名古屋高裁の令和8年6月26日の裁判官会議では,常置委員会規程の改正,判例委員会・広報委員会の規程の廃止,裁判官の配置等の変更が扱われた。添付資料には,民事控訴事件の分配基準を第一審事件裁判書の頁数で区分する変更も収録されている。
会議で決めた事項と,既に実施した事項の承認・報告を分け,それぞれの施行日を確認することが重要である。以下は,公開された議事録・添付資料の記載から読み取れる範囲を整理したものである。
第1 資料の対象と日付
1 会議日と議事録作成日
名古屋高裁の裁判官会議議事録(令和8年6月26日開催分)は,全63頁の公開版である。会議は令和8年6月26日午後3時30分から大会議室で,参集又はウェブ会議によって開催され,議事録には同年7月7日付の作成日が記載されている(PDF1~4頁)。
添付資料には,会議資料,常置委員会規程の改正・改正後の規程,委員会規程の廃止,裁判官配置・裁判事務分配等の定めが含まれる。日付を引用するときは,会議日,議事録作成日,個々の変更の施行日を区別する。
2 付議・承認・報告を区別する
議事録は,付議事項,承認事項,報告事項を分けて記載している。委員会規程の改廃等の付議事項は全員異議なく可決され,裁判官配置・裁判事務分配・司法行政事務の代理順序の変更についても全員異議なく承認されたとされる。他方,事件の回付,裁判官の職務代行等は報告事項に掲げられている(PDF1~2頁)。
高等裁判所の司法行政事務については,裁判所法20条が,裁判官会議の議によりこれを行い,高等裁判所長官が総括する仕組みを定める。ただし,今回の会議資料に載った事項を,すべて6月26日に初めて効力が生じた決定と読むことはできない。添付資料には4月1日や5月21日など,それ以前の変更日も記載されている。
第2 委員会規程の改正と廃止
1 常置委員会の構成員の追加
令和8年6月26日付の名古屋高裁規程第1号は,常置委員会規程2条1項に第5号を加え,「支部の部の事務を総括する裁判官」を構成員に加えるものである。施行日は同年7月1日である(PDF15~19頁)。
改正後の規程には,長官,本庁の部の事務を総括する裁判官,本庁の民事部・刑事部から互選する裁判官,支部長等の構成が記載されている。改正箇所を確認するには,議事録の議題だけでなく,改正文と改正後の規程の双方を読む必要がある。
2 判例委員会規程・広報委員会規程の廃止
名古屋高等裁判所判例委員会規程と,名古屋高等・地方・家庭裁判所広報委員会規程については,それぞれ令和8年6月26日限りで廃止する文書が添付されている(PDF20~21頁)。常置委員会規程の改正と,廃止の効力が生じる日付は同一ではない。
これらの文書から確認できるのは,当該規程の廃止である。判例に関する事務や広報の業務そのものが終了したこと,特定の部署へ移管されたこと,人員が削減されたことまでは,この公開資料だけでは分からない。業務の継続・承継先を論じるには,別の事務分掌や後続の規程等を確認する必要がある。
第3 民事事件の分配に関する変更
1 第一審事件裁判書の頁数による区分
令和8年5月21日付の変更では,民事控訴事件の分配について,第一審事件裁判書の頁数を用いる区分が記載されている(PDF13頁及び25頁)。頁数の区分は,40頁未満,40頁以上80頁未満,80頁以上200頁未満,200頁以上である。
200頁未満の各区分では,一般民事事件・労働関係事件・行政事件を分け,200頁以上の事件については,これらの事件の種類を通じて受付順の輪番とする定めになっている。控訴状が名古屋高裁に提出された事件についての別枠の輪番や,関連事件等の例外もある。頁数だけで担当部を特定できる仕組みではない。
2 改正後民事訴訟法が適用されない事件
同じ定めには,改正後民事訴訟法が適用されない事件について,第一審事件の記録重量を用いる区分が別に残されている。重量の境界は5キログラム,15キログラム,40キログラムである(PDF13頁及び25頁)。
したがって,令和8年5月21日以降の事件だから一律に裁判書頁数で分配される,とはいえない。担当部の決まり方を調べる際には,当該事件に適用される手続法と経過措置,事件の種類,関連事件の有無等を合わせて確認する必要がある。
3 親権行使者の指定抗告事件の緊急処理区分
令和8年4月1日付の変更には,「親権行使者の指定抗告事件(要緊急処理)」という区分がある。記録上,緊急に処理する必要があることが明らかなものを分けている(PDF12頁及び26頁)。
これは事件分配に関する定めの記載である。この区分があることだけから,特定の申立てが認められることや,処理日数の保証を導くことはできない。
第4 実務での確認方法と資料の限界
1 当該時点の規程と個別事件の記録を分ける
事件分配を検討する場合は,対象となる日付,裁判所・本庁又は支部,事件の種類,適用法,関連事件等の例外の順に確認する。資料の「令和8年度」という表題だけで,年度中のすべての時点に同じ定めが適用されていたとは判断しない。
本資料には回付等の報告も収録されているが,司法行政上の報告書と,個別事件についての裁判の理由は性質が異なる。回付の記録だけを,保釈その他の判断の当否や一般的な裁判傾向の根拠にすることはできない。
2 公開版の黒塗り部分から推測しない
本資料には,人事関係資料その他の一部に黒塗りがある。黒塗り部分の人物,内容,人数,判断理由等は,公開版から確認できる事実として扱えない。また,この議事録だけでは,後日の改正の有無や,令和8年10月時点の配置・開廷予定まで確認できない。現在の担当や期日については,その時点の公表資料や裁判所からの通知を確認する必要がある。
第5 出典・関連記事
1 一次資料
名古屋高裁の裁判官会議議事録(令和8年6月26日開催分)。本文の頁番号は,添付資料の内部番号ではなく,表紙等を含むPDFの通し頁である。議事録は1~4頁,事件分配の変更等は7~14頁,委員会規程の改廃は15~21頁,改正後の配置・分配等の定めは22~34頁を参照した。記事は公開版で確認できる制度・運用の記載を対象としている。
裁判所法20条(e-Gov法令検索)。高等裁判所の司法行政事務と裁判官会議の根拠規定。