目次
第1 破産管財人とは何をする人か1 裁判所が選任する財産管理・清算の担い手2 申立代理人・管財人・裁判所の違い第2 破産管財人が選任される場合1 管財事件と同時廃止事件2 個人と会社では免責の有無が異なる第3 管財人の仕事と権限1 財産や取引を調べる2 財産を管理し,必要な換価を行う3 債権を調査し,配当を行う第4 本人が準備する説明と資料1 面談や追加提出の指示を確認する2 分からないことと記載漏れを隠さない第5 費用・予納金・管財人報酬の違い1 支払先と決定方法を分ける2 金額は担当裁判所と事件の条件を確認する第6 管財事件の流れと終了第7 破産通知を受け取った債権者の確認事項第8 よくある疑問1 管財人を自分で選ぶことはできるか2 管財人が厳しいと免責されないのか3 郵便物や荷物はすべて管財人へ届くのか4 連絡がつかない,又は対応に疑問があるときはどうするか第9 出典と関連する記事
破産管財人とは,裁判所が選任し,破産財団に属する財産の管理・処分や,債権の調査,配当などを担う者である。実務では多くの場合,弁護士が選任されるが,破産を申し立てた本人の代理人とは立場が異なる。
管財人から面談や資料提出を求められた本人は,「自分の代理人への相談」と「管財人への説明」を区別して対応する必要がある。破産通知を受け取った債権者は,管財人への問合せと,裁判所への債権届出を区別することが重要である。本記事は,令和8年10月12日時点の法令と裁判所の案内に基づき,役割,権限,費用及び手続の流れを整理する。
第1 破産管財人とは何をする人か
1 裁判所が選任する財産管理・清算の担い手
破産法74条1項により,破産管財人は裁判所が選任する。破産規則23条1項は,その職務を行うのに適した者を選任すると定める。大阪地方裁判所の案内は,ほとんどの場合,弁護士から選ばれると説明している。ただし,破産法74条2項は法人も管財人になれると定めており,弁護士個人にだけ法律上の資格が限定されているわけではない。
破産手続開始後,破産財団に属する財産の管理・処分権は管財人に専属する(破産法78条1項)。管財人は,裁判所の監督の下で,善良な管理者の注意をもって職務を行う(同法75条1項・85条1項)。本人の希望をそのまま実現する代理人でも,個々の債権者の回収を代行する代理人でもない。
選任時の考慮要素や報酬決定の詳しい説明は,破産管財人の選任基準と報酬の決まり方に整理している。
2 申立代理人・管財人・裁判所の違い
主体主な役割本人又は債権者が確認すること申立代理人本人から依頼を受け,申立書・資料を準備し,手続上の助言や代理をする説明の整理,資料不足,訂正,権利を守るための対応を相談する破産管財人財産・取引の調査,管理・換価,届出債権の認否,配当等を担う。個人破産では裁判所の指示に基づく免責調査も行う指定資料,説明事項,面談日時,財産や郵便物の取扱いを確認する裁判所開始決定,管財人の選任・監督,必要な許可,報酬決定,免責許否等を判断する事件番号,通知された期限,正式な届出先や手続を確認する
同じ「弁護士」でも,依頼した申立代理人と,裁判所が選任した管財人は別の役割である。管財人に事情を説明しただけで,申立代理人への相談又は正式な申立てをしたことにはならない。
第2 破産管財人が選任される場合
1 管財事件と同時廃止事件
管財人を選任して財産の調査・清算を進める事件を,一般に「管財事件」という。他方,破産財団から手続費用を支払うのに不足すると認められるときは,開始決定と同時に手続を廃止する制度がある(破産法216条1項)。これが「同時廃止」であり,管財人による換価・配当は行われない。
ただし,費用を支払うのに足りる予納がある場合には同条1項は適用されない(同条2項)。同時廃止を希望すれば必ず認められるわけではなく,財産・取引・調査を要する事情と費用の準備状況を踏まえ,裁判所が判断する。預金残高など一つの金額だけで全国共通に判定することはできない。
2 個人と会社では免責の有無が異なる
個人の破産では,財産の清算と,残った債務について責任を免れるかという免責の審理を区別する。管財人が選任されたこと自体は,免責不許可という意味ではない。同時廃止の場合にも免責の審理は別途行われる。
会社の破産では,法人の財産を清算する。個人を対象とする免責制度は適用されない。会社代表者も個人として破産を申し立てている場合,会社と代表者の財産・債務・事件番号を混同しないことが重要である。
第3 管財人の仕事と権限
1 財産や取引を調べる
管財人は,破産者等に説明を求め,破産財団に関する帳簿・書類等を検査できる(破産法40条・83条)。預貯金,不動産,保険,売掛金,借入れ,親族への送金などを調べ,申立資料と客観資料の整合性を確認する。
「どこまで調べるか」は,財産と取引の内容,争点,資料の入手可能性などで異なる。すべての事件で同じ年数・同じ口座だけを調べるという固定の範囲はない。問題となる取引については,記憶による説明と,通帳・契約書等で確認できる事実を分ける必要がある。
2 財産を管理し,必要な換価を行う
「破産財団」とは,破産手続で管理・清算の対象となる財産のまとまりである。開始時に有する財産が原則として含まれるが,法律上財団に属しない財産や,自由財産の範囲を拡張する制度もある(破産法34条)。生活に関係する物まで例外なくすべて失うという説明は正確でない。開始後に得た財産も,開始前の原因に基づく請求権かどうかなどを区別して判断する。
財団に属する財産は,管財人が管理し,売却や回収などにより金銭に換える。本人が「これは手元に残せる」と自己判断して処分せず,帰属・引渡し・使用の扱いを申立代理人と管財人に確認する必要がある。
管財人の権限にも裁判所の許可を要する行為がある。不動産の任意売却,事業譲渡,借財などは破産法78条2項に定められる。同項7号から14号までの一定の行為については,100万円以下の価額のものに関するとき等に許可が不要となる(同条3項・破産規則25条)。「100万円以下なら不動産売却も含め何でも自由」という制度ではない。
3 債権を調査し,配当を行う
管財人は,届け出られた債権について,額・原因・優先性等を調べ,認否をする(破産法117条等)。異議がある場合には,別の確定手続が問題になる。
売却代金等がすべて一般債権者への配当になるわけではない。手続費用などの財団債権は破産債権に先立って弁済され,破産債権にも法定の優先順位がある(破産法148条・151条・194条)。財産が少なく,配当を行わず手続が廃止される場合もある。
相続財産の清算を担う人との違いは,相続財産清算人と破産管財人の違いで説明している。