第1 結論
1 令和9年1月に名古屋地区で先行導入予定
令和8年2月27日付の最高裁判所事務総局から日弁連事務総長宛ての通知によれば,TreeeSは令和9年1月から,名古屋高等裁判所本庁,名古屋地方裁判所本庁・支部及び同地裁管内の簡易裁判所へ先行導入される予定である。
2 全国一斉の確定日は未公表
全庁導入は令和9年度中を目指すとされるが,裁判所ごとの導入日を示す確定日程表は今回確認した資料にない。調達仕様書の工程は開発・運用予定の一次資料であるが,実際のサービス開始を確認する資料ではない。
令和8年10月4日に匿名で確認したTreeeS研修環境には,研修環境であり一般の方は利用できないこと及び電子申立てにはmintsを利用することが表示されている。研修画面へのアクセスと本番稼働は区別する。入口は,TreeeSのログインと研修環境で説明する。
日程を読む際は,①令和9年1月の名古屋地区先行導入予定,②令和9年度中の全庁導入目標,③各裁判所の具体的な利用開始日を分ける。令和9年度は令和9年4月から令和10年3月までであり,「令和9年中」と同じ期間ではない。
第2 令和8年5月21日以後の現行運用
1 民事訴訟の全面デジタル化
改正民事訴訟法等は令和8年5月21日に全面施行された。弁護士等の所定の訴訟代理人には電子申立てが原則として義務付けられ,現在,裁判所はmintsを電子申立て等のシステムとして案内している。
2 対象外手続
民事執行,倒産,労働審判,家事事件等は,令和8年5月21日の民事訴訟フェーズ3と同じ範囲で一律にオンライン申立ての対象になったものではない。裁判所は,これらを令和10年6月までにオンライン申立て等の対象とする予定と案内している。手続類型ごとの施行日,システム及び調達工程の違いは,TreeeSは家事・倒産・民事執行でいつ使えるかで整理する。
第3 紙・mints・TreeeSの判定
1 旧法適用事件
裁判所の公開案内は,令和8年5月20日以前に訴えの提起等がされた事件でも,当事者双方に訴訟代理人がある等の条件を満たす場合は,経過措置によるmints提出が可能と説明している。旧法適用事件だから電子提出を全く利用できないとは判断せず,具体的事件の適用条件を確認する。
2 新法適用事件
令和8年5月21日以後の新法適用事件では,現在は裁判所の公開案内に従ってmintsを用いる。TreeeS先行導入後にどの事件で利用するかは,裁判所ごとの導入案内と対象事件の条件を確認する。
3 事件単位で記録する
事務所の事件台帳に,提起日,裁判所,適用法,使用システム,移送歴及び確認した裁判所案内の日付を記録する。「令和9年になったらすべてTreeeS」といった一律処理をしない。
第4 移送時の取扱い
1 mints事件がTreeeS導入庁へ移送された場合
mintsを利用していた事件がTreeeS導入庁へ移送されても,導入庁への移送だけからシステムの自動切替えを判断しない。移送元・移送先への提出経路,事件番号及び記録の引継ぎ方法を両裁判所へ確認する。
2 TreeeS事件が他庁へ移送された場合
TreeeSを利用する事件が別の裁判所へ移送される場合は,移送先が利用するシステムと提出方法を確認する。提出済みデータ,送達状況及び記録の引継ぎ範囲も,移送決定後の裁判所の指示に従って照合する。
3 運用予定として扱う
上記は移送時の実務上の確認事項であり,本番で一律の切替処理が実装されたと説明するものではない。両裁判所の指示と事件画面を確認して処理する。
第5 mintsから自動移行するとは限らない
1 アカウント
令和8年4月3日付調達仕様書には,mintsと同じメールアドレスを利用してTreeeSのユーザIDを取得するための改修案がある。しかし,mintsのID・パスワードがそのままTreeeSのIDになることを意味しない。
2 事件データ
アカウント・設定・事件データの引継ぎと,係属事件をどのシステムで扱うか,並行運用期間及びmints終了日は別の問題である。
同じメールアドレスを使う登録案だけから自動移行を判断せず,最新の公開案内で各事項を確認する。必要な提出書面・受信書面・受付結果を事件記録へ保存する。
第6 導入確認のチェックリスト
1 提出前
①裁判所のTreeeS導入日,②事件の提起日,③旧法・新法,④移送歴,⑤事件一覧の表示,⑥裁判所の障害情報を確認する。
2 導入後
対象事件を新システムで扱う根拠,アカウント,招待キー,送達受取人及び記録の引継ぎを確認し,確認日と資料を保存する。
第7 出典と証拠区分
1 確認済みの一次資料
裁判所「民事裁判手続のデジタル化」,最高裁判所事務総局令和8年2月27日付通知,令和7年7月2日付調達仕様書(令和8年10月4日見直し)を確認した。開発会社と契約額は,TreeeSの開発会社と契約額で契約範囲別に整理する。
2 予定と未確認事項
令和9年1月の先行導入及び全国導入目標は公式資料上の予定であり,実施済みの事実ではない。具体的稼働日,受付時間,並行運用及び本番移送例は未確認である。判例秘書でTreeeS導入・移送を扱った個別判決本文も確認していない。