メインコンテンツへスキップ
       

法律事務所のLLMO・GEO対策-Google公式見解,効果測定,弁護士広告及び外注先管理(AI作成)

法律事務所のAI検索対策では,AIに引用されるための特殊なファイルを増やすことよりも,読者に役立つ固有の情報を,一次資料へ戻って確認できる形で公開し,その効果を問い合わせ及び受任まで追跡することが重要である。

Googleは,生成AI検索についても従来のSEOの基本が有効であり,Google検索に表示されるためにllms.txt,AI専用テキスト,専用Markdown,特別なschema.orgマークアップ又は細かな文章分割を行う必要はないと説明している。他方で,ChatGPT,Claudeその他のサービスがウェブページを取得する方法はGoogleと同一とは限らない。

また,法律事務所のウェブサイトは弁護士業務広告となり得る。第三者評価,依頼者の声,解決実績,「専門家」等の表示及び外部業者への委託は,表示の正確性だけでなく,依頼者の同意,守秘義務,報酬の連動,管理権限及び広告関連記録の保存まで含めて検討する必要がある。

目次

第1 この記事の結論

法律事務所が行うべきAI検索対策は,次の順序で考えるのが適切である。

  1. どの依頼者のどの疑問に答えるかを決める。
  2. 法令,裁判例,官公庁資料その他の根拠を確認する。
  3. 山中弁護士ブログにしかない開示文書,整理,実務経験又は比較を加える。
  4. 読者が原資料へ移動できるよう,資料名,日付,頁及びURLを示す。
  5. 通常の検索,Googleの生成AI検索及び外部AIサービスからの流入を区別して測る。
  6. 表示回数や引用数だけでなく,問い合わせ,相談,受任及び回収売上まで確認する。
  7. 広告表示,外部委託,口コミ及び制作記録を弁護士自身が管理する。

LLMO又はGEOという名称の施策であっても,この順序を省略して,AI回答への掲載数だけを成果と評価すべきではない。

第2 LLMO,GEO及びAI検索対策の意味

1 用語は統一されていない

LLMOはLarge Language Model Optimization,GEOはGenerative Engine Optimization,AEOはAnswer Engine Optimizationの略称として用いられることが多い。いずれも,生成AI又は回答型検索に自らの情報が発見,参照又は表示されやすくなるようにする取組を指すが,法律上又は国際標準上の統一した定義があるわけではない。

Googleは,Google検索の生成AI機能に対する最適化も検索体験に対する最適化であり,従来のSEOの延長として説明している。そのため,業者が「従来のSEOは終わった」「LLMOだけが必要である」と説明する場合には,対象サービス,根拠及び測定方法を確認する必要がある。

2 取得から受任までは別の段階である

ウェブページがAIに利用される過程には,少なくとも,①クロール又は取得,②検索インデックスへの登録,③回答生成時の参照,④回答内での名称又はURLの表示,⑤利用者のクリック,⑥問い合わせ,⑦相談,⑧受任という段階がある。

ある段階を確認しても,その後の段階が生じたことまでは証明されない。サーバーログにAI事業者を名乗るUser-Agentが残ったことは取得の資料となり得るが,回答で引用されたこと,依頼者が閲覧したこと又は事件を受任したことの証明ではない。

第3 Googleが必要ないと説明している施策

1 llms.txt及びAI専用ファイル

Googleの「生成AI機能向けにウェブサイトを最適化するためのガイド」は,Google検索がllms.txt,AI専用テキスト,特別なマークアップ又はMarkdownを使用しないため,これらを作成する必要はなく,Google検索での表示又は順位を有利にも不利にもしないと説明している。

したがって,llms.txtの設置自体をGoogleのAI検索対策の成果として評価することはできない。他のAIサービス又は社内エージェントの案内として利用する余地はあるが,その場合も,対象サービスが実際に参照する仕様又はログを確認する必要がある。

2 AIのためだけの文章分割及び書換え

Googleは,AIが理解しやすいよう本文を細かな断片に分ける必要はなく,AI向けだけに特別な書き方へ変更する必要もないと説明している。見出し,段落,表及び箇条書きは,読者が内容を理解しやすくするために用いるべきである。

同じ疑問の言い換えごとに大量の記事を作る方法は,読者に新しい価値を提供しない限り,内容の重複と管理負担を増やす。生成AIを用いて多数の記事を作成する場合にも,正確性,独自性及び読者にとっての有用性を確認しなければならない。

3 AI専用の構造化データ

Googleの生成AI検索に必要な専用schema.orgはない。既存のArticleその他の構造化データを用いる場合は,画面に表示される題名,著者,公開日,更新日及び本文と一致させる必要がある。

構造化データが正しいことは,記事の法的内容が正しいことを証明しない。誤った日付,事件番号又は人物名を構造化すれば,誤情報を機械が処理しやすい形にする結果となる。

第4 法律情報で優先すべき内容

1 一般論の再要約より固有資料を優先する

Googleは,既存情報の言換えにとどまらず,独自の見解,経験又は情報を含む内容を重視する方向を示している。山中弁護士ブログの場合,裁判所その他の官公庁から取得した開示文書,公刊物の所在,裁判官人事及び修習期の整理並びに実務上の確認結果が固有の価値となる。

ただし,ブログに掲載した開示文書は公的機関が作成した一次資料であっても,山中弁護士による転記,要約,評価又は複数資料の統合は二次的な記述である。両者を同じ「一次情報」と表示してはならない。

2 裁判例は実在だけでなく射程を確認する

裁判例を用いるときは,裁判所名,裁判年月日及び事件番号が一致することに加え,記事に書く命題が判決本文によって裏付けられるかを確認する。裁判所ウェブサイトに掲載されていない裁判例は,判例秘書等の商業データベース又は掲載誌で全文を確認し,確認できない場合は孫引きによって断定しない。

「引用が付いていること」と「引用先がその文章を裏付けること」は別である。数値についても,分子,分母,対象,期間及び集計方法まで一致させる必要がある。

第5 LLMO・GEOの効果をどう測るか

1 指標を一つにまとめない

段階主な確認方法確認できないこと
取得サーバーログ,User-Agent,IP情報回答への採用
検索表示Search Console実際に読まれたこと
AI回答内の表示回答画面,質問文,日時,モデルの記録クリック又は依頼意思
サイト訪問GA4,参照元URL相談の質又は受任
問い合わせフォーム,電話記録,流入経路の自己申告相談実施又は受任
相談・受任相談台帳,事件台帳事件の採算及び回収
業務上の成果回収売上,必要時間,広告費及び外注費将来も同じ成果が続くこと

2 Google検索と外部AIサービスの流入を分ける

Google Analyticsは,令和8年5月13日,ChatGPT,Gemini,Claude等の認識されたAIアシスタントからの流入に「ai-assistant」という媒体及び「AI Assistant」というチャネルを自動付与する機能を公表した。

もっとも,GoogleのAI Overviews及びAI Modeからの非広告流入はAI AssistantではなくOrganic Searchに分類される。したがって,AI Assistantチャネルだけを見ても,Googleの生成AI検索を含むAI由来の流入全体は分からない。

3 固定質問による観測の限界

一定の質問を複数のAIへ定期的に入力し,事務所名又はURLの表示を記録する方法は,変化を観察する手段にはなる。しかし,質問の選び方,利用者の所在地,ログイン状態,会話履歴,モデル及び実行時刻によって回答は変わり得る。

少数の質問を一度ずつ実行した結果,又は算定方法を公開していない独自スコアは,法律事務所の客観的な評価,市場占有率又は受任可能性を示すものではない。継続測定する場合は,質問集合,実行条件,全回答及び採点方法を保存する必要がある。

第6 業者資料及び研究論文の読み方

1 増加率だけでは判断しない

セミナー資料又は業者資料に「AI経由の流入が823%増加」「従来検索より4.4倍成約しやすい」等の数値が示されていても,基準となる件数,対象期間,対象業種,母集団,成約の定義及び集計方法が示されていなければ,山中弁護士の受任見込みへ移すことはできない。

少数の流入が増えた場合,増加率は大きく見える。割合と絶対数を併記し,法律事務所だけのデータか,他業種を含むか,日本の利用者を対象とするかを確認する必要がある。

2 GEO研究が測ったもの

GEOに関する研究論文には,引用,統計又は分かりやすい文章等を加えた場合の生成回答内における可視性を実験したものがある。この種の研究は回答内の表示量又は順位を検討する資料にはなるが,ウェブサイトへの訪問,相談,受任,売上又は法的正確性を直接測ったものではない。

また,実験用コード又はプロンプトが,架空の引用,仮想的な統計その他の実験操作を許していることがある。研究上の操作を法律事務所の記事作成方法として採用してはならない。

第7 弁護士広告としての確認

1 AI検索対策も広告規程の外にはない

法律事務所の名称,業務,取扱分野又は実績を知らせ,依頼を誘引するウェブページは,AI検索向けに作ったものであっても弁護士業務広告となり得る。

事実に合致しない広告,誤導又は誤認のおそれのある広告,誇大又は過度な期待を抱かせる広告,特定の弁護士等との比較広告等が禁止される。検索又はAIに選ばれやすいという目的は,表示の正確性を緩和する理由にならない。

2 専門性,実績及び依頼者の声

日弁連の業務広告に関する指針は,専門性を認定する客観的基準が確立していないことから,「専門家」「専門分野」「スペシャリスト」「エキスパート」等の表示を控えるのが望ましいとしている。「取扱い分野」「取扱い業務」等,事実を示す表現と区別する必要がある。

依頼者又は具体的事件を表示する場合は,書面による同意,依頼者の特定可能性及び依頼者の利益を損なうおそれを確認する。AIで作った架空の依頼者の声又は架空の解決実績を,実在の体験談又は実績のように表示してはならない。

3 口コミを操作しない

Googleは,実際の体験に基づく口コミを求めること自体は認めている一方,投稿,書換え又は低評価の削除の見返りに金銭,割引その他の利益を与えることを禁止している。外部での言及又は評価を増やす施策については,Googleのポリシー,弁護士広告及び守秘義務を併せて確認する必要がある。

第8 LLMO・SEO業者へ委託する場合

1 契約前に確認する事項

少なくとも,次の事項を書面で確認する。

  1. 対象サービス,対象質問及び成果物
  2. KPIの定義,分母,測定頻度及び元データの提供方法
  3. 記事,構造化データ,Google Business Profile等を変更できる者
  4. 外部への記事配信,リンク獲得,口コミ依頼及びSNS投稿の方法
  5. 再委託先及び生成AIその他の外部サービスへの入力内容
  6. 相談者情報,問い合わせデータ及びアクセス解析情報の取扱い
  7. 報酬がクリック,相談予約,受任件数又は弁護士報酬に連動するか
  8. 契約終了時のアカウント,電話番号,ドメイン,データ及び制作物の返還

2 非弁提携との境界

広告制作又はSEOを委託すること自体が直ちに非弁提携となるわけではない。しかし,業者が相談内容を受け取り,特定の弁護士を選び,受任条件又は法律判断を説明し,受任件数又は弁護士報酬に連動する利益を得る場合には,広告枠の提供を超える問題が生じ得る。

契約名ではなく,誰が相談者を選別し,誰が受任可否及び費用を決め,誰が説明し,誰が収益を得るかを確認する。

3 広告関連記録を保存する

広告の内容及び方法,広告業者との契約,契約に関連する入出金並びに必要な依頼者等の同意を証する記録は,広告終了時から3年間保存する必要がある。

LLMO又はSEO業者については,提案書,対象URL,修正前後の画面,配信先,リンク獲得方針,口コミ施策,再委託先,アカウント権限,請求書,支払記録,対象質問,全回答及びKPIの元データも一つの管理番号にまとめて保存するのが望ましい。

第9 山中弁護士ブログで優先する施策

  1. 古い記事について,現行法,更新日及び原資料URLを点検する。
  2. 開示文書には,資料名,作成主体,作成日,開示日及びPDF頁を付ける。
  3. OCR又は転記した本文について,原PDFとの照合範囲を示す。
  4. 裁判例は,裁判所ウェブサイト,判例秘書又は掲載誌で本文を確認した範囲を示す。
  5. 一般論だけの記事を増やす前に,既存の固有資料と関連記事のリンクを整える。
  6. Search Console及びGA4で,検索表示,流入及び問い合わせを別々に記録する。
  7. AI回答の観測は,固定質問,モデル,ログイン状態,日時及び画面を残す。
  8. 問い合わせ時に,どの検索又はAIサービスで知ったかを任意で確認する。

第10 一次資料及び判例の位置付け

Google検索,Google Analytics及びGoogle Business Profileの仕様は,各サービスの公式文書が一次資料となる。弁護士広告については,日弁連の業務広告に関する規程及び指針が一次資料となる。

これに対し,セミナー資料,LLMO業者の導入事例及び市場調査は,作成者又は引用元が述べた事実を確認する資料であり,山中弁護士ブログの表示増加,問い合わせ増加又は受任増加を直接証明するものではない。

本記事の中心は検索サービスの仕様,広告規程及び運用上の証拠管理である。本記事を作成するに当たり,LLMO又はGEOの有効性を直接判断した日本の裁判例は確認しておらず,判例秘書による網羅的な裁判例検索も行っていない。

第11 関連記事

第12 出典・参考資料

  1. Google Search Central「Optimizing your website for generative AI features on Google Search
  2. Google Search Central「Google Search’s guidance on using generative AI content on your website
  3. Google Search Central「Google Search’s guidance on third-party SEO tools and advice
  4. Google Analytics Help「What’s new in Google Analytics
  5. Google Analytics Help「Default channel group
  6. Google Business Profile Help「Tips to get more reviews
  7. 日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程
  8. 日本弁護士連合会「業務広告に関する指針」(令和8年2月19日改正)
  9. GVA TECH株式会社「法律事務所のためのAI検索対策セミナー配布資料」(令和8年8月26日)