目次
第1 転用決済金を支払っただけで,全額を譲渡費用にはできない1 土地を売る費用か,保有中の負担かを分ける2 本記事の対象と確認時点第2 農地転用決済金には四つの要件がある1 国税庁の通達を契約と請求明細に照合する2 通達の旧42条と現行43条を読み分ける第3 未納賦課金を決済金へまとめても扱いは変わらない1 決済年度の賦課金も除外の確認が必要である2 請求総額を区分する仮例第4 協力金と自家転用は別の分岐で判断する1 協力金等にも四つの要件がある2 自分の土地を自分で使うための転用3 許可等が不要な公共用地の買収第5 契約と申告の前にそろえる資料1 土地改良区への確認事項2 弁護士と税務担当者がそろえる時系列第6 区画整理の清算金とは別の制度である第7 出典
第1 転用決済金を支払っただけで,全額を譲渡費用にはできない
1 土地を売る費用か,保有中の負担かを分ける
土地改良区に支払う農地転用決済金は,一定の要件を満たす場合,個人の譲渡所得の計算上,譲渡費用として扱われる。
しかし,土地改良区に払った金額のすべてが対象になるわけではない。
転用して売る契約に伴う決済金,過年度等の未納賦課金,施設を将来使用するための協力金及び自分で使う土地の転用費用を区別する必要がある。
所得税法33条3項は,取得費と「その資産の譲渡に要した費用の額」を総収入金額から控除する仕組みを定めている。
国税庁「譲渡費用となるもの」も,売るための直接の費用と,資産の維持・管理の費用を分けている。
農地転用決済金等については,さらに個別の通達が具体的な要件を定めている。
2 本記事の対象と確認時点
本記事は,個人が土地改良区内の農地を転用目的で売却する場合の,譲渡費用の判断を中心とする。
令和8年10月13日に確認した施行法令と,国税庁が公表している平成19年6月22日付け法令解釈通達に基づく。
土地改良区からの請求自体の適法性,法人の会計処理,消費税及び買主側の取得費は,それぞれ別の要件を確認する問題である。
第2 農地転用決済金には四つの要件がある
1 国税庁の通達を契約と請求明細に照合する
国税庁「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱いについて」2(1)は,農地転用決済金について,次の四つをすべて満たすことを求めている。
名称が「決済金」であることだけでは足りず,売買契約,土地改良区の規程及び支払の内訳を照合する。
要件確認する内容①転用して売買する契約転用許可等を停止条件とするなど,農地を転用して売買することが契約内容になっているか②法令と規程に基づく支払義務土地改良法の権利義務の決済規定と,これを受けた土地改良区の規程による償還金・事業費等か③譲渡に際する支払転用目的での譲渡に際して土地改良区へ支払われたものか④既に発生した未納賦課金の除外決済時点で既に支払義務が発生していた,決済年度以前の年度の賦課金等の未納入金ではないか
(1) 契約上の転用目的を確認する
買主がいずれ宅地にする予定を持っているという事情と,転用して売買することが契約内容になっていることは同じではない。
売買契約書,転用許可等に関する条項,用途・引渡条件,契約に至る申出書等を保存する。
単に登記地目が田又は畑かどうかだけで要件を判断しない。
(2) 決済金の根拠と実際の負担を確認する
土地改良区の規程に基づく義務的な支払か,どの土地に係る償還金・事業費等かを確認する。
あわせて,売主・買主の負担条項,土地改良区に対する支払名義,領収書,売買代金の精算書をそろえる。
買主からの補填や代金からの控除がある場合には,同じ金額を双方の計算で重複して控除しないよう,契約上の負担と金銭の流れを税務担当者に説明する。
2 通達の旧42条と現行43条を読み分ける
平成19年の通達2(1)ロは,土地改良法42条2項と記載している。
一方,確認時点の現行土地改良法では,権利義務の承継及び決済は43条であり,2項が,資格喪失時に承継又は資格交替がない場合の必要な決済を定めている。
古い通達の条番号を現在の法令にそのまま当てはめず,原資料の表記と現行条文の対応を区別して読むべきである。