第1 後の訴訟では「誰が誰に何を援用するか」を先に決める
補助参加をした訴訟の判決が確定しても,その判決のすべての判断を,関係者の誰にでも援用できるわけではない。
後の訴訟で判決を使うときは,①援用する人,②援用される相手,③拘束を求める判断,④その判断を争う機会の有無を,順に確認する必要がある。
この順序を守ると,既判力,参加的効力,判決書の証拠としての利用を混同しにくくなる。
本記事は,通常の補助参加を対象として,民事訴訟法46条による参加的効力と,補助参加人から被参加人に対する援用が問題になる場合の確認手順を扱う。
調査基準日は令和8年10月4日であり,民事訴訟法は同日時点の施行中の条文を確認した。
共同訴訟的補助参加その他の特別な判決効については,それぞれの制度と条文による検討が必要である。
第2 既判力と参加的効力を分ける
1 補助参加したことだけで既判力が及ぶとはいえない
民事訴訟法114条1項は,確定判決の既判力を,主文に包含するものに限って認めている。
相殺のために主張した請求については,同条2項の特則がある。
誰に効力が及ぶかは,同法115条などの規定によって確認する。
補助参加人は,補助参加したという理由だけで115条1項1号の当事者になるわけではなく,参加的効力とは別に検討する必要がある。
2 参加的効力は理由中の判断にも及ぶが,限界がある
最高裁昭和45年10月22日判決の原文は,旧民事訴訟法70条の効力を,既判力とは異なる特殊な効力とし,判決確定後に補助参加人が被参加人に対して判決の不当を主張することを禁ずるものと説明している。
同判決は,補助参加人が協力し,又は協力し得たのに被参加人が敗訴した場合に,敗訴の責任を分担させることが衡平にかなうという理由を示す。
その効力は,主文だけでなく,その前提となる理由中の事実認定や先決的権利関係の判断にも及ぶ。
最高裁平成14年1月22日判決の原文は,理由中の判断の範囲を,主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などに限っている。
判決の結論に影響しない傍論まで拘束力を持つわけではない。
判決書の一文を取り出す前に,その判断が主文へ至る過程でどの役割を果たしたかを確認する。
第3 援用の方向が変わると,追加の論証が要る
1 被参加人から補助参加人への援用
民事訴訟法46条の柱書は,例外に当たる場合を除いて,裁判が補助参加人に対しても効力を有するという構造である。
昭和45年判決が示したのは,被参加人との後の訴訟で,補助参加人が前の判決の不当を主張できなくなるという効力である。
この方向で援用するときも,対象となる判断の範囲と,46条各号の例外を確認しなければならない。
2 補助参加人から被参加人への援用
補助参加人の側が,被参加人との後の訴訟で前の判決を援用する場合は,条文が想定する通常の方向と逆になる。
昭和45年判決を引用しただけで,この逆方向の援用まで当然に認められると説明することはできない。
令和5年司法試験の採点実感の民事系第3問・設問3課題2は,この逆方向の援用を検討対象とし,参加的効力の根拠と46条の文言の双方を踏まえて結論を論証することを求めている(22~23頁)。
敗訴責任の共同分担を根拠に援用を認める方向で論ずることも考えられるが,その場合も,条文との整合性や,被参加人が不利な拘束を受ける理由を説明する必要があるとされている。
これは司法試験の公開された評価資料であり,逆方向の援用を一般的に認めた最高裁判例として扱うことはできない。
実務では,補助参加したから援用できる,あるいは補助参加人からは一切援用できない,という断定を避ける。
援用の根拠,前の訴訟における双方の関与,拘束される判断,条文との整合性を,後の請求との関係で具体化する。
本記事で原文を確認した二つの最高裁判決は,逆方向の援用を直接判断したものではない。
3 前の訴訟の相手方と補助参加人との関係
被参加人と補助参加人との間に認められる効力を,前の訴訟の相手方と補助参加人との間へ,そのまま広げることはできない。
令和5年の採点実感も,両者の関係に当然に参加的効力が及ぶとする説明を評価していない(22頁)。
この関係では,既判力の主観的範囲など,主張する効力ごとに根拠を分けて検討する必要がある。
第4 46条の例外は,訴訟の経過と結び付けて確認する
民事訴訟法46条は,①参加時の訴訟の程度により行為できなかった場合,②被参加人の行為と抵触して効力を持たなかった場合,③被参加人が行為を妨げた場合,④補助参加人にはできない行為を被参加人が故意又は過失によりしなかった場合を,効力の例外として掲げる。
結論に不満があるというだけで,これらの例外に当たるわけではない。
参加申出書,訴訟告知書,送達の記録,準備書面,証拠申出,期日の記録等を照合し,どの時点で,誰が,どの行為をできたか,できなかったかを整理する。
単に証拠が提出されなかったという事情と,補助参加人にはできない行為を被参加人が怠ったという4号の要件は,区別して確認する。
例外を主張するときは,その結果,誰がどの判断を改めて争えることになるかまで書く。
逆方向の援用が問題となる場面で,補助参加人を保護するための例外を,被参加人が自分への拘束を免れるために持ち出すなら,その趣旨がその場面にも妥当するかという検討が要る。
令和5年の採点実感は,被参加人が参加人の行為を妨げたという事情を理由に参加人の援用を否定すると,被参加人が再び争える結果になることを指摘している(23頁)。
第5 訴訟告知をした場合も,参加の利益と判断の範囲を確認する
民事訴訟法53条4項は,告知を受けた者が参加しなくても,46条の適用について,参加できた時に参加したものとみなす。
ただし,告知書を送っただけで,告知を受けた者が必ず拘束されるわけではない。
平成14年判決は,訴訟の結果について法律上の利害関係を有することを要件とし,単なる傍論の認定には効力が及ばないとしている。
告知を検討する段階で,前の訴訟の結果が相手のどの法的地位又は利益へ影響するのかと,後で援用したい判断が主文に必要な判断になるのかを,別々に確認する。
告知の時期や書面の記載事項は,訴訟告知の使い方で扱っている。
第6 後の訴訟の準備書面に落とし込む確認手順
①前の訴訟の当事者・被参加人・補助参加人と,後の訴訟の原告・被告を対応させる。
②誰が誰に対して,どの判断を争わせないと主張するのかを,一文で示す。
③既判力,参加的効力,その他の拘束力,判決書の証拠としての利用を区別し,採用する根拠を示す。
④理由中の判断を援用する場合は,主文へ至る判断過程を確認し,必要な判断と傍論を分ける。
⑤参加又は参加可能となった時点と,実際の主張・証明の機会を時系列で確認する。
⑥46条各号の事情について,要件に該当する行為と,後の訴訟で生じる具体的な効果を結び付ける。
⑦援用を認める立場と認めない立場とで,後の訴訟のどの争点が残るかを整理する。
この順序は,条文と判例の確認を準備書面へ移すための整理方法であり,これ自体が裁判所の定めた書式や独立した法的要件ではない。
拘束力が認められない場合にも,判決書を証拠として提出する意味は別に検討する。
その際の注意は,別件判決・先行訴訟の準備書面は後訴でどう使われるかを参照されたい。
第7 出典
①e-Gov法令検索「民事訴訟法」(42条,45条,46条,53条,114条,115条。令和8年10月4日時点の施行中の条文)
②最高裁昭和45年10月22日判決の原文(全3頁。参加的効力の性質,制度趣旨及び理由中の判断への効力)
③最高裁平成14年1月22日判決の原文(全3頁。法律上の利害関係,必要な判断と傍論の区別)
④法務省「令和5年司法試験の採点実感」(民事系第3問,22~23頁。援用の方向と制度趣旨・条文構造の検討)
令和5年の問題と学習用答案は,令和5年司法試験民事系第3問の模範解答・評価項目に掲載している。