目次
第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況1 現在も受けている世帯の割合2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由3 男女差を説明するときの限界第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる第4 英国の77%とは何の割合か1 Collect and Payで一部でも支払った人の割合2 対象地域とサービスの範囲第5 日本と外国の数字を比べる際の確認表第6 未払いに直面している場合
第1 養育費を払わない男女の割合は分かるか
母子世帯と父子世帯の養育費の受給状況は,公的調査から確認できる。
しかし,受け取っている世帯の割合の裏返しを,そのまま男性又は女性が養育費を払わない割合とすることはできない。
受取側を調べた世帯統計と,支払義務を負う人の履行状況は,分母が異なるからである。
本記事では,令和3年度全国ひとり親世帯等調査と,英国の2026年6月までのCMS統計を例に,受給率,未受給及び不払いの区別を整理する。
数値の大小だけで男女の責任や制度の優劣を決めず,調査対象と指標の定義から読む必要がある。
第2 日本の母子世帯・父子世帯の受給状況
1 現在も受けている世帯の割合
令和3年度全国ひとり親世帯等調査は,令和3年11月1日現在の状況を調査したものである。
養育費の受給状況の次の数値は,母子世帯・父子世帯のうち離婚・未婚の該当世帯についての集計であり,死別等を含む全ひとり親世帯を一律に分母とした数値ではない。
受給状況母子世帯父子世帯現在も受けている28.1%8.7%受けたことがあるが,現在は受けていない14.2%4.8%受けたことがない56.9%85.9%不詳0.8%0.6%
出典は,こども家庭庁掲載の調査報告(https://www.cfa.go.jp/sites/default/files/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf)の表17-(3)-1及び表17-(3)-3(報告書60頁,結合PDF68頁)である。
同じ表には離婚・未婚別の数値もあるため,離婚した世帯だけの割合として28.1%・8.7%を引用してはならない。
2 71.9%・91.3%を不払い率にできない理由
100%から現在の受給割合を引くと,母子世帯では71.9%,父子世帯では91.3%となる。
しかし,この計算には,過去に受けた世帯,受けたことがない世帯及び不詳がまとめて含まれる。
支払義務のある金額,支払期日,取決めの存否及びその時点の未払残額をそろえた履行率ではない。
したがって,父親の71.9%が不払い,母親の91.3%が不払いという書き換えはできない。
現在受給している世帯についても,約束された全額が毎月支払われているかどうかは,この区分だけでは分からない。
3 男女差を説明するときの限界
母子世帯と父子世帯では,所得,子の年齢,養育費の取決めの状況等の構成が異なり得る。
受給割合の違いだけで,性別そのものが不払いの原因であるとは判断できない。
受取側の世帯の割合と,支払側の人数の割合は同じ統計ではない。
男女の支払行動を比べるには,支払義務がある人を共通の条件で把握し,対象期間と支払額を確認する資料が必要になる。
第3 取決めがある世帯に限ると数字が変わる
同じ調査でも,養育費の取決めをしている世帯に限ると,現在も受けている割合は母子世帯57.7%,父子世帯25.9%である。
出典は同報告の表17-(3)-7及び表17-(3)-8(報告書62・63頁,結合PDF70・71頁)である。
現在も受けている割合の分母母子世帯父子世帯調査の養育費受給状況の集計対象28.1%8.7%そのうち養育費の取決めをしている世帯57.7%25.9%
この違いは,数字に分母を付けて示す必要があることを表している。