる計算・支払期間・未払いと日本からの請求(AI作成)

インドの養育費―金額の決め方,何歳まで支払うか及び日印間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 結論―全国一律の金額又は収入割合はない第2 子の養育費と配偶者の扶養を分ける第3 最初に適用される法令と手続を特定する1 BNSS144条による簡易な扶養命令2 HAMA20条による子の扶養3 HMA26条及びSMA38条第4 金額を決める際の考慮事情第5 収入の25%又は子1人当たりの定額ではない第6 何歳まで支払うかは根拠法ごとに異なる第7 申立日,暫定扶養料及び資産開示第8 不払い,変更及びインド国内の執行第9 日本からインドにいる親へ請求する場合第10 日本とインドの裁判を相手国で使う場合1 日本の養育費判断をインドで使う場合2 インドの養育費判断を日本で使う場合3 2007年ハーグ扶養条約第11 よくある質問1 インドの養育費は子1人当たりいくらですか2 手取り収入の何%を支払いますか3 監護親が再婚すると子の養育費は終わりますか4 配偶者の不貞があると子の養育費は払わなくてよいですか5 離婚前でも子の養育費を請求できますか6 日本の調停調書があればインドの給与をすぐ差し押さえられますか第12 相談時にそろえる資料第13 関連記事第14 出典と調査範囲
第1 結論―全国一律の金額又は収入割合はない

インドの子の養育費には,全国一律の月額又は「収入の何%」という一つの法定算式があるわけではない。
裁判所は,適用される法令と手続を特定した上で,子の必要,従前の生活水準,両親の実収入・資産・負債,他の扶養義務,教育費・医療費及び監護の実情等を資料に基づいて検討する。

令和6年7月1日からは,従前の刑事訴訟法125条に対応する簡易な扶養手続が,Bharatiya Nagarik Suraksha Sanhita, 2023(BNSS)144条に置き換わっている。
もっとも,BNSS144条だけで全ての子の扶養問題が処理されるわけではなく,Hindu Adoptions and Maintenance Act, 1956(HAMA)20条,Hindu Marriage Act, 1955(HMA)26条又はSpecial Marriage Act, 1954(SMA)38条等が問題となることもある。

日本とインドにまたがる事件では,養育費の金額に加えて,どちらの国で請求するか,どの国の法律を適用するか,既存の合意又は裁判を他国で利用できるか,実際に差し押さえる財産がどこにあるかを分けて確認する必要がある。
当事者の一方がインド国籍であることやインドに住むことだけで,インド法の適用又は日本の裁判のインドでの強制執行が当然に決まるものではない。

第2 子の養育費と配偶者の扶養を分ける

インドの公的資料では,子の養育費と,妻又は離婚した妻の扶養が同じ条文又は同じ裁判の中で扱われることがある。
しかし,権利者,支払期間,取消しの要件及び考慮事情は同じではない。

BNSS144条1項は,十分な資力がある者が扶養を怠り,又は拒んだ場合について,妻,子及び父母を区別して列挙している。
妻の再婚,正当な理由のない同居拒否又は別居合意に関する規定を,子の養育費が当然に消滅する根拠として用いることはできない。
離婚していない父母の間でも,子に関する同条の要件を満たせば申立ての問題となり得るため,「離婚後でなければ養育費を請求できない」とは限らない。

第3 最初に適用される法令と手続を特定する
1 BNSS144条による簡易な扶養命令

BNSS144条は,十分な資力があるのに扶養を怠り,又は拒む者に対し,第一級司法治安判事が月額の扶養料を命じる枠組みを定める。
対象には,自ら生活を維持できない嫡出又は非嫡出の子が含まれ,既婚か否かだけで未成年の子を除外する文言ではない。

成年の子については,既婚の娘を除き,身体的又は精神的な異常若しくは傷害のため自ら生活を維持できない場合が条文上の対象となる。
この年齢と要件は,他の家族法上の扶養請求と同じではないため,後記のHAMA20条等と混同しない。

同条は,本案の月額扶養料のほか,手続中の暫定扶養料及び手続費用を命じることができるとし,暫定扶養料の申立ては,相手方への通知送達後60日以内の処理に努める旨を置く。
ただし,これは一律に60日で支払開始又は終局判断が確定するという保証ではない。

2 HAMA20条による子の扶養

HAMAは,ヒンドゥー教徒のほか,仏教徒,ジャイナ教徒及びシク教徒等に適用される一方,イスラム教徒,キリスト教徒,パールシー教徒又はユダヤ教徒には,条文上の適用要件を満たさない限り当然には適用されない。
したがって,当事者がインド国籍であるというだけでHAMAを適用しない。

HAMA20条は,親に嫡出又は非嫡出の子を扶養する義務を負わせ,子は未成年の間,親に扶養を求めることができるとする。
また,同条3項は,未婚の娘が自己の収入その他の財産によって生活を維持できない場合に,その扶養義務を定める。

インド最高裁のAbhilasha v. Parkash判決は,旧刑事訴訟法125条とHAMA20条3項の違いを扱い,成年の未婚の娘によるHAMA上の請求には,適切な主張立証と同法上の手続が必要であることを示した。
同判決はBNSS施行前の判決であるため,現在の具体的事件ではBNSS144条の文言と施行後の裁判例を併せて確認する必要がある。

3 HMA26条及びSMA38条

(続きを読む...)インドの養育費―金額の決め方,何歳まで支払うか及び日印間の請求・執行(AI作成)

アメリカの養育費―州法上の金額・終期,日本からの請求と未払い回収(AI作成)

目次

第1 結論―アメリカ全国一律の養育費はない第2 アメリカの養育費は州法を中心に決まる1 連邦法と州法の役割2 まず確認する州第3 養育費の金額―カリフォルニア州とニューヨーク州の例1 カリフォルニア州2 ニューヨーク州3 変更の申立て第4 養育費は何歳までか1 カリフォルニア州2 ニューヨーク州3 終期と未払額は別問題である第5 共同親権・共同監護でも養育費は0円とは限らない第6 日本から請求する場合の国際裁判管轄1 養育費だけを日本の家庭裁判所に申し立てる場合2 日本で国際離婚訴訟を行う場合3 日本で判断を得ることと回収できることは別である第7 どの国・州の法を適用するか第8 日本の判断をアメリカで承認・執行する場合1 条約ルートを当然の前提にしない2 対象州ごとの確認事項第9 アメリカの判断を日本で承認・執行する場合1 日本での承認2 日本での強制執行第10 未払い時にアメリカで取り得る措置第11 相談・申立て前に準備する資料第12 よくある質問1 アメリカの養育費はいくらか2 養育費は18歳までか3 共同親権なら養育費は不要か4 親がアメリカに住んでいても日本から請求できるか5 日本の審判書でアメリカの給与をすぐ差し押さえられるか6 日米間で2007年ハーグ養育費条約を使えるか7 アメリカでは養育費は義務か8 払わなければ直ちに逮捕されるのか第13 関連記事第14 出典と更新時点
第1 結論―アメリカ全国一律の養育費はない

アメリカの養育費は,連邦法が各州に算定指針の整備等を求める一方,具体的な算定式,支払終期,変更及び執行の手続は主として州法によって定まる。
したがって,「アメリカの養育費はいくらか」,「何歳までか」という質問には,対象となる州を特定しなければ正確に答えられない。

たとえば,カリフォルニア州では父母双方の収入や子と過ごす時間等が算定に影響し,ニューヨーク州では一定の所得を基礎に,子が1人なら17%,2人なら25%等の法定割合を出発点とする。
支払終期も,カリフォルニア州では原則18歳であるのに対し,ニューヨーク州では原則21歳であり,同じではない。

日本とアメリカに父母又は子が分かれて住む場合は,さらに,①どの国の裁判所に申し立てることができるか,②どの国・州の法を適用するか,③得られた判断を財産のある国・州で承認・執行できるかを分けて検討する必要がある。
日本の家庭裁判所で養育費を定めても,その調停調書又は審判書だけでアメリカの給与や銀行口座を直ちに差し押さえられるわけではない。

国際事件では,親の国籍よりも,子と父母の住所・常居所,既存の合意又は裁判,対象州,送達の経過,未払額及び財産所在地が重要である。
最初にこれらを確定することが,請求と回収の出発点となる。

第2 アメリカの養育費は州法を中心に決まる
1 連邦法と州法の役割

連邦規則45 CFR §302.56は,各州に対し,養育費の算定指針を設けて公開することを求めている。
算定指針は,父母の所得又は支払能力に関する証拠,子の医療上の必要等を考慮し,数値的な基準を含むものでなければならない。
算定指針による額は適正額であるとの反証可能な推定が働く仕組みとされている。

もっとも,連邦規則がアメリカ全州共通の月額を定めているわけではない。
各州が州法と州のガイドラインに基づいて具体的な額を定めるため,インターネット上の「全米平均額」を個別事件の見込額として用いることはできない。

2 まず確認する州

対象州は,単に父又は母がアメリカ人であるという理由で決まるものではない。
現在又は過去の住所,子の居住地,既存命令を出した裁判所,勤務先及び財産所在地等から,どの州の裁判所又はchild support agencyが事件を扱うかを確認する。

USA.govの案内によれば,各州又は部族のchild support agencyは,親子関係の確定,養育費の設定・変更及び執行を支援する。
一方の親が国外にいる場合も,関係州の機関又は連邦Office of Child Support Services(OCSS)への照会が案内されている。

第3 養育費の金額―カリフォルニア州とニューヨーク州の例
1 カリフォルニア州

カリフォルニア州の公式ガイドライン計算機は,父母双方の所得,課税関係,子の人数及びそれぞれが子と過ごす時間等を入力して概算額を示す。
ただし,計算結果は見積りであり,最終的な養育費を決定する権限は裁判官にある。

同州のFAQも,双方の所得と子と過ごす時間が金額に影響することを説明している。
したがって,支払親の年収だけを円換算して月額を求めたり,「共同監護だから折半で0円」と処理したりすることはできない。

2 ニューヨーク州

ニューヨーク州裁判所の案内によれば,原則として父母の合算所得を基礎に,子が1人なら17%,2人なら25%,3人なら29%,4人なら31%,5人以上なら35%以上の割合を用いる。

(続きを読む...)アメリカの養育費―州法上の金額・終期,日本からの請求と未払い回収(AI作成)

スコットランドの養育費の法制度―CMS・aliment・対象年齢・不払い・国外居住(AI作成)

目次

第1 結論―CMSとalimentを分けて検討する第2 スコットランドの養育費はいくらか1 CMSは支払親の週額総所得等から計算する2 shared careで減額される場合がある3 alimentはCMSの割合表では決まらない第3 スコットランドの養育費は何歳まで支払うのか1 CMSは原則16歳未満,承認教育等では20歳未満である2 alimentは教育・訓練中なら25歳未満まで対象となり得る第4 スコットランドでは12歳以上の子どもが自分でCMSへ申請できるか第5 子どもに会えなくても養育費を支払うのか第6 父母間の合意はどのように扱われるか第7 CMSとsheriff courtのどちらを使うのか1 CMSの権限がある通常の定期養育費はCMSが出発点となる2 aliment又は裁判所の追加命令を検討する場面がある第8 養育費が支払われない場合にCMSはどう回収するか第9 aliment又は登録合意の不払いはどう扱うか第10 親の一方が日本その他の国外に住む場合1 CMSを当然に利用できるとは限らない2 国際回収では相互執行の根拠を国ごとに確認する第11 相談時に確認する資料第12 関連記事及び出典
第1 結論―CMSとalimentを分けて検討する

スコットランドの子の扶養には,Child Support Act 1991に基づくChild Maintenance Service(CMS)のchild maintenanceと,Family Law (Scotland) Act 1985に基づくalimentという二つの法的な仕組みがある。
CMSは,支払親の所得,対象となる子の人数及びshared care等に基づき定期養育費を算定し,必要に応じて徴収する英国の行政制度である。
これに対し,alimentは,子の必要,父母の資力・稼働能力その他の事情を踏まえてスコットランドの裁判所が定める扶養であり,CMSを利用できない国外居住事案,大学等の教育中の子,高所得者の上乗せ,教育費又は障害費用等で問題となる。

確認事項CMSのchild maintenanceスコットランド法のaliment主な根拠Child Support Act 1991Family Law (Scotland) Act 1985決定主体CMSsheriff court又はCourt of Session金額の考え方法定算式による週額計算必要・資力・稼働能力その他の事情年齢の基本線原則16歳未満,承認された教育・訓練中は20歳未満18歳未満,又は教育・職業訓練中の18歳以上25歳未満国外居住三者の英国常居所を原則とし例外ありCMSの権限がない場面でも裁判所の検討余地あり

したがって,「スコットランドの養育費はいくらか」「何歳までか」「不払いをどう回収するか」という質問には,最初にCMSの管轄と対象年齢を確認し,次にaliment又は国際回収の経路が必要かを判定する必要がある。

第2 スコットランドの養育費はいくらか
1 CMSは支払親の週額総所得等から計算する

CMSは,通常,支払親の年間総所得を週額へ換算し,私的年金拠出,支払親が扶養する他の子,対象となる子の人数及びshared careの宿泊日数等を順に反映する。
年収だけから一律額を答えることはできず,税引前所得,年金拠出,他の子,対象となる子及び宿泊日数をそろえて計算する必要がある。

調整後の週額総所得CMSの主な率7ポンド未満nil rateとなる場合がある7ポンド以上100ポンド以下又は一定の給付受給通常はflat rate100.01ポンド以上200ポンド未満reduced rate200ポンド以上800ポンド以下basic rate800ポンド超3000ポンド以下basic rateにbasic plus rateを加える

basic rateは,対象となる子が1人なら12%,2人なら16%,3人以上なら19%である。
週額総所得が800ポンドを超える部分には,3000ポンドを上限として,子が1人なら9%,2人なら12%,3人以上なら15%を加える。
例えば,調整後の週額総所得が1000ポンドで対象となる子が2人なら,shared care等を反映する前の週額は,800ポンドの16%である128ポンドと,残り200ポンドの12%である24ポンドの合計152ポンドとなる。
この例は算式の説明にすぎず,個別事件の確定額ではない。

2 shared careで減額される場合がある

子が支払親のもとに年間52泊以上する場合,CMSの計算額はshared careとして減額されることがある。

年間宿泊日数子1人ごとの減額割合52泊から103泊7分の1104泊から155泊7分の2156泊から174泊7分の3175泊超2分の1に加えて週7ポンド

日常の養育を父母が同等に分担し,non-resident parentが存在しないと評価される場合は,その子についてCMSのchild maintenanceは生じない。
単に「共同親権」「共同監護」と呼ばれているだけでなく,実際の日常養育と宿泊実績を確認する必要がある。

3 alimentはCMSの割合表では決まらない

alimentの額は,Family Law (Scotland) Act 1985第4条により,子の必要,父母双方の資力,稼働能力及び事件の全事情を考慮して定められる。
16歳未満の子については,子を養育する者が負担する養育費用を裁判所が合理的な範囲で含めることもできる。
そのため,日本の養育費算定表又はCMSの割合を,alimentの法定算式としてそのまま用いることはできない。

第3 スコットランドの養育費は何歳まで支払うのか
1 CMSは原則16歳未満,承認教育等では20歳未満である

CMSの対象となるqualifying childは,原則として16歳未満である。
16歳以上でも,承認された水準の全日制教育又は訓練を続ける場合は,20歳になるまで対象となり得る。
スコットランド政府の案内では,対象となる教育水準は原則としてSCQF level 7以下であるが,Higher National Certificate及びCertificate of Higher Education等は除外される。

(続きを読む...)スコットランドの養育費の法制度―CMS・aliment・対象年齢・不払い・国外居住(AI作成)

ベトナム法の養育費―金額・支払期間・未払いと日越間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 ベトナム法の養育費を検討する順序第2 離婚後に誰が養育費を負担するか第3 ベトナム法の養育費はいくらか第4 支払方法と金額の変更第5 ベトナム法の養育費は何歳までか第6 ベトナムで未払い養育費を請求する場合第7 ベトナムで外国要素のある扶養を扱う場合第8 日本の裁判所で準拠法を決める場合第9 ベトナムの判断を日本で使う場合第10 日本の判断をベトナムで使う場合第11 2007年ハーグ扶養条約を利用できるか第12 親権・監護・面会交流と養育費の関係第13 相談時にそろえる資料第14 ベトナム法の養育費に関するよくある質問1 ベトナム法の養育費はいくらですか2 離婚後も養育費を支払う義務がありますか3 養育費は18歳で必ず終わりますか4 養育費を一括で支払えますか5 相手がベトナムへ帰国した場合,日本から請求できますか6 ベトナム人の親であればベトナム法が適用されますか第15 関連記事と主要資料
第1 ベトナム法の養育費を検討する順序

ベトナム婚姻家族法は,養育費を含む扶養を「cấp dưỡng」と表現し,扶養義務者が,別居する未成年者又は働く能力と自活できる財産がない成年者等の必要不可欠な需要を満たすため,金銭その他の財産を給付することと定義している。
離婚後の子に対する養育費も,この扶養制度の一部として定められている。

ベトナム人の親が関係するだけで,常にベトナム法が適用されるわけではない。
日本とベトナムにまたがる事件では,金額を計算する前に,準拠法,裁判管轄,既存の合意・裁判及び相手方財産の所在地を分けて確認する必要がある。

最初に確認する事項確認する内容混同してはならない事項準拠法どの国の法が養育費請求に適用されるか親又は子の国籍だけでは決まらない手続国どの国の裁判所その他の機関を利用できるか準拠法と裁判管轄は別である既存文書合意書,調停調書,審判,判決等の有無と効力離婚の成立と養育費の給付は別に確認する回収先義務者の住所,勤務先,預金,不動産等がどの国にあるか日本の執行手続はベトナムの財産に直接及ばない
第2 離婚後に誰が養育費を負担するか

ベトナム婚姻家族法82条2項は,離婚後に子を直接養育しない親が子を扶養する義務を負うと定める。
同条3項は,子を直接養育しない親に面会・世話をする権利と義務も認めている。

同法110条は,子と同居しない親又は同居していても扶養義務に違反する親が,未成年の子及び働く能力がなく自活できる財産もない成年の子を扶養する義務を定める。
離婚したかどうかだけでなく,親子関係,子を直接養育する者,子の年齢・能力・財産及び既存の合意又は裁判を確認する。

同法107条は,扶養義務を他の義務で置き換え,又は他人へ移転することができないと定める。
離婚時の財産分与,一括金又は他の債務と養育費を調整するときは,何が養育費の履行に当たるかを合意書に明記する必要がある。

第3 ベトナム法の養育費はいくらか

ベトナム婚姻家族法116条1項は,扶養義務者と扶養を受ける者又はその後見人が,義務者の現実の収入・能力と,扶養を受ける者の必要不可欠な需要を基礎に金額を合意すると定める。
合意できない場合は,裁判所へ判断を求めることができる。

同条は,全国一律の月額,最低額又は収入に対する固定割合を定めていない。
インターネット上の「相場」だけから金額を決めず,父母双方の収入・資産・他の扶養負担,子の生活費・住居費・教育費・医療費その他の具体的需要を資料で示す必要がある。

義務者の「能力」は,給与明細の金額だけで判断できるとは限らない。
事業収入,銀行取引,財産,職業,生活実態及び他の扶養義務を確認し,子の需要についても通常費用と臨時の教育・医療費を分けて整理する。

第4 支払方法と金額の変更

ベトナム婚姻家族法117条は,扶養を月払,四半期払,半年払,年払又は一括払で行うことができると定める。
当事者が国をまたいで生活する場合は,支払額だけでなく,通貨,換算日,支払日,送金先,送金手数料,送金不能時の連絡方法及び支払証明の保存方法を定める必要がある。

一括払いは常に有利とは限らない。
対象期間,算定の前提,為替・物価の変動,進学・医療等による追加費用及び将来の事情変更をどのように扱うかを明確にする。

同法116条2項は,合理的な理由があるときは扶養額を変更できるとし,当事者が合意できない場合は裁判所へ判断を求めることができると定める。
同法117条は,義務者が経済的困難に陥って履行できないときの方法変更又は一時停止についても,合意できなければ裁判所へ判断を求める仕組みを置いている。

第5 ベトナム法の養育費は何歳までか

「ベトナム法の養育費は一律に18歳まで」とだけ説明するのは正確ではない。

(続きを読む...)ベトナム法の養育費―金額・支払期間・未払いと日越間の請求・執行(AI作成)

シンガポール法の養育費―金額,21歳まで,請求・執行と日本との関係(AI作成)

目次

第1 シンガポール法の養育費の基本第2 誰が請求できるか第3 シンガポールの養育費はいくらか1 固定の割合又は定額ではない2 命令の形第4 シンガポールの養育費は何歳までか第5 離婚前,離婚手続中及び離婚後の申立て第6 申立方法と必要書類第7 金額の変更と未払い時の執行第8 当事者又は財産が日本にある場合1 国外にいる相手への命令2 外国の判断又は財産に対する執行第9 よくある質問1 シンガポールの養育費はいくらですか2 養育費は21歳までですか3 離婚前でも子の養育費を請求できますか4 国から養育費を受け取る制度ですか5 養育費は海外でも差し押さえられますか第10 受任時に確認する資料第11 出典と調査範囲
第1 シンガポール法の養育費の基本

シンガポールのWomen’s Charter 1961(女性憲章)68条は,裁判所の命令又は合意に別段の定めがある場合を除き,父母が子を扶養し,又はその扶養に寄与する義務を負うと定める。
子が父母のどちらに監護されているか,婚内子であるか婚外子であるかにかかわらず,父母の資力と生活上の地位に照らして合理的な住居,衣服,食事及び教育を提供し,又はその費用を支払うことが基本となる。

同法69条2項は,親が自活できない子に合理的な養育費を提供することを怠り,又は拒んだ場合に,裁判所が月額又は一時金の支払を命じることができるとする。
日本の実務でいう養育費に近いが,日本の養育費算定表をそのまま使う制度ではない。

質問シンガポール法の基本線個別事件で確認する事項誰が負担するか父母の双方が子の扶養に責任を負う監護状況,父母の資力,既存の合意・命令いくらか一律の法定割合ではなく,事件の事情から決める子の必要,収入・資産,生活水準,教育等何歳までか原則として21歳まで障害,National Service,教育・訓練,特別事情どのように請求するかFamily Justice Courtsの手続を利用する離婚手続中か,Part 8の独立申立てか国外の相手へ請求できるか指定国との相互執行制度がある相手国,判断の種類,送達,財産所在地
第2 誰が請求できるか

Women’s Charter 1961の69条3項によれば,子の後見人又は現に子を監護している者が養育費を申し立てることができる。
子が21歳以上である場合は子本人,子が21歳未満である場合は21歳以上の兄弟姉妹も,同項所定の条件の下で申立人となり得る。

申立ての前には,出生証明書,親子関係,子を現に監護している者,父母と子の住所,既存の養育費合意・裁判所命令及び支払履歴を確認する。
当事者の国籍が日本又はシンガポールであるという事実だけで,国際裁判管轄又は準拠法が当然に決まるわけではない。

日本の裁判所で請求する場合の申立人,法定代理及び準拠法については,国際扶養の準拠法及び国際養育費の請求と回収も確認する必要がある。

第3 シンガポールの養育費はいくらか
1 固定の割合又は定額ではない

Women’s Charter 1961の69条4項は,裁判所が事件のすべての事情を考慮するとし,子の経済的必要,収入・稼働能力・資産その他の経済的資源,心身の障害,婚姻当事者の年齢と婚姻期間,家庭への貢献,従前の生活水準,予定されていた教育・訓練方法等を挙げる。
同法68条が父母の資力と生活上の地位を考慮すると定めることからも,検索で見つけた一定割合を機械的に掛けて金額を決めるものではない。

実際には,住居費,食費,衣類費,保育料,学費,教材費,医療費,交通費,課外活動費等について,必要性,頻度,支払先及び負担済みの親を整理する。
父母双方の給与明細,税務・社会保険関係資料,銀行取引,資産・負債,他の扶養負担及び実際の生活水準も,支払能力を検討する資料となる。

2 命令の形

Singapore Courtsの養育費案内は,定額の月払い,特定費用の全部又は一部の償還,保育施設等のサービス提供者への直接払いを,代表的な命令として挙げる。
裁判所の裁量により,申立日前の日にさかのぼって支払を命じる場合もある。

月額だけでなく,学校・医療費の実費分担,支払期限,証憑の提示方法,送金手数料,通貨及び為替差を明確にすることが,将来の未払い紛争を減らす。

第4 シンガポールの養育費は何歳までか

Women’s Charter 1961の69条5項・6項によれば,養育費命令は原則として子が21歳になった日に終了する。
ただし,心身の障害,フルタイムのNational Service,教育機関での就学又は職業・専門訓練,その他の特別の事情により養育費が必要な場合は,21歳を超える期間の命令が認められ得る。

21歳を超える命令は自動的に続くものではなく,命令自体が21歳後も続く期間を明示する必要がある。
進学予定,学業の内容と期間,National Serviceの状況,障害と生活能力,収入及び具体的費用を資料化する。

したがって,「21歳になれば必ず終了する」「大学を卒業するまで必ず続く」のいずれも正確ではない。
既存命令の文言と69条5項の例外を照合して判断する。

(続きを読む...)シンガポール法の養育費―金額,21歳まで,請求・執行と日本との関係(AI作成)