目次第1 企業が最初に確認すること第2 誰が製造物責任を負うか1 製造者・輸入者・表示をした者を調べる2 部品メーカーと完成品メーカーの責任を分ける3 販売者・設置業者の別の責任も確認する第3 不具合,欠陥及び損害を混同しない1 契約どおりでないことと安全性を欠くこと2 製品自体だけの損害と拡大した損害第4 警告は書いた場所と届き方まで確認する第5 事故初動と重大製品事故報告1 安全措置と責任調査を並行する2 原因調査中でも事故報告の期限を管理する第6 契約上の求償と期間制限1 被害者への責任と企業間の精算2 保証期間と製造物責任法の時効を分ける第7 相談時に作る確認表第8 公開資料と確認範囲第9 別途検討を要するテーマ
第1 企業が最初に確認すること
製品事故の相談を受けた企業は,安全確保と事故情報の収集を進めながら,誰が,どの法律又は契約に基づき,どの損害を負担するかを整理する必要がある。
製造物責任法は,消費者が買った製品の事故だけに適用される法律ではない。
企業間で納入した機械や部品についても,同法の要件を満たせば責任が問題となる。
また,自社工場を持たず,他社に製造を委託して販売する企業も,製品に付した表示や取引の実態によって責任主体になり得る。
本記事は,令和8年10月4日現在の日本法と公的資料を基に,国内取引を中心とした責任主体,欠陥,事故対応及び契約審査の入口を説明する。
事故報告の制度は対象製品と事故の内容によって異なるため,以下の消費生活用製品の報告期限を,医薬品,自動車又は全ての産業機械へ一律に当てはめてはならない。
後記の管理表・確認手順は,本記事が示す実務上の提案である。
第2 誰が製造物責任を負うか
1 製造者・輸入者・表示をした者を調べる
製造物責任法2条3項は,①業として製造,加工又は輸入した者,②自らを製造業者として表示した者又は製造業者と誤認させるような表示をした者,③製造・加工・輸入・販売の形態その他の事情から実質的な製造業者と認めることができる表示をした者を,責任主体としている。
会社の登記目的や「販売元」という肩書だけで結論を出さず,製品本体,包装,取扱説明書,商標表示,製造委託関係及び輸入経路を確認する。
OEM又はプライベートブランドの販売者については,自社ブランドを付している事実に加え,製品にある他の表示,設計・製造への関与及び流通の形態を検討する。
全ての販売者が当然に製造物責任を負うわけではない一方,実際に製造していないという説明だけで責任を否定することもできない。
消費者庁の逐条解説2条の「表示」についての具体例は,PBとOEMを区別して説明している(冊子26頁)。
2 部品メーカーと完成品メーカーの責任を分ける
部品の欠陥が完成品の事故につながった場合,部品メーカーと完成品メーカーのそれぞれについて,欠陥及び事故との因果関係を検討する。
部品メーカーが発注者の図面どおりに製造したというだけで,製造物責任法上の免責が認められるわけではない。
同法4条2号は,欠陥が専ら完成品等の製造業者による設計上の指示に従ったことにより生じ,かつ,その欠陥について部品等の製造業者に過失がないことの証明を求めている。
実務では,指示書の版,変更履歴,危険を指摘したメール,仕様変更の承認及び検査結果を対応させて保存する方法が考えられる。
「誰が設計したか」と「欠陥がどこから生じたか」は同じ問題ではない。
3 販売者・設置業者の別の責任も確認する
一般の販売者は,原則として,販売したという理由だけで製造物責任法の責任主体になるものではない。
しかし,買主に対する契約不適合責任,危険を認識した後の対応に関する不法行為責任等は別に検討する必要がある。
設置・修理に原因がある場合も,製品引渡し時の欠陥と,設置・修理の契約又は注意義務の問題を分ける。
製造業者等への該当性は,消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」Q12~Q18も参照されたい。
第3 不具合,欠陥及び損害を混同しない
1 契約どおりでないことと安全性を欠くこと
製造物責任法2条1項の対象は,製造又は加工された動産である。