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外国籍・国外財産がある相続と遺言―国際裁判管轄・準拠法・反致・遺言方式(AI作成)

第1 最初に五つの問題を分ける

外国籍の被相続人,国外居住の相続人又は国外財産がある相続事件では,次の五つを分けて検討する必要がある。

① 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか
② 日本国内のどの家庭裁判所又は地方裁判所が管轄するか
③ 相続又は遺言の成立・効力にどの国の実質法を適用するか
④ 遺言の方式がどの国の法に適合すれば有効か
⑤ 財産所在地国で名義変更,検認,遺産管理又は税務手続が必要か

日本の裁判所が手続を行うことと,日本民法が相続関係を規律することは同じではない。
また,日本法上有効な遺産分割協議書又は審判があっても,外国の不動産登記,金融機関又は裁判所がそのまま受け付けるとは限らない。

第2 日本の裁判所に国際裁判管轄があるか

家事事件手続法3条の11は,相続に関する審判事件について,相続開始時に被相続人の住所が日本国内にある場合を基本的な管轄原因とする。
住所がない又は知れない場合の居所,さらに一定の場合における日本国内の最後の住所も規定しているため,住民票だけでなく,生活の本拠を示す居住,家族,職業,資産及び在留関係の資料を確認する。

国際裁判管轄が日本にあることが分かっても,国内土地管轄は別に決める。
遺産分割審判は相続開始地を管轄する家庭裁判所が基本であり,遺産の範囲又は所有権を争う民事訴訟とは手続が異なる。詳細は,遺産分割調停・審判の管轄,移送と自庁処理(AI作成)で説明している。

国外財産があることだけで,日本の家庭裁判所の国際裁判管轄が当然に失われるわけではない。
反対に,日本国内に財産があることだけで,あらゆる相続審判について日本の管轄が当然に生じるとも限らない。申立ての種類と家事事件手続法3条の11の各要件を対応させる必要がある。

第3 相続の準拠法と反致

1 相続は被相続人の本国法による

法の適用に関する通則法36条は,相続は被相続人の本国法によると定める。
したがって,被相続人が外国籍である事件では,相続人の範囲・順位,相続分,遺留分に相当する制度,相続の承認・放棄及び遺産の承継方法について,原則としてその外国法の内容を確認する。

「日本に長く居住していた」「財産の大半が日本にある」「相続人が全員日本人である」という事情だけから,日本民法が当然に適用されるとはいえない。
重国籍,地域により法が異なる国及び人的に法が異なる国については,通則法38条及び40条に従い,本国法としてどの法を選ぶかを先に確定する。

2 反致は外国法の抵触規則まで確認する

通則法41条は,当事者の本国法によるべき場合に,その国の法に従えば日本法によるべきときは,日本法によると定める。これが反致である。
反致を判断するには,外国の相続実体法だけでなく,その国の国際私法又は抵触法を確認しなければならない。

外国法が,動産は被相続人の住所地法,不動産は所在地法とするなど財産ごとに準拠法を分けている場合,日本にある財産について日本法への反致が成立することがある。
ただし,国名だけから一律に結論を出してはならない。外国法の改正日,施行日,地域差,国籍・住所・常居所の定義及び個別の財産分類を一次資料又は現地専門家により確認する必要がある。

第4 遺言の成立・効力と方式を分ける

通則法37条は,遺言の成立及び効力を,その成立当時における遺言者の本国法によるとする。遺言の取消しについては,取消し当時の本国法も問題となる。
遺言の成立・効力に関する実体問題と,署名,証人及び書面等の方式問題を分けるべきである。
遺留分は相続の問題として通則法36条により準拠法を定め,遺言の成立・効力の準拠法とは区別する。遺言を有効に作成できることと,相続人の遺留分に相当する権利が制限されることは同じではない。

遺言能力など意思表示としての遺言自体の成立・効力は通則法37条の問題であるが,その内容である遺贈の有効性は,財産の死亡による承継を規律する相続の問題として同法36条を確認する。
遺言の方式,遺言者の能力,遺贈内容及び遺留分の準拠法を分け,どの時点の国籍・法令・事実を用いるかを記録する必要がある。

遺言作成後に認知症が進行したり後見開始の審判を受けたりしたことだけで,作成時の遺言能力が失われていたとは決まらない。
作成時の診療録,説明・応答の記録及び遺言内容を確認し,準拠法の要求する能力をその時点で判断する。
後見開始後に新たな遺言を作る場面は別であり,日本法が適用される成年被後見人の遺言では,民法973条の医師2人以上の立会い等も確認する。

遺言の方式の準拠法に関する法律2条は,遺言の方式が,①行為地法,②遺言の成立時又は死亡時の国籍国法,③同じく住所地法,④同じく常居所地法又は⑤不動産に関する遺言については所在地法のいずれかに適合するとき,方式に関して有効とする。
一つの方式法に適合しなかったから直ちに無効とせず,他の連結点を順に確認する。

もっとも,方式が有効であることと,遺言内容が準拠実体法上有効であることは別である。
また,日本の通則法が遺言による一般的な準拠法選択を当然に認めているわけではない。遺言者の本国法に準拠法選択の規定があると主張する場合は,その外国法の条文,適用範囲及び方式を確認する必要がある。

第5 国外財産は現地手続を別に確認する

国外の不動産,預金,証券,会社持分又はデジタル資産については,準拠法の検討と並行して,財産所在地国の実行手続を確認する。
現地の裁判所によるプロベート又は遺産管理人の選任,領事認証,アポスティーユ,翻訳,公証,納税者番号,現地口座及び相続税・遺産税が必要となる場合がある。

日本の遺産分割協議書を用いるときは,署名者の本人確認,相続関係の証明,署名証明,文書の認証及び翻訳の形式を,提出先ごとに確認する。
現地機関へ提出する前に,原本を一つしか作成していない遺言書又は身分資料を不用意に交付せず,返却の有無と代替資料を確認すべきである。

国外の共同名義口座では,銀行に対する払戻権限,生前の名義人間の帰属及び死亡後の生存者取得を分けて調べる。口座契約の準拠法が相続全体の準拠法を決めるとは限らず,財産ごとの準拠法と相続準拠法の適用関係も問題となる。具体的な確認資料とハワイ州法の例は,海外の共同名義口座は遺産に含まれるか―生存者取得,遺留分と日本の相続税・贈与税で説明している。

現地で遺産の外に移る財産であっても,日本の課税対象外とは限らない。相続税法1条の3・1条の4等の納税義務の範囲,同法9条等のみなし取得及び同法10条の財産の所在を別に判定する。取得者と被相続人・贈与者の住所,国籍,居住履歴及び在留資格をそろえ,国税庁の国外居住者に関する説明も確認する。

さらに,非居住者である相続人等が有価証券等を取得する場合には,相続税とは別に,所得税法60条の3による国外転出(相続)時課税を確認する。
一定の居住者である被相続人が,合計1億円以上の対象資産を所有等し,非居住者がその全部又は一部を取得すると,移転する対象資産の含み益について被相続人の所得税が生じ得る。実際に株式を売っていない場合も,準確定申告の検討が必要である。
国税庁No.1468が示す申告期限は,相続開始を知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までであり,相続税の10か月の期限を待ってよいものではない。

国際相続では,次の期限を一括して扱わず,担当者と起算日を分けて管理する。

① 日本の準確定申告:被相続人の所得と国外転出(相続)時課税を税理士と確認し,通常は相続開始を知った日の翌日から4か月以内に申告・納税する。
② 日本の相続税:納税義務の範囲,財産評価,外国税額控除及び特例を確認し,通常は死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税する(国税庁No.4205)。
③ 外国の相続税・遺産税:現地の専門家と,申告者,起算日,期限,延長及び日本の税額控除との関係を確認する。日本の申告期限と同じとは限らない。
④ プロベート・遺産管理・金融機関の名義変更:現地手続の担当者と,申立て,原本,翻訳・認証及び払戻し条件を確認する。税務申告と並行して進め,現地手続の未了だけで日本の申告期限が延びると考えない。
⑤ 国外財産調書等:取得者の居住者区分と年末の財産を判定し,国外財産調書の相続開始年の特例,口座所在地による所在判定及び翌年以降の提出義務を税理士と確認する(国税庁No.7456)。

対象資産,納税管理人と納税猶予の確認順序は,海外移住・海外在住者への贈与と相続で問題となる国外転出時課税―対象資産,納税管理人と納税猶予で説明している。

会社への遺贈では,相続・遺言の準拠法とは別に,個人側の所得税と会社側の法人税を判定する。
国籍だけで所得税上の居住者区分を決めたり,日本の裁判所が遺贈の有効性を判断できることから課税範囲まで導いたりしてはならない。
国内の通常の会社への不動産遺贈で確認する評価資料,納税資金及び遺留分の精算は,会社への不動産遺贈で確認する税金―みなし譲渡・受贈益・遺留分の精算(AI作成)で説明している。

第6 受任時の資料と確認表

受任時には,少なくとも次の資料を一覧化する。

① 被相続人の国籍,重国籍の有無及び国籍変動
② 死亡時と過去の住所・居所・常居所
③ 婚姻,離婚,認知,養子縁組その他の身分関係
④ 遺言書の原本,作成地,作成日,方式及び撤回・変更
⑤ 財産ごとの国,所在地,名義,口座及び評価額
⑥ 債務,保証,担保及び各国の税務申告
⑦ 日本と外国で既に開始した裁判・行政・金融機関手続
⑧ 外国法の条文,施行時点,翻訳及び確認者
⑨ 現地弁護士,公証人,税理士その他の担当者
⑩ 提出済み原本,認証文書,翻訳及び返却状況
⑪ 共同名義口座の契約・生存者取得条項,名義変更履歴,各人の拠出及び死亡前後の払戻し
⑫ 取得者と被相続人・贈与者の住所履歴,在留資格,過去の贈与税・相続税申告及び外国税の納税記録

相続事件全体の期限と財産調査は,相続手続の期限と財産調査-相続事件の実務(AIリライト)を参照されたい。
在日韓国人の相続人調査については,在日韓国人の相続人調査-韓国の家族関係証明書・除籍謄本の取得と相続放棄で説明している。

第7 実務上の注意点

外国法は法律問題であるが,日本の裁判所が常に職権で内容を完全に調査してくれるとは限らない。
条文だけでなく,公式英訳,施行資料,判例,現地法律家の意見書及び日本語訳を提出できる形にし,どの時点の法をどの事実に適用するかを明示することが重要である。

国際相続では,「日本法か外国法か」という一問だけで事件全体を処理できない。
国際裁判管轄,国内土地管轄,準拠法,遺言方式,外国法の内容,現地実行手続及び税務を一つの表で管理し,未確認事項には確認先と期限を付すべきである。

被相続人や相続人が外国で行方不明となっている事件では,失踪宣告の国際裁判管轄も別に確認する。
日本の裁判所は,不在者が生存していたと認められる最後の時点で日本に住所又は日本の国籍を有していたときは日本法により失踪の宣告をすることができるが,これに当たらないときは,日本所在の財産や日本法によるべき法律関係等についてのみ宣告をすることができ(通則法6条),その効力も当該財産又は法律関係の範囲に限られる。
外国の裁判所がした失踪宣告は,家事事件手続法79条の2により,その性質に反しない限り民事訴訟法118条の要件を確認して扱う。
相続人の変動,相続税の申告期限及び外国の失踪宣告の扱いは,失踪宣告と相続・相続税―死亡とみなされる時点,相続人の変動,申告期限,取消し及び外国が関わる場合で説明している。

第8 一次資料と確認状況

本稿は,通則法,遺言の方式の準拠法に関する法律,家事事件手続法,民事訴訟法,所得税法及び相続税法の現行条文と,本文で案内した国税庁の公表資料を一次資料として作成した。
本記事は国際相続の基本的な検討順序を説明するものである。特定の外国法の内容と現地機関の提出要件は,対象国・地域,財産の種類及び適用時点ごとに確認する必要がある。共同名義口座の具体例と研究論文の見解は,本文で案内した別記事で出典と適用範囲を示している。