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養育費算定表に入れる給与年収|手取り・額面・源泉徴収票,賞与・副業・転職時の扱い(AI作成)

第1 養育費算定表に入れる給与年収の結論と本記事の範囲

1 通常は源泉徴収票の「支払金額」を使う

養育費算定表の給与所得者欄へ入れる年収は,通常,源泉徴収票の「支払金額」であり,社会保険料,所得税及び住民税等を控除する前の金額である。
裁判所の「養育費・婚姻費用算定表について(説明)」は,「給与所得者の場合,源泉徴収票の『支払金額』(控除されていない金額)です」と明記している。

本記事は,父母の協議又は家庭裁判所の調停・審判により本来の養育費を定める際,令和元年版の算定表へ入れる給与年収を対象とする。
相手方の年収自体が分からず,収入資料の取得,情報開示又は収入推計が問題となる場合は,養育費で相手の年収が分からない場合で扱い,本記事では,入手した源泉徴収票,給与明細等から算定表へ入れる給与年収を確定する方法に絞る。
令和8年4月1日に施行された法定養育費は,養育費の取決めがない期間の暫定的・補充的な制度であり,給与年収を算定表へ入れて算出するものではないため,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違いで区別して説明している。

法令及び公的資料は令和8年8月24日現在で確認した。
本記事は,AIを用いて裁判所,e-Gov法令検索及び国税庁の資料を相互に照合し,手取りか額面かという基本から,源泉徴収票だけでは現在年収を示せない場合までを整理したものである。

2 手取り額と「給与所得控除後の金額」は使わない

銀行口座への振込額,給与明細の差引支給額及び源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」は,いずれも算定表へそのまま入れる数字ではない。
所得税法28条は,給与等の「収入金額」から給与所得控除額を差し引いた残額を税法上の「給与所得の金額」としており,算定表が給与所得者の年収として用いる支払金額は,この控除前の給与収入に当たる。

算定表の標準算定方式は,給与収入から公租公課,職業費及び特別経費に相当する標準的な割合を差し引いて基礎収入を求める仕組みである。
先に手取り額を入れると,これらの負担を重ねて控除することになるため,養育費算定表が高すぎる・安すぎると感じる場合の確認方法で説明しているとおり,結果を低く見積もる原因となる。

日常語の「額面」は,月々の給与明細の総支給額を指すことも,一年間の給与収入を指すこともあるため,それだけでは数字を特定できない。
前年の勤務状況が現在も続いている通常例では,源泉徴収票の支払金額を確認するのが最も明確である。

第2 源泉徴収票の支払金額に含まれる給与

1 賞与,残業代,歩合給及び課税手当

所得税法28条1項は,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与を給与所得の対象としている。
源泉徴収票の支払金額には,その年中に支払が確定した給与等の総額が記載されるため,通常は賞与,残業代,歩合給及び課税対象の各種手当も含まれる。

したがって,源泉徴収票の支払金額を用いた後に,同じ年の賞与又は残業代を再び加算してはならない。
他方,源泉徴収票の支払金額は総額であり,その内訳までは示さないため,前年だけの臨時賞与又は現在は終了した残業が多額であったと主張する場合は,賞与明細,給与明細及び勤務条件を追加して確認する必要がある。

2 支払金額は一暦年の記録である

所得税法226条1項は,給与の支払者に対し,その年において支払が確定した給与等について源泉徴収票を作成し,翌年1月31日までに給与所得者へ交付することを求めている。
したがって,源泉徴収票の支払金額は原則として1月1日から12月31日までの暦年の給与収入であり,作成時点から将来1年間の見込額ではない。

国税庁の「支払金額」欄の記載要領も,その年中に支払の確定した給与等の総額を記載すると説明している。
前年と同じ勤務先,職位及び賃金体系が続いている場合には通年実績として資料価値が高いが,転職,休職,配置転換又は大幅な賃金変更があった場合には,現在の収入条件とずれることがある。

3 非課税通勤手当等を機械的に加算しない

所得税法9条1項5号は,通常必要と認められる一定範囲の通勤手当を非課税としている。
国税庁の通勤手当に関する説明によれば,電車・バス等の通勤手当は所定の限度額まで非課税であり,限度額を超える部分は給与として課税される。

非課税の通勤手当は,源泉徴収票の支払金額に通常は含まれない一方,給与明細の総支給額には表示されることがある。
給与明細から年収を組み立てる場合に,総支給額をそのまま12倍すると,実費を補填する非課税通勤手当まで給与収入として年換算することがあるため,課税給与,非課税給付及び実費弁償的な給付を区分して確認すべきである。

もっとも,非課税という税務上の分類だけで,養育費算定上の経済的利益を常に無視できると決まるわけではない。
給付の目的,実際の支出及び標準算定方式による職業費との重複を確認する必要があり,非課税項目をすべて加える,又はすべて除くという一律の処理は適切でない。

第3 給与明細から現在年収を計算する場合

1 源泉徴収票だけでは現在収入を示せない場面

横浜家庭裁判所の令和8年4月版「養育費増額・減額事情説明書」は,現在の収入を所得税及び社会保険料等の控除前で記載させ,給与収入の資料として源泉徴収票を求めている。
同書式は,年度途中で就職した場合など,源泉徴収票では現在収入を示せないときには給与明細書を添付するものとしており,就職予定であれば収入見込みが分かる雇用契約書を挙げている。

転職後の給与が前年と大きく異なる場合,前年の源泉徴収票だけを現在年収とすると,既に終了した前職の収入条件を今後も続くものとして扱うことになる。
反対に,転職直後の1か月分だけを12倍すると,試用期間,繁忙期,残業の偏り及び賞与の欠落によって,通年の収入を過大又は過小に見積もることがある。

2 給与明細を年換算する確認順序

給与明細しか現在資料がない場合は,①対象期間と勤務日数を確定する,②固定給,変動給,残業代及び課税手当を月ごとに分ける,③通常支給される賞与・一時金を直近実績,労働条件通知書又は賞与規程から確認する,④非課税給付及び臨時的な精算額を分離する,⑤前年の源泉徴収票との違いを勤務条件の変更で説明できるかを点検する,という順序が合理的である。
固定給だけで賞与がなく,当該月が通常月であると確認できるときは,月額を12倍する方法が概算の出発点になるが,これはあらゆる給与形態に共通する法的な計算規則ではない。

賞与又は変動給がある場合の概算は,「通年継続する固定給の年額+代表性のある期間から見込む変動給+客観的に見込める賞与」という構造になる。
観察期間の変動給平均を年換算するときは,その期間が繁忙期だけ又は閑散期だけに偏っていないかを確認し,前年実績を捨てずに比較資料として用いるべきである。

3 給与明細を何か月確認するかは一律ではない

裁判所の全国共通資料は,給与明細を必ず何か月平均するかという固定の月数を定めていない。
最高裁判所の算定表説明は,特定月の給与明細について,歩合給の変動が大きい場合があり,賞与・一時金が含まれていないことに留意するよう求めている。

法務省委託調査報告書6頁は,家庭裁判所裁判官へのインタビュー結果として,通常は源泉徴収票を用い,直近1年間の転職,配置転換又は大幅減収が主張された場合には直近3か月から半年程度の給与明細を求めるとの回答を収録している。
これは実務運用に関する調査結果であり,全国一律の証拠法則でも,「3か月平均なら必ず採用される」という基準でもない。

歩合給,残業代又は季節賞与の変動が大きいほど,6か月又は1年の実績を確認する必要性が高くなる。
どの期間を用いるかは,変動の周期,現在の雇用条件が続く見込み及び確認できる資料の範囲によって決まる。

第4 複数勤務先及び副業がある場合

1 複数の勤務先から受ける給与は合算する

二つ以上の勤務先から給与を受けている場合は,養育費の負担能力を一つの勤務先だけで判断せず,全勤務先の給与収入を確認する必要がある。
国税庁の「2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」は,主たる給与と従たる給与を区別し,従たる給与は原則として年末調整できないと説明しているため,主たる勤務先の源泉徴収票だけでは副業給与が反映されていないことがある。

確認方法は,各勤務先の源泉徴収票の支払金額をそろえ,全給与が反映された確定申告書又は課税証明書があれば総額と突合することである。
税額又は給与所得控除後の所得額を足すのではなく,給与収入の重複と欠落を点検した上で支払金額を合算する。

2 転職年は前職分の通算を確認する

国税庁の年末調整に関する説明によれば,年の途中で就職し,前職の源泉徴収票で給与額等を確認できたときは,現在の勤務先が前職給与を含めて年末調整する場合がある。
この場合,国税庁の支払金額欄の記載要領に従い,現在の勤務先の源泉徴収票の支払金額には前職給与も含まれる。

他方,前職分を確認できず年末調整が行われなかった場合又は年収2000万円超で年末調整の対象外となる場合には,現在の勤務先の源泉徴収票へ前職分が合算されないことがある。
国税庁の質疑応答事例も,前職分と現職分の合計が2000万円を超える中途就職者について,現職の源泉徴収票へ前職分を加算する必要はないとしている。

したがって,転職年は,現職の源泉徴収票に前職分が含まれているかを摘要欄,前職の源泉徴収票及び年末調整の有無から確認する。
合算済みの現職票へ前職票を再加算すると二重計上となり,合算されていない現職票だけを見ると前職分を落とすことになる。

3 給与型の副業と事業型の副業を分ける

アルバイト等の副業が雇用契約に基づく給与であれば,副業先の源泉徴収票の支払金額を他の給与収入に加える。
副業収入を確定申告していない場合でも,養育費算定上の収入から当然に除外されるわけではなく,最高裁判所の算定表説明も,未申告の別収入がある場合は支払金額に加算して計算するよう説明している。

もっとも,業務委託,フリーランス又は物販による副業は給与ではなく,売上から必要経費等を確認する事業所得又は雑所得の問題となる。
売上額を給与年収へそのまま加えると経費を無視するため,個人事業主の婚姻費用及び養育費における総収入の認定で扱う給与所得と事業所得の換算方法に分ける必要がある。

第5 転職,休職及び賃金変更後の現在年収

1 過去の実績と現在の収入見込みを区別する

転職年には,その暦年に前職と現職から実際に受けた給与総額と,現職の条件が今後1年間続く場合の収入見込みが異なることがある。
養育費は将来にわたり継続する負担であるため,前年の源泉徴収票を出発点としつつ,確実で継続的な勤務条件の変更があれば,現在及び近い将来の収入を示す資料を併せて評価する必要がある。

現在収入が前年と異なると主張する側は,直近の給与明細,雇用契約書又は労働条件通知書,賞与の実績・規程,前職・現職双方の源泉徴収票及び変更理由が分かる資料をそろえるべきである。
休職又は復職であれば,休職期間,休業給付,復職予定及び復職後の賃金が分かる資料を加え,一時的な減少と継続する減少を分ける。

2 収入減少を理由に既存の養育費を一方的に変えない

既に養育費が合意,調停又は審判で定まっている場合,転職又は減収があっても支払額が自動的に変わるわけではない。
民法766条3項は,家庭裁判所が必要に応じて子の監護費用の定めを変更できるとしており,増減額の要否は,当初の前提とその後の事情変更を区別して判断される。

現在年収を再計算しただけで支払を停止又は一方的に減額すると,従前の取決めに基づく未払が残る可能性がある。
事情変更の条件,変更の始期及び手続は,養育費の増減額に関する確認方法で説明している。

第6 源泉徴収票の数字をそのまま採用しない例外

1 資料の信用性に具体的な疑問がある場合

源泉徴収票は通常の出発点であるが,記載額と勤務実態,賃金水準又は生活状況が明らかに整合しない場合まで,裁判所が必ずその数字に拘束されるわけではない。
大阪高等裁判所平成16年5月19日決定(平成16年(ラ)第83号,家庭裁判月報57巻8号86頁)は,提出された源泉徴収票及び給与支払証明書の年収150万円台という数字が,勤務先のパート賃金,最低賃金及び生活実態と整合しない具体的事情の下で,賃金センサスを用いて収入を認定した。

同決定は裁判所ウェブサイトには掲載されておらず,判例秘書で全文を確認した。
この判断は,源泉徴収票の金額が低いと感じれば自由に統計賃金へ置き換えてよいというものではなく,給与資料の信用性を具体的な証拠から否定した例外事例として理解すべきである。

2 自主的な退職又は減収は別の判断を伴う

退職,転職又は役員報酬の減額が,客観的な必要によるものか,養育費負担を低くする目的を含むものか,従前の収入を得る能力が残っているかは,単なる給与資料の読み方を超える問題である。
この場合は,源泉徴収票又は給与明細が正確に作成されていても,現実の収入だけを採るか,潜在的な稼働能力を考慮するかが別に争われる。

本記事では,給与年収の資料選択に必要な境界だけを示し,自主退職,病気・休職,親族会社の報酬変更及び潜在的稼働能力の裁判例を一括して扱わない。
少数の事例から一般の会社員にも統計賃金を用いる傾向があると断定することはできない。

第7 給与年収を確定した後の算定表の使い方

1 資料別の確認順序

給与年収の確認は,①前年の全源泉徴収票をそろえる,②各票の支払金額と収録範囲を確認する,③前職分の通算と複数勤務先による重複・欠落を点検する,④前年と現在の雇用条件が異なるときだけ給与明細,雇用契約及び賞与資料で補正を検討する,⑤給与型でない副業を分離する,という順序で行うとよい。
相手方又は勤務先だけが保有する資料を当然に取得できるわけではないため,まず各当事者が自分で入手できる源泉徴収票,給与明細,課税証明書及び雇用条件資料を提出し,なお結論に影響する不足がある場合に追加提出の必要性を検討する。

状況出発点となる資料追加して確認する資料主な誤り
同じ勤務条件が続く通常例前年の源泉徴収票必要に応じ課税証明書手取り又は給与所得控除後の金額を使う
年途中の転職・就職前職及び現職の源泉徴収票給与明細,雇用契約,賞与資料前職分の二重計上又は計上漏れ
複数の勤務先全勤務先の源泉徴収票確定申告書,課税証明書主たる勤務先だけを見る
給与明細しかない複数月の給与明細労働条件通知書,賞与実績・規程1か月を12倍し賞与を落とす
副業がある契約形態別の収入資料給与なら源泉徴収票,事業なら申告書・収支資料事業の売上を給与年収へ直に加える

2 父母双方の年収と子の人数・年齢を算定表へ当てはめる

給与年収を確認した後は,義務者の年収を算定表の縦軸,権利者の年収を横軸の「給与」目盛へ当てはめる。
用いる表は子の人数と年齢で変わり,交差する金額帯は法律上の固定額ではなく標準的な月額の目安である。

子が2人の場合の表3~5の選択と一人当たり額の配分は,養育費算定表で子供2人はいくらかで,子が3人の場合の表6~9は,養育費算定表で子供3人はいくらかで説明している。
給与年収を正しく入力しても算定結果が高すぎる又は安すぎると感じる場合は,養育費算定表がおかしい場合の確認方法に進み,自営業収入,高額所得,特別な教育費・医療費又は再婚後の扶養関係を分けて確認する必要がある。

第8 出典・参考資料

1 法令

民法(明治29年法律第89号)766条・766条の3(e-Gov法令検索)
所得税法(昭和40年法律第33号)9条1項5号・27条・28条・35条・226条(e-Gov法令検索)

2 裁判所・行政資料

①最高裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」,「研究報告の概要」資料上の1頁~2頁(PDF1頁)及び「養育費・婚姻費用算定表について(説明)」1頁~2頁
②裁判所「養育費に関する手続
③横浜家庭裁判所「養育費増額・減額事情説明書」令和8年4月版,資料上の2頁・4頁・9頁(PDF3頁・5頁・10頁)
④公益社団法人商事法務研究会『養育費の支払義務者が自営業者等である場合における養育費額の算定の在り方に関する調査研究報告書』令和4年3月,6頁(PDF10頁。法務省委託調査)
⑤国税庁「給与所得の源泉徴収票の『支払金額』欄
⑥国税庁タックスアンサー「No.1400 給与所得」,「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」,「No.2668 年末調整の対象となる給与」及び「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
⑦国税庁質疑応答事例「中途就職者で就職前の会社が支払った給与等を合計すると2000万円を超える場合の源泉徴収票の記載方法

3 裁判例

①大阪高等裁判所平成16年5月19日決定(平成16年(ラ)第83号,家庭裁判月報57巻8号86頁)
裁判所HP未掲載。判例秘書により全文確認。

4 文献

①大阪弁護士会編『令和元年改定 養育費・婚姻費用算定表(解説及びQ&A付き)』大阪弁護士協同組合,2020年,1頁~5頁
②芥川基和『離婚調停〔第4版〕』日本加除出版,2021年,258頁~260頁・266頁・273頁
③松原正明ほか『実務 人事訴訟法』勁草書房,2024年,335頁~338頁
④『養育費・扶養料・婚姻費用実務処理マニュアル』新日本法規出版,2018年,32頁~33頁・48頁
⑤松本哲泓『婚姻費用・養育費の算定―裁判官の視点にみる算定の実務―』新日本法規出版,2018年,71頁~89頁