目次第1 この記事の対象と資料1 この記事の対象2 資料の名称と入手の経緯第2 通知の内容1 家庭局長通知の本文2 別紙:大蔵省国有財産局長の要望3 要望の契機となった事案4 資料から分かることと分からないこと第3 当時の条文と現在の条文1 相続財産管理人から相続財産清算人へ2 公告の手続の変化第4 国庫に帰属する時期―最高裁昭和50年10月24日判決1 判決の内容2 事案3 実務上の意味第5 現在の引継ぎの手続1 不動産2 金銭3 共有持分4 引き継げない財産が残る場合第6 清算人と申立人が確認すべき事項1 清算人が引継ぎの前に確認すること2 申立人と関係者が知っておくこと第7 出典1 提供資料2 法令3 裁判例4 公的資料第8 別のセッションで掘り下げるテーマと未検討点
第1 この記事の対象と資料
1 この記事の対象
本記事は,相続人のあることが明らかでない相続財産のうち,清算と特別縁故者への分与を経てなお残った財産を国に引き継ぐ手続について,昭和41年3月24日付けの最高裁判所家庭局長通知「国庫に帰属した相続財産の引継ぎについて」(家二第48号)を手掛かりに整理するものである。
通知の内容を紹介した上で,当時の条文と現在の条文の違い,国庫に帰属する時期についての最高裁判例,及び現在の引継ぎの手続を説明する。
令和8年10月1日時点の裁判所ウェブサイトの判例情報,財務省の通達,家庭裁判所の公開資料等を確認して作成した。
民法の改正の内容は,衆議院ウェブサイトに掲載された改正法の法律本文で確認した。
作成時点ではe-Gov法令検索がメンテナンス中で利用できなかったため,現行の条文は,e-Gov法令検索で改めて確認する必要がある。
相続財産清算人の選任から国庫への引継ぎまでの手続の全体は「相続人がいない場合の相続財産清算人」で,不動産が国庫に帰属した後の管理と処分は「国庫帰属した不動産のその後」で,それぞれ整理している。
2 資料の名称と入手の経緯
本記事で扱う資料は,最高裁判所家庭局長が家庭裁判所長に宛てた昭和41年3月24日家二第48号の通知「国庫に帰属した相続財産の引継ぎについて」であり,大蔵省国有財産局長の昭和41年3月8日付け要望書(蔵国有第565号)が別紙として付いている。
この文書は,平成31年1月10日付けの司法行政文書の開示の申出に対し,最高裁判所が平成31年2月8日付けの司法行政文書開示通知書(最高裁秘書第532号)で開示したものである(開示文書のPDF)。
開示通知書によれば,開示された文書は片面で1枚であり,相続人が存在しない物件の所在,権利関係等の個人識別情報が記載された部分は,行政機関情報公開法5条1号に定める不開示情報に相当するとして開示されていない。
そのため,別紙の「物件の所在、区分、数量」と「経緯」の欄は全部が黒塗りであり,個別の事案の内容は分からない。
「系図」の項目も見出しだけで,内容は付いていない。
第2 通知の内容
1 家庭局長通知の本文
家庭局長通知の本文は,大蔵省国有財産局長から別紙のとおり要望があったとした上で,次のことを家庭裁判所長に求めている。
① 家庭裁判所が民法952条の相続財産管理人を選任したときは,管理人に対し,その職務内容をはじめ,清算手続,家庭裁判所の監督権限,特別縁故者への相続財産処分制度及び国庫帰属財産の引継手続などを説明すること
② 国庫に帰属した財産を速やかに所轄財務局長等に引き継がせるよう,周知徹底を図ること
通知は,選任の際に管理人へ説明する事項として,清算の手続だけでなく,特別縁故者への分与の制度と,国庫に帰属する財産の引継ぎの手続までを挙げている。
特別縁故者への分与の制度は,昭和37年法律第40号による民法の改正で設けられたものであり(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決の判決理由),この通知は,その改正から約4年後に出されたものである。
本記事では,新しい制度の運用が始まって間もない時期に,選任の段階で手続の終わりまでを管理人に説明させることで,引継ぎの遅れを防ごうとしたものと考えられる。
2 別紙:大蔵省国有財産局長の要望
別紙の要望書(蔵国有第565号)は,最高裁判所事務総局家庭局長に宛てたもので,「相続人不存在財産について」という表題である。
要望書は,相続人不存在財産(不動産)が国庫に帰属する場合には,相続財産管理人から当該財産の所在地を管轄する財務局長に引き継ぐことになっているとした上で,所要の手続をとって国庫に帰属させるべき財産を,管轄の財務局長に引き継がないで放置するおそれがあることを指摘している。
そして,相続人不存在財産が生じた場合には,遅滞なく所要の手続をとり,国庫に帰属することとなったものは,速やかに当該財産の所在地を管轄する財務局長等に引き継ぐ手続をとるよう,周知徹底を求めている。
大蔵省国有財産局は,昭和39年の大蔵省設置法の改正(昭和39年法律第105号)で管財局を改めて置かれた局であり,昭和43年の行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律(昭和43年法律第99号)13条により大蔵省設置法5条1項から削られ,国有財産の管理及び処分に関する事務は理財局が所掌することになった。
現在,国有財産の事務を所管するのは財務省理財局である。
3 要望の契機となった事案
(続きを読む...)相続人がいない遺産を国に引き継ぐ手続―最高裁家庭局長通知「国庫に帰属した相続財産の引継ぎについて」(昭和41年),引継ぎの時期と財務局への引継ぎ(AI作成)