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裁判制度・司法行政

司法記者クラブとは―司法記者の仕事,加盟社・所在地,法曹記者クラブとの違い(AI作成)

目次

第1 司法記者クラブとは1 裁判所を取材する記者の組織2 記者クラブ一般の位置付け3 裁判所の広報から見た司法記者クラブ4 資料の時点と限界第2 加盟社と人数1 最高裁判所事務総局広報課作成の名簿2 常駐社3 非常駐社第3 所在地1 最高裁判所と霞が関の2か所2 大阪司法記者クラブ第4 法曹記者クラブとの違い1 法曹記者クラブは法務省の記者クラブ2 最高裁判所との懇談会の案内第5 裁判所が司法記者クラブに行う便宜供与1 便宜供与の性格2 東京の裁判所の対応基準3 大阪の裁判所の資料に見る便宜供与4 判決要旨の交付の流れ5 開廷表の提供の取扱い第6 司法記者の仕事1 所属と担当2 座談会に見る日々の取材3 記者会見と幹事社第7 出典・関連記事1 出典2 関連記事
第1 司法記者クラブとは
1 裁判所を取材する記者の組織

司法記者クラブは,裁判所を継続的に取材する新聞社・通信社・放送局の記者が組織する記者クラブである。
最高裁判所事務総局広報課が作成した名簿は「司法記者クラブ名簿」と題し,その連絡先の欄では「司法記者会」の名称を用いている。
本記事では,この名簿その他の開示文書に基づき,司法記者クラブの加盟社,所在地,法曹記者クラブとの違い,裁判所がクラブに対して行う便宜供与及び司法記者の仕事を整理する。

2 記者クラブ一般の位置付け

日本新聞協会編集委員会の「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」(平成14年1月17日,平成18年3月9日一部改定)は,記者クラブを「取材・報道のための自主的な組織」と位置付けている。
同見解は,記者クラブを日本新聞協会加盟社とこれに準ずる報道機関から派遣された記者などで構成されるものとし,参加形態についても,常駐,非常駐,オブザーバー加盟など,各クラブの事情に応じた運用を挙げている。
また,「取材・報道のための組織である記者クラブとスペースとしての記者室は、別個のものだということです。」と述べ,組織としての記者クラブと,公的機関が設ける記者室を区別している。

3 裁判所の広報から見た司法記者クラブ

最高裁判所事務総局広報課の「広報ハンドブック」(令和2年3月版)は,「3-1 報道機関についての基礎知識」の「5 裁判所の記者クラブ」(18頁)で,裁判所を取材する記者らも記者クラブを組織しているとした上で,記者クラブを「常時裁判所関係の取材を行っている記者たちの団体という意味で最も重要な相手方」と位置付けている。
同じ頁は,記者クラブが主体となって裁判所に便宜供与を要請し,裁判所側も記者クラブを相手に各種の申入れや調整を行っているとし,「一定期間ごとの持ち回りで幹事社を決め,この幹事社が,期間中,クラブ各社のまとめ役,連絡役を果たすことが多いようである。」と説明している。
地方では,裁判所を取材する記者クラブが検察庁も併せて取材することが一般的であり,警察や県庁を取材する記者クラブが兼ねている場合もあるとされている(同頁)。

4 資料の時点と限界

本記事が用いる名簿は,平成31年2月18日現在と令和2年5月7日現在のものである。
令和8年10月18日に確認した限りでは,その後の名簿は公表されておらず,現在の加盟社・人数は確認できていない。
大阪高裁・大阪地裁・東京高裁・東京地裁の資料も,それぞれ作成・改定された時点のものであり,現在の運用と同じであるとは限らない。

第2 加盟社と人数
1 最高裁判所事務総局広報課作成の名簿

最高裁判所事務総長は,司法行政文書の開示申出に対し,平成31年2月18日付け司法記者クラブ名簿(平成31年4月26日付け最高裁秘書第2264号)と令和2年5月7日付け司法記者クラブ名簿(令和2年7月8日付け最高裁秘書第1608号)を開示した。
いずれの名簿も,常駐社と非常駐社に分けて,社名,電話番号,人数,キャップ及び記者の氏名を記載する様式である。
記者の氏名と内線番号・電話番号の一部は,行政機関情報公開法5条1号,2号イ及び6号に定める不開示情報に相当するとして開示されなかった。

区分平成31年2月18日現在令和2年5月7日現在常駐社15社・104名15社・104名非常駐社20社・39名20社・41名合計35社・143名35社・145名

令和2年5月7日現在の名簿の合計人数「145」は,手書きで記入されている。

2 常駐社

常駐社は,両時点とも同じ15社であり,各社の人数は次のとおりである。

社名平成31年2月18日令和2年5月7日朝日新聞9名9名毎日新聞10名10名読売新聞10名10名日本経済新聞8名7名産経新聞5名6名東京新聞6名4名北海道新聞3名3名共同通信社10名10名時事通信6名7名NHK10名11名日本テレビ5名5名TBS5名6名フジテレビ6名6名テレビ朝日8名8名テレビ東京3名2名
3 非常駐社

非常駐社は,両時点とも次の20社である。

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裁判所関係者の叙勲・褒章の推薦手続―最高裁判所人事局長通達と情報公開の答申(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と要点1 対象とする手続と資料2 要点第2 春秋叙勲の推薦1 最高裁判所長官は推薦者の一人2 推薦対象者3 推薦庁と推薦の流れ4 推薦の上限数,辞退歴及び事故の報告5 最高裁判所長官から内閣総理大臣への推薦文書第3 藍綬褒章と遺族追賞の推薦1 推薦対象者は調停委員と補導受託者2 推薦庁と推薦期限3 遺族追賞第4 死亡叙勲・叙位と高齢者叙勲の推薦1 死亡叙勲・叙位2 叙位の推薦先と手続文書3 高齢者叙勲第5 推薦基準の非公開と情報公開の答申1 推薦基準は大部分が不開示2 「公職の経歴」を求める基準の存否応答拒否3 内定者名簿の不開示第6 出典・関連記事1 最高裁判所の通達・文書(ブログ掲載の開示文書)2 答申・内閣府の資料3 関連記事
第1 この記事の対象と要点
1 対象とする手続と資料

本記事は,裁判官,裁判官以外の裁判所職員及び調停委員が春秋叙勲,藍綬褒章,死亡叙勲,叙位又は高齢者叙勲の候補者となるとき,裁判所の内部でどのように推薦が行われるかを整理するものである。
主な資料は,最高裁判所事務総局人事局長が平成28年4月27日付けで高等裁判所長官等に宛てた推薦の通達4本(情報公開で一部不開示のまま開示されたもの)であり,内閣府の推薦要綱等と,情報公開・個人情報保護審査委員会の答申も用いる。
基準日は令和8年10月18日である。

受章者の実際の名簿は勲章受章者名簿(裁判官,簡裁判事,一般職,弁護士及び調停委員)に,役職ごとの受章の傾向は裁判所関係者及び弁護士に対する叙勲の相場(AIリライト)にまとめている。

2 要点

① 春秋叙勲では,高等裁判所が管内の裁判所に所属し又は所属していた候補者を最高裁判所事務総局人事局長宛てに推薦し,最高裁判所長官が内閣総理大臣に推薦する。
② 裁判所内部の推薦期限は,春の叙勲が前年の10月20日,秋の叙勲がその年の4月20日であり,内閣府賞勲局への協議書類の提出期限より2か月余り早い。
③ 藍綬褒章の推薦対象は,調停委員と,家庭裁判所から少年の補導を委託された補導受託者である。
④ 死亡叙勲・叙位は死亡の事実を把握した事務局長の報告と協議から,高齢者叙勲は年齢88歳に達した者について始まる。
⑤ 推薦対象者の要件の一部,推薦障害事由及び別表は不開示であり,「公職の経歴」を求める基準の文書については存否も明らかにされていない。

第2 春秋叙勲の推薦
1 最高裁判所長官は推薦者の一人

春秋叙勲候補者推薦要綱(平成15年5月16日内閣総理大臣決定)は,最高裁判所長官を,内閣総理大臣に叙勲候補者を推薦する「各省各庁の長」の一つとしている。
推薦に当たっては,あらかじめ文書で内閣府賞勲局に協議し,その書類は,春の叙勲では前年の12月26日までに,秋の叙勲ではその年の6月30日までに提出する。

2 推薦対象者

春秋の叙勲候補者の推薦について(平成28年4月27日付け最高裁人調第295号人事局長通達,令和2年7月13日最終改正)第1は,次のいずれにも該当する者を叙勲候補者として推薦するとしている。
① 生存者
② 叙勲の発令日(春は毎年4月29日,秋は毎年11月3日)において年齢70歳以上の者
③ 昭和39年春以降の春秋の叙勲(賜杯を含む。)により勲章又は銀杯若しくは木杯(他省庁の所管する分野の功労によるものを含む。)を授与されていない者
④ 紅綬褒章及び紺綬褒章を除く各種褒章を受章した者については,受章後5年を経過した者
⑤ 不開示とされた要件

②の年齢の要件に続く部分と⑤の要件は黒塗りであり,第2の推薦障害事由も,「第1の定めにかかわらず,次のいずれかに該当する者は,叙勲候補者として推薦することができない。」という柱書を除いて不開示である。

3 推薦庁と推薦の流れ

同通達第3の1によれば,高等裁判所は,当該高等裁判所又は管内の裁判所(検察審査会を含む。)に現に所属し,又は退職時に所属していた推薦対象者を,最高裁判所事務総局人事局長宛てに推薦する。
調停委員以外の候補者については,再任用職員,臨時的任用職員,任期付採用職員,非常勤職員及び執行官としての所属は,ここでいう所属に含まれない。
判事等を退職した後に簡易裁判所判事に任命された者は,簡易裁判所判事として所属し又は所属していた簡易裁判所の所在地を管轄する高等裁判所が推薦する。

候補者が他省庁の所管する分野で功労を有するときは,その省庁等と十分協議し,裁判所から推薦することについて了解を得る(栄典協議)。

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最高裁判所長官の記者会見と談話―今崎長官の就任会見,憲法記念日会見及び生成AIに関する発言(令和6年~令和8年)(AI作成)

目次

第1 最高裁判所長官の記者会見と談話の位置付け1 本記事の対象と基準日2 談話と記者会見の違い3 裁判所ウェブサイトに掲載される長官の発信4 過去の会見録の探し方第2 令和6年8月16日の就任談話と就任記者会見1 就任談話の要点2 下級裁判所の仕事,迅速化及びデジタル化3 裁判員裁判の公判前整理手続と「過剰な丁寧さ」4 具体的な事件と憲法についての回答の差控え5 刑事裁判官としての経歴についての発言第3 令和7年の憲法記念日の談話と記者会見1 談話の要点2 質問の範囲3 多様性をめぐる裁判と公平・中立4 再審請求事件と司法研修所の研究会5 個別の案件への回答の差控え第4 令和8年の憲法記念日記者会見1 民事訴訟手続のデジタル化の全面施行2 保釈と大川原化工機事件をめぐる質問3 再審と無罪が確定した事件の検証4 憲法と憲法改正の議論第5 生成AIに関する発言の推移1 令和6年8月の就任記者会見2 令和7年の憲法記念日記者会見3 令和8年の憲法記念日記者会見4 令和8年6月の長官所長会同における挨拶5 3回の会見での発言の読み方第6 関連記事第7 出典
第1 最高裁判所長官の記者会見と談話の位置付け
1 本記事の対象と基準日

本記事は,最高裁判所長官が就任時と憲法記念日に行う記者会見及び談話について,裁判所ウェブサイトの「トピックス」に掲載された概要を基に整理するものである。
対象は,第21代の最高裁判所長官である今崎幸彦長官の就任時(令和6年8月)の談話・記者会見,令和7年及び令和8年の憲法記念日の談話・記者会見,並びに令和8年6月の長官所長会同における挨拶である。
基準日は令和8年10月17日であり,発言の引用は,いずれも裁判所ウェブサイト又はInternet Archiveの保存ページの記載による。

長官の地位と権限は最高裁判所長官の地位,権限及び選任で,任期と定年は最高裁判所長官の任期と定年で整理している。
本記事は,長官が裁判の外で何を述べてきたかを,一次資料に沿って確かめるためのものである。

2 談話と記者会見の違い

就任時と憲法記念日には,長官名義の「談話」と,記者の質問への応答を記録した「記者会見の概要」が,別々のページとして掲載される。
会見の概要の冒頭には,長官が記者会見を行い「談話を発表するとともに、以下のとおり、記者からの質問に応じました。」と書かれている。
談話は長官があらかじめ用意した文章であり,会見の概要は,記者の質問と長官の回答を【記者】【長官】の形で一問ずつ記録したものである。

したがって,長官の考えを引用するときは,談話の文章と,質問に答えた会見での発言とを区別する必要がある。
会見では,記者が個別の事件や政治日程に触れて質問することが多く,長官がどこまで答え,どこで回答を控えたかも,発言の内容の一部になる。

3 裁判所ウェブサイトに掲載される長官の発信

裁判所ウェブサイトのトピックスには,就任時と憲法記念日の談話・会見のほか,長官の「新年のことば」,毎年6月の高等裁判所長官,地方裁判所長及び家庭裁判所長会同における挨拶等が掲載されている。
令和8年の「新年のことば」の内容は,令和8年最高裁判所長官「新年のことば」を読むで整理している。

令和8年6月10日の会同における挨拶は,記者会見と異なり,全国の高等裁判所長官,地方裁判所長及び家庭裁判所長に向けて,長官が裁判所の運営の方針を述べたものである。
その内容は,第5の4で取り上げる。

このほか,皇族の薨去に際しては「謹話」が掲載されることがある。
令和6年11月15日には,三笠宮崇仁親王妃百合子殿下の薨去に際して,今崎長官の謹話が掲載された。
謹話は哀悼の意を表す儀礼的な文章であり,司法の課題についての発言は含まれていない。

節目の年には,就任時と憲法記念日以外にも記者会見が開かれることがある。
例えば,大谷直人長官は,裁判員制度の施行から10年を迎えた際に記者会見を行い,その概要が令和元年5月にトピックスへ掲載された。
最高裁判所判事の就任記者会見の概要も,同じトピックスに掲載される(今崎長官は,最高裁判所判事に就任した令和4年6月24日にも記者会見を行っている。)。
判事の就任記者会見の準備資料は,最高裁判所判事の就任記者会見の関係文書で紹介している。

4 過去の会見録の探し方

令和7年の憲法記念日記者会見の概要のページと,同じ年の談話のページは,令和8年10月17日に確認したところ,いずれも内容が存在しない旨の応答(HTTP 404)を返し,トピックスの一覧にも見当たらなかった。
会見の概要は,Internet Archiveが令和7年(2025年)12月15日に保存したページで,談話は令和8年(2026年)2月10日に保存したページで,それぞれ読むことができる。

このように,長官の会見録は,一定期間を過ぎると裁判所ウェブサイトの一覧から外れることがある。

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最高裁判所の広報ハンドブックとは―総論・一般広報の内容と令和2年3月版の改訂点(AI作成)

目次

第1 本記事で扱う資料と基準日1 3つの資料2 改訂の経過3 資料の性格と限界第2 令和2年3月版の構成第3 総論(1-1~1-5)1 一般広報と報道対応2 広報活動は司法行政上の事務である3 広報活動を行う理由4 中立性・公平性5 疑義がある場合の対処第4 一般広報(2-1~2-7)1 一般広報の意義2 広報のためのツール3 ウェブサイトと広報テーマ4 憲法週間と「法の日」週間5 裁判所内外の広報企画第5 平成25年4月版から令和2年3月版への主な改訂点1 改訂履歴に掲げられた項目2 本文を突き合わせて確認した変更第6 少年事件編第7 弁護士実務での読み方1 裁判所への取材と事件関係者2 判決要旨・撮影・少年事件の関連記事3 司法行政文書としての扱い第8 出典・関連記事1 出典2 関連記事
第1 本記事で扱う資料と基準日
1 3つの資料

最高裁判所事務総局広報課は,各裁判所の広報事務担当者向けに「広報ハンドブック」を作成している。
本記事では,当ブログに掲載している次の3つの資料を扱う。
① 広報ハンドブック(令和2年3月版)(PDF69頁。本文は印刷頁1頁~63頁)
② 広報ハンドブック(少年事件編)(令和2年3月版)(PDF11頁。本文は印刷頁1頁~9頁)
③ 広報ハンドブック(平成25年4月版)(PDF66頁。本文は印刷頁1頁~60頁)

以下,頁は各資料の印刷頁で示し,特に断らない限り①の令和2年3月版の頁である。
令和2年3月版のPDFでは,印刷頁に6を足した数がPDFの頁になる。

2 改訂の経過

令和2年3月版の「はじめに」は平成22年2月付けであり,その後に平成24年4月,平成25年4月及び令和2年3月の改訂の内容が順に記載されている(PDF2頁~3頁)。
平成24年4月の改訂は,平成23年度に裁判所ウェブサイトの大規模な改修を行ったことに伴うものとされている。

最高裁判所事務総長の平成31年1月8日付けの司法行政文書不開示通知書は,「最高裁判所の広報ハンドブック(平成25年5月以降の最新版)」について,作成又は取得していないことを理由に開示しないこととしている。
この通知と改訂の記載からすると,平成25年4月版の次の改訂が令和2年3月版である。

3 資料の性格と限界

広報ハンドブックは,裁判所の広報活動について基本的な事項や留意すべき事項をまとめた職員向けの参考資料である。
「はじめに」は,個々の広報事案での対応をまとめたマニュアル本ではなく,事案や状況に応じて個別に検討する必要があると述べている(PDF2頁)。
法令ではないから,報道機関や事件関係者に何らかの権利を与えるものではない。

本記事は令和2年3月版までを対象とし,その後に改訂された版があるかどうかは,公表されている資料では確認できない。
ハンドブックが挙げる記者クラブや報道機関の説明,裁判所ウェブサイトの構成等は,令和2年当時の記載である。

第2 令和2年3月版の構成

令和2年3月版は,6つの章と,目次末尾の「裁判所の広報活動のイメージ」(PDF6頁)から成る。
各章の内容と当ブログの関連記事は,次のとおりである。

章主な項目(頁)当ブログの関連記事1 総論広報活動の種類・性格・理由,中立性・公平性,疑義がある場合の対処(1頁~5頁)本記事の第32 一般広報一般広報の意義,広報ツール,ウェブサイト,広報テーマ,憲法週間・「法の日」週間,裁判所内外の広報企画(6頁~15頁)本記事の第43 報道対応の基礎報道機関の基礎知識,責任者対応・窓口一本化の原則,報道対応の種類,記者との接し方,上級庁への情報提供等(16頁~24頁)裁判所の報道対応の基礎4 報道発表等資料提供,記者レク,所長等就任記者会見,記者会見,懲戒処分の公表(25頁~33頁)裁判所の報道発表等5 取材対応念頭に置くべきこと,一般的な留意事項,即答できない場合,休日・緊急時,裁判官等・支部・検察審査会への取材(34頁~48頁)裁判所の取材対応6 裁判報道/便宜供与法廷内写真撮影,庁舎内写真撮影,判決要旨等,法廷内記者席,著名事件,少年事件(49頁~63頁)法廷内写真撮影,判決要旨等ほか(第7の2)

「裁判所の広報活動のイメージ」は,一般広報と報道対応を1枚にまとめた図である。
報道対応については,記者会見・記者レク・投げ込みによる報道発表と,個別照会への対応及び事件取材への便宜供与による取材申込みへの対応を挙げ,留意点として,適正な裁判運営への配慮,裁判所の中立性・公平性の確保及び関係者のプライバシー保護を掲げている。

第3 総論(1-1~1-5)
1 一般広報と報道対応

ハンドブックは,裁判所の広報活動を「一般広報」と「報道対応」に大別する(1頁)。

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裁判所の保管金・予納金の還付―電子納付,口座名義・変更と法律事務所の事件別精算(AI作成)

目次

第1 保管金の還付と訴訟手数料の還付を分ける第2 電子納付をした残額は自動的に返ってくるか1 残額の還付には個別の手続が不要と案内されている2 納付の際に必要な登録と事件への申出3 電子納付を利用できない保管金もある第3 還付先は依頼者と弁護士のどちらの口座か1 提出者本人名義が原則である2 東京地裁は法律事務所名義の預り金専用口座も案内している第4 還付口座や事務所の住所が変わったとき1 口座変更は新しい利用者登録を行う2 係属事件のある各裁判所にも連絡する第5 裁判所への納付から依頼者への返金まで記録をつなぐ1 裁判所に残っている金銭を事件別に管理する2 清算例では前提を明示する第6 還付金は法律事務所の売上になるか1 入金口座と金銭の帰属を分ける2 報酬に充当する部分は別に判断する第7 いつ還付されるか,どこに確認するか第8 出典・関連資料1 現在の手続を確認する公式資料2 事務所内の管理と税務の資料
第1 保管金の還付と訴訟手数料の還付を分ける

裁判所へ納めた金銭の返金は,金銭の種類によって手続が異なる。
本記事は,裁判所が保管する予納金等の残額について,電子納付の登録,還付先口座の確認,口座変更及び法律事務所内の精算を説明する。
令和8年10月14日に確認した裁判所の公式案内,東京地方裁判所の令和7年1月のQ&A及び日弁連・国税庁の公表資料を用いる。

金銭の種類返金・回収で確認すること裁判所の保管金・予納金の残額還付事由の発生,提出者,納付方法,登録口座又は事前の還付請求を確認する。電子納付では残額の自動振込が案内されている訴訟手数料過納,取下げ等について法律所定の要件と申立てを確認する。保管金の自動還付と同じ手続ではない相手方から回収する訴訟費用費用負担の定めと費用額確定手続等を確認する。裁判所に預けた残額の返金ではない

訴訟手数料の還付額,申立期限及び処分後の支払請求は,訴訟手数料の還付―取下げ・過納の場合の金額,申立期限及び異議(AI作成)で扱っている。
ここでいう裁判所の保管金は,供託所に納める供託金とも区別する必要がある。
事件の種類,費目及び裁判所から交付された納付案内を確認し,「予納金」という名称だけで納付先や還付方法を決めない。

第2 電子納付をした残額は自動的に返ってくるか
1 残額の還付には個別の手続が不要と案内されている

裁判所の全国共通の案内「保管金の電子納付について」は,事件の終了等で残金を返す場合,利用者登録時に指定した銀行口座へ自動的に振り込み,事件番号・還付金額等を記載した保管金振込通知書を登録住所へ送付すると説明している。
この残額還付については,個別の手続は不要とされている。
ただし,登録をしたことだけで,還付事由の発生前に金銭を返してもらえるわけではない。

電子納付以外でも,事前に還付先口座を指定する方法が案内されている場合がある。
例えば東京地方裁判所民事第21部の「配当金等の支払・予納金の還付手続について」は,保管金提出書兼還付請求書の還付先欄に口座が記載されていれば,残額について別途請求書等を提出する必要はないと説明している。
これは同部の対象手続の案内であり,未指定の口座や他の種類の金銭まで同じ扱いになると一般化しない。

2 納付の際に必要な登録と事件への申出

電子納付を初めて利用するときは,裁判所の保管金担当係へ電子納付利用者登録申請書を提出し,利用者登録コードを取得する。
登録コードは全国の裁判所で共通して利用できる。
東京地方裁判所のQ&Aは,登録後又は最後に電子納付を利用した日から2年間利用しない場合は登録が抹消されると説明している。

事件担当の裁判所書記官へ,電子納付を利用する旨と登録コードを伝え,交付された書面に記載された収納機関番号,納付番号及び確認番号を用いて,Pay-easy対応のインターネットバンキングやATM等から納付する。
電子納付では,交付された保管金提出書を裁判所へ返送する必要はなく,保管金受領証書も交付されない。
事務所内では,納付情報と金融機関の取引記録を事件に対応させて保存することが有用である。

3 電子納付を利用できない保管金もある

全国共通の案内は,不動産競売の買受申出保証金及び売却代金について,電子納付を利用できないと明記している。
保釈保証金等の緊急性のある納付では,納付の前及び納付後に担当書記官への連絡が必要と案内されている。
時間外・休日等は裁判所が即時に納付を確認できない場合があるため,送金したことと,事件上必要な納付確認が済んだことを分けて確認する。

第3 還付先は依頼者と弁護士のどちらの口座か
1 提出者本人名義が原則である

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法廷でバッジや服装を制限できるか―オープンコート訴訟と法廷秩序・表現の自由(AI作成)

目次

第1 オープンコート訴訟の現在地1 令和8年10月8日の進行報告2 この訴訟で問われていること第2 法廷秩序を維持する権限の根拠1 裁判所法71条2 裁判所傍聴規則第3 法廷メモ事件の最高裁判決から分かること1 公開裁判と傍聴人の行為2 服装制限の結論をそのまま導く判決ではない第4 服装・バッジの制限を検討するときの確認事項1 表示と、審理を妨げる行為を区別する2 指示の経過と、措置の範囲を確認する第5 判決前の情報の読み方
第1 オープンコート訴訟の現在地
1 令和8年10月8日の進行報告

CALL4の「オープンコート訴訟―法廷の“秩序”を問う―」の掲載ページでは、令和8年10月8日に第7回口頭弁論が開かれ、第一審の審理が終結したと報告されている。
同ページは、判決期日を令和9年1月26日午後3時、東京地方裁判所103号法廷と案内している。
令和8年10月12日時点のこの報告は審理の進行に関するものであり、服装制限の違法性について判決が出たという情報ではない。

出典はCALL4「オープンコート訴訟―法廷の“秩序”を問う―」の進行報告である。
これは原告側が発信する情報であり、裁判所の認定事実や公式な期日案内とは位置付けが異なる。

2 この訴訟で問われていること

掲載ページでは、法廷で身に着けていたバッジや衣服の表示を隠すよう求められたことなどについて、原告側が問題を提起している。
本記事で扱うのは、単に服装が目立つかどうかではなく、具体的な表示と具体的な法廷の状況の下で、どのような根拠と必要性により制限できるかという問題である。
命令があったか、どのような説明や対応であったかといった経過自体も、当事者の主張と裁判所による認定を分けて確認する必要がある。

裁判所への入庁時の所持品検査については、全国の裁判所の所持品検査に関する記事を参照されたい。
入庁時の安全確保と、法廷内の服装・表示の制限は、場所と目的を分けて考える必要がある。

第2 法廷秩序を維持する権限の根拠
1 裁判所法71条

裁判所法71条1項は、法廷の秩序の維持を裁判長又は開廷した一人の裁判官が行うと定めている。
同条2項は、法廷で裁判所の職務の執行を妨げたり不当な行状をしたりする者について、退廷を命じるなど、秩序維持に必要な事項を命じる権限を定めている。

したがって、法廷には秩序維持のための権限が存在する。
しかし、権限が存在することだけで、あらゆるバッジや衣服の表示を同じように制限できるという結論にはならない。
表示の態様、言動、審理への影響、求められた措置の内容を具体的に検討する必要がある。

2 裁判所傍聴規則

最高裁判所の「裁判所傍聴規則」1条2号は、秩序維持に必要と認める場合、傍聴人の被服・所持品を検査させ、危険物等の持込みを禁じさせる措置を定めている。
同条3号は、その処置に従わない者や相当な衣服を着用しない者等の入廷を禁ずる措置を定めている。
同規則2条、3条は、傍聴人が指示に従うことや静粛を保つことなどを定めている。

ここでも、必要性と具体的な行為を確認することが出発点になる。
また、この規則の傍聴人に関する規定を、弁護人その他の訴訟関係者にも同じ形で適用できると直ちに説明することはできない。
誰に対する、どの場所での措置であるかを区別したい。

第3 法廷メモ事件の最高裁判決から分かること
1 公開裁判と傍聴人の行為

(続きを読む...)法廷でバッジや服装を制限できるか―オープンコート訴訟と法廷秩序・表現の自由(AI作成)

国連海洋法条約の紛争解決制度―ITLOS・ICJ・仲裁と管轄権の限界(AI作成)

目次

第1 最初に確認すること―当事国・紛争・合意1 条約の解釈・適用に関する紛争か2 平和的手段・意見交換・別の合意を確認する第2 287条の四つの手続1 ITLOS・ICJ・二種類の仲裁2 当事国の選択が一致しない場合第3 297条の制限・298条の選択的除外1 沿岸国の権利に関する紛争のすべてが除外されるわけではない2 海洋境界・軍事活動などの除外宣言3 除外しても平和的解決義務は残る第4 本案・暫定措置・船舶の早期釈放を区別する1 暫定措置は本案判断と同じではない2 早期釈放は拿捕事件のすべてを裁く手続ではない3 日本が関係した事件から分かること第5 判断の拘束力と個別事件の読み方1 拘束力は当事国・当該紛争との関係で考える2 個別事件では検討順序を保つ第6 主な出典と対象範囲

国連海洋法条約に違反する行為があると主張できることと,特定の裁判所がその紛争を審理できることは別である。同条約第15部は,平和的解決の義務,当事国の手続選択,拘束力のある決定を伴う手続,その適用制限・除外を定める。
本記事は,「海の紛争ならITLOSに訴えればよいのか」「仲裁は双方の新たな同意がなければ始められないのか」という疑問に,制度の順序と条件を示すものである。条約の全体像と海域の違いは,国連海洋法条約とはを参照。

第1 最初に確認すること―当事国・紛争・合意
1 条約の解釈・適用に関する紛争か

第15部の基本的な対象は,国連海洋法条約の解釈又は適用に関する紛争である。海上で生じた紛争というだけで,条約上の管轄権が当然に認められるわけではない(286・288条)。
領海,資源利用,海洋環境などのどの規定について,どの義務違反・権利侵害が主張されているかを確認する必要がある。陸地の領有権の問題と,条約上の海洋権益の問題も区別する。
根拠:外務省・条約の和文及び英文,国連条約集・条約原文第15部(英語本文の冊子508頁以降)。

例えば,境界未画定海域の資源活動や取締りをめぐる請求では,74条3項・83条3項の義務又は301条の武力による威嚇・武力の行使の禁止など,問題となる条約上の義務との関係を具体的に示す。
293条は管轄権を有する裁判所等の適用法を定める規定であり,それだけであらゆる一般国際法上の請求について管轄権が生じると扱うことはできない。
陸地の領有権を先に判断しなければ解決できない請求かどうかも,請求の実質に即して確認する。

2 平和的手段・意見交換・別の合意を確認する

279条は平和的解決の義務を定め,280条は当事国が選ぶ平和的手段による解決を認める。紛争が生じたときは,交渉その他の平和的手段による解決について,速やかな意見交換を行う義務もある(283条)。
281条は当事国が選んだ手段で解決しなかった場合の条件を,282条は別の一般的・地域的・二国間の合意等に基づく拘束的な手続との関係を定める。交渉が不調になった事実だけを見て,すべての前提条件を満たしたと扱うことはできない。
この確認の後に,286条以下の手続と,第3節の適用制限・除外を検討する。

第2 287条の四つの手続
1 ITLOS・ICJ・二種類の仲裁
手続根拠・特徴国際海洋法裁判所(ITLOS)附属書Ⅵの規程に基づく常設裁判所。所在地はハンブルク。国際司法裁判所(ICJ)国家間の紛争を扱う常設裁判所。287条の選択肢の一つでもある。附属書Ⅶ仲裁当該紛争のために構成する仲裁廷。手続選択が一致しない場合などの基本的な受け皿となる。附属書Ⅷ特別仲裁漁業,海洋環境,海洋科学調査,航行など,附属書に定める分野の紛争を扱う。

287条1項は,署名・批准・加入時又はその後に,書面の宣言で一つ又は複数の手続を選択できると定める。
参照:ITLOS・締約国の宣言に関する説明。ICJの選択条項受諾宣言と287条の手続選択は,別の管轄権の根拠である。前者については,ICJの選択条項受諾宣言を参照。

2 当事国の選択が一致しない場合

当事国が同じ手続を受け入れている場合は,別段の合意がない限り,その手続に付託する(287条4項)。同じ手続を受け入れていない場合は,別段の合意がない限り,附属書Ⅶ仲裁による(同条5項)。
有効な宣言に含まれない紛争については,附属書Ⅶ仲裁を受け入れたものとみなされる(同条3項)。したがって,287条の宣言をしていないことだけで,すべての拘束的な手続を拒否できるとはいえない。
一方,これらの規則から,直ちに個別事件の管轄権が認められるわけでもない。第1節の条件や,297・298条などを併せて確認する必要がある。

第3 297条の制限・298条の選択的除外
1 沿岸国の権利に関する紛争のすべてが除外されるわけではない

297条は,沿岸国の主権的権利・管轄権の行使に関する紛争について,拘束的な手続が適用される場合と,科学調査・漁業に関する制限等を定める。
例えば,航行・上空飛行・海底電線等の自由に関する違反の主張は,同条1項で扱われる。他方,沿岸国の一定の科学調査に関する裁量や,EEZの生物資源についての主権的権利の行使には,同条2・3項の制限がある。
「漁業に関係するから一切審理できない」とも,「EEZ内だからすべて審理できる」ともいえない。請求内容と条文を対応させる必要がある。一部には附属書Ⅴ第2節の調停に進む制度もある。

2 海洋境界・軍事活動などの除外宣言

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家庭裁判所とは―扱う事件・相談できること・手続と費用の調べ方(AI作成)

目次

第1 家庭裁判所とは何をするところか1 家事事件とは―具体例から手続を選ぶ2 地方裁判所・簡易裁判所との違い第2 調停・審判・人事訴訟・少年審判の違い1 手続の目的を区別する2 調停がまとまらなかった場合第3 家庭裁判所で相談できること1 家事手続案内で確認できる内容2 手続案内と法律相談の違い第4 どこの家庭裁判所へ行くか1 管轄と提出先の調べ方2 受付時間と連絡先第5 申立ての書類・費用・期間の調べ方1 必要書類をそろえる2 費用は項目を分けて確認する3 どのくらいの期間がかかるか第6 呼出状が届いたとき・初めて行くとき第7 関連記事及び出典1 関連記事2 出典
第1 家庭裁判所とは何をするところか

家庭裁判所は,離婚,親子,相続,成年後見などの家庭に関する事件と,少年事件を扱う裁判所である。
家庭内の問題すべてを一つの方法で処理するわけではなく,話合いによる家事調停,裁判官が判断する家事審判,離婚などの人事訴訟,少年の調査・審判という,性質の異なる手続がある。
本記事は,令和8年10月11日現在の裁判所の公式案内を基に,初めて家庭裁判所を利用する人が,問題に合う手続と確認先を選ぶための概要を説明するものである。

1 家事事件とは―具体例から手続を選ぶ

家事事件とは,夫婦,親子,親族,相続など,家庭に関する法律上の問題を扱う事件である。離婚,婚姻費用,養育費,遺産分割,相続放棄,成年後見などが代表例となる。家庭裁判所で扱う事件でも,人事訴訟や少年事件は,家事調停・家事審判とは手続の区分が異なる。

家事調停で話合いができることと,合意できない場合に家事審判で判断できることも同じではない。家事事件手続法244条は,別表第一事件を家事調停の対象から除いている。申立てを選ぶときは,相手との合意を求める問題か,法律で定められた許可・選任等を求める問題かを区別する必要がある。

困りごと・目的確認する主な手続詳しい案内離婚について話し合いたい夫婦関係調整(離婚)調停。調停で解決できず離婚の判断を求める場合は離婚訴訟を検討する離婚の手続と決めること養育費・婚姻費用や遺産分割について話合いがまとまらない事件に応じた家事調停・家事審判家事調停の申立てと進行相続放棄,子の氏の変更などをしたいそれぞれの事件について定められた申述・審判の手続裁判所の家事事件案内判断能力が不十分な人の成年後見等を検討したい後見・保佐・補助開始等の審判。必要な支援と制度の種類を確認する東京後見センター・大阪後見センター少年事件で呼出しを受けた少年事件の調査・少年審判。通知の内容と担当者を確認する家庭裁判所の少年事件の流れと保護者の対応

この表は手続を探すための入口であり,申立てが認められる要件や,個々の事件の解決を予測するものではない。
例えば,相続に関する問題でも,遺産の分け方を決める手続と,相続放棄の申述は別である。相手との話合いが必要な問題なのか,法律で定められた許可・選任等を求める問題なのかを区別する必要がある。

2 地方裁判所・簡易裁判所との違い

家庭裁判所を利用するかどうかは,金額だけではなく,問題の種類によって判断する。
親族間の争いであれば,すべて家庭裁判所で訴訟を起こすという意味でもない。例えば,離婚訴訟は家庭裁判所が扱うが,通常の金銭請求等の民事訴訟とは手続の区分が異なる。
裁判所全体の役割は,裁判所とは―5種類の役割・三審制・管轄と利用方法で説明している。

第2 調停・審判・人事訴訟・少年審判の違い
1 手続の目的を区別する
手続進め方と目的利用時の注意家事調停調停委員会が双方の事情を聴き,話合いによる合意を目指す申立てただけで相手に希望どおりの条件を受け入れさせられるわけではない家事審判裁判官が書類,調査結果等の資料を踏まえて判断する審判で扱える事項は法律で定められている人事訴訟離婚・認知など,夫婦や親子の身分関係について訴訟で判断を求める家事調停とは異なる訴訟手続である少年審判非行の有無を確認し,少年の更生・再非行防止に適した処分を検討する家族間の話合いによる調停とは異なる

裁判所の調停手続一般,審判手続一般,人事訴訟手続では,それぞれの役割と進め方が説明されている。
家事調停・家事審判は非公開の手続であるが,人事訴訟まで含めて「家庭裁判所の手続はすべて非公開」と理解しないようにしたい。

2 調停がまとまらなかった場合

養育費,婚姻費用,遺産分割などの別表第2の事項では,調停が不成立になると審判手続へ移る。
一方,離婚調停が不成立になった場合に,離婚訴訟が自動的に始まるわけではない。離婚の判断を求めるには,改めて訴えを提起することを検討する。
事件によっては調停に代わる審判等がされることもあるため,「調停が不成立なら必ず同じ手続になる」と一般化せず,担当者の説明と事件の種類を確認する必要がある。

家事審判の詳しい進行,証拠調べ,記録閲覧等は,家事審判の手続を参照されたい。

第3 家庭裁判所で相談できること
1 家事手続案内で確認できる内容

家庭裁判所では,どの家事手続を利用できるか,申立てに何が必要かを説明する家事手続案内を行っている。
確認したい問題と関係者,現在の状況を短くまとめておくと,必要な案内を受けやすくなる。裁判所の家事手続案内は,受付時間が各家庭裁判所で異なることも説明している。

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最高裁判所とは―役割・裁判官・大法廷と小法廷・判例の調べ方(AI作成)

目次

第1 最高裁判所とは第2 高等裁判所・地方裁判所との違い1 裁判所の種類と三審制2 最高裁判所は主に法律上の問題を審査する第3 裁判官は15人―長官と判事1 長官1人と判事14人2 任命資格・定年・国民審査第4 大法廷と三つの小法廷1 構成員数と定足数の違い2 どの事件が大法廷で扱われるか3 最高裁の大法廷はいつ開かれるか第5 審理・評議・判決と決定1 通常は書面で審理する2 「判決」と「決定」を区別して読む第6 違憲審査・規則制定・司法行政1 憲法に適合するかを最終的に判断する2 裁判官会議と事務総局第7 判例の調べ方と見学・傍聴1 裁判例検索で原文を確認する2 庁舎見学と裁判の傍聴は別のもの第8 よくある質問1 大法廷と最高裁の違いは何か2 長官と15人の判事がいるのか3 小法廷の裁判に不服なら大法廷に上訴できるか4 見学を予約すれば裁判を傍聴できるか5 最高裁判所と小法廷の違いは何か6 最高裁の小法廷は何人で裁判するか7 第一・第二・第三小法廷はどう違うか第9 主な出典
第1 最高裁判所とは

最高裁判所は,日本の裁判所の頂点に位置する裁判所である。日本国憲法76条は,司法権が最高裁判所と法律により設置される下級裁判所に属することを定め,同81条は,最高裁判所を違憲審査権を持つ終審裁判所と位置付けている。

「最高裁判所」を調べるときは,裁判所という組織,そこで判断する裁判官,個別事件の判決・決定,庁舎の見学・裁判の傍聴を分けて考えると,必要な資料へたどり着きやすい。本記事では制度の全体像を説明した上で,目的別に詳しい記事と公式情報を案内する。

調べたいこと主な確認先現職の裁判官,任命,定年最高裁判所裁判官の一覧と制度長官の役割と任命方法最高裁判所長官の地位・権限・選任大法廷の裁判例最高裁判所大法廷の判決・決定一覧判決を決める過程大法廷・小法廷・評議・多数意見・少数意見見学・傍聴最高裁判所の公式案内と初めての傍聴ガイド
第2 高等裁判所・地方裁判所との違い
1 裁判所の種類と三審制

裁判所法2条は,下級裁判所として高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所を定めている。最高裁判所はこれらとは別に,日本全体を管轄する一つの裁判所として設置されている。

地方裁判所を第一審とする通常の民事訴訟を例にすると,第一審判決への不服は高等裁判所への控訴,さらに高等裁判所の判決への不服は最高裁判所への上告等という順序で扱われる。ただし,第一審の裁判所や不服申立ての種類は事件によって異なる。「どの事件も必ず3回,同じ範囲で裁判をやり直してもらえる」という意味ではない。

裁判所全体の種類と役割は,裁判所とはで説明している。

2 最高裁判所は主に法律上の問題を審査する

最高裁判所は,上告と訴訟法が特に定める抗告について裁判権を持つ(裁判所法7条)。公式案内は,最高裁判所を法律審と説明している。第一審で行われるように,証人や証拠を一から調べ直すことを通常の役割とする裁判所ではない。

民事・行政事件では,上告理由と上告受理の申立てを区別する必要がある。上告理由は憲法違反や法が列挙する重大な手続違反に限られる一方,法令の解釈に関する重要な事項を含む事件は,申立てにより上告審として受理されることがある。刑事事件では,憲法違反や判例違反が上告理由となる。具体的な要件は事件の種類と適用される訴訟法によって確認する必要がある。

第3 裁判官は15人―長官と判事
1 長官1人と判事14人

最高裁判所は,最高裁判所長官1人と最高裁判所判事14人で構成される(裁判所法5条)。15人の中で,長たる裁判官が長官であり,その他の裁判官が判事である。

長官は,内閣の指名に基づいて天皇が任命する。判事は内閣が任命し,天皇が認証する。長官も裁判を担当する裁判官であり,長官一人の判断が当然に合議体の結論になるわけではない。

2 任命資格・定年・国民審査

裁判所法41条は,識見が高く,法律の素養がある40歳以上の者を任命することと,15人のうち少なくとも10人について所定の法律関係職の経験要件を満たすことを定めている。裁判官・弁護士などの出身分野ごとの人数を,法律がそのまま固定しているわけではない。

最高裁判所裁判官の定年は70歳である(裁判所法50条)。また,任命後初めての衆議院議員総選挙の際に国民審査を受け,その後10年を経過した後初めての総選挙の際に再び審査を受ける(憲法79条)。現在の構成と各裁判官の経歴は裁判官一覧の記事に,投票方法等は国民審査の記事にまとめている。

第4 大法廷と三つの小法廷

小法廷(しょうほうてい)とは,最高裁判所の裁判官の一部で構成され,事件の審理・裁判を行う合議体である。
最高裁判所という一つの裁判所の内部に,大法廷と第一・第二・第三小法廷が置かれている。

1 構成員数と定足数の違い
区分構成定足数大法廷全裁判官15人9人第一・第二・第三小法廷各5人各3人

構成員数は合議体を組織する人数,定足数は審理・裁判に必要な出席人数である。大法廷が15人で構成されることと,常に15人全員が出席して裁判することは同じではない。構成と定足数は最高裁判所の裁判手続の公式案内でも確認できる。

2 どの事件が大法廷で扱われるか

事件はまず小法廷で審理する。裁判所法10条は,次の場合には小法廷では裁判できないと定めている。

① 当事者の主張に基づき,法律・命令・規則・処分が憲法に適合するかを判断するとき。
ただし,従前の大法廷による合憲判断と同じ意見の場合は除かれる。

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地方裁判所とは―扱う事件・簡易裁判所や家庭裁判所との違い・管轄の調べ方(AI作成)

目次

第1 地方裁判所とは第2 地方裁判所で扱う事件1 主な事件と手続の早見表2 簡易裁判所の民事判決に対する控訴第3 簡易裁判所・家庭裁判所・高等裁判所との違い1 裁判所の種類と担当する問題2 140万円の基準だけでは決まらない場合第4 全国の地方裁判所と本庁・支部1 全国50か所の地方裁判所と203支部2 本庁・支部で扱う事件は一律ではない第5 管轄と提出先の調べ方1 手続名・地域・取扱庁の順に確認する2 提出方法・費用・期日参加方法も確認する第6 地方裁判所を利用するときの目的別案内1 訴えたい・訴状が届いたとき2 傍聴したい・裁判例を調べたいとき第7 よくある疑問1 地方裁判所では必ず3人の裁判官が審理するか2 所長が全ての裁判の結論を決めるか3 最寄りの支部に行けば相談も申立てもできるか第8 出典と確認時点
第1 地方裁判所とは

地方裁判所(地裁)は,民事事件・刑事事件などを最初に審理する,原則的な第一審裁判所である。他の裁判所が第一審の専属管轄を持つ事件等を除き,広い範囲の事件を扱う。簡易裁判所の民事判決に対する控訴も地方裁判所が扱うため,「地裁は必ず第一審」という説明も正確ではない。
本記事では,地方裁判所が扱う事件,簡易裁判所・家庭裁判所との違い,全国の本庁と支部,管轄と提出先の調べ方を説明する。裁判所全体の種類と三審制は,裁判所とは―5種類の役割・三審制・管轄と利用方法を参照されたい。

地方裁判所を利用するときは,「どの種類の裁判所か」「どの地域の裁判所に管轄があるか」「本庁・支部のどの担当部署が受け付けるか」を順に確認する。近い庁舎を見つけただけでは,提出先は決まらない。

第2 地方裁判所で扱う事件
1 主な事件と手続の早見表

地方裁判所の仕事は刑事裁判だけではない。契約や損害賠償をめぐる民事訴訟,行政事件訴訟,破産・民事再生,強制執行,労働審判なども扱う。以下は手続を選ぶための入口であり,個別の管轄や申立要件を全て示す表ではない。

事件・手続主な内容と確認点民事訴訟貸金・代金・損害賠償・不動産等の争い。請求の内容と訴訟の目的の価額から,地裁と簡裁のどちらに提訴するかを確認する。刑事事件起訴された被告人について,有罪・無罪や刑を判断する。簡裁等が扱う事件もあるため,全ての刑事事件が地裁の事件ではない。行政事件訴訟行政処分の取消しなど。訴訟の種類によって管轄が異なり,高裁が第一審を扱う特別な事件もある。破産・民事再生債務者の財産・債務を法定の手続で処理する。訴訟の140万円という基準をそのまま適用せず,破産・再生手続の管轄を確認する。民事執行等預金・給与等の差押え,不動産競売,財産開示など。裁判所が扱う手続と,執行官が行う動産執行・明渡し等を区別する。労働審判労働者と使用者の間の解雇・賃金等の個別労働紛争を扱う。民事訴訟と別の手続であり,申立先と取扱支部を確認する。

手続の概要は,裁判所公式の民事事件Q&Aで確認できる。執行事件では,地域の支部から本庁又は拠点支部へ集約される場合があるため,執行事件の地裁本庁・拠点支部への集約も参照されたい。

2 簡易裁判所の民事判決に対する控訴

簡易裁判所の通常の民事訴訟の判決に不服がある場合,控訴審は地方裁判所である。これに対し,簡易裁判所の刑事判決に対する控訴は高等裁判所が扱う。民事と刑事で経路が異なる。
また,簡裁の少額訴訟には通常の控訴とは異なる異議の制度がある。「簡裁の裁判に不服なら全て地裁へ控訴できる」と考えず,裁判の種類を確かめる必要がある。詳しくは,簡易裁判所の民事訴訟―地方裁判所との違いを参照されたい。

第3 簡易裁判所・家庭裁判所・高等裁判所との違い
1 裁判所の種類と担当する問題
裁判所主な役割身近な例・注意点地方裁判所広い範囲の第一審事件と簡裁の民事控訴等損害賠償請求,破産,労働審判等。事件ごとに管轄を確認する。簡易裁判所原則140万円以下の民事請求の第一審等貸金・代金の請求等。少額訴訟・民事調停などもある。家庭裁判所家事事件,人事訴訟,少年の保護事件等離婚訴訟,遺産分割調停・審判,成年後見等。家族間の全ての紛争が家裁の事件になるわけではない。高等裁判所地裁・家裁の判決等に対する不服申立てを扱う上級審等地裁の第一審判決への控訴等。選挙に関する訴訟など,第一審を扱う場合もある。

例えば,離婚そのものを求める訴訟と,貸した金銭の返還を求める訴訟では,裁判所を選ぶ基準が異なる。相手が配偶者・親族であることだけで全て家庭裁判所に申し立てるわけではない。遺産分割と,相続財産に関係する所有権・金銭請求の訴訟も,手続の性質を分けて確認する。

2 140万円の基準だけでは決まらない場合

裁判所法33条1項1号は,簡易裁判所の民事の第一審について,訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求を定め,行政事件訴訟に係る請求を除いている。金銭請求では請求額が主要な判断材料となるが,「訴訟の目的の価額」は民事訴訟法8条・9条により算定する。
さらに,裁判所法24条1号により,不動産に関する訴訟は140万円以下でも地方裁判所の管轄がある。また,簡裁の管轄事件を地裁が自ら審理する自庁処理の制度もある。これは無条件に地裁へ提訴できるという意味ではなく,民事訴訟法16条2項の範囲で判断される。

基本的な比較は簡易裁判所と地方裁判所の違い,例外の要件と移送申立ては地方裁判所の自庁処理で説明している。訴訟がその簡裁の専属管轄(当事者の合意で定めたものを除く。)に属する場合には,自庁処理の規定は適用されない。

第4 全国の地方裁判所と本庁・支部
1 全国50か所の地方裁判所と203支部

裁判所の公式組織案内によれば,地方裁判所は全国50か所あり,北海道が札幌・函館・旭川・釧路の四つの区域に分かれるほか,各都府県に対応する区域を持つ。地方裁判所の支部は203か所である。
これは裁判所の組織の数であり,庁舎や裁判官の人数ではない。地方裁判所と家庭裁判所,簡易裁判所等が同じ庁舎に置かれる場合もある。

全国の本庁名と支部名を調べるときは,地方裁判所支部・家庭裁判所支部の全国一覧を参照されたい。訪問・郵送の際の住所や電話番号は,公式の各地の裁判所の所在地・電話番号等一覧で最新の案内を確認する。

2 本庁・支部で扱う事件は一律ではない

支部は地方裁判所の事務の一部を取り扱う組織であり,地裁とは別の種類の裁判所ではない。通常の民事訴訟が地域の支部で扱われる場合でも,労働審判,合議事件,裁判員裁判,執行事件等は本庁又は別の支部に集約される場合がある。
本庁・支部・出張所・簡裁の違いは裁判所支部とは,事件別の集約と開廷頻度の資料は全国の地方裁判所支部における本庁集約と開廷頻度を参照されたい。支部が存在することだけで,目的の事件をそこで扱うと判断しないことが重要である。

第5 管轄と提出先の調べ方

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裁判所とは―5種類の役割・三審制・管轄と利用方法(AI作成)

目次

第1 裁判所は何をするところか第2 5種類の裁判所の違い第3 三審制と控訴・上告1 第一審の裁判所によって経路が違う2 同じ内容を必ず3回審理するわけではない第4 管轄と提出先の調べ方1 事件・地域・取扱部署の順に確認する2 本庁・支部・出張所を区別する第5 裁判官と裁判所職員の仕事第6 目的別の利用案内1 裁判を見たいとき2 手続や費用を調べたいとき3 裁判例や裁判所の資料を読みたいとき第7 主な出典
第1 裁判所は何をするところか

裁判所は,法律に基づいて紛争を解決し,刑事事件を裁判するなど,司法権を行使する機関である。日本には,最高裁判所,高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所の5種類がある。
初めて利用するときは,「何の事件か」「どの地域の裁判所か」「本庁・支部のどの部署へ提出するか」を順に確かめるとよい。近くに庁舎があるというだけでは,その事件の提出先とは限らない。

憲法76条1項は司法権の帰属を定め,裁判所法2条は4種類の下級裁判所を,3条は法律上の争訟等についての権限を定める。裁判所は,あらゆる相談に答える総合相談窓口というわけではなく,法律が定めた手続の中で審理・判断を行う。

「裁判所」という言葉は,司法機関の名称だけでなく,裁判官が事件を判断する裁判体や,建物を指す意味でも使われる。例えば,同じ合同庁舎に高裁・地裁・簡裁が入っていても,それぞれの裁判所の担当事件や提出窓口は異なる。
裁判所の管理運営については,司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長で詳しく説明している。

第2 5種類の裁判所の違い
種類主な役割利用場面の例最高裁判所上告などを扱う最上級の裁判所法律が認める上告理由等に基づく不服申立て高等裁判所地裁・家裁の判決,簡裁の刑事判決に対する控訴など地裁で始まった通常民事訴訟の控訴。一部の事件では第一審も扱う地方裁判所民事・刑事の第一審の多くと,簡裁の民事判決に対する控訴など訴額が140万円を超える通常の金銭請求など家庭裁判所家事審判・調停,人事訴訟,少年の保護事件など離婚調停,遺産分割,成年後見,離婚訴訟など簡易裁判所訴額が140万円を超えない民事請求の第一審や,一定の刑事事件など少額の金銭請求,民事調停,支払督促。少額訴訟には別の要件がある

家庭裁判所を初めて利用する場合は,家庭裁判所の役割・扱う事件・手続と費用の調べ方を参照されたい。
離婚,養育費,相続,成年後見,少年事件のどの問題かを確認し,家事調停・家事審判・人事訴訟・少年審判を区別して手続を選ぶことが重要である。

地方裁判所で扱う事件と,簡裁・家裁との違い,管轄や提出先を調べる順序は,地方裁判所とは―扱う事件・他の裁判所との違い・管轄の調べ方で詳しく説明している。民事・刑事以外の手続も含めて確認できる。

この表は主な役割を示したものであり,事件の全てを列挙したものではない。簡裁の民事の第一審管轄から行政事件訴訟は除かれ,不動産に関する訴訟は訴額が140万円以下でも地裁にも第一審の裁判権がある(裁判所法24条1号,33条1項1号)。また,民事調停や支払督促の利用条件を,通常訴訟の140万円という基準だけで決めることはできない。

少額訴訟は,簡裁で行う60万円以下の金銭支払請求を対象とする手続であり,簡裁の全ての民事訴訟が少額訴訟になるわけではない。違いと事件に応じた選び方は,簡易裁判所の民事訴訟―地方裁判所との違いと交通事故事件の争点整理を参照されたい。

家庭内の問題でも,家事調停・審判と離婚訴訟では手続が違う。裁判所の種類を知った後は,具体的に利用する手続の案内を読む必要がある。家裁の運営上の課題を資料から調べたい場合は,実務協議会「家庭裁判所の現状と課題」で対象年度と資料の性質を整理している。

高等裁判所の役割,全国8高裁の本庁と管轄地域,通常の6支部と知財高裁の位置付けは,高等裁判所とは―役割・地裁や最高裁との違い・全国8高裁と支部の一覧で詳しく説明している。

第3 三審制と控訴・上告
1 第一審の裁判所によって経路が違う

三審制は,原則として第一審,第二審,第三審の裁判所が不服申立てを審査する仕組みである。第一審判決への不服申立てが控訴,第二審判決への不服申立てが上告である。ただし,事件の種類や裁判の形式によって,不服申立ての名称・要件・経路は異なる。

例原則的な経路地裁で始まる通常の民事訴訟地裁の第一審 → 高裁への控訴 → 最高裁への上告簡裁で始まる通常の民事訴訟簡裁の第一審 → 地裁への控訴 → 高裁への上告簡裁で始まる刑事事件簡裁の第一審 → 高裁への控訴 → 最高裁への上告家裁で始まる離婚訴訟など家裁の第一審 → 高裁への控訴 → 最高裁への上告

簡裁の通常民事訴訟では,第三審は原則として高裁である。さらに最高裁へ申し立てることができる制度もあるが,要件が限定されており,全事件が同じ経路で最高裁まで進むものではない。民事訴訟法311条,327条等を,対象となる裁判に即して確認する必要がある。

2 同じ内容を必ず3回審理するわけではない

上告には法律が定める理由が必要であり,民事の最高裁は,事実認定を最初からやり直す審級ではない。上告と上告受理申立ての要件も同じではない(民事訴訟法312条,318条)。不服があれば,期限と申立先に加えて,どの制度で何を争えるかを確かめる。

少額訴訟の終局判決には控訴ができず,同じ簡裁に異議を申し立てる仕組みがある。異議後の判決にも控訴はできない(民事訴訟法377条,378条,380条)。また,家事審判などの決定に対する不服申立てへ,上の「判決→控訴→上告」の表をそのまま当てはめることはできない。
最高裁で民事口頭弁論が開かれる場合の実務は,最高裁判所における民事事件の口頭弁論期日を参照されたい。

第4 管轄と提出先の調べ方
1 事件・地域・取扱部署の順に確認する

まず,通常訴訟,調停,審判,支払督促,執行など,利用する手続を特定する。次に,当事者の住所,義務履行地その他の管轄原因,専属管轄,合意管轄等を,その手続の法律と公式案内で確認する。
通常の民事訴訟でも,請求額だけでは地域の管轄は決まらない。「自宅に一番近い裁判所」「相手の近くの裁判所」という説明だけで提出先を確定しないことが大切である。

(続きを読む...)裁判所とは―5種類の役割・三審制・管轄と利用方法(AI作成)

裁判所職員定員法と総定員法の違い―裁判所の定員を法律で定める理由と国会答弁(AI作成)

目次

第1 裁判所職員定員法と総定員法の基本的な違い1 対象となる組織と定員の定め方2 三権分立と裁判所職員の位置付け第2 裁判所の定員を法律で定める理由1 裁判所法と裁判所職員定員法の関係2 国会答弁で示された組織法上の説明第3 毎年の改正と総定員法方式をめぐる議論1 毎年必ず改正する義務があるわけではない2 平成31年の国会審議で示された利点と課題3 国会による人的体制の審議4 令和8年にも同じ方式の見直しが議論された第4 政府の定員合理化計画との関係第5 法定定員・予算定員・現在員を区別する1 令和8年改正後の法定定員2 予算と実人数は別の資料で確認する第6 出典及び関連記事1 法令・国会会議録2 資料集・附帯決議・採用に関する記事
第1 裁判所職員定員法と総定員法の基本的な違い

裁判所職員定員法は,下級裁判所の裁判官の種類ごとの員数と,裁判官以外の裁判所職員の員数を法律で定めている。これに対し,総定員法は行政機関の常勤職員の総数の最高限度を法律で定め,各機関の具体的な定員を政令で定める仕組みである。
裁判所は総定員法の対象に含まれない。ただし,政府の定員合理化計画の対象外であることと,裁判所が自主的な判断で合理化に協力することとは,区別する必要がある。

1 対象となる組織と定員の定め方
比較事項裁判所職員定員法総定員法正式名称裁判所職員定員法(昭和26年法律第53号)行政機関の職員の定員に関する法律(昭和44年法律第33号)対象下級裁判所の裁判官及び一定の裁判官以外の裁判所職員法律に列挙された行政機関の常勤職員。条文上の除外がある法律の役割裁判官の種類ごとの員数と,裁判官以外の職員の合計員数を定める対象となる常勤職員の総数の最高限度を定める具体的な定員法律に掲げる員数を変更するには法改正が必要総数の最高限度の範囲内で,各機関の定員を政令で定める裁判所への適用裁判所の定員を定める法律である裁判所職員を対象としていない

総定員法の第1条と第2条は,総数の最高限度と各機関の定員を分けて定めている。これに対し,裁判所職員定員法の第1条と第2条は,それぞれ裁判官と裁判官以外の職員の員数を定めている。
この比較は令和8年10月9日現在の施行法令に基づくものである。総定員法には未施行の改正があるため,将来の行政機関の構成と混同してはならない(裁判所職員定員法,総定員法)。

2 三権分立と裁判所職員の位置付け

平成31年3月8日の衆議院法務委員会で,政府参考人は,総定員法が行政機関の職員を対象とする法律であり,三権分立の観点から国会職員と裁判所職員は対象としていないと説明した。
したがって,総定員法の総数に裁判所職員を加えて説明したり,総定員法の定員変更をそのまま裁判所の定員変更と説明したりするのは適切ではない(同日の会議録)。

第2 裁判所の定員を法律で定める理由
1 裁判所法と裁判所職員定員法の関係

裁判所法5条3項は,最高裁判所判事の員数を14人と定め,下級裁判所の裁判官の員数は別に法律で定めるとしている。その別の法律が裁判所職員定員法であり,同法1条は高等裁判所長官,判事,判事補及び簡易裁判所判事の員数を定めている。
最高裁判所の裁判官の員数と,下級裁判所の裁判官の員数は,根拠規定が異なる点に注意を要する(裁判所法5条,裁判所職員定員法1条)。

2 国会答弁で示された組織法上の説明

令和7年3月14日の衆議院法務委員会で,最高裁判所長官代理者は,裁判所の定員は国家機関の組織に関する事項として法律で定めるべき事項であると説明した。その上で,前提となる裁判所の業務量は事件の質や量といった事件動向により大きく左右されるため,最高裁判所において毎年必要な検討をし,所要の見直しを行っていると答弁した。
この答弁は,法律に定員を定めることと,事件動向を踏まえて毎年見直すことを併せて説明したものである(同日の会議録・発言46)。

第3 毎年の改正と総定員法方式をめぐる議論
1 毎年必ず改正する義務があるわけではない

裁判所職員定員法は,法律上の員数を変更する場合に改正が必要となる。毎年の改正案提出という実際の運用と,毎年必ず法律を改正しなければならないという法的義務は,同一ではない。
年度ごとの事件動向や制度改正を踏まえた見直しの結果,法律に掲げる員数を増減させる場合に,国会で改正案が審議される。

2 平成31年の国会審議で示された利点と課題

平成31年3月8日の衆議院法務委員会では,委員から,法律で定員の上限を定め,具体的な定員を最高裁判所規則等に委ねる方式を検討できないかとの質問があった。法務省は,計画的・弾力的な運用に利点がある一方,中長期的な事件動向と必要な人的体制を見通すことが課題になると答弁した。
最高裁判所側も,業務量が事件動向に左右されるため予測には困難が伴うと説明した。この会議録は,総定員法方式への移行を決定した記録ではなく,その方式の利点と検討課題について答弁した記録である(平成31年3月8日会議録)。

3 国会による人的体制の審議

同日の法務省答弁は,事件の適正・迅速な処理には,人員だけでなく,運用改善や手続法の改正を含めた取組が必要であるとした。その取組を踏まえ,人的体制の整備の必要性を定員法改正案の審議で検討することにも意義があると説明している。
裁判所職員定員法の審議を読む際は,員数の増減だけでなく,事件処理,採用,職場環境及び制度改正に関する質疑と併せて確認すると,改正の背景を把握しやすい。

4 令和8年にも同じ方式の見直しが議論された

令和8年4月14日の衆議院法務委員会でも,法律で上限を定め,具体的な定員を裁判所規則等に委任する方式が取り上げられた。法務省は弾力的な運用の長所を認める一方,最高裁判所側は中長期的な事件動向と人的体制の予測に困難が伴うことを説明し,予測が可能かを含めた検討が必要であると答弁している。

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裁判所DXのグランドデザイン(令和4年5月)の計画と実績―フェーズ3,RoootS・TreeeS,家事・刑事のデジタル化はどこまで予定どおりか(AI作成)

目次

第1 この記事の要点1 対象と結論2 資料の性質と基準日第2 グランドデザインの内容1 必要性と目的2 基本的な考え方3 全体像と主な課題4 司法行政のデジタル化とシステム機能の例第3 民事訴訟手続の計画と実績1 ウェブ会議による争点整理(フェーズ1)2 ウェブ会議による弁論準備・口頭弁論(フェーズ2)3 オンライン提出と記録の電子化(フェーズ3)4 RoootSとTreeeS第4 民事非訟・家事・人事訴訟の計画と実績1 法改正2 家事調停のウェブ会議3 システム第5 刑事手続・少年事件の計画と実績第6 計画と実績の一覧第7 最高裁判所自身の振り返り第8 弁護士実務への影響1 民事訴訟は電子申立てが原則になった2 システムの切替えに備える3 家事・執行・倒産・刑事は施行日の政令を見る第9 関連記事第10 出典及び確認状態
第1 この記事の要点
1 対象と結論

本記事は,最高裁判所事務総局デジタル推進室が令和4年5月に作成した「裁判所のデジタル化について(裁判所DXのグランドデザイン)(Ver1.0)~デジタル時代の「新しい裁判所」を築いていくために~」(以下「グランドデザイン」という。)の内容を紹介し,そこに書かれた計画が令和8年10月までにどうなったかを,法令と最高裁判所の後続資料で照合するものである。
グランドデザインは,裁判所のデジタル化の必要性,目的,基本的な考え方及び各分野の検討状況を一つにまとめた資料であり,各分野の工程が年度単位で書かれている。

照合の結論は次のとおりである。

①ウェブ会議による争点整理手続と口頭弁論(いわゆるフェーズ2)は,計画した年度のうちに施行された。
②訴状を含むオンライン提出と訴訟記録の電子化(いわゆるフェーズ3)は,計画の令和7年度から令和8年5月21日の施行へ1年度遅れ,使うシステムも開発中のTreeeSから改修したmintsに切り替わった。
③裁判所職員が使う事件管理システムRoootSは,計画の令和5年度から遅れ,令和7年1月に全庁に導入された。
④TreeeSは,計画の令和7年度から遅れ,令和9年1月に名古屋で先行導入し,令和9年度中に全庁へ導入することを目指すとされている。
⑤家事事件・民事執行・倒産等の法改正は計画どおり令和5年に成立したが,記録の電子化等の中心部分はまだ施行されていない。
⑥刑事手続は,グランドデザインの時点では改正法案の提出時期も未定であったが,令和7年に改正法が成立し,その一部が令和8年5月21日に施行された。

2 資料の性質と基準日

グランドデザインは,表紙,本文13頁及び参考1頁の計15頁の資料であり,作成名義は「最高裁判所事務総局デジタル推進室」である。
本記事で示す頁は,各頁の下に印字された番号であり,PDFの頁と一致する。
表紙には,裁判所のデジタル化の全体像を示そうとするものであること,施策の具体的内容は今後順次示すこと,現在の検討状況をまとめたもので今後の状況等に応じて随時改定する予定であることが記載されている(1頁)。

本記事の基準日は令和8年10月10日である。
基準日までに,裁判所ウェブサイトでグランドデザインの掲載を確認することはできず,改定版も見つからなかった。
グランドデザインが冒頭で引用する「裁判所のデジタル化に向けて」(令和4年2月作成)も,同様に見つからなかった。
法令の施行日は,e-Gov法令APIの改正履歴と条文で確認した。

第2 グランドデザインの内容
1 必要性と目的

グランドデザインは,社会では「対面・紙」から「オンライン・データ」への移行が急速に拡大しており,裁判所もこれに適切に対応する必要があるとする(2頁)。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の定義としては,経済産業省の定義をそのまま引用している。
この定義は,経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」2頁の脚注1の定義と一字一句同じである。

デジタル化の目的は,裁判所の社会的使命である「より良い司法サービス」の提供とされる(3頁)。
国民の側については,次の三つが挙げられている。

①司法サービスを利用しやすくなる(アクセスの向上)。例として,いつでも・どこからでもe提出が可能になること,ウェブ会議による裁判手続への参加(e法廷)。
②司法サービスへの満足度が高まる(質・スピードの向上)。例として,期日間においてもウェブ会議・チャットなどを用いた継続的なコミュニケーション。
③司法サービスを利用するかどうかの情報を得やすくなる。例として,オープンデータ化を含むデータの公表,データの利活用による司法サービスの「見える化」。

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「法の日」と「法の日」週間とは―10月1日の由来・制定経緯・行事(AI作成)

目次

第1 「法の日」と「法の日」週間の期間・目的第2 なぜ10月1日なのか1 陪審法の施行と司法記念日2 最高裁判所で初めて法廷が開かれた日第3 司法記念日・司法週間から「法の日」へ第4 どのような行事があり,どこで確認するか1 広報行事の内容2 参加前に確認する事項第5 憲法週間・世界法の日との違い第6 出典・関連記事1 出典2 関連記事
第1 「法の日」と「法の日」週間の期間・目的

「法の日」は毎年10月1日であり,同月1日から7日までが「法の日」週間である。
法の役割を身近に考え,法を尊重し,基本的人権を守り,社会秩序を確立する精神を高める機会として設けられた。

法務省「『法の日』とは」は,昭和35年6月24日の閣議了解により「法の日」が定められたと説明している。
裁判所,法務省,検察庁及び弁護士会などが,見学会や講演等の広報行事を実施する。

10月1日という記念日と,10月1日から7日までという週間の期間,個々の行事の開催日は分けて確認する必要がある。
週間にちなんだ行事が,7日を過ぎて開催される場合もある。

第2 なぜ10月1日なのか
1 陪審法の施行と司法記念日

法務省だより「あかれんが」第35号「お答えします 『法の日』について」によれば,昭和3年10月1日に陪審法が施行され,その翌年から10月1日を「司法記念日」としたことが,「法の日」の由来である。

令和2年3月版の最高裁判所広報課「広報ハンドブック」13頁は,昭和4年の司法記念日の制定について,前年の陪審法施行に加え,天皇が東京の三裁判所を訪問したことを記念したものと説明している。
その後の司法記念日の日付変更も含めた経過は,第3の年表のとおりである。

2 最高裁判所で初めて法廷が開かれた日

前記の法務省の説明は,昭和22年10月1日が,最高裁判所発足後に同裁判所で初めて法廷が開かれた日であることも挙げている。

広報ハンドブックは,昭和32年の最高裁発足十周年記念行事を10月1日に実施した理由を,この最初の法廷の日との関係で説明している。
「法の日」の由来には,戦前の司法記念日と,戦後の最高裁判所の歩みの両方が関係している。

第3 司法記念日・司法週間から「法の日」へ

以下は,最高裁判所事務総局広報課の広報ハンドブック(令和2年3月版)13頁「『法の日』制定経過」に基づく整理である。
歴史的経過を説明するものであり,各時期の行事内容や通達全文を示すものではない。

年月日出来事昭和3年(1928年)10月1日陪審法が施行された。昭和4年(1929年)10月1日司法省が司法記念日を定めた。前年の陪審法施行と天皇による東京の三裁判所への訪問を記念した。昭和14年(1939年)11月1日裁判所構成法施行五十周年記念行事と天皇の訪問を契機に,以後の司法記念日を11月1日とした。昭和22年(1947年)11月1日~7日最高裁判所が司法週間を定めた。昭和32年(1957年)10月1日最高裁発足十周年記念行事を実施した。昭和34年(1959年)10月3日裁判所,検察庁及び弁護士会の三者協議会で,10月1日を「法の日」とすることを提唱する旨を決議した。昭和35年(1960年)6月24日「法の日」の創設について閣議了解がされた。昭和35年(1960年)8月17日「法の日」週間の広報について依命通達が出された。昭和35年(1960年)10月1日第1回「法の日」を実施し,同月1日から7日までを「法の日」週間とした。

この経過では,司法記念日,司法週間及び「法の日」週間は,名称だけでなく実施された時期も異なる。
戦前から一貫して現在の「法の日」週間が存在したと読むことはできない。

第4 どのような行事があり,どこで確認するか
1 広報行事の内容

広報ハンドブック12頁は,出前講義,法廷傍聴,模擬裁判,映像の上映,資料展示を伴う庁舎見学会等を企画例として挙げている。
前記「あかれんが」第35号も,講演,座談会,法律相談,公判傍聴等の取組を紹介している。
どの内容が実施されるかは,主催機関,地域及び年度によって異なる。

例えば,前橋地方・家庭裁判所の令和8年度「司法探検ツアー」案内は,裁判所の法廷見学・模擬少年審判,検察庁の取調室見学,弁護士や法テラス職員の話をプログラムとして挙げ,10月28日の開催を案内している。
令和8年10月9日に確認したページでは,同年度の申込みは終了と表示されていた。

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大学の単位認定と専攻科修了認定の司法審査―富山大学の同日2判決を読む(AI作成)

目次

第1 単位認定と課程の修了を分けて考える第2 単位認定の判決―原則と例外1 大学の内部的な問題と一般市民法秩序2 卒業要件であることだけでは足りない3 資格要件との関係は具体的に確かめる第3 専攻科修了認定の判決―施設利用の権利と処分性1 公の教育研究施設を利用する権利2 法律に細かな修了要件がないことと処分性3 当該学則の修了要件に即した専門性の判断第4 2判決から導ける範囲と導けない範囲1 修了認定の審査と単位認定の審査は同一ではない2 審査の入口と本案の結論を分ける第5 相談時に確認する資料と判断の順序1 争う行為と求める結果を特定する2 当時の法令・学則と評価資料を保存する3 審査対象・処分性・違法事由を順に検討する第6 関連記事第7 出典
第1 単位認定と課程の修了を分けて考える

大学の成績をめぐる紛争では、授業科目の点数、単位の授与、課程の修了を区別する必要がある。大学の内部の判断であるという理由だけで、すべてを裁判の対象外とすることはできない。

最高裁第三小法廷は昭和52年3月15日、大学の単位授与について原則として司法審査の対象にならないとする判決と、国公立大学の専攻科修了認定を司法審査の対象とする判決を言い渡した。いずれも事件名は「単位不認定等違法確認請求」であるが、事件番号と民集の掲載頁が異なる。

本記事は、この2判決の原文に沿って、判断対象、理由及び射程を整理する。最後の実務上の確認事項は、判決の内容を踏まえた資料整理の提案である。

判決単位認定の判決専攻科修了認定の判決事件番号昭和46年(行ツ)第52号昭和46年(行ツ)第53号掲載民集31巻2号234頁民集31巻2号280頁中心となる判断単位認定は、一般市民法秩序と直接関係する特段の事情がない限り、司法審査の対象外国公立大学の専攻科修了認定は司法審査の対象となり、行政処分に当たる読み違えやすい点単位認定は例外なく審査されない、と広げない修了認定と個別の単位認定を同じものとして扱わない
第2 単位認定の判決―原則と例外
1 大学の内部的な問題と一般市民法秩序

昭和46年(行ツ)第52号判決は、自律的な法規範を有する団体の内部的な問題のうち、一般市民法秩序と直接の関係を有しないものは、自主的・自律的な解決に委ねるという考え方を示した。

大学については、国公立・私立を問わず、教育研究という設置目的を達成するため、学則等によって必要な事項を規定し実施する自律的、包括的な権能を認めた。ただし、大学における紛争のすべてが司法審査の対象外になるという趣旨ではない。

2 卒業要件であることだけでは足りない

判決は、単位の授与を、学生が当該科目を履修し、試験に合格したことを確認する教育上の措置と捉えた。単位取得は卒業要件を構成するが、それだけで当然に一般市民法秩序と直接関係するものではないとした。

したがって、一般市民法秩序との直接の関係を認めるに足りる特段の事情がない限り、単位認定は大学の自主的・自律的判断に委ねられ、司法審査の対象にならない。

3 資格要件との関係は具体的に確かめる

判決は、特定の授業科目の単位取得それ自体が一般市民法上の資格要件とされる場合には、その限りで一般市民法秩序との直接の関係を否定できないとも述べている。

一方、一部にそのような場合があるからといって、すべての科目の単位認定が司法審査の対象になるとはしていない。同事件では、問題となった単位認定について直接の関係を基礎付ける主張立証がなかった。

実務では、資格制度の名称だけでなく、根拠法令が当該科目の単位取得にどのような効果を与えているかを確認する必要がある。単位不足による不利益が大きいことと、判決のいう直接の関係があることは、分けて検討すべき問題である。

第3 専攻科修了認定の判決―施設利用の権利と処分性
1 公の教育研究施設を利用する権利

昭和46年(行ツ)第53号判決は、国公立大学を、一般市民の利用に供された公の教育研究施設と捉えた。学生も一般市民としてこの施設を利用する権利を有することを、判断の出発点とした。

学生は、所定の教育課程を履修して専攻科を修了することにより、専攻科への入学の目的を達する。修了要件を満たしているのに大学が修了を認定しなければ、その目的を達することができない。そのため、実質的には国公立大学の利用を拒否することになり、公の施設を利用する権利に関係するという理由から、修了認定・不認定に関する争いは司法審査の対象になるとした。

2 法律に細かな修了要件がないことと処分性

大学側は、修了認定には法令上の根拠がなく、行政処分に当たらないという趣旨の主張をした。判決は、当時の学校教育法57条が専攻科の教育目的、入学資格及び修業年限を定め、法律に規定のない修了要件や効果等を各大学の学則等に委ねていると解した。

その上で、当該大学の学則に、一定の在学期間と所定の単位取得により課程の修了を認め、修了証書を授与する旨の規定があることを確認した。法令上の根拠と、公の施設を利用する権利との関係から、専攻科修了認定は行政事件訴訟法3条にいう処分に当たると判断した。

法律に詳細な認定基準が直接書かれていないことだけで、処分性を否定した判決ではない。法令と学則の関係をたどることが必要である。

3 当該学則の修了要件に即した専門性の判断

判決は、当該大学の専攻科修了要件が在学期間と所定の単位取得であり、それ以外に教育上の専門的な価値判断を要件とするものではないことを指摘した。両要件が満たされたかどうかの確認には、格別の教育上の専門的判断を必要としないとして、司法審査になじむとした。

これは、どの大学のどの課程についても、修了判断に教育上の専門性がないと断定したものではない。判決当時の学校教育法、大学設置基準及び学則を前提とする説明を、現在の条番号や現在の学則の内容と混同してはならない。

第4 2判決から導ける範囲と導けない範囲
1 修了認定の審査と単位認定の審査は同一ではない

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地方裁判所長・家庭裁判所長の役割―司法行政・裁判官人事と裁判の独立(AI作成)

目次

第1 地家裁所長の役割を理解する前提
第2 裁判官会議と所長
第3 職員に対する司法行政上の監督
第4 裁判官人事と人事関係記録
 1 人事関係記録を閲覧できる者
 2 異動計画の作成
第5 就任前後の情報提供と研修
 1 実務協議会
 2 赴任前の説明に関する資料上の限界
第6 所長の役割に関する注意点
第7 関連記事

第1 地家裁所長の役割を理解する前提

裁判所そのものの取扱事件と管轄は,地方裁判所とは―扱う事件・他の裁判所との違い・管轄の調べ方で説明している。本記事では,所長が担う司法行政事務,裁判官会議・事務局との関係及び裁判の独立を区別して読む。

地方裁判所長及び家庭裁判所長は裁判官であるが,所長としての役割には,個別事件の裁判だけでなく,裁判所の組織運営である司法行政が含まれる。

裁判の内容と司法行政を混同しないことが重要である。裁判所法81条は,監督権によって裁判官の裁判権に影響を及ぼし,又は制限することはできないと定めている。

第2 裁判官会議と所長

裁判所法29条2項は,地方裁判所が司法行政事務を行うのは裁判官会議の議によるものとし,地方裁判所長がこれを総括すると定めている。同条3項は,裁判官会議を全員の判事で組織し,地方裁判所長が議長となると定めている。家庭裁判所についても同法31条の5により同様の仕組みが採られている。

したがって,司法行政の主体を所長個人とだけ説明するのは正確ではない。裁判官会議が司法行政事務を処理し,所長は議長として会議を運営するとともに,司法行政事務を総括する立場にある。

第3 職員に対する司法行政上の監督

裁判所法80条は,司法行政上の監督権の主体を定めている。同条3号によれば各地方裁判所は,その地方裁判所の職員並びに管轄区域内の簡易裁判所及びその職員を監督し,同条4号によれば各家庭裁判所は,その家庭裁判所の職員を監督する。条文上の主体は各裁判所であり,所長は裁判所法29条等に基づき司法行政事務を総括する。

他方,日常の庶務を処理する事務局が置かれ,事務局長は裁判所法59条に基づき,地方裁判所長又は家庭裁判所長の監督を受けて事務局の事務を掌理する。所長,裁判官会議及び事務局長の関係を分けて理解する必要がある。

第4 裁判官人事と人事関係記録
1 人事関係記録を閲覧できる者

司法制度改革審議会の質問に対する最高裁判所の回答として紹介されている資料によれば,最高裁判所事務総局人事局のほか,高等裁判所,地方裁判所及び家庭裁判所にも所属裁判官の人事関係記録があり,下級裁判所の記録は異動に伴って移転するとされている。

同資料は,高等裁判所長官,高等裁判所事務局長及び地家裁所長のように裁判官人事に関与する者が記録を見ることができるとしている。これは,人事事務への関与を前提とした説明であり,裁判内容を評価するための無限定な閲覧権限を意味するものではない。

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実務協議会「家庭裁判所の現状と課題」―令和4年度から令和7年度までの主要テーマ(AI作成)

目次

第1 本記事の対象
第2 事件動向から分かること
 1 家事事件全体と家事調停
 2 子をめぐる事件と人事訴訟
 3 少年事件
第3 デジタル化の位置付け
 1 令和5年度以降の独立した章
 2 民事訴訟の全面デジタル化との区別
第4 各年度に共通する運用課題
 1 家事調停と審理運営
 2 成年後見と財産管理
 3 家族法改正への対応
 4 家裁調査官と専門性
第5 資料を読む際の注意点
第6 年度別資料
第7 関連記事

第1 本記事の対象

本記事は,新任の地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長等を対象とする実務協議会で配布された,最高裁判所事務総局家庭局の「家庭裁判所の現状と課題」を,令和4年度から令和7年度まで読み比べたものである。

家庭裁判所の利用方法は,家庭裁判所の役割・手続・費用の調べ方で説明している。家事調停の期間を知りたい場合は平均審理期間と期日間隔,個別事件の調査を知りたい場合は家庭裁判所調査官の職務と調査報告書,成年後見の地域別案内は東京後見センター・大阪後見センターを参照されたい。
本記事の年度別資料が示す運営上の課題と,現在利用する手続の説明は区別して読む必要がある。

資料は,家事事件,人事訴訟事件,少年事件,家事調停,成年後見,子の返還申立事件,家裁調査官,法改正及びデジタル化を一つの冊子で扱う。法令又は個別事件の判断基準ではなく,家庭裁判所が当時どの課題に重点を置いていたかを知るための司法行政資料である。

第2 事件動向から分かること
1 家事事件全体と家事調停

令和4年度夏季資料によれば,令和3年の家事事件及び人事訴訟等事件の新受総件数は115万0372件で,そのうち家事審判事件は96万7413件,家事調停事件は13万2556件であった。

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実務協議会の刑事局資料―「刑事裁判最前線」から「刑事裁判官の支援」まで(AI作成)

目次

第1 本記事の対象
第2 「刑事裁判最前線」の継続テーマ
 1 刑事手続のデジタル化
 2 裁判員裁判と公判前整理手続
 3 裁判員裁判以外の事件
第3 令和7年度の「刑事裁判官の支援」
 1 情報を集約して到達しやすくする取組
 2 担当段階に応じた支援
 3 資料名の変化から分かること
第4 資料を読む際の注意点
第5 年度別資料
第6 関連記事

第1 本記事の対象

本記事は,新任の地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長等を対象とする実務協議会で配布された最高裁判所事務総局刑事局の資料を,令和4年度から令和7年度まで読み比べたものである。

令和4年度から令和6年度までの主な資料名は「刑事裁判最前線」である。令和7年度の資料は「刑事裁判官の支援」と題され,制度上の課題を網羅的に説明する構成から,裁判官が必要な情報と支援に到達するための構成へ重点が移っている。

第2 「刑事裁判最前線」の継続テーマ
1 刑事手続のデジタル化

令和4年度資料は,法務省の検討会報告書を踏まえ,書類の電子データ化,オンラインでの発受及び情報通信技術を用いた手続を念頭に,将来の刑事裁判事務を検討していた段階を示している。

令和5年度及び令和6年度の資料では,法制審議会の審議,制度設計並びに裁判所内のシステム及び運用の準備がより具体的に扱われた。令和6年度冬季資料は,法案・規則・通達等の整備と,デジタル化後の運用を見据えた検討を並行して進める必要があるとしている。

2 裁判員裁判と公判前整理手続

各年度の資料は,裁判員裁判について,公判前整理手続の長期化,争点と証拠の絞り込み,裁判員に分かりやすい立証,画像・図面等を用いた証拠の負担軽減及び実質的な評議を継続課題としている。

裁判員制度の対象事件だけでなく,裁判員を経験する国民への情報提供,若年層の参加,裁判員の安全確保及び裁判所と関係機関との連携も取り上げられている。記載内容は,各課題が解消したことを示すものではなく,配布時点の刑事局の問題意識を示すものである。

3 裁判員裁判以外の事件

刑事局資料の対象は裁判員裁判に限られない。単独事件,令状事務,通訳事件,性犯罪・被害者関係,再審及び医療観察等も年度に応じて扱われている。

このため,資料を引用するときは,「刑事裁判全般の方針」と一括せず,該当する事件類型,手続段階及び資料作成時点を示す必要がある。

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実務協議会「民事・行政事件の現状と課題」―令和4年度から令和7年度までの主要テーマ(AI作成)

目次

第1 本記事の対象
第2 毎回取り上げられる分野
第3 民事訴訟手続のデジタル化の推移
 1 令和4年度―全国展開と三つの段階
 2 令和5年度―mintsの拡大と運用準備
 3 令和6年度―ウェブ口頭弁論と全庁の事件管理
 4 令和7年度―全面施行直前の準備
第4 デジタル化以外の継続課題
 1 民事通常訴訟の審理運営
 2 簡易裁判所,倒産及び民事執行
 3 行政・労働・知的財産
第5 資料の読み方
第6 年度別資料
第7 関連記事

第1 本記事の対象

本記事は,新任の地方裁判所長,家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長等を対象とする実務協議会で配布された,最高裁判所事務総局民事局・行政局の「民事・行政事件の現状と課題」を,令和4年度から令和7年度まで読み比べたものである。

各資料は,民事・行政分野の法令そのものを解説する資料ではなく,裁判所が当時どのような運用上の課題を認識し,各庁にどのような検討を求めていたかを知るための司法行政資料である。

第2 毎回取り上げられる分野

令和4年度から令和7年度までの資料では,おおむね次の分野が継続して取り上げられている。

①民事訴訟手続のデジタル化

②地方裁判所の民事通常訴訟と審理運営

③簡易裁判所の民事訴訟・民事調停,地裁と簡裁の連携

④倒産事件の事務処理及び管財人等の育成

⑤民事執行事件と執行官をめぐる課題

⑥行政事件及び国家賠償事件

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裁判所職員の端末の起動に時間がかかる理由―令和3年度整備のHDD端末,勤務時間管理システム及びGSS移行(AI作成)

目次第1 本記事の対象と資料の性質1 対象とする資料2 作成者,作成時期及び黒塗り第2 参議院法務委員会での質疑1 質問の内容2 最高裁判所の答弁3 答弁資料と会議録の違い4 デジタル庁の答弁とGSS第3 職員向け周知資料の内容1 「重い」理由として示されたこと2 推奨スペックの記載とMicrosoftの最小要件3 今後の見通し4 当面の対応第4 勤務時間の記録と端末の起動時間1 裁判所職員の勤務時間の法的枠組み2 民間の労働時間の把握との対比3 起動時刻を勤務時間の記録に使うときの注意4 法律事務所・企業の端末更新への示唆第5 関連記事第6 出典
第1 本記事の対象と資料の性質
1 対象とする資料

本記事は,裁判所職員のパソコンの起動に時間がかかる場合があることに関する最高裁の問題意識が書いてある文書(最新版)(PDF4頁)を読み,参議院の会議録その他の公表資料と照合した結果を整理するものである。
基準日は令和8年10月5日である。

このPDFは,性質の違う二つの文書から成る。
①1頁~2頁は,「「パソコンの動作が重い」と思ったら…」と題する職員向けの周知資料(横長のスライド2枚)である。
②3頁~4頁は,令和8年4月23日の参議院法務委員会における仁比聡平議員の質問(問1及び問2)に対する答弁資料である。

2 作成者,作成時期及び黒塗り

職員向けの周知資料には,作成者及び作成日の表示がない。
もっとも,「令和8年5月までのフェーズ3開始に備えて」との記載と,GSS端末を令和8年度末までに配布する予定で現在予算要求中であるとの記載(いずれも1頁)があるから,民事訴訟の全面デジタル化(いわゆるフェーズ3)が始まる前,令和8年度予算の要求中の時期に作られたものと考えられる。
「他の人と比べて明らかに重い場合は、保守対応も含め総務課にご相談ください。」との記載(2頁)からは,各庁の総務課を相談先とする職員一般向けの資料であることがうかがわれる。

周知資料のうち,タスクマネージャーで確認したメモリ使用率の数値(1頁)と,バックグラウンドで動くアプリの止め方に関する記載の一部(2頁)は黒塗りである。
本記事は,黒塗りの部分の内容を推測しない。

答弁資料は,会議録と照らし合わせると,最高裁判所事務総局総務局長の実際の答弁とほぼ同じ文言である(第2の3)。

第2 参議院法務委員会での質疑
1 質問の内容

令和8年4月23日の参議院法務委員会(第221回国会,第7号)は,裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を審査した。
仁比聡平議員は,勤務時間管理システムが全庁で開始されたことに触れ,同システムは「パソコンを起動したら遅くともその時間には業務を始めているでしょう」という形で勤務時間を客観的に把握しようとするものであるのに,職員の端末は起動に10分以上,中には20分掛かる場合があり,登庁直後の電話の問合せに事件管理システムで応答できない,登庁時間が重なってログインが集中するといった事態があると聞くが,そのとおりかと質問した(会議録の発言番号107)。

続けて同議員は,一般の職員が使う端末の記憶装置がSSDではなくハードディスクドライブ(HDD)であり,令和3年頃に導入されたWindows 10の搭載機であって,Microsoft 365の導入とWindows 11へのアップグレードで動作が遅くなったと現場で語られているが,そのとおりかと質問した(発言番号109)。

2 最高裁判所の答弁
(1) 起動時間について

最高裁判所事務総局総務局長は,「本年一月から全国の裁判所において勤務時間管理システムを導入しているところでございます。」と答弁した(発言番号108)。
そのうえで,職員が利用するシステムは担当業務等によって異なるため,端末の起動に掛かる時間を何分かと一概に答えることは困難であるとしつつ,「職員から端末の起動に一定の時間が掛かる場合があるという声もあることは承知しているところでございます。」と述べた。

(2) 端末の仕様について

同局長は,裁判所職員の端末は,民事訴訟を担当する一部の裁判官が利用しているものを除き,令和3年度に整備されたものであり,内蔵ストレージはSSDではなくHDDであると答弁した(発言番号110)。
また,整備後にMicrosoft 365の導入とWindows 11へのアップグレードが行われたこと,Windows 11のシステム要件は充足しているものの,「近時、端末の動作が遅いとの声があるものと認識しております。」と述べた。

3 答弁資料と会議録の違い

答弁資料(3頁・4頁)の「(答)」欄は,会議録の答弁とほぼ同じ内容である。
答弁資料の問2には,答弁の後に「(参考)」として,Windows 11を快適に使用するための推奨スペック(CPU:Inter Core i5以上(原文ママ),メモリ:8GB以上,ストレージ:128GB以上,SSD推奨)を掲げ,「職員端末は、SSDの点を除いては、上記推奨スペックも満たしている。」と記載した部分がある(4頁)。

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令和元年度最高裁民事破棄判決等の実情―27判決・4決定から学ぶ訴訟入口・証拠・差戻し実務(AI作成)

目次

第1 結論と資料の位置づけ第2 令和元年度の件数と処理結果1 破棄判決2 破棄決定3 件数を読むときの注意第3 全31件から得られる横断的な学び1 実体判断の前に「入口」を点検する2 損害項目と因果関係を分ける3 差戻し理由から追加立証を逆算する4 集団的合意と個人の権利処分を分ける5 旧法判決には現行法ゲートを置く第4 裁判所公表全文で確認した代表6件1 外国判決の承認と手続的公序2 包括受遺者と養子縁組無効確認の訴えの利益3 不貞第三者に対する離婚慰謝料4 債権差押えと旧法上の時効中断5 医薬用途発明の予測できない顕著な効果6 労働組合の合意と既発生賃金債権第5 破棄自判と破棄差戻しの使い分けから学ぶこと第6 事件検討用チェックリスト第7 資料の確認状況と限界1 一次資料で確認した範囲2 判例秘書の確認状況3 残る確認事項
第1 結論と資料の位置づけ

令和元年度の最高裁民事破棄事件から得られる最も実務的な学びは,原審の結論だけでなく,どの段階の判断が誤っていたかを分解して検討することである。点検順序は,入口(当事者適格・訴えの利益・請求類型)→法的根拠→判断枠組み→決定的事実→法的効果→自判又は差戻しとなる。

本記事の年度統計と全事件の争点分類は,作田寛之・日置朋弘「最高裁民事破棄判決等の実情―令和元年度―」(判例時報2442号)による。同記事は最高裁の判決・決定を横断する重要な索引であるが,判決そのものではない。個別事件に利用するときは,事件番号,主文,判決理由,原審,適用法令及び現在の経過措置を一次資料で確認する必要がある。

第2 令和元年度の件数と処理結果

1 破棄判決

同年度の破棄判決は27件であり,同記事が用いる分母に対する割合は1.0%である。差戻し(一部差戻しを含む。)は13件,自判(一部自判を含む。)は15件であり,1件が一部差戻し・一部自判の双方に数えられる。27件は全て論旨に基づく破棄であり,職権破棄はない。

登載状況は,民集9件,集民15件,いずれにも登載されないもの3件と整理されている。ただし,登載の有無と実務上の重要度は同じではなく,非登載事件でも,訴訟要件,損害論,行政実務又は執行実務に有用な判断が含まれる。

2 破棄決定

破棄決定は4件であり,差戻し3件,自判1件である。全て論旨に基づく破棄であり,職権破棄はない。内容は,刑事捜査書類の写しに対する文書提出命令,子の引渡しの間接強制,共同相続された振替株式等の共有持分に対する差押命令及び譲渡命令である。

3 件数を読むときの注意

27件及び4件は判例時報記事における判決書・決定書単位の集計であり,上告人一般の勝訴率又は上告受理申立て全体の認容率ではない。通常上告,上告受理申立て,許可抗告,特別抗告,並行申立ての換算及び併合事件を区別する必要がある。

第3 全31件から得られる横断的な学び

1 実体判断の前に「入口」を点検する

養子縁組無効確認の訴えの利益,行政訴訟の請求類型,前訴と後訴の主張の信義則,外国判決の承認要件など,実体的な権利義務に入る前の入口で破棄された事件がある。相談初期から,当事者が誰で,どの請求を,どの手続で,どの法的利益に基づいて行うかを固定することが重要である。

2 損害項目と因果関係を分ける

不貞第三者に対する請求では,不貞行為そのものによる慰謝料と離婚に伴う慰謝料を区別する。違法な仮差押え,自殺事故及び行政上の損害でも,結果から義務違反を逆算せず,行為時の具体的予見可能性,講ずべき措置及び結果回避可能性を時系列で示す必要がある。

3 差戻し理由から追加立証を逆算する

破棄差戻しは,正しい規範の下で不足する認定事項を示す。医薬用途発明の効果,仮差押え後の取引喪失,医師の具体的予見可能性,労働者の授権又は行政処分の蓋然性などについて,差戻し理由を尋問事項,文書提出,鑑定又は専門家意見のチェックリストに変換できる。

4 集団的合意と個人の権利処分を分ける

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平成元年度最高裁民事破棄判決等の実情―39件から学ぶ手続入口・証拠推論・時系列・一部無効と差戻審実務(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と資料の位置付け
第2 平成元年度の破棄判決等の概況
第3 原判決を点検する順序
第4 手続の入口と判決構造
第5 証拠推論と経験則の監査
第6 基準時を固定する時系列
第7 借地上建物の譲渡担保と対抗力
第8 年休等を稼働率に算入する賃上げ条項
第9 一部無効と差戻し後の計算
第10 旧法判例を現在の事件に用いる手順
第11 相談・起案用チェックリスト
第12 一次資料の確認状態
第13 参考資料

平成元年度の最高裁民事破棄判決等について、富越和厚「最高裁民事破棄判決の実情(1)~(6・完)―平成元年度―」(判例時報1353号以下)を通読し、相談、事実調査、第一審・控訴審の起案及び上告理由書等の作成で再利用できる審査順序を整理する。

第1 この記事の対象と資料の位置付け
1 年度記事は重要な二次資料である

年度記事は、1年間の破棄事例を分野横断で把握し、原審の判断がどの点で法令違反、審理不尽又は理由不備とされたかを確認するための重要な二次資料である。他方、年度記事は個別判決本文そのものではない。

個別事件について規範、限定句、事実関係又は結論を述べるときは、判決・決定本文、事件当時の法令、現行法、経過措置及び後続判例を確認する必要がある。本記事では、年度記事から得た横断的な学びと、裁判所公式資料で個別に確認した事項を区別する。

2 判例秘書の確認状態

今回の基礎調査では判例秘書を検索しておらず、状態は「照会0件・ヒット不明・本文確認0件」である。これは、判例秘書に収録されていないこと又は検索して該当がなかったことを意味しない。

第2 平成元年度の破棄判決等の概況
1 判決で終局した284件のうち39件

年度記事によれば、平成元年度に民事事件の判決で終局した事件は284件であり、そのうち原判決を破棄したものは39件である。内訳は、破棄差戻し14件、破棄自判25件であり、職権調査事項に基づく破棄は2件、当事者の上告理由に基づくものは37件と整理されている。

この数字は、年度記事が集計した判決終局事件と破棄判決の関係を示すものである。その年度に係る上告申立て全体を分母とする成功率ではなく、個別事件の勝訴見込みを示す数字でもない。

2 手続問題4件・実体問題35件

年度記事は、手続法上の問題を扱うもの4件、実体法上の問題を扱うもの35件と整理する。また、民集掲載25件、裁判集民事掲載5件、いずれにも掲載されなかったもの9件とされている。

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平成28年度最高裁民事破棄判決等の実情―39判決・2決定から学ぶ訴訟実務(AI作成)

目次

第1 対象資料と結論
第2 平成28年度の件数と数え方
第3 平成28年度から得られる7つの実務上の学び
第4 一次資料で確認した代表判例
第5 上告・許可抗告の検討手順
第6 確認済み資料と未確認事項
第7 実務チェックリスト

本記事は,判例時報2342号・2343号掲載の「最高裁民事破棄判決等の実情―平成28年度―」を年度索引として読み,裁判所ウェブサイトで公表されている代表的な判決・決定の全文と照合して,弁護士実務に使える形に整理するものです。

平成28年度から得られる中心的な学びは,請求の本案だけを見るのではなく,訴訟要件,請求権の主体,責任主体,法律行為の方式,評価の基準時,旧法・現行法,主文と差戻し後の残存争点を順に固定することです。年次論文は破棄事件を横断的に探索するための有力な二次資料ですが,個別判例の判旨・射程を確定する一次資料ではありません。

第1 対象資料と結論

対象は,平成28年に最高裁で言い渡された民事・行政・労働事件の破棄判決及び破棄決定です。年次論文は,全件の事案,原審判断,最高裁判断及び実務上の意味を短く整理した資料であり,破棄事件の所在と原審の誤りを把握する索引として優れています。

他方,年次論文は判決書そのものではなく,個別事件の事実関係・判示を圧縮した二次資料です。本記事では,年次統計は同論文により,代表7テーマの判旨は裁判所公表全文により確認しました。39判決・2決定の全件について裁判所全文又は判例秘書本文を照合したものではありません。

第2 平成28年度の件数と数え方
1 破棄判決39件

年次論文によれば,破棄判決は39件で,換算後の既済件数3335件に対する割合は1.1%です。この割合は最高裁における年次処理の概況であり,一般的な上告成功率,特定分野の勝訴率又は代理人ごとの成果率を意味しません。

破棄後の処理は,破棄差戻し25件,破棄自判26件,訴訟終了宣言1件と整理されています。ただし,これは排他的な分類ではありません。同一判決の主文中に差戻し部分と自判部分が併存するものが12件,自判部分と訴訟終了宣言部分が併存するものが1件あるため,単純合計は39件を超えます。

破棄理由は,当事者が主張した理由に基づくものが37件,職権によるものが2件です。最高裁が職権で誤りを拾うことを期待するのではなく,原判決のどの命題が,どの条文・判例・手続規定に反し,結論へどう影響したかを理由書で具体化する必要があります。

2 破棄決定2件

破棄決定は2件で,いずれも許可抗告事件でした。許可抗告の換算後既済件数38件に対する割合は5.2%です。この分母は,高等裁判所の許可を得て最高裁に係属し既済となった事件です。したがって,一般の許可抗告申立てが許可される割合と読み替えることはできません。

第3 平成28年度から得られる7つの実務上の学び

(続きを読む...)平成28年度最高裁民事破棄判決等の実情―39判決・2決定から学ぶ訴訟実務(AI作成)

平成27年度最高裁民事破棄判決等の実情―原判決監査・破棄自判と差戻し・一次資料確認(AI作成)

目次

第1 対象資料と結論
第2 31件と32項目の不一致をどう扱うか
第3 原判決を監査する8段階
第4 一次資料で確認した代表判決
第5 破棄自判と破棄差戻しを分ける
第6 事実認定・経験則違反の組み立て方
第7 旧法事件を現行実務へ接続する方法
第8 確認済み資料・未確認事項
第9 実務チェックリスト

本記事は,判例時報2306号掲載の「最高裁民事破棄判決等の実情―平成27年度―」を年度索引として読み,裁判所ウェブサイトで公表されている代表判決の全文と照合して,訴訟実務に使える形に整理するものです。

結論を先に述べると,平成27年度から得られる最大の学びは,個別判例の結論を暗記することではなく,原判決を「入口,請求・抗弁・上訴範囲,法的根拠,判断枠組み,事実認定,効果,主文・救済,差戻し後の残存争点」の順で監査することです。また,年次論文は全件の所在を把握する有力な二次資料ですが,個別事件の判旨・射程は判決全文で確認しなければなりません。

第1 対象資料と結論

対象は,平成27年に最高裁で言い渡された民事・行政・労働事件の破棄判決及び破棄決定を扱う年次論文です。年次論文は,事件を横断して原審の誤りを把握するための索引として優れています。他方,判決書そのものではなく,個々の事案・理由を圧縮した二次資料です。

年度論文の概観本文は破棄判決31件,破棄率0.9%,破棄決定8件と記載しています。もっとも,同論文の判決一覧表には32項目があります。本記事では,破棄判決の総数は概観本文の31件を採用し,「一覧表32項目」との不一致を併記します。32項目をそのまま「32件の破棄判決」と断定しません。

なお,平成27年11月19日第一小法廷判決(平成25年(受)第2001号・共同保証人間の求償権)は,同じ平成27年の重要判決ですが,主文は上告棄却です。したがって,平成27年度の破棄判決の例として数えてはならず,後記第7で「同年の関連判決」としてのみ扱います。

第2 31件と32項目の不一致をどう扱うか

集計資料に内部不一致があるときは,もっともらしい数字に統合せず,どの記載を採用したかを示す必要があります。本件では,概観本文の「31件」と一覧表の「32項目」を別々に記録し,統計表には31件を用いました。

この不一致は,年次論文の価値を失わせるものではありません。しかし,件数を上告の成功率,分野別の勝訴率又は代理人別の成果率として利用できないことを一層明確にします。分母となる既済件数には事件の換算方法があり,上告事件と上告受理申立事件の並行申立て,判決書単位及び併合処理を区別する必要があります。

実務上は,①集計単位,②分母,③判決・決定の別,④破棄自判・差戻しの別,⑤一覧と本文の一致を確認し,数字の根拠を脚注又は出典欄に残します。

第3 原判決を監査する8段階

平成27年度の各事件を横断すると,原判決監査は次の順序にすると漏れが少なくなります。

(続きを読む...)平成27年度最高裁民事破棄判決等の実情―原判決監査・破棄自判と差戻し・一次資料確認(AI作成)

平成26年度最高裁民事破棄判決等の実情―42判決・4決定から学ぶ訴訟入口・証拠・特別法・差戻し実務(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と資料の位置付け
第2 平成26年度の破棄判決・破棄決定
第3 原判決を点検する順序
第4 訴訟の入口に関する主要判例
第5 証拠・書面・自由意思に関する主要判例
第6 契約・賃貸借・倒産に関する主要判例
第7 税・行政・文書提出命令に関する主要判例
第8 親子・相続と現行法への接続
第9 破棄差戻し後の実務
第10 相談・起案用チェックリスト
第11 一次資料の確認状態
第12 参考資料

平成26年に最高裁判所が言い渡した民事の破棄判決及び破棄決定について、廣瀬孝・市原義孝「最高裁民事破棄判決等の実情(上)(下)―平成二六年度―」(判例時報2258号・2259号)を通読し、相談、第一審、控訴審及び上告・上告受理申立てで再利用しやすい審査順序、主要判例並びに一次資料の確認状態を整理する。

第1 この記事の対象と資料の位置付け
1 年度記事は重要な二次資料である

年度記事は、1年間の破棄事例を分野横断で把握し、原審がどの点で法令違反、審理不尽又は理由不備とされたかを確認するための重要な二次資料である。他方、年度記事は個別判決本文そのものではない。

個別事件について規範、限定句、事実関係、結論又は現在の実務上の射程を述べるときは、判決・決定本文、現行法令、施行日、経過措置及び後続判例を確認する必要がある。本記事では、年度記事から得た横断的な学びと、裁判所公式資料で個別に確認した事項を区別する。

2 判例秘書の確認状態

今回の基礎調査では判例秘書を検索しておらず、状態は「照会0件・ヒット不明・本文確認0件」である。これは、判例秘書に収録されていないこと、又は検索して該当がなかったことを意味しない。

第2 平成26年度の破棄判決・破棄決定
1 判決42件・決定4件

年度記事が取り上げたのは、破棄判決42件、破棄決定4件の合計46件である。判決には破棄差戻し、破棄自判及び一部破棄が含まれ、事件番号が複数ある併合事件は一つの裁判として数えられている。

この46件という数は年度記事の対象件数であって、個別事件における上告又は許可抗告の成功率を示すものではない。上告事件全体の既済件数、取下げ、棄却・却下及び並行申立ての扱いを分母として固定しない限り、受任時の見通しや分野別の破棄率には利用できない。

2 公開一覧表との1件差

(続きを読む...)平成26年度最高裁民事破棄判決等の実情―42判決・4決定から学ぶ訴訟入口・証拠・特別法・差戻し実務(AI作成)

平成10年度最高裁民事破棄判決等の実情―75件から学ぶ手続入口・判断遺脱・証拠推論及び現行法への読替え(AI作成)

目次

第1 対象資料と確認範囲

1 年次論文
2 判例秘書と裁判所公式資料

第2 75件と破棄率2.41%の正しい読み方

1 件数
2 分母を固定する

第3 原判決を読む六段階監査

第4 手続入口と判断遺脱を先に潰す

1 手続入口
2 判断遺脱と主文のずれ

第5 一部請求,相殺及び既判力を金額で管理する

第6 証拠推論と多要件規範

1 推論の鎖を切り分ける
2 ボールスプライン事件

(続きを読む...)平成10年度最高裁民事破棄判決等の実情―75件から学ぶ手続入口・判断遺脱・証拠推論及び現行法への読替え(AI作成)

平成24年度の最高裁民事破棄判決等の実情―処理統計・主要判例・実務チェック(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と資料の位置付け
第2 平成24年の処理概況
第3 原判決を点検する順序
第4 手続・証拠評価から得られる学び
第5 契約・消費者・損害賠償の主要判例
第6 倒産・保全・執行の主要判例
第7 労働・保険・特別法の主要判例
第8 破棄決定7件から得られる学び
第9 相談・起案用チェックリスト
第10 一次資料の確認状態
第11 参考資料

平成24年に最高裁判所が言い渡した民事の破棄判決及び破棄決定について,武藤貴明・岡田幸人「最高裁民事破棄判決等の実情―平成二四年度」(判例時報2188・2189・2191号)を通読し,実務で再利用しやすい審査順序,主要判例及び資料の確認状態を整理する。

第1 この記事の対象と資料の位置付け
1 年度記事と個別判決は役割が異なる

年度記事は,1年間の破棄事例を分野横断で把握するための信頼性の高い二次資料である。しかし,個別事件の規範,限定句,結論又は現在の実務上の射程を述べるときは,判決・決定本文,現行法令及び後続判例に戻る必要がある。

本記事では,年度記事で確認した事項と,裁判所又は政府機関の公式資料で個別に確認した事項とを区別する。OCRは索引作成にのみ用い,引用又は断定の根拠にはしていない。

2 判例秘書の確認状態

預金債権差押えに関する最高裁判所第三小法廷平成23年9月20日決定は判例秘書の全文(文献番号L06610084)を,同平成24年7月24日決定は同全文(文献番号L06710076)を確認し,裁判所公式PDFと照合した。

平成24年1月17日の決定として紹介される平成23年(許)第54号については,判例秘書で事件番号を民事分野及び全分野から検索したが該当結果は0件であった。また,同日付の民事事件検索結果17件にも対象を確認できなかった。これは当該検索条件で本文を確認できなかったことを意味するにとどまり,非収録又は不存在を断定するものではない。

第2 平成24年の処理概況
1 破棄判決60件

年度記事によれば,上告と上告受理申立ての並行申立てを1件として調整した既済件数は3873件であり,破棄判決は判決書単位で60件であった。60件の内訳は,上告理由に基づくもの57件,職権によるもの3件であり,結論は破棄差戻し29件,破棄自判28件,両者を含むもの3件である。

60÷3873は約1.5%である。ただし,判決書数,個別事件数及び並行申立てを調整した既済件数は集計単位が同じではない。取下げ等を含む分母の性質も異なるため,この数値を個別事件の「上告成功率」,弁護士別の成果率又は受任時の見通しとして用いることはできない。

2 破棄決定7件

許可抗告事件の既済件数は61件で,破棄決定は7件であった。結論は破棄差戻し4件,破棄自判3件(各一部を含む)である。7÷61は約11.5%であるが,これも年度の処理統計であり,個別の許可抗告の成功可能性を示す数字ではない。

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平成25年度最高裁民事破棄判決等の実情―34件の破棄判決・7件の破棄決定から学ぶ手続・証拠・差戻し実務(AI作成)

目次

第1 この記事の結論と資料の性格
第2 平成25年度の件数と「0.9%」の読み方
第3 破棄事例から作る六つの実務台帳
第4 本案前に閉じるべき手続問題
1 不利益変更は最終額で比べる
2 送達報告書と事務所記録が食い違う場合

第5 証拠・計算・基準時を元資料へ戻す
第6 未登記通行地役権と担保不動産競売
第7 行政基準だけで要件判断を終えない
第8 新株発行無効判決と第三者の手続保障
第9 家族・相続では基準時と制度効果を分ける
第10 一次資料・判例秘書・年度論文の確認状況
第11 実務チェックリスト
第12 出典及び関連記事

平成25年度の「最高裁民事破棄判決等の実情」は,平成25年中に言い渡された民事・行政・労働関係の破棄判決34件と破棄決定7件を整理した年次論文です。通読から得られる中心的な教訓は,本案の法律論へ進む前に,手続,基準時,証拠の出所,計算過程及び判決効を受ける第三者を別々の台帳で固定することです。

第1 この記事の結論と資料の性格

基礎資料は,伊藤正晴・上村考由「最高裁民事破棄判決等の実情―平成25年度―」判例時報2224号・2225号です。同論文は,破棄事件の所在,原審の判断及び破棄理由を把握するための有力な二次資料ですが,裁判所が言い渡した判決・決定そのものではありません。

本記事では,年度論文で把握した事件のうち,裁判所公式PDFで全文を確認できた代表事件と,年度論文の記載までしか確認できていない事件を区別します。また,判例秘書については収録メタデータを確認した事件番号を示しますが,今回の調査では判例秘書本文との逐語照合まではしていません。裁判所公式データベースは全裁判例を掲載するものではないため,検索で見つからないことから事件不存在又は判例秘書未収録を推論しません。

第2 平成25年度の件数と「0.9%」の読み方
区分新受既済
上告2807件2871件
上告受理申立て3280件3356件

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平成11年度最高裁民事破棄判決等の実情―74件の破棄判決・5件の破棄決定から学ぶ訴訟実務(AI作成)

目次第1 この記事の結論と資料の位置付け第2 平成11年度の件数と「2・52%」の読み方1 新受・既済・破棄件数2 依頼事件の「上告成功率」ではない3 破棄差戻しは最終勝訴ではない第3 原判決等が破棄された横断的な型1 主張・判断の漏れ2 事実認定の論理監査3 当事者・訴訟追行権の時間軸4 損害・既払金・法的効果の分類第4 裁判所公式全文を確認した代表4事件第5 事件処理のための四つの台帳1 主張台帳2 当事者・権限台帳3 証拠・推論台帳4 時間・金額台帳第6 破棄差戻し後に残る争点第7 平成11年当時法と現行法を分ける第8 関連記事第9 出典・確認範囲
第1 この記事の結論と資料の位置付け

平成11年度の最高裁民事破棄判決等は,破棄判決74件,許可抗告の破棄決定5件である。これらから得られる実務上の中心的な学びは,最高裁が単に証拠を評価し直したということではない。原判決等の弱点は,①主張・判断の漏れ,②事実から結論へ進む論理の飛躍,③権利帰属・訴訟追行権の時間軸の切断,④損害項目・既払金・法的効果の分類違いとして現れる。

そこで,平成11年度の破棄事件は,上告理由を探すためだけでなく,第一審から「破棄されにくい記録」を作るための品質監査資料として使うべきである。本記事は,生野考司「最高裁民事破棄判決等の実情―平成11年度―」(判例時報1707号,1708号,1710号,1711号,1713号及び1714号,6回連載,合計109頁)を年度全体の索引とし,代表4事件の裁判所公式全文を照合して作成した。

年次論文は,74件の破棄判決と5件の破棄決定を発見・分類するための二次資料であり,最高裁判決そのものではない。論文の解説には筆者の評価が含まれるため,個別事件で判旨を引用するときは,裁判所公式全文,判例集又は事件記録で確認する必要がある。

第2 平成11年度の件数と「2・52%」の読み方

1 新受・既済・破棄件数

新受事件は,旧法事件26件,新法上告事件227件,新法上告受理申立て事件2770件の合計3023件である。上告と上告受理申立ての並行申立て239件を一件として調整すると,年次論文上の新受件数は2784件となる。

既済事件は,旧法事件438件,新法上告事件1925件,上告受理事件1528件の合計3891件である。並行申立て930件を調整した既済件数は2961件である。

判決で終了した事件は478件である。決定による終局処理は,上告却下26件,上告棄却1766件及び不受理決定1492件の合計3374件である。判決と決定の合計3852件から並行申立て917件を調整した2935件が,年次論文の破棄率の分母である。

破棄判決は74件であり,調整後2935件に対する割合は2・52%である。内訳は破棄差戻し41件,破棄自判34件で,一部差戻し・一部自判の重複が1件ある。旧法事件61件,新法事件13件であり,新法下の破棄事件が初めて現れた過渡年である。職権破棄は12件,論旨に基づく破棄は68件で,重複がある。許可抗告の破棄決定は5件である。

2 依頼事件の「上告成功率」ではない

2・52%は,平成11年度に判決又は決定で終局処理された事件を調整した件数を分母とし,破棄判決だけを分子とした年度集計比率である。事案の内容,上告理由と上告受理申立て理由の区別,旧法・新法の別,並行申立ての調整を無視して,個別事件が破棄される確率と読むことはできない。

また,破棄判決74件と許可抗告の破棄決定5件は,手続も分母も異なる。両者を単純に足して一つの成功率を作るべきではない。

3 破棄差戻しは最終勝訴ではない

原判決の法律判断を訂正した後,確定した事実だけで結論を出せるときは破棄自判が可能である。正しい判断枠組みによる事実認定,抗弁・再抗弁の審理又は損害額の算定が残るときは破棄差戻しとなる。したがって,破棄差戻し判決を得たことだけで最終的な勝訴又は金銭回収を断定してはならない。

第3 原判決等が破棄された横断的な型

1 主張・判断の漏れ

判断遺脱,再抗弁の看過,訴訟要件の職権調査不足は,結論に先立つ審理構造の欠落である。請求原因,抗弁,再抗弁,相手方の認否,対応証拠及び裁判所の判断を一行ずつ対応させれば,何が審理されていないかを可視化できる。「裁判所が職権で拾うはずだ」という期待は,依頼者を守る安全策にならない。

2 事実認定の論理監査

事実認定関係の破棄を,単なる証拠の再評価と理解するのは正確でない。客観的書証との矛盾,反対仮説の検討漏れ,取引通念上不自然な行動の説明不足,法的要件に必要な前提事実の認定漏れなど,証拠から主要事実へ進む推論の鎖に法的に看過できない欠陥があるかが問題となる。

控訴理由書や上告受理申立て理由書では,「この証拠を信用すべきである」と繰り返すだけでなく,①認定された客観的事実,②用いられた経験則,③そこから導かれた主要事実,④検討されなかった反対仮説,⑤結論への影響を順に示す必要がある。

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平成23年度最高裁民事破棄判決等の実情―71件・8決定から学ぶ原判決監査(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と結論

1 平成23年度の件数
2 結論―破棄理由を判断工程の欠落として捉える

第2 資料の読み方と確認範囲

1 年度記事は有力な二次資料である
2 判決ごとの確認状態を分ける

第3 平成23年度の代表的な破棄判決

1 更新料条項―合意の明確性と負担の程度を分ける
2 建物の基本的安全性―将来の危険経路まで立証する
3 不利益処分の理由提示―処分基準の適用関係を示す
4 労組法上の労働者性―契約名より実際の運用を見る
5 民事再生と弁済代位―原債権と求償権を分ける
6 過払金―取引のライフサイクルを先に作る

第4 原判決を監査する5段階
第5 依頼者説明と差戻審の準備
第6 実務で使う確認表
第7 関連記事
第8 出典及び確認範囲

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民事判決の理由不備・理由の食違い・判断遺脱-上告理由と再審事由の見分け方(AI作成)

目次

理由不備・理由の食違い・判断遺脱の違い
民事訴訟法上の位置付け
平成9年度破棄判決での「理由不備・理由齟齬」の読み分け
理由不備とは何か
理由の食違いとは何か
判断遺脱とは何か
裁判の脱漏・計算違いとの区別
判決書を点検する実務上の順序
上告と上告受理申立ての使い分け
出典の確認状態
関連記事

民事判決について「理由不備」「理由の食違い」「判断遺脱」という表現が使われることがありますが、三者は同じものではありません。特に、重要な抗弁又は再抗弁に対する判断が漏れていても、判決自体が論理的に完結しているときは、民事訴訟法312条2項6号の理由不備には当たらないことがあります。以下では、個別判決本文を確認できた判例と、最高裁調査官による年次レビューだけを確認できた事例とを区別して説明します。平成9年中の破棄判決72件についても、判決文の慣用的な「理由不備・理由齟齬」と絶対的上告理由としての同号を分けて読みます。

1 理由不備・理由の食違い・判断遺脱の違い

三者の違いを簡潔にまとめると、次のとおりです。

理由不備:主文を導き出すために必要な理由の全部又は一部が欠けている場合
理由の食違い:判決理由の内部又は理由と主文との間に、両立しない矛盾がある場合
判断遺脱:判決に影響を及ぼすべき重要な請求原因、抗弁又は再抗弁等について判断していない場合

理由不備と理由の食違いは民事訴訟法312条2項6号の上告理由ですが、判断遺脱は同号の理由不備と常に同一になるわけではありません。

2 民事訴訟法上の位置付け

令和8年5月21日施行後の現行民事訴訟法252条1項3号は、判決の電子判決書に「理由」を記録すべきことを定めています。判決に理由を付さず、又は理由に食違いがあることは、同法312条2項6号の絶対的上告理由です。

他方、判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったことは、同法338条1項9号の再審事由です。上告審では、同法325条2項により、312条所定の上告理由がなくても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるときに原判決が破棄されることがあります。

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平成17年度最高裁民事破棄判決等の実情―75件の破棄判決・9件の破棄決定から学ぶ訴訟実務(AI作成)

目次

第1 この記事の対象と資料の位置付け
第2 平成17年の件数と「2.3%」の読み方
第3 原判決等が破棄された横断的な型
第4 判示内容を精読した主要6事件
第5 破棄差戻し後に残る争点
第6 上告・許可抗告の実務チェックリスト
第7 平成17年当時法と現行法を分ける
第8 全84件の一次資料・判例秘書照合
第9 実務上の学びと確認の範囲

平成17年(2005年)の最高裁民事・行政事件では,破棄判決75件と破棄決定9件が紹介されています。本記事は,最高裁判所調査官が執筆した判例時報の年次連載を4分冊すべて通読し,件数を一般的な「上告成功率」と誤解しないための前提,原審が誤った横断的な型,破棄差戻し後に残る争点及び実務上の証拠収集を整理するものです。さらに,全84件を裁判所公式判例検索及び判例秘書の認証検索と照合し,一次資料又はデータベース本文を確認できた範囲と,年次論文による確認にとどまる範囲を明確に分けます。

第1 この記事の対象と資料の位置付け

基礎資料は,増田稔・谷口安史「最高裁民事破棄判決等の実情―平成17年度―」(1)~(4)・完(判例時報1932号,1933号,1935号及び1936号)です。「平成17年度」という表題ですが,集計対象は平成17年1月から12月までに最高裁で処理された民事・行政事件です。

両執筆者は掲載当時の最高裁判所調査官であり,この連載は破棄事件の全体像を把握するための信頼度の高い二次資料です。しかし,判決・決定原本ではありません。事件番号,事実,判示の文言及び射程を訴訟書面に引用するときは,裁判所公式本文又は判例秘書本文を照合する必要があります。

本記事では,年次論文による確認,裁判所公式全文PDFの所在・構造確認,裁判所公式全文の判示内容の精読及び判例秘書における本文表示確認を同じものとして扱いません。裁判所公式では60件,判例秘書では63件を確認できましたが,両検索で個別結果を確認できない21件は年次論文による確認にとどまります。

第2 平成17年の件数と「2.3%」の読み方

項目件数注意点

破棄判決75件並行申立て・併合事件を1件として数えた数
個別上告事件78件個別事件として数えた数
破棄差戻し28件2件は自判部分も含む
破棄自判49件2件は差戻し部分も含む

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平成21年度最高裁民事破棄判決等の実情―68件・4決定から学ぶ原判決監査と差戻し対応(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と資料
第2 平成21年の件数と統計の読み方
第3 原判決を監査する5つの視点

1 本案前の入口を独立して点検する
2 理由の食違いを判決書内部の論理として示す
3 原審の誤りを三層に分ける
4 制度目的と援用主体を分ける
5 事実認定の不満を法令違反へ組み替える

第4 破棄自判と破棄差戻しの違い
第5 分野別に残った実務上の学び
第6 破棄決定4件から学ぶこと
第7 受任直後・控訴審・上告検討時のチェックリスト
第8 一次資料,二次資料及び判例秘書の確認状態
第9 現行法への接続と関連記事

第1 本記事の対象と資料

本記事は,平成21年中に最高裁判所で言い渡された民事事件(行政事件・労働事件を含む。)の破棄判決68件と破棄決定4件を,原判決の監査と破棄後の事件処理に使える形で整理するものである。判例時報の記事名は「平成21年度」であるが,対象は会計年度ではなく平成21年1月から12月までの暦年である。

入口とした資料は,田中一彦・鎌野真敬「最高裁民事破棄判決等の実情(上)(下)―平成二一年度」判例時報2082号・2083号である。同論文は,最高裁判所調査官が当該年の破棄事件を全件整理した二次資料であり,事件の所在,原審判断及び破棄理由を横断して把握するのに有用である。

もっとも,年次報告は個々の判決・決定そのものではない。主文,事実関係,判示,補足意見・反対意見及び射程を訴訟書面で用いるときは,裁判所が公表する判決・決定本文又は判例秘書等に収録された本文を確認する必要がある。

第2 平成21年の件数と統計の読み方

上告事件の新受は2364件,上告受理申立ての新受は2792件で,合計5156件であった。両方を並行して申し立てた事件を1件に換算すると,新受は3280件である。

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平成19年度最高裁民事破棄判決等の実情―57件から学ぶ破棄理由と訴訟実務(AI作成)

目次

第1 本記事の対象と資料の読み方第2 件数と「破棄率」の限界第3 原審が破棄された7つの型1 手続の入口に問題がある型2 請求・抗弁・判断対象を取り違える型3 評価語から要件事実へ飛躍する型4 契約文言と締結・履行経過がずれる型5 証明責任と立証対象の配分を誤る型6 制度の保護目的を抽象論で狭める型7 破棄差戻しで未確定事実が残る型第4 破棄差戻しと破棄自判の対照第5 代理人が作る3つの作業表第6 分野別の実務上の着眼点第7 一次資料,二次資料及び判例秘書の状態第8 現行法へ接続する際の注意第9 出典・関連記事

第1 本記事の対象と資料の読み方

本記事は,平成19年中に最高裁判所で言い渡された民事事件(行政事件・労働事件を含む。)の破棄判決50件と破棄決定7件を,山中弁護士の訴訟実務に使える「破棄の型」として整理するものである。判例時報の論文名は「平成十九年度」であるが,対象は会計年度ではなく暦年の平成19年中の裁判である。

入口とした資料は,森英明・絹川泰毅「最高裁民事破棄判決等の実情(上)(下)―平成十九年度」判例時報2009号3頁以下・2010号9頁以下である。この論文は最高裁調査官による体系的な二次資料であり,事件の所在,原審判断及び破棄理由を把握するのに有用である。他方,個別事件の正確な判示,射程,反対意見・補足意見は,裁判所が公表する判決・決定本文で確認する必要がある。

第2 件数と「破棄率」の限界

上告及び上告受理申立てを並行した事件を1件に換算すると,新受は3004件,既済は3111件であった。破棄判決は判決書単位で50件であり,換算後の既済件数に対して1.6%であった。その内訳は,差戻し(一部差戻しを含む。)26件,自判(一部自判を含む。)25件で,両方を含むものが1件ある。

破棄決定は7件で,特別抗告1件,許可抗告6件であった。許可抗告の既済44件に対する破棄決定6件は13.6%である。

もっとも,これらの数字は,不受理・棄却事件の内容,事件の難易,申立て理由の構成などを統制したものではない。「最高裁で勝てる確率」や個々の代理人の成功率として用いることはできない。

第3 原審が破棄された7つの型
1 手続の入口に問題がある型

口頭弁論に関与していない裁判官が判決裁判所を構成した事件,当事者・代表権・中断が問題となった光華寮訴訟,死亡当事者の受継命令,最高裁への上告受理申立てを原裁判所が内容判断で却下した事件などがある。受任直後に,裁判体,当事者表示,代表権,死亡・組織変更,受継,送達及び上訴権限を点検する必要がある。

2 請求・抗弁・判断対象を取り違える型

不法行為構成だけを判断して債務不履行主張を落とした事件や,予備的相殺抗弁の趣旨を取り違えた事件がある。請求原因,認否・抗弁,再抗弁,裁判所の判断を対応させ,選択的請求や予備的抗弁の順位も明示する。

3 評価語から要件事実へ飛躍する型

精神科入院患者の誤嚥死事件では,「ショック状態」という評価を先に置き,意識レベル,全身状態,頻脈,血圧,出血量,感染性ショックの可能性を必要十分に確定しない事実認定が経験則違反とされた。結果から過去の義務違反を逆算せず,義務発生時点ごとに客観的な事実を並べる必要がある。

4 契約文言と締結・履行経過がずれる型

コンビニ・フランチャイズ契約の「売上商品原価」は,契約条項だけでなく,付属資料,契約締結前の説明及び従前の運用を総合して解釈された。土地賃貸借でも,後年の低額支払又は不払だけで無償使用と決めず,長期の定期支払と当時の領収証を見る必要がある。

5 証明責任と立証対象の配分を誤る型

自動車盗難保険では,保険金請求者が立証すべき外形的事実と,被保険者の意思に基づかないことが分けられた。「盗難と矛盾しない」だけでは足りない。主張書面では,誰が何を証明するか,直接事実と間接事実,反証可能性を分ける。

6 制度の保護目的を抽象論で狭める型

建物の設計・施工・工事監理者について,契約関係のない居住者,隣人及び通行人にも,建物の基本的な安全性が欠けることがないよう配慮すべき注意義務が認められた。「強度の違法性」を要求した原審基準は狭すぎるとされた。

弁護士懲戒請求でも,不懲戒という結果だけで不法行為となるのではない。事実上・法律上の根拠を欠き,請求者が知っていたか通常の注意で知り得たのにあえて行い,制度の趣旨目的に照らして相当性を欠くかを判断する。

7 破棄差戻しで未確定事実が残る型

破棄差戻しは,最高裁が当事者の実体法上の勝敗を最終確定したことを必ずしも意味しない。「最高裁が確定した法理」「原審判断の誤り」「差戻審で未確定の事実」を三分する必要がある。

第4 破棄差戻しと破棄自判の対照

最高裁第三小法廷平成19年4月3日判決は,精神科入院患者の誤嚥死について,原審の事実認定が経験則に反するとし,患者が当該時点で自ら気道を確保することが困難な状態にあったか否かなどを追加審理させるため差し戻した。

これに対し,最高裁第二小法廷平成19年7月6日判決は,競売前に先順位抵当権が消滅した事案における法定地上権の成立を認め,原審が確定した事実だけで結論を出せるとして,土地買受人の建物収去土地明渡請求を棄却する自判をした。

両判決の比較は,正しい法的枠組みを示した後に追加の事実審理が必要かどうかが,差戻しと自判の分水嶺となることを示す。

第5 代理人が作る3つの作業表

(続きを読む...)平成19年度最高裁民事破棄判決等の実情―57件から学ぶ破棄理由と訴訟実務(AI作成)

裁判官が転勤(転補)した後の判決は有効か―判決原本の署名時期,職務代行の発令及び転補の効力発生に関する最高裁判例(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 前提―補職,転補及び判決をする裁判官1 補職と転補2 判決をする裁判官第3 転補後に判決原本に署名した場合1 最高裁判所昭和48年4月26日判決の事案2 判断第4 判決原本はいつ作成されたと扱われるか1 転補の辞令の受領日までに作成されたとの推認2 訴訟手続の停止中に転補された場合3 書記官への判決原本の交付が遅れた場合第5 職務代行の発令がある場合1 職務代行の根拠2 東京高等裁判所昭和54年5月14日判決第6 職務代行の発令がない裁判官が加わった場合第7 転補の発令はいつ効力を生ずるか第8 実務上の注意1 判決書の付記2 異動の時期の判決を確認するときの着眼点3 不服申立ての根拠4 電子判決書の下での規律第9 関連記事第10 出典・参考資料1 裁判例2 法令3 調査範囲
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,口頭弁論を終結した裁判官が判決の言渡し前に他の裁判所へ異動(転補)した場合に,その判決が適法に成立するかを,最高裁判所の判例を中心に整理する。
法令は,令和8年9月28日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。
最高裁判所の判例は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索で書誌を確認し,判例秘書で本文を読んだものに限って紹介している(範囲は第10の3のとおり)。
高等裁判所及び地方裁判所の判決は,判例秘書で確認したものである。
紹介する最高裁判所の民事の判例は,いずれも旧民事訴訟法の下で紙の判決原本を前提に判断されたものである。
令和8年5月21日以後に提起された訴えの判決は電子判決書によるので,その規律は第8の4で扱う。

2 結論

①下級裁判所の裁判官は,特定の裁判所の裁判官の職に補されて初めてその裁判所の裁判官として職務を行うことができ,転補された後は,従前の裁判所の裁判官としての行為はすることができない(最高裁判所昭和48年4月26日判決)。
②そのため,単独の裁判官が審理した事件で,判決原本への署名捺印がその裁判官の転補後にされたときは,その判決手続は違法となる(同判決)。
③他方,最終口頭弁論に関与した裁判官が言渡し前に転補された場合でも,判決原本にその裁判官の署名捺印があるときは,反証がない限り,転補の辞令を受領した日までに作成されたものと認められる(最高裁判所昭和25年12月1日判決の裁判要旨。最高裁判所昭和48年4月26日判決も同旨を述べる。)。
④転補された裁判官について従前の裁判所の職務代行が発令されていれば,その期間内はその裁判所の裁判官として職務を行うことができる(東京高等裁判所昭和54年5月14日判決)。
⑤転補の発令は,電話で発令の通知がされたときは,辞令書の交付前でも効力を生ずる(最高裁判所昭和42年7月5日決定)。
⑥職務代行の発令を受けていない判事補が高等裁判所の判決裁判所の構成に加わった刑事事件では,原判決が破棄されている(最高裁判所平成19年7月10日判決)。
⑦令和8年5月21日以後に提起された訴えの判決では,判決をした裁判官が電子判決書にその作成に係ることを示す措置を講じ,合議体の裁判官に支障があるときは他の裁判官がその事由を記録する(民事訴訟規則155条)。
これは紙の判決書への署名押印及び支障の付記と同じ構造であるから,転補後に措置を講じた場合には,昭和48年4月26日判決と同じ問題が生じると考えられる。

第2 前提―補職,転補及び判決をする裁判官
1 補職と転補

裁判所法40条1項は,判事,判事補等は最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣が任命すると定め,同法47条は,「下級裁判所の裁判官の職は、最高裁判所がこれを補する。」と定める。
判事等の官に任命されることと,特定の裁判所の裁判官の職に補されることは,別の行為である。
裁判官が別の裁判所の職に補し直されることは「転補」と呼ばれる。
発令文言の違いは,「補する」「充てる」「命ずる」「指名する」の違いで扱っている。

2 判決をする裁判官

民事訴訟法249条1項は,「判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。」と定める。
同条2項は,裁判官が代わった場合には,当事者は従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならないと定める。
同条3項は,単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合に,その前に尋問をした証人について当事者が更に尋問の申出をしたときは,裁判所はその尋問をしなければならないと定める。
口頭弁論の終結後,判決の言渡しの前に裁判官が転補されたときに問題になるのは,転補された裁判官がその判決をしたといえるかである。

第3 転補後に判決原本に署名した場合

(続きを読む...)裁判官が転勤(転補)した後の判決は有効か―判決原本の署名時期,職務代行の発令及び転補の効力発生に関する最高裁判例(AI作成)

平賀書簡事件とは―長沼ナイキ訴訟への札幌地裁所長の書簡,札幌地裁の厳重注意,最高裁の注意処分及び訴追委員会の判断(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 時系列第3 長沼ナイキ訴訟と執行停止決定1 事件の係属2 昭和44年8月22日の執行停止決定3 執行停止決定のその後第4 平賀書簡と平田メモ1 決定告知日の延期をめぐる協議2 8月14日の書簡3 8月4日の平田メモ4 福島裁判長による書簡の開示第5 札幌地裁の臨時裁判官会議と厳重注意1 9月13日の臨時裁判官会議2 テレビ放映・新聞掲載と決議内容の発表第6 最高裁判所の注意処分と所信1 注意処分と東京高裁への異動2 最高裁の所信3 注意処分の根拠と「干渉」についての説明4 石田長官の記者会見についての書籍の記述第7 国会と法曹界の受け止め1 昭和44年10月9日の衆議院法務委員会2 飯守重任鹿児島地裁所長の寄稿3 大津事件との対比をめぐる議論第8 裁判官訴追委員会の判断1 訴追請求2 昭和45年10月19日の決定第9 福島裁判官に対する注意処分とその後1 国による忌避の申立て2 札幌高裁の注意処分3 辞意の表明と撤回4 札幌地裁の注意処分5 法律時報への寄稿第10 日弁連の決議と「司法の危機」1 日弁連臨時総会の決議2 札幌弁護士会の裁判官アンケート3 青年法律家協会をめぐる問題への広がり第11 長沼ナイキ訴訟の結末1 札幌地裁昭和48年9月7日判決2 札幌高裁昭和51年8月5日判決3 最高裁昭和57年9月9日判決第12 関連記事第13 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 国会会議録4 公的資料5 文献6 調査範囲
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,昭和44年に札幌地裁の平賀健太所長が長沼ナイキ訴訟の担当裁判長に書簡を届けた,いわゆる平賀書簡事件の経過と,その後の処分及び影響を時系列で整理する。
事実関係は,国会会議録,裁判所ウェブサイトに掲載された決定・判決,裁判官訴追委員会の公表資料及び日本弁護士連合会の決議で確認できる範囲で記載した。
書籍の記述は,出典を示して補足的に紹介した。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。

2 結論

①昭和44年8月14日,平賀健太札幌地裁所長は,長沼ナイキ訴訟の執行停止申立事件を担当していた福島重雄裁判長の官舎に,事件についての自らの見解を記した書簡を届けた(平賀書簡)。
②これに先立つ8月4日には,事件の合議体に加わっていない平田浩判事にも,平賀所長からメモが渡されていた(平田メモ)。
③札幌地裁は8月22日に保安林解除処分の効力を停止する決定をし,9月13日の臨時裁判官会議で平賀所長に対する厳重注意を決定した。
④最高裁は,9月20日の臨時裁判官会議の決定に基づいて平賀所長を注意し,同日東京高裁判事に異動させ,書簡の交付は「節度を越えるもの」であるとする所信を公表した。
⑤もっとも,最高裁の事務当局は,国会で,平賀書簡は裁判に干渉したものとは考えないと説明した。
⑥裁判官訴追委員会は,昭和45年10月19日,平賀裁判官を不訴追とし,書簡の写しを東京の裁判官らに送るなどした福島裁判官を訴追猶予とした。
⑦札幌高裁は同月28日に福島裁判官を注意し,札幌地裁の裁判官会議も同年11月7日に福島裁判官を注意した。
⑧日弁連は,同年12月19日の臨時総会で,訴追委員会の決定と,札幌高裁の注意処分及びこれを支持する最高裁の態度を批判する決議をした。
⑨本案の長沼ナイキ訴訟は,札幌地裁昭和48年9月7日判決で保安林の指定解除処分が取り消されたが,札幌高裁昭和51年8月5日判決で訴えが却下され,最高裁昭和57年9月9日判決で上告が棄却された。

第2 時系列
年月日出来事昭和44年7月7日農林大臣が長沼町の国有保安林の指定解除を告示し,同日,住民らの取消訴訟及び執行停止申立事件が札幌地裁に係属昭和44年8月4日平賀所長が平田判事にメモを渡す(平田メモ)昭和44年8月10日所長官舎での協議で,8月10日から16日までの週には執行停止事件の決定を告知しないことで話がまとまる昭和44年8月14日平賀所長が書簡を福島裁判長の官舎に届ける(平賀書簡)昭和44年8月22日札幌地裁が保安林解除処分の効力を停止する決定昭和44年8月27日札幌地裁本庁の裁判官9名が臨時裁判官会議の招集を求める方向で相談昭和44年9月13日札幌地裁の臨時裁判官会議が平賀所長に対する厳重注意を決定昭和44年9月14日・15日書簡がテレビで放映され,翌朝の新聞に全文が掲載され,札幌地裁が決議内容を発表昭和44年9月20日最高裁が平賀所長を注意し,東京高裁判事に補する昭和44年10月9日衆議院法務委員会で最高裁が経過を説明昭和44年10月23日福島裁判官に対する訴追請求(新聞報道による)昭和45年1月23日札幌高裁が執行停止決定を取り消し,申立てを却下昭和45年5月7日札幌地裁が国による福島裁判長の忌避申立てを却下(同年7月10日に札幌高裁が抗告を棄却)昭和45年10月19日訴追委員会が平賀裁判官を不訴追,福島裁判官を訴追猶予とする昭和45年10月28日札幌高裁が裁判官会議の議決に基づき福島裁判官を注意昭和45年11月7日札幌地裁の裁判官会議が福島裁判官を注意昭和45年12月19日日弁連臨時総会が訴追委員会の決定等を批判する決議昭和48年9月7日札幌地裁が本案で保安林の指定解除処分を取り消す判決昭和51年8月5日札幌高裁が本案の一審判決を取り消し,訴えを却下昭和57年9月9日最高裁が上告を棄却
第3 長沼ナイキ訴訟と執行停止決定
1 事件の係属

昭和44年10月9日の衆議院法務委員会で,矢口洪一最高裁判所長官代理者は,事件の経過を次のように説明した。
農林大臣は,昭和44年7月7日,北海道夕張郡長沼町の馬追山付近にある約35ヘクタールの国有保安林について,高射教育訓練施設とするために保安林の指定を解除する告示をした。
これに対し,長沼町の住民173名が,農林大臣を被告として解除処分の取消しを求める本案訴訟を起こすとともに,処分の執行停止を申し立て,これらの事件は同日札幌地裁に係属した。
事件は札幌地裁の民事第一部に係属し,担当の裁判官は福島重雄裁判長,木谷明裁判官及び石川善則裁判官であった。
国は7月22日に意見書を提出し,住民側は8月1日に反論書を提出した。
矢口洪一最高裁判所長官代理者は,担当の裁判部で執行停止事件の決定をする段取りになったのは8月10日前後であったと説明した。

2 昭和44年8月22日の執行停止決定

札幌地方裁判所昭和44年8月22日決定(昭和44年(行ク)第11号)は,主文で,農林省告示第1023号による保安林解除処分の「効力を停止する。」とした。
同決定は,自衛隊の憲法適合性について,「少なくとも、自衛のために必要かつ相当な限度内にとどまるものであれば、いかなる軍事力も憲法の右条項にいう『戦力』にあたらないとすることには疑問があり」とした。

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ロッキード事件の嘱託証人尋問と最高裁判所の「不起訴宣明」―昭和51年の裁判官会議から最大判平成7年2月22日まで(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 嘱託証人尋問に至る経緯1 刑事訴訟法226条に基づく証人尋問の請求2 検事総長と東京地方検察庁検事正の宣明3 ファーガソン判事の命令第3 最高裁判所の対応1 昭和51年7月14日の裁判官会議と職員の派遣2 検事総長の第二次宣明3 昭和51年7月24日の裁判官会議と宣明書4 米国の裁判所による解除と調書の送付第4 宣明書の法的性格1 最高裁判所刑事局長の答弁2 国会での疑問と法務省の答弁3 控訴審判決の判断第5 最高裁判所大法廷平成7年2月22日判決1 判決の概要2 宣明の経緯についての判示3 証拠能力を否定した理由4 大野正男裁判官の補足意見5 判決後の国会の質疑第6 平成28年改正による刑事免責制度1 刑事訴訟法157条の2・157条の32 昭和51年の措置との対比第7 関連記事第8 出典・参考資料1 法令2 裁判例3 国会会議録4 文献5 調査範囲
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,ロッキード事件の捜査で行われた米国在住の証人に対する嘱託証人尋問について,昭和51年に最高裁判所が裁判官会議の決議に基づいて「最高裁判所宣明書」を出した経緯と,最高裁判所大法廷平成7年2月22日判決がその嘱託証人尋問調書の証拠能力を否定するまでを整理する。
経緯は,国会会議録の答弁,同判決及びその控訴審である東京高等裁判所昭和62年7月29日判決の判文,並びに東京高等裁判所平成17年2月9日判決の別紙に掲載された最高裁判所裁判官会議の議事録(開示部分)によって確認した。
山本祐司『最高裁物語(下巻)』の記述は,帰属を明示して補足に用いた。
法令は,令和8年9月27日現在の条文をe-Gov法令検索で確認した。

2 結論

①東京地方検察庁の検察官は,昭和51年5月22日,刑事訴訟法226条に基づく証人尋問を東京地方裁判所の裁判官に請求し,その裁判官が米国の裁判所に証人尋問を嘱託した。
②検事総長と東京地方検察庁検事正は,証人らを刑事訴訟法248条により起訴猶予とする旨の宣明書を発したが,米国の連邦地方裁判所の判事は,日本国の最高裁判所のオーダー又はルールが提出されるまで証言調書を伝達してはならないと命じた。
③最高裁判所は,昭和51年7月14日の裁判官会議でこの命令の真意を調査することとし,事務総局刑事局第二課長と刑事局付の2名を米国に出張させた。
④最高裁判所は,同月24日の裁判官会議で,検事総長の確約が将来にわたり検察官によって遵守され,証人らが公訴を提起されることはないことを宣明する書面を米国の連邦地方裁判所に送付することを決定した。
⑤当時の最高裁判所刑事局長は,国会で,この宣明書を裁判所法12条に基づく司法行政上の措置と説明し,受訴裁判所の裁判を拘束するものではないと答弁した。
⑥控訴審の東京高等裁判所昭和62年7月29日判決は,最高裁判所の宣明は事実認識を明らかにしたにすぎないもので,裁判所法12条による司法行政権の行使として許容される範疇の行為であるとした。
⑦最高裁判所大法廷平成7年2月22日判決は,検事総長らの宣明によっていわゆる刑事免責が付与されたものと解した上で,刑事訴訟法は刑事免責の制度を採用していないとして嘱託証人尋問調書の証拠能力を否定したが,これを除いても犯罪事実を認定できるとして被告人2名の上告を棄却した。
⑧その後,平成28年法律第54号による刑事訴訟法の改正で,裁判所の決定により証言等を証人に不利益な証拠とすることができないこととする刑事免責の制度(157条の2・157条の3)が設けられた。

第2 嘱託証人尋問に至る経緯
1 刑事訴訟法226条に基づく証人尋問の請求

昭和51年10月15日に衆議院ロッキード問題に関する調査特別委員会で行われた法務大臣の中間報告によれば,同年3月24日に法務省と米国司法省との間で,関係資料を捜査,調査及び裁判のみに使用し,秘密保持を厳守すること,相互に司法共助の実現に最善の努力をすること等を内容とする司法取り決めが締結された。
同報告によれば,東京地方検察庁は,米国在住の関係人の任意の取調べを試みたが,関係人がこれを拒否したため,「五月二十二日刑事訴訟法二百二十六条に基づく起訴前の証人尋問を東京地方裁判所裁判官に請求し、同裁判官の嘱託決定を得て、検事二名を米国に派遣するなど右嘱託尋問の実現に鋭意努力をしました。」とされている。
刑事訴訟法226条は,「犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第二百二十三条第一項の規定による取調に対して、出頭又は供述を拒んだ場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。」と定める。
同法228条1項は,この請求を受けた裁判官は,証人の尋問に関し,「裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。」と定めている。

最高裁判所大法廷平成7年2月22日判決によれば,この請求は,被告人B外2名に対する贈賄及び氏名不詳者数名に対する収賄等を被疑事実とし,当時米国に在住していた証人らに対する証人尋問を,国際司法共助として同国の管轄司法機関に嘱託するよう求めるものであった。
嘱託先は,同判決では「カリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所」,最高裁判所の裁判官会議の議事録では「中部カリフォルニア合衆国連邦地方裁判所」と表記されている。
国会の質疑では,証人はコーチャン,クラッター及びエリオットの3名とされている。

2 検事総長と東京地方検察庁検事正の宣明

東京高等裁判所昭和62年7月29日判決によれば,証人らが嘱託証人尋問の際も自己負罪拒否特権を行使して証言を拒否することが予想されたため,検事総長は昭和51年5月20日に,東京地方検察庁検事正は同月22日に,それぞれ宣明書を発した。
検事総長の宣明書は,「右各証人の証言内容及びこれに基づき将来入手する資料中に、仮に、日本国の法規に抵触するものがあるとしても、証言した事項については、右証人三名を日本国刑事訴訟法二四八条によって起訴を猶予するよう東京地方検察庁検事正に指示している。この意思決定は、当職の後継者を拘束するものである。」という趣旨のものであった。
東京地方検察庁検事正の宣明書も,同じ証人3名を同条によって起訴猶予とし,「この意思決定は、当職の後継者を拘束するものである。」という趣旨のものであった。
同判決によれば,東京地方裁判所の裁判官は,嘱託書に,検察官が起訴を猶予する意思がある旨を証人に告げた上で尋問されたいと希望しているので,「貴国国内法において許容される範囲内で右希望に添う措置をとるよう要請する。」旨を付記した。

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裁判所ウェブサイトの裁判例のURL―令和7年9月のリニューアル,旧形式リンクの読み替え方及び判決書原本との記載の違い(AI作成)

目次第1 本記事の対象と結論1 本記事の対象と基準日2 結論第2 令和7年9月のリニューアル1 裁判所の告知2 リニューアルから1年後の状況第3 新しいURLの形式1 詳細画面2 全文PDF3 旧形式との対応第4 検索画面の使い方1 六つのカテゴリー2 事件番号と裁判年月日3 全文検索4 掲載された判決等の加工第5 判決書原本との記載の違いに関する報告書1 報告書の概要2 調査の結果3 利用上の注意第6 関連記事第7 出典・参考資料1 裁判所の公表資料2 裁判例3 調査範囲
第1 本記事の対象と結論
1 本記事の対象と基準日

本記事は,裁判所ウェブサイトの裁判例検索に掲載された判決・決定について,令和7年9月24日のウェブサイトのリニューアル後のURLの形式,リニューアル前の形式のリンクを新しい形式に読み替える方法,検索画面の使い方及び掲載された判決等の記載に関する注意点を整理するものである。
URLの応答は,令和8年9月27日に,ログインしない状態の通常のアクセスで確認した。
裁判所の公表資料は,同日に裁判所ウェブサイトで確認した。

2 結論

①裁判所ウェブサイトは令和7年9月24日にリニューアルされ,裁判所は,トップページ以外の一部のURLが変更になり,一定期間は主なページについて旧URLから新URLへ自動的に転送されると告知した。
②令和8年9月27日現在,裁判例の詳細画面は https://www.courts.go.jp/hanrei/(番号)/detail2/index.html,全文PDFは https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-(番号).pdf の形式である。
③リニューアル前の形式の詳細画面(/app/hanrei_jp/detail2?id=(番号))と全文PDF(/app/files/hanrei_jp/(下3桁)/(6桁の番号)_hanrei.pdf)は,同日に確認したところ,いずれも表示されなかった(HTTPステータス404)。
④旧形式の全文PDFのリンクは,6桁の番号から先頭の0を除いた番号を新形式に当てはめることで,同じ裁判例の全文PDFに読み替えることができた。
⑤ただし,読み替える前に,その番号がリンクを張った文章で紹介している裁判例と一致しているかを,新形式の詳細画面の裁判年月日・法廷名・事件番号で確かめる必要がある。
⑥最高裁判所事務総局は,令和7年7月,裁判所ウェブサイト及び最高裁判所民事・刑事判例集に掲載された判決等と判決書原本との記載の違いに関する報告書を公表しており,古い年代の判決等を一字一句引用するときは,この点にも注意を要する。

第2 令和7年9月のリニューアル
1 裁判所の告知

令和7年9月24日に裁判所ウェブサイトのお知らせ一覧に掲載された「裁判所ウェブサイトをリニューアルしました」のページは,ウェブサイトをリニューアルしたと告知している。
同ページによれば,今回のリニューアルでは,「裁判所ウェブサイト」,「知的財産高等裁判所ウェブサイト」及び「裁判員制度ウェブサイト」の三つのサイトが統合され,トップページのURLに変更はないものの,知的財産高等裁判所ウェブサイト及び裁判員制度ウェブサイトのURLが変更になったほか,裁判所ウェブサイトについてもトップページ以外の一部URLが変更になった。
同ページは,リニューアル後一定期間は,主なページについては,旧URLにアクセスした場合にも自動的に新URLのページに転送されるため閲覧は可能であるが,ブラウザの「お気に入り」等に登録されている場合には新URLへの登録変更をお願いするとしている。

2 リニューアルから1年後の状況

令和8年9月27日に確認したところ,旧形式の検索画面のURL(/app/hanrei_jp/search1)は,新形式の検索画面(/hanrei/search1/index.html)へ転送された。
これに対し,旧形式の詳細画面及び全文PDFのURLは転送されず,404となった。
知的財産高等裁判所の旧サイトのドメイン(www.ip.courts.go.jp)上の旧形式の全文PDFは,www.courts.go.jp/ip/ 以下の同じ形式のURLに転送されたが,転送先は404であった。
ブログや書面等に旧形式のリンクを残している場合は,リンク切れになっていることになる。

第3 新しいURLの形式
1 詳細画面

裁判例の詳細画面は,https://www.courts.go.jp/hanrei/(番号)/detail2/index.html の形式で表示される。
本記事の確認範囲では,同じ番号について,検索結果の種類に応じて detail2 から detail8 までの詳細画面が用意されており,例えば,最高裁判例として表示されるものは detail2,下級裁裁判例は detail4,行政事件裁判例は detail5,労働事件裁判例は detail6,知的財産裁判例は detail7,知財高裁裁判例は detail8 のリンクになっていた。
また,detail3 は,高等裁判所判例集の形式の詳細画面であった。
令和8年9月28日に,最高裁判所2件,高等裁判所,知的財産高等裁判所及び地方裁判所2件の計6件の番号について detail1 から detail9 までを開いたところ,いずれの番号でも detail2 から detail8 までが表示され,detail1 と detail9 は表示されなかった(HTTPステータス404)。
detail2 から detail8 までの違いは検索結果の種類に応じた表示形式の違いとみられ,確認した6件では,裁判所の種類を問わず detail2 で詳細画面を開くことができた。

(続きを読む...)裁判所ウェブサイトの裁判例のURL―令和7年9月のリニューアル,旧形式リンクの読み替え方及び判決書原本との記載の違い(AI作成)

最高裁判所判事の裁判以外の職務―裁判官会議,長官所長会同,憲法週間の視察,外国出張,判例委員会及び宮中行事(AI作成)

目次第1 本記事の概要1 対象とする職務2 資料と基準日第2 裁判官会議と司法行政1 法的根拠2 開催の頻度と所要時間3 議題の中心4 原案が了承されやすい構造5 席次第3 長官所長会同1 出席者と日程2 判事の関与3 懇親会と裁判官会同第4 憲法週間の視察1 割振りの方法2 視察先で行うこと3 経費と行程4 視察後の報告第5 外国出張1 頻度と用務2 支援体制3 報告と配偶者の同行第6 判例委員会その他の委員会1 判例委員会2 図書館委員会と最高裁判所図書館3 その他の委員会第7 長官代行と皇室会議1 長官代行2 皇室会議3 長官が欠けた期間第8 宮中行事1 認証式と就任の挨拶2 年間の行事と出席の範囲3 天皇へのお話と午餐第9 日常の執務と庁内の行事1 一日の流れ2 裁判官室の体制3 庁内の会食4 就任と退官の行事第10 処遇と経費の規律第11 三つの回想から分かること1 司法行政への関与の実際2 時期による違い3 資料の限界第12 出典・参考資料1 法令2 文献3 国会会議録第13 関連記事
第1 本記事の概要
1 対象とする職務

最高裁判所判事の職務の中心は,上告事件,上告受理申立て事件及び抗告事件の審理である。
他方,裁判所法12条1項により,最高裁判所が行う司法行政事務は裁判官会議の議によるものとされているため,判事は,裁判官会議の構成員として司法行政にも関与する。
このほか,判事は,長官所長会同への出席,下級裁判所の視察,外国出張,各種委員会の委員,宮中行事への出席など,裁判以外の職務も担っている。

本記事は,最高裁判所判事を務めた3人の著作又は講演録を突き合わせ,こうした裁判以外の職務の実際を整理するものである。
持ち回り審議,期日審議,判例集登載等の審理の方式は「宇賀克也『管見 最高裁判所』から分かる最高裁判所の審理」で扱ったので,本記事では必要な範囲でのみ触れる。

2 資料と基準日

本記事が用いる資料は,次の3点である。
いずれの著者も,在任中は第三小法廷に所属していた。

資料著者の出身在任期間藤田宙靖『最高裁回想録―学者判事の七年半』(有斐閣,2012年)行政法学者平成14年9月30日から平成22年4月5日まで田原睦夫「最高裁生活を振り返って」金融法務事情1978号6頁~36頁(平成25年)弁護士平成18年11月1日から平成25年4月22日まで宇賀克也『管見 最高裁判所』(有斐閣,2026年)行政法学者平成31年3月20日から令和7年7月20日まで

在任期間は,藤田宙靖『最高裁回想録―学者判事の七年半』(有斐閣,2012年)3頁,田原睦夫「最高裁生活を振り返って」金融法務事情1978号(平成25年)6頁及び宇賀克也『管見 最高裁判所』(有斐閣,2026年)2頁の記載による。
田原氏の講演録は,平成25年7月13日に行われた講演を基に加筆・修正したものであり,本文は6頁~32頁,別表は33頁~36頁に掲載されている(田原・前掲6頁)。
以下,各資料は「藤田・前掲」「田原・前掲」「宇賀・前掲」と略し,頁は各資料に印刷された頁で示す。

これらは,いずれも一人の判事が在任中に見聞きしたことの回想である。
在任時期が異なるため,同じ事項でも運用が変わっている部分があり,本記事ではその都度時期を示して並べる。
法令の規定は令和8年9月26日にe-Gov法令検索で確認したが,回想に記載された運用は,最高裁判所の公表資料で一つ一つ裏付けたものではない。

第2 裁判官会議と司法行政
1 法的根拠

裁判所法12条1項は,「最高裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、最高裁判所長官が、これを総括する。」と定め,同条2項は,裁判官会議が全員の裁判官で組織され,長官がその議長となることを定めている。
同法13条は,最高裁判所の庶務を掌らせるために事務総局を置き,同法53条2項は,最高裁判所事務総長が長官の監督を受けて事務総局の事務を掌理することを定める。
したがって,法律上の決定主体は15人の裁判官から成る裁判官会議であり,事務総局はそれを補佐する組織である。
裁判官会議の規程,議事録及び事前検討の仕組みは「最高裁判所裁判官会議」で,事務総長の地位は「最高裁判所事務総長とは」で説明している。

2 開催の頻度と所要時間

藤田氏の在任当時,裁判官会議は原則として毎週水曜日の午前10時30分から,裁判官棟4階の会議室で開かれ,事務総長,秘書課長及び議題を担当する局長が同席していた(藤田・前掲31頁)。
会議の時間は通常30分から1時間程度で,議題がないとして取りやめになることもあったという(藤田・前掲33頁)。

宇賀氏の在任当時も,裁判官会議は原則として毎週1回開かれ,議題がないために開かれないことが年に数回あった(宇賀・前掲100頁)。
事務総長と秘書課長は必ず出席し,人事案件がほぼ毎回議題となるため,人事局長も常に出席して説明していたとされる(宇賀・前掲100頁~101頁)。
案件が多いと1時間ほど,議題以外の出張報告等が続くと1時間半以上かかることもあった(宇賀・前掲102頁)。

(続きを読む...)最高裁判所判事の裁判以外の職務―裁判官会議,長官所長会同,憲法週間の視察,外国出張,判例委員会及び宮中行事(AI作成)

宇賀克也『管見 最高裁判所』から分かる最高裁判所の審理―事件の分配,持ち回り審議,期日審議,口頭弁論及び判例集登載(AI作成)

目次

第1 本書の概要と本記事の範囲1 書誌と著者2 本書の構成3 本記事の範囲と出典の区別第2 事件の分配と調査官1 小法廷への機械的な分配2 最高裁判所調査官第3 審議の方式1 持ち回り審議2 軽審議3 期日審議4 案文審議第4 個別意見1 個別意見の種類と表示義務2 起案・審議・記載の順序3 共同で執筆する個別意見第5 上告受理と不受理(要点)1 受理の判断要素2 不受理決定の意味第6 大法廷1 回付の要件と違憲判断の要件2 在任中の大法廷事件と「小法廷の壁」第7 口頭弁論と判決の言渡し1 口頭弁論を開くかどうか2 口頭弁論期日の運営3 判決の言渡しと口頭弁論の配信第8 判例集・裁判集と判例委員会1 登載の決定と判例委員会2 判例集登載と裁判集登載の差3 判決の公開と民事裁判情報のデータベース化第9 最高裁判事の構成と国民審査1 出身別の構成の慣行2 国民審査の課題と著者の提言第10 第2部の個別意見38件1 第2部の構成と意見の種別2 38件の一覧第11 出典第12 関連記事
第1 本書の概要と本記事の範囲
1 書誌と著者
(1) 書誌

宇賀克也『管見 最高裁判所』は,有斐閣が2026年に刊行した書籍であり,はしがきの日付は2026年3月,奥付の発行日は同年5月30日(初版第1刷)である。
著者は,最高裁判所の情報はキャリア裁判官の方が多く持っているという自覚などから,書名を「管見」としたと説明している(宇賀克也『管見 最高裁判所』(有斐閣,2026年)2頁)。

(2) 著者

著者は,宇賀克也最高裁判所判事(当時。令和7年7月定年退官)である。
本書によれば,著者は,平成31年2月22日の閣議決定を経て,約41年間勤務した東京大学を同年3月19日に退職し,翌20日の認証を受けて最高裁判所判事に就任した(宇賀・前掲2頁)。
その後,令和7年7月20日に定年退官しており,在任期間は6年4か月である(宇賀・前掲2頁)。
在任中は第三小法廷に所属し,在任期間の後半の約3年間は同小法廷で最も早く着任した最先任裁判官を務めた(宇賀・前掲10頁,78頁)。

2 本書の構成
(1) 第1部「管見最高裁判所」

第1部(1頁~116頁)は,就任前後の経緯(第1章),最高裁判所における審議(第2章),最高裁判所を構成する人と組織(第3章)及び裁判以外の活動(第4章)を扱い,本記事が主に取り上げるのは第2章と第3章の前半である。
著者は,裁判は公権力の行使であって説明責任を伴うという考えを示した上で,評議の秘密に触れない範囲で,在任中に見聞きした最高裁判所の運用を記述している(宇賀・前掲3頁~6頁)。

(2) 第2部「個別意見」

第2部(117頁~370頁)は,著者が最高裁判所判事として付した個別意見38件を,憲法,行政法,民事実体法,労働法,民事訴訟法関係及び刑事法の分野に分けて収録している。
各項目は,事案の概要,決定・判決の要旨,個別意見の本文及び著者による解説の順に構成されている(宇賀・前掲118頁以下)。
著者は,判例集登載判例について担当調査官が書く解説は調査官の受け止めであって,個別意見を書いた裁判官の真意と一致する保証はないから,意見を書いた本人が趣旨を敷衍する方が有意義であると考えたことを,第2部を設けた理由として挙げている(宇賀・前掲5頁~6頁)。

3 本記事の範囲と出典の区別

本記事は,本書第1部のうち最高裁判所の審理に関する部分を手続の順に整理し,第2部の個別意見38件を一覧にしたものであり,生成AIを用いて作成した。
第1部の記述の多くは,著者が主として第三小法廷で経験した運用であって公表資料で裏付けられるものではないため,本記事では出所が本書であることを示し,著者の意見や提言は運用の説明と区別して記載する。
条文は令和8年9月25日にe-Gov法令検索で確認した現行の条文により,裁判例は裁判所HPの裁判例検索で書誌を確認したものに限って記載した。
最高裁判所規則である民事訴訟規則及び最高裁判所裁判事務処理規則はe-Gov法令検索に収録されていないため,これらの条項は本書の記載によるものとして示す。
本記事で示す本書の頁は,いずれも本書に印字された頁である。

第2 事件の分配と調査官
1 小法廷への機械的な分配
(1) 受付順の分配と分配比

本書によれば,著者の在任中の新受件数は毎年1万件を超えており,令和6年は民事・行政事件7838件,刑事事件3855件の合計1万1693件であった(宇賀・前掲12頁~13頁)。

事件は,専門分野によらず,最高裁判所での受付順に第一,第二,第三小法廷へと機械的に分配される(宇賀・前掲14頁)。

(続きを読む...)宇賀克也『管見 最高裁判所』から分かる最高裁判所の審理―事件の分配,持ち回り審議,期日審議,口頭弁論及び判例集登載(AI作成)

判決要旨を弁護士が受け取るには―申出時期,便宜供与,静岡地裁令和7年11月27日判決,保存及び情報公開(AI作成)

目次
第1 結論
第2 判決要旨の法的位置付け
第3 申出の時期及び申出事項
第4 静岡地裁令和7年11月27日判決
第5 保存及び司法行政文書開示の限界
第6 入手後の使い方
第7 一次資料及び関連記事

第1 結論
1 裁判所が報道機関向けの判決要旨を作成している事件では,民事事件の当事者又は刑事事件の訴訟関係人その他その事件に密接な関係を有する者が,要望により同じ要旨の交付を受けることがあります。
2 ただし,交付は司法行政上の便宜供与であり,報道機関にも当事者等にも,当然の交付請求権があるとは確認できません。作成の有無,交付先,部数,交付時期及び方法は事件ごとに異なります。
3 必要な場合は,判決言渡しの直前ではなく,作成の可能性が分かった段階で,担当部又は総務課に,立場,利用目的,希望部数,希望時期及び個人情報処理の方法を具体的に伝えるのが実務的です。
4 正式な裁判内容は判決書に記載されます。判決要旨は判決書そのものではなく,情報公開手続で後から必ず取得できる資料でもありません。

第2 判決要旨の法的位置付け
1 広報ハンドブック(令和2年3月版)は,報道機関が言渡し後の短時間で正確な記事を作るため,裁判所が要旨又は骨子を提供する便宜供与を説明しています。
2 令和7年度(情)答申第95号は,判決要旨が主として迅速かつ正確な報道のために報道機関へ交付されるものである一方,事件との特別な関係性に照らし,民事事件の当事者又は刑事事件の訴訟関係人等にも,要望を受けて便宜供与として交付されることがあると認定しました。
3 同答申は,報道機関への交付と当事者等への交付が常に連動するわけではないとも説明しています。報道機関に交付されたから当事者等にも当然に交付される,またはその逆であるとは限りません。

第3 申出の時期及び申出事項
1 申出時期
・ 言渡し直前では作成,仮名処理,部数及び裁判体との調整が間に合わないことがあります。著名事件,長時間の判決言渡し又は複雑・長大な判決が予想される場合は,判決期日が指定された後,できるだけ早く相談します。
2 申出先
・ 事件担当部と総務課のどちらが窓口かは庁により異なり得ます。まず担当書記官に,判決要旨の作成予定の有無を断定的に求めるのではなく,交付申出の窓口及び期限を確認するのが安全です。
3 明示する事項
・ 事件番号及び事件名
・ 当事者,代理人,弁護人その他の事件との関係
・ 判決要旨を必要とする理由
・ 希望部数

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裁判の迅速化に係る検証に関する報告書と検討会―第1回から第11回までの報告書と第12クールの論点(AI作成)

目次第1 検証の仕組み1 裁判の迅速化に関する法律2 検証に関する規則と検討会第2 第1回から第11回までの報告書1 各回の概要2 統計数値の訂正第3 検証の方法の変化1 第1回から第5回まで2 第6回以降のフォローアップ型の検証第4 第11回報告書の要点第5 第12クールの検証の方針1 第74回検討会で示された方針2 日程と委員第6 報告書を読むときの注意第7 関連記事第8 出典1 法令・規則2 裁判所の資料
第1 検証の仕組み
1 裁判の迅速化に関する法律

裁判の迅速化に関する法律(平成15年法律第107号)は,平成15年7月16日に公布され,同日に施行された(附則1項)。
同法2条1項は,第一審の訴訟手続については「二年以内のできるだけ短い期間内に」終局させることを目標として,充実した手続の実施と,これを支える制度及び体制の整備を図ることを定めている。

同法8条1項は,最高裁判所が,裁判所における手続に要した期間の状況,その長期化の原因その他必要な事項の調査及び分析を通じて,裁判の迅速化に係る総合的,客観的かつ多角的な検証を行い,その結果を「二年ごとに」国民に明らかにするため公表すると定めている。
最初の公表は施行の日から2年以内に行うものとされ(附則2項),政府は,施行後10年を経過した場合に施行の状況について検討を加えるものとされていた(附則3項)。

2 検証に関する規則と検討会

最高裁判所は,裁判の迅速化に係る検証に関する規則(平成15年最高裁判所規則第26号)を定めている。
同規則1条は,検証を行うに当たり,最高裁判所事務総長が検討会を開催して,裁判官,検察官,弁護士及び学識経験のある者の意見を聴くものとし,3条は,検証結果をインターネットの利用その他の適切な方法で公表するものとしている。

この規則に基づく「裁判の迅速化に係る検証に関する検討会」は,平成15年12月22日に第1回が開かれ,令和7年10月2日の第74回まで開かれている。
裁判所ウェブサイトの説明によれば,委員は11人で,その内訳は学識経験者6人,弁護士2人,検察官1人,裁判官2人であり,合計15人の範囲で増やすことも考えているとされている。

第2 第1回から第11回までの報告書
1 各回の概要

報告書は,平成17年7月から2年ごとに,いずれも7月に公表されてきた(第11回報告書「はじめに」1頁)。
各回の公表時期,統計の対象,民事第一審訴訟全体の平均審理期間及び主な特色は次のとおりである。
「主な特色」は,各回の報告書の「はじめに」又は概要を本記事で要約したものである。

回(公表)統計の対象民事第一審の平均審理期間主な特色第1回(平成17年7月)民事は平成16年4月~12月,刑事は平成16年8.2月統計により民事・刑事の第一審の審理期間の全体像を初めて示し,長期化要因の仮説を提示第2回(平成19年7月)平成18年7.8月控訴審の分析を加え,裁判官からの聴取を基に事件類型ごとに長期化要因を考察第3回(平成21年7月)平成20年6.5月弁護士からの聴取も行い長期化要因を実証的に分析。過払金等を除いた統計の併用と遺産分割事件の検証を開始第4回(平成23年7月)平成22年6.8月長期化要因を解消するための施策を示し,裁判員裁判と上告審も検証第5回(平成25年7月)平成24年7.8月紛争の動向に影響する社会的要因と外国の実情を検証第6回(平成27年7月)平成26年8.5月統計分析を中心とするフォローアップ型の検証へ移行第7回(平成29年7月)平成28年8.6月争点整理での認識共有,合議体の活用,家事調停の運営第8回(令和元年7月)平成30年9.0月刑事事件で初めて実情調査を実施(公判前整理手続の長期化要因)第9回(令和3年7月)令和2年9.9月新型コロナウイルス感染症の影響と裁判所の対応第10回(令和5年7月)令和4年10.5月10回目の節目として迅速化検証の現在地を振り返る第11回(令和7年7月)令和6年9.2月裁判手続のデジタル化の現状と今後を章として検証

平均審理期間は各回の報告書に掲載された値であり,第1回の8.2月は平成16年4月から12月までの9か月分の値である。
第3回から第5回までの値は,過払金返還請求訴訟の急増により短く出ており,過払金等を除いた値は,平成20年8.1月,平成22年8.3月,平成24年8.9月とされている。
第11回報告書は,第9回報告書から過払金等を除く処理をやめ,全体の統計だけを分析している(第11回報告書45頁注2)。

2 統計数値の訂正

裁判所ウェブサイトの「裁判の迅速化検証」のページには,第2回から第9回までの報告書について,統計数値を訂正するお知らせが掲載されている。
過去の報告書の数値を引用するときは,訂正のお知らせの対象になっていないかを確かめる必要がある。

第3 検証の方法の変化
1 第1回から第5回まで

第1回から第5回までは,手続全体の審理期間の検証を一巡させる期間であった。
第11回報告書の「はじめに」は,この間に,長期化要因の分析(第3回),長期化要因を解消するための施策の提示(第4回),社会的要因の検証(第5回)が行われたと整理している(第11回報告書「はじめに」1頁~2頁)。

2 第6回以降のフォローアップ型の検証

施行後10年の節目には,附則3項に基づく政府の検討会が開かれ,法律の基本的な枠組みと最高裁判所による検証・公表を維持すべきであるとされた(第11回報告書「はじめに」1頁~2頁)。

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裁判所の予算はいつ決まるか-概算要求基準の閣議了解から国会での成立まで(令和2年度~令和9年度の日程)(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と資料2 結論第2 年度別の日程1 概算要求まで2 政府予算案から成立まで第3 日程から外れた年度1 令和3年度予算——送付期限の延長2 令和7年度予算——国会での修正3 令和8年度予算——暫定予算第4 日程を定める法令1 財政法及び予算決算及び会計令2 詳しい解説第5 裁判所側の資料が公表される時期1 概算要求2 成立予算第6 関連記事第7 出典1 法令2 財務省3 国会会議録4 裁判所ウェブサイト
第1 この記事の対象と結論
1 対象と資料

この記事は,裁判所の予算が,概算要求から国会での成立まで,毎年どのような日程で進んでいるかを,令和2年度予算から令和9年度予算までの実際の日付で整理するものである。
日付は,財務省ウェブサイトの各年度の「予算」の頁に掲載された日付によった。
令和5年度予算の頁は財務省ウェブサイトから外れているため,国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)に保存された同頁によった。

本記事の基準日は令和8年9月19日である。
本記事は生成AIを用いて資料を照合し,資料に書かれた事実と,資料から考えられることを区別して整理したものである。

2 結論

裁判所の予算は,おおむね,夏に概算要求の基準が閣議了解され,8月31日までに最高裁判所が見積りを内閣に送付し,9月上旬に各省各庁の概算要求が公表され,12月下旬に政府予算案が閣議決定され,翌年1月に国会に提出され,3月下旬に成立するという日程で進む。

もっとも,この日程は毎年同じではない。
令和3年度予算は,送付期限が政令で9月30日に延ばされ,各省各庁の概算要求の公表は10月7日であった。
令和8年度予算は,概算要求の基準の閣議了解が8月8日,国会提出が2月20日であり,年度内に成立せず,暫定予算を経て4月7日に成立した。

第2 年度別の日程
1 概算要求まで
予算の年度概算要求の基準各省各庁の概算要求の公表令和2年度令和元年7月31日閣議了解令和元年9月5日令和3年度令和2年7月21日(「具体的な方針」についての閣議での財務大臣発言)令和2年10月7日令和4年度令和3年7月7日閣議了解令和3年9月7日令和5年度令和4年7月29日閣議了解令和4年9月5日令和6年度令和5年7月25日閣議了解令和5年9月5日令和7年度令和6年7月29日閣議了解令和6年9月4日令和8年度令和7年8月8日閣議了解令和7年9月3日令和9年度令和8年7月30日閣議了解令和8年9月4日

概算要求の基準の名称は,多くの年度で「令和○年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」である。
ただし,令和3年度は「令和3年度予算の概算要求の具体的な方針について」(閣議での財務大臣発言要旨)であり,令和8年度は「令和8年度予算の概算要求について」である。

2 政府予算案から成立まで
予算の年度政府予算案の閣議決定国会提出成立令和2年度令和元年12月20日令和2年1月20日令和2年3月27日令和3年度令和2年12月21日令和3年1月18日令和3年3月26日令和4年度令和3年12月24日令和4年1月17日令和4年3月22日令和5年度令和4年12月23日令和5年1月23日令和5年3月28日令和6年度令和5年12月22日令和6年1月26日令和6年3月28日令和7年度令和6年12月27日令和7年1月24日令和7年3月31日令和8年度令和7年12月26日令和8年2月20日令和8年4月7日

令和3年度予算の成立日は,財務省の頁に記載がないため,国会会議録(第204回国会参議院本会議,令和3年3月26日)によった。
令和6年度予算は,令和5年12月22日の閣議決定の後,令和6年1月16日に概算の変更が閣議決定されている。

第3 日程から外れた年度
1 令和3年度予算——送付期限の延長

令和三年度予算に係る歳入歳出等の見積書類の送付期限の特例を定める政令(令和2年政令第230号)は,令和3年度予算に係る財政法17条各項の見積書類の送付期限を,予算決算及び会計令8条1項及び3項の規定にかかわらず,令和2年9月30日とした。
この政令は,最高裁判所長官が内閣に送付する見積書類(財政法17条1項)と,各省大臣が財務大臣に送付する見積書類(同条2項)の両方に適用された。
各省各庁の概算要求の公表が令和2年10月7日と例年より約1か月遅くなったのは,この延長に対応したものと考えられる。

2 令和7年度予算——国会での修正

令和7年度予算は,令和7年3月4日に衆議院で修正の上可決され,同月31日に参議院で修正の上可決されて衆議院が同意し,成立した。
財務省の頁は,成立した予算を「衆議院修正+参議院修正後」のものとして掲載している。

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裁判所の予算はいくらか-国家予算に占める割合,人件費・物件費・施設費の内訳及び令和9年度概算要求(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と資料2 結論第2 国の一般会計予算に占める割合1 年度別の割合2 読み方第3 昭和23年度以降の長期推移1 資料と数値の性質2 年度別の割合3 読み方第4 人件費・物件費・施設費の内訳1 年度別の内訳2 人件費3 物件費4 施設費第5 令和9年度概算要求1 要求・要望額2 国の概算要求の中での割合第6 予算額についての見方1 弁護士会の意見2 予算編成の過程について公表されていること3 執務環境との関係4 民間の売上高と裁判所予算を比べるときの注意第7 関連記事第8 出典1 裁判所ウェブサイト2 財務省3 その他
第1 この記事の対象と結論
1 対象と資料

この記事は,裁判所の予算の規模を,国の一般会計予算に占める割合と,人件費・物件費・施設費の内訳から,平成31年度から令和8年度までの当初予算と令和9年度の概算要求で整理するものである。
裁判所の予算額と内訳は,裁判所ウェブサイトの各年度の「予算の概要」及び「概算要求の概要」によった。
国の一般会計予算の総額と裁判所所管の金額は,財務省の予算書・決算書データベースに掲載されている各年度の一般会計予算(当初)の歳出データを千円単位で合計して求めた。

本記事の基準日は令和8年9月19日である。
本記事は生成AIを用いて資料を照合し,資料に書かれた事実と,資料から考えられることを区別して整理したものである。

2 結論

令和8年度の裁判所予算は3495億円であり,国の一般会計予算122.3兆円の約0.29%である。
この割合は,平成31年度の約0.32%から少しずつ下がっており,国の予算が増える一方で,裁判所の予算は3200億円台から3500億円弱の間で推移してきた。
補正予算を反映した後の予算で昭和23年度以降を見ると,割合は昭和30年度の0.906%が最も高く,その後はおおむね低下を続け,令和2年度には0.186%となった。

内訳では人件費が大部分を占めるが,その比率は令和4年度の84%から令和8年度の80%へ下がり,令和9年度の要求・要望額では74%である。
他方,物件費は令和4年度の384億円から令和8年度の579億円に増え,令和9年度の要求・要望額では800億円である。

第2 国の一般会計予算に占める割合
1 年度別の割合

各年度の一般会計予算(当初)について,裁判所所管の金額と一般会計の総額を比べると,次のとおりである。

年度裁判所一般会計総額割合平成31年度3256億円101.5兆円0.321%令和2年度3266億円102.7兆円0.318%令和3年度3254億円106.6兆円0.305%令和4年度3228億円107.6兆円0.300%令和5年度3222億円114.4兆円0.282%令和6年度3310億円112.6兆円0.294%令和7年度3352億円115.2兆円0.291%令和8年度3495億円122.3兆円0.286%

割合は,予算書の歳出データの千円単位の合計から計算し,小数点以下第4位を四捨五入した。
裁判所の金額は億円未満を四捨五入しており,裁判所ウェブサイトの各年度の「予算の概要」の予算額(百万円単位)と一致する。
令和7年度の一般会計総額は,衆議院及び参議院で修正された後の成立予算の金額である。

2 読み方

裁判所予算の割合が下がっているのは,裁判所予算が減ったからではなく,国の一般会計予算が裁判所予算より大きく増えたためである。
平成31年度から令和8年度までに,裁判所予算は約7%増えたのに対し,一般会計総額は約21%増えている。

一般会計総額には,国債費,地方交付税交付金及び社会保障関係費が含まれている。
そのため,この割合は,裁判所の予算が他の行政分野と比べて多いか少ないかを直接示すものではない。
国の予算の中での位置付けを示す一つの目安として読むのが適当である。

なお,日弁連委員会ニュース2022年1月1日号15頁の「もっと知ってください、裁判所予算」も,令和3年度当初予算について,裁判所予算の国家予算に占める割合を「0・305%」とし,昭和40年度は「0・761%程度」であったと述べている。
上の表の令和3年度の0.305%は,この記載と一致する。

第3 昭和23年度以降の長期推移

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裁判所の判例検索システムの予算と契約-法令・判例等検索システム,法律雑誌等検索システム及びWeb版図書情報システム(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象と資料2 結論第2 三つのシステムの内容1 法令・判例等検索システム2 法律雑誌等検索システム3 Web版図書情報システム第3 概算要求上の年額の推移1 年度別の要求額2 要求と要望の区別3 成立予算との関係第4 令和2年度から令和6年度までの契約1 三つの契約書2 Web版図書情報システムの初期費用3 国庫債務負担行為第5 令和7年度以降の変化1 要求の記載の変化2 確認できていないこと第6 資料の読み方1 歳出概算要求書との対応2 読むときの注意第7 関連記事第8 出典1 最高裁判所の概算要求書(説明資料)2 契約書3 裁判所ウェブサイト
第1 この記事の対象と結論
1 対象と資料

この記事は,裁判官や裁判所書記官が執務で使う有料の検索サービスについて,最高裁判所が毎年度の概算要求でいくらを要求し,どのような契約を結んでいたかを,公表資料と当ブログ掲載の資料で整理するものである。
対象は,最高裁判所の概算要求書(説明資料)で「裁判運営の改善経費」に並んでいる,法令・判例等検索システム,法律雑誌等検索システム及びWeb版図書情報システムの三つである。

使った資料は,令和2年度から令和8年度までの最高裁判所の概算要求書(説明資料),裁判所ウェブサイトに掲載されている令和4年度の一般会計歳出概算要求書,及び令和2年4月1日付けの契約書3通である。
本記事の基準日は令和8年9月19日である。
本記事は生成AIを用いて資料を照合し,資料に書かれた事実と,資料から考えられることを区別して整理したものである。

2 結論

三つのシステムは,いずれも最高裁判所が一括して契約し,全国の裁判所の職員が端末から利用する有料サービスである。
令和2年度から令和6年度までは5年間の契約が結ばれており,法令・判例等検索システムは第一法規株式会社,法律雑誌等検索システムは株式会社エル・アイ・シー,Web版図書情報システムは株式会社OPACが受注者であった。

概算要求上の年額は,令和3年度から令和6年度まで,法令・判例等検索システムが4026万円,法律雑誌等検索システムが2942万5000円で毎年同じであった。
これに対し,令和7年度の要求は4818万円弱と4356万円に増え,令和8年度の要求は4593万6000円と3960万円である。
令和7年度以降の契約の相手方及び契約期間は,本記事では確認できていない。

第2 三つのシステムの内容
1 法令・判例等検索システム

令和4年度の概算要求書(説明資料)160頁は,法令・判例等検索システムを「法令,判例及び文献情報を検索閲覧するシステム」と説明している。
同頁によれば,裁判官や書記官が各自の端末からアクセスし,裁判執務に必要な法規,判例,法律判例文献の著者名及び雑誌名等を入手するためのものであり,知的財産高等裁判所用のものが別に計上されている。

令和2年度からの契約書によれば,利用できるクライアント端末は2万6000台まで,サーバへの同時アクセス数は500台までとされていた。

2 法律雑誌等検索システム

同じ説明資料161頁は,法律雑誌等検索システムを,判例や法律雑誌に掲載された論文,評釈及び解説等を収録したデータベースであり,主要法律雑誌の判例評釈及び解説を原本性を保持したPDFデータとして収録し,判例と関連付けて検索閲覧できるものと説明している。
同頁は,これが法令・判例等検索システムにない機能であり,二つのシステムは相互に補完して利用するものと位置付けている。

令和2年度からの契約書によれば,利用できるクライアント端末は1万8000台まで,サーバへの同時アクセス数は500台までとされていた。

3 Web版図書情報システム

Web版図書情報システムは,下級裁判所の資料室や裁判官室等で管理している図書資料の情報を運営会社の蔵書検索サービスにアップロードし,職員がインターネット経由で図書の有無や配架場所を検索できるようにするものである。
管理対象の図書資料は,令和6年度までの説明資料では約230万冊,令和7年度以降の説明資料では約500万冊とされている。

第3 概算要求上の年額の推移
1 年度別の要求額

各年度の概算要求書(説明資料)の経費積算内訳に記載された単価を,知的財産高等裁判所用を合算して示すと,次のとおりである。
単価の欄は円単位であり,いずれも「一式」として計上されている。

(続きを読む...)裁判所の判例検索システムの予算と契約-法令・判例等検索システム,法律雑誌等検索システム及びWeb版図書情報システム(AI作成)

少年事件で弁護士が取材を受けるときの確認事項―少年法61条・特定少年・被害者情報(AI作成)

目次

第1 結論第2 参照資料とその位置付け第3 少年事件の報道対応で検討される六つの要素第4 少年法61条と特定少年第5 弁護士が報道対応前に確認する事項第6 被害者及び家族の情報への配慮第7 一次資料及び関連記事
第1 結論
1 本記事が扱うのは,少年本人,保護者,被害者その他の関係者から依頼を受けた弁護士が報道機関の取材に対応する場面です。裁判所職員側の取材対応は,「裁判所の取材対応」及び「裁判所の報道対応の基礎」で扱います。
2 少年審判は非公開であり,弁護士は,依頼者の意思,守秘義務,少年本人の推知可能性,被害者その他の関係者のプライバシー及び手続への影響を分けて確認する必要があります。報道やSNSですでに流通している情報であっても,弁護士が確認又は提供してよい情報であるとは限りません。
3 少年法61条は,少年本人を推知できる記事又は写真の掲載を原則として禁止しています。ただし,18歳又は19歳の「特定少年」がその時に犯した罪について逆送後に起訴された場合は,略式手続を除き,その段階から同条の適用除外となります。
4 この適用除外は,少年審判の記録やそれまでの非公開手続が公開に変わることを意味せず,被害者,家族その他の第三者のプライバシーまで失わせるものでもありません。

第2 参照資料とその位置付け
1 広報ハンドブック(少年事件編)(令和2年3月版)は,最高裁判所事務総局広報課が,家庭裁判所の広報担当者向けに報道対応の考慮要素を整理した司法行政実務上の参考資料です。法令ではなく,個々の取材に対する回答義務や情報提供請求権を定めるものではありません。
2 同ハンドブックは,令和4年4月1日に施行された特定少年の制度より前の資料です。そのため,現在の報道対応では,同ハンドブックに加えて,改正後の少年法及び公式Q&Aを確認する必要があります。
3 本文でいう「ハンドブックの説明」は資料の記載内容であり,「現行法」はe-Gov法令検索等で確認した条文です。両者を区別します。

第3 少年事件の報道対応で検討される六つの要素
・ 広報ハンドブック(少年事件編)は,裁判所側が回答するか,どこまで回答するか,いつ回答するかを決める際の主な考慮要素として,次の六つを挙げています。弁護士に直接適用される規則ではありませんが,取材対応のリスクを点検するための逆向きのチェック項目として参照できます。
1 正確な報道のために回答する必要性
2 少年及びその家族等に与える影響
3 被害者その他の関係者に与える影響
4 事件の調査及び審判に与える影響
5 護送,鑑別その他の関係機関に与える影響
6 模倣性による非行の伝搬,周辺住民の安全確保等の事件固有の事情
・ これは機械的な点数表ではありません。同ハンドブックも,事件,周囲の状況及び取材事項が毎回異なるため,個別に総合考量すべきであるとしています。

第4 少年法61条と特定少年
1 少年法61条は,家庭裁判所の審判に付された少年又は少年の時に犯した罪により公訴を提起された者について,氏名,年齢,職業,住居,容貌等により事件本人であることを推知できる記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載することを禁止しています。
2 裁判所の少年事件Q&A及び法務省の少年法改正Q&Aによれば,18歳又は19歳の特定少年がその時に犯した罪について逆送後に起訴された場合,略式手続を除き,その段階から推知報道禁止の適用が外れます。
3 したがって,年齢を確認する基準は報道時ではなく行為時であり,適用除外の基準時は逮捕時,家裁送致時又は逆送決定時ではなく,公訴提起時です。また,略式命令の請求がされた場合は適用除外から除かれます。ただし,その後に刑事訴訟法463条1項・2項又は468条2項により通常の規定に従い審判することとなった場合には,少年法68条ただし書の例外があります。
4 特定少年の例外は少年法61条の適用範囲の問題です。名誉毀損,プライバシー,個人情報,証拠や記録の目的外使用及び依頼者との守秘義務など,別の法的・倫理的問題は残ります。
5 少年法61条が禁止するのは,推知報道を新聞紙その他の出版物に掲載することです。既に出版された雑誌を公立図書館が閲覧に供するときの扱いについては,公立図書館は少年の推知報道を載せた雑誌の閲覧を制限できるかで扱っています。

第5 弁護士が報道対応前に確認する事項

(続きを読む...)少年事件で弁護士が取材を受けるときの確認事項―少年法61条・特定少年・被害者情報(AI作成)

最高裁判例に下級審裁判官は反する判断をできるか―判例の拘束力と下級審判決の位置付け(AI作成)

目次第1 最高裁判例の実務上の位置付け1 同種事件の法解釈を統一する機能2 すべての判示が同じ重みではない第2 法的な拘束力が明文で生じる場面1 差戻し・移送後の拘束力2 刑事事件第3 最高裁判例と異なる判断1 理論上の可能性と実務上の例外性2 検討すべき事情第4 下級審判決を引用する方法1 法源としてではなく説得資料として扱う2 事案比較を行う第5 根拠資料及び注意
第1 最高裁判例の実務上の位置付け
1 同種事件の法解釈を統一する機能

最高裁判例は,同種事件における法解釈の統一に大きな役割を持つ。下級審は通常,最高裁が示した法解釈を踏まえて判断する。

2 すべての判示が同じ重みではない

結論に必要な判示か,傍論か,大法廷か小法廷か,その後に同趣旨の判例が反復されたかを区別する。事案の差異を無視して一文だけを一般化してはならない。

第2 法的な拘束力が明文で生じる場面
1 差戻し・移送後の拘束力

民事訴訟法325条3項等により,差戻し又は移送を受けた裁判所は,その事件について上級審が示した判断に拘束される。これは一般的な先例性とは別の,個別事件における拘束力である。

2 刑事事件

刑事訴訟法413条等にも破棄差戻し後の拘束に関する規律がある。どの判断が拘束力を持つかは,破棄理由と不可分な判断の範囲を個別に検討する。

第3 最高裁判例と異なる判断
1 理論上の可能性と実務上の例外性

社会状況又は法制度の変化により判例変更が問題となることはある。しかし,下級審が単に最高裁判例に納得できないというだけで異なる判断をするのは相当でない。

2 検討すべき事情

判例の時期,大法廷・小法廷の別,少数意見,その後の立法,関連判例との整合性及び学説・下級審裁判例の展開を検討する。

第4 下級審判決を引用する方法
1 法源としてではなく説得資料として扱う

下級審判決は,事案と理由付けが近いときに重要な説得資料となるが,同順位の裁判所を一般に拘束するものではない。

2 事案比較を行う

裁判所名,裁判年月日,事件番号,掲載誌又は公開URLを示し,事実関係・争点・規範・当てはめのどこが自分の事件と共通するかを書く。

第5 根拠資料及び注意

裁判所法(e-Gov法令検索),民事訴訟法(e-Gov法令検索)及び刑事訴訟法(e-Gov法令検索)を確認した。
本記事は「最高裁判例に反する判断が常に許される」ことを意味しない。個別事件の拘束力と一般的な先例性を区別する必要がある。

令和7年度実務協議会(冬季)

目次

1 令和8年2月5日及び6日に開催された実務協議会の資料
2 「家庭裁判所の現状と課題」から分かること
3 資料を利用する際の基準日と法的性格
4 関連記事その他

1 令和8年2月5日及び6日に開催された実務協議会の資料

① 日程表
② 出席者名簿
③ 民事・行政事件の現状と課題
④ 刑事裁判官の支援
⑤ 家庭裁判所の現状と課題
⑥ 裁判所職員総合研修所(総研)の概要
* 令和7年度実務協議会(冬季)に関する文書として一本化した資料も掲載している。

2 「家庭裁判所の現状と課題」から分かること

① 令和6年の家事事件及び人事訴訟事件の新受件数は合計121万7392件であり、内訳は家事審判事件104万2229件、家事調停事件12万8472件等である。
② 夫婦関係調整調停の令和6年平均審理期間は6.8か月、平均期日間隔は1.9か月であり、平成20年の4.3か月、1.4か月から長期化している。
③ 令和6年に終局した人事訴訟事件の平均審理期間は14.8か月である。離婚事件では、財産分与の申立てがある事件が19.2か月、ない事件が12.9か月である。
④ 同資料は、家族法改正への対応、家事調停の合理的な運営、家庭裁判所調査官の専門性、成年後見事件の適正処理、デジタル化等を家庭裁判所の課題として挙げている。
⑤ これらの数値は既済事件等の全国集計であり、個別事件の処理期間又は結果を予測する基準ではない。

3 資料を利用する際の基準日と法的性格

① 「家庭裁判所の現状と課題」は最高裁判所事務総局家庭局作成の司法行政資料であり、裁判所自身の統計及び課題認識を知る一次的資料である。ただし、法令又は判例ではない。
② 資料作成後、令和6年法律第33号による家族法改正は令和8年4月1日に施行された。資料中の「施行に向けた準備」との記述は、令和8年9月現在、そのまま現状を示すものではない。
③ 令和8年法律第45号及び第46号による成年後見制度の見直しは令和8年6月24日に公布されたが、成年後見関係の主要部分は令和8年9月現在未施行である。現行の後見・保佐・補助制度と将来制度を区別する必要がある。
④ 本記事は特定の判例命題を根拠としていないため、判例秘書による判例本文の確認は行っていない。

4 関連記事その他

① 実務協議会は、新たに地方裁判所長、家庭裁判所長又は高等裁判所事務局長を命ぜられた者を対象に、年2回開催される研修である(裁判官研修実施計画参照)。

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裁判所の定員が減ると,現場の人も減るのか―定員・現在員・欠員・振替・再任用の読み方(AI作成)

目次第1 定員の減少と現場の人数は分けて確認する1 令和9年度概算要求で分かること2 資料の時点と確認範囲第2 六つの数字を区別する1 法定員,予算定員及び配置定員2 級別定数,現在員及び勤務に充てられる人員第3 20人,101人及び71人の関係1 下級裁判所192人減と裁判所全体121人減は両立する2 71人の具体的な内訳3 101人の職種別内訳は別に確認する第4 欠員があれば定員削減の影響はないのか1 判事補の842人,660人及び182人2 直ちに20人の退職を意味しないことと,影響がないことは異なる第5 再任用短時間勤務職員の別表を落とさない1 121人減とは別に示された73人増2 頭数の差と常勤換算を混同しない第6 現場への影響を調べる資料の組合せ1 同じ対象と時点をそろえる2 同時に起きたことだけで原因を決めない第7 今後さらに確認すべき事項1 101人の配分と71人の実施内容2 要求,成立後の措置及び実施後の実態第8 出典・参考資料1 一次資料2 関連するブログ記事
第1 定員の減少と現場の人数は分けて確認する
1 令和9年度概算要求で分かること

裁判所の「定員が減る」という情報だけでは,翌年度に窓口,法廷又は調査業務を担当する職員が何人減るかは分からない。
定員は制度上又は予算上の人数の枠であり,実際に在職する現在員や,勤務時間・休業・応援体制を考慮した業務を担える人数とは区別する必要がある。
他方,現時点で欠員があるからといって,定員の削減が採用や将来の配置に影響しないとも断定できない。

令和9年度一般会計歳出概算要求書等の資料上73頁(PDF77頁)の予算定員表では,裁判所全体が121人減,下級裁判所が192人減,最高裁判所が71人増となっている。
この71人は,下級裁判所から最高裁判所への予算定員の振替である。資料に示された理由は,営繕組織の見直し,共済組合の組織統合・給与等事務の集約及び執務機構整備であり,裁判の現場から71人が実際に転勤することまで示した数字ではない。

2 資料の時点と確認範囲

本記事は,令和8年9月14日時点で確認した法令,最高裁判所の概算要求書及び国会会議録に基づき,数字の読み方を説明するものである。
令和9年度の数字は概算要求段階のものであり,成立予算,改正後の法定員,実施後の配置又は実際の現在員を示すものではない。

予算要求の内容は,最高裁判所作成の原資料で確認する。国会答弁は,答弁された人数や最高裁判所の説明を確認する一次資料であるが,答弁だけで個々の裁判所の勤務実態まで確認できるわけではない。
本記事の数値及び因果関係の説明に判例秘書掲載判例は用いていない。判例秘書の検索・収録本文照合も行っておらず,関係判例が存在しないとの判断を示すものではない。

第2 六つの数字を区別する
1 法定員,予算定員及び配置定員

裁判所職員定員法1条は,下級裁判所の裁判官の員数を,高等裁判所長官,判事,判事補及び簡易裁判所判事に分けて定めている。
同法2条は裁判官以外の裁判所職員の員数を定めるが,執行官,非常勤職員,2か月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を対象から除いている。法定員を,雇用形態等を問わない全職員の総人数と読むことはできない。

数字主に確認できることその数字だけでは分からないこと法定員法律が定める員数と対象範囲各庁の実際の配置,欠員及び勤務状況予算定員予算資料に計上された年度別・組織別の人数の枠実際の在職者数,個人の異動及び稼働時間配置定員通達等による各庁への人数の配分基準日現在の在職者,担当部・係及び応援の実績

法定員は全国の区分に関する数字であり,各庁の人数を確認するには配置定員資料が必要となる。予算定員表についても,対象年度,年度末か年度当初か,裁判官を含むか,再任用職員を含むかを表題と注記で確認する。
裁判官の配置定員と基礎定員・付加定員の具体例は,下級裁判所の裁判官の配置定員(令和7年4月)―平成28年との比較と現在員との違い(AIリライト)で扱っている。

2 級別定数,現在員及び勤務に充てられる人員
数字主に確認できること読み違えやすい点級別定数組織,俸給表,職名及び職務の級ごとの枠実際の在職者数や昇格率とは異なる。職名が複数の官職をまとめる場合もある現在員ある基準日に在職する人数休業・休暇,短時間勤務,兼務等の取扱いは資料ごとに確認が必要である勤務に充てられる人員・時間現在員に勤務時間,休業,応援及び担当業務を対応させた業務遂行能力頭数だけでは計算できず,集計方法を明示する必要がある

級別定数の推移は,裁判官以外の裁判所職員の級別定数に関する最高裁判所事務総局の本音の説明(AI作成)で扱っている。
例えば,ある級の定数が減っていても,その級に在職する職員が同じ人数だけ退職したとはいえない。昇格の難しさを論じる場合も,定数だけでなく候補者数,発令数及び選考条件が必要である。

第3 20人,101人及び71人の関係
1 下級裁判所192人減と裁判所全体121人減は両立する

令和9年度概算要求書の資料上73頁の予算定員表を,令和8年度末と令和9年度末の要求で比較すると,次のようになる。
「判事補20人減」は「下級裁判所全体で20人減」という意味ではない。

組織令和8年度末の予算定員令和9年度末の要求定員増減最高裁判所1183人1254人+71人下級裁判所2万4183人2万3991人-192人裁判所全体2万5366人2万5245人-121人

下級裁判所の192人減は,定員合理化101人,判事補減員20人及び最高裁判所への振替71人の合計である。

(続きを読む...)裁判所の定員が減ると,現場の人も減るのか―定員・現在員・欠員・振替・再任用の読み方(AI作成)

令和9年度概算要求-裁判所職員101人の定員合理化と家裁調査官の増員の有無(AI作成)

目次第1 この記事の対象と結論1 対象,基準日及び資料の範囲2 結論第2 令和9年度概算要求の定員1 予算定員表では裁判所全体で121人減の要求である2 101人は俸給表及び級別にしか示されていない3 再任用短時間勤務職員は別表で73人増となっている第3 予算額は要求と要望を分けて読む必要がある1 概算要求本体は前年度予算を下回る2 家裁関係経費とデジタル関係経費は増額要求である第4 令和9年度概算要求書で家裁調査官の増員を確認できない背景として考えられる事情1 直前2年間に合計15人を増員している2 既存人員の事務分担を見直している3 改正家族法施行後の事件動向を見極める段階であった第5 事件統計から増員不要とは断定できない1 家事事件は件数だけでも増加要因がある2 少年事件は長期減少と直近増加の双方を見る必要がある3 203支部のうち調査官配置支部は113支部である第6 公表資料から導ける説明とその限界1 最も説明力のある三つの事情2 定員合理化の官職別理由はなお分からない第7 今後の検証に必要な資料1 令和9年度の最終定員を確認する資料2 家裁調査官の必要人数を検証する資料第8 出典・参考資料1 公文書・国会会議録2 統計・データ
第1 この記事の対象と結論
1 対象,基準日及び資料の範囲

この記事は,最高裁判所が公表した令和9年度概算要求について,裁判所職員101人の定員合理化と公表資料上における家庭裁判所調査官の増員の有無を,令和8年度までの定員措置,国会答弁及び事件統計と照合するものである。
調査の基準日は令和8年9月14日であり,令和9年度予算は概算要求の段階にあるため,政府予算案,成立予算又は令和9年度末の確定定員を扱うものではない。

本記事は生成AIを用いて公表資料を照合し,確認できた事実と資料からの推測を区別して整理したものである。
裁判所書記官の減員人数並びに家庭裁判所調査官の職種別定員の増減及びその理由を直接説明する最高裁判所の公表文書は確認できなかったため,公表資料で確認できる範囲を超えて理由を断定しない。

2 結論

令和9年度概算要求書の資料上73頁の予算定員表から直接確認できるのは,①同表の新規増員は0人,②下級裁判所の定員合理化は101人,③判事補の減員は20人,④下級裁判所から最高裁判所への振替は71人,⑤同表の裁判所全体の差引きは121人減という内容である。
同75頁には再任用短時間勤務職員の73人増が別に示されているため,これらをすべての任用形態における採用者数又は実働人員の増減と読むことはできない。
101人について示されているのは俸給表及び級別の内訳であり,裁判所書記官,家庭裁判所調査官又は裁判所事務官という官職別の内訳ではない。

令和8年度概算要求書には「速記官から家裁調査官へ振替 10人」と明記されている一方,令和9年度概算要求書には同様の職種間振替の記載がない。したがって,公表された令和9年度概算要求書からは家裁調査官の増員を確認できない。
もっとも,この記載の違いだけで,最高裁判所が家裁調査官の追加増員を「見送った」とする政策判断又はその理由まで確定することはできない。

第2 令和9年度概算要求の定員
1 予算定員表では裁判所全体で121人減の要求である

令和9年度一般会計歳出概算要求書等の資料上73頁(PDF77頁)によれば,令和8年度末の予算定員2万5366人に対し,新規増員0人,定員合理化101人減,判事補20人減及び組織間振替を反映した令和9年度末の要求定員は2万5245人である。
最高裁判所は71人増の1254人となる一方,下級裁判所は定員合理化,判事補減員及び最高裁判所への振替によって192人減の2万3991人となる。

71人の振替は,営繕組織の見直し,裁判所共済組合の組織統合及び給与等事務の集約並びに共済組合の執務機構整備に伴うものである。
これは裁判所全体の予算定員を増減させる措置ではなく,組織間で定員枠を移す措置である。
実際に71人が転勤するか,執務場所が変わるか,裁判を担当する部門から移るかは,予算定員表だけでは確認できない。

同頁の71人の内訳は,次のとおりである。
資料に記載された振替の事由と,実施後の人事異動・勤務実態を区別する必要がある。

振替の事由人数内訳上の留意点営繕組織の見直し1人営繕関係の組織見直しに伴うもの共済組合の組織統合及び給与等事務の集約68人専門職6級1人,同5級1人,係長4級6人,主任3級60人共済組合の執務機構整備2人下級裁判所側は課長6級2人,最高裁判所側は専門職6級2人

下級裁判所の192人減は101人+20人+71人であり,最高裁判所の71人増と相殺すると裁判所全体では121人減となる。
「判事補20人減」を下級裁判所全体の減少数と読んだり,裁判所全体の121人減に71人をさらに加えたりしてはならない。

2 101人は俸給表及び級別にしか示されていない

同概算要求書の資料上42頁(PDF46頁)は,101人の内訳を,行政職俸給表(一)4級5人,同2級30人,同1級48人及び行政職俸給表(二)2級18人と記載している。
しかし,同頁には官職名が書かれていないため,行政職俸給表(一)2級の30人をそのまま裁判所書記官30人と読み替えることはできない。

したがって,令和9年度概算要求が「裁判所書記官を何人減らす要求」であるかは,公開された概算要求書だけでは確認できない。

(続きを読む...)令和9年度概算要求-裁判所職員101人の定員合理化と家裁調査官の増員の有無(AI作成)