下級裁判所の裁判官会議から権限を委任された機関


目次
1 総論
2 東京高裁及び大阪高裁における司法行政の機関
3 東京地裁における司法行政の機関
4 大阪地裁における司法行政の機関
5 関連記事その他

1 総論
    司法行政事務は,裁判官会議の議により,その一部を当該裁判官会議を組織する1人又は2人以上の裁判官に委任することができます (下級裁判所事務処理規則20条)。
    そのため,下級裁判所の場合,1年に2回ぐらいしか開催されない裁判官会議は,一定の権限を,2人以上の裁判官の会議体に委任していますし,さらに一定の権限を高裁長官及び地家裁所長に委任しています。

2 東京高裁及び大阪高裁における司法行政の機関
(1) 東京高裁の場合,12人の常置委員(うち,2名は民事部代表常置委員及び刑事部代表常置委員)から組織される常置委員会が設置されています(東京高裁常置委員会規程2条)。
(2) 大阪高裁の場合,8人の常任委員(うち,2名は民事上席裁判官1名及び刑事上席裁判官1名)から組織される常任委員会が設置されています(大阪高裁裁判官会議規則12条)。

3 東京地裁における司法行政の機関
(1) 東京地裁における司法行政の機関としては,裁判官会議のほか,本庁民事部会議,本庁刑事部会議及び立川支部会議並びに常置委員会が設置されています(東京地方裁判所司法行政事務処理規程2条)。
(2)ア   裁判官会議は,所長,所長代行者及び各部に配置された裁判官(判事及び特例判事補をいう。以下同じ。)の全員で組織されています(東京地方裁判所司法行政事務処理規程3条1項)。
イ   本庁民事部会議は,所長,本庁民事部の所長代行者及び本庁民事部に配置された裁判官の全員で組織されています。
    本庁刑事部会議は,所長,本庁刑事部の所長代行者及び本庁刑事部の各部に配置された裁判官の全員で組織されています。
    立川支部会議は,所長,立川支部長及び立川支部の各部に配置された裁判官の全員で組織されています(以上につき東京地方裁判所司法行政事務処理規程3条2項)。
(3) 常置委員会は,所長,所長代行者,本庁民事部から選出された7人の常置委員,本庁刑事部から選出された7人の常置委員,立川支部長及び立川支部から選出された1人の常置委員で組織されています(東京地方裁判所司法行政事務処理規程4条1項)。

4 大阪地裁における司法行政の機関
(1) 大阪地裁における司法行政の機関としては,裁判官会議のほか,常任委員会があります(大阪地方裁判所司法行政事務処理規程2条)。
(2) 裁判官会議は,所長,所長代行者,本庁及び支部の判事及び特例判事補で組織されています(大阪地方裁判所司法行政事務処理規程3条)。
(3) 常任委員会は,所長,所長代行者,堺支部長及び岸和田支部長,民事上席裁判官及び刑事上席裁判官,並びに本庁及び支部の民事部から選出された3人の裁判官及び本庁の刑事部から選出された3人の裁判官から組織されています(大阪地方裁判所司法行政事務処理規程4条)。

5 関連記事その他
(1) 裁判所法逐条解説上巻168頁には以下の記載があります。
   官僚機構は、行政上の監督権者を非常に重視し、その地位を高くすることに特色をもっている。しかし、このことは、裁判所のようなところでは、もっとも望ましくないことである。わが国のように、旧憲法下ながく裁判官が官僚機構のなかに組み入れられていたところでは、とかく官僚一般に共通な右の思想が知らず知らずの間に裁判官の間にも流れ込んでくる危険があり、旧制度の下では、その弊害が特に著しかったといえよう。それは、行政を行う者の地位を裁判事務のみを行う者のそれよりも高いと考え、ひいては行政重視裁判軽視の傾向を生みかねない。その意味で、司法行政権を所長等の特定の裁判官に一任せず、裁判官会議にこれを与えたことは、裁判所における官僚制を打破する上において画期的な変革であったといえる。裁判所における官僚制の打破がきわめて望ましい要請である以上、司法行政専任の裁判官を認めることは、あくまで避けなければならない。
(2) 中小企業等協同組合は,法令がとくに理事会の決議事項であると定めたものを除いて,理事会に属する業務執行の意思決定の権限を定款で代表理事に委任することができます(最高裁昭和40年9月22日判決)。
(3) 弁護士JPニュースの「“裁判官の会議”は「見られたら、とても恥ずかしい」… 現職の敏腕判事の“勇気ある発言”を待ち受けていた「運命」とは」に以下の記載があります。
裁判所の会議の「あり方」は、弁護士会はもとより、民間企業などと全く異なるように思う。
裁判官会議の議題は、5~10分程度で終わってしまう。
主要な議題は、その裁判所における事務分配(各裁判部・裁判官への事件の配点ルール)・開廷割(各裁判部・裁判官が何曜日にどの法廷を使用する権限があるか)を規定する裁判所規則の審議・可決である。
簡単に変更点を説明しただけで、議長である長官・所長の「よろしいでしょうか」の一言で可決される。
(4)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 神戸地裁常任委員会の平性24年7月から9月までの議事録
イ 以下の記事も参照してください。
・ 最高裁判所裁判官会議
 最高裁判所裁判官会議の議事録
 最高裁判所に設置されている常置委員会は全く開催されていないこと
 最高裁判所事務総局会議の議事録
・ 司法行政を担う裁判官会議,最高裁判所事務総長及び下級裁判所事務局長
 下級裁判所の裁判官会議に属するとされる司法行政事務


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