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養育費

養育費の受給率と未払い率―男女差・取決めの有無と国際比較の読み方(AI作成)

目次

第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況1 現在も受けている世帯の割合2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由3 男女差を説明するときの限界第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる第4 英国の77%とは何の割合か1 Collect and Payで一部でも支払った人の割合2 対象地域とサービスの範囲第5 日本と外国の数字を比べる際の確認表第6 未払いに直面している場合
第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか

母子世帯と父子世帯の養育費の受給状況は,公的調査から確認できる。
しかし,受け取っている世帯の割合の裏返しを,そのまま男性又は女性が養育費を払わない割合とすることはできない。
受取側を調べた世帯統計と,支払義務を負う人の履行状況は,分母が異なるからである。

本記事では,令和3年度全国ひとり親世帯等調査と,英国の2026年6月までのCMS統計を例に,受給率,未受給及び不払いの区別を整理する。
数値の大小だけで男女の責任や制度の優劣を決めず,調査対象と指標の定義から読む必要がある。

第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況
1 現在も受けている世帯の割合

令和3年度全国ひとり親世帯等調査は,令和3年11月1日現在の状況を調査したものである。
養育費の受給状況の次の数値は,母子世帯・父子世帯のうち離婚・未婚の該当世帯についての集計であり,死別等を含む全ひとり親世帯を一律に分母とした数値ではない。

受給状況母子世帯父子世帯現在も受けている28.1%8.7%受けたことがあるが,現在は受けていない14.2%4.8%受けたことがない56.9%85.9%不詳0.8%0.6%

出典は,こども家庭庁掲載の調査報告(https://www.cfa.go.jp/sites/default/files/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf)の表17-(3)-1及び表17-(3)-3(報告書60頁,結合PDF68頁)である。
同じ表には離婚・未婚別の数値もあるため,離婚した世帯だけの割合として28.1%・8.7%を引用してはならない。

2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由

100%から現在の受給割合を引くと,母子世帯では71.9%,父子世帯では91.3%となる。
しかし,この計算には,過去に受けた世帯,受けたことがない世帯及び不詳がまとめて含まれる。
支払義務のある金額,支払期日,取決めの存否及びその時点の未払残額をそろえた履行率ではない。

したがって,父親の71.9%が不払い,母親の91.3%が不払いという書き換えはできない。
現在受給している世帯についても,約束された全額が毎月支払われているかどうかは,この区分だけでは分からない。

3 男女差を説明するときの限界

母子世帯と父子世帯では,所得,子の年齢,養育費の取決めの状況等の構成が異なり得る。
受給割合の違いだけで,性別そのものが不払いの原因であるとは判断できない。

受取側の世帯の割合と,支払側の人数の割合は同じ統計ではない。
男女の支払行動を比べるには,支払義務がある人を共通の条件で把握し,対象期間と支払額を確認する資料が必要になる。

第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる

同じ調査でも,養育費の取決めをしている世帯に限ると,現在も受けている割合は母子世帯57.7%,父子世帯25.9%である。
出典は同報告の表17-(3)-7及び表17-(3)-8(報告書62・63頁,結合PDF70・71頁)である。

現在も受けている割合の分母母子世帯父子世帯調査の養育費受給状況の集計対象28.1%8.7%そのうち養育費の取決めをしている世帯57.7%25.9%

この違いは,数字に分母を付けて示す必要があることを表している。

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養育費法制の国際比較―金額の決め方・行政徴収・立替払いと日本の違い(AI作成)

目次

第1 養育費法制は何を比べるべきか1 請求額,回収額及び給付額は別である2 制度名よりも,誰の資金が動くかを見る第2 金額を決める仕組みの比較第3 行政徴収,支払仲介及び公的支払の比較1 アメリカと英国の行政関与2 フランスのARIPAとASF3 ドイツの養育費立替制度4 韓国の先払制度第4 日本の月額2万円・8万円は何を意味するか1 法定養育費は親への請求権である2 先取特権は公的保証ではない第5 国境を越える請求で確認すること第6 よくある質問1 海外では国が必ず養育費を立て替えるのか2 共同親権なら養育費の支払は不要になるのか3 回収率の高い国の制度を採れば同じ結果になるのか第7 国別記事と資料の確認時点
第1 養育費法制は何を比べるべきか

養育費法制を国際比較するときは,金額を決める仕組み,決まった金額を回収する仕組み,支払がない間の生活を支える給付を分ける必要がある。
行政機関が関与していても,親から集めた養育費を送金する制度と,公費から一定額を支給する制度では,役割が異なる。

本記事は,日本,アメリカ,イングランド及びウェールズ,フランス,ドイツ,韓国,オーストラリアについて,公的案内から制度の役割を比較する。
各国の全制度を網羅するものではなく,国別の具体的な金額・年齢・請求手続は,末尾の各記事及び公的窓口で確認する必要がある。

1 請求額,回収額及び給付額は別である

親に対して請求できる額と,実際に回収できた額は一致するとは限らない。
公的な立替え・先払いの額にも独自の上限や受給条件があり,親が負う養育費全額がそのまま公費で保証されるとは限らない。

比較の順序は,①誰がいくら負担するか,②どの文書・判断で額を確定するか,③誰がどの方法で徴収するか,④未払時にどの給付を利用できるか,⑤国境を越える場合にも同じ経路を利用できるか,である。
外国に立替制度があるという説明だけで,日本からの申請の可否や全額回収の見込みまでは分からない。

2 制度名よりも,誰の資金が動くかを見る

行政徴収・支払仲介では,基本的に支払義務者から徴収した金銭を受取側に渡す。
公的立替え・先払いでは,所定の条件で公費による支払が行われ,義務者への回収と組み合わせられる。
生活支援の給付,民間保証及び手続費用の補助も,それぞれ別に確認する必要がある。

第2 金額を決める仕組みの比較

次の表は,制度を読む際の入口を示したものである。
表に挙げた指針や行政サービスが,すべての事案に一律に適用されるわけではない。

国・地域金額を考える入口比較するときの注意日本父母の合意,家庭裁判所の調停・審判等で適正額を定める。未取決めの場合の法定養育費は別に扱う。月額2万円は一般的な適正額の基準ではない。アメリカ対象州の制度と個別の養育費命令を確認する。全国共通の固定額を前提にしない。イングランド及びウェールズCMSの対象では,支払側の収入,子の数,監護の状況等を計算に反映する。CMSの対象となる請求かを先に確認する。フランス執行力ある裁判・合意等に定められた養育費を確認する。支払仲介を始めることと,養育費額の変更は別である。ドイツデュッセルドルフ表は裁判実務上の指針となる。表の需要額と児童手当等を調整した支払額は異なる。韓国裁判・調停等で定めた養育費と先払制度の対象額を分ける。先払額が養育費債権の全額とは限らない。オーストラリア基本算式では,父母の所得割合と監護に伴う費用割合を組み合わせる。支払側の所得だけで決まる制度として説明しない。

日本の手続は裁判所の養育費に関する案内(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_09/minzi_26_01/index.html),米国の命令と支援機関の関係はUSA.gov(https://www.usa.gov/child-support),CMSの計算は英国政府の計算案内(https://www.gov.uk/how-child-maintenance-is-worked-out)が入口となる。
ドイツの表はデュッセルドルフ上級地方裁判所の2026年表(https://www.olg-duesseldorf.nrw.de/infos/Duesseldorfer_Tabelle/Tabelle-2026/DT_2026.pdf),豪州の基本算式はServices Australia(https://www.servicesaustralia.gov.au/basic-child-support-formula?context=21911)を参照されたい。

第3 行政徴収,支払仲介及び公的支払の比較
1 アメリカと英国の行政関与

アメリカでは,州・部族の養育費支援機関が,親子関係の確定,命令の取得・変更及び履行確保等を支援する。
USA.govは,連邦政府・州政府が養育費そのものを支払うのではなく,親から回収するための支援を行うと説明している。

英国政府の支払方法の案内(https://www.gov.uk/child-maintenance-service/payments)では,CMSが金額を計算し父母間で送金するDirect Payと,CMSが徴収・送金するCollect and Payを区別している。
Collect and Payも義務者からの徴収を通じて受取側へ渡す仕組みであり,CMSが未払額を一律に公費で補う制度ではない。

2 フランスのARIPAとASF

フランスの養育費の支払仲介(IFPA)(https://www.service-public.gouv.fr/particuliers/vosdroits/F36407)では,ARIPAが支払側から受領した養育費を受取側に送金し,未払時には回収を担う。
これに対し,ASF(家族支援手当)(https://www.service-public.gouv.fr/particuliers/vosdroits/F815)は,所定の条件で支給される社会給付であり,未払養育費の前払いとして支給される場合もある。

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養育費の立替払い・保証は利用できるか―公的給付,民間保証,自治体の費用補助の違い(AI作成)

目次

第1 最初に区別したい四つの仕組み1 養育費の請求権と,実際にお金を受け取る仕組み2 法定養育費は,国が立て替える給付ではない3 国から養育費はもらえるのか第2 民間の養育費保証を利用する場合1 保証料の補助と,保証会社による支払は別である2 契約前に書面で確認する事項第3 大阪市で利用を検討できる三つの費用補助1 養育費の保証促進補助金2 公正証書等作成促進補助金3 強制執行着手金補助金第4 費用を支払う前から確認したいこと1 住所地,対象経費及び申請の順序2 契約書と領収書は費目を分ける第5 生活支援と養育費回収を並行して進める1 生活費が不足するときの相談2 回収のために残す記録第6 出典
第1 最初に区別したい四つの仕組み
1 養育費の請求権と,実際にお金を受け取る仕組み

養育費が支払われなくなったときは,相手から未払分を回収する問題と,当面の子の生活費を確保する問題を並行して考える必要がある。
回収に時間がかかる場合でも,生活支援の相談を回収手続の終了まで待つ必要はない。

「養育費の立替払い」という言葉だけでは,誰が,何を根拠に,いくら支払う制度なのかは分からない。
①一定の要件に基づく公的給付,②保証会社との契約による立替保証,③保証料・文書作成費用・執行費用に対する自治体の補助,④父母間の養育費を請求・回収する制度を分けることが出発点となる。

この記事は,令和8年10月16日に確認した国・自治体の公式案内を基に,日本で支援先や保証契約を選ぶ際の確認事項を説明する。
自治体の例は大阪市を中心とし,その条件を全国の自治体に共通するものとして扱わない。

2 法定養育費は,国が立て替える給付ではない

法務省の改正法案内で説明される法定養育費は,取決めをしないまま離婚した場合等に,所定の要件で父母間に生じる養育費の請求権である。
国が未払額を全額支払う立替給付とは性質が異なり,請求権が生じることだけで現実の入金が保障されるわけではない。

発生要件,経過措置,金額及び先取特権の詳細は,法定養育費と養育費債権の先取特権を参照されたい。
私的な取決め,法定養育費,保証会社の保証対象を同じ金額・同じ期間のものと決め付けないことが必要である。

3 国から養育費はもらえるのか

法定養育費は他方の親への請求権であり,国が支給する養育費ではない。
また,自治体の保証料・公正証書作成費用・執行費用の補助は,所定の費用を支援する制度であり,未払養育費全額を国が支払う制度とは異なる。
利用できる支援は,住所地,所得,対象経費及び申請時期等を各窓口で確認する必要がある。

外国の行政徴収,支払仲介及び公的先払いとの違いは,養育費法制の国際比較を参照されたい。
日本の制度の位置付けは,裁判所の法定養育費等の案内(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_09/minzi_26_01/index.html)でも確認できる。

第2 民間の養育費保証を利用する場合
1 保証料の補助と,保証会社による支払は別である

東京都の養育費確保支援事業の案内は,保証会社による養育費の立替え,受取者への支払及び支払義務者への請求を行う保証契約について,初回保証料を助成対象としている。
ここで自治体が助成するのは保証契約の費用であり,自治体自身が毎月の養育費を支払うという説明ではない。
同事業の対象地域は東京都内の町村であり,区市についてはそれぞれの制度を確認する必要がある。

保証料の補助を受けられることと,保証会社の審査に通り,個々の未払いについて保証金の支払を受けられることも別の問題である。
契約締結前に,自治体の補助要件と保証会社の契約条件の両方を確認する。

2 契約前に書面で確認する事項

保証契約を検討する際は,広告の「立替」「保証」という表示だけで判断せず,契約書・約款・重要な条件の説明を取り寄せることが望ましい。
次の事項は,保証の範囲と実際の入金時期を把握するための実務上の確認項目であり,すべての会社に共通する契約条件を述べるものではない。

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アイルランド法の養育費―2026年ガイドライン・計算・未払いと日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論と確認の順序第2 養育費を決める三つの方法第3 養育費はいくらになるか第4 2026年の公式ガイドラインと計算ツール第5 養育費は何歳まで支払うか第6 裁判所へ申し立てる場合第7 未払いとなった場合第8 国外からの回収と中央当局第9 日本からアイルランド在住の親に請求する場合第10 アイルランドの命令を日本で使う場合第11 よくある質問1 アイルランド法では養育費はいくらですか2 アイルランドの養育費は何歳までですか3 両親が結婚していなくても請求できますか4 共同監護なら養育費は不要ですか5 公式計算ツールは裁判所を拘束しますか6 養育費が未払いになるとどうなりますか7 日本からアイルランドの親へ請求できますか8 養育費を国が立て替える制度はありますか第12 最初にそろえる資料第13 関連記事第14 出典と調査範囲
第1 結論と確認の順序

アイルランドの養育費はChild Maintenanceと呼ばれ,両親が婚姻しているかどうかにかかわらず,扶養を必要とする子について問題となる。
金額には全家庭へ一律に適用される固定額があるわけではなく,令和8年に公表された公式ガイドラインと計算ツールは,当事者間で金額を検討するための出発点である。
裁判所は,双方の収入・資産・支出,子の必要及び他の扶養義務等を個別に検討する。

日本とアイルランドをまたぐ事件では,①誰が誰に請求するか,②子と両親の住所・常居所,③既存の合意又は裁判所命令,④相手の勤務先と財産の所在国,⑤請求する国と執行する国を順に確認する。
国際裁判管轄,準拠法,外国判断の承認及び強制執行は別の判断であり,アイルランド法が準拠法となることと,アイルランドで直ちに回収できることは同じではない。

第2 養育費を決める三つの方法

アイルランドのCourts Serviceは,養育費の決め方として,非公式の任意合意,調停又は法律専門家の支援を受けた合意,裁判所のMaintenance Orderという三つの経路を案内している。
親同士で合意できる場合は,支払額,支払日,臨時の教育費・医療費,監護時間の変更及び見直し時期を文書化する。

任意合意だけでは将来の不払いに備えた執行力が十分でない場合がある。
合意内容を裁判所命令にする必要があるかは,支払状況,相手の勤務・財産,国際移動の予定及び既にある命令を踏まえて検討する。

合意できないときは,扶養を必要とする子を監護する親等がMaintenance Orderを申し立てることができる。
子の養育費と元配偶者の生活費であるspousal maintenanceは対象者と金額を分けて記録する。

第3 養育費はいくらになるか

アイルランド法には,全事件へ機械的に適用する一律の法定算式はない。
裁判所は,双方の収入,資産,生活費,債務,他に扶養する者,子の年齢,教育・医療その他の必要を個別に検討する。

令和8年10月16日に確認したCourts Service及び改訂法令では,District Courtが子1人について命じる定期金の上限は週150ユーロである。
これは標準的な養育費額ではなく,District Courtの管轄上の上限である。
請求額がこれを超える場合の裁判所選択は別に確認する必要がある。

Family Courts Act 2024には,将来のFamily District Courtについて子1人当たり週500ユーロへ上限を引き上げる条文がある。
しかし,今回確認した施行情報では同法を現行の金額基準として扱うことはできず,政府は最初のFamily Courtsの運用開始を令和9年1月の予定として説明していた。
申立て又は記事利用の時点で施行状況を再確認する必要がある。

第4 2026年の公式ガイドラインと計算ツール

アイルランド政府は,令和8年1月19日に初のChild Maintenance Guidelines for Irelandを公表し,同年2月26日にオンライン計算ツールを公開した。
計算ツールは,両親が私的な取決めを作る際の目安を示すものである。

計算では,総収入から本人の生活維持に必要な控除等を行った所得,他に扶養する子,対象となる子の年齢及び各親が子を養育する時間等を考慮する。
入力する収入期間,養育時間及び他の扶養対象を誤ると結果も変わるため,計算結果だけで合意書又は申立額を決めない。

ガイドラインと計算ツールは,交渉の共通の出発点として有用であるが,裁判所を拘束する法定算式ではない。
特別な教育費,医療費,住居費,障害又は収入変動等がある場合は,ツールで表現できない事情を別に記録する。

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フランスの養育費法制―扶養義務,金額の決定・変更,執行力ある文書,ARIPA及び日仏間の承認・執行(AI作成)

目次

第1 フランスの養育費を法律問題として整理する視点第2 養育・教育への寄与義務の法的性質1 父母双方の資力と子の必要2 金銭給付以外の負担第3 養育費額の決定と司法省参考算定表の位置付け1 裁判官の判断枠組み2 参考算定表は法規範そのものではない第4 親権・子の居住と養育費の関係1 共同の親権行使と費用分担は別問題である2 交互居住でも養育費は当然にゼロにならない第5 成年後の継続と義務の終了第6 養育費の変更と物価連動1 事情変更による増額・減額2 指数連動条項第7 養育費を執行できる文書1 執行力ある文書が必要となる理由2 文書に定めるべき事項第8 ARIPAの法的位置付け1 支払仲介は原債権を変更しない2 適用範囲と除外第9 未払回収とASFの法的区別1 ARIPAによる未払回収2 ASFは社会給付である3 ARIPAの支払仲介とASFは同じ制度か第10 国際養育費事件の法的な切分け1 四つの法的段階2 条約関係を先に確認する第11 日本の判断をフランスで承認・執行する場合1 外国裁判のexequatur2 日本の文書ごとの分類が必要である第12 フランスの判断を日本で利用する場合と準備資料1 日本での承認と強制執行2 相談・申立て前にそろえる資料3 法的論点別の短い結論4 関連記事と主要出典
第1 フランスの養育費を法律問題として整理する視点

フランスの子に対する養育費は,単なる送金サービスや社会保障給付ではなく,父母が負う子の養育・教育への寄与義務を具体化する法律問題である。
令和8年10月16日現在の法制度を検討するときは,①実体法上の義務,②金額・支払方法を定める手続,③執行力ある文書,④支払仲介・未払回収,⑤国境を越える承認・執行を区別する必要がある。

フランス民法371-2条は,父母がそれぞれの資力,他方の親の資力及び子の必要に応じて,子の養育・教育に寄与すると定める。
この三要素が金額決定の法的基礎であり,司法省の参考算定表やARIPAは,この実体法上の義務を置き換えるものではない。

法的段階中心となる問題主な根拠・制度実体法誰が,どの基準で,いつまで負担するか民法371-2条形成・変更合意又は裁判で月額・終期・特別費用をどう定めるか民法373-2-2条・373-2-13条執行力どの文書に基づき回収できるか裁判,認可合意,公正証書等支払・回収支払仲介,未払回収,社会給付をどう区別するかARIPA・Caf・MSA・ASF国際事件どの国が判断し,どの法を適用し,どこで執行するか国際裁判管轄・準拠法・承認・強制執行
第2 養育・教育への寄与義務の法的性質
1 父母双方の資力と子の必要

民法371-2条は,支払親の収入だけを基準とせず,父母双方の資力と子の必要を比較する構造を採る。
したがって,給与・事業所得・資産だけでなく,住居費,他の扶養家族,子の年齢,教育費,医療費及び特別な必要を具体的資料で示すことが重要である。

養育費は,親権の有無や離婚原因に対する制裁として決まるものではない。
子の生活を支える費用分担として,親権行使,子の居住及び面会交流とは法的に区別して検討する。

2 金銭給付以外の負担

父母の一方が毎月の金銭を支払う形が一般的であるが,父母が直接負担する住居費,学費,医療費その他の費目も全体の費用分担に影響する。
合意又は裁判では,定期金と特別費用を区別し,誰がどの資料に基づいて何割を負担するかを明確にする必要がある。

第3 養育費額の決定と司法省参考算定表の位置付け
1 裁判官の判断枠組み

父母が合意できる場合は,月額,支払開始日,毎月の支払期限,送金方法,物価連動,特別費用及び終期を文書にする。
合意できない場合は,juge aux affaires familiales(家族事件裁判官)が,民法371-2条の要素と提出資料に基づいて個別に判断する。

全国一律の法定月額は存在しない。
同じ所得額でも,子の人数,居住態様,父母の直接負担及び子の個別事情によって結論は変わり得る。

2 参考算定表は法規範そのものではない

フランス司法省の養育費シミュレーターは,支払親の月額課税純所得,共通の子の人数及び居住態様を入力して参考額を示す。
司法省の参考算定表は,所得から一定の最低生活費を控除した額に,子の人数及び居住態様に応じた割合を掛ける構成である。

これらはgrille indicative(参考表)であり,民法371-2条に基づく裁判官の個別判断を拘束する法定算式ではない。
算定結果は主張の出発点として利用し,受領親の資力,子の具体的費用,父母の直接負担その他の事情を資料で補充する必要がある。

第4 親権・子の居住と養育費の関係
1 共同の親権行使と費用分担は別問題である

父母が共同で親権を行使することは,双方の資力が同じであること又は子の費用を半分ずつ負担していることを意味しない。

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オーストラリア法の養育費はいくら?計算方法・何歳まで・不払い・日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論―固定の月額ではなく,双方の所得・監護割合等で決まる第2 オーストラリア法の養育費制度1 行政査定が中心となる2 親責任・居住時間と養育費は同じ問題ではない第3 養育費を計算する8段階1 各親のchild support incomeを出す2 父母のchild support incomeを合算する3 各親の所得割合を出す4 各親の監護割合を出す5 監護割合を費用割合に換算する6 child support percentageを出す7 子の費用を出す8 年間支払額を出す第4 オーストラリアの養育費はいくらか1 子1人当たりの固定月額はない2 令和8年の単純計算例3 手取り25万円ならいくらか第5 共同養育なら養育費はゼロになるか第6 養育費は何歳までか1 行政査定は通常18歳までである2 全日制中等教育中は学年末まで延長できる場合がある3 成年子の裁判所命令は別である第7 父母の合意と行政査定1 行政査定と合意を区別する2 特別事情による査定変更第8 養育費を払わない場合の回収1 私的回収とServices Australiaによる回収2 豪州内の回収措置第9 日本に住んでいても請求できるか1 日本は豪州の相互取扱国一覧にない2 日本居住でも豪州側が扱える場合がある3 支払親が日本にいる場合は別の工程が必要である第10 養育費と子育て支援制度の違い第11 申請・相談前の確認事項第12 よくある質問1 オーストラリアの養育費は1人当たり毎月いくらですか2 手取り25万円ならいくらですか3 共同養育なら養育費はゼロですか4 オーストラリアの養育費は何歳までですか5 養育費を払わないとどうなりますか6 日本に住んでいても請求できますか7 オーストラリアに子育て支援制度はありますか第13 関連記事第14 出典・調査範囲1 豪州連邦法及び西オーストラリア州法2 豪州政府資料3 調査上の留保
第1 結論―固定の月額ではなく,双方の所得・監護割合等で決まる

オーストラリアの養育費(child support)には,「子1人なら毎月一律いくら」という固定相場はない。
Services Australiaは,父母双方のadjusted taxable incomeから自己扶養額等を差し引き,双方の所得割合,各親の監護割合,子の人数及び年齢から年間額を査定する。
そのため,支払親の収入が同じでも,相手方の収入,子と過ごす日数,子の年齢及び他に扶養する子の有無等によって金額は変わる。

日本の「手取り25万円」だけを豪ドルへ換算しても,オーストラリア法の養育費は計算できない。
通常の行政査定は子が18歳になると終了するが,子が全日制の中等教育を続ける場合には,17歳のうちに申請して18歳になる学年の終了日まで延長できる場合がある。

日本とオーストラリアに父母又は子が分かれて住む事件では,豪州法上の査定額だけでなく,誰がどこで申請できるか,どの国に相手方の給与・預金等があるか,日本又は豪州の判断を他国で利用できるかを分けて確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月16日現在の豪州連邦法,西オーストラリア州法及びServices Australiaの公開資料に基づき,行政査定の基本を説明する。
Services Australiaの行政査定は豪州のchild support schemeとして扱われる一方,成年子の裁判所命令等では西オーストラリア州法を含む適用法・裁判所の確認が必要であり,親子関係自体の争い及び個別の国際裁判管轄・外国裁判承認も具体的事案ごとに別途検討する必要がある。

第2 オーストラリア法の養育費制度
1 行政査定が中心となる

Child Support (Assessment) Act 1989は,父母が子を扶養する義務を負うことを前提に,Services AustraliaのRegistrarによる行政査定の仕組みを定めている。
行政査定を利用できる場面では,裁判所が日本の養育費算定表に相当する表を使って毎月額を決めるのではなく,法定の計算式によって年間額が算出される。
Services Australiaは,別居している父母及び一定の非親監護者に対し,査定,支払管理及び回収のサービスを提供する。

2 親責任・居住時間と養育費は同じ問題ではない

親が子について重要事項を共同で決めること,子が各親と過ごす時間及び養育費は別の問題である。
子と過ごす時間は養育費の計算要素になるが,共同決定をする命令があることだけで養育費が半額又はゼロになるわけではない。
反対に,養育費を支払っていることだけで,特定の居住日程又は親子交流が当然に認められるわけでもない。

第3 養育費を計算する8段階

Services Australiaの基本式は,父母間の一つのchild support caseで非親監護者がいない場合,おおむね次の8段階である。

1 各親のchild support incomeを出す

adjusted taxable incomeから,自己扶養額及び一定の扶養控除額等を差し引く。
令和8年に始まるchild support periodの自己扶養額は,各親につき年3万1046豪ドルである。
adjusted taxable incomeには課税所得だけでなく,一定の海外所得,報告対象のフリンジベネフィット,退職年金への追加拠出等が含まれ得るため,日本の給与明細の手取り額とは一致しない。

2 父母のchild support incomeを合算する

第1段階で得た双方の金額を足し,combined child support incomeを出す。

3 各親の所得割合を出す

各親のchild support incomeをcombined child support incomeで割り,income percentageを出す。

4 各親の監護割合を出す

(続きを読む...)オーストラリア法の養育費はいくら?計算方法・何歳まで・不払い・日本からの請求(AI作成)

韓国の養育費制度―2021年算定基準表,未払い時の回収・制裁及び先払制度(AI作成)

目次

第1 韓国の養育費を検討する順序第2 養育費を決める法的根拠1 父母の協議と家庭法院の裁判2 養育費の額と回収方法は別問題である第3 2021年養育費算定基準表の見方1 現在確認できる公表基準2 計算の基本順序3 加算・減算を検討する事情第4 何歳まで支払うか,過去分を請求できるか1 何歳まで支払うか2 過去の養育費第5 未払い時の韓国内の回収手段1 養育費履行管理院の支援2 2回以上の不払いと直接支払命令3 財産明示・財産照会と差押え第6 運転免許停止・出国禁止・名簿公開・刑事罰1 行政上の制裁は自動的には発動しない2 刑事罰にも先行要件がある第7 養育費先払制度1 国が先に支払い,義務者から回収する制度2 令和8年10月29日に予定される所得要件の変更3 韓国の先払制度と日本の法定養育費は同じか第8 日本と韓国をまたぐ養育費請求1 五つの法律問題を分ける2 2007年ハーグ養育費条約を当然の経路としない3 最初にそろえる資料第9 よくある質問1 韓国の養育費はいくらか2 韓国の養育費は何歳までか3 過去の養育費も請求できるか4 2回払わないと勤務先から直接支払われるか5 不払いならすぐ出国禁止又は名簿公開になるか6 養育費を払わないと直ちに刑事罰になるか7 韓国の養育費先払制度はいくらか8 日本の調停調書をそのまま韓国で執行できるか第10 相談前に整理する資料第11 関連記事第12 出典と調査範囲1 韓国の法令・裁判所資料2 韓国政府及び国際機関の資料
第1 韓国の養育費を検討する順序

韓国の養育費については,①韓国法上の養育費請求権,②具体的な金額,③支払義務を定めた合意又は裁判書,④未払い時の韓国内の回収手段,⑤日本と韓国をまたぐ場合の管轄・準拠法・承認・執行を分けて検討する必要がある。
当事者の一方が韓国人であるという事実だけでは,どの国の裁判所で,どの国の法律により,どの国の財産から回収できるかは決まらない。

本記事は,令和8年10月16日現在の韓国法令,韓国大法院・ソウル家庭法院及び韓国政府の公開資料を基礎に,韓国国内の養育費制度を中心として整理する。
韓国語の「양육비」は養育費,「가정법원」は家庭法院,「양육비이행관리원」は養育費履行管理院を意味する。

確認する事項主な判断材料本記事の担当箇所養育費を定める根拠父母の協議,韓国民法837条,家庭法院の裁判第2毎月の金額父母双方の所得,子の年齢・人数,個別事情第3過去分・終期既存合意・裁判書,子の成年到達,大法院決定第4未払い時の回収直接支払命令,財産明示・照会,差押え等第5行政上・刑事上の制裁先行する家庭法院の命令,未払額・回数,正当理由第6先払制度執行権原,直前の支払状況,申請時点の制度要件第7日韓間の請求・回収国際裁判管轄,準拠法,判断の種類,財産所在地第8
第2 養育費を決める法的根拠
1 父母の協議と家庭法院の裁判

韓国民法837条は,協議離婚をする父母が,養育者,養育費用の負担及び面接交渉の方法を含む子の養育事項を協議で定めることを予定している。
協議が子の福祉に反する場合,協議が成立しない場合又は協議できない場合には,家庭法院が子の意思・年齢,父母の財産状況その他の事情を考慮して定める。

家庭法院は,子の福祉のために必要と認めるときは,父母,子,検事の請求又は職権により,いったん定めた養育事項を変更できる。
したがって,養育費は離婚時の一回限りの固定事項ではなく,父母の所得,子の教育・医療上の必要その他の事情が大きく変わった場合には,増額又は減額の可否が問題となる。

2 養育費の額と回収方法は別問題である

養育費の額を合意しただけでは,直ちに給与又は預金を差し押さえられるとは限らない。
韓国で直接支払命令その他の強制的な手段を用いるためには,その手続が求める執行権原又は先行命令があるかを確認する必要がある。

反対に,執行可能な裁判書があっても,義務者の勤務先,預貯金,不動産その他の財産が不明であれば,財産明示・財産照会等を先に検討することになる。
「毎月いくらか」と「どの文書で決まっているか」と「どこから回収するか」を分けることが実務上重要である。

第3 2021年養育費算定基準表の見方
1 現在確認できる公表基準

ソウル家庭法院は,令和3年12月22日に2021年養育費算定基準表及び解説書を公表し,令和4年3月1日から施行した。
同法院は令和8年7月にも同じ基準表と解説書を案内しており,本記事の調査日現在,これより新しい公表基準表は確認できなかった。

この基準表は,全国の家庭法院実務で重要な基準として用いられるが,法律が定める全国一律の固定額ではない。
具体的事件では,子の福祉,父母の収入・財産,子の人数・年齢及び個別費用を考慮し,基準表と異なる額が定められることがある。

2 計算の基本順序

基準表による計算の基本は,父母双方の月収を合算し,子の年齢に対応する標準養育費を確認した上で,父母の所得割合等により分担額を求めるという順序である。
概念的には,「標準養育費×非養育親の所得÷父母の所得合計」が出発点となる。

もっとも,所得は給与だけを意味しない。
事業所得,賃料,利子その他の継続的収入,稼働能力をどのように認定するかが争点になり得るため,源泉徴収資料,納税資料,給与明細,事業帳簿及び口座資料等をそろえる必要がある。

3 加算・減算を検討する事情

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台湾の養育費(子女扶養費)―金額の決め方,18歳までの期間,未払い回収及び日台間の承認・強制執行(AI作成)

目次

第1 結論第2 台湾法上の扶養義務1 離婚しても未成年子に対する義務はなくならない2 未成年子と成年後の扶養を区別する第3 台湾の養育費はいくらか1 子の必要と父母の経済力で決める2 地域の消費支出は参考資料であって固定表ではない3 月1万6000台湾元は現在の全国一律基準ではない第4 台湾の養育費は何歳までか1 令和5年1月1日以後の成年年齢は18歳である2 令和5年1月1日前の合意・裁判には経過措置がある3 18歳後の給付は別の法的根拠を確認する第5 合意,調停又は裁判で定める事項1 金額だけでなく期間と支払方法を明確にする2 日台間の送金条件を具体化する第6 台湾で養育費が支払われない場合第7 日本と台湾をまたぐ請求・回収1 最初に四つの事実を固定する2 日本で台湾居住の親へ請求する場合3 台湾の判断を日本で使う場合4 日本の判断を台湾で使う場合第8 よくある質問1 台湾の養育費は子ども1人当たりいくらか2 月1万6000台湾元が現在の基準か3 台湾の養育費は何歳までか4 台湾で養育費を払わない場合はどうするか5 日本に住む親が台湾に住む親へ請求できるか6 日本の調停調書・審判・判決で台湾の財産を差し押さえられるか7 台湾の裁判を日本で執行できるか第9 相談時にそろえる資料第10 関連記事第11 主な一次資料

台湾で「養育費」と呼ばれる費用は,離婚後の父母が未成年の子の生活・教育等のために負担する子女扶養費を指すことが多い。
本記事は,児童手当その他の公的給付や,出生から成人までの子育て費用の総額ではなく,父母間で分担する子の扶養費を扱う。
台湾法上の金額・終期・未払い時の手続と,日本と台湾をまたぐ事件の確認順序を,令和8年10月16日現在の一次資料に基づいて整理する。

第1 結論

台湾の民法には,子ども1人につき毎月一律に支払う全国共通の法定額は定められていない。
子の必要,父母それぞれの経済力・身分及び具体的な生活事情により金額を決め,複数の扶養義務者がいるときは原則としてその経済力に応じて分担する。

検索結果等で「台湾の養育費は1人当たり月1万6000台湾元」と紹介されることがあるが,この金額を現在の台湾法に基づく全国一律の公定額として扱うことはできない。
裁判例が地域の1人当たり消費支出等を参照することはあるものの,統計額がそのまま支払額になるわけではなく,子の個別の必要と父母の負担能力を併せて判断する。

台湾では令和5年1月1日から成年年齢が20歳から18歳へ引き下げられた。
もっとも,同日前に契約,裁判その他によって「成年まで」又は20歳までの給付を受ける権利が成立している場合は経過措置があるため,作成日と文言を確認しなければならない。

台湾国内の未払いには,継続する給与債権等への執行や履行を促す制度がある。
他方,日本の調停調書・審判・判決を台湾の給与・預金等へ用いる場合,又は台湾の判断を日本で用いる場合は,判断の種類,確定性,送達,承認要件及び執行国の手続を別に検討する必要がある。

第2 台湾法上の扶養義務
1 離婚しても未成年子に対する義務はなくならない

台湾民法1114条は直系血族相互間の扶養義務を定め,1116条の2は父母の未成年子に対する扶養義務が婚姻の無効・取消し又は離婚によって影響を受けないことを定める。
親権又は監護を担っていない親であることだけを理由に,子に対する経済的負担が消滅するものではない。

父母の一方が子を日常的に監護している場合,その親は住居,食事,通学,医療及び日々の世話を現実に負担している。
他方親に求める金銭額は,子の費用全額ではなく,父母双方がどのように分担すべきかという問題である。

2 未成年子と成年後の扶養を区別する

未成年子の扶養では,子が自ら生活費を得られるかだけでなく,父母がその生活をどの程度保障すべきかが問題となる。
これに対し,成年後の扶養については,台湾民法1117条が,自力で生活を維持できず,かつ,労働能力がないことを原則的な要件としている。

したがって,18歳到達後も在学中であるという事情だけから,未成年期と同じ内容の定期扶養費が当然に続くとはいえない。
既存の合意・裁判の終期,成年後の子の就学・健康・就労能力及び父母の合意を分けて確認する必要がある。

第3 台湾の養育費はいくらか
1 子の必要と父母の経済力で決める

台湾民法1119条は,扶養の程度を扶養を受ける者の必要と扶養義務者の経済能力・身分により定める。
また,同順位の扶養義務者が複数いる場合,1115条3項により,原則として各人の経済能力に応じて義務を負う。

実務では,子の年齢・人数,居住地域,住居費,食費,衣服費,教育費,医療費,保育費その他の具体的支出,父母の収入・資産・債務及び現実の監護負担が問題となる。
父母の所得額だけを比較するのではなく,監護親が金銭以外の方法で負担している日常の監護も考慮対象となり得る。

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フィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか第3 養育費に含まれる費用第4 フィリピンの養育費はいくらか第5 いつから請求でき,過去分はどうなるか第6 フィリピンの養育費は何歳までか第7 離婚の成立,婚姻外の子及び不払い第8 日本で新たに請求する場合の管轄と準拠法第9 フィリピンで新たに請求する場合第10 フィリピンの判断を日本で使う場合第11 日本の判断をフィリピンで使う場合第12 2007年ハーグ扶養条約を日比間で利用できるか第13 相談時にそろえる資料第14 よくある質問1 フィリピンの養育費は給与の何%ですか2 養育費には学費や医療費も含まれますか3 過去の未払分はいつから請求できますか4 子が18歳になれば必ず養育費は終わりますか5 父母が結婚していない子も請求できますか6 養育費を払わなければ直ちに逮捕されますか7 フィリピンで離婚していなければ養育費を請求できませんか8 日本に住む親からフィリピンにいる子が請求できますか9 日本とフィリピンの間ではハーグ条約で回収できますか第15 関連記事と出典
第1 本記事の対象と結論

本記事は,フィリピン共和国のFamily Code(家族法)による親から子への養育費と,日本・フィリピン間での請求,外国判断の承認及び強制執行を扱う。
イスラム身分法が適用される事件その他の特別法上の事件には別の規律があり得るため,本記事の一般論をそのまま当てはめない。

「フィリピン人の親であれば常にフィリピン法が適用される」「月収の一定割合で決まる」「18歳で必ず終了する」「外国の裁判があれば相手国で直ちに差し押さえられる」という理解はいずれも正確ではない。
子の常居所,親子関係,準拠法,既存の合意・裁判,請求日,父母の資力,子の具体的な必要及び財産所在地を順に確認する必要がある。

論点フィリピン法の基本線日比間の事件で追加確認する事項金額義務者の資力・手段と権利者の必要に比例する日本の算定表又は固定割合を当然に用いない対象費用生活,住居,衣服,医療,教育及び交通を含む既存合意が特別費をどう扱うか確認する請求時期必要が生じた時から請求可能だが,支払は裁判上又は裁判外の請求日以後が原則である請求到達の証拠と未払額計算を保存する支払終期18歳だけで一律に決まらず,成年後の教育・訓練や障害も問題となる準拠法と合意・裁判の文言を確認する越境回収外国判断は相手国で承認・執行の手続を要する判断の種類,確定・送達,翻訳及び財産所在地を確認する
第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか

フィリピン家族法195条は,父母とその子の間の扶養義務を定め,婚姻中に生まれた子と婚姻外で生まれた子をいずれも対象に含める。
父母が婚姻しているか,別居しているか又は婚姻の効力を争っているかだけで,子の養育費請求権が消滅するわけではない。

もっとも,親子関係が争われる事件では,養育費の金額に先立ち,出生証明書,認知,裁判その他の資料によりfiliation(親子関係)を確認する必要がある。
未成年の子について誰が手続上請求を行うか,日本の手続で誰が申立人又は法定代理人となるかも,準拠法と手続法を分けて検討する。

同法199条・200条は,複数の扶養義務者がいる場合の順位と,各人の資力に応じた負担を定める。
父だけ又は母だけが常に全額を負担するとの前提を置かず,父母双方の収入・財産,現実の監護及び他の扶養負担を確認する。

第3 養育費に含まれる費用

フィリピン家族法194条によれば,supportには,家族の経済力に応じた生活,住居,衣服,医療,教育及び交通に不可欠な費用が含まれる。
教育には,成年後であっても,職業,職種又は技能のための就学・訓練が含まれ,交通には通学又は通勤の費用が含まれる。

したがって,食費だけを養育費として計算するのは不十分である。
家賃又は住居費,衣服費,医療費,授業料・教材費,通学費その他の必要費を項目別に整理し,領収書,学校資料,診療資料及び送金記録で裏付ける。

通常の月額に何を含め,学費,入院費その他の臨時支出をどの割合で追加負担するかは,合意書又は裁判で具体化することが望ましい。
通貨,送金手数料,為替差及び支払日も,日比間の継続払いでは明記する。

第4 フィリピンの養育費はいくらか

フィリピン家族法201条は,養育費の額を,支払義務者のresources or means(資力又は手段)と受給者のnecessities(必要)に比例させる。
同条は,一律の金額又は給与に対する固定割合を定めていない。

金額を検討するときは,子の年齢,健康,教育,住居及び日常生活上の必要を積み上げるとともに,父母双方の給与,事業所得,資産,生活水準,他の扶養義務及び現実の監護負担を確認する。
収入資料が乏しい場合も,給与明細の有無だけで支払能力を判断せず,銀行取引,事業,資産及び生活実態を調査する。

同法202条により,受給者の必要又は義務者の資力が増減すれば,養育費も比例して増減し得る。
一度決めた月額が将来にわたり固定されるとは限らないため,進学,疾病,転職,失業又は収入増減が生じた場合の資料と再協議方法を保存する。

第5 いつから請求でき,過去分はどうなるか

フィリピン家族法203条は,扶養を必要とした時から義務を請求できる一方,支払は裁判上又は裁判外の請求日からとする。

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ニュージーランド法の養育費―IRDによる計算・支払期間・未払いと日本からの請求(AI作成)

目次

第1 結論―金額,手続及び国際回収を分けて考える第2 ニュージーランドで養育費を決める四つの方法第3 IRDの算定式を利用できる人と子の要件第4 IRDの算定式では養育費をどのように計算するか第5 共同監護なら養育費はゼロになるか第6 所得又は家族状況が変わった場合第7 支払日と支払終期第8 未払いになった場合のIRDの対応第9 一方の親が海外に住む場合第10 日本とニュージーランドの間で請求・回収する場合第11 相談前に準備する資料第12 よくある質問1 ニュージーランドの養育費はいくらですか2 共同監護なら養育費を払わなくてよいですか3 養育費は何歳までですか4 ニュージーランド政府から養育費をもらえますか5 日本からニュージーランド在住の親へ請求できますか6 日本の養育費の決定をニュージーランドで差押えに使えますか7 ニュージーランドはハーグ養育費条約の締約国ですか第13 出典と調査範囲

ニュージーランド法の養育費は,一律の月額で決まるものではない。
父母等が直接決める私的合意,Inland Revenue(IRD)に登録する任意合意,IRDの算定式による決定及び裁判所の命令を区別し,算定式では双方の所得,子の年齢,監護割合及び他の扶養対象者等を考慮する。
日本とニュージーランドをまたぐ事件では,ニュージーランドの算定制度だけでなく,日本の国際裁判管轄,準拠法,外国判断の承認及び財産所在地での執行を別々に確認する必要がある。

第1 結論―金額,手続及び国際回収を分けて考える

ニュージーランドのchild supportは,主としてChild Support Act 1991に基づき,税務行政機関であるIRDが算定,徴収及び送金を担う制度である。
Family Courtが関与する場面もあるが,すべての養育費が最初から裁判所で決まるわけではない。

「ニュージーランドの養育費はいくらか」という質問には,固定額ではなく,どの制度を利用するか,父母双方の所得,子の年齢,監護割合,他の扶養対象者及び適用年度を確認しなければ答えられない。
公表されている最低年額も,通常の平均額又はすべての家庭に適用される標準額ではない。

国境を越える事件では,①誰が誰に何を請求するか,②どの国で新しい判断を得るか,③どの国の法を適用するか,④既存の合意・IRD assessment・裁判所命令が相手国でどのような効力を持つか,⑤給与・預金・不動産がどの国にあるかを順に分ける。
条約が使えない場合でも請求が直ちに不可能になるわけではないが,一方の国で得た文書だけで他方の国の財産を直ちに差し押さえられるわけでもない。

第2 ニュージーランドで養育費を決める四つの方法

第1は,父母等が金額,支払日及び支払方法を直接決めるprivate agreementである。
柔軟に設計できる反面,IRDが金額を計算し,又は通常の制度として徴収するものではないため,書面化,変更方法及び未払い時の対応を合意しておく必要がある。

第2は,合意した金額をIRDに登録するvoluntary agreementである。
IRDは登録された合意に従って徴収・送金するが,金額自体を算定式で決める制度ではない。
既存のformula assessmentから任意合意へ移るときは,法定の最低額その他の登録要件を確認する。

第3は,IRDのformula assessmentである。
申請後,IRDが父母双方の所得,生活費控除,監護割合及び子の養育費用等を用いて各支払親の年額を計算し,通常は毎年の養育費年度ごとに再計算する。

第4は,Family Courtの命令である。
IRDの決定に対する不服,通常の算定式では公正な結果にならない事情又は海外居住者が関わる場面等では,行政上の見直しと裁判所手続のどちらが利用できるかを確認する。
裁判所命令についてIRDが徴収・送金を扱う場合もあるため,命令を得る手続と支払を回収する仕組みを分けて確認する。

第3 IRDの算定式を利用できる人と子の要件

formula assessmentを利用できるかは,子の年齢,市民権・通常居住,申請者と子との関係,監護割合及び支払親の居住国等によって決まる。
IRDの案内では,受領側のcarerは原則として子を少なくとも35%監護している必要があり,これは通常1年間に128泊以上に相当する。

子は原則として18歳未満で,婚姻しておらず,経済的に自立しておらず,一定の給付を本人名義で受けていないこと等が求められる。
18歳に達した後も学校に在籍する場合の取扱いがあるため,誕生日だけで終了日を決めない。

支払親がニュージーランドにいない場合でも,オーストラリア又は協定国との制度,あるいは協定国以外に関するIRDの適格要件により申請できる余地がある。
日本居住者が関わるときは,「海外居住だから対象外」又は「ニュージーランドに子がいるから必ずIRDが扱う」と即断せず,子,carer及び支払親ごとの要件を申請時点で確認する。

私的合意は当事者間の契約であるため,formula assessmentと同じ適格要件がそのまま適用されるとは限らない。

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インドの養育費―金額の決め方,何歳まで支払うか及び日印間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 結論―全国一律の金額又は収入割合はない第2 子の養育費と配偶者の扶養を分ける第3 最初に適用される法令と手続を特定する1 BNSS144条による簡易な扶養命令2 HAMA20条による子の扶養3 HMA26条及びSMA38条第4 金額を決める際の考慮事情第5 収入の25%又は子1人当たりの定額ではない第6 何歳まで支払うかは根拠法ごとに異なる第7 申立日,暫定扶養料及び資産開示第8 不払い,変更及びインド国内の執行第9 日本からインドにいる親へ請求する場合第10 日本とインドの裁判を相手国で使う場合1 日本の養育費判断をインドで使う場合2 インドの養育費判断を日本で使う場合3 2007年ハーグ扶養条約第11 よくある質問1 インドの養育費は子1人当たりいくらですか2 手取り収入の何%を支払いますか3 監護親が再婚すると子の養育費は終わりますか4 配偶者の不貞があると子の養育費は払わなくてよいですか5 離婚前でも子の養育費を請求できますか6 日本の調停調書があればインドの給与をすぐ差し押さえられますか第12 相談時にそろえる資料第13 関連記事第14 出典と調査範囲
第1 結論―全国一律の金額又は収入割合はない

インドの子の養育費には,全国一律の月額又は「収入の何%」という一つの法定算式があるわけではない。
裁判所は,適用される法令と手続を特定した上で,子の必要,従前の生活水準,両親の実収入・資産・負債,他の扶養義務,教育費・医療費及び監護の実情等を資料に基づいて検討する。

令和6年7月1日からは,従前の刑事訴訟法125条に対応する簡易な扶養手続が,Bharatiya Nagarik Suraksha Sanhita, 2023(BNSS)144条に置き換わっている。
もっとも,BNSS144条だけで全ての子の扶養問題が処理されるわけではなく,Hindu Adoptions and Maintenance Act, 1956(HAMA)20条,Hindu Marriage Act, 1955(HMA)26条又はSpecial Marriage Act, 1954(SMA)38条等が問題となることもある。

日本とインドにまたがる事件では,養育費の金額に加えて,どちらの国で請求するか,どの国の法律を適用するか,既存の合意又は裁判を他国で利用できるか,実際に差し押さえる財産がどこにあるかを分けて確認する必要がある。
当事者の一方がインド国籍であることやインドに住むことだけで,インド法の適用又は日本の裁判のインドでの強制執行が当然に決まるものではない。

第2 子の養育費と配偶者の扶養を分ける

インドの公的資料では,子の養育費と,妻又は離婚した妻の扶養が同じ条文又は同じ裁判の中で扱われることがある。
しかし,権利者,支払期間,取消しの要件及び考慮事情は同じではない。

BNSS144条1項は,十分な資力がある者が扶養を怠り,又は拒んだ場合について,妻,子及び父母を区別して列挙している。
妻の再婚,正当な理由のない同居拒否又は別居合意に関する規定を,子の養育費が当然に消滅する根拠として用いることはできない。
離婚していない父母の間でも,子に関する同条の要件を満たせば申立ての問題となり得るため,「離婚後でなければ養育費を請求できない」とは限らない。

第3 最初に適用される法令と手続を特定する
1 BNSS144条による簡易な扶養命令

BNSS144条は,十分な資力があるのに扶養を怠り,又は拒む者に対し,第一級司法治安判事が月額の扶養料を命じる枠組みを定める。
対象には,自ら生活を維持できない嫡出又は非嫡出の子が含まれ,既婚か否かだけで未成年の子を除外する文言ではない。

成年の子については,既婚の娘を除き,身体的又は精神的な異常若しくは傷害のため自ら生活を維持できない場合が条文上の対象となる。
この年齢と要件は,他の家族法上の扶養請求と同じではないため,後記のHAMA20条等と混同しない。

同条は,本案の月額扶養料のほか,手続中の暫定扶養料及び手続費用を命じることができるとし,暫定扶養料の申立ては,相手方への通知送達後60日以内の処理に努める旨を置く。
ただし,これは一律に60日で支払開始又は終局判断が確定するという保証ではない。

2 HAMA20条による子の扶養

HAMAは,ヒンドゥー教徒のほか,仏教徒,ジャイナ教徒及びシク教徒等に適用される一方,イスラム教徒,キリスト教徒,パールシー教徒又はユダヤ教徒には,条文上の適用要件を満たさない限り当然には適用されない。
したがって,当事者がインド国籍であるというだけでHAMAを適用しない。

HAMA20条は,親に嫡出又は非嫡出の子を扶養する義務を負わせ,子は未成年の間,親に扶養を求めることができるとする。
また,同条3項は,未婚の娘が自己の収入その他の財産によって生活を維持できない場合に,その扶養義務を定める。

インド最高裁のAbhilasha v. Parkash判決は,旧刑事訴訟法125条とHAMA20条3項の違いを扱い,成年の未婚の娘によるHAMA上の請求には,適切な主張立証と同法上の手続が必要であることを示した。
同判決はBNSS施行前の判決であるため,現在の具体的事件ではBNSS144条の文言と施行後の裁判例を併せて確認する必要がある。

3 HMA26条及びSMA38条

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アメリカの養育費―州法上の金額・終期,日本からの請求と未払い回収(AI作成)

目次

第1 結論―アメリカ全国一律の養育費はない第2 アメリカの養育費は州法を中心に決まる1 連邦法と州法の役割2 まず確認する州第3 養育費の金額―カリフォルニア州とニューヨーク州の例1 カリフォルニア州2 ニューヨーク州3 変更の申立て第4 養育費は何歳までか1 カリフォルニア州2 ニューヨーク州3 終期と未払額は別問題である第5 共同親権・共同監護でも養育費は0円とは限らない第6 日本から請求する場合の国際裁判管轄1 養育費だけを日本の家庭裁判所に申し立てる場合2 日本で国際離婚訴訟を行う場合3 日本で判断を得ることと回収できることは別である第7 どの国・州の法を適用するか第8 日本の判断をアメリカで承認・執行する場合1 条約ルートを当然の前提にしない2 対象州ごとの確認事項第9 アメリカの判断を日本で承認・執行する場合1 日本での承認2 日本での強制執行第10 未払い時にアメリカで取り得る措置第11 相談・申立て前に準備する資料第12 よくある質問1 アメリカの養育費はいくらか2 養育費は18歳までか3 共同親権なら養育費は不要か4 親がアメリカに住んでいても日本から請求できるか5 日本の審判書でアメリカの給与をすぐ差し押さえられるか6 日米間で2007年ハーグ養育費条約を使えるか7 アメリカでは養育費は義務か8 払わなければ直ちに逮捕されるのか第13 関連記事第14 出典と更新時点
第1 結論―アメリカ全国一律の養育費はない

アメリカの養育費は,連邦法が各州に算定指針の整備等を求める一方,具体的な算定式,支払終期,変更及び執行の手続は主として州法によって定まる。
したがって,「アメリカの養育費はいくらか」,「何歳までか」という質問には,対象となる州を特定しなければ正確に答えられない。

たとえば,カリフォルニア州では父母双方の収入や子と過ごす時間等が算定に影響し,ニューヨーク州では一定の所得を基礎に,子が1人なら17%,2人なら25%等の法定割合を出発点とする。
支払終期も,カリフォルニア州では原則18歳であるのに対し,ニューヨーク州では原則21歳であり,同じではない。

日本とアメリカに父母又は子が分かれて住む場合は,さらに,①どの国の裁判所に申し立てることができるか,②どの国・州の法を適用するか,③得られた判断を財産のある国・州で承認・執行できるかを分けて検討する必要がある。
日本の家庭裁判所で養育費を定めても,その調停調書又は審判書だけでアメリカの給与や銀行口座を直ちに差し押さえられるわけではない。

国際事件では,親の国籍よりも,子と父母の住所・常居所,既存の合意又は裁判,対象州,送達の経過,未払額及び財産所在地が重要である。
最初にこれらを確定することが,請求と回収の出発点となる。

第2 アメリカの養育費は州法を中心に決まる
1 連邦法と州法の役割

連邦規則45 CFR §302.56は,各州に対し,養育費の算定指針を設けて公開することを求めている。
算定指針は,父母の所得又は支払能力に関する証拠,子の医療上の必要等を考慮し,数値的な基準を含むものでなければならない。
算定指針による額は適正額であるとの反証可能な推定が働く仕組みとされている。

もっとも,連邦規則がアメリカ全州共通の月額を定めているわけではない。
各州が州法と州のガイドラインに基づいて具体的な額を定めるため,インターネット上の「全米平均額」を個別事件の見込額として用いることはできない。

2 まず確認する州

対象州は,単に父又は母がアメリカ人であるという理由で決まるものではない。
現在又は過去の住所,子の居住地,既存命令を出した裁判所,勤務先及び財産所在地等から,どの州の裁判所又はchild support agencyが事件を扱うかを確認する。

USA.govの案内によれば,各州又は部族のchild support agencyは,親子関係の確定,養育費の設定・変更及び執行を支援する。
一方の親が国外にいる場合も,関係州の機関又は連邦Office of Child Support Services(OCSS)への照会が案内されている。

第3 養育費の金額―カリフォルニア州とニューヨーク州の例
1 カリフォルニア州

カリフォルニア州の公式ガイドライン計算機は,父母双方の所得,課税関係,子の人数及びそれぞれが子と過ごす時間等を入力して概算額を示す。
ただし,計算結果は見積りであり,最終的な養育費を決定する権限は裁判官にある。

同州のFAQも,双方の所得と子と過ごす時間が金額に影響することを説明している。
したがって,支払親の年収だけを円換算して月額を求めたり,「共同監護だから折半で0円」と処理したりすることはできない。

2 ニューヨーク州

ニューヨーク州裁判所の案内によれば,原則として父母の合算所得を基礎に,子が1人なら17%,2人なら25%,3人なら29%,4人なら31%,5人以上なら35%以上の割合を用いる。

(続きを読む...)アメリカの養育費―州法上の金額・終期,日本からの請求と未払い回収(AI作成)

スコットランドの養育費の法制度―CMS・aliment・対象年齢・不払い・国外居住(AI作成)

目次

第1 結論―CMSとalimentを分けて検討する第2 スコットランドの養育費はいくらか1 CMSは支払親の週額総所得等から計算する2 shared careで減額される場合がある3 alimentはCMSの割合表では決まらない第3 スコットランドの養育費は何歳まで支払うのか1 CMSは原則16歳未満,承認教育等では20歳未満である2 alimentは教育・訓練中なら25歳未満まで対象となり得る第4 スコットランドでは12歳以上の子どもが自分でCMSへ申請できるか第5 子どもに会えなくても養育費を支払うのか第6 父母間の合意はどのように扱われるか第7 CMSとsheriff courtのどちらを使うのか1 CMSの権限がある通常の定期養育費はCMSが出発点となる2 aliment又は裁判所の追加命令を検討する場面がある第8 養育費が支払われない場合にCMSはどう回収するか第9 aliment又は登録合意の不払いはどう扱うか第10 親の一方が日本その他の国外に住む場合1 CMSを当然に利用できるとは限らない2 国際回収では相互執行の根拠を国ごとに確認する第11 相談時に確認する資料第12 関連記事及び出典
第1 結論―CMSとalimentを分けて検討する

スコットランドの子の扶養には,Child Support Act 1991に基づくChild Maintenance Service(CMS)のchild maintenanceと,Family Law (Scotland) Act 1985に基づくalimentという二つの法的な仕組みがある。
CMSは,支払親の所得,対象となる子の人数及びshared care等に基づき定期養育費を算定し,必要に応じて徴収する英国の行政制度である。
これに対し,alimentは,子の必要,父母の資力・稼働能力その他の事情を踏まえてスコットランドの裁判所が定める扶養であり,CMSを利用できない国外居住事案,大学等の教育中の子,高所得者の上乗せ,教育費又は障害費用等で問題となる。

確認事項CMSのchild maintenanceスコットランド法のaliment主な根拠Child Support Act 1991Family Law (Scotland) Act 1985決定主体CMSsheriff court又はCourt of Session金額の考え方法定算式による週額計算必要・資力・稼働能力その他の事情年齢の基本線原則16歳未満,承認された教育・訓練中は20歳未満18歳未満,又は教育・職業訓練中の18歳以上25歳未満国外居住三者の英国常居所を原則とし例外ありCMSの権限がない場面でも裁判所の検討余地あり

したがって,「スコットランドの養育費はいくらか」「何歳までか」「不払いをどう回収するか」という質問には,最初にCMSの管轄と対象年齢を確認し,次にaliment又は国際回収の経路が必要かを判定する必要がある。

第2 スコットランドの養育費はいくらか
1 CMSは支払親の週額総所得等から計算する

CMSは,通常,支払親の年間総所得を週額へ換算し,私的年金拠出,支払親が扶養する他の子,対象となる子の人数及びshared careの宿泊日数等を順に反映する。
年収だけから一律額を答えることはできず,税引前所得,年金拠出,他の子,対象となる子及び宿泊日数をそろえて計算する必要がある。

調整後の週額総所得CMSの主な率7ポンド未満nil rateとなる場合がある7ポンド以上100ポンド以下又は一定の給付受給通常はflat rate100.01ポンド以上200ポンド未満reduced rate200ポンド以上800ポンド以下basic rate800ポンド超3000ポンド以下basic rateにbasic plus rateを加える

basic rateは,対象となる子が1人なら12%,2人なら16%,3人以上なら19%である。
週額総所得が800ポンドを超える部分には,3000ポンドを上限として,子が1人なら9%,2人なら12%,3人以上なら15%を加える。
例えば,調整後の週額総所得が1000ポンドで対象となる子が2人なら,shared care等を反映する前の週額は,800ポンドの16%である128ポンドと,残り200ポンドの12%である24ポンドの合計152ポンドとなる。
この例は算式の説明にすぎず,個別事件の確定額ではない。

2 shared careで減額される場合がある

子が支払親のもとに年間52泊以上する場合,CMSの計算額はshared careとして減額されることがある。

年間宿泊日数子1人ごとの減額割合52泊から103泊7分の1104泊から155泊7分の2156泊から174泊7分の3175泊超2分の1に加えて週7ポンド

日常の養育を父母が同等に分担し,non-resident parentが存在しないと評価される場合は,その子についてCMSのchild maintenanceは生じない。
単に「共同親権」「共同監護」と呼ばれているだけでなく,実際の日常養育と宿泊実績を確認する必要がある。

3 alimentはCMSの割合表では決まらない

alimentの額は,Family Law (Scotland) Act 1985第4条により,子の必要,父母双方の資力,稼働能力及び事件の全事情を考慮して定められる。
16歳未満の子については,子を養育する者が負担する養育費用を裁判所が合理的な範囲で含めることもできる。
そのため,日本の養育費算定表又はCMSの割合を,alimentの法定算式としてそのまま用いることはできない。

第3 スコットランドの養育費は何歳まで支払うのか
1 CMSは原則16歳未満,承認教育等では20歳未満である

CMSの対象となるqualifying childは,原則として16歳未満である。
16歳以上でも,承認された水準の全日制教育又は訓練を続ける場合は,20歳になるまで対象となり得る。
スコットランド政府の案内では,対象となる教育水準は原則としてSCQF level 7以下であるが,Higher National Certificate及びCertificate of Higher Education等は除外される。

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ベトナム法の養育費―金額・支払期間・未払いと日越間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 ベトナム法の養育費を検討する順序第2 離婚後に誰が養育費を負担するか第3 ベトナム法の養育費はいくらか第4 支払方法と金額の変更第5 ベトナム法の養育費は何歳までか第6 ベトナムで未払い養育費を請求する場合第7 ベトナムで外国要素のある扶養を扱う場合第8 日本の裁判所で準拠法を決める場合第9 ベトナムの判断を日本で使う場合第10 日本の判断をベトナムで使う場合第11 2007年ハーグ扶養条約を利用できるか第12 親権・監護・面会交流と養育費の関係第13 相談時にそろえる資料第14 ベトナム法の養育費に関するよくある質問1 ベトナム法の養育費はいくらですか2 離婚後も養育費を支払う義務がありますか3 養育費は18歳で必ず終わりますか4 養育費を一括で支払えますか5 相手がベトナムへ帰国した場合,日本から請求できますか6 ベトナム人の親であればベトナム法が適用されますか第15 関連記事と主要資料
第1 ベトナム法の養育費を検討する順序

ベトナム婚姻家族法は,養育費を含む扶養を「cấp dưỡng」と表現し,扶養義務者が,別居する未成年者又は働く能力と自活できる財産がない成年者等の必要不可欠な需要を満たすため,金銭その他の財産を給付することと定義している。
離婚後の子に対する養育費も,この扶養制度の一部として定められている。

ベトナム人の親が関係するだけで,常にベトナム法が適用されるわけではない。
日本とベトナムにまたがる事件では,金額を計算する前に,準拠法,裁判管轄,既存の合意・裁判及び相手方財産の所在地を分けて確認する必要がある。

最初に確認する事項確認する内容混同してはならない事項準拠法どの国の法が養育費請求に適用されるか親又は子の国籍だけでは決まらない手続国どの国の裁判所その他の機関を利用できるか準拠法と裁判管轄は別である既存文書合意書,調停調書,審判,判決等の有無と効力離婚の成立と養育費の給付は別に確認する回収先義務者の住所,勤務先,預金,不動産等がどの国にあるか日本の執行手続はベトナムの財産に直接及ばない
第2 離婚後に誰が養育費を負担するか

ベトナム婚姻家族法82条2項は,離婚後に子を直接養育しない親が子を扶養する義務を負うと定める。
同条3項は,子を直接養育しない親に面会・世話をする権利と義務も認めている。

同法110条は,子と同居しない親又は同居していても扶養義務に違反する親が,未成年の子及び働く能力がなく自活できる財産もない成年の子を扶養する義務を定める。
離婚したかどうかだけでなく,親子関係,子を直接養育する者,子の年齢・能力・財産及び既存の合意又は裁判を確認する。

同法107条は,扶養義務を他の義務で置き換え,又は他人へ移転することができないと定める。
離婚時の財産分与,一括金又は他の債務と養育費を調整するときは,何が養育費の履行に当たるかを合意書に明記する必要がある。

第3 ベトナム法の養育費はいくらか

ベトナム婚姻家族法116条1項は,扶養義務者と扶養を受ける者又はその後見人が,義務者の現実の収入・能力と,扶養を受ける者の必要不可欠な需要を基礎に金額を合意すると定める。
合意できない場合は,裁判所へ判断を求めることができる。

同条は,全国一律の月額,最低額又は収入に対する固定割合を定めていない。
インターネット上の「相場」だけから金額を決めず,父母双方の収入・資産・他の扶養負担,子の生活費・住居費・教育費・医療費その他の具体的需要を資料で示す必要がある。

義務者の「能力」は,給与明細の金額だけで判断できるとは限らない。
事業収入,銀行取引,財産,職業,生活実態及び他の扶養義務を確認し,子の需要についても通常費用と臨時の教育・医療費を分けて整理する。

第4 支払方法と金額の変更

ベトナム婚姻家族法117条は,扶養を月払,四半期払,半年払,年払又は一括払で行うことができると定める。
当事者が国をまたいで生活する場合は,支払額だけでなく,通貨,換算日,支払日,送金先,送金手数料,送金不能時の連絡方法及び支払証明の保存方法を定める必要がある。

一括払いは常に有利とは限らない。
対象期間,算定の前提,為替・物価の変動,進学・医療等による追加費用及び将来の事情変更をどのように扱うかを明確にする。

同法116条2項は,合理的な理由があるときは扶養額を変更できるとし,当事者が合意できない場合は裁判所へ判断を求めることができると定める。
同法117条は,義務者が経済的困難に陥って履行できないときの方法変更又は一時停止についても,合意できなければ裁判所へ判断を求める仕組みを置いている。

第5 ベトナム法の養育費は何歳までか

「ベトナム法の養育費は一律に18歳まで」とだけ説明するのは正確ではない。

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シンガポール法の養育費―金額,21歳まで,請求・執行と日本との関係(AI作成)

目次

第1 シンガポール法の養育費の基本第2 誰が請求できるか第3 シンガポールの養育費はいくらか1 固定の割合又は定額ではない2 命令の形第4 シンガポールの養育費は何歳までか第5 離婚前,離婚手続中及び離婚後の申立て第6 申立方法と必要書類第7 金額の変更と未払い時の執行第8 当事者又は財産が日本にある場合1 国外にいる相手への命令2 外国の判断又は財産に対する執行第9 よくある質問1 シンガポールの養育費はいくらですか2 養育費は21歳までですか3 離婚前でも子の養育費を請求できますか4 国から養育費を受け取る制度ですか5 養育費は海外でも差し押さえられますか第10 受任時に確認する資料第11 出典と調査範囲
第1 シンガポール法の養育費の基本

シンガポールのWomen’s Charter 1961(女性憲章)68条は,裁判所の命令又は合意に別段の定めがある場合を除き,父母が子を扶養し,又はその扶養に寄与する義務を負うと定める。
子が父母のどちらに監護されているか,婚内子であるか婚外子であるかにかかわらず,父母の資力と生活上の地位に照らして合理的な住居,衣服,食事及び教育を提供し,又はその費用を支払うことが基本となる。

同法69条2項は,親が自活できない子に合理的な養育費を提供することを怠り,又は拒んだ場合に,裁判所が月額又は一時金の支払を命じることができるとする。
日本の実務でいう養育費に近いが,日本の養育費算定表をそのまま使う制度ではない。

質問シンガポール法の基本線個別事件で確認する事項誰が負担するか父母の双方が子の扶養に責任を負う監護状況,父母の資力,既存の合意・命令いくらか一律の法定割合ではなく,事件の事情から決める子の必要,収入・資産,生活水準,教育等何歳までか原則として21歳まで障害,National Service,教育・訓練,特別事情どのように請求するかFamily Justice Courtsの手続を利用する離婚手続中か,Part 8の独立申立てか国外の相手へ請求できるか指定国との相互執行制度がある相手国,判断の種類,送達,財産所在地
第2 誰が請求できるか

Women’s Charter 1961の69条3項によれば,子の後見人又は現に子を監護している者が養育費を申し立てることができる。
子が21歳以上である場合は子本人,子が21歳未満である場合は21歳以上の兄弟姉妹も,同項所定の条件の下で申立人となり得る。

申立ての前には,出生証明書,親子関係,子を現に監護している者,父母と子の住所,既存の養育費合意・裁判所命令及び支払履歴を確認する。
当事者の国籍が日本又はシンガポールであるという事実だけで,国際裁判管轄又は準拠法が当然に決まるわけではない。

日本の裁判所で請求する場合の申立人,法定代理及び準拠法については,国際扶養の準拠法及び国際養育費の請求と回収も確認する必要がある。

第3 シンガポールの養育費はいくらか
1 固定の割合又は定額ではない

Women’s Charter 1961の69条4項は,裁判所が事件のすべての事情を考慮するとし,子の経済的必要,収入・稼働能力・資産その他の経済的資源,心身の障害,婚姻当事者の年齢と婚姻期間,家庭への貢献,従前の生活水準,予定されていた教育・訓練方法等を挙げる。
同法68条が父母の資力と生活上の地位を考慮すると定めることからも,検索で見つけた一定割合を機械的に掛けて金額を決めるものではない。

実際には,住居費,食費,衣類費,保育料,学費,教材費,医療費,交通費,課外活動費等について,必要性,頻度,支払先及び負担済みの親を整理する。
父母双方の給与明細,税務・社会保険関係資料,銀行取引,資産・負債,他の扶養負担及び実際の生活水準も,支払能力を検討する資料となる。

2 命令の形

Singapore Courtsの養育費案内は,定額の月払い,特定費用の全部又は一部の償還,保育施設等のサービス提供者への直接払いを,代表的な命令として挙げる。
裁判所の裁量により,申立日前の日にさかのぼって支払を命じる場合もある。

月額だけでなく,学校・医療費の実費分担,支払期限,証憑の提示方法,送金手数料,通貨及び為替差を明確にすることが,将来の未払い紛争を減らす。

第4 シンガポールの養育費は何歳までか

Women’s Charter 1961の69条5項・6項によれば,養育費命令は原則として子が21歳になった日に終了する。
ただし,心身の障害,フルタイムのNational Service,教育機関での就学又は職業・専門訓練,その他の特別の事情により養育費が必要な場合は,21歳を超える期間の命令が認められ得る。

21歳を超える命令は自動的に続くものではなく,命令自体が21歳後も続く期間を明示する必要がある。
進学予定,学業の内容と期間,National Serviceの状況,障害と生活能力,収入及び具体的費用を資料化する。

したがって,「21歳になれば必ず終了する」「大学を卒業するまで必ず続く」のいずれも正確ではない。
既存命令の文言と69条5項の例外を照合して判断する。

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カナダ法の養育費―連邦ガイドライン・何歳まで・共同養育・日加間の請求と執行(AI作成)

目次

第1 カナダ法の養育費を調べるときの結論第2 連邦法と州法のどちらを使うか第3 基本額は年収・子の人数・州の表で求める第4 特別費用と高所得者の調整第5 共同養育と分割養育第6 養育費は何歳まで支払うか第7 一方の親が日本などカナダ国外にいる場合第8 日本とカナダの間で回収する場合第9 相談時に確認する資料第10 よくある質問1 カナダの養育費は年収の何パーセントか2 カナダの養育費は何歳までか3 共同養育なら養育費を払わなくてよいか4 日本に住んだままカナダの親へ請求できるか第11 関連記事第12 出典と調査範囲
第1 カナダ法の養育費を調べるときの結論

カナダ法の養育費は,年収の一定割合を掛けるだけでは決まらない。
カナダの離婚法に基づく場合は,原則として連邦養育費ガイドラインにより,支払義務者の年収,子の人数及び適用される州・準州の表から基本額を求め,必要に応じて特別又は臨時の費用を加える。
共同養育,高所得,成人後の子及び国外居住が関係するときは,別の調整が必要である。

本記事は,令和8年10月16日現在のカナダ連邦法令,カナダ司法省及びハーグ国際私法会議の公開資料を基礎に,連邦ルールの全体像と日加間の請求・承認・執行の確認順序を整理する。
婚姻の有無,離婚をした国,親子の居住州,既存裁判及び財産所在地によって適用法と手続が変わるため,個別事件では対象州の現行法も確認する必要がある。

第2 連邦法と州法のどちらを使うか

カナダのDivorce Actに基づいて離婚する夫婦には,Federal Child Support Guidelinesが適用される。
これに対し,婚姻していない場合,別居しているが離婚しない場合,又は外国法により離婚した場合は,申立てをする州又は準州の法律により養育費を判断することがある。
したがって,「カナダ法」というだけで連邦ガイドラインの適用を確定せず,婚姻・離婚の経過と手続をする州を先に特定する。

カナダ司法省の案内によれば,州・準州のガイドラインは連邦ガイドラインと異なることがあり,ケベック州を除く各州・準州では基本額について連邦表が用いられている。
ただし,適用法,手続,所得資料及び執行制度まで全国一律であるという意味ではない。

第3 基本額は年収・子の人数・州の表で求める

連邦ガイドライン3条は,未成年の子について,適用表による額と7条の費用を養育費の基本構造とする。
適用表の額は,支払義務者の年収,対象となる子の人数及び適用州・準州によって変わる。
年収は,原則としてカナダ歳入庁のT1 General formにおけるTotal incomeの所得項目を基礎に,Schedule IIIによる調整をして算定する。

2025年連邦養育費表は令和7年10月1日に施行された。
令和7年9月30日以前の期間については,その期間に対応する旧表を用いる。
新表は従前の養育費命令を自動的に変更するものではないが,額の差が事情変更として変更申立ての理由となり得る。

支払義務者がカナダ国内に居住するときは,原則としてその者が常居所を有する州・準州の表を用いる。
支払義務者がカナダ国外に居住し,又はその居住地が不明のときは,原則として他方配偶者が常居所を有する州・準州の表を用いる。

第4 特別費用と高所得者の調整

連邦ガイドライン7条の特別又は臨時の費用には,就労等のための保育費,子に対応する医療・歯科保険料,保険で補填されない一定の医療費,特別な教育費,高等教育費及び臨時の課外活動費が含まれる。
裁判所は,子の利益に照らした必要性と,父母及び子の資力等に照らした相当性を考慮する。
費用は,子自身の負担分を控除した上で,原則として父母の所得割合に応じて分担し,補助金や税額控除等も考慮する。

支払義務者の年収が15万カナダドルを超える場合も,直ちに定額又は単純な割合計算へ移るわけではない。
連邦ガイドライン4条は,原則として通常の算定額を用い,それが不適切と判断される場合には,最初の15万カナダドルの表額,超過部分について相当な額及び7条の費用を組み合わせる。

第5 共同養育と分割養育

双方が年間を通じて子との養育時間の40%以上を持つ共同養育では,養育費が当然にゼロになるわけではない。

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インドネシア法の養育費―誰が払い,いくら・何歳まで,未払時にどう回収するか(AI作成)

目次

第1 結論―離婚後も子の養育義務は続く第2 養育費は父と母のどちらが払うのか第3 インドネシアの養育費はいくらか第4 養育費は何歳まで払うのか第5 どの裁判所へ請求するのか第6 離婚判決に養育費の定めがない場合はどうするか第7 養育費を払わない場合はどう回収するか第8 日本とインドネシアにまたがる事件は何を分けるのか第9 相談時にそろえる資料第10 出典と調査範囲
第1 結論―離婚後も子の養育義務は続く

インドネシア法では,父母が離婚しても子を養育し教育する義務は終わらない。
婚姻法41条及び45条は父母双方の義務を定めた上で,離婚後の養育・教育費は父が負担することを原則とし,父が現実に負担できないときは裁判所が母にも分担させることができるとしている。

本記事は,令和8年10月16日現在のインドネシアの公式法令,最高裁判所資料及び公開裁判例を基礎に,離婚後の養育費の負担者,金額,終期,裁判所及び未払時の執行を整理する。
イスラム教徒の事件で用いられるKompilasi Hukum Islam(KHI)と,一般の婚姻法を区別し,KHIの21歳基準や宗教裁判部門の指針を全ての事件へ一律に広げない。

よくある質問短い回答個別事件で確認する事項離婚後も養育費を払うか払う。父母の婚姻が終わっても子の養育・教育義務は続く離婚判決,子の監護,既存合意誰が払うか父の負担が原則であるが,父が負担できない場合は母にも分担が命じられ得る父母の所得・資産・扶養負担いくらか全国一律の固定月額ではなく,子の必要と負担者の能力を基礎に裁判所が定める生活費,教育費,医療費,所得資料何歳までか一般法は子が婚姻し又は自立するまで,イスラム教徒のKHIは成人・自立の目安として21歳を示す適用法,判決文,教育・障害・自立状況払わない場合はどうするか金額を命じる執行可能な裁判を確認し,裁判所へ執行を申し立てる確定・送達,未払額,財産所在地
第2 養育費は父と母のどちらが払うのか

インドネシア婚姻法(Undang-Undang Nomor 1 Tahun 1974)45条は,父母双方に子をできる限りよく養育し教育する義務を課し,その義務は父母の婚姻が終了した後も続くと定める。
したがって,離婚により親子関係又は子に対する責任がなくなるものではない。

同法41条(b)は,離婚の結果として,子に必要な養育・教育費は父が責任を負うことを原則とする。
ただし,父が現実にその義務を履行できないときは,裁判所が母にも費用を分担させることができる。

イスラム教徒の事件では,大統領指示1号(1991年)により普及されたKHI105条(c)及び156条(d)も参照される。
これらは子の監護費用と養育費を父の能力に応じた負担とするが,KHIはイスラム法上の家事事件の規律であり,非イスラム教徒の事件へ当然に適用するものではない。

第3 インドネシアの養育費はいくらか

本記事で確認した法令及び最高裁判所資料には,日本の養育費算定表のような全国共通の固定月額は示されていない。
裁判所は,子の生活・教育・医療等の必要と,主として負担する父の所得,資産,他の扶養負担及び現実の支払能力を基礎に金額を定める。

請求側は,月ごとの食費・住居費・学費・教材費・交通費・医療費等を分け,領収書,学校資料及び送金記録を準備する必要がある。
支払側の給与明細,銀行取引,事業収入,資産,生活水準及び他の扶養家族に関する資料も,金額を判断する重要な材料となる。

インドネシア最高裁判所のSEMA No.3/2015に含まれる宗教裁判部門の指針は,養育費を命じる主文に,教育費・医療費を除く基礎額について年10%から20%の増額を付すことが望ましいとする。
これは宗教裁判部門の裁判指針であり,全事件に自動的に適用される法定利率又は全国一律の算定式として扱わない。

第4 養育費は何歳まで払うのか

婚姻法45条2項は,子が婚姻するか,自ら生活できるようになるまで父母の養育・教育義務が続くとする。
一般法の条文は単一の年齢だけで終期を定めていないため,年齢のほか,婚姻,自立,教育及び就労の状況を確認する必要がある。

イスラム教徒の事件で参照されるKHI156条(d)は,子が成人し自ら生活できるようになるまで,少なくとも21歳までを父の負担の基準として示す。
もっとも,21歳という数字を非イスラム教徒の事件又は個別判決の文言へ機械的に当てはめず,適用法と実際の裁判主文を読む必要がある。

第5 どの裁判所へ請求するのか

イスラム教徒間の婚姻・離婚に伴う養育費は,原則としてPengadilan Agama(宗教裁判所)が扱う。
宗教裁判所法(Undang-Undang Nomor 7 Tahun 1989)49条は,イスラム教徒間の婚姻分野の事件を宗教裁判所の管轄とする。

非イスラム教徒の離婚及び養育費は,原則としてPengadilan Negeri(一般裁判所)で扱う。

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イタリア法の養育費―金額の決め方・支払期間・特別費用・日伊間の請求回収(AI作成)

目次

第1 結論―一律の割合や平均額ではなく,五つの事情から決める第2 養育費の金額を決める五つの事情第3 通常費用と特別費用を分ける第4 養育費は何歳まで支払うか第5 イタリアでの請求・変更・回収第6 イタリアで裁判する場合の管轄と準拠法第7 日本とイタリアの間で請求・回収する場合第8 よくある質問1 イタリアの養育費は収入の何%ですか2 イタリアの養育費は何歳までですか3 日本からイタリアの給与や預金を差し押さえられますか4 海外にいる親へ養育費を請求する最初の一歩は何ですか第9 相談時にそろえる資料第10 関連記事第11 出典と調査範囲
第1 結論―一律の割合や平均額ではなく,五つの事情から決める

イタリア法の子の養育費は,「収入の何%」という一律の全国基準だけで決まるものではない。
イタリア民法337-ter条は,子の現在の需要,両親と同居していた当時の生活水準,各親と過ごす時間,両親双方の経済力,各親が担う家事・ケア労働の経済的価値を考慮して,必要に応じて定期金を定める仕組みを採る。

日本とイタリアにまたがる事件では,金額の問題だけでなく,どちらの国で請求するか,どの国の法律が適用されるか,既存の合意・裁判をどの国で承認・執行するか,財産がどこにあるかを分けて確認する必要がある。
イタリア人の親がいることや,親がイタリアに住むことだけで,常にイタリア法が適用され,又は日本の裁判をイタリアで直ちに執行できるとは限らない。

第2 養育費の金額を決める五つの事情

両親は,原則として各自の資力に比例して子の生活,教育及び養育を負担する。
裁判所が定期金を定める場合の中心的な考慮要素は,次の五つである。

考慮要素確認する資料の例子の現在の需要食費,住居費,教育費,医療費,年齢・健康状態同居時の生活水準住居,学校,習い事,家族の支出実績各親と過ごす時間監護日数,宿泊,送迎,日常の直接負担両親双方の経済力収入,資産,住居費,債務,実際の可処分資力家事・ケア労働の経済的価値日常監護,家事,通院・学校対応等の分担

したがって,共同監護や面会交流の日数が多いことだけで定期金が当然にゼロになるわけではない。
反対に,一方の親が日常費用を直接負担していることは,他の事情と併せて金額を決める材料になる。

定期金は,当事者又は裁判所が別の基準を定めない限り,ISTATの指数に応じて自動的に調整される。
収入・監護状況・子の需要が変わった場合には,権利者又は義務者が裁判所へ変更を求めることができる。

第3 通常費用と特別費用を分ける

定期金は,食費,通常の住居費,衣類,反復する学校用品,市販薬など,子の日常生活に通常必要となる費用を広く賄うものとされる。
これに対し,臨時性・散発性,負担の大きさ,又は選択性を持つ費用は,定期金とは別の「特別費用」として扱われることがある。

ミラノ裁判所のガイドラインは,医療費,学校費,課外活動費等を,事前の合意を要するものと要しないものに分けている。
もっとも,これはミラノの実務指針であり,イタリア全国で個別事情にかかわらず一律に適用される法定一覧ではない。
具体的な事件では,合意書又は裁判書が通常費用・特別費用の範囲,負担割合,事前協議,領収書の提出期限をどのように定めているかを読む必要がある。

第4 養育費は何歳まで支払うか

成年に達したことだけで,養育費が当然に終了するわけではない。
成年の子が経済的に自立していない場合,裁判所は一方又は双方の親に定期金を命じることができ,原則として成年の子へ直接支払わせることができる。

他方,いったん経済的に自立した成年の子が後に生活困難となった場合は,未成年子と同じ養育費が当然に復活するのではなく,生活上の必要を対象とする扶養の制度が問題となる。
重度の障害がある成年の子には,未成年子に関する規律が全面的に適用される。

したがって,「18歳」「大学卒業」など一つの年齢だけで終期を決めず,就学・職業訓練,就労可能性,実際の収入,求職状況,障害,既存の合意・裁判の文言を確認する必要がある。

第5 イタリアでの請求・変更・回収

イタリアで養育費を求める裁判手続では,原則として弁護士による申立てが必要である。
養育費は,離婚・別居等の手続の一部としても,独立の手続としても定められ得る。

金額を定めた裁判は執行の基礎となり,不払いの場合には一般の金銭債権の強制執行手段を利用する。

(続きを読む...)イタリア法の養育費―金額の決め方・支払期間・特別費用・日伊間の請求回収(AI作成)

ドイツの養育費―デュッセルドルフ表2026・計算方法・何歳まで・不払い対応(AI作成)

目次

第1 ドイツの養育費を検討する順序第2 誰が誰に対して養育費を負担するか1 直系親族間の扶養義務,子の必要及び親の支払能力2 子が一方の親と主に暮らす場合3 成人した子の場合第3 デュッセルドルフ表2026の法的位置付け1 法律ではなく裁判実務上の指針であること2 2026年の第1所得区分の必要額と支払額3 児童手当は必要額の充足に用いること4 自己の生活維持額と不足事案第4 ドイツの養育費の計算方法1 調整後純収入を確認する2 年齢,所得区分及び扶養権利者数を当てはめる3 児童手当,子の収入及び支払能力を反映する4 単純な計算例第5 ドイツの養育費は何歳までか1 18歳で当然に終わる制度ではない2 21歳未満の所定の就学者3 親元を離れた学生等第6 交代居住・共同監護の場合の養育費第7 請求,権利証書及び不払いへの対応1 収入資料の開示を求め,請求時点を残す2 青少年局の補佐制度3 簡易手続と強制執行可能な権利証書4 養育費立替制度5 表の養育費額と公的立替額は同じか第8 日本とドイツにまたがる請求・執行1 最初に準拠法と裁判管轄を分ける2 2007年ハーグ扶養条約の日独間での扱い3 外国の権利証書を用いる場合の確認事項第9 ドイツの養育費に関するよくある質問1 ドイツの養育費は子1人当たりいくらか2 デュッセルドルフ表には法律上の拘束力があるか3 養育費は18歳までか4 父母が半分ずつ監護すれば支払は0になるか5 不払いの場合は何から始めるか6 日本からドイツ在住の親へ請求できるか第10 関連記事と主要資料
第1 ドイツの養育費を検討する順序

ドイツの養育費は,ドイツ民法典(Bürgerliches Gesetzbuch。以下「BGB」という。)上の扶養請求権を基礎とし,デュッセルドルフ表(Düsseldorfer Tabelle)を金額算定の重要な指針として運用する制度である。
デュッセルドルフ表自体は法律でも一律の料金表でもなく,個別事件では子の必要,父母の収入,扶養すべき人数,児童手当(Kindergeld),自己の生活を維持するための金額及び監護形態を確認する必要がある。

この記事は,令和8年10月16日現在のBGB,2026年1月1日版デュッセルドルフ表,連邦政府の制度案内及び連邦通常裁判所の裁判例に基づき,主として法律関係を整理するものである。
日本とドイツにまたがる事件では,ドイツ人であることやドイツに住んでいたことだけでドイツ法が当然に適用されるわけではないため,準拠法,裁判管轄及び判決等の承認・執行を金額計算より先に確認する必要がある。

第2 誰が誰に対して養育費を負担するか
1 直系親族間の扶養義務,子の必要及び親の支払能力

BGB1601条は,直系親族が相互に扶養する義務を定める。
子の養育費では,父母が子に対して負う扶養義務が出発点となる。

BGB1602条によれば,自ら生活を維持できない者が扶養を請求でき,未成年の子については,その財産収益や労働収入だけでは扶養に足りない範囲で父母に請求できる。
他方,BGB1603条は,義務者が自らの相当な生活を害さずに給付できるかという支払能力を問題とし,未成年の未婚の子等に対しては父母の加重された責任を定める。

したがって,表の金額だけを見て請求額を確定するのではなく,子に請求権があるか,義務者に支払能力があるか,他に同順位又は先順位の扶養義務があるかを順に確認する。

2 子が一方の親と主に暮らす場合

BGB1606条3項は,複数の同順位義務者が原則として収入・財産状況に応じて負担する一方,未成年の未婚の子を監護する親は,通常,世話及び養育によって扶養義務を履行するものとしている。
この通常の居住モデルでは,子と主に暮らす親が監護による扶養を行い,他方の親が金銭による養育費(Barunterhalt)を支払うという整理になる。

共同親権の有無と金銭負担の有無は同じ問題ではない。
父母双方が親権を持っていても,子が一方の親と主に暮らす場合は,他方の親に金銭扶養義務が生じ得る。

3 成人した子の場合

成人した子については,監護する親が世話だけで全部の扶養義務を履行するという未成年者の原則はそのまま当てはまらず,父母双方が原則として支払能力に応じて金銭扶養を分担する。
子自身の収入,職業訓練手当,奨学金その他の給付及び児童手当も,必要額の計算で確認する。

第3 デュッセルドルフ表2026の法的位置付け
1 法律ではなく裁判実務上の指針であること

デュッセルドルフ表2026は,自ら「法的効力を持つものではなく,指針である」と明記している。
同表は,扶養権利者が2人いる場合を基礎として,義務者の調整後月額純収入と子の年齢から月額必要額(Bedarf)を示す。

扶養権利者の人数が2人より多い又は少ない場合は,より低い又は高い所得区分への調整が相当となることがある。
表の必要額は,児童手当等を控除した実際の支払額(Zahlbetrag)と同じではない。

2 2026年の第1所得区分の必要額と支払額

2026年表の第1所得区分は,義務者の調整後月額純収入が2100ユーロまでの場合である。
同区分の月額は次のとおりであり,支払額は2026年の児童手当259ユーロを未成年者では半額,成人者では全額控除した附表の金額である。

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中国の養育費(抚养费)の法制度―金額・支払終期・未払いと日中間の請求・執行(AI作成)

目次

第1 本記事で扱う「中国の養育費」第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか第3 中国の養育費はいくらか1 収入の20~30%は固定額ではない2 固定収入がない場合第4 養育費に含まれる費用と支払方法第5 中国の養育費は何歳までか第6 離婚時の合意,増額請求及び未払い第7 中国で養育費を請求し,未払いを回収する場合第8 日中間の事件では準拠法を先に確認する第9 中国の判決・調解書を日本で使う場合第10 日本の調停・審判・判決を中国で使う場合第11 2007年ハーグ扶養条約を当然に利用できるか第12 相談時にそろえる資料第13 よくある質問1 中国の養育費は収入の20~30%で必ず決まりますか2 子が18歳になれば必ず終了しますか3 離婚時に「養育費を請求しない」と合意すれば将来も請求できませんか4 中国籍の親であれば日本でも中国の20~30%基準を使いますか5 中国の判決があれば日本の預金をすぐ差し押さえられますか6 日本の審判があれば中国の財産をすぐ差し押さえられますか第14 関連記事と出典
第1 本記事で扱う「中国の養育費」

本記事は,中華人民共和国本土の民事法における父母から子への養育費(抚养费)を扱う。
香港特別行政区,マカオ特別行政区及び台湾には別の法制度があるため,本記事の説明をそのまま当てはめない。

中国語の「养育成本」は子育てに要する社会的・経済的費用を広く示す表現であるのに対し,法律上の請求対象として問題となるのは主に「抚养费」である。
中国の「養育費はいくらか」「何歳までか」という質問には,中国法が適用されるか,既に合意・裁判・調解があるか,父母と子がどの国に住み,財産がどこにあるかを確認してから答える必要がある。

法律上の論点中国法の基本線日中間の事件で別に確認する事項金額子の実際の必要,父母の負担能力及び現地の実際の生活水準を考慮するどの国の法が準拠法となるか支払終期原則18歳までであり,例外がある成年年齢だけでなく就学・障害等を確認する変更事情により増額請求等があり得る既存合意・裁判の効力と変更手続を確認する未払い中国の有効な裁判・調解等に基づく執行を検討する債務名義と財産がある国を一致させる外国判断条約又は相互主義等の承認要件を確認する身分部分と金銭給付部分を分ける
第2 誰が養育費を負担し,誰が請求できるか

中華人民共和国民法典1067条は,父母が扶養義務を履行しない場合,未成年の子又は独立して生活できない成年の子が扶養費を請求する権利を定める。
父母が離婚した場合も親子関係は消滅せず,同法1084条・1085条により,子を直接養育しない側の父又は母は養育費の一部又は全部を負担する。

婚姻関係にない男女の間に生まれた子も,民法典1071条により婚内子と同等の権利を有する。
父母が婚姻していたかどうかだけで養育費請求の可否を決めず,親子関係,直接養育者,子の年齢及び既存の合意・裁判を確認する。

離婚協議書,人民法院の判決,調解書その他の文書があるときは,子本人,直接養育する親その他の誰が債権者として記載されているかを原文で確認する。
日本で手続をする場合の申立人・法定代理・利益相反は,日本の家事事件手続と準拠法に基づいて別に判断する。

第3 中国の養育費はいくらか
1 収入の20~30%は固定額ではない

最高人民法院の婚姻家庭編解釈(一)49条は,養育費の額を,子の実際の必要,父母双方の負担能力及び現地の実際の生活水準に基づいて決めるとする。
固定収入がある場合は,月の総収入の20~30%を基準として定めることができ,複数の子を負担する場合は割合を適切に引き上げることができるが,一般に月の総収入の50%を超えない。

この20~30%は,すべての事件に機械的に適用する法定定額ではない。
子の人数,具体的な生活・就学・医療上の必要,父母双方の収入・財産・他の扶養負担,居住地の生活水準及び既存の養育状況を資料で示す必要がある。

2 固定収入がない場合

固定収入がない場合は,婚姻家庭編解釈(一)49条により,当年の総収入又は同業種の平均収入を参照し,前記の割合を手掛かりに額を決めることができる。
事業所得,報酬,配当,賃料等があるときは,給与明細の有無だけで無収入と扱わず,税務資料,銀行取引,会社資料及び生活実態を確認する。

特別の事情がある場合は,20~30%又は50%という一般的な割合を適切に引き上げ,又は引き下げることができる。
したがって,検索で見つけた割合だけから個別事件の金額を断定しない。

第4 養育費に含まれる費用と支払方法

婚姻家庭編解釈(一)42条は,養育費に生活費,教育費及び医療費等を含むとする。
学費,通院・治療費その他の支出が通常の定期額に含まれるか,別途分担の対象となるかは,既存合意・裁判の文言,支出の性質と必要性,父母の負担能力等から確認する。

同解釈50条は,養育費を原則として定期的に支払うものとし,条件がある場合は一括払いも認める。
51条は,一方の親に経済的収入がなく,又は所在不明である場合に,その財産を養育費に充てることができるとする。

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イギリスの養育費の法制度―CMSの計算・対象年齢・不払い・日本からの請求(イングランド及びウェールズ)(AI作成)

目次

第1 結論―本記事の「イギリス」はイングランド及びウェールズである第2 イギリスの養育費はいくらか1 固定の月額ではない2 週額総所得200ポンド以上の基本的な割合3 計算例4 shared careでいくら減るか第3 イギリスの養育費は何歳までか1 CMSは原則16歳未満である2 Family Courtの命令はCMSと終期が同じとは限らない第4 子どもに会えなくても養育費を払うのか第5 日本に住む親はCMSを利用できるか第6 養育費を払わない場合にCMSはどう回収するか1 CMSは国が養育費を立て替える制度か第7 CMSとFamily Courtはどう使い分けるか第8 Children Act 1989 Schedule 1による一時金・住居等第9 高所得者と資産をどう扱うか第10 既存合意と命令を変更できるか第11 日本とイギリスの間で請求・回収する場合第12 一括払いと日本の税務第13 受任時の確認順序第14 関連記事と出典
第1 結論―本記事の「イギリス」はイングランド及びウェールズである

イギリスは,イングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイルランドから成り,家族法の制度は法域ごとに異なる。
本記事でいう「イギリスの養育費」は,特に断らない限りイングランド及びウェールズのchild maintenanceを指す。
スコットランドのCMSとalimentは,スコットランドの養育費の法制度―CMS・aliment・対象年齢・不払い・国外居住で整理し,北アイルランドは本記事の対象としない。

本記事は,個別事件で必要となる制度の選択,管轄,算定要素,命令の種類及び承認・執行の要件を中心に説明する。

通常の定期養育費は,行政機関であるChild Maintenance Service(CMS)が支払親の週額総所得等から算定する。
全国一律の月額相場はなく,対象となる子の人数,他の子,年金拠出及びshared careの泊数等によって金額が変わる。

CMSによる養育費と親子交流は別の問題であり,子に会っていないことだけで養育費の負担がなくなるものではない。
支払がない場合は,CMSが給与・年金・給付又は銀行口座から徴収し,必要に応じて裁判所のliability orderを取得する制度がある。

ただし,日本に住む監護親と子がイギリス国外にいる場合は,通常,CMSへ新規申請できない。
高所得者の追加給付,住居,一時金,日英間の承認・執行は,CMSとは別にFamily Court又は各国の手続を検討する必要がある。

法律上の論点要点主に確認する制度通常の養育費額固定額ではなく,支払親の週額総所得と子の人数等から計算するCMS支払終期原則16歳未満,承認された教育・訓練中は20歳未満までがCMSの対象となり得るCMS・Family Court親子交流との関係親子交流と養育費は別であり,原則として負担は残るCMS・私的合意不払い時の回収給与等・銀行口座からの徴収,liability order等があり得るCMS・裁判所日本からの請求・回収CMSを利用できないことがあるため,居住地,既存判断及び財産所在地から経路を分けるCMS・Family Court・各国の承認執行法
第2 イギリスの養育費はいくらか
1 固定の月額ではない

GOV.UKの計算案内によれば,CMSはHM Revenue and Customs(HMRC)の情報等から支払親の年間総所得を把握し,週額へ換算する。
その上で,所得帯,養育費の対象となる子の人数,同居して扶養する他の子,年金拠出及びshared care等を考慮する。

そのため,「イギリスの養育費は毎月いくら」という単一の相場はない。
CMSの計算は週額を基礎とするため,日本の家庭裁判所の養育費算定表による月額とそのまま比較しない。

2 週額総所得200ポンド以上の基本的な割合

令和8年10月16日現在,調整後の週額総所得が200ポンド以上800ポンド以下の場合,対象となる子が1人なら12%,2人なら16%,3人以上なら19%が出発点となる。
週額総所得が800ポンドを超え3000ポンド以下の場合,最初の800ポンドには上記割合を用い,800ポンドを超える部分には,子が1人なら9%,2人なら12%,3人以上なら15%を用いる。

対象となる子の人数週額200~800ポンドの部分週額800ポンド超~3000ポンドの部分1人12%9%2人16%12%3人以上19%15%

週額総所得が200ポンド未満の場合は,nil rate,flat rate又はreduced rateが問題となり,単純な上表の割合だけでは決まらない。
週額総所得が3000ポンドを超える場合は,CMSの計算に加えて,受領親が裁判所へ追加の養育費を求めることを検討する。

3 計算例

他の子,年金拠出及びshared careによる調整がないものとして,支払親の週額総所得が600ポンドで対象となる子が1人なら,出発点は週72ポンド(600ポンドの12%)である。
同じ前提で,週額総所得が1200ポンドで対象となる子が1人なら,最初の800ポンドについて週96ポンド,残る400ポンドについて週36ポンドとなり,合計は週132ポンドである。

これは説明のための単純例であり,実際のCMS calculationはHMRC所得,他の子,年金拠出,variation及びshared care等により変わり得る。
GOV.UKのchild maintenance calculatorも概算の確認に利用できるが,正式なCMSの決定そのものではない。

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婚姻費用と養育費の違い―金額の比較,二重請求と離婚時の切替え(AI作成)

目次

第1 婚姻費用と養育費は何が違うのか1 配偶者の生活費を含むかが大きな違いである2 対象,算定表及び手続を比較する第2 婚姻費用と養育費はどちらが高いのか1 金額だけを見て自由に選べる制度ではない2 同じ前提条件をそろえて比較する第3 婚姻費用と養育費を両方請求できるのか1 同じ期間の同じ子の生活費を重ねて計上しない2 特別費用と子自身の請求は別に検討する第4 離婚すると婚姻費用は自動的に養育費へ変わるのか1 従前の婚姻費用と同額が続くとは限らない2 離婚前後の清算を三つに分けて書く3 取決めがない場合の法定養育費は別の制度である第5 離婚前の未払分と子の成年到達で注意すること1 離婚しただけで係属中の過去分まで当然に消えるわけではない2 18歳になったことと経済的に自立したことを区別する第6 話合いを始める前の確認順序第7 出典・参考資料
第1 婚姻費用と養育費は何が違うのか
1 配偶者の生活費を含むかが大きな違いである

婚姻費用は,婚姻中の夫婦が分担する生活費であり,配偶者本人の生活費に加えて,未成熟子の生活費,教育費及び医療費などを含む。
これに対し,離婚後の養育費は,父母が分担する子の監護・養育に必要な費用であり,元配偶者本人の生活費を含まない。
そのため,別居から離婚へ進む場合には,単に支払の名称を変えるだけでなく,対象期間,費用の範囲及び金額を整理し直す必要がある。

本記事は,令和8年10月16日現在の裁判所及び法務省の公表資料等に基づき,両制度の違いと,離婚前後の支払を途切れさせたり重複させたりしないための確認事項を説明する。
具体的な算定式,個々の特別費用及び差押えの詳細は,各専門記事を参照されたい。

2 対象,算定表及び手続を比較する
比較する事項婚姻費用離婚後の養育費主な対象配偶者及び未成熟子を含む婚姻生活の費用子の監護・養育に必要な費用主な法的根拠民法760条父母間の分担について民法766条,扶養義務について同法877条等算定表表10~19。夫婦のみの場合の表もある表1~9。子の人数及び年齢で選ぶ主な収入資料給与所得者は源泉徴収票の支払金額等給与所得者は源泉徴収票の支払金額等話合いができない場合婚姻費用の分担請求調停等養育費請求調停等。離婚調停で離婚後の養育費を話し合うこともできる期間の整理離婚後の将来分と,離婚時までの未払分を分ける開始時期及び子ごとの終期を具体的に定める

裁判所の養育費請求調停の案内は,夫婦の別居中に,子の養育費を含む夫婦の生活費を求める場合には,婚姻費用の分担調停を利用すると説明している。
別居中に子と同居する配偶者が生活費の分担を求める通常の場面では,最初に婚姻費用として全体を整理するのが基本となる。

第2 婚姻費用と養育費はどちらが高いのか
1 金額だけを見て自由に選べる制度ではない

婚姻費用には配偶者本人の生活費も含まれるため,同じ収入・監護状況を前提とする典型的な別居世帯では,離婚後の養育費より高い額となることがある。
しかし,必ず高くなるとか,差額は必ず配偶者1人分の定額になるという計算はできない。
両者では用いる算定表と計算の対象が異なるため,それぞれに適した表で確認する必要がある。

婚姻費用と養育費のどちらが得かという問いは,受け取れる月額だけでは判断できない。
婚姻関係の有無,子の監護状況,生活上の安全及び離婚条件全体を踏まえて考える必要があり,金額の多い方の制度を任意に選んで請求することはできない。

2 同じ前提条件をそろえて比較する

比較する場合は,①父母それぞれの年収,②給与所得者か自営業者か,③子の人数及び年齢,④誰がどの子を監護するか,⑤学費や住居費等の直接負担をそろえる。
給与所得者の年収には,原則として手取り額ではなく,源泉徴収票の「支払金額」を用いる。
離婚と同時に収入や監護状況が変わる場合は,制度の違いに加えて,前提条件の変化も金額に影響する。

例えば,双方が給与所得者で,7歳の子1人を一方が監護する場合,婚姻費用では表11,養育費では表1を選ぶ。
そのうえで,同じ義務者年収及び権利者年収の交点をそれぞれ読む。
義務者の年収が600万円という情報だけでは,権利者の年収,子の人数・年齢等が分からないため,月額を一つに決めることはできない。

表の選び方及び計算方法は,婚姻費用算定表の見方,計算方法と特別事情(AI作成)及び養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で説明している。
手取り月額から年収を確認する際は,養育費算定表に入れる給与年収(AI作成)も参照されたい。

第3 婚姻費用と養育費を両方請求できるのか
1 同じ期間の同じ子の生活費を重ねて計上しない

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損害賠償・養育費で使う賃金統計の選び方―民間給与実態統計と賃金センサス,平均・中央値の違い(AI作成)

目次第1 統計を選ぶ前に,何を確かめるか1 実収入と統計による推計を分ける2 本記事の対象と基準日第2 民間給与実態統計と賃金センサスの違い1 民間給与実態統計の「平均給与」2 賃金センサスの月額と賞与3 正社員と一般労働者は同じ区分ではない第3 平均・中央値と将来収入の読み方1 平均額は「多くの人の年収」とは限らない2 年齢別平均は同じ人を追跡した結果ではない第4 事件の種類に応じた使い方1 養育費・婚姻費用の収入推計2 交通事故の逸失利益3 財産分与・相続と世帯の貯蓄統計第5 主張・説明に使う前の確認事項第6 出典
第1 統計を選ぶ前に,何を確かめるか
1 実収入と統計による推計を分ける

交通事故の逸失利益,養育費又は婚姻費用の検討で「平均給与」を参照するときは,まず,何を確かめようとしているかを明らかにする必要がある。
現在の実収入,事故がなければ得られた将来収入,就労によって得ることのできる収入,世帯の家計状況は,それぞれ異なる問題である。
統計は比較や推計の補助資料であり,平均額を示しただけで当事者の年収又は将来収入が確定するものではない。

給与所得者の実収入については,源泉徴収票,給与・賞与明細,課税資料及び勤務先の資料を確認する。
裁判所の養育費・婚姻費用算定表の説明も,給与収入について源泉徴収票の「支払金額」等を確認する方法を説明している。
資料がない場合,資料の対象年が古い場合,転職・休職・副業等がある場合は,不足する情報を特定した上で統計との比較を行うことになる。

2 本記事の対象と基準日

本記事は,令和8年10月4日に確認した国税庁,厚生労働省,総務省及び裁判所の公表資料を基に,統計を取り違えないための確認手順を説明するものである。
個別事件でどの統計・区分を採用すべきかという判断は,事件の争点と証拠関係によって異なる。
統計の公表年だけで選択せず,対象年,観察期間,集計の単位及び金額の定義まで確認する必要がある。

第2 民間給与実態統計と賃金センサスの違い
1 民間給与実態統計の「平均給与」

国税庁の令和7年分民間給与実態統計調査によると,1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円である。
これは,民間の事業所に勤務する給与所得者についての集計であり,全日本人の所得,公務員を含む全就業者の収入,個人事業主の事業所得又は世帯年収の平均ではない。

調査上の用語の説明では,給与は給料・手当と賞与から構成され,給与所得控除前の収入金額である。
非課税の通勤手当等は含まれないため,手取り額とも,支給項目を区別しない給与明細の総支給額とも,無条件に一致するとは限らない。
複数の勤務先がある人の実年収を確認するときは,各勤務先の資料を集め,重複計上や集計漏れを防ぐことが必要である。

民間給与実態統計調査は,事業所を抽出し,その事業所に属する給与所得者を調べる二段抽出である。
同一人が年中に複数の事業所に勤務してそれぞれから給与を得た場合,公表統計上も各事業所の給与所得者として複数人に数えられ得る。
この母集団,集計単位及び抽出率の読み方は,国税庁の税務統計の読み方―民間給与・会社・申告所得税の標本調査と税務調査事績(AI作成)で整理している。

2 賃金センサスの月額と賞与

賃金センサスは,厚生労働省の賃金構造基本統計調査を指す。
令和7年調査の概要によると,令和7年6月分の賃金等を調査し,賞与・期末手当等は原則として令和6年1月から12月までの1年間を対象としている。
同じ調査の中でも,月額と賞与の観察期間は一致していない。

概況の用語の定義にいう「賃金」は,6月分の所定内給与額の平均であり,超過労働給与を除いた所得税等控除前の金額である。
詳細表には異なる給与項目があるため,「所定内給与額」なのか「きまって支給する現金給与額」なのか,年間賞与等を加えるのかを,採用する表の見出しで確かめる必要がある。
概況の月額を単に12倍した金額を,賞与を含む年間給与と同じものとして扱ってはならない。

(続きを読む...)損害賠償・養育費で使う賃金統計の選び方―民間給与実態統計と賃金センサス,平均・中央値の違い(AI作成)

国際養育費の請求と回収―準拠法・日本の裁判管轄・外国裁判の承認と強制執行(AI作成)

目次

第1 最初に決める四つの事項1 相手が国外へ移住した場合はどうするか第2 誰の権利を,どの手続で行使するか第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか第4 養育費の準拠法を決める第5 外国の養育費裁判を日本で使う第6 日本の判断を外国で回収に使う場合第7 日本国内の財産から回収する場合第8 受任時にそろえる資料第9 関連記事第10 出典と調査範囲

国際的な養育費事件では,「どの国の法で支払義務を判断するか」が分かっても,直ちにお金を回収できるわけではない。誰が誰に請求するのか,日本の裁判所に管轄があるのか,既存の外国裁判を利用できるのか,債務者の財産がどの国にあるのかを順に確認する。本記事は,令和8年10月1日現在の日本法と裁判所の公開資料を基礎に,受任から回収までの判断順序を整理する。

第1 最初に決める四つの事項

最初に,①請求権者と相手方,②新たな取決め又は裁判が必要か,③日本と外国のどちらで裁判をし,どちらの財産から回収するか,④適用される法律と既存裁判の効力を記録する。国際裁判管轄,準拠法,外国裁判の承認,強制執行は別の判断である。日本法が準拠法となっても日本で裁判できるとは限らず,日本で裁判できても外国にある給与や預金を日本の執行手続だけで差し押さえることはできない。

1 相手が国外へ移住した場合はどうするか

海外へ移住したという事実だけでは,請求や回収の可否は決まらない。
養育費を定めた文書の有無,日本又は外国で請求するための管轄,適用される法,外国での承認・執行及び財産所在地を順に確認する必要がある。

外国の国内の徴収・立替制度が,日本に住む親子にも同じ条件で利用できるとは限らない。
また,日本は確認日現在の2007年ハーグ養育費条約の締約状況表(https://www.hcch.net/en/instruments/conventions/status-table/?cid=131)に締約当事者として掲載されていないため,相手国が締約国であることだけで中央当局間の経路を前提にしない。

各国の制度の役割を横断して比較したい場合は,養育費法制の国際比較を参照されたい。
本記事の第3以下では,個別の請求と回収に必要な法的段階を説明する。

第2 誰の権利を,どの手続で行使するか

離婚に伴い監護親が他方の親へ子の監護費用の分担を求める場合,子自身の扶養料請求権を行使する場合,既にある外国裁判に基づいて支払を求める場合では,権利者,申立人,必要な書類及び手続が異なる。受任時には,合意書,調停調書,審判書,判決書のどれがあるか,その文書で誰が債権者とされ,どの期間・金額の支払が命じられているかを先に読む。

扶養義務の準拠法に関する法律6条は,扶養権利者のためにその権利を行使できる者の範囲等を扶養義務の準拠法に委ねる。親権者や監護者であるというだけで,常に自己名義で子の扶養請求権を行使できると決めない。外国の親権・監護裁判の効力,子の手続行為能力,法定代理及び利益相反も区別して調べる。日本の家事事件での申立人は,監護費用分担の手続か子の扶養請求の手続かに応じて確認する。

第3 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか

離婚訴訟に子の監護費用の分担に関する裁判を附帯して求める場合は,人事訴訟法3条の4を確認する。これとは別に養育費又は扶養について審判を求める場合,家事事件手続法3条の10は,申立人でない扶養義務者,又は扶養権利者(監護費用分担では子の監護者若しくは子)の住所が日本国内にあることを管轄原因とする。住所がないか知れないときは居所を確認する。調停の国際裁判管轄は同法3条の13,特別の事情による申立ての却下は同法3条の14で別に確認する。

ここでいう管轄の住所・居所と,後述する準拠法の連結点である常居所を混同しない。子が日本国籍であること,日本に一時滞在したことだけで日本の管轄を断定せず,住所の資料,転居の経緯,相手方の所在,証拠の所在地をそろえる。日本に国際裁判管轄があると分かった後も,どの家庭裁判所へ申し立てるかという国内の土地管轄を別に確認する。神戸家庭裁判所の案内も,離婚に伴う養育費の管轄と準拠法を分けて示している。

第4 養育費の準拠法を決める

親子間の扶養義務の準拠法は,親権等の親子関係を扱う通則法32条から直ちに決めず,扶養義務の準拠法に関する法律2条を確認する。扶養権利者の常居所地法が第一順位であり,その法によって扶養を受けられなければ当事者の共通本国法,それでも扶養を受けられなければ日本法へ進む。単に前順位法による金額が低いという理由で,次の法を自由に選べるわけではない。

子が重国籍の場合,扶養法には通則法38条1項のような国籍一本化規定がない。共通に有する国籍の法が共通本国法となり得ること,その判断が同法2条1項ただし書の解釈であることを確認する。扶養法2条2項は重国籍者の特則ではなく,日本法へ進むための規定である。外国法で扶養を受けられるかを判断する際は,成年年齢,教育中の子への扶養,障害,期間及び権利行使者を,条文の施行日とともに調べる。詳しくは国際扶養の準拠法を参照されたい。

第5 外国の養育費裁判を日本で使う

外国に養育費を命じる裁判があるときは,新たな日本の本案裁判を起こす前に,その裁判の確定性,給付を命じる部分,債権者・債務者,対象期間を確認する。家事事件手続法79条の2は,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判等につき,性質に反しない限り民事訴訟法118条を準用する。同条の承認要件は,外国裁判所の裁判権,敗訴者への適法な呼出し又は応訴,内容と手続の公序,相互の保証である。外国で裁判を得たことだけで日本における効力を断定しない。

承認され得ることと,その裁判に基づき日本で強制執行できることも別である。民事執行法24条による執行判決の要否・管轄を確認する。家事事件の裁判に係る執行判決を求める訴えは,原則として家庭裁判所が管轄する。執行判決を得た後,国内の給与・預金等について債務名義に基づく執行を検討する。外国の文書が判決・審判・公的機関の判断のどれに当たるか,給付部分が確定しているかは,原文と外国法資料で確認する。

中国の人民法院の判決又は調解書に養育費の支払が定められている場合も,日本で当然に執行できるわけではない。
家事事件手続法79条の2,民事訴訟法118条及び民事執行法24条を確認し,身分関係の部分と金銭給付の部分を分けて検討する必要があるため,詳しくは中国の養育費(抚养费)の法制度―金額・支払終期・未払いと日中間の請求・執行を参照されたい。

フィリピンのFamily Courtその他の裁判所が養育費を命じた場合も,日本で当然に執行できるわけではない。
家事事件手続法79条の2,民事訴訟法118条及び民事執行法24条により,外国裁判所の裁判権,通知・応訴,公序,相互の保証,確定及び執行判決を確認する必要があるため,詳しくはフィリピン法の養育費―金額・請求時期・何歳まで・日比間の承認と執行を参照されたい。

第6 日本の判断を外国で回収に使う場合

債務者の給与や預金が外国にしかないときは,日本の調停調書や審判・判決を得るだけでは回収工程は終わらない。執行先国でその判断が承認又は執行の対象になるか,同国の手続,必要な確定証明・送達記録・翻訳及び現地代理人を確認する。日本の執行判決や差押命令を外国の財産へそのまま及ぼすとは説明しない。

(続きを読む...)国際養育費の請求と回収―準拠法・日本の裁判管轄・外国裁判の承認と強制執行(AI作成)

未成年子による扶養料請求の法定代理と利益相反―単独親権・共同親権・特別代理人の実務(AI作成)

目次

第1 結論
第2 最初に区別すべき二つの請求
第3 未成年の子に手続行為能力はあるか
第4 誰が法定代理人になるか
第5 相手方と親権者の組合せによる類型別整理
第6 四つの「代理人」を区別する
第7 兄弟姉妹・並行請求・和解における利益相反
第8 共同親権施行後の注意点
第9 申立前の実務チェックリスト
第10 子の意思の把握
第11 国際扶養事件では準拠法を別に確認する
第13 まとめ

◯以下の記事も参照してください。
・ 父母間の養育費合意は子自身の扶養料請求を妨げるか―免除条項・事情変更・二重請求の整理(AI作成)
・ 親と未成年の子の利益相反と特別代理人―遺産分割・相続放棄・担保提供の判断基準と代理権の濫用(AI作成)
・ 訴訟能力,訴状等の受送達者,審判前の保全処分及び特別代理人(AIリライト)

第1 結論

未成年の子が父又は母に民法877条以下の扶養料を請求する場合,申立人は子であり,金銭給付を求める通常の扶養請求では,子は法定代理人を通じて手続を行うのが原則である。子と同居している,日常の監護をしている,又は離婚時に監護者と定められたというだけで,その親に当然に法定代理権が生じるわけではない。まず親権者又は未成年後見人を確認する必要がある。

次に,法定代理人となるべき者と子との間に利益相反がないかを確認する。典型例は,子が扶養料を請求する相手方自身が親権者である場合である。この場合,その親が子を代理して自分を相手に申し立てることはできず,民法826条の特別代理人が問題となる。共同親権者の一方だけが相手方である場合も,「他方の親だけで足りる」と即断せず,非利益相反の親と特別代理人との共同代理の要否を検討する。

弁護士を選任しても,その前提となる法定代理権の欠缺又は利益相反が当然に治癒されるわけではない。また,民法826条の特別代理人,家事事件手続法19条の手続上の特別代理人及び同法22条・23条の手続代理人は,根拠・選任主体・権限が異なる。

第2 最初に区別すべき二つの請求

請求権利主体・当事者主な根拠通常の申立人

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父母間の養育費合意は子自身の扶養料請求を妨げるか―免除条項・事情変更・二重請求の整理(AI作成)

◯以下の記事も参照してください。
・ 養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)
・ 養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)
・ 養育費は18歳・20歳・大学卒業のいつまでか―未成熟子と支払終期(AI作成)
・ 未成年子による扶養料請求の法定代理と利益相反―単独親権・共同親権・特別代理人の実務(AI作成)

目次

第1 結論―父母間の合意と子自身の権利は同じではない
第2 養育費分担請求と扶養料請求の法的な違い

1 父母間の養育費分担
2 子自身の扶養料請求
3 権利を処分できないことと具体額が残ることは別問題である

第3 父母間の合意が子自身の請求に及ぼす影響

1 原則―父母だけの合意で子の抽象的な権利を消滅させることはできない
2 実際に扶養が履行されていれば具体的な不足額がないことがある
3 同じ費用の二重取得は認められない

第4 合意条項ごとの検討

1 定額の養育費合意
2 養育費を支払わない旨の合意
3 清算条項・今後請求しない旨の条項
4 大学費用・医療費等の特別費用

第5 事情変更と見直し
第6 家裁裁判例から見た判断要素

(続きを読む...)父母間の養育費合意は子自身の扶養料請求を妨げるか―免除条項・事情変更・二重請求の整理(AI作成)

医師など高収入共働き夫婦の離婚実務―婚姻費用,養育費,財産分与,医療法人及び監護の整理(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 高収入共働きの離婚が複雑になる理由2 結論第2 最初に四つの時点を固定する1 別居開始時2 財産形成の基準時3 婚姻費用・養育費の収入基準年4 離婚成立と請求期限第3 婚姻費用と養育費の収入評価1 給与収入の合算2 事業所得と経費3 高額所得と算定表の範囲4 教育費・住宅費・特別費用第4 財産分与の資産一覧1 個人名義の金融資産2 不動産と住宅ローン3 医療機器,診療所及び事業資産第5 医療法人・関係会社と個人財産の区別1 法人財産はそのまま夫婦の財産ではない2 医療法人の類型を確認する3 家族労働と役員報酬第6 子の監護と勤務体制1 勤務表を具体化する2 監護と収入の二重計上を避ける3 子を情報の運び手にしない第7 資料保全と開示の実務1 収入資料2 資産・負債・法人資料第8 合意書・調停条項の確認1 支払条項2 財産分与と税・法人手続第9 関連記事第10 出典・参考資料1 法令2 裁判所の資料
第1 本記事の対象と結論
1 高収入共働きの離婚が複雑になる理由

医師,歯科医師,経営者,士業その他の専門職同士の共働き夫婦では,両方に高い収入があるため争点が少ないように見える。実際には,給与収入と事業収入の併存,日当直・スポット勤務の変動,当直回数の変化,可変給与,法人からの報酬,留保金,非上場株式,退職金,借入金,教育費,夜間・休日勤務と監護の分担等が重なる。

2 結論

この類型では,「高収入者だから算定表より高くなる」又は「共働きだから生活費は各自負担である」と単純化しないことが重要である。①現在の生活費の分担,②子の居所・監護・医療・教育,③収入の評価,④婚姻中に形成された財産,⑤個人と会社・医療法人の財産の区別,⑥将来のキャリアと監護体制を別々の表にし,その後に相互の影響を確認する。

第2 最初に四つの時点を固定する
1 別居開始時

婚姻費用,住宅ローン,子の居所,生活費の支払及び面会交流について,別居を開始した日の前後で事実関係が大きく変わる。別居日だけでなく,合意の有無,住所の変更,子の引渡し,鍵と財産の移動及び生活費の支払開始日を時系列にする。

2 財産形成の基準時

財産分与では,夫婦の協力による財産形成が実質的に終了した時点が問題となる。長期別居の後に大きな収入,株式価値の変動,施設の開業,借入又は資産移転があると,「どの時点の財産が分与対象か」と「いつの価値で評価するか」を分けて検討する必要がある。

3 婚姻費用・養育費の収入基準年

確定申告書や源泉徴収票は過去一年間の収入を示すが,当直回数,勤務先,雇用形態又は休業の変化がある場合,過去一年だけで将来の基礎収入を評価できないことがある。数年分の収入及び最近の勤務実態を並べ,一時的な要因と継続的な変化を分ける。

4 離婚成立と請求期限

婚姻費用は婚姻中の生活保持の問題であり,離婚後の養育費とは別である。財産分与は離婚後に請求期間があるため,調停,裁判又は公正証書で合意する場合に,未解決の財産が残っていないかを確認する。

第3 婚姻費用と養育費の収入評価
1 給与収入の合算

複数の病院・クリニックから給与を得ている場合,主たる勤務先の源泉徴収票だけでは収入の全体が分からない。住民税課税証明書,確定申告書,青色申告決算書,支払調書,給与明細,賞与明細及び当直・非常勤先の支払記録を総合する。

2 事業所得と経費

開業医,個人事業主又は自営業者では,売上ではなく事業上の必要経費を控除した所得が出発点となる。ただし,税務上の経費が生活費分担の計算で常に全額控除されるとは限らない。減価償却,事業専従者給与,親族・関係会社への支払,家事関連費との按分及び一時的な投資を個別に見る。

3 高額所得と算定表の範囲

裁判所が公表する養育費・婚姻費用算定表は,父母又は夫婦の収入と子の人数・年齢に応じた標準額を迅速に把握するための道具である。収入が表の上限を大きく超える場合,上限値を用いるか,標準算定方式を応用するか,実際の生活状況や貯蓄部分をどう評価するかが問題となる。自動的な答えはなく,個別事情と最新の裁判実務を確認する必要がある。

4 教育費・住宅費・特別費用

私立学校,学習塾,留学,医学部等への進学,習い事,高額の医療費又は住居費は,標準的な生活費にどこまで含まれるかが問題となる。婚姻中の合意,従前の支出,子の意向と適性,父母の収入・資産及び今後の支払能力を資料で示す。

第4 財産分与の資産一覧
1 個人名義の金融資産

預貯金,株式,投資信託,外貨,暗号資産,保険の解約返戻金,確定拠出年金,企業年金,職員共済,退職金見込額及び従業員持株会等を一覧にする。婚姻前財産,相続・贈与で取得した財産及びそれらの代償財産は,婚姻中に両方で形成した財産と区別する。

2 不動産と住宅ローン

登記名義,取得時期,頭金の原資,現在価値,ローン残高,団体信用生命保険,事業での利用,売却可能性及び離婚後の居住者を整理する。所有名義とローンの債務者を分け,財産分与の合意だけで金融機関に対する債務者が当然に変わらないことに注意する。

3 医療機器,診療所及び事業資産

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給与収入が低くても金融資産が多い場合の婚姻費用・養育費-配当・売却益・含み益・元本の扱い(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と調査基準日2 金融資産を算定へ反映する基本的な考え方第2 算定表と資産の関係1 算定表の出発点は双方の年収である2 婚姻費用では民法が資産を明示している3 資産と収入を分けて主張する第3 配当・利息・投資信託の分配金1 継続する株式配当2 特有財産から生じた収益3 利息及び投資信託の分配金第4 株式等の実現益と含み益1 売却代金と売却益を区別する2 一時的な実現益3 反復継続する売買益4 未実現の含み益第5 金融資産の元本と本来得られる収入1 元本取崩しの原則と例外2 受給できるのに受給していない収入3 一人会社の内部留保と私的支出4 金融資産を考慮する三つの段階第6 婚姻費用と養育費で同じ結論になるとは限らない1 共通する出発点2 婚姻費用における資産3 養育費における資産第7 資料収集と主張の組み立て1 まず集める資料2 複数年の集計と二重評価の防止3 相手方が保有する資料の取得4 主張の順序と追加調査の停止基準第8 関連する山中弁護士ブログの記事1 算定表及び高額所得者2 算定結果が不自然な場合3 変動収入・投資信託分配金・非給与所得の換算4 一人会社の役員報酬・貸付金と非課税世帯第9 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 裁判所の司法研究及び説明資料4 法務省委託の調査研究報告書5 投資信託の分配金に関する公表資料
第1 この記事の対象と結論
1 対象と調査基準日
(1) 低所得・高資産の事案

本記事は,給与収入は低いものの,多額の株式,投資信託,債券又は預貯金を有する当事者について,婚姻費用又は養育費を算定するときに何を収入として扱うかを説明するものである。
金融資産から生じる配当・利息,売却によって確定した利益,売却前の含み益及び金融資産の元本は,それぞれ性質が異なるため,分けて検討する必要がある。

(2) 高額所得者の記事との違い

本記事の調査基準日は令和8年9月14日であり,同日現在の法令,裁判所公表資料及び確認できた裁判例を対象としている。
現実の年間収入が算定表の上限を超える場合は「高額所得者の婚姻費用(AI作成)」及び「養育費算定表の上限を超える高額所得者の計算方法-年収2000万円超の裁判例と実務(AI作成)」が扱う問題であり,本記事の低所得・高資産の問題とは区別される。

2 金融資産を算定へ反映する基本的な考え方
(1) 収入となるもの

現実に反復継続して受け取る配当は,算定の基礎となる収入へ含められることがある。
株式等の売却益は,売却代金全額ではなく,取得費及び手数料等を踏まえた損益を確認した上で,一時的な資産処分か,給与に代わる継続的な収益かを検討することになる。

(2) 直ちに年収とならないもの

含み益は売却前の評価差額であり,金融資産の元本は配当等を生み出す資産そのものであるから,いずれも配当と同じ意味での年間収入ではない。
本記事で確認した裁判例及び裁判所公表資料には,金融資産の時価へ一定の期待利回り又は取崩率を掛け,その金額を一律に年収とする標準的な算定式は示されていない。

第2 算定表と資産の関係
1 算定表の出発点は双方の年収である

裁判所の「養育費・婚姻費用算定表について(説明)」によれば,算定表は,縦軸を義務者の年収,横軸を権利者の年収とし,子の人数及び年齢等に応じた標準額を示すものである。
給与所得者については源泉徴収票の「支払金額」を,自営業者については確定申告書の「課税される所得金額」に実際には支出されていない控除等を加えた額を,それぞれ年収認定の出発点としている。

源泉徴収票又は所得証明書だけでは,申告不要又は非課税の配当,証券口座内で受け取った分配金及び株式等の譲渡損益を把握できないことがある。
金融資産が問題となる事案では,税務書類に加えて証券会社の資料及び生活口座への入出金を確認する必要がある。

2 婚姻費用では民法が資産を明示している

民法760条は,夫婦が「その資産,収入その他一切の事情を考慮して」婚姻から生ずる費用を分担すると定めている。
したがって,婚姻費用では資産も考慮事情となるが,この条文から資産時価の一定割合を算定表の年収欄へ入力する計算方法が当然に導かれるわけではない。

3 資産と収入を分けて主張する

金融資産に関する主張は,①通常の年間収入となる配当・利息,②継続性の評価を要する実現益,③未実現の含み益,④元本,⑤本来受け取ることができる収入の順に分けると,争点を明確にできる。
資産を保有しているという一事だけで年収を決めるのではなく,どの金額がいつ現金化され,生活費へ充てられていたかを示す必要がある。

第3 配当・利息・投資信託の分配金
1 継続する株式配当

(続きを読む...)給与収入が低くても金融資産が多い場合の婚姻費用・養育費-配当・売却益・含み益・元本の扱い(AI作成)

配当・年金・投資利益を婚姻費用・養育費の給与年収へ換算する方法-職業費の二重控除を防ぐ(AI作成)

目次第1 非給与所得を換算する必要がある理由1 算定表の給与欄と自営業欄は同じ金額を意味しない2 換算は所得の実質をそろえる作業である第2 令和元年版標準算定方式の構造1 基礎収入2 職業費3 税引前額を出発点とする第3 株式配当を給与収入へ換算した裁判例1 東京家庭裁判所令和元年9月6日審判2 具体的な計算式3 保有株数減少後の換算4 特有財産からの配当第4 給与を事業所得型へ換算して合算した裁判例1 福岡家庭裁判所令和4年9月13日審判2 具体的な計算式3 この方法の意味第5 三つの換算方法1 非給与所得を給与収入へ換算する方法2 給与を事業所得型へ換算する方法3 所得類型ごとに基礎収入を計算して合算する方法第6 所得別の注意点1 株式配当2 投資信託の分配金3 年金4 不動産所得5 証券売買益及び暗号資産所得第7 換算で生じやすい誤り1 税引後入金額をそのまま使う2 すべてを給与額へ単純加算する3 事業所得から職業費を二重控除する4 古い裁判例の係数をそのまま使う第8 計算書の作り方1 所得ごとの台帳2 複数案を示す場合3 端数処理第9 提出資料1 給与及び年金2 配当及び投資利益3 事業及び不動産第10 関連する山中弁護士ブログの記事1 算定表及び給与収入2 金融資産及び事業所得第11 出典・参考資料1 裁判所公表資料2 裁判例
第1 非給与所得を換算する必要がある理由
1 算定表の給与欄と自営業欄は同じ金額を意味しない
(1) 対象と調査基準日

本記事は令和8年9月14日を調査基準日とし,令和元年版の標準算定方式及び判例秘書で全文確認した裁判例を基礎として,給与,配当,年金及び投資利益を同じ算定で扱う場合の換算方法を説明する。
裁判例が用いた係数の再現と,別の年収帯又は事案へ応用するときの限界を区別する。

(2) 給与欄へ単純加算する問題

婚姻費用及び養育費の算定表には,給与所得者の年収目盛りと自営業者の年収目盛りがある。
給与収入には通常,勤務のための被服費,交通費,交際費等の職業費が必要であるのに対し,株式配当,預金利息又は年金の受給には同じ意味での職業費を要しない。
このため,給与収入と配当等を額面のまま足し,合計額を給与年収欄へ入れると,配当等からも給与所得者の職業費相当額を控除する結果となることがある。
反対に,必要経費を控除する前の売上高を自営業収入へ加えると,実際の支払能力を過大に認定することになる。

2 換算は所得の実質をそろえる作業である

換算の目的は,税務上の所得区分を変更することではなく,異なる所得から生活費へ回すことのできる基礎収入を同じ物差しで比較することにある。
給与所得,事業所得,配当,年金及び投資利益のどれについても,公租公課,職業費及び特別経費をどの段階で控除済みかを確認する必要がある。
本記事で示す裁判例の係数は,各決定時の算定方式及び当該年収帯に基づくものである。
別の年収帯又は令和元年版算定表へ係数だけを機械的に移植することは適切ではない。

第2 令和元年版標準算定方式の構造
1 基礎収入

基礎収入は,総収入から公租公課,職業費及び特別経費に相当する標準的な割合を控除し,生活費へ配分できる部分として推計される金額である。
令和元年版の基礎収入割合は,給与所得者について総収入の38%から54%,自営業者について48%から61%であり,収入帯によって異なる。
給与所得者と自営業者の割合が異なるのは,確定申告上の事業所得では一定の必要経費が既に控除されている一方,給与の支払金額からは職業費が控除されていないことなどによる。

2 職業費

職業費とは,給与所得者が就労のために通常必要とする被服費,交通費,通信費,交際費等を統計的に推計したものである。
当事者が現実に同額を支出したことを前提とする実額控除ではない。
配当又は年金に給与所得者と同じ職業費は通常必要ない。
したがって,これらを給与収入相当額へ換算するときは,職業費が不要であることを反映する必要がある。

3 税引前額を出発点とする

配当又は利息が源泉徴収されている場合,預金又は証券口座への入金額は税引後額である。
算定表の給与年収が所得税等を控除する前の支払金額を用いることとの整合上,原則として税引前の配当又は利息額を確認する。
年間取引報告書,配当金計算書又は支払通知書により,税引前額,源泉徴収税額及び実受取額を分ける。

(続きを読む...)配当・年金・投資利益を婚姻費用・養育費の給与年収へ換算する方法-職業費の二重控除を防ぐ(AI作成)

投資信託の普通分配金・特別分配金は婚姻費用・養育費の収入になるか-元本払戻金と二重計上(AI作成)

目次第1 投資信託の分配金に関する結論1 普通分配金と特別分配金を分ける2 同じ分配金でも投資家ごとに区分が異なる第2 普通分配金と元本払戻金の仕組み1 普通分配金2 元本払戻金(特別分配金)3 個別元本が変動する場合第3 国税庁及び資産運用業協会の説明1 国税庁の取扱い2 資産運用業協会の説明第4 普通分配金と特別分配金を扱った裁判例1 東京高等裁判所平成27年1月26日判決2 家事事件への射程3 家事事件の直接裁判例の確認状況第5 婚姻費用・養育費での具体的な処理1 普通分配金を収入へ算入する場合2 元本払戻金を所得へ算入しない場合3 元本取崩しとして別枠で考慮する場合第6 再投資型及び分配金なし型の投資信託1 普通分配金を再投資した場合2 分配金なし型の含み益第7 上場投資信託等との違い1 すべての商品に同じ区分があるわけではない2 外国投資信託及び外貨建て商品第8 必要資料1 最低限確認する資料2 一覧表の作り方第9 主張書面での整理1 普通分配金を算入する側2 元本払戻金であると反論する側3 共通する注意第10 関連する山中弁護士ブログの記事1 金融資産全体の扱い2 算定表への換算第11 出典・参考資料1 所管行政機関及び業界団体の資料2 裁判例
第1 投資信託の分配金に関する結論
1 普通分配金と特別分配金を分ける
(1) 対象と調査基準日

本記事は令和8年9月14日を調査基準日とし,追加型株式投資信託の普通分配金及び元本払戻金(特別分配金)を婚姻費用・養育費で区別する方法を扱う。
商品性及び税務上の区分は国税庁及び資産運用業協会の公表資料で確認し,家事事件への接続は判例秘書で確認した裁判例の射程を超えない範囲に限定する。

(2) 分配金の算定上の区分

投資信託の分配金には,課税対象となる普通分配金と,元本の一部払戻しに相当する元本払戻金(特別分配金)がある。
婚姻費用又は養育費では,分配金の受取総額をそのまま年間収入とせず,分配金計算書により両者を区別する必要がある。
普通分配金は,現実に受領し,今後も反復継続すると見込まれる場合,配当又は利息に近い非稼働所得として収入算入を検討する。
元本払戻金は投資元本の返還であるから,原則として年間所得へ機械的に加算せず,資産の取崩しとして別に検討する。

2 同じ分配金でも投資家ごとに区分が異なる

普通分配金と元本払戻金の区分は,ファンド全体で一律に決まるものではない。
同じファンドから同じ日に同じ金額の分配を受けても,投資家ごとの購入価額である個別元本が異なれば,ある投資家には全額が普通分配金となり,別の投資家には一部又は全部が元本払戻金となることがある。
商品名,分配率又は運用報告書だけでは個人の区分を確定できない。
販売会社が発行する分配金計算書及び個別元本の記録を確認する必要がある。

第2 普通分配金と元本払戻金の仕組み
1 普通分配金

追加型株式投資信託について,分配後の基準価額が投資家の個別元本を下回らない部分は,原則として普通分配金となる。
普通分配金は税法上課税対象とされ,株式投資信託では配当所得として扱われるのが通常である。
普通分配金を現金で受け取らず,自動再投資した場合でも,いったん普通分配金を受領した上で再投資したものとして課税される。
したがって,生活口座への現金入金がないという理由だけで,普通分配金の発生を見落とさないようにする。

2 元本払戻金(特別分配金)

分配後の基準価額が投資家の個別元本を下回る部分に対応する分配は,元本払戻金となる。
これは投資元本の一部返還であるため非課税とされ,受領後の個別元本は元本払戻金相当額だけ減額される。
元本払戻金を再投資する場合も,経済的には元本の一部払戻しを受けた後に新たな口数を購入することになる。
再投資したという事情によって,元本払戻金が収益へ変わるわけではない。

3 個別元本が変動する場合

同じ投資信託を異なる価格で追加購入した場合,個別元本は原則として移動平均により修正される。
相続,贈与,特別分配又は口座移管がある場合も,販売会社の記録上の個別元本を確認する必要がある。

(続きを読む...)投資信託の普通分配金・特別分配金は婚姻費用・養育費の収入になるか-元本払戻金と二重計上(AI作成)

変動する収入を婚姻費用・養育費で何年平均するか-歩合給・事業所得・証券売買益・暗号資産(AI作成)

目次第1 変動収入の平均期間に関する結論1 3年平均又は5年平均という一律のルールはない2 通常の確認順序第2 算定表が前提とする年間収入1 算定表は双方の総収入を出発点とする2 過去の実績と将来予測を区別する第3 期間選択の参考となる裁判例1 反復する暗号資産取引益を算入した審判2 構造変化後の資料から年額を推計した審判3 一時的な株式売却を収入から除外した決定4 現在の保有株数から将来配当を推計した審判第4 平均期間の選び方1 単年度を用いる場合2 3年平均を主位的試算とする場合3 5年平均を併記する場合4 中央値を併記する場合第5 所得類型ごとの調整後年間収入1 給与及び賞与2 事業所得3 証券売買益4 暗号資産取引益第6 具体的な計算方法1 単純平均2 現在の元本規模による補助試算3 感応度表を作る第7 給与収入と変動所得を合算する際の注意1 総収入を単純加算できない場合がある2 同じ利益を二重に評価しない第8 提出資料と主張の組み立て1 共通資料2 高い収入を主張する側3 低い収入を主張する側第9 関連する山中弁護士ブログの記事1 算定表及び給与年収2 金融資産及び事業所得第10 出典・参考資料1 裁判所公表資料2 裁判例
第1 変動収入の平均期間に関する結論
1 3年平均又は5年平均という一律のルールはない
(1) 対象と調査基準日

本記事は令和8年9月14日を調査基準日とし,令和元年版の標準算定方式及び判例秘書で全文確認した裁判例を基礎として,変動収入から現在及び近い将来の年間収入を推計する方法を扱う。
税務上の所得計算そのものではなく,婚姻費用又は養育費の算定に用いる収入期間の選択を対象とする。

(2) 固定的な平均期間の不存在

婚姻費用及び養育費は,父母又は夫婦の現在及び近い将来の収入を基礎として定めるものである。
歩合給,賞与,事業所得,証券売買益又は暗号資産取引益の変動が大きい場合でも,常に過去3年又は5年の平均を採用するという法令又は裁判例上の一律のルールはない。
複数年平均は,単年度の例外的な増減をならし,今後の支払能力を推計するための方法である。
したがって,何年分を使うかは,過去の収入が現在の就労状況,事業規模又は投資規模と同質であるかを確認して決める必要がある。

2 通常の確認順序

まず,直近1年の収入が通常年を代表しているかを確認する。
一時的な賞与,臨時受注,保有資産の一括売却又は相場の急騰等が含まれるときは,直近3年の推移を確認し,必要に応じて5年平均及び中央値も併記する。
他方,転職,退職,休職,事業廃止,投資元本の大幅な増減その他の構造変化がある場合は,古い年度を長く平均するほど現在の稼得能力から離れることがある。
この場合は,構造変化後の12か月又は24か月,直近の給与明細,事業計画,現在の保有資産等を用いて年額を推計することになる。

第2 算定表が前提とする年間収入
1 算定表は双方の総収入を出発点とする

裁判所の令和元年版算定表は,給与所得者については原則として源泉徴収票の「支払金額」を,自営業者については確定申告書の「課税される所得金額」を出発点とする。
ただし,自営業者については,青色申告特別控除等の現実に支出されていない控除を加算するなど,算定用の総収入へ修正する必要がある。
算定表へ入力するのは過去の税額を確定するための所得ではなく,今後の生活費負担能力を把握するための年間収入である。
このため,課税証明書又は確定申告書の数字が存在するだけで,その年度が当然に採用年度となるわけではない。

2 過去の実績と将来予測を区別する

過去の収入は,現在及び将来の収入を認定するための証拠である。
審理時点で既に退職しているのに退職前の高額給与をそのまま使うことも,反対に,意図的又は一時的な減収をそのまま固定することも適切ではない。
期間選択では,①勤務又は事業の継続性,②報酬又は取引を本人が調整できる程度,③季節変動,④一時的要因,⑤減収時期と申立時期との関係,⑥現在の契約及び保有資産を確認する。

第3 期間選択の参考となる裁判例
1 反復する暗号資産取引益を算入した審判

福岡家庭裁判所令和4年9月13日審判(令和4年(家)第3142号,判例時報2606号85頁,裁判所HP未掲載,判例秘書L07760034)は,令和3年分の確定申告書に暗号資産取引による雑所得443万2423円が記載されていた事案を扱った。
同審判は,暗号資産の売却又は交換を反復し,その都度利益を得ていたことから,その所得を一回的又は偶発的なものではないとして婚姻費用算定の基礎に含めた。

(続きを読む...)変動する収入を婚姻費用・養育費で何年平均するか-歩合給・事業所得・証券売買益・暗号資産(AI作成)

養育費のワンストップ執行手続とは-財産開示から給与差押えまでの一括申立てと,銀行口座が対象外である理由(AI作成)

第1 結論第2 制度の位置付けと施行時期1 改正前は三つの申立てを別々にする必要があった2 令和6年法律第33号による新設と経過措置第3 利用できる債権者1 対象となる請求権2 債務名義を有する債権者3 子の監護費用の先取特権を証する文書を提出した債権者第4 財産開示手続から入る場合1 申立ての要件と手続の流れ2 開示された給与債権に対する差押え3 債務者が財産を開示しなかった場合の市町村への情報提供命令第5 給与債権に係る情報取得手続から入る場合1 情報の提供を命じられる第三者2 3年以内に財産開示期日が実施されていること3 手続の流れ第6 差し押さえるべき給与債権を特定できない場合第7 銀行口座(預貯金)は対象外である1 条文と裁判所の書式による限定2 預貯金が対象から外された経緯3 国会答弁の表現の変化4 預貯金を差し押さえたい場合の手順第8 申立ての前後で注意すべき点1 ワンストップ執行手続を使わない場合の意思表示2 手数料の納付時期と額3 債務者に手続が知られる時点4 取下げの制限5 市町村の情報の基準時と自営業者の限界6 消滅時効との関係第9 どちらの入口を選ぶか第10 出典1 法令2 公文書(法制審議会資料・国会会議録)3 所管行政機関及び裁判所の解説・運用資料
第1 結論

令和8年4月1日から,養育費,婚姻費用その他の扶養義務等に係る請求権に基づいて財産開示手続又は給与債権に係る第三者からの情報取得手続を申し立てると,その申立てと同時に,これらの手続で判明した給与債権に対する差押命令の申立てもしたものとみなされるようになった(民事執行法167条の17第1項)。
裁判所は,この仕組みを「ワンストップ執行手続」と呼んでいる。

財産開示手続から入った場合に,債務者が財産を開示しなかったときは,債権者が別段の意思を表示しない限り,執行裁判所は,債務者の住所のある市町村に対し,勤務先等の給与に関する情報の提供を命じなければならない(同条2項)。
これにより,財産開示,勤務先の特定及び給与の差押えを,1回の申立てで連続して進めることができる。

もっとも,差押命令の申立てをしたものとみなされるのは,給与債権(民事執行法206条1項各号に規定する債権)に限られる。
銀行口座の預貯金は対象外であり,預貯金を差し押さえるには,預貯金債権に係る第三者からの情報取得手続(同法207条)と差押命令の申立てを別に行う必要がある。
財産開示から勤務先の特定,銀行口座の差押えまでを1回の申立てで行えるという理解は,銀行口座の部分について条文と一致しない。

本記事は,令和8年9月11日時点の法令,裁判所の手続案内及び公表されている立法資料に基づき,この制度を利用できる債権者,二つの入口(財産開示手続と情報取得手続),給与債権に限られた経緯及び申立ての前後で注意すべき点を整理するものである。
養育費の回収方法全体(履行勧告,給与差押えの範囲,将来分の差押え,消滅時効等)は養育費を払わない場合の回収方法―履行勧告・給与差押え・先取特権・ワンストップ執行(AI作成)で,先取特権の要件と上限額は養育費債権の先取特権とは―対象範囲,子1人当たり月額8万円の上限及び差押え(AI作成)で説明している。

第2 制度の位置付けと施行時期
1 改正前は三つの申立てを別々にする必要があった

強制執行を申し立てるには,差し押さえる財産を特定する必要がある。
相手の勤務先や財産が分からない場合は,財産開示手続や第三者からの情報取得手続を使って財産を調べ,判明した財産に対する差押えを改めて申し立てることになる。
法務省民事局長は,令和6年4月5日の衆議院法務委員会で,これらの手続についてそれぞれ別個に申立てをしなければならず,一人親家庭にとっての負担となっているとの指摘があると答弁しており,ワンストップ執行手続はこの申立ての負担を軽減するために設けられた。

2 令和6年法律第33号による新設と経過措置

民事執行法167条の17は,民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)による改正で新設された。
同法は令和6年5月24日に公布され,167条の17は令和8年4月1日に施行された。

同法附則7条は,改正後の167条の17(193条2項において準用する場合を含む。)の規定は,施行日以後に申し立てられる民事執行の事件について適用すると定めている。
基準は申立ての日であるから,令和8年3月31日以前に成立した調停調書や公正証書に基づく場合でも,令和8年4月1日以後に申し立てるのであれば,この仕組みを利用できると考えられる。
東京地方裁判所民事執行センターの書式案内も,令和8年3月31日までの養育費に関する調停調書,審判書,公正証書等がある場合を,債務名義に基づく申立書の例として挙げている。

これに対し,子の監護費用の先取特権は,施行日以後に生じた各期の定期金についてのみ適用される(同法附則3条1項)。
そのため,先取特権に基づいてワンストップ執行手続を利用する場合に請求できるのは,令和8年4月1日以後に生じた分に限られる。

第3 利用できる債権者
1 対象となる請求権

対象となるのは,民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務に係る請求権であり,具体的には次の四つである。
①夫婦間の協力及び扶助の義務(民法752条)
②婚姻から生ずる費用の分担の義務(民法760条)
③子の監護に関する義務(民法766条及び766条の3。749条,771条及び788条において準用する場合を含む。)

(続きを読む...)養育費のワンストップ執行手続とは-財産開示から給与差押えまでの一括申立てと,銀行口座が対象外である理由(AI作成)

養育費債権の先取特権とは―対象範囲,子1人当たり月額8万円の上限及び差押え(AI作成)

第1 子の監護費用の先取特権とは第2 先取特権の対象となる債権1 確定期限の定めがある定期金債権であること2 養育費だけでなく婚姻費用等も対象になり得る第3 上限は子1人当たり月額8万円である第4 優先順位と効力第5 債務名義がなくても差押えを申し立てられる1 私的な合意書がある場合2 法定養育費の場合第6 差押財産が分からない場合第7 令和8年4月1日前の取決めと未払分第8 申立て前の確認事項第9 出典

養育費債権の先取特権は,養育費等のうち子1人当たり月額8万円までの部分に認められる一般先取特権である。
私的な合意書しかない場合でも,先取特権の存在を証する文書を提出できれば,債務名義を取得せずに担保権実行として差押えを申し立てられる。

第1 子の監護費用の先取特権とは

子の監護費用の先取特権は,養育費等の一定部分について,原則として一般債権者に優先して弁済を受けることができる権利である(民法306条3号・308条の2)。
令和8年4月1日以後に生じた各期の定期金に適用される。

この制度により,父母間の私的な合意書しかない場合でも,その書面によって先取特権の存在を証明できれば,担保権実行として給与や預貯金等の差押えを申し立てることができる。
ただし,先取特権が養育費の額を決めるわけではなく,養育費債権が成立していること,確定した支払期限があること及び未払となったことが前提である。

第2 先取特権の対象となる債権
1 確定期限の定めがある定期金債権であること

先取特権が及ぶのは,民法308条の2が掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権のうち,子の監護に要する費用として相当な額である。
支払額だけでなく,「毎月末日限り」など各回の支払期限を明確に決めておくことが重要である。

一括払いの解決金,臨時の学費又は医療費などが当然に同条の定期金債権に含まれるとは限らない。
合意内容が定期金債権に当たるかは,書面の文言と支払設計を確認して判断する必要がある。

2 養育費だけでなく婚姻費用等も対象になり得る

対象となる義務は,夫婦間の協力及び扶助,婚姻費用の分担,離婚後の子の監護費用並びに親族間の扶養である。
したがって,離婚後の養育費のほか,婚姻費用分担金又は扶養料のうち子の監護に要する費用に対応する部分も対象になり得る。

婚姻費用の先取特権と回収方法は,婚姻費用が支払われない場合-履行勧告・給与差押え・令和8年の先取特権(AI作成)で説明している。

第3 上限は子1人当たり月額8万円である

省令1条は,先取特権が及ぶ額を,月額8万円に定期金によって扶養を受けるべき子の数を乗じた額としている。
子が2人であれば月額16万円,3人であれば月額24万円が上限となる。

この8万円は,家庭裁判所が認定すべき養育費の標準額でも,義務者が常に支払うべき額でもない。
合意又は審判による養育費が子1人当たり月額5万円であれば,先取特権の対象もその債権額を超えない。
反対に,子1人について月額10万円の養育費債権があっても,先取特権が及ぶのは月額8万円までであり,残る月額2万円については先取特権による優先権がない。

上限を超える部分も養育費債権として消滅するわけではない。
超過部分を含めて強制執行するためには,調停誸書,審判書又は執行認諾文言付き公正証書などの債務名義を確認する実益がある。

第4 優先順位と効力

一般先取特権が競合する場合の順位は,民法306条各号の順序による(民法329条1項)。
子の監護費用は,共益の費用及び雇用関係に次ぐ順位であり,葬式の費用及び日用品の供給より先順位となる。

先取特権があるからといって,常に全額を回収できるわけではない。
差し押さえた財産の価額,他の担保権又は先取特権の有無,租税その他の優先関係及び手続費用によって,実際の配当額は変わる。

一般先取特権は,債務者の総財産に及ぶが,不動産については登記をした第三者との関係に制限がある(民法336条)。
実務では,給与又は預貯金に対する債権差押えが中心になるため,対象財産と他の差押えの有無を確認する必要がある。

第5 債務名義がなくても差押えを申し立てられる
1 私的な合意書がある場合

債権を目的とする担保権の実行は,担保権の存在を証する文書が提出されたときに開始する(民事執行法193条1項)。
裁判所の家事事件Q&Aも,父母間の私的な合意書だけがある場合でも,月額8万円に子の数を乗じた額を上限として担保権実行を申し立てられると案内している。

申立てでは,合意書だけでなく,父母と子の関係,支払期限,未払の発生及び子の人数等を示す資料が必要となる。
口頭合意しかなく,先取特権の存在を証する文書を提出できない場合は,直ちに同じ方法で差押えができるとは限らないため,調停その他の方法による債務名義の取得を検討すべきである。

令和8年4月23日の参議院法務委員会では,最高裁判所事務総局民事局長が,父母間で取り決めた養育費の支払を求める担保権実行には担保権の存在を証する文書の提出が必要であり,提出された文書がこれに当たるかは個別の事案ごとに執行裁判所が判断すると答弁した。
同局長は,民事執行法上,印鑑が必要であるという法律上の要件にはなっていないとも答弁している。
押印がないことだけで申立てを断念する必要はないが,当事者,子,月額及び支払期限が読み取れない書面や,作成の真正が争われやすい書面では,執行裁判所の判断が分かれ得るため,提出前に記載内容を確認する必要がある。

養育費の合意書,公正証書及び調停調書の違いは,養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)で説明している。

2 法定養育費の場合

法定養育費にも先取特権が及ぶため,養育費を取り決めずに離婚した場合でも,令和8年4月1日以後の離婚等で要件を満たせば担保権実行を申し立てることができる。
執行裁判所は,法定養育費について必要があると認めるときは,差押命令を発する前に債務者を審尋できる(民事執行法193条3項)。

法定養育費の発生要件,月額及び支払期間は,法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)を参照されたい。

第6 差押財産が分からない場合

(続きを読む...)養育費債権の先取特権とは―対象範囲,子1人当たり月額8万円の上限及び差押え(AI作成)

法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)

第1 法定養育費は取決めまでの暫定的な養育費である第2 請求できるための要件1 養育費の取決めがないこと2 離婚時から引き続き子を主として監護していること3 離婚等が令和8年4月1日以後であること第3 金額は子1人当たり月額2万円である1 子の数を乗じて計算する2 離婚月及び終了月は日割りとなる第4 いつからいつまで請求できるか1 離婚の日から請求できる2 三つのうち最も早い日に終了する第5 支払能力がない場合と家庭裁判所による調整1 義務者が支払を拒める場合2 後の養育費手続で免除又は猶予があり得る第6 請求と回収の進め方1 本来の養育費の取決めを並行して進める2 未払の場合は先取特権による担保権実行を検討する第7 確認すべき資料第8 出典

法定養育費は,令和8年4月1日以後に養育費を取り決めずに離婚した場合に,離婚時から子を主として監護する親が他方の親へ請求できる暫定的・補充的な養育費である。
金額は原則として子1人当たり月額2万円であり,本来の養育費の標準額又は最低額を意味しない。

第1 法定養育費は取決めまでの暫定的な養育費である

法定養育費は,養育費の取決めがない期間の空白を埋めるため,民法766条の3によって発生する請求権である。
養育費の合意又は家庭裁判所の審判が整うまでの当面の生活費を確保する役割を持つ。

法定養育費は,父母の収入や子の事情を踏まえて定める本来の養育費の標準額でも最低額でもない。
父母は,法定養育費の請求とは別に,協議,調停又は審判によって適正な養育費を定める必要がある。

第2 請求できるための要件
1 養育費の取決めがないこと

法定養育費は,父母が子の監護に要する費用の分担について定めないまま離婚した場合に問題となる。
離婚時に養育費の合意がある場合は,その合意に基づく養育費を請求することになり,法定養育費は発生しない。

取決めを文書にしていないだけで,口頭の合意が存在する場合に直ちに「取決めがない」とはいえない。
法定養育費を請求する前に,離婚時の協議内容,離婚届に伴って作成した書面,メールその他の記録を確認する必要がある。

2 離婚時から引き続き子を主として監護していること

請求できるのは,父母の一方であって,離婚時から引き続き未成年の子の監護を主として行っている者である。
単に親権者として指定されたかだけでなく,現実に誰が子を主として監護しているかが問題となる。

監護状況に争いがある場合は,同居状況,通学・通園,日常の世話,生活費の負担その他の具体的事情を整理する必要がある。
離婚後に監護者が変わった場合など,継続して主たる監護をしているといえるかが明確でない事案では,個別の検討を要する。

3 離婚等が令和8年4月1日以後であること

法定養育費は,令和8年4月1日より前の離婚には適用されない。
婚姻の取消し,裁判上の離婚及び認知にも民法766条の3が準用されるが,改正法附則3条2項により,いずれも施行日前に行われた場合には法定養育費は発生しない。

第3 金額は子1人当たり月額2万円である
1 子の数を乗じて計算する

法定養育費の額は,月額2万円に,離婚時から引き続き主として監護する未成年の子の数を乗じて計算する。
対象となる子が2人であれば月額4万円,3人であれば月額6万円である。

この金額は父母の収入に応じて作られた養育費算定表の金額ではない。
算定表による標準額と法定養育費の違いは,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で説明している。

2 離婚月及び終了月は日割りとなる

法定養育費は毎月末に支払うものとされる。
離婚等の日が月の初日でない場合は,その月の初日から離婚等の日の前日までの日数に応じた額を控除する。
養育費の取決めが成立するなどして月の途中で請求期間が終わる場合も,終了日の翌日から月末までの日数に応じた額を控除する。

1日当たりの額は,月額をその月の日数で除して算定する。
実際の請求では,離婚日,終了事由が生じた日及び各月の日数を特定して計算する必要がある。

第4 いつからいつまで請求できるか
1 離婚の日から請求できる

法定養育費は,離婚の日から請求できる。
通常の養育費の過去分について実務上問題となる請求の始期とは制度が異なるため,区別が必要である。

通常の養育費の始期と法定養育費との関係は,養育費はいつから請求できるか―離婚後の過去分・法定養育費・調停申立ての始期(AI作成)で説明している。

2 三つのうち最も早い日に終了する

法定養育費を請求できる期間は,次の三つのうち最も早い日に終了する。
① 父母が協議によって養育費の分担を定めた日
② 養育費の分担について家庭裁判所の審判が確定した日
③ 子が成年に達した日

法定養育費は,適正な養育費が決まるまでの空白を埋める制度である。
月額2万円を長期間の最終的な養育費として固定する趣旨ではない。

第5 支払能力がない場合と家庭裁判所による調整
1 義務者が支払を拒める場合

(続きを読む...)法定養育費とは―請求要件,子1人当たり月額2万円及び支払期間(AI作成)

養育費算定表に入れる給与年収-手取り・額面・源泉徴収票,賞与・副業・転職時の扱い(AI作成)

第1 養育費算定表に入れる給与年収の結論と本記事の範囲

1 通常は源泉徴収票の「支払金額」を使う

2 手取り額と「給与所得控除後の金額」は使わない

3 手取り25万円の場合の養育費はいくらか
4 手取り30万円の場合も年収の確認が必要か

第2 源泉徴収票の支払金額に含まれる給与

1 賞与,残業代,歩合給及び課税手当

2 支払金額は一暦年の記録である

3 非課税通勤手当等を機械的に加算しない

第3 給与明細から現在年収を計算する場合

1 源泉徴収票だけでは現在収入を示せない場面

2 給与明細を年換算する確認順序

3 給与明細を何か月確認するかは一律ではない

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養育費算定表で子供3人はいくらか-表6~9の選び方と一人当たり額の計算(AI作成)

第1 子供3人という人数だけでは養育費は決まらない

1 算定表が示すのは収入と年齢に応じた標準額である

2 表6~9の帯は一人分ではなく3人分の合計である

第2 表6・表7・表8・表9の選び方

1 15歳以上の子供の人数で4表から選ぶ

2 令和元年版の表と指数を一組で用いる

第3 父母の収入から3人分の総額を読む方法

1 義務者の年収は縦軸,権利者の年収は横軸に当てはめる

2 交差する帯から3人分の合計額を定める

第4 3人分の総額から一人当たり額を計算する方法

1 総額に各人の生活費指数の割合を掛ける

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共同親権・共同監護の場合の養育費―監護日数・直接負担と算定表の限界(AI作成)

第1 本記事の対象範囲
第2 親権・監護者・監護の分掌という三つの異なる概念
第3 監護の分掌を定めても,養育費の算定方法は変わらない
第4 養育費算定表は「主たる監護+金銭分担」が前提―共同監護への不適合
第5 監護日数が均等でも,養育費がゼロになるわけではない
第6 直接負担・現物負担という言葉の実際

6-1 確立した専門用語ではない
6-2 支払方法としての直接払い

第7 裁判例の現状―算定表の限界を示す空白
第8 確認順序
出典

第1 本記事の対象範囲

本記事は,父母双方が親権者となる場合(共同親権),又は監護の時間・日数を父母で分担する場合(共同監護)に,養育費がどのように扱われるかを扱う。
養育費算定表そのものの基本的な読み方は,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で,法定養育費及び養育費債権の先取特権は,法定養育費と養育費債権の先取特権(AI作成)で,共同養育計画書等の取決めの文書は,養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)で,それぞれ説明している。
本記事は,これらを前提とした上で,監護の日数・態様が父母双方に分かれる場合に固有の論点に絞って説明する。

先に結論を述べると,共同親権の選択それ自体は,養育費の額を自動的に左右するものではない。
また,「監護日数の割合に応じて養育費を機械的に減額する全国統一の算式」は,日本には存在しない。
この2点を正確に理解することが,本記事全体の出発点となる。

第2 親権・監護者・監護の分掌という三つの異なる概念

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養育費算定表の上限を超える高額所得者の計算方法―年収2000万円超の裁判例と実務(AI作成)

第1 本記事の対象範囲
第2 養育費算定表の上限額
第3 婚姻費用と異なり,養育費に上限があるとされる理由
第4 上限説と,これに批判的な見解
第5 上限を超える場合の実務―特別の事情による加算
第6 上限があっても無制限ではない―大阪高等裁判所の裁判例
第7 確認順序
出典

第1 本記事の対象範囲

本記事は,義務者(養育費を支払う側)又は権利者の収入が,標準的な養育費算定表が想定する上限額を超えている場合に,養育費をどのように計算するかを扱う。
婚姻費用(別居中の夫婦間の生活費)について同様の場面を扱う内容は,高額所得者の婚姻費用(AI作成)で説明されている。
本記事は,同記事を踏まえた上で,養育費に固有の考え方に絞って掘り下げる。

養育費算定表そのものの基本的な読み方,及び法定養育費との違いは,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で,私立学校・大学・留学の費用の加算方法は,私立学校・大学・留学の学費は養育費に加算できるか―標準教育費と超過分の計算(AI作成)で,それぞれ説明している。
本記事は,これらを前提とした上で,収入額そのものが上限を超える場面に絞って説明する。

第2 養育費算定表の上限額

裁判所が公表する標準的算定方式・算定表(令和元年版)は,養育費(表1~表9)について,義務者の年収の上限を,給与所得者2,000万円,自営業者1,567万円としている。
権利者の年収の上限は,給与所得者1,000万円,自営業者763万円である。
これらの数値は,裁判所が公表する表1(養育費・子1人表〔子0~14歳〕)の実物で,縦軸(義務者の年収)及び横軸(権利者の年収)の目盛りそのものとして確認できる。

総収入がこの上限を超える場合,公租公課,職業費,特別経費のいずれの割合も上限額以下の場合と同じであるとは限らないため,算定表をそのまま外挿して用いることはできない。
表1の場合,表が示す最も高い月額帯は,義務者の年収が上限(2,000万円)かつ権利者の年収が下限に近い場合で,月額24~26万円である。

(続きを読む...)養育費算定表の上限を超える高額所得者の計算方法―年収2000万円超の裁判例と実務(AI作成)

養育費はいつから請求できるか―離婚後の過去分・法定養育費・調停申立ての始期(AI作成)

第1 本記事の対象範囲
第2 通常の養育費の始期―原則は請求時
第3 法定養育費という第二の始期―離婚の日から
第4 認知後の養育費―出生時か,認知の日か

4-1 通常の養育費―大阪高等裁判所平成16年決定
4-2 法定養育費―認知に準用された場合の始期

第5 離婚後の元配偶者という文脈―婚姻費用の「将来分」制約との違い
第6 離婚前の別居期間の監護費用の一括処理―離婚訴訟の附帯処分
第7 今すぐ動くべき理由
出典

第1 本記事の対象範囲

本記事は,養育費を「いつから」請求できるか,すなわち始期の問題を扱う。
養育費の始期には,性質の異なる複数のものが併存しており,これを整理せずに一つの原則だけで理解しようとすると誤解を招きやすい。

具体的には,①協議・調停・審判によって金額が定まる通常の養育費の始期,②令和6年民法等改正で新設された法定養育費(民法766条の3)の始期,③認知によって親子関係が生じた場合に,この①②それぞれにどのような影響が生じるか,④離婚前の別居期間中の監護費用を離婚訴訟の中で一括して処理できるかという4つの論点を扱う。

養育費の適正額の算定方法及び算定表の見方は,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で,法定養育費及び養育費債権の先取特権の発生要件・金額・経過措置の詳細は,法定養育費と養育費債権の先取特権(AI作成)で,それぞれ説明している。
本記事は,これらを前提とした上で,「いつから」という一点に絞って掘り下げる。
養育費がいつまで支払われるかという終期の問題は,養育費は18歳・20歳・大学卒業のいつまでか―未成熟子と支払終期(AI作成)で別に説明している。

第2 通常の養育費の始期―原則は請求時

(続きを読む...)養育費はいつから請求できるか―離婚後の過去分・法定養育費・調停申立ての始期(AI作成)

養育費で相手の年収が分からない場合―収入資料・収入推計・裁判所での確認方法(AI作成)

第1 本記事の対象範囲
第2 まず法定養育費を請求できる―相手の年収が分からなくても
第3 情報開示命令―養育費事件でも使える収入開示の求め方

1 要件と対象
2 開示しない場合・虚偽開示の場合の効果

第4 調査嘱託・文書提出命令という手段
第5 収入資料の信用性が疑わしい場合―賃金センサスによる推計
第6 勤務先も分からない場合―先取特権を使った情報取得

1 先取特権があれば債務名義なしで動ける
2 給与情報を取得できる場合とできない場合

第7 離婚後に特有の注意点
第8 今すぐ動くべき理由
出典

第1 本記事の対象範囲
本記事は,養育費を請求する場面で,相手方(義務者)の年収が分からない場合に何ができるかを扱う。
離婚後は,別居中の婚姻費用の場面と異なり,相手方との日常的な接触が乏しく,源泉徴収票等の収入資料を得にくいことが多い。

源泉徴収票,給与明細等を入手済みであり,どの金額を算定表へ入れるかだけが問題となる場合は,養育費算定表に入れる給与年収で説明している。
本記事は,資料が得られない場合の取得方法,情報開示及び収入推計を担当する。

(続きを読む...)養育費で相手の年収が分からない場合―収入資料・収入推計・裁判所での確認方法(AI作成)

私立学校・大学・留学の学費は養育費に加算できるか―標準教育費と超過分の計算(AI作成)

第1 本記事の対象範囲
第2 算定表に含まれている教育費と含まれていない教育費
第3 超過分を義務者に負担させるための要件
第4 超過分の計算方法―複数の考え方
第5 私立学校(幼稚園・小中高)の費用
第6 大学の費用

1 大学生の生活費指数と加算の基本的な考え方
2 国立大学の学費標準額という基準
3 子ども自身の奨学金・アルバイト収入の影響
4 医科・歯科大学等の高額な専門職学部

第7 海外留学の費用
第8 進学前にしておくべきこと
出典

第1 本記事の対象範囲

本記事は,子が私立学校,大学又は海外留学に進学・進学予定である場合に,その学費を養育費・婚姻費用へ加算できるか,加算できるとしていくら加算するかを扱う。

対象とする論点は,①養育費の算定表(標準算定方式)が既にどの範囲の教育費を織り込んでいるか,②織り込まれていない教育費を義務者に負担させるための要件,③加算額の具体的な計算方法,④私立学校・大学・海外留学という進学先ごとの考慮要素の違いである。

養育費の額の算定方法及び生活費指数の基本的な計算は,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違いで説明している。
算定表の額に違和感がある場合の一般的な確認順序は,養育費算定表がおかしい?―高すぎる・安すぎると感じたときの確認方法と増減額で扱っており,本記事はこれと重複する範囲を避け,教育費の加算という論点に絞って掘り下げる。
子が成年に達した後も養育費の対象となるかという未成熟子性・支払終期の問題は,養育費は18歳・20歳・大学卒業のいつまでか―未成熟子と支払終期で扱っており,本記事は,子が引き続き養育費の対象となることを前提に,学費の加算額を検討するものである。

(続きを読む...)私立学校・大学・留学の学費は養育費に加算できるか―標準教育費と超過分の計算(AI作成)

養育費は18歳・20歳・大学卒業のいつまでか―未成熟子と支払終期(AI作成)

第1 本記事の対象範囲
第2 養育費は「未成熟子」に対する義務である
第3 成年年齢引下げは,養育費の終期を当然に18歳とするものではない
第4 既存の合意(令和4年4月より前)の「成年」は20歳のまま
第5 これから取り決める場合の終期の定め方

1 特段の事情がなければ20歳が一つの目安
2 大学卒業まで支払う場合の注意点

第6 心身の障害等で就労できない場合
第7 いつまでに動くべきか

1 一方的に18歳で打ち切ることはできない
2 成年到達後にまとめて請求できる場合がある

出典

第1 本記事の対象範囲

本記事は,父母が離婚した子について,養育費をいつまで支払う(受け取る)ことができるかを扱う。
令和4年4月1日に民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより,「養育費は18歳までなのか,20歳までなのか,大学卒業まで続くのか」という疑問を持つ読者が多いと考えられる。

対象とする論点は,①養育費の支払終期を決める基本的な考え方,②成年年齢引下げが既存の取決めに与える影響,③これから養育費を取り決める場合の終期の定め方,④心身の障害等により就労できない場合の扱い,⑤終期をめぐって動くべき時期の5つである。

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再婚・養子縁組・新しい子がいる場合の養育費―減額の可否と再計算方法(AI作成)

第1 本記事の対象範囲
第2 再婚・養子縁組は当然に養育費を変えない

1 変更には家庭裁判所の手続を要する
2 普通養子縁組と特別養子縁組の違い

第3 義務者側に新たな家族が増える場合

1 義務者が再婚しただけの場合
2 義務者と再婚相手との間に実子が生まれた場合
3 義務者が再婚相手の連れ子と養子縁組した場合

第4 監護親の再婚相手が対象児と養子縁組した場合

1 養親が第一次的な扶養義務者になる理由
2 養親の資力不足はどう判断されるか
3 「養子縁組すれば必ずゼロ」ではない

第5 養子縁組していない場合―事実上の扶養と養育費
第6 父母双方に事情が生じた場合
第7 従前の合意額を上回る部分の扱い
第8 いつから効力を持つか,どこに相談するか

1 変更の効力発生時期は一律に決まらない
2 一方的に止めず,まず通知する

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養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)

第1 この記事の対象と読み方1 文書の種類は「合意の有効性」ではなく「支払われないときに何ができるか」で選ぶ2 この記事で扱わない事項第2 四つの選択肢の法的性質1 私的な合意書(共同養育計画書を含む)2 執行認諾文言付き公正証書3 調停調書4 審判・離婚判決の附帯処分及び訴訟上の和解第3 法務省の共同養育計画書とは何か1 制度の目的と作成の手順2 記載する事項の全体像3 私署証書としての証拠力を高める工夫第4 先取特権が新設された後も公正証書等を作成する実益1 月額8万円という分岐点2 履行勧告とワンストップ化という分岐点第5 条項の設計―何を,どこまで具体的に決めるか1 金額,支払開始月及び終期1の2 公正証書手数料の計算上の5年上限2 毎月の支払日及び振込先3 私学費・大学費用・医療費という特別な出費4 収入変動時の再協議5 監護者変更及び連絡先変更6 父母の一方が外国に住む場合第6 文書の選び方(まとめ)第7 弁護士・公証人に相談すべき場面出典1 法令2 裁判所及び法務省の案内

第1 この記事の対象と読み方
1 文書の種類は「合意の有効性」ではなく「支払われないときに何ができるか」で選ぶ

養育費の取決めは,口約束でも契約として有効である。
しかし,支払われなかったときに何を経由せずに強制執行へ進めるか,そして先取特権を実行するための証拠として使えるかという点で,文書の種類によって使える手段が異なる。

本記事は,令和8年に法務省が公表した共同養育計画書を中心に,私的な合意書,執行認諾文言付き公正証書,調停調書という四つの選択肢を比較し,条項として何をどこまで具体的に決めておくべきかを整理するものである。
先取特権(民法308条の2)が新設された後も公正証書等を作成する実益がどこに残るかという点は,第4で正面から扱う。

2 この記事で扱わない事項

養育費の適正額の算定方法及び算定表の見方は,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で説明している。

法定養育費及び養育費債権の先取特権の発生要件,金額の基準,経過措置は,法定養育費と養育費債権の先取特権(AI作成)で詳しく説明している。
本記事は,この要件論を前提とした上で,取決めの段階でどの文書を選ぶかという予防法務の視点に焦点を当てる。

取決めをしたにもかかわらず養育費が支払われなくなった場合の履行勧告,差押えの優遇,財産開示・情報取得のワンストップ化,消滅時効及び一部弁済の充当は,養育費を払わない場合の回収方法―履行勧告・給与差押え・先取特権・ワンストップ執行(AI作成)で説明している。
本記事と同記事は表裏の関係にあり,本記事は「これから取り決める」場面,同記事は「取決め後に支払われない」場面を扱う。

父母間で養育費の免除・不請求・清算を合意した場合に,子自身の扶養料請求権がどう扱われるかについては,父母間の養育費合意は子自身の扶養料請求を妨げるか―免除条項・事情変更・二重請求の整理(AI作成)を参照されたい。父母間の合意だけで子の抽象的権利が当然に消滅するわけではないが,具体額は既払分,直接負担分,事情変更及び二重取得防止を踏まえて検討する必要がある。

第2 四つの選択肢の法的性質

養育費の取決めの文書には,主に,私的な合意書(共同養育計画書を含む),執行認諾文言付き公正証書,調停調書,審判・離婚判決の附帯処分という四つの選択肢がある。
以下,それぞれの法的性質を条文に即して整理する。

1 私的な合意書(共同養育計画書を含む)

父母双方が署名・押印した合意書は,契約として有効であり,養育費の分担義務(民法766条)を発生させる。
もっとも,これは民事執行法22条が定める債務名義のいずれにも該当しない。
そのため,合意書に記載された金額が支払われない場合,合意書それ自体を根拠として直ちに強制執行を申し立てることはできず,別途,養育費請求調停・審判等を申し立てて債務名義を取得する必要がある。

他方で,合意書は,養育費債権の先取特権(民法308条の2)を実行するための「担保権の存在を証する文書」(民事執行法193条1項)として用いることができる。
この点の具体的な範囲は,第4で扱う。

2 執行認諾文言付き公正証書

民事執行法22条5号は,債務名義の一類型として次のとおり定める。

「金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で,債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載され,又は記録されているもの(以下「執行証書」という。)」

養育費は金銭の支払を目的とする請求であるから,この執行証書の要件を満たす公正証書(実務上「執行認諾文言付き公正証書」と呼ばれる)を作成すれば,合意された金額について,訴訟や調停を経ることなく直ちに強制執行を申し立てることができる。
作成には公証人の関与を要し,原則として父母双方(又はその代理人)が公証役場に赴く必要がある。

3 調停調書

家事調停で養育費の合意が成立し,これが調書に記載されると,家事事件手続法268条1項により,次の効力が生じる。

「調停において当事者間に合意が成立し,これを調書に記載したときは,調停が成立したものとし,その記載は,確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては,確定した第三十九条の規定による審判)と同一の効力を有する。」

養育費の分担は家事事件手続法別表第二の事項に当たるため,調停調書は,確定した家事審判と同一の効力を持つという特則が適用される。
調停の成立には家庭裁判所への出頭を要するため,公正証書よりも手続的な負担がかかり得るが,家庭裁判所が関与した取決めであるため,後述する履行勧告の対象となる。

(続きを読む...)養育費の取り決め方―共同養育計画書・合意書・公正証書・調停調書の違い(AI作成)

養育費を払わない場合の回収方法―履行勧告・給与差押え・先取特権・ワンストップ執行(AI作成)

第1 この記事の対象と読み方1 回収方法は,手元にある文書の種類によって変わる2 この記事で扱わない事項
3 養育費が支払われないときは最初に何を確認するか4 相手方又は財産が韓国にある場合第2 七つの出発点と利用できる制度第3 履行勧告・履行命令――費用をかけずに使える第一段階1 履行勧告の要件,申出先及び方法2 履行命令――過料という制裁を伴う一段階上の手段3 履行勧告・履行命令を利用できない文書類型第4 先取特権――債務名義がなくても使える担保権としての差押え1 私的合意書でも先取特権を使えるか2 口約束だけの場合に立証で直面する壁第5 給与等の差押えにおける養育費の優遇1 差押可能範囲が2分の1に拡大される特則2 期限未到来の将来分もまとめて差し押さえられる特則第6 財産開示・情報取得とワンストップ化1 相手の勤務先や取引金融機関が分からない場合2 ワンストップ化の仕組みと利用できる債権者の範囲第7 消滅時効――回収をあきらめる前に確認すべき期間制限1 毎月の養育費は個別に時効にかかる2 確定判決等によって定められた過去分の特則第8 一部だけ支払われた場合の充当1 充当の順序は誰が決めるか2 合意で充当順序を決めておく実益第9 弁護士に相談すべき場面と準備しておく資料1 自分で対応できる場面と弁護士が必要になる場面2 相談前に整理しておく事項出典1 法令2 裁判所及び法務省の案内

第1 この記事の対象と読み方
1 回収方法は,手元にある文書の種類によって変わる

養育費が支払われなくなったとき,どの回収方法を選べるかは,養育費の取決めがどのような文書として残っているかによって異なる。
口約束しかない場合,私的な合意書がある場合,執行認諾文言付きの公正証書がある場合,調停調書や審判がある場合,離婚判決の附帯処分で定められた場合,取決めをしないまま離婚して法定養育費(民法766条の3)が発生している場合では,利用できる制度の組合せが異なる。

本記事は,この「今,手元に何があるか」という起点から,履行勧告,養育費に特有の差押えの優遇,先取特権,財産開示・情報取得のワンストップ化,消滅時効及び一部弁済の充当という順序で,利用できる回収手段を整理するものである。
養育費算定表による金額の算定方法,及び法定養育費・先取特権の要件そのものの詳細は,別記事に譲る。

2 この記事で扱わない事項

養育費の適正額の算定方法,算定表の選び方及び法定養育費との違いは,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)で説明している。

法定養育費(民法766条の3)及び養育費債権の先取特権(民法308条の2)の発生要件,金額の基準,経過措置及び主張・立証上の問題は,法定養育費と養育費債権の先取特権(AI作成)で詳しく説明している。
本記事は,この要件論を前提とした上で,実際の回収手段の選び方に焦点を当てる。

債権差押命令の一般的な申立方法,第三債務者に対する陳述催告,取立て及び配当の実務は,債権差押命令の申立てと取立て・配当の実務(AIリライト)で説明しており,同記事の第9では養育費等の債権執行の特例にも触れている。
本記事は,同記事と重複する範囲をできる限り避け,養育費の回収に固有の判断順序,履行勧告,消滅時効及び弁済の充当という,同記事が扱っていない部分を中心に扱う。

強制執行を受けた側が取り得る対抗手段は,強制執行に対する債務者の対抗手段(AIリライト)で説明している。

本記事の履行勧告,先取特権及び差押え等は,日本で利用できる債務名義又は法定養育費と日本国内の財産を前提とする。
当事者又は財産が中国にある場合は,外国判断の承認・執行,送達,翻訳及び財産所在地を別に確認する必要があるため,詳しくは中国の養育費(抚养费)の法制度―金額・支払終期・未払いと日中間の請求・執行を参照されたい。

本記事が扱う履行勧告,先取特権及び日本の強制執行は,イングランド及びウェールズのCMSによる給与・口座からの徴収とは別の制度である。
イギリスの養育費の不払い,CMSのCollect and Pay,国外居住者及び日英間の回収については,イギリスの養育費の法制度―CMSの計算・対象年齢・不払い・日本からの請求を参照されたい。

本記事の財産開示,給与・預貯金差押え等は,日本国内での回収を中心に説明する。
義務者の勤務先,預貯金又は不動産がアメリカにある場合,日本の手続だけで米国財産へ直ちに強制執行できるわけではない。
国際裁判管轄,準拠法,米国の州法並びに日本又は米国の裁判の承認・執行を分けて検討する必要があり,詳しくは,アメリカの養育費―州法上の金額・終期,日本からの請求と未払い回収で説明している。

本記事の履行勧告,給与・預金の差押え,財産開示及び情報取得は,日本の裁判所が日本国内の財産に対して行う手続を中心としている。
勤務先,預金その他の財産が台湾にある場合,日本の差押命令をそのまま台湾の財産へ及ぼすことはできず,日本の判断を台湾で承認・執行できるかを別に検討する必要がある。
台湾国内の扶養費執行と日台間の手続は,台湾の養育費(子女扶養費)を参照する。

3 養育費が支払われないときは最初に何を確認するか

最初に,養育費を定めた文書の種類と,何月分がいくら未払いかを確認する。
次に,調停調書・審判書等がある場合は第3の履行勧告等を,私的合意書がある場合や法定養育費が問題となる場合は第4の先取特権を確認する。
差押えを検討する場合は,勤務先や預貯金等の対象財産が分かるかも整理する。

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養育費算定表がおかしい?―高すぎる・安すぎると感じたときの確認方法と増減額(AI作成)

第1 算定表がおかしいと感じたときの確認順序

1 初めて計算する場合と既存額を変える場合を分ける
2 算定表は標準額の出発点である
3 8項目を順番に確認する

第2 表・年齢・収入の入力を確認する

1 子の人数と年齢に対応する表を使う
2 給与所得者は手取りではなく総収入を使う
3 自営業者は申告所得をそのまま使うとは限らない
4 収入の変動と稼働能力を分けて考える

第3 算定表に含まれる費用を二重計上しない

1 標準額は費目ゼロからの足し算ではない
2 私立学校費・大学費用
3 特別医療費・障害に伴う費用
4 住宅ローン・家賃・直接払い

第4 算定表をそのまま使えない場合

1 収入が算定表の上限を超える場合
2 低所得・無収入の場合
3 父母双方が相当の日数を監護する場合

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養育費算定表で子供2人はいくらか―表3~5の選び方と一人当たり額の計算(AI作成)

第1 「子供2人はいくらか」に固定額で答えられない理由

1 算定表が示すのは収入と年齢に応じた標準額

2 表の月額は2人分の合計

第2 表3・表4・表5の選び方

1 2人の年齢構成で表を決める

2 現在の年齢区分は0歳~14歳と15歳以上

第3 父母の収入を表へ当てはめる方法

1 義務者は縦軸,権利者は横軸

2 裁判所の設例では2人分が月額10万円~12万円

第4 一人当たり額の計算

1 2人が同じ年齢区分なら合計額を2分の1ずつにする

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養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い(AI作成)

第1 令和元年版の養育費算定表の位置付け

1 現在用いられている算定表

2 令和8年の改正後も算定表は置き換わっていないこと

3 離婚したら養育費を支払う必要があるか
4 養育費を払わなくてよいケースはあるか

第2 算定表の選び方及び読み方

1 子の人数及び年齢に対応する表を選ぶこと

2 縦軸,横軸及び金額帯を読むこと

3 裁判所の使用例

第3 算定表に用いる収入及び計算方法

1 給与所得者の総収入

2 自営業者及び複数の所得がある者の総収入

3 基礎収入及び生活費指数

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法定養育費と養育費債権の先取特権の違い―子1人当たり月額2万円・8万円と使い分け(AI作成)

目次

第1 法定養育費と先取特権は別の制度である1 月額2万円・8万円は国から支払われるのか第2 どの記事を確認すべきか1 養育費を決めずに離婚した場合2 養育費の取決めはあるが支払われない場合3 これから養育費を取り決める場合第3 手続選択の早見表第4 令和8年4月1日を基準に適用を分ける第5 関連記事第6 出典

法定養育費は,養育費を取り決めずに離婚した場合の暫定的な請求権であり,子1人当たり月額2万円である。
養育費債権の先取特権は,成立した養育費等の回収を強化する優先権であり,子1人当たり月額8万円まで及ぶ。
本記事は,二つの制度の違いと,取決め・債務名義の有無に応じて最初に確認すべき手続を整理する。

第1 法定養育費と先取特権は別の制度である

法定養育費と養育費債権の先取特権は,同じ民法改正によって新設され,令和8年4月1日に施行された別の制度である。
両制度は併存し得るため,法定養育費にも先取特権が及ぶ場合がある。

両制度の金額も異なる。
法定養育費は子1人当たり月額2万円であり,先取特権が及ぶ上限は子1人当たり月額8万円である。
2万円は通常の養育費の標準額又は最低額ではなく,8万円は養育費の認定額又は支払額そのものではない。

比較事項
法定養育費
子の監護費用の先取特権

根拠
民法766条の3
民法306条3号・308条の2

役割
取決めがない間の請求権を発生させる
発生済みの定期金債権の回収を強化する

主な場面
令和8年4月1日以後に養育費を決めずに離婚した場合
養育費等に確定した支払期限があり,未払となった場合

省令上の額

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