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TreeeSの開発会社と契約額―日立社会情報サービスの受注範囲と「30億円超」報道の検証(AI作成)

第1 結論

1 公式資料で確認できる開発会社と契約額

最高裁判所の令和5年度契約公表資料によれば,最高裁判所は令和5年4月3日,「民事訴訟手続のデジタル化に係るe提出・e記録管理システムの設計・開発及び賃貸借保守」を株式会社日立社会情報サービスと契約し,契約金額は16億1616万4000円である。

したがって,少なくとも,利用者側の電子提出・電子記録管理を担う中核システムの設計・開発及び賃貸借保守について,同社が受注したことは公式資料で確認できる。

2 TreeeS全体の単独開発会社・総額までは確定できない

他方,TreeeSは,資料によって,e提出・e記録管理システムを指す場合と,裁判所内部のe事件管理システム(RoootS)及びe法廷との連携まで含むシステム群の総称として使われる場合がある。クラウド,工程管理,運用保守,追加機能改修及び他システム連携も別契約になり得る。

そのため,「TreeeSの開発会社は日立社会情報サービス1社である」,「TreeeSの総開発費は16億円である」とまではいえない。本記事では,契約名と受注範囲を明示して整理する。

第2 日立社会情報サービスとの16億1616万4000円の契約

1 契約公表資料の記載

契約日令和5年4月3日
契約件名民事訴訟手続のデジタル化に係るe提出・e記録管理システムの設計・開発及び賃貸借保守
契約相手方株式会社日立社会情報サービス
契約金額1,616,164,000円
公表資料最高裁判所「令和5年度公共調達の適正化に係る契約情報の公表(物品役務等)」7頁

2 この契約から分かる範囲

契約名に「設計・開発及び賃貸借保守」とあるため,単発のソフトウェア購入ではなく,設計・開発から賃貸借保守までを含む契約であることが分かる。ただし,公表表の1行だけでは,機能別の金額内訳,外注先,再委託先,著作権等の帰属又は追加改修費を確認できない。

第3 TreeeSと関連調達を分ける

1 e提出・e記録管理システム

e提出は,利用者ポータル,裁判資料の電子提出,手数料の電子納付及び外部システムとの連携等を担う。e記録管理は,電子記録の整理・保管,アクセス権限の管理並びに利用者による検索・閲覧・複写を担う。日立社会情報サービスとの上記契約は,契約名上,この部分を対象にしている。

2 RoootS・クラウド・工程管理等

RoootSは,事件番号,担当部,当事者及び期日等を裁判所内部で管理するe事件管理システムである。最高裁判所の契約公表資料には,e提出・e記録管理システム以外にも,クラウドサービスやプロジェクト管理支援等の関連契約が掲載されている。

これらは民事裁判手続のデジタル化に関係するが,契約件名・目的・期間が異なる。関連契約をすべて「TreeeS開発費」と呼ぶには,各契約の仕様書と対象範囲を突き合わせる必要がある。

3 追加改修

最高裁判所は,家事事件手続等への拡張,法人ベース・レジストリ連携,後見法改正対応その他の追加機能改修を別に調達している。令和7年7月2日付及び令和8年4月3日付・同年6月9日付の仕様書は,将来の改修内容と工程を確認する資料であり,契約額又は本番実装済みの事実を当然に示すものではない。

第4 「30億円超」という説明をどう検証するか

1 今回確認できたこと

インターネット上には,TreeeSの開発費を「30億円超」と説明する記事がある。しかし,令和8年9月22日までに確認した公開一次資料からは,「TreeeS総開発費30億円超」という名称・範囲・集計期間が一致する公式集計表を確認できなかった。

これは30億円超という説明が直ちに誤りであるという意味ではない。複数年度の設計・開発,クラウド,運用保守,RoootS,追加改修等を一定の基準で合算した可能性があるが,その計算過程と一次資料が示されなければ検証できないという意味である。

2 単純合算できない理由

契約額を集計するときは,①契約件名,②対象システム,③契約期間,④当初契約か変更契約か,⑤再調達・更新契約か,⑥税込・税抜,⑦一部が他の裁判所システムにも共用されるかを確認する必要がある。これをせずに検索結果の金額を足すと,重複計上又は範囲の混同が生じる。

第5 令和8年の追加契約

日本貿易振興機構の政府公共調達データベースには,最高裁判所が令和8年1月30日,「e提出・e記録管理システムの法人ベース・レジストリ連携改修業務」を株式会社日立社会情報サービスと6799万1000円で契約した旨が掲載されている。互換性確保のための随意契約とされている。

この契約は,日立社会情報サービスが中核システムの追加改修も受注していることを示す一方,令和5年契約とは件名・時期・範囲が異なる。両者を紹介するときは,別契約であることを明示する。

第6 確認済み・推論・未確認の区別

確認済み:令和5年4月3日のe提出・e記録管理システムの設計・開発及び賃貸借保守契約の相手方は日立社会情報サービスであり,金額は16億1616万4000円である。令和8年1月30日の法人ベース・レジストリ連携改修も同社が受注した。

推論:同社はTreeeSの利用者向け中核部分の主要な開発・改修事業者であると考えられる。ただし,契約名の範囲を超えてTreeeS全体の単独開発会社と断定しない。

未確認:TreeeS全体の累計総費用,RoootSを含む全受注者一覧,変更契約を含む最終額,開発費と運用保守費の内訳及び「30億円超」の公式な集計根拠は未確認である。

第7 出典

①最高裁判所「令和5年度公共調達の適正化に係る契約情報の公表(物品役務等)」7頁(令和8年9月22日確認)。
②最高裁判所「家事事件手続等のデジタル化に伴うe事件管理システム・e提出・e記録管理システムの改修等業務 調達仕様書」(令和7年7月2日付)。
③最高裁判所「e提出・e記録管理システム及びe事件管理システムの追加機能改修業務 調達仕様書」(令和8年4月3日付)。
④最高裁判所「システム関係」(令和8年9月22日確認)。
⑤日本貿易振興機構政府公共調達データベース「e提出・e記録管理システムの法人ベース・レジストリ連携改修業務」(令和8年9月22日確認)。