メインコンテンツへスキップ
       

国連海洋法条約とは―領海・EEZ・大陸棚・公海と日本との関係をわかりやすく解説(AI作成)

国連海洋法条約は,海の区分と,そこで各国が行使できる権利・負う義務を定める国際条約である。正式名称は「海洋法に関する国際連合条約」であり,英語の略称はUNCLOSである。
領海,排他的経済水域(EEZ),大陸棚,公海を区別すると,「外国船が航行できるか」「誰が魚や海底資源を利用できるか」「どの裁判所が紛争を扱うか」を理解しやすくなる。本記事は,条約の全体像と主要条文の読み方を説明する。

第1 国連海洋法条約の目的・成立・日本の参加

1 海の利用を包括的に規律する条約である

国連海洋法条約は,海域の区分だけでなく,船舶の通航,資源の探査・開発,海洋環境の保護,海洋科学調査,紛争解決などを扱う。本文は17部・320条であり,9の附属書がある。深海底に関する第11部は,1994年の実施協定と併せて読む必要がある。
「海を沿岸国のものとする条約」とだけ理解するのは適切でない。沿岸国の権利と,外国船舶の通航など他国の権利・自由を調整する仕組みである。
参照:外務省・海洋の国際法秩序と国連海洋法条約,ITLOS・条約の概要

2 世界での発効と日本についての発効は異なる

条約は1982年に採択され,1994年11月16日に発効した。日本は1983年2月7日に署名し,1996年6月20日に批准書を寄託した。日本についての発効日は,同年7月20日である。
署名,批准,発効は異なる段階である。ある国に条約上の義務が及ぶかを調べるときは,署名の有無だけでなく,その国についての締結・発効の状況を確認する。
参照:国連条約集・締結状況,外務省の説明

第2 領海・接続水域・EEZ・公海の違い

1 距離は海岸からではなく基線から測る

領海などの幅は,条約に従って定める基線から測る。通常基線は,沿岸国が公認する大縮尺海図に記載される海岸の低潮線である。一定の地理的条件を満たす場合には直線基線を用いることがある。
領海の外側に12海里の接続水域があり,そのさらに外側に200海里のEEZがある,という足し算ではない。12・24・200海里は,それぞれ基線から測る上限である。
詳しくは,日本の領海,直線基線の要件と内水化を参照。

2 海域ごとに沿岸国の権限が異なる

海域位置の基本権利・通航の基本
内水原則として基線の陸地側主権が及ぶ。一般的な無害通航権はないが,直線基線によって新たに内水化した水域には例外がある。
領海基線から12海里を超えない範囲沿岸国の主権が及ぶが,外国船舶の無害通航権に服する。
接続水域領海外で,基線から24海里を超えない範囲通関・財政・出入国管理・衛生に関する法令違反の防止・処罰のため,限定された規制を行う。
EEZ領海外で,基線から200海里を超えない範囲資源に関する主権的権利などが認められる。他国の航行・上空飛行などの自由もある。
公海EEZ,領海,内水,群島国の群島水域に含まれない海域特定国の主権に服さず,条約上の条件に従って各国が航行などの自由を享有する。

これは制度の比較であり,特定の海域の境界を描いたものではない。対向国・隣接国との境界画定や,島・岩からどの海域が生じるかは別に検討する。
群島国の群島水域は,通常の内水と同じではない。条約第4部には,群島水域の法的地位と通航に関する別の規定がある。
根拠:条約2~8条,17条,33条,46~54条,55~58条,86~89条。条約原文(国連条約集・英語本文は冊子397頁以降)

3 主権と主権的権利を区別する

領海に対する主権は,上空,海底及びその下にも及ぶ。一方,EEZの主権的権利は,資源の探査・開発・保存・管理など,条約が定める目的に関する権利である。
したがって,「日本のEEZに入った外国船は,入っただけで違法になる」とは限らない。航行と漁獲・資源開発を分け,その船が何をしているかを確かめる必要がある。

第3 大陸棚・深海底は水面の区分と分けて読む

1 大陸棚は海底とその下に関する制度である

大陸棚は,条約76条が定める領海の外側の海底及びその下である。沿岸国は,探査と天然資源の開発のための主権的権利を行使する。EEZと違い,大陸棚の権利自体は,上にある水域や上空の法的地位を変えない(77・78条)。
同じ場所でも,水域にはEEZ又は公海の制度が,海底には大陸棚の制度が適用されることがある。一定の条件を満たす大陸棚は200海里を超えるが,そのことでEEZまで200海里を超えて広がるわけではない。
海底と水域の区別,資源,200海里を超える大陸棚と境界画定については,排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の違いで詳しく説明する。

2 深海底と公海は同じ場所を意味する言葉ではない

条約上の深海底は,国の管轄権の及ぶ区域の外側にある海底及びその下をいう。深海底とその資源は,人類の共同の財産とされる(1条1項(1),136条)。国際海底機構が関わる制度も設けられている。
公海は水域に関する区分である。公海の下に沿岸国の大陸棚がある場合もあるので,「公海の海底はすべて深海底」とは説明できない。

第4 外国船舶の通航と日本の特定海域

1 領海には無害通航権がある

すべての国の船舶は,条約に従って領海を無害通航する権利を有する(17条)。通航の継続性・迅速性と,沿岸国の平和・秩序・安全を害しないことを確認する(18・19条)。航行していることと,漁獲や兵器訓練を行うことは同じではない。
国際航行に使用される海峡では,通過通航や停止されない無害通航など,別の制度を検討する。通過通航は,船舶だけでなく航空機の上空飛行も含む。
詳しくは,国際海峡の通航制度を参照。

2 日本の五つの特定海域

日本では,宗谷海峡,津軽海峡,対馬海峡東水道・西水道,大隅海峡の一部で領海幅を3海里とする制度がある。すべての海峡で通過通航が適用される,という説明は正確でない。条約36条は,同様に便利な公海又はEEZの航路がある海峡の扱いを定める。
特定海域の範囲と政府説明は,領海記事の特定海域の解説を参照。

第5 紛争解決と近年の協定

1 条約違反の有無と裁判所の管轄権は別である

条約第15部は紛争解決を定め,287条はITLOS,ICJ,附属書Ⅶ仲裁,附属書Ⅷ特別仲裁という四つの手続を掲げる。どこへでも自由に訴えられるのではなく,当事国の手続選択,別の合意,適用制限・除外などを確認する。
ITLOSは海洋法条約に基づく裁判所であり,海に関係するすべての紛争を当然に扱う裁判所ではない。根拠:ITLOS・管轄権の説明

手続の選択,297条の制限と298条の除外,本案・暫定措置・船舶の早期釈放の違いは,国連海洋法条約の紛争解決制度を参照。

2 BBNJ協定は条約を基礎とする別の協定である

BBNJ協定は,国の管轄に属さない区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用について,国連海洋法条約を基礎に定める協定である。2026年1月17日に発効した。日本は2025年12月に締結している。
国連海洋法条約そのものと,その枠組みに基づく後続の協定は区別して読む必要がある。
参照:外務省・BBNJ協定

第6 批准国・米国・条文についての疑問

1 締約国数は基準日を付けて確認する

国連条約集の2026年10月7日付け表示は,締約者数を172としている。この数は国だけを数えた「172か国」という意味ではなく,EUなどを含む締約者数である。外務省の2026年2月現在の説明は「171か国及びEU」である。
最新の参加状況を調べる場合は,国連条約集の基準日と,署名欄・批准等の欄を確認する。

2 米国は締約国か

外務省の2026年10月7日付けITLOS解説は,米国が国連海洋法条約を未締結であることを明示している。未締約であることから,海洋に関する国際法のすべてがその国に適用されない,と結論付けることはできない。条約上の義務と,慣習国際法上の規則を分けて確認する必要がある。
参照:外務省・国際海洋法裁判所,国際公法の法源

3 条文・日本語訳・英文はどこで読むか

外務省の条約資料・和文及び英文HTML,外務省の日本語PDF,国連条約集の原文を参照できる。HTMLでは本文の和文・英文を対照できる。外務省のPDF資料は分割されており,冒頭PDFだけで本文全体を読めるわけではない。原文と解説を区別し,該当する部・条文を確かめる。

調べたいこと主要条文
領海の幅・通常基線・直線基線3・5・7条
内水・低潮高地・島と岩8・13・121条
無害通航・国際海峡17~19条,第3部
EEZ・他国の航行55~58条
大陸棚・上部水域・境界画定76~79・83条
公海・旗国の管轄権86~94条
紛争解決・制限・除外第15部,特に287~299条

本記事の資料確認日は2026年10月11日である。海域の具体的な境界や個別活動の適法性は,関係国の合意・宣言,地形,活動内容なども踏まえて検討する必要がある。