第1 この記事が扱う対象1 調査書とは何か2 検討の時点と確認した資料第2 個別恩赦の上申手続と添付書類の体系1 上申権者と上申の経路2 恩赦法施行規則が定める添付書類と調査書の根拠3 恩赦上申事務規程が定める書類一式と編てつ順序第3 調査書(様式第7号)の法的根拠1 恩赦法施行規則2条1項3号・4条1項3号2 更生保護法90条が定める法定調査事項3 恩赦上申事務規程10条とその沿革第4 法務省の解説通知が示す作成要領1 審査に最も影響する書類としての位置づけ2 秘密保持と客観的・総合的な調査の要請3 様式第7号11項目の記載要領4 被害者及び社会の感情欄の特則第5 様式第7号の記載例に見る運用の実際第6 調査書に基づく判断の法的性格――取消訴訟の対象になるか第7 恩赦の願書との違い――本人側の書式との対比第8 調査の実務をめぐる指摘――被害者等調査の位置づけ第9 中央更生保護審査会の現在の構成出典・参考資料1 法令2 裁判例3 公文書・行政資料4 文献
第1 この記事が扱う対象
1 調査書とは何か
個別恩赦の上申は,刑事施設の長,保護観察所の長又は検察官(上申権者)が,本人からの出願を受け,又は職権により,中央更生保護審査会に対して行う。上申権者は,恩赦上申書に一定の書類を添付しなければならず,その添付書類の一つが調査書である。調査書は,恩赦法施行規則2条1項3号又は4条1項3号に基づいて上申権者が作成する書類であり,恩赦上申事務規程(昭和58年12月23日法務大臣訓令)10条により様式第7号によることとされている。同規程を運用するための法務省保護局総務課長通知「恩赦上申事務規程の解説の送付について」(平成28年3月31日付)は,調査書を「審査会における審査の資料として最も重視される書類である」と位置づけている。
本記事は,調査書の法的根拠,恩赦上申事務規程が定める記載要領及び記載例,並びに調査書に基づく審査会の判断の法的性格を,情報公開請求により入手し当事務所のウェブサイトで公開している規程原文及び解説通知の原文に基づいて整理するものである。個別恩赦の出願先,出願できる時期,願書の記載事項その他の手続全体は,別稿「恩赦の手続――出願先・時期・必要書類・審査の流れ」で扱っており,本稿はその関連記事に位置づけられる。特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権という恩赦の種類ごとの効果は,別稿「恩赦の効果――五種類の違いと前科・資格・再審への影響」で扱っている。
2 検討の時点と確認した資料
本記事が検討の基礎とするのは,恩赦上申事務規程及びその解説通知の原文(いずれも当事務所が情報公開請求により入手し,ウェブサイトで公開している一次資料),恩赦法・恩赦法施行規則・更生保護法の現行条文(令和8年8月15日にe-Gov法令検索で確認),並びに判例秘書プラスで全文を確認した裁判例である。恩赦上申事務規程は昭和58年の制定後,昭和62年,平成7年,平成13年,平成18年,平成20年及び平成24年に改正されており,当事務所が入手した規程原文はこのうち平成24年9月28日施行分までを反映している。これより後の改正の有無は,公表資料からは確認できなかった。
第2 個別恩赦の上申手続と添付書類の体系
1 上申権者と上申の経路
恩赦法施行規則1条の2は,刑事施設に収容され又は労役場若しくは監置場に留置されている者についてはその刑事施設の長,保護観察に付されている者についてはその保護観察をつかさどる保護観察所の長,その他の者については有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁の検察官が,職権で特赦,特定の者に対する減刑又は刑の執行の免除の上申をすることができると定める。同条2項は,これらの上申権者が本人から出願を受けたときは,意見を付して中央更生保護審査会にその上申をしなければならないとする。復権については,同規則3条が同様の構造を定めており,上申権者は,保護観察に付されたことのある者については最後にその保護観察をつかさどった保護観察所の長,その他の者については最後に有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁の検察官である。
恩赦上申事務規程4条は,職権による恩赦の上申は恩赦上申書(甲)(様式第1号)により,出願による恩赦の上申は恩赦上申書(乙)(様式第2号)により行うと定め,上申書は正副2通を作成して法務省保護局に送付するとしている。調査書は,このいずれの経路による上申書にも添付される書類である。
恩赦上申書(乙)(出願による上申の場合の様式第2号)
2 恩赦法施行規則が定める添付書類と調査書の根拠
恩赦法施行規則2条1項は,特赦,減刑又は刑の執行の免除の上申書に添付すべき書類として,判決の謄本又は抄本(1号),刑期計算書(2号)及び「犯罪の情状,本人の性行,受刑中の行状,将来の生計その他参考となるべき事項に関する調査書類」(3号)の3種を定める。復権については,同規則4条1項が同様に,判決の謄本又は抄本(1号),刑の執行を終わり又は執行の免除のあったことを証する書類(2号)及び「刑の免除の言渡しのあった後又は刑の執行を終わり若しくは執行の免除のあった後における本人の行状,現在及び将来の生計その他参考となるべき事項に関する調査書類」(3号)の3種を定めている。調査書は,このうち各条1項3号にいう「調査書類」の実体であり,恩赦の種類(特赦・減刑・刑の執行の免除か,復権か)によって,行状等をどの時点から把握するかという条文上の視点が異なる。
3 恩赦上申事務規程が定める書類一式と編てつ順序
(続きを読む...)恩赦の調査書――上申権者が作成する様式第7号とその記載事項(AIリライト)